3
ダンジョン・デリバリー

#アルダワ魔法学園

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アルダワ魔法学園


0




 アルダワ魔法学園に幾つも存在する学園迷宮の一つ。

「猟兵の皆さん、迷宮で新たな脅威を見つけてしまったようです」
 トウロは集まった猟兵達を前に自分が予知した迷宮について語りだす。

「今回見えたのは、迷宮の奥に置かれた黒尽くめの鎧。その鎧がどうやら災魔となり、学園の生徒達を襲うようです」
 かつては騎士の身を守るただの鎧だった。だがその役目を終えた後…なぜか装着した者を守るための鎧が、逆に人を傷つける災魔と化したらしい。
 その戦闘力は非常に高く、学園の生徒達では手に負えないだろう。

「ここは私達猟兵が脅威を排除する必要がありますね。けれど場所は迷宮…簡単に災魔の場所までは到達できないようです。いくつか仕掛けを越えていかないといけません」
 そしてトウロは唯一予知する事ができた仕掛けについての情報を伝える。

 迷宮に入ってすぐ、そこには石造りの大きな部屋。中央に固定された大きな鍋があり、中身は煮立った紫色の液体。その部屋の先には侵入者を惑わせる迷路。
 各々のやり方で踏破した先にはまた大きな部屋。先程の部屋と同じく中央に大きな鍋。しかし中身は何も入っていない。部屋の奥には閉ざされた扉が一つ。

「あからさまに用意された謎の液体と空の鍋。最初の部屋から液体を運んでいけば良いのだと思います。単純にそれだけではないのかもしれませんが…。けどその液体…スープでしょうか?。とても熱いので持っていくのに工夫した方が良いでしょうね」

 トウロは見えた予知から推測を組み立て、猟兵達に伝えるのであった。それ以外にも災魔の所へたどり着くために罠が待ち受けているだろう事も添える。

「皆さん…今回も皆さんを送り出すしかできませんが、きっと大丈夫だと信じています。無事とご武運を!」
 そう言って皆をテレポートさせるためグリモアを出現させた。

「迷宮を踏破するためには様々なやり方や知識が必要となるかもしれませんね…。あ、そういえば最近私の妹が難しい本を読んで勉強しているようで…これは我が妹ながら天才かもと!いや…天使か…。いやぁ、兄として鼻が高い」
 猟兵達が妹について語りだしたトウロを横目にテレポートしていった事に気付くのはしばらく経ってからだった。


野良ノラパン
 どうも野良ノラパンです。先日初シナリオを終えて、2作目になります。参加していただいた皆様ありがとうございます!
 今回も仕掛けが用意された迷宮が舞台です。シンプルに挑んでいただくもよし、私は大成功に繋がるギミックを考えるのが好きなので、裏をよんだり、工夫して挑んでいただいてもよし…皆様思い思いに冒険を楽しんでいただく手伝いができればと思っております!

●シナリオの目的
 迷宮の奥に潜む災魔(オブリビオン)の撃破。

●仕掛けについて
 現時点でわかっているのは、熱い紫色のスープ?を迷路を越えて運ぶというトウロがOPで推測した内容だけです。こぼしたり火傷しないように気を付けてくださいね!
5




第1章 冒険 『ごはんを届けて欲しいのです。』

POW   :    気合いで部屋を探します

SPD   :    注意深く部屋を探します

WIZ   :    事前に迷宮の情報を得てアタリをつけていきます

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

明日葉・雅
あーくんに運んでもらいながら私が探します。きっと、見つかりますわ。
『みーちゃんの変なポジティブはどうにかしてくれねぇかな。俺は便利屋じゃなぇぞ?』

SPDで挑戦
拷問具の中の器で鍋が入るものをキレイに洗って煮沸消毒。液体を入れた鍋を拷問具の器に入れて持っていく。多少零れても問題ないようにする。
熱が手に伝わらない様に鍋掴みを装着して。
運ぶのは明日葉(あーくん)、部屋を探して回るのは雅(みーちゃん)
気になる部屋があればそっと中を見て、中にいる何かに気づかれない様に気を付ける。
目的の部屋が見つかれば中へ入っていく。



「これを運んでいけばいいんですね…あーくん、お願いします」
 最初に今回の迷宮に訪れたのは明日葉・雅だった。彼女は予知で聞いていた部屋に到着するとすぐにオルタナティブ・ダブルを発動。もうひとりの自分―――男性人格『明日葉』ことあーくんを召喚する。
「あーくんに運んでもらいながら、目的の部屋は私が探します。きっと、見つかりますわ」
『みーちゃんの変なポジティブはどうにかしてくれねぇかな。俺は便利屋じゃねぇぞ?』
 鏡写しのように同じ二人が向かい合う。だが『明日葉』の手には鍋掴み、銅製の大鍋、そしてその中にすっぽりと収まる真鍮の鍋。あとエプロンを装備すれば料理中の女性といえるような見た目だ。今回このために用意した拷問具は銅製の大鍋。熱して使っても良し、ネズミ等の動物と組み合わせても良し…といった用途ではなく器具として本来の用途で使われている。事前に煮沸消毒もしていあるので清潔だ。
『熱くはないが…向かう場所はどこの食卓なんだ?』
 部屋の巨大な鍋から移した紫の液体から昇る湯気が熱さを伝えるが、鍋掴みと二重の準備のおかげで持って移動する事に支障はない。だが迷宮でこんな格好をしている自分を皮肉交じりに呟く。

 一人で二人は迷宮の奥へ向かう。『雅』が先行し進む先の状況を探り、そのすぐ後を『明日葉』がスープの入った大鍋を手に進む。行く先に気になる部屋があれば『雅』がそっと覗き込み、『明日葉』は鍋を覗き込んで…食べられるのだろうかとか材料なんだろうとか考えつつ暇をつぶす。特に罠もなく、迷路で時間をとられただけで二人は目的の部屋に到着した。
 
 到着した部屋に設置された巨大な空の鍋に大事に運んできた紫のスープを注ぎ込む。次につながる扉はまだ開かない。だが厚い石壁の奥で何かが僅かに動く音がした事を彼女達はまだ知らない。

成功 🔵​🔵​🔴​

チガヤ・シフレット
ダンジョン踏破とか、ちょっとわくわくするよな?
さぁて、どんな仕掛けが待っているか……。まぁ、何があろうと踏み越えていくだけだがな!

【SPD】
とりあえず、部屋をくまなく探ってみようか。
こんな時に便利なガジェットでもあればいいが……。細かいものでも大きく見えるようになるとか……蒸気を吹き付けたりして流れを見れば、隠し扉とかあったりは……。何とか楽に紫の液体を運びたいものだが。
いざ運ぶ段になったら気を付けてこぼさないように。
しかし、うーん、これは何だろうな。匂いとかは……流石になめたりするのは危ないか。
さて、鍋に移し終えたら何があるか。気を抜かずに周囲を見て回ろう



「ダンジョン踏破とか、ちょっとわくわくするよな?」
 迷宮探索という響きに心を躍らせてチガヤ・シフレットが最初の部屋に到着する。彼女はまず室内を調べようと自身のユーベルコード『ガジェットショータイム』を使用。彼女が召喚したのは…双眼鏡を眼鏡にしたような変なゴーグルに、ボタンが一つだけの大きなアイロンだった。
「何かヒントや隠し扉とかあったりは…」
 装着したゴーグルを通して見ると石壁に刻まれたヒビまでくっきりと確認できた。そして怪しいと思った場所に向かってアイロンのボタンを押す。噴き出した蒸気が壁に当たり、周囲に湯気が立ち昇る。その流れを注意深く目で追うが…特に怪しい動きは無かった。
「うーん、特に何もないかぁ。期待外れだな」
 部屋中の思いつく所全てを調べるが、予想していたような仕掛けも罠もなくがっかりした様子で、ピンクのポニーテールも心なしか元気がない。予知に従い先へ進もうと、大きな器に部屋の大鍋から紫の液体を移していく。
「しかし、うーん、これは何だろうな。匂いとかは……流石になめたりするのは危ないか」
 漂う匂いは酸っぱいような鼻の奥にツンとくるような、あまり好んで味見したくなるような気は起こさなかった。食べてみて身体に害がないものなのかどうか…それは勇気と無謀どちらかに振り切った者だけが確かめられるだろう。

 チガヤは迷宮の通路を気を付けながら進む。罠も仕掛けもなく、けれどスープを零しもせず目的の部屋に到着する。そして巨大な鍋の中に持ってきた紫の液体を流し込む…しかし次への扉は開かない。
「今度こそ仕掛けがあるのかもな…よし」
 最初の部屋でやったように彼女は再び室内を調べる。壁を注意深くゴーグルで調べ、怪しい箇所に蒸気を吹き付ける。立ち昇る湯気はただ揺ら揺らと天へ昇り、隠し通路の在処を証明はしなかった。部屋に生まれた白い煙は昇る。上へ上へと…真っ直ぐにではなく、ほんの僅かに天井の中央に向かうように…。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルチル・ガーフィールド
「ふむん・・・スープですから、熱いうちに運ばないとなのでしょうね・・・」なるべく最短ルートを探すべく、迷宮内に入った人がいれば(まだ、危険度も少ないところなので学生が潜っている可能性を考え)潜った人がいれば、マップをうつさせてもらう。仲間にも事前に情報共有し、先行して道しるべを書いていく「こっちに・・・進んでくださいっと」(カキカキ)「こちらの先は行き止まりです、バツっと・・・」(カキカキ)。ルートが確定した時点で、中華鍋に無理のない範囲でスープを掬い、運搬に加わる。運んだスープが冷めているようなら、ユーベルコードで炎を纏わせた剣で温める。「やっぱりスープは暖かくないとですよね~」



「ふむん…スープですから、熱いうちに運ばないとなのでしょうね…」
 最初の部屋の大鍋を見ながらルチル・ガーフィールドは、今自分がいる迷宮の最初の仕掛けについて考えを巡らす。予知で聞いていた内容から、最奥まで到達していないまでも、この迷宮の道を知っている学生を探して聞き込みを済ませている。中に入る前に彼女はできる限りの準備をしっかりと済ませていた。しかし昨今猟兵にしか退治できない災魔が増えたことで魔法学園の学生だけでの探索ペースが落ちており、分かった情報は僅かであった。

「こっちに…進んでくださいっと」
 ルチルは仕掛けの肝と考えたスープは後回しにし、まず目的の部屋までのルートを確保するために迷路を進む。道はそこまで複雑ではなく、途中妨害する罠や災魔もいないため進むべき最短ルートが地図に刻まれるまで時間はそうかからなかった。可憐な見た目に年若い外見、まだまだ駆け出しの猟兵かと見た者は思うかもしれない。だが限られた情報から対応を考え的確に実行に移した行動はベテランの風格が感じられ、実際地図の作成も手慣れている。最初の部屋に戻りながら、後に続く猟兵に対しての道標を残していく気遣いも忘れない。
 
 最初の部屋に戻ったルチルは大きな背負い袋から使い込まれた中華鍋とお玉を取り出し、丁寧な動作で大鍋の中身を掬って移していく。
「こんなものでしょうか…ではお届け致しましょう」
 零さないように、そして最短のルートを通って中華鍋一杯の紫色のスープを運ぶ。再び進む彼女の歩みを邪魔するものもなく目的の部屋に到着した彼女がとった行動は…。
「やっぱりスープは温かくないとですよね~…フレイム・ウェポン!!」
 ルチルがユーベルコードを使用すると中華鍋が赤く熱を帯びた。煮立っていたスープの温度はほとんど下がらずに運べたが、彼女は例え紫色の謎スープであっても料理への細やかな配慮を忘れない。程よく温まった湯気立つスープを部屋の巨大な鍋に注ぎ込む。するとすぐに奥へと続く扉が音を立てて開く。
「正解だったみたいですね~」
 開いた扉を見て自分の考察が間違っていなかったと確信する。そう、彼女がとった一連の行動は最初の仕掛けに対して満点に近いものだった。ルチルが扉を通り奥へ進み、部屋を調べていた猟兵達も続く。
 
 ルチル達が通ったしばらく後、まるで冷めたスープに閉口するかのように扉は猟兵達の行く手を閉ざすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月篠・あかね
四辻・樒(f04432)と同伴
【WIZ】事前に迷路を探索マッピングして置く。

「布でもかぶせたら気球みたいに浮き上がるかなー。この天井なら無理かなぁ。」
鍋の周りをウロウロ
「辻ちゃん、みてみてー!マズそうな紫の液体なのだ。」
そして再び悩んで
「これは・・。トマトをいれるしかないかな。きっと美味になるのだ!」
(辻ちゃん?なにしてるのだ?)
「二人でおいしくするのだー!」
(持ってきた大量のトマトを鍋にこれでもかってくらい、だばーする。)
水位の上がって溢れそうになった液体を水筒につめて。
辻ちゃん行くのだ!レッツゴーなのだ!
扉の前の鍋に、水筒から液体を注ぐ、足りなかったら往復GOGO~♪

アドリブ歓迎


レンカ・コーラル
皆さんに合わせてテレポートしていけば迷宮前でしょうか。
迷宮に入る前にこの迷宮の情報を得るために聞き込みをしましょう。知識があれば攻略もきっと捗りましょう。
それにしても…。ああ、お仕事する兄様も素敵でした…こっそり隠れて来た甲斐がありますわ。
私にとっては初仕事。頑張たいわ。

液体を運ぶという仕掛けであれば運ぶための物があるはずです。
ないなら安全に持てる容器を譲ってもらいましょう。
高低差と耐熱ホースのようなものがあれば簡単なのですが…さすがにそれはありませんよね。
お友達の小鳥型の精霊と一緒に探索開始です!

アドリブ&絡み歓迎


四辻・樒
月篠・あかね(f04303)と同行

【WIZで判定】
事前に空の鍋までの移動ルートを調べてから
紫色のスープを保温水筒に入れて大事に運ぶ。

「確かにあんまり美味しくなさそうだなぁ。
チョコバー入れたら美味しくなるかもっ」
名案が思い付いたとばかりにごそごそとチョコバーを取り出して鍋に入れようと。

「月ちゃんもトマト入れるんだ。これでばっちりだねっ」
月ちゃんのトマトと一緒に沢山チョコバーを鍋に投入して
「これでばっちりだね!じゃあ気を付けて持っていこうー」

「折角味を整えたんだもんね。冷めない内に持っていかなきゃ」
月ちゃんと一緒に調べたルートを爆走し
空の鍋に紫の液体を注ぐ。
「ふー、良い仕事した後は気分がいいねー」



「あまり情報は手に入りませんでしたわ…。でも迷宮前でお仕事する兄様も素敵でした…こっそり隠れて来た甲斐がありますわ」
 朱と蒼の小鳥型精霊達にグリモア猟兵としての責務を果たす兄の姿を誇らし気に話しながら、レンカ・コーラルは歩いていた。この世界に訪れた時も、情報収集に学園に寄った帰りの時も他の猟兵の陰に隠れてこっそりと見ていたので兄には気づかれていない。もし妹至上主義の彼に見つかっていたら、彼女は迷宮の中に入る事はできなかったかもしれない。
「私にとっては初仕事。兄様の予知ですし…頑張りたいわ」
 事前の情報収集では大した情報が得られなかった。しかし猟兵としての初仕事に対する意気込みは何も変わらない。踏み出す一歩一歩が少し大きくなり、レンカが最初の部屋に到着すると部屋の中央から声が聞こえてきた。
 
「辻ちゃん、みてみてー!マズそうな紫の液体なのだ」
 大鍋の中を覗き込みながら月篠・あかねが率直な感想を口にする。
「確かにあんまり美味しくなさそうだなぁ」
 隣で一緒に覗き込んでいた四辻・樒もその感想には同意をした。大半の人はこの毒々しい色をしたスープを見たら同様の思いを抱くだろう。だが先に進むためにはスープの味が大事な訳ではないと予知から基づく情報に出ていた。そう、気にしなくてもいいのだ。

「これは…そうなのだ!」
「…いいこと思いついた!」
 スープを見ていた月篠は何かを閃いた。四辻は名案が思い付いた!とばかりに手を叩く。

「トマトを!」
「チョコバーを!」

「「入れるしかない!!」」

 月篠はこんなこともあろうかと準備してきた大量のトマトを箱から豪快に鍋へと投入する。四辻は自分が大好きなチョコバーを両手一杯取り出して鍋に迷いなく投入する。紫色の謎スープが何だか色濃くなり、表面にはぷかぷかとトマトが浮かぶ。大半の人はこの見た目に対して言うだろう…悪化したと。

「きっと美味しくなったのだ!」
「これで、ばっちりだねっ!」
 自分達が一味、二味と足した大鍋の前でハイタッチをする二人であった。
 
「あかねさん…それに樒さん?」
 部屋で繰り広げられていた様子に目を奪われていたレンカだったが、ようやくその当事者たちが知り合いだと気づき声をかけた。同じ旅団で知り合った三人は思わぬ出会いを手を取り合って喜ぶ。そしてマンゴー達はスープを運ぶ前に次の部屋へ向かうためのルートを確認しておこうとするが、すぐに他の猟兵が残した…目的の部屋まで道を示す目印を見つけるのであった。

「じゃあ気を付けて持っていこうー」
 四辻は用意してきた保温水筒三本にスープを注ぎ込んで、月篠とレンカにも手渡した。大事に水筒を抱えて三人は迷路を目印に従って進む。右へ左へまた右へと残された手がかりの通りに行くとすぐに目的の部屋にたどり着く。迷子にならなければ、かかる時間は十数分程度だった。目的の部屋の大鍋に三人は運んできたスープを注ぐ。しかし奥へ進むための扉は開かなかった。
「足りなかったら往復GOGO~♪。辻ちゃん、レンカちゃん行くのだ!レッツゴーなのだ!」
 鍋の大きさに対して量が足りないと考えた月篠は、二人に声をかけて再び最初の部屋に戻るため駆け出した。その案に頷いて、後に続いて走り出す四辻とレンカ。スープを汲んでは運ぶ。注いでからまた戻って汲むの繰り返しを三人は何回もこなした。ルートが分かってる上に何往復もするので行って戻ってくるまでの時間も段々短くなっていった。扉の前の大鍋の中身が半分程の量になり、紫色の湯気が天井まで立ち昇った時、先へ続く扉が音を立てて開いた。
「開きましたわ!」
 扉を指さして喜ぶレンカ。その周囲を小鳥型の精霊達も飛び交って成功を祝う。
「おぉー、やったのだ!」
「ふー、良い仕事した後は気分がいいねー」
 月篠と四辻も向かい合って満足そうに喜び合っている。

「でも…ここから先は兄様の予知にはなかった所ですわ。一層気を付けていきませんと…見守っていてくださいね兄様…」
 兄から贈られた魔導書をぎゅっと胸に抱き、レンカは扉の向こうに伸びる暗い通路を見据える。猟兵達は慎重に進む、しかしこの先に待つ罠が何か?紫のスープは一体どんな味になったのか…それは誰にもわからなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『精霊の遊戯と魔法の通路』

POW   :    『炎蜥蜴』を捕まえる。<災魔を倒せるほどの力>を示すと近づいてくる。力を見せてる間はそれを見続ける。

SPD   :    『疾風鼬』を追いかける。<疾風さえもとまる存在>を示すと興味を持って留まる。存在が薄いと通り過ぎる。

WIZ   :    『霧雨蛙』を探す。<巧妙に隠れたモノ探し出せる知識>を示すと姿を現す。見当違いな行動をすると逃げる。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 扉の先、石造りの迷宮を進む猟兵達。いくつかの分岐を経て彼等が次に足を踏み入れるのは…三種の精霊を象徴する部屋のどれかだった。どの部屋にたどり着くかは強き意志か、猟兵が持つ力によって選ばれる。
 
 ●炎蜥蜴の間
 部屋の中には炎の精霊型の石像が一つ。その像を取り囲むように災魔を模した石像が無数に置かれている。部屋の隅には赤く光る魔法陣。炎の蜥蜴像は魔法陣を目指すが怪物に阻まれ動けない。
 この部屋を訪れし力溢れる猟兵達よ、炎蜥蜴の道阻む災魔を己が力で退治せよ。力を示せば炎の蜥蜴は自ら近づいてくるであろう。
 
 ●疾風鼬の間
 部屋の中には風の精霊型の石像が一つ。疾風の鼬を模した石像は部屋の中を動き続ける。緑の光放つ魔法陣の上も風のように一瞬で通り過ぎる。
 この部屋を訪れし素早き猟兵達よ、好奇心旺盛な風の精霊は自身の興味を惹く者が現れればその足を止める。だが、精霊を留めておけるのは魔法陣の上でだけ…一瞬の機会を狙うのだ。
 
 ●霧雨蛙の間
 部屋の中には水の精霊型の石像が無数に並べられている。台座上の蛙の石像は両腕で抱えられる程の大きさ。だがその姿は一つ一つ違う。部屋の奥には霧雨蛙を描いた石のレリーフと青く光る魔法陣。
 この部屋を訪れし賢き猟兵達よ、聖なる蛙を見つけ出して魔法陣の上に置くがよい。真なる智あれば道は開かれるであろう。
 
ルチル・ガーフィールド
炎蜥蜴の間に入る

「炎の精霊サラマンダー・・・? あの魔方陣を目指しているのでしょうか~ でしたら、わたしが露払いを~!!」ルーン・ハルバードにコードを纏い(「フレイム・ウェポン!!」)石像の進む道を切り開く。初めの数撃で自分の力を認め石像が寄ってきてくれるようなら・・・「あちらに行きたいのですよね?ついてきてください」【救助活動】

石造のそばに寄り添い守りつつ少しずつ進み、攻撃で周囲を薙ぎ払う→炎蜥蜴が寄ってくるのを待つ→攻撃で周囲を薙ぎ払うを繰り返し、護衛の兵のように一緒に魔方陣を目指す(ミレナリィドールなので、ある程度の意思を持って動く石像は、人間などと同じような存在として接する【優しさ】)



 迷宮を進むルチル・ガーフィールドが到達したのは炎蜥蜴の間であった。奥へと続く道は閉ざされており、部屋の中は災魔を象った石像が多数。ルチルの目を引いたのは、災魔に追いやられたように部屋の隅で囲まれている炎の精霊像だった。そして対角線上の反対側には仕掛けに関わりがありそうな魔法陣が赤く輝いている。彼女はおおよそ先に進むための方法は察していた。
「炎の精霊サラマンダー…?もしかして、あちらの魔法陣を目指しているのでしょうか~。でしたら、わたしが露払いを~!!」
 ルチルは装飾に凝った手斧のような武器を取り出し、左手で握ったまま体の正面に構える。柄の部分が瞬時に伸びて真なる形状―――ハルバードとしての姿を現す。そして敵が密集する戦列の中に飛び込み、食い破るようにルーン・ハルバードを振るうと、その動きに呼応するように黒い炎の旗が宙に揺らめいた。炎の精霊を模した石像との間にある災魔型の石像幾つかを一度に破壊。次に彼女は今自身が攻撃した対象を一瞥した。すると完全に破壊するまで至らなかった石像の断面や欠けた部分から黒炎が立ち昇る。石の災魔は彼女の前で崩れて燃え尽きた。これは飛び込む際にハルバードに纏わせていたフレイム・ウエポンの効果。焼くかどうか、火加減も彼女の意思で自由自在だった。
 
「あちらに行きたいのですよね?ついてきてください」
 炎の蜥蜴像の傍に立ち、石像に声をかけたルチルの瞳は次に魔法陣を見据える。行く手を遮る災魔の像達を突き構えから一閃、二閃、大きな動作でハルバードを振るう。その度に災魔の石像は砕けて数を減らしていった。ルチルが道を拓き、歩みを進めると…そのすぐ後ろを精霊の像がついてくるように動き出す。阻む障害は全てルチルが文字通り排除しながら赤い魔法陣に向かって一直線に進んでいく。ほんの十分程で魔法陣の上に精霊像が重なる。赤い光が一層強くなり、先へと続く扉が開いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

赤月・句穏
【WIZ】
心情
ここ…どこでしょう。あ、そうでした。マンゴーのトウロさんにお会いしたのでした。ふむむ。…先へ進めばよいのですよね。謎ときでしょうか?


蛙探し
魔法陣の蛙さんレリーフを観察してから、じっくり順番に蛙を眺めます。目の位置、ポーズ、体の模様にも注意しましょう。
レリーフと似たような石造があれば抱えて魔法陣のところへ。
なければ、見比べて一匹だけ仲間外れのモノを探し出して選びます。

不正解したら…
「むむぅ。これも、違いますか。でも可愛らしいので文のお土産にしたいですね。」

正解したら…
「あら、これが当たりでしょうか?」
ああ、文にいいお土産話が増えそうですね。

楽しそうに色々謎解きをして進んでいきます。



「ここ…どこでしょう。あ、そうでした。マンゴーのトウロさんにお会いしたのでした。ふむむ」
 赤月・句穏は腕組みをしながら周囲を見渡し、今現在自分が置かれた状況を確認する。アルダワ魔法学園で起こる事件を聞き、グリモア猟兵に導かれてこの迷宮を訪れた。何だか熱そうな鍋がある部屋だったり、右へいったり左へ行ったりと不可思議な矢印が描かれた通路を歩いて…。
「そして今ここに…先へ進めばよいのですよね」
 周りの光景は変化のない石の壁ばかり。であればここまでと同じく進むだけ…実は迷子なのだがその認識はなく、前へと歩き出す句穏の足取りは軽やかだった。
 
 そして導かれるようにたどり着いたのは霧雨蛙の間だった。部屋に並んだ蛙の像の可愛さ?に句穏は目を輝かせる。お土産に良いかもしれないと思いつつも、奥にある石のレリーフの存在と併せて部屋の仕掛けが謎ときなのだと理解した。食い入るようにレリーフの霧雨蛙の形状や目の位置、ポーズ…体の模様の有無や場所等を覚えようとにらめっこをする句穏。しばらくして次は台座に飾られた蛙の像を順番に見ていく。
「これは…目がつぶらで可愛らしいですね。こちらはどことなく卵型でキュート…あ、この子は水玉模様なんですね…んー迷います…」
 じっくりと一つ一つを見ていって目的の蛙を探していく。
「これが…一番良いですね」
 一つを選び出して奥の青く輝く魔法陣に像を置く…しかし扉に変化は無い。
「あら?違いますか…あっ。そう…違いましたね」
 手をぽんと叩いて何かを思い出したかのように句穏は持ってきた蛙の像を横に置いて、台座に並ぶ蛙達の方へ駆け出す。間もなく別の石像を両手で抱えて持ってきて魔法陣に置くと…奥へと続く扉が今度こそ開く。レリーフに描かれたのと同じ石像を正確に選び出して持ってきたのだ。
「あら、これが当たりでしょうか?いいお土産話ができましたね。さて、早く片付けてあの人の傍に戻らないと」
 ゆっくりとした足取りで句穏は歩き出した…最初に訪れた時よりも蛙の像が一つ減った部屋を背にして…。

成功 🔵​🔵​🔴​

明日葉・雅
「石像が多いですね。これはどうすれば……」
『あいつの通り道を作ってやればいいんじゃないか?』

POWで挑戦
明日葉(あーくん)に身体を明け渡す
魔法陣への道を阻む像をすべて斬り捨てる
黒剣の刃を広く厚くした大剣みないにして振り回すさ
「力を見せろって?それじゃ遠慮なく」
断罪の一閃にてすべての邪魔者を切り捨る
蜥蜴の像が進むのを邪魔するのがいりゃ端から砕いてやんよ
無事に魔法陣に重なるまで見届けたら、雅(みーちゃん)に身体を返すぜ



「石像が多いですね。これはどうすれば……」
 明日葉・雅の眼前には災魔を象った石像が多数並び立つ。その石像達の視線の先、部屋の隅には炎の精霊像が僅かに見える。彼女が進んだ先にあったのは炎蜥蜴の間。像は微動だにせず、奥に続いているであろう扉は固く閉ざされていた。先に進むためにはどうすればいいのか?彼女の疑問に内なる声が答えた。
『あいつの通り道を作ってやればいいんじゃないか?』
 もう一つの人格『明日葉』が事前の情報と部屋の状態から眼前の部屋の仕掛けを予測する。恐らく、あの精霊像と魔法陣を結ぶ道を確保すればいいのだろうと。
「なるほど。では…お任せしますね」
 ぽんと手を合わせ、『明日葉』の案に納得する『雅』。所狭しと並ぶ災魔の像、精霊のための道を切り拓く力が必要ならば得意な方が受け持てば良い。そんな判断から『雅』は『明日葉』へと身体の主導権を受け渡す。
「さ・て・と…俺の見せ場ってね」
 左手で髪をかき上げながら、災魔の像を見る目が殺気を帯びたものへと変化する。変わったのはそれだけではない、手にした大鎌の刃が広く厚くそして昏く…その武器は相応しい姿に変わる。罪を断つに相応しい形へと。
「力を見せろって?…それじゃ遠慮なく」
 振りかぶった得物を横一閃。精霊の像から魔法陣の間に黒い線が一筋走る。切断された面から災魔の像が二つに分かたれ床に砕けて落ちる。明日葉が放った一撃は邪魔をする災魔の像を全て斬り捨てていた。
「さて、邪魔するなら端から砕いてやんよ」
 武器を肩に担ぎながら災魔(の像)を威圧する。彼女の頼もしさゆえか炎の蜥蜴を邪魔するものはなく、赤い魔法陣に向かって精霊像は進む。七分程で魔法陣の上に像が重なる。赤い光が強くなり、先へ続く扉が無事に開いた。
「楽勝だな。じゃあ俺は引っ込むとするか…後は任せたからなっと」
 無事に先へ続く道ができたのを確認して『明日葉』は再び『雅』へと戻るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アサノ・ゲッフェンルーク
「わぁ。水の精霊…の石造かな。あ、水鞠さん!?壊しちゃダメ、ダメかな!?」
石造に攻撃しそうな『泡沫ノ長杖』の気まぐれな水精霊『水鞠』さんを止めつつ、聖なる蛙を探してみようかな。

WIZで挑戦。
【範囲攻撃6】【第六感13】【残像6】を主に使用するよ

水鞠さんにお願いして室内に水泡の花弁を散らす
範囲攻撃の攻撃威力は落して、広い範囲に密度多めに、かな!
第六感で不思議な感じのする場所を視認しながら気配を探すよ
水泡の残像も合わせて蛙の目を誤魔化して混乱させたりできないかな?

「水鞠さん、攻撃じゃないからね?威力は落して…落してほしいかな!?」
他の精霊の気配でご機嫌斜めな水鞠さんも可愛いかな!!

アドリブ大歓迎!



「わぁ。水の精霊…の石像かな?」
 アサノ・ゲッフェンルークは眼前に並ぶ無数の蛙の石像を見て無意識にそんな感想を口にする。世界には蛙の姿をした水の精霊もいるかもしれないが、今彼女の前に居並ぶのは蛙の型をした石像達である。彼女は…いや彼女達は何かを感じ取ったのかもしれない。アサノが持つエレメンタルロッド『泡沫ノ長杖』に宿る精霊『水鞠』さんが姿を現すと、所狭しと並ぶ蛙達を睨みつけるように見渡した。
「えっと、水鞠さん…何か気になる事でもあるの?」
 どこかピリピリとした雰囲気を放っているのを感じ取り、様子を伺うように聞いてみたが『水鞠』さんは石像を次々と見つめ続けたままだった。声をかけても返事をしない様子にアサノは肩を落としながら一人で先に進むためのヒントを探し始める。魔法陣と霧雨蛙が描かれたレリーフ、そして事前の情報から並ぶ蛙達の中から聖なる蛙を探さなくてはならないという結論に至った。但し今にも石像に攻撃しそうな雰囲気の自身の精霊を抑えつつ…という条件がついてはいるが。
「水鞠さん、お好きに遊んでくださいな…あ!?壊しちゃダメ、ダメかな!?」
 アサノが杖を天高く掲げると漂っていた『水鞠』さんが杖の近くに戻り、それに合わせてユーベルコード『水鞠の舞遊』を発動する。杖が無数の水泡の花弁に変化し室内に広がっていく。絶妙のコントロールで広範囲をカバーしつつ密度も損なわれていない…だからこそ蛙の石像達に鋭利な刃物で切り裂かれたような傷が次々とつけられていく。それに気づいたアサノは『水鞠』さんに命令、いやお願いするが時すでに遅し…霧雨蛙の像達は見るも無残な姿になり果てた。
「攻撃じゃないのに…威力落として欲しかったかなぁ…」
 アサノがとった方法の結果は、部屋にあった蛙の石像ほぼ全損というものだった。傷だらけになったもの、台座から落ちて砕けたもの、無事なのは唯一1体だけ。だが、この1体がアサノが探していた聖なる蛙であった。正解の石像だけが残ったのはアサノの第六感のおかげか?それとも精霊の気まぐれがたまたま当たったのか?どちらにしても、惨状を前にして床にへたり込んだアサノ・ゲッフェンルークが正解を引き当てた事に気づくのはしばらく後だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ステラ・カガミ
疾風鼬の間に入ります。
好奇心旺盛という精霊に自慢の歌と踊りを披露して興味を惹いてみます。
歌唱・パフォーマンス・鼓舞・力溜め・誘惑を使用して、魂のこもった歌と情熱的な踊りを披露して興味を惹いて動きを止めた隙に捕まえます。
(サウンド・オブ・パワーも必要なら使用します)
愛用の露出度の高い踊り子の衣装を着てより見た目が華やかになるようにします。
(誘惑も使用します)
『あたしのとっておきの歌と踊りを特別に見せてあげる。楽しんでくれたら嬉しいわ』
精霊でも観客にはかわりありませんので、いつもの舞台の時と同じく、全力で真剣に歌い、踊ります。



 ツインテールにした銀髪、紫の瞳に露出度の高い踊り子の衣装を身に纏った猟兵であり、踊り子兼歌姫のステラ・カガミは疾風鼬の間に辿り着いていた。彼女がまず目にしたのは不規則に動き回る鼬の石像。奥には閉ざされた扉、部屋の中央には緑の光放つ魔法陣。
「先に進むためには、あの子を捕まえないといけないのね」
 ステラの存在に関わらず動き続けている石像を目で追いながら、今自分がやらなければならない事を確認した。そして彼女は魔法陣に向かって歩き出す。舞台へ上がるように堂々とした足取りで。
「あたしのとっておきの歌と踊りを特別に見せてあげる。楽しんでくれたら嬉しいわ」
 肌理が細かく白い中指が導くように右腕がゆっくりと上がる。石像が床を擦る音だけの部屋に、楽器のように喉をふるわせるステラの歌声が広がっていく。緑の光を浴びながら彼女は歌い踊る。小さな動きから大きな動き、強弱の緩急が観客の視線を魅了し外させない。そして耳に届くのは胸が熱くなるような情熱的で明るい節回し。
「さぁ、今日は特別…あなたもこっちにきて踊りましょうよ」
 ステラが手を差し出して風の精霊像を誘う。すると無軌道だった石像の動きが変わった。彼女を中心に大きく円を描くように回り始める。くるくると回転しながらの動きはまるで踊っているようだ。その変化を見たステラはクライマックスへと向かう。歌い踊るステラに引き寄せられるように石像は徐々に部屋の中央へ近づいてくる。10、9、8…、小さな円と大きな円の差はほとんどなくなってきた。再びステラは観客に向かって誘うように手を差し出す。
「…ありがとう。楽しんでもらえたかしら?」
 彼女は猟兵としてではなく踊り子兼歌姫としての誇りと魂をこめたステージを終える。拍手ができるものは残念ながらこの部屋にはいない。称賛の声の代わりにステラに聞こえたのは奥へと続く扉が開く音。彼女が今日も最高のパフォーマンスを発揮したのを、緑に輝く疾風鼬だけは知っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『騎士の怨鎧』

POW   :    戦鎧の妙技
【縦横無尽の剣閃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    闘鎧の秘技
【自身に刻まれた戦闘経験から的確に】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    魔鎧の禁忌
【魔核の稼働制限を解除。超過駆動状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠茲乃摘・七曜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


迷宮の奥、ついに猟兵達は災魔が待つ部屋への道を切り拓いた。魔法の明かりで照らされた大きな部屋。4本の大きな石柱が支える天井は高く、調度品の類の無い広い場所。禍々しい意匠の黒鎧が身の丈程のロングソードを手に、侵入者を待ち受けていた。攻防共に隙は無し。戦いの後に届くのは勝利の報せか…それとも…
ルチル・ガーフィールド
「騎士を守り、騎士と共に人々を守るのが・・・鎧である貴方の・・・本懐でありますでしょうに・・・・・・」騎士である主人(f03956)の姿が目に浮かび、悲しさに心を震わせながらルーンソードを抜く・・・「フレイム・ウエポン!!」無差別攻撃をかいくぐり・・・渾身の一撃(【属性攻撃】【全力魔法】)を打ち込む


ステラ・カガミ
『ここまでの試練を乗り越えられるだけの力のある冒険者が来るのを待っていたのかしら?
あなたのお眼鏡に敵うと良いのだけど』
サウンド・オブ・パワーを使用して能力を上げてから、鎧に戦いを挑みます。
(歌唱・パフォーマンスを使います)
今回は他の方もいるようなので、積極的にその方の援護に入ります。
(ステラの能力は援護向きなので)
『援護はあたしに任せて』
扇を使って踊るように攻撃、回避したり、扇で敵の攻撃を受け流すなど、踊りの技を駆使して戦います。
(パフォーマンス・武器受け・見切りを使います)



 石造りの迷宮にゆっくりとした足音が響く。一番最初に災魔が待つ部屋に辿り着いたのはルチル・ガーフィールドだった。彼女は部屋の入口で立ち止まるが黒き災魔は動かない。まだ敵として認識していないのか、それとも昔黒鎧を纏っていた騎士の矜持の名残か…災魔と化した鎧は部屋の中央でただ立っているだけ、ルチルも立ち止まったままそんな黒騎士をじっと見つめる。不思議な静寂はルチルの後方から聞こえてくる軽快な足音によって破られた。
「あれ…先に来ていた人がいたのねっ。こんな所で立ち止まってどうしたの?」
 自分と同年代ぐらいの少女の姿を見つけ、ステラ・カガミは肩に入っていた力が少し抜けたのを感じた。同時に首を傾げながら眼前の部屋に入らずにただ立っている彼女への疑問を口にする。
「…あの災魔が…私には何か痛ましく感じられるのです…」
 ルチルの答えを聞いたステラは視線の先を追って同じように黒騎士を見つめる。
「ここまでの試練を乗り越えられるだけの力のある冒険者が来るのを待っていたのかしら?」
 動かぬ災魔を見て彼女が抱いた感想はそういうものだった。不動の黒騎士がまるで自らが戦うに相応しい敵を待ち構えているように見えたのだろう。暫しそれぞれの思いを抱いて敵を見つめ続けた後、ルチルは徐にルーンソードの柄に手をかける。
「目的を果たしましょう。私達はそのために来たのですから…私が前に出ますね…」
 ルチルが意志を示すように一歩前に出る。
(あれれ?同じ子…だよね?)
 ステラは突然自分の前に出た背中から、先程まで同年代か少し上くらいだと思っていた少女が急に大人の女性に変わったような雰囲気を感じた。けれどそれも一瞬。自分も戦闘準備をと気持ちを切り替える。
「じゃあ援護は任せて。えっと…あたしはステラ。今回よろしくねっ」
 彼女は美しい装飾の施された愛用の扇をぱっと広げて構える。
「ルチル・ガーフィールドと申します。こちらこそよろしくお願い致しますね」
 ステラの方を向き、優しく落ち着いた口調で丁寧な自己紹介を述べる。互いに笑顔で挨拶を交わし、少し打ち解けた二人を黒騎士の赤い瞳が見つめていた。
 
 先の宣言通り前に出たのはルチル。近づいてきた彼女を『敵』として認識した黒騎士が身の丈ほどもある剣を構える。圧を感じても立ち止まらないルチル。彼女の足を前に踏み出させるのは堅い意志。心に浮かぶは長身の偉丈夫…逞しい主人の姿。
「騎士を守り、騎士と共に人々を守るのが・・・鎧である貴方の・・・本懐でありますでしょうに・・・・・・」
 誰かを守るべき騎士と共にある鎧が災魔に変わり果てた。それがルチルの心を悲しさで震わせる。ルーンソードを抜き放ち黒騎士の間合いに迫るルチル。彼女にとって頼れる主人はここにいない。だが…今共に戦う仲間は間違いなくここにいる。
「今日一番のステージいっくよー!」
 ステラの良く通る綺麗な声が部屋に満ちる。始まるのは踊り子兼歌姫の彼女の舞台、仲間を助ける援護の歌声。ずば抜けた歌唱力とパフォーマンスが自身と仲間の力を大きく高める。ルチルが踏み出す一歩が一段と力強さを増す。しかし彼女が間合いに入った瞬間黒騎士の剣が光る。否、光の点滅のように刀身が消え…現れる。次にルチルが見たのは視界を埋め尽くす縦横無尽の剣閃。けれどステラの援護で力を増しているルチルにとって躱せないものではなかった。
「フレイム・ウエポン!!」
 無差別攻撃をかいくぐり、力を乗せた渾身の一撃を災魔に打ち込んだ。もう眠ってくださいと思いを込めた一撃。打撃面から炎が燃え上がり黒鎧を真紅が包む。
「ギギギギィィィッ」
 焼かれながら…黒騎士の中から錆びついた歯車が回るような唸り声が聞こえてきた。強力な一撃を受けた事で災魔は猟兵に対しての警戒レベルを引き上げる。黒騎士は魔核の稼働制限を解除し、超過駆動状態に変化…それによって態勢をすぐに立て直し、素早く剣を構え直す。むしろ態勢を崩したのは渾身の一撃を打ち込むも、倒しきれなかったルチルだった。体を起こし、敵を見据える彼女をさらなる無差別攻撃が襲う。
「ハイ!」
 ルチルを切り裂かんと迫る剣。しかし間に割り込むようにステラが飛び出し、掛け声を発しながら扇で叩き落す。だが剣閃は一つではない。続けて上段から切り下す一撃。
「そうそう!」
 ステラは右斜め前方にステップを一ついれながら扇で受け止め払う。黒騎士は剣を引き、喉元を狙って突きを繰り出す。
「そう、いい感じ!」
 今度は突きの攻撃線の外側に大きく一歩踏み出し…相手の剣の根元を跳ね上げる。その後も次々と無差別の剣閃が襲う。だが踊るように躱し、扇を使って受け流すステラ。掛け声と共に舞う彼女と翻弄される黒騎士。2人で舞う危険な剣舞に見えながら、ステラは合間に一方的な攻撃を積み重ねていた。
「そんな激しいだけの動きだと…リズムの変化についていけないよ?」
 苛立ったように両手で上段に天高く剣を構え、大振りの一撃をステラに打ち込む黒騎士。だが横にサイドステップ1つで難なく躱すステラ。先程までステラがいた場所の向こう側、黒騎士の赤い瞳が見たのは…青い瞳に強い意志を宿し、剣を構える青髪の少女だった。
「フレイムウェポン・スラァァーーシュ!!」
 全力の魔法、属性攻撃を力一杯に込めたルチルの一撃が無防備な黒騎士の胸元を大きく薙ぎ払う。ステラが積み重ねた攻撃、そしてルチルの渾身の一撃が合わさり…黒騎士の鎧に大きくヒビをいれ、激突事故のような勢いで吹き飛ばした。騎士の身を守る鎧ではなくなったモノ。思いも意志も守るものも持たぬ鎧は金剛不壊には程遠い。二人の少女がそれを証明したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

赤月・句穏
九条・文織(f05180)同伴
蛙さん。蛙さん、出口はどこでしょうか?おうち・・・どこでしょうか。(絶賛迷子中)大きな扉です。この先に行けば帰れるでしょうか。(蛙の像を抱っこして自問自答)
!!文織?…どうして、此処に・・。っは!私もしかして、また、迷子でしょうか(あわあわ)

・心情
文がお迎えにきたので、無事帰れそうです。(ほややん)

・戦闘(敵を前にすると真の姿に→目が金色になる)
「フロアマスターでしょうか。何れにしろ災魔であるならば討滅しなければですね」
魔霊杖で特技とUCを駆使し文織の援護をメインで攻撃
戦闘後は文の傷と自らの傷を癒す
「この位で良いでしょうか。後は、他の猟兵さん達に任せましょう。文」


九条・文織
赤月・句穏(f05226)と同行
【POW判定】

・心情
くおんが中々帰ってこないから探してたんだけど
ここに来てるらしいってコーラルさんに聞いたからね。
無事だといいけど、万難を排して早く探さなきゃ。

・攻撃
「臨む兵、闘う者、皆 陣列べて前を行く。
彼の者を意味成す交わりを全て絶ち斬れ。『句切』」
【気合い】をいれ言霊を乗せた刀『句切』を抜いて
【フェイント】で相手のガードを崩すと【二回攻撃】を叩きこもうとする。

・防御
「害意は刃を鈍らせる。お前の剣が我が身に届く事を禁じる」
言霊の【残像】で相手の間合いを乱し
【見切り】によって攻撃を回避しようとする。

「無事でよかった。心配したよくおん。
ん、後は任せて帰ろうか?」



 災魔との戦いが始まった頃、霧雨蛙の間を突破した赤月・句穏が卵型でキュートな蛙の像を大事に抱きかかえながらゆっくりと通路を歩いてた。
「蛙さん。蛙さん、出口はどこでしょうか?おうち…どこでしょうか」
 赤月は立ち止まり、石の蛙の顔を覗き込むようにして問いかける。だが青い瞳に映る蛙から答えは返ってこない。とりあえず歩いていってみようと今までと変わらない歩調で通路を進んでいく。入口と出口、スタートとゴール。それぞれ二つで一つの関係にあるかもしれない。であるのなら彼女がこの部屋に辿り着いたのも当然の帰結といえる。
「大きな扉に部屋…、この先に行けば帰れるでしょうか…」
 蛙の像を抱く手にぎゅっと力が入る。その時石が砕ける大きな音が彼女の耳に響く。音の源は先についた猟兵達に吹き飛ばされた災魔だった。激しくぶつかったのだろう、石壁に飾られたオブジェのように黒騎士がめり込んでいた。黒き鎧には大きな亀裂が入り、攻撃の凄まじさを物語っている。だが、この部屋を守る災魔の動きを完全に止めるにはまだ足りてはいない。
「フロアマスターでしょうか。何れにしろ災魔であるならば討滅しなければですね…えっと、ここでお留守番しておいてくださいね」
 黒騎士…災魔は倒された訳ではない。赤月は蛙の像を通路の脇にそっと置いて微笑みかける。黒騎士が新たな侵入者に気付き、兜の奥の光が赤月を捉えた。魔霊杖を取り出して構えている彼女に災魔は容赦なく剣を振るう。壁を削りながら横薙ぎの一撃が迫る。
 
「害意は刃を鈍らせる。お前の剣が我が身に届く事を禁じる」

 誰とも知れぬ声が災魔の耳に聞こえてきたが、その剛剣は止まることなく赤月の身体を切り裂く…だが手応えはなく、黒騎士は自らの剣が斬ったのはただの幻だとすぐに気付いた。猟兵共の姿を探し周囲を見渡す。
「無事でよかった。心配したよくおん」
「!!文織?…どうして、此処に・・。っは!私もしかして、また、迷子でしょうか…」
 中々帰ってこない赤月を探し、このダンジョンにやってきた九条・文織がそこにいた。赤月を庇うように立つ九条だが、左腕の一部分が裂けて血が流れている。災魔の間合いを乱し赤月を救い出す事を意識し過ぎた結果、九条は僅かながら手傷を負ってしまっていた。
「文!傷が!」
「掠っただけだから大丈夫。くおんが無事でよかった…」
 赤月は大事な人の怪我に気付き、慌てて治療を施そうとするが九条は手でそれを制止する。九条自身は赤月に怪我がない事を確認し安堵していた。
「さぁ、一緒に帰ろう」
 九条にとっては赤月を見つけるために来たのだ。その目的が果たされた今長居する理由はない。
「…いえ、まだやる事がございます。文、あの災魔を討滅しませんと…ねぇ?」
 今度は赤月が九条を笑顔で制止する。彼女は怒っていた、大事な人を傷つけた災魔に。その瞳は青から金色に変化を遂げて…。九条は付き合いからわかる…自分の傷のせいだという事も、今物凄く機嫌が悪くなっている事も…。帰る前にもう一仕事だな…と九条は思い、自らの刀『句切』を握りしめる。

「では、援護をお願いするよ。私が前に出るから」
 九条は災魔を中心に円を描くように走り出す。少しでも赤月から注意を自分に向けようと考えたからだ。そのまま黒騎士の隙を伺うが、攻撃を叩きこむ機会は九条の想定外の形で訪れる。
「援護…援護ですね…わかりました。エレメンタル・ファンタジア―――光の霧雨!!」
 赤月は自身のユーベルコードを発動させる。彼女から放たれた細い光が雨のように災魔に降り注ぐ。「属性」と「自然現象」の合成事象…強力だがそれだけに制御が難しく暴走しやすい特徴がある。今回も暴走していた。いや、今回は何も制御しようとしていなかった。光の奔流が災魔を飲み込む。光の細かな反射が敵の目を眩ませ、隙を作る。そういう援護のつもりで放った攻撃は、千本万本の光の針が目標を刺し貫く程の威力になっていた。飲み込まれた黒騎士は両手を前で交差して耐え凌ごうとする。
「臨む兵、闘う者、皆 陣列べて前を行く。彼の者を意味成す交わりを全て絶ち斬れ。『句切』」
 想定以上の隙を九条は逃さない。言霊を乗せた『句切』を抜き放ち、一閃、二閃。黒騎士の左腕が肘の所で切断される。元々のダメージに赤月と九条の攻撃を受けては流石の災魔も大きな傷を受けてしまった。
「この位で良いでしょうか。後は、他の猟兵さん達に任せましょう。文」
 青の瞳に戻った九条が溜飲の下がった表情で言う。
「ん、後は任せて帰ろうか」
 刀を仕舞い、九条も同意する。
「じゃあ帰りながら手当しますから…はい、これ」
 道筋はちゃんと頭の中に、やっと二人で帰れると来た道を戻ろうとする九条の両手に丸い何かが手渡される。重くはないが、突然だったので落としそうになるのを必死で堪えた。
「えっと…これは何?」
「お土産です。すぐに手当てしなくても良かったくらい怪我は大丈夫なのでしょう?だったら…持っていけますよね?」
 赤月は笑顔で九条にそう言いながら怪我した左腕を手際よく処置する。最後に巻かれた包帯はちょっときつめだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

明日葉・雅
「彼の者が元凶ですか……あーくん、お願いします」
『はいよ。んじゃま、暴れてくるかね』

身体の主導権を明日葉(あーくん)へ
今回は大鎌を直剣として振るうかね
テメェに恨みはねぇが、倒させてもらうぜ?
これ以上、迷うやつが出るのは避けないといけねぇしな

戦場の把握、使える物があるなら利用する方向で
剣閃を放ってくるのならば軌道を読み、回避か剣で受け流す
動作から流れを読むのが難しいなら第六感も使って確実に
多少当たろうが、関係ねぇ
痛みには慣れてるしな
懐へ飛び込み、一撃で斬り捨ててやんよ
これくらいで倒れるわけにはいかねぇからな
その首、貰い受ける



 立ち去ろうとする猟兵が二人…遠ざかるその背に迫るは災魔の影。左腕を失ってもその力は衰えてはいなかった。右手一本で自身の正面で剣を構え、猟兵達を見据える。
「あぁ、油断大敵…ってな!」
 黒騎士の胸から真っ直ぐと綺麗な刀身を持つ剣が生えていた。背中から鎧が貫かれ、乾いた音を立てて砕け落ちた鎧の破片が床を跳ねまわる。今、災魔を滅するためにこの場にいるのは自身に手痛い攻撃を加えてきた猟兵だけではない。先に到着した猟兵達と黒騎士の戦いの隙を狙っていた新たな猟兵が一人…それは明日葉・雅だった。中身が人であれば致命傷ともなる一刺し、だが黒騎士たる災魔に中身は無く、完全な不意打ちで為された一撃がトドメとはならなかった。自らに刺さった剣を意に介さず災魔は明日葉に対して剣を薙ぎ払う。
「これで仕舞いって訳にはいかねぇか…ちっ!」
 明日葉の手にするものより二回りは大きい剣の攻撃範囲、威力の差は大きい。その剛剣に巻き込まれないよう明日葉は黒騎士の鎧から自分の剣を抜き取り、攻撃を躱すために後ろへ飛ぶ。先程まで明日葉が立っていた位置を唸りをあげて災魔の剣が通り過ぎる。しかしその一撃で攻撃は終わらない。続けて放つは黒き鎧の妙技、縦横無尽の剣閃が明日葉に迫る。最小限の回避と勘の良さを駆使して災魔の攻撃が明日葉を捉えることはなかった。けれど重く速い一撃一撃によって着物が薄く削り取られるように切り裂かれていく。このままでは剣の波に飲み込まれちまう…明日葉は反撃のために襲い来る剣撃の中から逆転の一手を選ぶ。
「これでも任されちまったんでな!その首貰い受ける!!」
 明日葉は選んだ一撃に対して右足から踏み込む。正面を斬ってくる相手の刃による衝撃をまともに受けないように手首を回転させ、巧みに受け流す。災魔が再度剣を振りかぶる隙をついて、左首筋に向かって素早く一撃を叩きこんだ。相手より刀身が短いのは不利ではない、射程の差をフットワークで埋めて攻撃半径を広げる。さらに腕力で劣っていても敏捷性を活かして相手の急所狙いうった。
「首を跳ね飛ばす…まではいかねぇか。なら!」
 そう言い放つと災魔の懐で明日葉は体を回転させる。左の首筋から体に沿わせるようにして明日葉の剣が、黒騎士の胸から腹にかけてを鎧の上から切り裂いた。
 
「彼の者が元凶ですか……あーくん、お願いします」
『はいよ。んじゃま、暴れてくるかね』

戦闘突入前に頼まれた雅からの要望は相手からの圧力を跳ねのけられず、まだ達成には足りていない。裂けた着物の中で先程つけられた傷から血が滲んでいる。だがそれくらいの痛みで明日葉は止まらない。再び攻撃の隙を狙って無差別の剣閃を躱し、受け流してはチャンスを伺う。
「痛みには慣れてるんでな…お前の十発と俺の一発、どちらが有効か決着を付けよう」
危険を楽しむように明日葉はまた右足を前に一歩を踏み出す。力で押されていても自分の手札を駆使して互角以上の戦いを繰り広げる明日葉であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アレクシア・アークライト
 さすが、中身が伽藍洞なだけのことはあるわね。
 心臓部分を貫かれても死なないなんて。
 一度に全てを破壊しなくちゃ駄目ってことかしら。

・剣閃は力場で弾き、又は受け止めながら、接近。
・大剣の動きを[念動力]で妨害しつつ、組み付いて転倒させる。[グラップル]
・転倒させられたなら、そのまま収束した力場を叩きつけ、地面と力場に挟み込んで潰す。【本気の一撃】[捨て身の一撃]

・念動力で魔核を拾い上げ、粉々に砕く。

 貴方の怨み。
 それが貴方のものなのか、貴方を身に着けていた騎士のものなのかは分からないけど、ここはそれを発散する場所じゃないわ。
 骸の海に還りなさい。



「さすが、中身が伽藍洞なだけのことはあるわね」
 アレクシア・アークライトは少し離れた場所から敵を見る。先着の猟兵達によって鎧を砕かれ…左腕を失い、胸から腹にかけて大きな傷を受けてもまだ動く敵を。彼女の推測通り黒騎士の中身が存在するのであれば、とても動けるような損傷ではない。だが眼前の敵は身の丈ほどの剣を右手一本で不自由なく振るっている。人でいう心臓部分を貫かれても死なない相手…しかしオブリビオンの始末を専門とするアレクシアにとっては珍しい特徴ではない。
「一度に全てを破壊しなくちゃ駄目ってことかしら。どうして私達に剣を向けるの?目的や望みが今の貴方にはあるの?」
 彼女の問いかけに黒騎士は動きを止め、首から上だけがアレクシアの方を向く。紡いだ言葉に反応したのかを暗く深い兜の奥から正確に読み取る事はできなかった。
「敵意…未練…それとも怨み?もし貴方が憎んでいるとすれば私達かしら…それとも貴方自身の境遇という可能性もあるのかもね」
 アレクシアは言葉を重ねて災魔を揺さぶる。黒騎士からは何も言葉が返ってこない。しかし、より雄弁な剣による答えが彼女を襲う。放たれたのは縦横無尽の剣閃。すかさず両手それぞれで力場を形成。振り下ろし、薙ぎ払い、切り上げてくる無差別な剣閃を軽々と弾く。剣において鍔元部分は握っている場所に近く力強い。切っ先部分はスピードが速い代わりに力が弱い。相手の<弱い>部分を、彼女の手元すぐ近くで形成される<強い>力場が易々と弾いて流す。受け止め方の巧みさだけでなく、アレクシアが放つ念動力が剣自体の動きを鈍らせていたのも直撃無く災魔に近づけた一因でもある。
「片手で握ってるとは思えない力ね。でも力を込めて殴るのは私も得意なのよ!」
 力場を防御に回して、相手の攻撃を左手で外側に弾いて流す。すかさず敵の左足の後ろに一気に踏み込む。そして先程攻撃をさばいた腕で災魔の胸めがけて思い切り力場をぶつけ、床に押し倒すことに成功した。転倒の衝撃で黒騎士の鎧がさらにひび割れる。蓄積したダメージのせいですぐには立ち上がれないようだ。
「終わりよ―――これが本気の一撃!」
 両の拳を…力場を合わせて災魔の顔面に一気に叩き込む。力場という武器と石の床という凶器に挟まれた黒き鎧。多数の亀裂が一瞬で無数に走り、黒片が周囲に飛散した。床には無数の欠片と赤く光る魔核が残るだけ。
「貴方の怨み。それが貴方のものなのか、身に着けていた騎士のものなのかは分からないけど、ここはそれを発散する場所じゃないわ…骸の海に還りなさい」
 淡い光を放つ魔核が宙に浮き、猟兵達の耳にガラスが捻じられたような音が響く。この迷宮の主として立ちはだかった鎧の役目は…今全て終わった。
 
 これで猟兵に残された仕事は勝利の報を学園に届けるだけ。ここはもう大丈夫と…。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月14日


挿絵イラスト