アースクライシス2019⑬~月に向かって跳べ
●さっさと金網の上で餅を焼け
ここはラグランジュポイントに存在するある「島」の中にある、強制労働所。
そこでは島の住民たちがオブリビオンによって日々苦しい労働を強いられていた。
「ヒィ、ヒィ……どうして俺たちがこんな目に……」
「シッ、黙って作業しろ!聞かれたら罰を受けるのはお前だけじゃあないんだぞ!」
泣き言を漏らしたひとり(?)に向かって他の作業員が小声で叱りつける。
「24番ベルト、何か不具合がありましたか。速度が遅れています」
「何でもありません!申し訳ありませんでした!以後気をつけます!」
ピシリ、乗馬鞭を手のひらで鳴らしたメイド姿の少女に、長い耳をピンと伸ばした労働者たちが叫ぶ。
「よろしいでしょう。くれぐれも手を休めないように……急いでおもちを丸める作業に戻りなさい」
「了解しましたァ!」
監督役たるメイド姿の少女たちは、そうして鞭を片手にうさぎ労働者たちを監視し続けるのだった……。
●以上、もち丸めラインの様子でした
「そうやってうさぎたちが無理やり作らされた餅は、一人用UFOのええ燃料になってるらしいねんな……」
シャオロン・リー(Reckless Ride Riot・f16759)は、そこまで語ったところで遠い目をした。
猟兵たちは「なに言ってんだこいつ」という目で彼を見ていた。しかしこの話、れっきとした戦争のお話なのである。
ラグランジュポイントとは天体と天体の重力でいい感じに釣り合いが取れて宇宙の中でなんか安定しているポイントであるらしいのだが、ヒーローズアースのラグランジュポイントには、幾つもの宇宙船がぶつかってできた無数の「島」が浮かんでおり、それぞれの島に住民たちが暮らしているそうだ。
今回の行き先となる島でも二足歩行する等身大のうさぎ的な宇宙人が暮らしていたそうなのだが、今はオブリビオンに支配され、みな強制労働所に囚われてしまった。
反旗を翻そうにも数人単位での班にわけられてひとりが反抗やミスなどをすれば他の班員にも罰を与える、という一蓮托生の制度が続けられた結果、うさぎたちからは逃げ出す気力すら失われ、ひたすらコンベアから流れてくるおもちをまるめるだけの仕事に従事してしまっているらしい。
「ちなみにもち米蒸すラインから突いてこねるライン、もち焼き労働ラインもちゃんとあるらしいで」
なお、この「島」で採れる「もち米」は勿論ヒーローズアースや他世界のそれとは違う成分構成になっている。ミラクル宇宙パワーばんざい。
「このうさぎ、総数がめちゃくちゃ多いねんな。とにかくたくさんおる。今はまさに労働力が畑で採れる状態になっとるわけやけど、こいつらがもし一斉蜂起して暴れだしたら星を管理しとるオブリビオン軍団でも勝ち目はあらへん。やっぱり数の暴力は正義やから」
勿論、今のままでは萎縮してしまったうさぎたちからは反抗の意志は失われてしまっている。
猟兵が戦っていても、巻き込まれないように逃げ出したり隠れるぐらいはするだろうが。
「やからうさぎ達を「その気」にさせる方法が必要なんやけど、ええもんがあんねん。うさぎ達が誇りとしとった伝統の武器、その名も「ジェノサイドハンマー」言うてな?」
このジェノサイドハンマー、見た目はただの木製の杵にしか見えないが、いわゆる戦槌、ウォーハンマーとして使えるシロモノである。
猟兵たちが武器として使うウォーハンマーをはじめ、武器やユーベルコードと比べてしまえば力は劣るが……。
うさぎたちの目の前でジェノサイドハンマーを正しく用いてオブリビオンを撃破するところ見せてやれば、彼らの萎縮した反発心にも火がつくだろう。
この島を任されているオブリビオン軍団は「万能派遣ヴィラン隊」。お電話一本でどのような悪事も代行してくれちゃうオブリビオン戦闘メイドだ。メイド隊だ。
普段は鞭を手にしてうさぎたちの作業を監視しているが、戦闘となれば様々なメイドっぽいアイテムを武器として駆使するだろう。
「そーいうわけでな、お前らには監視のメイドをシバき倒して、うさぎたちを革命!暴動!反体制主義!に目覚めさせてやってほしいわけや!」
シャオロンは輝く笑顔で言い切った。八卦のグリモアが光り始める。
「ほな、よろしく頼んだで!」
遊津
どうも、遊津です。おはぎははんごろし派。みなごろしでもおいしくいただけます。
このシナリオはヒーローズアース、『アースクライシス2019』の戦争シナリオとなっております。
シナリオのプレイングボーナスは【島に眠る「宇宙人の謎兵器」を使う】です。
餅つきの杵的なジェノサイドハンマーを駆使してオブリビオンを撃破し、うさぎ達を鼓舞してください。
(ジェノサイドハンマーはハンマーとして使用されることでプレイングボーナス達成条件を満たします)
なお、ジェノサイドハンマーは猟兵たちの装備する武器よりも性能は劣っています。
リプレイの開始時点で既にハンマーは手に入れられているもの、その場で戦闘が開始できるものとして問題ありません。
ハンマーを手に入れるまで、オブリビオンを呼び寄せるまでのプレイングは不要です。
こちらはオープニングが公開され次第受付を開始いたします。
マスターページの方の書き換えが遅れるかもしれませんが、プレイングを送ってくださって構いません。
その他、マスターページを一読くださると助かります。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『万能派遣ヴィラン隊』
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POW : これより業務に移ります
【民衆もしくは敵に対して一礼と共に宣言する】事で【機能性を重視した業務用メイド服】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : 業務の邪魔は許しません
【超高速移動からの目にも留まらぬ打撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : あらゆるニーズにお答えします
技能名「【全技能】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
👑11
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尾守・夜野
「罪なきもふになんと非道な事を…!」
スレイやジョン(友達の羊)がこんな仕打ちを受けたらと思うと腸が煮えくり返る…!
とりあえず手に持った杵…もといハンマーの重心を確かめるように…敵に振り下ろし
「いい感じだ」
…ただきn…ハンマーというだけあって重くて…刻印で強化してないと潰れそうだ(なお、素はとてつもなく非力)
まぁ避けられてるんだが
…業務だかなんだか知らん
殴って殴って殴って殴る!
宣言?言う暇も無いほど頭を狙い殴打
朦朧としたところを爆破出来ればいいんだが…まぁ武器で殴り続けるよな
くっ!?おぼんで受け止めるだと?
おもしれぇ…押し…潰す!
アドリブ等歓迎
鈴木・志乃
月のウサギは餅つき好きっていうけど、本当かな
クレーターの穴がウサギに見えることから生まれた話だろうけど
【オーラ防御】展開
さあて
しゃべらせませんよっとお!
【全力魔法】で【鎧砕き】出来るだけでかくしたジェノハンを【早業念動力】で振り上げて……どっせい☆
【衝撃波】で【なぎ払い】
もう地面ごとえぐってしまえ
吹っ飛ばせ吹っ飛ばせ
喋れないぐらいな
敵の動きは【第六感】で【見切り】小さいジェノハンで【早業武器受け】からの【カウンターなぎ払い】
UCと【念動力】で口や腕を縛り上げてジェノハンでぶん殴りたい
慣れてきたら念動力ジェノハン大量にぶん回しあちこちぶっ叩いて回る
●労働者よ目を覚ませ
ビー、ビー、ビー……異変を知らせるサイレンが工場に鳴り響く。
作業をしていたうさぎたちは何事かとその場にしゃがみこみ、しかし猟兵たちの様子をその丸い目でじっと窺っていた。
「月のウサギは餅つき好きっていうけど、本当かな」
(まぁ、クレーターの穴がウサギに見えることから生まれた話だろうけど)
杵、もといジェノサイドハンマーを幾度か握り直し、鈴木・志乃(ブラック・f12101)は防御のオーラを自らの周りに張り巡らせた。
「罪なきもふになんと非道な事を…!」
尾守・夜野(墓守・f05352)はもふもふとしたうさぎ達の現状に憤りを隠しきれない様子だ。
もし愛馬のスレイや羊の友人・ジョンがが同じ仕打ちを受けたらと考えるだけで手にしたハンマーが震える。
「ぐぐ……これは、き……ハンマーというだけあって……刻印で強化していないと潰れそうだ」
もとい、手が震えていたのは怒りからではなかったらしい。
やがて、メイドたち夜野たちを発見して駆けつけてきた。
『……侵入者を確認しました、これより業務に――』
「おっと、しゃべらせませんよっとぉ!!」
大きく変化させたハンマーを念動力をサポートしながら振り上げ、志乃は手近にいたメイドをぶちのめす。
「どっせい☆」
地面を打ちつければ、その衝撃で冷たい床が抉れた。そのまま志乃はやってくるメイドを次々と吹き飛ばしていく。
「……業務だかなんだか知らん、殴って殴って殴って殴る!」
夜野も同様、二人はメイドたちのユーベルコードを発動させないため、発動に必要な動作である「一礼と宣言」を行う前に仕留めるという戦法に出ていた。
しかし、大量に用意された監督役のメイドたちの中でそれを行えば、猟兵が普段用いている武器のように強力ではないジェノサイドハンマーでは打ち漏らしも出てくる。
『これより業務を遂行いたします』
『業務を開始いたします』
『業務、開始』
『同じく』
二人の狙いに気づいたメイドたちがどんどんと「宣言」の文言を短くしていく。
業務用メイド服に着替えた真メイドたちの中にはその高速移動でジェノサイドハンマーの一撃を躱す者達も現れ始めた。
「くっ、なにッ……お、おぼんで受け止めた、だと!?」
銀の丸盆が夜野の振り下ろしたハンマーを防いでいた。メイドは顔色一つ変えずに言う。
「激しい修行に耐え、正装に身を包むことを許されたメイドたちとってはこの程度、造作もありません。防ぐだけではありませんよ」
後ろに回った他のメイドたちから戦輪のように投げつけられた丸盆が夜野の周囲で爆発する。
「面白ぇ……押し、潰す
……!!」
互いの力は互角。しばし夜野とメイドとの間で、拮抗状態が続いた。
不意に夜野の力が抜ける。保たれていた均衡が破れ、メイドの体が前にふらつく。それこそが夜野が狙った隙であり、丸盆ガードが失われた一瞬の間にメイドの頭部がハンマーによって殴りつけられる。
流れ出た血を摂取すれば、夜野の力も強化される。ジェノサイドハンマーを振りかざし、夜野は丸盆戦輪を投げつけてくるメイドの群れへと飛び込んでいった。
志乃に向かった正装メイドたちがモップ棒術で四方八方から打ちかかる。しかしそれらの動きを紙一重で交わした志乃は光の鎖を召喚し、ハンマーを中心に華麗にターンしながらメイドたちの体を絡め取る。
縛り上げ動けなくなったメイドが殴りつけられ、骨を砕かれる音が響き、血飛沫が飛んだ。
じっとその様子を窺っているうさぎたち。メイドたちがぼろぼろにされていく様を見るうさぎたちのまるいまなこは、「あいつらそんなに怖くないんじゃないか」という一条の希望を見出しつつあった。
そんなうさぎたちの様子の変化に気づいているのか居ないのか、志乃は念動力でいくつものハンマーを動かしては押し寄せるメイドを殴り倒し始めるのだった――。
大成功
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日向・史奈
杵のようなハンマー…な、なるほど
うさぎさんたちにぴったりです
このまま強制的に働かされっぱなしなのも可哀想なので、頑張って助けましょうか
ハンマーを手にして戦います
普段使う武器よりも弱いのなら、魔法で炎を纏わせて強くしてしまいましょう
敵が技能を強化した激しい攻撃を放ってきたら竜巻の魔法で自分を竜巻に巻き込んで距離を取ったり
どんなに激しい攻撃でも、当たらなければ勝機はあるはずです…!
私も諦めません、だからうさぎさんたちも…ご自身の手で、自由を手にして下さい
【アドリブ歓迎です】
泉・火華流
話を聞いて…そして現地に赴いて…
何か…私のトラウマを刺激するような依頼よね…
(参加依頼…『すべてが『M』になる』参照w)
戦闘
レガリアス・エアシューズに『スチームエンジン』使用
【ダッシュ・逃げ足】でヒット&ウェイ・回避重視の戦闘
レガリアス・エアシューズで駆け巡り、ジェノサイドハンマーを振り回しながらメイド達を冥土送りにします
ハンマーを思いっきりふるって、レガリアス・エアシューズで大回転して近づいてくるメイド達を弾き飛ばしたり【範囲攻撃】
【ジャンプ】して思いっきり振り上げたハンマーを降下する勢いも力に変え、思いっきり振り下ろしたりします
●労働者よ武器を持て
その話を聞いたときから何かを思い出しそうな予感はしていた。
実際現地に赴いて、レーンの陰に隠れている大量のうさぎたちを見て、泉・火華流(人間のガジェッティア・f11305)の脳裏をよぎったのはかつて解決に向かった事件での記憶だった。
大量のうさぎに変えられた学生たち、そして学生たちを海のような母性本能で包み込むうさぎたちの……いやいや落ち着け、あれはちがう。あれはうさぎといってもほぼほぼうさ耳程度だったし。これは直立歩行するうさぎそのものだし。
刺激されるトラウマを必死に忘れ去ろうとしながら、火華流はレガリアス・エアシューズを履く足に力を入れた。
杵の形をしたジェノサイドハンマーをぎゅっぎゅと握り締めながら、日向・史奈(ホワイトナイト・f21991)がなるほど、とコンベアの影からこちらを窺ううさぎとハンマーとを見比べる。
「うさぎさんたちにぴったりです……!」
この杵を握るに相応しい彼らがこのまま強制的に働かされっぱなしなのは可哀想だと、史奈は彼らを助けようとする気持ちを新たにした。
彼女らの元にもメイドたちが現れ、丸盆戦輪にモップ・ティータイム用フォーク&ナイフの投擲で襲ってくる。
火華流は蒸気エンジンを搭載したシューズで床を高速で滑りながら、丸盆とフォーク・ナイフを次々と躱し、ジェノサイドハンマーをメイドに叩きつけては戦線離脱を繰り返し、史奈はハンマーに魔法の炎を纏わせる。
突っ込んできた自走式配膳台から自らの身を風に躍らせて避ければ、後ろの方で配膳台が機械に突っ込んで爆発する音が聞こえた。巻き込まれたうさぎたちはいないようだ。
「どんなに激しい攻撃でも、当たらなければ勝機はあるはずです……!」
フォークとナイフの弾幕を逆巻く波に巻き込んで、史奈はうさぎたちへと向かって言葉をかける。
「私も諦めません、だからうさぎさんたちも…ご自身の手で、自由を手にして下さい!」
史奈の言葉を聞いた幾匹かのうさぎがはっと耳を立てた。隠れていた場所から顔を出し、彼女たちの戦いをもっと見ようとするうさぎの、その手はきつく握り締められていた。
戦場と化した工場の中、火華流はモップ槍術を限界まで高めたメイドたちの中に飛び込むと、シューズで回転しながら握り締めたハンマーでメイドたちを次々に吹き飛ばしていく。
そのまま高く飛び上がると、ジェノサイドハンマーを振りかぶり、着地地点に居たメイドを叩き潰す。
焔を纏った史奈のハンマーが振り下ろされ、シーツ布槍術を用いるメイドたちを次々と吹き飛ばし、幾人ものメイドたちが冥土へ、もとい骸の海へと帰っていく。同時に、彼女たちの戦いを固唾を呑んで見守るうさぎたちの目にもわずかな闘志が宿っていく。
「あれは……あれは決闘の儀に使われるジェノサイド・ハンマーだ……」
「俺たちが雌雄を決する“どうしても後には引けない戦い”の時に、相手を必ず殺すという覚悟を決めた証として振るわれるものじゃないか……!」
「どうしても、後には引けない時……」
――それは。それは……もしかして、今なんじゃないのか。
うさぎたちの中に、そんな思いが目覚めようとしていた。
大成功
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ナイ・デス
おもち……UFOの燃料にはしないで、普通に食べる事も、できるのでしょうか
もし、食べられるなら……戦いが終わったあとに、島の人達といっしょに食べたい、ですね
しかし、ジェノサイドハンマー、ですか
ジェノサイドな、ハンマーなのですか。この見た目で……
ジェノサイド、みなごろし、おもち……UDCアースで、聞いたことありますね
なるほど、おもちつきハンマー?
それなら……!
メイドさんの打撃を第六感で見切り
カウンター『レプリカクラフト』作るのはメイドさん入る大きな臼
落とし穴か何かのように作りメイド入れ、念動力で中をぐるんと動かして
ジャンプ!思い切り、振り下ろします!
生命力吸収で、塵も残さず消滅させておきましょう
フィランサ・ロセウス
あのUFOってモチが燃料だったのね……知らなかったわ
ともかく、楽しい楽しいモチツキといきましょうか!
もちろんモチになるのはオブリビオンね❤
敵の高速移動には高速移動で対抗!
クロックアップ・スピードで追いすがって、ハンマーの一撃を叩きつけてあげる!
機能が劣るという事は、それだけ長く楽しめるってことよね?
だからすぐに壊れちゃダメよ❤
おっと、現地の人にはちょっと刺激が強すぎるかしら?
でも革命の為には血を流さなければいけない
同志諸君、モチを紅く染めるのだー!……なんちゃって
●労働者よ立ち上がれ
「あのUFOってモチが燃料だったのね……知らなかったわ」
オブリビオンからUFOを奪い、そして更にはそのUFOに乗ってオブリビオンと戦ってきたフィランサ・ロセウス(危険な好意・f16445)が、その燃料の意外な正体を知って驚きの声を上げる。
「おもち……UFOの燃料にはしないで、普通に食べる事も、できるのでしょうか」
もし食べられるなら戦いが終わった後、この島の人と一緒に食べたいです……と、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)もまたおもちに思いを馳せた。
ざわざわと、もはやざわめきを隠せないうさぎたちは固唾を呑んで彼らの戦いを見守っている。
彼らが再起の一歩を踏み出すのも近いと思われた……しかし、そこへそれを阻む一番の障害が現れる。彼らをずっと監視していたオブリビオン、メイドたち。
超高速で背後を取り、モップで襲い掛かってきたメイドの攻撃を避けたフィランサは、その胴体に思うさまジェノサイドハンマーを叩き込んだ。
「とにかく、楽しい楽しいモチツキといきましょうか!……もちろん、モチになるのはあなたたちね❤」
通常の武器より機能が劣るということは、仕留めるのに時間が掛かるということ。もしも威力が三分の一だとしたら、つまり三倍長く楽しめるということ!
「そうよね? そういうことよねっ! うふふふふふふふ、すぐに壊れちゃあダメよ❤」
致命傷を与えられなかったメイドに対し、彼女らを超越するスピードで追い縋っては更に二、三度と続けてハンマーを振りかぶる。ぼきごきととやわらかいものの中で何かが砕ける音が響いて。
ナイは見た目は完全に木製の杵の形をしたそれを見下ろして呟く。
「ジェノサイドハンマー、ですか……ジェノサイドな、ハンマーなのですか。この見た目で……」
(ジェノサイド、みなごろし、おもち……)
自身の拠り所たる本体がなんなのか、どこの世界にあるのかさえわからない彼は、幾つもの世界を巡ってきたその記憶の引き出しを開けていく。
(UDCアースで、聞いたことありますね)
「なるほど、おもちつきハンマー?」
それなら、と彼が思いついた手段もまた悪魔的だった。
仕掛けを終えたナイが半歩後ろに下がれば、彼の居た場所をメイドの丸盆シールドバッシュが盛大に空ぶっていく。
体勢を崩したメイドがそのまま彼の仕掛けた罠、落とし穴のように偽装されていた巨大な餅つきの臼の中に落下していった。
捏ねるように念動力で臼の中を揺すり、ナイはハンマーを振り上げ、ジャンプで弾みをつけてハンマーを臼の中にぶち込む。
べきりと音がしたのも束の間、ハンマーを通してメイドの生命力は全てナイへと吸い上げられてゆく。数秒も立てば、メイドは骸の海へと返り、肉体は消滅する。杵の中には何もなくなっていた。
メイドたちの血の海を作りながら、しかし「壊れてしまった」ものはすべて骸の海へと返り、屍の一体も残っては居ない。
「おっと、現地の人にはちょっと刺激が強すぎるかしら?」
フィランサは赤く染まったハンマーから紅を滴らせつつも両腕を開く。
「でも、革命の為には血を流さなければいけない!同士諸君、モチを紅く染めるのだー!」
なんちゃって、と付け足されたはずの言葉はしかしフィランサ自身の耳にも入ってこなかった。うさぎたちが一斉に大声を上げたからである。
「「「うおおおおおおおおお
!!」」」
「そうだ!革命だ!革命を起こすんだ!」
「もうこれ以上怯えて過ごす毎日はごめんだ!俺たちには、俺たちには……ジェノサイドハンマーがある!!」
「工場を破壊しろ!火を放て!俺たちにだってやれるんだって証明してやらぁぁぁ!!」
『なにをしているのですか、やめなさい、即刻作業に……が、ぐっ』
うさぎたちを制止しようとしたメイドはナイのハンマーに永遠に沈黙させられる。
「邪魔しちゃあ、ダメですよ」
「いいぞ!俺たちも負けていられるか!!」
心の中で燻っていた叛逆の炎を煽り立てられたうさぎたちは止まらず、どんどんどんどんと集まってくる。その数や、聞いていた通りに異常に数が多い。
残っていたメイドたちはたちまち動きを封じられ、そこをフィランサとナイによって最後の一人が骸の海に帰るまで長い時間をかけて叩き潰されていった。
彼らから受け取ったジェノサイドハンマーを手に工場の外へ駆け出していくうさぎたちは、他のラインの同胞たちも救出していく。
この「島」の支配権がオブリビオンからうさぎたちへと取り戻される時が、労働者による労働者のための労働者革命がなされる時は今。
……かくして、この「島」はオブリビオンから開放された。
これから先、この島の住民たちの暮らしが……主に政治体制的なものが……変わってしまうのかは、未だ、知られざる物語である。
大成功
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