●旅路の果てに
がたりごとり。
星空の下、汽車は行く。
暖かな色の灯りに満ちた座席車にて。
向かい合わせの席に一人ぽつりと腰掛けるは、ロングコヲトを纏った男。
年の頃は三十くらいだろうか。ぼんやりと窓の外を見つめていた彼は、胸元のペンダント――ロケットに収めた家族写真へ微笑んだ。
「朝のうちには帰るから、待っていてね」
帝都、明け方。
夜行列車を降りた男が、必死の形相で駆けている。
家族の下へ帰るためでなく。
『バウ! ガウゥ!! ワウ!!!』
己を追いかける影朧どもの牙からどうにかして逃れるために。
「どう、して……」
自分が奴らに狙われたのだろうか。
その問いの答えを、男が知ることは永久に無い。
がぶり。
追い付かれ、喉笛を食い千切られて。
男はどさりと身を横たえ、生涯を終える。
家族の下へと帰れぬままに。
血溜まりが広がっていく。
亡骸に食らい付く影朧の群れと、その様を穏やかに見守る影が一匹。
――おかえりなさい。
――ぼく、まっていたよ。
――これからは、ずうっといっしょだよ。
●旅路を共に
「それが今回の事件の顛末よ。でも、まだ間に合うわ。助けないと、ね」
予知の光景を語り終え、グリモア猟兵のレイラ・アストン(f11422)は青い瞳に仲間たちを映す。
少女曰く。
帝都にて一人の男性が、影朧に襲われ殺されんとしているという。
被害者が影朧に目を付けられた所以は不明、面識がある様子も無かったというが。
「影朧からは何らかの強い“想い”を感じたの。普通に退治してしまうのであればきっと、気にする必要も無いのでしょうけれど」
もし猟兵たちが、男性だけでなく影朧をも救いたいと望むのであれば。
その“想い”の正体を知り、心に添う必要があるだろう。
「もしかしたら被害者の男性からも、“想い”のヒントが得られるかもしれないわね」
彼は夜行列車で何処からか帝都へと向かい、列車を降りた後に影朧の襲撃を受ける。
つまりは猟兵たちが同乗していれば、より事件解決のために動きやすくなるだろうとレイラは語る。
影朧の“想い”を突き止めんと、動いてみるも良し。
男性を確実に保護できるよう、見守るも良し。
勿論、帝都に到着するまでの時間を、好きに過ごしても構わないだろう。
「具体的に何をするかは皆様にお任せするわ。せめて……どうか良い旅を」
藤影有
お世話になっております。藤影有です。
在るべき所へ帰れますよう、猟兵の皆様の力をお貸しいただけますと幸いです。
第一章は【日常パート】、第二章は【集団戦】、第三章は【ボス戦】です。
心情寄りの内容を想定しています。
思うところありましたら、存分にどうぞ。
●補足
第一章は、夜行列車の旅。
影朧の抱える“想い”の正体のヒントが見つかるやもしれません。
狙われている男性と接触するなり、見守るなり。お好きにお過ごしください。
(特に調査はせずにのんびり過ごしても問題ありません)
第二章は集団戦、男性が襲撃を受けるシーンから開始します。
男性の身の安全を確保しつつ、影朧の群れを蹴散らしてください。
なお、集団戦の敵は理性に乏しいため、転生は見込めません。
第三章のボス戦では、姿を現したボスの説得・あるいは交戦となります。
説得に成功すれば影朧は転生へと導かれて行くでしょう。
また、ボスはその場から動かず、猟兵に攻撃を行うことはほぼありません。
その代わり、こちらの攻撃を通さんとするならば相応の工夫が必要となります。
それでは、皆様のプレイング楽しみにお待ちしております。
第1章 日常
『夜汽車に揺られて』
|
POW : 食堂車で過ごす
SPD : 座席車で過ごす
WIZ : 展望車で過ごす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●旅路
がたりごとり。
星空の下、汽車は行く。
食堂車からはふわりと美味そうな匂い。
銀のナイフとフォークがきらりと光る。
ハイカラな洋食か、はたまた甘い菓子を嗜もうか?
暖かな色の灯りに満ちた座席車に、人はまばら。
談笑する者、寝息を立てる者。
皆、何処から来て何処へ行くのだろう。
展望車は寛ぎの空間だ。
テーブルを囲むように設置された、柔らかな座席に身を預け。
窓の外を見ればほら、其処には満天の星空が。
終点まではまだ遠く、夜が明けるには早すぎる。
さて、どう過ごしたものだろう?
麻海・リィフ
アドリブ、即興連携歓迎
展望車にて星空を眺める
星だ星座だのお話は疎いけれど、天の宝石箱のようなこの光景には素直に魅入る事が出来る
真鍮色の絡繰小箱を念動力で掌上に手慰み
家族…か…
私の家族は今も浮かれポンチで、私の不在も気付かず乱痴気騒ぎしてるんだろうけど(汗)
待ってる人が居るんでしょう?貴方には
ならちゃんと帰らなきゃダメよ…
口にせず語り、件の男性を遠巻きに見て
或いは…帰る場所があるから狙われた?
当て推量に自ら呆れ
そういうのは賢い"仲間"に任せて、私は身を使いましょう…
●
展望車にて。
ふかふかの椅子に身を預け、麻海・リィフ(f23910)はひとり星空に魅入られる。
少女の心を惹き付けるに、星や星座のややこしい知は不要。
ただ、深い宵色に散りばめられた輝きが全て。
まるで天の宝石箱のよう。
ほう、と感嘆の溜息を零し、リィフは手慰みにしていた絡繰小箱に視線を落とす。
思えばそれと出会った日から、己の人生は転がり出した。
(「家族……か」)
田舎の成金子爵の末娘として過ごした平穏な、或いは退屈な日々。
その全てに別れを告げて、深緑の後光に背を押されるがまま、猟兵として東へ西へ。
残してきた家族は、今頃どうしているだろう。
(「まあ、今も浮かれポンチで、私の不在も気付かず乱痴気騒ぎしてるんだろうけど」)
再び零れた溜息は、呆れ混じりのものだった。
絡繰小箱の真鍮色に、展望車の扉が映る。
リィフが扉へ視線を移せば、小窓から向こう側――座席車の様子が見て取れる。
件の男性は、ぼんやりと窓の外を見つめて動かない。
彼もまた、家族のことを考えているのだろうか。
(「待ってる人が居るんでしょう? 貴方には。なら、ちゃんと帰らなきゃダメよ……」)
心の内での呟きに乗じてか、ふと浮かんだ推測がひとつ。
(「……帰る場所があるから、狙われた?」)
真偽の程は、まだ分からない。
解明は仲間たちの成果を待とうと結論付け、少女はいましばらく星巡りを楽しむことにした。
大成功
🔵🔵🔵
辻・莉桜
夜汽車に乗るのは滅多にないことで
少し浮かれてしまっているけれども
まずは対象の男性を探して相席をお願いしようかしら
少しだけ、相席をよろしいですか
帝都に入るまで緊張してしまって
そんな口実で座席に座って何気なくお話を
帝都へ向かわれるところですか
それとも戻るところですか
お待ちになっている方はいらっしゃるのかしら
男性が話してくださればいいのだけど
私は…
帝都で私を待つ人はいなくなってしまったけれど戻らないと
一人というのは緊張しますね
良い旅を、と笑みを浮かべて席を立ちます
あとは食堂車でオムライスでもいただこうかしら
【コミュ力】【情報収集】使用
アドリブ、絡み歓迎です
御園・桜花
「想いがあるなら、それは転生の切っ掛けになるのではないでしょうか。掬い上げることができるなら、私は手を伸ばしたいのです」
・座席車で過ごす(SPD)
「ええ、私は懐かしい人に会いに行こうと思ったので。よろしかったらお茶をどうぞ。温まりますよ?」
ロングコヲトでロケットを所持する男性を探す
該当者が居たら近づいて世間話
保温水筒に入れたお茶を振舞い、どうしてこの列車に乗ったかそれとなく世間話して聞き出す
1人になってから
「あの方は帰りたい人、一家の大黒柱に当たる人。その人を望むのは…迎えを待つ人、庇護を望む人ではないでしょうか。あの日外へ歩きだせた私、そのまま喪われた貴方…私達が迎えに行ってあげなければ…」
●
(「想いがあるなら、それは転生の切っ掛けになるのではないでしょうか」)
掬い上げることができるのならば、自分は手を伸ばしたい。
己の心に従って、その切欠を掴むべく。
御園・桜花(f23155)はロングコヲトの男へと声掛ける。
「あら、可愛らしい。お子さんですか?」
開かれたロケットの中身について問うてみれば、彼は優しく笑んで答えてくれる。
「そうなんです。この写真を撮ったのは、一年程前なのですがね」
四歳か五歳程のやんちゃそうな男の子と、桃色の産着に包まれた女の子。
二人の子供たちと妻と共に、写る彼もまた幸せそうに笑っている。
「そう……なら、もうだいぶ大きくなったでしょう。よろしければ、お話聞かせてくださいませんか?」
桜花が申し出た、丁度そこへ。
「あの……私も相席、よろしいですか? 帝都に入るまで緊張してしまって、誰かとお話したくて」
届いた声の主――辻・莉桜(f23327)の姿を認め、桜花は僅かに目を見開く。
二人の桜の精は、とある世界のビルディングにて顔を合わせたことがあったから。
「ええ、是非。僕も一人での長旅に少々飽いていたところでして」
勧められるままに席に収まりつつ、桜花と莉桜は束の間視線を合わせ――小さく頷き合うに留める。
互いの目的は同じであろう。
ならば今は、穏やかなひと時を共にせんと。
桜花の振舞う茶の良い香りに乗せ、男の話も弾む弾む。
どうにも妻も子も愛おしくて仕方がないらしい。
「ふふ。これからご家族のところへお帰りに? それとも今からお出かけですか?」
莉桜が言葉を紡げば、男は何故だか気まずそうにぽりぽりと頭を掻いて。
「これから帰るんです。……実は、本当なら今頃、とっくに家に着いていたはずでして」
何でも予定していた列車に乗り遅れ、帰宅がずれこんでしまったのだという。
待たせてしまって申し訳ないと男が顔を覆う間に、猟兵たちは再び視線を合わせる。
予知で判明している影朧の様子と照らし合わせると、もしかしたら。
「ところで、お嬢さん方もこれから帝都へお帰りに?」
「いいえ、私は懐かしい人に会いに行こうと」
不意に投げかけられた男からの問いに、桜花の視線は宙を泳ぐ。
「私は……帝都に戻る用件があって。一人というのは緊張しますね」
莉桜の答えもまた、やわらかな笑みに包んで。
ひとしきり話し込んだのち、互いの良き旅路を祈り。
旅人たちは別れ、ひとりぼんやりと物思い。
(「あの方は帰りたい人、一家の大黒柱に当たる人。その人を望むのは」)
男の話を反芻し、桜花は決意を新たにする。
(「あの日外へ歩きだせた私、そのまま喪われた貴方……私達が」)
迎えに行ってあげなければ、と。
(「帝都で私を待つ人は、いなくなってしまったけれど」)
莉桜の心を現へ引き戻したのは、食堂車からの良い香り。
きゅう、とお腹が小さく鳴る。
「オムライスでもいただこうかしら」
帰りを待つ者のため。
帰らんとする者のため。
帝都到着まで、あと――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
薙殻字・壽綯
SPD
護衛は……私には、向いて、いません。……ですが、裏方ならば手助けを行えると…いえ、行います。助けます。……あまりじろじろと見るのもいけません、ね。男性が自然と視界に入る席があれば、そこに座ります…
不審に思われない程度に…彼だけでなく、車両内の観察を行います。……外の景色も見ておきましょうか
どこか面影があれば、衝動的に声をかけてしまう……それは仕方がないことだと思います
……衝動のあまりに人を間違えたら笑われた。だから笑い返して笑い合う。そのように…じゃれ合いができたら、殺し殺されなんて起きないのでしょうね
再開の場は、喜ばしいもので……あってほしい、です。救われないのは、酷なことですから…
杼糸・絡新婦
夜の列車もなかなか趣があるもんで、
こんばんはと、
からくり人形のサイギョウもご挨拶しつつ
男に話しかけてみます。
他の猟兵が話してるんなら、
会話の内容がかぶらないよう気をつけながら会話しつつ
【情報収集】
ご旅行か何かかい?
お帰りを待ってくれもんがおるのは嬉しいもんやね、
長い間離れておったん?
何人家族か聞いてもええやろか?
へえ、ほな家族さんの分も含めて飴ちゃんどうぞ。
適当なところで切り上げて、あとはのんびり、その時まで過ごします。
●
がたりごとり。
優しく揺れる車両に抱かれ、うつらうつらし始める乗客もちらほら。
薙殻字・壽綯(f23709)がちらりと様子を伺えば、ロングコヲトの男もこくりと船を漕いでいた。
(「護衛は……私には、向いて、いません。……ですが」)
ならば裏方として仲間の手助けを行わんと、壽綯は座席車の一角に位置取っている。
時おり車両内や窓の外を観察するように視線を移し、さながら観光目的であるかのような振る舞いで。
壽綯はただ静かに、救うべき対象を見守り続ける。
二人の桜の精と男が言葉を交わして別れてから、数刻。
しばし続いていた穏やかな時に変化を齎したのは。
「あいたっ!」
ごつりと窓枠に頭をぶつけた男の悲鳴と。
「おやまぁ……怪我は?」
人形遣いの青年――杼糸・絡新婦(f01494)が彼を気遣う声であった。
「ええ、大丈夫。ありがとう」
頭を摩りながら顔を上げた男は、少し驚いたように目を見開く。
絡新婦の操るからくり人形・サイギョウが、ちょうど視線の先にいたからだ。
こんばんは。ほんとうに、いたくない?
狩衣を着た狐人が、まるで生きているかのように男の頭に手を差し伸べて。
いたいの、いたいの、とんでいけー。
「お陰様で痛くないよ。へぇ……からくり。うちの子たちが喜びそうだなぁ」
「おや、お子さんがおるん?」
絡新婦が問えば、男は境遇を明かしてくれる。
妻と子供二人の下へと帰る道中であること。
予定していた列車を乗り過ごしてしまい、帰宅予定が遅れてしまっていること――。
「へえ、お帰りを待ってくれるもんがおるのは嬉しいもんやね。ほな家族さんの分も含めて飴ちゃんどうぞ」
「これはこれは」
男は絡新婦に丁寧に頭を下げる。
待たせてしまった家族に、良い旅の土産ができたと続けながら。
(「彼は……家族を待たせてしまっていることを、特に気に掛けている? ……そして」)
予知で確認できた限り、影朧は何者かを“ずっと待っていた”という。
壽綯はひとり、思考を巡らせる。
(「どこか面影があれば、衝動的に声をかけてしまう……それは仕方がないことだと思います。……衝動のあまりに人を間違えたら笑われた。だから笑い返して笑い合う。そのように……じゃれ合いができたら」)
きっと殺し殺されなんて、起きやしないだろうに。
巡る思考は、いつしか願いへ。
再会の場はどうか、喜ばしいものであってほしいと。
(「救われないのは、酷なことですから……」)
かしゃり。
難しい顔をする壽綯を現に引き戻すは、いつの間にやら向かいの席に着いて手を振るからくり人形と。
「飴ちゃん、食べる?」
やんわりと笑む絡新婦の声。
がたりごとり。
列車は夜を駆け続ける。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ファン・ティンタン
【SPD】待ち人は、
予知から汲み取れる影朧の様子、どうにも気にかかるね
何か動物に絡む背景があるとすれば……ふむ
こんな手はどうだろうね
【異心転身】にて、自旅団のボス猫に変身
※体重10kg程度のメインクーン種、右目閉じは変身しても継続
折を見て被害者の男性に接触する
動物にまつわる過去があるようならば、擦り寄る動物の姿に何か思い出すこともあるんじゃないかな
列車旅はノスタルジーを醸す良い条件だ
側に見知る人間がいないこんな場所でなら、口を衝いて出る独り言の一つや二つもあるかも知れない
収穫が無ければ無いなりに、保護対象を庇うポジション取りとしては十分
後の戦闘に備え、狭い【地形の利用】を考慮した位置取りで待機
●
今宵の旅路は土産話にもってこいだ。
家族の顔を想い、口元を緩めた男の前の席に。
にゃあ。
「うん?」
何時からいたのだろう。
何処からやってきたのだろう。
大きな猫がちょこんと座っている。
にゃあ。
一声鳴いて、猫は男の隣の席にぴょいと跳んでくる。
「おやおや、懐こいねぇ。誰の猫だろう? 撫でてもいいかい?」
きっと他の乗客のところの子であろうと納得し、男はそおっと猫の豊かな毛並みに手を伸ばす。
不思議な猫だ。
深い茶色の長毛、どうしてか片眼は閉じたまま。大きな体は10kg程はあるだろうか。
時おり、山猫の如く先の反った耳がぴくりと動く。
人慣れしているようでありながら、野良独特の猛々しい気品も持ち合わせている。
開かれた赤い色が、じっとこちらを覗き込んで――。
「ああ、これは駄目だよ」
てしてしとじゃれつく前足を制して、男は猫にロケットを開いてみせる。
「僕の大事な家族の写真が入ってるんだから。……猫かぁ。子猫を家族に迎えてみようかなぁ。動物を飼ったことはないけれど」
君はどう思う? 男が問うてみれば。
「……あれ」
にゃあ。
猫はするりと席と席の隙間に逃げ込んでしまった。
「なるほど。猫は気まま、というのは本当らしいね」
(「彼には特別、動物に絡む背景は無さそうか。それが明確にできたことは、収穫と言っていいかな」)
心の内で猫――ファン・ティンタン(f07547)は、箇条書きに思い浮かべた可能性のひとつにチェックマークを付ける。
ユーベルコードで化身したこのメインクーンの肉体は、護衛対象に接近するポジション取りには丁度いい。
「気が向いたら、また出ておいで」
男はファンを全く警戒することなく、呑気な様子を見せているのだから。
(「列車旅のノスタルジーも影響しているのかな」)
時が来るまでは、この姿のまま待機しておこうと。
開いた方の目をすっと細め、ファンは座席の陰にてひとり忍ぶ。
大成功
🔵🔵🔵
宇迦野・兵十
さてさて、待ち人来るは良しか悪しか。
今宵の因果はどんなもんかね。
へらへらと笑いながら、【コミュ力】で件の男に声をかけるよ。
「やぁ、こんばんは。そこ空いてるかい?」
了解を得たようなら対面の椅子に腰かけて、あれこれと世間話でも。
機を見て、首飾りの事を聞いてみようか。
「さっきちらりと見えたんだがね。
その首飾り、何か大事なものでも入ってるのかい?
随分と楽しそうに眺めてたけど」
【コミュ力/誘惑】で上手く家族の事、影朧と関係しそうな事を聞き出せればいいんだが。
ああ、自分の事は田舎から出てきた遊び人とでも説明するよ。
「久々に今度帰れる事になった。家族とも会えそうだ」なんて感じでね?
[アドリブ歓迎]
●
待ち人来るは良しか悪しか。
はてさて、今宵の因果は――。
「やぁ、こんばんは。そこ空いてるかい?」
へらりと笑む長身の青年――宇迦野・兵十(f13898)の申し出を、男は快く受け入れてくれる。
「どうぞどうぞ。……もしや、長旅に退屈して?」
「へぇ、お見通しか。ちと誰かと話したい気分でね」
言葉に巧みに乗る形で和やかな空気を生み出して、兵十はするりと男との距離を縮めていく。
「そうそう、さっきちらりと見えたんだがね。その首飾り、何か大事なものでも入ってるのかい?」
随分と楽しそうに眺めていたから、と男に話を振ってみれば。
「おや……顔、緩んでましたかね?」
などとはにかんで、ロケットを開いて見せてくれる。
妻と二人の子供、自分の帰りを待っていてくれる家族は何より大事な宝物。
帰りの予定が遅れてしまい、待たせてしまって申し訳なく思う。
男は兵十に語る内容は、今宵幾度か繰り返されたのとおんなじもの。
それだけ彼にとって、強い想いであるのだろう。
「そうだったのかい。分かるよ、早く会いたいだろう?」
「ええ、顔を見たくて。ついつい何度も写真を眺めてしまって……もしかして、お兄さんも?」
「ああ、久々に今度帰れる事になって。家族とも会えそうでね」
旅は道連れ、世は情け。
今宵の出会いは、楽しき時となりて。
大成功
🔵🔵🔵
リンセ・ノーチェ
アドリブ歓迎
サヴァー(f02271)さんと
「この世界の星空も綺麗ですね」
彼女に倣い列車の音も楽しみ
彼女が話す事は前にも聞いたけどちゃんと聞く
「サヴァーさん、律儀なんですね」って微笑
「僕だって彼とだけ遊ぶ事もありますよ」
秘密は猫と魔法の領域
ある方がきっと皆綺麗だよ
「影隴は…何を想っているんだろう」
僕達の想いは同じ
座席車の男性の傍
列車の動きによろけ傍に倒れ込む振りで話す切欠を作る
「すみません…あの、僕の―猫の毛とか、大丈夫ですか」
【優しさ】籠めて謝ってそこから話を膨らませ
こっそりUCで精霊の助言を受けつつ色んな話
初対面で僕が色々話せるのは旅の力かも
影隴は獣声で吠えたらしいけど
動物と繋がりあるかな…
サヴァー・リェス
アドリブ歓迎
リンセ(f01331)と
展望車で空眺め耳澄ます
こととん…
「車の音も…優しい」
先日知った私の罪の事…改めて話す
その時共に赴き戦ってくれた森の人は今いない
その時の私をリンセの澄む瞳に映したくなかったから誘わなかった
けれど律儀と笑む彼の笑みが…沁み渡る
「…ありがとう」
影隴の想いを探して座席車の男性の傍へ
リンセの作る切欠が不自然に取られぬ様に
男性の心少し緩めるのみの【誘惑】【催眠術】を
「…動物は、お好き?」
飼っていたり、したかしらと、話を繋いで…
男性が何か思い出しやすい様にその心の【封印を解く】
リンセも私も…世間話は、余り得意で、ないけれど
【優しさ】籠め彼の帰途を喜んで、…暫しの旅を楽しむ
●
展望車の一角にて、穏やかな時の流れに身を任せる影がふたつ。
「この世界の星空も綺麗ですね」
草と菫。大地に芽吹く色を映した両の瞳を和らげて、リンセ・ノーチェ(f01331)が微笑めば。
「ええ、それに」
サヴァー・リェス(f02271)はふわりと儚げな笑みで答え、言葉を重ねる。
「車の音も……優しい」
こととん、かたり。
音に合わせて車両が揺れる。
座席を通して伝わる心地はまるで、子を抱く揺籠のようで。
だからこそ。
「……ねえ、リンセ」
女性は少年に伝えたくなったのかもしれない。
己の罪のことを、今いちど。
サヴァーが罪を自覚した日、共に戦場に在った男はこの場にいない。
その日はリンセもよく知る彼だけを誘ったがゆえだ。
「リンセの澄む瞳に私を映したくなかったから、誘わなかったの」
事実、罪と直面した彼女は一時、普段とは掛け離れた状態に陥った。
そんな姿を、この子には。
月を想わせる銀の瞳を伏せた女性を。
「サヴァーさん、律儀なんですね」
小さな少年猫は笑顔を以て包みこむ。
いつもの、優しくて真っすぐな表情で。
「僕だって彼とだけ遊ぶ事もありますよ」
秘密は猫と魔法の領域だから。
ある方がきっと、皆綺麗だ。
「……ありがとう」
こととん、かたり。
想いを乗せて、夜汽車は走る。
*****
「――わわっ!」
「おっと! 君、大丈夫かい?」
列車の揺れに攫われるかのように倒れ込んできたリンセを、ロングコヲトの男が逞しい腕で受け止める。
「ありがとうございます。すみません……あの、僕の――猫の毛とか、大丈夫ですか」
「猫? 平気だよ。ああ、君。ケットシーさんなんだね。お会いするのは初めてだなあ」
影朧の転生という概念が一般化しているこの世界では、別世界の種族の存在も知られている。
しかし、男にとっては物珍しいようで。
「やっぱり、普通の猫さんと似通った体質なのかな? ほら、例えばあそこに……」
男が指差す座席の隙間を覗き込めば、茶色の豊かな毛玉がひとつ。
思わずきょとりとするリンセに、こそりと精霊が耳打ちする――毛玉の正体は、猟兵仲間が化けたものであると。
どうやら、動物に関する方面で情報収集を試みた者が他にもいたらしい。
「……動物は、お好き?」
連れのリンセを迎えに来た風に、サヴァーもまた話に加わる。
「ええ、どの子も可愛らしいですよねえ」
「もしかして……飼っていたり、したかしら」
男の心の奥底に仕舞われた記憶などは無いだろうか。
寄り添ってそっと照らすように、言葉を紡いで訪ねてみるが。
「いいえ。僕の親は動物が苦手でしてね」
今までには飼ったことは無い。
男の答えに、嘘偽りは感じ取れなかった。
「ですが、初めて家族に迎えてみようかとも思ってまして」
妻と子供たちも喜んでくれるだろうか。
リンセとサヴァーに語る男の表情は、父親のそれであった。
男と別れ、また少年猫と女性の二人きり。
展望車の席に戻って、うーんと軽く伸びをして。
「動物繋がりではないのかな……ふぅ、緊張した」
「リンセも私も……世間話は、余り得意で、ないけれど」
それでも話せたのは、旅の力であろうかと。
サヴァーとリンセが微笑みを交わせば。
こととん、かたり。
また優しく車両が揺れた。
終着駅まで今しばし。
影朧の想いは、今いずこ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御剣・刀也
POW行動
こういう所の食事は景色を見ながら楽しめるのがありがたいよな
夜景を見ながらのんびり、食事を楽しませてもらおうか
夜景を見ながら食堂車で月見うどんを注文して待っている間は外の景色を眺める
うどんが来たらそれをすすりつつ
(永遠に散らない桜。か。花見酒がいつでも楽しめるのはありがたいが、俺にはどうも、永遠って所が好きになれないな。命は限りがある。だから、その限りある時間の中で己というものを刻もうと輝く。その輝きが、きれいだって思うからかもな)
などと考える
●
「お待たせ致しました」
ウェイターの声に、御剣・刀也(f00225)は窓の外から視線を外す。
目の前に配膳されるは、ほかほかと湯気を立てる月見うどん。
葱と蒲鉾が添えられ、半熟卵は黄金の黄身が美しく。鰹出汁の香りがふわりと漂い、青年の食欲を刺激する。
たまにはこうしてのんびりと食事を楽しむひと時も乙な物だ。
両手を合わせて瞑目の後、刀也はうどんを豪快にすする。
しっかりとコシのある麺が喉を通り、身体を芯から温めてくれる。
新月近く冬空に星がよく映える今宵、月の灯りは青年が独り占めだ。
(「永遠に散らない桜。か。花見酒がいつでも楽しめるのはありがたいが」)
自分はどうにも“永遠”は好かぬと、刀也はひとり物思う。
(「命は限りがある。だからこそ、その限りある時間の中で己というものを刻もうと輝く……その一瞬の輝きが、きれいだって思うからかもな」)
戦場で咲き誇り、そして散りゆく。
そんな数多の命を見てきた男ゆえの人生観であろうか。
両手を合わせて瞑目。
空になった丼の中身は、全てが刀也の血肉へ。
生きて、戦うための活力へ。
大成功
🔵🔵🔵
アルバ・ファルチェ
【狼と灯】
(カルディアとは初対面)
(他の方との絡み/アドリブは歓迎)
夜汽車とか、何か不思議な感じ。
でもたまには良いよねと少しはしゃぎ気味。
色々な人が乗っているんだな、と失礼にはならない程度にきょろきょろと。
男性を見つけたら観察。
家族の元に帰るんだから嬉しくて当然だよね。
僕だって一人ででかけた後セラの居る家に帰るのはウキウキだもん。
…そんな彼がどうして襲われるんだろう?
『家族が待っている』『家族に会いたい』…そんな想いが引き金、とか?
…家族にも色々あるよね。僕にとってコルノやカリタも『家族』。
そんな存在が、彼にも居たのかな。
声をかけられたらにこやかに挨拶を返す。
目的が同じなら一緒にどう?
セラータ・ファルチェ
【狼と灯】
(カルディアとは初対面)
他の方と絡み・アドリブは歓迎
まぁ、滅多に乗ることは無いからな
アルの様子を冷静に見ているようで自分も興味津々といった様子で車内を見回す。
男性を見つければアルをちょん、とつつく。
直接ではなく、外を見ているふりをしながら硝子に反射した男性を見守る。
家族の傍は暖かいからな…
どれくらいの期間離れていたのかは分からないが、楽しみなのはよく分かる
……家族は、人だけではない。とか?
…ああ。そうなる
声をかけられればぱたっと動く耳。
会話はアルに任せ、小さく会釈と短い返事を返す。
行動を共にするなら、その小さな身体が汽車の揺れでよろけて転んでしまわないように気に掛けておく。
カルディア・アミュレット
【狼と灯】
アドリブ歓迎
(アルバとセラータとは初対面
たまたま一緒の車両にいた)
想い
これから彼を襲うであろう影朧はどんな想いで彼をまっているんだろう?
――まっていた
――ずっといっしょ
影朧のことばが、どうしても…きになる…
「むかえを…まっていたのかしら…
たいせつな、かぞくか…だれか」
おかえりなさい、とは
…誰をまってたのか
わたしと…おなじきもちかしら…?
わたしも主においていかれてしまった…主の”想い”
ランタンを抱えながら、少し遠くから被害者の彼を見守る
ほんの少しだけ、寂しい気持ちを秘めながら窓の外を見つめる
わたしも…まっているの
主さま…
――?あなた達も、彼をみまもるひと…?
同じ猟兵に気づいて声をかける
●
行き交う者、寝息を立てる者、連れと会話を楽しむ者。
夜汽車の老若男女、十人十色の客層にアルバ・ファルチェ(f03401)は心躍らせる。
そんな双子の弟と対照的に、セラータ・ファルチェ(f03368)は落ち着いた様子。
それでも、車内の観察はしっかりと。ロングコヲトの男の動きにもいち早く気づき。
「……アル」
ひそひそ声で、アルバをちょいとつついて知らせる。
立ち上がった男の足元にはトランクケース。
その隣にもう一つ、網棚から下ろされた大きな袋が並ぶ。
袋からは土産物であろうか、もふもふしたぬいぐるみと思しき何かがはみだしている。
「家族の元に帰るんだから嬉しくて当然だよね」
「ああ、家族の傍は暖かいからな……」
直接、あるいは窓硝子の反射越しに。
アルバとセラータが捉えた男の表情は、とても幸せそうなもの。
人狼の兄弟にも強く心当たりのある、楽しくて温かな感情。
顔を見合わせ瞳を和らげた兄弟は、続いて同時に首を傾げる。
いったい彼は、どうして狙われるのだろうか。
猟兵仲間と男のやりとりは、彼らの耳にも届いている。
「……家族は、妻と子供たちを含めた四人だったか。そして、動物由縁ではなさそうだったな」
「うん。どうやら、待たせてしまっている家族への感情が関係していそうだね」
もしかして、そんな存在が影朧にも居たのだろうか。
情報を整理する兄弟が、ふと顔を上げると。
「――? あなた達も、」
*****
がたりごとり。
列車の揺れに身を任せながら、カルディア・アミュレット(f09196)はひとり件の男を見守っていた。
少し距離を置いた席にてランタンを抱えながら、時おり窓の外へと視線を移し。
東の空が明るくなり始めている。
闇を照らす夜明けの灯に、カルディアは何故だか少し寂しくなって。
(「わたしと……おなじきもちかしら
……?」)
想い馳せるは、影朧の心。
――まっていた。
――ずっといっしょ。
予知で発されていたという影朧の言葉が、どうしても気に掛って離れない。
(「むかえを……まっていたのかしら……たいせつな、かぞくか……だれか」)
――おかえりなさい。
男の亡骸に、影朧はいったい誰の姿を見たのだろう。
(「……主さま」)
がたり。
揺れへの反射か、或いは誰かの面影を追ってか。
顔を上げた先に。
「――ではなさそうだったな」
「うん――家族への――だね」
瓜二つの顔を見合わせ、何やら話し合っている青年二人。
話の内容、視線のその先。
もしかしなくても。
「――? あなた達も、彼をみまもるひと……?」
娘の言葉を受け取って、青年らは狼耳を同時にぱたりと動かした。
*****
「……ああ。そうなる」
銀髪に透けるような白い肌、赤眼のぼんやりとした印象の娘――カルディアに短い答えと会釈を返し、セラータはぷいと視線を逸らす。
会話は弟に任せよう。そんな兄の意図を汲んでか、それともごく自然にだろうか。
「うん。僕ら二人で、ずっと彼を見守ってたんだ」
にこやかにアルバが言葉を紡いだ、その直後。
ガガガと雑音を混じえながら、旅の終わりを告げるアナウンスが響く。
「……っ」
降車の準備を始める人々の流れに攫われそうになるカルディアを、兄はそっと立ち位置を変えて庇い。
「目的が同じなら一緒にどう?」
弟の心強い誘いに、娘は小さく頷いて。
狼と灯は、未来を守るため歩み出す。
*****
――大変長らくお待たせ致しました。
――終点、帝都。帝都でございます。
――どうか、お忘れ物の無きよう……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『影狼』
|
POW : シャドーウルフ
【影から影に移動して、奇襲攻撃する事】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 復讐の狼影
自身の身体部位ひとつを【代償に、対象の影が自身の影】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : ラビッドファング
【噛み付き攻撃(病)】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●家路
ロングコヲトの男は家路を行く。
夜行列車での数々の出会いを思い返しながら。
たくさんの人がいた。
彼ら彼女らの旅路もどうか、良きものとなりますように。
早朝の帝都。
空気は青く、肌を刺すように冷たい。
ぶるりと身を震わせて、男はロケットを開き家族写真へ微笑んだ。
家に着いたら抱きしめて、土産話をたくさんしてあげよう。
「遅くなってごめんね。ああ、早く逢いたいな」
呟いた刹那、男の身体が黒い塊に突き飛ばされる。
石畳の大通り。
尻餅をついた男をぐるり囲むように、建物の陰から音も無く黒狼の群れが姿を現す。
にじり寄る人ならざるモノの牙から逃れんと、男はぱっと走り出す。
――どうしていっちゃうの?
――ぼくはここだよ?
何処からか響く声に応じるように、男を追い始める黒狼ども。
このまま追い付かれ、生涯を終えるが彼の運命。
しかし、結末は変えられる。
猟兵たちならば、必ずや。
御剣・刀也
さて、俺の本業か
何処のどいつの仕業かはわからんが、みすみす殺される命を見過ごすわけにもいかない
まぁ、本番前の肩慣らし位にはなってくれるかな
影から影に移動して奇襲攻撃を得意としているので、第六感、見切り、残像を駆使して奇襲を避けながらカウンターで一匹一匹確実に斬り捨てていく
敵が自分たちを無視して護衛対象に向かうのであれば、ダッシュで先回りして武器受けで攻撃を受け止めてそのままグラップルで首をへし折る
「おいおい、相手は俺たちだって言ったろう?それがわからないんだから、悪い犬どもだな」
麻海・リィフ
アドリブ、即興連携歓迎
危ない!
先に雲霞を飛ばし、男をかばう
すかさず自ら割り込み、剣を構える
男に
暫し、じっとして居て下さいます?
嵐はやり過ごすのが一番ですから☆
先制でUC発動、激しい風を纏い浮く
敵の攻撃を念動力衝撃波オーラを重ねた武器や盾で受け
剣で薙ぎ払い串刺しに仕留める
死角に雲霞や極光を配し、カウンターで範囲ごと吹き飛ばしシールドバッシュで追撃をかける
窮地の仲間(特に男)は積極的にかばう
尋ねども詮無き事
なれど敢えて尋ねよう
貴様等、何れの手の者か?
なに、音にする必要はない
指し示す必要もない
返答は貴様等の命にて貰い受ける!
●
影から影へ、飛び込んでは浮上して。
逃げる獲物へと跳躍した影朧の身体を。
「危ない!」
何処からか現れた丸盾が阻み、弾き返す。
其処へすかさず割り込むは、盾の持ち主たるリィフだ。
機械魔剣を構えながら、ちらと男へ振り返り。
「暫し、じっとして居て下さいます? 嵐はやり過ごすのが一番ですから☆」
おどけた調子で笑って見せれば、彼は怯えた様子ながらもこくりと頷いてくれる。
これでまずは一安心。
男を猟兵らの視界に留めた上で、襲い来る影朧から護ることができるだろう。
「さて、本業の時間だな」
人の命が奪われんとしているのを見過ごすわけにはいくまいと。
刀也が瞳を細めて不敵に笑みを零せば――その青を映し、日本刀・獅子吼の刃がきらりと光る。
「本番前の肩慣らし位にはなってくれよ?」
右に一体、左に二体。
気配より敵の位置を把握し、後の先の構えを取って。
『グアッ!!』
迫る牙を正中線をずらして回避してのち、すれ違いざまに一閃。
熟練の技を受け真っ二つになった狼が、ぐずぐずと形を崩して消えていく。
二体、三体と切り捨てていくも、敵はまだまだ影の中より湧いてくる。
「ならば晴天の嵐、その本領を……!」
見せてくれよう、翔嵐の業を。
リィフの意志に呼応するように、蒼き鎧が姿を変える。
風を纏って空へ上がった少女は、低く唸る影朧どもに問う。
「貴様等、何れの手の者か?」
尋ねども詮無き事、なれど敢えて尋ねてみるが。
影朧の群れからの答えは、その爪牙を以てして。
「何処のどいつの仕業かは……ま、答えちゃくれないか」
肩を竦めた刀也は、ひょいと男を狙う一体の前に割り込むと。
「おいおい、相手は俺たちだって。それがわからないんだから」
悪い子だ。
呆れ混じりに呟いて、その首をごきりと圧し折った。
「なに。ならば、音にする必要はない。指し示す必要もない」
言葉を解さぬというならば。
ただひたすらに、人を殺めんとするならば。
「返答は貴様等の命にて貰い受ける!」
リィフが朗々と声を上げれば、ごうと音を立てて風が吹く。
牙を受け、胴を薙いで、止めに剣で串刺しに。
また一体、はい然様なら。
風は、まだまだ吹き止まぬ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
辻・莉桜
大事な人が待っているのなら
必ずその人の元へ帰してあげなければ
たとえ、影朧にどんな意思があろうとも
さあ、桜のショウタイムと参りましょう
☆花散里を抜き放ち、スピードに乗って狼に接敵
私の影が首をもたげて噛みつこうとするなら
【衝撃波】でまずその影を払うわ
そのまま【2回攻撃】を狙って狼本体へと狙いをつけて斬る
☆春宵を腰にさし、できるだけ足元に影を作らないように
淡い光の元で攻撃を
男性を追おうとする狼から積極的に狙っていくつもり
お前たちに、後を追わせはしないわ
しっかりと足止めさせてちょうだいね
絡み、アドリブ歓迎です
ファン・ティンタン
【POW】影踏み鬼
アドリブ共闘可
ふむ、影に潜むモノ、か
申し訳ないけれど、輪廻に戻れる見込みのないあなた達にまではリソース割けないからね
遠慮なく、潰すよ
猫の変化を解き、男を【かばう】位置取りへ
【怪力乱神】にて近接戦に備えるとともに、一つ、奇策を
どうにも影から出てくるようだからね、邪魔させてもらうよ
【星灯】を【念動力】で操作し周囲を強力に照らす
周囲の【地形の利用】を考慮しつつ、影の位置を制限して敵の奇襲を妨害、或いは誘発することで【カウンター】を仕掛ける
さて……鬼さん、捕まえた
むんずと掴んで、魔力で強化した【怪力】任せに振り回す
何匹来ようが、そのまま【敵を盾にする】位置取りでぶん回す【範囲攻撃】を
●
影朧どもはしつこく男に狙いを定めている。
隙あらば猟兵を突破せんと、いくらかの狼が群れを外れて駆け出すが。
「さあ、桜のショウタイムと参りましょう」
莉桜が愛刀・花散里を閃かせ斬撃波を放てば、祈り込められた桜の花びらが敵の足を止める壁となる。
「お前たちに、後を追わせはしないわ」
大事な人が待っているのなら、必ずその人の元へ帰してあげなければ。
ちらりと振り返れば、男は陽光の下にいる。
まるで影から引き離すように、彼に寄り添いそこまで誘導していたのは。
「――っ!?」
片目を閉じた、大きな猫であった。
にゃあ。
莉桜の視線に気づいてか、一鳴きする猫。
何時から、何処から。
何はともあれ、ねこかわいい。
守るものが増えた気がして、刀を握りなおす桜の精の耳に。
「……足下」
届くは猫の鳴き声でなく、ごく短い警告――莉桜の影が狼の頭部を形成し、首を狙って食らい付かんとしている。
「させないわ!」
再び得物を振るい、迫る影朧の牙を祓って。
一気に距離を詰めた先には、本体たる影朧の姿。
前脚を落とされ、頭部の無い影を持つそいつ目掛けて一閃。
首と胴とを切り離されて、影朧はゆらりと形を崩して消えていった。
息を整え、腰に提げた亡霊ラムプを起動させれば、春宵を想わせる淡い光が足下を照らしてくれる。
これで足元からの奇襲も、ある程度妨げることができよう。
「ありがとう、助かっ……」
警戒を促してくれた者に礼を言わんとし、莉桜ははたと気づく。
はて、声が届く程近くに、仲間の姿があったろうか?
答えは否、しかし。
「どういたしまして」
返答はあった。
何時から、何処から。
その白き娘が戦場にいたのか定かでない。
最初からいたのだと知っているのは、当の娘のみかもしれない。
人の姿へと戻り、ファンは冷たく敵群を見据える。
猫に化身していた時の面影残す、開いた片方の赤い目で。
「さて、申し訳ないけれど、輪廻に戻れる見込みのないあなた達にまではリソース割けないからね」
敵の出方はある程度見定めた。
その影を利用する性質を、逆手に取ってしまおうではないか。
「邪魔させてもらうよ」
ファンが掲げた亡霊ラムプは、まるで星空を一つ詰めたよう。
ふわりと宙に浮いて、星灯の如く導きの光を放ち、同時に新たな影をも作り出す。
鬼さんこちら、影在る方へ。
眩い光に照らされて、影が残るはファンの目の前のみ。
奇襲を目論む敵の“出口”はもう、ここしかないわけで。
「さて……鬼さん、捕まえた」
むんずと敵を掴み、影の中から引きずり出した娘の表情は伺い知れぬ。
「遠慮なく、潰すよ」
怪力任せに振り回し、次に出てくる一体にぶつけるわ。
思い切りぶん回して、自身を取り囲まんとする群れごと蹴散らすわ。
鬼神の如き戦いぶりは、まさに怪異と形容して差し支えなく。
それは彼女もまた、人ならざる者たる証左であろうか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カルディア・アミュレット
【狼と灯】
絡み・アドリブ歓迎
「おちついて
逃げたらきっと…反射的においかけてくる…
わたし達が、まもる…から
わたしのそばにいてほしい」
怯える男の背中に手を当て
落ち着かせるように声をかける
「パトリ…力をかして」
自分の本体であるランタンに声をかける
橙の炎がランタンに灯り
本体がエレメンタルロッド”Patrie”と成る
防御とサポート行動
アルバとセラータと協力
オーラ防御を展開
男を常にかばう態勢
回復時
「かいふく、まかせて…」
橙の灯を宙に浮かばせ
”Soin Flamme”
「傷つけちゃ、だめ
おかえり…って…まってたなら…
ひとを…彼を傷つけちゃだめ…
”あなた”は、なぜ待っていたの?」
黒狼を動かす”想い”に問いかける
セラータ・ファルチェ
【狼と灯】
アドリブ歓迎
「…その人に近づくな」
まずは男に近寄る敵に向かって威嚇代わりの【援護射撃】
男を背後に庇う位置に着いたら本格的に攻撃開始
「多勢に無勢とは……狩りのつもりか?」
【スナイパー・部位破壊】によって敵の急所を狙い撃つ
接近戦になれば【気絶・マヒ攻撃】による【なぎ払い】
敵の数が多ければ【制圧射撃】にてまとめて攻撃を
「……お前達は此処で何を待っていたんだ」
敵が影の中を移動するなら【聞き耳】で微かな音を拾い上げ、回避か【武器受け】・迎撃を試みる
その都度アルとカルディアには情報提供し、男を含む彼らに被害がいかないよう注意する
アルバ・ファルチェ
【狼と灯】絡み・アドリブ歓迎
家族の元へと帰るのだと幸せそうにしていた人を、守るのが僕達の役目。
『盾の騎士』の名にかけて守り切ってみせる。
男性へのケアはカルディアちゃんに任せ、二人を守るように立つ。
『“遅くなってごめん”それとも“早く逢いたい”が鍵、かな。
君が待っている人から欲しい言葉が、それ?』
戦闘前にロザリオに【祈り】を。
精霊カリタにも協力して貰って奇襲攻撃を【見切る】ために【聞き耳】やちょっとした前兆でも見逃さないよう【情報収集】。
【武器/盾受け】で男性達を【かばい】ながら、【カウンター】で【属性攻撃:破魔】で攻撃を叩き込む。
複数同時に来るなら【範囲攻撃】【なぎ払い】【衝撃波】も乗せるよ。
●
猟兵と影朧の戦いは続く。
直中に置かれる男の表情に、次第に怯えの色が濃くなり始めるが。
「おちついて」
カルディアが静かに言葉を紡ぎ、彼の背中を優しく撫ぜる。
「逃げたらきっと……反射的においかけてくる……」
低く唸り、牙を鳴らし、狼どもは男の様子を伺うように睨め付けてくる。
だが。
「……その人に近づくな」
「『盾の騎士』の名にかけて、守り切ってみせる!」
その視線を遮るように、二人の猟兵――セラータとアルバ兄弟が立ちはだかる。
威嚇射撃の音に影朧がぱっと飛び退くのが、男の位置からも見て取れた。
「わたし達が、まもる……から。わたしのそばにいてほしい」
青年らの逞しい背中に、娘の温かな心遣い。
男は震えながらも、唇を噛み締めて頷く
その瞳に、猟兵たちへの信頼を込めて。
その背に庇うは、戦う力持たぬ男とか弱き娘。
兄弟ともに、騎士の役目を果たせるように。
「どうか、力を貸して……」
アルバが祈りを捧げれば、精霊宿るロザリオが応じるようにきらりと光る。
涙の蒼に惹かれてか、祈りの時間すらも与えんとしてか。
『オオォォォ!』
咆哮を機に、影朧の群れは一斉に駆け出す。
「多勢に無勢とは……狩りのつもりか?」
咆哮には咆哮を以て。
セラータの返答は銃撃にて。
黒銀の銃身より、斉射――走る熱線を受け、先頭の幾体かが転がるが。
「セラ!」
「……ああ」
ぴくりと同時に動く狼耳、視線を合わせればそれだけで伝わる。
影朧どもが止まらぬことも、互いの次の意図すらも。
「アルはそっちを」
「任せて」
足下より出づる狼の頭部を模った影は、セラータが剣を抜いて薙ぎ払い。
次々と突っ込んでくる本体はアルバが盾で受け止め、破魔の一撃を叩き込む。
見事なコンビネーションで、兄弟は一体たりとも影朧を先に通さない。
度重なる奇襲を受けて、その身を引き裂かれようとも。
ぽたり。
石畳を赤が点々と濡らす。
されど、兄弟が影に呑まれることはない。
ここにはもう一人――カルディアがいるからだ。
「パトリ……力をかして」
娘が声掛ければ、ランタンにぽうと橙の炎が灯る。
それは、温かく命に祝福を与える癒しの焔。
仲間に加護を与える精霊の杖。
「かいふく、まかせて……」
昏き世界に、幸いあれ。
カルディアの持つ御業であり、祈りであり、アイデンティティ。
優しき光に包まれて、人狼の兄弟は再び真っすぐ前を見据え戦場に立つ。
影朧どもはひたすらに牙を剥くばかり。
それでも。
「傷つけちゃ、だめ」
カルディアは伝えずにはいられない。
「おかえり……って……まってたなら……ひとを……彼を傷つけちゃだめ……」
きっと近くにいるはずだから。
『グアッ!!』
「……っ」
娘の言葉を遮るように、また一体が飛び掛かるが。
「通さないよ」
すかさずアルバが割って入り、盾で弾き返して守る。
「“遅くなってごめん”それとも“早く逢いたい”が鍵、かな。君が待っている人から欲しい言葉が、それ?」
常の雰囲気を感じさせぬ真剣さで、アルバは構えを崩さずに問う。
「……お前達は此処で何を待っていたんだ」
セラータも警戒を崩さぬまま、弟の言葉を受け、続ける。
「あなた達は……いえ」
問いかけるは、黒狼の群れを動かす“想い”へ向けて。
「”あなた”は、なぜ待っていたの?」
――やくそくしたから。
――……、かえってくるっていったから。
――だから、ずっとずっと、まってたよ。
――……てからも、ずっと。
答えは確かに、荒ぶる魂の向こう側より。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
杼糸・絡新婦
楽しい旅は終了や、さあ、お仕事と行きましょか
帰りを待つもんがおるんや、邪魔するもんちゃうで。
男と敵との間に割り込むようにして行動。
錬成カミヤドリで鋼糸・絡新婦を
レベルぶん召喚し攻撃。
【フェイント】を入れ誘導したり
張り巡らし【罠使い】として使用。
影がこちらを食べようとしたなら、
【見切り】で回避したり、
鋼糸で捕まえた【敵を盾にする】ことで防ぐ。
宇迦野・兵十
―眠狸を引き抜いて、狼と男の間に割って入る
悪いがこっちのお人にゃ帰りを待ってる人がいるんだ。
通してやっちゃくれないかい?
―街灯を背に、影の方向を自分の前のみにするように位置どる。
相手からの攻撃には【見切り/残像】で回避。
後ろに飛びそうな攻撃は【見切り/武器受け】、【激痛耐性】でへらへらした表情を崩さない。
待ち人来る、か…
なるほどねぇ、お前さん達はそういう手合いかい。
―男を守りつつ、機を待つ。
敵がUCを放ったら【見切り/武器受け/水月鏡】で受け止め
お前さん達の待ち人はこの人じゃあないよ?
―【早技/暗殺】で剣の間合いに踏み込み
【三狐新陰流・水月鏡】
[アドリブ歓迎、諸々お任せいたします]
●
楽しき旅路は幕を閉じ、さあお仕事の始まり始まり。
男を帰路へと送り出すため、二人の猟兵が肩を並べる。
「帰りを待つもんがおるんや、邪魔するもんちゃうで」
絡新婦が肩を竦めれば、狩衣纏う狐人の人形が同意するようにうんうんと頷く。
「お前さんらには悪いが、こっちのお人にゃ帰りを待ってる人がいるんだ」
通してやっちゃくれないかと、影朧どもに問うてみるは本物の狐人――兵十だ。
返答は、威嚇の声を以てして。
「聴く耳持っちゃあくれないようで」
「ほな、やることは一つやね」
男のところに通すわけにはいくまいと。
得物を構えた二人を目掛け、影朧どもが牙を剥く――。
迫る敵群に囲まれぬよう、すかさず絡新婦は術を編む。
「鋼糸【絡新婦】いざ、参るてな」
蜘蛛の巣の如く張り巡らされるは、彼の本体たる鋼の糸。
多くの個体を絡めとり、その動きを止めたところに。
「それじゃあ眠ってもらおうかねぇ」
へらりとした笑みを崩さぬままに、兵十が踏み込んで刀を振るう。
そのなまくら刀、銘を眠狸。
刃は鈍れど、斬撃の冴えはいと鋭き。
練磨と斬業の果てに得た一閃は、影朧の肉を骨をすぱりすぱりと断ち切っていく。
だが、敵もやられるばかりではない。
断たれた部位を代償とし、放つは反撃の狼影。
狙いは斬った張本人たる兵十でなく、絡新婦。
己の形作る影の位置をも警戒する剣豪よりかは、後方にて絡め手を使う人形遣いの方が御しやすいと見たか。
されど、影朧よりも猟兵が一枚上手。
「食わんといて、な?」
やんわりと笑って絡新婦が手繰り寄せるように指を動かせば、鋼糸に縛られた一体が狼影の大顎の中へ。
はい、猿轡ならぬ狼轡のできあがり。
『グゥ……』
悔し気に唸るは、蜘蛛の巣に捕らわれずに済んだ影朧どもだ。
「待ち人来る、か……なるほどねぇ、お前さん達はそういう手合いかい」
想うところあった兵十の呟きにも、言葉で答えることはなく。
『ガアッ!!』
ぎらりと向いた牙に、封印の呪詛を纏わせ迫り来る。
やれやれと首を振って――妖狐はすっと目を細め。
「この剣――」
一、二、三歩。
駆ける獣、縮まる間合い。
その刹那を見切り、刃の側面で受け止めて。
「――水面に映る月の如くに」
ぱっと後ろに飛び退いたのち、目にも止まらぬ早業で、一閃。
踏み込みと同時に飛ぶ斬撃に、込められるは影朧が宿していたはずの呪詛。
この写しの御業こそ、三狐新陰流・水月鏡。
「お前さん達の待ち人はこの人じゃあないよ?」
兵十の声も、荒ぶる影朧どもには届かない。
その背を見守る絡新婦の傍で、人形が哀し気に首を振った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御園・桜花
「敵がどこから来るか分からないなら…全てを引き裂くのも一つの手。どちらかと言えば悪手かもしれませんけれど」
ユーベルコード「アルラウネの悲鳴(アルラウネノヒメイ)」使用
範囲から男性を外し影から現れるだろう影狼に対処
桜吹雪でなく音を使用したのは、聴覚の攪乱を狙ったため
「あの方を狙った理由…あの方の呟きを拾ったからかもしれません。他にも似た背格好の方、出稼ぎの方、子を持つ方はいらっしゃった筈です。なのに何故、あの方を選んだか。望んだ言葉を、呟かれたからではないでしょうか。その後は視覚や嗅覚で辿っているかもしれませんが…この悲鳴で、少しでも攪乱できれば、あの方の生存確率を上げられるかもしれません」
●
現れては消える、影狼。
「敵がどこから来るか分からないなら……全てを引き裂くのも一つの手。どちらかと言えば悪手かもしれませんけれど」
戦場の中心からやや離れ、桜花はひとり其処に立つ。
守るべき対象を仲間を、けして巻き込まぬように。
果たして、奴らは現れる。
娘が格好の獲物であると見て、じりじりと取り囲んで。
「どうぞ、存分に味わってくださいませ」
今まさに、復讐の狼影が牙を剥き――。
絶叫。
慟哭、苦痛、絶望。
否、ただひたすらに泣き喚くような。
ドゥダイーム、マンドラゴラ、アルラウネ。
様々な名で呼ばれるその薬草には、とある伝説がある。
引き抜いた際に上げる凄まじい悲鳴をまともに聴いた者は死に至る、と。
アルラウネの悲鳴。
桜花のユーベルコードはまさに伝説を再現したかの如く、影朧どもを骸の海へと送り返す。
牙を立てる猶予すら与えずに。
「あの方を狙った理由……あの方の呟きを拾ったからかもしれませんね」
しんと静まった場に、響くは桜花の落ち着いた声。
他にも似た背格好の者、出稼ぎの者、子を持つ者もいたであろう。
なのに何故、ロングコヲトの男が選ばれたのか。
「望んだ言葉を、呟かれたからではないでしょうか」
己の解き放った叫びもまた、彼を影朧どもから守る救けとなれば。
物想う桜の精に添うかのように、ひらり花びらが舞い降りた。
大成功
🔵🔵🔵
薙殻字・壽綯
いくら勢い余れど突き飛ばすのは、いけません。軽機関銃で制圧射撃を黒狼に行い、男性への攻撃を阻害します
男性には、声掛けを。……怪我、していませんか?……
……どうか、今一度、深呼吸を
大丈夫。貴方は、家族の元へ帰れますよ。大丈夫です。……。すみません、二つ質問を!
あの牙は、貴方の命を狙いに来ましたか?そして、影朧に恐怖の念を抱いたか、です。…追い込むようで、申し訳ありません
黒狼には、UCを発動して…質問をします
貴方たちは、誰ですか。……自分の名前は、わかりますか?
教えてください。……理由もなしに、傷つけ合うのは…痛いだけですから……。どうか、自分が何者かくらいはわかってあげてください。…お願いします
●
軽機関銃・MP7、一斉掃射。
影朧の群れを牽制しながら、壽綯は男に近付いていき。
「……怪我、していませんか?」
そっと声掛ければ、彼は頷いて答えてくれる。
しかし、その顔色は青い。
猟兵仲間らのフォローも功を奏し、男はここまで戦火の中で堪えてくれた。
それでも、隣り合わせの生命の危機に、じわじわと神経をすり減らしていたらしい。
猟兵への信頼は間違いなくあれど、自ずと湧き上がる恐怖はまた別物なのだ。
「……どうか、今一度、深呼吸を」
そんな男の心を壽綯が汲み取れたのは、医に携わっている賜物か。
否、きっと壽綯が壽綯たる、情愛ゆえであろう。
「大丈夫。貴方は、家族の元へ帰れますよ。大丈夫です。……」
穏やかに語り掛ける。ゆっくりと、誠実に。
その間も、敵への警戒と銃を操る手は緩めず。
転職先から支給されたそれは、此処では確かに役立った――壽綯がぽつり、心の内で呟いた刹那。
「ありが、とうございます。お陰様で」
だいぶ落ち着くことができたと、ロングコヲトの男は笑んだ。
「……。追い込むようで、申し訳ありません、二つ質問を」
短い問診を終えた男の顔色は、壽綯が声を掛けた時より確実に良くなっていた。
問一、影朧の牙は、回答者の命を狙っていたか?
答えは是。猟兵が駆け付けなかったら死んでいた、それが回答者の見解だ。
問二、影朧に対し、恐怖の念を抱いたか?
これもまた是。同時に回答者は困惑も感じている。狙われる覚えはまるでないという。
ず、と影より具現した狼の頭部は、散り乱れる茄子の花吹雪に覆われ、掻き消されていく。
「とびきりの、貴方だけの語らいを。……どうか、教えてください」
壽綯の問診は続く。
果たして影朧どもより、答えは得られるだろうか。
「貴方たちは、誰ですか。……自分の名前は、わかりますか?」
理由もなしに傷つけ合うなど、痛いだけ。
せめて自分が何者であるかは分かって欲しい。
優しき願いと裏腹に、響くは唸り声と断末魔のみ。
哀し気に目を伏せる壽綯であったが。
――わからない、おぼえてない。
答えはあった。
はっと見開いた翠の瞳の先、しゃんと背筋を伸ばして見つめ返してくる影ひとつ。
*****
――でも、ぼく。これだけはおぼえてるの。
――ごしゅじん、かえってくるっていった。
――だから、ずっとまってるの。
――ぼくがしんじゃってからも、ずっと。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『その場から動かない影』
|
POW : 僕は待ち続ける
全身を【敵対的な行動を完全に防ぐ拒絶状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 忘れ果てても待ち続ける
【身体をあらゆる敵対行動を拒絶する影】に変形し、自身の【知性と感情】を代償に、自身の【防御能力】を強化する。
WIZ : あなただけを待ち続ける
非戦闘行為に没頭している間、自身の【影】が【記憶に残っている何かを模倣し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●黄泉路
執拗に男を狙い続けていた、荒ぶる黒狼の群れは祓われて。
其処には、穏やかな目をした朧な犬の影がひとつ。
――ごしゅじんじゃなかったんだ、ごめんなさい。
――あなたには、ほかにかえるところがあるんだね。
ロングコヲトの男へと、謝罪の言葉を述べる影朧。
彼が自分の待ち人ではないのだと、どうにか理解したらしい。
――ぼくは、ここでまつよ。
――ほんとうの、ごしゅじんを。
犬が影朧と化してから、果たして幾年が過ぎたのか。
当の主が何者か、約束の後にどうなったかを知る術も無いだろう。
それでも、きっとこれからも彼はずっと待ち続ける。
たとえ、永劫の時を過ごすことになろうとも。
影朧は存在するだけで世界に悪影響を及ぼす。
このまま放置はできない。
手を下さねばならない。
強引にでも刃を通し、仮初の命を断つか。
或いは――彼の心に寄り添い、未練を断つか。
御剣・刀也
お前が大元か
主に対する忠節は見事なもんだ
その在り方は素晴らしいと思うが、お前の存在は許されない
斬り捨てさせてもらうぞ
敵対的な行動を防ぐ拒絶状態になったら、攻撃を防がれるのを覚悟で捨て身の一撃、二回攻撃を使って、同じ場所に連続で攻撃を当て続けて、水滴が長年かけて岩を穿つように、諦めず何度も何度も同じ場所を攻撃し続ける
「お前さんの在り方は素晴らしいと思う。だけどな、認めてやれねぇんだ、だから、ひょっとしたら、逝った先で、お前の主に会えるかもな」
●
「お前が大元か」
静かに呟く刀也の視線が、真っすぐに影朧に注がれる。
たとえ、その小さな黒い存在から敵意を全く感じずとも。
主に対する見事な忠節に、想うところすらあろうとも。
「その在り方は素晴らしいと思うが、お前の存在は許されない」
青年の堅き意志はけして揺らぐことはない。
御剣・刀也はオブリビオンを断つ、一振りの刀たることを選ぶ。
「――斬り捨てさせてもらうぞ」
すらりと抜いた獅子吼の刃が、主の不屈の心に応じるように光った。
刀を向けられようとも、影朧は反撃の姿勢すら見せない。
一、二、三。
幾度斬り付けられようとも、じっと座り込んだ姿勢のまま。
四、五、六。
その存在は、揺るがない。
七、八、九、十――。
「お前さんの在り方は素晴らしいと思う」
一方で、刀也もけして諦めない。
水滴が長年かけて岩を穿つが如く、幾度も幾度も。
斬って、斬って、斬り続ける。
「だけどな、認めてやれねぇんだ」
上段に構えた得物、その切っ先に一擲をなして。
「せめて、逝った先で、お前の主に……」
持てる全ての力を振り絞り、振り下ろす。
止まってしまった時間を断ち切るために。
大成功
🔵🔵🔵
辻・莉桜
まずは男性の無事を確認して、下がってもらいます
もちろん、先に帰っていただいても
それから、犬さんへ向き直って
ねえ、犬さん、どれだけそうやって待ってるの?
君の忠義心はとても素晴らしいけれども
…ご主人さまはもう、ここには来ないかもしれない
それは、本当に本当に悲しいことだけど
でも、きっとご主人さまも君を待ってるよ
空の彼方、この地上から遠く離れた場所で
ひとりで地で待っているのは寂しくない?
生まれ変われば、きっとまたご主人さまに巡り会える
君の決断次第だよ
私は…君に自分から刀を振るうことはできそうにないや
桜の精失格だね
でも、君の幸せを祈りたいんだ
絡み、アドリブ歓迎です
●
猟兵たちの尽力が功を奏し、ロングコヲトの男は傷一つ負っていない。
消えてしまうはずだった命を救えたことに、一先ずの安堵を覚えてのち。
莉桜は影朧へと向き直り、声が届く距離まで歩み寄っていく。
少女の背中に一礼し、男は静かに顔を上げる――どうやら、全てを見届けることとしたらしい。
「ねえ、犬さん、どれだけそうやって待ってるの?」
黒い犬は動かない。
じっと座り込んだまま、まるで石像のように。
きっと幾年もそのまま、主を待ち続ける意志を風化させることなく。
「君の忠義心はとても素晴らしいけれども」
素晴らしくも、あまりに悲しい在り方を終わらせるため。
桜の精は切り出した。
「……ご主人さまはもう、ここには来ないかもしれない」
影朧に、本当に本当に悲しい思いをさせるかもしれなくとも。
黒い犬は動かない。
されど、くぅと小さく喉を鳴らして。
――ごしゅじんは、もう、こない?
夢にも思わなかった。
影朧がぽつり零した声は、そういった色合いを含んでいた。
「でも、きっとご主人さまも君を待ってるよ。空の彼方、この地上から遠く離れた場所で。……ひとりで地で待っているのは、寂しくない?」
莉桜が紡ぐ言葉は残酷ともいえる現実に留まらず、未来への可能性を示すもの。
「生まれ変われば、きっとまたご主人さまに巡り会える」
ここから一歩を踏み出せば、きっと止まった時も動き出す。
「君の決断次第だよ」
刀は鞘から抜かぬまま。
莉桜は己の在り方を評する――桜の精失格かもしれないと。
それでも、ただ強く祈る。
目の前の者に幸あれと。
ふわり。
桜の花びらが一枚、黒犬の前に舞い降りた。
大成功
🔵🔵🔵
御園・桜花
「あの、貴方がご主人様を待つのではなく、貴方がご主人様を迎えに行きませんか?貴方がここでご主人様に会えないのは、ご主人様が黄泉路で待っているからかもしれません。それに…貴方は忘れてしまったのかもしれませんが、死ぬというのはとても痛いことなのです。貴方のご主人様は、痛みのあまり貴方を優しく呼んだり撫でたりできなくなってしまうかもしれません。それは貴方の望みではないでしょう?ご主人様に優しく撫でて名前を呼んで誉めて欲しいでしょう?なら貴方は、ご主人様の待つ転生の道、輪廻の道に向かうべきだと思うのです…きっと貴方なら会えますから」
「強制改心盆」に水張り飲むよう勧める
盆に触り執着心捨て転生するよう促す
●
「――あの」
屈んで影朧と視線を合わせ、桜花は穏やかに語り掛ける。
「貴方がご主人様を待つのではなく、貴方がご主人様を迎えに行きませんか? 貴方がここでご主人様に会えないのは、ご主人様が黄泉路で待っているからかもしれません」
黒犬はきょとりとした顔で桜花を見つめ返してのち呟く。
――ごしゅじんはこない、けど。
――ぼくを、まってる?
くぅと喉を鳴らす声は、何処か寂しげに聴こえる。
それは、主を待ち続けんとしていた先程の頑なな様子からの明らかな変化。
猟兵たちの伝えたいことを、理解し始めたのであろう。
「それに死ぬというのは……黄泉路に向かうというのは」
束の間、桜の精は言葉に詰まる。
先を続ける彼女の瞳は、哀し気に伏せられて。
「時に、とても痛いことなのです」
過去に虐殺を生き延びた桜花は想う。
命を落とした者たちは、どれほど痛かったろうか。
もしも影朧の主人たる者が、同じような結末を迎えてしまっていたとしたら――。
「貴方は、ご主人様の待つ転生の道、輪廻の道に向かうべきだと思うのです」
――ごしゅじんは、ひとりでいるの?
――ぼくと、おんなじ?
影朧の前に、水を張った銀盆が差し出される。
「……きっと、貴方なら会えますから」
旅立つ前に末期の水を、待ち続けた彼に労いを。
主に優しく撫でて欲しいだろう、名前を呼んで欲しいだろう。
その想いが執着でなく、どうか望みであるように。
黒い犬が頭を垂れて、水にそっと口を付ける。
ゆらゆら揺れる水面へと、桜の花びらが一枚落ちた。
大成功
🔵🔵🔵
杼糸・絡新婦
謝れるええ子やねえ、せやけど、
だからこそ放っておくこともできんやろ。
お話できるかい。
あんたさんはどれくらい待った?
待っている人はどんなお人?
今日来るか、明日来るか、
とても楽しみやし、とても不安なことやな。
せやけど間違えましたはもう出来ひんし、させへんで、
そんだけ思ってるんやったら迎えに行き、
会いたいんやろ。
自分はあたさんの手伝いもするし、邪魔もする。
戦闘になった場合は、相手の攻撃を脱力し受け止め、
オペラツィオン・マカブルを発動。
排し返せ、サイギョウ。
●
「謝れるええ子やねえ」
すっかり大人しくなった影朧の様に、絡新婦は瞳を和らげる。
「……せやけど」
それでも。否。だからこそ。
このまま彼を放置してはおけぬのだ。
「お話できるかい」
絡新婦が顔を覗き込めば、黒犬は耳をぱたりと動かして前へ向ける。
どうやら、話を聴く姿勢に入ったらしい。
静かに頷いて、人形遣いは問い掛ける。
「あんたさんはどれくらい待った? 待っている人はどんなお人?」
首を傾げる影朧。
しばしの沈黙ののち。
――いっぱい。晴れも、雨も、雪も。
――僕よりも小さかった木が、ずっと大きくなるくらい。
ぽつりぽつりと答える声からは、拙さが薄れ始めている。
猟兵たちと言葉を交わした影響で、より思考が明晰となったのか。
――ご主人……そうだ、ご主人は。
――顔ははっきり覚えてないけど。
――声も、手も、匂いも。
とても優しかった、と。
寂し気に言葉を詰まらせた影朧の様子に、傍に控えるサイギョウもそっと万一の構えを解く。
彼はもう、けして見誤ることなどないだろうから。
「今日来るか、明日来るか。待つのはとても楽しみやし、とても不安なことやな……そんだけ思ってるんやったら迎えに行き、会いたいんやろ」
絡新婦の声に、犬は再びぱたりと耳を動かして答える。
黒い艶やかな毛並みから、はらりと桜の花びらが一枚落ちた。
大成功
🔵🔵🔵
アルバ・ファルチェ
【狼と灯】
(絡み・アドリブ歓迎)
カルディアちゃんが影朧に寄り添うならそれに寄り添う。
セラも警戒してるし、大丈夫だろうけど何かあったら男性もカルディアちゃんもセラも守れるようにって心積りは忘れずに。何時でも守れる位置に居るよ。
ねぇ、待つのはいいけど1人じゃ寂しいよ。
それにここは寒いから。
ご主人様も寒くて迎えに来られないのかもしれないよ?
だからみんなも言う通り、ご主人様を迎えに行こうよ。
暖かい場所で、幸せな気持ちで。
僕達はそのお手伝いをしたいんだ。
みんな幸せなのが1番だもんね。
僕はみんなの笑顔を守りたい…もちろん君も、君のご主人様の笑顔もね。
だから…おやすみ。
また、ね。
【祈り】を込めてUCを使用。
カルディア・アミュレット
【狼と灯】
アドリブ可
穏やかな犬の影の傍に静かに膝をつく
「あなたは、とてもいい子…
誰も怒ってない
わかってくれて
ありがとう…」
出来うる優しさを込めて犬に寄り添おうとする
「…ごめんなさい
あなたを、ここで待たせてあげたい
でもね…ここにいると、誰かが間違えて…あなたを傷つけてしまうかもしれないの…
わたし、それは…嫌…」
影朧でなかったら
待たせてあげられた…
切なくて
ぎゅっと自身のランタンの柄を握る
「…わたしも同じ
主さまを待っていた
でも主さま…長く帰ってこないから
わたし、探しに旅にでてる
…主さま、迷子になってるかもしれないって
あなたも…そうしてみない?
影の姿ではなく…生まれかわって…
探してあげてほしい」
セラータ・ファルチェ
【狼と灯】
アドリブ歓迎
男性に害が無いならと、構えていた銃も剣もひとまず下ろしておく
それでも万が一を考えて警戒は解かずに影朧へと投げかける少女の問いを聞きながら様子見
お前は…それでいいのか
ずっと待ってるだけで、いいのか
お前の“ごしゅじん”をお前が迎えに行くということもできるだろう
待ってるばかりじゃなく、たまにはお前が迎えに行ってやったらどうだ
彼女の主と同じようにお前の”ごしゅじん”も迷子かも知れないぞ
無愛想ながらも、主人を…家族を想うこの影朧が転生出来る様にと話しかける
この影朧が望むのなら、一発の弾丸に願いを込めて【零距離射撃】
“Buonanotte, sogni d'oro.”
●
「あなたは、とてもいい子……誰も怒ってない。わかってくれて、ありがとう……」
傍に静かに膝をついて、カルディアが優しく添おうとすれば。
黒犬は甘えた声を零しながら、ぱたぱたと小さく尾を振った。
「……セラ」
「ああ、分かってる」
その様子を、一歩下がったところからアルバとセラータはしばし見守ることとした。
構えていた得物は一先ず下ろして、されど万一の事態に対応できるように。
人狼の騎士らは守りの姿勢を、心積もりをけして崩さない。
必ず守り抜く――兄弟を、カルディアを、ロングコヲトの男を。
そして。
「待つのはいいけど、1人じゃ寂しいよ。ここは寒いし、ね」
「あいつは……それでいいんだろうか。ずっと待ってるだけで」
青年二人の守護の意志は、彷徨い続ける魂をも――。
「……ごめんなさい。あなたを、ここで待たせてあげたい。でもね」
カルディアが握るはランタンの柄。
まるで服の裾を掴むように、ぎゅっと。
「ここにいると、誰かが……あなたを傷つけてしまうかもしれないの……わたし、それは……嫌……」
たとえ他者を害する意志が無くとも、影朧は存在するだけで世界を歪め得る。
仮にここで猟兵らが彼を見逃したとしても、また別の誰かが必ず対処に現れることだろう。
カルディアは、黒犬が傷付くことを望まない。
同時に、彼の望みを妨げることも。
「……わたしも同じ、主さまを待っていた」
逢いたい気持ちは、痛いほどよく分かるから。
「でも主さま……長く帰ってこないから。わたし、探しに旅にでてる。……主さま、迷子になってるかもしれないって」
彼女は未だ、旅の途中に在る。
果てに待ち受けるものを知る術はないが。
「あなたも……そうしてみない? 影の姿ではなく……生まれかわって……探してあげてほしい」
それでも、カルディアは黒犬の背中を押す。
ここで待ち続けたとして、けして何も変わらぬから。
――お姉さんも、ご主人を?
――そっか。きっと、寒かったよね。
ふわり。
少女に寄り添う黒い毛並みは、不思議と温かかった。
「君のご主人様も寒くて迎えに来られないのかもしれないよ? だから」
迎えに行ってあげよう、と。
黒犬とカルディアの背をそっと包み込み、アルバが優しく微笑む。
「暖かい場所で、幸せな気持ちで。みんな幸せ、笑顔なのが1番だもんね。君も、君のご主人様も」
「ああ、家族が傍にいてくれれば温かい。お前の”ごしゅじん”を、温めに行ってやったらどうだ?」
態度こそ無愛想にも見えるセラータだが、相手を想って掛ける言葉は本物だ。
――ご主人は何処かで、迷子になってるかもしれない。
――ずっと、一人でいるかもしれない。
――僕と同じように。
――……僕は。
三人の猟兵は祈る。
待ち焦がれた主に、彼がどうか逢えますように。
家族を想うこの影朧が、転生出来ますように。
何時か何処か、暖かい場所で彼と主が笑顔でいられますように。
猟兵たちと黒い犬に、暖かな風が吹く。
幻朧桜の花びらを乗せて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
薙殻字・壽綯
覚えているのですね、約束を
主人を、待っているのですね
約束、守れてえらいですね
ごめんなさいができて、すごいです。いい子、いい子です
ずっと……心寒かったでしょうに。恐ることなく、耐えて
待っていたのですね
……君の主人も、君と同じで、何処かで待ってる
行き違って、お互い迷子に気付かずに。待ち続けてると僕は……僕は、そう思う。よ
…僕もね、会いたい人がいる。けど……なんでか、ね
会えないんだ
だから、待っても来ないなら、探しに行ってみたんだ。化けて、出てこないかなあって
一人旅は、寂しかったけど…旅先はとても、暖かかったんだ
すごく勇気がいるけど……ずっと待ってたからね。少しくらい、待たせても…いいんじゃないかな
●
記憶の片隅、覚えていた約束を頼りに。
「約束を覚えていて……主人を、待っていたのですね。ずっと……心寒かったでしょうに。恐ることなく、耐えて。待っていたのですね」
壽綯が手を差し伸べれば、影朧は自分から頭を摺り寄せる。
「約束、守れてえらいですね。ごめんなさいができて、すごいです。いい子、いい子です」
ぱたぱたと控えめに尾を振る黒犬は、荒ぶる群れの元となったとはまるで思えぬ懐こさだ。
生前にはきっと、人の愛をたっぷりと受けたのであろう。
その姿に想うところあり、壽綯は語り始める。
生まれたその感情を名付けるならば同情か、それとも――。
「……君の主人も、君と同じで、何処かで待ってる。行き違って、お互い迷子に気付かずに。待ち続けてると僕は……僕は、そう思う。よ」
話すことは、壽綯はけして得意ではない。
「……僕もね、会いたい人がいる。けど……なんでか、ね。会えないんだ」
されど、言葉を紡ぐことは止めない。
「だから、待っても来ないなら、探しに行ってみたんだ。化けて、出てこないかなあって」
たどたどしくとも、影朧に伝えたいことが――伝えねばならぬことがあるから。
「一人旅は、寂しかったけど……旅先はとても、暖かかったんだ。すごく勇気がいるけど……ずっと待ってたからね」
小さく、掠れがちな声を乗せるように風が吹いて。
「少しくらい、待たせても……いいんじゃないかな」
幻朧桜の花びらとともに、黒犬へと届けてくれる。
――ご主人。
――僕、行くよ。
大成功
🔵🔵🔵
ファン・ティンタン
【WIZ】記憶の影を、いま一度
アレンジ歓迎
私に出来ることは、存外少ないモノだと分かってはいるけれど
どうか、その生に、刹那の輝きを
【転生尽期】には【力溜め】が必要
他の猟兵の皆がやりたい事を見届けつつ、要となる魔力を自らが器物である【天華】へ込める
私は命ず
その想い、かつての色を取り戻し、輪廻の海へと還れ
願わくば、色褪せぬ約束の果てに、いま一度出会わんことを夢見て
……私は、道具だから
自らが主を失うことの大きさは、少しは分かってるつもり
いつかは別離を、受け止めなければならないことも
でも、だからこそ―――
犬の記憶を魔力で増幅・具現化することで本当の主の姿を最期に見せる
―――さよならは、ちゃんとしないとね
宇迦野・兵十
遅くなってごめん、早く逢いたいな…か。
なるほどねぇ。
お前さんの待ち人は優しい人なんだねぇ。
―ゆるゆると近づきつつ【コミュ力】で親しげに話しかける
今日か明日か、いつ来るか解らない相手を指折り数えて待つ。
それは楽しくて、辛いもんだね。
でもそれじゃダメだって、お前さん気付いてるんじゃないかい?
―剣の間合い、瞳を覗き込める距離で立ち止まり
だったらさ、迎えに行ってやんなよ。
お前さんの足で、さ。
―もし影朧がそれを受け入れるなら、笑狐の封を解いて還し火を。
【三狐新陰流・常世還】
生まれ変わって待ち人に逢えたらさ、散々甘えてやりな。
きっと向こうもお前さんを待ってるよ。
[アドリブ歓迎、諸々お任せいたします]
●行路
「『遅くなってごめん、早く逢いたいな』……か。なるほどねぇ」
兵十が反芻するは、影狼の襲撃に逢う直前にロングコヲトの男が零した言葉。
大元たる黒い犬がそれに反応したということは。
「お前さんの待ち人は優しい人なんだねぇ」
――うん、ご主人は優しいんだ!
――……やっと、来てくれたと思ったんだ。
嬉し気に瞳を輝かせた影朧は、先ほどの人違いを思い出してかすぐにしょんぼりとしてしまう。
果たして彼はどれほど、主に焦がれていたのだろうか。
「今日か明日か、いつ来るか解らない相手を指折り数えて待つ。それは楽しくて、辛いもんだね」
踏み込めば剣の届く間合いまで近づいて、兵十が切り込むは。
「でもそれじゃダメだって、お前さんは、もう気付いているよね?」
刃でなく、言葉を以て。
取り残された忠犬の、心の奥深くまで。
「さぁ、迎えに行ってやんなよ。お前さんの足で、さ」
わぅ、と意気揚々と吠えて、黒い犬が立ち上がったのを見て。
兵十は鈍刀・笑狐の封を解く。
其の赫い刃は常世への還し火の如く。
「黄泉路でか、その先で生まれ変わってか。待ち人に逢えたらさ、散々甘えてやりな。きっと向こうもお前さんを待ってるよ」
その刃文に反射するは――。
ファンの器物・天華――白の一振りより出づる、満ちた魔力のおぼろな光。
さぁ、全ての準備は整った。
「潰える前に、為すべきを成せ――さよならは、ちゃんとしないとね」
ファン・ティンタンの名において命ず。
その想い、かつての色を取り戻し、輪廻の海へと還れ。
願わくば、色褪せぬ約束の果てに、いま一度出会わんことを夢見て。
――……ご主人?
――そこに、いるの?
ヤドリガミの少女はひとり思う。
(「……私は、道具だから。自らが主を失うことの大きさは、少しは分かってるつもり」)
同時に、いつかは別離を受け止めなければならないことも。
だが、否。
だからこそ、彼女は――。
――そうだ、ご主人は。
――いつも優しく笑ってくれてた。
甘えた声で鳴く犬の瞳に映るは、懐かしき主の姿。
それは幻に過ぎないが、確かに彼の記憶の奥底より蘇ったもの。
道を違えることは、もう二度と無い。
導は既に持っているのだから。
赤と白。
黄泉時を切り開くは、二振りの刀。
無数の桜の花びらが飛んで行き――その先でいずれまた、彼は新たな命を得るのだろう。
*****
とある家屋の扉の前に、ロングコヲトの男が立っている。
大きく深呼吸。吸って、吐いて。
さあ、いざ中へ入らんと――。
「おや?」
伸ばした指先に、ひらりと桜の花びらが舞い降りる。
「……ふふ。おかえり、君の在るべき所へ」
風に預けて還してのち、男もまた辿り着く。
「ただいま」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵