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大切な日々を切り取って

#サクラミラージュ


●???
「これはフルーツポンチというお菓子です。水菓子とサイダーの甘さが夏の日には涼やかに感じられて……よく二人で食べたんですよ。暑いなぁ、暑いなぁって言いながら」
「ふるぅつ……ごめんなぁ、大切な思い出のはずなのに、まぁったく思い出せへん…」
 指先がアルバムのページを捲る。沢山の写真の中から彼女が興味を示したものを説明するが、それを聴いても彼女は困ったように眉間に皺を寄せるばかり。
 ああ、知らないはずだ。これを共に食べた彼女は、目の前で病に倒れて死んだのだ。葬式にも出た、彼女の両親からは何故か自分が謝られた、彼女は間違いなく死んだのだ……けれど、目の前に立つ『彼女』はその事実がまるで悪い夢であるようにそっくりで。
「でも、ただの写真がこんなに鮮やかに見えるんやもん。そんなの楽しい思い出に決まってる。キミの言葉はウソやないんやろうなぁ」
 そう言って笑う彼女の顔を見て、僕は当時と同じ様に胸を高鳴らせるのだ。
「……そうだ、幻朧桜の写真を撮ってきます。僕達の出会った場所です、それを見れば何か思い出せるかも」
 赤くなった顔を隠すように、僕はカメラを手にして立ち上がった。
 死者が蘇る可能性を、僕は知っている。けれどその事実を認めるには、背中にかかる見送りの声があまりにも暖かかった。

●グリモアベース
「……例えば、例えばよ。死んだはずの大切な人が目の前に居たら、貴方はどうする?」
 悲痛な表情を浮かべながら、アンノット・リアルハート(忘国虚肯のお姫さま・f00851)は猟兵達へ向き直る。
「桜花絢爛な新世界サクラミラージュ、名前の通り鮮やかな場所だけど……その門出は苦しいものみたい」
 この世界のオブリビオン、影朧は他の世界のオブリビオンと少し事情が違う。不安定な存在である彼らは時として、自らが骸の者と知らずに行動している。今回猟兵達が相対する影朧も、そう言った相手だ。
「今回相手する影朧は血まみれ女学生。彼女は自分が死んだということを自覚しておらず、とある男性に匿われているわ。貴方達の任務は彼を説得して影朧を見つけ出し……討伐することよ」
 例え弱く、不安定な存在であっても、影朧はただ居るだけで世界を崩壊に導いてしまう、彼らが享受しているのは割れることが決定した薄氷の上を幸せなのだ。その下には暗い絶望が広がり、男性が落ちてくるのを今か今かと待ち構えている。
「放っておくことは彼の為にもなりません。だから心を鬼にして、時としては相手を騙すことも必要になるかもしれないから」
 影朧を見つけるには男の協力が必要不可欠だが、彼は影朧を失った恋人と勘違いしている……あるいは、そうだと自分に言い聞かせている。居場所を聞き出すにはどうにかして彼を説得し、猟兵達に協力してもらう必要がある。
「彼は今、幻朧桜の写真を撮るために一人で行動しています。バレないように転送するから、警戒されないように接触して」
 男を説得するには、大きく分けて三つのアプローチがある。
 一つは共に幻朧桜を眺めながら、言葉によって彼を説得する。美しいものは人の心を穏やかにする、穏やかな気持ちで彼にアピールすれば好意的な印象を残せるかもしれない。
 次に飲食を楽しむ。多少賄賂的なものもあるが、料理は人の心を映す。味わいによっては男の心を氷解させることできるだろう。
 最後に幻朧桜を通じ祈りを捧げる、つまりは思いによる説得だ。言葉ではなく態度や心で、男の未来を案じていると伝える。最も直接的とも言える手段だ。
 また影朧はその魂を沈め桜の精の癒しを受ければ新たな生命として転生することができる、この情報も男を説得する材料になるかもしれない。
「下手に感情移入しないように、彼の名前は伏せておきます。後はその、説得はできるだけ穏やかにお願い」
 一通り説明を終えるとアンノットは重いため息を吐き出すと、真っ直ぐ猟兵達の見つめる。
「真摯な言葉をぶつければ、彼と彼女……二人はきっと応えてくれます、絶対。私はそう信じてるから」


マウス富士山
●オープニングを見ていただきありがとうございます。今回マスターを務めさせていただきます、マウス富士山と申します。今回の任務は新世界サクラミラージュ。亡くなった恋人を影朧に重ねる男性を説得し、彼女を無事に成仏させてあげてください。
 最終目標は「血まみれ女学生の討伐」、そのためにまずは「男性を説得し、影朧の居場所を聞き出す」とが第一の目標となります。
 既に終わってしまった恋物語、その後日譚です。それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『幻朧桜の木の下で』

POW   :    幻朧桜を見上げ、心が洗われるのを感じる

SPD   :    幻朧桜の下で軽く飲食を楽しむ

WIZ   :    幻朧桜に想いを馳せ、祈りを捧げる

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リサ・ムーンリッド
人の心というのは、興味深いね
彼の心情について深く知ってみたい…そして、敵となる相手の心も
それは解きほぐせるのだろうか?
何をもって救いとなるのか?
この好奇心のために、一肌脱ぎたい

現地の服を事前に手に入れて挑もう
設定は『病弱で滅多に外に出ないお嬢さんが今日は体の調子が良いので散歩がしたくて実家を抜け出してきた』で
【情報収集】で得た【世界知識】と、病気がちのための世間知らずな設定で話を進める
…清楚なのは性に合わないが…恥ずかしさを押し殺し演じよう
親しくなれば、会話の中で想い人の話しも出るだろう
きっかけさえ掴めば掘り下げることも…
演技中は設定に合わせたおとなしく丁寧で物静かな喋り
アドリブアレンジ歓迎


リック・ランドルフ
死んだ筈の人が目の前に居たらか、…俺はどうだろうな?喜ぶのかそれとも悲しむのか、…もしくは…仕事に集中するか。


居場所を聞き出す、…観光客に装ってさりげなく説得とかしてみるか。

そんな訳で【影の追跡者の召喚】で男を見つけて追跡する。そして見つけたら道を迷った体で男に話し掛けて幻朧桜の場所まで案内して貰う。

そして道中、自己紹介でもしながら幻朧桜の話をしよう。

…幻朧桜ってのは魂を癒し、次の生へと導いてくれる桜らしいな。実は前に結婚寸前に彼女を事故で無くしてな、それで…幻朧桜に祈りに来たんだ、彼女の魂を癒して次へと行って貰う為に。

…そんな感じで会話に交えながらな。

彼女の話?…勿論…どうだろうな。



●舞台において役者は自らの過去を隠す
 事前に聞いた話によると、この世界の人々はオブリビオンに対して無知であるというわけではなく、その特異性も充分に理解しているはずだ。にも関わらず、その場しのぎのような理由でそれを匿うというのは理解しがたく……それ故に興味深い。
 普段の動きやすい服装ではなく、周囲に合わせた洋装を身に纏ったリサ・ムーンリッド(知の探求者・エルフの錬金術師・f09977)は目標である男性がやって来るのを待つ。今の自分は『病弱で清楚なお嬢様』……自分で言っておいて血を吐きそうになるが、そういうことなのだ。
 無数の二次元的文化知識から引き出した男に警戒心を抱かせない接触方法の一つ、『ちょっと立ち眩みを起こした風な感じで相手に寄り掛かる』。それを頭の中で反芻させていると、通りの向こうから目標である男の姿が見えた。
(……よし、今だ!)
 ユーベルコードの効果で自らの定めた設定を完璧に演じることのできるリサは若干ふらついたような完璧な足取りで、男性に寄り掛かり……。
 男と同行していたリック・ランドルフ(刑事で猟兵・f00168)とバッチリ目が合った。

「も、申し訳ありません。私ぼんやりしていまして……」
「ああいえ、大丈夫ですよ。怪我が無くて何よりです」
 似合わない言動を知り合いに見られたリサは内心で大量の血を吐き出しながらも、男の身体が僅かながら緊張していることに気付く。それを察したのか、リックは大きな咳払いを一つすると軽い調子で男に話しかけた。
「なんだ、咄嗟に同じくらいの体格の奴を支えられるなんて意外と力があるんだな兄さん」
「その、こういう事は慣れてまして」
 そう言う男の表情には迷いの色が見える。これが尋問であればそこを突かない理由はないが……今は下手に警戒心を抱かせないことを先決する。男がリサの身体を離したのを確認すると、若干睨まれるような視線を感じながらリックは本題を切り出した。
「しかしまあ、こんな季節だっていうのに雪みたく花が舞ってるんだな」
「自分からすればそう珍しくない光景ではありますが……ランドルフ氏はどこのご出身で?」
「南の方さ、うちには小さいのしかなくてね。デカいヤツに祈った方が届きやすそうだろ?」
 言葉の裏にあるものを読み取ったのか、男の顔が強張る。
 少し先に見えるのは見上げる程の大きい大樹。魂を癒し、次の生へと導いてくれるという幻朧桜。
「もう少しで人並みの幸せってのを掴めそうだったんだが、事故でな。しっかりと癒して貰って、次はちゃんと守ってくれるいい男に会えるようにって祈り来たんだ」
 そうですかと、少し弱った声で男が呟く。リックの話に男だけでなくリサもどこか気になっているような表情を見せるが、彼の話を掘り下げている場合ではない。
「そう、幻朧桜。私もそれを見ようと思ってここに来たのです。普段は横になって花弁を見ることしかできないもので」
「なんだ嬢ちゃん、もしかして身体が弱いのか?さっきもふらついてし、帰った方がいいんじゃないか」
「いえいえ、今日は調子がいいので。この機会は逃していけないな、と」
 リサとリックの会話を尻目に、男は両の手を強く握りしめる。そこに込められているのは迷いか、後悔か。
 男の心が大きく動いたことをリサは確信する。情報を引き出すまではいかずとも、その布石は打つことができた。
 そこで彼女は、少しだけ自らの好奇心を優先した。
「ねえ、さっきの話って本当かい?」
「……さあ、どうだろうな」
 猟兵が小さな声で交わした短い会話は、桜舞う風の音にかき消されていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雛月・朔
【WIZ】

美しい桜と理路整然とした街並み…こんな理想郷のような世界があるとは思ってもみませんでした。お仕事のついでにいろいろと見て回りたいものです。

男性が現れるという幻朧桜に先回りし、お仕事と観光も兼ねて桜を眺めます。そして事前に聞いていたサクラミラージュの世界についてと幻朧桜の役割について今一度思い返して、桜に【祈り】を捧げます。
(迷い人を導き、傷を癒すそのお姿。なんと気高いものでしょう、我々もお力添えをしますのでどうか今後もこの世界を癒してください)

あとは都合よく件の男性が現れるといいのですが…、いやはや。桜の美しさに気を取られ、お仕事を忘れてしまいそうです。


梅ヶ枝・喜介
へへっ!満開も満開!すげぇ光景だ!
さぞかし綺麗だと想像してたが実物はそれ以上!
仏サンだって墓の下から這い出てくらァ!

だが亡くなっちまったモンは戻らねえ
欠け替えのないってのはそういうモンだろう

もし仮に死ぬる誰かが甦ったとして…
それがどんなにか喜ばしくてもよ…
理を外れたコトにゃあ"揺り戻し"があると思うぜ。兄さん

───なんてよ!『諦めろ』なんて言ってもどだい無理な話か!
おれだって諸手を上げて喜んじまうもの!

だが言うゼ!おれァ猟兵だかんナ!

いい加減テメェ勝手な気持ちを押し付けんのは辞めろ
仏さんを今生に縛るんじゃあねえ

残ったヤツはな、先立つヤツの旅路に幸いがあるようにって、笑って見送るのがスジなんだぜ



●日向は罪の意識に影を落とす
「幻朧桜。影朧を集める一方で、その身に新たな生を授ける輪廻の樹木ですか……」
 自然の美しさを魅せる花弁と整然と整備された街並み。雛月・朔(たんすのおばけ・f01179)はそんな理想郷のような景色の中心に聳える桜の木を見上げながら、感嘆の息を吐き出す。
 新世界サクラミラージュ。いくつもの世界を渡り歩いた朔だが、傷ついた過去に新たな生を受ける場所と言うのは初めてだ。桜に呼び寄せられる影朧達は、もしかすると自らの身体を蝕む痛みから逃れるための救いを求めているのかもしれない。
 礼と柏手を二回ずつ、その後に深いお辞儀を一回。これが正しい作法なのかはわからないが、こういうのは礼を忘れない気持ちが大事なものだ。
(迷い人を導き、傷を癒すそのお姿。なんと気高いものでしょう……我々もお力添えをしますのでどうか今後もこの世界を癒してください)
 朔の深い祈りに幻朧桜が応えたのだろうか。風に棚引く桜の枝が、一際大きく揺れ動いた。

 男は目的地である幻朧桜に辿り着いた。後は写真を撮って彼女が待つあの場所に帰るだけ……なのだが。彼の両足は貼り付いてしまったかのように石畳から離れようとしない。
(ゆ、ユーベルコヲド使い……)
 長い黒髪を一本に結んでいる男性……幻朧桜の前で祈る朔の周囲には超常の炎が見える。それが男の胸に暗い影を落とし、思わず足が後ろに引いた時、ドンと男の背中に何かがぶつかった。
「おっと、悪いな兄さん。あんまりにも綺麗な光景なんで見惚れちまってた」
 ぶつかった者、その名を梅ヶ枝・喜介(武者修行の旅烏・f18497)という。
「話を聞いた時からさぞかし綺麗だと想像してたが、実際はそれ以上!こいつは仏サンだって墓の下から這い出てくらァ!」
 喜介の言葉に男の足がより一層後ろに下がる。偶然抱えているものを言い当てられたわけではない、喜介の瞳は真っ直ぐ男を見据えている。
「だが亡くなっちまったモンは戻らねえ。それがどんなにか喜ばしくてもよ……理を外れたコトにゃあ"揺り戻し"があると思うぜ。兄さん」
 まだ年若いはずの喜介の一言一句が男に強くのし掛かる。その重圧が男をこの場から逃がそうと足を動かした瞬間、不意に喜介が破顔した。
「───なんてよ!そんなことあった日にゃあおれだって諸手を上げて喜んじまうもの!『諦めろ』なんて言ってもどだい無理な話か!」
 快活に笑う喜介に男は呆然としていたが、そんな様子を知ってか知らずか喜介は言葉を続ける。
「でもよ、テメェ勝手な気持ちを押し付けんのは辞めろ。残ったヤツはな、先立つヤツの旅路に幸いがあるようにって、笑って見送るのがスジなんだぜ」
 そう言って喜介が視線を向ける先には、真摯な祈りを捧げる朔の姿がある。喜介の誠実な言葉が影響したのだろうか、男の目にはその超常の炎が暖かな太陽のように見える。
 その輝きと没頭するように桜と向き合う朔の様子が、男の胸を締め付けた。
 幻朧桜の与える癒しがあのように温もりを与えるものであるならば、祈りを忘れそれを遠ざけようとしている自分は、どれだけ冷酷なことをしているのだろうか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴァハ・コルニクス
さて、困ったことになりましたね。交渉と来ました。
交渉というのは私の主である
あのドールの仕事であって、
私は喋るのは面倒……もとい不得手なのです。

死んで蘇るというのは私も経験済なので分からなくもありません。
あのクソ盗賊と犬っコロ……まあ私の話はいいんですよ。

幻朧桜……でしたっけ?
コオロギと互角と評される私の頭脳を持ってしてもいまいち理解しかねますが、
いつか転生できるならば私のように……。

そう、私は今の生活を気に入っているのですよ。
あの地下迷宮で燻っていた頃よりもずっと。

そんなことを桜を見ながら考えていたわけですが。
まあ声に出てたかもしれませんが。
いいんですよ別にどっちでも。私のガラじゃないですし。


リック・シックハント
ボクにとって絆は本当に大切なものだから
失ったものが戻ってきた男性の嬉しさはすごくわかるんだよ
正直に言えばそっとしておいてあげたいけど
過去は変わることはないから辛くても区切りをつけてあげないとね


方針は繋げた感情と言葉での説得

男性を見つけたら射程内でUC発動

咲いて散ってまた咲いて
桜って人の出会いと別れみたいだよね

って話しかけよう
見た目の異様さはコミュ力と男性を思いやる気持ちでカバー

受け売りだけど
楽しい時も終わる時がいつかは来る
そうして空いた穴は辛いけどそれだけ相手を想っていた証拠で
それは消えなくて当然かもしれないけど
そこを埋めえるのもまた出会いなんだって
…だから辛くても前を向き続けなきゃダメだよ



●想いは誠実に事を語る
「咲いて散ってまた咲いて、桜って人の出会いと別れみたいだよね」
 迷う男の心に、リック・シックハント(繋ぐ旅人・f00522)のそんな言葉がスッと入ってくる。彼の使う【対話こそ我が信念】は人々の意識を繋げ、言葉に頼らぬ会話を可能とするユーベルコード。
 言葉にできぬ感情を抱える男にとっては、これ以上ない最適な技であった。
「ボクにとって絆は本当に大切なものだから、失ったものが戻ってきた男性の嬉しさはすごくわかるんだよ」
 言葉のみであったら、口だけだと否定していたかもしれない。しかし今の男にはリックの考える絆の価値が嫌という程伝わり、同時にリックには男の抱える痛みや後悔が自分のもののように感じられた。
 幸福な時、ただ隣に居てくれるだけで満足だった。彼女が熱中する芝居や文学の話は、自分が興味のないものでもとても楽しく感じられた。
 だが、全てが終わった後に振り替えると、思い出の数だけ今の自分が空虚であるように思えたのだ。
「楽しい時も終わる時がいつかは来る。そうして空いた穴は辛いけど、それだけ相手を想っていた証拠なんだ」
 心に直接届くリックの言葉に、男は言葉を返すことができない。だが、二人の間に確かな繋がりが生まれた時、パァンと軽快な音を立ててリックの腰に回し蹴りが入った。
 ボーっとしているお前が悪いと言わんばかりに、ヴァハ・コルニクス(鴉の王・f21420)は腰を抑えてうずくまるリックを見下ろす。だが、彼女は何の考えも無しにリックに一撃を与えたわけではない。こちらの方が早いと合理的に判断したのだ、あくまでも合理的に。
 リックの身体に触れたことで、ヴァハの意識もまた男と繋がる。それによって男に流れてくるのはヴァハが見ていた過去の景色。
 鴉の王と謳われ、強大な力を持っていたが、逆に言えばそれしかなかったかつての自分。雄大な翼を持っていたにも関わらず地下に住み、岩盤を破って外に出ようとせず燻っていた停滞の記憶。
 だが、空を知らなかった鴉は今こうして青空の下に居る。一度死に、ちっぽけな人間の姿となったにも関わらず、以前よりも自由に世界を見て回っている。過去と今、どちらの自分が気に入っているかと言われれば、それこそ言葉にする必要はないだろう。
 普段から全く喋らず、表情も変わらないヴァハだったが、その意識は雄弁に自らの思いを語る。
 いつか転生できるのならば、死は終わりではない。新たな生への始まりとなりえるのだ、自分がそうであったように。
「空いた穴は消えなくて当然かもしれないけど、そこを埋めえるのもまた出会いなんだって……だから、辛くても前を向き続けなきゃダメだよ」
 立ち上がったリックの言葉に、男は強く拳を握りしめる。
 迷い、焦り、恐怖、望郷……様々な感情が渦を巻き、ようやく言葉に出来たのはたった一言だった。
「あなた方に、助けてほしい人が居るのです……」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 冒険 『庭園の隠れ鬼』

POW   :    池の中等、危険そうな場所を調べる

SPD   :    植え込み等、物陰の多い場所を調べる

WIZ   :    花壇等、人目を惹きやすそうな場所を調べる

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●幕間
 幻朧桜に行く途中、身体の弱い女性と恋人のために祈りに来た男性と出会った。彼らの姿はかつての僕達をどうしようもなく思い出させた。
 幻朧桜では二人のユーベルコヲド使いと出会った。真摯に祈りを捧げる者と、誠実に理を語る者、彼らの姿を見て僕は自分がどうしようもなく矮小な存在に思えた。
 最後に異なる姿を持つ青年とかつて異なる姿であった女性と出会った。彼らの繋いた意識を見て、僕は自身の過ちにようやく気づくことができた。
 だがその一方で僕はどうしようもなく臆病だということを思い知らされたのだ。


 男の案内で辿り着いたのは広々とした洋家だった。聞けば実家の別荘で、男が自由に使えるという。件の人は庭園に居る……男が話すのはそこまでだった、まだ彼の中には思い人の面影を残す影朧と別れたくないという気持ちもあるのだろう。
 罠の類が仕掛けられている様子はないが、庭園は広く探すのには少々手間がかかりそうだ。その間に男から色々と話を聞いてみてもいいかもしれない。
リック・ランドルフ
……此処に匿ってるのか。…こんな時じゃなきゃゆっくり見物でもしたくなるような場所だな。

とりあえず、植え込みや樹等の人が隠れられそうな場所を意識して捜索する。

…そして、探しながら男に件の人について聞いてみるとしよう。此処での思い出とかどんな奴だったかとかな。
……まあ、まだ決心もきっちりとついてなさそうだが、……それでも俺としては聞きたい。
依頼を受けた際に感情移入するなとは言われるが…俺は猟兵である前に刑事だから…いや、性分だな。

俺は覚えておきたい、自分が選んだ選択で周りの奴がどうなったかを。


梅ヶ枝・喜介
道中の歩みは牛歩の如しってな。悩んでるヤツのそれだ。
件の影朧はよ、それだけ想われてんだろうさ。

だから!
誰かに想い慕われるようなヤツぁ絶対悪いヤツじゃない!

押し入りみたく慌てて探す必要はねぇよ。
奴さん、逃げも隠れもしねえ。

だがすっ転んで動けねぇなんてことはあるかもな。
後で危なそうな所は見回っとく。

でも今はこの兄さんよ。
どうにも繊細そうだ、放おって置いたら病んじまう。

あんのっとには気ィ使われて伏せられちまったが、やっぱおれァ感情の男だ!
おれの名を名乗る!兄さんの名を聞く!んで兄さんの好い人の話も聞かせてもらう!
これでもう他人なんて言わせねえ!
全部終わったらおれも墓前に手を合わせに行かせてくれよ!



●遺された花は想いを表す
「貴方もユーベルコヲド使いだったのですね」
「……まあ、これも仕事の一環ってやつだ」
 男の言葉に、リック・ランドルフは僅かにバツの悪そうな表情をする。仕事柄、騙し騙されることは少なくはないリックだったが、決して気分のいいものではない。どこか重苦しい空気が二人の間に漂い始めた時だった。
「おぉ、コイツァ立派な庭だ!詳しいことはわからねぇが、しっかり手入れが届いてるのは見てわかる!」
 梅ヶ枝・喜介の感嘆の声に男とリックは呆けたように立ち尽くしてしまうが、やがてリックが喜介の言葉に同意するように頷いた。
「確かに、こんな時じゃなきゃゆっくり見物でもしたくなるような場所だ。ここの手入れはあんたが?」
「え、ああ……はい。彼女が花の類に詳しくて、今は自分がその真似をして」
 庭に咲く花を眺める男の瞳に、遠くを懐かしむ望郷の色が浮かぶ。それはこの任務の中で男が初めて見せた、穏やかな表情だった。
「謙遜することはないさ兄さん。こんなに綺麗な花を咲かせられるんだ、そいつはもう真似事なんかじゃねえ、立派に後を継いでるじゃねえか」
 狭くはない庭園。整然と並んで咲き誇る花々は勿論の事、境界である緑の壁も青々とした美しい輝きを放っている。単に残されたからと、真似事でこの美しさを保てるほど植物の世話というものは容易ではないだろう。
「大切なんだな、この場所が」
「……」
 二人の言葉に、男は言葉を返せなくなる。
 日差しを避けるように植えられた緑の屋根、一定の間隔で必ず置かれている木組みの長椅子、この庭園を見ている者が疲れないようにという思いの形。この庭園の主は、誰かの姿を思い浮かべながらこの場所を作っていったのだろう。
 そんな庭園の様子を見た喜介がリックを肘でつつき、真っ直ぐな声で断定する。
「押し入りみたく慌てて探す必要はねぇよ。奴さん、逃げも隠れもしねえ……好い人だってあんなに想い慕われるようなヤツぁ絶対悪いヤツじゃない!」
「……ああ、そうだな」
 下手な感情移入はするなと出撃前に言われたが、自分達は猟兵である前に一人の人間だ。生憎と目の前の男を仕事だけの関係と割り切れる性分ではない。
「そういや名乗ってなかったな兄さん!おれァ梅ヶ枝・喜介ってもんだ、いっちょうよろしく頼むぜ!」
「リック・ランドルフだ、刑事をやってる」
 二人の名乗りに男は一瞬戸惑いを見せたが、相手に名乗らせて自分は名乗らないのも不作法だと思ったのだろう。恐る恐ると言った様子で口を開いた。
「……矢函・旭(やはこ・あさひ)と言います」
 続く言葉は浮かばなかったのだろう、名乗るだけすると黙ってしまった男の手を喜介はガッシリと握る。
「よし、これでもうおれらは他人じゃねえ!りっくの旦那もそう思うだろ?」
「強引だな……だがまあ、そいつは否定しない」
 握られた手と、二人のユーベルコヲド使いの顔を旭は交互に見つめる。どこかガサツで強引に結ばれた絆。しかし握られた手の暖かさは、旭にとって何よりの救いのように思えた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

津久根・麦穂
アンノットさんから大体の経緯は聞きました。
ヴァハが誰かに迷惑をかけていないか心配でしたが、
あろうことかリックさんと同行していたらしいので、
詳しく聞くのは止めておきましょう……。

さて、影朧探しでしたっけ。
私なら物陰の多い所に隠れますが、
人間の常識がどこまで通じるのやら。

ところで生前の彼女はどんな方だったんでしょうね。
その方は彼にどんな生き方を望んでいたのでしょう。

いえね、私も大切な人のために他を犠牲にするという
気持ちは分からなくもないのです。
でもそういうのは相手に望まれなかったりするものですからね。
人によりますけど。

彼女がいかなる人物か知っておくことも、
もしかしたら重要かも分かりませんからね。



●盗賊は隠された願いを読み解く
「さて、大体の経緯は聞きましたが……」
 他の猟兵達とは別行動をしながら、津久根・麦穂(ストレイシーフ・f19253)は庭園を探索する。本当は男から色々と話を聞いても良かったのだが、一斉に話しかけてもパニックにしてしまうだけだろう。
 後は自分のゴーレム……というか団員が知り合いにかけた迷惑を謝罪して起きたかったが、運悪くどちらの姿も見つけられない。
「だとすれば元の仕事をするしかないのですが……果たして人間の常識がどこまで通じるのやら」
 物陰や花壇の中など、とにかく人の入れそうな場所をしらみつぶしにしている麦穂だが、人影一つ見つけることもできない。そもそも一ヵ所に留まっているかも謎だ。最悪庭園の外へ出ていることも考えてと、麦穂が外に目を向け始めた瞬間、彼の指先が何かに触れた。
「……これは?」
 どこからか落としてしまったのだろうか、周囲の花や枝を折って花壇の中にあったそれは分厚い皮表紙を持った本だった。開かれたページには文章ではなく、何処かの景色や食べ物の写真が所狭しと貼られている。
(アルバム……もしかしたら彼女がどんな人物だったかわかるかもしれませんね)
 一度顔の前で手を合わせると、麦穂は慎重にアルバムのページを捲っていく。どこかの喫茶店、瓶詰の牛乳、活動写真館、瑞々しい果物……次々とページを見ていった麦穂は、そこである違和感に気が付いた。
(人の写った写真が無い?)
 厳密に言えば道を歩く人々など背景としての人は写っている。だが人物を主体とした写真は一枚も見つからず、ページの半分ほどでアルバムは終わっていた。そこで麦穂は一度腕を組み、自分の立場からその理由を考えてみる。
 自分の大切な人。琥珀の瞳が美しい彼女と記録を残すとして、そこに自分達を映さない理由は……。
「……重荷になりたくなかったから、とか」
 自分は先に死ぬ。そう分かっていれば未来ある人の重荷にはなりたくないだろう。
 その一方で自分が居たという記録を残したいという矛盾した思いの表れが、この人の居ない写真だとすれば……。
「あの人の思いは、相手には望まれていないかもしれませんね」
 アルバムを抱え、麦穂は立ち上がる。二人の思いが込められたこのアルバムは、何かの切っ掛けになるかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔴​

リサ・ムーンリッド
私たちはまだ『彼女』と【彼女】のどちらも知らない
亡くなった【彼女】の最後
そして『彼女』との出会い…
この別荘に現れたのは…そして似ているのは、ただの神の悪戯か、それとも運命か

…もうあまり隠す必要は無いと思うけれど、引き続きキャラを作ったまま彼と話そう
引き続き【演技】から【情報収集】を行う
【彼女】については【医術】の知識からも状況を推測できるかもしれない
もし両者に繋がりがあるのなら、聞けた情報はきっと彼女の心に触れる扉の鍵になる
…嫉妬でもしてくれたらわかりやすいのだが

素敵な別荘ですね、もしよろしければ、案内していただけますか?
と誘い別荘や彼女の思い出など聞き出せれば
アドリブアレンジ歓迎


雛月・朔
【WIZ】

皆さんの説得のおかげもあって男性の案内でここまで来ましたが…普段のオブリビオン討伐とは違う感情が浮かびあがってきて調子が狂いますね…。

幻朧桜という救いがなければもっと冷徹になれたのでしょうが、先ほどの美しい桜を見てしまうとある種の奇跡が起こるのを願ってやみません。
これ以上の感情移入はお仕事に差し支えるので早めに目標を発見しましょう。そう、これは『お仕事』なんです。

男性とはそれ以上会話せず、庭を探します。対象が潔い方なら庭の美しい景色に佇んでいそうものですが…いないなら周囲の林などへ探しにいきます。


リック・シックハント
できることなら彼…旭さんに気持ちの整理をつけてもらって、自分の口から彼女さんの場所を話して欲しいよね。
止まっているより動いてる方が気分も前向きになれるし、庭の中を散歩しながら彼女との想い出を聞かせてもらおう。
人に想い出を話すのって気持ちの整理にぴったりだし、あれだけ想われている彼女のことも気になるからね!


基本的にはのんびり歩きながら、その場所であった彼女さんとの想い出を聞いていくよ。
その中で特に想い出深いところや、もう一度見たいってことがあったらその場所にUCを使って当時の景色を映しだそう。
感情を共有したみたいに景色も共有したいし、改めて見ると当時は気づかなかったこともあるかもしれないしね。



●秘めた想いは暗く燃える
「幻朧桜という救いがなければもっと冷徹になれたのでしょうが、先ほどの美しい桜を見てしまうとある種の奇跡が起こるのを願ってやみません」
 庭園の探索中、雛月・朔はそんな言葉を呟く。それは男が猟兵達と握手を交わした少し後のことだった。
「奇跡……ですか」
 その言葉を男は噛み締めるように呟く。この庭園に匿う彼女は記憶を持たない、それは影朧という存在からすればそう珍しくないことだ。しかし男はその不明瞭な過去に一抹の希望を抱いてしまった。
「ですが、わからないということは……いえ、これ以上はお仕事に差し支えますか。早めに目標を発見してしましょう」
 言いかけた言葉を飲み込み、朔は庭園の探索を始める。
(……なんともまあ、調子が狂う)
 朔自身が口にしていたように、この世界には幻朧桜という明確な救いが存在がする。それ故に彼は倒すべき存在にどこか情のようなものを抱いてしまったのかもしれない。
「これは、『お仕事』なんです」
 これ以上の感情移入を防ぐためだろうか、それだけ言うとどこか拒絶するような雰囲気を放ち始める朔に男がどう声をかけようか迷っていると、その背に柔らかい声が掛けられた。
「素敵な別荘ですね、もしよろしければ、案内していただけますか?」
「そうだね、それに少しでも歩いている方が気分も前向きになるよ」
 リサ・ムーンリッドとリック・シックハント、二人は険悪……という程でもないが、少しだけ張り詰めた空気から離すように男の手を引いて歩き出す。
 幻朧桜の持つ癒やしの力は、全ての物事を好転させるものではないのかもしれない。

「なんと言いますか、低い位置に咲いている花が多いですね?」
 リサの身長だと丁度腰辺り、少し屈まないと目線の高さに合わない位置で作花々を見てリサが首を傾げる。
「それは、彼女にとってそこが目線の高さだったんですよ」
「……車椅子かな?」
 同類――ロリコン――。という四文字が一瞬リサの脳裏を過るが、すぐにやってきたリックの言葉にそっちかと納得する。男もゆっくりと頷いているためそれで正解のようだ。
「足を悪くしていたのですか?」
「……いえ、胸を悪くしていたので、負担をかけないように」
 苦々しい顔をすると、男は何かを振り払うように歩き出す。慌ててその後を追いながら、リサは自分の胸に手を当てる。
 胸……つまりは心臓だろう。病には色々と種類があるが、総じてここに発生するものは面倒だ。
 確実に寿命を削り、手術が失敗すれば間違いなく命を落とす。死神が常に喉元に刃を押し当てているようなものだ。
 それは、どれだけの恐怖を彼女に与えていたのだろうか。
「……彼女はこの先に」
 少しして、小さくそれだけ呟くと男は花でできた壁の前で立ち止まる。左右に道が続く所謂丁字路。どちらに曲がるのかと猟兵が考えた瞬間、男はカーテンを捲り上げるように壁を開いた。
「隠し通路……」
 探索者の性か一瞬目を輝かせるリサだったが、すぐに設定を思い出し驚いた令嬢らしい表情を作る。それを見ていたリックが微笑ましい物を見るような眼をしていたが、気のせいだと思おう。
「ここは、彼女とよくきたのかな?」
「ええ。お茶を飲んだり、アルバムを見たり……家を抜け出した彼女が隠れるのもいつもここでした」
「……教えてくれてありがとう、旭さん」
 男に対して、リックは深々と頭を下げる。
 きっと、並大抵の覚悟では無かっただろう。彼からしてみれば何よりも大切な存在を、自ら裏切ったことと同じなのだから。
 壁の先にはちょっとした広場になっており、中央には小さなテーブルと椅子が二つ。その周囲を囲むように金木犀の花が咲いており……それだけだった。
「……そんな、どこに!?」
 さっと顔を青くした男が、誰もいないテーブルに駆け寄る。ここに来るまでの間、男なりに彼女が居そうな場所には目を付けていた。しかし彼女の姿はとんと見えず、それ故に彼は最後に残ったこの場所に居ると考えていたのだ。
 ここにも居なければ、もしや外に……そう思った瞬間男の身体から力が抜け、倒れそうになった身体を咄嗟にリサが支える。
「落ち着いて、彼女が他に居そうな場所は?」
「わからない、一体どこに……」
 男を落ち着かせるように、リサはゆっくりと彼の背中を撫でる。その一方で地面に新しい足跡を見つけたリックは、その小さな手掛かりにユーベルコードを放った。


 結論から言えば、彼女は庭園からは出ていない。
 ただ、彼女は男の後ろをひたすらに追従していた。彼がユーベルコヲド使いを連れてきたことも、それに絆されるところも、全て見ていた。無論、自分が隠れているであろう場所を自ら話したことも。
 悲しみ、嫉妬、裏切り。秘められた想いで輝く癒しの炎は、影朧の内に燃え上がる暗い感情を映し出していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『血まみれ女学生』

POW   :    乙女ノ血爪
【異様なまでに鋭く長く伸びた指の爪】が命中した対象を切断する。
SPD   :    血濡ラレタ哀哭
【悲しみの感情に満ちた叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    応報ノ涙
全身を【目から溢れ出す黒い血の涙】で覆い、自身が敵から受けた【肉体的・精神的を問わない痛み】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●幕間
 影朧は幻朧桜の癒しによって新たな生を受ける、それが正しいことなのだと知識では知っている。
 だが、僕の頭の中で誰かが囁くのだ。彼女を裏切ったと、見殺しにするのはこれで二回目だと。
 僕は何をすれば、自分が正しいことをできたと思えるのだろう。



 男に気づかれないように追従していた影朧は、男から離れた位置に居る猟兵からは見つけ出すのは容易である。
 現在全ての猟兵は影朧の現在位置を把握しており、その一方で男は彼女の存在に気づいてない。一斉に攻撃を仕掛ければ男の知らないところで全てを終わらせることも可能だろう。
 止めどなく溢れる血の涙は彼女が影朧として覚醒した証、その精神状態は常人では計り知れないものかもしれない。
 それでも彼女に言葉をかけるか、あるいは男と出会わせるか、選択は猟兵達にある。
リック・シックハント
【芋】
キミがどれだけ旭さんを想っているか今のキミとあの炎を見ればわかるよ
その強い想いがキミと旭さんの絆を示しているからボクはそれをもう一度確かな形にしよう
ずっと一緒には居させてあげられないからボクたちでキミの中にある本当の想いを引き出してみせる!

UCで「キミが本当に旭さんに伝えたいことは何?」と問いかけよう
負の感情で満たされた今の言葉も嘘ではないけど
それよりも深い場所の答えじゃないと納得できないよ
旭さんが前に立てるように力だけじゃなく負の感情も弱体化させていくね

せめてものケジメとして彼女の叫びを甘んじて受けいれて
答えの前に倒されそうになったら身を挺して止めよう
…ごめんね、最後はお願いマスター


リサ・ムーンリッド
【芋】で参加

停滞は人生の損失だ!時計の針は止めるものじゃあない
半端に引きずるならいっそ放り投げるんだ!そうでなければ、曝け出そう

暗い感情の多くは好意や期待の裏返しだが…そこを語ってもらわなければスッキリしない
ならこのユーベルコードで本心を引き出せれば…

庭園は身を挺してでも守る
この庭には人々を安らかにせる今と、これからもそうあり続ける未来がある、もちろん過去が残した今と未来だ
私は今を特に大事と考える。だから今を満足させることに全力を出す!

二人が両思いなら抱けー!と煽る。未練は全て思い出と共にここに置いていくんだ

機会があれば『マジック・メモリー』に入れておいた魔法を一つ

アドリブアレンジ歓迎


リック・ランドルフ
【芋】
矢函に彼女の状態、今から殺す事を伝える。

そして…最初にあった時に話したよな?結婚寸前の時に事故で亡くしたって。あれ実は嘘なんだ。
本当はな…俺が殺した。…殺したようなもんなんだ。…矢函、俺は伝えられなかった。だから別れの言葉は、伝えたい事があるならちゃんと伝えとけ。
そう言い残して殺しに行く。


リックやリザに何か策があるようだ。…なら俺の仕事は…それの手助けだな。
影朧の元へと着いたら影朧を引き付ける。影朧からの攻撃を正面から【防弾ベスト】(激痛耐性)で防いだり【スーパーロープ】で敵の爪を受け流したりしながら影朧へとゆっくりと歩いて近寄り、UCで相手を拘束する。

そしてトドメは…出来るなら俺がやる


雛月・朔
【WIZ】

(せめてもう少し、感情を揺り動かされないお仕事だったらどんなに楽だったことか…。このままなんの言葉を交わさずにお別れは彼の心にしこりを残しそうです。危ないけど、拘束を試みますか…)

影朧と男性の間に入り、直接危害を加えることが出来ないように守ります。
男性側には【念動力】【範囲攻撃】【オーラ防御】で『不可視の壁』を張り守り、影朧には【呪詛】【範囲攻撃】【マヒ攻撃】で『金縛りの呪詛』を放ち動きを止めます。

正直、ここで速やかに討伐するべきなんでしょうが…こちらは超弩級戦力と評されるユーベルコヲド使い、2人が語らう時間やチャンスくらい稼いでみます。
話終わったり拘束が無理なら即座に攻撃に移ります


梅ヶ枝・喜介
暗い顔した影朧の嬢ちゃんと、まごついてる旭をちらりと見比べて決心するぜ
こいつらをこのままにしちゃあおけねえ

惚れた相手に言葉一つかけられず終わるのも
好いた相手を勘違いして襲うのも

そんなクソッ垂れな結末は認めんッ!

泣き別れなんぞにしてたまるか

その為にもよ!
大事ならねえよう、身体を張るのが!
粋なダチってもんだろう!

武器は要らん
おれに出来るのは腕力任せに影朧の嬢ちゃんを押さえとくこと
爪に咲かれようが悲鳴が耳をつんざこうが知るか
頑丈に鍛えたこの身体
いま使わずしていつ使う

言葉をかけるのは旭!テメェだ!男を見せろ!
本当に最後の別れなんだぜ!
胸の内を叫べ!ちゃんと伝わるようにな!

今言わなけりゃあ一生後悔する!


津久根・麦穂
正直、あの影朧がなんなのか私にはよく分かりませんが、でも……。
とりあえず優先すべきは旭さんの無事でしょう。
戦闘は苦手ですが、人ひとりかばって逃げるくらいなら私にも出来ます。

先程入手したアルバムを持って、とりあえずは二人の間を目標にゆっくりと移動します。
途中で気付かれたら話しかけてみましょう。
彼女は彼にどういう生き方を望んでいたか……。
私の想像に過ぎませんけどね。

影朧に話が通じそうにない場合?
うーん、どうなんでしょうね。それでもやはり話しかけてみますか。
中途半端な戦法だとどうせ上手く行かない気もします。
今回は交渉に徹してみましょう。

あ、交渉と言ってもいきなり銃をぶっ放すアレではないので……。



●後日譚は前へと進む
 やろうと思えば、不意を突いて影朧を消滅させることもできただろう。だが、この場に集まった猟兵達にその選択をする者は居なかった。
「いいか矢函、すぐそこまでお前の言う彼女が来ている。そして、俺は今からソイツを殺すつもりだ」
 項垂れる男に、他の猟兵から影朧の位置を聞いたリック・ランドルフが一切の虚飾の無い真実を伝える。その言葉を聞いた男は表情を強張らせ、何か言葉を発しようと口を開くが、結局は何も言えず再び項垂れてしまった。
 ずっと続いた心の葛藤に疲れてしまったのだろうか、脱力した男は立ち上がろうともしない。これ以上は無理かとリックが背を向けた瞬間、引き上げられるようにして男が立ち上がった。
「何をボンヤリしてるんだ!停滞は人生の損失、時計の針は止めるものじゃあない!」
 我慢できなくなったように叫びながら、リサ・ムーンリッドは肩を貸すようにして男の身体を支える。彼女は人の心というものをあまり知らない。だが、万象を解き明かすことを命題とする錬金術師としてのプライドが男の行動を許せないと感じたのだ。
「半端に引きずるならいっそ放り投げるんだ!そうでなければ、曝け出そう!」
 ああすれば良かったなど、机上の空論を語る暇があるのならば実行に移すのが錬金術師だ。実証したい命題があるにも関わらず、動こうとしないなんて愚行は目に余る。
「リサさんの言う通りだよ。彼女さんも言いたいことがあるだろうし、二人で腹を割って話そう」
 空いていたもう一つの肩を、リック・シックハントが支える。影朧が男の恋人だったという確証はない、だがあそこまで強い感情を抱いているのならば間違いはないだろうという確信がシックハントにはあった。
 二人の猟兵に支えられながらも、震える足で男は一歩前に踏み出す。その足音を聞いたリックが、不意に真剣な表情で振り返った。
「……行く前に、お前に話しておきたいことがある」

(……来ましたか)
 猟兵に支えられながらも、影朧と対峙するように出てきた男の姿を見て雛月・朔は小さく息を吐く。普通に考えれば、オブリビオンが執着している相手を戦場に連れてくるなんて言語両断だ。
 しかしどういうことか、その様子を見て朔は少し安堵したように思う。
(せめてもう少し、感情を揺り動かされないお仕事だったらどんなに楽だったことか……このままなんの言葉を交わさずにお別れは彼の心にしこりを残しそうです)
 せめて防御と拘束を。と朔がユーベルコードの準備をした瞬間、男の口が開いた。
「……僕は――」
 絞り出すような男の声は、強烈な空気の振動によって掻き消された。可聴域の可聴域を超えた音の波動は、猟兵達の耳には「喋るな」といったニュアンスを含んでいるように聞こえた。
 全方位に放たれる無差別な音の攻撃は当然男にも降りかかる。朔の念動が男の前に不可視の壁を作り出しその身を守ろうとするが、その完成よりも早く何者かが二人の間に飛び出した。
 音の刃がその者の身体を斬り裂き、鮮血と服の切れ端が舞う。
「まったく、放っておけねえなぁ二人とも」
 だが、庭園に血の雫を落としながらも、梅ヶ枝・喜介は気丈な笑顔を浮かべて見せた。惚れた相手に言葉一つかけられず終わるのも、好いた相手を勘違いして襲うのも、総じてクソッ垂れな結末だ。そんな泣き別れになどさせてたまるか。
「その為にもよ!大事ならねえよう、身体を張るのが粋なダチってもんだろう!」
 宣言するように叫ぶ喜介だったが、そのせいで妙な力が入ったのか額の傷から噴水のように血が噴き出す。急な失血で喜介の身体がぐらりと傾くが、咄嗟に津久根・麦穂がその身体を支える。
「いや、でもせめて防御用のユーベルコードを使いません?」
「そう小器用なもん持ってなくてなぁ……なに、頑丈に鍛えたこの身体があれば大丈夫よ!」
 快活に笑う喜介を立たせ、麦穂は影朧と相対する。こっそり近づくつもりだったが、こうなってしまってはしょうがない。先程拾ったアルバムを手に、麦穂は交渉――彼の良く知る人物が行う物理的なものではない――を試みる。
「このアルバム、お二人が撮ったものですよね……僭越ながら拝見させていただきました」
 取り出された皮表紙の本を見て、正面と背後の双方から息を呑むような気配を感じる。一先ず逆上して襲ってくるようなことはなさそうだ。
「この中の写真の特殊性を、今更説明する必要はないでしょう。私はそこに一つの仮説を立てました……彼女は先立つ自分の事を重く見てほしくはなかった、彼に自由に生きてほしかったのではないかと」
 じわりと麦穂の背中に冷や汗が浮かぶ、感じているのは不安か重圧か。麦穂の話を静かに聞いていた影朧だったが、やがて僅かに脱力したように俯いた。
(これは、効果が……?)
 その様子を見た麦穂が胸を撫で下ろそうとした瞬間、黒い軌跡を残して影朧の姿が消えた。
 脱力から瞬時に力を入れて前に踏み出すことは、肉食獣が狩りで行う動きだという。溢れ出す血の涙で身体を覆った影朧の爪が麦穂と喜介の身体を切り裂こうとした瞬間、彼女の身体がビンッという音と共に空中で固められた。
「正直、ここで速やかに討伐するべきなんでしょうが…二人が語らう時間やチャンスくらい稼いでみます」
「俺も、今回の仕事はあいつらの手助けだからな」
 朔の糸とリックのロープが影朧に絡みつき、その身体を拘束する。その隙にシックハントとリサが動いた。
「あの炎を見れば、キミがどれだけ旭さんを想っているかわかるよ。だから聞かせてほしい、キミが本当に旭さんに伝えたいことは何?」
「暗い感情の多くは好意や期待の裏返しだ、そこを語ってもらわなければスッキリしない!」
 シックハントの質問と共に、リサの放ったハートの矢じりを持つ矢が影朧に突き刺さる。その矢は相手を殺すためのものではない、ただ真実閉ざす扉を打ち砕くための一射。同時にシックハントの呼び出した獣が影朧の血を吸い上げその力を弱めていく。
 縛り上げられた影朧が顔を上げ、ゆっくりと口を開く。
 矢の効果は男も聞いている。彼女の口からどのような罵詈雑言が飛び出そうと、彼は受け止める覚悟だった。
「……羨ましかった」
 ポツリと、影朧はそれだけを呟く。矢の効果は確かに働いている、彼女が応えたのは紛れもない真実だ……だが、一体何を羨ましいというのか?そう疑問に感じたリサとシックハントは思わず男の顔を見る。彼の表情は驚愕しているようで、何かを恥じているようだった。

 ―最初にあった時に話したよな?結婚寸前の時に事故で亡くしたって。あれ実は嘘なんだ。
 ―本当はな…俺が殺した。…殺したようなもんなんだ。…矢函、俺は伝えられなかった。
 ―だから別れの言葉は、伝えたい事があるならちゃんと伝えとけ。

 リックから言われた言葉が頭に反芻する。
 ―彼女は先立つ自分の事を重く見てほしくはなかったのではないか
 そして麦穂が明かしてくれた彼女の思い。
「言葉をかけるのは旭!テメェだ!男を見せろ!」
 喜介の言葉に背中を押され、男は震える手で首に下げていたカメラを掲げると、それを勢いよく地面に叩き付けた。
「貴女と共に過ごした日々は……この庭園で、共に過ごした『一日』は、とても幸福なものでした!」
 男の告白で、シックハントは影朧の言葉の真意に気づいた。
 昨日の自分と今日の自分が同一人物だと思えるのはそこに意識の連続性があるからだ、しかし影朧にはそれがない。過去の記憶を持たぬ彼女にとって、昨日の自分というものは他人に過ぎない。
 だから羨ましいと言ったのだ。今日の自分が愛している人に愛されている、昨日の自分のことを。だから男は告白するのだ、確かに心惹かれた今日の彼女に。それを理解した瞬間、獣の姿が消滅する。
「ですから、私は貴女のことを忘れません!明日の誰かを好きになっても、貴女のことを絶対に!」
 なんともまあ不格好で、情けなくて、青臭い告白だろう。だが胸の内から出された言葉を聞いて、影朧の頬に透明な雫が流れる。
「……ありがとう」
 その笑顔はとても鮮明で、男の記憶にあるどんな表情よりも眩く、そして幻のように静かに消えていくのだった。

●猟兵達のエピローグ
 あの時、確かに引き金は引かれた。だがその銃声が聞こえる者が居なかったのは皆何かに集中していたからか、それとも……。
 考えても答えは出てこない、ただ胸の内を伝えられてよかったと思う、別れ際のどこか憑き物の落ちたような表情を見て、後悔のようなものは感じられなかった。だから安心してもいいだろう。
 舞い散る桜吹雪を背に、帰還準備に入る。もしこの花弁に過去の魂が宿っているなら、どうか安らかに。
 そして人々が生きる大切な日々をいつまでも見守っていて欲しいと、切に願う。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年10月08日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サクラミラージュ


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト