サクラミラージュは帝都、甲陽(こうよう)館。
ここで催されるはずの舞踏会は、なんと殺人計画の舞台であった。
それを事前に知って、招待客をいかせる馬鹿はいない。そしてグリモア猟兵は馬鹿ではない。
なので、当日は、誰も行かなかった。
「……という訳にもいきませんかコレ」
ヴェルタール・バトラー(ウォーマシンの鎧装騎兵・f05099)は、ため息めいた排気をこぼした。
今回のヴェルタールは、いささか普段と雰囲気が変わっていた。
無駄にグリモアベースを歩き回るし、何よりインバネスコート……某世界の英国探偵を思わせるアレだ……を羽織っている。
「この度皆様にお願い申し上げたいのは、殺され役でございます」
ヴェルタールは、とある洋館で『影朧』による殺人計画が実行される事を予知した。その日は、洋館で舞踏会が開かれる予定だった。そのため、館に行く人々に、洋館には決して行かないようお願いしたのだ。
よって殺人計画は、空振りに終わる……のだが。
「せっかくの機会ですので、影朧を倒してしまいましょう。そこで猟兵の皆様には『まんまと殺される人』の役をお願いしたいのでございます」
いい感じにトラップに引っ掛かったふりをして、黒幕をおびき出し、それを返り討ちにする、というのが今回の依頼の流れだ。
「まずは、洋館に赴き、舞踏会を楽しんでくださいませ。『もうすぐ死ぬとも知らずにいい気なもんだぜ』と黒幕に思われるくらいゆるりとお過ごしください」
いわゆる『死亡フラグ』などは、黒幕にとって大変喜ばれる、特大の隙となるだろう。
「そうして黒幕をたっぷり油断させた後、死のトラップが次々と皆様を襲います。全くもって死にませんが、良い感じに死に台詞を口にしながら死んだふりをしてくださいませ」
洋館には、数々の殺人トラップが仕掛けられている。影朧はやる気満々なので、どんな雑なトラップでも、普通の人間なら必ず死ぬようなものばかり。
しかし、ヴェルタールの言葉通り、猟兵が喰らっても死ぬことはない。
最終的に、皆死んだと思って現れた黒幕を、ここぞとばかりに撃退すれば、任務完了である。
「という訳で、徹底的に黒幕を弄んでくださいませ。なあに、グワーッと死に、ズバッと退治してくださればそれで結構でございます」
以上でございます、とヴェルタールは、優雅に一礼してみせたのであった。
七尾マサムネ
新世界! 桜! 館!
●一章
殺人舞踏会に参加します。
謎の招待状を本来の参加者から預かっているので、問題なく館に入る事ができます。
真面目に参加するもよし、わざと孤立するような真似をしてみるもよし。
とにかく死亡フラグを立てる時間です。
●二章
罠にかかって死んだふりをします。全力で。
フラグメントにはちょっぴり大げさな事が書いてあると思いますかが、今回は参考程度にとどめ、黒幕の仕掛けた殺人トラップに引っ掛かってあげましょう。
一例として、「勝手に黒幕の犯罪計画をでっちあげて、真相に近づいたふうなところでわざと罠にひっかかって死んでみせる」とかもいいかもしれません。
死に際も工夫してみてもよいです。
●三章
のこのこ出て来た憐れな黒幕をボコボコにします。
浪漫とは。
それでは、皆様の華麗なる演技、お待ちしております。
第1章 日常
『回ル廻ル舞踏会』
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POW : 豪華な料理を食べまくる。
SPD : 華麗にダンスを楽しむ。
WIZ : 優雅に誰かと語り合ったり、建物を見て回る。
👑11
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甲陽館。
ホールに足を踏み入れると、クラシカルな西洋風のメロディが、来客を迎えた。
「お待ちしておりました皆さま」
1人の女中が、皆を迎えた。人間はいないはずなので、おそらく影朧の擬態か、眷属的なものであろう。
となると、この選曲も、影朧によるものであろうか。レコォドの奏でる旋律は、何処か懐かしさをかきたてる。
ホールには、舞踏会の客をもてなす料理も準備されている。立食形式という奴だ。普通の人間の気配はない。これまた、影朧がせっせと準備したのであろうか。
さて、まずは舞踏会の時間。
殺人劇の幕開けまで、しばし適当に過ごさせてもらうとしよう。
絶龍・しれゑな
【アドリブOK・あとセリフ中の「い」「え」は「ゐ」「ゑ」と表記してください】
(花魁のような口調で敵には声をかける。服装は露出の多い着物。)
くふふっ…わちきのような商売女の如き見栄えでも
招待してくれるのでありんしなぁ?
わちきはお腹いっぱい「食らい」に参りましたの
お食事、まずは楽しませていただきます。
そういうわけでお食事をいっぱい食べていかにものんきな雰囲気を出すわ。
あーでも、食べたりないなぁ。でも「めゐん・でっしゅ」はこれから
隣のお人をいかにもな雰囲気でお誘いして
艶やかに共に踊って見せましょう。
いかにも死にそうな感じとなると…
「今夜、共にどうでござゐましょうか?」
と密室にお誘いしますか…
雨咲・ケイ
おぉ、武闘会とは血が滾りますね。
強者達が熾烈な争いを繰り広げるんですね?
え……?舞踏会の方ですか……?
う~ん、困りましたね……。
私は盆踊りくらいしか踊れません……。
【WIZ】で行動します。
洋館って凄く魅力的ですよね。
ちょっと館の中を見て回りましょう。
こういう館は、本棚の後ろに隠し部屋や
開かずの間があったりするんですよね。
暖炉の下には怪しげな地下牢に続く階段があったり……。
よせばいいのに、好奇心にまかせて探索します。
一応怪しい人影等を見かけたら【影の追跡者の召喚】
を使用して追跡しましょう。
アドリブ歓迎です。
黒河内・柊夜
いやーこういうサスペンス、テレビでよく見ますよ。
演じる側をやるのは考えても無かったですが。
という事で副人格のヒイラギがお送りします。
設定は『プライドが高くて人を見下すインテリ君、ただし持病あり』で行きますか。
そういう嫌なキャラって生き残ると見せかけて死ぬ印象なのですが。
事前にハンカチに血糊を付けておきます。
ダンスは少し嫌そうに、社交とはいえ何故こんなヤツらとつるまないといけないんだ、と思っているような表情を隠しません。
終えたら壁によってわざとらしく咳をして、押さえたハンカチの血糊を睨んで持病持ち演出です。
これなら、ドラマなら確実に劇中で死にますね!偏見です!死亡フラグってこんなでしたっけ!?
クネウス・ウィギンシティ
アドリブ&絡み歓迎
「どうも、この度はお招きいただきありがとうございます」
「技師のクネウスと申します」
【POW】UCなし
ホールに脚を踏み入れ、先ずは挨拶を済ませ立食形式の料理に舌鼓を打ちます。
「おお、この料理もいけますね。この肉の『ピリリとした味付け』も癖になります」
「ワインも『酸味』がよく効いてますね」
舞踏会のダンスは、『妙に親しげな見知らぬ女性』と数曲踊りましょうか。
舞踏会を楽しみしばらく経った後……
「ふむ、パーティーの熱気にあてられたようですし『1人客間で休みますか』」
『玄関で案内頂いた女中』に休憩用の客間へと案内してもらいます。
後は『寝た(フリ)』でトラップが来るのを待ちましょうか。
甲陽館。
西洋風の瀟洒なたたずまいのなか、ほのかに混じる罪や嘘の香りに、黒河内・柊夜(中途半端にこじらせた・f16288)は胸の高鳴りを抑えきれぬ様子であった。
「いやーこういうサスペンス、テレビでよく見ますよ」
もっとも、演じる側が回って来るなどとは、考えてもみなかった柊夜……否、この場において憐れな招待客を演じるは、副人格ヒイラギ。
『プライドが高くて人を見下すインテリ君、ただし持病あり』……本日は、かような設定にて。
(「そういう嫌なキャラって生き残ると見せかけて死ぬ印象なのですが」)
そうかも。
さておき、続いて会場を訪れたのは、雨咲・ケイ(人間のクレリック・f00882)である。黒一色で統一したフォヲマルな装い。
「武闘会とは血が滾りますね」
入口にて女中に招待状を提示しながら、ケイが言った。
「そして何とも雰囲気のある館……これからここで、強者達が熾烈な争いを繰り広げるんですね?」
「大変申し上げにくいのですがお客様」
女中が、困惑を露わにした。
「漢字変換を間違っておられるかと。戦いではなく、踊りの方でございます」
「え……? もしかして舞踏会の方ですか……?」
ケイの確認に、女中はうなずいた。遠慮がちに。
「う~ん、困りましたね……。私は盆踊りくらいしか踊れません……」
「ならばこちらでそのような楽曲を用意いたしましょうか」
そう言って女中は、どこからともなくレコォドを取り出した。胸元から取り出すには円盤は大きすぎた。
女中が思わぬ超魔術を披露したしばし後、絶龍・しれゑな(謎食い探偵しれゑな・f22446)が姿を現した。
露出の多い服装、そしてその肢体より放たれる妖しき色香。ここに至る道行の間、どれだけの男性達を惑わしてきた事か。
「くふふっ……わちきのような商売女の如き見栄えでも招待してくれるのでありんしなぁ?」
自分を案内する女中に、しれゑなは口元を隠し笑って見せた。
「どうも、この度はお招きいただきありがとうございます」
そしてその次に、丁寧な挨拶と共に入館したのは、クネウス・ウィギンシティ(鋼鉄のエンジニア・f02209)である。
「皆様お待ちですよ」
女中の案内を受け、館内を行くクネウスの目に留まるのは、豪奢な調度品の数々。
そうして、これから諸々の舞台となるホールに足を踏み入れたクネウスは、先客達に挨拶を始めた。
妖艶な訳アリ風美女に、タイプの異なる紳士が2人。そこにクネウスが加わったことになる。
妖艶美女……しれゑなの心をとらえたのは、客をもてなす料理の宴。さすがに七百年の歴史。並ぶ料理も種々雑多、古今東西多種多様。
「こちらはどれもいただいてよゐので?」
女中の許可を得て、しれゑなは、ご相伴にあずかる事にした。
白帽子の料理人に勧められるまま、まずは一口、ロヲストビイフをいただこう。……この発音(というか表記)で良いだろうかとだんだん惑わされる。
閑話休題。
毒の類は入っていないと見える。もっとも、入っていたとしても猟兵の身には効かぬし、なんならば、悶えのたうち回る芝居を打っても構わぬ。
「おお、この料理もいけますね。この肉の『ピリリとした味付け』も癖になります」
クネウスも、料理に舌鼓を打つ。
「こちらのワインも『酸味』がよく効いてますね」
クネウスの『素直』な感想に、料理人は『笑顔』で一礼した。
ちらり、視界の端に意識をやれば、女中の笑顔に悪しき何やらが浮かんだ気がした。
おそらくは「毒が含まれているとも知らず馬鹿な客だ……」とでも思っているのだろう。即効性ではすぐに殺人劇が終幕してしまって興ざめなので、遅効性のものか。
一方、客人の輪から離れた所では、ヒイラギが、果実酒で満たしたグラスを傾けていた。努めてつまらなそうな表情を作って。
ひとしきりメニュウを網羅したところで、しれゑなは、ふうと一息をついた。ちらり、ホールをうかがえば、かの女中の姿は見えぬ。
(「仕込みと洒落こんでいるので?」)
しれゑなの空腹は、まだ満たされず。『めゐん・でっしゅ』はこれからであるゆえ。なれば、自らも仕込みにかかるのもまた一興。
さてさて、腹が膨れ切る前に、1つ舞踏の時間。
舞踏は、ケイの不得手。いつの間にやら戻ってきていた女中の勧めを丁重に断り、料理を楽しむ事に専心した。他の方のダンスを拝見させてもらう、という事で。
それならばと、しれゑなが、クネウスに蠱惑的な視線を注いだ。
「一曲、お願ゐできませんこと? この手が寂しゐと申しておりますの」
クネウスは、しれゑなの申し出を受けた。フラグを立てよと言うならば。『妙に親しげな見知らぬ女性』の誘いなど、渡りに船。
「一曲と言わず、何曲でも」
クラシカルな楽曲に乗せ、踊りを披露する2人。ケイが思わず見惚れる調子で。
舞を終えて一礼したしれゑなは、あくびを噛み殺すヒイラギに目を留めた。
しれゑなは、そちらに歩を進めると、いかにもな雰囲気で誘い掛けた。
「時間潰しになるでしょうか」
ヒイラギは、少々気が進まない様子で、手を取った。
何故こんなヤツらとつるまないといけないんだ……そう思んな内心をまるで隠さない。むしろ積極的にアピィルしていくスタイル。
これが心の奥底よりの発露であるならば本気で嫌な奴であるが、他の猟兵もそこは承知の上。むしろヒイラギの態度も、この殺人劇のスパイスの1つとなろう。
「今夜、共にどうでござゐましょうか?」
ステップを踏みながら、しれゑなが秋波を送る。『どう』の二文字に秘められた意味がわからぬヒイラギではない。
「気が向いたら、とお応えしておきましょうか」
無難に答えて、しれゑなとの相手を終えたヒイラギは、壁際の方へと歩いて行って……。
「げほっ!」
突然咳込む。
慌てて取り出したハンケチで口元を押さえる。咳が収まったところでハンケチを見れば。
赤く濡れていた。血。それも、病魔に侵されたものの血の色だ。
やべえ奴である。ドラマなら確実に死ぬ類のカラーリングだ。
(「……ええと死亡フラグってこんなでしたっけ!?」)
自分仕込んでおきながら疑問するヒイラギであるが、心の中で主人格が頷いていたのでいいのだろう。むしろいいぞもっとやれ。
いかがいたしましたかと女中がヒイラギに駆け寄るのを確かめたケイは、ホールを抜け出した。一応、女中の目を盗んだ、という体で。バレているなら、それはそれでよろしい。
「ふむ、私もパーティーの熱気にあてられたようですし『1人客間で休みますか』」
クネウスの『何気ない』言葉に、「そうですか」と猟兵達も理解を示す。
が、その反応の裏側には、「いいフラグです」という称賛めいたものが漂っているのを、クネウスは察していた。
こっそりヒイラギも「やりますね」とばかり、感心の眼差しをちらり。
「では私がご案内いたしましょう」
これはありがたい、と、クネウスは喜び勇んで女中の申し出を受けた。
部屋に着いたら、後は寝たふりでもして、黒幕の趣向の始まりを待とうではないか。
さてはて、洋館とはそれ自体が魅力的な存在である。
廊下を歩く、それだけで躍るケイ。心が。
「こういう館は、本棚の後ろに隠し部屋や開かずの間があったりするんですよね」
たとえば暖炉の下には、怪しげな地下牢に続く階段が秘されているもの。
埒外の出来事が起きれば勿論、よしんば想定の範囲に収まる事が起きようとも。いずれでもケイは構わぬ。
好奇心が殺すのは、人だったか猫だったか……嗚呼、なんと愚かしい。此度の宴は、かような愚者を殺めるものの企みだというのに。
……否。
真に愚かなるは、殺人計画を見抜かれているともしらず、猟兵の命を虎視眈々と狙う影朧であるのだよ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
黒木・摩那
【WIZ】
初めての桜ワールドで、舞踏会に招かれて、ドレスアップして、
色々と食べられて、いいんでしょうか。
でも、ここで殺人事件が起こるのですよね。
今から仕込んでおかないと、せっかくの計画が台無しになってしまいます。
【気合】入れていきます。
考えたのですけど、練りに練った殺人計画があっさりと完成しては
犯人も興覚めだと思うのです。やはり苦労して苦労した末に達成される
達成感こそが最高だと思うんです。
なので、今からそのための仕込みをしておきましょうか。
建物の構造をスマートグラスのセンサーでチェックしておきます【情報収集】。
トラップの在処や隠し通路や出入り口など。
舞踏会は精一杯楽しませていただきます。
夏川・初雪
アドリブ連携歓迎
なんや事件か!
それならいっちょサクっと解決……え、被害者役?
とりあえず舞踏会やな
それなりに身なりを整えて……どうしようか
明らかに途中で死にそうなエセ探偵のフリでもしとこか
招待客(他の猟兵さん)や女中さんを見ながら「ふっ……この中に犯人がおるんやろな……」とか「目星はついとるで……」とかブツブツ言っておこうか
あれや、適当な勘違いして変な推理を立てるヤツみたいな感じ
そんで真犯人に殺される時に「お、お前だったのか!」とか言いたいな
他の人の気分だけ害さないように気をつけるで!
あ、あと料理は楽しませてもらおうか
せっかくの機会やしな!美味しかったらええな!
イリス・ローゼンベルグ
●WIZで行動
ふふっ……洋館で殺人事件なんていかにもなシチュエーションね
まあ、せいぜい楽しむ事にしましょう
いつもの様に【変装・変形】でドレス姿の少女に擬態
「わぁ、素敵なところですね。これは、何という曲ですか?」
といかにも初心でこういったパーティに慣れていない風を装いつつ
近くの人と会話をしながら食事を楽しむ
あとは適当にタイミングを見計らって席を外し
「あの……すいません、お手洗いはどこですか?」
と女中に尋ね、一人で館の中を移動
一人で心細そうな雰囲気を出しつつ、敵が襲いやすいように隙を作り
いつトラップが来てもいいように準備
ヒルデガルト・アオスライセン
勝ち気でワガママな家出娘ほど
破滅の足音が聞こえる存在なんて早々居やしないでしょう
権力を笠に着たはねっ返りの令嬢が遭遇してきた設定で行きます
罠細部についての事前情報は遮断
武器を持たず
コバルトの夜会服にヒールの装いで
華美な舞と社交場を見慣れた、くだらないものと鼻で笑い
手を滑らせグラスを割ったり味に文句をつけたりして、煙たがれましょう
七百年間停滞しているだけあって味に遊びがないですわね
もっと舌の肥えた来賓を唸らせる、刺激的なビュッフェを出せませんの?
騒ぎは起きないけれどコイツ摘まみ出した方がいいよな位の塩梅を攻め
死んだ際に思わず、よくやった!とカタルシスを喚起する演出をしていきましょう
※諸々ご自由に
舞い散る桜華の下を行く黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は、心軽く、足取りも軽く。
何せこのサクラミラージュ。摩那にとっては初来訪。しかもドレスアップして舞踏会に招かれて、しかもご馳走までいただけるとは、どうかしている。影朧が。
だが、見上げる二階建ての洋館……甲陽館は、ステヱジだ。殺人劇の。
せっかくの計画を台無しにしてしまってはいけない。摩那は、気合を入れて扉をくぐった。
続いて入り口をくぐった夏川・初雪(気楽な帯刀探偵・f22775)は、探偵である。
事件とあらば即参上。いっちょサクっと御解決……なのだが、今回の事件は少々毛色が変わっているようだ。
自分の方が被害者、という新鮮な役目を担い、初雪は女中にご挨拶。
しっかり、服装も整えている。……明らかに途中で死にそうな、エセ探偵の装いである。
ぼさぼさの髪も、ある意味『正装』だ。
「おっ」
初雪が、ただならぬ気配を感じて振り返る。
気配の主は、ヒルデガルト・アオスライセン(リベリアス・f15994)。その全身からは、勝ち気や我が儘という概念があふれ出している。
コバルトの夜会服にヒール。それらは、権力が服の形を取ったかのようで。
(「勝ち気でワガママな家出娘ほど破滅の足音が聞こえる存在なんて早々居やしないでしょう」)
殺されるにはうってつけの人材だと、ヒルデガルトも自負している。
さて、女中に導かれながら、摩那は思案した。
影朧の殺人計画は、其れなりに練り練りされたものであろう。罠の種類、配置、結果をもたらすタイミング……それがあっさりと完成しては、犯人も興覚めであろう、と。
(「やはり苦労して苦労した末に得られる達成感こそが最高だと思うんです」)
もしも影朧が、この意見を聞いたら「余計なお世話だよ」と反論したであろう。しかしこれは心の声。影朧をしても踏み込めぬ、神秘の領域。
ともあれ、摩那は、今からせっせと仕込みをしておくこととした。
廊下を歩く間、建物の構造をスマートグラスのセンサーでチェック。
(「おやまあ、なんという」)
出るわ出るわ。
毒針発射装置に、抜ける床まで。加えて隠し通路など、枚挙にいとまがない。
もちろん、摩那も、今ここで白日の下にさらすような無粋な真似は、しない。影朧が絶好と信じるタイミングで引っ掛かってやる事こそ、礼儀ではないか。
さて、新たに館を訪れたイリス・ローゼンベルグ(悪を喰らう蠱惑の薔薇・f18867)もまた、余裕の態度で館内を見回していた。
(「ふふっ……洋館で殺人事件なんていかにもなシチュエーションね。まあ、せいぜい楽しむ事にしましょう」)
ドレス姿の少女に擬態したイリスは、初々しさが溢れるように振舞う。
「わぁ、素敵なところですね。これは、何という曲ですか?」
通されたホォルを見渡し、感嘆。
天井を彩る豪奢なシャンデリア、流れる音楽、控える料理と料理人。
全てが初めて、本日社交界デビュウでございます、という雰囲気のイリスだ。黒幕が「小娘め、せいぜいはしゃいでおくがいい……」などと思ってくれたら御の字である。
騙されているのが自分だと知った時の絶望が、イリスは楽しみでならない。内心の期待が笑みとしてこぼれてしまわぬよう、抑えるイリスである。
さっそく料理を頂く初雪は、やたらと招待客に目を配っていた。
「ふっ……この中に犯人がおるんやろな……」
呟く。葡萄ジュースの注がれたグラスを傾けながら。
「目星はついとるで……」
呟く。舶来品らしきクセの強いチィズを味わいながら。
当然、相手の耳にしっかり届くように、ボリュウムを調節して。
これぞ、ハッタリ探偵の様相。勝手な思い込みや勘違いで推理を披露、周囲のひんしゅくを買い、挙句に独断専行して何やかんやで死んでしまう探偵の香りを漂わせている。
万が一この場に、事情を知らぬ客がいたら、「うざい……」と敬遠する事間違いなしだ。
そういうわけなので、周りの客……すなわち猟兵達も、そこはかとなく距離を置いている。むしろそうでなくては、初雪も、ウザ探偵ムーブに勤しむ甲斐がない。
さてさて、他の招待客からマナーなどを教わりつつ、イリスはぎこちなくも、食事を楽しんでいた。
「わあ、こんなお料理初めてです! きっとなかなか手に入らない食材を使っているのでしょうね」
料理人が懇切丁寧に説明してくれるが、イリスは半ば聞き流しつつ、しかし反応だけは誠実に。
「このような料理に出会う機会をいただいた事、主催者様には感謝いたしませんと」
摩那も、料理を口に運ぶ。
幸いにして、摩那が苦手とする椎茸や納豆の姿はない。
(「……このような料理に納豆が出演していたら、明らかに場違いですし」)
もっとも、何が出ても、常備しているマイ唐辛子があれば最強である。
すっかり、舞踏会を楽しんでしまっている摩那である。影朧も満足であろう。きっと。
「ふん、くだらないものね」
室内を彩る曲も、視覚と味覚を楽しませるはずの料理の数々も。
どれも自分には見慣れ、ありふれたものだと、ヒルデガルトは鼻で笑う。
「こんな小娘どものようにはしゃぐことなんてできないわ。ある意味羨ましいことね」
と言いつつ、こっそり目配せで「演技、演技ですわ」と意志を送るヒルデガルト。
「全く、少しは面白い趣向の1つもないのかしら?」
内心と裏腹に、憤りをみせるヒルデガルトの手から、グラスが零れ落ちた。音を立てて破片と化し、絨毯が濡れていく。
「お怪我はございませんか、お嬢様」
すぐさま例の女中が馳せ参じ、破片を片づけていく。
「あら失礼。あまりの不味さに、私の手が無意識に拒んでしまったようね」
嗚呼、何と鼻持ちならない客であろうか。我ながらヒルデガルトもそう思う。
すると不意に、そわそわと落ち着きをなくし始めたイリスを、女中は見逃さなかった。
「いかがいたしましたか?」
「あの……すいません、お手洗いはどこですか?」
それならば、と女中はその足で案内を始めようとした。
が、イリスはそれを丁重にお断りする。
「場所さえ教えていたたければ、1人でも大丈夫ですので」
「左様ですか」
勤めが果たせぬゆえであろう。いささかの残念をにじませながら、女中はイリスを送り出した。強く引き止めぬのは、むしろ単独行動、どんとこい、だからであろう。
1人で心細そうな雰囲気を出しつつ。敵が襲いやすいように隙だらけ。いつなんどきトラップが牙を剥こうとも構わぬよう、備えに余念がないイリスである……。
「それにしても、七百年間停滞しているだけあって味に遊びがないですわね。もっと舌の肥えた来賓を唸らせる、刺激的なビュッフェを出せませんの?」
「申し訳ございませんお嬢様」
ヒルデガルトの叱責に、恐縮しきりの料理人。
クレヱマァの如き振舞いに、他の客は、すっかり遠巻きにしている。
かように、表面上は煙たがられているヒルデガルトだが、皆の内心では「ナイスムーブ……!」と称賛が飛び交っているのであった。
いつでも来い、まだか? まだなんか?
初雪は、死に際のセリフを胸にセットしながら、料理を頬張っていた。
こんな場所で供されるものだ。毒やらなにやらが仕込まれているのかもしれないが、それが露見せぬよう、本気の料理が用意されていた。
なので、困ったことに、美味しい。どれも美味しい。
この料理だけでもこの殺人舞踏会に来た分の元は取れた、なんて思う初雪である。
……それでいいのか探偵さん。
そしてその裏で。
黒幕による死の罠の足音が、ひたり、ひたりと近づいていたのである。
成功
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第2章 冒険
『帝都怪人暗躍譚』
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POW : 抵抗や逃走を行う怪人を、気力と体力で捕縛せよ!
SPD : 怪人の玄妙な計画を、知識と推理で解き明かせ!
WIZ : 奇怪な怪人儀式を、霊力と勇気で阻止するのだ!
👑11
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かくして、虚実入り混じる舞踏会は、つつがなく終了した。
「皆様お揃いではありませんが、ともあれ、今宵は当館でお休みくださいませ」
女中が、営業スマイルで説明を始めた。
「皆様に個別の寝室をご用意させていただきました。就寝までは、談話室にて皆様でご歓談くださいませ。のちほど、温かいお飲み物をお持ち致します。また、軽食やひざ掛けなど、ご所望のものがあればなんなりと」
殺る気だ。
1人になった所で罠発動。
みんなでまとまっていても、差し入れに毒なりなんなりを仕込んで罠発動。
さあ、紳士淑女の皆様方、準備はよろしいだろうか。死んだふりの時間だ。
黒幕による死のトリックでは、猟兵を殺す事はできぬ。しかし、多分痛いし苦しい。
適度に死の危機を回避しながら、うまい事死んでみせるのも、腕の見せ所。
皆を死へと導くのは『いかなる罠』か。そして『どのような死にざまを』見せてやろうか。
※ご注意!
今回に限りましては、提示されているフラグメントの行動指針は「気力と体力で」、「知識と推理で」、「霊力と気合で」の部分のみ参考に、選択していただけると幸いです。
(POWなら「死の罠にかかるも『気力と体力』でなんとかして、死んだふりをする」という感じになります)
(この章で犯人の計画を阻止したり、犯人を捕まえる事はできませんのでご注意ください)
クネウス・ウィギンシティ
アドリブ&絡み歓迎
(サイボーグ故、生半可な方法で死ぬ方が難しいですね……)
【SPD】UC無し:知識と推理で乗り切る
食べた料理の成分を分析し、【情報収集】。
「料理の『毒と睡眠薬』。臓器は機械化済みなので無視しましょう」
『電脳ゴーグル』で壁を透視し、罠を推定。
「客間のベットに『ギロチン』が仕掛けられているようですね。左腕を取り外して切断面に置いて……血糊撒いて」
「後は『犯人の死亡チェック』を乗り切るために、人工心臓を止めて電力式の生命維持装置を起動しますか」
瞳孔(サイバーアイ)も閉じ完全な死んだフリ。
最後に、『サーチドローン』を部屋に設置(【地形の利用】)し、自分を【撮影】し証拠映像を残します。
黒河内・柊夜
「馴れ合ってなんて居られるか。僕は先に部屋に戻らせて頂こう」
これが言いたかったんです!
さっさと単独行動しますが、似たような言動をする方がいたら空気読んで被りすぎないようにしますね。
最初は持病(設定)が悪い振りをして矢などの細かな罠を回避。
実際はサイキネで罠の軌道をずらすだけなのですが。
来るかと思わせて焦らします。イライラするに違いありません。
最終的には映えるようにあっさり派手に死にますよ!
ベタですがシャンデリアの下敷きになりましょう。真下で激しく咳き込んで膝をつけば良い的のはず。
あっでも痛いのは嫌なのでサイキネでいい感じに衝撃緩和しますね。
ついでに血糊も派手にぶちまけましょう。
(アドリブ歓迎)
夏川・初雪
アドリブ連携歓迎
いよいよ殺る気か……
こうなったら全力で死んでやるで!
歓談室ではのんびりしとこ
飲み物とかには手をつけず、罠には警戒
ここで死んだら勿体ないしな
こっそりとUCを使って、罠に耐えれるように気合いを補充しとこか
適当なタイミングで「ふふ……いまごろ真犯人は一人でおるはずや!捕まえてくるで!」とか言って一人になろう
そしてその途中で罠にかかる!
こう……「ここにおるはずなんや……」とかキョロキョロしてたら後ろから刺されるとか!
上手いこと致命傷は避けたり【気合い】で耐えたなら、後ろを振り返って「お、お前やったんか……!」とか言って死んだふりするで
死んだふりする時はダイイングメッセージ?も残そうか
黒木・摩那
【WIZ】
いよいよ殺人事件発生ですね。内心わくわくです。
当初の予定通り、簡単に死ぬ気はありません。
罠の類はタイミングよく転んで難を逃れたり【第六感】、作動しなかったり【念動力】する、やたらと運がいい人になります。
毒は少し効いた方がらしいですから、食べ過ぎで気分が悪いということにします。
しかし、連続する殺人事件、そして解決しそうもない絶望的?な状況に
この館は呪われている!として、館からの脱出を図ります。
そして、扉に手を掛けて、あと一歩で逃げられる、または出た直後に
幸運が尽きて、上から落ちてきた植木鉢な罠で死亡、でいきましょう。
楽しんでもらえるといいんですけど。
クネウス・ウィギンシティは、思案した。死について。
一足先に離席したクネウスは、個別の寝室で1人。
(「皆さんも準備をしている頃でしょう」)
猟兵にとって死とは、近くて遠い、離れて暮らす親戚のようなもの。
戦いに身を置く以上、死と隣り合わせではあるが、かといって普通の方法では死ににくい。そしてクネウスはサイボーグであるゆえ、
(「生半可な方法で死ぬ方が難しいですね……」)
さしあたって、先ほど食べた料理の成分を分析。
(「料理に含まれた『毒』と『睡眠薬』……。臓器は機械化済みなので無視しましょう」)
本気なら、機械も殺すレベルの毒を仕込んでいただきたい。いや、元々サクラミラージュの民を殺すのが目的なのだから、それではオーバーキル過ぎる。
仕方ないのでクネウスは、『電脳ゴーグル』で壁を透視してみた。
(「ベッドに『ギロチン』が仕掛けられているようですね。左腕を取り外して切断面に置いて……血糊撒いて」)
せっせと準備する。
少々滑稽なようであるが、影朧も黙々と罠を仕掛けていたのだろうから、お互いさまである。
(「後は『犯人の死亡チェック』を乗り切るために、人工心臓を止めて電力式の生命維持装置を起動しますか」)
全てが整ったら、瞳孔……サイバーアイを閉じれば、死んだフリモードの完成である。
そして。ギロチンが作動し。クネウスは。
死んだ。
さて、その頃、談話室では。
夏川・初雪が、のんびり自らの華麗なる事件遍歴を語っていた。
(「いよいよ殺る気の時間か……こうなったら全力で死んでやるで!」)
これまで解決したりしなかったりした事件を滔々と語ってみせながら、初雪の決意は固まっていた。
飲み物に手をつけないのも、トォクに夢中になっているから……ではなく、ここは死ぬタイミングじゃないなと避けているからだ。自由に死んでいい機会などあまりないので、雑に消化してしまっては勿体ない。
「その時も自分は灰色の脳細胞をフル回転させたんや、こんな風にな!」
頭を掻きむしり、熱のこもった再現に余念がない初雪。……と見せかけて、ユーベルコヲドの発動である。
罠にかかるのは痛い。痛いのはイヤ。よって備えをするのは当然の帰結である。
しばらくは、退屈そうながらも黙ってとどまっていた黒河内・柊夜……ヒイラギは、不意に立ち上がって、大仰に肩をすくめた。
「馴れ合ってなんて居られるか。僕は先に部屋に戻らせて頂こう」
(「これが言いたかったんです
!!!」)
ヒイラギ、心のガッツポーズ。
フラグごとにポイントが加算されるとしたら、ぴろりろりん♪ とチャイムが鳴る事間違いなしである。
「自分の話がつまらんと?」
「気づいてなかったのか? 随分お目出度い探偵さんだ」
火花散らす初雪とヒイラギ。
なお、女中は止めに入りません。
「それでは、私もそろそろおねむの時間ですね」
退室するヒイラギの背中を見送って、黒木・摩那も席を立った。おねむというには、いささかぱっちりした目で。
いよいよ、時刻は深夜。おそらく犯人も殺す気満々、準備万端。しかし摩那とて、当初の予定通り、簡単に死ぬ気はない。
壁から飛び出す毒矢!
「おっと」
『唐突に』つまづく摩那の背中の上を、飛んでいく毒矢。
スイッチとなっている床を踏むも、
「おや、何やら気分が……」
何事もなかったように通過。念動力によって絡繰が封じられただけ。
犯人がこの様子を見ているなら、「なんて運のいい奴だ! 命拾いしたな」と引きつった笑いを浮かべているに違いないのである。
「食べすぎでしょうか」
ふらつく摩那。「馬鹿め。それは貴様の食べた料理の毒が効いているからだ」と思っているはずだ。
廊下を1人で行くヒイラギ。こっそり聞いた他の猟兵の話では、色んなトラップが出番を待っているらしいが……。
ヒイラギの通過に合わせて、毒矢の仕掛けが作動する。
しゅぱっ。
「……おっと眩暈が」
持病でよろけた振りをして、さりげなく回避。こっそりサイコキネシスを操って、矢の軌道をずらしたのである。
その後も迫りくる、ちまちまとした罠たち。しかし一向に、ヒイラギを仕留める事はできない。どこかで見ているはずの黒幕も、ぐぬぬとフラストレヱションを溜めているに相違ない。
寝室のある二階へ続く階段の下、頭上には豪奢なシャンデリア。
ここだ。ヒイラギはおもむろに足を止め、ひざを折った。
(「この辺……もう少し右かな」)
先ほど同様、激しく咳込みながら、うずくまるヒイラギ。シャンデリアの直下になるよう場所の微調整も怠らない。
そして。
天井のシャンデリアが落下して来る。満を持して。
がしゃぁぁん!!!
けたたましい破砕音が、館じゅうに響き渡った。
摩那や初雪、女中が駆け付けると、そこにはシャンデリアの下敷きになったヒイラギの姿があった。
潰れたトマトのように、赤い飛沫が床を濡らしている。
女中の悲鳴を聞きながら、ヒイラギは顔が隠れてよく見えないのをいいことに、こっそりニヤリ。
痛いのは嫌なので、念動力でちょぃっ、と干渉。血糊もいい感じに広がって、ベストな死に方だと自負するヒイラギであった。
「なんちゅう惨いこっちゃ……けど、いまごろ真犯人は一人でおるはずや! 捕まえてくるで!」
「あっ」
そう言って初雪が飛び出した。向こう見ず探偵現る。
ちらり、後ろを振り返り、
(「誰も追いかけてけえへんな」)
頑張って死んでこいよ、健闘を祈る。そう送り出されているような気がした。
廊下を、壁を、注意深く見回しながら、進む初雪。
「ここや、ここにおるはずなんや……」
不審人物ばりにキョロキョロしていた初雪の背後に、すいーっ、と現れる1つの気配……。
ざくっ!
犯人を振り返った初雪は、双眸をあらんかぎりに見開いた。人影の手には、果物ナイフ。そしてその顔は……。
「お、お前やったん、か……!」
ばたり。
犯人の気配が遠のいたところで、
初雪は、渾身の力を振り絞って、血文字を書き残した。
これぞダイイングメッセージ! 凝り過ぎて、何やら象形文字めいてしまったが、まあそこは謎めいていていいんじゃないでしょうか。いい仕事した!
相次ぐ2人の死は、摩那と女中によって確認された。
「これはダイイングメッセージ……」
「私、ウィギンシティ様にお知らせしてまいります」
「では私も行きます」
「えっ」
ちょっと嫌な顔をされたが、結局摩那の同行は許可された。
「ウィギンシティ様、ご無事でございましょうか? ……ウィギンシティ様?」
クネウスの部屋をノックする女中。事件を報せに来たと見せかけて、罠に引っ掛かったか確認する算段だろう。
クネウスの返事がないと知ると、がちゃり、入室する摩那と女中。
「きゃああ」
女中が、絹を裂いたような悲鳴を上げた。クネウスの死体を目の当たりにして。
よもや、巧妙に設置された『サーチドローン』によって証拠画像まで撮影されているなど、知る由もない。
「このような満足なお顔で、おいたわしや……自分が死んだこともご存じないまま逝かれてしまったのでございましょう……」
ようやく少々平静を取り戻した女中が、クネウスの死に顔を見て、感想をもらした。
「なんという事でしょう」
相次いで落命する招待客達。摩那は、呆然と呟く事しかできなかった。
推理してくれそうな探偵を失い、まるで解決の糸口も見えない絶望的な状況。
「この館は呪われている!」
摩那が、突然駆けだした。こんな館にいたら命が幾つあっても足りない!
普通に考えて「もうコイツ助からないなムーブ」であるが、引き止めるものは誰もいない。
幸か不幸か、この館は、街はずれにある。橋が落ちれば陸の孤島、という奴ではない。電話線は十中八九切られていると思うけど。
そして、摩那が扉に手を掛けた。
この先に希望が待っている。あと一歩で、この不条理な殺人劇から逃れられる……そんな体で表情に希望を浮かべた瞬間。
ごん。
「きゅう」
摩那は倒れた。後頭部に、強い衝撃を受けて。
その傍には、何処からともなく振って来た植木鉢が、転がっていたという。
成功
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絶龍・しれゑな
【アドリブOK】
ふむふむ、意外とくつろげるお部屋でござゐますね。
監視する写し身の機械がないか、罠が仕掛けられてないか
ひとまず探っておきましょうか
内側のドアノブに毒針がありますねゑ。
この程度でわたしが打てるとでも。
…そんな余裕を見せて眠るフリ。
ベッドに眠ってしばらくすると下から飛び出す槍の仕掛けがあり…
それもわかっております故
精々楽しげに倒れてみせましょう。
一応ユーベルコヲドで耐久力を上げておくつもりです。
雨咲・ケイ
さて、ここからが本番というわけですね。
【POW】で行動します。
先程当たりを付けた怪しげな場所に、
一人で高揚したそぶりで向かいましょう。
好奇心のせいで殺されちゃう役ですね。
罠はやはり釣り天井とかじわじわと死に至らしめる系
でしょうか。
「ま、待ってくださいッ!
私には家族が……命より大事な義妹が
いるんですッ!
今日も洋館と聞いて羊羹と勘違いしてた
お茶目な娘なんですッ!
私が死んだら義妹がどんなに悲しむか……」
と気力を振り絞り情に訴える命乞いをします。
そして最後に
「私は高揚感の為に命を落とすのですね……。
そういえばこの館の名前は……」
と言いかけた所で死んじゃう方向でいきましょう。
罠は体力で何とか凌ぎます。
イリス・ローゼンベルグ
欠損歓迎
ようやくこの下らない茶番も終了と言ったところかしら……
さて、一体どうやって死にましょうか、出来れば派手にしたいところね
例えばピアノ線や飛び出してきた剣に切り刻まれるとか
そういう物理的なトラップが分かりやすくていいわ
一人で洋館をうろつきつつトラップ発動まで待機
恐怖感を出すために1回目のトラップは負傷しながらもギリギリ回避して
その後、悲鳴を上げつつ半狂乱で逃げようとしたところを2回目のトラップで死亡という流れに出来ればベストね
それと私の体は擬態だから首や腕が落ちても平気と言えば平気だけど……
最悪死にそうになった時は【薔薇は散らず】で回復を行えるように準備しておきましょう
談話室にて他の客と合流した雨咲・ケイであったが、皆が離席するのに合わせ、再びの単独行動を始めた。
(「さて、ここからが本番というわけですね」)
他の猟兵も、首尾よく『死んでいる』ようだ。ケイも、遅れを取るわけにはいかない。
先程、舞踏会の間に当たりを付けた怪しげな場所に、1人、赴く。何とも高揚した素振りで。
其のほとばしる好奇心が、残酷な結末を手繰り寄せると知りながら。
皆と別れ、あてがわれた寝室を訪れた絶龍・しれゑなは、部屋の四方を見渡した。
「ふむふむ、意外とくつろげるお部屋でござゐますね」
ソファの柔らかさたるや。ダメになりそう。
しかしてしれゑなの黒瞳は、油断なく観察する。監視装置の類いがないか、罠が仕掛けられていないか。
……おやおや。
(「内側のドアノブに毒針がありますねゑ」)
捻れば最期、死出の旅。
けれどこの程度でわたしが打てるとでも、と余裕をにじませ、ベッドへと。
なんとまァ、天蓋付きの豪奢なベッド。ゑも言われぬ心地よさ。
しれゑなは準備を整え、ベッドに横たわる。
これだけ広ければ、仕掛けの1つや2つ、仕込むのは容易かろう。横たわった者をサンドイッチにして挟み殺す事さえも。
……いささか豪快過ぎるか。あと絵面がえぐい。
そして、イリス・ローゼンベルグもまた、独り。単独行動に次ぐ単独行動。黒幕もさぞお喜びであろう。
(「ようやくこの下らない茶番も終了と言ったところかしら……」)
夜ゆえ若干の不機嫌がつきまとうが、今は抑えて。
黒幕は、殺人計画が順調に進んでいると信じているはず。実際、被害者の数は増えるばかり。減ったら怖い。これから減るけど。
さて、一体どうやって死にましょうか、とイリスは思考という名のメリィゴヲラウンドを巡らせる。折角のチャンスだ、出来る限り派手に散って見せたいものだと。
となれば、矢張り物理。一目で死を喧伝出来る。
其の頃ケイは、死に場所にたどりついていた。
「確か此処でしたね……」
ケイが足を止め、仕掛けのある床板に触れていると。
がこん。
壁の向こうから響いた駆動音と共に、何かが動き始めた。
ケイが顔を天井に向ければ、天井が先ほどより近い。近づいてきている。
釣り天井の罠であった。
じわりじわり、真綿で首を締めるように。刻一刻迫りくる死。
「ま、待ってくださいッ!」
ケイは叫んだ。何処かで様子をうかがっているであろう、殺人者へと。
「私には家族が……命より大事な義妹がいるんですッ! 今日も洋館と聞いて羊羹と勘違いしてたお茶目な娘なんですッ!」
ぴくん、と、一瞬天井が止まったような気がしたが、気のせいだろう。
「ほら今同情したでしょう? 私が死んだら義妹がどんなに悲しむか……」
ケイ渾身の命乞い。
しかし、天井は止まらない。
情に訴えかける作戦も通じない。ケイは悲嘆にくれ、諦念に支配された表情で、天井を見上げた。
「私は高揚感の為に命を落とすのですね……。そういえばこの館の名前は、こうよう……」
ずぅん。
嗚呼、何と無情。
ケイと其の駄洒落は、潰された。
「ふふふ」
どこからともなく響く笑い声。殺人計画の成功という美酒に酔って。ゆえに声の主は気づかなかったはずだ。落ちた吊り天井が、ぎし、と動いた事に。
震動は、離れた場所のイリスにも伝わっていた。そして、其の足に違和感を覚えた直後。
しゅばっ!
左右の壁にスリットが開いたかと思うと、多数の剣が飛び出してきた。
「きゃあああ!」
ぺたり、とその場にへたり込んで見せるイリス。
衣服が裂け、のぞく肌から血がにじむ。すんでのところで落命こそ避けたものの、あられもない姿と、恐怖に歪んだ顔を晒す。
「い、一体なんなのっ!? 私達がこの館に招かれたのは、皆殺しにするつもりで……!」
イリスの顔が、蒼白となる。事此処に至って、真相に漸く辿り付いた風を装って。
悲鳴を振りまき、半狂乱の様相で、イリスは廊下を駆ける。足がもつれて、上手に走る事もできないで。
「誰か、たすけ……」
虚空に伸ばした手。
懇願の言葉が、最後まで紡がれることはなかった。
ごとり。
床に落ちる塊。それは、他ならぬイリスの首であった。
下手人は、廊下に張られたピアノ線。頭部を失った体が、赤の噴水となる。
ばたり。イリスの亡骸が、血の海に沈んでいく。
「ふふふ」
不気味なる笑い声が、葬送曲のように流れて消えた。……イリスの肉体が擬態に過ぎぬとも、そしてすぐさま修復可能であるとも知らず。
(「……どうやらまた1人『逝かれ』ましたわね」)
ベッドの上、瞳を閉じたしれゑなが、内心にて不可視の笑みをこぼした。
次は自分の番。しれゑなが見破ったベッドの仕掛け……『死』掛けと言うべきか……は、ベッドにかかった重量と時間経過によって起動する、槍の仕掛け。
承知済み、というのも、それはそれで味わいがあるもので。
ぐさり。
鋭き槍が、しれゑなの体を貫いた。
「絶龍さま」
ノックと共に、女中の声がする。
返事がないのを確かめ、がちゃり、と室内に女中が入って来る。
「ああっ、絶龍さま!」
駆け寄るなり、女中は悲嘆の声を上げた。先端を赤く染めた、凶器にして狂気の先端を見て。
「……嗚呼、おいたわしや絶龍さま……ふふふ」
(「今、語尾が可笑しくなりましたね」)
馬脚を表すとは、まさにこのこと。
謎めく謎に心身を昂らせたしれゑなは、槍の一撃でさえも絶命する事はないのである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『劇場型犯罪者』
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POW : 夜闇に包む(ダアクナイト・クレイドル)
【翻したマントの内側】が命中した対象に対し、高威力高命中の【強固なワイヤーロープでの束縛】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 絢爛分身(アメイジング・イリュウジョン)
【レベル×5体の、自身と同じ姿の偽物】の霊を召喚する。これは【マントの中に隠された閃光弾】や【電流を流す非殺傷の光線銃】で攻撃する能力を持つ。
WIZ : 劇場型犯罪(シアトリカル・クライム)
【人々の注目を集めるド派手な大犯罪】を披露した指定の全対象に【大犯罪の引き立て役になりたいと言う】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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「ふふふ、誰もいなくなったわネ」
館じゅうから、命の息吹が消えたのを確かめ。
女中が、其の衣服を脱ぎ捨てた。
その下より現れたのは、シルクハットにマントの怪人少女。
「ワタシの内なる怨念が訴えているワ。世間に見向きもされず孤独に逝った、憐れな少女小説家の無念が」
怪人少女は、独り、語る。
此れは復讐。自らの文才を否定した、世間への復讐なのだと。
「筆が届かぬならば、真に起こしてくれよう其の事件、ってネ。殺しは好きではないけれど、センセヱショナルさの為には仕方ないワ」
甲陽館殺人事件は、すぐに世間をにぎわすだろう。むしろ自分で広める。
しかし此れは、始まりにすぎない。
少女小説家が書き綴った架空の事件を、次々現実のものとしていく。自らの才能を認めなかった世間を、掌で弄んでくれるのだ……!
「さァ、ショウの始まりヨー……!」
むくり。
あちこちで、死体が動き出した。
「なっ、殺したはずだヨ? どうして生きて?」
否、そもそも誰も死んでなどいない。全ては影朧を欺く芝居に過ぎぬ。
致命傷を避けたり、ユーベルコヲドで修復したり、物理でどうにかしたりとその方法は様々だが、とにかく猟兵は誰1人として落命していなかった。
あからさまに、動揺をにじませる怪人。
「ま、マァ、一寸上手くいきすぎだなーとは思ってたのヨ! なら、もう一度殺してあげるワ。今度こそしっかり冥府へ送り届けてやるから、覚悟なさいナ!」
ばさぁ、と、怪人少女が黒マントを翻した。
さあ、この殺人劇に幕を降ろすのだ……!
クネウス・ウィギンシティ
アドリブ&絡み歓迎
「所定時間経過、システムリブート……ああ、よく寝ました」
近くに落ちている機械化した自分の腕を肩に嵌め直します。
【POW】
「この身は機械、真に殺したければ重機の一つや二つ持ってくるべきでしたね」
●突撃
「では、始めましょうか」
『蒸気マシンガン』を弾幕を浴びせながら突撃します。
「CODE:LUCIFER。ブースト展開。仕掛ける!」
●UC対抗
敵のUC『ワイヤーロープでの束縛』を無抵抗で受け入れます。
「強化外骨格、強制転送……束縛の上から身に纏う」
強化外骨格は遠隔【操縦】。
●攻撃
【スナイパー】として見計らったパイルバンカーの【零距離射撃】で射し貫きます。
絶龍・しれゑな
【アドリブOK】
くふふ、あなたの用意した謎は堪能させてゐただきましたが
これでは見向きもされぬのは道理でござんすねぇ
その御方にお伝え下さゐな。江戸川乱歩殿に百万回ご教授頂きなさいとね
あれでは犯人が女中以外居なゐではござんせんか?
【戦闘】
戦闘におゐてはユーベルコヲドで自分の体を謎食いへ変貌させますよ
敵の攻撃を受けようとも束縛は能力ですり抜けられましょう。
謎食いとして相手の仕掛けたトリックを見事推理したうえで
攻撃を仕掛けて倒しましょう。
黒河内・柊夜
ハハハハハ!!我が魂の同胞ヒイラギもよくやるようになったではないか!だが身体のあちこちが痛いぞ!少しは我の事も考えぬか!!
文才を認められたくば何故同じ手で挑まぬのか、些か疑問だが……己が欲望の為に命を弄ばんとする愚か者に裁きの刻だ!
マントに触れねば良いのなら動きを止めるのが手っ取り早いだろうな。
まずは都合よく側にあったシャンデリアを掴み投擲、その際黒針を紛れさせておく。重いが気合いでスタイリッシュに行くぞ。
眩い輝きは目くらましにもなろう。
当たらずとも我が力によって針を飛ばし不意を打つぞ。
針さえ当たればその毒は汝を蝕む!その隙に背後に回りマントごと切り裂いてくれようではないか!
(アドリブ歓迎)
イリス・ローゼンベルグ
もう擬態の必要もなくなったわね
上半身だけを残して体のほとんどを【茨の触手】に変形させ、戦闘を開始する
「乙女の首を落とすなんて……随分な事をしてくれたじゃない」
その借りは返してもらうと嗜虐的な口調で告げながら
複数の触手を鋭く尖らせ、【毒使い】【マヒ攻撃】を使った【串刺し】攻撃で相手を貫く
相手の拘束攻撃に対しては自身の【致死の体液】を使用
ワイヤーを腐食させ、拘束から抜け出すと共に【薔薇は散らず】によって負傷を回復する
「ふふっ……やっぱりあなたは三流だわ」
「計画が失敗した時点で、既にあなたは負けているのよ」
怪人少女は、其れを目撃した。見てしまった。
むくり、と、シャンデリアの下から、黒河内・柊夜が立ち上がるのを。
「ハハハハハ!! 我が魂の同胞ヒイラギもよくやるようになったではないか!」
怪人もかくや、という高笑いが、館に響き渡る。なお此処からは柊夜がお送りしよう。満を持して。
「だが身体のあちこちが痛いぞ! 少しは我の事も考えぬか!!」
腰をとんとん。
「さて怪人よ! 文才を認められたくば何故同じ手で挑まぬのか、些か疑問だが……己が欲望の為に命を弄ばんとする愚か者に裁きの刻だ!」
柊夜が宣戦布告した直後……偽装せし死の眠りより目覚めた絶龍・しれゑなが、怪人少女の元へと歩み寄った。
「くふふ、あなたの用意した謎は堪能させてゐただきましたが、これでは見向きもされぬのは道理でござんすねぇ」
筋書を粉微塵にされた怪人少女へ、しれゑなが笑いかける。
「その身の内に眠る御方にお伝え下さゐな。彼の江戸川殿に百万回ご教授頂きなさいとね。あれでは犯人が女中以外居なゐではござんせんか?」
「ぐぬぬ……」
しれゐなによる指摘に、今更気づいた……そんな動揺を隠すように、怪人少女はマントを口元まで持ち上げた。
そして其のまま……身を翻したのだ。
「荒事は得意ではないのよネ……! 2人同時なんて御免だワ」
猟兵から逃れ、廊下を行く怪人少女。
行く手には、イリス・ローゼンベルグの亡骸。怪人少女は其れを軽々と飛び越えようとして……足首をつかまれた。
「きゃっ!?」
「もう擬態の必要もなくなったわね」
床に落ちていたイリスの首が、言葉を発した。
思わずたたらを踏む怪人少女の目の前、イリスの身体が起きあがると、首を取り付け直す。
「な……それは反則だワ!」
動揺する怪人少女をよそに、イリスは変貌を遂げていく。上半身は人のまま、残る部位のほぼ全てを茨の触手へと変形させたのだ。
「乙女の首を落とすなんて……随分な事をしてくれたじゃない」
其の借りは返してもらうわ、と、イリスは嗜虐的な口調で告げた。
殺される側から殺す側へと。立場を逆転させたイリスの瞳に、怪人少女は射すくめられる。
しかし我に返ると、すかさず近くの部屋に逃げ込んだ。
ちょうどそこは、クネウス・ウィギンシティの寝室。
「ここに隠し通路があるのヨ……!」
「所定時間経過、システムリブート……ああ、よく寝ました」
何事もなかった……どころか、質の良い睡眠を経て覚醒したクネウスの姿に、怪人少女は何度目かの驚愕を露わにせざるをえなかった。
「そんな……サイボーグだから助かったって、ちょっとズルくナイ!?」
「事実は小説より奇なり、と言うでしょう」
怪人少女の反論をさらりとねじ伏せながらクネウスは、近くに落ちていた自らのサイボーグアームを拾い、肩に嵌め直した。
「この身は機械、真に殺したければ重機の一つや二つ持ってくるべきでしたね。では、始めましょうか」
「ぐう……けれど殺人劇は成ったワ! 兎に角殺せば結末は同じヨ!」
銃声と共にクネウスの部屋から飛び出してきた怪人少女を迎えたのは、しれゑなだ。
「さあ、此処からは舞踏会でなく武闘会の始まりでござんす」
しれゑなの体が、変貌を遂げていく。ユーベルコヲドの発動である。
面妖なるその姿は『謎食い』。謎も敵の正体も見破ったのなら、しれゑなが為すべきは、其れらを喰らう事のみ。
ひらりひらりと、マントが舞うたび、猟兵は惑わされ、縛り付けられる。
しかし、しれゑな……『謎食い』を止める事はあたわず。するりするり、とワイヤーの間隙を縫って、その向こう側へと進みゆく。
「そ、その姿、私より怪人らしいじゃないノ!?」
怪人少女の困惑すらも、しれゑなにとってはエッセンス。
「どうやら其のマントを翻さなければ、ワイヤァを出せなゐようでありんすね?」
「う……!」
ワイヤーという名のトリックを解き明かし、しれゑなによる麗しき反撃が、怪人少女へと届けられた。
変化した腕が、怪人少女に食らいつく。
相手が謎を提供する存在である限り、しれゑなにとっては影朧でさえも恰好の捕食対象。屈服する道理は、欠片も在りはしないのだ。
しれゑなが見破ったように、マントに触れねば良いのなら、動きを止めるのが手っ取り早い。
柊夜は、側にあったシャンデリアを掴むと、怪人少女目がけ、投擲した。スタイリッシュに。
がしゃああんん!!
甲高い破砕音をまき散らし、シャンデリアと怪人少女が激突した。
「所詮ただのシャンデリア! そんなもの、影朧には効かないワ!!」
シャンデリアの残骸を払いのけ、怪人少女が、平気な顔をして現れる。相手はオブリビオンだ。
だが、柊夜は其れ以上に余裕しゃくしゃくであった。
「愚か者が! ただのシャンデリアを意気揚々と投げる猟兵が何処にいる!」
「なっ、ではこれは目くらましの類……!」
怪人少女がふらついた。その肌に突き刺さったもの、それは、黒い針だった。
見よ、と勝ち誇る柊夜。
「針に宿した毒は汝を蝕む! その隙に背後に回り、マントごと切り裂いてくれようではないか!」
「全部言ってしまったわネ! 予告攻撃なんてかわすのは容易い
……!?」
容易くはなかった。
黒針に秘められた毒が、怪人少女の肉体を蝕んでいたからである。
「既に生じた結果を述べたにすぎぬ! ハハハハ!」
哄笑と共に、柊夜は怪人少女の背後に回り込むと、そのマントごと体を切り裂いた。有言実行であった。
きりきり舞いさせられる怪人少女へと、クネウスは突撃した。『蒸気マシンガン』による弾幕を浴びせながら。
マントを翻し、守りとする敵に、クネウスは全力で攻撃を仕掛けた。
相手を一か所に釘付けにすると、即時近接。
「CODE:LUCIFER。ブースト展開。仕掛ける!」
零距離から繰りだしたのは、パイルバンカー! 射手として狙いすましたその一撃は、影朧のマントごと体を貫き、杭を射出。一度では終わらず、二度、三度!
「殺しきるのなら最低でもこれくらいは欲しいところでしたね」
「ふ、ふふっ、飛んで火にいる夏の虫、ってネ!」
激痛に耐えつつ、怪人少女がマントを広げた。
「ダアクナイト・クレイドル!!」
赤きベヱルがクネウスの視界を包んだ瞬間、その全身をワイヤーロープが束縛した。
だがクネウスは、ほぼ無抵抗で、四肢の自由を明け渡した。
「どういうつもりかしラ?」
「強化外骨格、強制転送……束縛の上から身に纏う」
クネウスが呼び出したのは、もう1つの体ともいえる強化外骨格。遠隔操縦したそのパワアをもってして、怪人少女へと一撃を食らわせたのである。束縛をものともせず。
「仕方ないわネ。今度は、こちらからいかせてもらうワ!」
受け身を取って立ち上がった怪人少女が、マントでイリスの視界で撫でた直後、ワイヤーが飛来した。はからずも、イリスの触手への意趣返しの形だ。
ワイヤーが、イリスの体を拘束する。それだけでは飽き足らず、少女が、ぎりり、と力を込めれば、体表に血がにじむ……。
「なッ!?」
しゅうしゅうと音を立てて腐食を始めたのは、ワイヤーの方であった。イリスの致死の体液が、拘束を解き放っていく。
ワイヤーを通じて生命力を奪取、イリスの負傷が回復されていく。
そして、反撃。
鋭く尖った複数の触手が、怪人少女の命を狙う。反射的に翻したマントに穴を穿つと、その肉体をも貫通した。
「こ、このくらいで怪人は死にはしないワ」
言葉とは裏腹に、怪人少女の口調には余裕の欠片も無い。
イリスの触手に含まれていた毒によって其の肉体は麻痺し、自由に動かせなくなっている。
「ふふっ……やっぱりあなたは三流だわ」
追いつめられていく怪人少女の醜態を見て、イリスが笑う。
「計画が失敗した時点で、既にあなたは負けているのよ」
大成功
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雨咲・ケイ
死んだふりも中々大変ですねえ……。
煎餅になるかと思いました。
さて、お遊びはここまでです。
【POW】で行動します。
かつての貴方は本当にこんな事がしたかったのですか?
思い出してください……。
初めて小説を書き上げた時の事を……。
作品を産み出す喜びを……。
序盤はアリエルの【投擲】やルミナスの
サイキックエナジーで攻撃しつつ、
敵の動きをよく見ていきましょう。
そして【シールドバッシュ】で隙を作り
【魔斬りの刃】を撃ち込みます。
敵の攻撃は【盾受け】で凌ぎますが、
ワイヤーロープでの束縛を受けてしまった場合は、
【オーラ防御】でダメージを最小限に抑え
【魔斬りの刃】で切断します。
アドリブ・共闘歓迎です。
黒木・摩那
うらめしや~
せっかく生き返った?のです、そのままゾンビっぽくいきましょうか。
頭には割れた植木鉢と血糊付きのままで行きます。
生前は小説家だったそうですが、今回の計画を見ると準備は良かったのですが、
詰めが甘かったですね。
この際ですから、怪奇小説で再デビューを図ってはいかがでしょうか?
ずるするとルーンソードを引きずって、参戦します。
UC【偃月招雷】で帯電して攻撃力を高めます【属性攻撃】【破魔】。
植木鉢のお返し、とばかりに思いっきり、打ち込みます【衝撃波】。
飛び道具は【念動力】で軌道を逸らします。
植木鉢、めちゃ痛かったんですよ!
夏川・初雪
アドリブ連携歓迎
ふはは、驚くその顔が見たかったんやで!
悪党の企みを阻止し、殺人劇を台無しにするのが探偵や!
……こんな台無しの仕方は早々ないけどな!
戦う時は相手のマントの動きに注意や
中に何を仕込んどるか分からんからな……
なるべく当たらんように【残像】を生み出しつつ相手へと接近するで
上手く接近出来たなら【怪力】を乗せたUCの一太刀で一刀両断や!
体を直接斬れなくても、マントやら仕込んどる道具やらを切り裂けたらええんやけどな
そら、君にも色々思う所はあるんやろ
でも人殺しはあかんで、そんなの浪漫も優雅もあらへんわ
それなら生まれ直してもっかい文筆に挑んでみたらええ
自分、君の書く小説読んでみたいわ
怪人少女は、館の中を転戦していた。
しかし、其の行く手をあるものが塞いだ。落下したままの吊り天井だ。片付けは大事……!
だが。
ごうん、と重々しい音を立てて、吊り天井が持ち上げられた。その下から姿を現したのは、雨咲・ケイである。
もちろん、命に別状はない。なんら、ない。
「死んだふりも中々大変ですねえ……。煎餅になるかと思いました。さて、お遊びはここまでです」
ケイは、怪人少女に視線を向ける。
「かつての貴方は本当にこんな事がしたかったのですか? 思い出してください……。初めて小説を書き上げた時の事を……。作品を産み出す喜びを……」
「……っ!」
怪人少女の顔に、あからさまな動揺が浮かぶ。
ケイは其れを見逃さず、小盾アリエルを投擲した。我に返った怪人少女が、かろうじて盾を弾く。
相手がひるんだ。ケイは間合いを詰めると、ブレスレット『ルミナス』で増幅されたサイキックエナジーを放射した。舞踏は不得手なケイだが、武闘ならば話は別。
マントでケイの攻撃をしのいだ怪人少女だったが、そのままの姿勢で硬直した。
死の淵より復活した夏川・初雪を、ケイの背後に見つけたからだった。
「ふはは、驚くその顔が見たかったんやで!」
勝ち誇る初雪。全ては、此の時のための仕込みだったのだから。
「バレんように巧妙に残したダイイングメッセージ! ……え、フツーに読めんかったって? いやむしろ成功やな!」
初雪は、びしい、と怪人少女に指を突きつけ、
「悪党の企みを阻止し、殺人劇を台無しにするのが探偵や! ……こんな台無しの仕方は早々ないけどな!」
怪人対探偵。事件に於いて、これ以上ない構図ではないだろうか。
「猟兵がこんなに死んだふりの得意な連中だとは知らなかったワ! ……はっ」
怪人少女が、自身の背後に、新たな気配を感じて振り返れば。
「うらめしや~」
「ひゃああ!?」
長い黒髪の女が立っていた。
ゾンビめいた挙動の女の正体は、死んだはずの黒木・摩那であった。頭には割れた植木鉢と、血……血糊を付着させたままで。
「生前は小説家だったそうですが……今回の計画を見ると準備は良かったのですが……詰めが甘かったですね……」
「どうして喋り方が暗いノ!? 怖い!」
「怨みです」
怨みだった。
慌てて怨みの化身……摩那から飛びのくと、怪人少女は反撃に移った。
初雪は、相手のマントの動きを注視する。其れが攻撃の起点になっている事は既に承知しているし、他に何を仕込んでいるか知れたものではないからだ。
「私のマントは素敵なマントヨ!」
ばさっ、と薙ぎ払うように振られたマントを、初雪は前方に飛び込み前転する形で回避した。床を蹴って反転、再び怪人少女へと向かう。
残像を作ってマントによる篭絡から逃れながら、接近する初雪。
「……今や!」
かっ、と、初雪が目を見開いた。
サムライブレイドを抜刀しながら駆け寄ると、怪力をこめて、渾身の一太刀!
はらり、と。真っ二つに切断されたマントが、床に落ちる。
ばらり、と。マントの内に仕込んでいたツールまでもが切り裂かれる。
「ああッ、出番を待ってた閃光弾とか光線銃がッ!」
「ざまあないですね……」
ずるずるとルーンソードを引きずりながら。
生ける屍の如く自分へと迫りくる摩那に、怪人少女は、しゃばっ、と颯爽と攻撃に移る。
対する摩那は、緩慢な動きで剣を持ち上げると、力任せに叩きつけた。ゾンビ的ムーブ。
床を打った衝撃が、周囲に吹き荒れる。
「今度は外しませんよ」
摩那が、怪人少女を凝視する。
ずるり、切っ先で床を削るルーンソードが、ばちり、と音を立てた。帯電した刃を全力で振るい、怪人少女に打ち込んでいく。
「く……忘れたのかしら、私の起こした洋館連続殺人事件! 死ななかっただけで華麗な犯罪だったはずヨー……!」
怪人少女が、大仰に両腕を掲げ、摩那に自らの犯罪を喧伝した。
「さあ、私の劇に彩りを添えなさい……!」
「残念ながら、華麗と呼ぶには程遠いですね」
怪人少女の言葉に心を振るわされることもなく。
摩那の動きは、徐々に速さを増していく。ゾンビムーブを脱ぎ捨てて。
「な、なんなノ? この一撃一撃にこもった情念は……」
「植木鉢、めちゃ痛かったんですよ!」
摩那の訴えは、切実であった。
そしてケイは、手元に戻って来たアリエルを構えて突撃。とっさに防御態勢をとる怪人少女目がけ、手刀を繰りだした。
「そうはいかないワ!」
怪人少女が、華麗にマント……の切り裂かれた残り……を翻した。
其れを振り払ったケイ目がけ飛び出したワイヤーが、ケイの体に絡みついていく。
「やれやれ、困った人ですね」
だが、ケイはその身を淡いオーラの輝きで包むと、ワイヤーを弾く。そして、手刀に宿る光の刃で切断。
其のまま相手の懐に飛び込んだケイは、光の刃で、怪人少女を切り裂いた。
「そんな……私の筋書が」
とさり。床に、シルクハットが落ちた。
その場にくずおれる怪人少女。どうやら、幕が下りる時が来たようだ。
「こんなところで終わるなんて……」
「そんなあなたにアドバイスを……この際ですから、怪奇小説で再デビューを図ってはいかがでしょうか……?」
無念にさいなまれる怪人少女に、摩那が語り掛けた。
「再デビュウ……?」
続けて、ケイも訴える。
先ほど自分の言葉に心揺り動かされたのは、犯罪などという形ではなく、小説で世間をあっと言わせたいという初心を思い出したからだろう、と。
「そうや、君にも色々思う所はあるんやろ」
しゅっ、とサムライブレイドの血を払いながら、初雪も言う。
「でも人殺しはあかんで、そんなの浪漫も優雅もあらへんわ。それなら生まれ直してもっかい文筆に挑んでみたらええ」
初雪は、消えゆく怪人少女に微笑みかけると、
「自分、君の書く小説読んでみたいわ」
「そう……そうネ……次があるのなら、きっと……」
初雪達の言葉に鎮魂されたように。
怪人少女が最期に見せた表情は、ひどく穏やかだった。
かくして、甲陽館を舞台とした殺人劇は、無事終幕を迎えた。
猟兵の活躍は人々の知る処となり、しばらくの間甲陽館は、ちょっとした観光スポット的なものになったとかならないとか。
大成功
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