アースクライシス2019⑬~ロマン武器で敵を穿て!
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「運べ」
その区域の住民が課せられた仕事はただ荷物を運ぶ事だった。彼らは難しい仕事でなくて良かったと安堵した。他所では命に係わる命令をされている住民も居ると聞く。
「……もう、何往復目だ」
何かの装置のパーツなのだろう。やたらと重い金属の入った箱を背負い、あるいは簡素な台車を使って繰り返し工場内の倉庫へと運んでいるが、運ぶべき荷物は延々と作り続けられ、全く終わりが見えない。始めは簡単な仕事で良かったと喜んでいたが、次第に疲労が見てとれるようになった。
「運べ」
立ち止まった住民は首に槍の切っ先が向けられ、慌てて荷物を抱え直す。終始見張られていては武器を手にする事も出来ず、言いなりになるしかない。そうこうしているうちに疲労は蓄積し、立ち向かうような意思は削がれ、状況は悪化するばかりだ。
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「ラグランジュポイントの住民がね、クローン装置の製造に加担させられてるんだよ」
オブリビオン軍団が島を占拠し、元々住んでいた住民達はパーツの一部を作る工場に連れて行かれ、重労働に従事させられている。まるで奴隷だとカー・ウォーターメロンは話す。
「みんなには工場に乗り込んで、オブリビオン軍団を撃破してもらいたいんだ。その時にね、もし現地の人たちに勇気を与えられたら。きっとみんなも一緒に立ち向かってくれると思う」
猟兵達の活躍を目の当たりにした住民達が、各々の武器を取り一斉に蜂起する。住民に戦闘力があるわけではないが、圧倒的な人数差で押せばいくらオブリビオンでもひとたまりもない。要は数の暴力である。
とはいえ住民の武器はどうするのかと問われ、カーは大丈夫だと言いつつ傍らの大きな段ボール箱を漁る。
「それは大丈夫。そこを占拠してる機械鎧『ドミニオン』の着用兵士は、彼らの武器をただの切削工具だと勘違いして取り上げなかったみたいだから、工場内のあっちこっちに置いてあるんだよ」
工具? と首を傾げた猟兵の前に、その武器が差し出された。
「きっと自分たちの武器を使ってもらったら、現地の人たちはすっごく勇気づけられると思うんだ」
金属製の、螺旋状の円錐。まごうことなきドリルである。
「工場の外に捨てられちゃってたのを拾ってきたんだ。色んな種類があるから体の好きな部位に取り付けてロボットみたいになれるよ! 例えばこのくちばし用とかね、こんな感じで着げでどりゅりゅりゅっ」
振動で何を言っているのかわからないカーの事はさておき、住民達は人間とさほど変わらない外見をしているにも関わらず、何故かドリルの種類は豊富で様々な種族に対応しているようだ。
威力は切削工具としてはかなり強力だが、猟兵達が個人で誂え調整された武器には到底敵わない。それでも住民達の蜂起を促すならば、使ってみる価値はあるだろう。工場に侵入する際はドリルで壁に穴をぶち開けても良いかもしれない。
それにしても、どうしてドリルを武器にしようと思ってしまったのか。そんな呟きを漏らした仲間に、カーは目をきらきらさせて答えた。
「ドリルはロマンなんだよ」
個人の主観です。
宮下さつき
宮下です。ドリルです。
●戦場
工場内ですが、大きな荷物を搬入する都合か広さは申し分ありません。
資材等、多少の遮蔽物はありますが大体ドリルでぶち壊せます。
住民の皆さんが怪我しないように気を配って頂ければ、何を壊してもOKです。
●宇宙人の謎兵器
ドリルです。
どんな種族にも対応出来る種類があるのでフェアリーさんも問題ありません。腕でも足でも好きな所にドリルを装着してお楽しみ頂けます。
住民の皆さんが誇りに思っている武器ですので、使って頂けるととっても喜びます。
あとプレイングボーナスもつきます。
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プレイングボーナス……島に眠る「宇宙人の謎兵器」を使う。
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それではよろしくお願い致します。
第1章 集団戦
『機械鎧『ドミニオン』の着用兵士』
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POW : シフト:ペネトレイトランス
技能名「【鎧砕き】【串刺し】【怪力】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD : シフト:クイックスタン
技能名「【早業】【先制攻撃】【マヒ攻撃】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ : シフト:カウンタースペル
技能名「【呪詛】【ハッキング】【カウンター】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
👑11
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霧島・クロト
おお、分かってるじゃねぇか――
ドリル兵装は男の浪漫。
一発咲かせてきてやろーじゃねぇの。
予め【指定UC】を使用できる状態に移行。
『氷龍アルカイド』の魂を俺の身体の中に――さぁ、やろうかァ
(同時に機械装甲が竜騎士にも似た翼ある姿へと変形していく)
工場を壁粉砕しながらド派手に突入。衆目を集めるには十分さ。
槍は【空中戦】主体に【残像】【見切り】、
ついでに【フェイント】で撹乱。
んで、今回は都合のいいことに両腕にドリルだ。
氷龍の力と螺旋力の乗ったドリルラッシュ――
【属性攻撃】【全力魔法】【マヒ攻撃】【怪力】で
【2回攻撃】の要領で何度も【なぎ払い】。
さぁ……その『ガワ』ごと、粉砕してやるよ
※アドリブ連携可
鈴木・志乃
※UC第二人格【昨夜】で戦闘
ドリルはロマンだ!!(完全同意)
ドリル無双してやろうじゃん?
(大量にdrill持ってきた人。尚【全力魔法】【高速詠唱】【破壊工作】でさらに威力を上げたらしい)
さあ、いくぞおおおお!!!
【オーラ防御】展開
【第六感】で行動を【見切り】【念動力】でドリルを操作、その体に四方八方から直接ドリルをぶち当ててやろうじゃんか!
さあ豪快に【なぎ払い】攻撃行くぜ!!
あたし自身も【スライディング】して回避しながら、光の鎖の先に付けたドリルを【早業】でぶん回すよ!
鎖は扱いなれてるからなあ【ロープワーク】
とにかく激しく攻撃して、撹乱して敵のマヒ攻撃も潰したいところ
ヂュイイィ……ン。手元のドリルを起動し、霧島・クロトは口の端を上げた。やれ静音設計だの振動緩和だのといった製品が出回る中、これは武器として使う為にただ純粋に破壊力だけを求めた代物だと確信する。
「おお、分かってるじゃねぇか――」
ドリル兵装は男の浪漫、そう口にした彼に同意を示しつつも、鈴木・志乃は一つだけ訂正した。
「たとえ女子であっても……ドリルはロマンだ!」
「そりゃ悪かった」
二人の前にあるのは、壁。その向こうの状況はわからないが、ぶち破った先に敵が居るのなら倒すだけだ。二人はドリルを地面と水平に構える。
「一発咲かせてきてやろーじゃねぇの」
「じゃあせーの、で」
「もう、無理だ」
膝を着いた初老の男性に気付いた機械鎧『ドミニオン』の着用兵士が振り返る。
「運べ」
「……もう腕が上がらない」
「おい、立たないとあいつに殺される!」
槍を構えた兵士が近付いてくる。諦めた男性が目を閉じれば、耳鳴りだろうか、他の住民達の立てという声に混じり、何かを削る音が聞こえた。音は徐々に大きくなり――
ズガアアアアンッ!
男性と兵士の間に、壁が飛んできた。男性に槍を向けていた兵士も、突然の侵入者に標的を変えざるをえない。濛々と立ち昇る砂煙ごと断ち切るように帯電した槍を薙ぐも、その刃に手応えは無い。
「さあ、いくぞおおおお!!」
槍の下を潜り抜け、間合いを詰めた志乃は無手だ。攻撃方法を見定めようと兵士は槍の柄を正面に掲げて受け身の姿勢を取る――が。
「っ?!」
背中側から貫かれ、兵士の身体が頽れた。貫通したドリルはそのまま宙を舞い、志乃の周囲を旋回する。
「さぁ、やろうかァ」
ドリルの轟音を聞きつけて駆けてくる兵士の一団を一瞥し、クロトはその身に仔龍を受け入れる。同時、冷気を撒き散らしながら、黒い装甲の背に翼が展開された。
「――遅ェ」
素早く繰り出された槍の突きを見切り、天井すれすれまで飛翔してからの急降下。アクロバティックな動きは良くも悪くも注目を集め、兵士は恰好の的を串刺しにすべく槍を手元に引く。だが。
ぴたりと、宙空での停止。フェイントに釣られた兵達の槍は僅かに届かない。
「ドリル無双してやろうじゃん?」
クロトに向けて槍を突き上げた無防備な胴体を、いくつものドリルが襲った。志乃が淡く光る鎖を振り回せば、機械鎧に小さくない傷を刻んでゆく。
「さぁ……その『ガワ』ごと、粉砕してやるよ」
クロトの右腕のドリルが唸る。兵も負けじとそのスピードを以ていなすが、立て続けに繰り出された左腕のドリルまでは捌けない。兵士の鎧に風穴が空く。
「負けてられないね」
好戦的な声色は、志乃ではなくもう一つの人格に因るものだろうか。戦に疲弊しても失われぬ闘志に燃える茜色の目を細め、志乃はドリルを操った。三つ、四つと飛来するドリルを一本の槍で受け切れるはずもなく、機械鎧が砕け散る。
自分達を虐げていたオブリビオンが次々と倒れていく様を見つめる住民達の目に、光が戻り始める。奴らの意識はこちらに向いていない。――今なら。
住民達は荷物を捨て、ドリルへと手を伸ばした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エメラ・アーヴェスピア
ここが宇宙にある文明…色々と調べたい所だけれど、そんな場合じゃないわね
いいわ、手早く片付けましょう
さて、ドリルを使え、と言う事なのだけど…
普通に使っても威力は足りない…いえ、私なら解決できるわね
使える物に改造しても良いのだけど、今回はそれでは趣旨に外れるわよね
だからこれよ、『闇切り裂くは我が流星』
ドリルを砲弾として射出、敵を穿つとしましょう
私自身は盾に相手の攻撃を防御させつつ装弾よ、なにせ豊富であちらこちらに転がっているのでしょう?
もしかしたら護衛は他の同僚さんに任せた方がいいかもしれないわね…
兎も角、攻撃力は申し分ない筈よ…ロマンの方もね
さぁ、やれる事をやりましょうか
※アドリブ・絡み歓迎
茜谷・ひびき
妙な武器だがロマンなら仕方ないな
ドリルを持つ前に、輸血パックとUCを使って気合いを入れよう
それで手頃なサイズのドリルを選んだら戦闘開始だ
普通に手にもって戦うか
【怪力】で反動とか色々抑えつつ、次々に攻撃していくぜ
武器がいつもと違っても敵については普段通りだ
落ち着いて【鎧砕き】していったり、【傷口をえぐる】ように削っていくぞ
にしても猟兵が振り回しても壊れないドリルって凄いな
敵の攻撃は【野生の勘】も使いつつ見切っていこう
もし食らったなら【激痛耐性】で耐える
お前らの攻撃よりこのドリルのがすげーからな!
戦闘中は住民達にも適宜声かけ
あんた達の武器のおかげで戦えてるよ
出来れば一緒に戦いたいぜ、力を貸してくれ
ぢぅ、と空になった輸血パックが鳴った。それを丸めてポケットに突っ込むと、茜谷・ひびきは武器を物色する。――と言っても、全てドリルなのだが。
「妙な武器だが、ロマンなら仕方ないな」
ただの嗜好の類な気がしないでもないが、別世界の住人には与り知らぬ歴史があるのかもしれない。そう考えると知的好奇心を刺激されもするが、エメラ・アーヴェスピアは至って冷静に周囲の状況を分析する。
「宇宙にある文明……色々と調べたい所だけれど、そんな場合じゃないわね」
侵入者に気付いた機械鎧『ドミニオン』の着用兵士がこちらに向かってくる。その背後には、荷物を抱えたまま身動きの取れない住民達。工場を作るならば荷物の運搬も機械化出来なかったのかとつい考えてしまうのは、技術者である故か。
「彼らの事は任せても良いかしら?」
「ん、いいぜ」
ひびきは軽く返し、駆ける。激しく震える得物を怪力で抑え込みさえすれば、いつもと何ら変わらない。持ち前の勘で槍をいなすと、懐に潜り込む。突き。派手な音を立て、機械鎧の一部が剥がれ落ちた。
「猟兵が振り回しても壊れないドリルって凄いな――っと、危ねっ」
真横から別の兵士が繰り出した払いを、ドリルで受け止める。回転すら止めかねない重い斬撃に、骨が軋む音がした。だが、ひびきは耐える。胸元の刻印が、淡く輝いた。
「お前らの攻撃よりこのドリルのがすげーからな!」
「――装填完了っ。それじゃ、いくわよ」
兵のほとんどがひびきに向かった今、射線上に住民は居ない。エメラは遠慮なく、容赦なく、魔導蒸気カタパルト砲でドリルを射出した。ドリルの回転に負けじとタービンが唸り、立ち込める蒸気を切り裂いて、ドリルはひびきと鍔迫り合いを繰り広げる兵士の頭部を吹き飛ばす。
「さぁ、弾はまだまだあるのよ」
装弾と発射。何せドリルはまだまだある。間断なく撃ち出されて、兵達はエメラに近づく事さえ叶わない。
「あれは……ドリル?」
突然始まった戦闘に怯え、隠れていた住民が顔を出した。まさかと驚く声に混じる、ちょっとした期待。
「あんた達の武器のおかげで戦えてるよ」
そんな彼らにひびきは声を掛ける。機械鎧に付いた亀裂を割り広げるようにドリルの先端を叩き込めば、回路が切断されたのか、壊れた玩具のようにがちゃりと倒れて動かなくなった。
「出来れば一緒に戦いたいぜ、力を貸してくれ」
ひびきはドリルを握る腕を、見せつけるように掲げた。住民達は顔を見合わせる。
「あんな子供に戦わせて、我々は見てるだけか
……?!」
「俺は加勢するぞ!」
エメラの実年齢はさておき、外見上は年端のいかぬ若者達だ。ざわめきは次第に大きくなり、人々がドリルを手に取り始める。
「あ、あの……良かったらこれも使って」
「この小さいのでも平気?」
武器を振るうだけの力が無い者は、隠してあったドリルをかき集め始めた。おずおずと差し出されたそれを受け取り、エメラは小さく微笑む。
「攻撃力は申し分ない筈よ。……ロマンの方もね」
その時、がちゃりがちゃりと重い足音がいくつも響いた。
「敵の援軍が来たようね。さ、手早く片付けましょう」
「はい!」
増援が来た所で、この人数を抑えつけるのは容易ではない。ロマンが敵を打ち倒すのも、時間の問題だろう。
大成功
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リカルド・マスケラス
アドリブ歓迎っす
「ドリルはロマンっすねー」
せっかくだから、自分の【操縦】する宇宙バイクの先端につけてみるっすかねー。
ゴッドスピードライドで強化した宇宙バイクで敵に突進!
「そっちの鍛えた技能と、ユーベルコードの強化パワーとどっちが上か勝負っすよー!」
アルタイルはスピードよりもパワーと頑丈さ重視のバイク。先制攻撃を受けようが、そのまま加速して敵を轢き潰しながら【怪力】の突進。ついでに【属性攻撃】で電撃纏って突っ込むっすかね。その勢いで工場にドーン!っす。
敵の技能攻撃に対してパワーでゴリ押し。
「ダメ押しにドリルビームっす!」
ドリル関係なくなってきたけど、ビーム砲で【なぎ払い】もしてみたりする。
セゲル・スヴェアボルグ
槍、ドリル……なるほど、槍の先端にドリルをつける他に選択肢はあるまい。
掘る時に熱が出るので、水も必要だな。
そういえば、向こうさんも槍使いなのか。
だが、一本だけで俺の槍を止めようとは、少々無謀どいうかだな。
よし、いつもより多めに槍を鉄砲水の中に仕込んでおくとしよう。
勿論すべてドリル付きだ。
よくわからない挙動になりそうな気がするが、まぁいいだろう。
もし近づかれた時は直接やり合うだけだ。
槍裁きで後れを取るつもりはないが、直撃だけは受けないように留意しよう。
まぁどれだけ火力を増したところで、当たらなければ意味はないということを教えてやろう。
「ドリルはロマンっすねー」
宇宙バイクの先端に着いたドリルを見下ろし、狐面――リカルド・マスケラスは満足そうに呟いた。どうと唸りを上げたのはドリルか、エンジンか。徐々に近付いてくる正面の壁を見やり、僅かな逡巡すらなく加速する。
「壁の向こうに人の気配なーし。さん、にー、いち……」
ドオォォオオンッ!
粉砕された壁、良からぬ物を製造中であった機械、恐らくは綺麗に詰まれていたであろう資材。それら一切合切を吹き飛ばし、ついでに巡回中と思しき機械鎧『ドミニオン』の着用兵士一名を踏み越えて、リカルドは平然と屋内を爆走する。音を聞きつけた兵士が飛び出すが、
「そっちの鍛えた技能と、ユーベルコードの強化パワーとどっちが上か勝負っすよー!」
走る鉄塊と真っ向からぶつかり合った所で、持前の槍捌きが活かせるはずもなく。弾き飛ばされた兵士は二度、三度と跳ねて転がると、動かなくなった。
「お次はー……っと」
侵入者を包囲すべく、複数の増援が現れた。リカルドは声を張り上げる。
「頼むっす!」
「ようやく俺の出番か。さあ、お前さん達の槍捌き、見せてもらおう!」
ドリルの音すらも掻き消す龍の哄笑が、びりびりと空気を震わせる。兵達の槍が一斉に突き出される直前、リカルドは跳ぶ。ごうと音を立て、宙空を舞う彼の下を鉄砲水が通過した。
「構えもしないとは、舐められたものだ」
正確には水圧に負け、構えられないだけなのだが。膨大な水量に踏ん張り耐える兵達を眺め、セゲル・スヴェアボルグは呵々と笑う。
「まあどちらにせよ、一本だけで俺の槍を止めようとは、少々無謀というかだな――」
水音とは違う重低音が響いた。ドリルだ。水流に紛れ、先端がドリルになった槍が幾本も突き進んでゆく。
瀑布の如き水の音、回転する工具の音、鎧がひしゃげる金属の音、けたたましい合唱が過ぎ去った頃、残った兵士はたった二人だった。それとも、二人も残ったと言うべきか。リカルドはバイクを傾けると、なお槍を構えて戦う意思を見せた兵の片割れに発射口を向ける。
「ダメ押しにドリルビームっす!」
最早ドリルが関係ない事に当人も気付きつつ、放たれたビーム砲は螺旋を描いて機械鎧の中央に着弾した。しゅうしゅうと煙を立てながら、兵士はうつ伏せに倒れる。
「あとはお前さんだけだが……」
十分に重さの乗った槍の穂が、セゲルに向いた。
「どれだけ火力を増したところで、当たらなければ意味はない」
槍の先に着けられたドリルががなり立てても、セゲルの切っ先は微塵もぶれない。決して取り回しの良い武器でないにも関わらず、兵士のそれよりも先に、セゲルは敵の胸を突いた。めきり。鎧の表面が砕けてドリルは容易く兵士の身体に潜り、背に穴を開けた。
「あれ、本当に同じドリルか……?」
「流石にあんな事は出来ないけど……でも、俺達だって」
陰から様子を伺っていた住民達は、猟兵達に希望を見出した。各々がドリルを手に取ると、誰からともなく立ち上がった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィランサ・ロセウス
ドリルで敵を掘り放題と聞いて!
え?うんうん、目的はこれで戦う姿を見せてみんなを勇気づける事だよね!
大丈夫大丈夫、わかってますよー?
いい感じの大きさのドリルを拝借して、
私のジャイアントシリンジに針(もはや杭)の代わりに取り付けるわ
資材や建物の陰のような[地形を利用]して[目立たない]ようにしながら、見張りの兵士に近づくわ
充分に近づいた所で咎力封じを放って動きを拘束!
それからこのドリルで風通しを良くしてあげるわね!
はーい、痛かったら手を挙げてくださいねー♥️
もちろん挙げてもやめないけどね♥️
戦闘になった場合は[早業][武器受け]で攻撃を防いで、反撃でUC
拘束した敵を(以下略)
施設内の至る所で猟兵が暴れ、既に機械鎧『ドミニオン』の着用兵士達は厳戒態勢だ。毎度壁をぶち破って入ってくる彼らは、侵入者と呼ぶには堂々とし過ぎている。
無意識のうちに猟兵は派手に暴れるものという先入観を抱いていたのだろう。だからこそ、倉庫の前で働く住民達を見張る兵士は、すぐ近くにいるフィランサ・ロセウスの気配に気付かない。
(「ドリルで敵を掘り放題と聞いて!」)
抜き足、差し足。いくら音を立てない足運びをしても、胸の高鳴りが聞こえてしまうような気がして、フィランサはふるりと身体を震わせた。
「――え? うんうん、目的はこれで戦う姿を見せてみんなを勇気づける事だよね! 大丈夫大丈夫、わかってますよー……?」
誰に聞かせるでもなく呟く彼女の目は完全に座っている。熱い視線を送る先、兵士の姿が射程に入ったと確信するなり、フィランサは拘束具を投げつけた。
ぎちり。手枷に猿轡に拘束用ロープが無機質な身体にがっちりと絡み、槍がからんと床に転がる。
「はーい、痛かったら手を挙げてくださいねー♥️」
取り出されたのは注射器だが、異様なのはそのサイズ。フィランサ自身も抱きかかえるように構えたそれにはドリルが取り付けられており、注射器と言うより一言で言い表すならばパイルバンカーだ。
「――もちろん、挙げてもやめないけどね?」
そもそも拘束されていては挙げる手も無いわけだが。兵士が最期に見たのは、新しい玩具を与えられた子供のような、無邪気な少女の笑顔だった。
成功
🔵🔵🔴
灯火・紅咲
つまりはー、住民さんたちを騙して上手く乗せちゃえばいいんですねぇ?
そういうのもボク、得意なんですよぉ……うぇひひひ!
見ず知らずの誰かよりもぉ……お仲間が立ち上がる光景の方がその気になりますよねぇ?
こっそり忍び込みましたらー、ひっそり住人の方から【シリンジワイヤー】で【吸血】!
血をゲットしたならば、その方に変身!
ドリルをこそりと装備して、兵士さんの前でわざとらしく疲れた振り
そ咎めるためにやってきたらガリガリーっと【だまし討ち】!
あとはてきとーに他の住人さんたちを煽って、反撃ですぅ!
あ、住民たちが戦い始めたら、今度は兵士さんに化けて内からだまし討ちですよぉ
【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】
水鏡・怜悧
詠唱改変省略可
人格:ロキ
浮島は面白いものが多いですね
平和になったらゆっくり観光したいところです
305本のUDC触手に別々のドリルを装着
「皆さんのロマン、魅せて頂きましょう」
呪詛は呪属性の触手が装備したドリルで穿ち砕きます
「皆さんのロマンならきっと実体がないものも穿てます」
複数の触手でカバーしあってカウンターを打たせないようにし、ハッキングは触手経由でドリルから放電して潰します
ドリルで鎧を貫通させたら触手を通してドリル先端から各属性で攻撃します
雷属性は先端から放電し、火属性は内部で爆発させ、氷属性は内側から凍らせます
「金属鎧を貫通しても先端が傷まないとは…ロマンだけでなく技術も中々のものですね」
(「つまりはー、住民さんたちを騙して上手く乗せちゃえばいいんですねぇ?」)
いたずらっ子のような笑みを浮かべ、灯火・紅咲はそっと物陰から顔を出した。
「そういうのもボク、得意なんですよぉ……うぇひひひ!」
たっぷりとしたスクールセーターの袖からワイヤーを伸ばし、投擲。手応えを感じた彼女は、ぺろりと唇を舐めた。
「浮島は面白いものが多いですね。平和になったらゆっくり観光したいところです」
さして珍しくないものであっても、地上のそれとは何処となく違う。そんな些細な発見に深碧の瞳を輝かせ、水鏡・怜悧は近い未来に思いを馳せた。
「その為には、まず――」
この島の住民達を解放しなければ。怜悧の眼前に広がる倉庫では、多くの人々が働かされていた。怜悧の存在に気付いた機械鎧『ドミニオン』の着用兵士達が、槍を構える。
「お願いしますね、触手ちゃん」
小柄な少年を中心にぶわりと広がる、触手、触手、触手。その全てが異なるドリルを装着している光景は圧倒的だ。あんぐりと口を開けて見上げている住民も少なくない。
「皆さんのロマン、魅せて頂きましょう」
がちゃりと機械鎧が音を立て、兵士が突進する。穂先が纏う黒い靄は呪詛の類だろうか。同じように禍々しい気を放つ触手がドリルを振るい、槍を跳ね返す。その触手を切り落とさんと槍を薙いだ兵士を、冷気を撒き散らす触手で叩き伏せ、背後から接近する兵士を帯電する触手がドリルで貫いた。
「皆さんのロマンなら、実体がないものですら穿てます」
住民の蜂起まであと一押しだ。そんな時、一人の女性がふらりと前に出た。兵士が彼女を突き飛ばそうと、右腕を伸ばす。
「邪魔だ。――ッ」
「触らないで」
ヂュイン。短く鳴いたドリルが、兵士の掌を砕いた。女性は凛と前を見据え、叫ぶ。
「私も戦うわ! ここは、私達の島なのだから!」
一瞬の静寂の後、そうだ、と誰かが言った。オブリビオンにくれてやるわけにはいかない、と誰かが奥歯を噛んだ。
「「「戦おう!」」」
住民達の反撃が始まった。それぞれが手にドリルを持ち、触手の援護を受けながらではあるが、着実に兵士達を追い詰める。
「お上手ですね」
正体を知っている怜悧が女性に声を掛ければ、彼女はいたずらが成功した子供のような笑みを浮かべ、桃色の髪の少女へと姿を戻した。
「うぇひっ、褒められると照れちゃいますよぅ。見ず知らずの誰かよりもぉ……お仲間が立ち上がる光景の方がその気になりますよねぇ?」
住民を扇動した彼女の次の標的はオブリビオンだ。先程敵を穿ったドリルの先に、つ、と舌を這わせる。
「今度は兵士さんに化けて内からだまし討ち……なんて、いかがでしょお?」
あれこれと策を巡らせ、紅咲はぴょこぴょこと飛び跳ねた。まだまだ血が見れると思うと、にんまりと顔が緩む。
「わくわくしちゃいますねぇ」
住民は蜂起した。オブリビオン軍団の崩壊まで、あと少し。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヒルデガルト・アオスライセン
その過酷な生活も終わりを告げます
貴方たちが望めば、今日にでも
この武器に思い入れはありません
ですが使いこなしてみせましょう、それが戦士ですので
ハッキングは恐らく私には効果がない
呪詛に対し、オーラ防御と拠点防御で防ぎ
ドミニオン兵達の敵視を稼いで敵を一か所に搔き集め
影の追跡者にトンネル掘りを使わせて、地中から破壊します
削岩兵器は、大地を割ってこそ
閃光瓶を投げつけ、乱戦に突入
私、追跡者、身代わり、光の錯覚で生み出した分身
複数の偽と真を入れ乱れさせ
半端に反撃を取られぬよう一体一体を必殺の一撃で仕留めていき
生存していれば、追跡者達と合体技
やたら輝かせた破魔のドリルで工場ごと兵士達を光に包んで粉砕します
「その過酷な生活も終わりを告げます! 貴方たちが望めば、今日にでも!」
蜂起した住民達の先頭に立ち、ヒルデガルト・アオスライセンは声を上げていた。そこかしこで怒号と歓声、ドリルの音が響き、もうすぐこの工場は陥落する。頃合いか。
「そろそろ外へ避難しましょう。殿は私が務めますわ」
「お一人で?! まだオブリビオンの数は……」
そう返してから、思い直す。猟兵達の強さは重々承知していた。「勝利だ」「帰れる」と口々に叫びながら駆けてゆく住民の背を見送り、最後の大仕事だとヒルデガルトは残党へと向き直る。
「この武器に思い入れはありません。ですが――」
苦痛を味わった住民達に代わり、自分がここを破壊する。決意と共に、機械鎧『ドミニオン』の着用兵士の群れへと飛び込んだ。
「使いこなしてみせましょう」
それが戦士だと気を吐き、ドリルを起動する。淀んだ空気の塊のように圧し掛かる呪詛を纏うオーラで散らし、時折身代わり聖者と入れ替わりながら、鋭い突きを繰り出した。狙うは一撃必殺、カウンターなど許さない。
ぴし、と床に亀裂が走ったのを彼女は見逃さなかった。跳躍して天窓を破り、真下に閃光瓶を投げ落とす。
目が眩む光が放たれると同時、ズン、と床が落ちた。召喚した影の追跡者にドリルを持たせ、地中からオブリビオンを追わせたのだ。乱戦に見せかけて彼女に一箇所におびき寄せられた兵達は、見事に崩落に巻き込まれた。
「粉砕します」
破魔の力を宿らせ燦然と輝くドリルを、ヒルデガルトは力いっぱい振り下ろした。閃光と轟音が辺りを満たし、彼女の宣言通りにオブリビオン軍団は工場諸共木端微塵に打ち砕かれた。――その様は、まるで神の裁きのようだったと住民達は後に語る。
こうしてラグランジュポイントの住民達は、オブリビオンの支配から解放された。
余談だが、この件に因ってここの住民達はフォーティナイナーズに限らず猟兵達に心酔するようになったそうだ。
成功
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