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バッドガンズ・ジャンクション

#ヒーローズアース



「――素晴らしい」
 部屋に重々しく、恍惚とした声が響く。声の主、『グルヌイユ教授』と呼ばれるオブリビオンの手中には、青い光を放つ脈動する心臓のような物体。
「触れただけでわかるこのエネルギー……これを用いれば……くく。必ずやあのお方もお喜びになられるだろう……すぐさま帰還し新兵器の製造に取り掛かりたいところだが」
 喜色を浮かべながら慎重に物体をシリンダーに収めた教授は、背に控える配下たちの持つ銃器を見て思案する。いずれも、彼が作った試作品だ。

「もう少し、データを取るべきか」
 教授はでっぷりとした腹を一叩きすると、先ほどまでの喜色をあらわにした姿が嘘のように冷たい声で告げる。
「――念を入れる。性能試験だ。この街のニンゲンを全て殺せ」
 下された『指令』に配下たちは即座に反応。整然と並び敬礼を以て返答とし、行動を始め――。

「――ヘイ、旦那。そいつはちょっと待ってもらおうか」
 そいつはちょっと、笑えねえ。


「お仕事の時間でござるよー」
 グリモアベースに佇む隻眼の女羅刹、御鏡・十兵衛は気の抜けた声でその場に居る猟兵へと呼びかけた。
「えー、場所はヒーローズアース。とある街の郊外にある、ひらべったい建物でござるな」
 ほれ、と指し示す先には目的の基地周辺の情景が映る。そこはヒーローズアースにおいて、少数精鋭なことでそれなりに有名なヒーローチームの本拠地だ。

「この施設の奥の方に未知のえねるぎい結晶体とやらが保管されている。『グルヌイユ教授』と呼ばれるカエルのようなオブリビオンたちと、その協力者のヴィランが、それを求めて襲撃をかけてきたのでござるよ」
 ヴィランの手引きか、ちょうど遠方の事件の対応のためヒーローチーム全員が出撃しているタイミングを狙っての襲撃、当然一般職員だけでは対応できず、既に施設奥にまで侵入され、目標物は奪われてしまったらしい。

「まあ、結晶体の方は差し迫った危機ではござらん。倒せば回収できるモノでござるし、忘れてくれて構わぬ」
 問題は、そのあとのオブリビオンの行動だ。グルヌイユ教授は、自ら作成し、配下のオブリビオンに貸与した試作銃器の性能試験と称して街で虐殺を行おうとしているのだ。
 そして、それにヴィラン――B・Jという名の――が反発し、オブリビオンと口論になっているというのが事のあらましだ。
「当然、このままではB・Jは殺されてしまい、野放しになったオブリビオンは街で好き勝手やるわけでござるが」
 それを止めるのが猟兵たちの仕事だと十兵衛は言う。
「見殺しにさえしなければ良い、つまりは別にB・Jに協力する必要はござらん。共に戦うか否かは貴殿らの方で判断すると良かろう」
 敵は、釜に座ったカエルのような姿のオブリビオン『グルヌイユ教授』と、その配下の警官姿の犬人型オブリビオン『ダーティーポリス』。単体能力ではグルヌイユ教授が一枚上手だが、試作銃器を持ち、高い連携能力を持つダーティーポリスも侮ることの出来ない強敵だ。
 対するB・Jの能力は不明だが、記録によれば搦め手がメインで戦闘能力はあまり高くはないようだ。

「警官姿をしているだけあって警護の層は厚い。まずは配下の警官を蹴散らしてから、グルヌイユ教授との戦いに臨まねばならぬ」
 戦いの場は屋内。ヒーローの基地、それも危険物を保管する区画という事もあり、耐久性も広さも十分に確保されているため、建物の心配はしなくて構わないとのこと。戦いは純粋な実力での勝負となるだろう。

「オブリビオンを倒した後は街へ繰り出すもよし、B・Jを捕まえてまじもんの警察に突き出すもよし、好きにやると良い。……何はともあれ、無事に戦いを切り抜けてからでござるが!ささ、というわけで行った行った!」
 十兵衛が手招く先には無数の人影が透けて見える転移の水膜。
「良い土産話、期待してるでござるよ!」


いさぶろー
 お久しぶりです。
 動物(特に犬)は眺めるのは好きですがべろっと舐められたり噛まれたりが怖くて中々近づけません。いさぶろーです。

 ヒーローズアースです。ヴィランくんといっしょ。

 各章はじめにマスターシーンを入れますのでプレイングはそれまで少しお待ちください。
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第1章 集団戦 『ダーティーポリス』

POW   :    動くな、止まれ
【銃弾】が命中した対象を爆破し、更に互いを【手錠】で繋ぐ。
SPD   :    命をかけて全うする
【仲間と共鳴する咆哮により暴走状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    我々には覚悟があるのだ
【絶対的な忠誠心】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
👑11
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●分かれ道
「ふむ、義憤か?ヒーロー志望だったとは知らなかったが」
「ハッ、冗談でもやめてくれよ。反吐が出る」
 オーバーな仕草と共に顔をしかめたB・Jだが、その視線は変わらず冷ややかで教授を捉えて離さない。
「……多少は使えると評価してやっていたのだが、残念だよ」
「ヤー、どーも。俺も残念だよ。今日はタダ働き確定だ」
 微塵も残念そうではない声色で返すB・Jに後悔の色はない。
 彼はいつだって己の衝動に従って生きて来た。ヒーローが嫌いになったから唾吐きつけぶっ殺してヴィランになったし、面白そうだと感じたから怪しいとわかっていながらもこのバイオモンスター連中の盗み話に乗った。
「まあ、しょうがねえ。金を貰ったって、肝心のピザ屋が潰れちゃ意味がない」
 大して美味いわけでもないピザ屋と、少しの気にくわなさのためだけに、勝ち目がない相手に銃を突き付けているのも、同じことだ。

「くだらない。刹那的で、愚かで、醜くすらある。見るに堪んよ」
 深く溜息をついて、教授はドーベルマン型の配下に目配せをする。『許可』は出された。短く一吼え、愚かなヴィランをハチの巣にするべく、狙いを付ける。
 これはいわばクソゲーだ。配られたカードは自身一枚、数字も負けていて、新たな手札は望めない。ブラック・ジャックなんて起こるはずがない。勝負した瞬間に負けが確定するゲーム。涙が出てくるね。
 だから賭けた。そして。

「悪いな、運命の女神様は刹那的で、愚かで、醜い奴が好みらしい」
 愉快そうに笑うB・Jの後方に、次々と現れる気配。
「ほら、さっさと守りを固めろよ、パピー?もたもたしてると飼い主様が喰い殺されちまうぜ」

   ワイルドカード
 ―― 猟 兵 の登場だ。
疋田・菊月
おやおや、警邏の方々、お仕事ご苦労様です
しかしながら、その銃器は捕り物に用いるには少々物騒ですねぇ
人民の敵となった警察には、お帰り頂きましょう
さあさ、お掃除しますよー!

クロックアップ・スピードにて九九式の制圧射撃を行いつつ、動き回って敵陣を攪乱します
銃器を扱うからには、警邏の方々も防弾服などの備えがございましょうが、私の軽機はそこいらの拳銃とは一味違いますよ
こちらのばらまきが効果を成せば、一撃で倒せなくとも、味方とそれからええと、びーじぇいさんの援護にもなる筈です
ピザ、いいですよね。冷めたピザを食べながら銃器の手入れをしていると、神妙な心持になります
今はあなたではなくあなたのピザを守りましょう


レナ・フォルトゥス
ヴィランもヴィランだけど、まぁ、そういう考え方は嫌いじゃないわね。
人々は、みんな、個人的な考え方を持っているからですけどね。
あえて言うと、今回は、オブリビオンが悪辣な連中で慈悲の必要がないってところですかしら。

それにしても、イヌね。
集団戦は得意そうでしょうけど、個体自体はそれほどでもないし。
ならば、こうよ。
「鬼畜外道のオブリビオン、そこまでにしてもらいますわ!」
言うなり、敵に対してウィザードミサイルを発射、その隙にBJを救出、一旦遠距離まで離れる。
その後、【範囲攻撃】、火の【属性攻撃】【全力魔法】【高速詠唱】でオブリビオンを抑える「ファイアストーム!」
あと、敵の攻撃は【見切り】で避ける前に潰す



●怒涛の赤、疾風の緑
 迫るダーティーポリスの一隊から逃れようと銃を構えながらじりじりと退がるB・Jを、レナ・フォルトゥス(森羅万象爆裂魔人・f09846)の燃えるような赤い瞳が見つめる。
「ヴィランもヴィランだけど……」
 B・Jも皆殺し行為そのものについては否定していない辺り、悪党であることに違いはない。けれど、ああいう考え方がレアは嫌いではない。助ける理由は、それで十分だった。
「今回の敵は、悪辣な連中で慈悲の必要がないってところがいいですわね」
 つまり、加減は要らない。【ウィザード・ミサイル】――レアの背後に百を越える炎が展開される。熱量を矢の形に留め宙に浮き、主の号令を待つ。
「鬼畜外道のオブリビオン、そこまでにしてもらいますわ…!」
 言葉と共に射出された炎の矢たちがダーティーポリスの頭上から次々と降り注ぐ。
「……ッ盾!」
 耳をピクリと動かしひとりの犬警官があげた声に、隊の中でも屈強な犬種の警官たちが素早く応える。屈強な肉体を更に隆起させ、背に背負ったライオットシールドを隙間なく掲げ踏ん張ることで、矢の雨を凌いでいく。
 強固な忠誠心に裏打ちされた連携力。遺憾なくその実力を発揮したダーティーポリス。生じた動揺は一瞬、このままB・Jを殺す程度の事には何も支障はない……が、猟兵は一人だけではない。

 ――ぱちん。
「おやおや、警邏の方々、お仕事ご苦労様です!」
 拮抗を打ち破るべく、天真爛漫な弾ける笑顔を浮かべた疋田・菊月(人造術士九号・f22519)が現れる。戦場には不似合いなメイド服に身を包んだ彼女の目的は、仕事に励む警官――風の彼ら――を癒すことではなくむしろ逆で。
「人民の敵となった警察には、お帰り頂きましょう。さあさ、お掃除しますよー!」
 【クロックアップ・スピード】によって加速した菊月の突撃。九九式軽機関銃から銃弾がバラまかれる。鮮やかな緑髪の色を残光として残す程のスピードで行われる、移動しながらの制圧射撃。通常であれば著しく命中精度の低くなるはずのソレは、上方への防御を固めるため密集していた彼らには非常に効果的であり、また防ぐ術はなかった。

「ヒュウ、噂で聞いちゃいたが……やるねえ、猟兵ってのは。」
 銃に撃ち抜かれて守りが崩れ、矢を防ぎきれず。次々に倒れ、トドメにレナの大技、“魔人”の面目躍如とも言える炎の大渦に飲み込まれていくダーティーポリスたち。
 これは勝ったな……とのんきに眼前で繰り広げられる光景を観戦気分で眺めていたB・Jの傍に、菊月が急停止する。
「……ピザ、いいですよね。冷めたピザを食べながら銃器の手入れをしていると、神妙な心持になります」
「お、おう?いいよなピザ。俺はアツアツの方が好きだけどよ」
 なぜいきなりその話題、とか、普段そんな渋いことしてんだなこの嬢ちゃん、とか。色々飲み込んで何とか普通に答えたB・J。
「今はあなたではなく、あなたのピザを守りますので!」
 それに対する返答、というか宣言もすぐには理解できなくて。ぽかんとした様子のB・Jの横スレスレを、銃弾が通り過ぎる。反射的に見た先には新たなダーティーポリスたち。

「……オーケイ、理解したぜ。俺“は”守ってくれないってことな!ハッハー!」
 B・Jは慌てて尻尾を巻いて逃げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

宮落・ライア
あっはっはっはっはっはっは!
喰い殺しに来ちゃったぜ?
(扉か壁を蹴破ってエントリィー! え?後でヒーローが泣く?
それよりロマンロマン!)

ああ、そうそうB・J。ボクもキミみたいな愚か者は結構好みだぜ?
ここで死なせるには惜しすぎるし、こんなのに殺させるにももったいない。

演出で【自己証明】発動。
強化された身体能力で暴れまわる。
毒や傷みは【毒耐性・激痛耐性】で押し込めて笑って暴れる。

手錠が来たら【止まる事無かれ】で強引に引きちぎる。
(繋がった状態でそのまま強引に振り回して相手事引きちぎるとか?
鎖のみでもオケ)

刹那的で、愚かで、醜くすら? 賛辞だね!

さぁ!盛大にバースト(破裂)する覚悟は出来てる?



ライオットシールドや室内の壁を遮蔽に、即席の陣地を作り上げたダーティポリスの一隊。
「……そのまま持久戦に持ち込め、奴らにはそちらの方が辛いだろう」
 この隊のリーダーである、セントバーナード種のダーティーポリスは低く重い声で部下に命令を下すと、足元に縛って転がした男――ばったり遭遇し、普通に捕まっちゃったB・Jを見下す。
「ヤー、普通に追われちゃ逃げれねえって。ところでライターない?なあ、ライターだよ。あ、ごめんタバコもねえな。それも。なあなあ」
 鬱陶しそうに一瞥し、纏わりついてくる男をやや乱暴に足で蹴飛ばすと、リーダーは考えを巡らせた。
(猟兵といえど、疲労はある。どうやら奴らの目的はこの男……“餌”がこちらにある以上、攻めて来ざるを得ない。集団での持久戦であれば専門の訓練を受けた我々が上だ。……幸いなことに、この施設の壁は特殊な合金で作られているようでかなり頑丈だ。生半可な力では壊すことは不――)
 ――轟く破壊音、舞う土煙。
「あっはっはっはっはっはっは!――喰い殺しに来ちゃったぜ?……あ、B・Jだ」
 笑いと共に壁を壊し――たぶん大抵1チームに一人は居る便利なヒーローが直してくれる――現れた猟兵、宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は「あれ?青い蛙は?」ときょろきょろと周囲を見回している。
「……規格外め」
 忌々し気に吐き捨てるリーダー。部下のダーティーポリスはライアへ既に銃器を向けている。B・Jは仕込みナイフでさらっと縄抜けしていた。
「ヘイ、一人で突っ込んでくるとはやるなガール。どう切り抜ける?」
 ライアは笑みを深めて答える。どうせなら、ヒーローらしく行きたい。ならば――
「――もちろん、正面突破だよ」
「ヒュウ、マジかよキマってんな!ああ、だが嫌いじゃねえ」
「刹那的で、愚かで、醜くすらあるキミには言われたくないね!」
「ヤー、耳が痛いね、まったく」

 軽口を叩きながら、ライアは血を“廻す”。その血と共に毒を、呪を、全身に巡らせて。【侵食加速:自己証明】――更にその先へ。
 血を強め、毒を強め、呪を強める。しかして、縛られることなく。

「――ああ、そうそうB・J。ボクもキミみたいな愚か者は結構好みだぜ?ここで死なせるには惜しすぎるし、こんなのに殺させるにももったいない」

 ――汝、【止まる事無かれ】!!!

「……撃ち方始め!」
 ダーティーポリスの斉射が始まる。B・Jは遮蔽に滑り込み援護射撃を。ライアは宣言通り正面へと駆けて。
 縫うように、滑るようにジグザグに銃弾の間を走る。銃弾が腕に掠る。爆音。焼け付くような痛みと共に腕が重くなり、じゃらりと音が鳴る。手錠だ。だが、むしろ好都合だ。
 被弾による痛みをじわじわと襲い来る毒の痛みと合わせて、笑って押し込めて。
「ぐっ……キャイン!」
 腕を跳ね上げる。抵抗は僅かにしか出来なかった。ユーベルコードにより押し上げられたライアの身体能力に抗うことは出来ず、鎖を引かれるままに宙を舞う小型犬種のダーティーポリス。
 細腕が豪快に回される。悲鳴と共に空を犬が舞う。鉄球を振り回すように、勢いよく、より高速に。声はもう出ない。ライアは笑う。
「さあ、盛大にバーストする覚悟は出来てる?」
 ――ごくり、と生唾を飲む音がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミハエラ・ジェシンスカ
ふん? 迂闊だな、ヒーローどもめ
いや、その隙を突いたヤツの手際をこそ褒めるべきか
これでオブリビオンでさえなければ
あるいは隠し果せたやも知れんがな

悪いが貴様らの戦い方は既に「知っている」
無論、多少の個体差はあろうがな
銃弾を【見切り】【乱戦戦術】を使用して手錠で繋がれる事を防ぐ
繋がった敵同士をさらに【念動力】で引っ張るなどして敵の連携を乱し
その隙を突いて突撃、フォースセイバーで残る敵を斬り伏せてやる

B・Jに対してこちらから何かする心算はない
雇い主への叛逆だろうとなんだろうと、自身にするべき事があるというのなら好きにすれば良い
ヴィランとはそういうものだろう?



「ふん……迂闊だな、ヒーローどもめ」
 ヴィランやオブリビオンに好き勝手侵入されている施設の現状を見て、ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)は吐き捨てるように呟いた。
(……いや、その隙を突いたヤツの手際をこそ褒めるべきか)
 恐らく事前に何らかの方法でここの警備が手薄になることを“知って”いたのだろう。オブリビオンが絡んでいなければ侵入の事実さえ隠し果せていたであろう手際の良さは、この世界よりも遥かに優れた科学技術を有する世界出身の彼女をして一定の評価に値した。
「まあ、いい」
 ヒーローやヴィランの腕がどうであれ、ミハエラのやることに変わりはない。油断なくこちらを見据えるダーティーポリスの一隊へ向け、一歩踏み出す。
「自身にすべきことがあるというのなら、そちらを優先して構わん。私は好きにやらせて貰う。貴様も好きにするがいい」
 ――ヴィランとはそういうものだろう?
 やや後ろに立つ、B・Jに向けた言葉。受け取ったB・Jは暫しミハエラを見つめてから、構えた銃を下ろす。
「ヤー、わかってるじゃねえか。俺が居ても邪魔になりそうだしな、精々好きに利用させて貰うぜ」
 少し遠くに見える教授を見据え、そちらへ戦闘を避けるように瓦礫や遮蔽物に隠れつつ向かっていくB・J。

「それでいい」
 ミハエラの両腕に持つ円筒から赤い光刃が伸び、向けられた赤いポインターがミハエラの黒いボディを斑に彩る。並んだダーティーポリスの内の一人が腕を振り上げて。
「――撃てェ!」
 鉛の牙が解き放たれる。ミハエラただ一人に向けて撃ち放たれた牙は一発では止まず、まるで猟犬の群れのよう。執拗に、途切れることなく襲い続け――しかし捉えることは叶わない。
「――悪いが貴様らの戦い方は既に“知っている”」
 ミハエラは過去に同種のオブリビオンと交戦し勝利を納めた事がある。それ故の発言。もちろん、装備や戦闘の状況や個体としての能力など、差異は多々ある。――だが、それだけだ。
 ダーティーポリスというオブリビオンにとって不運だったのは、ミハエラ・ジェシンスカというウォーマシンが、その得意とする一つの戦術が、彼らに“刺さり過ぎた”ことだ。

「……なっ!?」
 必中の確信。繋がれた手錠の感触。慣れた感覚を先に、硝煙の晴れた後に、続けて目視で結果を確認したダーティーポリスは驚愕のあまり目を見開いた。
 “味方同士”の腕に繋がった手錠。念動力によって自由を奪われ、盾にされていた片割れが放り捨てられる。引き寄せられる勢いのままつんのめるように地に倒れ伏して。
 周囲を見ればいつの間にかほとんどの味方が倒れ伏し、自身と似たような状況に陥っている。影が落ちる。不意に見上げた先には――赤く光る死神の刃。
「これも戦術だ。悪く思うな」
 ――Blackout

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミーリア・ソイニンヴァーラ
試作銃器?
どうも、はじめまして
わたしの故郷フィンランドの英雄シモ・ヘイヘさんのような、最高の狙撃手を目指している、エミーリアともうします
…そのわたしから見て、試作銃器とやらが気になりましたので、参戦させていただきますね

あ。共闘やアドリブは、MSさんのご自由になさってくださいね

わたしの基本戦術は、バップルさん♪(ライフル型の精霊銃)による狙撃です。その為の技能も持っています
接近されたらチップルさん♪(拳銃型のサイコキャノン)で《零距離射撃》等をします

B・Jさんの心意気には感服いたしましたので、B・Jさんを助ける方向で《援護射撃》くらいは入れようかと…

あとは試作銃器の性能を見てみたいですね



●Gundog Analyze
 犬(人間サイズ)と蛙とチンピラ臭のするヴィランという、一般的に年若い少女には好まれるとは思えない要素の組み合わせた戦場。
 そんな戦場にやって来るだけあってエミーリア・ソイニンヴァーラ(おひさま笑顔♪・f06592)も一風変わった少女であった。
「オブリビオンの試作銃器……ですか」
 エミーリアの興味の対象は、オブリビオンたちの持つ銃器。遠目からみた限りでは、サイズ、形状共に特異なものは見られない。試作と言うだけあって、完全に一致する銃器はエミーリアの記憶にはないが、共通する部分は多々見受けられた。
「と、なると内部の機構でしょうか。あの構造であの威力の大きさは少し不自然です」
 特筆すべきはその威力。アサルトライフルの銃弾程度では掠り傷一つつかないはずの壁に平然と穴を開けている。銃の口径と威力が明らかに一致していないのだ。また、弾倉の大きさに比べて多い銃弾を吐き出している点もおかしい。
「……あっ、いけない。早く助けてあげないと」
 視線の先では、分厚い柱に背を預けたB・Jに向けたダーティーポリスたちによる制圧射撃が行われていた。柱は恐怖感を煽るように外側からじわじわと削られ、加えてダーティーポリスの一部は周り込むように散開している。 
「……?あれは……なるほど、そういうことですか」
 リロードをする瞬間を見たエミーリアは、試作銃器のおおよその絡繰りを察した。
 (マガジンを交換する際、捨てずに腰部に携帯した機器に差し込んだものと交換している……バッテリーのようなものでしょうか)
 つまりは、マガジンのエネルギーを実弾風に変換して撃ちだす銃。威力や装填数がおかしいのも、真っ当な実弾銃でないのであれば頷ける。

「お願いしますね、バップルさん♪」
 エミーリアは敵とB・Jを視界の内に収められる位置に素早く移動すると、愛用のライフルをひと撫でしてから構える。
 仕掛けるタイミングが重要だ。対多数に対してこちらは一人。距離はあるが銃器の数で負けている以上、一気に決めなければ不利は確実。
 息を潜める獣のように、獲物を狙う狩人のように。銃口をピタリと止めたまま微動だにせず。柱が削られていく。逃げ道はもうない。B・Jは覚悟を決めた表情で身を投――
「今!わふ~!」
 解き放つ。ほんわかした掛け声と共に、『バップルさん♪』というほんわかした名前の銃器から吐き出されるのは全くほんわかしていない鉛の魔弾。
 クラッカーを弾いたように、横から吹き付ける魔弾の雨は数に比例して精度を落とす――ことはない。
 マガジンを最優先に、銃を持つ手、狙いを付ける目、此方へ近づく足を。故国フィンランドで英雄視されるかの狙撃兵のように、次々に、精度を落とす事無く放たれた魔弾は、正確に敵のウィークポイントを撃ち抜いていく。
 【ガトリング・バップル♪】の名が示すように、やがて熱した砲身を冷ますように銃声が収まった時、立っているのはエミーリアのみだった。B・Jはドサクサに紛れて無事切り抜けたようで、やや離れた所にその背が見える。
 エミーリアは、倒れ伏したダーティーポリスたちの銃器を拾いまじまじと眺めて。
「うぅん、メンテナンス性に難あり、でしょうか?」
 彼女のお眼鏡に適うものだったかどうかは、微妙な所だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャック・スペード
ヒーローはお呼びじゃないだろうが、折角駆けつけたんだ
確かB・Jといったか、当機も賭けに混ぜてくれ
そうだな……あんたが『生きて帰る』に此の鉛玉を賭けようか

さて、ドーベルマン達は職務ご苦労
然しヴィランは不殺が原則だ、お前達には退場して貰うぞ
広範囲にマヒの弾丸をばら撒いて足止め狙い
動きを止めた敵から、機械竜に転じた片腕で攻撃して行こう
さあ、その飢えを存分に満たせ――ハインリヒ

反撃は怪力でグラップルして受け止めたい
防御が成功したら、零距離射撃でカウンターを
損傷は激痛耐性で堪えようか

B・Jが狙われた時は此の身で庇うとしよう
ヴィランとはいえ今ばかりは共闘相手だ
其れに俺はヒーローだからな、守り切って見せるさ



●Black♠jack
「っはー……!ほぼ逃げ回ってただけとはいえ、きついなオイ……だが、漸くテーブルが見えて来たぜ」
 もう少しだ。肩で息を切らすB・Jが無自覚に、睨みつけるように見つめた先には、虫でも見るように冷たくこちらを見つめるグルヌイユ教授と、それを守る最後のダーティーポリスたち。

「――確か、B・Jといったか」
 重厚で硬質な足音が響く。集中した意識に鋭いメスを入れられたようにB・Jの思考がクリアになる。傍らに並び立つはコートの裾をはためかせて黒鉄の大男、ジャック・スペード(J♠️・f16475)
「ヒーローはお呼びじゃないだろうが、折角駆けつけたんだ。その賭け、当機も混ぜてくれ」
 “ヒーロー”。その言葉に反応したB・Jとジャックの視線が交わる。その顔に笑みはない。数秒か、一瞬か。視線を外したのはB・Jの方だった。
「……いいぜ。俺はヒーローは嫌いだが、話が早い奴は嫌いじゃねえ」
 不敵に笑い、ハンドガンを構えたB・Jを見て一つ頷くと、ジャックは前へと歩み出る。
「そうだな……俺はあんたが『生きて帰る』に――」
 銀の歯車が回り始める。『Deus ex Makina』の名を冠するリボルバーのシリンダーへと、素早く銃弾を込めていく。1、2、3、4、5……6発目を、見せつけるようにゆっくりと込めながら。
「――此の鉛玉を賭けようか」
 引き金を引いた。開戦の合図だ。ジャックの一発目を呼び水に、B・Jが、ダーティーポリスが、弾かれたように動き出しそれぞれの得物から銃弾を撃ち放ってゆく。
 B・Jの援護射撃を背に、ジャックは走る。アーマーに傷を作ることも厭わない突撃。動けるならば問題ないと、痛みは彼方に押しやって。
 走りながら、リボルバーを持った腕を薙ぐ。瞬く間に4発、狙いもそこそこにバラ撒くように撃たれた銃弾は、半分は空しく地面を抉るに留まったが、半分は敵の身体の一部を食い千切り、本人の意思とは無関係に、その身体を痙攣させる。麻痺の弾丸だ。

 速攻で5発全て消費し、シリンダーを回転させたジャックのリボルバーを見て、B・Jはやや引きつった声で叫ぶ。
「……ハッ、ソレを外したら俺は死ぬって?冗談きついぜ!」
「――心配はいらない、“外さないように”撃つ」
 吹き付ける鉛の嵐を掻い潜り、ジャックが飛び掛かる。リボルバーを持たない右腕がうねる。黒から銀色に、物を掴む手は敵を食い千切る顎へと。生き物のように――否、別の生き物となったそれを。
「さあ、その飢えを存分に満たせ――ハインリヒ」
 ――解き放つ。【暴食に狂いし機械竜】の衝動のままに。薙ぎ倒し、喰い荒らし、反撃に振るわれた得物さえ噛み潰す。警棒を腕ごとハインリヒに噛みつかれたドーベルマン種のダーティーポリスに、ジャックは銃口を押し当てた。
「職務ご苦労――休暇を取るといい、存分にな」
 6発目の銃声が鳴った。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『グルヌイユ教授』

POW   :    機械兵錬成
自身からレベルm半径内の無機物を【【ヒーロー】に強い特攻を持つ自立機械兵】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD   :    万能錬金釜『フルアクセル』
全身を【高性能の改造武器と改造防具】で覆い、自身の【装備した兵器】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    暗黒兵錬成
【制御用の黒仮面を被った、相手と同じ姿】の霊を召喚する。これは【相手が所持する技】や【相手が所持する技能】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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 配下のダーティーポリス、その最後の一人が崩れ落ちる様を見てもグルヌイユ教授の表情は変わらない。ただの一人も倒せないとは使えない配下だ。と溜息をつくように呟くだけ。
「……まあいい、今の戦闘で十分にデータは取れた」
 データも取り、目的の結晶体は手に入れた。猟兵を殺すのならば兵器を開発した後の方が確実であり、わざわざ今ここで相手をするリスクを取る必要はない。感情よりも利益や合理を取る選択。錬金釜のエンジンに火を入れる教授は、ふと感じた“嫌な予感”にアクセルをかけようとした手を止める。
「――おお?まだ何も言ってねえのに。いい勘してんじゃねえか」
 これなーんだ、とぷらぷら振って見せたB・Jの手には、教授が持っているはずの『結晶体の入ったシリンダー』
 抱えたシリンダーの重みは変わらずある。慌てて確認してみれば、教授が持っていたのは『空のシリンダー』
「――せっかく盛り上がって来たんだぜ?ここで降りるなんて興ざめも良いとこだ。認められねえ……さあ、再開だ。てめえも賭けろよ。カエル野郎」
「……貴様!」
 教授の眉が吊り上がる。様子を見て不敵に笑うB・J。……はそのまま猟兵の背後に隠れるように移動する。
「……俺はちょっとばかり『手癖が悪い』のが自慢でね。こうしてその気にさせてやったわけだが……困ったことに、俺じゃ逆立ちしたって奴には歯が立たねえ」
 だが、猟兵たちならば。
「――悪いな、後は任せたぜ」
宮落・ライア
ヒーロー特攻とは?
謎であるからはよ見せろ。
ただの頑丈では壊すぞ?
ただの火力では無視するぞ?
心に訴えかけるのか?木偶人形に何を動かせる?
さぁ見せてみろよ。悉く斬り壊すぞ?

何が出てもとりあえず斬り壊して残骸を教授に蹴りつけるかなー。
斬って壊せなくても、大剣使ったりぶっ叩いたり、素手で殴ったりして
スクラップにするのは変わらない。

(設定的に自称ヒーローなだけのデストロイヤー】

と言うか手癖が悪い所じゃないなお前?
よく入れ替えられたな。そんな隙いつあったんだよ…。



●残骸の正義
 グルヌイユ教授とB・Jのやり取り、その間もそれ以前も、B・Jは教授と接触すらしていない。だというのに、ブツの入ったシリンダーはB・Jの手にある。
「よく入れ替えられたな。そんな隙いつあったんだよ…」
 『手癖が悪い』どころの話じゃないな、と思った所で宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は一旦考えをストップさせた。

「――で、それがわたしの相手だって?」
 B・Jと話していた時とは別人のような冷たい口調。無骨な大剣を担いだライアの視線の先には、施設の地面より変じた3体のマネキンのような機械。
「そうだ。言うなればヒーロー殺し…貴様ら猟兵のようなヒーロー気取りの輩によく効く、お誂え向きの機械兵だとも」
 釜で腕を組みながらグルヌイユ教授は語る。どうやら手を出さず見物を決め込むつもりのようだ。 
「ふうん、ヒーロー殺し」
 変じてから立ったまま微動だにしない機械兵3体には目立った武装もなく、硬そうでもないし、出力も強そうには見えない。
「どの辺が……?謎だ。謎だから――早く見せてみろよ」

 強烈な踏み込み。一瞬で機械兵へ肉薄したライアは地面を抉りながら急制動し、大剣を薙ぎ払った。
 質量に速度を加えた圧倒的な暴威。反応できなかった機械兵の内一体は衝撃によって弾け飛ぶ。
 3体纏めて薙いだ割には手ごたえが軽い。見てみれば、機械兵の居た場所には恐怖に震える『人間の子供』の姿。ノータイムで潰した。逡巡はなかった。
 ふと、脇腹に刺すような痛み。触手状に伸びた機械兵の腕に貫かれていた。本体は既にスクラップになっている。
                   ヒーロー
「“こんなの”で、木偶人形の猿芝居で“わたし”を殺せるって?」
 くだらない。腕を引っこ抜きながら落胆を露に、スクラップを蹴りつける。グルヌイユ教授の払った左手に弾かれてしまった。
「それでヒーローを気取るか、笑わせてくれる」
 ――ボロが出ているぞ?
 嘲笑するグルヌイユ教授の左手は、青い血を流しながら力なく垂れさがっていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

エミーリア・ソイニンヴァーラ
WIZで行動

共闘やアドリブはご自由に

わふ?
わたしと同じ技と技能を持った、黒仮面の霊?
…それってつまり、わたしと狙撃・銃撃戦をしたいと…
いいですよ~♪ 臨むところですっ☆

距離があるうちは、<地形の利用>などを駆使し、周囲の物陰(遮蔽物)からバップルさん♪のスコープを使って、索敵(サーチ)&狙撃(デストロイ)
近づいたらチップルさん♪で、<零距離射撃>と<戦闘知識>などを使ったガンカタっぽい格闘兼銃撃

技と技能を真似ても、経験はどうなのでしょうね?
最後は<第六感>で隙を突いて、UCで撃破!…っと、いきたいのですが、上手くいくでしょうか?

真似て参考にするのなら良いのですが、真似するだけでは意味ないですよ



●Plus Ultra
「わふ?」
 ――狙撃ポイント。スコープを覗き込んだエミーリア・ソイニンヴァーラ(おひさま笑顔♪・f06592)の瞳に、不可思議な存在が映る。
 青蛙ではない。射線を遮るようににじみ出た靄がかったその存在から、強烈な悪寒を感じ取ったエミーリアは素早く物陰に隠れ、ポイントを変えるべく走る。
「見間違えでしょうか……?」
 再度構える。いない――左の机から反射光を感じた。咄嗟の射撃。靄が薄れたその姿を見たのは身を隠すまでの一瞬だったが、知るにはそれで十分だった。
「間違いなく、黒い仮面を被った、わたし……」
 それも恐らく、同じ技と技能を持っている。
 確認した位置から補足されないように、こっそりとグルヌイユ教授の位置をうかがう。どうやら他の猟兵と対峙しているようだ。
 位置は悪くない。しかし、『わたし』がいる以上、狙撃は不可能と言っていい。排除しなければ満足に狙う事さえできない。
 『わたし』の位置を確認する。ポジションもスコープも相変わらずこちらを向いている。
「わたしと狙撃・銃撃戦がしたいと……いいですよ~♪臨むところですっ☆」
 笑みが浮かぶ。可憐な少女に相応しい柔らかな笑み、それに反して込められた意図は闘争心に満ち溢れている。

「わふ~」
 示し合わせたように始まる銃撃戦。隠れ、撃ち、次々に位置を変える。
 技や技能は同一。戦闘は正答の奪い合いだ。仮に狙撃手として、エミーリアとして『こういう場合ならどうするか』と問われれば、寸分違わず同じ答えを返すだろう。
 趨勢を分ける要素は『経験』。エミーリアには今まで生きた中で蓄積してきた経験がある。正答や定石ではない、意識してのものではない。勘に近しい、選択の『揺らぎ』とでも呼ぶべきもの。
 身を任せた結果、悪手を打つ可能性もある危険な一手――だが、

「――チップルさん♪いきますよ!」
 エミーリアは狙撃戦を放棄した。勘に身を任せ、ライフルの『バップルさん♪』を残し、遮蔽から飛び出して身を隠す事無く真っすぐに『わたし』の元に。
 無謀な突撃は、しかし通った。ライフルを残したことにより、一瞬の判断の鈍りを招き、真っすぐに走るという自身の正答から外れた動きをすることで、照準調節を間に合わなくさせた。
 それらすべてが”絶妙なタイミングで”行うことによって得た、格闘戦の距離。
「真似て参考にするなら良いのですが」
 『チップルさん♪』に似た銃器を取り出そうとする『わたし』に先んじて、掌底を打ち込む。己と己。一度流れが決まれば、もう覆らない。黒い仮面がからんと音を立てて転がり、砂と崩れる。
「――真似するだけでは意味がないのです」
 数値にすれば、きっと0.01にも満たないだろう。けれど、この戦いの中で生まれた、その0.01の『経験』こそが勝負を分けたのだ。

 ――死神の鎌が、教授の喉に突き付けられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

疋田・菊月
おやおや、尻尾まくってお逃げになるのではなかったんですか?
カエルさんに恨みはありませんが、特定外来種を捕まえた場合は、飼うことはおろか持ち運びもできないのです
その場で屠畜する以外は。
覚悟してくださいね

とはいえ、お仲間をいっぱい呼ばれては厄介です。こちらも手が要りますね
私も援軍を呼ぶとしましょう
助けてカミオさん!
さあさ、今日は力仕事ですよ。怪物退治を手伝ってくださいませ
結構敵の数もありますので、私の撃ち漏らしをご自慢の魔法でぽぽーんと……
そこをなんとか~。またあんバタートースト作ってあげますから~
私の九九式とカミオさんの魔法が合わされば、きっと勝てます!

※アドリブ・連携などお任せいたします



●Anger vs Trust
「尻尾を巻いてお逃げになった思ったのですが~。案外根性がおありだったのでしょうか?」
 どんな理由にせよ、B・Jはやった。残る教授の相手は猟兵の仕事だ。九九式短機関銃を携えた疋田・菊月(人造術士九号・f22519)が教授と相対する。
「カエルさんに恨みはありませんが、特定外来種を捕まえた場合は、飼うことはおろか持ち運びもできないのです――その場で屠畜する以外は」
 オブリビオンは屠る。それが猟兵の役目であり、それ以外に道はない。
「覚悟してくださいね」
 菊月の言葉を聞き、教授の眉(ないけど)が釣り上がる。ぶちり、と音が聞こえた気がした。
「――屠畜、だと?殺すか増えるかしか能のない猿共が、よりにもよってこの私を畜生だと?」
 それはグルヌイユ教授の琴線に触れる発言だった。激情を露に、しかしすぐにその瞳を氷のように冷たく収めて教授は言い放つ。
「貴様からはデータを取る価値もない。悔いて死ね」
 グルヌイユ教授のそばにまたもや黒仮面の霊が現れる。揺らいだ靄が収束し、輪郭が定まったその姿は正しく相対する猟兵と瓜二つ。それが無数に。
 一体一体の力は弱くなろうと、殺すだけならば数で圧殺した方が合理的だ。教授の激情を現すように、霊たちは一刻も早く菊月の命を奪うべく、早々に短機関銃を撃ち放つ。
「おおっと、怒らせてしまいました!…お仲間がいっぱい、厄介です」
 自分の得物なのだから、九九式の命中精度が優れていないことはわかっている。
「こちらも手が要りますね…助けてカミオさん!」
 転がるように銃弾から逃れながら、菊月はダイモンデバイスを通じて“援軍”を呼ぶ。
「おわあ!なんてとこに呼びよったがや!」
 召喚早々銃弾が翼に掠ったことに、バサバサと音を立てて抗議するのは、ナゴヤ訛りの混じった言葉を話すクロウタドリの悪魔【カミオ】
「さあさ、カミオさん。今日は荒仕事ですよ!結構敵の数もありますので、ご自慢の魔法でぽぽーんと……」
 バサバサとした音に、嘴でつつく動作が加わった。
「あいたた、そこをなんとか~。またあんバタートースト作ってあげますから~」
 ピタリ、と動きを止めて菊月の肩に止まるカミオ。脳裏に浮かぶあんバタートーストの姿、ナイフを口に咥え、あんとバターを香ばしいトーストに塗り広げる幸福な時間を夢想する。
「――厚切り1枚、いや2枚だ」
「契約成立ですね~!」
 そういうことらしい。

「約束、違えるんじゃねぇど!」
 サーベルを咥え、瞬く間に飛び立ったカミオに続いて菊月も身を反転。黒仮面の霊たちと菊月、互いの九九式からバラまかれた銃弾が交差する。
「……っ!カミオさん!」
 粗製の黒仮面の霊と比べれば、銃の腕も、性能も上だ。しかし数の差は銃撃戦においては致命的だ。黒仮面の霊を数体蜂の巣にしたところで、菊月は残る黒仮面の霊がカミオと似た鳥の霊を呼び出したのを目視した。霊体だからかその総体は黒い。
「――たわけ、俺のコピーなら、嘴の色は黄色だろうが」
 黒い風が吹いた。トップスピードに乗ったカミオが空を横切ると、遅れて発生したカマイタチにより黒仮面と鳥の霊たちは纏めて引き裂かれ霧散していく。
「おのれ…まだ終わりではないぞ…!」
 釜の上で苛立たし気に足を揺らす教授の声に応え、次々と新たな黒仮面の霊が出現する。
「すごい怒ってるがや。お前なんか言っただろ」
「えへへ」
 ――戦いは続く。教授へ銃弾を叩き込むまで、あと少し。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミハエラ・ジェシンスカ
上出来だ、B・J
では不本意だろうが講義の時間と行こうかプロフェッサー

ほう、興味深いな
このドロイドども、如何なる基準でヒーローとそれ以外を識別している?
ああ、猟兵としての私の行いがヒーローに見える事は否定できんさ
それでも我が本質、我が使命は「悪」であるが故に

【悪心回路】を起動してヒーローへの特攻を無力化
遊んでやろう、ヒヨッ子(スポーン)ども
敵の攻撃を【見切り】【武器受け】で捌き
【カウンター】で着実に仕留める
必要に応じて隠し腕も展開しつつ【2回攻撃】も合わせて手数を確保

無論プロフェッサーへの警戒も忘れん
視覚ではなくフォースレーダーによる【情報収集】で動向を把握しつつ
隙を見つければそちらへ斬り込むぞ


ジャック・スペード
――やるじゃないか、B・J
後は任せてくれ、そのオブリビオンは
俺達が責任持って骸の海へと還そう

さあ、ヒーローショーを始めようか
お前は特等席で見ていくと良い、グルヌイユ教授
まずは召喚した電動ガンを乱れ打ちして牽制を

その錬金釜はお前を強化する切り札らしいな
ならばスナイパーの心得を活かし錬金釜を狙撃しよう
少しは弱体化できると良いのだが
飛翔されても問題無い、誘導弾で撃ち落としてやる

反撃はブレイドで武器受けして防御
成功したらカウンターで
渾身の怪力を篭めて鎧を無視する斬撃を
――生憎、俺は負けず嫌いだからな
完全防備されると逆に力が入る

戦闘中は敵の動きを観察し、学習力活かした見切りを意識
損傷は激痛耐性で堪えよう



●join Junction
「……ッ~!忌々しい、アレさえ奪われなければ今頃は……!」
 抑えきれぬ苛立ちを籠めた拳が釜へ叩きつけられる。グルヌイユ教授は焦っていた。
 追い詰められている。外傷は左手のみだが、それはものさしにはならない、戦闘を専門としていないグルヌイユ教授の実力は、身を守る召喚物の多さや強さを含めてのものである。
 “見られている”ことで、思うように動けない現状。じりじりと強まる焦りに飲まれかけても、頭の中の冷静な部分が分析を続ける。成果を出し、生き残る方法を探って。
 ――だが、この“二人”は長考を許してくれる許すほど甘くはない。

「随分と効いているようだ。やるじゃないか」
「ああ、上出来だ」
 B・Jの手際を褒めたジャック・スペード(J♠️・f16475)とそれに同意したミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)が並び立つ。
 共に銀河帝国を祖とするウォーマシン。だがその在り方は正反対のモノだ。
 即ち、『悪』と『正義』。
 失わず、変わらない者。失うことで変わった者。別の道を歩み、スタンスを違えた二人は、しかしこの場において目的を同じくし、肩を並べ立っている。
 ――ミハエラ・ジェシンスカは“教授”にとっての『悪』であらんとし。ジャック・スペードは“人々”へ害をなす存在を倒す『正義』であらんとする。そこに衝突はない。

「では、不本意だろうが講義の時間と行こうかプロフェッサー」
 ミハエラが赤い光剣を手に駆ける。行く手を阻むようにマネキンじみた機械兵たちが生成されるも、動き出す前にその身体を痙攣させ、地面に崩れ落ちる。
「授業料は必要ない。だが、代わりに骸の海へと還って貰おう」
 側面に「J♠️」のプリントを施した、手持ちサイズの発電機に筒をくっつけたような物体――召喚した電動ガンによるジャックの援護だ。
 
「――ぐ、ぐ……くそ、かくなる上は私自ら!」
 グルヌイユ教授の身体が青い装甲に包まれていく。体躯は一回り大きく、フォルムは流線形。腰より伸びるメカアームが錬金釜の取っ手をガッチリと掴み固定化する。最後にダーティーポリスたちが持っていた武器よりも幾分か小型で洗練された銃器を携えて。
 先ほどまでグルヌイユ教授の椅子としての使われていた万能錬金釜『フルアクセル』がついに起動する。その名の通りアクセルを思い切り踏んだような急加速。あまりの速さに教授自身制御しきれていないのか、室内の壁を削りながらボールのように跳ね、飛び回るフルアクセル。狙いは荒いが、あの速度であの質量と衝突してしまえば猟兵と言えどひとたまりも無い。

「あの錬金釜が奴を強化する切り札……というわけか」
 狙いが荒い分、回避に専念すればそうそう当たることも無い、しかしそれはこちらから捉える事もまた難しいことを表していた。
「速いな……どう対処する?」
「――そうだな、俺にもスナイパーの心得はある」
 機を狙った一撃で撃ち落とす。ミハエラの問いに、電動ガンを構える動作と共に返すジャック。
 そんな二人を取り囲むように、無数の機械兵が地面から生成される。
「どうやら奴はそうさせたくはないらしい……いいだろう。私が時間を稼いでやる」
 集中状態に入ったジャックを最優先目標として、襲い掛かる機械兵をミハエラが阻む。

「――ほう、興味深いな」
 阻まれたのを察知した機械兵が人間の姿を模したのを見て、ミハエラは愉快そうな声をあげる。
「このドロイドども、如何なる基準でヒーローとそれ以外を識別している?ああ、猟兵としての私の行いがヒーローに見える事は否定できんさ」
 だが、とミハエラは続ける――それでも我が本質、我が使命は『悪』であるが故に。
「『悪』というものを、教えてやろう。ヒヨッ子(スポーン)共」
 ミハエラのバイザーに灯る赤い光が消える。

「『悪心回路、凍結の一時解除を承認』――起動(イグニッション)」
 言葉とほぼ同時、赤い光が閃いた。
 じゅう、と機械が焼ける音がする。恐怖に歪んだ人を模した、機械兵の顔が両断される。フリーになった左手の光剣を無造作に振るい、顔を断たれて尚、藻掻く機械兵にとどめを刺したミハエラは残り“三刀”――右手と左右の隠し腕を振り払い、機械兵の骸を無造作に放り捨てる。

 光剣が空気を震わせ、赤い光が閃くたびにスクラップが一つ出来上がる。避けて、斬って、受けて、時折隙を晒し背後を取らせて――寸前で、蹴りあげた出来立てのスクラップを盾にそれごと両断する。からかうように、教え諭すように、じっくりと、それでいて残虐に壊す。
 右眼を開き、牙をむき出しに。先ほど冷静な様子とはかけ離れた凶悪な笑みを見て、感情を持たないはずの機械兵は暫し立ち“竦んだ”。

「そら、どうした。来ないなら、こちらから行くぞ?」
 悪意を持って襲い掛かる圧倒的な暴力に、この日、機械兵たちは『悪』というものを初めて知った。

●end
 教授の飛翔するスピードは弾速よりも速い、つまりは後ろから撃っても、側面から撃ってもまず当たらない。狙うならば正面――向かってくる教授へ、それも落とせる位置に正確に叩き込まなければならない。
「………」
 破壊する必要はない、スピードを出している所だ、少しの力を加えてやれば自然とバランスを崩して落ちるだろう。
 次で丁度正面コース。周囲の喧噪を意識からシャットアウトし、ジャックは銃口の先にのみ意識を集中させる。
 壁とぶつかり、軌道を修正する教授の『フルアクセル』へと銃弾を放つ。

「――なっ……!」
 都合三発、同一箇所へ立て続けに撃ち込まれた銃弾により、錬金釜の足が砕ける。重量バランスの変化と加えられた力によって錬金釜は勢いよく回転、速度を緩める間もなく失墜し、地面を削りながらジャックへと迫る。
「……ぐ、貴様あああッ!」
 迫る錬金釜の上から放たれた教授の苦し紛れの銃撃。その内、自身への命中弾だけを弾く。
「――生憎、俺は負けず嫌いだからな。完全防備されると、逆に力が入る。」
 渾身の怪力を籠めた一閃。すれ違い様の一刀で錬金釜が上下に寸断される。空を舞う教授。最後の一手は、もう一人に。

「おのれ……!申し訳ありません――さ」
「――講義は終わりだプロフェッサー。では、ごきげんよう」
 フォースレーダーにより常に位置を把握していたが故の、最適なタイミングでの跳躍。四つの光が立て続けに閃く。

 ――こうしてひとつの『悪』は潰えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ヒーローズアースの休日』

POW   :    ジムでトレーニングだ

SPD   :    のんびり散策するのもいいかな?

WIZ   :    ショッピングに行こう☆

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●B・J
 グルヌイユ教授は倒された。
 ヒーローが帰ってこれたのは全てが終わってから。現場のヒーロー基地では帰還したヒーローだけではなく、救急隊員や警察官など、事後処理に駆け付けた面々が忙しなく行きかう。

「――ってえな!もうちょっと優しくしろよ!あーくそ……ん?」
 そんな中、人ごみの中から押しやられるように出て来たのは手錠をかけられたB・Jだ。彼は猟兵たちに気づくと、ぎこちない笑顔を浮かべ不自由になった両手を挙げてみせる。
「あー……まあ、俺はこういうことになっちまったんだが……お前ら、この後どうするんだ?」
 B・Jはこの後、ピザを食べに行くのだという。手錠を付けたまま。
「ぶち込まれる前に最後は……ってやつだな。お前らも来る?」
 別段、彼に付き合う必要はない。監視は足りているし、グリモア猟兵も念のため同行するので、脱走の心配はない。
 近隣でも大きな方の街だからか、ピザ以外にもショッピングを楽しめる場所や、一日かけて遊べるテーマパークを始め、大抵の施設は揃っている。もちろん、ジムでストイックにトレーニングするのもいいだろう。
 ――大事なのは、どうしたいか。それを重視するべきだ。
エミーリア・ソイニンヴァーラ
…わふぅ…
捕まってしまったのですね、B・Jさん…
確かに主犯のお一人ですから、仕方のないコトかもしれませんけれど
情状酌量の余地って、あるのでしょうか?
わたしでよろしければ証言しますよ?

それはそうとピザですね!
いいですね~☆ ご一緒しますですっ! …太っちゃうから、ちっちゃめのピザだけいただきますが…
ところでB・Jさんは、今後はどぅしたいのでしょう?
B・Jさんがヒーローに…というのは性分からみて合わないかもしれませんが、B・Jさんほど『正義の味方』が似合っている方も、いらっしゃらないと思うのですが…

お食事が終わったらB・Jさんを見送って、次の戦いの準備をはじめます
もっと狙撃の腕前を鍛えなくっちゃ!


ジャック・スペード
俺で良ければピザに付き合おう
当機の腹が減る事はないし、味覚も鈍いが
食べることの楽しさを学ぶ為に
ヒトと食事をする機会は大切にしたい

ピザ、どれが人気なのだろうか
B・Jは何を頼むんだ?
俺は定番らしいマルゲリータにしようと思う
あとマシュマロとチョコのピザも気に成る
なにせ甘いものは味が分かりやすいので――
食べた気分に成り易い、やはり其方も追加しよう
……ついでにコーラも頼んで良いか?

ピザが出て来たら、マスクパーツを外して頂こう
マルゲリータは濃厚な乳製品の味がするような……
よく分らないのでB・Jにも一枚やろう、俺からの餞別だ
ぜひ味の感想を教えてくれ

――次はその手錠抜きで来れると良いな
その時は、また呼んでくれ



●Peace&Piece
 B・Jと誘いに乗った猟兵たちが訪れたのは、メインストリートから少し逸れた路地にある小さなピザ屋だった。
 ファストフード店らしからぬ落ち着いた雰囲気の内装の原因は、元はバーとして経営されていた物件を手直しして開いたからだという。
 B・Jは馴染みの店主と親しげに2、3やり取りすると、席で待たせていた二人の猟兵――狙撃手の少女、エミーリア・ソイニンヴァーラ(おひさま笑顔♪・f06592)と黒鉄のウォーマシン、ジャック・スペード(J♠️・f16475)と合流する。

「ヤー、すまねえ。待たせたな」
 じゃらり、と鎖の音を鳴らしながら手錠の嵌った両手を挙げて会釈して見せるB・J。
「…わふぅ…捕まってしまったのですね、B・Jさん…確かに主犯のお一人ですから、仕方のないコトかもしれませんけれど……情状酌量の余地って、あるのでしょうか?」
 ぺたりと垂れ下がった犬耳を幻視させるほどしゅんとしたエミーリア。B・Jはヴィランだが、今回真意はともあれ街を守るという選択をしたのも事実だ。
「わたしでよろしければ、法廷で証言も――」
「あーあー、いいっていいって。別に今回が初犯なわけじゃねえんだ、わかるだろ?」
 言いかけたエミーリアをB・Jは手で制する。B・Jはヴィランだ。自分のルールに、欲望に従って生きることを選び、自ら道を外れた者だ。働いた悪事は数知れず、今回もいつものように衝動に従い、それが結果的に善行に結びついただけなのだ。
「“コレ”が情状酌量の余地ってヤツなのさ……そら!さっさと頼もうぜ?」
 ピザの絵が大きくプリントされたメニューを指したB・Jは、我慢できないといった様子でテーブルに広げた。
「……そうですねっ!ちっちゃめのピザはあるでしょうか?」
 気を取り直し、エミーリアもメニューをのぞき込み始める。デリシャス=デンジャー……美味しさと危険は表裏一体。メニュー選択は慎重に行わなければならない。女の子はいつだって体重が気になるのだ。

 ジャック・スペードはウォーマシンだ。人間と違い、活動エネルギーを食事と言う形で得ない彼は、腹も減らず、モノを経口摂取する必要がそもそもないため味覚も鈍い。
 ――しかし、“こころ”を持つジャックは知っている。食事とは単にエネルギーを補給するためだけの行為ではないと。“食べることの楽しさ”、それを学ぶためヒトと食事をする機会は大切にしたい。ジャックは真剣な面持ちでメニュを見つめた。
「ふむ……ピザ、どれが人気なのだろうか……B・Jは何を頼むんだ?」
「俺か?……あー、そうだな。しばらく食えねえっていうからちょっと迷ったが……やっぱ定番のコレだな。んで、ペパロニをトッピングだ」
 B・Jがベースに示したのはトマトソースとチーズのみのシンプルなピザ。アメリカの、主にNYにおいてレギュラーやプレーン、などと呼ばれる定番のピザだ。
「なるほど。……てっきり、定番はマルゲリータかと思っていたが」
 ジャックのイメージはそう間違いでもない。
「間違っちゃいねえが、そりゃイタリアでの話だな。こっちで言うナポリピッツァってヤツだ。生地の厚みが違う」
 当然、この店で扱っているのは薄い生地のクリスピー……だけではなく、何故かそのナポリピッツァ……石窯で焼くピザも載っている。
「呆れたことに店主の趣味……ってヤツだな、まあ違いを試すのも悪くねえんじゃねえか?」
「では、俺はマルゲリータにしよう……あと」
 注文が決まっても、メニューを閉じられることなくジャックの視線はメニューの端へとスライドする。眺めているのはデザート等が記載されている部分だ。
「この、マシュマロとチョコのピザも気に成るな」
 甘いものは味がわかりやすいため、食べた、という気分が得られ易いのだというジャック。アメリカンサイズのピザ二枚。既に結構な量だが、ウォーマシンの彼に食べ過ぎによる体型変化の概念は存在しない。エミーリアの物言いたげな視線が突き刺さる。
「あー、うん。まあ決まりだな」
 甘いものとマルゲリータ、食べ合わせを想像して微妙な顔になったB・Jは、注文のために店主を呼ぶ。
「……ついでにコーラも頼んでいいか?」
「いや、ダメとは言わないけどよ……」

●Junction

「わふ~っ♪美味しかったです!」
「ああ、バナナやベリーのトッピングで味を変化出来るのが良かったな」
「食った食った。たまには石窯のも悪かねえ」
 ――結局、頼んだピザの大半はジャックが食べた。
 スモールサイズ(アメリカ基準)を完食するのはエミーリアには中々躊躇われたし、B・Jはそれなりに食べたものの、ジャックのピザから香る濃い甘い匂いで胸やけを引き起こして途中でギブアップした。
 シェアしたピザのことなど、思い思いに感想を述べながら店を後にする3人。

 ジャックのマスクってそこが外れるんだ……という話題が一段落した所で、エミーリアが遠慮がちに切り出す。
「ところで、B・Jさんは、今後はどぅしたいのでしょうか?」
「どうしたいって……ムショ出た後の話か?」
 そりゃあ気が早い。とB・J。
「その、B・Jさんがヒーローに…というのは性分からみて合わないかもしれませんが、B・Jさんほど“正義の味方”が似合っている方も、いらっしゃらないと思うのです…」
「――」
 一瞬、呆気にとられたような顔になったB・Jは、すぐさま取り繕うように皮肉げな笑いを浮かべる。
「――俺が“正義の味方”だって?ハッ、悪い冗談もほどほどにしとけよ」
 特段、怒った様子も、非難する様子もない。それはないない、と笑って否定するだけだ。
「けど、まあそうだな。考えるくらいはしといてやるさ」

 ――分かれ道だ。

      イェーガー
「じゃあな、猟 兵」
 B・Jは、長い刑務所での暮らしへ。

「――次はその手錠抜きで来れると良いな。その時は、また呼んでくれ」
 ジャックは、未だ見ぬ悪へ備え、束の間の休息へと。

「…わたしも、もっと狙撃の腕前を鍛えなくっちゃ!」
 エミーリアは、更なる高みを目指し、グリモアベースへと。

 ――それぞれの道へ。彼らの道がまた交わるかどうかはまた、別のお話。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月07日


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 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ヒーローズアース


30




種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト