31
虹色トレジャー・マーケット

#アックス&ウィザーズ #エレメンタル・バット #呪飾獣カツィカ


●その街では地上に虹が架かるんだ(とある旅商人/年齢不詳)
 旬を迎えた果物。珍しい薬草。染料に使える樹の皮や花の種。
 見つけられた時のままの姿をした原石、磨かれてカットされて新たな魅力を得た宝石。
 誰かの手で生まれ変わる時を待つ生地や糸。
 鍛冶職人たちの武器防具に、守護の魔法や祈りが注がれた装身具。
 芸術家たちが心血こめて作り上げた絵画、壺、絨毯、ランプ、指輪に首飾りに髪飾り。
 そういったものが色ごとに分けられて、国王様のパレードでもすんのかってくらいの通りに、ズラァーーーッと並ぶんだ。東から西へ、赤、橙、黄、白、緑、青、紫、黒っていう順にね。
 そりゃあ壮観だよ。
 柱と縄と、白い布で作った天幕の下に並んでいるからね。空からは見えないが、地面に足つけて歩くか低い位置を飛んでりゃあ、そこに並ぶお宝たちの色が広がってるんだ。
 宝石やランプが並んでるとこなんかは天幕にその色がきらきら映ってねぇ……「その天幕を売ってくれ」なんて酔っぱらいも出るくらいさ!

 そう語った旅商人の手には、甘く薫る水で満たされた杯ひとつ。
 旅商人は虹に乾杯! と言ってそれをぐいっ。からの、ゴンッ。
 彼と同席していた若き冒険者たちは、テーブルと豪快なキスをした旅商人が怪我をしてないか確認した後、目を輝かせ語り合う。
「私は橙の石を使ったブローチが欲しい。獣を模ったデザインなら尚良しだ」
「無茶ばかりする誰かさんたちの為にも薬草だって外せないよ? 知らないものがありそうだし、たっぷり見ていきたいな」
「楽しみよねぇ。明日の朝出発したら遅くても二日後には着くかな。開催前日だし宿は取れないかもしれないけど……その時はその時で。うふふ」

 最重要項目は虹架かる街へ辿り着く事。
 宿の心配よりも、虹色の宝に出逢う事の方が、ずっとずうーっと大切なのだ。

●虹色トレジャー・マーケット
 空ではなく、地上に虹が架かる街の名は『ウォビニア』。
 虹架かる市場は街の中心を横切る大通りで開催されるのだが、並ぶ品々は街の審査を通過した逸品ばかり。広がる虹色の美しさも加わって評判が評判を呼び、市場開催の合図であるラッパを待ち侘びる心は、宝と同じくらいその数を増やしている。
 住民、外から来た商人、冒険者に観光客。

 ――その中に、底無しの欲望に濡れた魂も混じっていた。

 名は『呪飾獣カツィカ』。欲望のままに煌めく金品を求め、あらゆるものを襲い、奪っていくオブリビオンだ。そのカツィカはウォビニア手前に広がる森に潜んでおり、このままだと商品を運んできた商隊が襲われてしまう。
 商隊が襲われれば、その次に狙われるのは当然、宝集う街そのもの。

「そんなの絶対にダメです……!」
 虹を架ける品々。楽しみに待つ人々。その全てが奪われていい筈がない。
 ルル・ミール(賢者の卵・f06050)の犬耳は気合いでピンッと立ち、蛇尻尾はゆらり、ゆらあり。ルルと蛇尻尾、両方の目が猟兵たちを真っ直ぐ見る。
「でも『ダメです』って言って聞いてくれる人じゃないので、物理でダメですって叩き込んじゃってください!」
 今から転移すれば、商隊が森に入るより先に到着出来る。猟兵の出現に気付いたカツィカは、配下のエレメンタル・バットをけしかけてくる筈だ。
 戦場となる森は緑濃い静かな場所だが、地面や木の根本には洞窟と通じる穴がやたらと開いていて――そこから群れ成した蝙蝠たちが溢れ、襲いかかってくる。
「結構多いんですけど、でも、皆さんならきっと大丈夫だと思います」
 それにですね!
 皆さんならきっと大丈夫、で拳をむんっと作っていたルルの目が、きらきら輝いた。
 エレメンタル・バットの中心にあるコアには魔力が溜めこまれており、倒せば良質な魔法石が手に入る。それはそのまま土産に出来るだけでなく、市場で指輪や首飾りなどのパーツを買って職人に渡せば、世界に一つだけの“宝”を得る事も可能だ。
 エレメンタル・バットを倒した後には、カツィカ本人が姿を見せるだろう。
 全身に纏う呪詛で容赦なく攻撃してくるが――。
「奪ってばっかりの人に皆さんが負ける筈ありません。皆さんなら、ウォビニアも、虹色の宝物も守れます。きっと!」
 明るい声と共に世界が変わっていく。
 そして、春を迎えつつある森が、猟兵たちを受け止めた。


東間
 閲覧ありがとうございます、東間(あずま)です。
 アックス&ウィザーズでの冒険と、虹架かる市場へのお誘いです。

●プレイング受付期間
 個人ページトップ及びツイッター(https://twitter.com/azu_ma_tw)でお知らせします。プレイング送信前に一度ご確認くださいませ。

●戦闘リプレイについて
 第一章は『エレメンタル・バット』との戦いです。
 倒せば色ごとに違う属性を持った魔法石が手に入ります。数に制限はありません。
 こんな色の石が手に入った・これだけ手に入れた、など、どうぞお好きに!
 第二章は、『呪飾獣カツィカ』との戦闘になります。

●第三章 日常『のんびり市場巡り!』
 大通りにて、虹架かる市場をお楽しみ頂けます。
 余程のものでなければ何でもありますが、奴隷を始めとした“生きているもの”はありません。
 アイテムの自動発行はない為、ご注意くださいませ。
 プレイングでお誘いいただいた場合のみ、ルル・ミールもお邪魔します。

●お願い
 同行者がいる方はプレイングに【お相手の名前とID、もしくはグループ名】の明記をお願い致します。複数人参加はキャパシティの関係で【三人】まで。

 プレイング送信のタイミング=失効日がバラバラだと、納品に間に合わず一度流さざるをえない可能性がある為、プレイング送信日の統一をお願い致します。
 日付を跨ぎそうな場合は、翌8:31以降の送信だと〆切が少し延びてお得。

 以上です。
 皆様のご参加、お待ちしております。
193




第1章 集団戦 『エレメンタル・バット』

POW   :    魔力食い
戦闘中に食べた【仲間のコアや魔法石、魔力】の量と質に応じて【中心のコアが活性化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    魔力幻影
【コアを持たないが自身とそっくりな蝙蝠】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    魔力音波
【コアにため込んだ魔力を使って両翼】から【強い魔力】を放ち、【魔力酔い】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●地底からの使者
 野花が点々と咲き、冬を乗り越えた木々が佇む。
 ――静かだ。
 けれどそれも束の間の事。
 どこかから音がした。それは高く、鋭く――例えるなら風に揺られて泣く木々の音。決定的に違うのは、深く遠いそこから伝わる音は明確な殺意を孕み、無数に重なった命の音という事。
 迫り来る音は、あちこちから。
 兎の巣穴に似た大きさの穴。子供であれば通れるだろう穴。熊がねぐらにしていたのかと錯覚するような、大きな穴。一帯にぽかりと開いた闇色から、無数の音が木霊しながらやって来て。

 ――ィ。

 ――キ、ィ。

 ――キキキキィィキィキャキャキィアアァ!!

 悲鳴に似て、咆吼には遠く、鳴き声というには凶悪。
 羽ばたきと声を激しく反響させ、森中の穴からざばああと溢れたエレメンタル・バットの群れが、猟兵たちに牙を剥く。
 魔力が欲しい魔力が喰いたいと訴える殺意の波は羽ばたきと共に広がって。
 闇色の中。幾つもの色が、輝石が、ちかちかと煌めいた。
 
飛鳥井・藤彦
地上に虹が架かる街、さぞ綺麗で楽しい場所なんやろなぁ。
是非ともこの目で確かめんと。
それに絵具の材料も探しとったんよ。
エレメンタル・バットの魔法石なら丁度ええわ。
形のええ奴は装飾品に、割れた奴や歪なんは絵具にさせて貰いますわ。

蝙蝠の群れが飛び出して来たら慌てることなく、のらりくらりと攻撃を見切って躱し。
同時に袖から符の束を取り出してばら撒きます。
目隠し? それだけやないです。
淀みなく詠唱を紡げば符の束は藤の花へと転じ。
大量の花弁で蝙蝠の群れを呑み込みます。

後は魔法石を拾い、品定めしながら袋の中へ。
青と紫がよお使うんやけど……赤もあるとええなぁ。
柘榴や兎の目を思わせるとびきり綺麗な赤が欲しいんよ。



 様々な煌めきを抱えた闇色が激しくうねり、飛ぶ。
 キキャギャと響く声はやかましい。けれど飛鳥井・藤彦(春を描く・f14531)は「ああ、」とやわらかに笑い、草色の地面を蹴った。
「ぎょうさん出てきはったなぁ」
 地上に虹が架かる街とやらは初めてだ。さぞ綺麗で楽しい場所なんやろなぁ。藤彦は期待を零しながら苔生した太い根を越え、くるり。両翼より放った魔力の波を避けられた蝙蝠たちも、空中でぐるんと向きを変え藤彦を追い回す。
 迫る気配と鳴き声に、しかし藤彦はやわらかに笑んだまま。
 翻った袖から美しい絵とことばが書かれた符を羽ばたかせるように広げれば、蝙蝠たちがけたたましく鳴いて散り、再び一つの群れになる。
『ッギィ!』
『キキ、ギャイ!』
「言い忘れとったけど、それ。目隠しだけやないんよ」

 “恋しけば形見にせむと我がやどに――”

 淀みなく綴られた声が森の中に藤の花を咲かせていく。広がる様は儚く優美、それでいて蝙蝠以上の波となって、さらさらと。黒い群れは藤色に囲まれ、閉じ込められて。
『ッキ、ィ――……』
 小さな声を最後にぴたりと静かになれば、辺りに散らばるのは煌めく魔法石ばかり。
 絵具の材料を探していた藤彦は、丁度ええわと楽しそうに品定めを開始した。形のいいものは装飾品に。割れや傷があるもの、歪なものは絵具にと、手にした魔法石をそれぞれの袋に入れていく。
「よお使うんは青と紫やけど……赤もあるとええなぁ」
 例えば、柘榴や兎の目を思わせるとびきり綺麗な――。
「ああ、これなんてええなぁ。柘榴の実によぉ似とる」
 あたたかに笑う瞳に映るのは深く艶めく赤。歪だが色が実にいい。
 柘榴のような赤い魔法石を袋に入れたら次なる彩を探して、転がる輝石と見つめ合う。
 瑠璃の青、藍染めの青、菫の紫。
 兎の目に似た赤もきっと、煌めく色の、その中に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

わあ出てきた出てきた
聞けばイイモノ手に入るらしいじゃナイ?
カモネギってヤツよねぇ

あは、たぬちゃんたらお行儀悪ーぅい
常の自分の所業は棚上げで
ねぇソレ虹色にコンプリートしましょ、と敵へ手を差し出す

魔力が欲しい?ならコッチにおいでなさいな
指先染める「椿姫」から『範囲攻撃』で誘い込む『呪詛』を薄く薄く広げ『誘惑』するヨ
ホラたぬちゃん、たっくさん仕留めてねぇ
高みの見物ばかりじゃナンだから
打ち漏らしやまだ手にいれてない色があれば
自身の影から【黒電】放ち
『2回攻撃』で『傷口えぐって』仕留めてくネ

二人合わせて揃える虹色とは別に
青空のような透明なアオがあったら、持って帰りたいなぁ


火狸・さつま
コノf03130と!

わぁわぁ!いっぱい!ばさばさ!!
ぴょんぴょこ足取り軽く近寄り
ひゃ!うるさ…!
おみみぺたんと下げ
ひゅんっと距離詰め『早業・先制攻撃』
<彩霞>に炎纏わせ『属性攻撃』

落ちてきた魔法石ぺかーっとかかげ、わぁいわぁい!
美味しそ!!
思わずぱくんっっ
……。
もごもご……ぺっ
甘く、ない…ね?
飴ちゃん想像した
ちょとションボリするも
すぐに気を取り直し
いろんな色、いてる!
虹色、せいはー!
えぃえぃおー。と、こぶしあげて

あーかに橙、黄色に緑~あーおに藍に紫はー
むすんでひらいての音程で『歌唱』し『おびき寄せ』
【燐火】の仔達を嗾け
『2回攻撃』<雷火>の雷撃『範囲攻撃』
コノに魅かれて来た敵も纏めて一網打尽!



 彼方から響いていた音が、大樹の根元からどうっと溢れる。それは、小石をぶつけられて烈火の如く怒り狂う蜂軍団にも負けない勢いと数と、圧。しかし。
「わあ出てきた出てきた」
「わぁわぁ! いっぱい! ばさばさ!!」
 イイモノをきらきらさせて飛んできた闇色に、カモネギってヤツよねぇとコノハ・ライゼ(空々・f03130)はいつものように笑い、火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)も無邪気な笑顔を輝かせる。森の中をたた、たんっと駆け――ばさささッ!!
「ひゃ! うるさ……!」

 キキャギギギャイギャキイッ!!?

 蝙蝠たちは“向こうから軽快にやって来る”と思っていなかったらしく、さつまと思いっきり擦れ違いながら大混乱。さつまもあまりの騒音で狐耳をぺたっと下げて。
「たぬちゃん大丈夫?」
「う……びっくりした、けど、平気……!」
 狐耳が元気よく立ち上がるのと同時に、さつまの体がひゅんっ、と風のように駆けた。ちりりと揺れた青い煌めきは、一瞬で閃いた炎の刃に結わえられた石飾り。真っ黒な体からぽろりこぼれ落ちた魔法石がさつまの双眸に映り、その輝きに負けないくらいの笑顔がぺかーっと咲く。
「わぁいわぁい! 美味しそ!!」
 ぴかぴかメロン色に思わず“いただきます”、と、ぱくんっ。
 しかし、もごもごされたメロン色もとい魔法石はすぐにぺっと吐き出された。
「あは、たぬちゃんたらお行儀悪ーぅい」
「う、だって甘く、なかた……よ?」
 飴ちゃんと全然ちがうと狐耳も肩も落としたさつまに、コノハは自身が日頃している“食事”を棚に上げた後、飛び回る蝙蝠を見て悪い笑み。
「ねぇソレ虹色にコンプリートしましょ」
 ――おいで。コノハが差し出した手、その指先染める呪紋の彩が咲いて音もなく“広がった”なら、自分が猟兵の魔力を喰らうのだと同じ蝙蝠に食い付いていた個体を筆頭に、黒い波がばささとコノハへ向かっていく。
『キギャキャ!』
『ッギキ!』
「ホラたぬちゃん、たっくさん仕留めてねぇ」
「する! 虹色、せいはー!」

 ♪あーかに橙、黄色に緑~あーおに藍に紫はー

 ぺたんとさせていた耳も気分も『えぃえぃおー』と拳上げて元通り。むすんでひらいて、の旋律で生み出した青炎の可愛らしい仔狐は、ぴょんと空中を駆けてコノハへ迫る蝙蝠たちを足場にホップ、ステップ、ジャンプ。
 魔力の塊ともいえる仔狐へ一瞬気を取られた蝙蝠がいた――けれど。仔狐に触れられたら最後、さつまの意志秘めた青い炎に包まれ燃えるしかない。
 甲高い悲鳴をあとに色とりどりの魔法石が散らばれば、森の中に宝までの道筋が煌めくようで。
「赤、緑……あっ、黄色! コノ~。いろんな色、いた!」
「ナイスたぬちゃん。虹色コンプできてンじゃない?」
 仔狐の足場とされずに済んだ蝙蝠数匹は、影狐が黒い稲妻纏って噛み付き、斬り裂いた後。
 暫し静寂が戻ったそこで二人は魔法石を広げ、色ごとに分けていく。淡い色、深い色、驚くくらい鮮やかな色。その中にあった一つの青に、コノハはほんの一瞬目を見開いた。
「ねぇたぬちゃん。このアオ、持って帰ってイイ?」
「どのあお?」
 これ。小さく笑ったコノハの指につつかれて、ころりと動いた丸い魔法石。
 若葉に映るその色は、透き通った空の色。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス
A&Wの市場ですか…興味深いです。
或る事情から魔術を研究しているのですが、研究の参考になる品もあるかも知れませんね。
オブリビオンが商隊を狙っているというなら、尚更向かわない訳にはいかないでしょう。

闇色の狼の姿のUDC「ツキ」とフクロウの姿の精霊「ノクス」を従え、森の中。
ノクスはA&Wが故郷なので、ご機嫌です。

【指定UC】で攻撃。僕は詠唱銃で援護します。
コアのあるバットは【部位破壊】で翼を落とし、ツキにとどめを。
幻影は【破魔】を込めた銃撃で払います。

赤橙黄白緑青紫黒一通りあるようです。数は20個程。
特に輝く赤い魔法石を陽に翳し
(ドロップアイテムなんてゲームみたいだ)と思ってしまったのは内緒です。



 緑の中、梟が音もなく舞う。
 伸び伸びと飛ぶ様からご機嫌なのがわかり、闇色狼を従えたシン・クレスケンス(真実を探求する眼・f09866)は目を細めた。この世界は梟の――精霊ノクスの故郷。暫しこのまま、と思うが。
「そろそろですね」
 呟いたシンの傍へノクスが戻り、UDCである闇色狼・ツキが前に出る。
 この世界が興味深いのは勿論、虹の市場に魔術研究の参考になる品があるやも、という思いもあって来たのだが、オブリビオンが虹の一部を担う商隊を狙うとあれば、今すべき事は一つ。
『キキャ、ッキィキギギキ!!』
 木々の向こうから闇色の群れが溢れた瞬間、ツキが駆けた。幹を足場に蝙蝠たちの頭上に跳び、乱れ舞う闇色の中へ。そのまま着地したツキの口には鋭い牙によって捕らえられた蝙蝠が一体。逃れようにも両の翼はしっかりと噛まれている為、何も出来ぬままぶちりと引きちぎられ、コアだけを残し消滅した。
『ギキキッ!』
 ツキがUDCであるが故に美味そうに見えたのか。別の蝙蝠が風を切って迫るが、ほんの一回上下させた刹那に響いた銃声二発。穴の開いた翼で飛ぶのは困難で。
「ツキ」
 名だけを口にしたシンの目は白銀の美しい銃と共に次なる獲物へと。
 蝙蝠たちの魂の匂い、魔力の波形。目には見えないそれを“捉えた”ツキの牙が、シンの放った銃弾の後を追って蝙蝠たちを屠っていく。そのたびに大地へと落ちる煌めき、数多の色が、戦場見つめるノクスの瞳に映り込んで。
「一通り揃ったようですね」
 20個ほどある魔法石の中から特に赤く見えた魔法石を陽に翳してみれば、陽を浴びた事で炎のような美しさを放ち始める。蝙蝠は消え、魔法石が残る、なんて。
(「ドロップアイテムなんてゲームみたいだ」)
 つい思ってしまったそれを見透かすようなノクスの眼差しに、シンは何でもありませんよと笑って誤魔化した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
◆ねーさん(リュシカ/f00717)と


良質な魔法石が手に入る魔物、か
こういうのを聞くと、
魔物退治で生計を立てられるってのもわかる気がする

……ところでねーさん、目の色が変わってるけど?
いやまあ、そうだろうとは思ったけどさ

魔力を放出した敵から墜としてほしいって?
オーケー、了解
相手の動きをしっかり見て、一体ずつ確実に墜とそう
コアを残すなら翼を撃ち抜けばいいかな
よく狙うのは得意だ、外しやしないし
傷をつけるようなヘマもしないよ

…………ああ、そうだ
戦利品、ひとつだけ後で分けてもらえる?
深い紫色のがあれば、それがいいな
使い道は、……内緒ってことで

……お、ねーさん
この辺のはまだ傷が少ないぜ、使えそうじゃない?


リュシカ・シュテーイン
鳴宮さん(f01612)とですぅ

そりゃぁ、目の色もギラギラしちゃいますよぉ!
タダで手に入るぅ、法石用のジュエルだなんてぇ、夢みたいですぅ!

私は【高速詠唱】でガラスペンを走らせぇ、ピンポン玉サイズの鉄鉱石にぃ、魔力を中和する爆発を起こす魔術ルーンを刻んだ法石を放り投げぇ、翼からの魔力を無効化しますのでぇ、撃ち落としお願いしますぅ!
あぁ、くれぐれも傷をつけないようぅ!

ううぅ、これは魔力が残っていて私の魔力が注入できないですぅ……
これも落ちた衝撃でぇ、割れてしまっているものぉ……
ああぁ、もうぅ!マトモに使えそうなのがぁ、少ないですよぉ!
……えっぇ、一つならぁ、いいですけどぉ……何に使うんでしょうぅ?



 アックス&ウィザーズ。武器と魔法と竜の世界では、良質な魔法石を落とす魔物が当たり前のように存在する。――だから魔物退治で生計を立てられるのか。鳴宮・匡(凪の海・f01612)は納得した、のだが。
「……ところでねーさん、目の色が変わってるけど?」
「そりゃぁ、目の色もギラギラしちゃいますよぉ!」
 ぐるんっと振り返ったリュシカ・シュテーイン(StoneWitch・f00717)の目は、本人が言った通りギラッギラだった。全身から喜びと興奮もパアァッと眩しく溢れている。
「タダで手に入るぅ、法石用のジュエルだなんてぇ、夢みたいですぅ!」
 しかも!
 一度に沢山!
「なんてお得なんでしょうかぁ、最高ですぅ!」
「いやまあ、そうだろうとは思ったけどさ」
 魔力宿した法石を売って生計を立てている魔女が、食い付かない筈がなかった。
「それではぁ、頑張ってたっくさん手に入れましょうねぇ♪」
 よりどりみどりですぅとリュシカは“今”を全力で喜びながら法石に硝子ペンを走らせ、次の瞬間には満面の笑みで蝙蝠の群れへと放り投げた。
「翼からの魔力を無効化しますのでぇ、撃ち落としお願いしますぅ!」
「オーケー、了解」
 リュシカが刻み付けた魔術ルーンの意味と効果を匡は一瞬で正しく理解し、銃を構える。追加オーダーの“くれぐれも傷をつけないよう”も、また同じ。
「こういうのは得意だ。外しやしないし、傷をつけるようなヘマもしないよ」
 言葉が終わるより先に爆発音と銃声が立て続けに響き、絶命した一体から魔法石が落下する。
 早々に同胞を亡くした他の蝙蝠たちは、より強い騒音を響かせ飛び回った。両翼から魔力を放とうとした蝙蝠は、別の蝙蝠を盾に。また別の蝙蝠は、コアのない幻影を生み出して。
 しかし二人を攪乱するように激しく飛ぼうとも、びしびしばしばしと法石が放たれ、間髪入れずに、そして法石と同じ数だけ銃声が響いて――こつんっ、ころん、ぽとっ。飛び回る闇色は順調に数を減らされていき、そこから落ちる煌めきが増えていく。
 最後の一体も両翼の魔力を無効化されると同時に翼を撃ち抜かれ、魔法石だけを残して骸の海へと還った。
「……こっちに来た蝙蝠は、これで全部だったみたいだな」
 周囲に目を向け異常なしと確認した匡は、足元に散らばる輝きを踏まないようそっと移動した。まるで虹から雨でも降ったようなそこへリュシカは上機嫌でしゃがみ込み、ええとこれはぁ、と拾い上げ――。
「ううぅ、これは魔力が残っていて私の魔力が注入できないですぅ……これも落ちた衝撃でぇ、割れてしまっているものぉ……ええ、こっちもですぅ……?」
 じゃあこれは?
 ……こっちは?
 ――だったら! あっちは!?
「ああぁ、もうぅ! マトモに使えそうなのがぁ、少ないですよぉ!」
 周りにある大量の魔法石は二人の腕前と連携が見事だったという証に他ならない。しかし不運な結果にリュシカの心は真っ逆さま。匡は黙って見守っていたが、ふと思い出し、魔法石探しに加わる。
「ねーさん。戦利品、ひとつだけ後で分けてもらえる?」
「えっぇ、一つならぁ、いいですけどぉ……」
 深い紫色のがあればと言った匡の感情は全く読めず、使い道を訊いても内緒だと言われてしまったら、もう探れない。リュシカはひびの入った魔法石を切なく見つめて――。
「……お、ねーさん。この辺のはまだ傷が少ないぜ、使えそうじゃない?」
「ホントですかぁ!?」
 ギラッ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

タリアルド・キャバルステッド
聞いたところによると、市場では服飾品や生地も扱われるそうですね。
素敵な品々との出会いを楽しみにする人たち、そして新たな主人との出会いを待つ服たち、これから何にでもなれる可能性を秘めた生地達の未来を奪うわけには行きません。

森の中の戦闘なら、派手な範囲攻撃はせず一体ずつ各個撃破を目指しましょう。
技能「ダッシュ」「ジャンプ」で敵に近づき、UC「HEROIC」で右手を強化し打撃を叩き込みます。なるべく多くの敵を倒すよう積極的に動きたいですね。
特に敵が「魔力食い」で仲間を食べている瞬間の隙を狙います。

得られた魔法石は、そうですね……
黒く輝いている物を一つだけ頂きます。
残りは全て商隊に寄付致します。


ナァト・イガル
【WIZ】連携・アドリブ歓迎です

虹色に染まる街、なんて素敵なのかしら……!
私はね、ほら、真っ黒でしょう。だからか鮮やかな色は大好きだし、それらを守りたいとも思うわ。
まだ駆け出しの身だけれど、精一杯お役に立つつもりよ。できればぜひとも、いろんな色の魔法石を得たいものね。

なるべく敵の不意を打てるよう、まずは隠れて様子を窺いましょう。
周囲に他の猟兵の方がいるならば、協力は惜しまないわ。
魔力酔い、は厄介よね……。囁くような【歌唱】とともに【祈り】を乗せて底上げしたUC『小夜啼鳥の戯れ歌』で、先制して撃ち落としてしまいたいわね。
今の自分に出来ることを、確実に、こなしていきましょう。



 あらゆる品々が虹を紡ぐように並ぶという市場。そこに服飾品や生地もあるのだと知ったタリアルド・キャバルステッド(紳士服のヤドリガミ・f25640)は、そっと右肩に触れる。
 間もなく開催となる市場にあるのは、宝と呼ばれる品々だけではない。新たな主人との出会いを待つ服――“何にでもなれる”という無限の可能性を秘めた生地たちの未来がある。
 今纏う右腕部分がないスーツは、とある人物が一生をかけて己を大切にしてくれた証。同じように、出会った“彼ら”を生涯慈しんでくれる人がいるかもしれない。品々との出会いを楽しみにしている人もいるだろう。
(「それを奪わせるわけには行きません」)
 無言で駆けるタリアルドの先にはキィギャアと鳴いて羽ばたく蝙蝠たち。スーツから魔力繊維を紡いだ瞬間、敵の響かす音がより激しくなる。だが紡いだ魔力繊維は一欠片もやれはしない。
 魔力繊維が握り締めた右手を包み込めば、溢れたエネルギーがそこに宿って強烈な武器と化す。
(「一体ずつ、確実に」)
 拳を叩き込んだ瞬間、ぱぁん! と甲高い音が響いた。同時に闇色の体から、ぽんっ、と飛び出すようにして煌めく魔法石がこぼれ落ちて。
「まあ、綺麗……っと、いけないわ」
 茂みの陰から漏れた穏やかな声に気付く蝙蝠はいない。身を隠していたナァト・イガル(さまよえる小夜啼鳥・f26029)は、様子を窺うのはおしまいねと心の内で呟き、そうっと動き出す。
 見えたのは一体ずつ拳を見舞っていくタリアルドと、彼女を喰らおうと飛び回る闇色の群れ。その中にはすぐ隣を飛んでいた個体に食い付いた蝙蝠もいる。
(「まだ駆け出しの身だけれど……お役に立てるよう、精一杯努めましょう」)
 真っ黒な自分にとって虹色に染まる街には心躍る要素しかない。今日から紡がれる虹色は愛する鮮やかな色に負けない魅力を放つだろう。それを、守りたい。そして沢山の色の魔法石を出来れば――いや、是非とも得たいから。

 “鳥よ、貫け”

 想いそのものを籠め、祈りを寄り添わせた歌声は囁くように。
 こちらに気付いたタリアルドの視線にナァトは頷きを返す。自分の顔は布で隠れているが、援護するという意志は小鳥のような姿で翔る光矢でも伝えられた筈だ。
『ッギイ、ギャ!』
『キキャキャキキ!!』
 降り注いだ光矢がざああと蝙蝠たちを貫き、かろうじて逃れた蝙蝠が大きく羽ばたいた。しかし魔力を放つ前に、仲間に食い付く前に、光矢と拳が蝙蝠たちを覆っていき――。

「たくさん手に入ったわね。でも、どうしましょう?」
 無事に終えた後に生まれた光景。魔法石で彩られた地面を前にナァトは指先で顎をなぞり、タリアルドも暫し考える。頂こうと思ったのは黒く輝いていた一つのみだ。
「……残りは全て商隊に寄付、というのはどうでしょうか?」
「それは名案だわ……!」
 商隊の命を救うだけでなく、彼らに、輝く祝福を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘンリエッタ・モリアーティ
【双竜】
灯理(f14037)と
わぁ、いーっぱい居るわ
灯理、どの魔法石が足らないんだっけ?
いつも武器とか作ってくれるもん、働いてお返ししないとねっ
気遣いノンノン!夫婦なんだから、そーゆーのはまかせてちょーだいっ
「マリー」はできる奥さんなんだから!

【深海より愛を込めて】を披露
コウモリって耳が良いんでしょ?聞こえないはずがないわよねぇ
ドラゴンたちで全部射ち落としてあげる
どんな石がとれるかしらぁ。うふふ!おたのしみね
それを使ってまた灯理と作るの。日曜大工ってやつね、今はやりの
私は水を使うのが上手だから、魔法でほかの属性も補えるなら最高、最強じゃない?
――さあ、蝙蝠さん
真っ赤な石、私に頂戴!


鎧坂・灯理
【双竜】
マリー(f07026)と
本当だ、たくさん居るな
ちょうど装備を開発中でね 魔法石の調達は渡りに船だよ
手伝ってくれるの?ふふ、ありがとう
私の妻は、本当に気が利いて美しい、素敵な貴婦人だ

新世界が海ばかりだからなあ、水中戦用の武装を作りたい
役立つ魔石は全て欲しいし、マリーに似合う赤い石も欲しい
強欲なものでね 嫌がるなら勝手に持って行こう
【使い魔召還】で鳥の群れを呼ぼうか 竜の影に隠れて行くがいい
鋭いくちばしで魔石をえぐり出せ 魔石がないものは放っておけ
私が朱雀と大烏で片付ける

――使い魔達へ特殊波長で号令
マリーへのプレゼントに使うから、一部は雷の魔石を集めろ
行動開始、散開!



 まだ若い緑、小さな野花。その中にぽかりと開いた穴は黒色で。森の中を照らす日光も食べてしまったようなそこから何重もの音と闇色が噴出した瞬間、わぁ、と咲いた笑顔はほのかに甘い。
「見て灯理、いーっぱい居るわ」
「本当だ、たくさん居るな」
 くすくすと楽しそうなヘンリエッタ・モリアーティ(円還竜・f07026)と、愉快そうに目を細めた鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)。交わっていた視線は、蝙蝠たちへと向いた瞬間に底知れぬひかりを孕む。
 地上に飛び出した闇色は空中で大きな塊を構成しつつあった。音の響き方からして合流する蝙蝠はまだいるようだ。悪くない、と灯理は唇に弧を描く。装備開発中の今、魔法石が調達出来る今回の依頼はまさに渡りに船。
「灯理、どの魔法石が足らないんだっけ?」
「手伝ってくれるの? ふふ、ありがとう」
「気遣いノンノン! 夫婦なんだから、そーゆーのはまかせてちょーだいっ」
 『マリー』はできる奥さんなんだから!
 灯理はそれが誰にも覆せない真実だと知っている。自分にだけ向けられる愛らしい笑顔に掌を添えれば、マリーは猫のように頬を擦り寄せ、くすくす笑った。
「私の妻は、本当に気が利いて美しい、素敵な貴婦人だ」
「いつも武器とか作ってくれるもん、働いてお返ししないとねっ」
「では、最高の武器を」
 耳に入る新世界の情報から、作成候補に挙がるのは水中専用の武装だ。となると役立つ魔法石は全て欲しい。歌声を羽ばたかせたマリーに似合う赤い魔法石も、当然欲しい。

 ――ならば、その全てを手に入れよう。

 次の瞬間、森の中に竜の園が生まれる。
 二人を囲むのはマリーの歌声に喚ばれた71体ものドラゴンたち。くすり笑ったマリーの視線を受ける蝙蝠たちには、彼女の歌声が奥底まで染み込んでいる。故に、ドラゴンたちにとって向かう先はあまりにも明確だった。
 その影に潜むのは強欲な愛に喚ばれた鳥の群れ。特殊波長で伝えられていく号令が、彼らにドラゴンと共に翔る速度を生ませていく。

 “鋭いくちばしで魔石をえぐり出せ”
 “魔石がないものは放っておけ。私が朱雀と大鴉で片付ける”
 “マリーへのプレゼントに使うから、一部は雷の魔石を集めろ”

「行動開始、散開!」
 翼広げた蝙蝠をドラゴンが射ち落とし、大地へと散っていく僅かな間に鳥のくちばしがぶつりと魔法石を奪う。その中にほのかな金を帯びた白き石を見て、マリーはぱぁっと笑顔を浮かべた。
 嬉しさを露わに愛しいつがいを見れば、翼型神器を揮った灯理が腕輪を銃器へと変え、コア無しを屠ったところ。ふ、と笑った瞳にマリーはにっこり笑う。
 どんな石が取れるかは“おたのしみ”で、それを使って今流行りの日曜大工を灯理と、という“おたのしみ”もあった。そこに、水を使う事を得手とする自分が魔法で他の属性も補えるなら? という未来が加われば、導き出される解は――最高かつ最強。
「――さあ、蝙蝠さん」
 真っ赤な石、私に頂戴!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アパラ・ルッサタイン
虹架かる市場……お宝に出会えそうな予感がするよ
欲しいものを何でも手中に収めたくなる気持ちは分からぬでもないが
それでは選ぶ楽しみがなくなってしまうじゃないか?

【WIZ】

君達もなかなか美しい石を抱いているね
あたしのランプの材料に出来ないかな
ねえそう思わないかい?

『秘色』の友よ
お出で、アプサラス

此方に襲い来る魔力は手のランプから光と共に放たれるオーラで防ごう
なに、動きを止められたとて貴女が居るだろう?
この隙に彼らの翼を水の刃で奪っておくれ

おっと周りの木々はなぎ倒さぬよう
石も傷つけてはいけないよ

そんな面倒そうな顔をしないておくれよ
君に似合う魔法石をプレゼントするからさ
ホラ青い碧い蒼い石がこんなに沢山



「虹架かる市場……か」
 ふふ、と笑ったアパラ・ルッサタイン(水灯り・f13386)の深い深い水底めいた髪で虹色が揺らめき、光る。
 心に浮かぶのは素晴らしい宝に出会えるという予感と、今は闇の向こうに隠れている親玉への理解。欲しい物を何でも手中に収めたくなる気持ちは、わからないでもない――が。
(「それでは選ぶ楽しみがなくなってしまうじゃないか?」)
 選ぶ楽しみがなくなれば、虹架かる市場そのものも楽しめないだろうに。
 ああ、それにしても。だ。
「君達もなかなか美しい石を抱いているね」
 足を止めたアパラの周りを、ぐるぐるざあざあ、キィギィと取り囲む宝石宿した闇色たち。
 しかしアパラはこの場の主が如き微笑みを浮かべ、殺意漲らせて飛び回る蝙蝠を見る。目立つのは見事なまでの黒だが、そこに抱かれて煌めく色は自分が持つ遊色にも負けぬ魅力を放っている。
「あたしのランプの材料に出来ないかな。ねえそう思わないかい?」
 美しい色を持つだけでなく魔力の質も高いとなれば、なおの事。
 微笑み、招くは『秘色』の友。
「お出で、アプサラス」
 携えたランプが揺れる。蝙蝠の渦が一点から崩れるようにしてアパラへ向かう。
 そして悪魔が、現れて。
「おや。あたしは君達の食事にはなれないよ」
 両翼から迸った魔力の波を、アパラはランプから溢した光と揺らめきで防ぎきる。ランプの材料にはしたいが、食べられてやる気は欠片もない。
 ふと感じた気配に目を向ければ、喚んだばかりの悪魔が何やら言いたげで。
「なに、動きを止められたとて貴女が居るだろう? この隙に彼らの翼を水の刃で奪っておくれ」
 次々に放たれる魔力の波を、ゆらりゆらり。手元から踊り出る力で防ぎながら、アプラサスの周囲に現れた水刃を見て、忘れてたと“周りの木々はなぎ倒さないよう”“石も傷つけてはいけない”と追加注文を二つほど。
 すると悪魔は注文通りに水刃を揮ってくれた――のだが。
「そんな面倒そうな顔をしないておくれよ。君に似合う魔法石をプレゼントするからさ」
 突っ込んできた一匹を躱し、ホラ、と拾い上げた青。その先に転がる碧。上から落ちてきたのは、蒼。あらゆる水術を操る君に相応しい輝きが、どんどん増えていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

城島・侑士
【菫橙】
アドリブ諸々歓迎

もうすぐ妻との結婚記念日!
まだ日数はあるんだが
毎年毎年、悩んでいたらあっという間に記念日の直前になってしまっていたので今年こそは余裕をもってとびきりのプレゼントを用意したい

贈るのはもちろん…(UC炸裂)魔法石だ
一体一体確実にUCを当てコウモリの数を減らしていく
倒したら戦利品の石もしっかり確保する
娘が手伝ってくれたお陰で石は沢山手に入れることが出来そうだ
ありがとう、冬青!
お父さんは嬉しいよ〜(ハグをしようと)

しかしただ石を贈るだけじゃ味気がなさすぎる
なぁ冬青
父さん、こういったアクセサリーの類はさっぱりなんだ
母さんはどんなものなら喜ぶかな?
…ブローチか
なるほど、それにしよう


城島・冬青
【菫橙】

両親のハッピーな結婚記念日の為に石集めのお手伝いです
それにしても倒したら綺麗な石を落とすコウモリとかこれが普通の動物だったら石目当てに駆逐されて絶滅不可避だったよね…

UCの見えないカラス君達に攻撃をアシストして貰いつつ抜刀!コウモリ達を叩っ斬る
魔法石ゲットです!(どやっ)
へぇこれが魔法石かぁ
ルビーのように真っ赤な石やオパールのように色んな色が混ざった石、二つの色を持ったバイカラー石だったりと本当に様々…凄く綺麗だね
あ、ハグは遠慮しときます!!

え?お母さんはお父さんが贈るものなら何でも喜ぶと思うけれど…うーん
そうだ!
石を何個か組み合わせて
ブローチにしようよ
市場で綺麗に加工して貰おう!



 城島・侑士(怪談文士・f18993)の胸には決意が宿っていた。
 愛する妻との結婚記念日まで多少の余裕はあるものの、愛しいあまりに何を贈ろうか悩み続けて気付けば記念日直前に! というのが毎年お決まりの光景になっている。
 今年こそは余裕をもってとびきりのプレゼントを用意したい。
 そんな父の決意が叶うよう、両親がハッピーな結婚記念日を迎えられるよう、娘の城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)は父と共に森を駆けた。
「それで、決めたの?」
「ああ。贈るのはもちろん……」
 侑士はほんの一瞬、駆ける速度を緩めた。下に向けていた銃口が上がる。その先にはどこかを目指して飛ぶ闇色ひとつ。運の悪い事に群れとはぐれたのだろう。――ああ、本当に運が悪い。きらりと光を弾いて輝くあれこそが、侑士の求める物だから。
 何が起きたかわからぬまま果てた蝙蝠から、ぽんっ、と外れ落ちた魔法石を冬青は素早く拾い上げ、落とさないようポケットにしまい込んだ。
(「綺麗な石を落とすコウモリかぁ……」)
 これがオブリビオンではなく普通の動物だったなら、魔法石目当てに乱獲されて絶滅不可避だったろう。
「カラス君」
 視線の先には濁流のように空中をうねって翔る闇色ひとつ。そこへと向かう自分は蝙蝠たちから見れば格好の獲物だろう。しかし、コアを強く輝かせた一体は何かに弾き飛ばされ、バランスを崩したそこを冬青がずばっと叩き斬る。
『ギイイィ』
 なにかいる。なにかいるぞ。
 伝え合う蝙蝠たちだが、分身を増やし、同胞から魔力を喰らおうと、不可視の烏を捉える事は難しい。
「悪いけど、コウモリ語はわからないから!」
「お父さんもわからないなあ。おい娘に触るな」
 飛びかかるより早く駆けるオレンジ色。閃く刃と見えない翼。一体ずつ確実に撃ち落としていくお父さんスナイパー。ギィギィキィギャア鳴いて飛び回る渦は、戦いの音が紡がれるたびにその色を薄くして――。
「魔法石ゲットです!」
 無数の魔法石を前に冬青は、どやっ、と満足げ。しかし改めて見ると、一見同じようでいて違うという事がよくわかる。ルビーのような甘い赤色から、オパールのように複数の色が見事に混ざったもの――それから、二色が寄り添うバイカラーまであった。
 ほんの少し傾ける。すると輝石はまた違った表情を露わにし、冬青の瞳に、肌に、そっと映り込む。
「……凄く綺麗だね」
「こんなに沢山……ありがとう、冬青! お父さんは嬉しいよ〜」
「あ、ハグは遠慮しときます!!」
 サッ。
 見事な横移動でハグを回避された侑士は、ほんの少ししょんぼりしながらも、手に入れた魔法石を眺めて考え込んだ。
「なぁ冬青。父さん、こういったアクセサリーの類はさっぱりなんだ」
 母さんはどんなものなら喜ぶかな?
 父が心底そう思って訊いてきたのがわかったから。母は父が贈る物なら何でも喜ぶと思うから。冬青は思わず「え?」と目を丸くして、同じように考え込む。そして、閃いた。
「石を何個か組み合わせてブローチにしようよ。市場で綺麗に加工して貰おう!」
「……ブローチか。なるほど、それにしよう」
 やっぱりうちの娘は最高だ。
 ありがとう! と両腕を広げる侑士。サッと横移動する冬青。
 数分前と全く同じ事をした父娘二人の周りで、魔法石が木漏れ日を浴びて輝いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エルザ・メレディウス
*アドリブ等お任せ致します
【晩翠庵】で参加致します
*エレメンタル・バットが出現すると思われる、入り口近くの茂みにかくれます。そっと息を殺して、相手が出現するのを待ちます
敵が出現したら、まずは先制攻撃は柊那様にお任せいたします。
私は、『残像』を使用しながら、敵のエレメンタル・バットの目を欺きつつ、敵に近づきます
近づいた後は、剣刃一閃を使用。音海様と一緒に一匹づつ敵を倒していきます。逃した敵は...お任せ致しますね、柊那様?

大は小を兼ねると言いますし...せっかくなので、魔法石は多めに貰っていこうかしら...?


佐藤・柊那
【晩翠庵】で参加
さて、エレメンタル・バットが出現する巣穴の近くに隠れて様子を窺うよ
出てきたら、フック付きワイヤーで先制攻撃を行うよ

それ以降は仲間の二人の様子を見つつ、二人が逃した敵を主に狙って攻撃を行い、二人が怪我したらUCを使って回復を優先する

魔法石はできるだけ集めてしまいたいね
できれば、赤色・黒色・黄色の魔法石を優先的に狙うよ


音海・心結
【晩翠庵】で参加なのです
アドリブ歓迎なのですよーっ

あれが今回の倒す目標なのですか
コアがキラキラしているのです
もしかして、コアと魔法石には何か関係が……?

エルザと挟む形で木か岩場に身を隠すのです
エレメンタル・バットが出現したら、
おねーちゃんの攻撃を合図に攻撃開始っ!

武器『Secret』を右手に切り刻むのです
【2回攻撃】【スナイパー】で確実に奴らを倒しつつ、
残りが少なくなってきたら【誘惑】で一か所に集めましょうか

UC『Sucked Heart』発動
たくさんの敵を一度に倒すのですよ
さぁ、みゆたちのためにたくさんの魔法石を落としてくださいねぇ♪



 地底より現れる群れの羽音、声。それを迎え撃つ仲間たち。
 ここではない、森のどこかから聞こえる音。エルザ・メレディウス(復讐者・f19492)はそれをBGMにしながら、佐藤・柊那(灰色兎・f05554)と共に発見した穴の近く――茂みの陰に潜んでいた。
 向かい側に目を向ければ木の後ろからふわりと覗いたやわらかな色。ぐっ、と親指立てた音海・心結(ゆるりふわふわ・f04636)は、穴の向こうから聞こえ始めた音にハッと目を輝かせる。

 ――キキキギギィアギャキャ!!

 穴から飛び出した奔流は闇の色。それを構成する全てが今回の撃破目標であり、目にも鮮やかな石を抱き込んだ魅力的な“獲物”。
(「コアがキラキラしているのです。もしかして、コアと魔法石には何か関係が……?」)
 食べた血肉が栄養となって体内を巡り、心臓が動くように、あのエレメンタル・バットにとって魔力が血液なのだろうか。ふむふむ考えながら、柊那の揮うフック付きワイヤーがしゅぱっと風を切ったのを合図に飛び出していく。
「よし。先制攻撃、大成功」
『ギキギッ、ギャア!』
 ワイヤーに絡め取られたもの、フックに激突されたもの。悲鳴を上げた蝙蝠の周りが一時ばっと開いて、すぐに一塊の闇に戻る。
 飛び出した三人に殺意の黒が一斉に向くが、エルザの黒い双眸は静かなまま。仲間の魔法石に飛びついた蝙蝠を淡々と捉え――突っ込んできた別の蝙蝠には実体の無い残像のみを与え、大地を蹴って抜刀する。
「音海様」
「合点なのですよ」
 エルザの揮う刀が食事を終えたばかりの蝙蝠を紙切れのように断ち、声へニコッと応えた心結は、右手に握り締めた可愛らしい見目の得物で指揮をするように――すぱぱっ。翼を付け根から斬られ、絶命の一撃も喰らった蝙蝠が地に伏し、消えていく。
『ギギッ、ギャ!』
『キャァアキギ、ギキィ!』
 二人の刃から逃れたグループが、ぐん、と大きなカーブを描き上へと飛ぶ。大きく広げられた翼の間、不気味に輝き始めたコアが向く先には、舞うように蝙蝠たちを屠っていく猟兵が二人。
 静かな黒と無邪気に輝く金の瞳はそれに気付いていたが、もう一人を信じているから、知っているから、動じる事なく周囲の蝙蝠を屠り続ける。
「……お任せ致しますね、柊那様?」
「オッケー。じゃあ、ずばっとやっちゃおうかな」
 素早く放って、くん、と引く。それだけで、柊那の手繰るフック付きワイヤーは空間を大きく裂くように踊り、通過点にて音波を放とうとしていた蝙蝠たちを一気に肉片へと変えた。
 千切れた闇色から虹の欠片がきらきらと降る。
 闇色が減った事で緑がよく見えるようになったそこに、ふふふと心結は笑いかけ――ぴとっ。両手の指先を愛らしく合わせれば、きらりしゃららと眩しいハートが誕生する。
「さぁ、みゆたちのためにたくさんの魔法石を落としてくださいねぇ♪」
 にっこり。
 台詞は死刑宣告にも等しいというのに、心結の笑顔から溢れる何かが残りの蝙蝠たちを、その心をがしりと掴んで離さない。狂ったように向かってくる群れに心結はよくできました、と笑って――とびきりのハートを、プレゼント。
 煌めくハートの着弾点からこぼれ落ちた魔法石をエルザが掌で受け止めた。ついさっきまで蝙蝠の一部だったせいか、冷たいかと思いきやほのかに温かい。ふむ、と見てから回りに目を向ければ、なかなかの数が散らばっていて。
「せっかくなので、多めに貰っていこうかしら……? 大は小を兼ねると言いますし」
「言う言う。出来るだけ集めて、貰っていこうよ」
 柊那はエルザの背を押しながら魔法石をせっせと集めていく。腕の中の魔法石が増えていくのを見て、心結はこてん、と首を傾げた。
「おねーちゃん、同じ色ばかりなのですね?」
「うん。この色が欲しいなって」
 腕の中、赤と黒と黄色の三つが、こつん、かちゃり。
 音を立てて触れ合って、きらきらとした彩を魅せていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雲烟・叶
【涙雨】
ネムリアのお嬢さんはお馴染みですが、優樹のお嬢さんとは初めてですねぇ
倒した分だけ魔法石が手に入るそうですから、お気に入りの色でも探してみりゃ良いんじゃねぇですかね
希望すればあとで加工して貰えるようですから

──おいで、お前たち

数には数で対抗しましょうか
煙管から燻る煙は空を駆ける管狐たちへ
狩りは得意ですものねぇ、良い子たちです
【呪詛】を分け与えて強化してやりますから、魔法石は持って帰ってらっしゃいね

【誘惑、恐怖を与える】で敵を惹き付けたら、【カウンター、呪詛、生命力吸収】
お嬢さん方に怪我をさせる訳にいきませんし、囮くらいはしますとも

意外と、何方のお嬢さんもスピード型で前に出るんですねぇ……


ネムリア・ティーズ
【涙雨】
うん、ボクも優樹とは初めて
みんなでお出かけ、すごく楽しみにしてたんだ
お気に入りの色探し?…叶、すごくステキだね
やる気いっぱいの優樹もたのもしいな

叶のかわいい子に見惚れかけた意識を集中させて
月の魔力を耀く蝶へと変えてゆく
傷を癒やしてしまうから、攻撃されていない相手を狙って【追跡】
眠ってくれれば狙いやすくなるかな

落ちてきた子を蹴り技で攻撃
何度も痛めつけるのはかわいそうだから
回復できないように手加減はしないよ

叶のおかげで少ないけど
向かってくる敵は無数の蝶で視界を遮り
【フェイント】から蹴撃の【2回攻撃】

わ、すごい音だ
それに優樹はそんなに素早く動けたんだね
戦いは慣れないけど、ボクもがんばらないと


萌庭・優樹
【涙雨】
おふたりと一緒に冒険
行き先は虹の溢れる世界!
胸が高鳴っちゃいますっ

魔法石はまさにお宝
盗賊の魂が躍るようで!
楽しい催しを荒らされるのは嫌ですし
あいつらには道を開けてもらわなきゃあいけませんね

素早さ勝負で接近します!
目標を一体ずつ定め、ダガーで攻撃
【属性攻撃】は風纏う一撃
狙えるモンは狙いましょう
バットが音や衝撃に反応するなら
ガジェットの銃で空砲を打ち【フェイント】も

敵の動きは【見切り】たいけれどっ
叶さんが攻撃を引き受けてくれたなら
頼もしい気持ちで進めそう!

管狐さんは愛らしくも強く、蝶々の群れはなんとも美しくて
その強さにも、おふたりの力を実感します
これは、負ける気がしない…!



 こうして共に来るのがお馴染みの顔と、今回が初めての顔。
 雲烟・叶(呪物・f07442)とネムリア・ティーズ(余光・f01004)――薄らと踊る煙のような瞳と静かな夜色の瞳、ふたつを受け止めた萌庭・優樹(はるごころ・f00028)の持つオレンジ色は、始まったばかりの冒険でより一層鮮やかに。
「胸が高鳴っちゃいますっ」
「うん、ボクも優樹とは初めて。みんなでお出かけ、すごく楽しみにしてたんだ」
 始まりは森の中。向かってくるのは、森の緑をかき消すような蝙蝠の群れ。
 その奥には親玉が潜んでいるけれど――魔法石という、まさにお宝というに相応しい存在に優樹の盗賊魂は躍るよう。属性は複数、色は数多。魔法石を使った宝だって、市場にあるかもしれない。
「楽しい催しを荒らされるのは嫌ですし、あいつらには道を開けてもらわなきゃあいけませんね」
「そうですね。倒した分だけ魔法石が手に入るそうですから、後でお気に入りの色でも探してみりゃ良いんじゃねぇですかね」
 叶はゆるりと唇に笑みを浮かべながら思い出す。確か市場には職人がおり、希望すれば加工してもらえるという話を聞いた。
 お気に入りの色。その色を放つ魔法石で作る、一つだけの宝。
 叶、と零したネムリアの瞳が静かに煌めいた。
「それ、すごくステキだね」
 やる気いっぱいの優樹もたのもしいな。親愛滲む囁きに優樹はぱちっ、と瞬きしてから照れくさそうに笑って――きりっ。自分たちを獲物だと、食料としか見ていないだろう蝙蝠たちをしっかりと捉える。
「それではおふたりとも、よろしくお願いします!」
「うん、よろしくね」
「ええ。――おいで、お前たち」
 煙管から燻る煙が叶の周りを“翔て”空へと上る。煙のように揺れる尾は64。叶の背後、空中に並ぶ管狐たちの目が、ざ、と蝙蝠に向いて。
「魔法石は持って帰ってらっしゃいね」
 地ではなく空中を風のように翔た後には、尻尾の名残のように煙がかすかにたなびいた。頭上行く彼らに優樹はわぁ、と笑顔を咲かせて負けじと駆ける。目は目標を映して、足は大地をしっかり蹴って。その勢いで、っぱ、と舞った緑色が地面へ触れるまでの、その間。
「は――っ!」
 分身と共に突っ込んできた蝙蝠にひたりと当てた刃に纏わせたのは、自由な風。刃と風はひとつになり、本体をすぱんっと斬り裂いた。瞬間、分身は黒霧となってかき消え――まだ多くある闇色へと真っ直ぐな目を向ける。
(「焦らず、狙えるモンを一体ずつ」)
 着地してすぐ飛び退いた優樹と入れ替わるように、管狐たちが蝙蝠の視界を煙色で覆い尽くした。分け与えられた呪詛は蝙蝠たちから呼吸を奪い、両翼から魔力を放つ気力も奪う。燻る輪郭持つ爪牙で直接屠られた蝙蝠は、ギィ、キィ、と悲鳴を上げて落下して――こつんっ、と次々に聞こえた音は魔法石の音。
 その向こうでは、まだ“無事だった”蝙蝠たちが管狐の魔力を得ようと分身を生み出し、闇色を濃くし始めていたけれど。
「駄目」
 朧気で、けれど確かな力を孕んで宙を翔る管狐たち。かわいい子らに見惚れかけたネムリアは、そっと頭を振って森の中に月の魔力を溢していく。たちまち耀く蝶の群れに変わった魔力は、蝙蝠たちにとって何よりも甘美なものに視えたのだろう。金切り声を上げて白銀色へと向かい――。
「おやすみなさい」
 ひゅるり落ちてきた蝙蝠たちを迎えるネムリアの動きは舞うように。しなやかな蹴りは蝙蝠たちを永遠の夢へといざない、月色の舞台に他のものが惹かれ始めたならば。

 “こっちですよ”

 気付けば周りの空気を灰色で満たすような声。叶の銀の瞳が、唇が、抗いがたい引力を漂わせて笑い――ぱしり。黒皮の手袋に包まれていようと、蝙蝠を叩けば深い呪詛が命を喰らう。
 その後ろ姿を狙う蝙蝠には、ハッと気付いた優樹が即響かせた空砲でフェイントを。わ、と瞬いたのはネムリアの目で、それ以上に驚いていたのが蝙蝠だった。大きく飛び上がってぐるんと方向転換、今のはお前かという勢いで優樹へ翼を広げ――しかし、しゅぱっと両断される。
 闇色を惹き付ける叶の頼もしさ、白銀蝶々の言葉にならない美しさ。
 ああ、強い。なんて強い。優樹の目はどんどん輝きを増す。
「これは、負ける気がしません……!」
 風のように跳び回る姿にネムリアの目はすっかりまあるくなっていた。
(「戦いは慣れないけど、ボクもがんばらないと」)
 更に美しく展開していく月の舞台。落とされていく蝙蝠。
 叶は払うように蝙蝠の相手をしながら少女たちの戦う様を見て――ぽつり。
「意外と、何方のお嬢さんもスピード型で前に出るんですねぇ……」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨音・玲
【SPD】連携・アドリブ歓迎
おぃおぃおぃ…
マジかよ!!同業者がこんなに参加してんのかよ!?
欲しいの残ってるのか?コレ…

俺の能力と相性が良く
応用が利きそうな「赤の魔法石」一点狙いで参加したものの
完璧に出遅れ感に、げんなりした表情を浮かべ
大急ぎで駆けながら、空中に追従するように召喚の魔方陣を描き
UB「群れなす黒影」で相棒の烏達を呼び出します。

さぁ相棒、いつもの通り頼むぜ!!

「誘導」と「UB発動の徹底妨害」の二つを指示
ついでに周りの同業者のサポートをしつつ

俺の方に上手く誘導された敵を
木々を足場に反動を利用した「空中戦」と
交差するときに手を出す「咄嗟の一撃」で殴り倒して
確実に潰していきます。


カイム・クローバー
報酬が自分から飛んできてくれるとは――親切だな。魔法を使うだとか、魔力がどーだとかは得意分野じゃねぇが、魔法石の価値ってのは裏切らねぇ。
大事なのは一個辺り、金貨何枚分の価値があるか、だ。

双魔銃を引き抜いて片端から撃ち落とす。コアの魔法石は傷がねぇ方が高く売れるだろうし、羽の部分や魔法石を避けて銃撃を放つぜ。
色は何色でも構わねぇけど、数が欲しい。その中に珍しい色があれば尚良し、だ。
【二回攻撃】に【範囲攻撃】、【クイックドロウ】を交えてUC。広範囲を掃除する。仕事が終わるころには地面が大量の魔法石でキラキラしてるハズさ。
これから行く場所はトレジャーマーケット。軍資金は多いに越した事はねぇだろ?



『おぃおぃおぃ……マジかよ!! 同業者がこんなに参加してんのかよ!?』
 ――とは、雨音・玲(路地裏のカラス・f16697)がグリモアベースで思わず口にした言葉だ。
 魔法石がたんまり手に入ると聞き、自身の能力との相性及び応用が利くだろう赤色魔法石の一点狙いだったのだが、まさかあの場に32人もの猟兵が来るとは。
 そして今、自分を含めた33人が森中に散らばっている。
「欲しいの残ってるのか? コレ……くっそ、完全に出遅れたかもな」
 時折聞こえてくる戦いの音は、あちらこちらから。
 しかしそれが止んだと思えば別の方角から聞こえ、玲の胸に焦りではなく希望が湧き始める。
 蝙蝠たちが全て撃破されたのなら音は止む筈だが、そうなっていない――という事は、魔法石を持った蝙蝠たちはまだ存在している。ならば、お目当ての魔法石を手に入れるチャンスも残っている筈だ。
「だからってチンタラしてられねぇな……!」
 価値あるものは基本、早い者勝ち。
 それが世の常だと心得ている玲はニヤリと笑い、響いた銃声の方へと全速力で駆け出した。

「報酬が自分から飛んできてくれるとは――親切だな」
 魔法の行使。魔力がどうだ、こうだ。そういったものはカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)の得意分野ではないが、カイムは自分目指し飛んでくる蝙蝠たちを歓迎した。
 魔法石の価値は自分を裏切らない。
 魔法石一つあたり金貨何枚分の価値か。
 カイムが主に重視するのはその二点だ。蝙蝠が大挙して押し寄せてくるのなら“丁寧に対応”して全ての魔法石を回収するのみ。数が欲しい。色は問わない――が。
「珍しい色があれば尚良し、だな」
『ギギッ、キィ!!』
「……どうせならコア付きで増やしてくれねぇか?」
 挑発的に笑って構えるのは『オルトロス』の名に相応しい見目の二丁銃。双頭の魔犬が火を噴けば、ジグザグ飛んでいた本体と分身が仲良“死”しただけでなく、魔犬の蹂躙がその周辺へと一瞬で広がった。
 その向こうから来た第二波に、そら次だと構え――たところへ、茂み飛び越えてやって来たのは漆黒に赤。だが蝙蝠ではない。
「さぁ相棒、いつもの通り頼むぜ!!」
 駆ける猟兵が持つ裏社会での通り名は『カラス』。名は雨音・玲。
 玲の召喚に応じ、烏の大群が魔法陣から飛び出した。獲物を狩る猟犬の如く蝙蝠たちを追い回すその動きに、カイムは玲の意図をすぐに読み取り、不敵に笑う。
「ありがとな」
「同業のよしみってやつだ、よろしくな! あ、赤色は残しておいてくれ」
 からっとした清々しい笑みにカイムは考えとくぜと返し、再び双頭魔犬の二丁銃を構えた。
 烏たちの猛追で大混乱に陥った蝙蝠に銃弾の雨が降り、たまらず分身を作って逃れようとするものには、烏がミサイルのように突撃し翼で打ってと妨害する。そして気付いた時には、足場にした木々の反動を利用し空を飛ぶ玲の姿があった。
「ナイスだ相棒!」
 思ったより勢いが出はしたが、咄嗟の判断で突きだした拳で擦れ違いざまにしっかり殴り倒す。
 カランッころんっと魔法石が立てる音はなかなか止まず、止んだのは“掃除”が終わってから。
 周りに生まれた大量の煌めきに玲は目を輝かせ、お目当ての赤を拾って回る。出遅れた、と始めは思ったが運がいい。
「にしてもホント大量だな」
「なに、軍資金は多いに越した事はねぇだろ?」
「言えてる!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・陸彦
【鯉華】
盗人を取っちめる前にあの蝙蝠を倒せば良いんだな
今日は父ちゃん……倫太郎と一緒の戦いだ
二人で戦うのは初めて!おれの強い所を見せるぞ!
行くぞー、父ちゃん!

倫太郎と動きを合わせて薙刀のなぎ払いで複数の敵を狙う
動きが速そうだから無理に追いかけないで
こっちに来た敵に合わせてカウンターで攻撃するぞ

高速詠唱で召喚術奥義『狸と狐の化かし合い』
巨大化した狸と狐を呼び出して蝙蝠を潰すぞ!
大きくなった狸と狐で恐怖を与えて、そこからボディプレスで攻撃
多くの敵を攻撃するには……
あ、父ちゃん!危ないからちょっと離れててな!
っと思ったら、軽々避けちゃうんだもんな
さすが父ちゃんだ

よーし、残りも頑張るぞ!


篝・倫太郎
【鯉華】
さって、陸彦
ちょちょいっと頑張ろうぜ?
楽しみが待ってるからよ

拘束術使用
範囲内の総ての敵を鎖で先制攻撃してから拘束
拘束から逃れた敵は華焔刀でなぎ払い
刃先返して2回攻撃
コア有、コア無、関係なく『敵』は全部斬り伏せる

陸彦が狸と狐を召喚したら
タイミングを見て攻撃パターンを
拘束術と華焔刀で放つ衝撃波と吹き飛ばしで
遠距離からの攻撃に切り替えてく

ばーか、お前の技のタイミングくらい読めるっての
俺の刀であるあの人のレベルまで
攻撃スピードが速くなってから
俺の心配しな?

陸彦の死角のフォローも確実に行う
ボディプレスから逃れた敵は拘束してからの範囲攻撃での衝撃波

最後の一体は陸彦に任せるぜ
よっし、決めて来い!陸彦



 欲望のままに金品を奪うオブリビオンを“とっちめる”その前に、一仕事。
 迫り来る蝙蝠を見据える篝・陸彦(百夜ノ鯉・f24055)は、隣に立つ篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)をそっと見上げ――ようとしたが、わしゃわしゃと頭を撫でられ、わわ、と声を上げる。
「さって、陸彦。ちょちょいっと頑張ろうぜ? 楽しみが待ってるからよ」
 にっと笑った倫太郎の目は、討つべき敵へ。
「おう! 行くぞー、父ちゃん!」
 初めて二人で戦う。その事が陸彦の気持ちを昂ぶらせ、朱色と金、二色の目に戦意が充ち満ちていく。おれの強い所を見せるぞ! 心の声は耳がいいという蝙蝠にも届いたのか。
『キッギ、イ!!』
『キャアヤギャヤ!!』
 蝙蝠たちは次々に分身を作り、やかましく鳴きながらスピードを上げた。
 ――その瞬間、どう、と地面に叩き付けられ悲鳴をあげる。
 不可視の鎖を見舞った倫太郎は華焔刀で倒れた蝙蝠たちを一気に薙ぎ、ほらもういっちょ、と過ぎたばかりの華焔刀を薙いで戻した。コアを持つもの、コアに齧り付かれたもの。分け隔て無く薙いだ攻撃の後に陸彦もしっかりと続き、倒れた蝙蝠たちの向こうから溢れ出た群れへ、薙刀を見舞っていく。
(「動きが速い。無理に、追いかけないで……」)
 呼吸を整え、一撃、二撃。
 ギギ、ッギャ、と上がった悲鳴と手応えに思わず笑顔になって倫太郎を見れば、よし、と明るい笑顔のOKサイン。そんな触れ合いを、蝙蝠たちは黙って見守ってはくれないようで。
『キキィィイッ!』
『ギャギャ、キギャ!』
 ぶわ、と数を増やして色濃くなった闇色の波に、陸彦はそっちがその気ならと息を吸う。
「よーし、おまえ達! とっておきで行くぞ!」
 集合! と友を呼ぶように召喚したのは狸と狐。愛くるしい獣たちは一瞬でぼぼんっと大きくなり、陸彦と倫太郎だけでなく蝙蝠たちにもその影を大いに被せた。
「おお、でっかいな」
 見上げて笑った倫太郎だが、陸彦の声――潰すぞ! と大変元気なそれに小さく噴き出した。さあここからどうする? にやにやと見守っていると、どうやら陸彦は自分がやったように、多数を攻撃する手段へと思考を巡らせ始めたようで。
「うーんと……あ、父ちゃん! 危ないからちょっと離れ――」
「ばーか、お前の技のタイミングくらい読めるっての」
 どっすんばったん、むぎゅむぎゅ、ぶちっ。ボディプレスを始めた狸と狐の動きを見ながら、倫太郎は余裕の動きと共に再び不可視の鎖と華焔刀を揮う。放つ攻撃は薙ぎ払いではなく、距離を取った上での枯葉を一気に散らすような衝撃波。狸と狐の――何より、陸彦の戦いを邪魔しないよう。
「さすが父ちゃん……!」
「俺の刀であるあの人のレベルまで攻撃スピードが速くなってから、俺の心配しな?」
 猟兵として戦いを積み始めたばかりの陸彦が目の前に集中出来るよう、死角のフォローもさり気なく。
 巨大狸と狐のボディプレスは蝙蝠たちを水飛沫か何かのように跳ねさせ、地に叩き付け、骸の海へと還し続ける。そして。
「よっし、最後の一体だ。決めて来い! 陸彦!」
「おう、父ちゃん!」
 若き猟兵の手で、その場の戦いは見事、締められる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルバ・ファルチェ
(アドリブ歓迎)

【騎士の血脈】

大事な双子の兄セラと、妹みたいな従妹レジーナと一緒に行動。

皆が楽しみにしてるモノを独り占めしようなんて、そうはさせないよ。

まずは確実に手下を倒していこっか。

僕は基本二人のサポートを。

【存在感】【おびき寄せ】【挑発】【誘惑】…使える物は全部使って囮に。

攻撃は出来るだけ【第六感】での【見切り】や【武器/盾受け】【オーラ防御】や【各種耐性】でダメージを最小限にしながらUCで各属性の弱点なんかを探るね。

弱点が判明したらそれを二人に伝えて攻撃して貰うよ。

商隊の脅威になる敵は出来るだけ多く排除しておきたいけど、魔法石は沢山いらない…家族や友人のお守りが作れる程度あればいいや。


レジーナ・ファルチェ
(アドリブ歓迎)

【騎士の血脈】

従兄のセラお兄様とアルお兄様と一緒に行動ですの。

何事も独り占めは良くありませんわ。
皆で楽しみませんと。
それが出来ない方にはお仕置きですの!

アルお兄様のサポートを受けながらわたくしは攻撃に専念しますわ。
とは言ってもまだわたくしに出来る事は少ないですけれども、焔狼エティと影鴉エーレにも協力して貰って頑張りますわね。

まずは【動物使い】【高速詠唱】でエティの炎を強化、炎に弱い敵に対して【属性攻撃】【二回攻撃】しますわ。
それで倒れたら良し、倒れませんでもわたくしの手の届く範囲に来ませんかしら。
届くようでしたら【怪力】でひっ捕まえて振り回して武器代わりにして差し上げますわ。


セラータ・ファルチェ
【騎士の血脈】
アドリブ歓迎

双子の弟アルと、久々に会う従妹レジーナと行動

気持ちは分かるがアルもレジーナも張り切りすぎて怪我するなよ

アルとレジーナに手を出すな
後方からの【援護射撃・制圧射撃・乱れ打ち】で攻撃
【スナイパー・マヒ・気絶攻撃】による【部位破壊】で翼を狙って撃ち落とす
弱点が分かればそれに合わせた【属性】を弾丸に纏わせる
こっちまで敵が来るようなら動きを【見切り、なぎ払い・武器受け】で対応する

レジーナ、少し見ない間に随分と……
…お転婆具合が上がってるな

魔法石は数個あれば十分だろ
多くても使わないしな



 未だどこかに隠れているカツィカを自分たちから隠すように明確な敵意を向けてくる闇色の渦。それをレジーナ・ファルチェ(弾丸魔導師(物理)・f23055)は二つの青色で睨み、桜浮かぶ白杖を向けた。
「何事も独り占めは良くありませんわ、皆で楽しみませんと。それが出来ない方にはお仕置きですの!」
 まずはそこの皆様からですわと戦る気満々なレジーナだが、従兄のアルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)も負けていない。
「皆が楽しみにしてるモノを独り占めしようなんて……そうはさせないよ」
「気持ちは分かるが、アルもレジーナも張り切りすぎて怪我するなよ」
 セラータ・ファルチェ(蒼蒼の盾・f03368)が溜息を混じえて言った内容に、アルバとレジーナは仲良く「勿論(だよ)(ですわ)」と声を揃え、動き出す。
 白銀の盾構えたアルバの眼差しと挑発的な微笑は「出来るものならやってごらん」と雄弁に語り、それに囚われた蝙蝠は複数。
『ギギッ、キ!!』
『キイィィ!!』
 群れから飛び出した蝙蝠たちに統率感はない。真っ直ぐ、ジグザグ、烈しく上下して――アルバを、アルバの魔力を喰おうと、それぞれが好き勝手に飛ぶ。
 真面目に追えば目と脳が追いつけずに疲れてしまいそうなそれを、アルバは心を落ち着け、より研ぎ澄ました第六感でもって対処していった。正面からの攻撃は構えた盾と僅かな動きで、死角からの攻撃は身に纏った守護の力で、痛みを最小限に留め続ける。
 しかし向こうもしつこいもの。一度目が駄目なら二度目と大きく飛び上がり――。
「エティ、あなたの炎を見せて差し上げて?」
 緑の上を焔狼が疾駆する。
 自分は従兄弟たちと比べて経験が浅く、出来る事が少ない。レジーナはそれを理解しているからこそ、アルバのサポートに自分の全てを乗せながらエティの炎を更に烈しいものへと変え、影烏エーレにエティとの連携をと伝えていく。
 そんな二人ががら空きかというと、そんな事は全くなくて。
「アルとレジーナに手を出すな」
 エティが蝙蝠に牙を立てた時、サポートと攻撃それぞれ専念していたアルバとレジーナの後方から降り注いだ雨が、ふたつ。セラータが最初に降らせた銃弾の雨は蝙蝠たちをその場に押し留め、次いで矢の雨を用いて翼に穴を開けて撃ち落とす。
 運良く生き延びたとしてもボロ布のようになった翼では空に戻れず、エティの牙から逃れる術もない。そして数にものをいわそうとしても――。
「アルお兄様、どうですの?」
「そうだね。やっぱり翼かな」
 蝙蝠の翼を斬り落としたばかりのアルバがやわらかに笑み、双子の兄を見る。
 セラがやったように翼を狙うのが最適だよ。そう語る微笑みにレジーナは心得ましたのと愛らしい笑みを浮かべた。絶えず上下する翼を狙えだなんてそんな、とは、“出来ない”とは思わない。自分には従兄弟たちと、焔狼エティと影烏エーレがいる。
「行きますわよ、エティ、エーレ!」
『ギギャキャアァ!!』
「黙ってろ」
 数を増やして乱れ飛び、同胞の魔力やコアを喰らい速度を上げて――しかしセラータは、蝙蝠たちをアルバとレジーナ近付けさせないという決意籠めた雨を再び降らせ、それが束の間止んだ所をレジーナの盾としてアルバが前に出る。
 目の前に飛び込んできた黒髪の乙女が、己に手を伸ばす。それは物語の中であれば実にロマンティックで――しかしオブリビオンと猟兵が描くワンシーンとなれば“そうならない”のが当たり前。
「捕まえましたわ」
 両翼を掴まれた蝙蝠の意識は、次の瞬間、凄まじい風圧に呑まれて消し飛んだ。レジーナは捕まえた蝙蝠を遠慮なく振り回し、勢いを付けて他の蝙蝠を殴り飛ばしていく。
(「少し見ない間に随分と……お転婆具合が上がってるな」)
 捕まえた蝙蝠を打撃武器にしてしまうとは。
 そんな驚きを超えた後、三人の周りは魔法石できらきらと彩られていた。
「ところで魔法石はどうなさいますの?」
「うーん、商隊の脅威になる敵は出来るだけ多く排除しておきたいけど……」
 沢山はいらないかな、とアルバは鮮やかな青を浮かべた魔法石を懐へしまう。家族や友人のお守りが作れる程度あればいい。多くを望まず、傍らの存在を想うその言葉にセラータも頷いた。
「そうだな。魔法石は数個あれば十分だろ。多くても使わないしな」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィーリス・ルシエ
【大事な妹分のシュリ(f22148)と参加】

シュリから離れないよう、ぴったりくっついて飛びます
はぐれたら大変だもの
私じゃなくてシュリが、ね!

それにしても無粋な敵ね
きらきらしたものが魅力的なのは認めるけれど、ね

戦闘は主にシュリの援護と支援

倒すと魔法石が手に入るのよね
好きな色?んー、碧色、かなぁ

「シュリ!?ちょ、ちょっと、防具、防具ー!」
防具を置いて走り出していってしまったシュリに大慌て

追いかけるにも私攻撃出来ないし
足手まといになるわけにもいかないので
その場から後方支援
シュリが少しでも怪我をすれば回復を

戻ってきたシュリにはお説教
いきなり飛び出しちゃダメっていつも言ってるでしょ!
心配するんだからね!


シュリ・ミーティア
姉貴分のフィーリス(f22268)と
呼び方はフィー

きらきら、色とりどり
綺麗……と思ったけど何だかうるさい敵だね

囲まれないように距離を取って
草木に身を隠しながら
一匹ずつ確実に倒していこうか

そうだ
フィーは何色が好き?

碧。じっと瞳を見返して
そう、じゃあ、あの子から狙おう

自分と反対方向に石を投げて気を逸らした隙に
…不意打ちなら上着(防具)は邪魔かな、置いていこう
「フィー、援護はよろしく」

コアのある方が本物
惑わされないように良く見て
ダッシュで距離を詰めてダガーで一撃、離脱

フィー、無事?
って戻ったら小言が…
でも、ほら、無事だし
…わかった、次は気を付ける
ありがと

手に持った碧色の魔法石は
また後で渡せばいっか



 闇色の中できらきらと光を弾くその色は数多。それは夜空に瞬く星々のようで、とても魅力的で綺麗で――けれど翼と声、両方が合わさって響く彼らの音に、身を潜めていたフィーリス・ルシエ(フェアリーのシンフォニア・f22268)とシュリ・ミーティア(銀色流星・f22148)は眉間にしわを寄せた。
 これは、ちょっと。うるさい、かもしれない。
 ところで。
「そんなにぴったりくっついて飛ばなくても……」
「何言ってるの、シュリがはぐれたら大変じゃない」
(「フィーじゃなくて私なんだ」)
 そう思うが取り敢えず頷いておいたシュリの目は、夜空をとかしたように静かだ。しかしシュリが誰かさんと同じく如何にフリーダムか知っているフィーリスは、その目を覗き込み――ふと、グリモアベースでの話を思い出す。
「あの蝙蝠を倒すと魔法石が手に入るのよね」
「……フィーは何色が好き?」
「好きな色? んー、碧色、かなぁ」
 みどり。色々あるが、それは草木のみどりではなく――そう、自分が今見ているような、碧だろう。シュリはフィーリスの瞳をじっと見返した後、足元の石を拾い上げる。
「そう、じゃあ、あの子から狙おう」
「え、あの子ってどの――」
「フィー、援護はよろしく」
 上着をその場へ、小石を自分の反対方向にぽいっ。突然の行動にフィーリスは目を丸くするが、“それで終わり”じゃあなかった。
「ちょ、ちょっと、防具――えっ、シュリ!?」
『ギッ!?』
『ギキャギャ!!』
 蝙蝠たちの意識が小石の方へ向いた瞬間、シュリは俊敏な獣にも負けぬ鋭さで駆けていた。
 追いかけたい。でも、攻撃手段のない自分じゃあ。
 フィーリスはぐっと堪え、シュリが怪我をしたら――しないでいてくれたら、いいのだけれど。“もしも”を考え、僅かな傷も見逃すまいと目を凝らした。その碧色に、分身が作られる瞬間が映って。
(「本物はこっち」)
 同じものを見ていたシュリは、一瞬の間にぐるりと抉り取るような一撃を見舞った。その姿が即、茂みの向こうにかき消える。
 森を形作る緑を利用しながら、狩りをする獣のように蝙蝠たちへダガーを揮っては離脱して――姿を見せた一瞬だけ見える輝きが何度か森に踊った後、戦い終えたばかりのシュリは何でもなかったような顔でフェアリーの元へ帰還した。
「フィー、無事?」
 襲撃の間、傍にいなかったのは把握していたが。
 するとフィーリスの頬が膨らんで。
「もうっシュリったら! いきなり飛び出しちゃダメっていつも言ってるでしょ!」
 早速の小言に、でも、ほら、と自分の体を指し示す。
「無事だし」
「それでも心配するんだからね! はい、防具!」
 フィーリスが両手でぐいっと持ち上げたファスナーの留め具を、シュリは摘んで受け取った。自分よりずっと小さい姉貴分だが、こういう時は適わない。
「……わかった、次は気を付ける。ありがと」
 もう片方、握り締められた手の中には獲ったばかりの魔法石。
 碧に煌めくそれは――。
(「また後で渡せばいっか」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と
いつでも虹が見られる街とは
それ自体が宝石かのような
足元の野花にも期待が膨らむ

…全て?
思わず師を見
決意新たに、力を尽くそうと応え

随分と、見合わぬものを着けているではないか
己が動けずとも対抗し得るべく
位置を確かめ【暴蝕】
良いか、石には牙一つ立てるな
逃れたもの、弱ったもの
師へと牙剥くものは
<部位破壊>で翼を断ち落とし、或いは己の身体で庇う
一匹とて通しはせぬ

次々に落ちる魔法石を振り返りざまに一つ
返す手で一つ
尾で軌道を変え一つ
あたふたと急ぎ回収
連れの小蜥蜴にも手伝いを命じ

…これで全部だろうか
自分や子蜥蜴の両掌で、頭の上で
輝く魔法石を師へと

うむ、それは楽しみだ
安堵に、かすか尾先も揺れ


アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
ほう、地上の虹と讃えられる街か
悪くない、興に乗った
なれば善は急げだ、ジジ
…ああ言い忘れておったが
彼奴等の落とす魔法石は全て回収せよ、良いな?

出来る限り輝石を傷つけぬよう
魔方陣より【女王の臣僕】を召喚
凍て、力尽きたそれから確と宝を拝借
ふむ、これは…否これも中々に…
…うむ、悪くはない
触媒の足しにはなろうよ

…やれ、私とて魔術師ぞ?
魔力酔いの対策は既に練っておる
不意を突かれぬ様にのみ注意を怠らず
強い魔力は破魔で相殺を試みる

さてジジは…おおっと
お前にしては善戦しておるではないか
回収された石を吟味しつつ
溜め込まれた魔力量に至極満悦
良きかな――後で褒美をくれてやらねば
其処な小蜥蜴にもな



 この森を抜けた先に、地上の虹と讃えられる街がある。
 架かる虹は全て、人々が自然や魔法の手を借りて創り出す逸品だという。
「悪くない、興に乗った」
 アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)の言葉に、ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)は静かに師の横顔を見る。
 特別な市場が開かれる街・ウォビニア。足元の野花を見ていると、芽吹き始めたそれと共に、そのものが宝石めいた街への期待が膨らんでいた。虹を生む原石ともいえる街の存在は、アルバの瞳に灯る星を静かに輝かせる。
「なれば善は急げだ、ジジ」
 それはつまり――耳障りな声を響かせ向かってくる敵を、疾く屠れという事。
 構えたジャハルにアルバは目を細めて。ああ、と、ニヤリというのがどこか似合う笑みを浮かべた。
「言い忘れておったが。彼奴等の落とす魔法石は全て回収せよ、良いな?」
「……全て?」
 思わず師を見るジャハルだが、全てというのならその通りにと決意を新たにし、大地を踏み締める。師がそう望むのならば。
「力を尽くそう」
 応え、蝙蝠たちをしかと捉えたジャハルの周りに、黒き小竜が群れを成して現れる。
 両翼を大きく広げた蝙蝠たちを見て翼を、尾を、ゆるりと動かした小竜らから漂うのは、強い飢えの気配と“あれを喰らっても良いのだろう?”という、渇き満ちる予感への喜び。
「石には牙一つ立てるな」
 ぱしっ。その言葉に一匹の小竜が尾で草をはたいたと同時、蝙蝠たちの翼に強い魔力が浮かび上がって。
『キギャアァァッ!!』
『――!』
 魔力波と小竜の群れ、双方の激突地点を中心に衝撃波が走る。
 余波で土と草が飛び散る中、ギギギャと上機嫌に羽ばたいた蝙蝠の翼が、コアを包む体が、ぼごんと奇妙に膨らんだ。次々に地に墜ちていくそれを見下ろす小竜の群れ、召喚した時の倍。
 なぜ。どうして。確かに当たった筈。
 蝙蝠たちの飛び方に動揺が滲むが、それは小竜たちにとって気に掛けるものではない。次々に喰らって数を増やし、内部を侵し渇きを満たしていく彼らの黒が、蝙蝠たちの黒を圧倒していく。
 喰えずに喰われる事から逃れた蝙蝠の行き先は、小竜を喚んだ竜の男が守る存在、黎明の輝きを放つ宝石人へ。あの輝きを喰えば、身に宿る魔力は桁違いに跳ね上がる筈。
 だがそれは、“喰らえたなら”の話。
「随分と、見合わぬものを着けているではないか」
 夜色の風が駆けたような錯覚。ぼとりと落ちていくコア抱いた中心部。両翼はそれから僅かに遅れて地に落ちて、滅び始めた肉から煌めく魔法石がまろび出る。
 揺らめく緑色に宿る属性は草花のそれか。それとも風か。
 思考巡らすアルバを魔法陣から溢れた無数の蝶が青く照らす。冬を越えた森の中に舞う蝶の鱗粉は、天空から降る雪以上の冷たさ。蝙蝠たちがどれだけ翼に力を籠め、大きく広げようと、はらはら降るそれから逃れる事は出来ない。
 最期の力を振り絞って撃った魔力波は、魔術師であるが故に対策済みであったアルバには届かず――静かに力尽きたものから、溜め込んでいた“宝”を頂かれていく。
「ふむ、これは……否これも中々に……うむ、悪くはない」
 宿る魔力。放つ輝きと彩。触媒の足しにはなるだろうそれらをしまい、さてジジは……と振り返った丁度その時。小竜らによって空中へと次々に溢れた輝きを、ぱし、ぱしっ――ぴんっ。振り返りざまに一つ、返す手で一つ、尾で軌道を変えと、珍しくあたふたと回収する従者の姿があった。
「……師父」
 ピギャ。足元で鳴いた仔竜とジャハル。彼らの両掌だけでなく、頭の上にも魔法石が雛か何かのように載っていて。言うより先に屈んできたその頭にアルバは手を伸ばし、薄青い魔法石を取る。
「お前にしては善戦しておるではないか。……ほう、この魔力量」
 良きかな。短い言葉と眼差しに満悦の彩を浮かべた目は、ふたつの竜へ。
「後で褒美をくれてやらねば。其処な小蜥蜴にもな」
「うむ、それは楽しみだ」
 安堵で竜尾の先をかすかに揺らしたその隣。小蜥蜴と称された仔竜が、元気にピギャ! と鳴いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リリヤ・ベル
【コシカ】
エンジさまとニアさまと、おでかけなのです。
おしごともたからさがしもがんばりましょう。
えいえい、おー。

こうもり、しっています。バサバサくるのですよ。
たくさんでも、こわくありませんもの。まけませんもの。

そらからひかりを招いて、撃ち抜きます。
安全第一。おふたりの方にも気をつけて、確実に倒してゆきましょう。
おまもりいただけるなら、わたくしは攻撃に専念を。
くらくらするまえに撃ち落とすのです。

みみ?
ぎゅっとフードを引っ張って、ふさいで。
……わ。わ。すごい。
いろいろないろ。きらきら、きれい。きれいです。
わたくしは、青色をさがしましょう。
おだやかなみずのいろ。

みなさまの石も、見せてくださいましね。


アルバニア・フェルミ
【コシカ】
リリヤとエンジと一緒に
お出かけに誘ってもらえて嬉しいけど
まずは初仕事をこなさなきゃ
がんばりましょうね、えいえいおー

集めた瑠璃唐草の花をばらまくように
えいやと両手で撒き散らして降らせましょう
敵から放たれた強い魔力から2人を守るように
ふわりと花が受け止めて
降り注いだ先からころり、魔法石が転がるかしら
赤、青、黄、緑
この目で見なくても色とりどりのきれいな石だと感覚が教えてくれる
ねぇ見てきれいね
リリヤとエンジはどんな石を見つけたの?


エンジ・カラカ
【コシカ】

うんうん、仕事もタカラサガシも頑張ろう。
おー。

アァ……みてみて、コウモリ。
知ってる?知ってる?コウモリはこわーいヤツ
いっぱい、いーっぱい襲ってくるヨ。
一気に来たらどうしよう。コワイネェ。

好きな色、赤!
アァ、でもアッチの黄色もコッチのオレンジもイイ。
二人の様子を見て、イイコトを思いついた。
ぜーんぶ見てみたいカラ
まずは、ぜーんぶまとめて倒そうそうしよう!
二人とも耳を塞いでー。危ないヨー。

大きくいきを吸ってー、ワッ!
て吐き出したら纏めてコウモリを倒すのサ。
二人の好きな色はあるカ?
とってイイヨー。

コレは後で好きな色を決める決める
決めたらそのコウモリだけを狙おうそうしよう。
赤!黄色!オレンジ!



『おしごともたからさがしもがんばりましょう。えいえい、おー』
『がんばりましょうね、えいえいおー』
『うんうん、おー』
 どちらも大切だから、気合いと約束の“えいえいおー”。
 グリモアベースで頑張る印を交わしていた三人は、獲物を求め飛ぶ闇色を観察中。
 あちらはまだ自分たちを見つけられておらず、ギキギィと腹立たしげに鳴いていて。
「アァ……みてみて、コウモリ。知ってる? 知ってる? コウモリはこわーいヤツ」
 わぁ、と両手を広げ脅かす仕草をしたエンジ・カラカ(六月・f06959)に、小さなレディは「もちろんです」と得意げに翠の目をきらり。リリヤ・ベル(祝福の鐘・f10892)の声は、瞼閉じたアルバニア・フェルミ(鳥鳴花咲・f26064)の世界にもその表情を映すよう。
「こうもり、しっています。バサバサくるのですよ」
「そう。それもあそこにいるのがいっぱい、いーっぱい襲ってくるヨ」
 一気に来たらどうしよう。コワイネェ。
 だってあんなに真っ黒。バラバラなのに、ヒトツみたい。
「たくさんでも、こわくありませんもの。まけませんもの」
「そうね。リリヤは絶対、負けないわ」
 再びの“えいえいおー”を控えめに交わしたら、いざ出陣。
 姿を現した三人に蝙蝠たちが歓喜の羽ばたきを起こした。鳴き声をかき消すほどの音の重なりに乗るのは強い魔力。それが一気に迸り――。
「えいや」
 アルバニアが踊らせた花々は、やわらかな金髪に咲くものと同じ。“赦し”を謳う瑠璃唐草の花が流れ込むようにして降り、魔力波も蝙蝠たちの視線も受け止める。
 優しい青色が守ってくれる、その間に。
 エンジさまは、と目をくりくり動かしたリリヤに、エンジがいつもの笑みでふわふわと手を振ってきた。あちらにおられるのでしたら、とすぐに蝙蝠たちを見たリリヤは、瑠璃唐草の向こうでギキッと鳴いた“バサバサ”一匹に捉えられるけれど。
「くらくらするまえに撃ち落としてしまえば、だいじょうぶですね」
 戦い方を知っている少女の指先が蝙蝠に向く。
 指先に招かれた天の光は一瞬で眩い柱となって闇色を呑み、緑の中に射し込んだ峻烈な白色にエンジは「見た? 見た?」と左手薬指へと楽しげに問う。今見たのは閉じた瞼に赤を残すような、強い白。
「コレの好きな色はー、赤!」
 例えば、ソックリさんを連れてきたコウモリが持っているような赤。
 けれど一番“好き”を覚えるのは、左手薬指と繋がる賢い君のような赤。
「アァ、でもアッチの黄色もコッチのオレンジもイイなァ」
「エンジは黄色とオレンジもほしいの?」
 ひょいひょい走りながら蝙蝠を引き連れ、突っ込んでこられたら躱して、コアの色をちらっと見て。ゆるゆると迷うエンジに、アルバニアは瑠璃唐草という助け船を優しく降らせていく。
 その邪魔をしようとしていた一匹は、リリヤが安全第一の気持ちと共に招いた光でぴしゃん! 真っ白な光で撃ち抜いた――ら、その輝きがエンジの脳内にぴかりと“イイコト”という名の天啓をもたらした。
(「ぜーんぶ見てみたいカラ、まずは、ぜーんぶまとめて倒そうそうしよう!」)
 他の色もいっぱいいるから丁度イイ。
 満面の笑みにリリヤの頭上にはハテナマークがぷかり。“閉じて”いるからこそ繊細に感じ取ったアルバニアも首を傾げ、そんな二人にエンジは両手で耳を押さえる仕草をして、にこり。
「二人とも耳を塞いでー。危ないヨー」
「みみ?」
「危ないの?」
 ぎゅっと引っ張ったフードの中へ。耳を塞いだ掌を白と青の翼で更に包むようにして。二人が疑問も耳も隠したら、そうそうソレでイイと、エンジは大きく大きく息を吸って――。

 ワ  ッ  !  !

 笑顔で放たれた咆吼は、雷鳴の圧をそのまま持ってきたような激しさだった。木々が揺れ、地面を覆う草がざあっと一気に舞って、枝になっていた葉がぱらぱらばらばらと落ちてくる。
 それだけの咆吼をまともに受けた蝙蝠たちは、渦に呑まれた布きれのように、ぐるんぐるん。引っかき回されながらその体を崩していって――ぱらぱら。きらきら。彩と光が次々に降り始める。
「二人の好きな色はあるカ? とってイイヨー」
 エンジが言い終わらないうちに、リリヤは目も口もふわあと大きく開けたまま、降り始めた魔法石の元へと駆けた。遅く降ってきたひとつが小さな掌にころん、と着地。澄んだ煌めきは翠の目にゆらゆら映りながら、白い掌に湖を生むようで。
「……わ。わ。すごい。きれい。きれいです」
 虹が雨になって、そして宝石になって降ったら、きっと、こんな景色。赤、青、黄、緑――感覚が教えてくれる、瞼の先に生まれた世界。手を伸ばせば、丸く艶々とした感触が色彩と共に伝わり、アルバニアは静かに笑みを咲かせる。
「ねぇ見てきれいね。リリヤとエンジはどんな石を見つけたの?」
 赤はアネモネ、緑は紫陽花に似たビバーナム。そして、自分の花と同じ青。手元を覗き込んだエンジは、両手をぱっと開いて見つけた輝きをお披露目した。
「コレは赤と黄色とオレンジ。いっぱい、いーっぱい手に入れたンだ」
「わたくしは、おだやかなみずのいろを見つけました」

 宝を見つけたら? 手に入れたら?
 急いで、大事に、しまわなきゃ。
 何せこの森には、とんでもなく欲張りな欲しがり屋が隠れてる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『呪飾獣カツィカ』

POW   :    呪獣の一撃
単純で重い【呪詛を纏った爪 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    呪飾解放
自身に【金山羊の呪詛 】をまとい、高速移動と【呪いの咆哮】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    カツィカ・カタラ
【両掌 】から【呪詛】を放ち、【呪縛】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●宝喰いの獣
 森の中に静けさが戻る。
 草も木も土も、何事もなかったかのように吹き込んだ風を浴びて――ちり、ちゃり、と、植物では有り得ない音がした。
「アーァ……あいつらぜぇんぶ、くたばっちまったのか」

 イイ奴らだったのに。

 悼む内容でありながら、語る声に滲んでいたのは紛れもない悦び。
 黄金に輝く獣の頭蓋。塗料と金や宝石を使った細工で彩られたその下には、にたりと嗤う瞳と口。
 ハハァ、と、声と空気半々の嗤い声をこぼした獣の男は、金と葡萄色で飾り付けた両腕をゆっくり持ち上げた。鋭い爪に削られた地面が、ぎぎぎと悲鳴を上げる。
「ん」
 猟兵たちに向けられたのは、笑顔と両の掌だった。
「あいつらの魔法石、お前らが持ってんだろ? 一匹も残ってねェのに魔法石が見当たらねェってのはつまり、そういうコトだからな。てコトで返してくれるか。あいつらはオレのモノだったんでね。主としては、弔ってやりてェんだよ」

 ……わかるだろ?

 掌を上に向けたまま指先をクイクイと動かす男の心に、エレメンタル・バットを弔うという気持ちがあると。そう信じる者はいないだろう。
 獣の男――呪飾獣カツィカから溢れているのは、金銀財宝に対する抑えきれない渇望だ。欲しくて欲しくてたまらないと、黄金頭蓋から覗く目が、嗤う口が、空気が語っている。
「なァ頼むぜ兄弟。あいつらが残したモンをオレは大切に使ってやりてェんだ。持ってるんだろ? 出せよ。赤やオレンジの魔法石は馬車や家を焼くのに丁度イイ。白に近い水色をした魔法石は脅すのにピッタリだ。アレで両足を凍らせてやりゃあ一発でなァ」

 視界を奪う時は闇を秘めた黒を。
 こっそり仕留めたい時は、水を秘めた青を。
 迷わせるのなら氷と水の属性を同時に使って、濃霧を起こす。

 これまで魔法石をどう使ってきたか語ったカツィカは、シシシと楽しそうに肩を揺らしてから、頭をぐるうり。円を描くように動かし、語る。
「くたばった後も役に立つイイヤツらだったんだ。最後まで愛してやりてェからさァ」
 だから、ぜぇんぶ寄越せよ。
 にいぃと嗤った目が猟兵たちの手に、懐に向いて。
「そっちも凄ェイイなァ」
 手にしている武器。
 纏う防具。
 彩りを、心を添える飾り。
 己のものではない輝きに目を留め、その宝が欲しいと――寄越せと、欲望を吐き出した。
 
鎧坂・灯理
【双龍】
寄るな触るな息をするな殺すぞ
何もせずに利権だけかすめ取ろうとする奴は反吐が出るんだ
私のものに手を出す奴は許さん つがいのものに手を出す奴は殺す
なにより なによりだ

そ の 口 で 愛 を 騙 る な ァ ッ !!!
絶対に確実に殺して殺して殺す!!

【発火能力】で呪詛ごと爪を燃やしてやる 爪に火をともしてやる
貴様のような輩にはぴったりだろうが、ええ?
お高い布も悪趣味な金飾りも灰にしてやろう
マリーに近づけんよう足も焼いてやる
ミノ踊りでもするがいいさ、クズには似合いだ

オーラ防御で己を空気ごと覆い適応
いきなり怒鳴ってごめん マリー
頭を冷やしてくれてありがとう


ヘンリエッタ・モリアーティ
【双龍】
そりゃくたばんなきゃ使えなくない?
あとドロボーが「返して」って言われて「はいそうですか」って返すわけないじゃん
ばっかみたぁい!あなた、アウトローっぽいのに脳みそちっちゃいのねぇ
だめよぉ。悪者は「頭が良くないとカッコ悪い」んだからね

あーあ、灯理の地雷ふんじゃったぁ
駄目よぉ。私の知ってる中でいっちばん怖い人なんだからぁ
――まあ、そーいうところが一番すきなんだけど!

熱くて、つらくて、苦しいわねぇ
可哀想に。せめて、最後は「冷やして」あげるわ
【愛骸舞台】。
灯理は私の舞台に適応できるもの。そうでしょ?
さあ、上手に踊れない子はだぁれ?うふふ!
あなたから、――私のお城にかざってあげる!



「っふ、ふふ……やぁだ、もう!」
 淡く色付いた唇から溢れた笑い声に、カツィカの体が向く。
 踊るような動きが鬣めいた葡萄色と角飾りを揺らした。漂う呪詛の気配さえなければ、着飾って宴に現れた獣のような男が首を傾げる。
「随分愉しそうじゃねェか姉ちゃん」
「寄るな触るな息をするな殺すぞ」
 即、放たれた言葉と視線。気安く話しかけてきたカツィカの笑みと言葉だけでなく、全てを容赦なく両断する灯理の言葉にマリーはころころ笑う。このひと、灯理の言うことちゃんと“聞ける”タイプかしら。
「だってあなた、おかしなこと言うんだもの。そりゃくたばんなきゃ使えなくない? あとドロボーが『返して』って言われて『はいそうですか』って返すわけないじゃん」
 掌でころりと揺れたとびきりの赤色と、金を帯びた白。もう一方の手で蓋をすれば、カツィカの視線が魔法石以外を探すようにぬるぬると動き始めた。それがまたおかしくって、そして。
「ばっかみたぁい!」
「ンな、」
「あなた、アウトローっぽいのに脳みそちっちゃいのねぇ。だめよぉ。悪者は『頭が良くないとカッコ悪い』んだからね」
「――全くだ。貴様のような奴には反吐が出る」
 こいつは何をした? 何も。利権だけをかすめ取ろうと嗤うばかりの男に、くれてやるものなどあるか? いや、無い。何ひとつとして。
「私のものに手を出す奴は許さん。つがいのものに手を出す奴は殺す」
 灯理のすぐ傍を漂った埃が、ぢっ、と音を立てて散った。一瞬だけ現れた緋色をマリーの目が追い、その色を知らない男は、カカ、と嗤い跳躍する。爪の周りだけがぐらりと揺らいで――ぢっ。また、緋色が爆ぜた。
「ンだよつれねェな! イイじゃねェかちょっとくらい、あ――」
 次に来る音が何か。その言葉は何か。脳は優秀であるが故に瞬時に理解し、冷静だ。同時に、はらわたは耐え難いほどの怒りで煮えくりかえっていた。

「 そ の 口 で 愛 を 騙 る な ァ ッ ! ! ! 」

 愛が何たるかを知りもしない輩が。
 愛を口にし、愛を語り、愛を騙る。
 嗚呼。絶対に確実に殺して殺して殺す!!

「あーあ。灯理の地雷ふんじゃったぁ。駄目よぉ。私の知ってる中でいっちばん怖い人なんだからぁ。――まあ、そーいうところが一番すきなんだけど!」
 ねぇ聞いてる?
 マリーの質問に、紅蓮の炎に踊るカツィカの声が、ァア、ハ、と返る。それは呼吸か、悲鳴か。ああ、それとも。灯理の唇が鋭い弧を描く。
「何だ、嬉しいのか? そうだな、貴様のような輩にはぴったりだろうが、ええ?」
 紅蓮の炎がまず燃やしたのは呪詛と爪。蝋燭のように炎を発するのは爪だけに留まらず、上等な糸を使ったのだろう布も、ちりちゃり鳴っていた金飾りも一切の容赦を与えず燃やしにかかる。
 すぐ傍で炎に抱かれる輝きは、カツィカにとって目の前で宝を奪われるに等しいのだろう。クソが、と叫んで後ろに跳んだ獣の両手から新たな呪詛が生まれる様を、マリーは甘やかすような微笑みと共に眺めていた。
「そうよねぇ。熱くて、つらくて、苦しいわねぇ。可哀想に」
 だってこっちへ来ようとしても、その足は真っ赤っか。
 灯理の望むままに、似合いだろうミノ踊りをと炎が溢れている。
「せめて、最後は『冷やして』あげるわ」
 ほろり降らせた海色の涙が、紅蓮の色を浴びていた森を陽光なき深海の舞台に変える。黄金頭蓋の下で目が大きく見開かれ、ガ、と開いた口から飛び出した空気はきっと海月の形をしていただろう。
「さあ、上手に踊れない子はだぁれ? うふふ!」
 灯理は大丈夫。私の舞台に適応できるもの。
「いきなり怒鳴ってごめん、マリー。頭を冷やしてくれてありがとう」
 ほら、ね。
 守りの力で己を空気ごと覆った灯理の瞳は、静かな夜の色。いいの、と少女のように笑うマリーに灯理はそっと笑み、身を低く伏せたカツィカを見る。焼けこげた爪は苦しげに地面を抉り続けていて。だったらあなたから、とマリーの目が輝いた。
「――私のお城にかざってあげる!」
 黄金頭蓋の下。
 そこに隠れる本当のあなたは、どんなカタチをしてるのかしら!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アパラ・ルッサタイン
うん、ようく分かるよ
イイものは愛してやりたいよね
でもさ、このコ達も言っているよ?
どうせ愛してくれるのなら美人の方がいい、ってさ!

ああこのランプが気になるかい?
お目が高い
けどこちとら商売なんでね
客以外はお帰り下さいな

【POW】

先ほどの石は友にくれてやったし
あたしはあたし自身の石から炎を喚ぶとしようか

さあ溢れてお出でよ【ブレイズフレイム】
破魔の力をのせて丁寧に焼いて差し上げる
大きな動きで爪が来るなら仕掛ける好機
兆しは見逃さぬよう
距離をとり足を取られない様に注意もしよう

爪やら払われようとも炎を繰り君を蹂躙する
まずはその厄介な手かな

ねえ
強欲はあたし、嫌いじゃないよ
けれど君のはもう少し潜めるべきだったな



「冗談じゃねェ! 飾るのはイイが飾られるのはごめんだ!」
 深海舞台から必死で飛び出してすぐ悪態をついたカツィカは、目の前に現れた輝き――先程まで立たされていた舞台を彷彿とさせる色彩に息を呑む。しかし、豊かな髪に深蒼を煌めかすアパラと、アパラの掌にある物を見て目の色を変えた。
「あいつらの忘れ形見じゃねェか。寄越しな」
 エレメンタル・バットが溜め込んだ魔力が宿った魔法石は、その見た目だけでなく質も上等。それをカツィカは確か――。そうそう。
「最後まで愛してやりたい、だっけ? うん、ようく分かるよ。イイものは愛してやりたいよね」
 でもさ。
 乳白色の指先に、掌に、ころりこつりと抱かれた魔法石の煌めきがちかちか踊る。
 それを色が映っただけだという者もいるだろう。しかし。
「このコ達も言っているよ? どうせ愛してくれるのなら美人の方がいい、ってさ!」
「そいつはどうだろうなァ!」
 不敵に輝いた笑顔を魔法石ごと捕らえようと伸びた爪は、酷く痛んで毛も真っ黒焦げ。しかし“ほしい”という欲と呪詛は健在で、アパラが飛び退いたそこを、薄氷を割るようにして容易く砕く。
「テメェよかずっと上手く使ってやるから寄越せ!」
 爛々と輝く目は魔法石持つアパラにぎらぎらと注がれて――別の輝きにも目を留めた。へえェ、と呟いたカツィカの足がゆっくりと動く。
「いいランプじゃねェか。何でできてんだ」
「へえ、お目が高い。けどこちとら商売なんでね、客以外はお帰り下さいな」
 光り続ける鉱石ランプは、カツィカのような者の為に在るのではない。
 ッハ! と嗤った獣が再び跳躍した瞬間、アパラは身体を斜めに走る黄金陽色の裂け目をなぞる。水をたたえた石は友にくれてやった後。ならば。
「さあ溢れてお出でよ」
 自分という石から喚んだ炎があでやかに踊る。眩い裂け目から溢れた紅蓮の炎は頭上に跳んだカツィカの、触れるのも躊躇われる厄介な手を蹂躙し始めた。
 一度焼かれた手を別の炎に焼かれるというのは、筆舌に尽くしがたい痛みなのだろう。それを教えるような悲鳴にアパラは少しだけ目を丸くし、距離を取って笑む。
「ねえ。強欲はあたし、嫌いじゃないよ。けれど君のはもう少し潜めるべきだったな」
 そうしてさえいれば――なんてアドバイス、素直に聞きやしないのだろうけれど。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エルザ・メレディウス
【晩翠庵】で参加いたします
*アドリブなどお任せ致します
POW使用します

ずいぶんと物欲のお強い方達の様ですね
・魔法石に加えて、手持ちの金貨・銀貨・偽の宝物を用意して敵を【誘惑】しながら、こちらへと近寄らせます
・仲間の二人には茂みに潜んで頂きながら、待っていただきます。相手が適度な距離まで近づいたところで合図をして【だまし討ち】を仕掛けて致きましょう

*金貨や銀貨の入った袋を放り投げて合図とします

・だまし討ちが成功したら、私も二人と一緒に相手へと攻撃をしかけます
・だまし討ちが上手くいかなかったら、二人への敵の攻撃をなるべく防ぎながら、二人が攻撃に加えるまでの間時間を稼ぎます

白王煉獄を使用いたします


佐藤・柊那
【晩翠庵】で参加です

やれやれ、欲深いことやで
そんなに強欲なら、拾ってくれるやろ
エルザさんの作戦に合わせて
レプリカクラフトで偽物のお宝を作るよ
その後作戦に合わせて茂みに隠れてから動くよ

基本的には中距離からちくちくと毒を使って攻撃
敵の攻撃を回避するのを優先して動きます。
仲間の二人が、ダメージを受けたらUCを使って
回復を行います。

危ない攻撃が来そうだと野生の感にピンと来たら
二人に伝えて回避するように促します。


音海・心結
【晩翠庵】で参加なのです
*アドリブ歓迎なのですよーっ

物欲の塊
みゆも物欲は強いのですが、
さすがに負けそうなのです……

茂みの中で息を潜め
獲物(敵)からは決して目を離さず
狙うときを今か今かとて待つのです

合図とともに【フェイント】で戦場に身を投じ
相手目掛けて攻撃なのです♪
ここはやっぱり肉弾戦でしょうか
でも、ただのパンチじゃないのですよ?
このパンチには【催眠術】がかかってるのです

UC『捕食の刃』発動
攻撃力をアップさせて、
みゆも獣になっちゃうのですよーっ!
ふわりきゅるりん

おねーちゃんの援護を受けながら、
エルザと前線でえいやっ! そいやっ!
まぁ?
負ける気はしませんけどねぇ



 キィンッ。

 炎と悲鳴の中に飛び込んだその音は硬く、高く。
 地中から顔を覗かせていた石に当たって跳ね返った銀貨が一枚。目で確認せずとも、呪詛と欲に浸ってきたカツィカは音の正体を理解していたのだろう。ぐりんっと顔を向け地を蹴ってと、凄まじい反応を見せた。
 あっ、と呟いた黒髪の女が魔法石を抱えて逃げ出す。
 その手にはちゃりちゃりと音を立てる革袋も、ひとつ。

 ――アレが。
 ――いいや、アレも欲しい!!

 そんなカツィカの気配を後方に感じながら、黒髪の女もといエルザは走り続けた。
(「ずいぶんと物欲のお強い方の様ですね」)
 あの蝙蝠たちといい、カツィカといい。後者にはわかりやすい宝を用意したつもりだが、こちらが望んだ通りの反応を見せてくれた。後はこのまま自分を追ってくれれば――と、思っていたのだが。
「そいつを寄越せば命は奪らねェでやってもイイぜ、姉ちゃん!!」
「くっ……」
 足を止めて振り返ったそこには、“追ってくれれば”なんて杞憂ですとばかりに革袋と魔法石を見つめるカツィカがいた。自分は負傷しているが目の前には宝を持った猟兵が一人だけ、と、そう見えたのだろう。
 事実、そう“だった”。
「そんなに欲しいのでしたらどうぞ、差し上げます」
 エルザは躊躇う事なくずっしりとした革袋を放り投げた。カツィカの意識は宙を舞う革袋へと向き、緩んだ口からきらきらと金貨銀貨が溢れ出す。自分へと降ってくる金色と銀色にカツィカから嗤い声が漏れ――。
「ッぐぁ……!?」
 突如体に走った痛みと熱。風で揺れたにしては派手な草の音。
 そちらを見たカツィカの目が更に見開かれる。それをにこにこ受け止めたのは、茂みから飛び出した勢いのまま走る心結だった。
「強欲なら拾ってくれるやろとは思ったけど……」
 ほんと強欲。柊那は距離を取って呟き、次の一手――毒を構えた。
 瞬間、カツィカは“全て”を悟ったようだ。掴んでいた革袋を地面に叩き付け、髪にも鬣にも見えるそれをぶわあと膨らませる。
「てめェらあァッ!!」
 カツィカの全身が金に揺らめく呪詛で覆われた。視線の先には兎のように駆ける心結の姿。放たれた咆哮が地面を大きく削り、草を巻き上げ、そしてそのまま――。
「そっちに跳ぶと思ったのです?」
 フェイントを交えていた心結は、愛らしく笑ってカツィカの懐へざあっと飛び込んだ。物欲の塊ともいえるカツィカとの物欲勝負。そちらはさすがに負けそうだが、この戦いは、そう思わない。
(「まぁ? 負ける気はしませんけどねぇ」)
 その想いは、きっと最後まで変わらない。
 小さな拳は立派な打撃武器。叩き込んだパンチには催眠術のオマケをつけて。すると小さな体がサッと横に跳んだ。それは自分を捕らえようとした獣の手から逃れる為ではなく。
「その刃は罪を断ち切り、その炎は魂を浄化する」
「ぐうぅッ!」
 エルザの繰り出した炎纏う一閃がカツィカの横っ腹に食い込んだ。泡が弾けるようにして肉が焼けながら弾け飛び、地面に落ちる前に浄化され消えていく。
「てめェ、俺の肉を……!!」
「! 気を付けて!!」
 全身の産毛が一斉に立つような感覚に柊那は思わず声を上げていた。勘としかいいようのなかったそれはぴたりと当たり、エルザと心結が飛び退いたそこにカツィカの両拳が叩き付けられ、爆弾を落としたような威力でそこを破壊する。
「助かりました」
「さすが、おねーちゃんです♪」
「任してよ」
 信頼から来るやり取りは短く。次への行動は素早く。
 変わらず静かな表情浮かべたエルザの刀が炎と共に閃き、カツィカの爪とぶつかった。再び自分を破壊しようとするその向こうにカツィカが見たのは、ぴょこんと飛び出した狼の耳。ふわんとかすかに揺れた兎尻尾。それから――マイケル。
「――ア?」
 何だアレ。
 思わず表情が固まった男に、ふわりきゅるりんと心結の笑顔が獣性と共に炸裂する。は、と我に返るがカツィカにとって絶妙に嫌なタイミングで柊那が毒を撃ち込むものだから、反応がワンテンポ遅れてしまう。
 それが三秒に満たない僅かなものだとしても、柊那の援護はエルザと心結にとって絶妙かつ頼もしさ抜群。あああ、と苛々を声に出し暴れる獣と、至近距離で戦り合う事に何の不安もなかった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・陸彦
【鯉華】
あいつが親玉だな!
大丈夫だよ、父ちゃん
おれ達はあいつを取っちめる為に来たんだからな
さっきので疲れるもんか!

……おれが宝?山?
へへ、そっか……父ちゃんにはおれが宝なんだな
でもあいつには興味がない、こういうの知ってるぞ
「ものずき」って言うんだろ
……嬉しいけどさ!
だって、照れるだろ

倫太郎の拘束で身動きが取れない、または鈍った所を
薙刀のなぎ払いで攻撃
あの大きな手も、爪も多分受けちゃいけない
きっと普通じゃないんだ
避けても立ってた地面がグラグラしそうだけど、その時がチャンスだな!

仕掛けてくる瞬間に高速詠唱の巫覡載霊の舞
威力を軽減して負傷を減らし、跳んだ所を空中戦からのなぎ払いのカウンター


篝・倫太郎
【鯉華】
うっし、本命来たな
さって、もういっちょ頑張れっか?陸ひ、こ……

あ、ハイ
父ちゃんは安心だわ
んっと、子供は元気が一番だな
でも、陸彦
気を付けろ?

お前は宝の山なんだからさ
だって、敵に狙われたら困るだろーが?

俺の息子だもんよ
髪の先から爪の先まで
とびっきりのお宝って話?
それはアレが欲しい『お宝』とは違うしな

物好き言うな
この天邪鬼……!

拘束術・弐式使用
拘束と敵の攻撃の妨害を召喚した神霊に指示
最悪、敵の攻撃への身代わりも任せる

身代わりは主に陸彦への攻撃に対して任せる
陸彦が対処する時間くらい稼いでくれるだろ

俺自身は敵の攻撃は呪詛耐性で対処しつつ
破魔と衝撃波を乗せた華焔刀で攻撃
陸彦のフォローも常時行ってく



「ニセ金掴まされるわワケのわかんねェのが出てくるわ……どうなってンだ、クソ!」
 あっちよりこっちのがマシだ。そんな愚痴を口から血と共にプッと吐き出したカツィカが駆ける。倫太郎は、迷わずこちらへ向かってくるカツィカを捉えたまま華焔刀を構えた。
「うっし、本命来たな。さって、もういっちょ頑張れっか?」
「あいつが親玉だな!」
 陸彦、と呼ぼうとした声を元気に消したのは気遣われた陸彦本人。色違いの目だけでなく全身から戦る気を漲らせていた陸彦は、ぽかんとしている倫太郎に気付いて「大丈夫だよ、父ちゃん」と笑顔を見せた。
「おれ達はあいつを取っちめる為に来たんだからな。さっきので疲れるもんか!」
「あ、ハイ」
 父ちゃんは安心だわ、と思わずにいられない。
 ああ、本当に。“子供は元気が一番”だ。
「だったら今すぐ疲れるか!? アァ!?」
 カツィカが吼え、高く跳ぶ。ぐわっと開かれた両の指。鋭い爪から力が溢れ始め――た瞬間、カツィカは空中で何かに飛ばされ、固定され、そのまま地面に叩き付けられた。
「ッ!? クソ、今度は何だ!!」
「さあな! 陸彦。さっきの続きだけどな。気を付けろ? お前は宝の山なんだからさ」
「……おれが宝? 山?」
 どういう事だろう。今度は陸彦がぽかんとすれば、倫太郎は両腕を体にぴったり付けた状態で何とか起き上がり、じりじり移動し始めたカツィカを見据えて笑う。
「だって、敵に狙われたら困るだろーが? 俺の息子だもんよ」
 自分にとって、陸彦は髪の先から爪の先までとびっきりの宝だ。それはカツィカが求める宝とは違うが、違うからこそ何ものにも代えられない宝だと断言出来る。
「へへ、そっか……父ちゃんにはおれが宝なんだな。でもあいつには興味がない、こういうの知ってるぞ。『ものずき』って言うんだろ」
「物好き言うな、この天邪鬼……!」
 駆け出した陸彦は背中に投げられた言葉に、へへっと笑う。
 本当は、自分の全部が宝物だと言われて嬉しかったけれど。
(「だって、照れるだろ」)
 そして倫太郎が作ったチャンスを逃すわけにはいかない。
 握り締めた薙刀を思いきり揮い、ぶん、と空気を裂く。力いっぱい放った薙ぎ払いに対し、カツィカが後ろに跳ぶ――が、逃げたのではないと陸彦はすぐに理解した。
 一部が溶けた黄金頭蓋。焼け焦げた織物の飾り。自身を彩る物を振り回し、獣の見目に相応しい咆哮を上げたカツィカの両手が、拘束された状態の爪が、周りの空気をぐにゃりと歪ませている。
「拘束してハイめでたしなんて思ってねェだろうなァ!? 動けなくてもやれンだよ俺はァ!」
「しつこい奴だな……!」
(「さっきは父ちゃんの神霊が止めてたけど、あの大きな手も、爪も多分受けちゃいけない。きっと普通じゃないんだ……!」)
 嫌な気配が濃度を増し、倫太郎は心の内で不可視の神霊たちに指示を出す。陸彦はそれを目と感覚で感じ取りながらどうするどうすると考え――思いついた。攻撃されれば足元が不安定になるだろう。しかしその瞬間にチャンスがある筈だ。
「大丈夫だよ、父ちゃん!」
「ん? ……!」
 力強く自分を見るふたつの色。ついさっき聞いたのと同じ言葉。けれど。
 倫太郎はよしっと頷き、フォローは任せろと陸彦を送り出した。走り始めた陸彦にカツィカの目がぎらぎらと向くが、力乗せた華焔刀を揮って自分の方へと無理矢理向けさせる。
「標的が見えなくたってなァ……! 喰らいやがれ! そして死ね!!」
 ニタァと嗤った口から呪詛が吐き出された瞬間、両の掌に溜め込まれた呪詛が一気に溢れた。空気すら歪ませ流れるほどのそれを陸彦は真っ直ぐ見つめて、一呼吸。跳んだ瞬間、その姿が神霊体へと変化して。
「ンだと!?」
 溢れた呪詛の威力を削いだ瞬間揮うは、握り続けていた薙刀『薫風』。
 風舞うような一撃が、カツィカの体を力強く薙ぎ払った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス
―強い欲望の匂いだ。シン、お出ましのようだぜ
ツキが呪飾獣の「匂い」を感知したようです。

罪無き人々を苦しめ手下の命まで軽んじるとは。彼の発言に覚えた怒りはおくびにも出さずに。冷えた頭でなければ戦況を見誤ります。

炎宿る魔法石を触媒に業火を召喚。【指定UC】で攻撃。杖使用。
55のうち何割かは敵の動きの牽制に打ち込みます。
森の中なので、延焼は望みません。

ツキは僕の思考を大体読める為、器用に業火の間を抜けて攻撃。
ノクスは人語こそ話しませんが、賢い精霊なので状況を察し隠れた様子。

呪詛は【耐性】で対処。
失敗時→気付いたツキが噛み付いて覚ましてくれました。
【激痛耐性】で戦闘の動作、反射速度に問題はありません。



 叩き込まれた一撃によって、カツィカの体は放られた石のように茂み向こうへと落ちていった。地面に叩き付けられ呻き声を漏らすが、離れられたのを幸いと嗤って遠ざかろうとする。
 しかし魂の奥底にまで染み付いた“匂い”は隠せない。
 立ち上がって走り出す為の一歩は、闇色の狼と一人の男によって阻まれる。

 ――シン、お出ましのようだぜ。

 シンは答えないが、ツキはそれを気にした様子もなく、舌打ちをしたカツィカの睨みを淡々と受け止めている。シンも同じように静かな表情で――しかし心にはカツィカへの怒りが湧いていた。
(「……抑えるんだ」)
 カツィカが今現在纏っている金品全ての正当な持ち主とは思えない。纏っている宝の数だけ苦しめられた罪無き人々がいる筈だ。先の言葉から手下の命までも軽んじている事は明らかだが、それでも心に、頭に満たすのは熱ではなく冷気であるべきだ。
(「戦況を見誤るわけにはいかない」)
 状況を察し隠れてくれた賢き精霊ノクスのように、今という状況を、捉えなくては。
「ンだその狼……? 何か違うな……まァいい。興味深いがもっとわかりやすい宝のがオレは好きだぜ。――退けよ坊ちゃん!!」
「それを聞く理由がありません。お断りします」
 大地を蹴り駆けるカツィカの掌、その周りが不気味に歪んだのと同時に重く不快な何かが宙を翔た。この場から逃げるついでに一撃見舞うつもりだろうそれに、シンは手にしていた赤い魔法石を輝かせる。
 炎を宿した魔法石がシンと異界を繋いだ瞬間、森の中に業火が奔った。周り全てを赤く染め上げる数は55。混沌の深き場所から喚ばれた業火たちは、カツィカと呪詛だけでなくその周りにも飛び込んでいく。
 シンの動きを封じるつもりであったカツィカが「チィッ!」と舌打ちした。
 ――それが、いけなかった。
「ガッ……ア……!?」
 カツィカにとっての敵はシンだけでない。闇色の狼もそうなのだと理解するべきだった。シンの思考をある程度読めるツキは、業火の間を風のように駆け抜けカツィカの片腕に喰らいつく。
 鋭い牙を更に深く沈めたツキが軽やかに離れた瞬間、シンの喚んだ業火が再びカツィカを襲って――共に立てるからこそ出来る戦い方が、カツィカから余裕を奪っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
全部寄越せ、なんて、そりゃねぇぜ。あいつらは俺を信じてこの魔法石を託してくれたんだぜ?(白に近い水色の魔法石を手元で遊びつつ)最後まで俺が面倒見るのが筋ってモンさ。

分かり合えないなら戦うしかねぇな。残念だぜ、兄弟(【挑発】使用)
魔剣を顕現して、【二回攻撃】、刀身に紫雷を纏わせる【属性攻撃】を併用しつつ、UC。
呪詛の爪は【見切り】や【残像】で躱しつつ。カツィカがUCを放つ瞬間に手元の、白に近い水色の魔法石を使用。…べらべらとご丁寧に説明してくれたからな。振るおうとしていた腕をUC発動の前に凍らせ――そのまま魔剣で斬り飛ばすぜ。
へぇ…面倒な詠唱無し。便利だな、これ。
で、どーする?まだやるか、兄弟?



「全部寄越せ、なんて、そりゃねぇぜ。なぁ兄弟? まだ同じこと言うつもりか?」
 昔馴染みと酒を片手に夜を過ごすような、そんな雰囲気でカツィカを見るのはカイムだった。
 ぐるる、と静かな唸り声と共に立ち上がったカツィカの目が、カイムの手にあるものを見てハッと見開かれる。ああコレか? カイムは手にしていた魔法石――白に近い水色に染まった一つを、指先で右へ左へと角度を変えてはその色を楽しむように笑んだ。
「あいつらは俺を信じてこの魔法石を託してくれたんだぜ? 最後まで俺が面倒見るのが筋ってモンさ」
「アァ? その理論で行くなら、主であるオレが返却を求めるのも筋ってヤツだろうがよ」
「そうか。分かり合えないなら戦うしかねぇな」

 残 念 だ ぜ 、 兄 弟 。

 挑発を隅々まで染み込ませた言葉と笑みが、カツィカの背を覆う豊かな葡萄色を一気に膨らませた。火傷したと判る両の爪からは呪詛が溢れ、足は大地を蹴って爪痕をどんどん刻んでカイムに迫る。
 呪詛の一撃は一言も発さず揮われて――散ったのは、火花。
 黄金頭蓋と、その下で見開かれた目に紫雷の輝きが揺れ映る。カイムとカイムが揮う魔剣の刀身を包み込む紫雷は、爪撃とぶつかった瞬間散った火花を一瞬でかき消しながら呪詛も、それを溢れさす獣人の体も斬り裂いて。
「言っただろ。最後まで俺が面倒見る、って。だからこいつはやれねぇな」
 ――パキッ。
 笑みと共に、尚も喰らいつこうとしてきた爪撃が腕ごと凍り付く。あ、とカツィカの目が丸くなっていく、その刹那。一瞬で揮われた紫雷の斬撃がカツィカから片腕を奪い、氷の破片がキラキラと散った。
「アアアアア!?」
「へぇ……面倒な詠唱無し。便利だな、これ」
 ご丁寧に説明してくれた通りの結果にカイムは感心し、で、どーする? と、失った部分を押さえて後退るカツィカへとニヤリ笑む。
「まだやるか、兄弟?」
「うッ、ガァッ……テメェとは、無しだッ!」
「そいつは残念だ。――じゃあ、別の奴とやり合えよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
【コシカ】

アァ……アイツは欲張りダ。
欲張りはダメダメー。
やっつけよう。おー。

この宝石は強い宝石らしい。
二人とも使う?使う?
コレの宝石は赤い宝石。
合わせたらどんなになるンだろうねェ。

コレは賢い君の赤い糸で敵サンをぐるぐるに巻く
足止め足止め。
コレはボロボロの服ダ
盗めるものはなーんにも無いよ。

ほらほら、ぐーるぐる。
二人とも気をつけて気をつけて
宝石もタイセツなモノも奪われないように気をつけてー

ビリビリすごいすごい
かーっこイイねェ。
最後にどかーん。イイねェ。

でもコイツ、宝石の使い方を教えてくれる優しいヤツだなァ……。
盗むはダメだケド、マヌケ?優しい……?
もっと宝石の使い方、教えてくれないカナー。


アルバニア・フェルミ
【コシカ】

あらあら、とんだ欲張りさんもいたものね
きれいな宝石も、そんな使い方があるんだね
道具は使い手によって意味が変わる
あなたにこの子たちはあげられない

エンジは赤でリリヤは水色?
それじゃあわたしは青色の宝石を使おうかしら
どんな風になるか、楽しみね

動きを封じられる前に、びりびりにしちゃうよ
青い宝石は水だったかしら
もしあちこち濡れていたら2人共気をつけて?
両手のひらにぱちぱち、光が生まれて
あなたにあげられるものなんて、なんにもないから
せめてこれをあげると電流を放つ

自分がやられることを想定してないから、教えてくれたんじゃない?
よかったね、これでやられただれかの気持ちがわかったでしょう?


リリヤ・ベル
【コシカ】

よくばりさんは、いけません。
やっつけるのです。えいえいおー。

! なるほど。
わたくしも使ってみますね。
緑がかったみずのいろの宝石を、えいやとお見舞いして差し上げましょう。
三色きらきら、どんなふうになるのか、ちょっとだけワクワクするのです。

わたくしの持っているものは、高価ではなくともたいせつなのです。
あなたには、あげません。
ぐるぐるびりびりしている隙に避けながら、
鐘を鳴らして呼ぶのは氷。
留められた獣をめがけて、篠突く氷雨を降らせましょう。

盗むのも、傷付けるのも、いけないことです。
どの宝石も、もっとよいことにつかえそうなのに。
わるいことをしたら、わるいことがやってくるものなのですよ。



 あれも欲しい、これも欲しい、それも寄越せ――だなんて。
「あらあら、とんだ欲張りさんもいたものね」
「アァ……アイツは欲張りダ」
「よくばりさんは、いけません。やっつけるのです。えいえいおー」
「欲張りはダメダメー。やっつけよう。おー」
「おー。と、いうことだから」
 リリヤとエンジと一緒に、おー、と拳をきゅっとさせてから、アルバニアは掌の上で煌めく花色に似た魔法石を両手で包み込む。きらきらと輝き視せてくれる宝石が、魔力を宿した道具だと――それに異論はないけれど。
「道具は使い手によって意味が変わる。あなたにこの子たちはあげられない」
 誰かを襲い、傷付け、奪う共犯者になんてさせない。
 その言葉にカツィカの耳がぴくんと動いた。
「この子たち……? はン! 名前でも付けンのか!? ていうかよォ、自分のモンを好きに使って何が悪ィ!? オレの自由だろうが!!」
「“使う”? あ、そーだ。二人とも」
 にや。カツィカを注視したままのエンジが指に挟んだ赤い煌めきに、リリヤはハッと目を輝かせた。
「なるほど。えいやと合体魔法ですね?」
 出逢った煌めき、緑がかった水の色をした魔法石をぎゅっと握り締めれば、エンジは赤でリリヤは水色――と、アルバニアは手元をぱっと確認してにこり。
「それじゃあわたしは、この青色の子」
 三人の間でわくわくが流れ、仲良く揃った『えいや!』の声。それと共に魔法石の内部でちかっと光が煌めいた瞬間、カツィカの全身がどぷんと“溺れた”。一瞬でカツィカを包んだ水のでどころは。
「わたくしの宝石です……!」
 リリヤが双眸をぱちりとさせてすぐ、ごぼりと泡を吹いたカツィカの足元から今度は真っ青な渦が上昇した。この子の力ねと微笑んだアルバニアの掌で、青の魔法石がその通りと言わんばかりに光を放ち続けている。
 ふたつの水が顕れた、その次は。
「見て見てー、花火だ」
 ほら、とエンジが指差したそこ。溺れながらぐるんぐるん回されているカツィカのすぐ傍に、水中だというのに真っ赤に輝く花火がひとつ。それが出鱈目な速度で巨大化して――ぼんっ!!
 青い渦が爆発し、真っ白な蒸気とほかほか空気が周囲に溢れる。そこに混じる、ゲヘゴホという非常に苦しそうな声は無論、三つの力に呑み込まれていた獣人のもの。
「すごかったねェ、賢い君」
 エンジはにやりにやりと賢い君を踊らせた。薬指から“食事”を貰った赤い糸は、一本だけになっていた腕ごとカツィカをきつく抱き締め、呪詛を垂れ流す爪撃を封じながら、カツィカの全身に次々と赤い筋を生んでいく。
「ッア、クソ……!!」
「コレはボロボロの服ダ、盗めるものはなーんにも無いよ」
 ざぁんねん。引きちぎろうと暴れるカツィカへ笑ったエンジが知る“一番のもの”は賢い君。けれど自分たちは切っても切れない関係だから“盗めるもの”じゃない。いつだって薬指で繋がっている。
「二人とも気をつけて気をつけて。宝石もタイセツなモノも奪われないように気をつけてー」
「こころえておりますとも」
「うん。絶対に、何もあげたりしない」
 みちり。ぎちぎち。
 賢い君の熱い抱擁を受け続けるカツィカから聞こえた音に、アルバニアは瑠璃唐草咲く髪を踊らせる。翼羽ばたかせながら駆ける足音は軽やかで、一緒にぱしゃんっと跳ねた水が駆けた後をきらきら彩った。
「二人共気をつけて? びりびりにしちゃうから」
「だいじょうぶですよ。えんりょなく、びりびりにしてあげてくださいね?」
「ウンウン。コレも賢い君も、だいじょーぶ」
 二人が笑顔で水の外側へ飛び出せば、うん、と頷いたアルバニアの両手のひらにぱちぱちと光が生まれて――バヂッ。光が一際存在感を増したと同時、アルバニアは両手でカツィカの腕を取る。
「あなたにあげられるものなんて、なんにもないから。せめてこれをあげる」
「――!!」
 空気をつんざくような音と閃光が悲鳴に被さり、かき消す様は雷鳴のよう。呪詛を放つ機会までも消した閃光の中、フードを少し下ろして顔に影を作ったリリヤの手が、何かを掲げた。
「わたくしの持っているものは、高価ではなくともたいせつなのです。あなたには、あげません」
 お金というものでは計りきれない。大切だからこそ唯一の輝きを放つ、たからもの。
 少女が鳴らした鐘に呼ばれた氷は、篠突く氷雨となってカツィカをざあっと呑み込んだ。降った音は一瞬他の音をかき消し、その直後にカツィカの悲鳴が転がり暴れる音と一緒に響き出す。
「かーっこイイねェ。最後にどかーん。イイねェ」
 ご機嫌に笑う声を、はたして認識出来ているのだろうか。
 盗み、傷付け、良き事に使えるだろう宝石をその為だけに用いた、悪事しか知らぬような男。自分がやられる側になると想定していれば、ペラペラ喋る事もなかっただろう。
 身をもって教えてくれるなんて、なんて優しいヤツ。エンジは「もっと教えてくれないカナー」と赤い魔法石を日に透かし、二つのあおも、それぞれの手元で清らかに煌めいた。
「よかったね、これでやられただれかの気持ちがわかったでしょう?」
「わるいことをしたら、わるいことがやってくるものなのですよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【菫橙】

これ負けたら絶対身包み剥がされるやつだ…
絶対に負けられない戦いが、ここにある!

UC夜歩く発動
愛刀・花髑髏を抜き、夜歩くの飛翔能力とスピードを生かした低空飛行で高速の突きを繰り出します
呪獣の一撃を放てないように集中的に手を狙っていく
狙いがつけ辛いなら腕ごと狙います
悪いけど貴方には何ひとつあげませんよーだ!(あっかんべー)

父のアドバイス通り
カツィカとはある程度の距離をとって戦います
それと第六感で呪獣の一撃が来る気配を察知出来る様にしておきますね

私や父の武器だけじゃ飽き足らず
結婚指輪まで狙うなんて…絶対許さない
このドロボー!
お父さんから離れろ!(衝撃波で牽制)
え?まだ盗られてない?
よかったー


城島・侑士
【菫橙】

こいつがその呪飾獣か

おいおい、後から出てきて自分の物だって主張されても困るぜ
コレがお前のものだって証拠はあるのか?
欲しけりゃ力づくで奪ってみな

接近戦を仕掛ける冬青の援護で動く
UC咎力封じでカツィカの行動を阻害し
援護射撃で奴の呪詛攻撃の邪魔をする
冬青、奴の爪に気をつけろ!
適度に距離をとって戦うんだ

しかし噂通り強欲なオブリビオンだな
魔法石は勿論
俺のユービック(連弩)や娘の刀にまでしっかり目をつけてやがる

高速移動で接近されたらオーラ防御でガード
うぉ!武器だけじゃなく装飾品(結婚指輪)まで狙うか?!
目敏い奴だな
大丈夫だ、冬青
盗られてないから
だからこれから一緒にこいつをボッコボコにしてやろうな?



 いくつもの攻撃を浴びてもなお健在な、呪詛の気配。
 纏う金品はカツィカ同様にひどい状態だが、それだけは常に在ると肌で感じる。
 しかし侑士に恐れはない。呪飾獣という名に納得しながら、銃口はぴたりとカツィカを捉えていた。
「おいおい、後から出てきて自分の物だって主張されても困るぜ。コレがお前のものだって証拠はあるのか? 欲しけりゃ力づくで奪ってみな」
「へェ……嬉しい事言ってくれるじゃねェか……」
 ゆらり。前に出たカツィカの体が揺れる。だが細められた両目は侑士と侑士が持つ魔法石をじっとり捉え、離さない。魅力ある物を愛でるのではなく“如何にして奪ってやろうか”という感情だけを灯した視線に、冬青は愛刀の柄を握る。
(「これ負けたら絶対身包み剥がされるやつだ……」)
 結婚記念日の為にと手に入れた魔法石。武器。服。それから、命。
 絶対に負けられない戦いがあるとしたら、それは、今。
「お望み通り、力づくで奪ってやるよ!!」
「させない!!」
 カツィカの爪から呪詛が溢れた瞬間、冬青の全身が黒蘭の花弁に包まれる。しかし黒き花弁はぱっと鮮やかに散り、花の繭を脱ぎ捨てるように冬青は爆発的な速さで大地のすぐ上――茂る緑と触れ合うかどうかという低空を一気に翔る。
 迫る冬青にカツィカが反応するが、想いとリンクした力による飛翔速度を得た冬青の方が速かった。花髑髏の刃が一瞬だけ白銀の軌跡を残し、刃がカツィカの腕を貫通する。
「テ、メェ……!!」
「悪いけど貴方には何ひとつあげませんよーだ!」
 目の前で見せてやった“あっかんべー”に、怒りの笑み浮かべたカツィカの口からぎりッと音がした。しかし力任せの攻撃が繰り出そうとした腕を、侑士の放ったものが次々に封じ込める。
「冬青、奴の爪に気をつけろ! 適度に距離をとって戦うんだ!」
「うん!」
 貫いていた刀を遠慮無く引き抜き地面を蹴れば、刃先を追いかけるように血が踊った。そこから血がとくとくと流れ始めるが、カツィカはまだある片腕を拘束されたまま低く唸り、呪詛の爪撃を阻まんとする冬青の刀を、腕が使えないなら足の爪だとばかりに跳んで、回ってと応戦し続けている。
 幾度も火花を散らすその目が、時折何かに目を留めては不気味に細められて。
 目を覗き込まずとも何を見て――狙っているのかを侑士は理解し、噂通りの強欲さに感心した。魔法石、フクラシバが彩るユービック。そして、冬青の刀まで――。
「イイモンつけてんじゃねェか!!」
「うぉ!」
「あクソッ、届かねェ!?」
 左手薬指へと伸ばされた蹴りを防護の力で弾き、後ろに跳んだ侑士の心臓は驚きとは別のものでバクバクと。こ、こいつ今、と左手薬指に煌めく指輪を右手でバッと隠す。
「駄目だ駄目だ、お前の薬指に絶対嵌めさせないからな!!」
 何て目敏い奴だと真顔で警戒心を露わにした侑士に対し、カツィカは気分が上向きになったのかハハァと嗤って薬指を立ててみせる。それを冬青がどんな表情で見ているかなど、全く気付かずに。

 お父さんとお母さんの、誓いの証。
 結婚指輪まで狙うなんて!

「このドロボー! お父さんから離れろ!」
 薬指に煌めきが宿るまでの時間と想い全てを無視した欲に、冬青の揮った花髑髏から衝撃波が迸る。っぼ、と吹っ飛んだカツィカが地面に落ちた時ゴキリと嫌な音がしたが、それよりも、と侑士は愛娘へにっこり笑いかけた。
「大丈夫だ、冬青。盗られてないから」
「え? まだ盗られてない? よかったー」
「ああ。だから、これから一緒にこいつをボッコボコにしてやろうな?」
 人の宝を狙うというその愚かさを、骨の髄まで教えてやろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルバ・ファルチェ
【騎士の血脈】

何が大切に使うだ…何が愛してやりたいだ…お前のその言動、気に入らないね。

そもそも人の迷惑だから、消えてくれないかな?

【属性攻撃:破魔】で攻撃。

防御の方が得意なんだけど、生み出したモノを道具扱いで使い捨てるのには腹が立つ…僕にとってのコルノと同じようなモノと思えばより一層に。

僕にとってコルノは大事な相棒で家族だから。

レジーナの援護(?)には巻き込まれないよう注意。

敵の攻撃も合せて出来るだけ【第六感】で【見切り】。

命中しても【オーラ防御】も【呪詛耐性】もあるからダメージ減らせるかな?

狼姿での【空中戦】も慣れてきたから懐に飛び込みたい。

接近できれば【全力魔法】で【破魔】を叩き込む。


セラータ・ファルチェ
【騎士の血脈】
絡み・アドリブ歓迎

魔法石?持っているが…
弔うつもりが欠片も無いお前に渡す物は一つも無い
それも…人々を傷付けるために使うなら尚更だ

【気絶・マヒ攻撃】による【乱れ撃ち・制圧射撃】を試みる
【鎧砕き】の要領で振るう【なぎ払い】で両手を狙った【部位破壊】も試してみようか
敵が高速移動するなら【聞き耳で追跡し、スナイパー】で撃ち抜こう
【地形を利用】しながら立ち回り、敵の攻撃は動きを【見切ったり、野生の勘】で回避

レジーナの攻撃には巻き込まれないように注意しておこう

お前には宝石なんかより死という飾りの方が似合いだ


レジーナ・ファルチェ
【騎士の血脈】

(絡み/アドリブ歓迎)

貴方の考え、わたくし気に入りませんわ。

欲しい欲しい欲しいばかりで人の事など全く考えられない貴方にはキツーいお灸が必要のようですわね。

わたくしの大事なモノは奪わせませんわ。

エティやエーレと協力して足止めや行動の妨害を試みますわ。

エティが足もとを燃やし(火事にはならないよう気をつけますわ)、わたくしが氷の雨を降らし、エーレには影で目くらましをお願いしましょう。

地形が破壊されるほどの威力でしたら倒れた木や岩などありますかしら?

それを投げつけたり振り回したりもしますわね。

もちろんお兄様方や、近くに他の方がいらっしゃれば巻き込まないようには注意しますの。



「ッだよ! あんだけいた蝙蝠どもをやったンなら、かなりの魔法石を手に入れた筈だろうが!? 何でどいつもこいつもさっさと寄越さねェ!!」
 怒り、苛立ち、欲望。カツィカが心の底から吐き出した全てが森の中に響く。しかしそれらは誰の心も動かさない。アルバが無言で浮かべたのは明確な嫌悪。セラータが向けるのは、静かな眼差し。
「持っているが……弔うつもりが欠片も無いお前に渡す物は一つも無い。それも……人々を傷付けるために使うなら尚更だ」
「ええ。貴方の考え、わたくしも気に入りませんわ。欲しい欲しい欲しいばかりで人の事など全く考えられない貴方には、キツーいお灸が必要のようですわね」
 従兄弟たちが示したものに同意したレジーナの足元で、焔狼エティがいつでも飛びかかれるよう四肢に力を籠め、影鴉エーレが静かに舞う。両者口を閉じ静寂が訪れた中、ばさ、と羽ばたきの音が響いて――。
「わたくしの大事なモノは奪わせませんわ」
「テメェらの都合なんざオレが知るかよ」
 それぞれの意志が言葉となってぶつかった瞬間、カツィカの体から金色の揺らぎが立ちのぼる。財宝めいた輝きは鮮やかだが、漂う気配はカツィカが浮かべた嗤いに負けず劣らずの邪悪さ。
「さァさァ! とっととくたばっちまえよ!!」
 そう言ったカツィカの姿が一瞬消え、蹴った地面に爪痕だけが残る。視界に現れるのはカツィカという名のどす黒い風。しかし全く見えないわけではない。一人ではない。そして疾く駆ける事が可能なのは、こちらにも。
「さあ、行きますわよ」
 金山羊の呪詛を纏ったカツィカを追うように駆けたエティが大地に炎を刻みつけ、レジーナの起こした氷の雨は冷気と痛みを与え、エーレの生んだ影がカツィカの光を奪いにかかる。
「うざってェ……ああ本当に、どいつも! こいつも!!」
 ――ォオ。
 恨み辛みが籠められた咆哮が響きかけたその瞬間を矢が射抜く。
 どれだけ速かろうと音は出る。高速移動を阻む存在が複数いれば、それだけ速度は落ちる。その中に、セラータもいた。ただ、それだけの事だが――それが、カツィカの呪詛を一つ、封じ込める。
 しかし同じ技を使うには集中する為の時間が要る。向けられる怒りからして、暫くは自分を狙うだろう。ならばあちらとは逆に、自分は冷静なまま、周囲の地形を存分に利用して立ち回るだけだ。
 ――チャンスが見えたなら、双子の兄弟は必ずそれを拾い、繋げるとわかっているから。
「何が大切に使うだ……何が愛してやりたいだ……」
 零された怒りと共にアルバは破魔の力を解き放つ。カツィカが口にしたもの、見せた行動。その全てが、心の底から気に入らない。
「そもそも人の迷惑だから、消えてくれないかな?」
「ッギァ……!!」
 アルバにとってコルノはかけがえのない存在だ。大事な相棒で、家族だ。しかしカツィカにとってのエレメンタル・バットは“使い捨てがきく道具”なのだと、あの男は嗤いながら示していた。
 沸き上がる怒りが、アルバに得意としている防御ではなく、攻撃を選ばせる。
 それを、カツィカは刻まれた傷を押さえながら嗤った。
「お優しい坊ちゃんだな……だがよォ! 道具は使われてなんぼだろうがッ!!」
 奔流の如く溢れた呪詛は片腕の先端、獣の爪へ。嗤い声と共に叩き付けられたそれで、アルバの周囲が厄災を浴びたように破壊される。
 アルお兄様、と声を上げたレジーナが見たのは盾の二つ名に相応しい守りを見せ、大丈夫と微笑む従兄の姿。セラお兄様は、と姿を探せばそちらも無事で、レジーナはキリッと笑顔浮かべて地中から顔を覗かせた岩を――ガシッ。
 頼もしき援護(?)が来ると瞬時に判断した双子の行動は早かった。
 具体的にいうと、巻き込まれない範囲へサッと飛び退いたのだ。
「こちらを差し上げますわ!」
 かよわい見目にはあまりにも不釣り合いな岩を持ち上げ、それっ、とポーイならぬドゴォン! 恐らくカツィカは何かしら驚きの声を上げていたと思うのだが、それは落とされた岩の音に紛れ、不明瞭。
 大自然と使った一撃は黄金頭蓋にひびを入れ――。
「お前には宝石なんかより死という飾りの方が似合いだ。そうだろ、アル」
 応えたのは翼持つ狼となったアルバの咆哮。
 風の力を纏った翼と脚で駆け、舞う姿は、体を持たない風そのもののように。
 清らかな魔力を宿した爪と牙が、呪飾獣の胴に鋭い印を刻み付ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナァト・イガル
【WIZ・銀葉】

「……不快だわ」
征きましょう、雨音さん、アインさん。
あの愚かな獣に、報いをくれてやらないと。
奪うことを当然とするならば、奪われることもまた当然なのだと……その身に刻んであげなければ、ね。

雨音さんのUCから【呪詛耐性・先制攻撃・多重詠唱・集団戦術】をお借りして臨むわ。
真っ先に、【歌唱・祈り】で底上げしたUC『小夜啼鳥の戯れ歌』を多重展開。
接近する雨音さんを隠す目くらましとなれるよう、できる限り敵の視界を塞ぐよう務めたいわね。
二人でうまく敵をコントロールして、アインさんの射線へと誘導しましょう。

……さて。奪われる気分は、いかがかしら?


アイン・スノウホワイト
【POW・銀葉】
(雨音様のUCによるブーストはアインには対象外になります)

御二人共お願い致します。
こちらは準備をさせて頂きますので(強化外骨格と武装を全展開して)

(味方の2人の行動で自らの射線に近づいて敵に向けて全ての銃口を向けて)
個人的に恨みがあるわけではありません。
ただ私の前にたった。消える理由としてはそれで十分でしょう。
それでは、さようなら(UC【ヘビーアームド・ウェポナイズ】を使い敵に向けて銃弾の嵐を)【制圧射撃、乱れ撃ち、爆撃、一斉発射】


雨音・玲
【POW・銀葉】
UB「双子の炎」を使用
ナァトとお互いの特技をLv670まで強化して共有
状態異常特化を選択、必ず呪詛耐性を付与します

なるほど目的はコイツか?
《わざわざ丁寧に使い方を教えてくれたんだ…》
そんなに欲しいならくれてやる!!

ナァトの攻撃に合わせて
赤い魔石を握り、限界突破・属性攻撃で魔力を込めながら
ダッシュ・残像で接近

野生の勘で動きを予測
引き付けながら武器受けで「呪獣の一撃」をうまくいなし
地面に大穴を開けさせます

体勢を崩したところに
暴走させた魔石をパンチと一緒に早業・先制攻撃で叩きつけ
集中砲火の合図となる大爆発
火炎耐性で自分の身を守りつつ
大穴に飛び込み集中砲火から退避します。



「……不快だわ。征きましょう、雨音さん、アインさん」
 カツィカという存在へ明確な否を見せたナァトの表情は、布に秘され窺えない。しかしその心にあるものがカツィカへの明確な否だと、玲とアイン・スノウホワイト(世界を壊す者。世界を救う者。世界を売る者・f26034)は理解しているから、ナァトの顔ではなく血を流す呪飾の獣を見る。
 あの愚かな獣に、報いを。
 奪う事を当然とするならば、奪われる事もまた当然。
 なぜならこの世は不平等と平等が共存する世界。プラスとマイナスは、いつだって隣り合っているという事を、あの身に刻んでやらなくては。
 ナァトが語ったものにカツィカが牙をむこうが玲には関係ない。だって同じ気持ちだからだ。ぱしりと拳を合わせた身から火の粉散らす炎の鎖が紡がれ、ナァトと玲をしゃらんと繋ぐ。
「思いきりかましてやりましょう、ナァトさん、アインさん!」
「ええ。完膚無きまでに」
 アインが展開していく強化外骨格と武装は、それを確実に実行出来るのだと示すよう。
「言わせてやれば好き勝手に……テメェらも他のヤツらと同じだ、すこぶる邪魔だぜ!!」
 追い詰められつつある現状が理由か、それとも生来の気質か、才能か。一本だけになった腕を前へ突き出し、放たれた呪詛は空気を変えるほどに濃く――。
「それで?」
「!?」
 放った呪詛は確かにナァトを撃った筈なのに。
 どうして布を被った女らしき敵は、僅かに後退るだけで済んでいるのか。
 なぜだと問う時間をナァトは与えない。
 森の中、聖歌が輝く小鳥となって羽ばたく。降り注ぐ清らかな響きは深く、何層にも重なって。欲と呪いにまみれた獣を容赦なく呑む光の矢に、それでもなお「寄越せ」と絞り出された声へ、玲はしまっていた赤い煌めきを一つ取り出した。
(「わざわざ丁寧に使い方を教えてくれたのは何なんだ……」)
 正直、気になる所ではあるが。
 握り締めた魔法石に魔力を注ぎながら迫る勢い、そして動きは、視覚外から突如飛来する鳥のように。
 自分を翻弄する玲を捕らえ、屠ろうとカツィカの唸り声が殺気と共に幾度もこぼれ、しかしナァトもそこに加われば、カツィカの動きは徐々に絞られていく。
「さあ、どうしたの。その程度なのかしら」
「そんなので俺たちを倒せると思ってるのか? どうした、試しに当ててみろ!」
「お望み通りにしてやらァッ!!」
 ぶん、と振り上げられた爪に呪詛が集中する様が玲の目に映り込んだ。産毛が一斉に立った瞬間、玲は感覚のままに体の重心をずらして両手を交差させた。そしてガントレットで受け止めた衝撃と呪詛に正面から抗うのではなく、カツィカとセットで上手く大地へと流していく。
 大きく崩れる足元。隆起する大地。
 そこから飛び退き、再度攻撃をと目論むカツィカに真っ赤な光が迫る。
「そんなに欲しいならくれてやる!!」
 限界以上まで籠めた魔力によって暴走状態となった輝きに、ごう、と宿るは灼熱の炎。叩き付けた一撃は大爆発を生むが、火炎に多少耐えられる玲は、カツィカの攻撃で生まれた大穴へサッと飛び込んだ後。
 それを追おうとしても、二人の猟兵によってあるポイントに誘い込まれた獣はもう、“彼女”の射程に捉えられていた。銃口という銃口全てが、アインと共にカツィカを無言で見つめていて。
「個人的に恨みがあるわけではありません。ただ私の前にたった。消える理由としてはそれで十分でしょう」
 それでは、さようなら。
 別れの言葉と共に降り注いだのは“銃弾の雨”という優しいものではない。移動速度を代償とし、二人の協力で得た銃弾の嵐だ。無数の銃声と煙、一瞬の火が炸裂する世界に、さて、とナァトの声が紡がれる。
「奪われる気分は、いかがかしら?」
 応えたのは、悲鳴だけ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
◆ねーさん(リュシカ/f00717)と


……こりゃまた典型的なタイプだな
ま、その方が気兼ねなく殺せるけど
ねーさん、商売道具しっかり持っておきなよ
それ、狙われそうだからさ

ねーさんが呼び出す石兵を盾にして放たれる呪詛をやり過ごしながら
隙を狙って腕や足を狙撃
攻撃の阻害と、移動能力の制限が主な目的だ
ねーさんは近接戦闘慣れしてないだろうから
相手に近づかれると困るだろうしな

焦れて大きく動こうとするときが狙い目だ
前を遮るように進路を塞ぐ
こっちに対応するか、ねーさんに近づくのを優先するか
一瞬でも迷って足を止めれば御の字
その一瞬を見逃すような、柔な狙撃手じゃないからな

一撃きついの、くれてやりなよ
頼むぜ、ねーさん


リュシカ・シュテーイン
鳴宮さん(f01612)とですぅ

相手の性格性質はともかくぅ、せっかくタダ仕入れた商品候補はぁ、ぜぇぇぇぇぇったいっぃ、渡しませんからぁ!

複数の鉄鉱石に【高速詠唱】でぇ、分裂増殖する小さなゴーレムのルーンを書き込みぃ、石兵もといアイアンゴーレムさん達をぉ、召喚しますよぉ
彼らには目くらましと足止めとしてぇ、鳴宮さんの援護をしてもらいますぅ

鳴宮さんの援護を受けながらぁ、ゴーレムの波に紛れて相手の死角に移動しぃ、私はスリングに魔力を込めた法石を装填しますぅ
『爆破の法石』ぃ、今度は熱と衝撃を高めぇ、物理的威力に特化した魔術仕様ですよぉ!

私は【スナイパー】ぁ、狙ったものはぁ、逃がさないんですからっぁ!



 やられてもやられても、奪う為だけに立ち上がる。
 きっと、命尽きるその時まで。
「ああ……こりゃまた典型的なタイプだな。ま、その方が気兼ねなく殺せるけど」
「相手の性格性質はともかくぅ、せっかくタダで仕入れた商品候補はぁ、ぜぇぇぇぇぇったいっぃ、渡しませんからぁ!」
 リュシカが握り締める袋の中身は、多数の魔法石の中から“これなら”と合格ラインに至った魔法石たち。石特有の音にカツィカの耳がぴくんっと跳ね、傷だらけだというのに黄金頭蓋から覗く目がぎらぎらと注がれる。
「ねーさん、商売道具しっかり持っておきなよ。それ、狙われそう……っていうか、狙われてるからさ」
「勿論ですぅ! タダより高いものはありません、ぜぇったいにぃ渡しませんよぉ!」
 私の! 物ですぅ!
 全身全霊で袋を抱き締める様に、カツィカがハハと嗤う。
 タダで仕入れたものはイイよなァ。そう嗤った口から覗いた舌が、ちろりと揺れて。
「オレもそうやって色々仕入れたもんだ。――だから! 今回もそうさせてもらう!!」
「おとといきやがれですぅ!」
 ばっと宙に躍らせた石は複数。するとカツィカから「何だァ!?」と声が上がった。
 リュシカと匡の前、二人をカツィカの視線から守るように現れたアイアンゴーレム。始まりは一つ、サイズは小型。しかしその数は見る間に増えていき、250以上と“軍団”と呼ぶに相応しい物量でカツィカに向かっていく。
「くそッ、こいつら……どけオラァ!!」
 片方だけの掌から放つ呪詛で。爪で。頭突きで。生み出されたゴーレムたちは少しずつその数を減らされていく――が、カツィカの足を抱き込み、拳で殴りつけてと、決して止まらない。
 わらわら、ならぬゴツンガツンと敵へ向かう石の波。その合間に響く銃声は一、二、三――波間から見える限り、匡は標的を逃さない。間隙を正確に縫い、腕、足と次々に狙撃し、カツィカのあらゆる動きをゴーレムたちと共に阻んでいく。
「チィッ!! 今日は厄日かよ!!」
「だろうな」
 あまりの多さに減ったという実感が湧かないゴーレム軍団。繰り返される銃撃。
 ついにカツィカはそこから跳躍し、ゴーレムたちの頭を足場に跳んで逃げようとする。しかしその進路は銃を手にした匡が塞ぎ――銃口が、向けられる。遮るようなものは無い。逃さない。逃れられない。

 どうする。
 男か。ゴーレムか。
 それとも。

 ほんの一瞬の思考がカツィカの足を止めさせた。
 全ては狙い通り。匡と――。
(「一撃きついの、くれてやりなよ。頼むぜ、ねーさん」)
 ゴーレムたちという波に紛れて移動していた存在が、やわらかに揺れるピンク髪を覗かせる。手には魔力籠めた法石が装填されたスリングひとつ。
「テメッ――」
 カツィカが目を見開く。
 行動を選択し、生き延びようとする。
 しかし僅かな一瞬を逃すようではスナイパーとはいえず。
 そして、スナイパーであるならば。
「狙ったものはぁ、逃がさないんですからっぁ! ぜぇぇったいにぃ!」
 ――ぱ、と指が離れた瞬間、凄まじい速度で翔たるは爆破の法石。
 それは熱と衝撃マシマシの、物理威力特化の魔術仕様。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と

あれらは、お前の従者であったのか
…主を選び間違えたようだな
それではまるで
使い捨てる玩具のようだ

師の輝きへと向けられる呪獣の目から庇うように立ち
欲深いことだが、身の程を弁えろ
貴様が触れてよいものではない

…御意に
斯様なヘマはせぬ
俺のそれは、師父のもの故
背を向けながら眉間に皺寄せて

師の創り出した濃霧の中へと迷いなく飛び込む
呪獣が少しでも動けば耳に届くであろう
過剰な装飾が立てる音
その揺れを頼りに<第六感>も頼り
<怪力>篭めた【竜墜】にて叩き墜とす

砕け千切れる金銀、宝石は意に介さず
背で感じる主の眼は
何時もより誇らしく
掌に残る魔法石には微かな憐憫を

…後悔など、しておらぬのやもしれんが


アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
――っは、何を勘違いしておる?
この手中に収めた物は、全て私の物
欲しければ全力で掛かってくるが良い

…さあ、て
それでは早速魔法石の効能を試してやろう
何、案ずるな
私が無駄打ちをする訳がなかろう
己が魔力を少し込め、効果増強を試みて
【妖精の戯れ】で暫しの戯れを
ふふん、好き勝手していた貴様が
逆に蹂躙されるのはどの様な気持ちだ?

敏捷性、呪いを齎す咆哮は
確かに目を見張るものがあるが
破魔で呪いの相殺を試みつつ
魔法石…彼奴の云った通り
氷と水で濃霧を起こしてやろう
――ジジ
お前ならばこの程度、如何にでもなろう?
ほれ、気を付けて向うのだぞ
お前の煌きを奪われては笑うに笑えん

…っくく、杞憂であったか?



「あァ……クソ……! マジでどうなッてンだよ今日は……!」
 エレメンタル・バットは全て倒され、魔法石も全て回収されるなど。
「あれらは、お前の従者であったのか」
「そいつがどうした!」
 ジャハルの問いにカツィカはそれだけを言い、低く唸る。
 どうやら、エレメンタル・バットは主を選び間違えたようだ。どれだけ仕えても主がこれでは、従者ではなく使い捨てられる玩具のよう――いや、そうだったのだろう。先の発言からして、カツィカがあの蝙蝠たちをどう扱っていたかは容易に想像がつく。
「テメェらさえいなけりゃァ、今頃は狩りに備えて、適当なヤツを殺って魔法石を補充するなり、してたのによ……クソ、クソッ……!!」
 ぎぎ、ぎ、キィ。負傷と疲労で頭が痛むのか、黄金頭蓋を引っ掻く音は心地良いものではない。しかしアルバは重たそうに立ち上がる様を見つめ、笑む。
「――っは、何を勘違いしておる? この手中に収めた物は、全て私の物」
 それを出せと寄越せと。ああ、実に愚かな。
 主張するだけなら赤子でも出来る。
「欲しければ全力で掛かってくるが良い。但し相応の対価を払う事になるがな」
「へーェ。例えばテメェの命とかか? ア?」
「身の程を弁えろ。貴様が触れてよいものではない」
 輝くのはその身だけに非ず。獣の目からアルバを庇うように立ったジャハルに、そしてその向こうで堂々と煌めく黎明に、カツィカの目がゆっくりと細められた。口が、笑みを形作る。
「――……そう言われると余計欲しくなッちまうなァ……」

 オレにくれよ。

 ぶぁ、と沸き上がった金の呪詛がカツィカを包む。腕を一本失くし、多くの傷を負っても風となって立ち回る力を与える金山羊の呪詛。っば、と地を蹴った姿が二人を閉じ込めるように駆け始めれば、アルバは懐から煌めきを一つ取り出し「……さあ、て」と愉快そうな微笑を浮かべて。
「案ずるな、ジジ」
 金色を孕んだ呪詛の囲いを睨み、いつでも庇えるよう立つ従者の隣に並ぶ。魔法石の効能を早速試す良い機会。無駄打ちなぞする訳がなかろうと笑い、魔法石に籠めた魔力は、少しだけ。
「成る程」
 呟きに咆哮が重なって――それ以上の密度で炸裂した四属性魔法が周りのものを吹き飛ばす。黎明と黒、二色の髪だけでなく、二人が纏う防具の裾も一瞬でばさりと舞って。木が一本、カツィカに激突されバキリと音を立てながら若葉をぱらぱらと降らせる。
「ッカ、はッ……」
「ふふん、好き勝手していた貴様が逆に蹂躙されるのはどの様な気持ちだ?」
 能力には確かに目を見張るものがある。驕りが見える言葉が飛び出していたのは、それ故だろう。あのお喋りからして魔法石も散々酷使したに違いない。ああ、そうだ。 
「!? おい、パクったな!?」
 ふふんと笑ったアルバの掌。二つの魔法石が生む濃霧によって森の様相はどんどん朧になっていく。
「――ジジ。お前ならばこの程度、如何にでもなろう?」
 杞憂やもしれぬが、その煌きを奪われては笑うに笑えん。
 気を付けて向かうのだぞという声は、迷いなく濃霧へ飛び込んだ背へ。
「……御意に」
 静かな言葉に煌めいたのは誓い。耳が拾うのは――ちり、と。戦いの中で損傷を増した装飾の音。名も知らぬ者から奪っただろうそれがカツィカの居場所を存分に報せ、竜の拳を導いた。
 衝撃と共に濃霧がざあっと晴れる中、砕けて千切れる金銀宝石に心は動かない。静かに誇りを生むのは、背に感じる師の眼。されど。
(「……使い捨てでも。後悔など、しておらぬのやもしれんが」)
 掌に残る魔法石。
 生きたという足跡が、微かな憐憫を抱かせる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

火狸・さつま
コノf03130と

お前の言い分なンか知らない
けど…
そっと己の首元、リボンタイ触れ
主の為に最後のひとかけらまで尽くせたなら…それは本望
命を賭し従ったならば、きっと大切な主

そか、キラキラさん達、主が、すきなんだ、ね
仕方ない、本人の希望なれば…と
赤色魔法石を返すように放り…指先から離れる刹那

早業・先制攻撃
指先より出でて魔法石を銜え走りだす【燐火】の炎仔狐は
全力魔法に石の力を呑み込んだ、だまし討ち・属性攻撃
更に『範囲攻撃』たる数の炎仔獣達の追撃2回攻撃
避けようとも『追跡』上手な『誘導弾』

主は、もうお前じゃない、よ
ね、コノちゃん!

雷火で援護射撃
攻撃見切り躱すかオーラ防御
激痛耐性・呪詛耐性・地形耐性で凌ぐ


コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

はぁん、お前の物は俺の物~ってワケ
オレは何一つだって渡す気ねぇケド、と
隣に目をやればなにやら思うトコあるみたいだし
……オレもお返ししようカシラね

【雪骸】でさっきのコウモリちゃん達を喚ぶわ
お望み通りまるっとドウゾ
但し今の主はアタシだけどネ?
さ、仔狐ちゃんらと楽しく遊んでおいで

その隙に『範囲攻撃』で『オーラ防御』を自分らの周囲に展開、敵の攻撃を防ぐわ
物理攻撃からはたぬちゃん『かばい』『激痛耐性』で凌ぎ
呪詛はその性質を『見切り』耐え
指先の「椿姫」から模倣した『呪詛』を『カウンター』で返しましょ

ふん、嫌がらせに決まってンでしょ
ぜぇんぶ寄越せナンて欲張りなのヨ



 お前の物は俺の物、なんて。
 よくもまあ、堂々と。そして一切の迷いなく言えたものだ。
(「オレは何一つだって渡す気ねぇケド」)
「お前の言い分なンか知らない。けど……」
 隣にいるさつまも気持ちは同じとコノハは悟り、しかし口は閉じたままにしておく。
 首元のリボンタイにそっと触れたさつまが想ったのは、散った蝙蝠たち。主の為にと、命の最後、そのひとかけらまで尽くせたならそれは本望に違いなく、命を賭けして従ったならば、きっと大切な主なのだ。
「そか、キラキラさん達、主が、すきなんだ、ね。仕方ない」
 本人がそれを希望するのなら。
 向けられた赤色魔法石に獣人の男が目を瞠る。そうだ、それでイイんだよ。悦びの声と共に片っぽだけの手に呪詛が宿っていって――赤い煌めきがさつまの指先から離れた刹那、炎の仔狐がぱくっと銜えて、ごくり。
「は――?」
 より鮮やかな炎となった仔狐は瞬きした瞬間にざざざと数を増やし、豪奢に舞う紅葉のようにカツィカを囲んで戯れ始めた。
「オレもお返ししようカシラね。というコトでお望み通りまるっとドウゾ」
 さ、仔狐ちゃんらと楽しく遊んでおいで。
 喚び出した蝙蝠たちがばさばさと加わり、それを歓迎するように炎仔狐たちが跳ねて翔て、カツィカも大喜び――ならぬ、炎と魔力波の合わせ技に怒りと悲鳴を響かせる。
「主は、もうお前じゃない、よ。ね、コノちゃん!」
「ねー? たぬちゃーん」
 楽しく遊べるように。さつまは立派な尾全体に紋様を輝かせた。追加サービスされた黒き雷降り注ぐそこから、だっ、たら――と呻く声が返る。
「全部……全部ぶッ倒しゃあイイ……! そうやって仕切りなおせば、最後に笑うのは、オレだ!! テメェらじゃねェ!!」
 炎仔狐と蝙蝠たちの隙間から向けられた掌。呪詛を放つ砲口となったそこからの一撃が戯れていた仔らを抜け、二人に向かう。肉が裂け、所々骨も覗く状態であっても――いや、だからこそ勝利という宝にしがみつく魂から放たれた呪詛は、爆ぜるような勢いで。
「そんな、もの!」
「あ、フゥン。そういうカンジ?」
 しかしさつまには守りの圧を展開しながら躱され、コノハには内に渦巻く性質を捉えられ、耐えた一撃を指先染める呪紋からそっくりそのまま“返される”。
「ああァあ、あ、ガッ……!!」
 どうしてだ。どうしてどうして、どうして!
 素直に出せばイイ。
 そうすりゃすぐに終わる。
 嫌がらせか何かか。
 のたうち回りながら吐き出される言葉に、さつまはムッ! と耳尻尾をぴんと立てて、コノハはふん、と鼻で笑い飛ばす。何言ってンの、ハッキリしてるじゃない。
「嫌がらせに決まってンでしょ。ぜぇんぶ寄越せナンて欲張りなのヨ」
 食べ過ぎ注意って、いうでしょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雲烟・叶
【涙雨】
下手な泣き真似ですねぇ、随分と程度が低い
さ、お嬢さん方
さっさと終わらせちまいましょ、付き合う時間が無駄です

挑発と共に【恐怖を与える、誘惑】で敵を乱して惹き付けましょう
さっきから煙管に視線があるのは気付いてますよ
そりゃあ、自分は特注で造られた実用の美術品ではありますけどね
……ま、これ模造なんですけど
気付いてねぇみたいなんで、そのままにしておきましょ

お嬢さん方の攻撃を邪魔しないよう、自分への攻撃のみ【呪詛、カウンター】
自分で動けりゃあ、あんたが持ち主を殺して奪った全ての子たちもあんたを殺したいでしょうよ

すみませんねぇ、治癒の効きが悪ぃ方なんでネムリアのお嬢さんにはご迷惑をお掛けします


ネムリア・ティーズ
【涙雨】
…キミの心に、涙なんてない
どう使うかは自由だけど
ボクはこの子たちに誰かを傷つけてほしくないんだ
宝石は渡さない
叶、優樹、がんばろうね

【呪詛耐性】はあるけれど、接近されたら【フェイント】をかけ
蹴り技の【2回攻撃】で相手を足場にして距離をとる
足首飾る水入り水晶の睡蓮がきらきらゆれて

ダメだよ、これはボクの宝物だから
…そうやって持ち主と巡り合えた子を奪ってきたんだね
みんなが大切にしている想いも、これからの出逢いも
もう奪わせたりしない

――ちからをかしてね、
うつくしい青を秘めた乳白色の宝石を握りしめて
月の魔力を降り注ぐひかりの雫に変える
ふたりとも大丈夫?
まかせて、ボクは治すほうが得意なんだ


萌庭・優樹
【涙雨】
嘘がへたなんだな、カツィカ
おまえの言葉に、あのバット達を労るキモチなんか
おれの目には全然見えないぞ

おれは獲ったお宝は易々と渡したりしませんよ
それに、楽しいマーケットを開くためにも
あいつには此処で倒れてもらわなくっちゃ
叶さん、ネムリアさんと一緒に頑張りますっ

拳銃型のガジェット構えて
カツィカの至近距離にまで、駆け抜け接近
【早業】でUC使用を試みましょう
お二人の力になれる隙があれば
敵の気を散らすために、銃で【フェイント】【援護射撃】

叶さんの幻惑のわざは流石のモノで
ネムリアさんが使う治癒のいろもキレイだなぁ
お二人の姿には、戦いの中でも思わず目を奪われそうです



「ぢぐ、しょう……ちくしょう……! とんでもねェな、テメェら……!」
 ぎゅうう、とまだ若い緑がきつく握り締められる。ぶちぶちと千切れる音もした。
 地面に頭を擦りつけるカツィカに、おやおやと銀の目がやわく細められる。
「下手な泣き真似ですねぇ、随分と程度が低い」
 ばっさり。
 微笑みながら容赦なく両断した叶に、これが日常のワンシーンだったなら優樹は驚き、目を丸くしたかもしれない。だが地面に倒れているものがどういう魂の持ち主かは、火を見るより明らか。オレンジ色の目を偽る事など、出来やしない。
「嘘がへたなんだな、カツィカ。おまえの言葉に、あのバット達を労るキモチなんかおれの目には全然見えないぞ」
「――……悪ィな。笑顔は得意なんだが、泣くのは苦手でよ」
 ずる、ずるり。
 退がりながら体を起こしたカツィカの黄金頭蓋が、欠けていた。現れた時よりもよく見えるようになった顔を、ネムリアの静かな眼差しが捉えていく。
「……キミの心に、涙なんてない」
 生を受けた時はこの男も涙を流したのだろうけれど、他者を憐れんだり、慈しんだり――そういったものは、カツィカのどこにも存在しない。
「どう使うかは自由だけど、ボクはこの子たちに誰かを傷つけてほしくないんだ」
 だから宝石は渡さない。
 誰かを傷付けさせる為に、使わせない。
「叶、優樹、がんばろうね」
「はいっ!」
 優樹の手がウエストポーチにしっかりと添えられる。ここにあるのは獲った宝。易々と渡したりしない。それに楽しいマーケットが待っている。もうすぐ始まるのだ。笑顔と宝でいっぱいの時間が。
「あいつには此処で倒れてもらわなくっちゃいけませんね!」
「そうと決まれば話は早いですよ。さ、お嬢さん方。さっさと終わらせちまいましょ、付き合う時間が無駄です」
 始まりのラッパも、きっと同じ気持ちだ。
 あんたの出番は金輪際ありはしませんよと、己を見ているのに見ていない叶の言葉が、微笑が、カツィカの爪撃を引き寄せる。
「さっきから煙管に視線があるのは気付いてますよ」
「そいつァ嬉しいな! じゃあとっとと寄越してくれよ!」
「ああ、どうしましょうね。そりゃあ、自分は特注で造られた実用の美術品なんで、価値はありますけどね」
 ……ま、これ模造なんですけど。
 気付いていないなら好都合。勝手にそう思ってくれるのならそのままに。触れたそばから痛みと傷みをもたらすのだろう呪詛は――ああ。“こう”してしまおう。
「それ以上は許しませんっ!」
「ッ!」
 真っ直ぐな声はカツィカの懐から。
 いつの間に、という驚きに見下ろされながら、優樹は手にした拳銃型ガジェットを胴に押し当てた。放った一撃は翔る鷲のように速く、強く。響いた音と衝撃にくぐもった悲鳴が飛んで――目に飛び込み、儚く揺れた美しい煌めきに、呪詛と目が、向いた。
「ダメだよ、これはボクの宝物だから」
 た、たんっ、とネムリアが舞う。閃いた蹴り技がカツィカを弾き、足首を飾る水晶の睡蓮に抱かれた水が光をきらきら弾いた。それは天空を想って咲く花そのもののようで。
「イイじゃねェか、もっとよく見せろよ。でなきゃどれほどのお宝かわからねェだろうが」
「……そうやって持ち主と巡り合えた子を奪ってきたんだね」
 人々が――みんなが大切にしている想いを。何度も、何年も。
「もう奪わせたりしない」
 人と物が紡ぐ全ては、欲にまみれた手や土足で荒らしていいものではない。一年、十年、百年と、形ある限り続く物語。その続きを勝手に塗り潰すような真似は、もう。
 そういう事ですから。ねぇ。
 囁きと共に、叶に注いだ筈の呪詛が煙より生まれた鏡に映って、衝撃と共にそっくりそのまま返却される。
「――っ、ア……!」
「自分で動けりゃあ、あんたが持ち主を殺して奪った全ての子たちもあんたを殺したいでしょうよ」
 その子たちが呪詛を編んだら、こんなもんじゃ済みませんよ。
 浴びてきたものの深さを思わせる微笑を浮かべて――すみませんねぇと己の体質を憂いながらネムリアを見る顔には、胸の内を掴めぬいつもの微笑があった。
「気にしないで。ボクは治すほうが得意なんだ」

 ――ちからをかしてね、

 そうっと握り締めた乳白色の宝石が、秘めていた美しい青をほのかに強くする。
 森の中に降り注ぐ月の欠片。ひかりの雫が、叶を蝕もうとしたものをほろほろと祓っていく。その光景に優樹はほう、と吐息を零した。
(「叶さんのわざ、流石です……それに、キレイないろだなぁ……」)
 思わず目を奪われたその姿も、心の中で煌めく宝物。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィーリス・ルシエ
【大事な妹分のシュリ(f22148)と参加】

魔法石返したところで、絶対ろくな使い方しないわよ、あいつ
それなら正しく使える私達が持つべき!
ね、シュリもそう思うわよね!

あんな悪者に遠慮なんていらないし
全力でやっちゃいましょ、シュリ!
でも、怪我はしないよう気を付けてね?

引き付け役のシュリとカツィカの動きを注意深く見ながら
離れた位置から狙いを定めて
シュリの合図に合わせて妖精の弾丸をぶち込む

「私の可愛いシュリに怪我なんてさせたら、容赦しないんだから!」

なんて言って
元々容赦なんてするつもりはないけどね!

例え呪詛が飛んできて動けなくなってもシュリがいるから大丈夫
そもそも、私を気にする余裕なんてあるかしらね?


シュリ・ミーティア
姉貴分のフィーリス(f22268)と
呼び方はフィー

石を返せ?うーん、やだ

本当に大切なモノなら返した方が良いけれど
あいつは、嘘吐いてるし
悪者に遠慮は要らないって叔父さんも言ってたからね

まずは私が引き付け役
フィーは待ってて

高速移動で近付いてくるなら
背は向けないように左右方向へのダッシュで距離を取る
咆哮も射線と範囲があるはずだから良く見極めて
出来るだけ障害物を盾にし
避けられなければ身を屈めてガード

そんなに欲しいならあげようか?
銀色のダガーを閃かせながら敵へ声掛け

フィー、今だよ

フィーの一撃で出来た隙に一気に距離を詰めダガーで攻撃

奪うだけのあなたは何かの役に立ってるの?
…聞くまでもないかな
ね、悪者さん



「……せェ……るせェよ……」

 イイから返せ。
 オレのモノだ。
 寄越せ。
 くたばれ。

 ふらふらとしながら吐き出される言葉は、尽きぬ欲望なのか呪詛なのか、いまいち区別がつき辛い。しかしフィーリスにはわかっている事が一つある。
「返したところで、絶対ろくな使い方しないわよ、あいつ。それなら正しく使える私達が持つべき! ね、シュリもそう思うわよね!」
「返せって言われても。……うーん、やだ」
「ほら聞いたでしょ!」
 諦めなさいよと自分にぴったりつくフィーリスの声を背景に、シュリは自分たちを睨む――にしては力が足りていない印象の視線を、ただ、映す。
(「本当に大切なモノなら返した方が良いけれど、あいつは、嘘吐いてるし」)
 悪者に遠慮は要らない。
 叔父さんもそう言ってた。
 だから、やってしまおう。
「あんな悪者に遠慮なんていらないし、全力でやっちゃいましょ、シュリ!」
「うん、フィーもこう言ってるし」
「えっ何? ねえ、怪我しないよう気を付けてね……!」
 何を望まれているか解ったから、何が『フィーも』なのかはわからずとも、蝙蝠たちの時と同じように飛び出したシュリの背をしっかりと見る。
「一人ずつ、ぶっ潰してやるよ……!」
「そう」
 シュリが背に受けるのは、姉貴分からの信頼と視線だけ。金山羊の呪詛と共に速度を増したカツィカの視線も、咆哮も、受ける気はない。
 咆哮とは音だ。ならば射線・範囲というものが存在する筈。
 素早く軽やかに左右交互に跳ね、駆けながら、森の風景に被さって跳び回るカツィカの色をよく見極めんと、瞬きせずに見つめ続けた。木や岩を盾に利用しながら神経を張り巡らせ――感じ取った一瞬に、銀の閃きを射し込む。
「そんなに欲しいならあげようか?」
 ほら。見せつけるように動かし、声を掛けて。
「フィー、今だよ」
 注意深く見ていたフィーリスのタイミングは完璧だった。
 捉えた場所目がけ、妖精の弾丸を容赦なく撃ち込む。
「小さいからって見くびらないで! 私だってやる時はやるんだから!」
 掌から放った光弾が、風のようだったシルエットをはっきりとした姿に戻した。
 千切れそうになっている掌に集まり始めた呪詛には、あげようか、ではなく、本当に銀色のダガーが贈られる。一瞬で放たれた一撃は掌を呪詛と共に真っ二つに断ち斬って。ァア、と、枯れたような声だけがカツィカの口から零れ落ちた。
「これでわかったでしょう。私の可愛いシュリに怪我でもさせてみなさい、容赦しないんだから!」
 なんて。させていなくても、元々容赦するつもりはない。
 大事な妹分を守るのは至極当然の事なのだから。
「……ねえ。寄越せ寄越せって言うけど、奪うだけのあなたは何かの役に立ってるの?」
 なんて言ってみたけれど。
 シュリはふう、と息を吐く。
「……聞くまでもないかな。ね、悪者さん」
 このオブリビオンは、どこからどう見ても、誰かの為ではなく自分の為にだけ行動するタイプだからだ。ぼろぼろと崩れ始めている今も、目の前にがらんと落ちた黄金頭蓋の欠片を掴もうと、斬られて別にされた指を動かしている。
「凄い執念ね……」
「うん。そうだね」
 そして、おやすみなさい。
 さようなら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『のんびり市場巡り!』

POW   :    食べ物や装備のお店へ!

SPD   :    アクセサリーや道具のお店へ!

WIZ   :    書物や骨董品のお店へ!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●虹色市場
 大通りと繋がる道で、白いリボンがそっと風に揺れる。一色だけだと思ったその色が目の前でぱたた、と躍った時、そこに淡い虹色が浮かんだ。
「おとうさん、にじ! ここにも、にじ!」
「おー、よく見つけたなあ」
 特別な糸をより合わせて作ったリボンなんだ、光の加減で虹が出るんだよと教えても、幼い子供にはよくわからない。けれど何だかすごくすてきな事だけはわかったから、きゃっきゃと笑って飛び跳ねる。
 まだかな、まだかな。
 リボンの向こうに広がる色を映した瞳は、わくわくきらきら、おさまる様子がない。

 白い天幕と、その下に収められた宝たち。
 きらきらぴかぴか、つやつや、しっとり、さらさら、ごつごつ。色と同じように様々な質感を見せている宝の色は、一番東が赤で、一番西が黒。
 色を魅せ、色を繋いでいく宝だらけの市場。
 高らかに響いたラッパの音色と共に、虹色のひとときが始まる――。
シン・クレスケンス
行動指針【SPD】

想像した以上に賑やかな市場ですね。それに見事な色彩です。
ツキとノクスを伴って、市場へ。
―何か色んな匂いがするな、とツキ。

【コミュ力】【情報収集】を使って、研究の参考になりそうな魔導書や呪物を求めて店を回ります。
もう一つの目的は炎宿る魔法石を指輪に加工してもらうことです。
「信念を貫く」左手のサムリング(親指の指輪)として―

「ウィザードの兄さん」と声を掛けられるのですが、魔法店ばかり巡っているせいでしょうか。
店の人から聞く話だけでもとても参考になります。
ノクスは僕の肩で一緒に話を聞いているかのよう。ツキは退屈そうに大あくびしながらも鼻をひくひく情報収集。
僕達似た者同士みたいです。



「ああ、これは……」
 ツキとノクスを伴い市場を訪れたシンは、広がる光景を前にそっと目を瞠る。
 白リボンの封が切られラッパの音が響いた後、大通りで擦れ違う人は多いが窮屈ではなく、絶えず聞こえる何かしらの会話が心地良いBGMになっている。
 そして天幕の下に並ぶ宝たちが繋ぐ色彩の見事なこと。見ているだけでも、美しい色で心が照らされるで――何か色んな匂いがするな、と、空中に流れる何かもツキの鼻を刺激する。
 虹の中を巡り、人々と会話を楽しむ中、シンが見つけたのは賑わいから切り離したように静かな天幕ひとつ。並ぶのは置物、原石、首飾り――と見目はバラバラだが、色はどれも深緑色だ。その色はまるで吸い込まれそうであり、何かを吸い込んだようでもあり、と奇妙な存在感がある。
(「呪物か」)
「……見ていくか?」
「ええ」
 目を仮面で覆った愛想なしの青年は暫しシンを見つめた後、大丈夫だと判断してくれたらしい。触る時は一応気を付けてくれ、と告げられ、身をもってその必要を知るシンはしっかりと頷いた。こういったものに触れた瞬間“それ”が“解って”しまったら、今までと同じではいられないものだから。
 研究の参考になるだろうものをいくつか選んだシンの足は、市場を穏やかに行ったり来たり。途中、ある場所で足を止めて店主と言葉を交わした後も、シンはあちこちを巡っていて――それが魔法関連ばかりだったせいか。色々と話を聞かせてくれた店主の天幕前を通るたび「ウィザードの兄さん」と声を掛けられる。
「首尾はどうだい?」
「先程はありがとうございました。おかげさまで、上々です」
 ほら、と見せた左手親指には赤い石を抱いた指輪がひとつ。
 炎を宿した“信念貫く”サムリングの話に花が咲く間、シンの肩に留まるノクスは二人の会話をじっと聴いているようで。ツキは大欠伸をしていたが、時折鼻をひくつかせているのをシンは見逃さない。
 姿形、魂は違うけれど――どうやら自分たちは、似た者同士のようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘンリエッタ・モリアーティ
【双龍】
Whoopee!お疲れ様、灯理!
ショッピング大好き! どこの国でも世界でも楽しめるものだもの!
ええ、赤色から。赤色大好き!黒は一番最後でいいわぁ、いっぱい持ってるもん、ね?

灯理、難しい顔してるわぁ
こーいうの、直感で選んだらいいの!考えてる間にとられちゃう
「目利き」は自信あるのよ?私。アー、これ!これ欲しいわ!ねっ!
あっちに美味しそうなのもあるし、うふふ!一緒に食べましょ、灯理!

チェーン?
んー、……私、実はね?あまり「重い」のは嫌なの
宝石って大きいほど価値があるでしょ?
だから、よく「愛してるよ」なーんて言って貰う「首輪」はぜーんぶ、重くって
細いチェーンがいいの。自由な私にぴったりでしょ?


鎧坂・灯理
【双龍】
お疲れさま、マリー 楽しい買い物の時間だよ
虹の色と同じ並びになっているみたいだな 赤色光から黒……紫外線までか
赤色がメインの東から見ていく?
赤色以外の天幕も見て、使えそうな素材を探す
マリーと買い食いも素敵だ いっしょに楽しもう

そうだ、マリー
好みのチェーンがあれば教えて欲しい
私が選んでもいいのだけど、あなたに合わせれば、すべての宝飾品は引き立て役だからな
それに美的センスであなたに叶う気がしない

……なるほど?
なら、ああちょうどいい これにしよう 細くて軽くて美しい
あなたが望めば簡単に外せるように
私の贈り物があなたを縛ってはならない
自由でいてくれ、私のマリー 思うままに振る舞うあなたは美しい



 ラッパの音が響き、喜びの声がわぁっと上がる。
 その中で弾んだ「Whoopee!」は、灯理の隣から。
「お疲れ様、灯理!」
「お疲れさま、マリー」
 ショッピングが大好きなマリーが浮かべていたのは、灯理が思った通りの眩い笑顔。心底楽しそうな彼女に、ふ、と目を細めてから並ぶ天幕の列に目を向ければ、国や世界が違えどマリーを楽しませるものが長い長い虹色を架けていた。
 色の並びは灯理の知る虹色と同じ。赤から黒――紫外線までの色がずらり。審査を通過した品々はどれも高品質なのだろうけれど。灯理の目が、優しくマリーに向く。
「赤色がメインの東から見ていく?」
「ええ、赤色から。赤色大好き! 黒は一番最後でいいわぁ、いっぱい持ってるもん、ね?」
 シャツ、ネクタイ、靴やコート等々。自分たちが持つ黒はなかなかの数だ。
 微笑みを交わした瞳は、赤から始まる楽しい買い物の時間へと。
「店主。これは何だ」
「それはフレアサーペントの骨です。欠片にすれば焚き火の火種に、粉末状にして油と混ぜた物を武器に塗れば、炎の武器に変わりますよ」
「ふむ……」
 解説を聞く灯理の視線は並ぶ赤色へと真剣に注がれる。使えそうな素材は? 使うのであればどう使う? 何と組み合わせる? 頭の中には設計図が次々と浮かんで――。
 あ、難しい顔してるわぁ。
「灯理」
「……あ。すまない、マリー」
「気にしないで、難しい顔も素敵だもの。あのね灯理、こーいうの、直感で選んだらいいの! 考えてる間にとられちゃうわ」
 その直感にはただの“何となく”ではなく、培ってきた経験や知識が詰まっている。『目利き』には自信があるのよ、と笑って、この中から選ぶならと指先を踊らせた。
「アー、これ! これ欲しいわ! ねっ!」
「ありがとう、マリー。店主、これを頼む」
「畏まりました。少々お待ちを」
 天幕の下。硬貨が灯理の手から店主の掌へきらりと渡った後は、次の色へ。
 赤い果実。朱いスープ。紅いジュース。色、香りで心をくすぐられたマリーは、灯理の手を引きながら蝶のようにあちこち覗いていく。共に楽しむ買い食いは当然、灯理のなかで素敵なものとなるばかりで――腹を満たしながら巡る中、その目が橙と黄色の中間で留まった。
「そうだ、マリー。この中にあなた好みのチェーンはあれば教えて欲しい」
「チェーン?」
 色鮮やかなもの。さらりと涼しげなもの。旧い時を感じさせる、鈍色めいたもの。
 大きいもの、小さい物。繊細なもの。花や翼といったパーツと連なったもの。
 ネックレス、ブレスレット、アンクレット――武具と繋ぐ為のものまであるそこは宝飾品専門の天幕だった。
 愛するひとに贈るものだ。自分が選んでもいいのだが、マリーという輝きに合わせれば、全ての宝飾品はたちまち引き立て役となる。それに。
「美的センスであなたに叶う気がしない」
「ふふ、ありがとう灯理」
 真と愛の籠もった言葉にマリーは笑みを零し――実はね? と灯理にだけ告白する。
「あまり『重い』のは嫌なの」
 宝石は大きいほど価値がある。
 それが稀少なものであれば、なおの事。
「だから、よく『愛してるよ』なーんて言って貰う『首輪』はぜーんぶ、重くって」
 言葉とセットで『マリー』の前に差し出される贈り物は全て、『マリー』を求めてぎゅうぎゅう詰め。掌サイズの小箱も、ぱかりと開いたそこにあった宝石も、愛を囁きながら重たい首輪をかけようとするばかり。
「だから細いチェーンがいいの。自由な私にぴったりでしょ?」
 ――なるほど。
「なら……ああちょうどいい、これにしよう」
 灯理の指先に選ばれたものが軽やかな音を奏でた。
 指の上からしゃららと零れたチェーンをマリーの肌に合わせれば、白い肌との相性は良く――何より、細くて軽くて美しいチェーンにはマリーが望む自由が在る。
 チェーンの音と動きで悟ったマリーの双眸が輝き、灯理は静かに微笑んだ。
 愛おしいからこそ、自分の贈り物が彼女を縛ってはならない。
「自由でいてくれ、私のマリー。思うままに振る舞うあなたは美しい」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【菫橙】

市場を見回り良さげな出店を見つけたら声をかけてみます
うーん…よし!ここのお店に決めた
私の第六感がそう囁いてる!
すみません
魔法石をブローチに加工したいんですけどできますか?(コミュ力発揮)

父はハートのブローチを想定してたみたいだけどダサいと一蹴して阻止
メモ帳にイメージ図を描いて職人さんに見せるよ
参観日とかでスーツを着た時にでもつけられる
上品な感じのデザインに!使用する石選びは父に任せるけど色の組み合わせが悪かったら容赦なくダメ出し
わ、すっごい真剣だ…頑張れ
お父さんが真剣に選んでる隙に
橙と翠のバイカラー魔法石でピンブローチをこっそり頼みます
これは相棒へのお土産兼進学祝い
喜んでくれるといいな


城島・侑士
【菫橙】

A&Wの市場は何度か訪れたことがあるがここは特に賑やかだな

職人を見つけたら早速加工の交渉をする
さてどんなブローチにしよう
父さん、アクセサリーデザインはわからないが…そうだなぁ
可愛らしくハートの形とかどうだ?
ダサい?!
ハートは可愛いだろ?!ダメなのか?
そ、そうか…(しゅん)
冬青の厳しいダメ出しにショックを受けつつもブローチに使用する魔法石は真剣に選ぶ
綺麗で…でも派手じゃなくて…
妻を思わせる優しい色合いの石を幾つか選び職人へと渡す
アクセサリーに使用しなかった石は売ってその金でパーツや加工代を賄おう
足りなければ追加金を払う

冬青、助かったよ
ありがとう
ブローチが出来たら何か美味い物でも食べようか



「うわ、凄いねお父さん……」
「ああ……この世界の市場は何度か訪れたことがあるが、ここは特に賑やかだ」
 侑士は市場の賑わいに驚きを見せたものの、その目は愛するわが子が迷子にならないようフル稼働。
 冬青はそんな父にひっそり守られながら、両親の結婚記念日の為! と店探し。市場を歩きながら天幕の下に並ぶ色と品を眺める中、ある天幕の前で足を止めた。
 並ぶ煌めきは服や髪を彩る装飾品。自然――特に植物をモチーフとしたものが目立っており、その緻密さに思わず目を瞠る。第六感が囁いた瞬間に足を止めていたけれど。ここは、かなり、いい気がする。
「すみません、魔法石をブローチに加工したいんですけどできますか?」
「ええ勿論。春とはいえずっと日向はお暑いでしょう? よろしければ此方へどうぞ」
 ブローチのパーツはどれになさいますか?
 促され、サンプルを差し出されて。気付けば天幕の下。上手く捕まえられてしまったような気分だ。しかしやわらかな笑顔と丁寧な説明は気分が良いもので、侑士は自分でデザインを考えるというのは? と訊ねつつ、妻にはどんなものがいいだろうかとじっくり、じーーっくり思考を巡らせる。
「お父さん、どういうデザインにしたいの?」
「……そうだなぁ。可愛らしくハートの形とかどうだ?」
「えっダサッ」
「ダサい!? ハートは可愛いだろ?! ダメなのか? ダメなんですか?」
 思わず職人にも訊ねた侑士だが、冬青の容赦ないダメ出しの瞬間、職人の笑顔から「んんっ」と不思議な音がしていた。一瞬で二人の力関係を見抜かれた為、援護射撃は期待出来ない。ざんねん。
「もーお父さんわかってないんだから。えっと……こういうの、できますか?」
 例えば――参観日にやって来た父。服装はかっちりし過ぎていない、けれどTPOに合わせたスーツで。そこにさり気ない華を添える、上品な煌めき。
 メモ帳にイメージをさらさらっと描いて渡すと、職人はふむ、ふむと数秒眺めた後にニッコリ。お任せ下さい、と誇らしげな笑顔に冬青もぱっと笑顔になり、今度はお父さんの番だよとバトンタッチした。
 厳しいダメ出しに侑士の心のHPはちょっぴり減ってしまったが、ブローチにする魔法石選びを始めれば、一瞬で表情が変わる。娘が考えてくれたデザインを思い浮かべながら、これか、いやこっち、と吟味する横顔を窺った冬青は、そこにあった真剣な色に心の中でそっと「頑張れ」とエールを送った。
(「お父さんが真剣な、その隙に……!」)
 あの、と小声で話しかけてこっそり見せたのは橙と翠のバイカラー魔法石。これをピンブローチにしたくて、と声を潜める少女に、素早く察した職人も小さな声で承りましょうと微笑んだ。
 秘密の贈り物は、相棒へのお土産兼進学祝い。喜んでくれるといいな、とあたたかな想いを秘めていると、侑士も大切な人への贈り物という重要ミッションを終えたところだった。
「これでお願いします。それと残りの魔法石は、パーツ代と加工代に」
「なんとまあ。それでは職人魂にかけて最高のブローチをお届けしましょう!」
 幾つか選び出した優しい色合いの魔法石は、どんな風に生まれ変わるだろう。
 妻を思わせる煌めきが職人と共に天幕の奥へ消えた後、侑士は静かに待っていてくれた娘へ笑顔を見せた。店選び、ダメ出し、デザインの提案。頼りになる娘が、誇らしい。
「冬青、助かったよ。ありがとう。ブローチが出来るまで少しかかるから、何か美味い物でも食べようか? 何がいい?」
「ほんと? 実はね、さっき気になったお店が――……」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【鯉華】で黒

ほい、お疲れさんな?
はは、頑張ってた、頑張ってた(わしゃわしゃ)

さて、守った催しを楽しむのは仕事終わりの醍醐味ってやつだ
楽しまなきゃ勿体ねぇ

お前達も、その醍醐味から俺達の手元にきたんだ――

なんて事は言わないけど

で、何色目当てだ?陸彦
返ってくる元気な答えに笑って
流石に親子だなぁ、俺ら
俺も黒一択!

手袋かな?
そろそろ新調したかったし

ん?俺には金じゃ買えねぇお宝ってのが
沢山あるからいーんだよ

それに、レア素材使った手袋もあるって話だし

で、陸彦はお目当てあるのか?
決めてないならお前のから先に見て廻ろう
つか、今ここで決める必要ねぇだろ?
これってのと出会う場合もあ……ハイ

じゃ、手袋は俺が買ってやる


篝・陸彦
【鯉華】で黒

父ちゃんもお疲れ様だ!
おれ、ちゃんと頑張ってただろ?そうだろ!
だからいっぱい楽しむんだ
市場の話、聞いた時からすごく楽しみだったんだからな

色かー、どれも綺麗なんだもんな
でもやっぱり……黒!
だって、おれの体の色だもん
父ちゃんも黒好きなのか?へへ、一緒!

父ちゃんは手袋か
もっとお宝!って感じのは買わないのか?
レア素材……それもお宝みたいなものだな

おれはどうしよ、色んなのがあり過ぎてさ
あ、でも父ちゃんが手袋にするなら、おれも手袋にしようかな
おれも薙刀使うしさ、一緒に選ぼうぜ

移動の途中、黒曜で作られた魚の装飾品に目が留まる
……なぁ、あれも買っていいか?
えっと……自分用じゃなくて、父ちゃんに



「ほい、お疲れさんな?」
「父ちゃんもお疲れ様だ! おれ、ちゃんと頑張ってただろ? そうだろ!」
「はは、頑張ってた、頑張ってた」
 飛びついてきた陸彦の頭をわしゃわしゃと撫でれば、子の双眸は話を聞いた時からずっと楽しみにしていたもの――虹色架かる市場を映し、よりきらきらと輝いた。
 目の前にあるのは、守った証であるイベント。
 それを楽しむのは仕事終わりの醍醐味。楽しまなければ勿体ない。
(「お前達も、その醍醐味から俺達の手元にきたんだぞ」)
 ――なんて言葉。事実なのだが倫太郎は口にしない。
 キョロキョロそわそわと忙しい陸彦が目当てとする色を訊ねれば、どれも綺麗なんだもんな、と陸彦は少し迷う様子を見せて。そして続いた、元気いっぱいの笑顔での答えはというと。
「黒! だって、おれの体の色だもん」
「はは、流石に親子だなぁ、俺ら。俺も黒一択!」
「父ちゃんも黒好きなのか? へへ、一緒! でも父ちゃん、何買うんだ?」
「あー……手袋かな? そろそろ新調したかったし」
「ふーん? もっと『お宝!』って感じのは買わないのか?」
 ここなら“そういう感じ”のものはきっとあるのに。
 不思議そうな陸彦の頭を、倫太郎は掌でぽんぽんと優しく叩きながら、いーんだよと笑った。
「金じゃ買えねぇお宝ってのが沢山あるし、それに、レア素材使った手袋もあるって話だしな」
 レア素材と言われればそれもお宝のようなものか、と幼心に納得するもので。
 でもレア素材の手袋って何だ? 金ピカ?
 首を傾げていると、自分の目当てはあるのかと頭上から降ってきた声に悩む心がぽんっと芽を出した。あっちを見て。こっちを見て。そっちを見て。うーん、うーん。
「……どうしよ、色んなのがあり過ぎてさ」
「じゃあ、お前のから先に見て廻るか? つか、今ここで決める必要もねぇだろ?」
「そーかなぁ」
「そーだって。これってのと出会う場合もあるぞ」
 逸品たちが虹を紡ぎ、そしてこれだけの人が訪れる場所だ。あてもなく歩いているだけでも、何かしらと出会うだろう。その中に自分だけの“お宝”があっても不思議ではない。
 倫太郎は大丈夫だと笑い、ほら行くぞと手を出して――「あ、でも」――“あ、でも”? 何? きょとんと見下ろす倫太郎に、へへへと向けられた笑顔は「いいこと思いついた!」という色一色。
「父ちゃんが手袋にするなら、おれも手袋にしようかな。おれも薙刀使うしさ、一緒に選ぼうぜ」
「……ハイ」
 デジャヴを覚えながら、二人手を繋いで虹の傍を行く。
 時々天幕の前で足を止め、物色して――と、虹の終わりに近付き始めたそこで陸彦の足が止まった。軽く引っ張られた倫太郎は、どした、と視線を追う。天幕の下、静かに並ぶのは黒い宝たち。
「……なぁ、あれも買っていいか?」
「あの、黒い魚のやつか? 手袋じゃねぇけどいいのか?」
「や、えっと……」

 ――自分用じゃなくて、父ちゃんに。

 ぽそ、と届いた言葉に倫太郎の目が丸くなって。けれど明るい笑顔へ大変身。
「おー。じゃ、手袋は俺が買ってやる」
「いいのか!?」
「おう」
 一つ増えるくらいが何だ。
 仕事終わりの醍醐味。楽しまなければ、折角の宝も残念がるだろう?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

タリアルド・キャバルステッド
この市場では多くの人と服や生地が出会っているのでしょうね。とても素晴らしいことです。

私は職人様を探して、手に入れた黒い魔法石をカフリンクスに加工して頂きたいです。紳士服に許された数少ない装飾のひとつですので、魔法石を贅沢に使ったものを作ってみたくなりました。

通常は2つで1組ですが、魔法石はひとつですし、左手にしかつけることができないので1つだけで大丈夫ですよ。
ご覧の通りこのスーツには右腕がないので、シャツもそれに合わせているのです。
ああ、お気になさらず。私もよく覚えていないのです。なぜ右腕だけ無くなったのか……

さて、魔法石にどんな力が秘められているのか、楽しみですね。



 宝と出逢う前から、タリアルドの胸には幸福感が生まれていた。
 すれ違う人々の多さと天幕の下に並ぶ品の数。それらが、この場所で多くの人と服・生地が出逢っているのだと教えてくれる。それが、スーツのヤドリガミであるタリアルドには嬉しかった。
(「とても素晴らしいことです」)
 今日はどれだけの数の服が、生地が、運命の出逢いを果たすだろう。
 彼らの幸福を願いながら市場を歩き、そして探し出したのは職人が座す天幕。並ぶ品々は、服には欠かせないボタンを中心としたパーツばかり。
「いらっしゃいまし。何かお探しで?」
「はい。この黒い魔法石を、カフスリンクスに加工して頂きたいのです」
 紳士服に用いられる生地の色、柄は様々だが、付ける装飾となるとその数は変わる。その中で、カフスリンクスは紳士服に許された数少ない装飾の一つである為、魔法石を贅沢に使ったものを作ってみたくなった。
「お一つでよろしいので?」
「ええ。通常は二つで一組だと知っていますが、魔法石はこの一つですし」
 それに。
 タリアルドは微笑を浮かべ、袖の無い右腕を撫でる。
「ご覧の通り、左手にしかつけることができないので一つだけで大丈夫ですよ」
 シャツもそれに合わせていると伝えれば、店主は納得してくれた様子。
 しかし顔には“どうして右腕の袖が?”と、隠しきれない好奇心が覗いていて。ハッ、まさか何か悲しい事が――と息を呑んでこちらを気遣う心まで露わにしたものだから、タリアルドは安心させるように微笑んだ。
「お気になさらず。私もよく覚えていないのです」
「え……覚えて、らっしゃらない?」
「ええ。なぜ右腕だけ無くなったのか……」
 人の良さそうな店主は、そこから色々な物語を想像したのだろう。何やら使命感に満ち溢れた眼差しでドンッと胸を叩き、お任せくださいっと声を弾ませた。
「完成まで少々お時間頂きますが……」
「構いませんよ。他を見て回りますので。では、よろしくお願いします」
「はい!!」
 託した黒の魔法石。あの静かな輝きは、どんな変身を遂げるだろう。
 そして、どんな力が秘められているのか――。
「楽しみですね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
こりゃ…壮観だ。『虹の街』なんて大層な名前を付けるだけあるぜ。街そのものが宝石箱みてーな輝きに包まれてやがる。

街に付いたら手に入れた魔法石を売れる店を探すぜ。良質な魔法石が大量に入ってる袋を片手に、探索も兼ねて歩きつつ。アクセサリーや貴金属を取り扱う店なら良い値段で購入してくれそうだ。UCも発動させ言葉巧みに出来るだけ高く売るつもりだぜ。
金貨を手に入れてからが本番だ。青をメインにした銀のアクセサリーを探してみる。…そうだな、指輪とか悪くねぇ。洒落た彫刻の一つでもありゃ、そのまま購入するぜ。魔法道具としてじゃなく単純な趣味だ。
見て回るだけでも色々なモンがある。…アイツも連れて来てやりゃ良かったな



「こりゃ……壮観だ」
 自然と口にした言葉にカイムは笑う。
 地上に虹が架かる街。それを聞いた時はどれほどのものかと思ったが、ウォビニアの大通りを行く今は、大層な呼ばれ方をするだけあると感心するばかりだ。
(「街そのものが宝石箱みてーな輝きに包まれてやがる」)
 こんな街であれば目利きの商人はごろごろいるだろう。
 しかし、手に入れた魔法石を売るならそれなりの値でなくては。
(「そういう情報は商人から聞くに限るぜ」)
 魔法石で満杯の袋片手にニヤリと笑い向かった先では、これから並べるのだろう指輪を丁寧に磨く男が一人。客商売故に気配には敏感なのか視野が広いのか。カイムが声を掛ける前に、向こうが「おや」と顔を上げてくれた。
「いらっしゃい。何かお探しで?」
「ああ。ちょっと聞きたいんだが、店主の中で“アクセサリーや貴金属を扱う店ならここ”、っつー店を知らねぇか?」
 自分の店以外でな、と笑顔で付け加えると店主はお兄さんやり手だねぇと笑い、それならマダム・シュシュの店が一番だと西の方を指す。しかし買うか否かのチェックは市場出店と同じくらい厳しいとの事。
 心配そうな店主に笑顔で礼を言い、教えられた店へ向かうカイムの足取りは軽い。出来るだけ高く売りたい自分には、そのマダムの店こそが相応しい戦場だからだ。
 そして――。

(「さて、ここからが本番だな」)
 ずっしりと重い袋を懐にしまい、青いアクセサリーが並ぶ天幕に目を留めては足も止めてと、宝探しの繰り返し。個性豊かな品々は、魔力宿した道具としてだけでなくアクセサリーとしての魅力も高い。
「へぇ、なかなかいいな」
 鮮やかな青い石抱いた銀の指輪。リング部分には守護の魔法文字が細かく掘られている。悪くねぇ、とカイムは躊躇う事なく金貨袋の口を開けて――。
「……アイツも連れて来てやりゃ良かったな」
 一人で見て回るのもいいが、共に巡っていたなら。
 きっと、もっと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

飛鳥井・藤彦
ふふ、歩いて見て回るだけでも楽しいなぁ、此処。
ほんま来て良かったわ。
さて、日が暮れる前に一箇所どうしても寄らなと思ってる場所があんねん。
エレメンタル・バットを倒して手に入れた赤の魔石をな、耳飾りに使うて貰える職人さんが居てはる天幕。
ここはやっぱり東の方で探すべきやろなぁ。
力強い質実剛健なタイプより、華奢で繊細なパーツ取り扱ってる所がええな。
イメージに合うパーツと職人さんの天幕を見つけたら早速依頼。
集めた魔石を取り出して、メインには大粒の赤を使うて下さいってお願いします。
金属パーツは金がええやろか。
何かモチーフ……せやな、赤い薔薇やろか。
ほんで動いたら揺れるような綺麗なデザインでお頼み申します。



 歩いて、見て回る。
 まだそれしかしていないのに、自然、笑みが溢れてしまう。
「ふふ、ほんま来て良かったわ。ええとこやなぁ、此処」
 藤彦の呟きは雑踏にするりととけこんで、心地良い賑わいの一部になっていく。
 歩みは目的の為にしっかりと。目は、天幕の下に並ぶ色とその形へ。
「さて、」
 空を見ればそこには穏やかな青。
 日が暮れるまでまだ時間がある。あちこち見て回るうちに頭から時間の事はすっぽりと抜け落ち、気付けば何時間も――なんて事が起きてしまいそうだ。
(「それは嫌やな」)
 懐に手を添えると、ことりと硬い感触がした。
 そこには魔法石の中でも特に綺麗だった赤色が眠っている。日が暮れてしまう前に、あの煌めきをどうしても耳飾りにしたい。森で得た縁を次へと昇華出来ずに「はいさよなら」なんてうっかりは御免だ。
 藤彦の足は市場の東側に留まり、西へは行かず。心にぴんと来る店を探し、歩きながら右見て、左見てを繰り返す。思い描く耳飾りの姿はまだ未完成だが、ふんわりとしたイメージはあった。
(「ここは……ええけど、質実剛健なタイプやね。あっちは……うーん……」)
 並ぶパーツはどれも素晴らしいが、残念ながら藤彦の求める姿と違う。
 一つ一つ覗いていって――思わず「あ、」と声が出て足も止まったそこには、様々な耳飾りが並んでいた。
 華奢で繊細なデザインは風が吹くたび涼やかな音を奏で、透かし彫りや立体など、職人の拘りと情熱、そして高い技術がうかがえるものばかり。
「すいません。依頼したいんやけど、今、大丈夫です?」
「ええどうぞ。どのようなご依頼でしょう?」
「魔法石を耳飾りにしてほしいんです。この、大粒の赤い子をメインに使うて下さい」
 懐にしまっていた袋を出し、掌に、ころり。
 瑞々しい果実のような赤い煌めきが、へえ、と呟いた職人の目にも映って踊る。
「こりゃあ見事な色ですね。他のやつも上等だ。パーツは何がいいです? 色も何種類かありますけど」
「せやねぇ……」
 パーツは金に。
 モチーフは――。

 そんな、和やかに進んだ依頼相談の果て。
 揺れては煌めく赤薔薇が、咲き誇る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

虹色の市に感嘆の溜息、期待に目を輝かせ
揺れる尻尾の後追いあちこち巡りに

一番の目的はやっぱ、獲った魔法石の加工
ん~オレはねぇ、色という色は何だって好き
でも一等は空の色
たぬちゃんはどんな空を選ぶ?
自分とパーツを見比べる姿を見
じゃあオレもたぬちゃんに似合うの作るネ、と交換の約束

手の中の石から選ぶのは一際明るい黄色の魔法石
道すがら白に近い黄や淡い黄緑の石を手に入れてパーツ屋へ
雫を模る台座に黄を、ソコからグラデーションするように他の石を連ね並べ
頼んだのはゆらゆら揺れるストールピン
朝焼けの陽のように、朝露のように……ナンてのは口にしないケド
纏う夜色にもきっと似合うハズ


火狸・さつま
コノf03130と

わぁわぁ!にぎやか―!
弾む足取り輝くおめめ
あ!あのリボン、綺麗、だ、ね!
ねっ?とくるぅり振り返れば
目に映るのは…一等綺麗!
御機嫌にこにこ尻尾ぱたぱた
いこいこ!と促して露店巡り!


コノ、何色が好き?
ちゃぁんと、全色残ってる、よ!
持ち込みで作って貰えるらし、から
何が良いかな何が似合うかな何でも似合うな、と
コノとパーツ見比べて
わぁい!楽しみ!

まずは空色選び
透明な青はコノが持ち帰ると言ってたから
また別の、もっと濃い青を選んで
羽根の形のタイピンに嵌め込む
そこから小さい粒で点々と虹をかけて
セットで誂えるカフスは濃い青だけでシンプルに


明るい色、きれい…!
ぱぁあと輝く笑顔向け
コノ、ありがと!!



「わぁわぁ! にぎやかー!」
 色、人。何もかもが。
 はしゃぐさつまの足取りは賑わいの声に弾みながら加わって、お目々は宝たちに負けないくらいきらきらり。歩く先、並んでいたリボンを見た瞬間、その目は「あ!」と輝いた。
「綺麗、だ、ね! ねっ?」
 コノ、と振り返ったそこにはそーネと楽しげに笑む一等綺麗な色。
 こんなに色が、宝があるなんて。感嘆の溜息溢したコノハの目は期待に輝いて、それが嬉しくて大きな尻尾はご機嫌全開。
 いこいこ! と、ぱたぱた揺れるその後を紫雲が追い、天幕の間を楽しそうに巡っていく。そんな二人お揃いの“一番の目的”はというと。
「コノ、何色が好き? ちゃぁんと、全色残ってる、よ!」
「ん~オレはねぇ、色という色は何だって好き」
 これとか美味しそうじゃない? と袋から魔法石を一つ摘み上げ、悪戯っぽく笑う。
 時々足を止めて物色するのは決まってアクセサリーを専門とする店だ。持ち込みで世界に一つの宝を作ってもらえるこの機会、二人は決して見逃さない。
 さつまが持つ袋の内側では、魔法石によってそれぞれの色が淡く映っている。飴玉のようなその中でもコノハが一等惹かれるのは空の色。たのちゃんは? という質問に、さつまの耳がぴんっと立った。
「えと、えと」
 これと、コノハ。こっちと、コノハ。
 パーツとコノハを見比べる事、数回。
「コノ、何でも似合う……!」
「嬉しいコト言ってくれるじゃない。じゃあオレもたぬちゃんに似合うの作るネ」
「わぁい! 楽しみ!」

 ――そして今。
 二人はとってもとっても、真剣だった。
 場所は、客自らアクセサリー作りが出来るという天幕の下。一方のトレーでは煌めきが静かに輝きながら出番を待ち、もう一方のトレーには複数のパーツが行儀良く並んでいる。
 一つだけの宝物を交換するのだから、石を選ぶのもパーツを組み合わせるのも、いつからこちらの道に? と訊ねたくなるくらい――それくらい、二人は真剣だった。コノハは職人と真剣に話し合い、さつまはというと。
(「透明な青は、コノ、持ち帰るって言ってた」)
 何でも似合うけれど。選ぶなら、一等綺麗に映える空色を。
 まずは羽根の形をしたタイピンを置き、そこへ、コノハが選んでいた青よりも更に濃い青を嵌め込む。鮮やかな青空の羽根に点々と架けられていく虹は小さな粒。
 身に付ければ、動きに合わせて今以上の輝きをきららと見せる――そんな予感でいっぱいの羽根が色も輝きも増していく中、コノハは一際明るい黄色魔法石越しに、作業中のさつまをチラリと見て、“よし”。
「魔法石はこれで、台座はこっちの雫模ったやつでお願い。それと、この石も使ってもらえると嬉しいんだケド」
 こくっ。物凄く寡黙だけれど、眼差しはコノハに負けじと真剣な職人の手が、コノハに見守られながら作業を開始した。
 雫形のそこに、こつ、と宿った鮮やかな黄色。白に近い黄や淡い黄緑の石がグラデーションを描くように連なり、並んでいけば、道すがら手に入れた石たちはコノハが思った通りの色をえがいてくれて――。
「たーぬちゃん。ど? できた?」
「できた! コノ、これ! あと、もういっこある、よ。はいっ!」
 虹が架かった青空の羽根の後、セットで誂えたというカフスはシンプルな見目。
 目も覚めるような濃い青を二つ、コノハは大事に大事に受け取って笑う。
「ありがとね、たぬちゃん。てコトでオレからも。ストールピンにしてみたんだけどネ」
 ゆらゆらと揺れる雫の色は、優しく、淡く。けれどその中に確かな陽色もある。
 それは朝焼けの陽のように。朝露のように。
(「……ナンてのは口にしないケド」)
 コノハが“きっと”と思った通り、受け取った瞬間からぱぁあと輝く笑顔の傍で、それはさつまが纏う夜色とよく似合っていた。
「明るい色、きれい……! コノ、ありがと!!」
「どーいたしまして」
 煌めきの幻想を架けた空の羽根と、一瞬の光を閉じ込めたような雫。
 この世に一つだけの輝きが、虹の途中でゆらゆらと光を弾いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エルザ・メレディウス
【晩翠庵】で参加致します
*SPD:『アクセサリーや道具を扱っているテント群』の一角へ向かいます
☆通りを歩きながら、珍しい食べ物が売っていたら金貨や銀貨を使って【取引】しながら、三人分購入致します。
ウィンドウショッピング気分でお店を散策しながら、美味しく頂きましょう。
お目当てのお店があったらそちらで、自分の部屋用の絨毯やキャンドルアロマなどの小物類をいくつか購入致します

◆二人へのサプライズ:『黒曜石の兎が彫刻されたラピッドリング』を三人分、購入いたします。私の兎が長女、柊那さんの兎が二女、心結さんの兎が三女をイメージしたものです

かわゆいもの...お二人は気に入っていただけるかしら...


佐藤・柊那
【晩翠庵】で参加
SPD:アクセサリーや道具のお店に向かいます

「おぉ~、ほんまに虹がかかってるみたいやな~」
通りを歩きながら、珍しい商品を見つつ
自分用に、食器や小物などを買い求めて
使い方をみんなで考えたりして楽しみながら歩く

サプライズ
「サプラ~イズ、二人にプレゼントやで」
メイドウォークで気配を消しつつ
1章で手に入れた魔法石(赤・黒・黄)を砕いて
アクセサリー屋さんに頼んで三人でお揃いのブレスレット
にして貰います。

二人からのサプライズには顔には出さずにすごく喜びます。


音海・心結
【晩翠庵】で参加*アドリブ歓迎

SPD:アクセサリーや小物等可愛らしいもの中心

虹?
どこなのですかっ!

食べ歩きをしながら、お店に向かうのですっ
食べ歩きは好きなのですが、
最近はあまりしてなかった気が

エルザ、ありがとなのですよーっ!
きゃっきゃっ
美味しいのです♪
もっともっと食べたくなりますねぇ

みゆが買うものは決めているので、
それ以外はウィンドウショッピング
どれもかわゆいですねぇ

二人がお買い物に夢中な時を見計らって
赤・黄・黒のマカロンのストラップを購入っ!
甘く、今にも蕩けそうなアクセサリーなのです♪
二人とも喜んでくれるでしょうか
むふふ

それじゃあ最後に……って、あれ?
二人もプレゼント買ってくれたのですか?



「おぉ~、ほんまに虹がかかってるみたいやな~」
「虹? どこなのですかっ!」
 あっちと柊那が指した先を、心結はぱっと瞳輝かせながら見る。
 空に架かるものと比べ、この市場に架かる虹はとても鮮やかだ。虹色の中には果実に干し肉に一品料理にと幅広い“食”が含まれており、そちら方面はエルザがてきぱきこなしていく。
「見た事のない食べ物が売っていますね。買ってみましょうか」
 試しにあちらを。
 次はこちらを。
 食べ歩きながらのひとときは、新しい発見やショッピングと常にセットだ。柊那は自分用にと食器や小物を買い求め、この世界、この市場だからこそ出会った食べ物――少々値が張る場合は、エルザが金貨と銀貨を手に誠実に“取引”する。
「ああ駄目だ俺の負け負け! っくー! お客さんやるねぇ……!」
「ありがとうございます。さ、お二人もどうぞ」
 シャボン玉めいた美しい飴細工が、笑顔で両手をひらひらさせた店主からエルザへ三つ、エルザから柊那と心結へ一つずつ渡されていった。
「エルザ、ありがとなのですよーっ!」
「美味しそうやん。ありがと、いただくわ」
 ひとなめしてふんわり広がった優しい甘み。足取りまでふわふわ軽やかになりそうな心地で行く市場の風景は、UDCアースやヒーローズアースでするようなウィンドウショッピング気分を三人に与えていく。
「……あ。すいません、あそこの絨毯見てきてもいいでしょうか?」
「いってらっしゃいなのですよ、エルザ♪」
「ん、いってらっしゃーい。心結は何か気になるもんとかないん?」
「みゆですか? んー……」
 周りを見て。考えて。ぺろっ。飴を舐め、大丈夫なのですとにっこり笑った。
 ――本当は、買うものは決めているのだけれど。
「わ、美味しいのです♪ もっともっと食べたくなりますねぇ。……あっ、おかえりなさいエルザ!」
「お待たせしました。あのお店で教えて頂いたのですが、向こうにキャンドルを売っているお店があるそうですよ」
「へー、良さそうやん。行こ行こ」
 笑顔で見に行けば、火を点けてとかしてしまうのが勿体ないくらい精巧なものから、飾り気はなくとも花の香りを漂わすものまでとなり、なかなかの品揃え。
(「エルザも柊那もお買い物に夢中……今なのですっ!」)
 心結が秘密のお買い物先に選んだのはスイーツ専門――ではなく、いわゆるフェイクスイーツアクセサリーの店だった。ころりとまあるい赤、黄、黒。マカロンのストラップは、甘く、今にも蕩けそうな愛らしさ。
 気付かれてしまったらサプライズは失敗。心結は買った物を大事に抱え、素早く戻った。ニコニコ笑顔は、ずっとそこにいたと装うだけではなく。
(「二人とも喜んでくれるでしょうか。むふふ」)
 それでは。
 最後の仕上げはプレゼン――、
「サプラ~イズ、二人にプレゼントやで」
 柊那が笑顔で差し出したものに、心結は目をぱちぱち。
 一体いつ? どこで?
 不思議でいっぱいの表情に柊那は満面の笑みだ。
 ああ。職人へ依頼しに行った時、気配を消しておいて良かった!
「それ、魔法石を砕いて作ったブレスレットなん」
 三人でお揃いになっているブレスレットは、赤、黒、黄と見覚えのある色。
 わあ、と目を輝かせた心結の隣ではエルザも驚きを浮かべ、それから少し迷うような表情に変わる。実は――と控えめな声と共に差し出したのは、密かに抱えていたプレゼント。
「二人もプレゼント買ってくれたのですか?」
「も、ってことは心結も? えー、そこもお揃いやん。あ、マカロンだ」
「考える事は同じだったんですね」
 エルザからのサプライズは、黒曜石の兎が可愛らしい姿を見せるラビットリング。
 エルザの兎が長女、柊那の兎が二女、心結の兎が三女をイメージしたものだというそれは、大変“かわゆいもの”で。
(「お二人に、気に入っていただけるかしら……」)
 渡すのは贈り物だけ。不安な想いは、自分の胸に。
 けれどそれは、心結の歓声と――喜びを顔に出していないものの、マカロンもリングもしっかりと抱える柊那の姿で、さあっと吹き飛んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レジーナ・ファルチェ
【騎士の血脈】

(アドリブ歓迎)

お兄様達と一緒にお買い物嬉しいですの♪

どんなものがありますのかしら…。

アクセサリーなんかも豊富ですのね。

あ!お店を冷やかすのもいいですけれど、わたくしやりたい事がありますわ。

魔法石を加工したいんですの。

ちょっと別行動してもいいですかしら?

どうせならサプライズしたいですもの。

みんなでお揃い…セラお兄様は蒼い石で、アルお兄様は紫の石で、わたくしは黒い石で狼の形を作って小袋に入れてお守りとかどうですかしら。

ですのでそういった石の加工が出来るお店と小袋を売っているお店を探しますわね。

上手く出来るかはわかりませんけれど、お兄様達が喜んでくれると嬉しいですの


アルバ・ファルチェ
【騎士の血脈】

(アドリブ歓迎)

セラとレジーナと一緒に市場を見て歩く。

まずは何から見よっか。

え、レジーナ一人で大丈夫…?と言うか、止める間もなく行っちゃったね。

セラはどうする?

んー、僕も買いたいものがあるから別行動、後で集合でもいい?

集合場所を決めたら、一人で行動。

手に入れた魔法石をお揃いの武器飾りにどうかなって。

うちに伝わる『翼と十字の意匠』を僕達双子はシルバー、レジーナはゴールドの台座に彫って、十字の真ん中にそれぞれ蒼と紫、黒の魔法石をはめて貰って石と同じ色のタッセルをつけて…。

プレゼント喜んでくれるかな?

ってきっと皆同じようなこと思ってるんじゃないかって気がするんだよね。


セラータ・ファルチェ
【騎士の血脈】
アドリブ歓迎

ほんとに賑やかな市場なんだな
アルとレジーナと通りを歩きながら周りを見回して

で?最初は何処から行く?
今にも飛び出していきそうなレジーナを苦笑しながら眺めて

って、おい。レジーナ
嵐のようだな…

んー…適当に店回るかな
あぁ、別に構わない。アルも気をつけろよ
アルも見送ってから行動開始

へぇ…シルバーアクセなんかもあるのか
…すみません、この翼のバングルに魔法石をはめてもらうことはできますか?
男物が2つと女性物を1つ…できれば3つ、同じ物をお願いしたいのですが
店主には丁寧に問いかけ、蒼と紫、青みがかった黒の魔法石を用意する
二人には内緒でお揃いのバングルを作れたら良いなと思いながら



「ふふっ、お兄様達と一緒にお買い物嬉しいですの♪」
「うん、僕も嬉しい。凄く賑やかだね、セラ」
「ああ。で? 最初は何処から行く?」
 周りを見回したセラータの表情が、レジーナの元気に揺れる狼尾と今にも飛び出していきそうな笑顔を見て、ほんの少し綻んだ。セラータの質問にレジーナは意気揚々と周りを見て。
「………………決められませんわ、だってこんなにたくさんの――あ!」
「どうした」
「行きたいところ、見つかった?」
「ええ。でも、ちょっと別行動してもいいですかしら?」
 セラータとアルバは顔を見合わせた。何せ従妹のレジーナは好奇心旺盛で方向音痴。宝と人で賑わう場所を一人で行くなんて、大丈夫だろうか。
 しかし、行き先を聞いておけば、はぐれても何とかなるだろう。
 そこまでの思考、僅か数秒。二人は同じタイミングでレジーナ、と呼び――従妹の行動力を目の当たりにした。さっきまでそこにいたのに綺麗に消えている。
「嵐のようだな……」
「止める間もなく行っちゃったね。セラはどうする?」
「んー……適当に店回るかな」
「そっか。……あのさ、僕も買いたいものがあるから別行動、後で集合でもいい?」
「あぁ、別に構わない。場所は……あそこの、猫形の看板の下でいいか。アルも気をつけろよ」
「うん。それじゃあまた後で」

 二人が集合場所を決めていったん別れた頃、レジーナは市場を颯爽と歩いていた。
 店を冷やかすのもいいけれど、セラータとアルバに魔法石を加工したものを贈りたい。そしてどうせなら、サプライズで!
(「あ! あそこなんて良さそうですわ!」)
 ぴんっと動いた狼耳は、“石の加工ならお任せあれ”、“持ち帰り用の袋、色々有ります”の看板が添えられている天幕に向いていた。
 接客中だった女性に笑顔で迎えられたレジーナは、紫の魔法石と黒の魔法石をいそいそと取り出す。それぞれ狼の形を作り、お守りにして贈りたい。レジーナのサプライズプレゼントプランに、女性が鼻息荒く「お任せください!」と胸を叩いた。そういった事が大好きらしい。
「狼の形はどんなものになさいます? サンプルだとこういったものが……」
「まあ、どれも素晴らしくて迷いますわね……わたくし、上手く選べるかしら……」
 けれどサプライズプレゼントを成功させる為、お兄様たちの為。レジーナは女性のアドバイスを受けながら、お守りデザインの詳細を詰めていくのだった。

「へぇ……シルバーアクセなんかもあるのか」
 その頃、セラータは白色集うエリアで足を止めていた。
 無数の色で虹を架けている市場だ。色々あるだろうとは思っていたが、これは思わぬ出会いだ。
 かすかな驚きを浮かべ向かった先では、空からの陽射しを浴びているもの、天幕の影に包まれているものと、どちらも艶やかな質感と色を存分に放っていて。光を放っているわけではないのに、惹き付ける魔力のようなものがあった。
「……すみません、この翼のバングルに魔法石をはめてもらうことはできますか?」
「どれどれ……失礼するよ」
 しわだらけの老婆は、バングルを丁寧な手付きでじっくりと眺めた後、ニヤリと笑った。いいバングルだ。楽しそうに呟き、どんなのがいいんだいとテーブルに置く。
「男物が二つと女性物を一つ……できれば三つ、同じ物をお願いしたいのですが」
「できれば、なんて遠慮しなくっていいよ。でも丁寧な男は好感が持てるねぇ、ひっひ」
 しかも誰かの為の依頼なら大好物さと笑っていた目が、蒼と紫、そして青みがかった黒の魔法石を見て真剣な色を帯びた。
(「仕事にプライドを持っているタイプだな。……二人には内緒でお揃いの、と思っていたが……これは、いいバングルを作ってもらえそうだ」)

 そしてアルバはというと、職人と顔を突き合わせて真剣に相談していた。
「十字の真ん中にそれぞれ蒼と紫、黒の魔法石をはめてほしいんです」
「ふむふむ……バランスはこんな感じですかね?」
「そう! それでお願いします……!」
 職人がさらさらと描いていくラフにアルバは目を輝かせ、こほんと咳払い。
 石を嵌めたら同じ色のタッセルをつけて――と順調に進んでいくそれは、ファルチェ家に伝わる翼と十字の意匠を取り入れた、三人お揃いの武器飾り。当然、二人にこれを作りに行った事は内緒だ。
(「プレゼント喜んでくれるかな?」)
 そう考え、ふ、と笑う。
 なぜかはわからないけれど。
(「きっと皆、同じようなこと思ってるんじゃないかな」)
 集合場所に決めた看板の下で、あたたかな何かが待っている。
 そんな予感が、止まらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィーリス・ルシエ
【大事な妹分のシュリ(f22148)と参加】

わあ、本当に虹色で鮮やかな市ね
どこから見ようか迷っちゃう
そうだ、シュリ、魔石あったわよね?
折角だし、あれ加工して貰いましょ?

職人さんを見つけて加工を依頼
碧の魔石を預けて、どんなのにしようか少し悩み
そうね、シュリに似合いそうな、銀を使った腕輪がいいわ
お願いね

って、依頼の間にシュリがいなくなってる!?

探して見つけた時には涙目
どこに行ってたの!迷子になっちゃダメってあれ程言ったのに!

って、お腹が空いてたの?
言われると、私も…
と、自分のお腹が鳴ったのは誤魔化して

な、なら仕方ないわね!何か食べにいきましょ!

何を作るのか気になるの?
ふふ、それは完成までのお楽しみ


シュリ・ミーティア
SPD
【姉貴分のフィーリス(f22268)と】
呼び方はフィー

みんな無事で良かったね
天幕の下
あか、きいろ、みどり
虹の道はとてもきれい

うん、魔法石で何か作ってもらうの?
叔父さんへのプレゼントかな、と思いながらついていく

フィーが加工を頼んでいる間
ふと見つけた金色に輝くお店へ足を向け

そろそろ終わったかな、って戻ったら
…また怒られちゃった

ごめんね
えっと…そうだ
お腹空いたから、食べ物探してたの

…今お腹の音が聞こえたような?
でも言わないでおこう

そう言えばフィー、何を作ったの?
えー、意地悪

(これ、いつ渡そう。ご飯食べたら機嫌なおるかな)

また渡しそびれたプレゼント
金色の羽根が連なる小さな腕輪を、ポケットに隠して



「わあ、本当に虹色で鮮やかな市ね。どこから見ようか迷っちゃう」
 虹架かる市場でひらりと舞った碧に、親に手を引かれた子供が目を輝かせる。そのまま遠ざかる子供へフィーリスと一緒に手を振ったシュリは、周りに溢れる色と笑顔にそっと表情を綻ばせた。
「みんな無事で良かったね」
 天幕の下には、色を繋いで虹架ける宝たち。
 想像していたよりずっと綺麗な虹の道だ。
「そうだ、シュリ、魔石あったわよね? 折角だし、あれ加工して貰いましょ?」
「うん、魔法石で何か作ってもらうの?」
「ふふ、まぁね。さ、行きましょ!」
 ひらっと降りてきたフィーリスを肩に乗せ、彼女のナビを受けながら、シュリは叔父さんへのプレゼントかなとぼんやり考えながら行く。
 フィーリスは天幕にならぶ品の形を始めとした品質を、一つ一つ見ていって――あっ、と呟いてすぐに「あそこがいいわ!」と双眸を輝かせながら羽ばたいた。
 フェアリーの客は珍しいのか、頬を紅潮させながら背筋を伸ばしている年若い職人にフィーリスは碧の魔法石を抱え上げて預け、うーん、と悩む。
「……そうね。銀を使った腕輪がいいわ。お願いね」
「はい!」
「それじゃあシュリ……って、いなくなってる!?」
 大慌ててキョロキョロし始めたフェアリーに、職人が遠慮がちに声をかける。
「あのぉ……お連れさんですけど、お客様が考えてらっしゃる間……」

 ポケットにしまった物の感触に、シュリはほんのりと満足げ。依頼はそろそろ終わったかな、加工を依頼していた天幕は確かこっち――と歩みを進めていたその真ん前に、サッ! とフィーリスが飛び込んだ。
「どこに行ってたのシュリ! 迷子になっちゃダメってあれ程言ったのに!」
 いけない。
 また怒られてしまった。
「ごめんね。えっと……そうだ。お腹空いたから、食べ物探してたの」
 そう言われると、なぜだかフィーリスもお腹が空いている気がしてきた。
 どうしてかしら? 怒ったから?
「な、なら仕方ないわね! 何か食べにいきましょ!」
 お腹が鳴ったのを誤魔化す姉心にシュリは何も言わず、こくりと頷いた。あ、でも。
「そう言えばフィー、何を作ったの?」
「気になるの? ふふ、それは完成までのお楽しみ」
 えー、意地悪。なんて言って、手はそっとポケットの中。
(「また渡しそびれちゃった。いつ渡そう。ご飯食べたら機嫌なおるかな」)
 シュリにはピアスくらいの大きさであるそれは、フェアリーである姉貴分サイズの、金色の羽根が連なる腕輪。
 一つだけの宝物は、もう少しだけポケットに抱かれる事になりそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
【コシカ】

ワォー。イロトリドリ。イロイッパイ。
アァ……わくわくするなァ……。

東の赤い所から出発ー。
コレは赤い魔法の石が欲しい。
さっきの合体魔法みたいに赤い石を重ねて何か作りたい。

赤と、黄色。
賢い君の赤とコレの目の色。
それから最後にコレの毛みたいに真っ黒なモノを合わせて作る。
赤い宝石、黄色の装飾にコレの毛みたいな黒の三つ。
腕輪、武器飾り、悩むなァ……。
アァでも、完成したら二人にも見せる見せる。

それまでは隠して秘密にしておこう。
二人とも、オタカラは見つかったー?
コレは見つかった見つかった。
すごーくイイもの!

アァ……ダメダメ、まーだナイショ。
完成したらせーので見せよう。

いい?いい?せーの!


リリヤ・ベル
【コシカ】

虹です。虹色です。すごい。
東の端から、ぐるりと西まで回ってゆきましょう。
わたくしはレディですけれど、今日はみんなで冒険者ですもの。
いちばんのたからものをみつけるために探検するのですよ。

きらきらがたくさん。
どれもすてきで、目移りしてしまいます。
手元の魔法石はみずのいろ。
道々に買い求めるのは、ちいさな黄色と緑色と青色の石。
水辺におはなを咲かせましょう。
しゃらしゃら、ゆれる髪飾り。

! そうです。完成までは、ひみつなのですよ。
もうすこしだけお待ちくださいましね。
宝石たちと、こそこそないしょばなし。
せかいにひとつの宝物をてのひらにつつんで、そわそわ。

ふふー。いつでもよいのですよ。
せーの、はい!


アルバニア・フェルミ
【コシカ】

東から西にかけて
いいのがないか探しましょう
ふふ、わくわくするなぁ

さっき活躍してくれた青い魔法石
この子を飾れるものを探したくて
ひとりじゃさびしいから淡い水色の子もいっしょに
迷うくらい、たくさんあって
この子たちにはどれが似合うかしら
悩むことすらたのしくて
感触を確かめながら考える

ステキなものを見つけるたび
2人に話しかけたいけれど
今はがまん、見せ合いっこをたのしみにしましょう

探し回ってみつけたものをひとつにしてもらって
ほら、もっときれいになった
わたしは見つけたよ、タカラモノ
2人もできた?どんなの?

それじゃあ、せーの!

花の飾りがついたブレスレット
どうかななんて得意げに
2人のもステキねと笑った



 赤から黒へ変わるという色の帯は、虹を紡ぎながらどこまでも続くかのよう。
 右を見れば、
「ワォー。イロトリドリ。イロイッパイ」
 左を見れば、
「虹です。虹色です。すごい」
 アァと笑ったエンジの月色と、わぁ、と丸くなったリリヤの若葉色。陽と宝の煌めきを映しながら輝く瞳と同じく、アルバニアも閉じた瞼の向こうにいくつあるのかわからないほどの輝きを視て、湧き出すわくわくに「ふふ」と笑う。
「それじゃあ、行きましょうか」
「ウンウン、赤い所から出発ー」
「ぐるりと西まで回ってゆきましょう」
 えいえい、おー。
 きゅっと、ゆるっと、ぎゅっとグーを作ったらいざ出発。
 レディたるリリヤは鼻から気合いの“ふすっ”を出してしまったけれど、今日はレディをお休みして冒険者。冒険者たるもの、みんなで一番の宝物を見つける為に恐れず探検へと向かうものなのだから。
 並ぶ色彩にお喋りを重ね、探検の足取りはゆっくり楽しく。
 エンジは並ぶ赤色を眺めながら、石、石、と心の中で唱えていた。
(「さっきの合体魔法みたいに、赤いのをイッショにして、何か作りたいなァ……」)
 楽しみだね、賢い君、賢い君。
 そっと話しかけた時、でしたらこちらは如何と言うように、愛しい赤とそっくりの石が目に映った。アァこれだこれだ。ひょいっと買ったその次に欲しいのは、自分の目と同じ黄色い魔法の石。
(「最後にコレの毛みたいな真っ黒のモノを合わせて……ンー……」)
 赤い宝石。黄色の装飾。漆黒の毛。三つを足して合わせて、どうしよう。
 腕輪、武器飾り。それとも?
 楽しいけれど、同時に悩ましい。そんな状況にアルバニアも陥っていた。
 探し求めるのは、活躍してくれた青い子を飾れるもの。
(「ひとりじゃさびしいから、淡い水色の子もいっしょに。ね」)
 どの子にしよう。あの子がいいかな。こっちの子も素敵。
 並ぶ煌めきは迷うくらい沢山あって。出会った子らにどれが似合うかしらと、指先で、掌で感触を確かめながら考える。そうしているとまたステキな出逢いが訪れて、ねえ二人とも、と話しかけたくなるけれど。
(「……あなたも一緒に来る?」)
 今は我慢して、出逢った煌めきに秘密のお誘いを。
 そしてリリヤは、つぶらな目に様々な青を映していた。
(「なんて、なんて手強いのでしょうか」)
 出会う宝がどれも素敵なものだから、どうしても目移りしてしまう。
 掌をそうっと開いてぷかりと広がった水色の煌めきは、やわらかで、優しい。冒険者はまけません、とエネルギーを補充して――すると、ほんの少し見つめ合った手元の宝が呼び寄せてくれたのか。道々に出逢い、迎えたのは小さな黄色と緑、そして青い石。
(「水辺のおはなですね」)
 宝石たちをひとつにして咲かせたなら、可憐に揺れながらしゃらしゃらと歌う髪飾りになる。それを思うと、またわくわくして――。
「二人とも、オタカラは見つかったー? コレは見つかった見つかった。すごーくイイもの!」
 は。リリヤは出逢った宝物に目を落とし、アルバニアはこくりと頷いて、手にしている袋を両手で大切に包み込む。
「わたしは見つけたよ、タカラモノ。二人もできた? どんなの?」
「アァ……ダメダメ、まーだナイショ。完成したらせーので見せよう」
 エンジはくるりと身を翻し、両手を後ろに隠すとニヤリ顔。完成まで、どんなオタカラかは秘密秘密。楽しそうな声に、リリヤは頭上にぴこんと“!”が飛び出す勢いで目を丸くした。
「そうです。完成までは、ひみつなのですよ」
 だから、もうすこしだけお待ちくださいましね。
 掌に包んだ世界に一つだけの宝物。今はまだ“蕾”の宝石たちとこそこそ内緒話。お披露目したくてそわそわするけれど、その気持ちは、“せーの”までのお楽しみに。
「わたしはもう少しで完成かな。今もきれいだけど、もっときれいにするの」
「! それはわくわくいたしますね」
「コレも決めないと……アァ、“何を”かはナイショ、ナイショ」
 目を合わせて、しー、のサイン。

 それから暫くして、宝探しに挑んでいた冒険者たちは虹の果てに集合していた。
「いい? いい?」
「ふふー。いつでもよいのですよ」
「それじゃあ……」
 せーの! でお目見えした宝が、森で出逢った魔法石を中心に唯一の輝きをきらりと魅せる。
 どうかな、とアルバニアが得意げに見せたのは花飾りがついたブレスレットだ。水の瞬きを繋いだようなブレスレットはアルバニアだけの、胸を張ってステキと言える世界に一つだけの宝物。
「ね。二人のもステキね」
 優しい音をそっと零す、水辺の一輪めいた髪飾り。
 存在感のある赤と黄色の輝石に、黒がふさりと寄り添う品。
 一つ一つが放つその輝きは、傍に架かる虹にも負けない眩しさでいっぱいだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と

右も左も輝き湛え
仰げば虹が揺れる
う、うむ
呼ばれて漸く我に返れば
宝の山に紛れかねぬ師の背を追う

透き通る青、それから光灯す器
目を奪われては双星追って
虹の間を游ぐうち目眩すら覚えながらも
美しい荷を次々と受け取る
上機嫌な様子に窘める言葉も引っ込めて

気になるものは多いのだが
…あれが一番気に入った
虹の天蓋、指して苦笑
此処に在るが故の七彩
うむ、流石に持って帰れぬが
用意周到な師の板を覗き込んで
見事なものだと見比べる
ならば良きものを見つけてこなくては

それから市場の終わりの程近く
小さな店先に、入り口で揺れていた虹色に光る帯
――ああ
漸くと買い求めて
師父、これを髪に飾らぬか
…宝には虹が架かるのだ


アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
地上に降りし七彩の絶景たるや
見事な生地に、彼方の薬草も興味深い
ほれ何を呆けておる、行くぞ

ふーむ…お前には白も映えようが
鮮烈なる紅も捨て難い
悩むならばいっそ全て手に入れてしまえば良いと
気に入った布と糸を買い、控える従者に託す
…ジジ、お前は何か欲しい物はないのか?

指し示された方を見遣り、察する
やれ、これでは易々と与えられぬではないか
ならば――取り出したるは魔法の板
『たぶれっとPC』を構え、写真を一枚
後はこれを飾るに相応しい額縁があると良いが…頼めるか?
頼もしい返答に満足しつつ様子を見ていると…む?
手中のそれに、目を瞬かせ
…ふふん、ならば我が髪を飾る大役
お前に与えてやるとしよう



 市場を訪れた人が始めに見せるのは、並ぶ宝が作り出す色彩溢れる光景への感嘆。
 地上に降った七彩の絶景はアルバの心にも射し込んで、ほう、と満足げな笑みへ変えていく。
 距離が縮まれば質の高さがより明確になる生地。彼方に見えた薬草は見覚えがなく興味深い。まずは生地から――と歩き出し、常のように視界にある色がいない事に気付いた。
 右も左も美しい輝きを湛え、仰げば陽を遮るそこにも揺れる虹。確かな現実だが、どこか御伽噺のよう。ジャハルは気付かぬうちにゆら、り、と尾を揺らして。
「ほれ何を呆けておる、行くぞ」
「う、うむ」
 アルバの声でようやく我に返り、見慣れた背を追う。見失うとは思わないが師の姿は宝の山に紛れかねない。しかし透き通る青き宝、それから光灯す器と、きらきらと瞳に映り込んだ存在に目を奪われ――その都度、視界の中央を双星に戻し、後を追って。
「ふーむ……お前には白も映えようが、鮮烈なる紅も捨て難い」
 あの紅は確か、とアルバは色合いを思い出しながら、ジャハルとジャハルの体に添えている白い布を見比べる。着せ替え道楽にされるが侭の男から「どうするのだ師父」と降ってきた声には、顔を見上げふふんと笑った。
「店主殿、この布と……そうですね、その糸を頂けますか」
 一人分の服を作るのに十分な量のそれをジャハルに預け、颯爽と向かう先は鮮やかな紅の元。悩むならばいっそ全て手に入れてしまえば良い。それにあの紅も映えるだろう。
 そのさなかに美しい宝と出逢ったら、それも手に入れて。ジジ、と次々託される荷を受け取ったジャハルは、上機嫌な様を見て、宥める言葉を引っ込めた。喉まで来ていたそれをかけてしまっては、瞳に浮かぶ輝きを消してしまいそうで。
「……ジジ、お前は何か欲しい物はないのか?」
 己を見る視線を受け、欲しい物、と周りを見る。虹の間を游ぐうち眩暈すら覚えながらも、つい、と惹き付けられた物は幾つか――いや、多くあったが。
「……あれが一番気に入った」
 指し示された方を見遣り、察する。並ぶ色を映して虹を宿した白き天蓋、この場所だからこそ存在する七彩はジャハルがつい惹かれる煌めきだ。
 水面に映るような澄んだ色彩は確かに美しく――しかし易々と与えられるものではないと笑うしかない。が、アルバは実に用意周到だった。
「師父、それは」
「『たぶれっとPC』だ。……ん? この角度の方が良いか?」
 一枚収めれば虹の天蓋は魔法の板の中へ。こうすれば、持って帰る事は不可能だった筈の宝でも持ち帰れる。魔法の板に収めたまま、『ぷりんと』すれば屋敷に飾れよう。
 ――そう、額縁だ。
 これを飾るに相応しい額縁が要る。
「頼めるか?」
「ならば良きものを見つけてこなくては」
「うむ」
 頼もしい返答に満足しながら、額縁を求めて旅立つ背を見送って――それから暫く経った時。戻ってきたジャハルの手には、額縁以外にもう一つ宝があった。
「師父、これを髪に飾らぬか」
 瞬いた瞳に、虹色游がせるやわらかな白い帯が映る。
 小さな店先で揺れていたこの色を見た瞬間、ジャハルはそれを買い求めた。この色ならば、かの黎明の輝きを邪魔すまい。それに。
「……宝には虹が架かるのだ」
「……ふふん、ならば我が髪を飾る大役。お前に与えてやるとしよう」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイン・スノウホワイト
【WIZ・銀葉】
アドリブOKです。
アインは車椅子移動になる為同行する雨音様かイガル様が押してくれます。

雨音様と一緒に魔法石の換金場へいきます。
途中までは喋らずにこにこと雨音様と店員の方を見ていますが途中から証人としての顔が出て事前に調べておいた市場価格とすぐ近くのお店の方が高く買い取ってくれたという演技、店員の心を揺さぶるような言葉を巧みに使いながらあくまでも友好的に取引(言いくるめるともいう)を持ち掛けます。
【情報収集、読心術、世界知識、演技、コミュ力、取引、言いくるめ】

(雨音様とイガル様に合わせてグラスを掲げる)
乾杯、です。
皆様お疲れ様です。


ナァト・イガル
【銀葉・アドリブ歓迎】

(自分の魔法石は一章で寄付と決めたため、仲間二人と商人のやりとりは眺めているのみ)
私からみれば、雨音さんも十分やり手に思えるのだけれど……アインさんの、いつの間にか望みの結果を引き出している、としか言えない手腕には、寒気のようなものまで感じてしまったわね……。

「かんぱーい!」
雨音さんの音頭に合わせて掲げたグラスは、7層に色が分かれた不思議な代物。
さすがは虹色と言われる街だわ。ここまでの街中も素敵だったけれど、食べ物・飲み物まで見た目が凝っているわね!
……この日を守れて、本当に良かった。これがきっと、猟兵の喜びというものよね。

ところでこれ、どうやったら上手く飲めるのかしら?


雨音・玲
【銀葉・アドリブ歓迎】
魔法石一つあたり金貨何枚分の価値?
森で話してた話題だけど―質の悪そうなのを転売と
歴戦の商人相手にやっぱ付け焼きの礼儀作法やハッタリじゃ
上手く商談出来ねぇかな?
ほんとマジでアインが居てくれて助かったよ―!!

ところ変わって冒険者の店
アインの車椅子を押してテーブルまでエスコート
ナァトと三人でテーブルを囲み
中央に質の悪い魔石を換金した金貨の袋(今夜の軍資金)を置いて
鼻腔をくすぐる地方料理の数々を囲んで
俺は灰汁の強そうな地エールの入ったジョッキを掲げます

無事大成功を祝しまして―乾杯ッ♪

気付けに一気飲み!飲んで騒いで
周りの冒険者も巻き込んで食事を大いに楽しみます

楽しまねぇと損だよな♪



「どうですか、この魔法石。大きさ、色、申し分ないでしょう?」
 実はそれほどの質じゃねぇけど。
 玲はアインと共に商人へ魔法石の商談を進めつつ、内心、上手く出来てるかこれ? と考えていた。相手の商人に、質の低い魔法石と見抜かれる可能性はある。
(「付け焼き刃の礼儀作法とハッタリの合わせ技で、どこまで食いつけるかだな……」)
「ふぅむ……確かに本物の魔法石です。そうですね、価格は……」
 商人はやわらかな布の上へ魔法石を戻し、傍に控えていた者から袋を受け取り、封を開ける。一枚二枚と出されていった金貨の数に、成る程、と微笑み頷いたのはアインだ。
「不思議ですね。事前に調べてみましたが、市場価格と比べると少々……それに、近くのお店の方が買い取ってくれた価格とも差があるようですが」
 不思議ですね?
 浮かべている微笑と丁寧な言葉遣いに何が含まれているか、向こうはよく解っているのだろう。しかし「ははは不思議ですなあ」と笑顔を貼り付け、金貨を増やそうとしない。
 でしたらとアインは微笑みながら相手の心を読み取り、必要に応じて演技をし、言葉で相手の逃げ道を塞いでいく。
(「ほんとマジでアインが居てくれて助かった……!!」)
 玲は心の底から有り難がった。それを仲間だからこそ感じ取ったナァトは、不思議に思う。
(「私からみれば、雨音さんも十分やり手に思えるのだけれど……」)
 そして、繰り広げられる“一見丁寧だが実際は全くそうではないビジネスワールド”に、寒気のようなものを覚えた。存在しない筈の鳥肌が立つとしたら、こんな感覚だろうか。
 自分の魔法石は寄付した後で、こういった事には詳しくないのもあり眺めているのみだが、安全圏にいるからこそ、アインが“アインの望む結果”へと近付きつつあるとわかって――。

 アインの車いすを押し、テーブルまでエスコートする玲は満面の笑みだ。アインのエスコートを終えるとナァトに続いて自分も席につき、素早くやって来た従業員にメニューを注文していく。
 賑わいで満ちたそこは商談の場ではなく、冒険者が集う繁盛店。
 厨房には歴戦のコックがいるのか、頼んでいたものはすぐにやって来て。
「無事大成功を祝しまして――乾杯ッ♪」
「かんぱーい!」
「乾杯、です。皆様お疲れ様です」
 玲はあくの強そうな地エールの入ったジョッキを気付けに一気飲み。爽快感溢れる喉越しは勝利の杯という事もあり、おそろしく美味い。
 並ぶ料理はこの地方独特のものだろうか。色鮮やかな野菜の上にある肉料理は胡椒に似た香りが食欲をそそり、それ以外も鼻孔をくすぐっては「食べて食べて」と誘惑してくるよう。
 もりもり食べていく玲にナァトはくすくす笑い、自分のグラスを改めて見る。
「虹色ですね、イガル様」
「ええ。七層に色が別れてるなんて不思議……さすがは虹色と言われる街だわ」
 ここまでの街中も素敵だったが、食べ物と飲み物まで目が凝っているとは。
 この出逢いも、オブリビオンの脅威から多くを救えたという証。
(「……この日を守れて、本当に良かった。これがきっと、猟兵の喜びというものよね」)
 ところでこの酒は、どうやったら上手く飲めるのだろう?
 首を傾げるナァトを余所に玲は周りの冒険者も巻き込んで、勝利の宴と今日という日をダブルで満喫中。なぜなら、こういうものは“楽しまねぇと損”だから――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネムリア・ティーズ
【涙雨】
すごいね、どこもきらきらで…ひとがいっぱいだ
虹の根本には宝物があるんだって本に書いていたけれど
きっと、ここがそうなんだね

叶の石、涼しそうないろ
このいろ、ボクも叶に似合うと思う
いつかお出かけする時につけて見せてほしいな

優樹の石は木の葉みたいないろだ
武器の近くに…うん、なんだか心強そう
きっと石も優樹のことを助けてくれるよ

ボクはね、この青い魔法石
あわい白の中から浮かぶ青がとてもきれいなの
さっき見た、ブローチってものにして貰うんだ
ステキなリボンを探して、それに着けてもかわいいなって

他に見たいもの?…ふふ、全部見てみたい
まず緑色のお店からはどうかな
ほらこっち、と振り向いて
虹の中を探検しにいこう?


萌庭・優樹
【涙雨】
なんと、きらびやかな世界――!
お二人を見逃さないように気を付けなければ
色に溺れて迷子になってしまいそうです

叶さんの石、綺麗な色だなあ
これを使ったループタイはお似合いに違いありません!!
ネムリアさんの青色の魔法石も
きっとかわいいブローチに生まれ変わるはず
ワクワクが止まりませんね

おれはこの緑色の石を使いますっ
装飾パーツと合わせて、ダガーの鞘に着けてもらうんです!
普段使ってる武器の近くにこの色があったら
なんだか、張り切って戦えそう
これに合うアクセサリーもあるかなぁなんて
緑色の幕の下へ駆け出したくなるくらいです

鮮やかな色に囲まれた今日は
まぶたを閉じても蘇るよな、ステキな思い出になりそう!


雲烟・叶
【涙雨】
賑やかですね、それに随分と目にも鮮やかです
白い布も螺鈿のように煌めくなんて、面白いですねぇ

さて、お嬢さん方
何色で何を作るか、決まりました?
自分は、氷色の石でループタイの飾りにでもして貰おうかと
魔法石っていうか単なる宝飾品扱いですねぇ、自分にゃ魔法は馴染みがねぇんで

優樹のお嬢さんは緑ですか
武器飾りの発想はなかったですねぇ
いえ、自分は武器を使わないので新鮮だなと

ネムリアのお嬢さんは青、と
ブローチなら色々と合わせやすそうですから、今度出掛ける時は見せてくださいな
その時はループタイもして行きますから

職人さんに預けてあとで受け取りに来ましょう
他に見てぇもんがあれば、のんびり冷やかしに行きますかね



 訪れた市場を見た瞬間、優樹の双眸はわわわ、と輝きを宿して。
 ネムリアの双眸も、わ、と瞬きの後、静かな煌めきを浮かべる。
「なんと、きらびやかな世界――!」
「すごいね、どこもきらきらで……ひとがいっぱいだ」
「賑やかですね、それに随分と目にも鮮やかです。ああ、見てください。あそこ」
 叶が指した先には、市場開始まで封の役目を担っていたリボンのもと。
「白い布も螺鈿のように煌めくなんて、面白いですねぇ」
 虹が架かる市場だから白色にも虹が架かるんでしょうか。
 歩きながらゆるり微笑む叶の言葉が、ネムリアが見つめる風景と重なっていく。
「虹の根本には宝物があるんだって本に書いていたけれど……きっと、ここがそうなんだね」
「おれもそう思います!」
 優樹は両手をぎゅっと握り締め――ハッ。
(「こんなにきらびやかな世界です。おれ、色に溺れて迷子になってしまうかも……!」)
 二人を見逃さないよう気を付けねば。
 笑顔からキリリ真剣になってと忙しい優樹に叶はくすりと笑み、「さて、お嬢さん方」と、ずらり並ぶ天幕の列を見ながら懐に手を入れる。
「何色で何を作るか、決まりました? 自分は、氷色の石でループタイの飾りにでもして貰おうかと」
 魔法石、というより宝飾品扱いだが、生憎と叶は魔法に馴染みがない。
「まぁ、そういう訳ですんで」
「とても綺麗な色ですから、お似合いのループタイができあがるに違いありませんよ!」
「うん。涼しそうなそのいろ、ボクも叶に似合うと思う」
 いつかお出かけする時につけて見せてほしいな。ネムリアの願いに叶はそっと微笑んだ。
 さて。自分の話で盛り上がりかけたが、少女たちの魔法石の使い道や如何に。
「おれはこの緑色の石を使いますっ。装飾パーツと合わせて、ダガーの鞘に着けてもらうんです!」
「武器飾りの発想はなかったですねぇ。いえ、自分は武器を使わないので新鮮だなと」
「あ、そういえばそうですね……?」
 いつも使っている武器の近くにこの色があったら――優樹は何がどう、と上手く言えないけれど、張り切って戦えそうな気がしたのだ。
 えへへと掌に載せた魔法石がネムリアの瞳に映り込む。木の葉のような色は持ち主に似て、優しい緑を湛えていて。
「……うん、なんだか心強そう。きっと石も優樹のことを助けてくれるよ」
「わ、それは光栄です……! ネムリアさんは何色の魔法石にするんですか?」
「ボクはね、この青い魔法石。あわい白の中から浮かぶ青がとてもきれいなの」
 先程見たブローチにしてもらうのだと、白い掌に載せた魔法石を見つめ、ほんのり表情を綻ばせる。心惹かれるリボンを探して、それに着けても可愛いだろう――ネムリアのプランに優樹は「きっと!」と元気に、叶はやわらかに頷いた。
「ブローチなら色々と合わせやすそうですから、今度出掛ける時は見せてくださいな。その時はループタイもして行きますから」
「! 約束、ね」
「ふふ、ワクワクが止まりませんね」
 緑の魔法石を武器飾りにして。ああ、これに合うアクセサリーもあるかなぁ。優樹の心はどんどんワクワクでいっぱいになって、緑色が並ぶ天幕へと駆け出したくなるくらい。
 どの天幕も逃げたりしませんよと叶が微笑んだ通り、職人が店を構える天幕は確かにあった。それぞれ魔法石を預けた後は、出来上がる頃に受け取りに来るとして。
「他に見てぇもんはあります?」
「お、おれ、たくさんあって迷います……!」
「わかるよ。……ふふ、ボクは全部見てみたい。まず緑色のお店からはどうかな」
 ほらこっち、と振り向いて手を差し出す月色の乙女に、優樹は頬を紅潮させて笑顔を輝かせる。虹の中を探検しにいこう、だなんて。なんてきらびやかなお誘いだろう。
 自分たちを囲む色はびっくりするくらい鮮やかだ。
 今日という日が、瞼を閉じても蘇るような。そんなステキな思い出になりそうで。
(「……いいえ。きっと、もうなっていますね!」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
◆ねーさん(リュシカ/f00717)と


まあ、こっちも目的があったわけだしさ
むしろ付き合ってくれてサンキュ、ねーさん
お互い得したんなら、よかったよ

さて、俺の用事は果たしたし、ねーさんに付き合うよ
しかし、虹がかかるとはよく言ったもんだ
といっても俺は実物を見たことはないんだけど
……ねーさんは、どの色が気に入ったとかある?

ちなみに何か見たいものは――ああ、まあそうなると思った
商談するのはいいけど、無茶吹っ掛けないようにな
ほら、早速口許が緩んでるけど?

一通り市場を回ったら、休憩しようぜ
さっき、そこで美味しそうなタルトの店を見掛けたんだ
……いや、金の心配はいいよ、奢るから
付き合って貰った礼だよ、気にすんな


リュシカ・シュテーイン
鳴宮さん(f01612)とですぅ!

鳴宮さんのおかげでぇ、出費が抑えられた上ぇ、
ジュエルもタダで確保できましたしぃ、
良い事ばかりでしたねぇ

……今日は本当に助かりましたぁ
私一人だけでは出費どころかぁ、無事に帰って来られていたか分かりませんものぉ
ふふぅ、いつもありがとうございますぅ、ですからねぇ

虹ですかぁ?そうですねぇ、私は太陽のようなオレンジとかぁ……
あっぁ!アクセサリー屋ですよぉ、アクセサリーぃ!
もしかすればぁ、曰く付きの品などで安いジュエルもぉ……くふぅ、うふふぅ
じょぉ、冗談ですよぉ、冗談ぅ!

たぁ、タルトぉ……いっぃ、いいんですかぁ!?
でぇ、ではぁ、お言葉に甘えてぇ……えへへぇ、楽しみですぅ



「……今日は本当に助かりましたぁ」
 ん、と向けられた匡の視線に、リュシカはだってぇと嬉しそうに袋を抱え直す。中を満たす魔法石が軽く触れ合い、音を立てた。それがまたリュシカを笑顔にさせる。
 出費が抑えられた。
 魔法石もタダで確保出来た。
 振り返ってみると、良い事ばかり!
「私一人だけでは出費どころかぁ、無事に帰って来られていたか分かりませんものぉ。ふふぅ、いつもありがとうございますぅ、ですからねぇ」
「まあ、こっちも目的があったわけだしさ。むしろ付き合ってくれてサンキュ、ねーさん」
 お互い得したんなら、よかったよ。
 歩幅を合わせ歩く匡の表情は戦闘中と全く変わらないが、言葉に偽りはない。
 自分の用事は既に果たされている。
 譲ってもらえた魔法石は懐に。市場が始まった今はリュシカに付き合おう。
 荷物持ち、絡んできたよくわからない者のあしらい――匡は起こりうるものを脳内に浮かべながら、ずっと西まで続く虹色を眺める。
 虹が架かる、とはよく言ったものだ。
 実物を見た事はないが。
「……ねーさんは、どの色が気に入ったとかある?」
「虹ですかぁ? そうですねぇ、私は太陽のようなオレンジとかぁ……」
「ちなみに何か見たいものは――」
「あっぁ! あそこにあるのアクセサリー屋ですよぉ、アクセサリーぃ!」
「ああ、まあそうなると思った」
 匡は“もう慣れっこ”状態だった。早足で向かい始めたリュシカの隣を歩きながら、彼女が目指す天幕に目を向ける。成る程、彼女が好みそうな物ばかりだ。
「ねーさん。商談するのはいいけど、無茶吹っ掛けないようにな」
「わかってますよぉ。あるのは逸品ばかりだという話ですけどぉ、もしかすればぁ、曰く付きの品などで安いジュエルもぉ……くふぅ、うふふぅ」
「ほら、早速口許が緩んでるけど?」
「じょぉ、冗談ですよぉ、冗談ぅ!」
 でもお得に手に入るならそうしたい。
 それがリュシカ・シュテーインという女であり、魔女だ。
 そんな彼女と虹色の市場を一通り巡れば、その戦果が二人の両手に確かな存在感でもってぶら下がり、リュシカは笑顔が止まらない。
「ふふぅ、ふふふふぅ……重いですけどぉ、でもぉ、幸せですぅ……」
「じゃ、そろそろ休憩しようぜ。さっき、そこで美味しそうなタルトの店を見掛けたんだ」
 タルト!
 ぱっと笑顔になって匡を見たリュシカだが、色々と買っていくうちに大切なものが――つまり、金貨や銀貨といったものが。そこそこ。だいぶ。かなり。減って、いて。
「う、うぅ、タルトォ……」
「……いや、金の心配はいいよ、奢るから」
「いっぃ、いいんですかぁ!?」
「付き合って貰った礼だよ、気にすんな」
「でぇ、ではぁ、お言葉に甘えてぇ……えへへぇ、楽しみですぅ」
 たっぷりの宝を手にした心に染み込んでいた虹色と幸せ。
 そこへ甘い物も加わるまで――もう少し。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アパラ・ルッサタイン
ははあ、なるほど
これは確かに大地にかかる虹だね
虹の麓には宝物が眠っているという噂もあるもの
いざゆかん、宝探しへ!

やはりランプの材料になるものを探したいねェ
色とりどりのマーケットは見ているだけでワクワクする
眺めるうち、とりわけキラキラ輝きを映す天幕
うん、あの黄色にゆこう

やあ調子はどうだい?
戯れに言葉を交わして視線を一巡り
ああ、あれか
淡く黄色く輝く星の砂
手に掬い溢せば天の川

ふふふ、創作意欲を刺激されるじゃないか
これを袋いっぱいに頂ける?

よい買い物をすると足取りも軽い
ついでに財布も軽くなったが、まあ気にしないさ

まだまだ世界は色に満ちている
さあ次はどこへゆこうかな



「ははあ、なるほど。これは確かに大地にかかる虹だね」
 市場を訪れたアパラを出迎えた、手の届く所に架かった虹色は正に絶景。
 虹の麓には宝物が眠っているという噂もあるのだから、ここもその麓に違いない。果てまで続く虹に眠る宝は数え切れないほどあるだろうから――いざゆかん、宝探しへ!
 探す宝はやはりランプの材料になるものだ。
 骨組みに使えそうな木材や魔獣の骨。クリスタル。鎖。
 色取り取りの市場は、色と並んでいる宝そのもので魅了してくる。見ているだけでもワクワクする時間は楽しくて――しかし、アパラの瞳は眺めているうちに一際眩いキラキラを放ち、映してくる天幕に惹き付けられた。
「うん、あの黄色にゆこう」
 アパラは迷わず向かった。なぜならここは宝が眠る虹の麓で、あるのは宝だけ。そして同時に、“迷う”という時間が別の誰のチャンスになりかねない。
「やあ調子はどうだい?」
「いらっしゃい! 絶好調だよ。お客さんは?」
「同じくさ」
 戯れに交わした言葉は店主に笑顔を浮かべさせ、どうぞごゆっくりぃとご機嫌な声も加えさせる。それじゃあお言葉に甘えるよとアパラは笑い、天幕の下に視線を一巡り。
(「ああ、あれか」)
 自分を呼ぶようにキラキラ輝いていた宝は、淡く黄色く輝く星の砂。
 手に掬って溢せば、自分の手が彼方に煌めく天の川の始まりになる。
 色といい、さらさらとした手触りといい、申し分ない。
「店主。これを袋いっぱいに頂ける?」
「喜んで! へへ、袋いっぱいに、だなんて嬉しくて翼が生えそうだ」
 飛んでいったりしたら、天幕にあるものは全部引き取ってあげようか? いいえいいえお客様のお手を煩わせる訳には、なんて冗談を交えながら、煌めく天の川はさらららと袋の中へ流れ込む。
 良い買い物をすると足取りも軽くなるもので――ついでに財布も軽くなったが、アパラは気にしなかった。こういった買い物を一つ終える度に、幸福感や満足といったものがキラキラと胸を満たすのだから。
「さあ、次はどこへゆこうかな」

 まだまだ世界は色に満ちている。
 それは遠い未来まで続く、永遠の色。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月11日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アックス&ウィザーズ
#エレメンタル・バット
#呪飾獣カツィカ


30




種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナミル・タグイールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト