●
低い振動と歯車の音が、学園迷宮内に響き渡る。刻一刻と姿が変わり、変化していく迷宮――その原因は、迷宮の最奥にあった。
マッド・メイズ・メイカー――迷宮を作り出し作り変え、より複雑かつ危険なものに再構築するシステム。
学園迷宮内に封印され、機能を停止していたはずのマッド・メイズ・メイカーが再起動したのだ。迷宮を作り変える、その作業は大規模なものとなる。時間が必要だ、システム的にそう考えついたマッド・メイズ・メイカーは、そのための準備も整える。
外縁部から内縁部に繋がる唯一の扉に、災魔の扉を用いたのだ。
問いを解かなければ、扉は開かない。無数のアルダワ魔法学園の生徒や学者がその謎に挑み、そして解き明かす事ができなかった。
だから、時間を稼げる。マッド・メイズ・メイカーは己を守る迷宮を、徐々に拡大していった……。
●
「まずは、そこに何と書かれているか調べるところからだな」
ジョー・パブリック(名も無き断章・f17003)はそう紫煙をこぼし、改めて説明を始めた。
「アルダワ魔法学園に、災魔の扉のある迷宮が見つかってな。知っている者もいるだろうが、この扉はかけられた謎を解かなければ開かない仕組みになっている。その上、開いたら中の災魔が溢れ出す性質の悪さだ」
しかも、その迷宮の奥にいるマッド・メイズ・メイカーとは、迷宮を作り出し作り変えてより複雑かつ危険なものに再構築するシステムそのものだ。このままでは、より複雑で恐ろしい迷宮がより拡大していく事になる……決して、放置はできない。
「このままでは、より面倒な事になるだろう。そうなる前に、この災魔の扉を開いてほしい」
●
謎を解かねば開かぬ扉には、四つの四角い穴とこう記されていた。
『其は■の頭、■の胴、■の手足に、■の尾を持つ。トラツグミの声、其が鳴く夜は恐ろしい――その名は――』
その問いの答えにふさわしい動物の絵が描かれた石を選び、はめ込むことでこの扉が開く仕組みだが……問題は、迷宮内に隠された動物を描かれた石は種類も量も多い事だ。決して、適当に選んでいては答えにはいきつかない。
マッド・メイズ・メイカーを倒すためには、その答えを見つけ出し扉の先へ進まなくてはならない……。
波多野志郎
問いの答えは、目の前の便利な魔法の箱で調べてみる事を敢えて推奨します、波多野志郎です。
今回はアルダワ魔法学園の学園迷宮の一つを攻略していただきます。
なお、第一章は遊び要素としてどんな動物の絵があるかは皆様のプレイング次第となっております。どんな怪キメラが生まれるか、私も楽しみにしております。
それでは、学園迷宮で皆様をお待ち致しております。
第1章 冒険
『異世界知識の謎』
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POW : 総当たりなど力任せな方法で謎の答えを導く。
SPD : 鋭い直感や閃きで謎の答えを導く。
WIZ : 明晰な頭脳や豊富な知識で謎の答えを導く。
👑3
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メンカル・プルモーサ
……んー……
普通に考えると猿の頭、狸の胴、虎の手足に、蛇の尻尾……
……名前は確か…「鵺に似た声で鳴く得体のしれない怪物」だったはず…
…で。その絵の石版を探さないといけないんだよね…
…こっちはレッサーパンダだし……こっちはパンダ……
これはキリンで……こっちは象。ほんと色々あるな……
…外れで発動する罠とかなければ遊ぶのも良いかもしれないけど…
…そういえばあれとは違うけど合成獣って結構居たな
麒麟の頭に龍の胴体、竜の手足にタイ(幻獣)の尻尾、と……
人の頭に、獅子の胴体と手足、蠍の尻尾でマンティコアとかも出来る…
……うん、遊んでないでさっさと開けよう……
箱庭・山岳
猿の頭、狸の胴、虎の手足、蛇の尾……で「鵺」だったか?
虎の胴で狸の手足だったか、少しあやふやだな。
異形の怪物と言えば、
老人の頭、蝙蝠の翼、獅子の胴、蠍の尾といったものや、
獅子の頭、山羊の胴、蛇の尾というのもあるようだが……。
変り種で言えば尻がなく前後のない双頭の山羊というのも居るそうだな。
種類が多いといえば、
鹿の角、駱駝の頭、獅子の鬣、蛇の身体、鷹の爪、虎の手、鯉の鱗と、まあ色々なものが混ぜられたのも聞いたことがある。
水鏡・怜悧
人格:ロキ
(自己拡張する迷宮とは…娯楽としては面白そうですね
機械的なものか、魔術的なものか…とりあえず見に行ってみましょうか)
(確か扉に謎が…おや、これは鵺の伝承ですかね?
確かUDCに居た時に資料を見た覚えが…日本の妖の一種でしたか)
(確か有名なのは、猿の顔、狸の胴体、虎の手足、蛇の尾 でしたか
胴体が虎だとか尾が狐だとか、そもそも『よくわからないもの』と表現されていたような気もしますが…
声が呪詛を帯びているとか、実体はなく煙のように消えるとか…)
思考を横道に逸らしつつ、とりあえず猿、狸、虎、蛇で嵌めてみます
(あぁ、災魔が溢れ出すと予知されていましたか
とりあえず距離をとって警戒しておきましょう)
煌石・庭園水晶
謎解き、ですか
あまり得意ではありませんが挑んでみたいという
自分の好奇心が抑えきれませんね
扉を確認してから
WIZで挑戦いたしましょう
答えは何となく察しているのですが
『奴延鳥』または『鵺』だと推測しています
で、あるならば必要な動物はわかっているんですが…
「確か、記されている書物や伝承によって、あてはまる動物が違いましたね」
知る方は知っている伝承ですから、私は少数と思われる方を選んでみましょう
私の解答は、猿の頭、虎の胴、狸の手足に、狐の尾、になります
そういえば、猟兵としてお仕事をするのはこれが初めてでしょうか
最初から躓きたくはありませんが…
「頑張っていきましょうか」
アドリブ、絡み、大歓迎です
●『答え』を探せ
低い振動と歯車の音が、学園迷宮内に響き渡る。水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)――ロキは、足元から伝わる振動を感じながら呟いた。
「自己拡張する迷宮とは…娯楽としては面白そうですね。機械的なものか、魔術的なものか……とりあえず見に行ってみましょうか」
猟兵達が目指す最初の目的地は、入ったらすぐに見つかる。巨大な、無数の蒸気機関が積み重なったような扉だ。
『其は■の頭、■の胴、■の手足に、■の尾を持つ。トラツグミの声、其が鳴く夜は恐ろしい――その名は――』
そこに書かれた問題文に、ロキは呟く。
「確か扉に謎が…おや、これは鵺の伝承ですかね? 確かUDCに居た時に資料を見た覚えが……日本の妖の一種でしたか」
「猿の頭、狸の胴、虎の手足、蛇の尾……で「鵺」だったか? 虎の胴で狸の手足だったか、少しあやふやだな」
箱庭・山岳(ブラックタールのウィザード・f02412)が、そう考え込むとメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は付け足した。
「……んー……。普通に考えると猿の頭、狸の胴、虎の手足に、蛇の尻尾……名前は確か……「鵺に似た声で鳴く得体のしれない怪物」だったはず……」
「確か、記されている書物や伝承によって、あてはまる動物が違いましたね。確か、源平盛衰記では猿の頭、虎の胴、狸の手足に、狐の尾、になります」
そう指摘したのは、煌石・庭園水晶(庭園で佇む静寂・f10825)だ。ちなみに余談だが、猫の頭に鶏の胴を持つ――という伝承がある。とにかく、一定した姿を持っていないのが鵺なのだ。
「確か有名なのは、猿の顔、狸の胴体、虎の手足、蛇の尾 でしたか。胴体が虎だとか尾が狐だとか、そもそも『よくわからないもの』と表現されていたような気もしますが……声が呪詛を帯びているとか、実体はなく煙のように消えるとか……」
「それは平家物語の方ですね」
考え込むロキに、庭園水晶はそう補足した。
そもそもが、鵺とは『正体不明』の代名詞である。ただ、姿はわからずともそこに恐ろしい何がいる――その何かを、鵺と名付けたのだ。
そう、これは鵺と行き着いてからいくつもの『選択肢』のある問題なのだ。
「……で。その絵の石版を探さないといけないんだよね……」
「それも一苦労だな」
メンカルの呟きに、山岳もうなずきを返す。外縁部の迷宮そのものはさほどの規模ではないが、それなちに骨が折れそうだった。
(「……そういえば、猟兵としてお仕事をするのはこれが初めてでしょうか。最初から躓きたくはありませんが……」)
庭園水晶は目の前の災魔の扉を見上げ、自身に言い聞かせるように言った。
「頑張っていきましょうか」
●『体』を探せ
「……こっちはレッサーパンダだし……こっちはパンダ……これはキリンで……こっちは象。ほんと色々あるな……」
迷宮内を探索し、いくつも見つかった動物の書かれた石を見てメンカルはこぼす。他にも竜やワニ、カバ、コブラ、梟、熊、ペンギンにライオン、etcetc――関係のなさそうな動物の物も実に豊富に存在していた。
「……外れで発動する罠とかなければ遊ぶのも良いかもしれないけど……」
さすがに不透明な状況で、好奇心を満たす訳にもいかない。メンカルはぐっと我慢した。
「異形の怪物と言えば、老人の頭、蝙蝠の翼、獅子の胴、蠍の尾といったものや、獅子の頭、山羊の胴、蛇の尾というのもあるようだが……。変り種で言えば尻がなく前後のない双頭の山羊というのも居るそうだな」
そう言いながら、山岳は集めた石を石畳に並べていく。それにメンカルも乗っかった。
「……そういえばあれとは違うけど合成獣って結構居たな。麒麟の頭に龍の胴体、竜の手足にタイ(幻獣)の尻尾、と……人の頭に、獅子の胴体と手足、蠍の尻尾でマンティコアとかも出来る……」
「種類が多いといえば、鹿の角、駱駝の頭、獅子の鬣、蛇の身体、鷹の爪、虎の手、鯉の鱗と、まあ色々なものが混ぜられたのも聞いたことがある」
メンカルが絵並びで揃えていくと、山岳も同じように並べていく。古今東西、さまざまな動物の部位を寄せ集めた合成獣の伝承は、事欠かないのだ。
「これで鵺に必要な石は集まりましたね……と。これはこれは」
ロキが扉の前に訪れた時には、まさに絵のパズルによる幻獣図鑑がそこにはあった。その光景に笑みをこぼし、庭園水晶が言った。
「では、答え合わせといきましょう」
●『正体』を探せ
まず、メンカルは災魔の扉を見上げて言った。
「……■の頭、■の胴、■の手足に、■の尾を持つ……この時点で、猫の頭に鶏の体……猿の頭に胴が虎……この二つは、ない……」
既に、このはめ込む数がヒントになっているのだ。もしもこの二つの場合、胴と手足は同じ動物のものになるため、三つの石でいいはずだからだ。
「そうなると猿の頭、狸の胴、虎の手足、蛇の尾か……」
「猿の頭、虎の胴、狸の手足に、狐の尾。そのどちらかになります」
山岳の呟きに、庭園水晶が言を継ぐように付け加える。ここで『選択肢』は二つに絞られたが――。
「……ヌエ」
庭園水晶が、小さく呟く。それにロキは記憶を遡るように言った。
「ああ、色々と字があったんでしたね。鵺、鵼、夜鳥――奴延鳥」
「……そういえば、平家物語だと……鵺の声で鳴く……得体の知れないもの……としか、書かれてない……?」
メンカルの指摘に、庭園水晶は大きくうなずく。
「そうです。答えは書いてあったんです。其が鳴く夜は恐ろしい、トラツグミの声……その記述は平家物語ですから――」
山岳が、四つの石を穴に嵌めていく。
『其は猿の頭、狸の胴、虎の手足に、蛇の尾を持つ。トラツグミの声、其が鳴く夜は恐ろしい――その名は――』
――ガギン、と一際大きな音が響き渡った。正体なき鵺の姿がここに決められた――その瞬間、災魔の扉は自ら開き……己が内に潜む、災魔の群れを吐き出した。
大成功
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第2章 集団戦
『スチームゴーレム』
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POW : 対猟兵捕獲ネット弾
【対象の回避行動を予測した後、両腕】から【ユーベルコードを封じる捕獲用ネット弾】を放ち、【対象をネットで捕獲する事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : 掘削用誘導弾ランチャー
レベル×5本の【先端が削岩用のドリルになっている、機械】属性の【、迷宮の壁や床を掘削して襲来する、誘導弾】を放つ。
WIZ : ニューバイパス
【迷宮を掘削して構築していた別通路を利用】【して、対象を包囲する様に別部隊が攻撃】【を行い、部隊間で連携して攻撃する事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
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●蒸気機械人形
――それは、一つの芸術品とも言うべき光景だった。
謎を解かれた災魔の扉は、内側に宿した災魔を吐き出す。扉の部品となっていた無数の重なり合う蒸気機関が、バラバラと崩れてゴーレムへと変形していったのだ。
扉の形状、強度、その用途、全てを満たしてなおこれだけのスチームゴーレムを内蔵していたという事実。それはまさに、計算しつくされた芸術作品と言うしかない見事なものだった。
ただ、見惚れている訳にはいかない。何故ならば、スチームゴーレムの群れは扉の謎を解いた者を殺す、そのために存在しているのだから……。
煌石・庭園水晶
精密にして大胆な変形…これはあついですね
心が躍るという意味でも、壁という意味でも
名乗りなどは必要でしょうか?
「名は庭園水晶。ひとつとして同じ輝きを内包しないモノです」
ゴーレム達から離れた場所で全力の『大声』を使用してUCを発動
音の天使にゴーレムを減らしてもらいながら
自身でも『怪力』をつかった『グラップル』の掴み攻撃や
『大声』の咆哮を用いての『衝撃波』で攻撃していきましょう
ゴーレムに装甲があっても
装甲越しに内部へ直接『衝撃波』を叩き送ります
音の天使とは離れた場所で戦います
ネットの捕縛で一網打尽にされてはかないません
UC以外は基本的に拳や脚をつかった肉弾戦で戦います
アドリブ、絡み、連携、大歓迎です
水鏡・怜悧
人格:ロキ
(これはこれは…面白い構造ですね
ゆっくり解析したいところですがそうもいきませんか)
袖口から伸ばした触手を土属性に変え、
周囲の壁や地面を操って死角からの拘束を狙います。
(…?壁の薄い部分があるようですね
蒸気機関の機械兵…自己拡張する迷宮…
まさか、物理的に掘り進んでいるのでしょうか…?)
確証はないが念のため、と
壁が薄くなっている部分に土属性で干渉して金属を生成し
掘削し難いよう補強しておきます。
封鎖が終わり余裕があればメカニックの知識でゴーレムの動力部を探し、
炎と光の触手を使用してレーザーカッターの要領で焼き切り・貫通攻撃します
メンカル・プルモーサ
…おおー、これは凄い……
…と感心している場合じゃないね…ゴーレムを倒さないことには先に進む事も出来ないか…
…まずは【夜飛び唄うは虎鶫】を召喚……各種センサーでスチームゴーレムの採掘音や移動音を確認…別働隊の位置を確認しておくよ…
…つぎに、まずは本体に向けて【連鎖する戒めの雷】を発射…電撃ダメージと共に動きを止めることで別働隊との連携を崩すね…
…連携が崩れている間に別働隊にも雷を伝播させて一網打尽…一気に仕留めるよ…
…もし、ネットに囚われた味方が居たら【彼方へ繋ぐ隠れ道】で味方を自分の傍に転移させることでネットから脱出させるよ…
●変形と脅威
――ガシャン! と盛大に災魔の扉がばらけ、形を変えていく。無数の重なり合う蒸気機関がスチームゴーレムの軍勢に変形していく姿は、もはや芸術品と言い換えても良かった。
「……おおー、これは凄い……と感心している場合じゃないね……ゴーレムを倒さないことには先に進む事も出来ないか……」
ガジェット研究者一族の生まれであるメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)にとっては、その変形と合体構造の凄まじさがよくわかる。強度、構造、用途、そのどれもをこれほど持たせて扉にするのは、気が狂うほど細緻な計算と実践が必要だったはずだ。
「精密にして大胆な変形……これはあついですね。心が躍るという意味でも、壁という意味でも」
煌石・庭園水晶(庭園で佇む静寂・f10825)は小さく微笑み、陣形を組んだスチームゴーレムの群れへ言ってのける。
「名乗りなどは必要でしょうか? 名は庭園水晶。ひとつとして同じ輝きを内包しないモノです」
スチームゴーレム達は、名乗りに応じない。その変形と蒸気機関の唸りこそそれだと言わんばかりに、一気に迫ってきた。
猟兵達は、身構える。そこへ放たれたのは、ドドドドドドドドドドドドドドドドゥ! と一斉に放たれた先端が削岩用のドリルになっている誘導弾の雨あられだった。
●VS蒸気機械人形
放たれた掘削用誘導弾ランチャーに対して、前に出たのは水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)――ロキだった。
(「これはこれは…面白い構造ですね。ゆっくり解析したいところですがそうもいきませんか」)
ロキは袖口から伸ばした触手を土属性へ、そのまま地面に手をつくのと同時に触手の壁が掘削用誘導弾を受け止めた。
触手の壁越しに伝わる振動、ガリガリと削られる感触、しかしそのどちらよりもロキの気を引いたものがあった。
(「……? 床や壁に薄い部分があるようですね。蒸気機関の機械兵……自己拡張する迷宮……まさか、物理的に掘り進んでいるのでしょうか
……?」)
マッド・メイズ・メイカーによって刻一刻と拡大を続ける迷宮。それが物理的に、実際に広がっているのならば――やがて、他の学園迷宮にも届くかもしれない。そうなれば、巻き込まれる被害者が爆発的に増える。やはり、時間がないようだ。
「手早く終わらせる必要がありますね」
薄くなっている部分に土属性で干渉して金属を生成、掘削し難いよう補強しながらロキはスチームゴーレム達へ触手を放つ。それは拘束なって蒸気機械人形達の動きを封じていった。
「音は越えていく……盾も壁も命も貫き、ただただ先へと続いていく!!」
庭園水晶の全力の大声が代償となって、音の天司(ホーリーサウンド)が発動する。音を司る天使は白槍と黒槍を手に、紙でも貫くようにスチームゴーレム達を破壊した。
「我が従僕よ、集え、出でよ。汝は軍勢、汝は猟団。魔女が望むは到来告げる七つ笛」
メンカルの夜飛び唄うは虎鶫(セブン・ホイッスラーズ)によって、無数の通信・索敵機能のついたガジェットが召喚される。このガジェットの一体一体は小型であり、戦闘能力は高くはない――だが、その本来の機能は凄まじかった。
「……右、五時方向……」
「お任せを!」
メンカルのガジェットが知覚したのは、別働隊だ。ロキに補強された壁を強引に越えようとする採掘音を聞き逃さず、現われたのと同時に駆け込んだ庭園水晶が怪力で投げ飛ばした。
スチームゴーレム達は、怯まない。心のない機械に勇気がなくとも恐怖もない――ただ、己が役目を果たすため侵入者たる猟兵達へ襲いかかった。
●質対量
ガシャン、とスチールゴーレムが両腕を構える。それが対猟兵捕獲ネット弾射出の前兆だと悟り、庭園水晶が前へ駆けた。
「撃たせません!」
懐に入ってしまえば、無力化は簡単だ。庭園水晶はスチールゴーレムへ前蹴り、決意の声を衝撃波に変えて吹き飛ばした。ガゴンガゴン! と地面を転がるスチールゴーレムの残骸、それを離れていた場所で戦っていた音の天使が黒い槍で弾き、スチームゴーレム達をボーリングのピンよろしく薙ぎ払った。
「触手ちゃんはこういうことも出来るんですよ?」
ロキが触手式魔導兵器-シンフォニアによって炎と光の属性を宿した触手をかざす。ギュオ! と放たれたのはまさにレーザーカッター、熱で焼き切り、光で貫いた。ただ焼かれ、貫かれただけならスチールゴーレムは止まらない。だが、メカニックの知識から推測した動力源にそれらを受ければ話は別だ。鈍い爆発を巻き起こし、スチールゴーレム達が動きを止めていった。
スチールゴーレム達が、密集する。この状況、ただ各個撃破されてはたまらない――戦術的には正しい動きだったろう。
――ただ、その動きをメンカルが読んでさえいなければ、だが。
「紡がれし迅雷よ、奔れ、縛れ。汝は電光、汝は縛鎖。魔女が望むは魔狼封じる天の枷」
メンカルの周囲を、無数の魔法陣が囲んでいく――その魔法陣から放たれるのは、雷の鎖だ。連鎖する戒めの雷(ライトニング・チェイン)、メンカルが操る雷鎖がスチールゴーレム達を拘束し、雷撃のダメージを与えていく。
一網打尽、そう言って良かったはずだ。
「……まだ終わって、いない……」
しかし、メンカルは知っている――まだ、別働隊が動いていることを。
質と量、目に見える範囲は質が圧倒した。しかしなお、量はその戦力を残していた……。
大成功
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メンカル・プルモーサ
……残るは別働隊……奇襲を防いでるから脅威は減っているけど…
…別働隊が現れるところへ【支え能わぬ絆の手】により床の摩擦係数を減らしておくね…
…スチールゴーレムが滑る床を踏んで転倒したら…【起動:海神咆吼】による主砲の一斉射撃…別働隊を破壊していくよ…
…●掘削用誘導弾ランチャーは迷宮の壁を利用して時間稼ぎ…召喚してあるガジェットにより位置を把握して【尽きること無き暴食の大火】で燃やして迎撃…
…撃ち漏らしが出たらスチールゴーレムに向かって【支え能わぬ絆の手】を発動…
…これだけ戦えばだいたい防魔術式は解析は出来ている…ゴーレムの各部品の摩擦係数を極限まで落とすことでバラバラにするよ…
●刹那の攻防Ⅰ
「……残るは別働隊……奇襲を防いでるから脅威は減っているけど……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が、意識を集中させる。夜飛び唄うは虎鶫(セブン・ホイッスラーズ)は、正常の作動している。大量の通信・索敵機能のついたガジェットは、膨大な情報をメンカルに伝え、彼女はそれを無駄なく処理できる能力がある。
だから、わかる。いまだ、ニューバイパスによってスチールゴーレムが壁の向こうで移動しているという事実を。
「繋ぎ止める絆よ、弱れ、停まれ。汝は摺動、汝は潤滑。魔女が望むは寄る辺剥ぎ取る悪魔の手」
だからこそ、その『出口』も把握している。メンカルの支え能わぬ絆の手(フリクション・ゼロ)は、物理情報を改竄する事で自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす――すなわち、メンカルが支え能わぬ絆の手をかけたそここそが――。
『――!?』
壁をぶち抜いて降り立ったスチールゴーレム達が、次々とバランスを崩した。摩擦係数が消されたのは『出口』の床だ、いかに広いスチールゴーレムの足でも踏み込む勢いでよく滑る。それでもなお体勢を立て直そうとしたそこへ、メンカルがその背後に大量の魔法陣――ワープゲートを展開する。
「座標リンク完了。魔女が望むは世界繋げる猫の道……主砲、一斉射!」
起動:海神咆吼(ラン・ワンダレイ・ハウリング)――ワープゲートから飛空戦艦ワンダレイの主砲による一斉掃射が、スチールゴーレム達へと叩き込まれた。爆発音と衝撃、踏ん張ることの出来ない床では、踏みこたえることさえ出来ず破壊されていく!
『――ゴ!』
それでもなお味方を盾に、前に出ようとしたスチールゴーレム達がいた。メンカルはすかさず支え能わぬ絆の手を発動――ゴーレムの各部品の摩擦係数を極限まで落とす。関節や部品が外れ、崩れ落ちるスチールゴーレム達……それでもなお、耐え抜いたスチールゴーレムもいた。
だから、メンカルは静かに告げる。
「……お願い……」
大成功
🔵🔵🔵
マイカ・グレイソン(サポート)
「ねえ君、ちょっと訊きたいことがあるんだけど……」
・冒険/日常
自分の振る舞い(ボーイッシュ、爽やか)が有利に働くと判断した時は、潜入や囮など積極的に動きます
散策などをする時は幼馴染のことを考えて「早く再会したいなぁ」とため息をつきがち
・戦闘
【血統覚醒】で基礎戦闘力を上げた後、一気に間合いに踏み込み【此岸の楔】での一撃を得意としますが
接近戦が危なそうな相手の場合は【クイックドロウ】を使用します
傷ついた仲間がいれば【咎力封じ】で抗いながら盾になります
他の猟兵には協力的で仲間意識が強いです
※
依頼成功のためでも破壊行為や公序良俗に反する行為はしません
アドリブ連携歓迎です
●刹那の攻防Ⅱ
「――任せて」
応えたマイカ・グレイソン(追う者・f02994)が、真紅の瞳を輝かせて駆ける。一歩、その一歩が早く、瞬く間に距離を詰めた。仲間のパーツを踏み砕いて強引に前に出た、先頭のスチールゴーレムにマイカは拳を構える。
「待ってたんだ、この瞬間を。……もう逃がさないよ!」
ゴォ! と砲弾のように放たれたマイカの拳が、スチールゴーレムの装甲を打ち砕いた。此岸の楔(ウェッジ・ザ・ボクサー)――血統覚醒によって得られたヴァンパイアの魔力によって強度を上げた拳は、影さえ残さぬ速度で放たれ、たやすく蒸気機関を粉砕する!
『ゴ――!』
倒れたスチールゴーレムの背後から、最後の蒸気機械人形が掘削用誘導弾ランチャーを発射する。その削岩用ドリル付き誘導弾の着弾を、マイカは拷問具を盾のように構えた。
「この程度で止まると、思わない事だね」
ドドドドドドドドドドドドド! と着弾する度に拷問具に伝わる衝撃を吸血鬼の腕力でねじ伏せ、マイカが前へ出る。後退しようとするスチールゴーレムへ、マイカは腰のホルスターから素早く抜いた熱線銃によってクイックドロウ。マイカの撃った熱光線に膝関節を撃ち抜かれ、スチールゴーレムが片膝をつく。
『ゴ!?』
「ここまで繋いでくれた人達がいるからね。逃がすと思うかい?」
この状況を作ってくれた仲間がいる、その強い想いを拳に握り――マイカの振り下ろしの右、此岸の楔がスチールゴーレムを押し潰すように鉄塊へと変えた……。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『マッド・メイズ・メイカー』
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POW : 自己防衛機構、起動
自身の【青い巨大コア】が輝く間、【コアから放たれる魔力の砲撃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD : 災魔、罠、設置開始
【召喚した大量の災魔や迷宮の罠】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : 迷宮、構築・拡大・変形
戦場全体に、【感覚を狂わせる蒸気を吹き出す魔道蒸気機関】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
👑11
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●VS迷宮
扉を抜けた先にあるのは、刻一刻と変化を続ける迷宮だった。
マッド・メイズ・メイカーは、それ自体は脆い存在だ。しかし、迷宮内では最悪の敵の一体として恐れられている――その理由の一つが、これだ。
一歩迷宮に踏み込めば、そこはすでにマッド・メイズ・メイカーとの戦闘の開始を意味しているのだ。災魔や罠の設置、迷宮の構築・拡大・変形――マッド・メイズ・メイカーの元へたどり着く、そのためにその機能と戦わなくてはいけないのだ。
マッド・メイズ・メイカーは、迷宮の中心にある。そこへたどり着けるか、これはそういう勝負であった……。
水鏡・怜悧
人格:アノン
(迷宮?蒸気?
…見にくいし何かクラクラするな)
UDCを纏って黒狼の姿になると、魔銃から風の力を取り込んで自分の周囲に発生させ蒸気から身を守る
更に前方に風の衝撃波を放って蒸気を吹き散らす
(…何か風の抜けるところと抜けねェ所があるのな
奥に行きゃあイイんだっけか)
風の抜けやすい方を選び、複数ある場合は野生の勘で突き進む
敵を見つけたら黒狼の姿のまま風を纏って体当たり
「…また喰えねぇし…クソッ」
無機物ぽい見た目に少ししょんぼりしつつ八つ当たりぎみに攻撃
身に纏ったUDCから火や雷を纏った触手を大量に生やし打撃や斬撃を行う
メンカル・プルモーサ
……んー……感覚を狂わされるのが困るな……
…まずは【戯れ巡る祝い風】で蒸気を噴き飛ばしつつ有利な偶然が訪れるように場を調整……
…【夜飛び唄うは虎鶫】を展開…センサーを駆使して狂った感覚を補正するよ…
…ついでにガジェットからの情報を総合してコアのありそうな方角を調査して…
…【尽きる事なき暴食の大火】による白い炎で蒸気や魔道蒸気機関を燃料にして穴を開けて一直線にコアの方へと向かうよ…
……途中に出てくる災魔は同じく暴食の大火で蹴散らして……罠は11フィート棒を袖から出して検知して回避しながら進むよ…
…防衛機構を見つけたら【愚者の黄金】で黄金の壁を出して砲撃をかいくぐるとしようか…
●拡大する迷宮
地面が揺れ、迷宮の壁が動いていく――その光景に、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)が目頭を軽く抑えた。
(「迷宮? 蒸気? ……見にくいし何かクラクラするな」)
感覚を狂わせる蒸気を吹き出す魔道蒸気機関が、感覚を狂わせるのだ。怜悧――今の人格で言えばアノンも、例外ではない。動いていないはずなのに、もう周囲を迷宮に囲まれている――それに対する、対処が必要だった。
「さて、と」
ぞる、とアノンの足元から這い出たUDCが身を覆い、その姿を黒狼へと変える。四脚が、床を蹴った。勢いに乗ったアノンはそのまま加速する。
「――オムニバス」
カチリ、とアノンは黒狼の中で銃型魔導兵器-オムニバスの引き金を引いた。十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない――刻まれたルーンが生み出す風が、黒狼の口から放たれた。
ゴォ! と突風が感覚を狂わせる蒸気を吹き飛ばしていく! 風が生んだトンネルを抜け、アノンは迷宮を駆け抜けた。
(「……何か風の抜けるところと抜けねェ所があるのな。奥に行きゃあイイんだっけか」)
突風は、ただ蒸気を払うだけでは終わらない。アノンは通路を返ってくる風や吹き抜ける音から行き止まりかどうかを判断し、奥を目指していった。
『ギギギギギ!!』
不意に、アノンを蒸気人形が襲う。上からの奇襲、蒸気に紛れての強襲への対処は困難だったはずだ。
しかし、黒狼は風をまとって上へ迎撃――噛み付いた瞬間に、雷を宿した大量の触手で串刺しにした。
「……また喰えねぇし……クソッ」
しょんぼりと呟き、アノンは黒狼の姿で踏み砕いていく。
中心へ、中心へ――その道は、決して平坦ではなかった。
●暴食のままに迷宮を喰らい
また別の道へ踏み出して、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は呟いた。
「……んー……感覚を狂わされるのが困るな……」
一歩踏み出す度に、迷宮は姿形を変えていく。目の前を遮る蒸気に、メンカルはシルバームーンを掲げ、唱えた。
「遙かなる祝福よ、巡れ、廻れ、汝は瑞祥、汝は僥倖。魔女が望むは蛇の目祓う天の風」
メンカルを包むように流れたそよ風が、迷宮内を吹き抜けていく。蒸気が散らされ、その中をメンカルは進んでいった。
ただ蒸気を払うだけではない、メンカルの戯れ巡る祝い風(ブレス・オブ・ゴッデス)は空間を術者に有利な偶然が起こる様に改変を行なう。進む道が正解である、その幸運を味方に見つけてメンカルは迷わず先を急いだ。
「……あれは……」
幸運だけに頼らず、メンカルが展開した夜飛び唄うは虎鶫(セブン・ホイッスラーズ)の通信・索敵機能のついたガジェットは、前方に構築されていく大砲を知覚した。現在進行形、侵入者に合わせた罠の設置――それこそが、マッド・メイズ・メイカーの本領だ。
「世に漂う魔素よ、変われ、転じよ。汝は財貨、汝は宝物、魔女が望むは王が呪いし愚かなる黄金」
砲弾の射出と同時、メンカルのシルバームーンの柄頭が床を打つ。ドォ! と前方で起こる衝撃――愚者の黄金(ミーダス・タッチ)によって構築された黄金の壁が、砲弾を受け止めたのだ。
そして、大砲が二発目を装弾するよりも早く。メンカルの背後に無数の魔法陣が展開されていく!
「貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
放たれる白色の炎が、迷宮を喰らう。メンカルの尽きる事なき暴食の大火(グラトニー・フレイム)は、迷宮を可燃物に障害もまとめて食らい付くし、『道』を生み出した。
メンカルは遠くで蒸発する大砲をガジェットのカメラ越しに確認し、迷宮の奥へと駆けていった……。
大成功
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煌石・庭園水晶
んん……迷路ですか、では、これでいかがでしょう?
大声を出して、UCを使用
音を聞き取った『本体』の眼前に音を司る天使を呼び出します
完全な密閉でもなければ音は届くと思っています
天使の攻撃音を頼りに迷路の突破を考えますが
他の猟兵様の残した痕跡も視野に入れて動きましょう
『本体』を視認できる位置まで出ましたら
あとは近づいて殴って蹴ります
「名乗りは……必要なさそうですね」
ジャンプからの踏みつけにつなげる飛び蹴りや
単純な手突による衝撃波など
自身の怪力を利用して肉弾戦に持ち込みましょう
「さぁさぁ、下僕の様に…狂ったように踊りましょう」
アドリブ、連携、大歓迎です
メンカル・プルモーサ
……厄介な蒸気は排除した…あとはコアを目指すのみ…ここからは速度勝負…
…箒に乗って【天翔ける突風の馭者】により移動速度をアップ…
…罠使いにより迷宮に仕掛けられた罠は発見・回避…
……生み出された災魔は【鳴り止まぬ万雷の拍手】により動きを封じているうちにその脇をすり抜ける…
…邪魔な砲台の類は【空より降りたる静謐の魔剣】により凍り付かせて一時的に無力化…
…コアが見えたら一度近くの曲がり角に身を隠して…
…【面影映す虚構の宴】による飛んでコアに向かう自分の幻を先行させてそちらに注目させているうちに…
…地面すれすれに飛ばした静謐の魔剣をコアに刺して機能を停止させるよ…
津久根・麦穂
私アルダワは初めてなんですよね。
色々見物してたら到着が遅れてしまいました。
迷宮の本場ってアルダワらしいんですが、
A&Wの迷宮民として真偽を確かめねばなりますまい。
迷路に罠、それに災魔ですか。
私戦闘は苦手なんであいつらの相手はしません。
そうですね、その辺に仕掛けられた罠を
手持ちのトラップで改造して、
追いかけてきた災魔の相手をしてもらいましょう。
ワイヤーやスイッチの配置など、罠の発動条件を改変し、
爆薬、毒ガス、転移罠などあらゆる仕掛けを逆利用してやります。
罠と迷宮は私の得意分野ですからね。慎重かつ素早く行きますよ。
おっと、ボスも居るんでしたね。
使えそうな仕掛けは少し貰って行きますか。
●迷宮の奥へ
目の前で今もなお進化を続ける迷宮に、煌石・庭園水晶(庭園で佇む静寂・f10825)は呟く。
「んん……迷路ですか、では、これでいかがでしょう?」
自分の喉を押さえ、庭園水晶は大きく息を吸い込む。
「音は越えていく……盾も壁も命も貫き、ただただ先へと続いていく!!」
庭園水晶の音の天司(ホーリーサウンド)は、距離を問わない。音を聞いた対象の元へ音を司る天使が出現し、防御無視の刺突を放つというものだが――。
「まさか、完全に密閉された場所に……?」
マッド・メイズ・メイカーの元へ出現したはずの音を司る天使が自分の頭上に出現した事実に、庭園水晶は小さくこぼす。こちらの声が届かないほど広大になっているのか、あるいは密閉されていた空間で防音効果が高いのかのどちらかだが――。
「でしたら、もっと中心に近づくしかありませんね」
庭園水晶は音を司る天使を従え、迷宮内を走り出す。立ちはだかる罠の数々を白槍と黒槍で突破し、仲間達の痕跡を目印に進んでいった。
(「……でも、何で罠ごと外されているんでしょうか? この道」)
庭園水晶がそう訝しんだ道の先、そこにいたのは津久根・麦穂(ストレイシーフ・f19253)だった。
「私アルダワは初めてなんですよね。色々見物してたら到着が遅れてしまいました。迷宮の本場ってアルダワらしいんですが、A&Wの迷宮民として真偽を確かめねばなりますまい」
無数の学園迷宮。その攻略するためのノウハウ。ダンジョンエクスプローラーである麦穂にとって、興味深いものばかりだった。だからこそ、いらぬ道草を食ってしまったというのが本音だ。
「迷路に罠、それに災魔ですか」
走りながら視線だけで振り返り、麦穂は見る。マッド・メイズ・メイカーが作成した人形の蒸気機関ガジェットが1ダース、追いかけて来るのを。
だが、そんな連中をまともに相手にするつもりは麦穂にはない。麦穂が迷宮の角を走り抜けると、ガジェット達もその後に続き――。
「ええ、中々面白い仕掛けです」
そう壁を足場に麦穂は、ガジェット達を見下ろす。次の瞬間、左右の壁に設置されていた罠が作動――ガジェット達の足元に描かれた魔法陣による転移式罠が発動した。
ガギガギガギガギ!! と壁の奥から鈍い破砕音が響くのを聞いて、麦穂は呟く。
「踏み込んだら転移先で歯車に巻き込まれて終わりですか。いい趣味ですね」
問答無用の即死罠だ。麦穂はそのまま壁を足場に、魔法陣を飛び越えた。
「おっと、ボスも居るんでしたね。使えそうな仕掛けは少し貰って行きますか」
幸い、手頃な罠はいくらでもある――麦穂は目についた罠を外しながら、迷宮の奥を目指した。
●狂った迷宮の造り手
「……厄介な蒸気は排除した……あとはコアを目指すのみ……ここからは速度勝負……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は飛行式箒【リントブルム】を手に取ると走りながら飛び乗った。
「空裂く翼よ、駆けよ、奔れ。汝は旋光、汝は疾風。魔女が望むは蒼穹愛する天の騎士」
天翔る突風の馭者(バーン・ストーマー)――リンドブルムはメンカルの呼びかけに応え変形、一瞬にして迷宮を駆け抜ける疾風と化した。己が強引に開けた『道』をまっすぐと――メンカルは、迷宮を再構築されるよりも早く飛び抜ける!
「……あった……」
メンカルは見た、尽きる事なき暴食の大火(グラトニー・フレイム)によって生み出された『道』。その最奥で、壁を強引に再生しているマッド・メイズ・メイカーを。
間に合うか? しかし、壁の再生が閉じきる寸前で不意に止まる。それは、青い水晶の背後に突如として現われた音を司る天使の白黒の槍での刺突によるものだった。
「ようやく、声が届きましたね!」
庭園水晶が、急に止まった迷宮に手応えを感じて走り出す。メンカルもまた、さらなる加速を得た。
『ギ、ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ!!』
マッド・メイズ・メイカーが、固定放題の乱射する。受けた攻撃に、迷宮構築の再起動までの時間を稼ぐ、そのために。
「我が記憶よ、戯れ、演じよ。汝は役者、汝は舞台。魔女が望むは想いより出でし虚ろ影」
しかし、その魔力の砲撃は加速するメンカルをすり抜ける。より正確には、メンカルが面影映す虚構の宴(ハートレス・メモリー)によって生み出した自身の幻影を、だ。
「こっちです――送ります!」
直前に曲がり角で方向転換していたメンカルの前にいたのは、麦穂だ。麦穂の左右にある蒸気機関が作動――ヴヴン! と二つの魔法陣が展開された。
それぞれの魔法陣に、庭園水晶とメンカルが飛び込む。その転移型罠を利用した出現先は――マッド・メイズ・メイカーの真上だ。本来であれば間に合ったはずの再起動を許さない、まさに鬼札(ジョーカー)の一手だ。
『ギギギギギ!!』
「停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
二人の出現に砲撃で応えようとしたマッド・メイズ・メイカーだが、それはメンカルが読んでいる。空より降りたる静謐の魔剣(ステイシス・レイン)によって召喚された氷の魔剣が飛び交い、砲塔に突き刺さり――凍結させる!
「名乗りは……必要なさそうですね。さぁさぁ、下僕の様に……狂ったように踊りましょう」
そして、庭園水晶が落下速度を利用して飛び蹴りを叩き込んだ。ミシミシミシ! とマッド・メイズ・メイカーにヒビが入っていく。いかに強大な力をもとうと、本体は脆いのだ――それでも抵抗を試みて、災魔を召喚しようとする狂った造り手へ、メンカルは一本の魔剣を掴み投擲した。
「……これで、終わり……」
ドォ! とマッド・メイズ・メイカーに深々と蒼の剣が突き刺さる。バキバキバキ――! と瞬く間に氷に覆われていく迷宮の中心、それが完全な止めとなる。
ガゴン……と歯車の止まる音がした。それはまさに、マッド・メイズ・メイカーの断末魔となった……。
大成功
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