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白に宿るは狂信と破壊

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●混ざる白
 足りない。彼らは思った。
 偉大なる龍への信仰がこの世界には足りない。もっとだ、もっと信徒を増やさねば。偉大なる龍を崇め、奉り、そしてこの世の全てを尊き龍のものとせねば。
 足りない。魔女は思った。
 燻る怒りはどれ程の破壊を繰り返しても治まる事はない。心が叫ぶ、全き更地に還せと。過去より生じた限りなき憎悪は、今だその身を苛み続ける。
 白き狂信。白き憎悪。
 ――二つが交わり生まれた白は、互いの思惑の為に蠢き始めた。

●魔女は古教会に潜む
「皆様、白という色にどのようなイメージをお持ちでしょうか?」
 そんな語り口で話し始めるのは山羊頭の猟兵、オクタ・ゴート(八本足の黒山羊・f05708)。配られた資料に書かれている今回のオブリビオンの姿は……見ようによっては清浄にも感じる、白い者達ばかりであった。
「見た目に惑わされてはなりません。彼らは恵まれぬ村落へと赴き、救済と称し怪しげな薬と洗脳によって龍への狂信を植え付け、犠牲者に己の身を顧みない悍ましいテロへ加担させる邪悪な集団です」
 はらりと捲れば更に詳しい内容が記されている。
 この組織の構成員は、『パストール』と呼ばれる白い蜥蜴の僧侶。そして彼らを束ねるは、白磁の魔女の二つ名を持つオブリビオン、『アクルス』。
 龍への狂信を抱く僧侶たちを扇動し、人間への啓蒙と布教を題目として掲げながら、破壊によって人々の命と希望を奪う。更に先述のもの以外にも、かの集団を倒す依頼を受けた冒険者が帰ってくるなり爆発したという事件も起きているのだ。
「恐らく、自ら誘い込んだ冒険者を洗脳し、魔術によって爆発させているのでしょう」
 悪辣さを隠さぬ者達は、今もまた冒険者だけでなく、自ら咢の中へ飛び込む次の贄を待っている。更にそこは付近のフェアリーたちにとって大切な沐浴所がある場所だという話。急がなくては、更なる犠牲者がでるばかりか件の場所が破壊されかねない。
 だが逆に、それこそが猟兵達にとって攻略の糸口。
 オブリビオンは自らが滅ぼした廃村の教会に居を構えそこから離れず、自分たちの存在を誇示している。同時に、人質のようにして有するフェアリーの沐浴所。早急に手を打たなくては何をされるかわからない、という焦りを生み出させる立地も含め、先程の様な計略を生かすためだろうが――猟兵達にしてみれば一網打尽におあつらえ向きというわけだ。

「油断ならぬ相手ではございますが、一か所に固まっている今こそ好機。これ以上の悪事を許すわけにはまいりません。どうか、皆様のお力をお貸しください」
 頭を下げるオクタ。赤色のグリモアが開く門の先には、荒野の中で佇む不気味な旗と古びた教会が、猟兵達を待ち構える――。


佐渡
 こんにちは、佐渡と申します。
 今回の舞台はアックス&ウィザーズ、狂気の龍司祭と怒れる魔女を討つため、敵の拠点に真正面から挑む戦闘特化のシナリオとなっております。

 皆様の勇ましい戦いを格好良く描写させて頂きたいと思いますので、よろしくお願い致します。

●※おねがい※●
 迷子を避けるため、ご同行の猟兵の方がいらっしゃる場合には同行者名、あるいはチーム名等目印をお忘れないようにして頂けると幸いです。
 またマスタープロフィールに御座います【シナリオ傾向】については是非一度目を通して頂くよう強くお願いいたします。
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第1章 集団戦 『パストール』

POW   :    ディス・イリュージョン
自身からレベルm半径内の無機物を【昆虫や爬虫類の幻影】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD   :    ドラゴニック・リボン
【召喚した伸縮自在のリボン】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    ジャッジメント・パヴィリオン
【杖】を向けた対象に、【巻き付く炎のカーテン】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

龍泉寺・雷華
※キャラ崩壊、アドリブ、連携歓迎

くっくっく……小細工は無用、手加減も必要無し
正面からの殴り込みとなれば、ここは我の出番ですね!
我が魔術、その神髄をお見せしましょう……!

開戦と同時に三天魔を発動!
我に眠りし力、存分に味わって頂きますよ!
基本は遠距離より破滅の雷で敵を打ち据えていきましょう!
敵がリボンを飛ばしてくるようなら、敵ごと纏めて原初の炎にて焼き払ってあげますよ!
小癪にも我が炎を掻い潜った攻撃は、魔術障壁(オーラ防御)を更に生命の水で覆った、鉄壁の障壁で防ぎます

ふふふ……はっはっは……!
己の力が恐ろしい……くッ、右腕が疼く……!(UCの代償によるダメージ)


御形・菘
お主らの布教活動に傾ける努力は素晴らしいのう!
しかし思うに、神への信仰が足りんのは、むしろ神の方にちょっと問題があるのではないかの~
信者が数千万(※動画チャンネル登録者数)の妾が、優しくノウハウを助言してやろうか?
……などといじって挑発してやれば、より多くがこちらに向かってくるであろうよ

右手で、眼前の空間をコンコンコンっと
はーっはっはっは! これぞキマフュを統べる妾の力よ!
このように、お主らの神はこれほどエモい御業を起こせるかのう?
そして果たしてお主らに、この花々を幻影へと変えるだけの力量はあるのやら
どのみち、攻撃力が限界まで高まった妾の左腕によって、すべて等しくまとめてボコられるがよい!



●吹き荒れる暴威
 その教会は元々質素ながらも荘厳な造りであったのだろう。背は高く、古ぼけ苔なども見える石の外壁もこれまで丁寧に掃除されていた痕跡が見受けられる。
 今では、もう見る影もない。ステンドグラスは割られ、十字架には龍の咢を模す飾りが突き立てられている。更には神を崇める信徒の代わりに、龍を崇める白鱗に紅の目をした蜥蜴が群れを為して祈りを捧げ続けている。
 神の教えを説く場は、既に悪意の根源であり邪悪の坩堝へと堕ちたのだ。

 故に……現れた猟兵は、一切の容赦を持ち合わせなかった。
 哈哈と笑いながら、武器を帯びる事もないまま、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は白き狂信者たちへと近づいていく。その気配にはたと振り返ったものどもは、そのぎょろりとした紅い目を忙しなく動かし、値踏みするように見つめるだろう。
 歪に捩れるものから、天を衝くよう鋭く伸びるものまで在る角。胴や顔立ちに人間の色を残しつつも股より下には巨大な一本の蛇の如きもの。帯びる鱗は月下の湖面の如き輝きを持つ。人智を離れなお持つその絢爛たる威光は、正に神に相応しい。
 最も、彼女は龍神ではなく邪神、そしてどちらかと言えば蛇神である。
「いやはや。お主らの布教活動に傾ける努力は素晴らしいのう!」
 満面の笑みに拍手まで添えて、菘の不遜な口ぶりながら飛び出すのは称賛の言葉。はたと顔を見合わせる白蜥蜴どもの間抜け面に吹き出しそうになるのを堪えながら、台詞はここで止まらない。
「しかし思うに、神への信仰が足りんのは、むしろ神の方にちょっと問題があるのではないかのぉ~? 信者が数千万の妾が、優しくノウハウを助言してやろうか?」
 笑みは嘲笑へ、上からの口ぶりは完全に自身が上位であるという確信から来る侮蔑へ。ちゃちな挑発であることは明白、それでもこういった者達にはよく効くのだ。
 かっと目を見開くやその杖を一斉に構える白蜥蜴パストール。こうも容易く手玉に取られる愚かさに一周回って愛らしさを覚える菘は、ゆっくりとした動きと共に、目の前の空間をノックする。コン、コン、コン。
 彼女のノックが呼び出すは、荒れた廃村を一瞬で覆いつくす花畑。咲き乱れる小さな花々、秋桜、禊萩、菖蒲、三色菫。小さく色取り取りの中で、黄金は手招く。
「はーっはっはっは! お主らの神はこれほどエモい御業を起こせるかのう?!」
 
 対抗するべく群れが吐く祝詞より呼び出されるのは、爬虫類に虫等。生み出された花々を侵すそのさまには、高貴さなど微塵もない。ただ向かい来る異端を殺すためのものでしかない術は、数による僅かな優位こそあれ人の胸を打つものなどありはしない。
 龍を奉ずる邪悪な信徒であれ、もし心動かすような技がもしできたのなら。決着は、また違ったのかもしれないというのに。
『燃え猛る原初の炎!』
 花畑の上空、太陽を遮り現る灼熱の光球。否、それは焔。赫々と燃え盛りながら地平に蠢く矮小なものどもを睥睨する。
『清く流れる生命の水!』
 雄々しく力強い光へ目を奪われる間に、花咲く地より天へと浮き上がる水滴。葉を伝い、雫はみるみる一塊となった。淀み濁りの無いどこまでも無垢な水球は、引き寄せられるように炎へと向かい――。
『そして来たれ、穿ち滅ぼす破滅の雷!』
 水は火を消す。だが、水は熱によってその姿を変え、晴天を覆う暗黒を、そして闇を切り裂く稲妻を生み出す。三色の力は交わり捩れ、収束した。
「我が魔術、その神髄をお見せしましょう……!」
 ばんと。灼熱の炎球、清浄の水球、そして二つを混ぜた漆黒の雲と雷鳴を引き裂き、天上より降り注ぐその声。黒と赤の外套を靡かせ、三つの魔法円を背に腕を組んだ少女。その左眼は眩いばかりの光を放ちながら、編み上げられた思考の術式は最終段階へと移行した。
 目的は真正面からの攻略。小細工も加減も必要ない、なればここは自分の……否、至高にして究極たる力を操る龍泉寺・雷華(覇天超級の究極魔術師・f21050)のための戦場にほかなるまいと。

 三種の力が嵐の如く混ざり合う世界の終焉を模したような場面を破壊するその存在、圧倒的な力量の差に動きを止める白蜥蜴。
「そう、これで理解したであろう?」
 深淵より響くが如き声は、先程まで居たはずの蛇神の場所から。先程とは比べ物にならないその力の圧。ユーベルコード【落花狼藉・散華世界】――己だけでなく、共に戦う猟兵によって更に強まる「ラストバトル感」。神話の再現にも似たこの情景に生放送の視聴数やいいねは鰻登り、感動が湧き起こす強化は、留まるところを知らない。そう、今この場所においては、彼女は真に神に成ったのだ。
「行くぞ、魔法使いよ! 最高で最上のフィナーレであるぞ!」
「勿論ですとも、我に宿りし究極なる力、その一端を見せてあげようではないですか!」
 振り上げられる拳。雷華の右腕には相反する力を結集させた紅き紫電が迸り、菘の左腕は万物を切り裂く程強く鋭く進化する。
『妾の動画高評価の糧となる栄誉を与えよう! さあボコられるがよい!』
『存分に味わって頂きます――【究極魔術・三天魔】!!』
 降り注ぐ光が、振り抜かれた左拳が、狂信の白蜥蜴を千々に吹き飛ばす。
 この一帯が抉れそうな攻撃を行ってもなお、その花畑は消えなかった。雷華の技によって生まれたもの以外の雲も全て衝撃で消え去り、晴天の中で二人は高笑いをする。
「はーっはっはっは! これぞキマフュを統べる妾の力よ!」
「ふふふ……はっはっは……! 己の力が恐ろしい……くッ、右腕が疼く……!」
 二人の様子は後に動画として残り、その再生数はとんでもない数へと跳ね上がる事だろう。

 とはいえ、まだ決着はついていない。狂信者を討つ戦いはなおも続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

樫倉・巽
人を欺くとはな
蜥蜴の風上にも置けぬ奴らだ

蜥蜴というなら丁度良い
こっそりと敵のアジトに近づき
隠れ潜んで相手が1人の時を狙って倒し
着衣を奪って着流しの上から着込み
僧のふりをして教会に潜入するとしようか

バレたとて困ることはない
欺こうとするものは欺かれるものだ
中には入れさえすれば
最初の一手で虚をつければそれで良い
先んじれば状況は有利になるからな
慌てているうちに斬れるだけ斬っておく
その後頃合いを見て僧衣を脱いで投げつけて敵を牽制
距離を取ったら手近にいる敵から斬り伏せていく

「信心など持たぬただの蜥蜴だ
お主らを斬りに来た」

殺気を立ち上らせ敵を威圧
顎の下、首、心臓、急所を狙い手数をかけずに一気に倒していく



●息を潜めて
 教会の外で見張りを行っていた多くの集団からの連絡が途絶えたことを受け、教会の内部のパストールたちは泡を食ったように敵襲への備えを始めていた。その動転ぶりを見れば、ここまで脅威となるような存在がこれまで現れてことなかったことは間違いない。だからこそ、猟兵達の突然の攻撃に驚いているのだ。

 そんな混乱の最中であるからこそ、彼の存在に気付く者はいなかった。
 一匹の白蜥蜴が、壁に凭れている者へ近づいていく。何をしている、神たる龍は怠惰を許しはしない、早く異端を殺しに行くぞ等と言った旨を耳障りな鳴き声で伝えながら、その者の肩を掴んで。
 次の瞬間、その首は声を出す間もなくあるべき支えから外れ、地面に叩き付けられる。鍔鳴りと共に、壁に凭れていた蜥蜴はその場を後にした。
 目深にフードを被ったその蜥蜴は、奴らの同胞などではない。磨き抜いた武人の眼と技量、身に宿す信念は歪んだパストールなどとは比べ物にならぬ程鋭く、実直。琥珀の眼をフードの下でぎらりと輝かすは樫倉・巽(雪下の志・f04347)。
(全く――人を欺くだけでなくこうも脆く下賤とは。蜥蜴の風上にも置けぬ奴らだ)
 小さく鼻を鳴らす彼は軽蔑と怒りを隠せない。
 正面ではなく別の侵入口より潜入を成功させた彼は、一人の白蜥蜴からその命と装いを奪い、こうして内部からの暗殺を続けていた。欺けば何ればれる、そう覚悟していた巽だったが実際は十人を超す蜥蜴が同じ手段で骸の海へと還されている。
 それだけでなく、教会内部を見てきた彼は連中の行う悪事を目の当たりにする。人体を改造するための施設や悍ましい儀式の痕跡。上げればきりがない。
 そろそろ潮時か、と血糊が隠し通せなくなってきたことを思いながら改めて顔を上げた巽が、見たもの。
 外の猟兵達を討伐するための一団が手にしているのは……人間の、亡骸。既にこと切れているそれらを手に、こう宣うのだ。
 人質だ、騙せ、助けさせろ、そして「使え」、異端を殺せ、と。
 亡骸を生きてるように見せかけ、そして爆発させる。これまで説明された事件概要で生存者がいるなら、猟兵達はきっとそれに引っかかる。その、卑劣な、罠に。

 勝利を確信し列為し下品に笑う白蜥蜴、その一番背後の列の者達は、突然に後ろからびしゃりと何かを浴びせられた。生臭く、それでいて温かい。
 はたと振り返れば、そこには返り血に染まった僧衣と、それを纏う新緑の鱗を持つ蜥蜴の男。手にした刀から夥しい血を滴らせ、殺気と怒気を立ち昇らせながら睨みつける。
「お主らを、斬りに来た」
 信心などない、磨いた強さこそが真に己を支えるものだと、彼は考えるだろう。剣にその全てを捧げる潔白な実直さがあるが、同時に無骨で不器用な巽。それでも、いやだからこそ、種の近い者共のここまでの下劣な姦計に、怒髪天を衝いた。
 反撃の隙すら与えず、血糊に塗れた僧衣を投げ捨て視線を遮り、その間に棒立ちの白蜥蜴の隙間を一瞬で駆け抜ける。
 僅か数秒。これまで暗殺を主とし出血が起きるのを避けていた。けれど、最早そんな慎重さをかなぐり捨て、首を、心臓を、腱を、顎をと急所に刃が閃けば、忽ちにその場は骸が血の海に沈んだ。
 血払いをし、既に三十を超す首級を上げなお彼は止まらない。
 信心などない。が、それでも貫く義が、彼を突き動かしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

小宮・あき
なぜ、お前のような者が教会にいるのです。
我ら主神の教義を説き広め、また礼拝するための、建物ですよ。
今すぐ、退きなさい。

人間の聖者。
現役のカトリック教徒。
教会を根城にするなど、言語道断。
絶対に許さない。

UC【神罰】
「神罰を与えましょう」

祈りの力によってレベルm半径の光の柱で攻撃するUC。
強力なスポットライトのようなもの。物質は透過します。
半径「53」m、直径106mの柱は、光属性の〔属性攻撃〕の〔全体攻撃〕〔範囲攻撃〕。
現役聖職者である私の〔祈り〕は常に神に注がれています。〔先制攻撃〕〔高速詠唱〕

光の柱を抜けてくる敵にはマスケット銃から遠距離攻撃。
〔スナイパー〕で確実に仕留めていきましょう。



●聖者の裁き
 既に半壊してるパストールの軍勢は、両手で数えられるほどの猟兵にここまで苦戦させられている事実に嘆き、戸惑い、そして怒る。神たる龍の信徒である我々がこれほどまでに苦しめられるなど、何かの間違いだと。
 疾く疾く猟兵という龍に逆らう背信者の腸を引きずり出し神に捧げ、この失態に赦しを乞わねば、そんな事を思いながら教会の中を、どたどたと走っていた爬虫類の赤い瞳が――何者かを捉えた。

 淡い桃色の髪は儚げな花の如く、纏うは敵と同じく神に祈る者の装い。されど、彼女が信仰を捧げるのは、過去より出でてこの世界を侵す龍ではない。
「……なぜ、お前たちのような者が教会にいるのです」
 その少女が口を開くと同時に、白い爬虫類たちは自分でも意図せぬままにその足を後ろへ下げるだろう。それほどまでに、彼女の言葉は厳かで、そして透明で先鋭な憤怒を孕んでいる。
 小宮・あき(人間の聖者・f03848)は、ゆっくりとパストールへと迫る。澄み渡る空色の瞳は、瞬きを忘れたように蜥蜴を睨みながら言葉を続けた。
「ここは我らの主神の教義を説き広め、また礼拝するための、建物ですよ」
 純粋に、ただひたむきに祈りを捧げてきた。敬虔な教徒であり、聖者――その肩書は決して軽くない。割れていない天窓の真下へやってきた彼女に、祝福の如く差し込む陽光。
『神罰を、与えましょう』
 直後あきを中心に拡がる光。眩きそれに目を隠した爬虫類は、悲鳴もなくただ呑まれ、一瞬のうちに浄化される。
 極大の範囲と物質を透過する輝きは、捧げ続けた信仰の証。悪逆を為し、人々を苦しめるだけに留まらず、口にするも憚られる冒涜を為す者達を許すことはできなかった。それでも、死したモノへ鎮魂を捧げんとするあき。
 けれど、それは蜥蜴にとって突くべき隙に過ぎなかった。神浄に晒されその身を灼かれ、血を吐きながらも、悍ましき祝詞と共に呼び出されたリボンは彼女を縛らんと迫るだろう。異教徒を殺せ、龍へと捧げよ。若い血肉はさぞお喜びになられるだろう。と。
「どこまでも、救えませんね」
 がん、という破裂音と共に、あきの鼻先まで迫った布きれは静止し、ぐずぐずと崩れ去っていく。大本であり術者であるパストールの首から上は完全に吹き飛び、リボンと同じく塵に還った。
 手にしたマスケットのグリップに刻まれた名にそっと指が当たると――あきの張り詰めた表情が僅かに緩み、数秒瞑することだろう。しかし、再び歩み出す。まだこの場所には倒さなければならない存在が残っている。
 冒涜の徒を砕き、死を汚された人々に魂の安寧と救済を。神罰は、まだ終わらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加。

宗教を布教する事に関してはとやかく言う気はないが、その布教の仕方がね・・・人に危険しか与えないなら、阻止せねば。行くよ、奏、瞬!!

正面からいくと得物の槍が幻影に変えられてしまうね。【目立たない】【忍び足】【残像】を駆使して敵の集団に回り込み、敵の集団の背後から【先制攻撃】【二回攻撃】【串刺し】で竜牙を使うよ。敵の攻撃は【オーラ防御】で軽減しようか。


真宮・奏
【真宮家】で参加。

狂信から生まれる力は強大で、恐ろしいと聞きます。被害が広がる前に何とかしなければ。こちらも譲れないものがあるゆえ。

護りにはいれば押し切られるゆえ、トリニティ・エンハンスでは攻撃力を高めます。不意の攻撃を【第六感】で回避しながら、【オーラ防御】【武器受け】【盾受け】【拠点防御】で攻撃の被害も減らします。ユーベルコードを封じられても構わず、【属性攻撃】【二回攻撃】【衝撃波】【範囲攻撃】で攻撃していきます。上手く接近出来たら【シールドバッシュ】【範囲攻撃】で吹き飛ばしていきますか。


神城・瞬
【真宮家】で参加。

奴らをこのままにしておくと、大変な事態になる事は理解できます。不幸になる人々を減らす為に。いざ、参ります。

敵は炎を使いますか。では、こちらも炎を。【高速詠唱】【全力魔法】【二回攻撃】【範囲攻撃】で凍てつく炎を使います。同じ炎といえど、ただの炎ではありませんので。【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】も乗せましょうかね。邪悪な教えを広めるのはここまでです。お覚悟を!!



●狂信を断つ
 既に門を突破し、内部へと侵攻を進める猟兵達。最後に現れた三人はそれぞれ戦いの準備をしながら言葉を交わした。
「狂信から生まれる力は強大で、恐ろしいと聞きます。被害が広がる前に何とかしなければ……」
 手にした盾をぐっと握り、真宮・奏(絢爛の星・f03210)はつぶやく。これまで実際にその狂信によって犠牲者を生み出す相手、それを根絶するための戦いに意欲を燃やすと同時にやや気負いしすぎるような雰囲気もある。
「そうですね、不幸になる人々を減らす為にも戦わねば」
 そんな奏を気遣うように言葉を続けながら、杖を振るうは神城・瞬(清光の月・f06558)。先程彼女が言った通り、このまま野放しにしておけば更なる被害が出る事は間違いない。見上げた先の歪な十字架に目を細め、武器を握る手にも力がこもる。
 二人の様子はそれぞれだが、準備ができたことを確認し頷くと真宮・響(赫灼の炎・f00434)は眼前の大きな門へと向き直る。
 宗教というのは人それぞれだ、故にそれをとやかく言うつもりは彼女にはない。しかしそれが、様々な人々へ害を与えるものでしかないのならば話は別だ。
「行くよ、奏、瞬!!」
 意気軒昂、気合を入れるため大きくそう言葉をかけると、響は門を押し開いた……。

 飛び込んでくる大きなホール。そこに集まるパストールの群れ。彼らが立ち塞がるのは奥に存在する部屋――そこは恐らく、主祭壇を要する聖堂。そこに敵の親玉が潜んでいるのは間違いない。
 赤い瞳を飛び出さんばかりにし、白い鱗の爬虫類たちは耳障りな言葉をあちこちから響達へと向けるだろう。それは恐らく、彼らの宗教観に基づく理不尽な罵倒。
 これまで、数々の戦いに身を置いてきた真宮の家族たちは敵の様子を観察し、瞬時に察するはずだ。口汚い罵倒は余裕のない証、そして集結して要の部分へ守りを固めようとする思考。恐らく、ここに残った者達で、最後なのだろうと。
 互いに目配せを交わす三人。その表情の余裕についに怒り狂った龍の信奉者たちは、次々にその杖を向けるだろう。
 そこから呼び出されるは、対象を巻き込み焼き殺す炎のカーテン。集まった二十三十の蜥蜴が一斉に放てば、それらは幾重にも折り重なった豪奢なドレスのようになるはずだ。
 巨大な火、龍より賜りし力。これで確実に異教徒を殺しただろう――勝ち誇り、汚らしく笑う蜥蜴たち。
 だが、次の瞬間その内の数体の心臓に、深々と炎の杭が突き刺さった。
「おやおや、実に涼しい炎だ」
 倒れた仲間から、声の方へと振り返れば、そこには火傷どころか衣服やその長い髪に焦げ跡さえつくことなく立ち続ける瞬の姿があった。
 彼は自身の操る【凍てつく焔】でその身を覆うことで炎を相殺した。敵を時に凍えさせ、時に焼き尽くす凶暴な力は、この時絶対無敵の盾に他ならない。如何に熱く激しい炎も、炎を燃やす事などできないのだから。
 そして、彼の立つその後ろには、既に誰もいない。倒されたわけではない、既に、ターンは切り替わっているのだ。
『喰らいな、大好きな竜の牙さ!』
 皮肉っぽく、悪戯っぽく、それでも苛烈に、凄烈に。剛烈なる一撃は驚き竦む蜥蜴を貫く。蜥蜴の神と崇める存在の名を冠するその技は、狂える信仰を以て人に仇為す怪物へ牙を剥く。
 遅々と祝詞を唱える間に、響の槍撃はその身を捉える。竜を駆り、竜を狩る騎士である彼女に、蜥蜴は文字通り手も足も出ない。
 だがもちろん、白い鱗を引き裂くのは槍ばかりではない。
「そこです!」
 母の背に迫る敵を切り伏せる、三本の剣。その体に宿るは三つの力。手にした武器の力を一層強化し、守るために攻勢をかける奏。先程の緊張はどこへやら、身を挺し攻撃を防いだ兄を見、覚悟が決まったのだろうか、その奮起は凄まじい。
 後手後手に回ればジリ貧になる。数の差を考慮した彼女は出し惜しみせず、力をフルに活用する。後衛の瞬に近づく相手、或いは槍の間合いから大きく遠ざかる相手を狙い的確に切り伏せる。火、水、風。三色の刃は逃げ場を求める蜥蜴を容赦なく追い立てるだろう。僅かばかりの抵抗に杖で殴りかかる者は、もれなく盾に打ち付けられ星を見る。
 ――信仰は団結を生む。無力であれ数と連携は時に猛者をも打ち倒すものになりううる。それが狂えば世界に与える影響は計り知れない。
 されど悪辣が許される事はなく、団結はより固い結束には決して勝つことはできない。命を預け、信頼し合う家族の想いは、狂信に染まった者どもを蹴散らした。

 パストールは討たれ、道は拓かれる。混沌の根源たる、「魔女」への道が。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『白磁の魔女『アクルス』』

POW   :    火の粉散る一つ脚(フラカン)
【杖から放たれた炎の鱗粉】が命中した対象を燃やす。放たれた【魂に纏わりつく煉獄の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    陽光の剣・偽神憑依
自身に【疑似的な神威】をまとい、高速移動と【杖から生成した陽光の剣】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    銀の冥界(ハデス)
【心身まで凍り付く地獄の吹雪】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:へるにゃー

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ヘクター・ラファーガです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●破戒の聖堂
「期待してなかったけど、やっぱりトカゲ如きじゃ無理か」
 扉を開き現れた猟兵達を見、まず真っ先に舌打ちをする小柄な影。不遜にも、神を崇める祭壇に胡坐をかき、自身の耳を撫で付ける姿。
 白磁の魔女『アクルス』――だがその肩書とは裏腹に、容姿はさておき声音も、言動も、紛うことなく少年のモノだ。

 椅子も、背後の像も、ステンドグラスも十字架も、殆どが破壊されたその場所で、アクルスは杖を手に立ち上がる。
「ボクをぶっ殺しに来たんだろ、猟兵? 上等じゃないか、どっちが壊れるのか、壊れるべきか……カミサマに見せつけてやろうぜ」
 ぎらりと、殺気の籠った眼差しで猟兵達に挑発を投げるアクルス。憎悪と破壊を望む魔女を狩る戦いが、幕を上げる。
真宮・響
【真宮家】で参加。

ああ、間違いなくアンタを倒しに来た。その言動は気に入らないねえ。信仰の場を穢した罰、その身で受けて貰おうか。一番槍はアタシたち家族が担わせて貰うよ。

炎の戦乙女に正面からの抑えを頼み、【目立たない】【忍び足】【残像】を駆使して敵の背後を取る。背後を取った状態で攻撃されるなら【見切り】で回避、回避しきれなかった分は【オーラ防御】でダメージを軽減。背後から【先制攻撃】【二回攻撃】【串刺し】で攻撃。遠距離攻撃が必要なら【槍投げ】を使うよ。


真宮・奏
【真宮家】で参加。

何故、神聖なる信仰の場に破壊の魔女がいるのは凄く違和感がありますが・・この聖堂にはいてはいけない存在である事は分かります。先制攻撃は私達にお任せください!!

トリニティ・エンハンスで防御力を高めてから、【オーラ防御】【武器受け】【盾受け】【拠点防御】で防御を固めてから正面から攻撃します。【激痛耐性】【火炎耐性】【氷結耐性】も併用して敵の注意を引き付け、響母さんの背後からの攻撃が確実に当たるよう援護します。敵の攻撃によっては【かばう】もします。攻撃は【属性攻撃】【二回攻撃】【衝撃波】で行いますね。


神城・瞬
【真宮家】で参加。

この言動と態度、神を冒涜しているにも程がありますね・・・その傲慢な鼻っ柱をへし折ってやりましょう。私達家族の役目は後に続く猟兵さんが戦い易いように戦況を整えることです。

引き続き、月読の同胞の力を借りましょう。同胞には酷ですが、敵の攻撃の盾にもなって貰います。同胞の攻撃に【高速詠唱】【全力魔法】【二回攻撃】を併せた【誘導弾】で【援護射撃】。【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】も乗せましょう。僕の方に攻撃が飛んで来た場合は【オーラ防御】でダメージを軽減します。



●「一番槍」
 その場所へ足を踏み入れた猟兵達に殺気を以て出迎えるアクルス。これまでの爬虫類とは比べ物にならぬ存在感で圧迫する白の魔女へ、三人の猟兵が先んじて歩み出た。
「一番槍は、アタシたち家族が担わせて貰うよ」
 そう言いながら、文字通りの龍槍の切っ先を敵へ向けるのは真宮・響(赫灼の炎・f00434)。その背を守るように、真宮・奏(絢爛の星・f03210)と神城・瞬(清光の月・f06558)もまた、破壊の魔女を見据える。
 全員の意志は一致している……この信仰を汚す悪しき存在を、このまま留めることはできない、と。
『月読の同胞、力を借ります!』
『さあ、行くよ、燃え盛る炎の如く!』
 響と瞬の声が重なる。紅の魔法石より呼び出されるは、響と同じく熱い火炎の力を持つ戦乙女の軍勢。清廉なその姿こそまさに教会という場に相応しいだろう。
 一方氷の如き冷たい輝きを放つ杖が呼び出すは、鎧の戦士たち。黒々とした装備にあしらわれた月読の紋。壮健にして頑強な益荒男揃いであり、その隊列は一糸乱れぬもの。
 そして、召喚された二つの軍の先頭に立ち、魔女に対し言葉をぶつけたのは――白銀の鎧に身を包み、サーコートを靡かす奏。
「貴方のようなものが、この場所にいてはならないのです。私たちが、貴方を必ず倒します!」
 彼女らしからぬ、真正面からの挑発。だが、それを受けアクルスはにやりと笑った。
「へえ、面白いじゃん……じゃあ、見せてもらおうじゃないか!」
 ぺろりと唇を舌で潤すと同時に行われる高速の詠唱。そして放たれるのは極冷の吹雪。触れれば忽ち命が凍えるほどの猛吹雪。
 戦乙女と戦士を襲う無慈悲な寒波、それに抵抗するべく奏はユーベルコードによって炎を強化し、それを伝播させることで味方の軍勢を守るだろう。だが、鎧の兵士たちの放つ援護射撃は、吹雪の視界不良によって敵へ届く事はない。
 直後、ちらちらと光りながら雪に混ざり飛来する「何か」が鎧の兵士に当たった瞬間に、その兵士は瞬く間に炎に包まれた。
 【火の粉散る一つ脚】。炎と氷、奇しくもそれらは真宮家の面々が得意とする属性である。炎を操る戦乙女には吹雪を、凍える炎を操る瞬の召喚した戦士たちには炎。逆属性同士を叩き付け、そして幅広い属性を操る奏はどちらを守るか決めあぐねる。
 状況は、最悪だった。

「ははは! この程度かよ猟兵、もっと歯ごたえがなくちゃ面白くねぇじゃん!」
 困惑する相手、次々数を減らす召喚された者達。鉄壁というにも相応しい布陣を薙ぎ倒すのはさぞ心地よかろう、アクルスは既に勝ち誇ったように笑う。それは慢心を肥え太らすほどの喜悦。
 ――肝心要の猟兵本人の姿を、見失う程に。
 突如その体に槍が突き刺さる。数々の戦場を共にかけた赤龍の槍は、響のものに他ならない。感情の昂ぶりに応じて熱を帯びる刃は、赫々と触れた空気さえ焦がすほどに燃え上がる。
 舌打ちをし、どうにか自らの身体から槍を引き抜いて後ろへのがれんとする魔女の背に、次に叩き付けられるのは呪詛によって形作られた矢。振り返れば、集中が途切れた事によって生まれる隙を利用し、一斉に矢をつがえているのは月読の戦士たち。そして、その背後で瞬が行っていた詠唱は……矢面に立ち続けた、奏を守る結界。
 同じく炎槍を操る戦乙女たちは、吹雪の中その炎を手に敵へと向かう事はなかった。その理由は、自分たちの魔力を奏へ分け与え、自分たちが軍勢として存在をアピールし続けるため。
 二種の攻撃に晒され、吹雪の中でも決して引かず、相反する属性を強化しなくてはならない無理難題に悪戦苦闘しながらも、ユーベルコード【トリニティ・エンハンス】を用いて味方を守ろうとしていた奏。その真意は、白磁の魔女の背を衝く母の援護。自分たちに意識を向けさせ、そのうえであえて追い詰められたふりをすることでヘイトを誘導する。
 とどめを刺す事には拘らない。確実な一撃を与えることを徹底した戦略。

 全員の主張が一致していたのは、決して魔女が教会を穢す事を赦すことはできないという事だけではなかった。
 後に続く猟兵達へ、確実に有利なバトンを渡す事。阿吽の呼吸によって行われた計略は、見事功を奏したのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

樫倉・巽
俺は神は信じない
正義の元に刀を振る気もない
が、人の道に外れたものが人を苦しめるのを捨て置くことはしない

覚悟を持って向かってくることを進める

無風刃を使うため
納刀して相手と対峙する
静かに相手を見据え
気配を感じ
呼吸を読み
相手の心の乱れを待つ

「殺しに来たわけではない
過去に帰ってもらうために来た
そのために斬り伏せる」

相手の仕掛けは目線と足の捌きから見極め
体の捌きで紙一重で躱そうとする
少しずつ間合いを詰め重圧をかけ
相手を追い込んでいく

刀を抜くのは一度きり
必殺の機を感じたとき

相手を斬ることだけを心に描き
一振りの刀となって刃を走らせる
その首を狙って
何よりも速く

斬り伏せてから呟く
「ただの蜥蜴だ」



●風無き刃
 手傷を追ったアクルスは、舌打ちをしながら顔をしかめる。慢心があったとはいえ傷を負わされ、内で燻る憤怒の炎に薪がくべられた。確実にここで猟兵達を壊すと息まき、荒い息と血走った眼で次の敵を睨みつける。

「宛ら獣だな」
 言い放つのは、着流しを纏う鱗の剣豪。樫倉・巽(雪下の志・f04347)は僅かに足を開き構えと思しき姿勢を取りつつも、腰に提げる刀に手を掛ける事はない。その眼差しはどこまでも理性的で、そしてどこか冷ややかだった。
 激情に支配されながら行う詠唱、アクルスがその身に神を降ろしてなおそのオーラは禍々しく荒々しい。どこまでも、己の感情のまま動く相手に、巽はため息を零した。
 ……刹那、攻防は始まった。
 壁を蹴り彼を切り刻まんと、陽光の剣を携え突撃する白磁の魔女。されど巽はその攻撃を体捌きと足捌きのみで回避する。本数が多く光で目が眩むかと思えば、なんと巽は目を閉じていた。それを余裕と捉えた魔女は更に怒りの色を濃くし、一層攻撃を激化させるだろう。鱗に剣先が掠る、熱を寸前に感じる。それでも巽は動じずにただ「機」を待ち続けた。
 彼に信仰する神はいない。己が全てを捧げたのは剣と武の道であったがゆえに。正しさという大義を振りかざすつもりもない。ただ、それでも。
(人の道より外れ人を苦しめる者を、見過ごす道理はない――)
 機は熟した、そこでようやく、白磁の魔女は気付く事が叶う。放射した剣の合間を潜り、琥珀の眼を持つこの蜥蜴は着実に自分へと迫っていたことを。そして既に、そこは相手の間合いだったということに。
『斬る覚悟とは、斬られる覚悟』
 故に、お前は斬られるのだ、と。そう言い終わるとき、既にその刃は鯉口へと呑まれ、鍔と打ち合い鈴のような音を立てる。
 ずばん、と首元から大きく血を噴き出し、白磁の魔女は膝をついた。
「トカゲの、クセに……! お前、何者だよ……!?」
 自分が従えた者共とは別格の力に、血を吐きながら問う魔女へ、振り返る事もなく巽は答える。
「俺は、ただの蜥蜴だ」
 ――と。

成功 🔵​🔵​🔴​

御形・菘
魔女というのは、肩書とか技とか、何もかもがカッコ良くて素晴らしいのう
そして良い感じのテンションではないか! さあバトるとしようか!
だが安心せい、この戦いを見せつける相手は、神などという謎の観客だけではないぞ?

右手を高く上げ、指を鳴らし、スクリーン! カモン!
はーっはっはっは! 元気かのう皆の衆!
身体が動かしづらくなるので、妾が寒いの苦手なのは周知の通り!
しかーし! 皆の暖かい、いや熱い応援があれば、妾はいくらでも耐えられる!
さあ、ありったけの喝采を妾に浴びせてくれ!

地獄の吹雪とやらも、克服すべきエモい演出に早変わりよ!
(実はまだ結構しんどいから)速攻で決める! 左腕の一撃で沈めてくれよう!


龍泉寺・雷華
※アドリブ連携キャラ崩壊歓迎

ふっ……面白い
望み通り、決戦を始めましょう……!
我が名は雷華! 天に覇を唱えし超級魔術師!
魔を操る者同士、どちらがより力を持つ存在なのか……決めようじゃないですか!


開戦と共に左目を閉じつつ我が魔術の一つ、連魔唱の備えへと入ります
狙うは燃え盛る火炎と吹き荒ぶ烈風による連携!
敵が吹雪を操るというのなら、こちらは炎の嵐にて迎え撃ちます!

詠唱の隙は仲間との連携や魔術障壁(オーラ防御)にてカバーし、何としても敵の術が発動する前に詠唱を完了しますよ!

詠唱が完了次第、魔力の籠められし魔眼を開き、我の操る魔の炎嵐を地獄の吹雪へと放ちましょう!
さぁ、どちらの力が勝るか……勝負です!



●神域の配信者、究極の魔術師
「クソがッ、ふざけやがって……!」
 蹂躙するはずが、逆に追い詰められている。次第に刺々しくなっていく言葉遣いは、余裕のなさの裏返し。そんな中、魔女の前に立ちはだかる二人の猟兵。

「おやおや、随分と弱っているではないか。先程までの威勢はどうした? この妾が来たのだ、魔女というのは肩書とか技とか、何もかもがカッコ良くて素晴らしいのだから、せめてもっと気合を入れてバトろうではないか?」
 饒舌に高圧的なセリフを並べ、態々相手の戦意を掻き立てるのは御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)。腕を組み、ふふんと鼻を鳴らしているその訳は、相手との戦いが実に「盛り上がる」という読み故である。
 一方そんな菘の隣で、同じくテンションを上げる存在がいる。
「ふっ、そちらも決戦ということですか……ならばそれに答えるが私の流儀! 我が名は雷華! 天に覇を唱えし超級魔術師!魔を操る者同士、どちらがより力を持つ存在なのか……決めようじゃないですか!」
 龍泉寺・雷華(覇天超級の究極魔術師・f21050)同種の能力を扱う相手との戦いに胸躍らせているのも理由の一つだが、先程も共闘した相手が放った諸々の台詞に対抗心を燃やしていたためである。主に肩書とか技が格好いいというあたり。
 これまでの猟兵と一線を画す二人に対し……アクルスが感じたのは、付け入る隙だった。どこか浮ついたこいつらならば、そう苦戦せずに打ち倒せるのではないか、と。

「ハ――面白いじゃないか、じゃあ見せてもらうよ、その自信が歪む瞬間を!」
 勝負に乗った風な口を効き、魔女は自らの傷を癒す為に使っていた魔力を攻撃へと転用する。冥界の王の名を冠した神霊魔術、無慈悲なる冷気を以て敵に留まらず周囲の声明を無差別に凍殺する技。文字通り一瞬にして狭くない聖堂は極寒の地獄へと変貌する。
 アクルスは、決着はついたと感じた。吹雪に飲み込まれるその瞬間、菘は指を鳴らして何かを叫んでこそいれそれ以上は何も起きていない。雷華に関しては詠唱の真っ最中であった。ならば、これ以上の反抗はありえない。
 そう、思った矢先だった。
「はーっはっはっは! 元気かのう皆の衆!」
 吹雪の中、突如聞こえる大仰な笑い声。まだ死んでいないのか、白磁の魔女は更に寒波を激しく吹き付けさせるが、その声が止むことはない。
「身体が動かしづらくなるので、妾が寒いの苦手なのは周知の通り! しかーし! 皆の暖かい、いや熱い応援があれば、妾はいくらでも耐えられる! さあ、ありったけの喝采を妾に浴びせてくれ!」
 突然何を言い出すかと思えば、とアクルスは嘲笑を押さえられない。そんなもので何かが変わるはずがあるまい、自らの力で何も切り拓けないのか、そんな侮蔑を胸中に満たしているのと、ほぼ同時。
 ――聞こえる。視界を奪い、体温を削り、心さえ孤独へと包み絶望へ誘う冷気を切り裂く、声。声援。
 がんばれ、負けるな、やっちゃえ、信じてる、ぶっ飛ばせ。
 それは、呼びかけを行った菘に対するものだけでは決してない。彼女の傍で今も詠唱を続ける雷華にも、そして戦う猟兵達全てに対する声援。
 地面を震わすほどのそれらに、破壊と復讐に満ちた白磁の魔女でさえ戸惑うことだろう。だが、その揺らぎを【覇天超級の究極魔術師】とあろうものが、見逃すはずはなかった。

 アクルスが放っていたはずの風が、突然押し戻される。
 いや違う、自分を中心に放っていたはずの寒波が、それを越す熱波によって相殺されただけでなく、逆に自分へと吹き付けてきたのだ。
「ふっふっふ、油断しましたね?」
 にやりと笑うは、雷華。障壁によって寒さを耐え凌ぎ、この瞬間を狙っていた。更に彼女の背中を押したのもまた、声。菘はユーベルコードによって強化の恩恵を受けるだろう、しかしそれがなくとも、誰かに応援され背中を押されることで発揮される力もある。
「刮目しなさい――我が最上にして最大の力を!」
 三つの刃が宙へと舞い、空間へと刻み付ける三種の方陣。異なる魔力をその身へと流し、絡み合う魔力は増幅し、強大なる一つの渦となって一点へと収束し続け――。
『魔の理は我が手の内に! 連なる魔術が奏でるは破滅の協奏曲! 汝の敗北を告げる我が瞳を、見よ!』
 開眼。直後炸裂する炎熱の旋風。罪を焼き焦がし、身を引き裂き罰とする強大にして無慈悲なる奥義。【多重魔術・連魔唱】、完全詠唱の最大火力である。
 発動の余波で吹雪を散らされ、背中から壁へ叩き付けられたアクルス。それでもなお身体を起こし反撃を狙うはずだ。しかし、既に、王手はかかっていた。
「さあ、フィニッシュだぞ!」
 顔を上げた瞬間、迫っていたのは巨大な拳。数多の声援、エモい演出、そしてラストアタックの栄誉。これ以上ない威力を持った左アッパーが、悪しき魔女へと叩き付けられた。

 割れたステンドグラスの間を潜り抜け、吹き飛ばされていく魔女。魔術師としての格を見せつけた雷華、実はきつかったけど応援の力を証明した菘。二人の猟兵のフィストパンプによって〆られたこの戦いも又、爆発的なバズりを生むことだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヘクター・ラファーガ
【ソロ・ラストアタック希望】

ようやく、見つけた。
長かった。ずっと探して、もう一度逢える日を今日ここまで待っていた。
アクルス。今度は俺が、アンタを助けるよ。

持つ武器は浮浪者の剣一本だけ。『吹き荒れる一つ脚』を発動し、風を纏わせた剣を持ったまま走る。
撒き散らされる鱗粉を風で吸収しながら増幅。体に火がついても、魂が炎に変わって燃え朽ちようとも、俺は立ち止まることはねぇ!今日ここまで、"覚悟"を決めて俺はここにいる!!

零距離まで接近できたら、剣を手放して自爆する。手を繋ぎ、ぎゅっと抱きしめるんだ。
創造神フラカンに告ぐ。どうか、弟を骸の海から解き放ってくれ。

──共に死のう、そして共に生まれ変わるんだ。


小宮・あき
祭壇に胡坐をかくなど。
「魔女風情が……お前に救いの道などない!」

UC【真の姿】
お前のSPDと似た技ね、どちらが上か、命を掛けて証明しましょう。
(UCで無理矢理「外見」変化。赤丸補正が乗らない事は了承済みです)
(口調がキツく)

ただ、お前の技は高速移動と杖から生成した陽光の剣の放射だけど、
私の方は、スピードと反応速度を『爆発的』に増大するの。

私はお前の高速移動についていけるスピードと、
放射を回避する反応速度を持っている!

手にするマスケット銃で攻撃。
【一斉発射】【援護射撃】【零距離射撃】【スナイパー】

【視力】【聞き耳】【第六感】【野生の感】で気を配る。
【回避】は脚武器の【ダッシュ】と併せて確実に。



●罪と罰、そして
 根城だった教会から大きく吹き飛ばされ、地面を転がる白磁の魔女。その体は血と泥に汚れ、振り出すにわか雨に濡れるその姿は最早見る影もない。
 だがそれでも、その破壊への執念は、怒りの業火は消えてはいなかった。
「次こそ……次こそ、必ず殺す、殺してやる、ぶっ壊して殺す……!」
 地面を殴りつけ、それでもなお立ち上がろうとするアクルス。
 その直前、思わず振り返る。それは本能からの警戒心とでもいえばいいのか、迫ってくる巨大な殺気に、思わず振り返ってしまったのだ。
「――次が、あるとでも?」
 自分の中のそれがちっぽけな火の粉に思えるほどの、猛烈な憤怒。薄暗がりより現れるその姿は、赤髪黒眼の修道女。小宮・あき(人間の聖者・f03848)は、主を穢した魔女への怒りは、彼女の真の姿を引き出した。
『お前に救いの道などない』
 それは、死の宣告に等しいものであった。本能的に、魔女はその体に再び神を宿らせ、陽光の剣をあきに対して放射する。追い詰められたことによって湧き上がる恐怖が更にその技の冴えを上げるとは皮肉なことだが、しかしそれでもあきには掠る事さえない。
 確かに、疑似的とはいえ神を宿らせた高速移動は見事なものだろう。杖から放たれる陽光の剣も決して中途半端な威力ではない。だが、相性が悪かった。あきの解放された真の姿で得た高速移動はアクルスのそれに勝るとも劣らず、そして何より同党までに引き上げられた反射神経は、自分へ向かう剣の一切を完全に回避する。
 撃鉄が落ち火薬が爆ぜる音と共に白き魔女は赤く、赤く染まってゆく。一発、また一発、更に一発。信ずる神を冒涜したその憤りを、そして罪の重さを叩き付けるかのように、生かさず殺さず、何度も何度も、その引き金は引かれ。
 ……数えて十二発を受けた時、ついに偽りの神の力は絶え、アクルスは地面へと倒れ伏す。
 これで、終わり。あきは最後の一発を放とうと、その銃口を向けた。

「待ってくれ」
 だが、漸く悪しき魔女へとどめを刺そうとしたその時、その銃口の前に立つ者がいた。
 白磁の魔女によく似た白い髪。いや、それだけでなく、顔立ちさえ似通っている。翡翠のような緑色の瞳を見て、あきはその銃口を静かに下ろした。
「は、はは……お前、まさかこんなとこにいたなんて」
 既に限界だろうはずのアクルスが、その背中を見た途端に立ち上がる。顔に浮かぶ笑みは侮蔑も怨色も歓喜も全てがごちゃ混ぜになったもの。
 振り返り、その猟兵は静かに告げる。
「今度は俺が、アンタを助けるよ。アクルス」
 ――ヘクター・ラファーガ(風切りの剣・f10966)。魔女として畏れられる白磁の魔女・アクルスの、兄だった猟兵だ。
 互いに向かい合う、ただ静かに。降りしきる雨が地面を叩き付ける音だけが響き、睨み合うばかり。双方の抱く感情の大きさは計り知れない、それでも言葉を交わす事は、ない。
『この鉄を礎とし、嵐よ舞い上がれ……【吹き荒れる一つ脚】』
『この杖を礎とし、炎よ燃え上がれッ! 【火の粉散る一つ脚】ッ!』
 二つの詠唱が交差する。燃え散る火の粉を散らす白磁の魔女と、それに対して風を纏い猛進するヘクター。だが、傍から見ても威力の差は歴然だった。
 深手を負いながらも全身全霊を賭け兄を殺さんとする気迫が、煉獄の炎を一層熱く滾らせる。一方、そのアクルスが使う術の下位互換でしかない技で、しかも武器は頼りない長剣一本。組成の近い相手の魔力を吸収し速度を上げようともするが、大半はダメージとして彼の命を削ってゆく。
「出来損ないの落ちこぼれが、今更ボクに勝てるとでも思うのかよ!?」
 その叫びと共に、一瞬でヘクターは炎に巻かれる。そう、こうまでしても勝てなかった。相手が手傷を負っていても、自分は傷一つなくても、アクルスにヘクターはいつも勝てなかった。
 けれどヘクターは、炎を切り裂きまだ走る。魂が燃え尽きても、目的を必ず果たして見せる、その覚悟だけが、彼を突き動かした。
 そして、ついにその手にした刃が届く所まで到達する。顔を歪め、距離を取ろうとするアクルス。逃がさぬとばかりに懐へ飛び込んだヘクターは、その刀を、捨てた。
「……は?」
 呆然とする弟を、固く抱きしめ――ヘクターは漸く、己の目的を果たさんとする。
「創造神フラカンに告ぐ。どうか、弟を骸の海から解き放ってくれ」
 直後両者の身体は光に包まれ、巨大な「何か」が二人を巻き上げる。それは、彼の本当の望み。悔やみきれぬ過去、それに対する贖罪。
「共に死のう、そして共に……」
 言いかけた瞬間。彼は、突き飛ばされた。手を握っていたはず、決して解けないようにしていたはず、だが彼を突き飛ばしたのは彼の背中に宿った偽りの神。
 アクルスは、一人光の柱へと呑まれていく。その名を呼び、追い縋るヘクター。しかし神の意に選ばれたのは、一人のみ。
 彼の宿敵として現れた白磁の魔女は、こう吐き捨てた。
「ボクは出来損ないと心中なんてごめんなんだよ。……クソ兄貴」
 最後に見せた、笑顔。小馬鹿にするような笑顔。けれどそれは、記憶にこびりついて離れない、愛する弟のものだった。

「――終わったのですね」
 呆然と座り込むヘクターの背に語り掛けるあき。オブリビオンの気配は完全に消滅した、それだけではない。恐らくだが……もう、あの魔女がオブリビオンとして世界に現れる事は、ないだろう。
「――俺は、また、救えなかった」
 うつろに、彼はそう呟く。誰に聞かせるでもなく、悔恨を、己が過去に犯した過ちを、誰にともなく語り続けた。きっと、意味はない。ただ遂に終わってしまった実感がないのだろう。
 果たす事が出来なかった、共に、生まれ変わるという目的。けれどそれを聞いて、あきは言った。
「ならば、きっとそれには意味があるはずです。あなたが弟さんに、生かされたその意味が」
 ゆっくりと、雨が上がっていく。
「アンタ、あいつのこと怒ってたんじゃないのか?」
 は、と軽く笑うヘクター。しかし、それにあきは真正面から答えるだろう。
「教会を破壊し、冒涜した魔女は死にました。だから、それとこれとは話が別です」
 桃色の髪、空色の瞳で微笑むと、その両手を組み跪く。
「だから祈りましょう――あなたの弟さんに、救いがあらんことを」
 雲が割れ、穏やかな光が差し込む。ヘクターは、彼女が祈る空を見上げた。
 ……空へ掛かる、大きな虹。それは、この戦いの終わりを告げるもの。そして、白磁の魔女として畏れられた一人の少年が、骸の海の鎖から解き放たれた証であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『飛沫煌めく水面』

POW   :    元気に賑やかにはしゃぐ

SPD   :    遠泳や潜水にチャレンジ

WIZ   :    優雅にゆったりくつろぐ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●妖精の水面
 ……一連のオブリビオンが片付いて、数時間後。
 ギルドに依頼された冒険者たちが次々と侵略にあった村の復旧や解体の為に集まった。そして、かの敵たちが占領していたフェアリーの沐浴所も発見されるだろう。
 幸いにも何か手を加えられることもなかったため、フェアリーたちは猟兵達の周りををわいのわいのいいながら飛び回るはずだ。

 そして、こう提案される。
「この沐浴所はとってもきれいな力が集まっているの! 戦いでつかれただろうから、みんなも使って休むといいの!」
 実際に、水温も少しばかり温かい。なんでも同じ水でも寒いと温かく感じ、暑いと冷たく感じるそうだ。ここで、これまでの厳しい戦いの疲れを抜くのも、悪くないだろう。
真宮・響
【真宮家】で参加

決着が付いたようで良かった。結構手こずったが、終わりよければ全てよし、だね。今回は子供達が随分頑張ってくれた。奮戦の労いも込めて、妖精の沐浴所、利用させて貰うか。

私物のデニムビキニを着用。親子3人一緒に入るつもりだからね。吹雪に散々晒されたから寒いと感じてるだろうね。ならお湯は温かい。今回頑張った奏の頭を撫でて上げながら、飛び交う妖精達に【歌唱】で歌を歌ってあげようかね。


真宮・奏
【真宮家】で参加

うう、大変な目に遭いました・・・手がしもやけになってます。妖精の沐浴所なんて素敵です!!早速向かいましょう!!(目キラキラ)

沐浴所なんですが、親子3人一緒に入るので自前のフリルビキニを着用。髪は纏めて上に上げときます。体が冷えてるので、寒いと感じてます。水は温かいですね!!母さんが頭撫でてくれて喜びながら、周りを飛んでいる妖精さんと【手をつなぐ】で交流します。


神城・瞬
【真宮家】で参加

破壊の魔女だけあって強敵でしたね。縁ある方も本懐を遂げられたようで。僕は・・炎が辛かったですね。氷を扱うので。妖精の沐浴所、存分に満喫しましょう。

家族3人一緒に入るので私物の紺のサーフパンツを着用。髪は纏めて上にあげときます。僕は炎が辛かったので、暑いと感じているので、水は冷水ですね。飛び交う妖精さんは【優しさ】で紳士的に穏やかに接します。



●家族水入らず
 フェアリーたちの言葉に甘えて、沐浴所を利用させてもらうことになった猟兵達。真宮家の親子たちもまた、沐浴所へと訪れていた。

 魔女の吹雪に当てられた真宮・響(赫灼の炎・f00434)と真宮・奏(絢爛の星・f03210)には、泉の水はじんわりと温かく感じられるだろう。特に、最前線でその吹雪を奏には沁みるような温度だ。
 対照的に神城・瞬(清光の月・f06558)には、暑さを冷ますのにちょうどよい涼しさを感じる温度に感じられる。鎧の兵士共々、苦手とする炎に苦しめられたせいだろう。
 全員家族とはいえそれぞれ水着を着用し、兄妹は髪が水に入らないよう束ねて上にあげている。どちらも、後にこの場を使うだろうフェアリーたちへの気遣いだろう。
「結構手こずったが、終わりよければ全てよし、だね」
 リラックスし、ぐぐと身体を伸ばしていた響はおもむろに、近くでしもやけになりそうなほど冷えた手を温めている娘に手を伸ばし、その頭を撫でてやる。敵は間違いない強敵だった。そんな相手の攻撃を真正面から受け続けた。その勇気も、強さも、間違いない成長の証。戦士の先達として、何より母として、喜ばしく思う。
 温い泉と母の掌。二つに温められてほくほくとした表情で浸かる奏。妖精の沐浴所は実に神秘的な雰囲気で、それに胸躍らせていたのも事実だが、戦いの後のせいか緊張感が一気に抜け、心地よさも相まって睡魔が襲ってくる。それに必死に抵抗しようと、奏の中では内なる戦いが始まっていた。
 そんな二人の様子を、気を遣って少しだけ離れた所で眺めていた響。微笑ましさを感じるとともに、戦いの中で受けた熱も少しずつ落ち着き、徐々に水が温かさを帯び始めている事に関心し、その力の流れを考察しながら――同時に考える。術を用い戦う相手、それにゆえに強く感じられた相手の実力。自分でも気づかぬうちに負った火傷もいつの間にか治ってしまったが、勝利できたこと、そしてこうして確かに守れたものがある事に安堵する。
 ……そしてふと、物陰にあった僅かな影に気付くと、瞬は微笑み優しい物腰で語り掛ける。
「隠れなくても大丈夫ですよ、ここはあなた方のものなのです。どうぞ、こちらへ」

 そうして、沐浴所には何人ものフェアリーたちが集まってくる。冒険の導き手として知られる彼ら彼女らにとって、この場所を守った猟兵達には興味が尽きなかったのだろう、ふよふよとあたりを飛び回り様々な質問を投げかけたりしてくる。
 穏やかな時。そして響は、この場を貸してくれた妖精への感謝を込め、朗々と歌を歌い始める。ドーム状の地下に存在し、それでいながら複雑な形状で外の光も通すこの場所に反響して響く美声。気をよくした妖精たちもそれにつられて躍り出す。
 奏もまた、妖精たちと手を繋いでその歌のリズムに合わせて身体を揺らしたりしてフェアリーたちと交流を深めた。そうして周囲を飛び回る妖精の羽搏きは、きらびやかな七色の光を生み出す。幻想的な光景は、戦いの中で疲れた肉体だけでなく、痛ましい光景に傷んだ心さえ癒すだろう。
「えへへ、皆さんありがとうございます!」
 お礼を言うべきはフェアリーたちの方、しかしそれより先んじて奏は集まった妖精たちへそう口にした。それはこの場所に自分たちを招いてくれたこと、この瞬間を共に過ごしてくれたこと、それら全てをひっくるめたものだろう。
 驚き、顔を見合わせる。とはいえ感謝の念を向けられたならば応えるが礼節、妖精たちはきっと、笑顔でこう言うに違いない。

 ――どういたしまして、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御形・菘
休むのも立派な活動! とゆーことでバトル後の報酬はしっかり頂戴するとしよう
う~む、結構どころか随分と温かいのう
凍えてキレの鈍った身体に温かさが沁みて、イイ感じよ!
撮影の方はまあテキトーに、動画のメインにはならんしな
妾が入浴を堪能する絵面なんぞ需要が無い! こういう時に仲間を勝手に撮るのはルール違反であるのでな

しかしせっかくだから、この世界でこういう時にしかできん面白いことをやってみるか!
企画構想だけあった、フェアリー山盛りチャレーンジ!
さあフェアリーたちよ、集まって妾の身体に乗ってみてくれ!
はっはっは、ありったけフェアリーてんこ盛り! 皆で素敵な動画デビューであるな!



●邪神様の休息
 今回戦いに参加した別の猟兵もまた、この広い沐浴所にて思い思いにその戦いの疲れを癒していた。
「う~む、結構どころか随分と温かいのう」
 蛇の様な下半身を泉の中で揺らめかせながらそう零すのは御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)。動画配信者として「エモい」戦いを繰り広げてきた彼女。大の天敵である寒さにやられて危ない目にあったが、泉の温もりによってすっかり調子を取り戻しつつある。
 無論この場所を動画として使用するつもりは毛頭ない。だが休息も又、活動の重要なファクター。適度な息抜きがなくては継続には結びつかないのだ。
 だがもちろん、ただ休むだけではない。沐浴所へ集まったフェアリーたちを呼び寄せると、にんまりと笑ってひそひそと耳打ち。菘からフェアリー、フェアリーから更に別のフェアリーへと伝言し、彼女は一つの動画を撮影した。
 その名も、「フェアリー山盛りチャレンジ」。企画構想だけは存在したそれは、彼女の身体に無数のフェアリーたちが乗って思い思いのポーズをとっている。その数はゆうに五十を超え、煌めく妖精と、楽し気ながら不遜さもある邪神(という設定)の菘が見せる笑顔のギャップ。
 実際に投稿するかは別にして、この動画はフェアリーたちにとっても実に新鮮な体験となっただろう。思い出として、何らかの手段で渡されるかもしれない。

 時間はゆっくり過ぎていく。穏やかな休息は、新たな動画のインスピレーションにもつながっていくことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

龍泉寺・雷華
※アドリブ連携キャラ崩壊歓迎

ふっ……今回もまた我が究極魔術が活躍してしまいました
フェアリー達も無事なようで、これぞ大団円って感じですね!
さぁさぁ、良き仕事の後は良き休息が待っている! それが世の理です!

いやー、吹雪に晒されたりしてたんで、結構身体が冷えてしまっていたんですよね
ここは有難く休ませて頂きましょう!

……ほのかに温かく、身体を休めるのに適した感じの温度
話には聞いていましたが、本当に不思議な水ですね
これもまた何かの魔術の産物なのやも……まぁ、難しい事はこの際いいですね!
折角です、存分に遊んで堪能させて頂きましょう!



●大団円のそのあとに
「ふっ……今回もまた我が究極魔術が活躍してしまいました」
 格好いいポーズ(自称)を取りながら、泉に浸かり不敵な笑みを浮かべるのは龍泉寺・雷華(覇天超級の究極魔術師・f21050)。己の術を存分に発揮し得た勝利、この場所を守れ、敵も壊滅。まさに大団円と言って差し支えない結末に大いに満足しながら、存分に羽を伸ばしていた。
 吹雪に晒された身体をやんわりと温めるこの水。これも何らかの魔術によって生まれたものなのだろうか、興味は尽きないながらも今は細かいことを抜きにして楽しもうとする雷華。彼女の周りにも、やはりフェアリーたちが寄ってきた。
 当然彼女もフェアリーたちとの交流を断らず、むしろ積極的に行う。この地の魔術についての情報を訪ねたり、この地で活躍した魔術師の逸話などに耳を傾けながらじっくりと疲れを癒す。同時に彼女がこれまで活躍した様々なエピソードもフェアリーたちにせがまれるに違いない。その時は、少々の脚色を加えつつも快く教えることだろう。数多の戦場、数多の強敵、その全てを討ち果たしてきた活躍を。

 ――今回の事も合わせ、覇天超級の究極魔術師の英雄譚は、この地に住まう妖精に代々語り継がれる事だろう。こうしてこの地に新たな伝説が生まれるのも、決してそう遠くない未来かもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

小宮・あき
沐浴、つまりUDCアースでいうところの温泉ですね。
折角なのでお言葉に甘えて、浸からせていただきましょう。

ただ、私は聖職者であり既婚者。
さすがに服を脱いで浸かる訳には…。
「足湯」にしましょう。縁に腰掛けて、両足を。

妖精さんにとっては、沐浴の通り道だったのでしょうけれど。
廃村の教会、神への信仰の場を解放できて、良かった。
戦闘でお世話になった方を見掛けた場合は、お礼を伝えましょう。

“同じ水でも寒いと温かく感じ、暑いと冷たく感じる”。
何と便利な。これ、うちのホテルでも使えないかなぁ。
加温加湿の人工温泉より、絶対に人気が出るわ…!
気を抜くとすぐ商売の事ばかり考えてしまうのは、商人の悪い癖ですね。



●聖者でもあり、商人でもあり
 近くを通りがかる猟兵達に手を振り、集まるフェアリーたちと談笑しながら、のんびりとした時間を過ごしていたのは小宮・あき(人間の聖者・f03848)だ。
 戦いの中で見せた苛烈さはなりを潜め、今は桃色の髪に空色の瞳、それに柔和でほんわかした表情で穏やかな時を過ごしている。
 沐浴所とはいえ、聖者であり貞淑なる既婚の身であるあきは、縁に腰掛け足だけを泉の中に浸けている。それでも十分にその恩恵を受ける事だろう。
 疲労回復、傷の治癒、そして何より場合に応じ冷たくも、温かくもなるその特性。
「……これ、うちのホテルでも使えないかなぁ」
 ぽそりと呟けばその発想は止まらない。人工の温泉よりもはるかに人気が出る事は明白、フェアリーによれば泉はこんこんと湧き出すので少々持って帰っても問題ないとのこと。更には飲料としても使えるのだとか。
 とはいえ、すぐにはっとして首を振る。気を抜くと商売の事を考えてしまう気質を自戒しつつも、後に交渉してひとまず少量譲ってもらうことに成功するのだが。

 妖精たちにとって、教会は沐浴所のご近所でしかない。それでも、あの場所を悪しきものから解き放てた。建て直され、また人々の信仰の寄る辺となるのも決して夢ではなかろう。
 これからの平穏を祈り、あきはただ目を閉じ祈る。差し込む光に照らされるその姿は、実に美しいものであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

樫倉・巽
感謝されるようなことはしていないが
それなら水に浸かって行くことにするか
乾いた鱗には丁度良いだろうしな

静かに水に浸かり体を清める

空を見つめながら
この世界と龍について思いをはせる
龍の住む世界か
ならばそいつらと一戦交えるのも一興だな
いつになるかわからぬが楽しみに待つことにしよう

龍のごとき武将、虎のごとき武将ともまた違うだろうな
刀を使うものとしてあの者達と対峙できたのは幸せなことだったな

この道がどこまで続くかわからぬが
この歩の続く限り行くだけだろう
俺の剣の行き着く先まで

生まれた世界、この刀の生まれた世界、ともに救われたからな
あとはただ刀の導く先に歩み続けるだけ

沐浴後
礼を言って静かに立ち去る


ヘクター・ラファーガ
【アドリブ・絡み歓迎】

【WIZ】
俺は……少し休むとするよ。
弟はやっぱり俺より強かった。瀕死を狙わないと勝てないくらいだ。──いや、俺はただアイツと一緒に死のうとしただけだ。それどころか、俺は弟に二度、フラカンにも背中を押されたんだ。
もう二度とあんな真似はしねぇ。俺は、今度は"猟兵"として生きるよ。

【WIZ】
水浴びでもするか。体中焦げて熱いぜ。
フェアリーたちに治療を任せつつ、寝転んで空でも仰ぐ。久々の故郷だ。それに戦いの後だからな。のんびりしてもバチは当たらないだろ……zzz



●戦いを終えた者達
 ――異性の猟兵達に気を遣い、最後に沐浴所を利用する男性の猟兵。その中で、ふうと大きく息を吐いて天井を見上げていたのは、ヘクター・ラファーガ(風切りの剣・f10966)。

 破壊の魔女、アクルス。自身の宿敵であり、弟。筆舌に尽くしがたい因縁に終止符を打ったというのに、その表情は明るいものではなかった。
 手傷を負った弟に、やはり勝つことはできなかった。いや、違う。最初から自分は勝つつもりなどなかった。それでも自分は生きている。全身に負った火傷は外見からすれば痛ましいものだが、泉に浸かる事でそれも徐々に癒えていく。
「何を悩んでいる」
「おぁっ!?」
 ぼんやりとしていた彼の隣に身を沈めながらそう声を掛けるのは、樫倉・巽(雪下の志・f04347)。彼も又、冷気によって乾いた鱗に丁度よかろうと水を浴びに来たのだ。
 最も、先に声を掛けたもののそれ以降彼は特に何も口に出さない。暫し泉に身を沈め、そしてすぐに身体を拭くと服を纏い立ち去ろうとする。
「……なあアンタ、アンタは何のために戦うんだ」
 その背中に、ヘクターはそう問う。巽は、何とはなしに天を見上げながら、再び腰に提げ直したその刀の柄に手を添える。
 既に己の故郷は救われた。そして、携える剣の故郷も。様々な強敵と果し合い、そして一層その剣は磨かれてきた。それは龍の如き軍神。それは虎の如き知将。それは――第六天の魔王。
 それでも道はまだ続いている。生き続ける限り、己の剣の道の先まで歩み続けるだけ。強いて、言うのであれば。
「この世界の龍と、一戦交えてみたいものでな」
 ふ、と。僅かに笑みを残して巽は立ち去る。
 残されたヘクターは、はあとため息をつくと同時に、どこからともなく湧き上がる笑いをそのまま吐き出した。
 自分はただ死ぬつもりでいたのだ。勝利も敗北もかなぐり捨て、贖罪を盾にして全てを終わらせようとして。けれど、再び弟に背中を押された。それだけでない、己が主神たる神にさえ、彼は生かされた。ならば――自分がやるべきことも、おのずと決まるというもの。
 水面に浮かび、全身の焦げ跡や火傷を満遍なく泉へつけながら、天井を見上げ微睡む。久方ぶりの故郷なのだから、少しくらい罰は当たらないだろう、と。
 陽は翳り、徐々に薄れていく。夜闇の下星々と月光が見下ろす中一人の青年は目覚める。それは確かに、彼が猟兵となった瞬間だった。
 ――妖精たちに「猟兵さん」と言われて起こされ、あたりが暗くなっていることに気付いたことで、というのも、なんとも締まらない話ではあるのだが。

 こうして猟兵達の戦いは幕を閉じる。悪しき敵が討たれた事で村も段々と復興し、妖精の泉の噂や猟兵達の逸話に惹かれ、人もきっと絶えずにやってくるはずだ。
 多くのものが失われた。それは事実。けれど人々はそれを乗り越え、明日へ踏み出す。壊されても、また立ち上がって歩き出せる。
 そして何より、重ねた勝利の数だけ救われるものが必ずあるのだ。
 かくして妖精は記すだろう。白き悪意を打ち倒した、猟兵達の名と、その戦いを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年09月25日
宿敵 『白磁の魔女『アクルス』』 を撃破!


挿絵イラスト