タイムトラベル?シャッターチャンス!
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伝統や文化はどの時代にも、どんな場所にもあって。
けれど、それがあまりにも身近にありすぎると、そんなことは忘れてしまいがちなのだ。
そうして、人知れず姿を消していくものなんて、珍しくない。けれど。
忘れてしまわないように、それらを慈しむひとたちもいるのだ。
ここは、そんな取り壊されていく文化を集めた場所。その名も『博物館明治村』
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「旅行に行こうよ、タイムトラベル気分でさ」
そう告げたアルテュール・ドリィブ(ガラクタドール・f03646)の手には、チラシとパンフレットが握られている。
「明治時代の建物を集めている博物館があるんだ。博物館と言っても、広い敷地に建物が集められているテーマパークみたいなところだよ」
彼女の手に握られているチラシとパンフレットは、どうやらそこのものらしい。
パンフレットを受け取れば、なるほど。
一丁目、二丁目と、まるでひとつの都市のように描かれた地図では、様々な建物の絵と写真が並ぶ。
ぺらりと裏返せば、スイーツやグルメ、それからお土産情報がたくさん書かれていた。
パンフレットを眺める猟兵たちへ、アルテュールがチラシを掲げる。そこには『宵の明治村、浴衣でどうぞ』の文字。
「………なんと夕方から、浴衣で割引。その日は閉館時間も延長だって」
浴衣コンテストもあったばかり。ナイスタイミングだよねと嬉しそうに笑う。
「浴衣を着て明治時代の雰囲気を散策したり、写真を撮ったり、楽しいんじゃない?」
だから一緒にどうだろう。そう言うアルテュールは行く気満々とばかりに浴衣姿で。
楽しみな気持ちを表すように、彼女の手のなかでグリモアがくるりと回った。
あまのいろは
このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。
執筆開始は9月23日、月曜日からを予定しています。
それ以前に失効日を迎える場合、プレイングをお返しすることになると思いますので、ご注意ください。
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春夏に掛けての謎解きのためがね、燃えるんですよ。あまのいろはです。
そんなわけで、愛知県の犬山にある『博物館明治村』へ行こうというお誘いです。
宵の明治村ということで、時間帯は夕方よりのお昼からになります。
せっかく浴衣コンテストがありましたし、1度着ただけで仕舞うのはもったいない。
素敵な浴衣をもう1度着て、遊びに行きませんか? 明治時代の建物と並べば、着物もより映えることでしょう。
もちろん浴衣じゃなくても大丈夫です。むしろ動きやすいかもです。
びっくりするくらい広いんだあそこ…。下駄で歩くのは…私には無理…。
ちなみに私は、東松家住宅がすきです。土間から見える吹き抜けが最高です。
過ごし方は下記のなかからひとつ選択し、番号を表記して頂けると助かります。
【1】明治村の展示を見て楽しむ
教会、ホテル、郵便局、学校、刑務所など、様々な展示があります。
それらを巡りながら、写真を撮ってみるのは如何でしょうか。
普段とはちょっと違う雰囲気の写真が撮れるかも。
【2】スイーツ・グルメを楽しむ
花より団子な貴方に。
カキ氷、氷みつ豆、抹茶、アイスキャンディー、ソフトクリーム。
がっつり食べたいひとは、オムライスやきしめん、コロッケなんかもあります。
【3】その他
ピンとこなかったら、こちらをどうぞ。
お土産を買ったり、射的を楽しんだり、お手紙を書いたり。
公序良俗に反しない限り、なんでもOKです。
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グループやお友達と参加する場合は、上記の番号の他に【グループ名】か【お相手のID】の記載をお願いします。
迷子防止のため、ご協力をお願いします。
案内を行ったアルテュールが同行しています。何か御用があればお声掛けください。
それでは、宵の明治村をごゆるりとお楽しみくださいませ。
第1章 日常
『【Q】旅行とかどうでしょう』
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POW : とにかく気力体力の続く限り、旅行先を満喫する
SPD : 旅行先で目ざとく面白いものを見つけて楽しむ
WIZ : 事前に下調べを行い、綿密に計画を立てて楽しむ
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クック・ルウ
【2】
どの建物も趣があり、見ているだけで楽しいな
クックは5丁目のコロッケのお店へ行くぞ
なんでも本を元にしたレシピだそうなのでな
原作にも少し目を通したが、お腹が空いて堪らなかった
ほう、三種類もあるのか……うむ、迷うまでもないな
コロッケを全種類いただこう
揚げたてコロッケを味わいながら、写真を撮る人を眺めて
ああやって撮るのだな。と見様見真似でテクニックを学び
自撮り棒代わりに伸ばした腕でスマホをパシャリ
上手く撮れた気がして撮影が楽しくなってきた
アルテュール殿、素敵な浴衣姿だな
一枚撮っても良いか?
【アドリブ絡み諸々歓迎】
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とぷとぷと鳴る水の揺れるおとは、クック・ルウ(水音・f04137)の足音。
「どの建物も趣があり、見ているだけで楽しいな」
明治時代に建てられた様々な建築物を眺めながら進むクックの足取りはかろやか。だって、目指すものは決まっているのだ。
クックはちいさな白い売店の前で足を止める。大きなホテルの前にちょこんと立つ、その佇まいはなんだか可愛らしい。
「ふむ、ここのようだ」
ふわりと香ばしいかおりが漂ってきて、クックの鼻をくすぐる。へにゃりと思わず頬がゆるんだ。
ちいさな白い売店は、コロッケのお店。
このお店に並ぶコロッケは、明治時代にベストセラーになった小説に書かれていたレシピを再現したものらしい。
「ほう、三種類もあるのか……」
クックはコロッケについて書かれている看板とにらめっこ。どれを買おうか―――。
「………うむ、迷うまでもないな。コロッケを全種類いただこう」
悩まなかった。
小説を読んだ時もお腹が空いて堪らなかったけれど、それが目の前にあるのだ。
ならば、ひとつしか食べないだなんて選択肢は、クックにはない。食べる事は生きる事だと師匠も言っていたのだから。
クックの両手には、揚げたてコロッケ。
いただきますの挨拶をして頬張れば、口のなかにじゅうっと肉の甘みが広がる。コロッケの味については、クックの表情を見れば一目瞭然だった。
コロッケのひとつを、ぺろりとたいらげて。きょろりと周りを見渡せば、あちらこちらで建物や食べ物に、カメラを向けている人々。
(……ふむ)
写真を撮る人々の姿を眺めながら、もうひとつのコロッケもぱくり。
なるほど、ああやって撮るのだな。クックも真似して、写真を撮ろうとスマホを構えるが、なかなか難しい。
そうだと軽く手を叩いたクックは、たぷりと腕を伸ばした。ブラックタールの身体は、伸縮性に優れている。
試行錯誤を繰り返して写真を撮ってみる。なんだか上手く撮れた気がして楽しくなってきた。
でもコロッケが冷めたらいけないと、先に最後のひとつをぱくり。ごちそうさまでしたと手を併せたクックが、アルテュールの姿を見つけた。
「アルテュール殿、素敵な浴衣姿だな。一枚撮っても良いか?」
写真を撮るのが楽しくなってきたところなのだ。せっかくだから、もっと楽しみたい。
クックの申し出に、アルテュールはおれを?とぱちぱち瞬いて。けれどすぐに、喜んでと微笑んでみせた。
「写真を撮ってもらったお礼は、コロッケ以外がいいかな?」
「……む。それならば、あんみつ氷が気になっていてな」
クックの素直な言葉に、ふたりは顔を見合わせてくすくす笑いあったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
数宮・多喜
【1】
……ふぅん、へぇ。
明治時代の博物館か。
ちょうどアタシのご先祖様が現れた……
いや、このUDCアースに転移してきたのが明治時代だったか。
その頃の雰囲気を味わえるのなら、悪くないかもね。
思う所は色々あるけれど、ゆっくりと展示されている光景を見て回るよ。
……まぁ、つい思いが篭ってそうな所やモノを見てしまったら、
【超感覚探知】のテレパスが働いてしまうかも。
それはそれとして、嬉しい事さ。
じっくりとその瞬間の逢瀬を、
言葉を交わしながら噛み締めようじゃないのさ。
そうこうしているうちに、写真も撮るよ。
でも、こんだけ語らった後だ……
撮った写真に変なのが映り込んでないだろうね?
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「………ふぅん、へぇ」
数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は、しみじみと村内を歩いて回る。
明治時代は多喜にとって、ちょっとだけ思い入れがある時代だった。
多喜の先祖が、UDCアースに転移してきた時代だったのだ。もちろん、話に聞いただけだけど。その頃の雰囲気を味わえるのなら、悪くないかもと思うのだ。
県庁や学校に鉄道まで、様々な明治時代の建物が集められた明治村は、博物館というより本当にひとつの村のようで。
まるで、この時代に生きていたひとたちの姿も見えるようだ。――――そう多喜が思った、その時。
ぱちりと視界の端になにかが映った気がした。ぱちり、ぱちり。多喜は瞬いてから視線を移すが、そこにひとの姿はない。
(………ん?)
首を傾げたのは束の間。ああ、と納得がいったように呟いた多喜は、僅かに瞳を伏せるとくつくつ笑った。
「ああ、なるほどねぇ。………大変な思いをしたんだねぇ」
多喜は、並ぶ白いベッドをしみじみと眺める。いま、彼女がいる場所は、病院だった。
いろいろな、強い想いが籠もりやすい場所。そこに足を踏み入れたものだから、彼女の超感覚探知が反応して、多喜にいるはずのないひとの姿を見せたのだ。
病院という場所柄、きっと、辛いことはたくさん起きたのだろう。でも、それでも。
その時の思いに、こうして離れた時代からでも触れることが出来るなら、それは嬉しいこと。
多喜は微笑むと、そこにいるひとへと手を伸ばす。それに触れることは出来ず、多喜の手が空に浮くだけだったけれど。
「…………お疲れ様だよ」
多喜がそう呟けば、それの気配がまるで春の日差しのようにあたたかくなったような気がした。
そうして、モノに残る様々な想いと触れ合いながら、それらの記憶を新しく写真に残しながら、多喜はふと思う。
「こんだけ語らった後だ……。撮った写真に変なのが映り込んでないだろうね?」
あの後も、いろんな所でそれらと触れ合った。そんな、見えないはずの『なにか』が写真に映っていたのかは、多喜しか知らない。
大成功
🔵🔵🔵
ミツハ・カイナ
残念ながら浴衣を仕立てる余裕はなかったからなぁ……
あ、もしかして貸衣装とかそういうのあんのか?もし借りれそうだったらせっかくだし着てみてぇな
衣装が借りれれば書生服を着て散策を
さて、だいぶ敷地は広そうだがどこから回るか……せっかくだから色々風景を描いて回りたいんだよな
お!いいところに!アルテュールに声をかけてオススメスポットがないか聞いてみよう
どこも雰囲気良さそうだし、広くて行き先に迷うんだよな
オススメの場所があれば案内してもらえたらなってさ
あ、写真じゃないからちょっと時間かかるけどお礼に風景と一緒にアルテュールの絵を描いて渡そうと思うんだけど、時間大丈夫か?
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「残念ながら浴衣を仕立てる余裕はなかったからなぁ……」
やはり浴衣姿のひとが多いと、ミツハ・カイナ(空憬・f19350)は辺りを見回す。
もちろん、浴衣姿じゃないひといるけれど、―――あれ? 浴衣姿にまじって、袴や書生姿のひともちらほら。
「あ、もしかして貸衣装とかそういうのあんのか?」
ぱっとパンフレットを確認すれば、衣装貸しますの文字。せっかくだからと、ミツハは書生服を借りることにした。普段と違う服は、なんだかすこしくすぐったい。
さて、と。
書生姿に着替えたミツハは、画材道具が詰め込まれた鞄を片手にまたもパンフレットと睨めっこ。
「さて、だいぶ敷地は広そうだがどこから回るか……」
SLの鉄道? 燈台からの景色はどうだろう。
普段見慣れない風景を色々描いて回りたいミツハにとって、どこも気になるし決めがたい。
「悩みごと?」
そんな、悩んでいる姿を見かけたアルテュールが、ひょっこり現れミツハの顔を覗きこむ。
「お! いいところに!」
ぱっと顔を上げて。気のいい笑顔を浮かべてミツハは言う。
「どこも雰囲気良さそうだし、広くて行き先に迷うんだよな……」
「そうだね、自分のお気に入りを探すのも楽しいけれど……。ここ、広いからね」
「そうそう。だから、オススメの場所があれば案内してもらえたらなってさ」
ふむ、とアルテュールが視線を落として考える。暫くするとゆるゆる視線を戻して。
「……うーん。ありきたりかもしれないけれど」
おれはとてもすきなんだ。そう言って案内されたのは、ステンドグラスがきらきら煌く教会。
「きらきらしてて、ずっと見てられるんだ。内装もすきだし」.
外光を通して光る美しいステンドグラスを見て、ミツハも思わずほう、と息が漏れる。
「おー、いいな! ……あ、そうだ。ちょっと時間もらって大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。……他にも案内する?」
「いや、お礼に風景と一緒にアルテュールの絵を描いて渡そうと思って」
予想外の申し出にアルテュールは、え、と口を開けた。
「……おれで、いいのかな」
「お礼だから! 写真じゃないからちょっと時間かかるけど」
アルテュールはすこし気恥ずかしそうに頬を掻いたものの、よろしく、と微笑んでみせた。
「よかった。じゃあここに座ってもらって――……」
教会にミツハが画材を扱うおとが静かに響く。その間も色とりどりの美しい光は、変わらず降り注いでいるのだった。
大成功
🔵🔵🔵