●覇狼院
覇狼院とはかの装魔封災戦において、特異な服装と独特な魔法体術を以って災魔に挑んだ漢達の集団である。
彼らの使う魔法体術は特殊な戦場において特に強さを発揮し、酸のプールに梯子を渡した戦場や強い磁力を持った柱などで大いにその力を発揮したという。
一説にはハロウィンとは覇狼院の名を称えたものと言われていたが、近代の調査により、それは否定されている。
(アルダワ書房刊、大器晩成説話)
……かつてアルダワ世界では、10/31に「装魔封災戦(そうまふうさいせん)」という、人類が災魔の仮装をして災魔の拠点に侵入し、大規模な奇襲で大量の災魔を封印した大作戦が決行された。その成功と勝利を祝って始まったのが、今日のハロウィンという訳なのだが。
その敗戦の記憶が残っているのか、今も本能的にハロウィンを忌み嫌う災魔は多く、今回も、衝動のままに学園へと現れてくる事が予知された。
●グリモアベース
「というわけで、学園のパーティ会場に災魔が現れるけど、奴ら、『仮装した者を優先的に狙う』ので、猟兵が仮装していれば他の人への被害はねえ。乱入者を倒そうぜ!」
グリモア猟兵、雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)がノンブレスで今回の内容を言い切った。
「とは言え、俺達は切った張ったが商売の猟兵だ、今まで戦いばかりで仮装が思いつかないのもあると思う。なので、俺がハイセンスな仮装を用意した」
少年がにししと笑い引っ張ってきたハンガーに吊り下がっているのは俗にいう長ランとスラックス。
「そう! 番カラだ!!」
え、ここアルダワ魔法学園じゃ……。
「うるせえ! てめえらみんなブレザーじゃねえか!」
え、サクラミラージュなら詰襟……。
「ここはアルダワだ! 空気読め!」
少年は肩で息をしつつ、呼吸を整えれば、改めて猟兵に向き直る。
「ちなみに拳法着もあるぜ。それじゃあ、みんなよろしくな!」
グリモア猟兵が屈託のない笑みで時計をいじれば、門が開かれた。
みなさわ
ネタ枠です、こんにちわ。
今回はハロウィン限定シナリオですが、みなさわの歪み切った学生世界観にお付き合いしていただけると幸いです。
●舞台
蒸気機関と魔法で造られた広大な学園が戦場となります。
なので、魔法実験の為に作られた謎の実験場が数々あります。
今回は周りにハロウィンパーティを楽しむ学生や先生たちが居ますので実験場の提供に大いに協力してくださると思います。
●服装
デフォは長ラン、スラックス、腹にさらしです。
服装のアレンジはOKですし、もしご自慢の仮装があれば戦いのときに披露できます。
●それを踏まえて
今回、冒頭に簡単でいいので闘技場の設定を御願いします(硫酸のプール、高いところに張り巡らされたワイヤー等)
大まかに書いてくだされば、みなさわがアレンジします。
●ひょっとしてタイマン?
そうです。
敵は君達と同じ強さなので油断すると負けます。
また、ユーベルコードの複数使用はサバイバルに準じますのでご注意ください。
●ハロウィンパーティは?
他のMSさんがハイセンスなモノを用意してくれるから、そちらに行かれることをお勧めします。
では、皆さま、漢を見せてくださいまし。
第1章 集団戦
『コボルト』
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POW : 爪牙強襲
【鋭い爪牙】による素早い一撃を放つ。また、【四足歩行】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD : 爪牙蹂躙
【駆け回ること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【鋭い爪牙】で攻撃する。
WIZ : 猛牙咬撃
【噛みつき】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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●理を捨て、心の赴くまま、魔物は武に臨む
アルダワ学園に現れる黒い影。
白い道着は血と汗に汚れ、黒い帯はほつれ、所々が白い。
それ以上に……犬の頭をした魔物の目が飢えていた。
コボルシングアーツ
「我ら総合犬闘術集団、古暴流徒! ハロウィンの魔力打ち破らん為に貴様等に決闘を申し込む!」
「総合犬闘術……だと!?」
アルダワの教師が驚愕の表情でコボルトへ眼を開く。
「爪と牙で人を殺める為に磨いた我らが武術。ああ、分かっている集で戦えば理あることを……だが!」
犬頭の武人が拳を握る。
「このハロウィンの力がその理を蹴散らし、望むのだお前達との戦いを!」
理性を失い己が心に従ったコボルトの姿に教師が、学生が、距離を取る。
……彼等の歌を終わらせるのは君しかいない。
(お知らせ)
プレイング受付は10月31日8時30分からとなりますのでよろしくお願いします。
津久根・麦穂
拳法着と迷いましたが
普通に長ランで行きましょう。
前のボタンは止める派です。
九九八十八!
あの古暴流徒とかいう奴、まともではありませんね。
なんだか猛烈に悪い予感がしてきました。
今回私が臨む闘技場は…迷路状の狭い通路で構成される
密閉された巨大な箱…『断恕無』(ダンジョン)!
『恕』とは思いやりの心…
すなわち恕を断ち無とする情け無用の迷宮!
アルダワ書房の本にそう書いてあります。
狭い場所は私の最も得意とする地形。
数々の『斗羅賦』(トラップ)を仕掛け、
敵は檻に囚われた犬も同然。
駆け回るほど倭異夜亜斗羅賦(ワイヤートラップ)の餌食です。
フッ、その罠はくれてやります。
地獄の閻魔への土産にでもするといいでしょう。
●第一闘、地獄の猟兵現る!
「あの古暴流徒とかいう奴、まともではありませんね」
コボルトの集団の前に一人の猟兵が歩み出る。
長ランのボタンを留め、緑色の外套を纏う男の名は――
「津久根・麦穂(ストレイシーフ・f19253)ー!!」
ヘルズ・イエーガー
「如何にも、人は私を地獄の猟兵と呼びます」
古暴流徒と猟兵の様子を見守っていた角刈りに眼鏡の生徒が名を呼べば、麦穂は纏っていた外套を跳ね上げる。
……キャラが違う? ハロウィンですよ。
ポインター
「麦穂と言ったか? ならばこの古暴流徒随一の急所打ちであるセターが相手をしよう」
その佇まいにただならぬ気配を感じたコボルトの一人が前に出る。
「よろしいでしょう、では勝負の形式は……?」
猟兵が呟けば、場に居たアルダワの教師が手を上げ、大地より密閉された巨大な箱型の建物を召喚する。
「第一闘の舞台は『断恕無』! 各々方は二つある入口から入り、迷宮と化した密室で勝負してもらいたい!」
「断恕無……人界における思いやりの心」
セターが冷や汗を拭えば
「すなわち恕を断ち無とする情け無用の迷宮!」
麦穂もその言葉の意味を知る。
「貴様らにふさわしい場はここしかあるまい……では、勝負!」
猟兵と災魔、二人の男は互いに視線を交わせば、断恕無へと潜る。
次に会うのは命を奪い合うと知りながら……。
先に動いたのは古暴流徒のセター。
持って生まれた動物の体躯に修練が組み合わされば、それは駿足で且つ縦横無尽。
普通の猟兵ならば秒も持たないだろう。だが――
爆風がコボルトの動きを止める。
「トラップだと!? いつの間に」
「狭い場所は私の最も得意とする地形」
迷宮の中、木霊するのは猟兵の声。
ヘルズ・イエーガー
「地獄の猟兵である、私にかかれば貴方は檻に囚われた犬も同然」
爆風の中駆け抜けるセターの身を何かが切り裂く。
ワイヤートラップ
「駆け回るほど倭異家奥義、糸斬縛罠の餌食です」
張り巡らされたワイヤートラップがコボルトを切り裂き、獣たる身を捕えんとする。
ちなみに倭異家の老婦が結った縄は丈夫なことで定評があり、ワイヤーロープとして今日に伝わっているのは真の歴史を知る、皆が詳しいであろう。
閑話休題
だが、獣の身に修練を重ねた漢の眼はまだ死んでいない。
「まだだ! 貴様が智によって我を倒さんならば、我は地を疾り、拳で貫かん!」
「いいでしょう!」
そして、セターが狙う男も
「九九八十八の鋼糸を以って、貴方を捕える!」
やはり漢であった。
疾走するコボルト、罠を張り巡らせる猟兵。
機を見て麦穂が一歩踏み出せば――
「見えた――届いたぞ猟兵ィィィィ!!」
獣の手刀が人の胸を貫いた。
「…………」
沈黙が支配した。
「成程、わざと踏み込むことによって、最後の糸を隠したか」
セターが笑えば、その頭は音も無く落ちた。
「違いますよ……」
麦穂の口から赤いものが流れる。
「罠には餌が必要……そして貴方は強かった。だから投じたのです……命を」
遅れて人の身が倒れ。
「……戦闘不能確認」
教師が戦いの終わりを告げた。
成功
🔵🔵🔴
アルドユガ・フラルフラル
「むうっ、あれは世に聞く古暴流徒!」
額に「大王者」と書かれたチビの金髪エルフ(歴史マニア)が解説者ポジから入る
8歳用長ランをだぶっと着こなす
嘲笑われても不遜に笑い返しワイヤー張りの闘技場へ降り立つ
「堊琉弩勇駕(あるどゆが)、推して参るのであーる!」
王者の卵的な【存在感】を放ちつつ【SPD】で仕掛ける
今回だけは詠唱&ルビなしUC
駆け回る敵に高速移動で対応
ワイヤーに伝わせた雷光から敵の動きを【見切り】剣の間合いに踏み込み勝負を決める!
「覇王迅雷の覇とは此れすなわち覇狼院なりなのであーる!」
↑アルダワ書房レベルの異説です
「古暴流徒よ、覇狼院に挑む貴様もまた余とおなじく1匹の覇狼院なのであったぞ!」
●第二闘、覇を唱えろ大王者流奥義!
「むうっ、あれこそが世に聞く古暴流徒!」
「知ってるのか堊琉弩勇駕ーっ!!」
額に『大王者』と書いたエルフ、アルドユガ・フラルフラル(とっとこ冒険道・f18741)の言葉に学帽を被った生徒が振り向いた。
「実力はあの通り、次は余が参ろう」
アルドユガが前に出れば、古暴流徒からも長身痩躯のコボルトが前に出る。
「では、次は私だ。咆哮のアフガーンが相手をしよう」
猟兵と災魔、二人の漢の視線が交わされれば、教師は右手を上げ床下に仕込んであった高さ50メートルはあろう縦穴にワイヤーが張り巡らされた闘場を用意する。
「第二闘は暗抗張糸闘にて、行う! 両者、闘場へ!」
教師の声に人と獣、二人の餓狼が闇深き戦場へと降りていった。
「堊琉弩勇駕、推して参るのであーる!」
アルドユガが適度な張力を保って張り巡らされた鋼糸の上に立ち、剣を構えるとアフガーンは、ほう、と関心を示す。
「その体躯で片手半剣――バスタードソードの使い手とは。だが、この咆哮のアフガーン、貴様が子供とて情けはかけない!」
コボルトが構えると、少年も笑みを見せた。
それは戦士として扱われたことへの礼、そして返礼は……武技によって返される!
糸が揺れ、互いの姿が消えた。
最初の一撃は同時であった。
爪と剣、互いの得物と得物がぶつかり合い、そして離れれば、不安定な足元を物ともせず、獣は反射神経と鍛えた体術で、少年は自らを光輝かせ雷光を自らの感覚器として走り抜け、縦横無尽に武器を合わせる。
一合、二合、三合、四合。
雷光が走れば影が舞い、闇が襲えば光が阻む。
「人間にしては、やりおるな」
「そちらこそ」
獣が笑い、人が笑う。
「これが覇狼院というものか、素直に集団で攻めればよかったものを何故か、一対一などという道を」
「分かっているであろう?」
アフガーンの言葉にアルドユガが問いかける。
「アフガーンよ、覇狼院に挑む古暴流徒達もまた余とおなじく1匹の覇狼院なのであると!」
「笑止!」
獣が吠え、姿が消える。
目で追い切れぬと悟った少年は灰色の瞳を閉じれば、剣を寝せ、脇構えにて待ち受ける。
コボルトの爪が空を切り裂けば、獣の咆哮を思わせる音が闘場に響き渡る。
「これぞ、我が爪牙蹂躙!」
アルドユガの頭上遥か上に張られたワイヤーから飛んだアフガーンが爪を振り下ろす。
「――見切った!」
少年が目を見開き、天頂へと刃を振り上げる。
「覇王迅雷の覇とは此れすなわち覇狼院なりなのであーる! 大王者流奥義!」
「天殺咆哮斬!」
「覇王迅雷」
獣と人の声が重なり、互いが交錯すれば、落ちるのは一人、アルトユガ!
「させぬ!」
左腕を斬撃で紅に染めたコボルトが叫び、鋼糸を蹴って飛び降りると少年を庇うように抱きかかえる。
「何を……する!?」
爪撃を胸に受けたアルトユガが問うと、アフガーンが笑う。
「電を糸に通して私の気配を察知していたとはな……その技、死なすに惜しい」
「放せ! 離すのだ!」
「もし、この戦いに悔いがあるなら……息子と戦ってくれ、いつか」
それが最後の言葉だった。
古暴流徒の戦士は少年を庇って遥か真下の石畳にその身を叩きつけ、そして死んだ。
「……戦闘不能確認」
教師は一瞥すると、闘技場から背を向け歩き出した。
苦戦
🔵🔴🔴
日月・獏ノ進
あー…何か察しましたので以前アルダワで名乗った「猟兵塾一号生筆頭日月獏ノ進」とノリノリで名乗ってみたりしてみますかね。一応学帽ではなく鉢巻で。
闘技場は金属の網で出来た巨大球の中の行う「暴輪倶(ボウリング)」、時間が経つとボウリングよろしく巨大な機械の手によって球は地面を転がされます。
左右に揺れたりして中々動きにくいので駆け上がっての【空中戦】を狙ってみますかね。ただ球の中を縦横無尽に駆け回られるとこちらも攻撃を当てるのは難しい、ならば体を張りますか。相手の武器は爪と牙、【勇気】で被弾覚悟でギリギリまで誘い込んで【接撃の計】のカウンターを仕掛ける。
「全力でぶつかって勝つ、これが猟兵塾の心意気よ」
●第三闘、これが猟兵塾の心意気!
「セターとアフガーンがやられたか」
「だが、二人は古暴流徒の中でも若輩……」
「皆よ、いい加減認めよう。人界にも強者が居るということを」
口々に自尊心を守ろうとするコボルトを諫めるようにひと際大きい体格の災魔が声を上げた。
「我が名はサモ=エド、古暴流徒が戦士の一人。名乗り出られよ、強者よ。俺は一族の為にも強き者への勝利が欲しい」
「ならば猟兵塾一号生筆頭、日月・獏ノ進がお相手いたします」
空気を読んで鉢巻を巻いた日月・獏ノ進(陽気な奇策士・f00422)が呼びかけに応えて前に出れば、教師が片手をあげ、次の闘場を召喚する。
「これは……人界に聞く、暴臨愚!」
サモが網で作られた巨大な球とそれを持つ巨人像を見て、呟いた。
「左様、第三闘は暴臨愚にて行う、異存はないか?」
「巨人が投擲した暴れる球の中で戦いに臨む愚か者を指す、この決闘法……望むところです」
猟兵の言葉に災魔が頷き、互いに闘球の中に入れば、蒸気で駆動する巨人がそれを転がした。
先手を取るのは獏ノ進。
不安定な足場故、あえて螺旋の如く駆け上がりサモの上を取れば、空中からの体術を以って霊刀での一撃を振るわんとする。
だが――
「破ァッ!!」
巨漢の災魔は爪で刀を捌き、猟兵の手首を取れると体格差を活かし、力強く球体へ投げつける。
「俺はこの通り身体が大きく、素早さに欠ける」
反動へ跳ね返った獏ノ進の身体を自らの爪でを捕えれば、彼もまた球体の中を舞う。
「故に膂力を鍛えた――受けるがいい! 爪牙強襲奥義、跳球落下散!!」
何度跳ねただろう。人と獣が球の中で暴れ、そして災魔が立つ。
「命を懸ける奥義すら、我らは身に着けた。全ては地上へ上がるため」
倒れし猟兵にサモが手向けとばかりに呟く。
「ならば……」
「――!!」
立ち上がる獏ノ進の姿に災魔の眼が見開かれる。
「体を張りますか」
そして、猟兵が刀を捨てた。
「無刀……武器を捨てることによって捨て身の一撃にかけるか」
「捨て身ではありません」
サモの言葉を獏ノ進が否定した。
「全力でぶつかって勝つ、これが猟兵塾の心意気!」
「ならば見せてみろ! その心意気を!」
「獏ーっ!!」
災魔が駆け出し、戦いを見守る学生が声を上げる。
コボルトが繰り出すは爪牙強襲、獣の速さ、持って生まれた体躯、そして修練によって洗練された右爪の一撃。
竜の猟兵が飛び込む、勇気を以ってぎりぎりまで引き寄せれば、右手の中に隠した小刀にてカウンターを狙う。
鈍い音が鳴った。
「見切った!」
サモが叫べば、左の手刀が獏ノ進の小刀を叩き落とした。
「――今だ!」
叫んだのは猟兵。
左腕が鉢巻きに伸びれば、勢いよく振るわれた布は刃のような切れ味を見せ、災魔の頸動脈を斬る!
「見……事……」
ただ一言、言い残せば、首から夥しい血を流し倒れ行くサモ。
その姿を鮮血を浴びた獏ノ進がただ、見守る。
「……戦闘不能確認」
教師は只、戦いの終わりを告げた。闘者にそれ以上触れないように。
大成功
🔵🔵🔵
●参上! 古暴流徒三犬面!
「やはり、人間! 一筋縄ではいかないか!」
古暴流徒の背後より声が響く。
「あ、貴方方はー!?」
一人のコボルトが驚愕すれば。
「アキタ」
巨大な肉体を持ったコボルトが一言呟き。
「シヴァ」
均整の取れた体つきのコボルトがそれに続く。
「カイ……我ら、古暴流徒三犬面!」
小柄な災魔が最後に名乗れば、古暴流徒三犬面は前に出る。
「君達の実力は見せてもらった」
相手に敬意を示しつつ、シヴァが口を開けば。
「だが、それもこれまでさ!」
カイがからかうように笑う。
「この戦い、我らで終わりを告げよう」
アキタが場に響き渡るような低音で勝利を予言する。
とうとう現れし、古暴流徒三犬面。
果たして、猟兵と災魔の決着はいかに!
次回「古暴流徒三犬面との戦い」
そこんとこ、よろしく!
ロータス・プンダリーカ
幅50cmの手摺りの無い吊り橋。
下には針の山が見え、時々樽が戦士に向け飛んでくる。
「む、これぞ世に聞く血武羅婁樽(じぶらるたる)…!」
(知ってる事に驚く厳つい学ラン生徒二人の前で神妙な顔)
決闘死威(けっとしい)に取って犬科の災魔は永遠の怨敵ですにゃ。
我が研ぎ澄まされし猫流銃型(ニャン=カタ)がお相手致すにゃ…!
(宙返りを決めつつ前に。学ラン姿から拳法着に。拱手し一礼)
片手に銃を構え、高さの恐怖を克服しつつ、幾何学的動作にて敵の動きをかわし、至近距離より銃撃。
攻撃は銃で受け、拳を放つ!
爪はボクも負けないにゃよ!(ひっかき)
なかなかやるにゃ…!?
或陀把(あるだわ)学園魂を、漢を見せつけてやるにゃ!
●第四闘、血武羅婁樽の血衣
「最初は俺から行くぜ!」
古暴流徒三犬面の一人、カイが前に出る。
対する猟兵側も小柄……というか猫が出てきた。
名はロータス・プンダリーカ(猫の銃形使い・f10883)、決闘死威と呼ばれる義を重んじる恩返しの種族である。
ケット・シー
「我々、決闘死威にとっては犬科の災魔は永遠の怨敵……」
ロータスの言葉に含まれるものは重い。
それを肌で感じた災魔も目を細めて殺意を表に出せば、アルダワの教師が校舎の壁を開かせて次の闘場を用意する。
「む、これぞ世に聞く血武羅婁樽……!」
決闘死威の呟きに厳つい学ラン生徒二人が振り向けばロータスのこめかみに冷たいものが流れる(猫なのに)。
無数の針の山。その上に架けられた手すりのないつり橋、そして不定期に飛んでくるジブラル産の樽。
普通の猟兵では立つことさえ難儀であろうそれこそが――
「如何にも」
血武羅婁樽。
「第四闘は血武羅婁樽で行う! 各々準備せい!」
教師の言葉が終るか否や、二つの影が橋へと飛び乗った。
ニャン=カタ
「我が研ぎ澄まされし猫流銃型がお相手致すにゃ……!」
宙返りから橋に着地したロータス、その姿は長ランから拳法着へ。
拱手し一礼すればカイもそれに習って礼を返す。
「俺の名は三犬面の一人、カイ……そういや、あんたの名前聞いてなかったな?」
「ロータス。ロータス・プンダリーカですにゃ、覚えておくといいにゃ」
名を聞けば小さな災魔は笑い
「覚えておくさ、墓に名を刻むため!」
決闘死威へと飛び掛かった。
縦横無尽、鼠を弄ぶ猫のようにカイが橋を跳び、飛んでくる樽を蹴り、爪牙で飛び掛かる。
片手で銃を構えたロータスが幾何学的な動きで爪を受け流せば、得物の引鉄に力を込めた。
銃声と反動で橋が揺れる中、災魔は身を捻る様にしながら宙を舞い、猫の背後を取る。
「獲った!」
「まだにゃ!」
振り向いたロータスが拳銃でカイの爪を防げばカウンターの拳。
毛が触れる程の間合いで災魔が首を倒して拳を避けれると、猫と犬、二人の戦士が距離を取る。
「これが……猫流銃型」
カイが笑みを浮かべる
「そちらこそ――猫がネズミを倒す象形拳、鼠功の使い手とは」
ロータスも笑みを以って応えれば、黒き災魔は影となる。
「そうさ! 体格に劣る俺には猫の真似をするしかなかった! 屈辱とは思わなかった! それが俺の強さだから」
目にも止まらぬ爪撃の嵐。
不安定な足場を種族特有のバランス感覚で克服していなければ最初の一撃で猟兵は針山の藻屑と消える勢い。
「これが俺の爪牙蹂躙!」
カイがすれ違うように不安定な橋を疾走すれば、ロータスは全身を紅に染め膝を着く。
「なかなかやるにゃ……けど!」
立ち上がった決闘死威が決意の眼で振り向けば、来ている道着を脱ぎ裏返しに纏う。
赤に染められた道着の背には『或陀把』の文字。
「あれは……アルダワに伝わる四十二の法衣の一つ、薨!」
「死を賭しても為すべき時の……いわば死に装束!」
涙を流し、見つめるのはアルダワの生徒達。
「或陀把学園魂を! 漢を見せつけてやるにゃ!」
紅に染まった猫の咆哮に黒の犬が敬意を払い拳を握る。
「その心意気、受け取ったぜ! 喰らえ! 俺の全身全霊の!」
影となってカイが消えれば、ロータスは銃を持った右手を掲げ金の瞳を閉じる。
「鼠功・爪牙蹂躙!」
災魔の爪が猟兵の胸を貫けば、ロータスの眼が開かれる。
「待っていたにゃ、この時を!」
振り落とされる銃把、グリップで頭を叩きつけられたカイが体勢を崩したところでその懐に銃を当て、猟兵は引鉄を引いた。
「後は任せましたにゃ」
銃声二発。
「そして、言わせてくださいにゃ……さようならと」
針山に落ちていく影も二つ。
「……戦闘不能確認」
教師が闘いの終わりを告げれば、ジブラルの樽が飛ぶことはもう無かった。
成功
🔵🔵🔴
ニレッド・アロウン
◎
一定時間で鉄杭が数本突出してくる狭い闘技場。
古暴流徒です?ほうほう良い名じゃねーですか!ならこっちも名乗りましょうか!私は仁烈怒(ニレッド)です!かかってこいやぁ!
番カラにさらしを巻いて、鉄パイプよろしく水晶鋏を肩に担いで登場です!そして初手から中指突っ立てて【挑発】です!え、する意味?それが決闘の流儀ってもんですよ!
そんで相手の攻撃や鉄杭はあえて受けてやります。とはいえただ受けるのも癪なんで魔力障壁による【オーラ防御】は展開し、ある程度凌いでいきましょうか。そしてある程度負傷も嵩んだところで魔術式により身体機能を一気に向上!強化された肉体からの【怪力】で一気にブッ飛ばしてやります!
●第五闘、死倒! 鉄死倒出林!!
教師の手によって次の闘場が用意される。
それは狭い闘技場。
特徴的なのは床にある複数の穴。
「ほう、鉄死倒出林とは懐かしい……」
大柄の身を舞わせ闘技場に降り立ったのは三犬面の一人アキタ。
「ある一定の時間を経過すれば床より鉄杭が突出し闘者を殺すというこの闘場、突出して死に至るものは多い……此度は誰が犠牲になる?」
アキタが笑う。
「古暴流徒三犬面です? ほうほう良い名じゃねーですか!」
それに応えるように荒っぽい女の声が響き、長ランが舞う。
「ならこっちも名乗りましょうか! 私は仁烈怒! かかってこいやぁ!」
色白の肌をさらしに巻いて、水晶鋏を肩に担ぐのはニレッド・アロウン(水晶鋏の似非天使・f09465)。
アキタに向きなおるや否や、中指を空高く掲げる。
「ほう、鉄杭にて我を倒すと宣言か……貴様、この戦いの流儀を知ってるな?」
災魔の言葉にニレッドが面を喰らったような表情を見せるが、すぐに笑みを浮かべる。
「おうさ、殺してあげますよ。串刺しで」
後にこの仕草が海外にて侮蔑の証となるのは賢明な読者はご存じであろう。
閑話休題
「では第五闘、鉄死倒出林――始めぃ!!」
教師の宣言と共に災魔と猟兵、二つの影がぶつかり合った。
それは爪牙というには荒々しく、掌底というには無法すぎた。
コボルトにしては巨躯のアキタが繰り出す重さの乗った掌底突きをニレッドが両腕を盾に受けとめる。
体格差で吹き飛ばされると皆が思う中、耐える猟兵。
「その動き――オーラ・ア・ドープ」
掌の感触から全てを悟ったアキタが感嘆の表情を見せる。
オーラ・ア・ドープ
斉の拳法家、金紗沙が暴漢に囲まれた時、壁を背にその攻撃を一手に受け、疲れたところを逆襲に転じた時に使われた防御法である。オーラを使って威力を壁や大地に逃がすその方法は非常に高度な技量を要し、現代においては1974年に当時の世界王者がロープを使って奇跡的に再現したのが数少ない例である。
(拳闘社刊、奇跡の拳より)
「よくお分かりでございやすね」
自らの技法を見抜かれたにもニレッドが笑みを浮かべる、相手の実力への敬意ゆえに。
「だが、その技法で全てを受けきれるほど、我が爪牙強襲は甘くはない。受けてみよ!」
鋭く放たれる掌底、猟兵が受けとめた瞬間、外力とは別の衝撃が浸透する。
「まさか……徹し!?」
驚くニレッドへ次々と掌底を叩き込む災魔。
「いかにも! 獣に向かって十年かけて身に着けた骨へ徹す法! これに我が膂力が加われば――!」
叩き込まれるのは掌底という名の波濤。
だが、猟兵は笑う。
その反骨心ゆえ、死中に活を求める闘い方故!
「とどめだぁ!!」
アキタが全体重を乗せた掌底を打ち出せば、ニレッドが水晶鋏をその手に握り掌底へと突き刺す。
鮮血が舞い、災魔の剛腕が裂かれたのを機に今度は猟兵がその身に秘められた怪力を以ってアキタを持ち上げる。
「これは魔術式!? ――最初からこれを狙って」
「そうでございます! 身を犠牲にして身体能力を上げるこれこそ――!」
ニレッドの喧嘩上等たる反骨精神!!
「くたばりやがりませ!!」
災魔の巨体をたたき起こせば、突出する鉄杭。
「予告通り……串刺しにしてあげましたよ」
荒い息の中、汗をぬぐった猟兵の視線には物言わぬ串刺しの骸が一つあった。
「戦闘不能確認」
教師が闘いの終わりを告げた。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
(電流デスマッチ・オプション何でもアリ)
(服装はSDに肩掛けにした長ラン、さらしの黒い番カラ・首は取れません)
このハロウィンの仮装が…祝いを楽しむ人々の笑顔が貴方の心を揺さぶるのならば
騎士として、いえこの場所の流儀に従い裏バンとしてお相手いたしましょう!
全身の格納銃器による●なぎ払い掃射は牽制程にしかなりませんか!
ですが接近されても●武器受け●盾受けの技術を駆使
そう易々と打ち倒されはしません
壁際に追い詰められた時が仕掛け時でしょう
学ランを脱いで投げつけ●目潰ししその隙に●だまし討ちする…
と見せ掛けUCを発動
カウンターを誘い動きを●見切り●怪力による渾身の一撃
どちらが相手を読み切るか…いざ勝負!
●第六闘、裏番登場! その名はトリテレイア!
「古暴流徒三犬面も私一人となったか……」
倒れていく同胞への涙をぬぐい、最後の一人となったシヴァが猟兵達の前に出る。
「三犬面の一人、シヴァ。倒れていった同胞の想いを背に、今、覇狼院を打ち破らん……そちらは誰が出る」
「ならば、私が参りましょう」
「トリテレイアッ!?」
野性味ある学生が振り向いた先には長ランを肩にかけ、黒いさらしを巻いた黒い騎士、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。
「このハロウィンの仮装が……祝いを楽しむ人々の笑顔が貴方の心を揺さぶるのならば」
肩にかけた長ランに袖を通した黒騎士は
「騎士として、いえこの場所の流儀に従い裏番としてお相手いたしましょう!」
正々堂々名乗りを上げれば、シヴァが笑みを見せる。
「騎士にして裏番……故に黒騎士か、面白い!」
両者の距離が近づく。その直後だった、天井より八枚の壁が落下すれば八角形の闘技場となって二人を囲んだ。
「これは……八卦雷鳴陣!」
トリテレイア闘場の名を叫ぶ、壁の後ろに蒸気放電器が取り付けられ、タービンを駆動し、いつでも雷鳴を放てるように備える。
「人界に伝わるという壁越しに雷を発射することで、闘者の勘と体術を試すという魔の武闘……存在していたとは」
災魔も冷や汗を拭い、伝説の闘場の存在に息を呑む。
賢明な読者なら『当たるも八卦、当たらぬも八卦』の意味がこの闘場で雷に打たれる様を見て名付けられた故事であることは古文書を紐解き、知っているだろうから、深くは説明しない。
「如何にも、第六闘にふさわしい舞台はこれしかあるまい」
教師が手を上げる。裏番と災魔、二つの黒が構える。
「第六闘、始めぃ!!」
先手はトリテレイア、格納していた銃器を展開すればそれを一斉射。
「破ァーーッ!!」
シヴァが叫び、見事な体術で回避すればワンツーのストレートで動きを止めてから跳躍。前方回転からの遠心力を乗せた足の爪による一撃を叩き込まんとする。
「くっ!」
剣で爪撃を受けとめれば、黒騎士による盾でのバッシュ。
巨大な盾故に点の破壊力は無いが、面の制圧力は高い。
「なかなかの技量……だが!」
災魔が足を交差するようにステップを踏み、再度に回り込めば肩口への当て止めのフックからボディへのアッパー。
装甲を貫く破壊力にトリテレイアがたたらを踏む。
「拳闘!」
「地上を目指し、我らコボルトが最初に磨いた技術こそ拳闘、故に名を――」
シヴァの拳が右に左へと対角線に振られて、叩き込まれていく。
コボルシングアーツ
「総合犬闘術! 我が爪牙強襲!」
災魔の拳から避けようとすれば雷鳴が壁越しに発射され、黒騎士の動きを阻む。むしろコボルトはガトリングの発射タイミングに合わせて拳を振るい、そして壁際へと追い込んでいく。
咄嗟、トリテレイアが学ランを投げつけ、視界を塞ぐ……けれど。
「甘い、このシヴァ。生来より盲目!」
「――分かっていました」
学ランを避けた災魔の前に立つのは拳を握った黒騎士。
シヴァがジャブを打てば同じようにジャブを打ち、フックを放てばそれにフックを合わせて相殺する。
「合わせてくる――だが、その技! 真の姿はそれではない!」
拳と拳がぶつかり合う中、災魔は叫ぶ。
「勿論、鏡でない以上、互いに違いがある。決着はそこへ行きつきます」
壁向こうからの雷鳴をお互いフットワークで回避しながら、二人が構える。
そう互いに違いがあるとすれば、コボルトに爪があり、トリテレイアには銃砲がある。
「爪牙強襲奥義!」
シヴァが一歩踏み込み、勢いを爪に乗せ、上から振り回せば。
「今です!」
トリテレイアも踏み込んでストレート。
互いの腕がぶつかり、災魔のロシアンフック気味の爪牙強襲をストレートで跳ねのけたと思えば、黒騎士のストレートも上からの叩きつけで威力を殺される――だが!
「私の……勝ちです」
「そう……だな」
トリテレイアの言葉に応えるシヴァ。
災魔が倒れれば、黒騎士が突き出した拳から覗く一つの銃口。
「拳部搭載型近接砲、名づけるなら……いや、やめておきましょう」
私は拳士ではないのですから……。
黒騎士が長ランを拾えば、倒れていった拳士にかけてそう呟いた。
「戦闘不能確認」
教師が闘いの終わりを告げればタービンの音も消えた。
大成功
🔵🔵🔵
●終局、古き暴力を振るう流転の徒
三犬面が倒れ、戦いが決まったと皆が思った。
天空より黒い影が二人、舞い降りた。
「三犬面を倒したか、ならば最後は我らが相手をしよう」
灰色のメッシュが入った傷だらけのコボルトが口を開き。
「我らは古暴流徒二大天! 原初にして最初の古暴流徒」
材木のように節くれだった拳を持つ、無骨なコボルトが言葉を続けた。
「二大天様! 総合犬闘術の開祖二人がご存命とは……」
コボルトの一人が驚愕すれば傷だらけの災魔が手で制す。
「よい、皆の成長の為。我らはあえて消えた」
「だが、もう充分だ。これ以上の犠牲は要らない」
無骨な災魔が首を振り、二人の古きコボルトが前に出る。
「決着をつけよう、人界の者よ。勝負の方法は――殺世王」
コロッセオ
「殺生王じゃと!」
アルダワの教師が恐怖に凍り付いた。
ザフェル・エジェデルハ
◎樒(f10234)と参加
自分が闘わない時は全力で樒を応援
今回はサシで勝負か
数にモノを言わせねぇその心意気、いいねぇ、悪くねぇ
受けて立つぜ!!
衣装はデフォの長ラン、舞台は円形闘技場「殺シアム」
漢と漢の真剣勝負(得物は斧だけど)の始まりだ
出て来いやっ!!
【力溜め】をしつつ敵との距離を詰め、ユーベルコードを撃つ
敵はかなり素早いことが予想されるので【第六感】や【武器受け】
【オーラ防御】で敵の攻撃を防ぎつつ、攻撃パターンなどを
【情報収集】し【カウンター攻撃】に繋げる
ユーベルコード以外にも【鎧砕き】【部位破壊】で敵の動きを鈍らせる
さあて、装魔封災戦の再現と行こうじゃねぇか
今回も俺達が勝たせて貰うぜ!!
織部・樒
◎
アドリブ・ネタもOK
ザフェルさん(f10233)と行動
……とはいえ、今回はタイマン勝負らしいですね
ザフェルさんの勝負時は解説でも致しましょうか
闘技場
うーん……では、大きな池に飛石
足場が限られている感じで
ザフェルさんのタイマン時は解説に徹しつつ所々で
さり気なく助言でも致しましょう
自分としては獅子を召喚し、威嚇しつつ飛石を飛び回って
敵を体当たりや爪攻撃で落とす感じで
自分も錫杖を持ち、敵攻撃は【オーラ防御】【武器受け】にて
受け止めます
それにしても、異国の催しは実に複雑怪奇です……
●最終闘、決着の殺生王!
――殺生王
アルダワにおける魔術実験設備の中において、実戦的な戦闘実験を行うために作られた円形の実験施設である。
ダンジョンの再現を目的に酸のプールや実際の獣が投入されるなど、多岐の実験を行うことが可能だが、それゆえに多くの死者を生んだ。
アルダワ教師陣はその愚かさを悔い、この実験場を殺生王と名付け、地下に封印した。
後に設計者が他の世界に神隠しに遭い。異邦の地で郷愁の念に駆られて作ったのがコロッセオと呼ばれていることは世界を渡る猟兵諸君ならご存じであろう。
(アルダワ書房刊、魔道封印録より)
「その殺生王を使えと!」
教師の言葉に二人のコボルトは頷き。
「人界にて作られし、最も命を弄ぶ舞台」
傷だらけの災魔が皮肉り
「それこそが人と我らの愚かなる戦いの決着にふさわしかろう」
無骨な災魔が肯定する。
「…………」
アルダワの教師は思考の末、片手を上げる。
それに応えるかのように床が割れ、地下より巨大な闘技場がせり出した。
「殺生王、第一の陣は酸盆浮狼闘! 強力な酸のプールと浮石の上で戦ってもらう!」
教師が言葉通り、闘場は一面、酸に満たされ、その上を無数の石が浮かんでいた。
「分かっているだろうが時間が経てば石も溶ける、長時間の戦いは出来んと思え」
「よし、受けて立つぜ!」
ザフェル・エジェデルハ(流離う竜・f10233)が一番に闘場へ乗り込もうとした時、先んじて、白い影が酸の池に浮かぶ石へと降り立った。
「樒ぃーっ!?」
「異国の催しは実に複雑怪奇……ここは私が行きます」
ザフェルの言葉を制するように織部・樒(九鼎大呂・f10234)が錫杖片手に巨大な球と共に酸の海へ立てば、無骨なコボルトが石を揺らさずに地獄へと降り立った。
「では、儂が相手となろう……樒と呼ばれていたな? 我が名はティンバー、まあ名前の通りだ」
「材木のように太く、硬いという意味ですか。浮石を揺らさずに着地できる者の名前とは思えませんね」
ティンバーの言葉に樒が錫杖を構え、相手の実力を看破する。
「そちらこそ……その巨大な球でどのような技を繰り出すか。見当もつかぬわ」
「いえ……ただの大道芸ですよ」
無骨な災魔の言葉に白天目のヤドリガミが応えれば、戦いの合図とばかりに互いが飛んだ。
「破ァーッ!!」
「酸の上を走る?」
間合いを詰めるために浮石に着地し、錫杖を構えた樒が見たものは酸の海を走るコボルト。
「この池、ところどころに割れた石が浮いておるわ!」
間合いを詰め鋭い爪による抜き手を繰り出すティンバーの一撃を錫杖で受け流す猟兵。
「愚直に爪牙蹂躙を極めた儂には例え手足が木となりても十分な足場よ!」
続いて飛ぶのは災魔の旋風のような蹴り。
それを阻むかの如く球体が飛べば、ティンバーの身が舞い、球体を避け浮石へと着地する。
「大道芸にしては手が凝っているな!」
「そうですか?」
災魔の言葉にとぼける様に答えを返し、ヤドリガミの身が舞えば、錫杖を振りかぶる。
大上段からの一撃をコボルトが避けたところへ、追い打ちで飛ぶ球体。
「見切った!」
ティンバーが叫び、球体へ跳べば互いがすれ違い、そして球は破裂する。
「ラ、ライオーン!?」
戦いを見守っていたザフェルが叫べば球体に潜んでいた黄金の獅子が咆哮した。
「白天目流、雷音来弩」
獅子に騎乗した樒が獅子に跨れば、今度は騎乗したヤドリガミが猛襲をかける。
因みに英語で騎乗をライドというのはこの来弩が語源であることを、真実を知る君達にとっては最早常識であることは想像に難くない。
閑話休題
「くっ! まさに弩が如き疾さよ!」
ティンバー自らも酸の池を駆けまわれば、撃ち合わされる災魔の爪と樒の錫杖。そして獅子の爪。
樒が錫杖を振るうごとにシャン!と音が鳴り、続いて何かがぶつかり合う音が闘場へ響く。
やがて浮石が沈み始め、残った石が二つとなった時。それぞれにコボルトとヤドリガミが乗った。
「決着をつけるときだな」
「ええ」
互いの意志を確認すれば。
「「では――勝負!!」」
人と災魔と獣、三つの影が舞った。
一直線に疾走するのはティンバー。
わずかに残った小石の如き破片の上を走り、空より襲い掛かる獅子の爪を掻い潜れば、鋭い爪の貫手を繰り出す。
一方の樒が錫杖でそれを受ければ、バランスを崩し宙を舞う。
「勝った!」
災魔が勝利を確信した瞬間。
「そう――勝ちました」
コボルトが乗った石を蹴って反転した金色の獅子がティンバーの胴を薙ぎ、主を拾って闘場の壁へとしがみつく。
「こう……一対一というのも悪くないですね」
相棒が観客席へと自分を引き上げる中、ヤドリガミが呟き、酸の海へ消えていった拳士へ哀悼の意を捧げた。
それは命を懸けた者への器物より生まれし者故の敬意であった。
「戦闘不能確認、次の戦いに移る!」
教師が闘いの終わりを宣言すれば、闘場が音を立てて揺れ始めた。
酸で満たされていたプールより液体が消え、せり出すは砂の大地。
あっという間に舞台はただの円形闘技場へと変わり、そこへ下りるは影二人。
「第二陣は……特に名は無い。ただの闘技場」
教師が語る中、前に出るのは長柄の戦斧を持った猟兵――ザフェル。
「故に、最後の戦いにふさわしかろう」
もう一人、前に出るのは最後にして傷だらけの災魔――グレイ。
「最終闘、殺生王――始めぃ!!」
最後の戦いの始まりが告げられれば、二つの影が疾走した!
攻撃は同時であった。
災魔のフック気味の爪撃を猟兵が斧の柄で受けとめ、腹を蹴れば追い打ちの斬撃。
たたらを踏んだグレイが刃を視線に収めれば上体捻る様に間合いを詰め、再び自分のレンジへと持ち込んでからのレバーブロウ。
痛みに耐えつつ、ザフェルが長柄の戦斧を蹴り上げれば石突が跳ね上がり、コボルトの顎をかち上げる。
「……互角」
互いが距離を取る中、樒はただ呟く。
「ふん、因果な者よ! この装魔封災戦の呪いが無ければ、我らは数を以って圧倒したものを」
災魔が忌々し気に呟く
「だがよう、数にモノを言わせねぇその心意気、いいねぇ、悪くねぇ」
しかし猟兵の言葉を聞いた途端、グレイは呆け、そして笑った。
「おそらく、コボルト達も分かっていたんでしょう」
二人の様子を見つめつつ、ヤドリガミが語る。
「このような時だからこそ、自分達が闘い、輝けるときだと」
それは古暴流徒が心の奥底に望んでいたもの。
人も災魔も樒の言葉に全てを理解し、改めて闘場へ向きなおる。
勝負の行く末を見守るため。
「さあて、装魔封災戦の再現と行こうじゃねぇか」
「応!! 今度は負けぬぞ人界の者よ!」
人と獣、互いに意を確認すれば
「いいや! 今回も俺達が勝たせて貰うぜ!!」
「ぬかせ! 二度も幸運が訪れるか!」
互いの影が再び重なった。
戦いは続く。
しかし最初は動き回っていた二人も今は足を止めて打ち合いに終始している。
いや、それしか出来ないのだ。
部位破壊――猟兵は災魔の足を狙い、災魔は猟兵の腹を打つ。
互いの攻めが彼らの足に枷を付け、重りとなってその場に縫い留めれば、そこで見られるのは緻密な攻防。
致命傷を避け、一撃を叩き込むため、相手の戦い方を知り、カウンターを狙い、五感を総動員し、それ以上の感を頼りにギリギリのところで回避する。
けれど……。
「そろそろ終わります」
ヤドリガミは戦いの終わりが近いことを予測していた。
斧と爪がぶつかり合い、互いに一歩下がった時、距離が出来たことで威力ある一撃を放つこの機を二人とも逃さない。
踏み込みは同時。
鋭い爪の手刀と長柄の斧が動くのも同時。
ならば決着は――
「技の質」
樒が呟いたのと、大地を叩き割らんばかりの剛の一撃が空を切り裂かんばかりの鋭の一撃を断ち切ったのは同時だった。
立っていたのはザフェルという漢であった。
同胞の骸を背負い、汚れた悲しみを背負いコボルトが去る。
誰もその背を狙うものは居なかった。
何故なら互いに死んでも譲れないものために戦ったのだから。
覇狼院は終わり、日常が始まる――。
「決着、猟兵の勝利!」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴