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アースクライシス2019⑱〜汚染街の肥溜め王

作者：柊透胡

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「ニューヨーク州ナイアガラ・フォールズ市……『ラブ・キャナル』って処に、スカムキングの拠点がある」
　資料片手に、各務・瞳子（七彩の聴き手・f02599）が説明するには、かつて大量の廃棄物が投棄されていた運河で、後に深刻な地下水や土壌汚染の問題が表面化したという。
「膨大な汚染物質を内包する『肥溜めの王』らしい、拠点かも知れんね」
　スカムキングは、要塞化した運河の地下で、スーパープルトンから譲られたUFOを改造し、宇宙へと逃走する準備を整えている。
「スーパープルトンのＵＦＯは、環境に優しい『１人用ＵＦＯ』やったんやけど、スカムキングの改造ＵＦＯは、多数の人員と資材を宇宙に運び出せるようになってるようや……洒落にならん環境破壊を引き換えに、な」
　要塞は謂わば地下都市だが、環境に全く配慮しないＵＦＯ大改造工事中の為、有害物質の霧が発生しており、耐え難い異臭が漂っている。
　猟兵が都市に侵入すればスカムキングから迎撃にやって来るので、捜索の手間が掛らない事だけは幸いだ。
　尚、11月30日までに、スカムキングを撃破できなかった場合、スカムキングのＵＦＯは世界を汚染しながら地球外へと逃走してしまう。
「大至急、ラブ・キャナルの地下へ転送するさかい、スカムキングの倒してきてな。宜しゅうに！」
　スカムキングもジェネシス・エイトの一員ならば、やはり、猟兵達に先んじて先制攻撃してくる。愛人のアシュリーとの連携攻撃や、大量の汚染物質に対抗する手段は、講じておくべきだろう。

第1章 ボス戦 『スカムキング』

POW   :    キングアンドクイーン 自身の【体重60kg】を代償に、【体内から飛び出した破壊魔術師アシュリー】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【肉弾戦を挑むスカムキングとの連携攻撃】で戦う。 SPD   :    スーパートニックナイトメア 【アシュリーが禁断の呪文をかけ続ける】事で【近付くだけで敵を侵食する超汚染存在】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。 WIZ   :    ダスト・テリトリー 自身からレベルm半径内の無機物を【汚染物質】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

　かつて、深刻な環境汚染問題が起きた運河「ラブ・キャナル」――所謂『ラブ・キャナル事件』は20世紀半ばの出来事だ。それが、世紀を変えて再発以上の被害が生じようとしているのは、未来を侵食するオブリビオンならではか。
「さて、これで何度目だろうなぁ……けど、悪役なら、この台詞がお約束だろうよ。『待っていたぜ、猟兵共！』」
　光化学スモッグより更に質の悪い靄の中、汚濁そのものの巨漢が不敵に嗤う。
　コンクリートの壁が、錆び浮いた鉄柵が、水路を流れる下水までも――スカムキングの周囲から、次々と汚染が広がっていく。
　月末までにスカムキングを倒しきらねば、改造ＵＦＯから更なる汚濁を撒き散らし、逃げ果せるだろう。
（「汚染されても、きっと浄化はできます……けれど、浄化までに人は多く、死ぬでしょう」）
　ナイ・デス（本体不明のヤドリガミ・f05727）にとって、犠牲者が多く出る事態は、けして看過出来ぬ。
「飛び立つ前に、討ちます！」
「やれるもんならなぁ！」
　唸り上げて飛び交う汚染物質。その合間を縫うように、ナイの地縛鎖が奔る。
「……ッ！」
　ピンと張った鎖に足を掛け、たわめた反動も利用したジャンプ。
　――――！！
　汚濁の塊を直感的に回避するべく己が身を念動力で弾き、あり得ぬ起動で下水道の空間を舞う。時に黒剣を振い受け流した。
「あ……ぐ……」
　それでも、避け切れぬ飛沫がナイを蝕むのは、グッと耐える。
「……加減は、しません」
　少年の身の内より、迸るのはそれがそこに在る為の力を吸収する光。
「……っ」
　汚染物質をそのまま取り込めば、ヤドリガミであろうと只では済むまい。だが、物質が内包する熱量を『生命力』に変転すれば。
　ウガアァッ！！
「あ、あんた！？」
　流石に、超国家級の膨大な量を総てとまではいかなかったが。ナイの生命力吸収光は、スカムキングの汚泥の肉体に風穴を開ける。
「おやすみなさい、です」
　幾許かとも、スカムキングが動きを止めた瞬間。黒剣が巨躯を串刺しにした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「あんた、しっかりしな！」
　スカムキングの汚泥に埋もれたまま、愛人のアシュリーは発破を掛ける。ゆらりと、その右腕が動いた瞬間――ぼこぼことスカムキングを成す汚濁が泡立つ。
「なぁに、まだまだこれからよ！」
　アシュリーの禁断呪文によって、超汚染存在と化すスカムキング。その巨漢に違うスピードを以て猟兵に襲い掛かる！
「またこいつか……いい加減、この臭いもイイのかも？　とか一瞬でも思った自分が怖いわ」
　本気とも冗談ともつかぬを独りごち、退魔刀と妖刀の二刀流を構える十文字・武（カラバ侯爵領第一騎士【悪喰魔狼】・f23333）。
「さておき、世界を汚物で満たされちゃ適わん。逃げられる前に斬り捨てる」
　鬨の声を上げ、真正面から突撃する。文字通りの猪突猛進を、スカムキングは鼻で嗤う。
　ゴバァァッ！！
　忽ち、武の全身が汚濁に呑まれた。
「ほらよ、まずは馬鹿野郎が1匹、と……次は、お前かぁ？」
「……！」
　思わず息を呑んだ雨咲・ケイ（人間の學徒兵・f00882）だが、ゴーグル越しに意気強く睨み返す。
「まさにヒーローズアースの悪を絵に描いたような、危険な存在といった所でしょうか」
　兎に角、被害の拡大を防がねばならぬ。愛用の小盾「アリエル」が輝く暇があればこそ、押し寄せるスカムキング――超汚染の浸食。
　盾を翳し、オーラを全開にして耐えんとするが、じわじわと侵される不快感に、ケイは歯を食い縛る。
（「ここを、凌ぎ切れば……」）
　息が詰まるような腐臭の中、辛うじて嗅ぎ分けられたスノーホワイト――白き薔薇の香気を拠り所に、必死に耐える事暫し――。
　ウガァァァッ！？
　突如、スカムキングの絶叫が轟く。
「弱っちぃ猟兵だと、油断したかい？」
　一閃――刀身に纏わりつく汚濁を払い、ゆうらりと立ち上がった武は、不敵に嘯く。
　先に、スカムキングの汚濁に呑まれた武は、弱った振りをしながら毒に耐え、激痛を凌ぎ、退魔刀「死神殺し」で精気を呼集しながら、機を窺っていたのだ。
（「今です！」）
　スカムキングが武のだまし討ちに気を逸らした一瞬を逃さず、ケイは退魔集氣法を発動する。
「破邪の闘氣……、その身で味わってみますか？」
　俄かに強靭を増した闘気はケイの傷を癒し、更には身体能力を賦活。スカムキングに迫る速度を上げて、破邪の衝撃波を浴びせ掛ける。
　――！？
　たじろぐ気配に更に畳掛けるべく、ケイは輝けるアリエルの盾を投擲。
「……ッ！！」
　アシュリー自身はスカムキングの汚泥が庇うも、光輝はオブリビオンの視界を白く染め――。
「カラバ二刀流・壱ノ太刀……『爪削ぎ』」
　目潰しで生じた隙など、逃しようもない。武の双斬撃乱舞が汚泥を散らし、刻む。
「我が秘剣は、瞬きする間も与えねぇぜ？」
　超高速の斬撃と、破邪の衝撃破を同時に喰らい、肥溜めの王は、反吐をぶち撒けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

「くそっ、こうなったら……アシュリー！」
「仕方ないわねぇ」
　これまで、スカムキングと一心同体であったアシュリーが汚泥から分かたれる。
　――――！！
　豊満を晒すのも構わず、アシュリーの指先が術式を編むと同時、雄叫び上げるスカムキングの拳を、ウィルヘルム・スマラクトヴァルト（緑の騎士・f15865）は緑の大盾で受けた。
「逃亡はまだしも、世界の汚染は許せません。この緑の騎士が、何度でも討ちましょう」
「ほざけぇっ！」
「……っ！」
　ブンッと唸った丸太の如き足が大盾を蹴るや、身を捻った巨漢が続いて、ナギ・ヌドゥー（殺戮遊戯・f21507）に襲い掛かる！
「う……ぐ……」
　辛うじて、ドーピングが間に合った。だが、勘が当たらなければ、真っ向から喰らっていただろう。更に、アシュリーの破壊魔術を畳掛けられる。
「アンタを絶対逃すなと、みな血眼でここに向かってるぞ。完全消滅するまで何度でも殺してやろう」
　冷徹を言い切りながら、内心で舌打ちするナギ。
「アシュリー……ひょっとして、アンタの体重60㎏なのか？」
　キングアンドクイーンの連携を崩すべく、スカムキングの肩越しへ言い放つ。
「ユーベルコードの代償でこんな事バラされるなんて、怒った方がいいぞ！」
「お生憎様。体重如きで一喜一憂する程、ねんねじゃないの、あたしは」
　殊更に、自らの肢体を見せつけるように胸を張り、アシュリーは魔術の速射でウィルヘルムをあしらう。
　一心同体が常のスカムキングとアシュリーは、分体してもその連携は健在。
　ウィルヘルムとナギを相手取り、一歩も退く気配はない。
　だが、ナギは冷ややかに笑みを浮かべる。
「敵が２人掛かりなら、オレも禍つ魂の封印を解こう――恐怖を知れ」
　ナギの血と精気を餌に、咎人の肉と骨で造られた拷問具「ソウルトーチャー」の形態が変じる。
「ソウルトーチャーよ！　その汚物を喰らい尽くせ！」
　殺戮捕食態と化した拷問具がスカムキングへ飛び掛かる一方、ナギは歪な怨刃を手にアシュリーへと向かう。
「彼奴は悪食でな、アンタの愛人の様な奴でも喜んで喰らう。貴様は、オレが仕留めてやろう」
「ハッ！　王の称号をナメるんじゃないよ！」
　強気崩さぬアシュリーの言う通り。スカムキングはジェネシス・エイトが一。常のボス格オブリビオンより格段に強い。連携を絶ったとして、果たして猟兵ならぬ武器一振りで、仕留められようか……。
「この世界も……そこに住まう人々も……私が護るんだ！」
　だが、猟兵はもう１人いる。エメラルド色に輝くオーラを纏う内に燃えるは、聖騎士の使命。守護の決意を武威に換え、ウィルヘルムは緑の斧槍を構える。
　――――！！
　最高速度は軽く音速を越えるも、流石に短距離の加速でその域には到底至らぬ。それでも、飛翔すれば直線距離を一気に翔け抜ける！
「が……あ……」
　貫通する。飛散する。ウィルヘルムの串刺しに、すかさず、拷問具が汚濁に充ちた頭部を喰らう。
「あ、あんた！？」
　狼狽の暇が在ればこそ、アシュリーも真一文字に瞬断され、スカムキングが呈を崩した汚泥に沈む。
　肉を裂き、確実に引導を渡した感触に、ナギは心地よさげに目を細めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2019年11月27日