●
『それ』が冠する獣性は『圧壊』、『分解』。
小惑星と見まごうほどの体躯、『それ』に連なる触腕、触手――『それ』に払われたモノは等しく『圧壊』する。
『それ』の頭部……水晶体のような部分から放たれる光、照らされたモノは等しく『分解』する。
『それ』は存在が宇宙的存在であるが故に、意思疎通ができるはずもなく。
嗚呼、また一つ、『それ』に近づいたモノが『消えてなくなった』。
●
「皆さん、スペースシップワールドに『未踏』の宙域が発見されました!」
マリベル・ゴルド(ミレナリィドールの人形遣い・f03359)が集まった猟兵たちを見回し、続けて説明をする。
「ワープドライブの稼働により、スペースシップの人々は、かつての『銀河帝国』と同範囲……つまり、史上最大の範囲まで探索に成功しました」
しかし、その範囲内の全ては、過去の戦いによって、完膚なきまでに破壊されていたそうだ。しかし――。
「かつて滅びてオブリビオン化する前の銀河帝国が遺していた『未踏宙域に関する文献』」が発見されたのです!」
この文献を元に調査したところ、無事に『未踏宙域』が発見された。
「しかし、銀河帝国は、この宙域を発見しながらも入植をしませんでした。いえ……『できなかった』と言った方が正しいでしょうね……」
その原因がコレです、と、マリベルがモニターを起動させ、映像を映し出す。
小惑星が如き巨躯の全身が、画面いっぱいに表示された。
「この巨大な生物、『クエーサービースト』が立ちはだかっているのです」
銀河帝国の軍事力を以てしても排除に至れなかった存在、超巨大宇宙生物群。総称して、クエーサービースト。
「現在映し出されている生物は、その尖兵に過ぎませんが……十二分な脅威です」
意思疎通は不可能、問答無用で襲い掛かってくる。
今回の任務は、未踏宙域で立ちはだかる『クエーサービースト』、その一体を排除することが最終目標となる。
「今回、移動方法についてですが……今回の任務に応じてくださった宇宙船があるそうですので、そこに搭乗して同行することになります」
その艦の名前は『アクアマリン』。輸送艦だったものを、今回の旅路に耐えうるよう改造を施してある特殊な艦だ。
一般の艦や敵が相手であれば十二分すぎるくらいの戦力だが、今回の相手は『クエーサービースト』。
装甲やシールドなど、防備の面を特に強化してあるため、早々に落とされる……といったことはないが、強行軍が出来るほどではない。
やはり猟兵たちに成否がかかっているのは間違いないだろう。
「さて、改めて今回の任務の流れについて説明します」
マリベルは映像を切り替える。
そこに映し出されるは、宇宙空間に漂うブラックタールのような生物の群れ。
「彼らは銀河帝国の『元』戦士です。未踏宙域を調査する際に命を落とし、オブリビオン化したそうなのですよ……」
彼らは未踏宙域の入口付近をさまよっており、宇宙船『アクアマリン』を視認次第、襲い掛かってくる。
よって、まず猟兵たちは彼らを排除する必要がある。
「彼らを倒すことが出来れば、続いては航路確保のための行動をお願いします」
デブリの排除、周囲の警戒、地図データの作成などが主な仕事となる。
未踏宙域ゆえ、無闇なワープはできないそうだ。
「そして、最後に『クエーサービースト』との戦いとなります。激戦が予想されますので注意してください」
対象を圧壊させる攻撃や、物質分解の作用がある光線を放ってくる。その巨大さゆえに、攻撃範囲も相当なものだろう。
「この未踏宙域は、惑星をはじめとした新たな発見に繋がる『希望』です。その希望を『圧壊』されるわけにはいきません。皆さんの力をどうか、どうかお貸しください!」
よろしくお願いします、と、マリベルは猟兵たちに頭を下げた。
こてぽん
こてぽんです。よろしくお願いします。
スペースシップワールド、宇宙、とてもわくわくしますよね。『未踏宙域』という単語には心踊らされます。
プレイング、心よりお待ちしております。
以下、シナリオ概要です。
●第1章
【集団戦】です。
未踏宙域の入口には、かつて探索に乗り出し、生命を落としてオブリビオン化した「銀河帝国外宇宙船団」の戦士達が漂っています。生命体への憎しみを剥き出しにする彼らを、まず倒さねばなりません。
●第2章
【冒険】です。
未踏領域内は一切の情報が無いため、無闇なワープはできません。後続の宇宙船の為に、新たな「宇宙航路」を開拓しましょう。
●第3章
【ボス戦】です。
久方ぶりに未踏宙域に現れた外来種(猟兵達の事です)に対し、クエーサービーストの「尖兵」が現れます。
会話もなくただ殲滅しようとしてくるので、戦って倒すしかありません。
第1章 集団戦
『タイプ・メデューサ』
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POW : 触手の一撃
単純で重い【液状触手】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 強化増殖
自身が戦闘で瀕死になると【(強化版)タイプ・メデューサ】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ : 石化粘液
【液状の触手】から【石化粘液】を放ち、【石化】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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鎧坂・灯理
こいつらが、元は開拓団。戦士だったと?
であれば、より一層しっかりと殲滅せねばならんな。
生前は未知への期待に目を輝かせていたのだろう。
故郷のため、大事な者のために、果ての無い航海へと踏み出したのだろう。
こんな無様な姿でうろつくなど、望まんだろうさ。
ここは宇宙空間だからな。
『白虎』をバイクへと戻し、跨がって宙を駆け飛ぶ。
攻撃を運転と念動力で避け、UCで細切れにし、『カルラ』に業炎を噴かせて焼尽する。
地形が変化しようがかまわん、飛んでいるから問題ない。
まっとうな意志を持たぬ人外が、私に触れるな。私の前に立つな。私の邪魔をするな。
憎しみだけで私は殺せない。
来いよ黒クラゲ共。格の違いを教えてやる。
船内に警報が鳴り響く。そのけたたましい音は、船内にいる全ての存在に『敵の襲来』を察知させるもの。船全体の空気が引き締まる。
「こいつらが、元は開拓団、戦士だったと?」
四方八方から宇宙空間を泳ぎ迫りくる鈍色のクラゲ群……『タイプ・メデューサ』。
船外の上部装甲に立ち、周囲を見回している鎧坂・灯理(不退転・f14037)が再び口を開く。
「であれば、より一層しっかりと殲滅せねばならんな」
とん、と軽く装甲を踏めば、彼女の身体はふわりと浮いた。足に装備している鋼の足環、それが光り輝く。
その光は、大型バイク『白虎』へと変形し、浮遊している彼女がそれに空中で跨る。
その隙を突くように、先行していたクラゲの一体が灯理の背後から勢いよく突撃。だが、彼女はそれを一瞥すらせずバイクのアクセルを思い切り握りこみ、右にハンドルを切った。バイクは唸り、その身をよじって突っ込んできたクラゲを横殴りに弾き飛ばし、暗黒空間へと投げ出していく。
クラゲ自身もそこそこに質量の大きい存在であったが、バイクには傷一つ付いていない。
灯理はそのまま振り向きざまにアクセルを全開。吹き飛ばされたクラゲを正面に捉え、バイク背面のマフラーが火を吹いた。
埒外の加速度を以て、突撃。彼女が通り過ぎた先には、身体のほとんどを轢き潰され原型を留めてない『成れの果て』が宇宙を漂っていた。
「生前は未知への期待に目を輝かせていたのだろう」
左右から突進してくるクラゲ、合計二匹。だが灯理は速度を落とさぬまま、突っ切る。同時に、彼女の周囲を飛び回っている小型の竜『カルラ』が業火を生み出し、灯理が自身が持つ念動力で周囲の空間に固定。
彼女の周囲に『火炎のベール』が出現した。それを纏って通り過ぎたがために――左右にいたクラゲたちは一瞬で沸騰し、黒い炭のような物質となって『宇宙ゴミ』に生まれ変わる。
「故郷のため、大事な者のために、果ての無い航海へと踏み出したのだろう」
立ち塞がるように三体のクラゲが飛び出す。灯理はハンドルを持ち上げ、前輪を振り上げる走法……『ウィリー』の体勢へ移行する。火炎を纏った前輪が三体の内の一体に激突、文字通り『すり潰された』。
残る二体が液状触手を振り上げ、上方向から叩き落とすように灯理の脳天から迫りくるが――。
「こんな無様な姿でうろつくなど、望まんだろうさ」
灯理の身体に触れるスレスレのところで、触手の先端が『細切れ』になった。二匹のクラゲが困惑する間もなく――全身に糸のように薄い『煌き』が無数に迸り――彼らの身が幾千にも刻まれ、暗黒空間へばらまかれていく。
灯理は僅かに触れんとした『触手の欠片』を煩わしげに振り払い、霧散させた。
「まっとうな意志を持たぬ人外が、私に触れるな。私の前に立つな。私の邪魔をするな」
手袋を整えれば、付近にいた別個体が二分される。再びアクセルを握りこめば、周囲のクラゲたちを巻き込んで燃やし尽くしていく。周囲のスペースデブリをはじめとした物質も巻き込まれ、延焼していくが――そのために彼女は自船を巻き込まない位置まで『飛び出した』のだ。この広い宇宙空間を使わない手はない。
「憎しみだけでは私を殺せない」
次々に特攻してくるクラゲたちを、念動力とドリフトを用いた三次元的な動きで回避。
敵もそれを理解したのか、周囲を取り囲むように突進し、灯理に群がり『球状』となる。
だが、ぶるりと黒タールの球が波打ったかと思えば、爆散。おびただしい量の黒い液体が宇宙空間に拡散し、散り行く。球体の中心地点にいた灯理は、只々『手をかざしていた』のみ。
彼女の真髄は『念動力』、その極致。
雑兵の『ミツバチ戦法』など、彼女に触れるどころか、彼女の衣服を汚すことすら許されない。
彼女が宿す『思念』はそれほどまでに強固で、誇り高く、強大なモノ。
『憎悪の意思』という『汚泥』ごときでは決して汚すことができない『不退転』。
灯理が、不敵な笑みを浮かべながら見回す。未だ相当数のクラゲが残っているが、彼女の獅子奮迅さに慄いたのか、辺りで様子を伺っている。
「来いよ黒クラゲ共。格の違いを教えてやる」
それこそが彼女、『鎧坂・灯理』。『意思の怪物』。
大成功
🔵🔵🔵
セリエルフィナ・メルフォワーゼ
命掛けで冒険したのに、こんな姿でずっと宇宙を彷徨ってるなんて…
生命を憎んでしまうのも…仕方ないよね。
だからこそ…一刻も早く救ってあげないと!
「オーラナイトダンサー」を【操縦】しつつ、【早業】【先制攻撃】で敵の先手を取るよ。
「石化粘液」の反撃は、ダンサーの熱で蒸発させて防ぎたいけど…
宇宙空間で水って蒸発するのかな?
まあ出来なければ、【視力】【見切り】で躱してみるよ。
戦闘が終わったら…
「シンフォニック・キュア」による【歌唱】で、この敵達にレクイエムを送るよ。
いつまでもこんなところで迷わず、行くべきところへ行って、ゆっくり眠れるように…
ハル・パイアー
「あるのは新天地か、はたまた。さて、少しでも情報を得ねばならんな」
小官は未踏領域の開拓任務に志願。
UC《ゴットスピードライド》使用。
所有する宇宙バイク、N=ムーバーに騎乗しての誘引と高速機動戦を仕掛けます。
これは味方への支援も含んでおります。
まずは機動力を高め敵性体へ接近して熱線射撃。
これを広範囲に存在する敵性群の注目を引くように行い、敵の攻撃を自身のスキルの及ぶ限り回避可能な距離を取りつつ敵群を誘引。
引き連れた敵は周遊しつつ熱線の集中とバイクの体当たりで撃破するか、友軍の攻撃範囲を把握しそこに誘い込むかのどちらかを選択します。
「恨みか執念か。何れにせよその隙を利用させてもらおう」
ユートピア・ドリームランド
◆心情
未踏宙域への進出、未知の中の探索
正直ユートピアも浪漫ある旅にかなりワクワクしております
ゆえ、かつての調査団の皆々様、この旅の為その漂流に幕を引かせて頂きます
◆行動
ユートピアは命綱を使い「アクアマリン」の外壁に体を固定
移動放棄しUC及びスクラップウェポンによる銃撃に集中致します
●強化増殖 は発動されますと厄介ですのでUCと射撃の火力は一点集中
仕留め損ねて瀕死状態の相手を残す事が無い様一人ずつ確実に摘み取ってゆきましょう
焦らず、逸らず、一人ずつ
◆UC
UC:錬成カミヤドリでユートピアの本体である引力が遮断された拳大のブラックホールを最大数複製し念動操作
ぶつける事で体を抉り削り取る攻撃と致します
「あるのは新天地か、はたまた。さて、少しでも情報を得ねばならんな」
宇宙船『アクアマリン』には、小型戦闘機などを射出できるカタパルトが搭載されている。
そのレールから火花が散り、一つの影が奔る。それは、エンジンを唸らせながら飛び出し、クラゲの群めがけて暗黒空間を駆ける。
その影は、宇宙バイクに変形させた『N=ムーバー』に騎乗する一人の少年型ユニット――ハル・パイアー(STUFFED MAN・f00443)。
宇宙を駆けることを前提とした駆動機関なだけあって、無重力の暗黒空間が相手でも何ら不自由に感じてはいなさそうだ。敵であるクラゲが投げてきたスペースデブリを、必要最低限の動きでことごとくを回避していく。その度に、彼のもう一方の『片腕』、ハンドルを握っていない方の『腕』がたなびいた。
不意に眼前の敵性体……クラゲの一体に手をかざせば、彼に備わった機能――射出装置『圧縮重粒子』が呼応。掌から放たれるは火砲、レーザー、熱線。
「焼却する」
一瞬、灼けた『音』が通り過ぎた。熱線が通り過ぎた先には、炭化した藻屑しか残っていない。
「もう一度だ」
別個体に照準を合わせ、再び照射。先程の動きを見ていたのか――クラゲは身を捻って回避。だが、照射された熱線はそのまま『薙ぎ払われ』、その個体もまた『炭』となった。
別方向からクラゲが身体をぶつけんと弾丸となって突進するが、ハルの乗っているバイクが唸り、放つは加速力による衝撃。
その反動に従うようにハルは大きく後退し、同時にその衝撃波によりクラゲは身体を波打たせながらたたらを踏む。半瞬遅れて放たれた熱線により、蒸発。
「こういったこともできる」
ハルはバイクを走らせながら、周囲一帯に熱線を『雨のように』細くしてばら撒いていく。
着弾した有象無象が融解し、焼け焦げていく。それはオブリビオンであるクラゲたちでも例外ではない。
だが先程よりも広範囲な分、威力は控えめだ。急所に命中して滅せられたクラゲも数匹いるが、未だ無事な個体も数多。
熱線をばら撒きちょこまかと動くハルに、クラゲたちは怒りで身をぶるりと震わせ――突撃していく。
ハルは踵を返し、それらから付かず離れず程度の速度に調整して――疾駆。
「恨みか執念か。何れにせよその隙を利用させてもらおう」
そう呟いたハルは、周囲一帯のクラゲたちを誘引していきながら、暗黒空間を駆けていく――。
●
「命掛けで冒険したのに、こんな姿でずっと宇宙を彷徨ってるなんて……」
また一体、彼女が抜き放ったブラスター銃による熱線で、蜂の巣になる。
一瞬の間を置いて爆散したクラゲを見届けるは、悲し気な表情をしたセリエルフィナ・メルフォワーゼ(天翔ける一輪の君影草・f08589)。
背後から別個体のクラゲが突撃を仕掛けてきた。が、振り向きざまに放たれた熱線の一撃で軌道を逸らされ、彼女にその触手は僅かに当たらず。そのまま身を投げ出されたクラゲは数発の熱線を浴びて蒸発する。
「生命を憎んでしまうのも……仕方ないよね」
セリエルフィナは天に手をかざす。その手に、彼女が宿す『炎』が集まり――。
「だからこそ……一刻も早く救ってあげないと!」
周囲を漂っていた数体のクラゲから、鈍色の粘液が勢いよく放たれる。それに応じるようにセリエルフィナも、『炎塊』を持った手を振り払う。
彼女を中心に莫大な熱量を内包した熱波が放たれ――粘液は蒸発し、霧散した。
クラゲたちは衝撃で吹き飛ばされたが、未だ健在。体勢を整え、その触手を振り回し、それを伸ばしてセリエルフィナに振るった。
じゅっ、という何かが『焼けた』音。
セリエルフィナに対して振るったはずの触手が、寸でのところで『消えて』無くなっている。
そこには、炎のように揺らめく一本の剣。それが触手と彼女の間に割り込み、そこを境界線とするように触手が蒸発していた。
彼女の傍につくは、騎士の姿をした炎。それが数体。彼女を護るように立っている。
そして、触手を放ったクラゲが『別方向』から飛来した騎士の剣に貫かれ、焼却される。
クラゲたちが見回せば、至るところに騎士。それらが細剣を抜き放ち、機敏なステップを踏みながらクラゲたちに接敵する。
あるクラゲは、振るった触手をステップで回避され、次の瞬間には全身を穴だらけにされて炭化。
また、あるクラゲは、剣を取り上げようと巻き付けた触手のことごとくを斬り飛ばされ、全身に業火が纏わりつき、蒸発。
その騎士たちは、鎧を身にまとっていながら非常に軽快な動きを見せつけ――さながらセリエルフィナの『バックダンサー』のようであって。
「ボクたちの踊りで、キミたちの闇を払ってみせよう!」
――さあ、オーディエンスは、すぐそこまでやってきているよ――
セリエルフィナはドレスのスカートをつまんで、優雅にお辞儀をした。
●
クラゲたちの中には、ハルの誘引に従わなかったモノもままいる。
それらはそれらで集まって群を作り、宇宙船『アクアマリン』を堕とすべく、船に群がらんと飛来してゆく。
「かつての調査団の皆々様、この旅の為その漂流に幕を引かせて頂きます」
ユートピア・ドリームランド(ごみ処理船のブラックホール・f21634)、彼女が船の外壁に身を固定。手に持つ膂砲を構え、その照準の先にいる『クラゲ群』を捉える。
身体を命綱で固定しており、移動を想定していないが故に――今回、彼女の装備しているスクラップウェポンは最早『大砲』といっても過言ではない程に大型。彼女の身体と同等かそれ以上のスケールを持つそれのトリガーを引けば、轟音が鳴り響く。照準の先に見える視界が『爆発』し、『収束』した。
「弾ならいくらでもあります。何発でもお見舞いしてさしあげましょう」
ユートピアの周辺に浮かぶスペースデブリが、スクラップウェポンに引き寄せられ、変形し――砲丸となる。
「”こちら”で貴方たちが”強化”されると些か面倒なことになりますゆえ……跡形も残すつもりはございません」
その砲丸は只の大質量弾ではない。その内側には、彼女の本体が持つ力……『ブラックホール』が込められている。
「これが、『廃棄艦ユートピア』の機能です」
二射目――爆音と共に銃口から砲弾が発射。残存するクラゲの群れに着弾したかと思えば、砲弾が粉砕。
内包していた『ブラックホール』が展開され、それはさながら黒色の『星雲』と見まごうような――それがクラゲの群れを覆い隠し、ブラックホールは『収束』。跡には何も残らず、消失、そして静寂。
「試行回数二回。共にオールグリーンでございます」
確かな手応えに彼女も口角が上がる。だが油断はしない。続けざまに向かってくるクラゲ群たちに照準を合わせ、撃ち放ち続ける。
「連続してやってくるのであれば、これです」
瓦礫の弾丸を『小型』にし、連射。群れを成していない『単体』のクラゲたち、彼らの身体が穿たれ、爆散。
一見、連射し薙ぎ払っているように見えるが、その実、一発一発が正確な『狙撃』。
自身の身体を動かす、といったことに意識を割いていないだけあってか――フルオートと見まごうほどの連射を以てしても、その弾丸の殆どがクラゲたちに吸い込まれるように飛来。貫いていく。
船の周囲でブラックホールによる処理が行われて暫く。クラゲたちは例外なく『瀕死』になる前に『処理』され――船に近いクラゲたちは一時的にいなくなった。
「さて、最後の試行です――参ります」
ユートピアがそう言って照準を合わせるは、ハルとセリエルフィナが戦っている箇所。ありったけの瓦礫をスクラップウェポンに込め始めた――。
●
「わぁ! ほんとにいっぱいきた!」
セリエルフィナが戦って暫く、不意にとある方向を見て、歓喜の声をあげる。
そこには、おびただしい量のクラゲたちをおびき寄せて、バイクを唸らせてこちらへと走って来るハルの姿が。
さすがに彼も無傷とはいかなかったようで、身体に少しばかりの外傷を負っているが――全て非常に軽傷。彼の卓越した機動力により、避けづらい攻撃も上手く回避したのだろう。十二分に大戦果だ。
「お待たせしました。乗ってください。”突っ切ります”」
ハルがセリエルフィナの傍まで走り抜けたところで――セリエルフィナも後ろに飛び乗る。
「このまま速力を限界まであげます。すでにあちらでは準備ができているそうですので――じき、ここ一帯は『処理』されます」
「巻き込まれないように、だね! りょーかい!」
ハルの言葉にセリエルフィナも頷く。不意に、彼女が再び天に手をかざし、指を鳴らす。
「キミたちの踊り場は『そこ』だよ!」
セリエルフィナのその言葉と共に、展開されるは騎士たちの輪……否、球体状の『炎の檻』。
最早ハルたちが乗っているバイクの現在のスピードは、亜音速に匹敵するか、それ以上。当然、速力に特化していないクラゲたちが追いつくわけもなく、鈍色の塊のようにすら見えるクラゲの大群は『檻』の中に孤立する。
クラゲたちは吠える。自身の危険を察知したのか、合体し、巨大な個体を作り上げていく。無理矢理、檻をこじ開けようと触腕を振るうが――。
「もう、遅い」
ハルは十分すぎるほどにその場を突っ切り駆けた後、太陽とみまごう球体の『檻』に対し、そんな言葉を零した。
刹那、その『檻』に着弾するは『巨大な岩塊』、否、瓦礫。
『檻』よりも巨大なそれは、宇宙船方面……そこに取りついていたユートピアから放たれたものだ。
瓦礫は着弾、ハルたちにすら届くほどの埒外の衝撃が爆発。幸い、十分に距離をとっていたために、二人は僅かに怯むだけで済んでいた。
弾丸は衝撃に耐えられず、粉々に砕け……周囲ごと『黒の嵐』で覆い隠す。
「いつまでもこんなところで迷わず、行くべきところへ行って、ゆっくり眠れるように……」
その様子を見ていたセリエルフィナは、目を瞑り、歌う。
その歌の名は『鎮魂歌』。魂を鎮め、あるべき場所へと還す歌。
それに呼応するかのように、轟く『黒の嵐』は急速に一つの点へと収束していき――音もなく消失。
一説によると、ブラックホールの先は『異世界』に繋がっているらしい。
願わくば、あの漆黒の先が『無』ではなく、『天国』であらんことを――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
アルバート・クィリスハール
兄弟(f14324)と
宇宙に来たのは二度目だけど、やっぱり不思議だね。ずっと夜みたい
飛ぶ感覚も少し違うし……ところで兄弟、君は平気?
そう、平気ならいいや
うん、じゃあ――片付けよう
瀕死になったら強化個体が増えると
まあ、もろとも殺すだけだよ
コード起動【蒼天に舞う者】……空、青くないけど
熱の操作で焼いてもいいし、重力で圧縮してやってもいい
近くにあるスペースデブリをひっぱって来てぶち当ててあげようか
敵の攻撃は『傘』で防いで、そのまま魔力砲を撃つ
元人間で今怪物
望んでない変異、生物嫌い
君たちと僕は似てるね。違いなんて過去か現在かってだけ
自分じゃどうしようもない理由で殺されるんだ、君ら
かわいそうにね
イリーツァ・ウーツェ
【POW】弟(f14129)と
問題無い
行動に支障は無い
敵の掃討を開始する
敵意と憎しみを感じる
其れに応える良い技が有る
【害意呑食・剣丹渦】
憎め、呪え、私が貴様等の敵だ
地形を破砕する程度の攻撃か
だが行う腕は酷く脆い様だ
振り下ろされる前に根元から叩き切る
私の「力」ならば可能だ
杖術の自在振りを楽しめ
銃も撃つが、液体だからな
杖で足で尾で翼で殴り、粉々にする
私はニンゲンの思考がわからない
何故命を投げ捨てる様な真似をする
死を恐れる癖に、何故
常は自分以外の物を害し、稀に自分以外の物の為に動く
私にはニンゲンが理解出来ない
だから貴様等は敵だ 只純然たる敵だ
躊躇無く殲滅する
ニンゲンであった弟ならば、解るのだろうか?
「宇宙に来たのは二度目だけど、やっぱり不思議だね。ずっと夜みたい」
アルバート・クィリスハール(仮面の鷹・f14129)が黒い翼をはためかせ、一面に広がる星々の光、そして際限のない深淵を眺めている。
だがその闇に浮かぶは鈍色の海月【クラゲ】。憎悪の意思以外を持ち合わせていない『獣』に成り下がったクラゲは、彼の言葉を遮るように触手を振るってきた。
だがアルバートがその焦げ色の翼を振るえば『羽根』が舞い、触手を切り刻んでいく。
「飛ぶ感覚も少し違うし……ところで兄弟、君は平気?」
重力のある世界と違って違和感を感じる――感覚のズレに肩をすくめるアルバート。そのすぐ後に、隣にやってきた『兄弟』……イリーツァ・ウーツェ(盾の竜・f14324)を一瞥する。
「問題無い」
イリーツァは短くそう言うと、己が得物……『魔杖“竜宮”』を構える。
「行動に支障は無い」
自身の身長ほどはある戦杖を軽々しく振り回し、下方向から迫ってきたクラゲを見据えることすらせず、そのままの勢いで薙いだ。
重たい音と共に、破砕された鈍色の塊が彼方まで吹き飛んでいく。
「敵の掃討を開始する」
杖を再び回転させ、それを両手で持ち直してどっしりと構える。
その鋭い瞳が見つめる先は、にじり寄って来るクラゲの大群。
「そう、平気ならいいや」
『宙』に足を組んで座っていたアルバートが微笑み、翼を広げて『立ち上がる』。彼の纏う空気が、鋭く剣呑なものに『変わった』。
「うん、じゃあ――片付けよう」
●
「はは、元気だね。でも残念ながら――僕には届かない」
アルバートはその大きな翼で飛翔し、四方から飛んでくる触手や鈍色の液体をすらすらと華麗に躱していく。
その微笑みは絶やさず。物腰柔らかな口調も変わらず――だが、彼の動きは刃のように鋭く、クラゲたちは捉えることができていない。
「コード起動【蒼天に舞う者】」
不意にアルバートがその言霊を口にする。彼の動きを『捉えかけていた』触手が、彼の眼前で『凍り付く』。
凍り付いた触手にアルバートがそっと触れれば、一瞬でそれは融解、沸騰。莫大な熱量が伝播したかと思えば、触手の主を一瞬で赤熱させ、『爆発』。
周囲を包囲するように位置取ったクラゲたちが、その隙を突くように一斉に突撃を仕掛ける。
「せっかちだねぇ」
呆れたようにアルバートが肩をすくめれば、周囲にいたクラゲは大きく震えたかと思えば――圧壊。
まるで紙を手でぐしゃしゃに握りつぶされたかのような残骸が辺り一面に散らばった。
「おっと」
一体、殺し損ねた個体を見かけたアルバートが思わずそんな声を上げる。
その個体は大きく吠え――周囲のクラゲを吸収していき、大型のそれへと変化させる。
「それは、執念ってやつかい?」
今までの個体よりも大型でありながら、動きは機敏。それは一瞬でアルバートに切迫。連続して繰り出される触手の殴打を重力の『盾』で上手く軌道を逸らし、身体を捻った紙一重の回避をアルバートは繰り返す。
「無粋だなぁ」
別方面からの強襲。鈍色の水鉄砲がアルバートに降りかからんと迫る。
アルバートは今もなお繰り出され続ける触手をも回避。そのついでと言わんばかりに、翻した。すると、いつの間にか彼は黒色の『傘』を手にしていて。それを開いて『雨』から身を守る。
お返しと言わんばかりに傘を閉じれば、その先端から熱線が放たれ――水鉄砲が放たれた方向から爆発音が聞こえた。
「そこだよ」
流れるような動作で傘をしまったアルバートが一瞬の隙をつくように、幾ばくか『強か』に掌底を繰り出す。
掌底から発生するは『熱』と『重力』を組み合わせた『熱波』。空間が『波打つ』ほどに埒外の力を込められたそれは、大型クラゲを吹き飛ばす。同時に発生した『熱』により、全身を炭化させていく。
「プレゼント、受け取ってくれるかい」
アルバートが指を鳴らせば、スペースデブリ……『岩塊』や『人工物の残骸』が大型クラゲに殺到。
吹き飛んでいる上に全身を『炭』で固化させられている。故に抵抗すらできず、挟まれ『粉砕』。
アルバートは一息つき、周りを見回す。
そこそこ数は減ったが……未だに『数』はまだいる。
そんなことを思っていると、背後から剛速球で突っ込んでいる一体のクラゲが。
――おっと、いけない――
僅かに反応が遅れたアルバートは、振り返りながら防御態勢をとらんと黒い翼をはためかせた。
「援護を行う」
一瞬、黒い影がアルバートの目の前をよぎり、眼前まで迫っていた鈍色の塊が弾き飛ばされる。
そこには、腰を大きく落とし、戦杖を振るった後の姿勢をとっているイリーツァの姿が。
「感謝するよ、兄弟」
アルバートの笑顔に、イリーツァは無言で小さく頷いて応じる。
イリーツァは眼前にいる『敵』たちを見つめれば、一言。
「憎め、呪え、私が敵だ」
周囲のクラゲたちから『瘴気』が彼の胸に吸い込まれていった。
刹那、彼の身体は『ぶれて』消えた。
半瞬遅れて、吹き飛ばされたクラゲに追いつく。繰り出すは絶え間ない杖による『突き』の連打。
だがそれは出鱈目に振るったそれとは訳が違う。吸い込まれるようにクラゲの手足の『節』に命中。各々をもぎとっていく。
「一体目」
達磨状態になったクラゲの中心部に杖が叩きつけられる。それはぐにゃりと陥没したかと思えば、破砕し『残骸』となる。
続けて近場にいた二体目に接近。あまりの速度にクラゲはぶるりと震え、慌てて触手を振るう。
「ふん」
振るう直前に杖の先端が触手の根本に突き刺さり、触手が千切れる。そのまま掬い上げるように杖を振るい、投げ出されたクラゲの中心部に杖が貫通。
「二体目」
イリーツァは突き刺さったままの『死体』を『三体目』に投げ飛ばす。三体目のクラゲはそれを押し退けたが、すでに眼前にはイリーツァの姿が。
三体目は対応する間もなく側面を杖で殴りつけられ、背面に回り込まれて一撃。全身を宇宙空間にばら撒くこととなった。
「三体目――」
死角からのタックル――最早、食傷気味となる『彼ら』の常套手段。
だがイリーツァは振り返りすらせずに自身の尾を振るい、『弾き飛ばす』。
「二体同時か、手間が省ける」
手応えから、『二匹』同時であったとイリーツァは認識。まずは片方へと駆けた。
ご挨拶と言わんばかりに圧倒的な速力で切迫し、両の翼をそのまま叩きつけて粉砕。クラゲは触手をかざして防御態勢をとっていたのだが……その上から『削り取られた』ようだ。
続けざまに吹き飛ばした二匹目に接近。なんとか受け身をとったそれが、繰り出されるであろう杖術に対応せんと触手を構える。
「杖術の自在振りを楽しめ」
上、右、左、下、あらゆる方向から繰り出される杖の攻撃。
クラゲは防御が到底間に合わず――針の穴を通すかのような攻撃の数々に外側から少しずつ削られ、触手も一本ずつ千切り取られ、最後には欠片しか残っていなかった。
不意に、周囲のクラゲたちが共鳴をし始める。
それらは一つの『塊』となるべく集結しはじめ、今までの中で最も大きな『塊』となってゆく。その身はさざめき明滅していった――。
「元人間で今怪物。望んでない変異、生物嫌い――」
イリーツァの元に合流したアルバートが、蠢く巨大な『塊』に目を細める。
「君たちと僕は似てるね。違いなんて過去か現在かってだけ」
その言葉には憂いが籠っている。だが、その言葉を紡ぎながらも――辺りのスペースデブリがアルバートたちの目の前に集まり、巨大な『質量塊』へと変化していく。
「自分じゃどうしようもない理由で殺されるんだ、君ら」
味付けは『熱量』、飾り付けは『重力』。
「かわいそうにね」
赤熱する巨槍が、顕現した。
「私はニンゲンの思考がわからない。何故命を投げ捨てる様な真似をする」
大きく飛び退いたイリーツァ。その身に吸収……『食した』『憎悪』を手元の杖に集中させはじめる。得物が、黒く輝き始めて。
「死を恐れる癖に、何故。常は自分以外の物を害し、稀に自分以外の物の為に動く」
周囲に浮かんでいた小さなスペースデブリが、彼から溢れ出す瘴気に当てられてか――粉々に砕け散る。
「私にはニンゲンが理解出来ない」
杖を振りかぶり、その翼を大きく広げ――槍の『石突』を、その双眸が捉えた。
「だから貴様等は敵だ 只純然たる敵だ」
轟、という音と共に疾駆。石突を突き飛ばさんと、そのまま杖を突き出した。
「躊躇無く殲滅する」
其の槍は『彗星』。赤く煌く一条の光は、数多の瘴気を巻き込み、螺旋を描きながら――『憎悪』を貫いた。
“ニンゲンであった弟ならば、解るのだろうか?”
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
雛月・朔
【WIZ】
武器:ヤドリガミの念動力
宇宙空間も久しぶりですねー。ここは意識せずとも身体がふわふわするので割と好きです、以前いただいた宇宙服が無いと簡単に死んじゃいますけど。
さてお相手は元銀河帝国の方ですか、今回の報告に有った巨大な宇宙生物を見にきたんですがまずはあの方々を倒さねばなりませんね。
宇宙空間での移動は自身の身体を【念動力】で操り、敵の攻撃は【念動力】【オーラ防御】【範囲攻撃】で作った不可視の壁で防ぎます。
壁を展開しても相手の数も多いですし、囲まれて石化粘液を浴びせられてはさすがにこちらも不利なのでなるべく距離を取りながら一体一体UCの雷で倒していきます。
雲など存在しえない深淵たる『宇宙空間』で、雷鳴が鳴り響く。
つんざく轟音と共に、また一体のクラゲが全身を焼き焦がし、漂う。
「宇宙空間も久しぶりですねー」
ふわり、ふわり、雛月・朔(たんすのおばけ・f01179)が『宙』を舞いながらそんなことを呟く。
「ここは意識せずとも身体がふわふわするので割と好きです」
ふわふわと浮かんでいるが故に、素早い動きではないのだが――今も絶えず繰り出されている触手やら水鉄砲やらの『攻撃』を、すり抜けるように躱していく。
「さて、まずはあなたたちを倒さなくてはならないのですね」
未踏宙域に立ち塞がるオブリビオン。過去の遺恨。憎悪の塊。
雛月は挟みこむように放たれた触手の波状攻撃を『見えざる壁』で防ぐ。
「おいでませっ」
左右に突き出した両手をぎゅっと握れば、その左右から迫っていたクラゲたちの動きが不自然に『硬直』する。
雛月はそのまま大きく飛び退いて、腕を交差。二匹のクラゲはその動きに追随するかのように互いに引っ張られ……激突。
「背天の――」
雛月の、ぼそりと呟いた言霊が、無の空間に『稲妻』を作り出す。
「走狗散らさん――」
稲妻は『雷球』となり、分裂し、それらが先程ぶつかり合って怯んでいるクラゲたちを取り囲む。
「穀雨の伴」
言霊の鍵が、音を立てる。雷球は光輝けば、一条の雷となって――轟き叫ぶ。
取り囲まれた状態で四方八方から繰り出された雷を避けられるわけもなく、閃光の後に残されるは黒ずんだ欠片のみ。
雛月は咄嗟に周囲の敵、その位置を確認し、距離をとらんと飛翔。
半瞬遅れて、彼がいた位置に鈍色の液状体たちが殺到。
「貫きますっ」
その塊に雛月が視線を向ければ、『宙』からおびただしい数の落雷。クラゲたちは一匹一匹が等しくその身を穿ち、沸騰させ消えゆく。
――死に際の一撃、というべきだろうか。ある一体が、その身が焼きつくされる直前に、巨大な鈍色の塊……『石化粘液』の砲弾が螺旋を描いて射出される。
「――っ! させません!」
咄嗟に両手を突き出す雛月。展開されるは何層にも重ねられた『見えざる壁』。
一瞬遅れて、砲弾が激突。その力は、宇宙空間であるはずなのに、衝撃で『揺らいだ』かのような錯覚に陥るほど。
割れるような音と共に徐々に削られていく壁。
「火事場の馬鹿力、ってやつですか……」
雛月は思わず苦い顔をする。だが、そのすぐ後に少しだけ口角を上げた。
「だったら――」
片手を離し、その砲弾めがけて『握りこむ』ような動作を行う。
そしてそのまま――その片手を『振り払った』。
「軌道を変えるまで、です!」
火花と共に、弾の回転が変化する。真っ直ぐ飛んでいたはずの弾が徐々に右に逸れていき――そのまま壁を伝って雛月の真横へ突っ切っていった。
その際に、雛月の真後ろにいた数匹のクラゲがその砲弾に巻き込まれ――粉々に散りばめられていく。
「今度は『最大出力』で参ります!」
死にかけを作ると先程みたいなことになりかねない――そう察した雛月が、自らの得物である薙刀『不香』を天にかざし、そのままそれを振り回す。
それに呼応するかのように、周囲に発生するは『雷』の大嵐。
ハリケーン、サイクロン、そう呼称するべきか――それを模した『電磁嵐』が、周囲のクラゲやらスペースデブリやらを、等しく爆散させていく。
雛月が一声あげれば、空間に振り下ろされる薙刀。すると嵐は一点に集中し……巨大な電磁球となって、恒星のように周囲を回り始めた。
それは近くにいる存在に平等に『電撃』をプレゼントする。雛月は持ち前の念動力でそれを自在に振り回し、辺り一面を無数の雷で覆いつくす。
一見してそれは各個撃破ではないようにも見えるが、その実、彼はしっかりと一体一体を『視て』、念入りに倒している。
最早、彼の雷から逃げられる存在はこの場にはいない。
次々に、貫かれ、穿たれ――。
焼き焦がされ、逃げ惑うこともできず――。
反撃も、不可視の壁により、叶わず――。
何本もの雷光が暗黒空間を照らしたが、その数は徐々に減っていって――。
「さあ、あなたで最後みたいですね」
時が経って暫く、無数のクラゲたちを屠った先には、最後の一体が彼の目の前にいた。
「さあ、これで終わりです――眠ってください!」
その雷は、とびきりの光を放って――『未踏宙域』の先を照らしていった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『宇宙航路開拓作戦』
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POW : 探索や転移の障害となるデブリなどを取り除く
SPD : 周辺の警戒を行い、敵襲に備える
WIZ : 宙域の地図データを作成する
👑11
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鎧坂・灯理
さて、先人の遺志を継ぐ時間だ。
UCを使用して周囲の警戒や、出来れば地図データも作成する
この技は視認対象から五感を伴う認識思念を走らせるものだが
思念自体に五感――視覚が存在する
つまり、理論上は無限に知覚領域を伸ばせる
……もちろん、本当に無限とはいかないが
収集した情報量を処理できず脳が焼ける
だが私の脳は常人よりもずっと優秀な物だ
必ずや広域のデータが集められるはず
「味覚・嗅覚・触覚」を切って、その分だけ更に広域へ伸ばそう
夢半ばで倒れた戦士達の分くらいは「なんとかする」さ
私なら出来る
私が私を信じる限り不可能などない
決して、な
雛月・朔
【POW】
武器:ヤドリガミの念動力
さて、次は航路の確保ですか。
んー、警戒や地図は船のセンサーにまかせて私は宙域に浮遊しているデブリを取り除きますかね。
【念動力】【範囲攻撃】で近くのに見えるデブリを押し出して遠くに飛ばして【掃除】します。ゴミをそのままにして遠くにやるだけの行為を果たして掃除と言えるのか疑問ですが…。
船の進行ルートを確保しないといけませんのでなんとか船の乗員さんと連絡を取り合って作業を限定的かつ効率よく行うよう務めます。
セリエルフィナ・メルフォワーゼ
ボクは『アクアマリン』の管制塔から見張りをするよ。
これでもスカイダンサーだからね、目は良い方なんだ。
「コンセントレーション・スナイプ」で集中力を高めて、思いっきり目を凝らせば、かなり遠くまで見通せる筈。
ついでに【オーラ防御】のオーラを眼球に纏わせて、更に【視力】をアップさせるよ。
これで約1km(正確には1156m)迄なら、何が来ても【見切り】が出来ると思うけど…
それともし何か見つかったら、【歌唱】技能でその時の状況を即興で歌にして皆に伝えるよ。
歌声を【衝撃波】に乗せて(もちろん衝撃波は加減して)船内に飛ばせば、すぐに情報を共有できると思うし。
見張りをする以上、伝令だってしっかりやらないとね。
ユートピア・ドリームランド
◆心情
デブリの処理、正しくユートピア向きのお仕事と判断します
・・・それに、一足先に未知の領域を見て回る事も出来る、役得かと
ではアクアマリンの皆様、開拓の露払いはユートピア達にお任せを
◆行動
今回はデブリを障害にならない位置に移せれば十分
デブリを障害にならない位置に蹴り飛ばし
その反動で次のデブリへと飛び移ってゆきましょう
掃除や倉庫整理の鉄則は軽いものから片付ける事
先ずは軽いデブリを調子よく
デブリが重くてユートピアの質量が足りなくなってきましたらデブリで「UC:ビルドロボット」を使用
ユートピアの身体能力と質量を増強して対応致しましょう
最後はUCを解除し戻ったデブリを足場にアクアマリンへと帰還致します
「さて、先人の遺志を継ぐ時間だ」
鎧坂・灯理(不退転・f14037)が、宇宙船『アクアマリン』の操縦室、その扉を開け、中へと入った。
宇宙船は現在、未知の航路へと侵入しているためか――非常に牛歩で進行している。それもそのはず、灯理の視線の先に映るレーダーには無数の『黒点』が映し出されていた。
「無数の障害物によって動けない、といったところか」
未開の航路であるが故に、無秩序にデブリを破壊するのにもリスクがある。故に慎重に動かざるを得ない状況、ということだ。
「だがそれでは日が暮れる、なんて言葉が生温いくらいには途方もない時間がかかるだろうな」
灯理は、自らの指を額に当てる。
「だが安心しろ。私の脳は、”それ”よりも遥かに優秀だ」
レーダーに視線を向けながら、灯理は口角を吊り上げ、不敵な笑みを見せつける。
『見通してみせよう』
念動奇術・肆ノ型『内壁楽園』。
灯理の『五感』が伴った、思念波――それが艦内の空気を揺らし、外壁を超え、宇宙空間へと広がっていく。
同時に彼女の瞼の奥には、広がり続ける思念波の『視界』……それが次々に映し出されていく。
それを『記憶』せんと那由多の情報量が彼女の脳に押し寄せるも、焼き切れることはなく、未だ健在。
「――やはり、未踏宙域なだけはある。これは酷い『散らかりよう』だな」
灯理は目を閉じたまま、思わず顔をしかめる。
「まぁ良い。最適な『道筋』は見つかった。あとは『実行班』に任せるのみだ」
揮発性の高い物質を含んだデブリも中にはあるかもしれない。
こればかりは船外にいる『猟兵』たちにその目で確認して任せるのがベストだろう。
灯理はそう判断し、自らの耳に手を当て、”『思念波』に乗せて”言葉を発した。
「ルートは見つかった。場所を今から伝えよう――」
●
「了解です、鎧坂さん! あとは私たちにお任せを!」
灯理が発した思念波から直接、言葉が届けられる。それは外や別所にいる猟兵たち全員に満遍なく伝わったようで。
雛月・朔(たんすのおばけ・f01179)が船外壁に立ち、その指示に応じて頷く。
同時にふわふわと飛翔。宙域に漂うデブリ群の一つに向かい始めた。
「お掃除しますよー」
自らが持つ『念動力』、それを波打たせるようにデブリ群にぶつける。それらは押し退けられるように吹き飛んでいった。
「ゴミをそのままにして遠くにやるだけの行為を果たして掃除と言えるのか疑問ですが……」
自身の行動に疑問を持ったのか……雛月は首を傾げるものの、構わず続行。
船が安全に入り込めるくらいのスペースを作り続けては、そこに船を通す作業をひたすら続けた。
「おや、これは――」
目の前に立ち塞がるは『巨大』な岩塊。
「これは押し退けるには少しばかり面倒ですね……」
破壊するべきか――思索に耽っているところに、背後から声がかかる。
「デブリの処理、正しくユートピア向きのお仕事と判断します」
ユートピア・ドリームランド(ごみ処理船のブラックホール・f21634)、その人である。
「お任せください」
そう言って周囲のデブリを自らに集め、合体。――勿論、押し退けたデブリはしっかりと除外してある。
「小さなものであれば、こうしてリサイクルしてしまいましょう」
そう言ってデブリを吸収し続け、人型のロボットへと変身する。岩塊を吸収したとは思えないほどに、その白いフォルムは暗黒空間に煌いている。そして何より特徴的なのは、その『巨大な』右手。
「大きなものであれば、これです」
目の前に鎮座している巨大なデブリ……そこに、その『右手』を思い切り振るう。
その掌の表面が、振るった瞬間に『深淵』の黒色と化し、デブリに接触。その瞬間、ナイフで削ぎ落されたバターのように、デブリが抉り取られ――粉々に砕け散る。
「ありがとうございます。ユートピアさん!」
雛月は笑顔を見せながら、粉砕されて散らばったデブリたちを『見えざる手』で払っていく。
「こちらこそ、小さなものは『回数』が増えて疲弊してしまいますので、払っていただき感謝します」
掃除や倉庫整理は軽いものから処理していくのが鉄則ではある、が、やはりユートピア単体だと限界がある。
念動力により効率的に『掃除』をすることができる雛月の存在は非常にありがたいものであった。
それは、大型デブリを処理するには少し手間がかかる雛月も同様で。
ユートピアも雛月に微笑み、応じる。
ふと、ひとつの『歌』が宇宙空間に響き渡った。
――♪
「――前方、600メートル先に、刺激すると爆発する恐れのある成分を含んだデブリがあるみたいですね」
雛月がユートピアにそう言う。
「ええ、ユートピアも確かに聞きました。気を付けましょうか」
『アクアマリン』の管制塔から響き渡る声。それが『歌』となり、雛月たちに届けられる。それは只の歌ではなく――”情報”。
それが灯理の思念波と組み合わさって、より濃度の高い情報となり、実行班の雛月とユートピアに届けられているのだ。
ではその『歌』を奏でているのは誰か――。
●
「ちゃんとボクの歌は伝わったみたいだね」
『アクアマリン』の上部にそびえ立つ管制塔、その天辺で周囲の様子を見回しているセリエルフィナ・メルフォワーゼ(天翔ける一輪の君影草・f08589)。
彼女が今回の航路を開拓する上での『現場の目』である。
灯理が全体を見通せるレーダーの役割を果たしてはいるが、やはり万が一というものがある。
そういった『細かい』点をチェックできるのは、所謂”鷹の目”を持つセリエルフィナの強みであろう。
彼女がじっと目を凝らせば、彼方まで視野が『進んで』いく。
それはデブリ等の物質は勿論、それ以外の『何か』もしっかりと確認することができるほどに明晰たる視界を持つ。
「大型のデブリが一つ、二つ、……うん! 三つ、あるね!」
進行方向に障害物を見つけるや否や、それを灯理と照らし合わせ、より正確な情報にした後に――『歌う』。
セリエルフィナは『歌』を奏でてこそ、遠方まで届けることが可能だ。
故に彼女が指示を『歌』に変換することは決して非効率的なことではなく、むしろ『強み』を活かした行動なのだ。
「あ! あのデブリは廃船の燃料タンクだね……伝えておこう!」
遠目で見たら他のデブリと大差のない見た目だが、彼女の卓越した視力により細やかなところまで見渡せる。
僅かに岩塊からはみ出た『先端』でそう判断したセリエルフィナは、すぐさまそれを三人に伝える。
こうして、『アクアマリン』は航路をぐんぐん開拓していき――極めて順調に『ルート』確保に成功していった。
それも、猟兵たちの強みを余すことなく活かした結果であろう。
灯理とセリエルフィナによりデータが効率的に作成され、それをより良いものにするために実行班である雛月とユートピアが動く。
船員たちも、猟兵たちの『埒外』たる能力に驚きを隠せない様子であった。
●
不意に、灯理の『思念波』とセリエルフィナの『目』が、こちらに急速に迫って来る一つの『巨大』な何かを捉えた。
「この反応は――」
操縦室にいる灯理が言葉を零し、すぐさま雛月とユートピアに指示を出す。
『私の思念波が敵性体を察知しました。一旦、船の傍まで帰還してください』
思念波にすぐさま指示を乗せる。そして、セリエルフィナの歌が一瞬遅れて船内に響き渡った。
その声色は空気が張りつめ痺れるほどに、極めて剣呑。
船内に緊張とアラートが鳴り響く――。
――奴の名は『獣』――
――奴の名は『尖兵』――
――全てを『圧壊』――
――全てを『分解』――
――キエリビウムJOX、現る――
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『クェーサービースト・キエリビウムJOX』
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POW : JOXクリアビス
【物質分解波動を帯びた触手による殴打】が命中した対象に対し、高威力高命中の【触手を巻き付けての圧壊攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : JOXストリミド
【高速回転しながら、物質分解波動の連射】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : JOXリガリアム
【触手】を向けた対象に、【頭部の水晶体から放たれる物質分解光線】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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”縺雁暑驕費シ”
船の真上からゆっくりと降下していく『クエーサービースト』、『キエリビウムJOX』。
触手が蠢き揺らぐ。その一本一本ですら、船よりもはるかに巨大。
当然、本体はそれよりも遥かに大きく……至近距離で見上げても頭部が見えないほどに『呆れた』スケールである。
”驕翫⊂縺?h”
それは『言語』ではない。意味など存在しない。それは、たまたま発した『音』に過ぎない。
かの者に意思は無いものと考えるべきだ――何故ならば――。
”莉雁コヲ縺ッ螢翫l縺ェ縺?〒縺ュ”
今もこうして、揺らめく触手に掠っただけで、船の装甲やシールドが削り取られ続けているのだから。
重ねて、かの者に意思も言語体系も存在しない。『我々には理解できない』と考えるべきだ。
『アクアマリン』が撃墜される前に、かの『尖兵』を撃滅しなければならない。
夢が、希望が、遺志が、圧壊される前に、奴を――滅ぼせ。
フーカ・シャークライト(サポート)
『メカニカル鮫ガール』
ウォーマシンの鎧装騎兵 × アームドヒーロー
年齢 10歳 女
外見 183.5cm ピンクの瞳 ピンクの髪 色白の肌
特徴 粗忽者 世間知らず 水泳が好き
口調 粗暴(オレ、お前、だ、だぜ、だな、だよな?)
機嫌が良いと フカカカカと笑う(オレ、お前、だ、だぜ、だな、だよな?)
鎧坂・灯理
巨大な巨大な「小さな尖兵」
小惑星サイズのクラゲか
ああ、関係ない。関係ないよ
私の前に立つな
UCを使用
この身全てを脳の延長とする事により、念動力を増幅
より強大に、より無慈悲に
今度は海を割る程度で済むと思うなよ
念動力で触手を破壊する
破裂、圧砕、切断、捻切、なんでもして削る
私にも船にも味方にも届かせはしない
しかし埒があかんな……ああ
そんなに大きいのであれば、そうだな
分子運動を暴走させる事で蒸発させてやろうか
皆、困難に苦しみ、死を恐れながらも、前へと進もうとしている
立ちはだかるというのであれば、良かろう
猟兵(我々)が相手をしてやる
前に進もうとする「人間」の邪魔をするな、怪物
雛月・朔
【WIZ】
武器:念動力、薙刀『不香』
本当に大きいですね…。それにこの姿に宇宙で活動している肉体…本当に生き物とは思えません。UDCアースの邪神と言われても納得する風体です。
まずはこちらの攻撃が効くのか確認せねばなりませんね。相手は宇宙空間で活動できる常識外の存在、ですが我々猟兵も常識を超えた力を有してますから勝ち目が無いわけではないでしょう。
【念動力】で自分の身体を操り移動。UCを唱え、身体を神霊体に変えます。(外見は変わらない)
無数の触手と頭部のビームの両方を同時に相手にするのは難しいので、頭部の方に回り込み、そちらの攻撃と回避を行います。
回避優先ですが最悪の場合は【オーラ防御】で防ぎます。
――空気の存在しない無重力空間であるはずなのに、キエリビウムJOXがゆっくりと降下するだけで、周囲の『空間』が嘶き震える。
『アクアマリン』を飲み込まんと、触手を揺らしながら己が高度を下げていく。真上からのしかかるように迫りくる巨躯。周囲に張り巡らされた触手が気まぐれに船に触れるだけで、装備されたシールドが『抉り取られて』いく。
「本当に大きいですね……」
雛月・朔(たんすのおばけ・f01179)がその様子を、船の外壁から見上げていた。
勿論、ただ見上げているだけではない。彼が目を閉じれば舞い散るは白梅の花弁。それらが周囲を回り初め、彼の身を包み込み、隠す。
「UDCアースの邪神と言われても納得する風体です……」
巫覡載霊の舞
花弁を払い、姿を現すは、いつもの『雛月』。だが……、内に秘められた『神霊』の炎が彼の力となり、確かに高みへと昇華させている。
「まずはこちらの攻撃が効くのか確認せねばなりませんね」
雛月は、まずは船に取りつかれかけているこの状況を何とかするべきだ、と、周囲に垂れ下がった触手の森林の一角めがけて突撃。
己が念動力に身を任せ、宙を駆けながら”薙刀『不香』”を抜刀し、触手の一角にそれを突き立てた。
ごう、という衝撃が躍動する音が聞こえたかと思えば、触手の数本が押し退けられ、触手の包囲網から抜け出せそうな『空間』がそこに現れる。
即座にその空間を突っ切り、そのままキエリビウムJOXの外側を伝うように、念動力で自らの身体を押し上げ――奴の頭部めがけて昇り始めた。
“蜷帙′蜒輔→驕翫s縺ァ縺上l繧倶ココ?”
キエリビウムJOXが耳障りな音を発したかと思えば、数多の触手が胎動。それらは一つ一つが別個の意思を持っているかのように蠢き、雛月めがけて振るわれる。
「あれに捕まるわけにはいきませんね……」
飛来する触手たちをすり抜けるように紙一重の回避を続けながら、飛翔を続ける雛月。触手一本一本が大木のような太さを持つ馬鹿げたスケールの攻撃だが、その『スケール』が故に大雑把。
雛月は、敵の大雑把さが故に作られた『人一人が抜けられる僅かな隙間』を的確に見切り、迷路を抜けるように触手の弾幕を抜けていく。
それも、彼が『神霊体』となっているおかげであろう。通常の何倍もの力を一時的に得ているが故の回避能力と言える。
だが、キエリビウムJOXも知能が一切ない存在ではないようで。
触手の軌道をわずかにずらし、雛月を『通り抜けられそうな隙間』に誘導したところで、一本の触手を別動隊として飛来させた。
「く、っ!?」
思わぬ不意打ちに雛月は顔をしかめる。だが、自らが持つ念動力を辺り一面に張り巡らせ、疑似的な『オーラの壁』を作り出す。
刹那、ぶつかり合う触手とオーラ壁。けたたましい掘削音と共に、彼のオーラ壁が『分解』されていく。
――このままではまずい。そう察した雛月が策を巡らせているところに、一声。
「フカカカカ! 邪魔はさせねぇぜ!」
雛月を捉えかけていた触手に、熱線の雨が激突。そのスケールが故に灼け千切れることは無かったが――大きく押し退けられて、雛月の脇を触手が通り抜けていく。
キエリビウムJOXが、熱線の射線先に『見えざる視線』を向ける。
暗黒空間に仁王立ちするはフーカ・シャークライト(ウォーマシンの鎧装騎兵・f21308)、その人。
彼女の周囲に浮遊するはおおよそ100体以上の小鮫型【コブンザメ】ロボット、その一角の口腔部からは白煙があがっている。
”驍ェ鬲斐r縺励↑縺?〒繧”
解放された雛月が頭部へと昇っていくのを尻目に、フーカに触手を向けるキエリビウムJOX。
刹那、奴の頭部水晶体が輝き――放たれるは『蒼の光』。
その光彩は漆黒の空間を塗りつぶす『銀河』のようで。見とれるほどの美しさの中に、渦巻く『宇宙的恐怖』。
「行けっ! コブンザメ共! 防御陣形だっ!」
即座に『コブンザメ』たちが身を寄せ合い、各々の口腔部から熱線を放ち、集め、一本の巨大な『レーザー』を作り上げて撃ち放つ。
渦巻く濁流のようなそれが、キエリビウムJOXの『光』とぶつかり合い、爆発。
赤色を帯びた熱線と、青みを帯びた物質分解光が混ざりあい、マゼンタ色の爆風が辺り一面に広がっていく。
「第二陣! いけー!」
キエリビウムJOXの側面から叩き込まれる火炎弾、その弾幕。
彼女が召喚した『コブンザメロボット』はその数を活かした分隊構成を作り上げていた。フーカと合わせて気を引かせたところに、横殴りの攻撃。
キエリビウムJOXは意思を持たない機械的な存在。だがその視界は『全てを見渡せる』ほどではない。
意思を持たないが故に『考える』ことがなく、それが故に不意打ちや策に弱い。
触手の数本がその火炎弾で焼け焦げ、延焼する。キエリビウムJOXは傷ついた触手を別の触手で分解し、即座に切り落とした。
「最後だ! 全員突撃ー!」
コバンザメはフーカの言葉に応じ、キエリビウムJOXめがけて突進していく。
その身そのものを『弾丸』とするように――かの巨躯に激突していき、自爆。
小惑星スケールの巨体とて流石にたたらを踏み――『アクアマリン』がその隙に触手の密林から抜け出した。
”諤偵▲縺溘◇?”
キエリビウムJOXの頭部水晶体に一条の光がよぎり――薙ぎ払うように放たれた『物質分解光線』。当然、その射線にはフーカも含まれている。フーカが咄嗟に身をよじってそれを回避しようと試みた――。
「前に進もうとする”人間”の邪魔をするな、怪物」
『光線』が”屈折”し、明後日の方向へと消えていく。
フーカの前に立つは、一人の『探偵』。
「あ、あぶねーところだったぜ! 感謝するぜ!」
フーカが探偵……鎧坂・灯理(不退転・f14037)にお礼を言い、撤退。
灯理はそれに微笑み頷き、応じたところで――その双眸を『尖兵』へと向ける。
「巨大な巨大な”小さな尖兵”。小惑星サイズのクラゲか」
キエリビウムJOXは目の前に現れた新手に臆することなく、触手を振り払う。
「ああ、関係ない。関係ないよ」
灯理が煩わしげに手を払う。『そこにあるはずのない運動作用』が働き――触手の軌道が逸れ、灯理には当たらず。
「私の前に立つな」
外付魔術:脳髄論――この身全てを脳の延長とする事により、念動力を増幅。
その『論』は只人の身では叶わぬ領域。だが、彼女は只人で非ず。
灯理の眼、奥底に揺らめく紫焔が『黒』に近づく。
「証明をする、ということは……要は、”0”か”1”かであることを確認する、ということだ」
無論、キエリビウムJOXには灯理の言葉は届かない。即座に二本目、三本目の触手を突き出してくる。
「どういう意味か分かるか?」
灯理の目の前で、触手たちがきしみ……繊維がぷちぷちと切れていき、ねじ切れた。
「”1”の可能性を秘めた『人間』ではない、『怪物』である貴様の存在が”0”である、ということを――これから証明してやろう」
ということだ、と灯理が言葉を締めると、周囲の空間を己が『思念波』で包み込み、『意思』を実行させる。
「ひき潰す」
灯理が手をかざして握りこむ。すると、数本の触手が挽かれ、圧潰。
「破裂しろ」
続けて灯理は指を鳴らす。触手の一本が震えたかと思えば、粉々に爆発。
「千切れろ」
反撃といわんばかりに繰り出された触手が、灯理の眼前で千切れて力を失う。
「しかし埒があかんな」
灯理が顎に手をやり、思案する。触手自体はそこそこの数を削り取ったものの、キエリビウムJOX自体は未だ健在。
――私が展開した『論』も、時間があるわけではない――
脳裏に僅かな『痛み』を覚えた灯理。
時間切れを察した灯理が、思念波をさらに大きく広げていき、キエリビウムJOXをかろうじて包み込むほどにまで拡大させていく。
「そんなに大きいのであれば、そうだな」
灯理が手をかざし、その『意思』、その大半を思念波に集中させていく。
「”蒸発”させてやろうか」
――今度は海を割る程度で済むと思うなよ――
巨大であるならばあるほど、分子量も相対的に多くなる。
ならば、それを”暴走”させてやろう――。
ぶるりとキエリビウムJOXが震えたかと思えば、全身の至るところから体液を噴出させ、身体の随所が崩壊していく。
内側からせり出すように、奴の触手が爆散していき――その身を大きく変色させる。
「……限界か」
ちらついた痛みが、鮮明なものになる。
だが、キエリビウムJOXの頭部水晶体に取りついた『雛月』の気配に、頭を抑えながら灯理はにやりと笑う。
「ならば私も最後に――”裁ち割る”」
大きく手を振り上げ、キエリビウムJOXに対して振るう。
それは『意思』の力で『視えざる斬撃』となり――奴の身体が、僅かに、『ずれた』。
「フーカさん、鎧坂さん、ありがとうございます!」
頭部水晶体、そのさらに上に浮遊する雛月が、二人にお礼を言いながら見下ろす。
「私も時間がありません……この、一撃で!」
『不香』を両手で構え、その得物に自らの念動力……その『全て』を末端まで通す。
「いきます!」
彼の身体が疾風となる。
キエリビウムJOXの頭部水晶体が応じるように煌き、光線が放たれる。
だがその攻撃は『正確』すぎるが故に『正直』。軌道を読んだ雛月がその身をよじり、回避。そのまま薙刀を振り上げ――。
「これが、私たちの希望です!」
その刃が水晶体に突き立った瞬間、周囲の空間がひずむ。
その衝撃波は、小惑星たる『尖兵』ですら大きくよろめき――
みしり。
軋む音と、水晶に刻まれた『ヒビ』が――その『希望』を物語っていて。
成功
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セリエルフィナ・メルフォワーゼ
うへぇ…話には聞いてたけど何て大きさ…
まともに戦ってたら勝ち目なんてないだろうね。
だけどこいつだって生物である事に変わりはない。
なら…栄養を取り込む為の『口』がある筈。
多分、あの触手群を越えた先に…!
「コンセントレーション・スナイプ」で極限まで集中力を高めた状態で、こいつに【空中戦】を挑むよ!
敵の連射を【視力】で【見切り】ながら、【早業】と【残像】を駆使して何とか回避し続け、【ダッシュ】でこいつの『口』まで突っ切るよ!
一瞬でも臆したら終わりだ。
【勇気】を振り絞って走るんだ!
『口』に辿り着いたら、【オーラ防御】を纏ってそのまま中に侵入。
体内で『ブラスター』を撃ち、内部から炎上させてみるよ。
ユートピア・ドリームランド
◆心情
星のスケールを持つモノ
あれからすればユートピア達など羽虫の如きものでしょう
ならば蝶の様に舞い、蜂の様に毒を持って打ち取りましょう
◆狙い
圧縮汚染物質を打つUCによって、毒性によるダメージや痛痒を狙います
これほどのスケールの生物です
一度体内に打ち込めれば体内循環によって毒性は勢いよく溶け出してゆくことでしょう
◆移動・回避
UCや射撃の反動で移動
相手が高速回転を始めても巻き込まれない距離を維持し
高速回転を始めたら物質分解砲の薄い場所(回転の軸である上下等)に移動致します
◆攻撃
指弾であるUCの威力不足は相手の動きの軌道に「置く」ことで補いましょう
画鋲が動かずとも足を貫く様に
特に高速回転は狙い目かと
星のスケールを持つモノ。
圧壊の獣。
『尖兵』。
かの者、キエリビウムJOXを表現する言葉は、どれも規格外。
事実として身体を二分されかけ、全身を焼かれ、頭部に大きな裂傷を入れられているにも関わらず、その身は未だ朽ちてはいない。
狂ったように周囲一帯に『蒼の光線』をまき散らし、有象無象の物質を分解し続けている。
「――あれからすれば、ユートピア達など羽虫の如きものでしょう」
キエリビウムJOXの周囲を旋回する『アクアマリン』、その外壁に立つユートピア・ドリームランド(ごみ処理船のブラックホール・f21634)が、飛び出す。
"霑代▼縺九↑縺?〒”
無差別に放たれていた『光』が、一斉にユートピアに収束する。
ユートピアは抱え込んでいた大型スクラップウェポンを即座に瓦礫をあらぬ方向へと射出し――その反動で自らの身体を突き動かす。
半瞬遅れて薙ぎ払われるは全てを分解する光線。命中した瓦礫が跡形もなく消滅した。
「光というモノは直線的な動きしかできません」
的を絞らせないように、次々に弾丸を射出していき、上下左右に――三次元的な動きで翻弄する。ユートピアが通り過ぎた箇所に、正確に光線が飛来し続ける。
触手が届く位置まで詰め寄られたキエリビウムJOXは、触手をぶつけ合って威嚇する。触手の数本をユートピアまで向かわせた。
「点でダメなら、面ですか。ですが――」
触手が振るわれた直後、周囲に漂っていた『何か』に触れ――小爆発が連鎖発動。一瞬で触手が黒ずみ――朽ち落ちた。
「その周囲は、既にユートピアの"領域”です」
立て続けに向かってくる触手を紙一重のところで回避。僅かに触れたスクラップウェポンが火花をあげる。
そしてユートピアは触手の面に立ち、駆ける。
キエリビウムJOXは、構うことなく『光』を照射。
ユートピアは触手に火砲を撃ち放ち、その反動で飛び出す。彼女の背後では『光』に巻き込まれて千切れた触手が宙を漂っていた。
「……きましたか」
ゆっくりと、触手を広げていきながら――巨体が回転し始める。
その瞬間を待ってましたと言わんばかりに、ユートピアは懐に潜ませていた弾丸を装填。バレル内部を通る『弾丸』の感触。
「勝負です」
触手が高速回転し始めたと同時に、ユートピアも『上』方向にその弾丸をぶっ放す。けたたましい音と共に空間が歪曲。先程の『反動』とは比べ物にならない程の速度で急速落下。
ばら撒かれるは『圧縮汚染物質』。それの『クラスター弾』。それの『連射』。
初撃のみ、火薬量を限界量まで詰めることにより――自身へのバックファイアによる負傷と引き換えに――瞬間的に高速で移動することが可能。
身体の随所に火傷を負ってしまい、傷から煙をあげながらも、その指はトリガーを引き続けている。マズルが赤熱し、その熱により銃を持っている彼女の両手から白煙があがっているも、ひるむことはなく。
「ユートピアのおやつ……全弾使ってしまいましたが――及第点、ですかね」
トリガーの軽い感触を確かめたユートピアは、そのまま身を投げ出すかのように宙を漂う。
彼女の視線の先には、大量の『圧縮汚染物質』により、触手の大半が黒ずみ、汚染されたキエリビウムJOXの姿が映っていた。
「うへぇ……話には聞いてたけど何て大きさ……」
一方、あらかじめキエリビウムJOXの真下で待機していたのは、セリエルフィナ・メルフォワーゼ(天翔ける一輪の君影草・f08589)。
先刻の高速回転を見て、そのスケールに舌を巻く。だが、ユートピアの『圧縮汚染物質』がほぼ全弾命中しており、その触手はひどく黒ずんでいる。
「まともに戦ってたら勝ち目なんてないだろうね」
でも――。セリエルフィナは言葉とは裏腹に、真っ直ぐに突き進む。彼女の視線の先には、キエリビウムJOXの巨大な口腔。
キエリビウムJOXが気配を察知したのか、自らが持つ触手、そのほぼ『全て』をセリエルフィナに殺到させる。
「何事も重要なのはコンセントレーション(集中力)だ」
そう口ずさむと、彼女の視界が『スローモーション』となる。迫りくる那由多の触手群。その一つ一つを『視認』し――。
「見えたッ!」
その全てを『捉えた』セリエルフィナが強かに駆ける。熱線銃を抜いて撃ち放ち続ける。その射線に飛び込むように、触手たちに命中。
半ば朽ちていたためか――触手が、熱線の『一撃』で砕け散る。
「当たったら変わらず痛いだろうけど……脆くなっているならチャンスだね!」
手応えに口角を上げたセリエルフィナが、続けて飛来してきた触手群の隙間を縫うように身をよじり、回避。そのまま真っ直ぐ進む。
キエリビウムJOXが、不快な音を鳴り響かせたかと思えば――再びその身を回し始める。ヒビの入った頭部水晶体が、淡く光り出す。
「やっぱり来るよね……でも」
勝負だ――そう言わんばかりに、セリエルフィナは己が飛翔速度を爆発させ――疾駆。
音を置き去りにしたまま走り続ける彼女に、『光』の気配がより強まる。同時に触手たちが時間稼ぎと言わんばかりに彼女に迫りくる。
「一度でも臆したら終わりだ!」
自らにそう言い聞かせ、その速度は衰えることは決してなく。触手の一本が、彼女の脇腹に掠り、傷つける。
だが、彼女は傷を庇うことすらなく、そのまま駆け続ける。致命傷になりうる触手は熱線銃でしっかりと撃ち落とし、それ以外は最低限の回避のみでほぼ無視。
そのスケール故に、触手が直撃しようものならどうなるかは想像に難くないが……彼女は臆することはなく、その身に幾多の傷を刻みながらも……口腔前に到達。
「【勇気】を振り絞って走るんだ!」
速度を緩めることなく、その両手を交差させ――己にありったけの『魔力光』を纏わせる。
当然、口腔部は閉じているが、構わず激突。空間が嘶き、一瞬の間を置いて――貫通。
貫通したときに散らばったキエリビウムJOXの肉片は、ひどく黒ずんでいた。其の汚染物質は、すでに相当数を蝕んでいたようで。
「その闇を払ってみせよう!」
どくん、と、キエリビウムJOXの身が胎動したかと思えば――内側から『光』が漏れ出し――ひどく歪に膨張。
刹那の間を置いて、大爆発。
その爆発は、『尖兵』の陥落、希望の『光』。勝鬨。
宙に投げ出されたセリエルフィナは、その身を大きく傷つけながらも――無事。
彼女が纏った『光』は、暗闇を淡く照らしていた。
大成功
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