ハッピーハロウィン・アンダーグラウンド
●世に目覚めし永遠なる階
構内の庭を抜けた先に研究室がある。古びた扉を気にする者など一人もいない。中に入れば、高い丸天井にステンドグラスの明かりが差し込む。薔薇の飾られた巨大な十字架、豪奢な椅子には王冠だけが座し、8つの玉座がその部屋に収められていた。
「ーー来られたか」
「えぇ、お呼びとあれば」
黒衣を払った先、学園の生徒が纏うのは思い思いの仮装だ。一礼と共に応じた女子生徒が視線をゆるり、と流せば円卓に様々な料理が用意されているのが見えた。
ハロウィンの立食パーティー。
円卓とか絶妙に使いにくくないかな? とかいう疑問を抱いてはいけない。それが良いのだ。そこの意味がある。中央に置かれたゴブレットとか。ステンドグラスが差し込む位置にある硝子の食器とかーー眩しいけどーーそういう「もの」に意味があるのだ。
「狩人は既に? 狩の時間までもう、あまり時間はなくてよ」
「準備は進んでいるさ。果ての魔女。そう急くな」
交わす会話はどこまでも意味深に。けれど、用意された料理は何処までもハロウィンのパーティー料理。チョコレートの薔薇が飾られた真っ赤なケーキに、チェス駒に見立てたマカロンたち。ホワイトチョコの真っ白なジャックオーランタンは、始まりはカブであったという話に乗っ取って。ミックスベリーたちがその中に潜む。
魔女の帽子をつけたプチシューたちにも少し飽きれば、クレープをどうぞ。甘いものから、サラダクレープまで。
「ハーブも用意したさ。嗜みだからな」
どやぁ、と男子学生がポーズをとる。誰もつっこまない。つっこまない代わりにーー壁が、揺れた。
「な
……!?」
「ハッケン。ハッケン。……ノ波動ヲ」
壊された扉の向こう、姿を見せたのは自立型のロボット。蒸気を零し、その背の歯車が鈍く光る。
「排除スル!」
その声と共に、南瓜色の蒸気が吹き出した。
「まさか、古の使者が我らに気が付いたというのか
……!?」
●ハッピーハロウィン・アンダーグラウンド
「別に、そういう訳じゃないんだけどね」
すぱん、と言い切った少年のぴん、とたった猫耳が揺れる。黒猫の仮装だ。ハッピーハロウィン、と微笑んだユラ・フリードゥルフ(灰の柩・f04657)は、ちょっと面倒ごとが起きているんだ、と話を始めた。
「お兄さん、お姉さんたちなら、アルダワ魔法学園でハロウィンに関する古文書が発見された、って話は聞いてるかな?」
古文書に記されることによれば、かつてこのアルダワ魔法学園では装魔封災戦(そうまふうさいせん)と呼ばれる大規模な奇襲作戦があったという。
「人類が災魔の仮装をして災魔の拠点に侵入し、大規模な奇襲で大量の災魔を封印した……って大作戦があったらしいんだ。決行されたのは10月31日。この成功と勝利を祝って始まったのがハロウィンらしいんだけど」
大規模作戦だ。
この敗戦の記憶が残っているのか、本能的にハロウィンを忌み嫌う災魔は多くいる。
「今回も、その衝動のままの学園に災魔が現れるっていうのが予知されたんだ」
出現するのは学園のパーティー会場のひとつ。
参加者たちには地下実験室、と呼ばれている会場だ。一階にあるけれど。
「なんか、様式美? らしーんだよね。うん、人生に一度はかかるみたいな、封印された右目とか左手とか。永遠の縛とかそういう……?」
学園の生徒だったら普通に迷宮もあるのにね? とユラは首を傾げながら話を続けた。
「まぁ、そんな訳だからお兄さん、お姉さんには災魔をどうにかしてもらいたいんだ。数は結構いるんだけど、取れる手がある。仮装だよ」
現れる災魔は知性が低下しているうえ、仮装した者を優先的に狙うのだ。
「だから、お兄さん、お姉さんたちが仮装してくれれば他の人への被害はないよ。で、一応この会場のルールとしてはそれっぽいことを言ってもらいたいんだよね」
封じられた左目だとか右手だとか。
世界の果てに目覚めし悪意とか光とか。
「なんかそういうの? そういうパーティーコードみたいなもの、って感じと思ってくれれば良いと思うよ。一度はかかるあれこれーってやつ?」
敵はスチームゴーレム。蒸気で動く自立型のロボット部隊だ。
「その、それっぽいことを言いつつパーティーを続けながら戦ってくれれば、災魔は冷静さを欠いて隙だらけになるんだ。だからめいいっぱいこのパーティーを楽しみながら戦って欲しいんだ」
なにせ今日は一年に一度のハロウィン。
楽しい1日になるはずなのだから。
「よろしくね、おにーさん、おねーさん」
頭の上にちょこん、と載せていた黒猫のぬいぐるみを手にとって、ひらひらと一緒になってユラが手を振れば、淡い光が猟兵たちを送り出した。
秋月諒
秋月諒です。
どうぞ宜しくお願い致します。
ハロウィンですね。そんなこんなでアルダワでちょっとした事件になりました。
●各章について
一章のみの集団戦となります。
31日の冒頭追加後、プレイング募集です。
募集期間は、マスターページ、ツイッターでご案内致します。
また、全員の採用はお約束できません。
●仮装について
イラストを参照させていただきますが、念の為プレイングにも何の仮装か記載してください。
仮装イラストが無い方でもプレイングに記載していただければ、その仮装で描写致します
全て描写できるかは分からないので、ざっくりでおっけいです。
例:ユラの場合「黒猫の仮装です。お供の黒猫のぬいぐるみがあります」
●パーティー会場について
地下実験室を自称する一階の会場です。様式美です。
所謂中二病的ネタがドレスコードとなっています。料理は美味しいです。
それっぽいセリフについて
所謂中二病的セリフをお願いします。なんかそんな感じのパワー(圧)が強いと、より敵は冷静さを欠き隙だらけになるようです。
●敵について
スチームゴーレム
蒸気で動く自律型のロボット部隊です。歯車が金色に光り、蒸気から南瓜の香りがするように改造されています。カモフラージュのつもりらしいです。
それでは皆さま、素敵なハロウィンを!
第1章 集団戦
『スチームゴーレム』
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POW : 対猟兵捕獲ネット弾
【対象の回避行動を予測した後、両腕】から【ユーベルコードを封じる捕獲用ネット弾】を放ち、【対象をネットで捕獲する事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : 掘削用誘導弾ランチャー
レベル×5本の【先端が削岩用のドリルになっている、機械】属性の【、迷宮の壁や床を掘削して襲来する、誘導弾】を放つ。
WIZ : ニューバイパス
【迷宮を掘削して構築していた別通路を利用】【して、対象を包囲する様に別部隊が攻撃】【を行い、部隊間で連携して攻撃する事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
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●封じられし薔薇のなんちゃら
8つの玉座に囲まれたその空間は、部屋の扉からは想像はできない広さを保っていた。集まった者たちにとっては、さほど不思議な話ではない。この地下研究室はその為にあり、それでこそこの異界を形成しているのだから。ーー実際は古びたホールを改装したのだがそんなことはどうでもいい。些事なのである。
「まさか、此処が知られてしまっただと
……!?」
狩人と呼ばれた黒衣の男子生徒が息を飲む。
扉を破壊し、我らが十字架を倒した侵入者たちは一歩、また一歩と我らが円卓に近づいてくる。我らが多い気がするが気にしてはいけないのだ。
「ハッケンハッケン」
「……ノ波動ヲ」
「……ロ、ィンノ波動ヲ」
「排除セヨ」
一体、また一体と増える侵入者・スチームゴーレムたちが歯車を輝かせる。溢れるスチームは何となく南瓜の香りがする。ハロウィンに嫌なイメージを抱きながらも、こうすればた無事に侵入できると思ったのか。
「排除スル!」
キュイン、とほくほくの南瓜の香りと共にスチームゴーレムが武器を構える。
まさかの侵入者に誰一人動けずにいる中、前に出れるのはそうーー猟兵たちだけだ。
クロト・ラトキエ
仮装:ローブを頭から被り顔も正体も隠した魔術師風
(割と雑。本格的にやると変装の類になるのが嫌らしい)
宿命の刻、来たれり…(マカロン摘み)
地に魍魎満ちる夜、古の使者蔓延りて死者の楼閣を築かん
(訳:ハロウィンに災魔とか迷惑ですね)
然して!
訪いし汝等は嘆きの客人(ゴブレット拝借して)
此処に集いしは原初たる薔薇、導かれし数多が一騎当千(口直しにちょっと一杯)
即ち、
我らが二度の装魔封災である!(演出効果っぽくUC使用)
一気に距離詰め、接近戦へ持ち込み。
ネット弾?ご一緒に巻き込まれます?
駆動部へ攻撃力強化したナイフ打ち込み機能停止狙い。
何ですかその似非南瓜。
阿ってる時点で気合い負けしてんですよ(コレ耳打ち
浮世・綾華
オズ(f01136)と
仮装:猫又
中二病、調べてきた?
…ま、とりあえずやってみよーぜ
ハロウィン…いや
暗黒の宴も中々楽しいものだな
(長き刻…なるほど)
(キリっとした表情に吹き出す)
(それは普通のオズだろ)
血塗られし薔薇のケーキだってよ
うまそーじゃネ?
とりあえず食いながら中二考えよ
どこまで中二したら効果あんだろーな?
俺何言ってるか分かる?大丈夫?
あーーよし、やってやるぞ
深淵より黄泉がえりし機械仕掛けの使徒よ
我々救世主(メシア)の捌きを受けるがいい!
(右眼を抑える)
(これはスマホで検索したら出てきたポーズ)
花弁の刃を演出に使いつつ攻撃
…すげー、むずい!
でもオズめっちゃ面白かった
思い出しながらけらけら
オズ・ケストナー
アヤカ(f01194)と
オズの魔法使いモチーフの仮装
ちゅうにびょう、本でよしゅーしてきたよ
うんうんっ
まさかこのあんこくのうたげにまねかれることになろうとは
アヤカ
じゃなかった
ながき刻をいきる猫よ
いこう、おなかがすいた(キリッ)
わあ、たべるっ
上にブラッディ・ローズって書いてある
おいしいね
言ってること、ちゃんとわかるよ
(アヤカかっこういいっ
よーしわたしも)
にげなくていいのかな
かれがこの右目をかいほうしたならそのときには、
すでにきみたちは朽ちていることだろう
メシアの力を借りてここをヴァルハラとしようか
おいで、エターナルアブソリュート
ってシュネー呼んでぼこぼこ蹴るよっ
ふふ
ちゅーにびょう、たのしかったねっ
●この世の終わりに於いて
ーー光とは、訪れるものである。
「排除する。全て排除ーー……!」
「宿命の刻、来たれり……」
吹き出した蒸気が、空間さえ震わせたその時、声がした。はた、と揺れる黒衣。目深に被ったローブが来訪者の顔を隠す。
魔術師であることは事実だろう。
マカロンを掴みつつ、カツンコツン、と歩くその姿に、学園の生徒たちがざわつく。
「あれは誰……?」
「まさか、実在したというの……?」
何が、とか聞いちゃいけない。いけないのだ。
サクサクとしたマカロンを味わい、黒衣から溢れた黒髪がほんの僅か、揺れる。
「地に魍魎満ちる夜、古の使者蔓延りて死者の楼閣を築かん」
「な
……!?」
その言葉に学園の生徒たちが一斉に振り返る。一斉にだ。なんか花道まで出来上がってしまった。ついでに特殊な単語を理解する人々にはちゃんと「訳:ハロウィンに災魔とか迷惑ですね」という言葉が一緒に聞こえているのである。
知識とは時に世界を広げるものなのである。
「然して!」
ばさ、と黒衣が揺れる。ローブの隙間、その瞳を見ることができたのはスチームゴーレムだけだろう。クロト・ラトキエ(TTX・f00472)の前、振り上げた筈の腕が固まっている。
「……ヲ感知、感知、カン
……!?」
受けたの衝撃は情報量か。
困惑したように、スチームゴーレムの歯車が光る。上がる彩度が薄暗い部屋を照らし出し、巨体の影が強く残る。その影を踏むように、クロトはゴブレットを手に取る。
「訪いし汝等は嘆きの客人」
掲げるような指先に、ほう、とこの場に集まった生徒たちが息を飲む。その言葉に、所作の全てに彼らは見惚れていたのだ。
「此処に集いしは原初たる薔薇、導かれし数多が一騎当千」
唇をつけ、口直しと共に喉を潤す。先にマカロンの甘さとよく合うラズベリーサイダーが心地よい。
「即ち」
コン、と円卓へとゴブレットを返す。指先が円卓を滑れば、淡い光がクロトの足元から生まれた。
「我らが二度の装魔封災である!」
瞬間、水の魔力が床に描かれる魔法陣と共に黒衣の背に翼を授けた。
「装魔封災」
「装魔封災」
「排除スル、排除スル」
完璧だった。完璧であるが故にーー……。
「あれはーー……!」
「まさか、百日の方……!」
「冗談だろう? だってあれは、伝説の!?」
名前がついた。
なんか知らないうちに二つ名がついた。伝説らしい、と頭に一つ辿り着く頃には、正面に収めたスチームゴーレムが、ギ、と軋む音を立てた。
「排除、排除、排除排除排除排除ハイ
……!?」
ばふん、と上がるのはちょっと焦げた感じの南瓜の香り。クロトの語りに、その姿に冷静さを欠いたスチームゴーレムがこちらを見失ったように頭を揺らす。
「ーー」
その瞬間を、逃す理由などない。
ゆらり、と小さく身を揺らしーーそのまま、一気にクロトは前に出た。倒れた巨大な十字架を飛び越え、至近へと迫れば、そこで漸く接近に気がついたスチームゴーレムが歯車を回す。
「ホカ、ホ、捕獲スル……!」
キュイン、と駆動音と共に、スチームゴーレムの両腕が伸びた。セットされたのは、網だ。だが、打ち出されるその前に、クロトは深くゴーレムの懐に沈み混む。
「ネット弾? ご一緒に巻き込まれます?」
笑い告げた黒衣の下、鋭く突き出された腕が駆動部へとナイフを突き立てた。
「グ、ギイイイイイ!?」
ぱふん、と打ち出された網は空を切って、天井に引っかかって止まる。そのまま派手に転びかけたゴーレムについた糸を切って、クロトは囁くようにして告げた。
「何ですかその似非南瓜。阿ってる時点で気合い負けしてんですよ」
「キュイン」
ばふん、と上がった煙を最後に崩れ落ちたゴーレムから手をひく。ばさり、と黒衣を揺らせば、会場から感嘆の声が漏れた。
「さすがは百日の方」
「我らが円卓の伝説に残る……あぁ、ですが、今宵の星の巡りは我らに禍つ期を告げるというのですか。あれほどの数はーー……」
いくら、彼の方でも。
そうローブ姿の娘が紡いだ時、新たな声が部屋に生まれた。
「ハロウィン……」
闇より出る猫が一人。猫又は艶やかな黒髪を揺らすようにして笑った。
「いや、暗黒の宴も中々楽しいものだな」
「うんうんっまさかこのあんこくのうたげにまねかれることになろうとは」
応じたのはトンガリの帽子が似合う魔法使い。共に踊るのは娘の人形。柔らかな金色の髪を揺らし、ふわり、と彼は笑った。
●創世のディメンション
突如現れた無数のゴーレム。
我ら円卓の集いが崩壊しかけた時、真なる救世主は現れた。闇が強くなれば光もまた強くなる。闇の中にあってなお輝くそれはーー……。
「彼らは……まさか、禁忌の匣の!?」
「宿命の刻……、私たちは今、伝説を目撃しているとでもいうの!? 我らが女神よ……」
「だが、アカシックレコードにはそんな記録……」
「ーー……」
彼らこそ、と聞こえた声に禁忌の匣の猫又基、知らぬ間に禁忌のなんたらになってしまった浮世・綾華(千日紅・f01194)は思った。
(「やべぇ、笑いそうじゃネ?」)
必死に笑いを堪えていれば、黒の猫耳がひょこひょこと揺れる。そう、一応中二病なるものについては調べてきた。調べて来た以上それっぽいものは言えるし『それっぽい』が何かも分かるのだがーー……。
「なんか、流石?」
「だね」
囁くようにして一つ笑って、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)は、ひとつ、息を吸う。キトンブルーの瞳は、常のいたずらっぽさを少しだけ潜めて、本で予習して来た『ちゅうにびょう』ワードを繰り出した。
「アヤカ、じゃなかったながき刻をいきる猫よ」
ひたり、と合わされた視線になるほど、と綾華は思う。長き刻、という言葉のそれ。己の身に覚えのある言葉に妙な感心を抱いていれば、キリッとした表情と共に届く言葉はひとつ。
「いこう、おなかがすいた」
「ーー」
ふは、と思わず耐えきれずに吹き出す。それは普通のオズだろ、と小さく告げた言葉と共に綾華は顔をあげた。
「血塗られし薔薇のケーキだってよ。うまそーじゃネ?」
「わあ、たべるっ」
ひょい、とケーキを乗せた皿を持ち上げた綾華が口の端をあげて笑う。
「どーぞ?」
「ありがとう。上にブラッディ・ローズって書いてある。おいしいね」
ふわりと口の中、広がるのはラズベリー。ムース仕立てのケーキは、濃いめのチョコスポンジとよく合う。飾りの薔薇は、ブラックのチョコレート。ほんのりと薔薇の香りが踊る。
「どこまで中二したら効果あんだろーな?」
オズの微笑ましい顔に一つ笑って、チョコケーキを頬張ると、綾華は噂の敵へと視線をやる。最初の登場シーンーー基、二人が最初に告げた暗黒の宴話からスチームゴーレムは復帰できていないらしい。
「波動、波動ガ、波動ヲ検知、検知?」
「検知、検知、否? 検知?」
まぁ、多分。混乱してんだろうなぁ、と綾華は思う。
装魔封災戦敗戦の記憶。
忌まわしき記憶に引きずられるように学園に現れて見れば、この会場だ。
災魔の中にあった記憶がどういうものであったかは分からないがーー災魔の仮装をして奇襲を行なった、という過去を思えば、今の状況はその『仮装』プラス『そういう展開』だ。
混乱はするだろう。情報過多でいっぱいいっぱい。とはいえ、何処かであちらも動き出すだろう。
(「そうなる前に、だな」)
すぅ、と綾華は息を吸う。ギ、ギギ、と軋んでいたスチームゴーレムたちが動き出す。駆けつけた猟兵たちに圧倒されていた生徒たちが、襲撃者の存在を思い出す。
「っち、奴らまた……!」
「ハッケンハッケン! 速ヤカニ排除セヨ」
「排除セヨ」
また、も何も最初っからいたしなー、とかつっこんではいけない。いけないのだ。
「深淵より黄泉がえりし機械仕掛けの使徒よ。
我々救世主(メシア)の捌きを受けるがいい!」
右眼を抑え、すちゃり、とポーズをとり、顎を上げた。瞬間、花弁が舞う。さわさわと揺れる黒髪と共に、指の隙間から見えた瞳が光ったーー気がした。
「ギ、ギィイイイ!? 波動、波動ガ、ガ
……!?」
包囲するように踏み込んできたスチームゴーレムたちが花弁に包まれる。一歩、その動きが迷えばーーその一瞬を、見逃すオズではない。
(「アヤカかっこういいっよーしわたしも」)
するり、と伸ばした手のひら。掲げた杖が淡く光りーーまさか、と生徒たちから声が上がる。
「にげなくていいのかな。かれがこの右目をかいほうしたならそのときには、すでにきみたちは朽ちていることだろう」
ふわり、とオズの傍、可愛らしいドレスを揺らし、シュネが手を伸ばす。
「メシアの力を借りてここをヴァルハラとしようか」
たん、とオズが踏み込む。ふわり、と光が踊る。
「おいで、エターナルアブソリュート」
「メシア、波動、波動ガ、排除ハイ、ハイハイアハイ?」
排除、と戸惑いに満ちた声を上げたスチームゴーレムへとオズが踏み込む。シュネーと共に叩き込んだ一撃に、おぉおおお、と生徒たちから声が上がった。
「あれが伝説の……ッ」
「エターナルアブソリュート!? まさか使い手が存在していただんて。アルカディアに至る道は実在していたというの!?」
謎の歓声に見送られながら、ぽかーんと殴った一撃の向こう、綾華の花弁に巻かれながらすっ飛んだスチームゴーレムたちがぱふん、と煙を上げて倒れた。
ーー此処に、伝説が始まったのである(たぶん)
大成功
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メール・ラメール
ルシルちゃん(f03676)と!
仮装は魚繋がりで海賊
中二病がドレスコードってなに?
待って、アタシもう成人したのよ
「アタシの眼帯はキャラ作りじゃないのよ、はっ倒されたいの」
でもまあ利用するけどね!
「混沌入り乱れる狂乱の宴、我を呼ばぬとは何事か!」
っはぁーーーー!!!(心の叫び)
コレ殴るより辛いわね!?
ルシルちゃん辛くないの!?おじーちゃんだから!?恥を捨てたの!?
隙が見えたら咎力封じ
お願いもう止まって頂戴、アタシの心が辛いから
「この瞳が解放されし時、貴様らは我が僕によって食い荒らされるであろう!」
仮装とキャラがブレてる?
アタシがいちばん分かっているから放っておいて
イチゴタルトおいしい(現実逃避)
ルシル・フューラー
同行:メール(f05874)と
仮装:顔のみ出てる魚ぐるみ(南瓜SD参照)
「どうやら、私が魚の国の王子であることが、バレてしまったようだね」
(ぴちぴちびたんびたんしつつ)
相方が中二病なドレスコードに悩む一方
このエルフ、ノリノリである(51歳なのに)
「メールは眼帯してるじゃない。それ使えばいいんじゃないかな?」
「え?辛い?楽しいじゃぁないか!」
「良い海賊っぷりだよ、レディ・メール」
「奴らは魚類の天敵だ。捕獲ネット弾で何匹水揚げされたことか」
「捕獲ネット弾、今宵は撃てると思うなよ」(ぴちぴち)
それっぽい台詞を圧を高めで効果があるという事なので
海賊配下の魚王子設定を継続したままUC【サモン・サーモン】
●エクリプス・プロヴィデンス
ーー訪れた光は、闇を払う。
故に闇は訪れたのだという。光ある場所にこそ闇がある。その濃さを増す。
「エクリプス……」
「蝕……そう、サンクチュアリにもその報が届いていたというのね」
「フロクシノーシナイヒリピリフィケイション、第三席は不要なものと言っていたがーーだが、見ろ。今この時、我々は伝説を目撃している」
「ーー……」
いや、見てるのは伝説でもなんでもないでしょっていうか、ドヤ顔で語りが始まっているのね? テーブルの後ろに隠れててくれるのは良いけれどなんでそんな話まで吹っ飛んだのっていうかーー。
「波動、波動ヲ」
「ハッケンハッケンハッケケケケケ?」
「あんたたちもなんでこっち見て止まってるの!?」
メール・ラメール(砂糖と香辛料・f05874)は、びしぃっとスチームゴーレムを指差した。ふわりと揺れるコートには金の鎖。海賊姿のメールの横、びたんとが音がした。
「どうやら、私が魚の国の王子であることが、バレてしまったようだね」
そこにいたのは、魚であった。ぴちぴちびたんしているの彼ーーの顔が、美しいエルフの青年であるのが問題なのかーーもういっそ考えちゃいけないところなのか。
(「中二病がドレスコードってなに? 待って、アタシもう成人したのよ」)
メール・ラメール、二十歳のハロウィンである。ついでにメールが悩んでいる横、なんかびったんびったんしているルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)はノリノリであった。
ルシル・フューラー、五十一歳のハロウィンである。
そもそも、生徒たちのあのモードだけでは足らなかったのか。足らなかったんだろう生徒たちだけでは。多分。
「メールは眼帯してるじゃない。それ使えばいいんじゃないかな?」
ぴちぴちしているお魚ーー基、ルシルからの一言に、メールは眉を立てた。
「アタシの眼帯はキャラ作りじゃないのよ、はっ倒されたいの」
とはいえ、最早これしかない以上ーーなんかこれ以上考えたくもないーー使うしかない。
すぅ、と息を吸って、まっすぐにメールはスチームゴーレムを見た。
「混沌入り乱れる狂乱の宴、我を呼ばぬとは何事か!」
「……!? ギ、ギギ」
「波動、波動、波動ヲ」
「感知」
ばふん、と南瓜香るスチームを吹き出しながらスチームゴーレムが揺れる。衝撃を受けたかのように傾ぐ姿に、おおぉおお! と声を上げたのは生徒達だった。
「まさか、大海の使者が姿を見せたというのか」
「冗談でしょう!? 絶対の七海域からの使者など、今まで一度も……」
「いやだが。その状況にあるということだよ。君。我々は伝説をーー……」
「……」
目撃しているだとか、感じているだとか。
謎の敬意に満ちた視線を浴びながら、思わずポーズをとりながらすちゃりと言ってしまったメールは思った。
(「っはぁーーーー
!!!」)
つらい、すごいつらい。
殴るより辛い。
「ルシルちゃん辛くないの!? おじーちゃんだから!? 恥を捨てたの!?」
「え? 辛い? 楽しいじゃぁないか!」
え、ほんとに? 本気で? 本気のやつで?
目を白黒させてみたところで、ぴちぴちばったんと楽しげなルシルはキラキラと目を輝かせている。
「良い海賊っぷりだよ、レディ・メール」
にっこり、とルシルは微笑んだ。それは美しい笑顔で。魚の着ぐるみで。顔だけでているやつで。
「奴らは魚類の天敵だ。捕獲ネット弾で何匹水揚げされたことか」
その一言に、ほらやっぱり、と生徒たちが囁き合う。ーー否、ぶっちゃけ盛り上がっている。
「ーー」
こうなれば、こうなってしまってはもうーー行くだけだ。たん、とメールは、床を蹴る。ギ、ギギ、と軋むスチームゴーレムたちが接近に気がついて顔を上げる。
「発見発見、排除、排除スル、ラン、チャー
……!?」
「この瞳が解放されし時、貴様らは我が僕によって食い荒らされるであろう!」
ギュイン、と回転するドリルがメールへと向けられる。だが、その一言に、ぴくり、と動きが鈍った。
「排除、排除、ス、ルルル
……!?」
情報過多でいっぱいいっぱい、とという所だろう。うん、いっそ分かる。
(「お願いもう止まって頂戴、アタシの心が辛いから」)
ひゅん、とメールの放ったロープが、ドリルに絡みつく。手枷が巨大な手足を封じれば、最後の枷もスチームゴーレムを捉え切る。
「ギ、ギギィイイイイ!? ハッケ、ハッケンハッケ
……!?」
「捕獲ネット弾、今宵は撃てると思うなよ」
ぴちぴち、としながらルシルは、きりっとした視線を向ける。ノリノリである。ノリノリであるからこそーーあぁ、と生徒たちから感嘆の声さえ上がった。
「やはり、七海域の王子! 伝説の御子が……!」
「アブソリュートファンタズム、まさか……!」
「……」
知らぬ間に王子様から御子になっていたがそこはそこ。うん、なんか楽しそうだし良いことにするとして。ぴちぴちとしながら、ちょっと遠い目をしそうな相方を視界に、きりっとルシルは眉を立てた。
「――来たれ、オンコリンクス!」
ぴちぴちしながら。
サーモンのフィギアを、掲げた。なんか不思議な感じに浮き上がって光ったのだからそういうことなのだろう。
「汝、鮭の女王の縁に連なる魔魚が一尾にして、紅き魔弾の射手!」
即ちそれこそ、Salmonの悪魔。
虚無と虚構とジャンルのごちゃ混ぜが発生しているこの宴に、オンコリンクスは顕現した。
「ギィイイイイイイ!?」
「排除、ハイ、ハイジョす、ススススス!?」
オンコリンクスの突撃に、スチームゴーレムたちが崩れ落ちる。ばふん、と南瓜の美味しそうな香りがする会場で、皿を一つ取りながら海賊ーー基、メールは息をついた。
「イチゴタルトおいしい」
現実逃避だって、大切なのである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
叶・景雪
月乃(f10306)と。
難しい漢字は平仮名使用
カタカナはNG
黒い翼っぽいのと尾で悪魔風の執事の格好
こーどねーむ…?うぅん、よくわからないけど、かっこいいひびきだね!
ならぼくは、月乃ちゃんのことを、「暁の姫」ってよぶね!(どやぁ!
「うん、なかまとのおうせをじゃまするやからは、おしおきしないとね!暁の姫」
姫のお手伝いは、しつじのつとめだしがんばるね!
まずは、手をさし出し、てきの方へえすこーと…って、とりさんが
いっぱい!?
乗っていいの、姫?(そわそわり
「姫のてきなんてのこらず、『闇の眷属』たる『雪刀』がめっするよ!」
舞風をしようし、
「よやみを切りさく、さばきの刃よ、舞え!」
麗明・月乃
景雪(f03754)と参加。
黒マントと悪魔の羽を付けて吸血鬼風味の格好。
「我らの会合を邪魔するとは無粋な奴等じゃ。のう?雪刀」
む?ああ、コードネームじゃ。こういうのには付き物じゃろう。
「仕方ない。力の『封印を解く』必要があるようじゃな」
『全力魔法』で【鶏の頂点に立つ少女】を使って鶏をその辺に投げる。増える。上に乗って仁王立ち。
「我と眷属は夜明けを告げる者。お主らがこの世を闇に包まんとするなら、幾度と打ちのめし、勝利の夜明けをもたらそうぞ」
というわけで全軍突撃じゃー!こけこっこー!
あ、景雪……違った、雪刀も乗るかえ?意外と楽しいのじゃ、これ。
後は【フォックスファイア】で薙ぎ払っていくかのう。
●黙示録に語られりしは
ーー焦がれの青の到来であったという。
闇深き地。英傑により封じられし深淵の欠片は、元は光りであったという。
「故に焦がれと呼ばれた……、まさか、極夜に至ろうとは」
「狩人よ、知っているのか?」
「あぁ、蒼穹の陽炎にこそ覚えあり、あれこそーー……」
あぁ、と狩人ーーと呼ばれたなんか黒づくめな生徒の感嘆は、黒衣を揺らす少女へと向けられていた。揺れる金の髪に、その背にあるのは悪魔の羽。
「我らの会合を邪魔するとは無粋な奴等じゃ。のう? 雪刀」
麗しの吸血鬼はそう言って微笑んだ。
「ーー?」
の、だが。
傍の黒の翼。しゅるりと細い尾と共に、悪魔の執事たる少年は小さく首を傾げていた。
「月乃ちゃん?」
「む? ああ、コードネームじゃ。こういうのには付き物じゃろう」
麗明・月乃(夜明けを告げる金狐・f10306)は、そう言って一つ悪戯っぽく微笑む。ギ、ギギ、と押し寄せてきたスチームゴーレムたちが、僅かだが動き出そうとしていた。弱まっているとはいえ、冷静さを完全に取り戻せば面倒な相手となるだろう。だからこそ、紡ぐ言葉と纏う設定は意味を持つ。
「こーどねーむ……? うぅん、よくわからないけど、かっこいいひびきだね!」
むむむ、と悩むように眉を寄せた叶・景雪(氷刃の・f03754)は、ぱ、と顔を上げた。
「ならぼくは、月乃ちゃんのことを、「暁の姫」ってよぶね!」
どやぁ、とポーズをとった景雪の言葉に、まさか、と学園の生徒たちがざわつく。
「まさか、まさかなのか」
「まさかなんじゃないか
……!?」
「暁……霹靂の地の」
「運命に抗ったというのか? なら、あの姫君と共にあるのは
……!?」
「……」
どのあたりがどうまさかで、何がどうなっているのかは分からないがーーそうじゃな、と月乃は思った。盛り上がっているなら良いんじゃないか、と。
「ギィイ、ギ、ギギ。発見、波動、波動ヲ。全テ総テ、排除スベシ」
「排除、排除スル。全テ、殲滅、殲滅……!」
ギュイイイン、と歯車の回る音が響く。来る、と月乃は顔を上げてーー息を吸う。
「仕方ない。力の『封印を解く』必要があるようじゃな」
「うん、なかまとのおうせをじゃまするやからは、おしおきしないとね! 暁の姫」
力強く頷いて景雪は、黒の翼を広げる。
「姫のお手伝いは、しつじのつとめだしがんばるね!」
漆黒の髪が何処からともなく吹いた風に揺れれば、澄んだ青の瞳がまっすぐにスチームゴーレムたちを見据える。敵は、まだたくさんだ。
まずは、とエスコートするように手を差し出した先で、ケッコー! と力強い声と共に鳥がーー鶏が、来た。
「貴様が負けるものはこの私の高貴な血と不思議な鶏……ってなんでじゃー!!」
「ケッコー!」
力強い鳴き声と共に召喚された鶏を、月乃は投げた。なんかその辺に。てやっと。すちゃんと着地した鶏は翼を広げてーー。
「ケッコー」
「コケコッコー!」
「ケッコー!!」
増えた。めちゃくちゃ増えた。
「とりさんがいっぱい!?」
エスコートするために差し出した手は、驚いた執事の瞳と一緒に揺れた。目をぱちくりとさせた景雪の前、月乃は鶏たちの群れの上に乗っていた。仁王立ちで。なんかすごい雰囲気で。
「我と眷属は夜明けを告げる者。お主らがこの世を闇に包まんとするなら、幾度と打ちのめし、勝利の夜明けをもたらそうぞ」
「殲滅、センメ、センメ
……!?」
その言葉に、スチームゴーレムたちの歯車が光る。混乱しているのか。強い明滅の中、まさか! と生徒たちが声を上げた。また「まさか」なのか。どのあたりどうまさかなのか。
「あれこそ、白き衣を纏う……」
「まさか、夜明けを告げるあの
……!?」
「降り立ったという
……!?」
よし、放置じゃな。と月乃は思った。わぁ、すごい。と目を輝かせる景雪は、暁の姫はだいにんきだね、と微笑んだ。
「あ、景雪……違った、雪刀も乗るかえ? 意外と楽しいのじゃ、これ」
「乗っていいの、姫?」
そわそわとする景雪ーー基雪刀に、暁の姫は微笑む。差し出した手に、執事の手が重なれば生徒たちから謎の喝采が送られた。その向こうでスチームゴーレムたちが混乱しているらしいから良いとしよう。うん。良いはずじゃ。
「雪刀も大人気じゃな」
「にんき、かな」
小さく首を傾げ、ほんの少しばかり頬を染めると、よし、と景雪は息を吸う。
「「姫のてきなんてのこらず、『闇の眷属』たる『雪刀』がめっするよ!」
「全軍突撃じゃー! こけこっこー!」
「ケコーッ!」
その日、鶏たちの突撃と共に解き放たれた刃の一撃は空間さえ引き裂いたという。
「よやみを切りさく、さばきの刃よ、舞え!」
「殲滅センメ
……!?」
「排除、ハイ、ジョ、アァアアア!?」
てやーっとドリルの誘導弾を鶏が弾き、爆発の前に景雪の刃が砕き切る。弾き飛ばされたスチームゴーレムたちが、ばふん、と煙を上げながら崩れ落ちる。
その日、新たな伝説が生まれたと闇の住まう者たちーーという二つ名を持つ生徒たちーーは語る。いろんな設定を盛られた結果、暁の姫と闇の眷属・雪刀は七夜にして世界を救ったーーということになっていた。うん、知らないうちに。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
ふふん、太陽神たる私に歯向うなぞ片腹痛いわ
その身を千々に裂き、神の供物として捧げてくれようぞ
――と、こう云った具合か
料理に舌鼓を打ちつつ台詞の練習
気取った台詞というのはどうも慣れん
…何だジジ、その物云いたげな顔は
杯を呷り、中身を飲み干す
うむ、中々に悪くない
ほう、包囲と来たか
姑息な手を使えば、ジジを私と分断すれば
私が斃せるとでも思うたか?
従者を制した手で宙に描くは魔方陣
高速詠唱により召喚した【暴虐たる贋槍】にて
狼藉者共は纏めて串刺しの刑だ
これは我等の祝餐を邪魔した報いである
神の御前ぞ、頭を垂れよ
そして絶望の侭、惨たらしく死ぬが良い
っくは、神の御手で蹂躙されるなぞ誉れであろう
ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と
扮したは月の精
気に入った料理はあったか、師… …大陽の君
…うむ、演技の必要すら無さそうだな
すらすらと素のまま輝く師の姿に感銘を受けつつ
配られた赤い杯を掲げ
前祝いだと乾杯など
――流石は我が君
連中も、喜んで贄となるだろう
煩いゴーレムの相手は
予測されるならば、避けねば良い
【竜墜】にて網ごと突撃し叩き割ってくれよう
我等は月と大陽
悲しき哉、共には空に昇れぬ定め
されど今宵は一夜限りの晩餐
蒸気の我楽多ごときに邪魔などさせぬ
傲然と告げる傍らの師に
つい一緒になって頭など垂れ
…やはり年季と圧が違う
…慣れぬ言葉に回転させた頭が
煙を噴いている、ような
すまぬが冷たい飲み物をもう一杯貰えまいか
ヴィクトル・サリヴァン
あーはしかみたいなアレだね。俺も苦い記憶…うっ頭が。
でもパーティ台無しは実によくない。頑張って撃退しないと。
…この仮装大丈夫かなー。別の意味で黒歴史なような…
仮装は乙姫系魔法少女、グランパス・ブラック。
…少女ってとこはツッコまないでね?
それはそうと邪気眼…冥界よりの魔物、魔法少女参上と大物っぽく気怠げに言ったり。
ふふ、ハロウィンは冥界の力が高まるからやって来たんだ。
その証拠にほら、仲間達も来てるとUC発動しつつ天井とか泳がせてみたり。
ゴーレム現れたら冥府の宴の贄が現れたか…食い散らかすがいい!とか悪っぽく指示しつつ俺はパーティ楽しむ。
攻撃に巻き込まれないよう注意しつつね?
※アドリブ絡み等お任せ
●遠雷のアルカディア
薔薇の玉座に光あれ。
侵入者と伝説の使者たちとの戦いは、既に世界の外に知れ渡ることとなった。そう、伝説がこの世界に顕現した時、大地は作り変えられる。
「……っ我らの結界では、どれほど持ち堪えられるか分からないぞ」
「だが……最早、世界は作り変えられるべきなのかもしれない。トワイライト・ディメンション。我らの結界など……」
「いいえ、我らが魔女の秘薬が此処にあるもの。保ちましょう。彼らの大いなる力に焼きつくさせない為にも。ーー……力ある人々に、これ以上の悲しみは抱かせたくないもの」
「……」
不可思議な格好をしている生徒たちは、そんな会話をしながら魔女の秘薬ーー基、チョコレートドリンクを飲んでいてーー。
「ふふん、太陽神たる私に歯向うなぞ片腹痛いわ
その身を千々に裂き、神の供物として捧げてくれようぞ」
傍の師はーー成る程、輝いていた。
おぉおおお、響く声は、生徒たちのものだった。感嘆と畏怖。神界の輝きが! とか聞こえる声に妙に誇らしい気分になりながら、ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)は頷いた。師の演技は十分なほどに通じているらしい。
「――と、こう云った具合か」
気取った台詞をいうのはどうも慣れん、とアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)は息をついた。白の衣から伸びるほっそりとした指先がグラスを置けば、カシスサイダーの泡が、ぱち、とグラスを鳴らす。
「……何だジジ、その物云いたげな顔は」
眉を寄せ、息を落とす姿は常と変わらずーーだが、太陽神という言葉が似合う。金の髪飾りをしゃら、と鳴らし、もう一度己の名を呼んだ師にジャハルは感銘を隠さずに頷いた。
「……うむ、演技の必要すら無さそうだな」
すらすらと素のまま輝く師は流石素晴らしい。一人頷いていれば、スチームゴレームたちが、ギ、ギギと軋む。ばふん、ぱふん、と上がるのスチームに南瓜の香りが混ざる。
「ハッケン、ハッケン、排除、ジョ、ジョジョ?」
「排除殲滅、メツ、メツメツメ……」
くるくると繰り返される言葉は、スチームゴーレムが冷静さを欠いている証しだろう。やたらほくほくした南瓜の香りがしている気がするが、ちょっと焦げた仕上がりが美味しそうな予感もするが。
「効いてはいるようだな、師
……、……大陽の君」
「ーー……、そうだな」
やれ、とアルバは息をついた。ひょい、と手に取ったマカロンのチェス駒をひとつ、進めておく。一口サイズの、クリームがたっぷりサンドされたマカロンだ。見目に反して、甘さは控えめだ。チョコレート味に、小さく口元を緩めていれば、杯を手にしたジャハルが口元に笑みを乗せる。
「前祝いを」
赤い杯を掲げ、流石は我が君、と月の精は微笑む。僅か、不敵に見えるのは纏う衣が故か。月の意匠を身に纏うジャハルにアルバは笑みを浮かべた。
「うむ、中々に悪くない」
ワインの代わりは濃い赤ぶどうのジュース。喉を潤し、祝杯を告げるには丁度良い。
「ギギ、ギギギ」
「排除、排除。波動、ケン、波動、波動」
「ハッケン、ハッケン。波動、排除……!」
来たか、とアルバは息を吐き、ゆるり、と視線をひとつ向けた。
「排除スル!」
「ーー」
ギュイン、と歯車が回転し、スチームゴレームたちが一気に動き出した。蒸気を吹き出して来るのはーー突撃か。詰められる間合いに、ジャハルは床を蹴る。どうせ縮められるのであれば、こっちから間合いを取った方が良い。
「捕獲捕獲!」
身を低め、飛ぶように踏み込めばゴーレムの腕が前に出た。瞬間、弧を描くように網が舞った。
捕獲用のネット。広げられた空間はーー広いか。
「あれは……! 神々さえ奴らは捉えようとするのか!?」
「そんな、闇の力はそこまでに
……!?」
「……」
なんだか、妙に後ろが盛り上がっている気はするのだが、相手が避けさせないつもりであればやることはひとつ、だ。
「予測されるならば、避けねば良い」
ぶわり、と被さる白。それが届く瞬間に、ジャハルは足を止めた。握る拳に力が灯る。
「我等は月と大陽。悲しき哉、共には空に昇れぬ定め」
落ちる網へと、拳を振り抜いた。ガウン、と力が天井へと抜け、ゴーレムの放った捕獲用の網が砕け散る。
「されど今宵は一夜限りの晩餐。蒸気の我楽多ごときに邪魔などさせぬ」
低く、ひくく。
響くその声に、ギギ、ギ。とゴーレムたちが軋む。ハッケン、ハッケ!? とクルクルと言葉を回すそれに、そのまま一気に踏み込もうとしたところで、白の衣が舞った。
「ほう、包囲と来たか。姑息な手を使えば、ジジを私と分断すれば私が斃せるとでも思うたか?」
滑るように、飛び込んできたスチームゴーレムがテーブルを超えてアルバを斜線に捉えていた。もっとも、あれだけ派手な動きをされれば気がつかずにいる方が難しい。だからこそ、飛び込もうとするジャハルを制して、アルバは悠然と笑った。
「これは我等の祝餐を邪魔した報いである」
宙に描くは魔法陣。
高速の詠唱に、無数の魔法の槍がこの世界に顕現した。まさかあれは、とか。あれこそは、とか微妙に生徒たちが盛り上がっている気はするがーーまぁ、それはそれだ。うん。
「神の御前ぞ、頭を垂れよ」
展開される魔法陣は光を増し、風なき地に風を生む。
「まさかあれは……!」
「神界にあって封じられし光
……!?」
「だがそのカタストロフィは……いや、あの方々であれば」
「あぁ、世界の裏側にあるお二人であれば……!」
わぁあああ、と生徒たちが盛り上がる中、妙な設定も付与された気もするがーーふ、と笑うだけに済ませたアルバは力を、解き放つ。
「そして絶望の侭、惨たらしく死ぬが良い」
「ギ、ギイイイ!?」
「ガガ、ギギギギ、排除、ハイ、ジョ、ジョジョ
……!?」
ばふん、と南瓜の煙が上がる。命中の瞬間、弾け飛んだ歯車さえ槍の余波に砕かれる。
「神の御手で蹂躙されるなぞ誉れであろう」
っくは、とアルバが笑う。見れば、倣うように頭を垂れていたジャハルが、ほう、と一つ息を零していた。
「……やはり年季と圧が違う」
感嘆と共に視線を上げる。目が合えば、小さく息をつくアルバにジャハルは腰を上げた。
「……」
のだが、妙に頭が煙を噴いている気がする。慣れぬ言葉で回転させた所為か。
「すまぬが冷たい飲み物をもう一杯貰えまいか」
「ーーあぁ、それだったらここのカシスのジュースもおすすめだよ?」
そう、告げたのはシャチだった。否、シャチの魔法少女だった。なぜか知らないが魔法少女だと一発で分かった。
「感謝する」
小さく首を傾げながら頷く月の精と太陽神を見送りながらヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)は思った。
(「賑わってるなー」)
いろんな意味で。そう色んな意味で。
猟兵たちが用意した仮装と設定に、生徒たちの謎の盛り上がりーー基、合いの手。
闇と光の到来から、世界の外にたどり着いたら神界の話まで持ち出されて、今は伝承の時空にあるらしい。自由って眩しいのね、とかいう声も聞こえたあたりすごい「それ」だ。
「あーはしかみたいなアレだね。俺も苦い記憶……うっ頭が。でもパーティ台無しは実によくない。頑張って撃退しないと」
その為に、ヴィクトルは来たのだ。この場所に。
「……この仮装大丈夫かなー。別の意味で黒歴史なような……」
魔法少女として。
乙姫系魔法少女、グランパス・ブラック。
少女のあたりにツッコんではいけない。
ヴィクトル・サリヴァン。31歳のハロウィンである。
「おいあれは……」
「いや、冗談だろう? あのパレオ、あのフリル。三千世界を見る俺だってまだ出会ったことは……」
「いやだが、あの姿。あの輝く貝は……エラトステネスの篩が証明するもの」
「ーー」
知らないうちに何かに証明されているが、うん、立ち止まったら死んでしまう。回遊し続けるべきなのだ。魚じゃないけれど。此処は、立ち位置として。
「邪気眼……冥界よりの魔物、魔法少女参上」
すちゃん、とポーズを取った瞬間、ぉおおおおお、と生徒たちから喝采が上がった。上がってしまった。気怠げな一言だったのに。
「ふふ、ハロウィンは冥界の力が高まるからやって来たんだ」
此処は最早全力で乗っていくしかない。それしかない。すぅ、と息を一つ吸うとヴィクトルーー基、魔法少女、グランパス・ブラックは笑みを浮かべた。
「その証拠にほら、仲間達も来てる」
とん、と床を叩く。しゃん、と腕の飾りが音を鳴らすと天井を空のシャチが泳ぐ。
「ギ、ギギギ」
「波動、ハッケン、排除、排除」
キュイン、と高い音を響かせながら、残るスチームゴレームたちが歯車を回す。掲げた腕を、ヴィクトルへと向けた瞬間ーーばふん、と煙が出た。
「ハッケ、ハッケケケケケケ?」
「殲滅、メツメツメメメメ!?」
「……」
混乱された。すごい混乱されたなぁ。
流石は、とか、これは。とか盛り上がる生徒たちを視界に、ヴィクトルはすちゃっとポーズを取る。そう魔法少女にポーズは必須なのである。
「冥府の宴の贄が現れたか……」
ほう、と息を落とす。しゃらしゃらん、と飾りが揺れる。掲げるは魔法少女のマジカル武器(多分)その切っ先に従うように空シャチが跳ねた。
「食い散らかすがいい!」
悪だ。
なんか絶妙に悪っぽい指示だ。
「まさか、あの魔法少女は……っ」
「黒き衣……。そう、やはり世界が本気を出す時が来たのね」
「悪を持って悪を制す……。そう、俺の禁じられた右目が告げている」
ざわつく生徒たちを横目に、軽やかに空を舞った空のシャチ達がスチームゴレームに突撃する。高く響く鳴き声を耳に、うん、とヴィクトルは頷いた。
「正義は勝つ、だね」
オォオオオオ、という盛り上がりの向こう、誘導弾がシャチたちにぺしん、と壊される。弾き飛ばされた先、残るスチームゴレームたちにぶつかってしまえば、ばふん、と派手な爆発が生まれた。
「よっと、あのあたり巻き込まないようにしないとね」
爆風が部屋を吹き飛ばさないように、少しばかりシャチたちに指示を出す。なにせ、せっかくのパーティーだ。ホワイトチョコのジャックオーランタンを取って、甘い香りにヴィクトルは笑みを零した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
玖・珂
グィー(f00789)と
奇術師の仮装で
今宵、宴が開かれると聴き参じてみれば
ロストテクノロジー(災魔)まで招かれていたとは
頼もしき猟師殿、君ならアレを如何する?
君に狙われたが最期、彼は何をされたか分からぬだろうな
私か?
私の奇術は命を削る故、今は封じているのだが……
満ちる病的な気に右目が疼く
抑えられぬか、と諦めの息を吐き包帯を解く
緋の花を咲かせたなら
闇(ただの黒い爪)を操り
鉄の南瓜を鮮やかに(早業)バラそう
あぁ、命を充填しなくては
猟師殿、よい贄(菓子)を知っているだろうか?
何と麗しい、薔薇の甘き罠に囚われてしまいそうだ
そうであった、8つの玉座にも献杯せねばならぬしな
ゴブレットを手に猟師殿と乾杯を
グィー・フォーサイス
奇術師の君(クガ/f07438)と宴へ
仮装:赤頭巾の猟師
おや、招かれざる客のようだね
僕ならば『魔銃』(普通の銃)と『真言』(郵便配達)で蹂躙するよ
君は?奇術師君
招待状はお持ちかな
こういうのだよ
薔薇封蝋の手紙を格好良いポーズで投げつけよう
君を縛る真言は「呪わしき煙(蒸気)を吐いてはいけない」
宴を愛さぬ汚い煙は、この宴には不要だろう?
今日は宴で気分が良い
魔銃も味わわせてあげようか
フッ(意味ありげな微笑)
僕の魔銃から逃れられる者は居ない(追跡、地形を利用し跳弾)
血のような紅に黒薔薇が蔓延る甘美なる贄はどうかな?
ああ、喉を潤すのも忘れてはいけないね
8つの玉座に敬意を払い
ゴブレットを手に奇術師君と乾杯を
●世に目覚めし永遠なる階
光と闇。相反する二つは、だが、互いが存在しなければ、その存在を認識しえない。存在が重なっている気がするけれどつっこんではいけないのだ。重要なのは光と闇。深淵に至る地は、その地が深淵であると認識できねば、ただの空間に過ぎない。
「ーーそうか、我ら狩人の悲願。黄昏の夢の果てに……あぁ、自由というのはあまりに眩しいのだな」
「ふ、ははは。流石は伝説の到来。我らが写本が示さぬ訳だ! 最早、我らは世界の真実の近づこうとしている……!」
「アカシックレコードにさえ記されなかった光が、そう。今……」
「……」
さっき、世界の裏側とか、世界の外とか言っていなかっただろうか。という疑問は、きっと抱いても良いけれど言ってはいけないというあれなのだろう。お約束、と世に言われるものなのか。奇術師の黒衣を揺らし、ふ、と玖・珂(モノトーン・f07438)は息をついた。
「今宵、宴が開かれると聴き参じてみれば、ロストテクノロジーまで招かれていたとは」
ざっくりと髪をかきあげれば、晒されている片目が見えた。
「頼もしき猟師殿、君ならアレを如何する?」
僅かに細められた瞳の先、水を向けられたのは銃を持つ少年であった。ゆるり、揺れる尻尾。ぴん、と立った耳の横、ちょこん、と乗った帽子をつい、とあげる。
「おや、招かれざる客のようだね。僕ならば『魔銃』と『真言』で蹂躙するよ」
グィー・フォーサイス(風のあしおと・f00789)の言葉に、おぉおおおお、と生徒たちから声が上がった。あれはまさか、あれはもしや! と続く声は、あれはそれはのまま先に進まない。なるほどそんな話もあるらしい。
「ーーあぁ、間違いない。魔銃の民。己が命をかけた銃さ。4つの誓約で力を解き放つという……」
「まさか、あの最後の一つを解き放てば己の命もという
……!?」
「ジブリールさえ涙する。そうか、実在したのか」
「……」
ついでに、普通の銃と郵便配達のことなのだが、うん。とりあえずこのままだ。うん。
「君は? 奇術師君」
グィーの言葉に、珂は軽く肩を竦めた。
「君に狙われたが最期、彼は何をされたか分からぬだろうな」
私か? とゆるり顔をあげる。
「私の奇術は命を削る故、今は封じているのだが……」
そっと右目に手を添える。満ちる病的に右目が疼く。疼くのだ。うん。
「抑えられぬか」
諦めの息を吐き、珂は包帯を解いた。
「あぁああ……っまさか、そんな」
「右目の封印。封縛のカタストロフィが……!」
「あれは、そう……やはりそうなのか! 叡智の奇術師。封印された右目……!」
「そんな禁じられし創世記にて、起きたエクリプスが……!」
「……」
知らない間に山のように設定を盛られながら、珂がしゅるしゅると包帯を解いて行けば緋の花が咲く。おぉおおおおおお、と生徒たちが息を飲む。よく見れば残ったスチームゴーレムたちがギィギィガァガァ言いながらもなんとか動き出している。
(「やる気は残っている、というところか」)
実際、奴らとて帰る気はないのだろう。困惑と混乱の中、妙な感じに向けられる殺気は本物だ。
「ギ、ギギギ」
「ハッケンハッケン。波動ヲ……ンチ、感知」
「排除、排除、殲滅」
排除! と力強く響いた声と共に、スチームゴーレムたちが一気に動きだした。ばふん、と上がる蒸気がほくほくの南瓜の香りをしているあたりなど、ツッコんではいけないのだろう。
「排除スル……!」
「招待状はお持ちかな、こういうのだよ」
ギュイン、と一気に来たスチームゴーレムに、グィーは薔薇封筒の手紙をひゅん、と投げつけた。格好良いポーズである。おぉおお、と生徒たちから声が上がり、手紙を受け取ったゴーレムが、ギ、ギギ、と軋む。
「排除、ハイ、ジョ、ジョジョ
……!?」
「君を縛る真言は「呪わしき煙(蒸気)を吐いてはいけない」」
口元に指をあて、グィーは微笑んだ。
「宴を愛さぬ汚い煙は、この宴には不要だろう?」
「はい、じょ、はい、はいじょ、センメツメツメメメメ
……!?」
ギィイィ、とスチームゴーレムが軋んだ。混乱しているのか、振り上げた筈の腕が関係ない場所を高く。封印されし柱(会場の軽そうな飾りの柱)に届くより先に、その腕を珂が払いあげた。
「闇を操り、鉄の南瓜を鮮やかにバラそう」
ザン、とゴーレムの腕が砕け散る。闇が……! と盛り上がった生徒たちの方は、うん、もう振り返ってはいけない。
「殲滅、殲滅、センメ、スル殲滅……!」
なんとか、ぐん、と顔を上げたスチームゴーレムが巨大な網を空中へと放つ。狙い先はーー珂とグィーだ。
「殲滅ス……!」
だが、その網目が崩れた。
「今日は宴で気分が良い。魔銃も味わわせてあげようか」
グィーの銃弾だ。フッ、と意味ありげな微笑を浮かべ、少年は銃口を向ける。
「僕の魔銃から逃れられる者は居ない」
放つは空へ。外れたと歯車を回そうとしたゴーレムの体へと、だが、銃弾は届いた。
「あれは……!」
「絶対不可避の魔弾……!」
ーー敵の動きをよく見て、追跡して空間を利用した跳弾であるのだが、うん。時に技術とは魔術に到るのである。
「ギィイイイイイ!?」
放たれた網は砕け、鋼の奥へと届いた銃弾がスチームゴーレムを砕く。ばふん、と煙を上げながらゴーレムたちは倒れていく。
「あぁ、命を充填しなくては。猟師殿、よい贄を知っているだろうか?」
妙にほくほくな南瓜の香りを背に、珂はグィーを振り返る。
「血のような紅に黒薔薇が蔓延る甘美なる贄はどうかな?」
「何と麗しい、薔薇の甘き罠に囚われてしまいそうだ」
二人一緒にベリーのよく聞いたスフレケーキに舌鼓を打ちながら、ああ、とグィーは視線を上げた。
「ああ、喉を潤すのも忘れてはいけないね」
「そうであった、8つの玉座にも献杯せねばならぬしな」
8つの玉座に敬意を払い、ゴブレットを手に奇術師と猟師は乾杯する。小気味良い音の背後、完全に動きを止めたスチームゴーレムが崩れ落ちた。
●永遠の光の果てに
そして、大地は守られた。
祝祭と喝采の中、我らは世界の真なる光を見たのだ。深淵領域。我らが円卓はこの日、大いなる神の訪れと、禁じられた匣に触れたのだ。
ーーだが、仔細は伏せよう。
全ては伝承の語るがままに。我らがアルカディア。禁じられし瞳が語るがままに。
「自動書記瞳(オートメモワール)サンクチュアリに固定。ーーあぁ、我々は、栄光を目に世界を望もう」
左目を抑えた生徒の横、ローブを纏う女子生徒は祈りを捧げながら告げる。
「最早我らにこの世の常識は通用しないわ」
「そう、新世界の到来だ……!」
「ーー……」
そう、つまりは!
謎の盛り上がりと共にアルダワ魔法学園のハロウィンパーティーは守られたのだ。新世界と光と闇と海の果てと地の底とか混ざったけど気にしてはいけない。
守られたのだ! 大切だから二回言うが守られたのだ。
そう、アルダワ魔法学園地下兼研究室(でも一階にある)に新たな歴史を刻みながら……。
大成功
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