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ファナティック・ヒロイズム

#ダークセイヴァー #同族殺し


●鮮血の夢に沈む狂気
「ああ……つまらないな、本当につまらない!」
 大きく頭を振りながら、銀髪のヴァンパイアは己の身丈に匹敵するほどの重火器――というにはいささか砲門も多く形状もいびつな鉄塊――を構えた。
 相対する影が一歩引きながら、恐怖にひきつった声で叫ぶ。
「何を考えている、まさか、同族殺しを……」
 瞬間、空間が大量の朱色に染まった。砲弾だ。無数の血弾が、敵対者を蹂躙していく。疑問の声は最後を迎えず、倒れこむ音を最後に、声の主は沈黙した。
 地に伏す敵対者、同族たるオブビリオンを武器を足で踏みつけ、大きく肩をすくませる。
「ああ、つまらないなあ……物語のような心躍る戦いはどこにあるんだ? ここにはさあ」
 大きく息をすると、彼は長い銀糸を躍らせながら紅蓮のコートを翻し、芝居がかったしぐさで大きく手を広げた。ぐい、とのけぞらせた視線の先、彼の後方には、倒れ伏した猟兵たちの姿。
「つよーい敵も、つよーい挑戦者も、こんなにいたのにねえ」
 彼はくつくつと嗤う。その声は、どこか無邪気ですらあった。

●グリモアベースにて
「ダークセイヴァーで同族を殺して回っているヴァンパイアが出現した」
 シェール・アークハイド(蒼き聖歌の紡ぎ手・f22134)は、集まった猟兵に真剣な声で告げた。
「何故そんなことをして回っているかはわからないが、これはチャンスだ。……いささか危険もすぎるがな」
 シェールの説明によると、同族殺しは猟兵や反逆者たちの戦いに便乗するように現れるのだという。そうして最後には『つまらない』と言って、全てを殺してしまうのだ。同族殺しとはいえ、オブビリオンには違いない。猟兵たちにも容赦がないようだ。
 シェールは卓上にダークセイヴァーの地図を広げ、一点を指示した。ここに、と続ける。
「『傲慢魔人プライディア』という名のオブビリオン領主がいる。館を守る使い魔も本人もかなり強い。本来なら太刀打ちできない相手とみられていたが、同族殺しを利用すれば倒せる見込みが立つんだ。……奴も間違いなく、来る」
 そこまで言うと一息ついて、シェールは両腕を組んだ。眉間に深いしわを寄せる。
「館に入り大広間の警備を突破し、プライディアを倒し、最後に同族殺しも倒す。これが今回の依頼だ」
 彼の表情からわかるように、今回はかなり厳しい戦闘になることが予想されるだろう。また、同族殺しの牙が早々にこちらに向けば、失敗の可能性は大幅に高まる。
「危険な依頼だが、受けてもらえるだろうか?」
 猟兵たちの力強い頷きに、そうか、とシェールはほっとしたように腕をほどいた。
「最初の敵は、館の大広間にいるダンピールの少女たちだ。12体はいるだろう。領主や同族殺しほどの脅威ではないが、数が多い。あと、その段階から同族殺しも戦闘に加わってくる。十分に注意してくれ」
 シェールは深呼吸すると、胸に手を当て小さく歌った。勇壮に戦う英雄を歌った短い歌。
「……この歌があなたがたを守る護符となりますように」
 なんてな、気障がすぎるか。苦笑したのち、改めてよろしく頼む、とシェールは頭を下げた。


はるすみ
 初めまして、はるすみと申します。はじめてのシナリオになります。
 今後ともよろしくお願いします。

 オープニングの通り、今回は同族殺しを含む、大物2体を倒すシナリオになります。いずれの大物もかなりの強敵ですので、猟兵たちだけの力では討伐が困難です。同族殺しをうまく利用できるようなプレイングをすると、順調に進むかもしれません。

 それでは、プレイングをお待ちしております。
 プレイングは公開直後から受け付けます!
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第1章 集団戦 『『願望少女』アリスシスターズ』

POW   :    あなたの全てを受け入れるわ
戦闘力のない【純粋なる好意又は善意】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【全てを肯定し受け入れ破滅に導く誘惑】によって武器や防具がパワーアップする。
SPD   :    自信がないならわたしが与えてあげる
【純粋なる好意や善意によって】【根拠の無い励ましや応援で過剰な自信を与え】【根拠なく成功を確信する破滅へと導く誘惑】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    あなたの願いを叶えて欲望を満たしてあげる
【願望又は欲望】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【燭台の炎が描く魔法陣】から、高命中力の【願望や欲望を叶える代償に破滅へと導く誘惑】を飛ばす。
👑11
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ベイカー・ベイカー
同族殺しね…どんな辛いことがあればそんなことするんだか。俺がその辛いことを全部忘れさせてやってもいいんだぜ?そしたら記憶喪失同士、友達になろう!…なんてな。ひとまずはここの連中と、あー、なんだっけ?なんたらって名前の村長?組合長?を倒してから遊ぼうぜ未来のお友達。

一応、メモに書いてある【戦闘知識】で集団戦の心得もなんとなくは分かるし、囲まれてボコられない程度には立ち回れると思うぜ。そしてUCでダンなんたらの女の子たちの記憶を燃やし尽くす。好意も善意も肯定されたことも誘惑も忘れちまえばパワーアップはできねーだろ。全部忘れちまったら端の方に寄っててくれ。後で色々教えてあげるから友達になろうぜ皆!



「同族殺しね……どんな辛いことがあればそんなことするんだか」
 呟いて、ベイカー・ベイカー(忘却のススメ・f23474)が大広間にいの一番に飛び込むと、12人の少女たちが、ぎゅるり、と一斉に首を向けた。侵入者を取り囲もうと迫る少女たちに対し、【戦闘知識】をフル回転して立ち位置を定める。
「逃がさない。……ねえ、わたしはあなたの全てを受け入れるわ」
『願望少女』アリスシスターズのひとりがゆら、と影を召喚した。少女らしい澄んだ瞳で、彼女はベイカーを見つめる。影がゆっくりと彼に迫った。
「あいにく俺は嫌なことは全部忘れる主義なんでね。なあ、忘れちまえよ!」
 一声、ベイカーは炎を召喚し、影を燃やし、そして少女まで延焼させる。少女は悲鳴をあげ、かけて、呆然とした表情で崩れ落ちた。膝をつく少女。
「全部忘れちまったら端の方に寄っててくれ。後で色々教えてあげるから友達になろうぜ皆!」
 突如、入り口の扉上にしつらえられた大きな窓が、激しい音を立てた。無数の銃弾に貫かれ、破片がばらばらと降り注ぐ。ベイカーは両腕で身をかばいながら、飛び込んできた影を見上げた。
 月光に煌めく銀髪。全身にまとわりつくような、異形の銃。後から飛び込んできたカラスが周囲を守る。
 銀髪の男は、ゆったりと着地すると、ベイカーに笑いかけた――それは穏やかなものではなく、どこか狂気を伴って。
「ふふ、なかなか面白いじゃないか……! 記憶を消すなんて!」
「俺が辛いことを全部忘れさせてやってもいいんだぜ?」
「もっと、もっと戦ってみせてくれ」
「あー、……記憶を消して友達になろう、って通じる相手じゃなさそうだな」
 一人、楽しそうにくつくつと笑う男に、ベイカーは肩をすくめた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シキ・ジルモント
◆SPD
オブリビオン同士で潰し合うだけなら好きにすれば良いが、そう上手くはいかないようだな

まず目の前の敵を片付ける
自信を与える?生憎だが必要無い、敵の言葉は聞き捨てる事で誘惑の回避を試みる
包囲されないよう常に移動しつつ、ユーベルコードで頭部を狙撃(『スナイパー』)
敵の数は多い、無駄弾は使いたくない
…それに、あえて苦しませる事もないだろう

同族殺しは動向に注意しつつひとまず放置
こちらとの交戦の意思を見せたら今は戦う気がないと断言し、
やる気のない相手と戦ってもつまらないだろうと『言いくるめ』る事で戦闘を回避したい
「領主の討伐が最優先だ。あんたが領主とやりあっても満足できなければ改めて相手をしてやる」


エウロペ・マリウス
同族殺しへ

何事も順番は必要だよ
本日のデザートは、ボク達猟兵
メインデッシュは、傲慢魔人プライディア
最初はオードブル……彼女達だよ

行動 WIZ

攻撃は【射殺す白銀の魔弾(ホワイト・フライクーゲル)】

氷の『属性攻撃』と『全力魔法』で攻撃力を
『誘導弾』と『高速詠唱』で、命中率と回転率を上げるよ

願望や欲望を刺激する攻撃に関しては、
『オーラ防御』と『呪詛耐性』『狂気耐性』を併用して耐えるとするよ

同族殺しが、猟兵達に興味を持って攻撃をこちらに仕掛けてくるようなら
こんな君好みの完璧なディナーを、自身の手で台無しにするつもりなのかと『言いくるめ』られるように頑張ろうかな



「お出ましのようだね」
 エウロペ・マリウス(揺り籠の氷姫・f11096)はその純白の髪と揃いの帽子をくい、と持ち上げた。視線の先には同族殺しの姿。彼女の視線をシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)も横目で追う。笑顔を崩さない男に不気味さを感じながらも、ひとまず敵意はないと判断したシキは、アリスシスターズへと照準を定めた。
 その動作に反応した六体のアリスシスターズが、シキへと視線を向ける。人形のような少女が召喚した好意がふわふわと漂い、シキへとささやきかける。
「自身をもっていいの。あなたはもう裏切られたりしない。だってそれだけの力を持っているのだもの。ねえ……」
「――生憎だが、必要ない」
 一言で断じ、シキは両手で構えたハンドガンの照準ごしに少女を睨みつける。
「……っ」
 放たれた弾丸は、なおも言いつのろうとする少女の頭を的確に打ち抜いた。目を見開いたまま、一瞬で敵は絶命した。
(無駄弾は使いたくない……あえて、苦しませることもないだろう)
 シキとマリウスに視線をむけているのはあと五体。シキは、別の一体へと標的をすばやく定めると、敵が口を開く前に、狙いすました一撃で敵の頭を貫いた。
 
 別の個体は燭台を構え、マリウスへと近づいた。感情を揺らすようにゆらゆらと炎を踊らせる。ねえ、と甘く、通る声でエウロペへささやきかける。
「会いたくはない? あの人に――」
 マリウスはそっと目を閉じ、意識を集中させると、オーラを展開させた。敵の呪詛を聞いてはいけないと、心を強くもつ。
 声が心に届かなくなるのを待って、手にしたファタ・モルガナ・ビブリオテーカの表紙をなでる。ばさ、と勢いよく開いた魔導書から魔法陣を展開し、氷の精霊を召喚した。
「闇を穿つ射手がつがえしは白銀の矢、白き薔薇を持たぬ愚者を射貫く顎となれ!射殺す白銀の魔弾(ホワイト・フライクーゲル)」
 打ち出された百以上の魔弾が宙を切り、敵を襲った。敵は逃げ惑ったが、魔弾は逃さない。生きているかのように追従し、四肢を打ち抜いた。マリウスは詠唱を素早く重ね、氷の雨をさらに濃くしていく。
 氷の弾幕が止むころ、散開しそこねた敵の二体が、地面に転がっていた。
 
「無駄がない一撃、華麗な乱撃、見事な砲撃だなあ! 私もじっとしてはいられないな!」
 男はぱちぱちと拍手をした後、銃砲を構えた。その銃口は前面へと、猟兵たちもまきこむ方角を向いている。
 待ちたまえ、と愛らしい声が上がった。
「何事も順番は必要だよ? 本日のデザートは、ボク達猟兵。メインディッシュは、傲慢魔人プライディア。最初はオードブル……彼女達だよ」
 エウロペに静止された男は、その言葉に興味を惹かれたように動きを止めた。シキが冷静な言葉を重ねる。
「今はあんたと戦う気がない。領主の討伐が最優先だ。あんたが領主とやりあっても満足できなければ改めて相手をしてやる」
「クールな男に理知的な少女。ふむ、なかなかヒロイックな組み合わせじゃないか。いいぞ、いいぞ!」
 笑うヴァンパイアは、すでに自分の思考に陶酔したように、二人から視線を離した。
「早く続きがみたい……つまらない戦いは終わらせてしまおう!」
 血色の砲弾をアリスシスターズに向け乱射し、二体をたちどころに撃墜した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。銃使いの同族殺しね。
単なる共食いなら捨て置くんだけど、
ここで止めないと更なる災厄となる…か。

今までの戦闘知識から敵の精神攻撃を事前に捉え、
心の中で祈りを捧げて狂気耐性と気合いで防ぐ

…人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を。

…それが大切な人達から託された私の誓い。
生憎だけど、この望みをお前達に託す気は無いわ。

第六感を頼りに同族殺しの殺気を暗視して銃撃を見切り、
空中戦を行う“血の翼”を広げ回避してUCを発動

生命力を吸収する呪力を溜めた大鎌を怪力任せになぎ払い、
呪詛のオーラで防御を無視して傷口を抉る闇属性攻撃を行う

…無駄よ。戯れ言で私は止められない。
骸の海に還るが良い、願望の少女達…。



「……単なる共食いなら捨て置くんだけど、ここで止めないと更なる災厄となる……か」
 敵を打倒したヴァンパイアを横目に、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はそっと呟いた。ならば倒すまで、だ。まずは目の前の少女たち。
「……限定開放。血の翼よ……!」
 解き放たれた力が、リーヴァルディの全身を包み、やがて血色の双翼に変わる。彼女は大きく羽ばたくと、空中へと舞い上がった。吹き抜けの大広間であれば、空中戦を行える十分な高さがある。少女たちは【純粋なる好意】を召喚し、リーヴァルディをとらえようとあがく。
 熟練の猟兵であるリーヴァルディにとっては、特段、組しにくい相手ではない。少女たちが誘惑の言葉を紡ぐ前に、瞑目して心の中で祈りを捧げ、集中する。
(……人類に今一度の繁栄を。そして、この世界に救済を。それが大切な人達から託された私の誓い)
「ねえどうして戦うの? そんな苦しいことをしなくても、わたしたちが――」
「……生憎だけど、この望みをお前達に託す気は無いわ」
 強く言い切ると、リーヴァルディは呪力を蓄えた大鎌を振り上げて急降下、血色の波動をほとばしらせながら力任せに少女たちを薙ぎ払う!
 リーヴァルディはふわりと着地すると、なぎ倒した少女たちを静かに見つめた。
「……無駄よ。戯れ言で私は止められない。骸の海に還るが良い、願望の少女達……」

成功 🔵​🔵​🔴​

ミリア・ペイン
欲の為に味方まで手に掛けるの?
本当、野蛮で頭のおかしな連中ね
そのまま同士討ちで全滅すればいいのに

【WIZ】《冥き深淵の守護者》
ガキと遊んでる暇はないのよ、さっさと散って

数が多いわ
突出して囲まれない様に注意
私は2体の陰に隠れて攻撃を受けない位置で【オーラ防御】で自衛を
【第六感】での攻撃予測も

強化されたら面倒ね
召喚された好意は最優先で攻撃
召喚者もろとも一気に切り刻んでやりましょ
仕留めきれなくても【呪詛】を刃に込めて苦痛で動けなくしてやる

同族殺しが来たら距離を取って様子見
彼を盾にしつつ背後から援護する様な形で誤魔化しましょう

余計な詮索は無しにしない?
お互い利害が一致している
それでいいでしょう?



 同胞であるはずのアリスシスターズが倒れていく様子を楽しそうに見、時折自ら攻撃をしているヴァンパイアに、ミリア・ペイン(死者の足音・f22149)は冷たいまなざしを向けた。
(欲の為に味方まで手に掛けるの? 本当、野蛮で頭のおかしな連中ね。そのまま同士討ちで全滅すればいいのに)
 ミリアはヴァンパイアから距離をとり、少し引いた位置に陣取る。
「さあ行って、悪い奴らをやっつけちゃって」
 深淵を思わせる黒渦から、ミリアは暗い色の衣を纏った大鎌を構えた死神と、赤と白の不気味で大きな兎のぬいぐるみを召喚した。二体を先行させ、自らは熊のぬいぐるみをきゅっと抱える。
 残りのアリスシスターズたちがミリアたちに襲い掛かる。だが、ミリアが視線を向けると、分かっていたとばかりにぬいぐるみが彼女をかばった。
 それならば、とアリスシスターズたちが召喚する好意と善意の塊は、死神が呪詛を込めて大鎌で薙ぎ払っていく。それでも、と好意をミリアにむけるが、オブビリオンに強い殺意を抱いている彼女の心を、動かすことはできない。
「ガキと遊んでる暇はないのよ、さっさと散って」
 ミリアの言葉とともに、死神の鎌が、最後の少女を狩りとった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『傲慢魔人プライディア』

POW   :    あなたは誰を殺しますか?
【今にも死にそうな子供】【戦えば家族が救えると信じている青年】【死に場所を求めている老人】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD   :    あなたは誰も救えない。
【洗脳した戦う力のない人々を盾にする事で】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    救うべき者達を殺して世界を救って下さい。
【猟兵を憎むよう洗脳された戦う力のない人々】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
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●領主の部屋にて
「……突破されたようですね」
 プライディアは、ビロード張りの椅子から立ち上がると、武器である大きな十字架を手に取った。祈るように額をあてる。
「神より賜りし『支配』の力で猟兵どもを狩ってみせましょう。我が神よ。しかし……」
 階下から駆け上がってくる気配に気を集中させる。猟兵たちに混じって、わずかに同胞であるはずのオブリビオンの気配がするのだ。
「噂に聞く同族殺し、ですか? 猟兵たちを狙うように仕向けたいところですが……」
 殺気が両開きの部屋の扉のすぐむこうまで迫ってきた。思案する時間はなさそうだ。まあ、構わない。双方とも殺してしまえばいいのだから。
ベイカー・ベイカー
※アドリブ・連携歓迎
ははっ。領主さん、俺はお前の天敵かもな。ま、今回のトドメは同族殺しに任せるけどよ。

同族殺しを【挑発】で【言いくるめ】る。領主と1対1で戦わせてやる。お前が威勢だけの似非バトルマニアじゃないのなら弱い人間には手を出さず最初は大人しく見てな。

【先制攻撃】のUCで人間たちと領主、同族殺しを忘却の迷宮に閉じ込める。人間たちは【範囲攻撃】で全員纏めて洗脳そのものと洗脳されるに至った経緯を忘れさせる。記憶は全部終わった後に戻してやる…かも。そして迷宮の炎を操って同族殺しを領主まで誘導。

炎を【追跡】しな、同族殺し!その先に領主がいるぞ!存分に戦え…その後は面倒臭いけど俺が相手してやるぜ。


エウロペ・マリウス
さぁ
次はメインデッシュのお出ましだね

行動 WIZ

すべてにおいて、護るべき人々を盾にするような攻撃は厄介
この後の同族殺しとの戦闘もあることだし、
出来るだけ館からは退避させておきたいところだね
申し訳ないけれど戦闘は他の猟兵達に任せるよ

『挑発』で思考を単純化して『催眠術』を利きやすくして、
その後、『睡眠術』を用いて、召喚された人々を館外に誘導
館の『地形の利用』して、人々が戦闘に巻き込まれないように努めるよ

退避させても洗脳されている以上、この場に放置しても戦場に戻っていく可能性が高い
だから、悪いけれど眠っていて貰うよ

「誘い癒やせ……蝶達の誘い(バタフライ・ドルミーレ)」

ボクは人々の保護に全力を尽くすよ


リーヴァルディ・カーライル
…ん。罪も無い人々を操るのね。
やりようはあるけれど…今は不味い。
…同族殺しが彼らを撃つ前に避難させないと…。

今までの戦闘知識から敵の殺気を暗視して紙一重で見切り、
“血の翼”を広げ残像を残して空中戦を行いつつ、
魔力を溜めて【血の魔線】を多重発動(2回攻撃)

両手に繋いだ無数の魔糸を目立たないように巡らせて、
生命力を吸収して操られた人達を拘束
同族殺しの弾丸を魔糸を収束したオーラで防御して、
怪力任せに糸を引き寄せ戦場から離脱させる

…怪我人は後で治してあげる。今は退きなさい。

第六感が好機を捉えたら突撃
傷口を抉る呪詛を纏う大鎌をなぎ払う闇属性攻撃を行う

…お前の思い通りにはなりはしない。
残念だったわね。


シキ・ジルモント
◆SPD
獣の姿を曝し代償を伴う戦い方を選んででも、人を盾にされる事を阻止する
理由?…領主のやり方が気に入らない、それだけだ

ユーベルコードを発動、同時に狼に変身
スピードを上げ、妨害を受けにくい低い姿勢を保ち、
洗脳された人間達が反応する前にその足元を『ダッシュ』で駆け抜け領主に接近する

接近したら人の姿に戻り攻撃
邪魔が入らない『零距離射撃』の間合いで射撃、出来た隙を突いて蹴り飛ばし洗脳された人間達の側から引き離す
人を盾として使わせない為、そして同族殺しが攻撃しやすい位置へ移動させる為だ

同族殺しは人間を撃たないように注意、代わりに領主への攻撃をサポート
“つまらない戦いは終わらせる”だろう?協力してやる



●優先すべきは
 大広間を回り込むような階段を駆け上がり、猟兵たちは教会を思わせる扉の前へたどり着いた。同族殺しは、事態を楽しむようにゆったりと彼らの後をついてきている。距離は十分離れていた。
 両開きの扉の向こうからは、祈り、あるいはうめきのような、人々の声が聞こえてくる。オブリビオンの能力を考えれば、想定できる事態であった。
 エウロペ・マリウス(揺り籠の氷姫・f11096)は走りながら確認した館の構造を思考内で組み立てる。実際にこの館は教会としての機能を備えているのだろう、外壁は頑丈なつくりであるように思えた。館外に逃れるには、通常の手段では自分たちが駆け上がってきた階段を下りるしかない。プライディアが盾にするであろう人々はそこから外、庭へと逃がし、外壁を壊さず建屋内で交戦するのがよさそうだ。
「ボクは人々の保護に全力を尽くすよ。この後の同族殺しとの戦闘もあることだし、出来るだけ館からは退避させておきたい」
 エウロペが同行する猟兵たちにそう告げると、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はこくりと頷いた。
「……ん。同族殺しが彼らを撃つ前に避難させないと……あなたに任せる」
 問題は洗脳と突入直後だけど、というエウロペに、ベイカー・ベイカー(忘却のススメ・f23474)が心得たり、とにやりと笑った。
「洗脳を解くのは俺に任せてくれよ。忘れちまえば問題ないだろ?」
「突入直後は俺が阻止する」
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は強い闘志を湛えた声で告げる。
(獣の姿を曝し代償を伴う戦い方を選んででも)
 人を盾に取らせはしない。――領主のやり方は「気に入らない」。ぎり、と奥歯をかみしめ、狼の姿への変化に備えて気を高めていく。その視線は、すでに扉の向こうにいる領主を捉えているようであった。
「行くぞ」
 短く宣言して、シキは扉を押す。僅かな隙間ができるとすぐさま突入し、イクシードリミットを発動させたシキの姿は、空間を奔りながら狼へと変わっていく。
 扉のむこうはまさしく教会であった。祭壇の前に佇んでいたプライディアが目を見開く。木造りの長椅子に座っていた人々が、オブリビオンを守るべく立ち上がった。だが、その全ての動きはシキには関係がない。低く、弾丸のように最短距離で駆けて敵を捕らえた獣は、瞬時に変身を解き、銃という牙をプライディアへと突き付けた。
 一瞬の視線の交差。響く銃声よりも早く、敵の体から血が噴き出した。そのまま祭壇の奥へと蹴り飛ばす。プライディアを守る人の盾はシキの背後だ。守ることができず、まごついている。
 隙をつかれたプライディアは、しかしすぐさま立ち上がると声をあげた。
「猟兵です! みなさん、今こそ思いを掲げるときです!」
 座していた人々が一斉に立ち上がる。瞳には強い憎しみが宿っていた。あるものはそまつな棒切れを、あるものは壊れかけの農具を、あるものは急ごしらえの石入りの麦袋を手に、猟兵たちへ殺意を向ける。
「……思いね。ははっ。領主さん、俺はお前の天敵かもな」
 人々が動き出すより早く、部屋に侵入していたベイカーは両手に炎を生み出すと、空間を薙ぎ払うように払った。礼拝室全体が瞬く間に炎に包まれていく。炎は空間を縦横無尽に遮り、迷宮へと姿を変えた。
「つらいことは全部わすれちまえよ!」
 迷宮の炎が人々を、プライディアを覆う。洗脳された記憶を消され、不安げに迷宮をさまよう人々に、エウロペが『催眠術』を試みる。
「ボクの声を聞いて。キミたちは向かう場所はどこだい?そう――」
 声に誘われるように迷路を抜け出した人々は、エウロペの言葉に従って、礼拝室からふらふらと出ていく。同族殺しはエウロペたちに追いついていた。つまらなそうに銃を構えた同族殺しに、ベイカーが叫ぶ。
「ただの人間を倒して何になるんだ? お前が威勢だけの似非バトルマニアじゃないのなら弱い人間には手を出さず最初は大人しく見てな!」
 同族殺しは柳眉をしかめたが、やはりつまらなそうに銃を降ろした。
「実につまらないが、脆弱な人間の保護にまわるのも仕方ないな……」
 嘆息する同族殺しをベイカーの炎が包む。
「炎を【追跡】しな、同族殺し! その先に領主がいるぞ!」
 炎に揺らめく迷宮の中、導く鬼火を前に、同族殺しは何かを思案するように首をかしげる。
「存分に戦え……その後は面倒臭いけど俺が相手してやるぜ」
「猟兵たちの華麗な戦が見られぬというのなら、仕方あるまい」
 ぽつりとつぶやいて、彼は迷宮を歩き出した。

 迷宮の影響を受けずにプライディアのもとにたどり着いたリーヴァルディは、血の翼をはためかせ、大鎌をふるいながら交戦していた。巨大な十字架を操り、オブリビオンは体躯に見合わぬ重い攻撃を繰り出してくる。しかし空中へ逃げるリーヴァルディはなかなかとらえることができない。
 苛立つプライディアはユーベルコードを発動させ、子供と青年、老人を召喚する。子供の苦しむ声が、青年の殺意が、老人の懇願がリーヴァルディを襲う。
「……限定解放。この糸から逃れる事はできない、血の魔線」
 待っていた、とばかりにリーヴァルディは血の魔線を二重発動させると、召喚された人を拘束した。三人の生気がみるみる失われていく。すぐさま抵抗はやんだ。彼女は魔糸を力任せに引き寄せると、大きく後退するように飛び、プライディアの射程から離脱させる。自分はすぐに身をひるがえし、敵へとおどりかかった。
 ユーベルコードを無効化されひるんだ敵に、呪詛を纏う大鎌をふるい、シキの残した傷口を抉るように薙ぎ払う。プライディアがたたらをふんだ。
「……お前の思い通りにはなりはしない。残念だったわね」

 無辜の人々を庭まで誘導したエウロペは、呆然と立ち尽くす人々に、心の中でそっと謝った。
(悪いけれど眠っていて貰うよ)
「誘い癒やせ……蝶達の誘い(バタフライ・ドルミーレ)」
 ユーベルコードで召喚された氷の蝶が、人々の間を舞い踊っていく。かく、と一人が崩れ落ちた。波紋のように、人々は眠りに落ちていく。
 皆が眠りにおちるのを見届けて。
「……さて」
 呟いて。エウロペは、戦いが繰り広げられているであろう館を見上げようとして――目を見開いた。

 ベイカーの迷宮を抜けた同族殺しが、シキ、リーヴァルディの両名とプライディアの交戦地へとたどり着いた。シキが同族殺しに声をかける。
「”つまらない戦いは終わらせる”だろう? 協力してやる」
 言い、敵へと銃弾を撃ち込んでいく。強力なオブリビオンであるプライディアは、傷つきながらも簡単には倒れそうにはなかった。
「脆弱な人間を盾に戦う、劣悪で悪役向きな逸材だと思ったのだが、こうなるとたしかに、”つまらない”な」
 同族殺し――『戦争卿』ブラッド・ウォーデンはコートを大きく翻す。戦争卿のユーベルコードが大気を震わせた。他には誰も立っているものがいないはずの空間から、ガシャンと重い金属音が複数、響く。
 リーヴァルディは即座に危機を察知し、魔糸を収束させたオーラの盾を展開した。無数の散弾が彼女とシキ、そしてプライディアにそそぐ。シキは祭壇の影に転がり込み、銃弾をしのぎながら振り返った。
 そこには、礼拝室をうめつくすほどの重装鎧の騎士が、斧槍と散弾銃を構えて立っていた。気配は館の外にも存在している。数名の騎士が斧槍を構えてプライディアに襲い掛かった。プライディアは逃げ出すべく、脱出路があるのであろう、脇の扉へ向かおうとする。
その足を、狙いすましたシキの一撃が打ち抜いた。
「素晴らしい腕だ。……君たちは役者不足ではないようだ」
 ブラッド・ウォーデンはうれしそうに笑うと、ためらいなく配下の騎士でプライディアを蹂躙した。

 断末魔の悲鳴が響き渡る。重ねて、ひとしきり狂気の笑いをあげたあと、さて、とブラッドは猟兵たちに向き直った。

「……相手をする、という約束を果たしてもらうぞ。さあ、お前たちの雄姿をとくと私にみせてくれ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『戦争卿』ブラッド・ウォーデン』

POW   :    開戦祝え銃砲連打の凱旋歌
【異形の狙撃砲から放つ血色の砲弾の大量乱射】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を敵対者を自動攻撃する射撃兵器群に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    “血塗れ傀儡”聖堂騎士団
自身の【領地内の人間・動植物全ての生命力と精神力】を代償に、【百年前の戦死者を素材とした千人の重装騎士】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【生命力吸収能力を付与された斧槍と散弾銃】で戦う。
WIZ   :    己を見よ、汝の名は『獣』なり
【戦意、敵意、害意、殺意、哀れみ、憎悪】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【対象本人と寸分違わぬ分身と武装】から、高命中力の【対象本人の最も殺傷力が高いユーベルコード】を飛ばす。
👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

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マスターより
最後のセリフにある通り、彼の欲求をみたすような雄姿(カッコいい動きやセリフ)を見せると、彼は喜び隙をみせます。
※プレイングボーナスが入ります。
2章よりも戦闘の判定は厳しくなりますので、ぜひプレイングボーナスを狙ってください。
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ベイカー・ベイカー
※アドリブ・連携歓迎
勇姿、なんて柄じゃないが…約束したしな。滅多に見せない本気モードで相手してやる。(別名:ヤケクソモード)
お前に限っちゃ焼くのは記憶だけじゃねえ。何もかも燃やし尽くしてやるぜ…!
砲弾の乱射は迎撃力がアップした葬送の炎で【カウンター】。炎を【範囲攻撃】で広げて【盾受け】して砲弾が当たる前に焼き尽くす。射撃兵器群にも同様。兵器の方は焼いちまってもいいかもな。
同族殺し本体は忘却の炎で狙う。銃の撃ち方でも忘れさせれば、かなり有利に立ち回れるしな。全体の状況を有利に持っていけたら改めて両方の炎の範囲攻撃かつ【全力魔法】で全て消し飛ばす!
強かったぜ、えっと……あれ、お前、誰だったっけ?


シキ・ジルモント
◆SPD
ああ、今度は相手になろう

室内という『地形の利用』を考え、攻撃回避を試みる
銃は周囲の椅子や祭壇や敵を遮蔽物として利用、斧槍はあえて隙を見せ大振りな攻撃を誘って空振りさせ床や壁に刃を食い込ませ躱す

騎士の配置を観察して比較的敵が薄い場所を『見切り』突破を狙い、戦争卿に一泡吹かせる
…奴なら逆に喜ぶかもしれないが
邪魔な騎士は鎧の継ぎ目を狙って狙撃し排除

突破したら戦争卿へユーベルコードを発動するが、これは『フェイント』の目くらまし
『早業』で弾倉を交換しつつ接近、威力の為間合いを詰め再度ユーベルコードを『零距離射撃』で叩き込む(『2回攻撃』)

容赦はしないがあんたはそれを望んでいるだろう?
難儀な性格だ


エウロペ・マリウス
さて
ではデザートの出番だね

行動 WIZ

戦闘を開始する前に
『礼儀作法』を用いて、丁重にカーテシーを行うよ
今宵のディナーは、キミのためだけのものじゃない
お互いがお互いの皿に乗ったデザート
“喰うか喰われるか”
キミにとっての、最高に刺激的で甘いデザートじゃないかな?

「穿つは氷の抱擁。拒絶を糧に芽吹き、理に反逆の爪を立てよ。創造せし凍結の世界(ニヴルヘイム・ノヴァ)」

敵の攻撃が、ボクの姿を模すというならば、
攻撃と自身の強化も併せて行える【ニヴルヘイム・ノヴァ】で対応させて貰うよ
模写された殺傷力の高い攻撃を受ける際には、凍った地形での自己強化を、『地形の利用』で更に高めて、しっかりと対応するよ


リーヴァルディ・カーライル
…ん。ならば約定通り吸血鬼狩りとしてではなく、
今は一人の猟兵として真正面なら勝負よ、戦争卿。
…この一撃で、お前を骸の海に葬送してあげる。

吸血鬼化した自身の生命力を吸収してUCを二重発動(2回攻撃)
両掌に闇属性の“過去を世界の外側に排出する力”を溜め、
第六感を頼りに術が暴走する限界を見切り制御する

…闇の娘がこの世界に住まう精霊に請い願う。
吸血鬼を討ち猟兵の使命を果たす為の力を此処に…。

反動で傷口が抉れる痛みを気合いで無視して怪力任せに両手を繋ぎ、
空中戦を行う“血の翼”を背後に放出し姿勢を制御して、
闇属性攻撃の呪詛のオーラで防御ごと敵をなぎ払う“闇の奔流”を放つ

…消えなさい戦争卿、この世界から…。



●血戦の食卓
「……相手をする、という約束を果たしてもらうぞ。さあ、お前たちの雄姿をとくと私にみせてくれ!」
 高らかに言い、口角を上げた『戦争卿』ブラッド・ウォーデンの表情は、どこか童子を思わせた。
「ああ、今度は相手になろう」
「……ん。ならば約定通り吸血鬼狩りとしてではなく、今は一人の猟兵として真正面なら勝負よ、戦争卿」
 彼はシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)とリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の言葉に無邪気な笑みを浮かべながら、無数の銃口を展開し四方に向けて構えた。召喚された重騎士たちも猟兵たちに武器を向ける。
「おひとつ、デザートをお忘れではないかい?」
 後方から響いた少女の言葉に、戦争卿の視線が入口へ向かう。そこでは、エウロペ・マリウス(揺り籠の氷姫・f11096)が優美にほほ笑んでいた。彼女はスカートの端を軽くつまみ、片足を後方へ引きながら膝を軽く曲げ、ゆっくりと上体を傾ける。優雅なしぐさであいさつをした彼女に、これはこれは、と戦争卿も長躯を大きく使って一礼した。
「今宵のディナーは、キミのためだけのものじゃない。お互いがお互いの皿に乗ったデザート」
 エウロペの歩みにあわせて、彼女の周囲の温度が下がっていく。戦争卿はほう、と首をかしげて彼女の言葉に耳を傾けた。
「“喰うか喰われるか”――キミにとっての、最高に刺激的で甘いデザートじゃないかな?」
 ぴしぴしと音を立てて、エウロペの周囲の空気が凍り付き、氷の弾丸を形成していく。
「はははっ、詩的なたとえだ。……では、互いに喰らいあおうぞ!」
 腕を振り上げたのはどちらが先だったのか。戦争卿の前へ純白の気配が少女の形に結晶し、部屋全体の空気が冷えていく。こだまのように詠唱が響きわたる。
「穿つは氷の抱擁。拒絶を糧に芽吹き、理に反逆の爪を立てよ――」
「「創造せし凍結の世界(ニヴルヘイム・ノヴァ)」」
 相対した氷の姫が氷の魔弾で撃ち合う。それはお互いの体を穿つ。エウロペは凍り付いた床の上にたち、魔力を高めてオーラ防御で魔弾をはじいていく。だが数弾が彼女の体をかすめ、白き衣を赤く染めた。同様に、幻体の背後にいた戦争卿の体を貫いていく。
「ははは、美姫の見惚れるほどの攻撃、しかと見届けたぞ。では次は泥臭い戦といこうじゃないか」
 戦争卿の言葉とともに、猟兵たちを囲んでいた重騎士が動き出す。一斉攻撃を告げる号砲とばかりに、戦争卿は狙撃砲の乱射をはじめた。部屋のあちこちの家具が破壊され、簡易砲台に変異していく。
 戦場が銃弾で埋め尽くされる。
 シキは床を蹴り、戦争卿へ向かって低く駆けだした。椅子を遮蔽に銃弾を躱す。彼の疾走をとめるべく重騎士が迫った。ひるんだかのように後退したシキを、叩き殺さんと全力の斬撃が襲う。シキは素早く踵を返し、側面へと転がり込むと、騎士に目もくれずに目標へと再び走り出す。再び襲い来る個体を、今度は甲冑の目元へ弾丸を撃ち込んで怯ませ、隙を縫って進んでいく。
 なんとか進みやすいルートを探すが、ひしめく、というのが正しい量の敵数だった。肉薄するにはいくばかの被弾を覚悟しなくてはなるまい。
 それでも決意を固めて、弾幕の中を走り抜ける。何発かの血弾がシキを襲おうとした瞬間。
 彼の周囲を炎が舞い、瞬く間に銃弾が蒸発していった。――ベイカー・ベイカー(忘却のススメ・f23474)の葬送の炎が操り、兵器群から打ち出される銃弾を焼き払ったのだ。
「勇姿、なんて柄じゃないが……約束したしな。滅多に見せない本気モードで相手してやる」
 彼は両の手に黄と緑に燃える炎を展開させ、複数の砲台の乱射と並ぶ速度で炎を打ち出していく。炎は迎撃だけでなく、そのまま砲台に襲い掛かり、焼き尽くした。
「のらりくらりとした男かと思ったが、さすがは猟兵だな!」
 負けてはいられまい、と戦争卿は自前の銃をかまえた。ベイカーは唇をひきしめて、ひときわ大きな炎を錬する。
「お前に限っちゃ焼くのは記憶だけじゃねえ。何もかも燃やし尽くしてやるぜ……!」
「やってみるがいい! 私の渇望を燃やしきれるというのならばな!」
 異形の銃がベイカーをとらえる。散弾銃のようにベイカーたちを襲った。ベイカーの葬送の炎が銃弾を押し切るように受け止め、焼いていき、忘却をいざなう炎をヴァンパイアまで到達させる。
 炎に包まれ、よろめいた戦争卿が銃口を下げた。が、一瞬の後、ヴァンパイアは大きく頭を振ると、銀髪の隙間から戦意を湛えた目をぎらつかせた。
「まだだ……!」
 新たに生成された銃口が、ぎょろりと一斉にベイカーへ向かう。す、と背筋に冷たいものが伝った。まだだ。こちらも新しい炎を生み出す。
「……最初から綺麗に勝てるとは思ってねえよ!」
 砲台から彼を守るように炎を展開させていく。――注意を引き付けられただけでも十分だ。
「っ!?」
 戦争卿が息をのんだ。二人の交戦の合間を縫って、肉薄し跳躍していたシキが斜め頭上で銃を構えていた。遮蔽をとるように、大きくマントを翻すと、動きに追従した重騎士が戦争卿をかばう。金属ががらがらと崩れる音がした。弾倉を交換する音も、シキが家具を床を蹴った音も、金属音に紛れ。その動きも金属塊に遮蔽され。ヴァンパイアが迫る銃口に気が付いたのは、すでに肩口に突き付けられたときだった。
 戦争卿が歓喜に目を見開く。
「全弾くれてやる」
 シキのフルバースト・ショットが戦争卿の体を高速で貫いていく。肩から胸にかけていくつも空いた風穴から、ヴァンパイアの血液が流れ落ちる。シキは銃撃の反動で後方に着地すると、戦争卿へ銃口を向けなおした。敵はけたけたと笑っている。
「見事に不意をつかれたな……! はは、これだから猟兵は面白い!」
「難儀な性格だ……」
「しかし悠長に構えている暇はあるのかね?」
 迫る殺気に、シキは身を翻した。次の一撃は何体かの重騎士を倒してからでなければ難しそうだ。眉をひそめ、シキは距離をとった。
 入れ替わるように、銃撃を縫って戦争卿のもとへ血の翼を広げた少女が飛来する。
「……限定解放。テンカウント」
「来たかヴァンピールの娘よ。呪われし力をふるうかね?」
 リーヴァルディを指差すと、敵の前に銀髪の少女が姿を現した。彼女は大鎌ではなく、光の刃を掲げている。吸血鬼化したリーヴァルディの肌を、その光はじりじりと灼いた。さらに、ユーベルコードの反動がリーヴァルディの体を襲う。たどり着くまでに浴びた銃弾の傷口がひどく傷んだ。
「……闇の娘がこの世界に住まう精霊に請い願う。吸血鬼を討ち猟兵の使命を果たす為の力を此処に……」
 声音には苦痛をにじませず、朗々と彼女は詠唱する。両掌に敵を外側に排出する闇を収束させていく。目の前に立つ、映し身の少女が光の刃を大きくふるった。脳内で何かが警鐘を鳴らす。
 軋む体を無視して、両の手を合わせる。光の刃が足をかすめたが、血の翼で飛び上がってそれ以上の負傷は避けた。彼女を見上げた戦争卿と、まっすぐ見つめ合う。
「……この一撃で、お前を骸の海に葬送してあげる」
 呪詛を込めた、闇の波がリーヴァルディの掌からほとばしっていく。その“闇の奔流”は彼女の姿をしたものと戦争卿を飲み込み、彼らの存在という概念を薙ぎ払っていく。
「……消えなさい戦争卿、この世界から……」
 哀悼するようなリーヴァルディの声とともに、闇の奔流が止まる。すでに映し身はなく、ブラッド・ウォーデンが一人、膝をついていた。
 重低音を響かせて、鎧たちが崩れて動きを止めた。すべての銃口が沈黙した。
 ヴァンパイアだけが、肩を震わせて小さく笑っていた。
「欲しかった戦物語は、我が身を犠牲にしてこそか」
 4人の猟兵は警戒を解かずに、彼の様子を見守る。
「しかと見届けさせてもらったよ、ああ、もうすこしだけ見ていたかったが……」
 男は、最後にそうつぶやいたきり倒れ伏した。
 彼の口が戦いを渇望することは、もうなくなったのだ。
 灰に変わっていく敵の姿をみて、4人はようやく、武器を降ろした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年11月18日


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#ダークセイヴァー
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#同族殺し


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は須藤・莉亜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はレナ・ヴァレンタインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト