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シに至る道

#ダークセイヴァー #同族殺し


●屍を重ねて
 その城は、異様だった。
 絶望の世界『ダークセイヴァー』の中でもその城は一際“死”を漂わせていた。気配ではなく、文字通りに。

 ……おぉぉぉぁぁあああ……っ!!

 城壁に囲まれた城のいたる所に呻きを上げながら蠢きのたうつ異形の影。それはかつてヒトだったモノの成れの果て。あべこべに継がれ、融けるように混ざり、新たに放り込まれた人を己が一部としてゆく。そして人がヒトでなくなると、その躰から抜け落ちた魂は城へと獲り込まれていった。
 屍霊集積結界『幽臨城』。それがこの、ヒトを供物にその躰を喰らい魂を獲り込む城であり結界の名である。

「せっかくここまで集めたのに!」

 その城の最奥で主であるオブリビオン、幽獄召霊少女『ユリン』はぷりぷりと怒っていた。原因は城門を結界ごと斬り捨てた一人の男。霊を介して様子を確認したユリンは男の力を領主と同等と見ていた。そんな男に攻め込まれれば城の被害も無視できない。だが、ここはユリンの城だ。他の場所ならいざ知らず、長きにわたり屍と魂を集積させてきたこの地でオブリビオン一人相手に負ける事はない。

「見境の無い『同族殺し』には、相応の歓待をしないとね。」

 くふふと笑い、最も力の集まる城の最奥でユリンは男を待ち受けた。

●グリモアベースにて
「ダークセイヴァーで、オブリビオンがオブリビオンを襲撃する事件が起きます。」
 聖典のグリモアをぱたんと閉じ、険しい表情でアルトリンデ・エーデルシュタインは足を止めた猟兵たちに説明を続けた。襲撃を仕掛けたのは暗き森『オンブラ』、そして迎撃するのは幽獄召霊少女『ユリン』。
「ですので、皆さんにはオンブラと共にユリンを倒し、その後にオンブラを倒してください。」
 オブリビオンなど勝手に争わせ、残った方を叩けばいいのではないか。そう問う者にアルトリンデは首を振る。
「場所が問題なのです。ユリンの居城は人を供物にその躰を城を護るオブリビオンに、そして魂を死霊術士であるユリン自身の強化に使っています。」
 それも長い年月をかけて集め続けている。目に見える城を覆う死など氷山の一角といっても良いほど、溜め込まれた力は強大になっていた。
「このまま放置すればオンブラが負け、城に居座るユリンを倒す機会がなくなります。ですのでまずはオンブラと共にユリンを倒してほしいのです。」

 無論、オンブラを利用したとて攻め込むのは容易ではない。城を護る弄ばれた肉の玩具はいたる所におり、さらに溜め込んだ膨大な数の屍から無尽蔵と言えるくらいに湧き出てくる。オンブラの攻撃力を利用しなければユリンまで辿り着く事すら不可能だろう。
「オンブラをうまく利用して突破してください。オンブラはユリンの居場所まで迷わず進むようですので、彼の邪魔をせず、はぐれたりしなければ迷う事も無いはずです。」
 オンブラは猟兵よりもユリンを倒す事を優先する為、道中は邪魔をしなければ敵対する事はない。

「ユリンとの戦闘の際も、オンブラと共に戦ってください。ユリンの死霊術もオンブラなら抑え込めるはずですので、それを利用しユリンを倒す事になります。」
 ユリンの操る悪量も集積した死で力を増加している為、オンブラと共に当たらねば倒す事は難しい。オンブラの力を合わせて初めて勝つ道筋が見えるか、という所だろう。

「ユリンを倒した後、そのままオンブラとの戦いになります。連戦になりますが、オンブラも消耗しているはずです。」
 オンブラはユリンを倒せば猟兵にも向かってくる。それにオブリビオンを放置する訳にもいくまい。
「ユリンを倒した時点で結界である城は消え、弄ばれた肉の玩具もすべて活動を停止します。邪魔は入りませんので、オンブラとの戦いに注力してください。」
 オンブラには会話ができる程度に理性が残っているが、言葉をかけても返すとは限らない。なぜ、彼が同族殺しとなったかを探るのも良いだろうが、オンブラを止めるのも忘れてはならないだろう。

「厳しい戦いが続く事になりますが、どうか、よろしくお願いします。」
 そう言葉を括り、アルトリンデは猟兵たちを送り出すのだった。

●始の回顧
 呻き蠢く肉塊が、遠い情景を呼び起こす。あの日の黒き森も同じでなかったか。助けを求める同胞を無残に殺したヴァンパイア、それが当然として有る世界。だから彼は信じたのだ、あの日聞いた神の言葉を。だからこそ、この世界に在る全てを殺し、一族の手向けにするのだと。
 ふと、懐かしき姿が見えた気がした。そんなモノ、この地獄には似付かわしくないというのに。


こげとら
 お久しぶりです、こげとらです。
 今回は『同族殺し』のオブリビオンと共闘してオブリビオンを倒し、その後『同族殺し』を倒すというシナリオになります。

 第1章の集団戦、第2章のボス戦、どちらも同族殺しと共闘しなければ突破できません。オンブラと敵対するのは第3章までお待ちください。
 戦場となる城は中世ヨーロッパの城をイメージしてもらえれば。中はそれ程複雑ではなく、通路もすべて大きくて広いです。ただ、外壁も含めて弄ばれた肉の玩具が大量に張り付いているので窓から侵入とか城を破壊して倒壊させるなどは難しいでしょう。また、城はユリンの結界であるため、彼女がいる限り修復されます。

 第1章の集団戦では弄ばれた肉の玩具が大量に湧いています。床のみならず、室内では壁や天井なども覆う勢いで出てきます。オンブラは手にした剣と召喚した炎の精霊でなぎ払いながら進んでいますが、猟兵が協力すれば進むスピードも上がります。城の最奥に居るユリンまで辿り着けば次章になります。

 第2章はユリンとの戦闘です。場所は大広間で、この内部には弄ばれた肉の玩具は入ってきません。猟兵とオンブラVSユリンの構図になります。

 第3章はオンブラとの戦闘です。ユリンを倒すと城は消滅し、辺りには元弄ばれた肉の玩具だった屍が積もる荒野となります。足場は問題ありません。

 全章通してオンブラとの会話は可能ですが、オンブラが必ず会話するとは限りません。また、オンブラ自身は戦闘を優先する傾向にあります。

 それでは皆さんのご参加をお待ちしております!
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第1章 集団戦 『弄ばれた肉の玩具』

POW   :    食らい付き融合する
自身の身体部位ひとつを【絶叫を発する被害者】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    植えつけられた無数の生存本能
【破損した肉体に向かって】【蟲が這うように肉片が集まり】【高速再生しつつ、その部分に耐性】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    その身体は既に人では無い
自身の肉体を【しならせ、鞭のような身体】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
👑11
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鈴木・志乃
同族殺し……一体誰が煽動してる?
今まで話に出てきても見たことはなかった邪神とか……いや、まさかね

UC発動
念動力でトランプストームを起こしながら衝撃波と共に切り裂き、なぎ払って行くよ
第六感で敵の行動を見切り、読んで合わせようかな
あまりにも敵の防御が固い場面があれば、全力魔法でぶっ飛ばす

オーラ防御常時発動
咄嗟の防御には光の鎖で早業武器受けカウンター
そのままロープワークで必要に応じて縛り上げる

これ以上私の故郷を侵す気なら容赦はしない

ユリンを倒すなら手伝おうか?
あいにく私もそいつを倒したくてね
良ければ攻撃、合わせさせてくんない?
……とだけ、オンブラには言うだけ言ってみるか


六代目・松座衛門
「この屍全部が、死霊術士の支配下となるのは流石に不味いな。」
結界内の屍の多さに圧倒されつつ、『オンブラ』の後を追うように城の中を進む。

「…(自分たち猟兵も相手にする余裕はないだろう?)」
戦闘中、『オンブラ』を襲う『弄ばれた肉の玩具』に対し、注意を引きつけるオトリ役になるが、『オンブラ』とのコミュニケーションは一切取らない。

「侵入者はあいつだけじゃないぞ!」
UC「黒雨」により発生する糸の足場をワイヤーカッターとして利用し、体(?)をしならせ攻撃してくる敵を切断し、さらに人形「暁闇」による追撃で細切れにする!

間違っても『オンブラ』の行動の邪魔にならないように注意しよう。
アドリブ、連携歓迎。


クゥーカ・ヴィーシニャ
WIZで判定

同族殺しねぇ。一体、どんな心情の変化なのか知らないが、利用できるのなら利用するまでだ。
敵と遭遇する前に、【絡繰り人形らの舞踏会】を使用。相手が数で来るのなら、こちらも数で勝負だ。召喚した絡繰り人形は周りに配置してついてこさせる。オンブラの後ろをついていきながら、こっちを襲ってくる敵を絡繰り人形で迎撃する。前に進むための道を開くのはオンブラにぶん投げる。こっちは後ろや上から襲ってくる敵の対処をしよう。
天井の敵には【姉様】や、力技になるが召喚した絡繰り人形をぶん投げて相手させよう。
しかし、相手の数も多いだろう。多少の傷は覚悟する。【生命力吸収】もあるから多少は大丈夫だろう。



 両断された城門を押し広げるように多数の剣が放たれる。暗き森『オンブラ』は破壊した城門から足を踏み入れていった。その様子を目にした鈴木・志乃の脳裏に疑問が過ぎる。

「同族殺し……一体誰が煽動してる?」

 オブリビオンがオブリビオンを襲う同族殺しはここ最近から予知されるようになった事件だ。これまでは表面化しなかっただけか、あるいは何か裏があるのか。

「今まで話に出てきても見たことはなかった邪神とか……いや、まさかね。」

 答えの出ない思考から目の前の城へと意識を切り替える。城に居るオブリビオンを倒すにも、同族殺しの裏に探りを入れるにもオンブラとの共闘は悪くない。志乃はオンブラを追い、城の中へと駆け出した。
 オンブラによって破壊された城門。見た限り、加減なく押し入ったオンブラの行動は城主に友好的な物とは思えない。

「同族殺しねぇ。」

 呟き、クゥーカ・ヴィーシニャはその光景を前に【絡繰り人形らの舞踏会(マリオネットハオドリクルウ)】により多数の絡繰り人形を呼び出した。

「一体、どんな心情の変化なのか知らないが、利用できるのなら利用するまでだ。」

 オンブラの行動により、今まで倒せなかったオブリビオンに手が届くのは確か。ならば詮索よりもまずは、その力を利用しこの結界の城主を倒すのが先だ。クゥーカはオンブラの拓いた後を、踊り狂う絡繰り人形と共に押し広げながら追っていく。
 時を同じくして六代目・松座衛門もまた、城の中へと踏み込んでいた。

「この屍全部が、死霊術士の支配下となるのは流石に不味いな。」

 埋め尽くすように折り重なる屍が蠢き、融け合いながら弄ばれた肉の玩具と化している。まだ明確に取り込まれてはいない屍もあると考えると、いったいどれだけの数があるのか。このまま放置する訳にはいくまい。結界の中、重なる屍の量に圧倒されながらも松座衛門はオンブラを追った。

 踏み入った幽臨城は屍霊集積結界の名の通り、避ける場も無く屍が、それを元にした弄ばれた肉の玩具が溢れていた。オンブラの召喚した炎の精霊が竜となって焼き払った亡骸を踏み越え、進む。だがオンブラの力をもってしても再生し続ける肉を切り進むのは骨が折れるようだ。加えて回りを囲み、さらには壁を這い、天井からも伸びる肉の玩具の触腕への対処もあるとなれば獲り込まれずに進めているだけでも相当な力量と言えよう。しかしそれでも足止めと消耗を強いられる状況にオンブラの眉根が寄る。そのオンブラの周囲にトランプが鮮やかに舞い、肉の玩具を割いて止めた。

「ユリンを倒すなら手伝おうか?」

 追いついた志乃は周囲の敵を【魔法のトランプ(マジシャンズカード)】で切断して共闘の意を示す。オブリビオンを狩る猟兵の言葉にオンブラはちらと視線を向けた。

「あいにく私もそいつを倒したくてね。良ければ攻撃、合わせさせてくんない?」

 言うだけ言って志乃は肉の玩具の対処に移る。念動力で衝撃波と共に飛ぶトランプが往く手を塞ぐ肉塊を切り裂いた。その時にはオンブラも志乃から視線を外し、前方へと暗器を放っていた。

(とりあえず、こっちの邪魔はしないようね。)

 お互いの攻撃を潰さないよう、最低限の連携は取れている。食らいついてきた人の頭を模した肉塊をオーラで弾き、トランプで応戦する志乃と共闘するオンブラ。その様子に松座衛門は【鬼猟流 演目其ノ二「黒雨」(キリョウリュウ・エンモクノソイニ・コクウ)】を使い躍り出る。周囲の肉の玩具の注意を引くかのように立ち回る松座衛門。彼の操る戦闘用人形「暁闇」、そして張り巡らされた操作糸が捕まえようと伸ばされた肉の鞭を切り落とした。その様子を探るように視線を飛ばすオンブラに、糸を足場に松座衛門が返す視線が交差する。

「……」
( 自分たち猟兵も相手にする余裕はないだろう?)

 交わす言葉は無くとも、それで十分。元よりコミュニケーションは一切取るつもりはなかった。松座衛門は足場にした糸をも利用して肉の玩具のしなる身体を斬り裂き、縦横に駆ける。オンブラの振う剣に、放つ炎にその動きが止まる事はなく、また邪魔をする事も無い。
 前をオンブラと共に拓く志乃、その周囲を「暁闇」と共に掃う松座衛門。その後方、そして上方から押しつぶさんと数を増す弄ばれし肉の玩具が、現れた多数の絡繰り人形に打ちのめされる。踊り狂うその人形たちと共にクゥーカもオンブラが前に注力できるよう周囲の肉の玩具を相手取った。

「行く先も迷う様子もないし、前に進む為の道を開くのはオンブラにぶん投げるか。」

 結界内を埋め尽くさんばかりに居る肉の玩具を猟兵の力だけで突破するのも骨が折れる。ならばオブリビオンとて利用するまで。170体に及ぶ絡繰り人形を周囲に配し、一行の上と後ろをしっかりとカバーする。一撃で倒される人形とはいえ数が数だ。その上に連携して迎撃するとなればそうそう抜かれる事も無い。周囲を踊り狂う絡繰り人形に、松座衛門も「暁闇」を繰る手に熱が入る。

「侵入者はあいつだけじゃないぞ!」

 急速に伸びて振われる肉の玩具を、足場の糸をワイヤーカッターのように使って切断し、その肉が起き上がる前に「暁闇」が細切れにしていく。その様子にクゥーカも触発されたか、天井から染み出た肉の玩具に向かって絡繰り人形をぶん投げた。その人形が天井から引き剥がし、落下する隙を逃さずにクゥーカの操る人形【姉様】が追撃する。

「しかし、数が多いな。多少の傷は覚悟するか。」

 人形たちを通して吸い取っている生命力もある。クゥーカは負傷が許容できる範囲であると判断し、絡繰り人形たちを操った。
 周囲の肉の玩具の攻撃が二人の猟兵により阻まれ、オンブラの進むスピードは格段に上がった。志乃はオンブラが手間取りそうな肉の玩具の集積に魔法のトランプを放って削る。第六感を用いたその行動はオンブラの一手一手を読んでいるかのように的確だった。その進攻を塞ぐように肉の玩具が折り重なり哄笑をあげて牙を剥く。

「これ以上私の故郷を侵す気なら容赦はしない。」

 明らかに耐久力に重きを置いたその肉の玩具に志乃は全力の魔法を放った。その一撃は肉の玩具を奥へとぶっ飛ばす。飛ばされながらばらけてゆく肉片をオンブラの炎が焼き尽くし、道を作っていった。その道をオンブラと猟兵たちは駆け抜けてゆく。目指すユリンの居る最奥に向けて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

伊能・為虎
アドリブ、連携歓迎だよっ

うわわぁ……すごく肉肉しい……。オンブラさんの進むジャマになんないよーに、沢山いるところをしっかり倒しておこうかな

わんちゃん、よろしく!(《疾駆する狗霊》発動)よーし、やる気十分みたいだね!(血肉にテンション上げめの狗霊)

伸びたお肉は僕もわんちゃんも【ダッシュ】でかわして、細いところを狙うようにしよう!【二回攻撃】で【なぎ払っちゃう】よ!突き破れそうなら【串刺し】もありかも?
壁や天井からの奇襲にも気をつけて、あんまり集まって来る時は、わんちゃんの咆哮や僕の【なぎ払い】で【吹き飛ばす】ようにするね。


フリル・インレアン
ふえぇ、ここがユリンさんのお城ですか、不気味なところです。
そして、前を行くオンブラさんも無口でなんだか怖いです。
それにこの敵さんも不気味です。

ですが、この敵さんのユーベルコードにはこれを使うのがいいのですが、オンブラさん食べてくれませんか?
私のユーベルコード時を盗むお菓子の魔法で時間をゆっくりにすれば肉片が集まって再生する前に倒せます。
どうか、私の作ってきたベリーパイを食べてください。

ふぇ、アヒルさんどうかしたんですか?
ふえぇ、ち、チョイスがわるいですか?
そんなはずは・・・ないと思います。



 『幽臨城』の中は異形の肉塊で埋め尽くされんばかりだった。伊能・為虎の前に広がっていたのは、まるで城が屍肉で出来ているかのような光景。

「うわわぁ……すごく肉肉しい……。」

 その肉の中を文字通りオンブラが切り開きながら進んでいる。掴みかかる肉の手を斬り払い、前を塞ぐ肉の玩具を焼き尽くす。見ている限り危なげなく進む様子に為虎はオンブラの進む邪魔をしないよう、沢山いる所をしっかりと倒しておく事にした。早速【疾駆する狗霊(リードナンテナカッタ)】を使い、妖刀から首だけの狗霊を召喚する。

「わんちゃん、よろしく! よーし、やる気十分みたいだね!」

 見渡すかぎりに広がる肉の玩具、漂う血臭にテンションの上がる狗霊。その様子に狗霊のヤる気を見て取った為虎はオンブラの手が回っていない、それ故に徐々に集まりつつある肉の玩具の集団に斬り込んでいった。

 為虎が肉の集団に向かったその頃、オンブラを追うようにフリル・インレアンも城の中へと足を踏み入れていた。

「ふえぇ、ここがユリンさんのお城ですか、不気味なところです。」

 元々の持つ死霊術師の城の雰囲気に加え、肉の玩具が這い回っている外観も不気味さを増長している。

「そして、前を行くオンブラさんも無口でなんだか怖いです。それにこの敵さんも不気味です。」

 そんな中を進むオンブラは顔色一つ変えず、周囲の警戒もしながら攻め進んでいた。猟兵も警戒はしているのか、フリルにも一度意識を向けたようだが今は肉の玩具へと向いている。もはや原型を留めていないにもかかわらず、ヒトの名残を感じる肉の玩具。一体一体はさほど強くはないようだが、数が数だ。

(この敵さんのユーベルコードにはこれを使うのがいいのですが……)

 問題は、オンブラがそれを受けてくれるかだろうか。感情を殺しているような無表情で何を考えているのか分からないオンブラだが、フリルの用意した手段ならば進行速度を飛躍的に上げれる可能性もある。フリルは意を決してオンブラへと近付いた。

 為虎を狙い肉の鞭が振るわれる。肉の玩具の躰がしなり、まるで鞭のように伸びたのだ。その鞭撃を走り抜けるように躱し。

「そこ!」

 伸びきり細くなった肉を為虎の一閃が切り裂いた。狗霊も牙で喰らいつき、切り離した肉が再び融合するのを防ぐ。

「もう一回!」

 肉の玩具の攻めが緩んだ隙を逃さず為虎が妖刀でなぎ払う。為虎は肉の玩具が集まり始めたらそこを優先的に潰していき、数で押されないよう立ち回っていた。次の標的を定め、狗霊に顔を向け。

「わんちゃん! この調子で次はあっちに……わんちゃん?」

 見れば狗霊は鼻をフンフンさせながらオンブラの方を気にしている。正確にはオンブラの傍にいるフリルが差し出している物を。

「オンブラさん、食べてくれませんか?」

 フリルが差し出したのは彼女が趣味で作ったベリーパイである。ちらりと一瞥したオンブラは慣れ合うつもりはないとばかりに前に視線を戻す。だがフリルはただベリーパイを食べてもらおうと思ったわけではない。周囲の肉の玩具の、そしてオンブラの動きが遅くなってゆく。【時を盗むお菓子の魔法(ブレイクタイム)】はフリルの給仕しているお菓子を楽しまない者に影響を与えていた。そこへベリーパイの匂いを嗅ぎつけて狗霊が駆け付けてくる。

「あああ、わんちゃん勝手に行っちゃダメだってば!」
「あら、わんちゃんもベリーパイが食べたいんですか?」

 もし尻尾があれば振っていそうな気配で狗霊がベリーパイとフリルを見つめていた。その狗霊と追ってきた為虎に、フリルはベリーパイを一つずつあげる。オンブラも効果を目の当たりにすれば食べてくれるかもしれない。再び元の速度に戻った為虎と狗霊が肉の玩具へ向かうのを見送り、フリルは再びオンブラへ向き直った。

「どうか、私の作ってきたベリーパイを食べてください。」

 吐息を一つつき、オンブラはフリルからベリーパイを受け取る。パイを食べるオンブラの瞳は今では無いいつかを見ているようだった。
「……美味いな。」
 一言残し、オンブラは動きの遅い肉の玩具の群れへと向かう。オンブラに食べてもらい、存外悪くない感想を貰ってほっと息をついたフリルに、腕に抱かれていたアヒルさんガジェットが何か言いたげな瞳を向けていた。

「ふぇ、アヒルさんどうかしたんですか?」

 アヒルさんはつぶらな瞳でじっと見つめてくる。フリルには、アヒルさんの言いたい事は伝わっていた。

「ふえぇ、ち、チョイスがわるいですか? そんなはずは……ないと思います。」

 オンブラさんも美味しいって言ってくれたし。きっと、そのチョイスは間違いではなかったはずだ。

 オンブラの足止めをしていた肉の玩具は、フリルの【時を盗むお菓子の魔法】を受けた事により足を止める事すらできなくなっていた。さらに、その周囲を為虎と狗霊が駆け、不意打ちや包囲すら許さない。

「わんちゃん、上だよ!」

 肉の継ぎ目を串刺しにして突き破りながら、為虎が狗霊を天井から襲ってきた肉の玩具へと向ける。狗霊の咆哮が響き、吹き飛ばされる肉の玩具。それに合わせて為虎も周囲の肉の玩具を前方に飛ばす。押し込められるように纏まったその一塊をオンブラの放った炎の精霊が焼き尽くしてゆく。
「着いた、か。」
 炎が収まり、高熱で揺らめく向こう。一際大きな扉があった。

 屍霊集積結界『幽臨城』の最奥、幽獄召霊少女『ユリン』の座す広間への扉である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『幽獄召霊少女『ユリン』』

POW   :    幽獄霊封縛
【物忘れの激しいおじいちゃんの霊】【礼儀作法を厳しく教え込まれたお嬢様の霊】【欲しい物を諦められない駄々っ子の霊】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD   :    幽獄符老師招来
【装備武器の状態を札を介してリンクすること】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【敵の使用技能を自身のLVで使用する老師霊】に変化させ、殺傷力を増す。
WIZ   :    幽獄紫炎華
レベル×1個の【芸術性に反応する紫の炎彩】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
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●死と踊る
「もうなんなの! なんで猟兵がオブリビオンと手を組んでるのよ!?」

 想定ではオンブラ一人ではここにたどり着くまでに消耗しているはずだった。それを悠々と相手取ろうと考えていたユリンは目論見が外れた事に歯噛みする。

「でもいいわ。結界の中である以上、ユリンちゃんの優位は揺るがないから!」

 長きにわたり集積してきた魂が、ユリンの死霊術により融け歪み怨霊として吹き荒れる。だが。

「死者の魂、貴様の好きにはさせん。」

 オンブラが言葉と共に無数の剣を放つ。その剣それぞれが意志を持ったように噴き出た怨霊に斬りかかり、毒を孕んだ炎が竜となり喰らいつく。

「ふふん、怨霊を押さえ込めば何とかなると思ってるの?」

 だが、それでもユリンの余裕は崩れない。怨霊はこの結界に蓄積したリソースから作られている。それ故にユリン自身は怨霊を操りながらも十全に動く事ができるのだ。

「そんな手ぬるいユリンちゃんじゃないよ!!」

 ユリンの放つ紫の炎をオンブラが手にした剣で防ぐ。だが、ユリンへ攻撃をする余裕はないようだ。

 結界から噴き出す怨霊はオンブラにより抑えられている。今なら、猟兵がユリンのみを相手にする事も可能だろう。
月隠・三日月
イコさん(f01479)と合流
お久しぶりだね、イコさん。また肩を並べられて嬉しいよ
イコさんの狗霊はどの霊も食いしん坊なのだね……。腹ごしらえは済んでいるようだし、頼りにしているよ

これが噂の『同族殺し』……オブリビオンは敵だけれど、今は一旦共闘しようか
私は敵の動きを阻害するよう立ち回ろう
暗器に細い鋼糸を結わえて投擲し、敵の周囲に鋼糸を張り巡らせることで敵の動きを妨害したい(【罠使い】)。加えて、護符を用いて【破魔】の力を鋼糸に付与しておこう。これならたとえ霊体であっても罠をすり抜けることはできないだろうからね

敵に隙があれば【制限破壊・怪力無双】を用いつつ、敵に対して全力で暗器を投擲して攻撃しよう


伊能・為虎
三日月お兄さん(f01960)と合流するよーっ
わーい久しぶり!(耳ぱたぱた)(また一緒に戦えるのがやたら嬉しい)
あ、このわんちゃんも前に見せたのと同じような子だから、大丈夫!さっきオヤツも貰っていたし!

紫の炎や幽霊さんたちを警戒しつつ、攻撃はユリンちゃんに集中できるようにしたいね
【ダッシュ】【ジャンプ】で躱したり、【なぎ払い】やわんちゃんの咆哮で【吹き飛ばし】て吹き消していくよ!
三日月さんともしっかり連携!
動きを阻害してもらっている間に、【鎧無視攻撃】をガンガン当てるよ!
わんちゃんは、僕や三日月さんが気づけなかった攻撃に【衝撃波】の咆哮で迎撃したり、協力おねがいね!後でビスケットあげるからね!



 『幽臨城』最奥部。ただただ広いその部屋は今、幽獄召霊少女『ユリン』の呼び出した怨霊が猛り狂っていた。ユリンとオンブラが戦っているその広間の前で、伊能・為虎は知己と合流を果たしていた。

「わーい久しぶり!」
「お久しぶりだね、イコさん。また肩を並べられて嬉しいよ。」

 嬉しそうに獣耳をパタパタさせている為虎に、月隠・三日月は笑みを返す。これから挑むは『同族殺し』を利用せねば倒せぬ相手。その戦闘に三日月と共に臨めるなら僥倖だと為虎の傍らの狗霊も言わんばかりだ。もし尻尾があれば振っていたかもしれないが、【疾駆する狗霊(リードナンテナカッタ)】で召喚された狗霊は首だけである。

「あ、このわんちゃんも前に見せたのと同じような子だから、大丈夫! さっきオヤツも貰っていたし!」

 為虎の言葉に三日月も頷く。確かに、このはしゃぎようは以前見た狗霊を思い出させる。

「イコさんの狗霊はどの霊も食いしん坊なのだね……。腹ごしらえは済んでいるようだし、頼りにしているよ。」

 食事で意気が上がっているならそれに越した事はない。一つ頷き三日月は広間でユリンと戦闘を続けているオンブラに視線を移した。

「これが噂の『同族殺し』……オブリビオンは敵だけれど、今は一旦共闘しようか。」

 オンブラも強いオブリビオンと感じるが、ユリンの振っている力はそれ以上だ。確かに、この機を逃せばユリンを倒す事は難しくなるだろう。三日月は為虎と視線を交わし、ユリンへ暗器を投げた。ユリンはオンブラへの追撃を止め、身体を捻って躱しながら三日月を睨みつける。
「痛い目あいたくないなら、おとなしくしてなさいよね!」
 苛立ちを攻撃に乗せて叩きつけようとしたユリンへ、妖刀を構えて為虎が駆ける。その勢いに舌打ち一つ、ユリンは標的を為虎へ変えて札を放つ。札はたちまち老師の霊となり……そして何かに切断された。
「なに!? ……え、鋼糸!?」
 ユリンが驚きに目を見開く。その周囲には鋼の糸が張られていた。三日月の手元から、先ほど投擲された暗器を結ぶように。そして三日月の手には護符。

「これならたとえ霊体であっても罠をすり抜けることはできないだろうからね。」

 鋼糸を結んだ暗器を投じて張り巡らし、護符の破魔の力を鋼糸に宿す。それにより死霊術師であるユリンの行動を阻害したのだ。そしてそちらに気をとられている隙に為虎も距離を詰めてきている。
「もう!」
 思い通りにならない、と悪態をつくユリンは手の一振りで数十に及ぶ数の紫炎を放った。だが為虎は迷わず前へ駆ける。

「三日月お兄さん! わんちゃん!」
「ああ!」

 三日月の投擲する暗器が穿つ間隙を為虎が軽やかに駆ける。逃げ場を無くすように軌道を変えて迫る炎を為虎は妖刀でなぎ払い、狗霊も主の道を作るように邪魔する炎を咆哮で吹き飛ばした。なぎ払った妖刀を返し、一歩踏み込み。

「捉えた!」

 為虎は防御ごと断つ勢いで妖刀を振う。ユリンが咄嗟に放った札は霊ごと断たれ、ユリンの身体を刃が裂いた。そのまま距離を離さず為虎は次々と攻めを続ける。
「こ、の……!」
 そしてそれをユリンが躱そうと、あるいは反撃しようとするたびに三日月から暗器が飛び、あるいは動き先に張られた鋼糸が邪魔をする。為虎の妖刀と三日月の暗器、張られた鋼糸に意識が向いたその時。ユリンの死角から咆哮が叩きつけられた。

「ありがとう、わんちゃん! 後でビスケットあげるからね!」

 為虎の声に、咆哮を叩きつけた狗霊が吠えて答える。そして。

「羅刹紋起動。制限解除――全力だ。」

 ユリンの体勢が崩れた機を逃さず、三日月は【制限破壊・怪力無双(クラック・ブレイク・バーサーク)】で力を増幅した。その怪力を乗せて飛んだ暗器がユリンの胸を穿ち、合わせて振われた妖刀が一文字に切り裂く。
「くぅぅ……っ、これくらいで!!」
 強引に後ろに飛んで距離を取ったユリンの言葉とは裏腹に、刻まれた傷は浅くない。ユリンの心を現すように、広間に怨霊の怨嗟が渦巻いた。だがオンブラを止める為にも怨霊を猟兵へ向ける訳にはいかない。ユリンは戦いの流れが自分から離れつつあるのを感じていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

六代目・松座衛門
「こちらの狙い通りにことが進んでいるな。」
『オンブラ』と『ユリン』の戦闘を眺めつつ、路銀稼ぎに使用する人形を広間に放つ。

「煌びやかな人形達の踊りをご覧あれ!「即席人形劇」!」
UC「即席人形劇」を使い、『ユリン』の周りで人形達を踊らせることで、「幽獄紫炎華」の炎彩が、踊り狂う人形に誘導されると信じ、戦闘用人形「暁闇」を二人のオブリビオンのもとへ突進させる!

「畳み掛けるぞ! オンブラ!」
『ユリン』を挟み撃ちにするようにUC「疾風」を発動! 『オンブラ』と怒涛の連続攻撃を喰らわせる!

アドリブ、連携歓迎。


フリル・インレアン
ふぇ、オンブラさん、これを食べてください。
って、オンブラさんは怨霊さんの相手が忙しくて食べている余裕がなさそうです。
ふええぇ、ユリンさんに取られてしまいました。
やっぱり、さっきのも見られていたんですね。
どうしましょう、せっかく【料理】して作って、なんだかここら辺も汚かったので【掃除】までして給仕したのに、これではユリンさんまで強くなってしまいます。
ふえ、アヒルさん、どうしたんですか?
さっきユリンさんに取られたのは“ガーリック”トーストだからお菓子じゃないですか?
それにお部屋がピカピカになっています。
これは老師霊さんが私の技能を使用できるではなくて使用してしまったからなんですね。


クゥーカ・ヴィーシニャ
アドリブ、連携大歓迎
WIZで判定

死者の魂を弄ぶ、死霊術師みたいなものか?まあどっちにしろ、オンブラの言う通り、死者の魂を好きにはさせない。いい気分はしないし、ここで倒れてもらおう
【親愛なる姉妹の輝き】を使用。浄化の光をもって怨霊を消し去り、相手を足止めする。
動きを封じた後に、【姉様】と【チュード】を使い相手を攻める。一切の手加減は無しだ。【生命力吸収】と【呪詛】で確実に削っていく。



 ユリンが戦況を仕切り直そうと怨霊を呼び戻すも、怨霊はオンブラによって阻まれていた。『幽臨城』のアドバンテージを十全に活用できないユリンが歯噛みする。六代目・松座衛門はオンブラとユリンの戦闘を眺め、状況に問題ない事を見て取った。

「こちらの狙い通りにことが進んでいるな。」

 そして仕掛ける為、複数の人形を広間に放つ。一斉に放たれた人形たちはお銀を稼ぐのに使われている物。だが即席のガラクタ人形を数多く使う方が、これからやろうとしている事には向いている。広間に現れた松座衛門を警戒するユリン、そしてこの機を活かそうとするオンブラ。死霊術により結界に集積された魂が怨霊に注がれ、炎と剣が迎えうつ。広間に入ったクゥーカ・ヴィーシニャの目に映ったのはそんな光景だった。

「死者の魂を弄ぶ、死霊術師みたいなものか?」

 ユリンは霊を呼び出し戦闘態勢を取りながら城から魂を汲みだして怨霊へ組み込んでいる。その様子に眉をひそめ、クゥーカは自分が姉様と呼ぶ人形を抱き寄せた。

「まあどっちにしろ、オンブラの言う通り、死者の魂を好きにはさせない。いい気分はしないし、ここで倒れてもらおう。」

 姉様に口付けをし、クゥーカは怨霊へと向かう。
 同じく広間へと着いたフリル・インレアンは怨霊を相手取っているオンブラに先ほどと同じように作ってきた料理を差し出そうとしていた。

「ふぇ、オンブラさん、これを食べてください。
 って、オンブラさんは怨霊さんの相手が忙しくて食べている余裕がなさそうです。」

 だが力を増してゆく怨霊と戦っているオンブラにはその余裕は無く、フリルも過熱してゆく戦闘の中まで近づけずにいた。ユリンもフリルのお菓子を食べた一行がとんでもない速度で城を踏破してきたのを見ていた為、料理を渡す隙を与えないよう怨霊をけしかけている。あわよくばかすめ取ろうと狙っていたユリンの周囲を松座衛門の操る人形が囲む。
「いくらいても元を叩けば一網打尽でしょ!」
 ユリンは人形を操る松座衛門を叩こうと【幽獄紫炎華】を放った。それに先んじて松座衛門は高らかに声を張る。

「煌びやかな人形達の踊りをご覧あれ! 『即席人形劇』!」

 【鬼猟流 裏芸「即席人形劇」(キリョウリュウ・ウラゲイ・ソクセキニンギョウゲキ)】で操られる即席の人形たちが踊りまわる。それは路銀を稼ぐ為に使われる、いわば芸の内の一つである。だが、ユリンの放った紫炎はその芸に惹かれるように軌道を変える。
「……っ! 芸で魅せるのはお手の物ってコトかしら!?」
 慌てて紫炎を操るユリンに、踊り狂う即席の人形たちに紛れて戦闘用人形『暁闇』が走る。反応のおくれたユリンを、舞うように回る『暁闇』の手が浅く切り裂いた。

(オンブラは……怨霊の相手で手いっぱい、か。)

 ユリンの放つ紫炎は人形を追い松座衛門まで届かない。だが松座衛門一人ではユリンを押さえ込む事は難しい。手を見切ったと判断したユリンが人形へ惹かれる炎を撒いて炎幕と成し、一足飛びに跳ねる。その先には。

「ふええぇ、ユリンさんに取られてしまいました。」

 オンブラへ料理を渡そうとしていたフリル。その手にあった料理……香ばしい香りのトーストはユリンの手に渡っていた。
「ふっふーん! これでオンブラもあんた達も敵じゃないわね!」
 満面の笑みでユリンは手にしたトーストを口へ運ぶ。

「やっぱり、さっきのも見られていたんですね。」

 やはり、同じ手は使うべきではなかったのだろうか。様々な思いがフリルの中をぐるぐる回る。

「どうしましょう、せっかく料理して作って、なんだかここら辺も汚かったので掃除までして給仕したのに、これではユリンさんまで強くなってしまいます。」

 だが、そんなフリルに訴えかける瞳があった。アヒルちゃん型ガジェットのアヒルさんである。

「ふえ、アヒルさん、どうしたんですか?
 さっきユリンさんに取られたのは“ガーリック”トーストだからお菓子じゃないですか?」
「な……っ!?」

 フリルから聞こえた衝撃の事実にユリンから漏れる驚愕。
「なんか辛いなーって思ったけど、頑張って食べたのに……」
 現実はお菓子のように甘くはなく、ガーリックトーストのように辛かった。そしてユリンの動きが止まったその瞬間。広間を強烈な光が照らす。

「見せてやろうぜ。俺と姉様の親愛を。」

 姉様に口付けをしたクゥーカを強烈な輝きが包んだ。【親愛なる姉妹の輝き(オレトネエサマノキズナ)】が放つ極光は強力な闇払いの力、聖なる輝きで以て怨霊を浄化してゆく。我に返ったユリンが怨霊を繋ぎ止めようと魂を汲みだすも出した端から消えていった。
「なんなのこれー!?」
 この輝きがある限り怨霊は動けない。そして輝きに呑まれたユリンもまた、動きを止められていた。クゥーカがレイピア『チュード』と姉様に命を吸いとる呪詛を乗せユリンに突きかかる。
「な、めないでよ……ね! 幽獄符老師招来!」
 ユリンの傍らに浮かんでいた人形に貼られていた札が燃え落ちる。そして人形は老師の霊となって立ち上がる。その霊は熟達した動き、目で捉えるのも難しい速度で広間を走り……その後にはピカピカになった床が広がっていた。

「老師霊さんが私の技能を使用してしまったからなんですね。」
「なんでー!?」

 フリルの言葉にユリンの叫びが重なる。ガーリックトーストの一件で意識がフリルに向いたままだったからか、老師の霊は広間を掃除して満足げである。防ぐ一手を止められたユリンに、遮る物の無くなったクゥーカが攻める。そして、この機を逃さず松座衛門もユリンへ『暁闇』を向かわせ、オンブラへと呼びかけた。

「一切の手加減は無しだ。」
「畳み掛けるぞ!! オンブラ!」
「ああ、合わせる……!」

 オンブラもここでユリンを倒す気のようだ。広間に放たれた数多の剣がユリンへと突き立つ。縫い付けられたように動きを止められたユリンにクゥーカの剣閃が続けざまに穿ち、クゥーカの『姉様』と松座衛門の『暁闇』が打ち付ける。

「その身に刻め! 演目『疾風』!」

 怒涛の連携、連続の攻撃を防ぐ手立ての無いユリンの身体が崩れてゆく。
「そんな……こんな事って……」
 呟きを残し、ユリンは骸の海へと還される。そして主の消滅と共に屍霊集積結界『幽臨城』もまた崩れて消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『暗き森『オンブラ』』

POW   :    幽歩
レベル分の1秒で【姿と気配】を消し、更に【毒が塗られた暗器】を発射できる。
SPD   :    堕霊術
【召喚した炎の精霊】が【毒の炎を纏った竜】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    夢幻
【剣】を【レベル×1本複製すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【生命力吸収】を付与した【複製した剣】で攻撃する。
👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

●シ出の道行
 ユリンの結界『幽臨城』は消え去った。後に残るのはこの地で死した夥しい数の屍。

「これでまた一つ、世界は捧げられた。」

 ユリンを倒し、オンブラは感情無く言葉を零す。その目は眼前の猟兵へと向けられている。

「無き同胞への手向けとして……貴様らの命も捧げよう。」

 この世界は絶望に満ちている。
 無辜の民を虐げる悪を捧げるのと。
 今になって現れた猟兵を捧げるのは。
 既に無い過去へ手向けるならば何の違いがあろうか。
鈴木・志乃
私さ、この世界の出身なんだけど親友殺されてるんだよね
顔も分からんどっかの領主に

だからって憎んで領主殺したりはしないけど
……優しいやつでね
多分私が復讐に走ったって知ったら、凄い形相で怒ると思う

さっきから見てたけど優しいよね、オンブラさん
……悲しいな、どうして貴方に攻撃なんてしなきゃならなんだか
貴方攻撃したなんて知れたら親友に殴られそうだ

よし、親友の歌でも歌おう
UC発動
祈り、破魔籠めた歌唱の衝撃波で攻撃意志をなぎ払う
全力魔法で増幅するのは彼に宿る同朋の残留思念
……逆効果になる可能性もあるけどね

周囲に念動力籠めたオーラ防御展開
暗器の軌道を反らす
第六感で挙動を見切り動き続けて逃げ足回避



 オンブラが、猟兵たちに向ける表情には何の感情も浮かんでいない。憎悪なく、敵意なく、ただ為すべき事を為すために。その前に鈴木・志乃が一人、歩み出た。

「私さ、この世界の出身なんだけど親友殺されてるんだよね。
 顔も分からんどっかの領主に。」

 オンブラに言いたい事がある。それは戦いの最中でなく、今、伝えたい事。オンブラは戦闘の構えを解く事は無く、しかし志乃の言葉を止める事も無かった。

「だからって憎んで領主殺したりはしないけど。
 ……優しいやつでね。
 多分私が復讐に走ったって知ったら、凄い形相で怒ると思う。」

 オンブラの手が握る柄が力を籠められて、軋む。志乃はこちらを見ているオンブラの視線が、どこか遠くを透かし見ているように感じた。

「さっきから見てたけど優しいよね、オンブラさん。
 ……悲しいな、どうして貴方に攻撃なんてしなきゃならなんだか。
 貴方攻撃したなんて知れたら親友に殴られそうだ。」

 志乃の言葉に僅かな間、瞼を閉じたオンブラは静かに息を吐く。
「弔いは、誰かがしなくてはならない。」
 構えた剣を下ろす事はなく、身体も自然体へと戻っている。言葉だけではオンブラを止めるまでには至らない。それでも志乃はオンブラに思い起こさせたい事があった。

「よし、親友の歌でも歌おう。」

 オンブラが動くのと、志乃が歌い始めるのはどちらが先だったろうか。【女神の歌(シノの歌)】は光と共に旋律を広げる。魔を祓い、祈りを籠めた歌声がオンブラの中に沈んでいたモノを揺り起こす。

 夢の中で空を歩く
 真下に広がる命数えて

 死角から放たれる暗器を志乃が周囲に張っていたオーラが阻む。念動力によって強化されたオーラは撃ち込まれた暗器の軌道を僅かに逸らした。狙いの逸れた暗器を躱し、一所に留まらないよう動きながら志乃は歌い続ける。

 今日を明日をひたすら生きてる
 その顔に微笑み浮かばせたい

 志乃が全力を籠めて歌うその歌は、オンブラの裡に宿る同胞の思念を増幅していた。すでに忘却の縁に在ってなお、その思念はオンブラにとって得難き感傷。時折弱まるアンブラの攻勢、志乃の歌は確かにオンブラへと届いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月隠・三日月
引き続きイコさん(f01479)と協力

『同族殺し』と言っても所詮はオブリビオンなのかな

【降魔化身法】で幽鬼等の力を妖刀に宿して強化、敵に斬りかかろう
UCの代償はあるけれど、多少の苦痛には耐えてみせよう。イコさんの手前、格好悪い真似もしたくない
敵の堕霊術は、なるべくゆっくり動くことで対処。【毒耐性】があるから多少は耐えられるけれど、攻撃を喰らわないのが一番だからね

様子を見て、オンブラに声をかけてみよう
「信念を以て同族たるオブリビオンを殺しているのかと思ったけれど、私たちを狙ってくる辺り案外そうでもないのかな。『無き同胞』とやらに捧げる命は何でもいいのかい?」
とかね。敵の動きを止められれば僥倖だよ


伊能・為虎
三日月お兄さん(f01960)と引き続き協力していくよ!

オンブラさん、すっごく助かったんだけれどー(むむむ)
そのまんまで終わらないものなんだねぇ。むずかしいや

沢山出てくる剣は、こっちがケガするぶん向こうも元気になっちゃうし、出来るだけくらわないようにしたいな
【ジャンプ】や【ダッシュ】で跳び退いたり、
自分に触れる前に妖刀を速く振って(【二回攻撃】)、切り払いな感じで剣圧(【衝撃波】)で【吹き飛ばす】よ
わんちゃんには咆哮の【衝撃波】を使って、攻撃の対処お願いね

いくら捧げても終わりがないし、返ってくるものもない。そういうの、理解の上ってやつ?
お返事が返ってくるかはあまり考えずに聞いてみるよ



 攻撃を続けるオンブラの様子に月隠・三日月はつと言葉を零す。

「『同族殺し』と言っても所詮はオブリビオンなのかな。」

 世界に利する行為をオブリビオンはするのか。それともそのように見えるだけなのか。三日月の言葉に伊能・為虎はむむむ……と唸る。

「オンブラさん、すっごく助かったんだけれどー。
 そのまんまで終わらないものなんだねぇ。むずかしいや。」

 為虎の傍には引き続き【疾駆する狗霊(リードナンテナカッタ)】で付き従う狗霊が控えている。オンブラに戦う意思がある以上、叩くならば消耗している今をおいて外にない。三日月は【降魔化身法】で妖怪・悪鬼・幽鬼の力を妖刀に宿す。

「この程度の痛み……っ!」

 三日月の袖口から一筋の血が流れる。その身を蝕む代償、しかし三日月は傍らの為虎に気取られないよう平静を装った。

(イコさんの手前、格好悪い真似もしたくない。)

 オンブラが召喚した炎の精霊が毒炎を纏う竜と化すのを目に、三日月は間合いを測る。そこへ先んじて為虎と狗霊が共に仕掛けた。オンブラは三日月へ炎の竜を向かわせ、為虎たちへ剣の切先を向ける。瞬きの間に複製された数多の剣が一斉に放たれた。

「その剣は、こっちがケガするぶん向こうも元気になっちゃうし。」

 為虎はオンブラの複製する剣を投擲する【夢幻】が生命力を吸収する事を肉の玩具との戦いで目の当たりにしている。

「そう簡単には、くらわないよ!」

 言って妖刀で飛来する剣を叩き落し、出来た間隙を縫って走り抜ける。それでも為虎を追う剣に、狗霊の咆哮が衝撃波となって襲い掛かる。身を翻した為虎が残る剣を妖刀を振り抜いた剣圧で吹き飛ばした。

(イコさんの方は大丈夫そうだな。)

 襲い掛かってきた炎の竜を切り裂き、三日月はオンブラへ向き直る。高速で動く物を狙う炎の竜に、三日月はゆっくりと動く事で対処していた。無論、それだけで無力化はできないが相手も窺うような素振りになっており、攻撃は読みやすい。毒に耐性のある三日月であるが、攻撃を受けないにこした事はない。

(それにしてもオンブラの動きが鈍いな。)

 連戦による消耗を考慮しても今のオンブラの動きは精彩を欠いているように感じる。先ほどの歌の時といい、何かオンブラの裡にあるのならば。炎の竜も捌くのには慣れてきた。オンブラに言葉をかけるならば今か。

「信念を以て同族たるオブリビオンを殺しているのかと思ったけれど。」

 三日月の言葉にオンブラが視線を向ける。

「私たちを狙ってくる辺り案外そうでもないのかな。『無き同胞』とやらに捧げる命は何でもいいのかい?」

 その言葉にオンブラは炎を操り、返した。
「この『世界』を捧げる。同胞なき世界を、全てだ。」
 そこに憎悪も狂気も無い。オンブラに向け、為虎も言葉を重ねた。

「いくら捧げても終わりがないし、返ってくるものもない。そういうの、理解の上ってやつ?」

 為虎はオンブラの注意を引くように言葉をかけながら剣を切り払う。三日月は炎の竜の動きに慣れてきている。その様子を横目に捉え、為虎は狗霊の咆哮と共に検圧で飛び来る剣を吹き飛ばした。
「無論……」
 弔いに求める物などない。そう返そうとしたオンブラの裡に僅かな疑問。今まで沈んでいた想いが小さな棘となって痛む。その様子に三日月は炎の竜を斬り捨ててオンブラへと吶喊した。

「イコさん!」
「うん!」

 オンブラは為虎へと注意を向けていた為、一拍、反応が遅れた。その瞬刻に三日月は【降魔化身法】で強化された妖刀の刃を突き立てる。振り払おうとしたオンブラの腕を為虎が裂いて阻み、狗霊がオンブラの脚を噛む。三日月が妖刀を振り抜くのとオンブラが剣を放って振り解いたのはほぼ同時だった。
「すべては、同胞の弔いの為……」
 それに偽りは無い。裂かれた傷の痛みより、胸の内の棘が気に障る。浅くない傷を負ってなお、オンブラはその痛みを拭うように剣を構え直した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

六代目・松座衛門
「共闘もここまでだな。貴様も『同胞』と同じ所…、骸の海へ還ってもらう!」
全武器装備を人形「暁闇」に組付けた状態【真の姿】で、『オンブラ』と対峙する。基本、自分は後方から人形操作と自分への攻撃に対する回避に専念する。

『オンブラ』の堕霊術によって召喚された炎の竜からの攻撃は、人形に内蔵した大型銃「玲瓏」で【吹き飛ばす】。さらに接近したら、先端を輪にして【破魔】の力を纏った糸を、輪投げの要領で竜の首へ掛け、UC「手繰り討ち」を発動!

「覚悟! 『オンブラ』!」
UC「手繰り討ち」による高速移動の勢いのまま、さらにUC「疾風」を発動。竜の炎で燃える人形の連続攻撃を喰らわせる!

アドリブ、連携歓迎


クゥーカ・ヴィーシニャ
WIZで判定
アドリブ、連携大歓迎

散々利用して、用無しになったから捨てたみたいで悪いが、オブリビオンを倒すのが俺たちの仕事だからな。遠慮なくいかせてもらう。
使用するUCは【絡繰り人形らの舞踏会】。タイマンは苦手だからな。数で押す。これだけ数がいれば、相手の攻撃にも対応できるだろう。絶え間なく人形たちに攻撃させ、反撃の隙を与えない。
【生命力吸収】もあるから長期戦もある程度なら対応できる。相手の攻撃にもな。お互い吸い合って、どちらが先に倒れるか、勝負と行こうじゃないか。

じゃあな、オンブラ。安らかに同胞と眠れ。


フリル・インレアン
オンブラさん、私が勝手に思い込んでいるだけかもしれませんが、仲良くなれたのに残念です。
私は飴玉を取り出して口に含みます。
やっぱり、オンブラさんも私のユーベルコードは知っているから対策済みなんですね。
ですが、私が使えるユーベルコードはお菓子の魔法だけではありません。
ガジェットショータイムでシャボン玉を作るガジェットを呼び出します。
シャボン玉は洗剤で毒を浄化し水の属性攻撃になります。
ふわふわ浮かぶシャボン玉は認識しづらいのではありませんか?

シャボン玉に気を取られたオンブラさんに近づき、飴玉の入った袋を手渡します。
えっと、数は足りないかもしれませんが亡くなられた方々にお供えしてあげてください。



 オンブラはその動きにも翳りが見えていた。だが未だ倒れず剣を構えるオンブラの前にクゥーカ・ヴィーシニャが立つ。

「散々利用して、用無しになったから捨てたみたいで悪いが。」

 クゥーカは淀みなく告げる。彼女が此処に立つ意義を。

「オブリビオンを倒すのが俺たちの仕事だからな。遠慮なくいかせてもらう。」

 或いはそれはオンブラとて同じかもしれない。お互い、先に倒さねばならない者が居ただけだ。それは同じくオンブラの前に立った六代目・松座衛門も同じ事。

「共闘もここまでだな。貴様も『同胞』と同じ所……、骸の海へ還ってもらう!」

 松座衛門の操る戦闘用人形「暁闇」に繋いだ物を念力で動かす糸「領」が伸びる。糸が手繰るは伸縮機能付き多節棍「双爪丸」、口径漸減式大型銃「玲瓏」、特殊矢射出用連弩「狂惑」。腕に躰に武具着けた暁闇を後ろで操るは、松座衛門の依代たる操作板「志操」。是が六代目・松座衛門の真の姿也。
「これが、猟兵の力か。」
 その姿にオンブラは視線を細める。二人の猟兵と対峙するオンブラに、フリル・インレアンは目を伏せた。

「オンブラさん、私が勝手に思い込んでいるだけかもしれませんが、仲良くなれたのに残念です。」

 フリルのお菓子を食べてくれた事、それを美味しいと言ってくれた事。僅かな間だったが確かに通じたモノはあったように思う。思い返しながら飴玉を一つ、口に含んだ。そのフリルの行動を目に、オンブラの傍らに炎の精霊が立ち上がる。もし、フリルが誰かに飴玉を渡そうとしていれば即座に炎の竜と化し襲い掛かって来ただろう。

「やっぱり、オンブラさんも私のユーベルコードは知っているから対策済みなんですね。」

 フリルが使ってきたユーベルコードは味方であれば心強いが、敵に回したくはない。知っているなら尚の事。それ故にオンブラはフリルの動きに反応し、炎の精霊を呼び出していた。その炎の精霊が竜へと転じるのを待つことなく、松座衛門の操る暁闇が大型銃である玲瓏を撃つ。その周囲から絡繰り人形が踊り狂いながら現れた。

「これより始まるは絡繰り人形たちの舞踏会。」

 それはクゥーカの【絡繰り人形らの舞踏会(マリオネットハオドリクルウ)】。総勢185体の絡繰り人形による狂奏の舞踏。

「踊れ、何もかも忘れて。踊れ、何もかもを磨り潰して。自由気ままに、踊り狂え!」

 クゥーカの指示の下、人形たちが雪崩を打ってオンブラへ駆ける。迎え撃つは数多の剣。オンブラの【夢幻】が複製した刃が人形を貫き、その剣を別の人形が叩き折る。

「タイマンは苦手だからな。数で押す。」

 オンブラの注意を分散させれば致命打を叩き込む隙も出来るはずだ。クゥーカはさらに絡繰り人形を呼び出した。

 松座衛門の暁闇が撃ち抜いた炎の精霊が吹き散らされたと同時に別の炎が立ち上がる。それは即座に竜へと転じて高速で戦闘を続ける暁闇へと襲い掛かった。松座衛門が糸を引き、暁闇がくるりと回って竜へ銃口を向ける。間を置かずに発砲、その銃撃を追うように暁闇は距離を詰め、撃たれた衝撃で体勢を崩した竜の首へと先端に輪を作った糸を投じた。破魔の力を宿した糸が竜の首へ掛かる。

「二ノ型 手繰り討ち!」

 糸を巻き上げる勢いのままに暁闇は毒炎を纏う竜を砕く。だがその身には毒性の炎が燃え移っていた。ならば燃え尽きる前にオンブラを討ち取るべし、と突き進もうとした矢先、オンブラとの間に新たな炎が立ち上がる。

「そう簡単にはいかないか……?」

 砕いて進むか、迂回すべきか。松座衛門の僅かな逡巡を消すように、炎に水泡がぶつかって弾けた。

 フリルはオンブラが自分を警戒こそすれ脅威と思っていないと感じていた。それもそうだろう、他の者を支援していたフリルは今も一歩引いた場所で戦いを見ている。

「ですが、私が使えるユーベルコードはお菓子の魔法だけではありません。」

 ぐっと握って【ガジェットショータイム】で呼び出したのはラッパのような口のあひるちゃん。お尻に笛のような吹き口がある。そのガジェットを、フリルはふぅと吹いた。するとラッパ口からふわりふわりとシャボン玉が吹きだされ、漂う。それは炎へ向かい、ぶつかって弾けた。

「ふわふわ浮かぶシャボン玉は認識しづらいのではありませんか?」

 炎の精霊は高速で動く暁闇を追っていたため反応しきれず、弾けたシャボン玉に巻き込まれて泡のように消える。シャボン玉に含まれていた洗剤が毒を浄化し、弾ける水が炎を鎮火したのだ。
「……っ!?」
 僅か、オンブラの表情が驚きに染まる。その視線がフリルに向いた刹那、松座衛門とクゥーカは動いた。

「お互い吸い合って、どちらが先に倒れるか、勝負と行こうじゃないか。」

 事ここに至って守りを気にする段ではない。オンブラの放つ剣は生命力を吸収するが、それはクゥーカの人形も同じ事。松座衛門の暁闇が距離を詰めている今、こちらは痛み分けでもオンブラに反撃をさせる時間を与えなければ十分だ。放たれる剣を踊り狂う人形がその身で受け、その人形の影から別の人形がオンブラを打ち削る。そして。

「覚悟! オンブラ!」

 松座衛門が暁闇のギミックをすべて解放する。【鬼猟流 演目其ノ一「疾風」(キリョウリュウ・エンモクノソイチ・シップウ)】により速やかに展開された多節棍「双爪丸」が伸び、毒の炎で焼かれながらオンブラに突き立った。操作糸「領」がオンブラの四肢を縛り、糸で繋がれた暁闇は連弩「狂惑」と大型銃「玲瓏」を近距離から乱射する。
「まだ……私はっ!」
 既にその身は打ち砕かれ、それでもなお立とうとするオンブラの前に一人の少女が立った。差し出された手には、一つの袋。

「えっと、数は足りないかもしれませんが亡くなられた方々にお供えしてあげてください。」

 オンブラがそれを認識しているのかは分からない。だがその顔はどこか呆然とし、その動きも止まっていた。フリルが飴玉の入った袋をオンブラの手を取り握らせると、オンブラの身体が崩れ始めた。まるでこの地で戦う意思を失ったかのように。
「ああ……私は……」
 その弔いは誰の為に。懐かしい姿を見た気がした。掴んだ物は泡沫か、或いはそれは自分なのか。言の葉を残し崩れ去ったオンブラの表情は、どこか穏やかだった。

「じゃあな、オンブラ。安らかに同胞と眠れ。」

 クゥーカの言葉が風に舞う。オンブラの消えた後には黒き剣が一つ、墓標のように立っていた。シ出の道行を示すように。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年09月19日


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#ダークセイヴァー
🔒
#同族殺し


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は須藤・莉亜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト