古びた洋館ではファッションショウが開催されていた。
堅苦しいものではなく、それぞれが好きな服を着て互いに見せ合おうというレベルのもの。ついでのイベントとしてちょっとした宝探しが企画されている。増築を重ねて奇妙な迷宮のようになった洋館にはうってつけの企画だ。
流行りの衣装に胸をときめかせる少女、少しだけ背伸びした硬い格好に背筋を伸ばす少年、一張羅を引っ張り出して熱心に髭の手入れをする中年男性や主張しすぎることはないものの華やかな装いの老女、エトセトラ、エトセトラ。
全ての人物が鮮やかな深紅を取り入れていた。先刻までは淡い色から派手な色まで揃っていたというのに、何故そうなってしまったのか。
ワインセラーの床に割れたワイン瓶が転がっている。その脇で男性が死んでいた。
鍵のかかった部屋でテーブルに突っ伏した老女の頭は陥没していた。
ホールで少年が背中から包丁を生やしていた。少女は階段の下で首を異常な角度で傾げて瞬きもせずに倒れていた。
天鵞絨の絨毯が赤く染まっていく。動く者のいなくなった洋館の中――食堂の柱時計もまた、沈黙を続けていた。
「――などという事件が起こらないよう企画自体を中止にしたのだが、それではオブリビオンが倒せないので皆に行ってきて欲しい」
ブラックタールの幽暮・半月(一葉・f00901)は普段のクールぶった所作はどこへやら、わくわくが隠しきれない口調であった。
上記のような事件は未然に防がれた。が、犯人――オブリビオンを倒さなければいずれ同じことが起こる。
「サクラミラージュではオブリビオンではなく影朧と呼ばれているようだな」
誰もが知っていることを嬉々として語るブラックタールをその場の猟兵がせっつくと、クールぶろうとして失敗している声で半月は概要を話し始めた。
「元々の企画ではファッションショーをして、洋館内に隠されたお宝を探せといったものでな。お宝と言っても企画者が用意した景品だが」
そんなただの遊びであったのに、影朧が入り込んで事態は一変した。宝探しが始まると次から次へと人が殺害されていったのだ。
犯人は影朧なのだが、内部の人間にそんなことは分からない。互いに疑心暗鬼になり結束して安全を図ることもできず、迷宮のような洋館の中で脱出もできずに死んでいった。
「猟兵の皆には死亡フラグを立てながらファッションショーをして宝探しをして欲しい」
ショウでは好きな服を着て練り歩いてもいいし、ショウに馴染めずこんなところにいられるかと部屋に籠ってもいいし、シャワーを浴びて準備をしててもいい。
ショウの時間帯に殺されそうな雰囲気を醸し出すと、殺害段階に反映されやすいようだ。例えば密室に籠っていれば密室殺人、知己と示し合わせて口喧嘩を始めたりすると喧嘩相手に容疑が降りかかるような殺され方をする、と。
時間が来たら宝探しが始まる。各部屋やホールに柱時計が設置されて、一時間ごとに一斉に鳴るから開始時間に迷うことは無いだろう。
屋根裏部屋や地下室はともかく、人一人で一杯の小部屋や階を飛ばした階段などよく分からない造りをしている。どこかの部屋に地図があるらしいが、それも迷路の中だ。
答えは分からなくて構わない。
「適当に歩いてても死ぬから殺されそうになったら死んだふりをしてくれ。勿論影朧は全力で殺す気で来ているから、死なないような工夫は必要だな」
影朧が仕掛けてくるトリックはワイヤーで吊るされた彫像が後頭部に飛んで来る、シャンデリアが落ちてくる、人の脚では届かない位置に吊るされる等見た目が派手な死に方をするトラップのようなものが多い。
血糊は用意しておいたぞ、とドヤ声の半月である。
「全身死んだら影朧が現れるから倒してくれ。お宝のある部屋に出るらしい」
場所が分からなくても事前に分かった者と共有してよい。きっと迷わず着けるだろう。
「では皆、頼んだぞ。」
尚、宝探しのヒントは以下である。
『木の主、日のさす寺で言づてを十の黒い犬からうける』
赤城
赤城と申します。推理ものは好きですがトリックを考えるのは苦手です。
推理ものとは関係ありませんが江渡貝くんはかわいいと思います(今回やるのは普通のファッションショウと宝探しですご安心ください。
辿り着いても着かなくても死ぬのでヒントを雑にしましたがお宝はOPに書いてある場所です。
今回はプレイング受付期間を設定したいと思います。
一章は10/3から、二章と三章は前の章が終わってから三日後くらいからプレイングを投げていただければと思います。
!【やること】!
一章:如何にも殺されそうな推理ものっぽい死亡フラグを立ててください。フラグになりそうなら密室に籠ってショウの準備してますとかも大丈夫です。
服はフォーマル系でお任せとかでも大丈夫です。ご本人のものなら○月◆日納品の△絵師様のBUの格好で~とか参照します。外部URLは参照しません。
二章:ヒトコロスイッチで死んだふり。ダイイングメッセージとか推理ものっぽいのがあるとプレイングボーナス。
血糊は何もしなくても派手に撒き散らされるのでご安心ください(?)
毒殺がいいとか殺され方は指定があっても構いません。私の読解力の問題上できるだけシンプルトリックだと助かります。
三章:犯人(影朧)を倒しましょう。動機を語り出したりしますが逮捕はできません。説得すると転生してくれるらしいです。姿形は依頼TOPを参照してください。
洋館は迷路ですが何やかんやで辿り着けます。大丈夫だ問題ない。
楽しいプレイングをお待ちしています。
第1章 日常
『レッツ・ファッションショウ!』
|
POW : とにかく格好良いor可愛い服装を選ぶ
SPD : 自分が普段着ないような服装を選ぶ
WIZ : 帝都で一般的に着られている服装を選ぶ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
霄・花雫
【しゃるはなあかり】
設定はねー、3兄妹の奔放な長女かな!
お洒落に常日頃莫大なお金を使ってるから、宝探しにも意欲的
弟役の灯くんや妹役のシャルちゃんより先にお宝を手に入れたい
まあアレだよねー、目先のものに釣られて危険に飛びついて真っ先に死ぬ俗人タイプの役ってヤツ?
ばっちり和風モダンでキメて、指先まで塗ってお化粧もしっかりするよ
(お洒落にしか興味のない頭の軽そうな奔放女を【パフォーマンス】全開で演じる)
元のヒントに加え、部屋に籠った灯の言葉がヒントになった
……あたし分かっちゃったかも
ふふ、まだあの子にはナイショ!
はしゃぎながら軽い足取り
こっそりとシャルの目を盗んで、食堂の沈黙している柱時計へと向かう
シャルロット・クリスティア
【しゃるはなあかり】
普段着(蒼いベレー帽と袖なしコート)
普段から自由奔放で贅沢な姉(花雫担当)とよくわかんない兄(灯担当)の身勝手の割を食って鬱憤が溜まっている三兄妹の末っ子。
普段できない贅沢に憧れ、今回は兄姉を蹴落としてでも宝を手に入れてやりたい……って感じの設定です。
ほら、あれです。最初犯人と疑われて途中で死んでややこしくなるやつ。
ショウに同席しつつ、しかし周囲の様子を注意深く伺って宝のヒントを探します。
ショウ自体には興味はない。とにかく参加者で真実に近づきそうな人を見落とさないように。
……ん
?……。(去って行く灯とはしゃぐ花雫に、一人忌々しげに目を細め……)
……って感じで如何でしょう?
皐月・灯
【しゃるはなあかり】
普段着から、フードを脱いで赤いセルフレームの眼鏡をつける。
……この世界なら、これでも十分奇抜な装いになるんじゃねーか。
……オレは早々に場を去るぞ。
ショウなんざ柄じゃねーってのが本音だが……
花雫やシャルに合わせたキャラ設定は、
「先に答えに気付く、人間嫌いの長男」だからな。
ある程度2人と「設定どおり」に会話したら、
去り際、花雫にヒント&死亡フラグを残す。
ふん、宝探しなんざ暇なヤツがやってろ。
……本命はオレが戴いちまうがな。
……くだらねー言葉遊びだ。パーツを繋げてみろ。
その後離れ、誰もついて来ないことを確認してから、
食堂の「黙」ってる「柱時計」に向かう。
……さあ、いつでもいいぜ。
「お宝、お宝っ」
霄・花雫(霄を凌ぐ花・f00523)は左右で色合いの違う青い瞳を宝石のようにきらめかせている。装いも華やかで、サクラミラージュらしく和風をベースに洋の風合いを取り入れた。ヘアスタイルと化粧もばっちりと、爪や唇に塗られた色は発売直後の新色――といったテイスト。
「『姉貴』に謎が解けるのか?」
低い声の皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)が橙色の右目で花雫を見やった。紺のアメリカンスリーブのトップス、しっかりした固い生地のパンツにくしゃくしゃと跳ねた髪の毛。赤いセルフレームの眼鏡と完全に洋風の装いだ。
「灯もシャルロットもまだ解けたわけじゃないでしょ? あたしが一番に見つけるんだから!」
「『姉さん』も『兄さん』も落ち着いたらどうです? いつものことですけど……」
と苦言を呈したのはシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)だ。蒼色のベレー帽に同色のノースリーブのコート、やはりノースリーブのシャツに水色のスカート。全体的に制服のようにしっかりした雰囲気をしている。
今日の三人は三兄妹。奔放な姉と寡黙な人嫌いの弟、そんな二人に苦労する末っ子――という設定だ。シャルロットの一人だけ洋風な名前も、何か複雑な兄妹関係だろうと影朧に勘繰らせるに役立つだろう。
花雫は華やいだ笑顔を妹役に向けた。
「お洒落ってお金がかかるんだよ? 宝物を見つけたらもーっとお洒落できるもの!」
「そーゆーのを取らぬ狸の皮算用っていうんです」
シャルロットはジト目を作った。自分こそが蹴落としてでも宝を見つけるのだ、そして普段この二人のおかげでできない贅沢を存分に堪能するのだ――という空気を立ち上らせる。
言われた側の花雫は、動じる様子もなくコンパクトを取り出した。ずれた気がする髪飾りの位置を確認し、調整し直す。いかにもお洒落を第一にした、頭の軽そうな女に見えるように。
一方で灯は配られたヒントのカードを取り出し、謎解きに没頭しているようであった。他人のファッションに興味はない、といった風情だ。役ではなく素としてもショウといった柄ではないというのもある。
『木の主、日のさす寺で言づてを十の黒い犬からうける』
と明朝体で印字されたカードを、横からシャルロットが覗き込む。灯は薄青の左目でちらりと眺めたが何も言わない。
「しかしまあひらがなの多いヒントですね」
「…………」
返ってきた沈黙にも慣れている、と言外に肩をすくめ、他の猟兵たちの姿を観察してみた。ファッションを楽しみ、あるいは謎に没頭し、あるいは険悪な空気を出している彼らもまたヒントになるのではないかと探しているように。
髪飾りを直し終えた花雫は謎を考える素振りこそあるものの、可愛らしい装いの参加者が視界に入る度に目を輝かせる。自由な姉としての設定は忘れない。
灯は対照的に周囲へ目もくれず、じっとカードを睨んでいたが、何か気付いたように顔を上げた。
「ふん、オレは部屋に戻るぞ。宝探しなんざ暇なヤツがやってろ」
「え、兄さんはいいの?」
「……本命はオレが戴いちまうがな」
意味ありげに呟くと踵を返した。
「えーっ、どーいうことー? おねーちゃんに教えて?」
「……くだらねー言葉遊びだ。パーツを繋げてみろ」
「……ん? ……」
「あっ」
答えそのものを告げずにさっさと会場から出ていく。その後姿を花雫は見送らず、ぱちくりと瞬きをし、口元に手を当ててにんまりとした笑みを隠した。一瞬はしゃいだのを見逃さない、妹役のシャルロットはいかにも不審げだ。
「どうかしたんです?」
「ううん、なんでもなーい。私、ちょっとお手洗い行ってくる。ここで待っててね」
化粧ポーチを片手に、ステップにならないように押さえた軽い足取りで花雫は会場を後にする。シャルロットは目を眇めてじっとその様を見ていた。
「あたし分かっちゃったかも……ふふ、まだあの子にはナイショ!」
誰も見ていなくともその表情は明るく。お宝を手に入れるため、他の兄弟を出し抜いてでも見つけるのだ――と回答の地へとブーツを動かした。
一人残されたシャルロットが大人しく待っているはずもない。静かに扉を開けて慎重に廊下を進む、その姿へ影朧が視線を向けていた。
先行した灯は、宝探しのヒントから導かれる場所へ向かっていた。
広い洋館の中、迷路のように改装されていては最短の道も分かり辛く辿り着くにも時間がかかる。時折空き部屋と思しき部屋を覗いて時計を確認しながら進む――そんな灯の背中に影が迫る。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雲烟・叶
【涙雨】
設定は自分が裕福な商家の新当主
ネムリアのお嬢さんが自分の妹ということで、何時ものようには呼べませんねぇ
……ネムリア
うん。呼び捨てはちと慣れませんが、まあ何とかなるでしょう
フォーリーは仲を違えた元幼馴染、……ちょっと、いえ、かなり笑えますが
服装は何時も通りで大丈夫でしょう
何故?それは此方の台詞かと
全く、何が悲しくてこんな破落戸と同じショウに出なくちゃならねぇんでしょうね
お前の頼みでなければきかねぇ話ですよ、ネムリア
やれやれ、……アレと仲良しこよしを求めるなんざ、無理がありますよ。今更
まあ良いでしょう、ショウまでは時間がありますから宝探しでもしましょう
楽しみにしていたのでしょ、お前は
ネムリア・ティーズ
【涙雨】
設定は叶の妹だから……叶おにいさま
それにフォーリーさんって丁寧に呼ばないとだ
ふたりのやり取りが面白くて、ちょっと笑いそう
服装は上品で華やかな絹の和装、頭にリボンをつけて貰ったよ
この世界にぴったりな服を着れてうれしいな
表情が顔に出なくてよかったって初めて思った
フォーリーさんも来ると聞いたから…叶おにいさまにお願いして
…ありがとう。ねえ、もう宝物の場所はわかった?
ふたりが一緒なら宝物もきっとすぐ見つかるから
昔みたいに、
……そんなことない。このままだとさびしいから…きっとまた仲良くなれるはず
はい、叶おにいさま。向こうを探してみたい
今日こそ本当の宝物を見つけて
また三人で楽しくお話できるように
フォーリー・セビキウス
【涙雨】
設定は私と叶が元幼馴染で今は犬猿の仲、その妹がネムリア
ったく三文芝居も良い所だな。どんな設定だ
服はこの軍服をアレンジした奴だ。これならあの世界の住人とも思われ易い
これはこれは今は懐かしき幼馴染様じゃないか。何故いるのか聞きたい所だが、それは妹に聞くべきか?なぁネムリア
…へぇ?意外と似合うじゃないか。馬子にも衣装というやつか
ふん、無理だな。このお坊ちゃんと一緒にいるだけで反吐が出る
場所?言うわけが無い。宝を見つけるのはオレだ
宝の場所は恐らく柱時計、それも食堂だろうな
叶には渡さんが、見つけたら後でネムリアにはやっても良い
この観察眼で他にも怪しい所が無いか探しつつ、美人にでも声をかけてるか
きらびやかに光を乱反射させるシャンデリア、その下では――火花が盛大に散っていた。本物の火花ではない、視線と視線のぶつかり合いだ。
「これはこれは今は懐かしき幼馴染様じゃないか。当主になったばかりで忙しいだろうに何故いるのか聞きたい所だが、それは妹に聞くべきか? なぁネムリア」
「何故? それは此方の台詞かと」
雲烟・叶(呪物・f07442)が、フォーリー・セビキウス(愚か者の鎮魂歌・f02471)の視線を断つように速やかにネムリア・ティーズ(余光・f01004)の前に割り込んだ。
今は仲違いした幼馴染とその妹――そんな設定を引っ提げて三人はこの場にいた。幼馴染同士役の二人は表面上皮肉気な笑みを浮かべていたが、内心でも「それらしくした」設定に笑いを噛み締めていた。普段からの呼び方も変えているのがおかしさに拍車をかける。
叶は仰々しくため息を吐いた。
「全く、何が悲しくてこんな破落戸と同じショウに出なくちゃならねぇんでしょうね。なんですかその格好」
言うまでもなく演技だが、その格好などとぞんざいに言われたのは帝都に似合う軍服姿だ。黒を基調に金で彩り、赤い組紐部分が映える。色合いだけではなく機能美も備えていた。
「フォーリーさんも来ると聞いたから……叶おにいさまにお願いして」
フォーリーが言い返すより早くネムリアがおずおずと顔を出した。銀髪にはリボンが彩り、上質な絹の着物は品よく華やかにヤドリガミの少女を包んでいる。
彼女もまた心の内でこのやり取りを面白がっていたが表情には出ない。役割に関係なくあまり顔に出るタイプではないのだ。同時にサクラミラージュらしい衣装を着られた高揚もほとんど露にしていなかったりする。
それでも同行の二人は何となくそれを察し、自らの役割に反映させた。叶は優しい視線をネムリアに投げかけた。
「お前の頼みでなければきかねぇ話ですよ、ネムリア」
「……へぇ? 意外と似合うじゃないか。馬子にも衣装というやつか」
叶の彩鮮やかな豪奢な和装――裕福な商家の新当主という設定に関係なく普段着である――には目もくれず、フォーリーは目を瞠った。役割柄その方が自然というのもあるが、ネムリアの装いは実際新鮮であった。
「……ありがとう」
ネムリアはわずかにはにかんだ。親しい関係でなければ見逃してしまうほど小さな変化を維持したまま少女は続けた。
「ねえ、もう宝物の場所はわかった? ふたりが一緒なら宝物もきっとすぐ見つかるから。昔みたいに、」
「ふん、無理だな。このお坊ちゃんと一緒にいるだけで反吐が出る」
言葉を遮ってフォーリーは頭を振るとネムリアは小さな変化をリセットしてしまう。それに気付いて少し気まずげな表情を作るも、彼は二人に背を向けた。
「場所? 言うわけが無い。宝を見つけるのはオレだ」
マントの裾を翻し、足早に立ち去るフォーリーを見送って、叶は銀糸のような髪を揺らすと意味ありげに目を伏せた。
「やれやれ、……アレと仲良しこよしを求めるなんざ、無理がありますよ。今更」
「……そんなことない。このままだとさびしいから……きっとまた仲良くなれるはず」
妹はぎゅっと兄の上着を握り、兄は慰めるように妹の肩を軽く叩いた。
「まあ良いでしょう、時間がありますから宝探しでもしましょう。……楽しみにしていたのでしょ、お前は」
「はい、叶おにいさま。向こうを探してみたい」
落ち込んだ雰囲気を滲ませつつも、切り替えるようにネムリアは大きく頷く。リボンと袖を躍らせて扉の一つを指さした。
足音は天鵞絨の絨毯に吸い込まれていくが、しっかりと目標を見据えた足取りでネムリアは行く。
「今日こそ本当の宝物を見つけて、また三人で楽しくお話できるように」
それが聞こえたか聞こえていないか、叶は微笑んでネムリアの横に並んだ。
「宝の場所は恐らく……」
フォーリーはヒントを思い起こし、そして答えを思い浮かべ、最後に脳裏で連なったのは先程まで顔を合わせていた二人。
「叶には渡さんが、見つけたら後でネムリアにはやっても良い」
そう呟くと鋭く周囲を見回した。何か怪しいものはないか確認し、ついでに美人でも見つけたら声をかけるか――と考えを巡らせる。
そんな彼に意外なほど近く、影朧の罠が迫っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『お屋敷迷路を踏破せよ』
|
POW : 屋敷内を虱潰しに歩き回り、目的地を探す
SPD : 隠された通路を探し、ショートカットを狙う
WIZ : 屋敷の間取り図を入手し、現在位置を確認しながら進む
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
迷路の一角、明かりの灯らず窓もない場所。よくよく目を凝らすと細い糸が張り巡らされている。
迷路の一角、吹き抜けの部屋。天井で縄が揺れる。
迷路の一角、美術品の飾られた部屋。一つの彫刻が動かされている。
迷路の一角、影朧が蠢動する――。
霄・花雫
【しゃるはなあかり】
さーてとっ!
灯くんは上手く死ねるかなー?
あたしの出番はそのあとだからねー
……灯が行っちゃってるんじゃ……急がなきゃ!
慌てて走り込んだ食堂で見たのは血に沈む弟の姿
呆然として、ひ、と喉奥で上がる引き攣った悲鳴
いやぁぁあぁッ!?
普段なら絶対に上げないような悲鳴を上げて、怯えて逃げ出したように背を向けて走るよ
玄関近くの吹き抜けホールに罠があったのは見たからね!
脚に罠を絡めて高く打ち上げて墜落死させる、ってやつ
それにわざと引っ掛かって、墜落直前に【空中浮遊】で衝撃を緩和
後頭部や口端から血糊を撒き散らしておしまい!
目は閉じとくよ、瞳孔でバレちゃうからねー
【パフォーマンス】はばっちり!
シャルロット・クリスティア
【しゃるはなあかり】
さてさて、お二人は上手くだませましたかね。
良い感じにこちらにヘイトが向いてくれれば、私もやりやすいのですが。
兄姉(役)が先に死んだので、不仲だった私が犯人と疑われることは避けられない(といいなぁ)。
ただ、決して殺意があったわけではないですから、それは全力で否定しつつ、人目を避けるように逃げましょう。
どこか吹き抜けの、天井の高い部屋……。吊るされているロープは【視力】【地形の利用】【罠使い】等の技能を駆使して看破。
改めて自分で結び、首吊り自殺っぽく見えるように死んだふりです。
実際のところは、服の下で腰に結んで支えて、首の別のロープに結んであるように見せているだけなんですがね。
皐月・灯
【しゃるはなあかり】
設定どおりに、オレは宝の在処に気付いた。
推理が外れてなきゃ、オレはその目の前にいる。
……柱時計、罠が仕掛けられてねー訳ねーよな。
――打ち合わせ通りだぜ、花雫、シャル。
さあ、「殺されて」やるとするか。
オレの死に様は「大時計の戸を開いた途端、発射された矢を胸に受ける」。
……先に仕掛けに気付いて解除すりゃ、死ぬことはねーだろうけどな。
今回、「オレは気付かなかったから死んだ」。
胸を押さえて倒れて、そのまま事切れた……ってわけだ。
死体の真似は巧いと思うぜ。本物を嫌って程見てるからな。
――まあ、矢自体は軌道を【見切】って摘み取るし、流れる血も血糊だけどな。
次はお前だ、ヘマすんなよ花雫。
灯は食堂の柱時計の前に立つと不敵な笑みを口元に浮かべた。この宝は自分のものだと言わんばかりに、設定になぞらえて。
そうして無防備に時計のガラス戸の取っ手を掴んだ。ちら、と背後を確認したのは一緒に来た二人と打ち合わせ内容を思ってのことだが、客観的に見れば「宝を独り占めしようと周囲を確認している」ようにしか見えない。
軋む音はしたもののスムーズに扉は開いた。同時にからくりの鳴るような音が彼の鼓膜を震わせ――常人では受けるしかない速度でボウガンの矢が発された。
「ぐォっ……」
先に解除すれば何のことも無い罠だろうが、今回はこれにかかるのも任務の一つ。気付かず素直に死んだ――振りをする。
灯は矢の突き立った胸を押さえて体を折り、だがバランスは取れず仰向けに崩れ落ちる。飛び散った血糊が床を汚した。
ぜいぜいと荒い息を上げ、やがて押さえた手の下で胸の上下を見て分からない程度に微妙なものにする。見慣れた死体をうまく真似るように。
この手は離せない。刺さる直前に見切って掴み取った矢は刺さっていない。刺さっていない矢を刺さっているように見せるには押さえておかなくてはならないのだ。
血糊がどんどん床に流れていくのを感じると同時、その表面が揺れた。誰かの駆けてくる振動が伝わってきたのだ。
次はお前だ、ヘマすんなよ花雫――という応援は流石に口に出さなかった。
――ほんの数十秒前。
「……灯が行っちゃってるんじゃ……急がなきゃ! お宝が取られちゃう!」
姉役としての設定は継続し、和風モダンな服の裾をはためかせて迷路屋敷を駆け抜ける。
慌ただしく白い髪を揺らして食堂の扉を探す。
「あっ、あれね!」
目当ての部屋を見つけて勢いよく走り込む――視界に入るのは弟役が胸から矢を生やして事切れた姿、斑に赤く染まった床。
呆然と立ち尽くし、数十秒経過した末に、ひ、と喉奥で上がる引き攣った悲鳴は完全に一般人の反応にしか見えない。
「いやぁぁあぁッ!?」
口元に開いた両手を当て、両目を見開いて完璧に怯える少女である。普段は上げない叫び声も綺麗に決まった。
ばっと体を翻して足音も隠さず走り出した。そこに入れ替わりで現れたのはシャルロットだ。
「姉さん、どうし……」
悲鳴に気付いて急いで姿を現した、という態だ。その脇を姉役は駆け抜け、妹役は訝し気な表情を作って食堂を覗き込んだ。
花雫とは対照的に息を呑んで絶句した。それでも駆け寄ると、咄嗟に兄役の体から矢を抜いた。血糊に塗れた手を見てはっとしたように、
「こ、これは私じゃない……私じゃないんです……!」
と言った。事実である。設定的にも反感はあっても殺意はなかった。
だが誰がどう見ても犯人である。きょろきょろと周囲を見渡して、動転して墓穴を掘る動作も忘れない。矢を放り捨て、血糊まみれの手もそのままにその場から逃げるように駆け出した。
灯は矢を押さえる必要が無くなって少し楽になった。
ばたばたと走り去った花雫は吹き抜けのホールに辿り着いていた。一度立ち止まって呼吸を整えると怯えた目つきでたったいま逃げ出した背後を振り返った。
「どうして灯が……あんなことになるなんて聞いてない!」
冷静とは思えない無茶苦茶なセリフである。わざとそう言ってよたよたと、先に確認していた罠のある方に近づいていき――
「……あ」
縄が空気を叩く音と同時に足が掬われ――地面が急激に遠ざかっていく。天井近くまで持ち上げられた体は、今度は緩んだ縄が足から離れて重力に引かれていく。
遠ざかる天井を映した瞳を、怯えたように瞼をぎゅっと閉じた。
――瞳孔で生存が分からないように。
勢いよく血糊が吹き上がった。
タイミングよくシャルロットが吹き抜け上部に入ってきた。迷路を走るうちにそちら側辿り着いていたのだ。手すりを掴んで眼下に見えるのは姉役の死体――の振り。地面到達直前、花雫のユーベルコード『春風のつまさき』で彼女が墜落死を免れたのはしっかり確認している、スカイダンサーの本領発揮だ。赤い血糊が姉役の後頭部や口元から流れ出していた。
だがこの状況、先程に引き続き誰がどう見てもシャルロットが犯人である。吹き抜けの上部にいるシャルロット、たった今高所から落ちて死んだ花雫。迷探偵がいれば「兄を殺すつもりでドジを起こし、自棄になってせめて殺害計画は完遂しようとしたのだろう」とかそんな迷推理を披露してくれそうな。
わなわなと震えて見せ、がばりと方向転換して階段を駆け下りた。
下の階には花雫が利用したもの以外にも罠がある、そしてシャルロットもまた罠には詳しいのだ。カーペットの装飾のように誤魔化された縄と連動して首を吊るすものであると看破すると、素早くこれからの行動をシミュレートした。
一本はわざと起動させ、だがかからずに引っ掴む。そして二度目に起動した縄が首を括りきる前にブラウスの下に手早く一本目の縄を巻き付ける。締まりはある程度緩くてもいい、己の重量で締まる締め方にすればいいのだから。
ホールの吹き抜けから吊るされたシャルロットの体が振り子のようにぶらんと揺れた。首吊り自殺のように。実際に彼女を宙吊りにしているのは腰のロープだが。
ここに迷探偵がいれば「追い詰められて自殺したのだろう」と迷推理が出されたに違いない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
食堂の扉が開かれ、影朧が入り込む。
倒れた者の足を掴んでずるずるとテーブルの下に隠し、ばさりと大きなテーブルクロスをかけた。
血の飛び散った床や時計の扉を丹念に拭いて姿を消す。まるで大きな黒百合に包まれるように。
これで、まだ事件を知らない者たちの犠牲が増えると――。
雲烟・叶
【涙雨】
さて、作戦通り上手に派手に死んでくださいね、フォーリー
宝探し中、倒れる音に気が付いて現場に向かった設定で
額を撃ち抜かれた死体の現実味のなさに、思わず呆然と
一般人なら状況理解よりこんなものかと
まして、相手は口の減らない破落戸もかくやな元幼馴染み
しぶとそうだとは思っていたでしょうしね
我に返るより一瞬早く身を翻した妹に、慌ててあとを追ったが最期
目の前にぶらりと揺れる妹の足
藻掻く様に助けねぇとと手を伸ばし──己の首に絡み付く紐
まあ、要するに後ろから首を絞められる
妹が動かなくなる様を見せ付けられながら、己も窒息死……が妥当でしょう
大丈夫ですよ、自分も彼女も本体が壊れなきゃ死にませんからね
フォーリー・セビキウス
涙雨
食堂に来たは良いが、問題はどう死ぬか。
取り敢えず柱時計を調べてみるか
…このワイヤーは、振り子室の扉を開くと引っ張られる仕組みになっているな。
アレはマズルの光沢か、しかもサプレッサーまでついてやがる。ワイヤーの先は拳銃の引き金だな。
振り子室を調べるには背が高い人間でも腰を落とす必要がある。すると大抵頭の位置は固定される。後は設置場所を工夫するだけで容易に頭を撃ちぬける訳か。よく考えられている。
なら、軌道を合わせてド派手に死んでやるか。額を撃ち抜かれて即死だ。
勿論、弾は触れた瞬間に能力で異空間へ飛ばすが。
血糊を撒き散らしながら後ろ向きにぶっ倒れて、死体を発見する二人の反応でも楽しむとしよう。
ネムリア・ティーズ
【涙雨】
フォーリーはひとりになったね
ボクも上手く出来るか、ちょっとドキドキする
おにいさまを追いかけ食堂に入ると
あんなに強そうなフォリーさんが倒れる姿に目を見開いて固まる
…本当に派手に死んでてすごいなあって感動したのは、ないしょ
助けを呼ばなきゃ!って慌てて部屋を飛び出したら
【第六感】で罠のありそうな場所を踏むよ
よけるのは難しいけど、引っかかるのはたぶん簡単だ
よく分からない内に一瞬で首を吊られて、ぶらりと身体がゆれる
少し首が痛いけど苦しくないからへいき
呼吸も必要ないしボクは見た目よりかるい
ヒトじゃないからね
解こうとバタバタしてから目を閉じて死んだふり
演技、上手に出来てた?って後で叶にきいてみるんだ
影朧が姿を消し、その数分後。暗い食堂の扉が開いた。暗い中でも目立つ白い髪のフォーリーがするりと音もなく入り込む。
「宝は……ここだな」
宝の在処は柱時計と睨んで僅かに身をかがめた。すぐに手を伸ばすことなくじっと観察する。
やがておもむろに振り子室の取っ手に指を引っ掛け、開かない程度に数度引っ張って感触を確認した。首を動かさず眼球だけで振り子室を隅々まで眺め、それと指先から伝わる情報はフォーリーに罠の構造を教えるに十分だ。
仕掛けられた罠は振り子室の扉と連動し、拳銃と繋がっている。サプレッサーまで付けたノズルがフォーリーの額を狙っていた。
「ご丁寧なこったな」
今フォーリーが身をかがめているように、振り子室を調べようとすれば必ず頭は一定の高さになる。そうすれば拳銃の設置場所さえ気をつければ頭をぶち抜ける、非常に殺意の高い罠の出来上がりだ。
冷静に観察を終えると、そのまま取っ手を強く掴んで、そして引く。
本来なら高い音を立てるはずが、ずっと抑えられた音と共に飛び出した。弾丸は正確にフォーリーの額、そしてその脳味噌目掛けて宙を進み――
『眠れ』
吸い込まれるように異空間に消えた。左目に接した己の身体に触れたものは異空間に飛ばされる、フォーリーの能力だ。
無事であったとしても死んだふりをするところまでが任務である。金の目を見開く暇もなく、何が起こったのか分かっていないような表情を作って後ろ向きに倒れる。傷一つない額から血糊が宙に美しい線を描いて、床に着地するとなんてことの無い直線を大量に引いた。
背中に固い床を感じながら、自分の死体を発見する幼馴染役二人の反応を楽しみにして目を閉じた。
どたん、と重い音を耳にして叶はあたりを見回した。
「おや……何か落ちたんでしょうかね」
「誰かが宝探しに物を動かしてるのかな? あっちの部屋みたい」
ネムリアが兄役の袖をひいて扉の一つを指さした。今度は自分の番、上手くやれるかと鼓動を速めながら歩を進めた。頭のリボンがひらひらと揺れる。
「ちょっと覗いてみましょうか」
妹役を心配するようにそっと後ろに押しやって叶が指二本ほど扉を開いた。
だが、中で動くものの気配がない。
訝し気に覗き込むが誰もいない。扉を大きく開けて入ると柱時計に違和感を覚え、それが足を動かす理由になる。クロスの引かれたテーブルを回り込み、そして見た。額から血を垂れ流す幼馴染の姿がそこにあった。
殺しても死ななそうなしぶとさを持ち合わせた、破落戸の元幼馴染の死体なぞ衝撃の塊と言っていい。一般人であれば事態を飲み込めず呆然と立ち尽くすばかり――叶もそのように、半歩後ろに片足を下げて固まった。
「叶おにいさま、何か落ちてたの?」
ちょこちょこと後をついてきたネムリアも、叶の体越しにフォーリーの死体を目にして息を呑んだ。紫の瞳を見開いて、仲直りを願った相手の死体から目が離せないとばかりに。
その内心は、打ち合わせ通り派手に死んでいて感動を覚えていたが。
「あっ、……手当てしないと、誰か、助けてもらわないと……!」
我に返り、慌てて部屋を飛び出そうとネムリアは沓擦りを踏む。そこが罠だと直感したのだ。
高さのある沓擦りは、正常な状態であれば高すぎて踏もうとはしない場所だ。がこん、とそこが落ち込むとネムリアはバランスを崩した。視界を上から下に縄が通り過ぎると、首に巻き付いたのを感じた。
「ネムリア!」
「お、おにい、すぁ……」
喉から絞り出すような声を出した。視界が高い、首の位置は扉の上枠近かった。ぶらりと下がった体をどうにかしようと足掻くがどうにもならない。
叶は髪が乱れるのも構わず、藻掻くように助け出そうと妹の体に手を伸ばした。そしてはっとしてテーブルを使えばいい、とばかりに振り返ろうと――した時にはもう遅い。
紐が空を切る音がする。
首に紐が食い込み、気道をぎりぎりと締め上げる。暗くなっていく視界の中、ネムリアの足も楽しみに選んできたリボンの揺れもやがて無くなって、叶は二重の意味で苦渋に顔を歪めた。
視界の端で黒い百合のようなものが踊ったのを最後に、彼も妹と共に長い睫毛と瞼を落とした。
影朧には知る由もないがこの兄妹、ヤドリガミである。呼吸ができなくても問題ない。
首を少し痛めたくらいで本体には影響がないのであった。
目を閉じたネムリアは思う。演技、上手に出来てた? と後で叶に聞いてみようと――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『血まみれ女学生』
|
POW : 乙女ノ血爪
【異様なまでに鋭く長く伸びた指の爪】が命中した対象を切断する。
SPD : 血濡ラレタ哀哭
【悲しみの感情に満ちた叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 応報ノ涙
全身を【目から溢れ出す黒い血の涙】で覆い、自身が敵から受けた【肉体的・精神的を問わない痛み】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
ぶくぶくと影が泡立つ。少女のすすり泣きと合わさって不気味なハーモニーを奏でた。
顔をかきむしる度に鋭い爪が肌を裂き、赤い血が流れた。だがすぐに傷は塞がり、何時までも流れ続けているのは黒色の血の涙だ。
『どうして、どうして……?』
黒百合が湧き上がった。少女に寄り添うように咲き誇るが彼女は目もくれない。
『素敵だって言ってくれたじゃない。すごいトリックだって』
自分の体を抱きしめて身を震わせた。
『だから私、もっとたくさん考えたの。好きだって言ってくれたから』
黒百合から蜜がぼたぼたと落ちる。少女の涙と交互に落ちる。
『たくさん、たくさん――』
床を黒く汚す液体を靴の底に敷いてがばりを顔を上げた。新たな涙が飛び散る。
『なのにあなたはちっとも使ってくれなかった。あなたの役に立ちたかったのに』
顔を、体を、かきむしる度に血を流しては塞がっていく。
『「すごいけど小説には使えないよ」って……』
親とはぐれた幼子のようにぽつりと呟いた。
『ううん、だから証明するの。絶対できるトリックだって。ちゃんと証明できた』
舞台女優のように大仰な動作で天井を仰いだ。頬を伝っていた涙が角度を変えて顔に線を引いていく。
『あなたは私のトリックだけ見て。他の人になんか頼らせない』
ごしごしと血まみれの手で顔を拭いた。奇怪な化粧が彼女の顔を彩ったが気にする様子もない。
『証明できた。きっと私だけ見てくれる』
その瞳に映っているのは目の前の景色ではない。とっくに失われた『誰か』だ。
『私だけ見てくれる!!!』
歓喜に影朧――血まみれ女学生は一歩を踏み出した。
フォーリー・セビキウス
【涙雨】
死んだふりし続けて隙が生まれた時か、ネムリアに攻撃が向いた時にUCを用いて虚空から現れて攻撃する
UCでネムリアを移動させて守ったり、肉体の一部や全身を転移させながら攻撃
我らが妹に手は出させんさ。
お前にはトリックを作る才能はあるようだが、人を殺す才能はないようだな。
何故なら、トリックってモンは最後にはバレるからだ。全員殺しちまったらミステリとして成立しない…つまり、お前の負けは最初から決まっていたんだよ。
だが、惜しいなその才。小説なんぞに収まるモノじゃなかった。お前が負けたのは、ソレだよ。
オレならもっと上手く使って…いや、お前を見ててやれたがな。
だがまぁ、悪くないトリックだったよ。
雲烟・叶
【涙雨】
演技お上手でしたよ、ネムリアのお嬢さん
死にゃあしませんが、首が痛いですねぇこの死に方
さて、お話しましょうか影朧のお嬢さん
彼はフィクションを愛したのでしょう?
彼は人を楽しませる話を求めたのでしょう?
小説の上で鮮やかに活きるべきだったとっておきのトリックで、本当に人を殺そうとする、なんて
あんたの彼、愛すべきトリックで実際に人殺しをしたと聞いて喜ぶようなお人なんです?
言葉で煽りながら【恐怖を与える、誘惑】で己へと攻撃を向け、【カウンター】で【呪詛、生命力吸収】を
設定の兄は自分なんですがねぇ
まあ、フォーリーが守ってくださるなら安心でしょうか
生憎と優しい殺し方は出来ねぇんですよ、すみませんねぇ
ネムリア・ティーズ
降りてすぐ叶を確認してお互いの首を治すよ
これは月の涙、キミのきれいな首に痕が残らないように
ふたりの動きに見惚れずに、攻撃しない分も治すのはがんばる
泣き疲れても、涙が乾くまで
【優しさ】を込めて話しかけてみる
少しでも【慰め】たくて
ねえ、どうして泣いてるの?…さびしかった?
キミを知りたいから教えて欲しいんだ
トリックは体験したから分かるよ。すごかった
使ってくれなかったのは…自分で作ったお話をキミに一番楽しんで欲しかったのかも
だってどこで何が起きるか知らない方が、ずっとドキドキする
ボクはここに来てからそうだった
泣き止んで、気持ちを伝えにいくのはイヤ?
この世界はそれが叶うのに
このまま消えるのはさびしいから
「『――これは月の涙。キミに降る、癒しの雫』」
影朧が一歩踏み出した直後。吊られた少女がすとんと地面に降り、続いて『兄』であった青年も足を縄からは解放されていた。
状況が呑み込めない様子の血まみれ女学生の目の前で、ネムリアがぽろぽろと涙を零す。白魚のような指でぬぐうと濡れた爪が白銀の輝きに照らされていた。
「これは月の涙、キミのきれいな首に痕が残らないように」
おまじないのように唱えて叶の首元に手を伸ばす。絞められた跡と白銀が触れ合うと、みるみる内に元の滑らかな肌に回復していく。
「有難う。それに演技お上手でしたよ、ネムリアのお嬢さん」
回復による疲労を滲ませながらも少しだけネムリアは微笑んだ。反応が薄いように見えても、紫の瞳がぱっと輝いたのを叶は見逃さない。笑みを返し、影朧に向き直ると首を揉んだ。
「死にゃあしませんが、首が痛いですねぇこの死に方」
『えっ……どうして!?』
血まみれ女学生はようやく驚愕を露にした。極めて尤もな台詞であるが、律義に教えてやる必要もない。
「ねえ、どうして泣いてるの? ……さびしかった? キミを知りたいから教えて欲しいんだ」
『あの人に見て欲しいの! 私だけを見てくれない!』
血まみれ女学生は我が身を抱きしめて叫んだ。悲しみに満ちた叫びは、その場にいる全員に効果を発揮するものであった――
「ネムリア」
――するりと虚空から現れたのは死体の振りを止めたフォーリーだ。ネムリアをそっと後ろから抱きかかえるようにすると、左目に呑み込まれるように姿を消した。叶はというと堪えるように身を硬くした、攻撃方法は織り込み済みだ。
「我らが妹に手は出させんさ」
「ありがとう、フォーリー」
再び姿を現してその指先からぴん、と弾き飛ばされたのは異空間に消えた銃弾だ。単純に投げ返しただけのそれは、影朧のメンタルにダメージを与えたようだ。同時にフォーリーが死んでいない理由も察したのか、涙の痕の残る顔を歪めていた。
弾が床で跳ね、転がる音をバックミュージックにネムリアは叶を癒す。止めどなくあふれる涙は疲労を招くが、疲労で仲間二人の無事が確保できるならば大したものではない。
「さて、お話しましょうか影朧のお嬢さん」
背後のネムリアを隠すように叶は片腕を広げた。上着と相まって着飾った彼女が完全に影朧から遮られる。
『話?』
「彼はフィクションを愛したのでしょう?」
『ええ、彼は小説を書くのが好きだったわ』
「彼は人を楽しませる話を求めたのでしょう?」
『そうよ、だから私が――』
叶が大きく踏み込み、ゆらりと紫煙を舞わせた。爪を長く伸ばした血まみれ女学生はさながら悪鬼のように煽る青年へ飛び掛かったが、叶は言葉を紡ぎ続ける。
「小説の上で鮮やかに活きるべきだったとっておきのトリックで、本当に人を殺そうとする、なんて――」
紫煙は管狐に変じ、管狐は影朧へ向かう。数えるのも億劫な群れは黒百合の影を食い破り、血まみれ女学生に呪詛を染み込ませた。
「――あんたの彼、愛すべきトリックで実際に人殺しをしたと聞いて喜ぶようなお人なんです?」
『彼はトリックに悩んでた! 私が助けてあげるの!』
管狐に食まれ、焼かれながらも影朧は金切り声で叫んだ。苦痛を感じても折れる気はないようだ。
会話は噛み合っているようで何ら噛み合っていない。やれやれと叶は頭を振って、銀糸の様な髪がさらさら揺れる。
自分に優しい殺し方はできないが、それは同行の仲間二人に任せよう。進み出たフォーリーに目配せを送った。
「お前にはトリックを作る才能はあるようだが、人を殺す才能はないようだな」
管狐を振り払い、爪を伸ばしてまたも掴みかかってくる影朧を異空間に隠れて躱し、その背後に出ると細い手首を強く掴んだ。
『何を――!』
「何故なら、トリックってモンは最後にはバレるからだ。全員殺しちまったらミステリとして成立しない…つまり、お前の負けは最初から決まっていたんだよ」
流石はオブリビオンの一種というべきか、血まみれ女学生の力は華奢に見えてもずっと剛力だ。振り回されないようにするにも一苦労である。
そんな苦労を億尾にも出さず、飄々とした調子でフォーリーは囁いた。
「だが、惜しいなその才。小説なんぞに収まるモノじゃなかった。お前が負けたのは、ソレだよ」
トリックも上手く行かず、殺したと思った相手に反撃されて、その上での誉め言葉。地獄から天国に引き上げられたように影朧の表情が明るくなる。
「オレならもっと上手く使って……いや、お前を見ててやれたがな」
影朧に合わせた言い回しに、駄目押しとばかりに笑みを乗せて褒めていく。
「だがまぁ、悪くないトリックだったよ」
「トリックは体験したから分かるよ。すごかった」
ネムリアが顔を出し、ゆっくりとだが大きく頷いて後を引き取った。攻撃の手が緩んだこともあって涙の勢いも減っている。影朧とは対照的だ。
真摯に血まみれ女学生の目を見て、穏やかな語り口だ。手を取って話したいくらいだが、それはさすがに危険が伴いそうであった。
「使ってくれなかったのは……自分で作ったお話をキミに一番楽しんで欲しかったのかも」
近付けない分真っ直ぐに視線を繋げる。血まみれ女学生は呆然として、視線を切ろうとはしなかった。目配せを交わし合う年長者二人は目に入らないようだ。
「だってどこで何が起きるか知らない方が、ずっとドキドキする。ボクはここに来てからそうだった」
自分のリボンに触れて、思い返すようにネムリアは目を瞑った。ファッションショウの時、宝探しの時――。
その様子は影朧も見ていた。
「泣き止んで、気持ちを伝えにいくのはイヤ? この世界はそれが叶うのに――このまま消えるのはさびしいから」
演技ではない優しさの籠った呼びかけ。血まみれ女学生ははらはらと涙を流し、唇を噛んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
霄・花雫
【しゃるはなあかり】
うぇー……血糊ベタベタぁ……
灯くん帰る前にお風呂行こう、この洋館内お風呂くらいあるよねー
んー……あたし、恋とかまだ分かんないけど……きっと淋しかったんだよ、ね
好きなヒトに振り向いて貰えないって、きっとすごく切ないんだろな……
んん、灯くんもシャルちゃんもいるし、あたしちょっと話してみるよ
だって、あの子泣いてるもん……
ね、貴女は何がダメだったのか、彼に聞いてみた?
文豪なのかな、そのヒト
きっと作品に思い入れあるだろうし、小説には色々タブーやルールもあるよね
そういうの、聞いたコトある?
ないならさ、聞いてみようよ
其処から話が広がるかもしれないよ
ただの貴女に戻ってさ、また逢いに行こうよ
皐月・灯
【しゃるはなあかり】
……そろそろ良いか。血糊、多すぎたかもしれねーな……。
(起き上がり、壁の鏡に映った自分を見て)
やれやれ……こりゃ、あとでシャワーと洗濯だな。
さて……てめーに付き合ってやるのはここまでだ。
この館は、本当に罠だらけだった。
よく詰め込んだもんだよ、正直感心したぜ。
よっぽど誰かに見せたかったんだろうな。
……けどな。
間合いを詰め、ヤツが爪を繰り出すのを待つ。
花雫、焦って飛び出すなよ。当たりさえしなきゃどーってことはねー。
シャルのお膳立てもあるしな。
【見切】ったところに、【カウンター】を叩き込んでやればいい。
けどな――小説なんてのは、実現しねーことが書かれてるからいいんだろ。
シャルロット・クリスティア
【しゃるはなあかり】
(テーブルからのそのそ這い出てくる)
よっ、と。お二人とも、つつがなくできたようで何よりですね。
さて……残りのひと仕事と行きましょうか。
……寂しかったのでしょう。構ってほしかったのでしょう。
理解は出来ますが……そこまでです。
基本の立ち回りは【援護】です。
敵の動きを【見切り】敵の攻撃のタイミングに合わせ、その爪目掛けて【早業】で銃弾を叩き込みへし折る等、出足を挫くように攻撃を入れます。
お二人の接近の手助けにはなる筈。無理に連射せず、一撃一撃落ち着いて。
あなたはもしかすると、その人の大切な何かを見落としていたのかもしれないですね。
それが何かまでは……私にはわかりませんが。
「うぇー……血糊ベタベタぁ……」
花雫が手櫛で髪を梳きながら室内へ入ると、それを皮切りに仲間の二人も姿を現す。
「血糊、多すぎたかもしれねーな……」
そろそろ良いかと出てきた灯だが、壁の鏡に映った自らの姿をそう評すしかなかった。派手に死ななくてはいけなかったとはいえ、凄惨すぎやしないだろうか。風呂と洗濯は必須だ。
いつの間にやらテーブルの下に隠れていたシャルロットがのそのそと這い出て、二人に向けて片手を軽く上げた。
「よっ、と。お二人とも、つつがなくできたようで何よりですね」
お互いの無事を確認し、喜ぶのも束の間だ。
「さて……残りのひと仕事と行きましょうか」
事件の犯人――血まみれ女学生への対処が残っている。
「さて……てめーに付き合ってやるのはここまでだ」
「……寂しかったのでしょう。構ってほしかったのでしょう。理解は出来ますが……そこまでです」
灯とシャルロットの言葉に灯の鋭い目線に影朧は顔を上げた。悔し気に唇を噛み、爪が伸ばされる。二人は隙無く構えた。
「んー……あたし、恋とかまだ分かんないけど……きっと淋しかったんだよ、ね」
花雫は動かず、伏し目がちに血まみれ女学生を観察する。黒い涙を流す姿もその表情も、幸せな恋をしているようには見えなかった。
「好きなヒトに振り向いて貰えないって、きっとすごく切ないんだろな……」
ぽつりと呟くと、灯とシャルロットの背中にふわりと寄り付いた。
「ね、あたしちょっと話してみるよ。任せていい?」
無言で二対の視線を返されて、それでも二色の目に影朧を映し込んだ。血まみれ女学生の感情を映すように。
「だって、あの子泣いてるもん……」
「そうですね、構いませんよ」
頷いたシャルロットに続いて、灯を見ると仕方ないな、という風に口元に笑顔を浮かべていた。
「花雫、焦って飛び出すなよ。当たりさえしなきゃどーってことはねー」
そう言い置くと、灯は飛び出した。影朧の爪の間合いへと。シャルロットはその場で銃を構え、大きく深呼吸をして自分に言い聞かせた。
『大丈夫……落ち付いてやればできます』
血まみれ女学生はかっと目を見開いて迎撃する。その姿は狂っているようにも見え、迷いを抱えながら自暴自棄になっているようにも見える。
対極に冷静な目のシャルロットが引き金を引く。小さな空気の爆ぜる音と共に発射された弾丸は、影朧の爪へと軌道を描いて破壊すると役目を終えた。
影朧は驚いたような顔をするのも束の間、既に眼前には灯が迫っていたこともあって後ろに飛び退いた。その間に再び爪を伸ばすが、振り出すと着実に狙撃される。
『うう……私は、私は!』
灯の進撃を止められないと悟り、折れた爪をモグラの手のように突き出した。
『アザレア・プロトコル4番――《断切ル迅翼》!』
――だがそれも、皮一枚分の隙間を開けて躱される。すれ違うように差し出されたのは拳であり、存在しないはずの刃であった。血糊のこびりついた室内に影朧の血が上塗りされて黒い塵のような百合がずるりと被さる。
『ぐぅ……!』
「ごめんね。少しだけ、お話ししよう」
傷を抑える影朧にそっと花雫が近づいた。警戒するように睨みつける相手に、それでも優しく語り掛ける。
「ね、貴女は何がダメだったのか、彼に聞いてみた? 文豪なのかな、そのヒト」
『彼』のことは何も知らない。だが、血まみれ女学生の様子から想像してみることはできる。
「きっと作品に思い入れあるだろうし、小説には色々タブーやルールもあるよね。そういうの、聞いたコトある?」
『そりゃあたくさん
……。……たくさん、読んだわ』
血まみれ女学生は頷いたが、自信なさげであった。
「あなたはもしかすると、その人の大切な何かを見落としていたのかもしれないですね」
ふとしたような調子でシャルロットが添えた。静かな口調だ。
「それが何かまでは……私にはわかりませんが」
「ないならさ、聞いてみようよ。其処から話が広がるかもしれないよ」
花雫はぎゅっと自分の拳を合わせて誘う。外へ、未来へ。過去に捨てられた影朧へ明るい笑顔を向けた。
そんな彼女の横に並んだのは灯だ。
「この館は、本当に罠だらけだった。よく詰め込んだもんだよ、正直感心したぜ。よっぽど誰かに見せたかったんだろうな」
影朧は祈る様な静謐を湛えた表情で灯を見た。今までの幾人もの説得もあってか、犯行決行時よりずっと冷静でいられるようだ。
「……けどな」
灯はゆっくりと頭を振った。彼女の罠を否定するためではない。
「けどな――小説なんてのは、実現しねーことが書かれてるからいいんだろ」
反語を二回重ねる。本当に言いたいことは、自然とそうして強調されるものだ。
はっとした顔で血まみれ女学生は瞬きを繰り返した。そのたびに大粒の黒い涙が零れ落ちていく。
もう一押しだと悟って、花雫は前のめりに提案する。恋はしたことがなくても、恋の手伝いはできるのだ。
「ただの貴女に戻ってさ、また逢いに行こうよ」
沈黙が下りた。長い長い、体感としてはもっと長い時間が過ぎて、血まみれ女学生は――
『……うん』
――頷いた。ぽろぽろと流れ落ちる涙は空で霧に消え、その体も煤のようにして崩れていく。
崩れた端から見えなくなり、やがて恋破れた少女はどこかへ消えていった。
「それにしても凄いですね、いやこれは……」
シャルロットは改めて血糊塗れの兄姉役の二人を眺めて、大きくため息を吐いた。
「その状態で外に出たら通報待ったなしですよ」
「だろうな」
「だよねえ」
花雫も灯と同じ感想を持ち合わせていたようで、揃って頷き合った。だが花雫が何か思いついたように表情を明るくした。
「灯くん帰る前にお風呂行こう、この洋館内お風呂くらいあるよねー」
と、灯の返事を待たずに扉をくぐる。
もう自由な姉役は終わりのはずなんだがな、と苦笑する灯とそれは早く落とした方がいいですよと言葉を交わし合う二人もまた足を動かし出す。
三者三様の笑顔が死相に揃うことはない。――罠はもうどこにも無いのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵