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お前の運命は私が決める

#アリスラビリンス

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#アリスラビリンス


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●誰かの言葉
 私はあらゆる出来事を描く事が出来る。
 良い事も悪い事も、喜ばしい事も残酷な事も、私の思うがままに生み出す事が出来る。

 私はあらゆる登場人物を導く事が出来る。
 栄光や幸福へ導く事も、悪しき方へ堕とす事も、私の思うがままに動かす事が出来る。

 お前の思考や行動は、本当に自分自身で決めたものなのか?
 その感情は本当にお前自身が感じたものなのか?

 お前は誰かに作られ、誰かに導かれるだけの駒だ。
 お前の存在や意義は、誰かに設定されたものなのだ。
 誰か、とは誰なのか。――振り返ってみろ。お前の背後にいるぞ。

●誰かの導き
 気付いた時にはここにいた。ここ、というのは自室のベッドの上だ。
 いや、そもそも気が付く前、俺は何をしていたんだ? 何故か思い出せない。
 ぐわんぐわんと揺れるような気持ち悪い頭痛を我慢しながら、ゆっくりと体を起こし、周囲を見渡す。
 時計が目に入る。時刻は午前11時過ぎ。寝過ぎたようだが日曜日なので支障はない。
 あぁ、寝過ぎたせいで妙に気持ち悪いのか。そう思いながら俺は立ち上がり、扉を開ける。

 階段を下り、居間に入る。テレビを見ていた両親がこちらへ顔を向ける。
「あら、おはよう。随分と寝てたわね」
 気付いたら寝ていた、と答える。
「夜更かしでもしてたの? 遊び過ぎは駄目よ」
「まぁまぁ、土日なんだし別に良いじゃないか」
 父が笑って母を宥める。
「もう……まぁいいわ。そろそろお昼作るから、貴方は着替えて来なさい。寝過ぎた罰として、昼食を作る手伝いをする事。良いわね?」
 ウインクする母に、分かったよ、と苦笑いを作る。俺は居間を後にし、二階の自室へと向かった。
「さて、私も準備しようかしらね。しようかしらね。かしらね。かしらね。かしかしか死ね」
「何か言ったか?」
「あら? ……ううん、何でもないわ、あなた」

●ゴッさんの情報
「不愉快だ」
 ゴッさんことゴ・ディーヴァ(甘色の案内人・f16476)が珍しく憤怒に満ちた言葉を発した。
「運命を偉そうに語る者に真面な奴などいない、という事だな」
 やれやれとゴッさんは腰に手を当てる。
「……さて、君達に説明しようか。俺の予兆を」
 少々気が乗らなさそうに彼は説明を始める。
 場所はアリスラビリンス。戦場となる世界の名は、通称『導きの章』。
「その世界に召喚されるアリスは過去の記憶を失っているが、大抵は憂鬱な人生を送ってきた者達だ。虐待や天涯孤独の身など……様々な不幸を持つ者が選ばれるようだね」
 ではそんなアリス達はどんな仕打ちを受けているのだろうか。
「……召喚されたアリス達は幸せそうだ。まぁそうだろうな。自分の欲した幸せな夢を見させられているからね」
 それは消えた過去の記憶が心の底から欲したもの。平凡な家庭、幸せな日々、楽しい一日。夢と希望の詰まった幻想の世界。
「ま、残念ながらそれを見せているのはオウガなんでね。最終的にアリスに待ち受けているのは、死だ」
 物語の最後に待ち受ける悲運な死。しかし彼らは幸せの夢に包まれ、知らぬうちに死ぬ事になるようだ。
 もしかすると、アリスにとってその方が幸せなのかもしれない。しかし本当にそれで終わってもいいのだろうか?
「あるべき過去の場所に戻れとは言わないよ。だが、死よりも他に道はあるはずだ。君達の手で、夢から覚まさせてやってくれないか」
 夢に囚われたアリス達は広大な書庫のような場所で無造作に倒れているようだ。揺すれば簡単に起こせるだろう。
 しかし、起こすという事は『自分達が起きている』という事が前提の話だ。
「俺が君達を送れるのは書庫の入り口までだ。図書室への扉を開くと、君達はそれぞれの夢の中へと誘われる。夢とは……君達が抱く夢や希望が詰まった、甘く優しい世界の事だ」
 幸せに包まれた世界が行く手を阻むだろう。現実と見分けのつかない甘い夢から脱出する術は一つ、自分を見失わず、幻想を振り払う事だ。
「夢に囚われず振り払う事が出来るのなら、世界を拒否するのも受け入れるのも自由だ。その先がある事を忘れないようにな」
 夢から覚めてアリス達を起こせば、オウガは姿を現すだろう。アリス達を守りながらオウガを討ち、『導きの章』を破壊すれば、今回の目的は達成される。

「予兆の中、オウガはこう言っていたよ。『私はあらゆる出来事を描く事が出来る』と」
 姿は見えず声だけが聞こえたが、恐らく『導きの章』を創造したオウガの声なのだろう。
「全ての出来事、全ての行動を操る事が出来ると、そういった意味合いに俺は聞こえたよ。……何だ、まるで神みたいだねぇ」
 ふ、とゴッさんの口許が笑う。しかし目は笑っていない。
「神だか創造主だか知らないが、君達でその運命とやらに抗ってやれ」
 頼んだよ、とゴッさんはグリモアを召喚し、転送の準備を始める。
「……俺だって、好きでこんなもの見たい訳じゃないんだぞ」
 彼は瞳を閉じ、誰にも聞こえないよう静かにそう呟いた。


ののん
 お世話になります、ののんです。
 鬱ゲー動画を見過ぎてこういう雰囲気のものが流行ってるようです、自分の中で。

 ●状況
 アリスラビリンスが舞台となります。

 ●アリスについて
 2章のみ参戦可能です。指示を出せばユーベルコードを使ってくれます。
 但し(身も心も)強くはないので、無茶はさせずに守ってあげた方が良いでしょう。
 ボス戦では自主的に避難します。

 ●夢について
 叶う事のない幸せ、夢に見た光景など、甘い甘い夢を教えて下さい。
 打破出来る行動であれば選択肢以外の行動を取っても構いません。

 ●プレイングについて
 キャラ口調ですとリプレイに反映しやすいです。
 お友達とご一緒する方はIDを含めた名前の記載、または【(グループ名)】をお願い致します。
 同時に投稿して頂けると大変助かります。

 申し訳ありませんがユーベルコードは基本的に【選択したもののみ】描写致します。

 以上、皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『甘い甘い夢の先』

POW   :    正面から向き合い進む

SPD   :    目を背けるて進む

WIZ   :    飲み込んで進む

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 扉を開けた直後、目の前が真っ白になる。
 それからどれくらいの時間が経ったのかは把握出来ない。

 ふと目を開いた時、『貴方の物語』は始まる。
木常野・都月
転送先に、じいさんがいた。

俺が自分を妖狐と知らず、狐として生きていて…

熊に襲われて、初めての妖狐になってパニックの所を助けてくれた。

俺にヒトの生き方を教えてくれたヒトだ。

じいさん、久しぶり!

俺が家を出て猟兵になって、まだ2ヶ月だけどな!

あの後家に戻ったら、じいさん死んでるんだもんな。
寿命だったって聞いてる。
お疲れ様だったなー。

じいさんが俺に猟兵を勧めてくれて、紹介してくれなかったら、俺まだ狐のままだったよ。

まだヒトとして生きるのは難しい事もあるけど…

多分俺、お礼が言いたかった。

ありがとう、じいさん。

こうして夢で逢える事も知ったし、また何かの機会に話そう。

俺、今任務中なんだ。

それじゃ、またな!



 ――知ってる匂いがする。
 すん、と鼻を動かし、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は目を開く。白い光が眩しい。
 いや、これは先程の光ではない。窓から入る太陽の光だ。そしてこの匂いは、太陽の光を浴びた懐かしい匂い。
 寝起きには眩しすぎる光を手で遮りながら重い体をゆっくりと起こす。そして目を細め、ここが何処なのかを確信する。
 寝床から起き上がると、都月はすぐさま『あのヒト』のいた場所に向かった。
 そう、ここは『あのヒト』と過ごした家。この部屋は自分の寝床で、朝起きてまず向かう場所は居間だ。
 居間に行くと何があるのか。そう、『あのヒト』が椅子に座っている。
「じいさん、おはよう! ……久しぶり!」
 懐かしい人の姿を見て挨拶し、そして思い出したかのように言葉を付け足す。
 『あのヒト』が、じいさんが、生きている。

 うん、そうだったか。俺はじいさんに会いたかったんだな。
 いや、忘れた訳じゃないし、忘れる訳がない。俺にヒトの生き方を教えてくれて、猟兵の道も勧めてくれた大事なヒトだからな。
 もし出逢ってなくて、猟兵の紹介もしてくれなかったら、俺はまだ身も心も狐のままだったよ。そもそも最初は妖狐と知らず狐として生きていたんだからな。
 熊に襲われた時、初めて妖狐になってパニックになった所をじいさんが助けてくれた。
 色々教えてくれたな……あぁ、そうやって、優しく見守ってくれてたよな。思い出してきたよ。

 じいさん、俺、家を出て猟兵になってからまだ二ヶ月しか経ってないし、まだヒトとして生きるのは難しい事もあるけど……。
 辛い事ばかりじゃないよ。
 っていうのを言いたくて、あの後家に戻ったら……じいさん死んでるんだもんな。寿命だったって聞いてるけど。
 ……お疲れ様だったなー。
 いや、言いたい事なんて他にもあるんだけど。あぁ、何を言おうか……悩むな。

 目の前に映るじいさんが本物じゃないのは分かっているけど、でも、良い事が知れた。こうして夢の中でいつでも逢えるって事! やっぱりじいさんは何でも教えてくれるな。
 だったら、無理して言いたい事全部言わなくても大丈夫なのかもしれない。ならそうだな……ここでじいさんが現れたって事は、多分俺、お礼が言いたかったんだろうな。

「ありがとう、じいさん」
 たくさんの伝えたい事柄の中でも、この言葉に俺の全部が詰まってる。だからそう言った。
「俺、今任務中なんだ。それじゃ、またな!」
 じいさんなら許してくれるだろう。今の俺は、じいさんが勧めてくれた猟兵。猟兵は忙しいんだ。
 だからこの任務が終わったら、また夢の中で逢おうな!

大成功 🔵​🔵​🔵​

バッファロー・ギリー
俺は現状、幸せなんぞ求めちゃいねぇ
今も過去も。きっと未来でもな
だが、楽しい夢を見る事は偶にある

ここは荒野だ
バッファローの上で寝転びながら、枯れた大地を進む
そして荒野を歩いていると現れる訳だ。盗賊団がな
甘い夢にしては物騒だが、俺自身がビターなモンでな
甘苦い夢を楽しむとするぜ

何処かで見た顔だ
そう……奴等は俺が仕留めた嘗ての賞金首の幻想
俺を地獄に連れて行くつもりだろうが、お断りだ
生憎だが、消えて貰おうか

やれ、バッファロー
今も俺達は成長をし続けてる
名のある賞金首だろうが、一度殺した相手に遅れを取る筈はねぇ
【突進連携】で幻想を殲滅するぜ

誰を敵に回したのか、忘れた訳じゃねぇだろ?
さぁ、名前を言ってみな



 バッファロー・ギリー(悪党殺し・f22032)は幸せなど求めていない。故にどのような幻想に浸るのかなど思いつきもしなかった。
 だから夢の中で目が覚め、その光景を目の当たりにした時、あぁ、と彼は思わず声を漏らした。

 荒い砂混じりの生ぬるい風だ。照り付く太陽と砂埃で、俺の体も不味くなっちまいそうだ。
 間違いない、ここは荒地を歩くバッファローの上だ。
 成程、これが俺の夢か。バッファローと共に荒地を進む……何とも退屈で平和な夢じゃないか。
 で、一体俺達は何処へ向かって進んでいるんだ? まだ知らない幸せへか? へぇ、そうか。

 なんて、自分で自分に冗談を言い続けて進んでいたら、ふと風が変わった。バッファローの動きもぴたりと止まる。
 ……あぁ、そうそう、こういうのだ。俺がやりたい事は。
 こんな場所に護衛もつけずに歩いていれば、そりゃあ盗賊団も涎を垂らして現れる。
 お決まりのよくある台詞を吐き散らし、盗賊団は俺達を囲む。
 ……夢の中だが楽しくなってきたぜ。甘い夢にしては物騒だが、俺自身がビターなモンでな。
 甘苦い夢を楽しむとするぜ。

 はて、何処かで見た顔だ。
 ……そうか、思い出した。奴等は過去、俺が仕留めた嘗ての賞金首だ。
 良かったな。俺が記憶の片隅に残していたお陰で、リベンジが叶ったじゃないか。
 だがしかし、名のある賞金首だろうが、一度殺した相手に遅れを取る筈はねぇ。
 今も俺達は成長をし続けてる。時間の止まったままのお前等よりも劣っている要素なんて、一つもない。
 ――やれ、バッファロー。

 弾丸は何処を狙うのか。手首を狙って武器を弾き落とすか? いや、そんな甘いものじゃない。
 狙うのは足、額、左胸。それも確実に、素早く、深く、貫くように。
 そうすればバッファローがドラム缶を破壊するかのように突き飛ばす。
 奴等が簡単に吹っ飛んでいくのは、幻想の存在だからじゃない。俺達が強くなったからだ。
 強くなるってのは……楽しいな、バッファロー。

 誰を敵に回したのか、忘れた訳じゃねぇだろ?
 さぁ、名前を言ってみな。
 俺はギリー。相棒はバッファロー。――これが【バッファロー・ギリー】だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

有栖川・夏介
■夢
誰かが殺されることもなく、誰かを殺すこともなく
家族や友人に愛し愛され、幼い頃に願った平和な世界

目が覚めると、両親や兄弟がいた。笑っている。
そこにいるのは確かに家族なのに、知らない誰かのようにみえる。
まだ、寝ぼけているのか……?
母が心配そうにのぞき込むので「大丈夫だよ」と笑って返す。
……どうしてこうも胸が痛むのか。

ふと、所持していたぬいぐるみが目に入った。
汚れが気になる。まるで血でもついたかのような。
血。一体誰の血だというのか……
考えた瞬間、脳裏に白いウサギがフラッシュバックして我に返る
「ああ、そうでした。アリスを起こすためにも私は夢から覚めなくては」

……甘い甘い悪夢をどうも。
武器を構える。



 有栖川・夏介(白兎の夢はみない・f06470)はうっすらと目を開ける。全部はまだ見えないが、霞んだ視界から察するに、ここは建物の中だろう。
 では、ここは一体何処なのか。怠い体とぼんやりとした頭に意識を集中させ、やっと体を起こす。

 体を起こす時、手から感じた感触ですぐに分かった。自分が横たわっていたのはソファーの上であったと。
 知らないうちに居眠りでもしてしまったらしい。まだ少しだけ頭が働いていない。
 ここは、俺の家だ。この部屋は居間で、これは家族皆のお気に入りのソファーだ。
 暫く座っていると、奥から聞き覚えのある笑い声が近付いて来るのが分かった。賑やかで、明るい声だ。
 声の主は俺の兄弟、そして両親。俺が起きている事に気付いて、笑顔でこちらに駆け寄って来た。
 随分と寝てたね、と話す兄弟に俺はぼんやりと頷く。……何故かそれしか出来なかった。
 心の中はとても穏やかなのに、何故かそれがもやもやしてくすぐったくて、気持ち悪かったからだ。
 確かに目の前にいる彼らは俺の家族だ。確信が持てるのに、どうしてこうも恐ろしいのだろうか。まるで……知らない誰かに囲まれているようだ。

 どうしたの? まだ寝ぼけているの? そう心配そうに顔を覗き込む母。
「大丈夫だよ」
 心配させてしまったと、反射的に俺は慌てて笑顔を作った。
 ……笑顔を作った。俺が。そんな事が出来たのか。
 なら良いのだけれど、と母の優しい声。そして温かみのある安堵の表情。それを見た俺も、何処かほっとした。
 ……違う。どうしてこうも胸が痛むのか。分からない。

 日に当たれば目も体も覚めるんじゃないかと、家族が勧めて来た。確かにそうかもしれないと俺は頷き、先に外へ向かった兄弟を追おうと、ソファーに手を当て立ち上がろうとする。
 ふわ、とソファーではない感触が手から伝わった。何かにぶつかったようだ。ふと俺は手元を見る。
 ……あぁなんだ、ぬいぐるみか。随分と年季の入った汚れが染み付いているな。そう思いながら何気なくひょいと抱き上げてみる。
 随分と重量のあるぬいぐるみだ。だらりとしていて、まるで死んでいるかのような……。

 ――死んでいるかのような……?

 俺は何を抱き上げているんだ? これはぬいぐるみではないのか? この染みは汚れではないのか?
 この白いウサギのぬいぐるみは……?

 ……。
 ああ、そうでした。これは私の夢でした。
 ここでは誰かが殺されることもなく、そして誰かを殺すこともなく。家族や友人に愛し愛される、幼い頃に願った平和な世界。
 まさかこんな事を体験させられるとは。

 顔に大きな穴の開いた男女が誰かの名を呼ぶ。■■■と。
 しかし、私にはもう何にも興味はありません。アリスを起こすためにも私は夢から覚めなくては。
 私は武器を握り締め、男女の間を通り抜け、この空間の出口へと向かいました。
「……甘い甘い悪夢をどうも」
 その言葉は自分自身に対してなのか、あの男女に向けたものなのか。……私にも分かりませんでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フクス・クルーガー
【POW】

きっと、夢見るのはアタシがアタシとなる前のただの器物だった頃の夢。アタシの持ち主だった人との思い出。アタシの原点。

今のアタシを形作るための大事な部分。ぶっきらぼうで余り喋らない人だけど何よりも真面目な人だった。いつもあちこち往ったり来たりで大忙し、それでも確かな何かがあった。アタシはそれに憧れたんだ。

でも結局のところ、アタシは朽ちて捨てられた。理由は世代交代とか消耗とかの必然。でもアタシは諦めたくなかった。だから改造を施したんだ。もう捨てられないように。猟兵として戦うために元の形すらも

もう今のアタシは何もかもがあの頃とは変わっている。あの頃の夢を見せても手の届かない所にある夢だから。



 フクス・クルーガー(何処でもお届け! 安心のクルーガー運送!・f22299)は暗闇の中で意識を取り戻すと、自分の体が思うように動かない事に気付いた。
 何故なのかはすぐに把握する事は出来なかった。束縛されているようには思えないが、体勢を変えられない事に違和感を感じる。
 一体ここは何処で、何の夢なのか。彼女がそれに気付いたのは、一筋の眩しい光が空間全体を揺らす音と共に現れてからだった。

 そうか、ここは車庫だ。だから暗かったんだ。
 という事は……あぁやっぱり。アタシはあの時の姿になっていたんだね。通りで変だと思ったよ。
 ガラガラ、という大きな音は車庫の扉を開ける音。そしてアタシに光を浴びせたのは、やっぱりあの人だ。
 あの人はアタシの原点。今のアタシを形作る為の大事な部分。アタシの持ち主だった人。
 ……今日も仕事なんだね。いいよ、乗ってよ。
 今日は何処へ向かおうか?

 元々アタシは大型トラックだった。様々な物を乗せて、様々な場所へと運んだ。このぶっきらぼうな配達員と共に。何処までも。
 口数は少ないけど、真面目で優秀な人だった。重い荷物を運んで、大きなアタシを走らせ、次々と変わる目的地へ行ったり来たり。いつも大忙しだったね。
 それでも確かな何かがあった。そう、アタシはそれに憧れたんだ。
 その時、もしもあの人と会話が出来たのなら、何て言っただろうな。

 でも結局のところ、アタシは朽ちて捨てられた。あんなに乗ってたのに。
 理由は世代交代とか消耗とかの必然。そうか、と思ったと同時に寂しさを感じた。
 だから、諦めたくない、という感情がアタシの中で爆発した。それから改造を施して、今のアタシが誕生した。
 ……だから、今のアタシは、この姿にはもう戻れないんだ。

 目的地に着いたのか、あの人がアタシから降りて荷物を取り出し、建物の中へと入っていった。
 またこうやって、あの人の背中を見送る事が出来るなんて……。
 でも、ごめんね。今のアタシは、何もかもがあの頃とは変わっている。
 あの頃の夢を見せても、それはもう手の届かない所にある夢だから。

 あの人の姿が見えなくなった瞬間を見計らって、アタシは大型トラックから今のアタシの姿へと戻り、駐車場からそっと離れた。
 アタシは猟兵。ただの大型トラックじゃない。
 もう二度と……捨てられなんてしないから。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『道先案内人』

POW   :    どうぞアリス、それを連れて一緒にお逃げください
戦闘用の、自身と同じ強さの【アリスを追い立てる獣たち】と【怪我をしているリス】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    おやおや、オオカミに食べられたのでしょうか?
自身と自身の装備、【任意のアリスである】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
WIZ   :    そうそう、ここから先は道が険しくなっておりますよ
見えない【ように隠れた『道先案内人』による地形変化】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。

イラスト:安子

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 幻想は消えた。夢から覚めたアリス達は現実に驚きと戸惑いを隠せずにいる。
 嗚呼、可哀想に。幸せから目覚めたくはなかっただろうに。
 無理矢理心に刻んだ言い訳にしがみ付く姿は、何とも滑稽だ。

 お前達は、私がお前達の為に描いた物語の『登場人物』になる事を拒否した。
 では何が良いのだ。どのような感情と、どのような行動と、どのような結末を望むのだ。
 ここは書庫。資料ならば腐るほどある。
 気に入るものがあるのならば、そこの案内人に導いて貰うと良い。
 お前達の望んだ結果をくれてやろう。
木常野・都月
アリス達にとって、夢から覚める事は辛い事だと思う。

でも、幸せな夢も悪い夢も、夢はいつか覚めるものだ。

現実は厳しい事もあるけど、夢を叶えたら、覚める事はないんだ。

ゆっくりでいいから、自分の幸せと向き合って欲しいと、俺は思う。

アリス達を守りつつ、敵を迎撃したい。

アリス達には[範囲攻撃、オーラ防御]で、簡易的な守りをつけておきたい。

敵については、野生の中で培った[野生の感、第六感]で[情報収集]し、攻撃や回避等に役立てたい。

攻撃には[カウンター、火の属性攻撃]で対処、対処しきれないなら[逃げ足、ダッシュ]で回避行動をしたい。

敵への攻撃はUC【狐火】を火力強めで。
向かってくる敵をしっかり迎撃したい。



 案内人達は猟兵達と無防備なアリス達を囲むと、静かに己の影に溶けて消えていった。
 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)はアリス達を庇う様に背を向け杖を握る。
 目を見張り、耳を澄ますが、敵の姿は見えない。
「大丈夫、俺達が守るから」
 突然起こった様々な出来事に混乱するアリス達に、都月はそっと杖を振った。ドーム状の優しいオーラがアリス達を包み込む。
「……辛い事ではあるだろうな。でも、幸せな夢も悪い夢も、いつか覚めるものだ」
 夢は現実ではない。そう理解していても、しがみ付きたいものだろう。その気持ちは彼自身も知っている。
「うん、現実は確かに厳しい。でも夢を叶えたら、覚める事はないんだ」
 現実にしてしまえば、それはもう幻想などではない。中には手に届く事のない夢もあるだろう。しかし、夢は一つだけとは限らない。
「ここから外に出て、知らないものをいっぱい見て、探せば良いんだ。ゆっくりでいいから、自分の幸せと向き合って欲しいと、俺は思う」
 俺は知らなかった事をいっぱい知った。自分が妖狐と知ってから、自分が猟兵になってから。そして今も――。

 ずず、と周囲の空間が歪んだように見えた。直後、床が波打つように揺れ出し都月やアリス達の感覚を酔わせた。
 被害はは彼らだけに及ばず、書物の詰まった本棚にも影響を与えた。ガタガタ、バサバサと大小様々な書物が零れ落ちていくのだが、書物の雨は不自然な動きをしながら都月の頭上へと落下してきた。
「っ!」
 咄嗟に炎のアーチを描き書物達を燃やす。しかし波打つ床で足元がおぼつかない。とうとう全ての書物を燃やす事が出来ず、都月は書物に飲まれてしまった。
 巨大な狐火で無理矢理こじ開けた脱出口から飛び出した事で、間一髪圧し潰される事からは逃れられた。が、敵の姿が現れる事はない。
 アリス達はしがみ付くように体勢を低くし波打つ床を対処し、都月のオーラのお陰もあって書物の雨からは逃れられたようだ。
「……あまり狐火を撃たない方がいいだろうか。本で燃え広がるかもしれない」
 次に放つ時は、敵の姿を確実に察知出来てからにしよう。耳をぴんと立て、彼は静かに獲物を待つ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

バッファロー・ギリー
御託はいい、俺の邪魔をするなら消えて貰うだけだ
……しかしこいつら(アリス)が邪魔だな
どうした物かね

とりあえず、近くのアリスを暴れない様に『踏みつけ』るか
これで透明になっても守れるだろう
絶対に動くなよ、手元が狂うからな

◇必殺の間合い、発動
バッファローで周囲を暴れ回させるか
運が良ければ敵に当たるかも知れないしな
俺はアリスを踏みつつ、『聞き耳』を立てて敵の位置を特定する
そこから最速の【早撃ち】だ

透明って事は、何時の間にか近くに来ている可能性もある
だが、俺に近付くのは自殺行為だって事を教えてやるぜ
『クイックドロウ』の『零距離射撃』……。

「何を安堵してやがる。くたばりな」



 バッファロー・ギリー(悪党殺し・f22032)は体を小さく縮めていたアリスを見るなり、近付いて踏み付けた。
「うぐっ」
「絶対に動くなよ、手元が狂うからな」
 アリスは偶然彼の近くにいて怯えていた、たったそれだけだったのに。夢から覚めて最初に起きた出来事は、チョコレートみたいな体をした奴に片足で背中を踏まれる事だった。何と不運なのだろうか。
「おっと、俺は騒がしい奴より大人しい奴の方が好みだぜ」
 それは二度目の忠告でもあった。ギリーからすれば二度も言ってやった事など優しすぎると思ったくらいだ。
 忠告に恐れてアリスが口を手で塞ぐと同時に、その体はすうと消えていった。勿論、何が起こったのかなどアリスの思考が追い付く訳がない。塞いだばかりの口から声が漏れるほど驚いたが、三度目の忠告はないと思い、慌てて自身の息を殺す。
「出来るじゃないか。そのまま台になってろ」
 真っ直ぐと立てた背筋。だらりと下ろした腕。何かを踏み付けている片足。ギリーは目の前を真っ直ぐと見詰めながら、バッファローにそっと命令を下した。
「行け、バッファロー」
 ここは書庫だが、何、酒場で暴れて敵を撹乱させるのと同じだ。
 バッファローは闘牛の如く暴れ回った。本棚を押し倒し、倒した方向にある本棚を次々と将棋倒しにしていった。姿の見える案内人も、透明化した案内人もバッファローの体当たりや本棚の雪崩に巻き込まれていく。
 しかし、足元で透明になっているはずのアリスは一向に姿を現さない。ただ、それをおかしいと思わないのが彼、ギリーである。
「透明って事は、何時の間にか近くに来ている可能性もあるって事だ」
 未だだらりと動かない腕。それが動く時は、きっとそう遠くはない。
 今はまだその時ではない。今はまだ。今はまだ。今は――。

「やるか」

 神速の如き速さでホルスターから抜かれた拳銃。BANG! の音が耳に響いたその時には、既に拳銃の口から煙が出ている。
 彼は暴れるバッファローのを撃ったのか? それとも空を撃ったのか? 否。
「何を安堵してやがる。くたばりな」
 どさ、という重い音が聞こえたと同時に、ギリーの足元からアリスの姿が現れた。体勢が変わっていない辺り、怪我はしていないようだ。
「紙と布の擦れる音。それが敗因だったな」
 ホルスターに拳銃をしまうギリーを見上げ、アリスは感じる。あぁ、もしかして自分は不運なんかじゃなかったのかもしれない、と。

成功 🔵​🔵​🔴​

フクス・クルーガー
「ああ、どうもとても優しい(悪趣味)な夢をどうもありがとう」

お礼としてとても強烈な、それこそ一発で目が覚めるような文字通りの鉄拳をお見舞いしてあげる。

そのためにもまずはそこにいる邪魔な案内人を片づけないと。とは言ってもアリスたちを護りながらだからガトリング・シールドを搭載した左腕達を数個だしてアリスたちを護衛するように配置。

残りはパイルバンカーを搭載した右腕達で【グラップル】で殴りかかるよ。あー! もう分かっていたけど、このイラつきはアンタで発散してやるよ!



 へぇ、とフクス・クルーガー(何処でもお届け! 安心のクルーガー運送!・f22299)は現れた案内人を見るなり首を傾げた。
「ああ、とても優しい夢を、どうもありがとう」
 棘のある言い方だった。勿論、それはわざとだ。
 優しさのつもりで見せたものだとするならば、それは何とも悪趣味な事だと、彼女は徐々に心の中の苛々を増幅させていった。
 この感情は何で発散させればいい? そんなの決まってる。
 それをする為に、まずはこの案内人からアリス達を守らなければ。

 フクスはまず自らの腕を複製させた。特殊作業対応型運搬腕。様々な大きさの腕が彼女の周囲を忙しなく飛び交う。
 盾付きガトリングガンを搭載した左腕の群れは体を縮め身を寄せ合うアリス達の周囲を囲むように並んだ。城壁のようにも見えるそれは、アリス達を守る為というよりも『動かなくさせる為』に存在していると言っても過言ではない。
「ひっ!?」
 アリスの姿が一人、また一人と消えていく。隣に居た者が消えていく様に、他のアリスも小さな悲鳴をあげて恐怖する。
「透明になっただけだよ、動かないでね!」
 フクスはアリス達にそう声を掛けながら前へと歩み出る。アリスが消えたという事は敵も姿を消したという事。何処へいるのかは分かりもしない。
 では虱潰しに空気を殴るか? いや、空気を殴った所で苛々が解消される訳がない。
「あー! このイラつきはアンタで発散してやるよ!」
 パイルバンカーを搭載した右腕の群れはフクスの周囲を囲むように並ぶ。そして同じ方向に向かってぐるりぐるりと回り始めた。誰かを思い切り掴むかのように、誰かを思い切り横から殴ってやるかのように。
 右腕の群れは無差別に破壊していく。本棚も、書物も、柱も、そして『何か』も。
 見えない『何か』を思い切り殴りつけてしまった証拠に、突然遠くにある本棚が揺れ動いたり風穴が開いたりと、手の届かない場所で不可思議な現象が起こる。そして、すぅ、と透明だったアリスの姿が元に戻るのだ。
「見えればこっちのものだからね!」
 遅れて姿を現した案内人が態勢を整えるよりも前にフクスは急接近し、複数の右腕達と共に何度も殴りつけてやった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ギャレット・ディマージオ(サポート)
●設定等
ダークセイヴァー出身の冷静沈着な黒騎士です。
かつてオブリビオンに滅ぼされた都市で自分一人だけ生き残ってしまった過去を悔いており、人々を守り、被害を防止することを重視して行動します。

●戦闘において
「露払いは私が努めよう」
(敵に)「貴様らの技で、私が倒せるのか……試してみるがいい」

・牽制攻撃
・敵の攻撃から他の猟兵や一般人を守る
・敵の攻撃を回避してカウンター
・ついでに敵の強さを解説する
など、防御的・補助的な行動を主に得意とします。

メイン武器は「黒剣」です。

他は全てお任せします。
別の猟兵との交流や連携等も自由に行ってください。
どうぞよろしくお願いします。


杉崎・まなみ(サポート)
まなみは正当派後衛職のヒロインタイプです
聖職者教育を受講中の学生ですが、特に依頼に縛りは無く、どのような依頼でも受けられます
但し人並みに気持ち悪いモノ、怖いものとかは苦手で遭遇した際は多少なりとも嫌がる仕草が欲しいです
甘いモノ、可愛いモノが好きで少し天然な所があります
初対面の人でもあまり物怖じせず、状況を理解して連携を取る動きが出来ます
シリアス2~3:ギャグ7~8割くらいのノリが好みです
ただシリアスもやれますよー

UCは攻撃魔法と回復魔法どちらも使えます
特に『大地の奇跡』は、戦闘区域の状況や地形を踏まえた自然現象を利用する攻撃になります

その他、細かい部分はMS様にお任せします



 真黒な鎧に身を包んだ男が現れた。黒剣を携え、がしゃり、がしゃりと足音を立てアリス達へと近付く。その姿に怯えた者もいたが、その恐怖や心配はすぐに消え去った。
「もう大丈夫」
 背後からそっと掛けられた優しい声。真白な神官の服を纏った少女、杉崎・まなみ(貴方を癒やす・f00136)が落ち着かせるようアリス達に視線を合わせ、微笑む。
「私達が……あなた達を救うから」
 まなみは鎧の男――ギャレット・ディマージオ(人間の黒騎士・f02429)の方へ顔を向ける。ギャレットはアリス達に背を見せ、憎きオブリビオンである案内人に剣先を向ける。
「……そこまでだ」
 決して大きな声ではないが、重々しく発した一言を部屋中に響かせた。

 床の怪しげな影から、どろりとした何かが現れる。次第に形を作っていくと、そこから聞こえてきたのは荒々しい息遣い。牙を剥き出しにした凶暴な狼の群れだ。
 唸る狼達に黒剣を構えるギャレット。しかし、彼はすぐさまその違和感を感じ取る。
「(何故だ。私に敵意を向けているようには感じられない。……まさか)」
 咄嗟に背後へ振り向くギャレット。そこには驚き戸惑うアリス達とまなみが視界に映った。
「り、リスさん……?」
 怪我をして震えているリスが、アリス達の目の前に一匹ずつ横たわっている。痛々しいその姿に、思わず一人の少女アリスが手を差し伸べ、その小さな体を手のひらで包み込むと。
「っ!! 触れるな!!」
 突然、二匹の狼が地面を蹴り上げ襲い掛かった。狙いはリスを拾い上げたアリスだ。
 ギャレットは叫びながら、一匹を黒剣で腹部を斬り裂き、もう一匹を広げた片腕で振り払った。腕に噛み付いた狼を黒剣で貫くと、そのまま床へと叩き付ける。二匹の狼は液体のようにどしゃりと形を失い消え失せていった。
 突如襲い掛かって来た狼に驚いたアリス。手のひらに包んだリスを慌てて床へそっと寝かせるが、どうしていいのか分からずオロオロと周囲を見渡し始める。その動揺は他のアリス達にも急速に伝染していった。
「み、皆さん! お願い、聞いて!」
 彼らを救いに来た猟兵としてここまで来たのだ。取り乱している場合ではない。そんな自分を冷静にさせる為にも、まなみはアリス達に大声で呼び掛けた。
「リスには触れないで! 可哀想だけど……助けたらあの狼に襲われちゃう!」
 ぐ、とまなみは下を向かないよう堪えた。哀れなリスを視界に入れない為だ。
「狼や、あの悪い人達は……私達にお任せを! 絶対、絶対に……ここから救ってみせるから!」
 彼女のはっきりとした声はアリス達全員の耳を通過し、心を響かせた。どうやら徐々に落ち着きを取り戻したようだ。
 すかさずまなみは杖をかざし、小さく詠唱を始める。クリスタルのような杖先から聖なる輝きがオーロラのように天を覆った。美しく輝く光を浴びたギャレットは、自身の身体から傷と疲労が消えていくのを感じるのだった。
「怪我をしたら、いつでも呼んで。私が必ず癒します!」
 彼女の迷いは消え去った。それが彼女の声色からはっきりと分かる。それと共に、アリス達の心に『希望』という言葉が徐々に生まれ始めている事も感じ取れる。
「……この灯火、私が必ず守ってみせよう」
 ギャレットは再び狼達の方へ真っ直ぐと体を向ける。ここから背後へは一歩たりとも踏み込ませない。それが、人々を守ると誓った自分の使命だ。
「――我が黒剣の姿は一つではない」
 黒剣を構え、力強く握り締め、刃に力を籠める。一歩前へ踏み込みながら大きく黒剣を横一閃へ振るう。じゃらり、黒剣が蛇の如く伸びたかと思えば、一瞬にして狼達を引き裂き、その形を失わせた。蛇はぐるりとその体をくねらせたかと思えば、続けて案内人へ襲い掛かる。
「貴様らの技で、私が倒せるのか……試してみるがいい。この黒刃鞭が相手だ」
 彼に恐れを抱くアリスは、もう、誰一人としていない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

徳川・家光(サポート)
『将軍なんだから、戦わなきゃね』
『この家光、悪は決して許せぬ!』
『一か八か……嫌いな言葉じゃありません!』
 サムライエンパイアの将軍ですが、普通の猟兵として描写していただけるとありがたいです。ユーベルコードは指定した物をどれでも使いますが、全般的な特徴として「悪事を許せない」直情的な傾向と、「負傷を厭わない」捨て身の戦法を得意とします。
 嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。また、エンパイアの偉い人には会いません(話がややこしくなるので)。
よく使う武器は「大天狗正宗」「千子村正権現」「鎚曇斬剣」です。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!



 赤髪の青年、徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)は静かにアリス達へ歩み寄り、優しく励ました。
「もう大丈夫です、必ずここから救い出しますよ。この命と、この刀に懸けて」
 家光の凛とした声がアリス達の心から恐怖を取り除く。幾人かが頷く姿を見届けると、彼はふと微笑んでみせた。
 直後、敵である案内人に顔を向けると、鞘から刃を光らせてみせた。その表情に笑みなどあるはずがなく。
「例え何処の世界であろうと、助けを求める声が誰のものであろうと……関係ありませんね。仮にも僕は、『将軍』を名乗っている身ですので」
 猟兵の一人として、異国の将軍として。
「……この家光、悪は決して許せぬ!」
 名刀『大天狗正宗』が、両断すべき相手をその刃に映す。

 案内人が誰かに向かって手招きをした。すう、と消えゆく案内人の体。それと時を同じくして自身の背後から聞こえてきたのは、アリスの悲鳴。
「ひっ……!!」
「ど、どうしたの? 何処にいったの!?」
 ざわめく声が次第に広がっていく。振り向かずとも状況は容易に理解できた。
「動かないで下さい!」
 家光が左腕を振り上げると、清きオーラがアリス達を囲むよう瞬時に展開された。
「火産霊丸よ、焔の底より出ませい!」
 次に家光は早口で愛馬を呼び寄せた。足元から突如吹き上がった火柱から美しき炎の白馬が登場すると、主を背に乗せ大きく嘶く。
「火産霊丸、研ぎ澄ませろ。……分かるはずだ」
 とん、と優しく首を叩く。火の粉を散らし、火産霊丸が強く床を蹴り上げ向かった先は――。

 大きな地響きが空間中に鳴り響いた。火産霊丸の突進によって巨大な本棚が倒れ、崩れ落ちる音だ。ぱちぱちと燃える書物が床に広がるその光景は、まるで地獄だ。
 炎の海から不可思議な影が、すう、と浮かび上がる。それも一つだけでない、二つも、三つも、それ以上の数が。
 火産霊丸は影に向かって勇猛果敢に走り出す。影を踏むと、何かがぶつかったような、何かが潰れたような、そんな鈍い音が聞こえたような気がした。

 間一髪、一つの影が白馬の突進を避けた。しかしその影は、己の命運を即時に認識する事となる。
 ――馬の背に、誰もいない。
「言ったはずだ」
 その低い声は、影の頭上から響く。
「悪は決して許せぬ、と」
 名刀『大天狗正宗』が、両断すべき相手をその刃で貫いた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『『幻創魔書』飛び出す絵本』

POW   :    『赤ずきん』の物語
【レベル体の漁師】と【レベル体の人食い狼】の霊を召喚する。これは【猟銃】や【驚異的なスピードの噛み付き】で攻撃する能力を持つ。
SPD   :    『アラジンとまほうのランプ』の物語
無敵の【飛び出す絵本の願いを叶えるランプの魔人】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
WIZ   :    『ハーメルンの笛吹き男』の物語
【幻惑に陥れる濃霧】【幻惑に陥れる笛の音色】【レベル×5体の組み付く子どもたち】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。

イラスト:鞘間ヨシキ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アイン・セラフィナイトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 一冊の書物が浮かんでいる。
 それは絵本だった。
 絵本は猟兵達に、避難するアリス達に、語り掛ける。

 拒むな。逃げるな。
 お前の幸せは私の中に存在する。
 お前の既に運命は決まっている。

 誰がお前の物語を描いていると思っている。
 この私だ。
木常野・都月
この絵本が…ボスなのか。

俺は最近字を覚えたから、絵本は読みやすくて、凄く楽しい。

でも、この本は、アリスの為にならない本だから…倒さないといけないな。

アリスのためにも、俺のためにも、悪趣味な本はビリビリに破いてポイしないとだな。

アリスを守る事を最優先に、敵ボスを倒したい。

アリスを[かばう]事が出来る立ち位置で[野生の勘、第六感]を使用して、敵の状況を[情報収集]したい。

[オーラ防御]を展開して、万が一の際の守りを付与しておきたい。

UC【精霊の矢】を風の精霊様の助力で使用したい。

敵の攻撃は風の精霊様の[属性攻撃]の[カウンター]で対処したい。



 ふわりと浮かぶ絵本を木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は不思議そうに眺めた。あれが今回のボス、ここにいるアリス達を陥れた全ての元凶。
 ほのぼのとした風景の描かれた、ごくありふれた表紙の絵本。しかし、『読んでみたい』という欲求は全く湧かない。それはきっと、絵本から恐ろしい声が響いて来るからだろう。

 都月は最近、文字を覚えた。文字を覚えた事によって絵本の面白さを知った。
 絵本は読みやすく、そして凄く楽しい。物語を楽しみながら何かを学び、覚え、物事を考えさせられるから。
 ……だからこそ、彼はこう思った。
「……あれはきっと、楽しくない本だ」
 描かれたものが喜劇だろうが悲劇だろうが、そんなものは関係ない。きっとあれは、都合の良い幸せしか描かれていない、酷くつまらない本だろう。
 何も学べない本に、興味なんてない。
「アリスのためにも、俺のためにも、悪趣味な本はビリビリに破いてポイしないとだな」
 都月が杖を強く握り締めると、彼の周囲に優しい風が吹き始め、その体を包み込んだ。
「……風の精霊様、ご助力下さい」

 絵本はぱらぱらと頁をめくり、物語を語り始める。何処からか聞こえてきたのは笛の音色。楽しそうな音楽に子供達が集まり踊り出す。
 ……ただ、笛の音色は狂気に満ち、笑う子供達の顔は黒いインクで塗り潰され、周囲には頁から噴き出された怪しげな霧が包み込もうと広がっている。
 顔のない子供達が都月を何処かへ誘おうと無邪気に駆け寄って来た。勿論、都月は誘いに乗るつもりはない。
「……ううん、俺もアリスも、そっちには行かない」
 はっきりとそう伝え、彼は円を描くように杖を回す。風のオーラで壁を作ると、一歩下がって再び杖を振る。
「精霊様、どうか、悪魔祓いの息吹を」
 都月の前へ横一列に並ぶ、突風を纏う矢。それらは次々と放たれると、幻惑の霧を払い除け、近付く子供達を狙ってはその体を貫いた。無邪気な姿だったはずの子供達は、矢に貫かれると同時に醜い悲鳴を上げながら墨汁のようにどろりと溶けていく。
 突風により絵本の頁はぱらぱらと高速でめくられていき、一枚の破れた頁が宙を舞う。いつしか笛の音も消えてしまい、賑やかだった書庫も気付けば静寂に包まれていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

フクス・クルーガー
【POW】 共闘・アドリブ歓迎

確かにお前が言うような形の幸せがあるとはアタシは思う。幸せは人それぞれなんだから、どうしたって完全な否定は出来ない。

でも、あんたがやろうとしてるのは幸せなんかじゃない。ただの押しつけがましい自己満足でしかない。

クーちゃんを呼び出してUCで合体して応戦だよ。猟銃? 早いスピードの噛みつき? そんなそこらの本よりも薄っぺらい攻撃なんて全部蹴散らしてあげる!

全力の【グラップル】で鋼鉄の拳をお見舞いしてあげる。その本だって不用品で古紙回収して、リサイクルしたほうが世の為人の為ってね!

もうアタシはお前が記したアタシじゃないんだから。



「そっか、アリスやアタシにあんな夢を見させたのも、全部あんたの仕業だったんだね」
 フクス・クルーガー(何処でもお届け! 安心のクルーガー運送!・f22299)は腕組みをし、目を閉じる。
「確かにお前が言うような形の幸せがあるとは、アタシは思う。幸せは人それぞれなんだから、どうしたって完全な否定は出来ない」
 彼女は思い出していた。あの絵本が見せた幻想を。
 正直言えば、確かに一瞬でも幸せを感じた。ただ、それよりも心の痛みと苛つきの方が勝ってしまった。それは何故なのか?
 あれは夢だ。決して現実には成り得ない紛い物だ。それは過去の記憶を失っているアリス達でも遅かれ早かれ知る事になる事実だったろう。
「……でも、あんたがやろうとしてるのは、幸せなんかじゃない。ただの押しつけがましい自己満足でしかない」
 フクスは目を見開く。浮かぶ絵本へ真っ直ぐと強い視線を向けると、巨大な大型トラックを呼び出し、変形したトラックに体を飲み込まれていった。
 ――正確に言えば飲み込まれた訳ではない。その大型トラックは『フクスの本体』だ。彼女は今の体を、元の姿へと戻しただけにすぎない。
「もうアタシはお前が記したアタシじゃない。何も知らないやつが勝手に『永遠の幸せ』を描いて良い訳がないんだよ!」
 変形していくトラックは巨大なロボへと進化を遂げる。ロボ――フクスは絵本へ向かって真っ直ぐに突き進み始めた。
 絵本は頁をめくると、物語の中から猟師と狼の群れを呼び出した。急接近するフクスに向け、黒のインクで塗り潰された顔のない猟師達は銃を向け、狼の群れは肉を求めて横暴に襲い掛かる。
「残念、そんなそこらの本よりも薄っぺらい攻撃なんて、全部蹴散らしてあげる!」
 銃弾や狼の牙をものともしない鋼鉄の体は、その勢いに乗せたまま狼達を吹き飛ばす。フクスは巨大な拳を固めると、大きく振り被り、忌々しい絵本に狙いを定めて力強く振るった。
「その本だって不用品で古紙回収して、リサイクルしたほうが世の為人の為……ってね!」
 ――あんたがやるべき事って、幻想を語る事じゃない。間違いなくこっちだよ。
 憤怒に満ちた拳は猟師もろとも薙ぎ払い、絵本を押し潰し、そのまま地面を破壊した。

成功 🔵​🔵​🔴​

百地・モユル(サポート)
熱血で好奇心旺盛
本が好きな小学生

正義感が強く困っている人は見過ごせない

UCは業火の一撃、灼熱の束縛に加えて
自分たちが押し切られそうになったらオーバーヒートバッシュ
🔴の数が多い場合はバーニングリベンジャーだ

攻撃には怪力、属性攻撃、2回攻撃、グラップルなどの技能をのせる

逆に敵の攻撃をからみんなをかばう、耐えるために
武器受け、挑発、おびき寄せ、時間稼ぎ、激痛耐性なども使用
敵に一撃入れられそうなら咄嗟の一撃や捨て身の一撃、カウンター
こいつがボスか…
みんな大丈夫?助けにきたよ!

そんなの許せない、ボクの炎で焼き払ってやる!

技能の勇気、覚悟、気合いは常に発動状態

アドリブ絡み歓迎

影朧などの場合は説得もしたい



「これが図書室!?」
 百地・モユル(ももも・f03218)は本好きの少年だ。見た事もない量の書物に囲まれた書庫に少年は喜ぶかと思いきや。
「……なんか違う」
 モユルは首を横に振った。
「なんか分かんないけど、なんか違う! ボクの知ってる図書室じゃないぞ!」
 それは部屋の雰囲気が恐ろしげだったからなのか、それとも少年が読むにはまだ難しい書物が多かった故か。どちらにせよモユルはこの書庫に興味を示す事はなかった。
「あの変な絵本がボスなんだな! 本棚ごとボクの炎で焼き払ってやる!」
 豪快に炎を纏わせた剣を大きく振り回し、気合十分である事を絵本に見せ付けるモユル。
 すると、絵本は頁をぺらぺらとめくり出し、ある物語の頁を開いたままぴたりと止まった。直後、部屋中に響いたのは獣の遠吠え。それも一匹だけではない。複数の獣の声だ。
 気付いた時には絵本の周囲には複数もの人食い狼の群れが現れていた。遠吠えは彼らのものだろう。
 遠吠えが響く中、がちゃり、という金属音をモユルは聞き逃さなかった。すぐさま音のした方角に視線を向ける。本棚の影に誰かがいる。そう、あれは猟銃を構えた猟師達だ。
「わ、すっげー! 絵本の登場人物が出てきたのか!? すっげーいいなそれ!」
 と、驚くモユル。しかしはしゃいでいるのも口だけであり、気を抜いた訳ではない。
「出て来るのが悪者ばっかじゃなかったら、もっと良かったんだけどな!」
 フレンドリーには見えない狼の群れと猟師達を前に、モユルは力強く元気に駆け出した。

 狼の群れは俊敏な動きでモユルを囲み、鋭い刃を剥き出し飛び付いてきた。しかし勿論の事、モユルはただの少年などではない。
「よっし、狼なんかよりも早く走ってやるぜ!」
 モユルの足はどんどんと加速を続け、狼よりも素早く動いてみせた。そのエネルギー源は、決して手に入らないと思っていた『自由』という力、『喜び』という感情。それを失わない限り、少年は止まらないだろう。
「しかもボクは……固くて食べられないぞ!」
 生身の体を失った代わりに手に入れた機械の体。ぶんと大きく腕を振るえば、狼は噛み付く事などできないまま吹き飛ばされる。猟師の銃弾が当たったとしても、そんなものは勢いと気力で弾けばいいのだ。
「今度はこっちの番だ! 燃ゆる命の炎、見せてやるぜ!」
 剣に纏う炎が強く燃え盛る。モユルは体を回転させながら剣を振る。周囲に広がる業火と熱風が狼の群れを吹き飛ばし、猟師を本棚ごと燃やす。
 本棚から燃えた書物がばらばらと落ちる。燃えた書物に襲われ猟師の姿が消えてゆく。それは大火事となった森を連想させるようにも見えた。
「行くぜ、これがボクの一撃だ!」
 回転しながらモユルは高く飛び上がり、炎の竜巻と共に絵本を力強く一刀両断した。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジャスティス・ボトムズ(サポート)
★アドリブ大歓迎

正義を執行することに全力を注ぐぜ。
敵と認識した相手は叩き潰す。
それが俺の正義だ。

俺は闘争や探索などあらゆるものをシンプルに考えて行動するのを好む。
戦い方は武器での攻撃と素手での格闘を敵を見て使い分けている。

物事はシンプルに考えて動いた方が白黒ついて分かりやすくなるってもんさ。

正義を執行するという意志は俺にとって絶対だ。
何があっても絶対にこれだけは曲げないぜ。

やること決めたら後は全力で突っ込んでいくだけだぜ。

技能は怪力、鎧砕き、存在感を使って力で問題解決を目指す。
正義を執行するのにはパワーをフルで発揮するのが俺好みだぜ。

正義の力で敵を叩き潰して、優しさを持って民間人に接するぜ。



「あーあ、随分と陰気臭い書庫だな」
 ジャスティス・ボトムズ(正義の執行者・f22965)は部屋を見渡すなり、好みじゃないなと首を横に振る。
「しかしなんて分かりやすいんだ。ここの悪役は自己主張が激しいぜ」
 誰がどう見ても『ここに悪者がいます』と理解できる空間だ。少なくともここは良い場所ではない。
「ま、ともかく。見るからに怪しいあの絵本を叩けばいいって事だな。何もかも分かりやすくて助かる!」
 そうと分かれば後は簡単だ。ジャスティスは腕を軽く回し、早速戦闘の準備に入る。
「他人の物語を勝手に書き換え、閉じ込める……か。そんな奴に存在する資格なんてない。俺が叩き潰してやるぜ」
 悪を滅ぼす為、彼は正義を執行する。

 空中に浮かぶ絵本は頁を開くと、人食い狼と猟師を呼び出した。不思議な煙と共に現れた狼の群れはジャスティスに向け低い唸り声をあげ、猟師達は猟銃の先を一点に向け構えている。
「どれだけ呼んだって無駄だぜ!」
 駆けるジャスティスが向かった先は本棚。影に隠れ、一瞬狼の群れと猟師達の視界から消え去ったかと思えば。
「正義執行! ぶっ飛ばすぜ!」
 力強く握り締めた固い拳を本棚に叩き付けた。巨大な本棚は大きな音と共に破壊され崩れ落ちる。歪んだ地形に狼の群れと猟師達が怯んだ所へ、頭上から無数の書物と本棚の瓦礫が降り注ぐ。
 ジャスティスは次々と本棚を破壊した。悪の親玉だけでなく、この部屋もろとも消し去るつもりなのかもしれない。
「悪であるあんたも、その居場所も、俺の正義でぶっ潰す。アリスの恐怖は俺が全部取り除いてやるぜ。あぁ、絶対に、だ!」
 絵本の幻想に閉じ込められていたアリス達の絶望の顔。例えそれが何に対してであろうとジャスティスは彼らを救う為に正義を貫く。
「俺はあんたを、許さない!」
 本棚の瓦礫と共にジャスティスは姿を現し、絵本に急接近すると共にジャスティスソードで頁を貫いてみせた。声のない絵本の代わりに、狼の群れと猟師達の悲鳴が部屋中に響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔴​

雫石・凛香(サポート)
○アドリブ・MSさんの解釈による下記に沿わない動きも歓迎です

オブリビオンへの恐怖で眠れなくなった姉のために戦う妹キャラです
性格はクール枠。冷静に物事を見て、必要そうな行動をとれます
敵への態度は苛烈。どんな相手でも容赦はしません
反面、子供故の短絡さも持ち合わせています

魔剣【鞘】という凛香の意思に従い姿を変える剣を持っており、形状変化による攻め手の多さとスピードと手数で勝負するタイプ。逆に相手の攻撃を剣で受けるような行為は(子供なので)パワー不足、ほぼできないです

ユーベルコードは基本的には妖剣解放のみ
動きを封じることで先の展開が有利になる相手がいれば剣戟結界を使っている所は見たいです


グレイ・アイビー(サポート)
これが敵の親玉ってやつですか…分かっちゃいましたが、こいつも不味そうですね
刻印には後で上手いもんたっぷり吸わせてやらねぇと機嫌を損ねてしまいそうです

味方がいれば共闘し前衛で行動
共闘相手にもよりますが、その時は盾役も兼ねて援護しましょう
彼等への攻撃は出来るだけ庇うつもりです
ぼくの事は気にしねぇで、とっととやっちまって下さい

単独で敵の相手をしなけりゃいけねぇ時は、奴の動きに注意しつつ隙を見て懐に潜り込み、グラップル
発動可能、成功率が高いと判断すればUCを叩き込みます
あとは敵が使用した技の相殺が可能と判断すれば使用
臨機応変に行動し考えましょう

ぼくに出来ることを、精一杯やりましょう



「あんなものが絵本……なの?」
「1ページたりとも読みたくねぇ絵本ですね」
 少女と怪物は同じ感情を抱いた。空中に浮く一冊の絵本からは『楽しそう』なんてものは全く感じられないのだから。
「絵本は楽しむものよ。でも、楽しむというのは……色々な事を学べるという意味なの」
 お前からは何も学べない。嬉しい事も、悲しい事も――幸せな事も。小柄な少女、雫石・凛香(鞘の少女・f02364)は絵本を睨む。
「読んでも意味がねぇなら、不味いに決まってますね。はぁ、また刻印が機嫌を損ねてしまいそうです」
 やれやれ、と、長身の怪物、グレイ・アイビー(寂しがりやの怪物・f24892)が溜め息を吐きながら頭を掻く。
「まぁ、不味いもん食べてから美味いもん食べたら普段以上に美味く感じる……なんて事を学べるチャンスと考えましょうかね」
「えぇ、悪いものは早急に排除する。そういう事よ」
 二人のダンピールは構える。猟兵として、悪夢の絵本を消し去る為に。

 絵本はとある頁を開いた。その頁からは軽快な笛の音色と子供達の笑い声が聞こえてくる。ふわりふわりと怪しげな濃霧が漂い始めたかと思うと、その中から子供達が飛び出して来た。
 飛び出してきた子供達の姿は、凛香と年が近いようにも見える。
「そのような幻想に惑わされるほど、わたしは弱くないの」
 姉から恐怖を消し去る為に戦いに身を投じた凛香。このような子供騙しで足を止めるようでは、姉を救う事など夢のまた夢。迷う事無く凛香は魔剣を握り締める。
「なんだか馬鹿にされた気分……二度とページを開かなくさせてあげる」
「じゃ、ぼくがあの本を思い切り破いてやるんで。ぼくの事は気にしねぇで、とっととやっちまって下さい」
 凛香にそう言うと、グレイは獣の如く強く地面を蹴り上げ走り出した。

「……【鞘】、応えて!」
 鞘から引き抜かれた刃は、刀剣の姿などしていなかった。すらりと細長いその姿はまさにグレイブそのもの。ぐるりと一回転させると、凛香は深く腰を落とす。
「これ以上、お前には物語を語らせない……何故ならお前はもう、この檻から出られない!」
 魔剣の刃が輝く。凛香は神速の如く魔剣を振り回し、斬撃の大嵐を呼び起こしてみせた。嵐は濃霧と笛の音色を掻き消し、子供達を切り刻んだ。
「良い風ですね。ぼくには丁度良いってやつですよ」
 グレイは涼しげに微笑み、斬撃の衝撃波と共に戦場を駆け抜けた。目の前で子供が邪魔をすれば、躊躇いなく長い腕を大きく動かし振り払ってやった。
 斬撃の嵐によって絵本の幻想は掻き消され封じられていた。絵本との距離を急速に縮めると共に、グレイは自身の腕に力を籠める。
「さて、行きますかね」
 その一言を合図に刻印が疼いた。グレイの瞳は輝き出し、琥珀色だったそれは一瞬にして血の如き真紅色に染まる。
 ヴァンパイアと化したグレイは鋭くなった爪を立て、その腕を大きく振り上げる。
「――終わりだ」
 絵本に飛び掛かり、グレイの爪が絵本を引き裂く。抉るように腕を振れば、破られた絵本の頁が嵐に吸い上げられ、辺り一面に舞い散る。

 絵本は真っ赤なインクを噴き出した。噴き出したインクで絵本は真っ赤に染まると、塵のようにさらさらとその姿を消していく。
 す、と凛香が静かに魔剣を鞘に収める。先まで響いていた戦いの音は、もう聞こえない。
「……これも、お前が描いた物語の結末だったのよね?」
 そうなのでしょう? と凛香は消えた絵本に問い掛ける。
「わたしは……『おしまい』よりも『つづく』で締め括る物語の方が好みなの」
「同感です」
 立ち上がり埃を払うグレイが相槌を打つ。その瞳は見慣れた琥珀色に戻っている。
「さて、帰りますかね」
「えぇ」
 二人は何処か清々しい表情を見せ合いながら、避難したアリス達の元へと向かうのだった。

 彼らは歩む。誰かが創った物語ではない、自分自身の物語へと。
 その物語の続きは、今は誰も知らない。
 知っているのは――未来の自分自身だけなのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年05月09日
宿敵 『『幻創魔書』飛び出す絵本』 を撃破!


挿絵イラスト