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\イカ焼き!/

#サムライエンパイア #戦後 #骨抜き妖怪『衣蛸』 #『皇帝烏賊』唐鞠・咲 #\おいしい!/ #挿絵

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#戦後
#骨抜き妖怪『衣蛸』
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●グリモアベース
「エンパイアウォーお疲れ様っす! 打ち上げしないっすか? サムライエンパイア行きっす!」
 今日もグリモアベースに威勢の良い声が響く。集まった猟兵に対して香神乃・饗は説明を始める。
「厳島神社にでる妖怪変化を退治してきてほしいっす!
 祭りの雰囲気におびき寄せられて顔を出すっす。だからまず、思いっきり『祭り』を楽しんで欲しいっす!」
 厳島神社はエンパイアウォーの戦場になったため、損傷した建物を復旧中だ。資金集めの為、祭りを催すことにしたのだという。

「まず、厳島神社に参拝できるっす。戦争中はゆっくり見られなかったっすから、改めて見学してきたらどうっすか? 海の中の鳥居とか壮大らしいっすよ。お守りを受けたり、おみくじもひけるっす。ここのお守り縁結びに効くらしいっす。おみくじは凶が出やすいらしいっすから気をつけるっす。
 勿論祭りっすから、縁日もあるっす。境内の外に色んな屋台が軒を並べているっす。遊んだり、買い物をしたり、食べたり出来るっす。めぼしいものはだいたいあるんじゃないっすか。名産は『しゃもじとうちわ』っす。どちらも絵付けをして手作りの一品ものを作ることができるっす。
 あとは、神社の周りにいる鹿とも遊べるっす。人なつっこいっすけど食欲旺盛な奴っす。食べ物とかをとられないように気をつけるっす」
 なんやかんやで楽しく過ごせば良いという。

 妖怪変化は浜辺に出るので出現すれば皆を案内する。
「1度目が大タコの群れ、2度目が大イカっす。どちらも美味しく食べられるらしいっす」
 妖怪変化は祭りの喧騒に酔った状態で出現する、ユーベルコードをたたきつければすぐ倒せるくらい油断しているのだ。
 大タコは自分たちで料理をしても良いのだが、頼めば漁師が調理してくれる。大タコと一緒に浜に打ち上げられる魚介類とともに塩水を使って浜焼きにしたり、タコ飯、刺身やてんぷら、半球形のくぼみのある鉄板を使ってたこ焼きにしても美味いだろう。腹一杯になるまで食べられる。

「イカを倒したら夜になると思うっす。
 中秋名月が近いっす。瀬戸内の海と月を眺めながら露天温泉でも入ってきたらどうっすか?旅館に泊まれるように話をしておくっす、猟兵が行くって言ったらきっと二つ返事で引き受けてくれると思うっす」
 温泉は混浴だという、水着や湯着を必ず着用して欲しい。倒したイカも、もちろん食べられる。浜焼きも出来るが、旅館でも料理してくれる。イカ焼き、イカ飯、刺身、天ぷらなど、美味しく調理してくれるだろう。他に、旅館で出来るようなことは自由にして構わない。

「ゆっくり羽を伸ばしてくればいいっす。じゃあ、ご案内するっす!」
 ぱんと掌を打ち鳴らせば、季節はずれの紅梅の花が咲き乱れる。導く先は厳島神社前、昼の日差しに照らされて鹿の群れがくつろぐ広場と縁日の前――。


ごは
 ごはです。
 サムライエンパイアの打ち上げをお届けします。今回はゆるくゆるく『\わらびもち!/』と同じ雰囲気で執筆します。地の文も遊びます!

●第一章:日常『祭りだ祭りだ』
 厳島神社見学、縁日、鹿と遊ぼう。
●第二章:集団戦『骨抜き妖怪『衣蛸』』
 タコ料理、浜辺で出来ること。
●第三章:ボス戦『『皇帝烏賊』唐鞠・咲』
 イカ料理、混浴月見温泉、旅館で出来ること。

●【戦闘は発生しません】
 第二章、第三章の敵はユーベルコードを活性化し『倒す』と書いていただければ倒せます。もし、本格的に戦うプレイングを頂いた場合は、相応に描写します。おもてなしなどを受けたい場合はどうぞ!
 香神乃・饗は同行できません。お一人さまで参加しづらい場合は漁師などにお声かけください。ふさわしい同行者をつけさせていただきます。(つっこみが足りない場合も誰か登場します)
 多くとも2~3シーン位に絞って行動してください。ご希望のシーン数が多い場合は非常にあっさりした描写になります。

 チームで参加したい場合は【グループ名】もしくは【相手の呼び名・fから始まるID】を冒頭にご記入ください。

 プレイング受付状況はマスターページ、もしくはこのシナリオページでお知らせします。
 1章のプレイングはOPが公開された時から受付いたします。
 1日7名様位まで執筆できます。我侭を申しますが、参加人数を確認して分散頂けると助かります。(団体さまは同日にお送りいただけると執筆しやすいです)

 プレイングの再送をお願いするかもしれません。ごはのスケジュールによるものです、お気持ち変わりがなければおつきあいください。
 プレイングは全て採用する予定ですが、公序良俗に反するものは不採用にします。

 それでは宜しくお願いいたします。
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第1章 日常 『祭りだ祭りだ』

POW   :    力仕事に加わる、相撲などの興行に参加する

SPD   :    アイデアを提案する、食事や飲み物を作る

WIZ   :    祭りを宣伝する、歌や芸を披露する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第1章 日常 『祭りだ祭りだ』に書かれている行動は一例です。全く違う行動を行って頂いて構いません。自由にお楽しみください。
●おみくじはプレイングで『1~33』の数字をご指定いただければ発行いたします。結果を決めうちでプレイングに書いて頂いても構いません。
●プレイング受付中です。
プレイング受付状況の詳細はMSページにて告知いたします。
ジュジュ・ブランロジエ
【エレニアさん(f11289)】と
アドリブ歓迎

大好きなお友達と一緒にお祭り!
歩いているだけでも楽しい
絡繰り人形のメボンゴを片手に抱いて
もう片方はエレニアさんと繋ぐ

あっ、絵付け体験だって!
言ってからエレニアさんの目があまり良くないことを思い出しハッとするが
え、いいの?
じゃあやってみよう!

うちわにエレニアさんと私とメボンゴの絵を描くよ
(子供が描いた少女漫画風の絵柄
あまり上手くないが気にしてない)
よし、できた!

エレニアさんの絵を見て喜ぶ
このもふもふしてるところ可愛い!
アートな感じもいいね
エレニアさんに描いてもらえて嬉しいね、メボンゴ!
『うん、ありがと!』(裏声)

ふふ、本当だ
絵の中の私達も楽しそうだね


エレニア・ファンタージェン
ジュジュさん(f01079)と!
アドリブ歓迎

お祭りですって!
何だか賑やかでわくわくするわ
ジュジュさんと手を繋いで歩くの
一番楽しい場所に連れて行ってもらうのよ

絵付け?うちわ?よくわからないけれど楽しそうよ
エリィはね、メボンゴさんを描く!
見えているままに描けば良いのなら描けるわ
(白い台形の上に辛うじてうさぎの頭に似た何かが乗っている)
(ふにゃふにゃもふもふした前衛的な鏡餅に見えなくもない)
んん…ちょっと背が足りなかったかしら?もっとスマート?

ジュジュさんの絵、素敵!
これ、エリィたち三人ね?
うちわをぱたぱたしたら、はしゃいで動いているみたい
これを見たらきっと今日のことを思い出せるわね
嬉しい



 エレニア・ファンタージェン(幻想パヴァーヌ・f11289)とジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)は手を繋いで縁日を見て回っていた。
「お祭りですって! 何だか賑やかでわくわくするわ」
 愛用の杖をつきながら歩くエレニア。反対側の手は、ジュジュと繋いで。ジュジュに気を遣わせないよう、ほんの少しだけ後をついていく。霞む視界。賑々しい人ごみは様々な色が入り混じりとても眩しい。手を引いてもらうほうが安心して歩ける。
『うん、わくわくする!』
 メボンゴがぴょこんと手を挙げて応える。メボンゴはジュジュが抱いている絡繰り人形だ。その表情、佇まいは気品の溢れる淑やかな女性白兎を象るよう。身に纏う純白のドレスも上品に映え、赤瞳が陽の光をうけ楽しげに輝く。
「歩いているだけでも楽しいね」
 隣に居るエレニアの顔をちらりと見るジュジュ。大好きな友達と一緒にお祭りに来ている、それだけで心が踊る。
『楽しい、楽しいね!』
 ジュジュに相槌をうつメボンゴ。その動きは自然なもので、まるで本当に生きているよう。2人と1体は仲良く肩を並べて縁日を巡る。
「一番楽しい場所はどこかしら?」
 目を眇め露店を見渡すエレニア。例えはっきり見えなくとも顔を向ければ見えた気がするから。活気のある人々の話し声、祭囃子が耳を賑やかす。
「金魚すくいに射的、色々あるけど一番楽しいの……わ! これすごい! メボンゴにそっくり!」
 指差す先には白兎の飴細工。飴細工屋の店先に跳ねている。他にも犬、猫などの動物や、龍などの幻想生物、さまざまな生き物の飴細工が飾られている。
「どれかしら?」
 声に振り返るエレニア。ジュジュの顔が向いているほうを目を眇めてじっくり見つめる。
「エレニアさんみて、これだよ」
 白兎に触れようとしたその時、
「あんた達、飴細工ははじめてかい?」
 白兎飴の向こうに座っていた女が微笑を浮かべる。20代位のさばさばとした印象の飴売りだ。
「メボ……じゃなかった、この白兎はお姉さんが作ったの?」
「そうだよ、あたしが作った。一つ見てくかい、好きなものを作ってあげるよ。何かいってごらん」
 和鋏を片手にすかさず売り込んでくる。商売上手のなせる業だろう。
「じゃあメボンゴ! お姉さんメボンゴ作れる?」
「めぼんご?」
「このメボンゴさんのことよ」
 要領を得ない顔をする飴職人にもわかるよう、エレニアが手で示す。
『メボメボンゴンゴ GO GO♪』
 ジュジュの腕の中で歌うメボンゴ。手を振ってアピールしている。
「えっと、……めぼんごだったね? 見てて」
 物珍し気に見るのは、その名前からだろうか。客の事情にあまり踏み込む気はないのだろう。じっと見つめた後、弾力のある白い飴を丸い塊にして取り出し作業を始めた。手で伸ばし、和鋏でぱちんぱちん。ピンとたてれば、
「わあ、顔ができた!」
『メボンゴの顔できたよ!』
 兎の顔の出来上がりだ。喜ぶ客の姿に笑む飴職人。しかしながらその手は止まらず、手足を作り色をつけ、飴はみるみるうちに兎の形になった。
「ほらできたよ、……めぼんご?」
「わあ! かわいい!」
『メボンゴ似てる!』
「ありがとうございます。これが飴細工のメボンゴさんなのね」
 代表して受け取るエレニア。手にした1羽の兎を顔の前に翳し、形を確かめるよう優しくなでる。作っている最中はよく見えなかったが、こうして触れれば形がわかる。簡素だが特徴を捉えてうまく作ってある。思わず顔が綻んで、自然と言葉が漏れた。
「すごく素敵ね」

 引き続き、一番たのしい場所を探し求める2人と1体。
「あっ、絵付け体験だって!」
『うちわだよ! うちわ知ってる?』
 屋台の看板を指差すジュジュ。でも、言ってから気がついた。そういえば、エレニアは目があまり良くない。絵付けは無理じゃないかなとメボンゴと顔を見合わせ様子を伺えば、
「絵付け? うちわ? よくわからないけれど楽しそうよ」
 優しく笑むエレニア。2人が言うのだから楽しいに違いない。断る理由がないじゃない。
「え、いいの? じゃあやってみよう! おじさん、うちわ1枚もらえるかな」
『メボンゴも1枚かくよ』
「あいよ! お嬢ちゃんそいつは人形かい? 変わった奴連れてるなあ」
 笑う中年の男、うちわ職人だろうか。恰幅は良いが、愛想の良い商売人の顔をしている。
『人形じゃないよメボンゴだよ。メボメボンゴンゴ~♪』
 反論するようにぴょんぴょん跳ねるメボンゴ。その声がジュジュの裏声であることは誰の目、いや、この場合は誰の耳にも明らかだ。うちわ職人もふふっと笑っているのがその証拠だろう、でも言わないのがお約束だ。声には触れず、慣れた手つきで机上に白紙のうちわと染料、筆を用意してくれた。
「何を書こうかな」
『メボンゴ、メボンゴを描くよ』
「メボンゴも描こう! じゃあ……」
 さらさらと筆を走らせ始めるジュジュ。
「エリィはね、メボンゴさんを描く! 見えているままに描けば良いのなら描けるわ」
 そう、見ているまま書けば良いのだ。杖をおろし、かわりに筆を握るエレニア。うちわのふちをついっと指でなぞり、表面を整えるように紙をひとなで。まるで描ける範囲を確かめるように。
 仲良く肩を並べて描きはじめる2人。暫くして――、

「できたわ! こんな感じかしら?」
 先に描きあげたのはエレニアだ。顔の横にうちわを掲げてふわりと笑う。
 白い台形の上に何かがのっている絵が描かれている。辛うじてうさぎの頭に見えるかもしれないものがのっているような……ふにゃふにゃもふもふした前衛的な鏡餅に見えなくもないのだが、これは一体……?
「んん……ちょっと背が足りなかったかしら? もっとスマート?」
 メボンゴに顔を近づけ、描いた絵と交互に見比べるエレニア。そう、メボンゴを見たまま描いていたはずなのだが、なかなか難しい。
「わぁ、このもふもふしてるところ可愛い! この耳のピンとしたところ凄く良い!」
『赤い優しい目、メボンゴ好き!』
 目を輝かせるジュジュ。メボンゴもぴょんぴょん飛び跳ねる。
「アートな感じもいいね。エレニアさんに描いてもらえて嬉しいね、メボンゴ!」
『うん、ありがと!』
 にっこり笑顔で顔を見合わせる。こうして描いてくれたことが何より嬉しい。何より、エレニアさん自身も楽しそうなのが嬉しい。技巧の問題ではないのだ、その暖かい心が染み渡る。
「私も描けたよ!」
『メボンゴも描けたよ、見て!』
 自信満々、笑顔でうちわを掲げるジュジュたち。
 エレニアとジュジュが手を繋いで並んでいる絵が描かれている。もちろん、ジュジュの腕にはメボンゴが抱かれている。ジュジュの絵もエレニアに負けず独創的で、頭が大きくやたらキラキラ輝く瞳が印象的な、まるで子供が描いた少女漫画風の元気一杯な絵だ。
「ジュジュさんの絵、素敵!」
 ぱああっと顔をほころばせるエレニア。丁寧に手にとり目を眇め、まじまじ見つめる。
「これ、エリィたち三人ね? メボンゴさんもいる!」
 その目にはっきり見えていた。のびのびと描かれた3人の姿が。心の篭った暖かい絵が。そう、技法なんか関係ないのだ。
「ねぇみて、はしゃいで動いているみたい」
 うちわをぱたぱたと扇いでみせる。残像で絵が動いて見える、まるで漫画のように。うちわが揺れるたびに描かれた姿が踊る。
「ふふ、本当だ。絵の中の私達も楽しそうだね」
「これを見たらきっと今日のことを思い出せるわね」
 ふわりと揃って優しい笑みを浮かべ、ぱたぱたと扇ぐ。今日一番の思い出を風にのせて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

吉備・狐珀
戦争の爪痕が残っている所もあるし、片付けも残っていますが…少しだけ息抜きをしても許されるでしょうか。

見事な大鳥居を眺めた後、無事に戦争を終えることが出来た感謝を神様に伝えに参拝します。
お御籤も引いてみようかな。
引いた数字は『23』番。良いことが書いてあればいいけれど…。

参拝が済んだらうちわの絵付をしにいきます。
可能ならお土産を渡したい人がいるので2つ作りたいのですが、1人1つなら素直に従います。
お守りの桔梗を見本に桔梗を描きます。上手くかけるかな。



 吉備・狐珀(ヤドリガミの人形遣い・f17210)は厳島神社を訪れていた。咲き誇る桔梗色の清楚な巫女装束に身を包み、千早をふわりと靡かせ砂浜を歩いていた。潮が退いている今なら、歩いて大鳥居の側まで行けるから。
「これは見事ですね」
 ほうと息を飲み大鳥居を見上げる。まるで空に向かい聳え立つようだ。赤い鳥居の上には澄んだ秋空が広がる。のどかで平和な青い空だ。
「……少しだけ息抜きをしても許されるでしょうか」
 誰に言うわけでもなく呟く狐珀。目線を地上に戻せば柱を担いだ職人たちが足早に通り抜けていく。修復現場に持っていくのだろう。この厳島神社も戦争の被害を受けた。今のサムライエンパイアにはまだこのような課題が沢山残っている。
 だが、戦ばかりでは息が詰まる。戦闘自体も非常に厳しいものだったが、母から子を奪う戦場など心を折られる戦もあった。気持ちを切り替え、未来へ、進む力を蓄える時間が必要ではないか。いま暫くの間くらい休息をとっても、きっと赦される。
 ふうと息をつき今ひと時の平和をかみ締め、来た道を戻り拝殿に向かう。
「(無事に戦争を終えることが出来ました、有難うございます)」
 二礼二拍手一礼。無事の報告と感謝を伝え顔をあげる。この厳島の御祭神はどんな気持ちで戦を見守っていたのだろう、知る方法はないのだけど――。

「お御籤をもらえますか」
 神社といえばお御籤だ。番号を伝え籤を受け取る。良いことが書いてあればいいけれどと、少し不安に駆られながら結び目を解く。厳島神社の御神籤は凶が多いと聞いていた。もしかして、
「末吉ですか、悪くないですね」
 安堵の息をつき、続きに目を通す。
『世界を救済しようとする気持ちが認められ、名を広めるでしょう。ただし刃傷沙汰、剣難には注意しましょう』
「剣難ですか」
 概ね良い事が書いてあるのだが最後の一言に棘がある。剣難は日々戦いに赴く猟兵にとっては避け辛い災難だ。危険を承知の上で戦地に赴くことが多々ある。頭の片隅にでも置いておこう。

 参拝が済んだらうちわの絵付をしにいきます。
「お土産を渡したい人がいるので2つ作りたいのですが」
「いいよ、可愛いお嬢ちゃんのお願いだ、持ってきな。でも内緒だよ」
 うちわと書かれた法被を身に纏う中年の男が準備をしてくれた。恰幅は良いのだが、愛想の良い商売人らしい笑顔を浮かべながら。
「有難うございます」
「で、土産はだれに渡すんだい?」
「――っ、それは」
 言葉に詰まる。まさか聞かれるとは思わなかった。
「はははっ、野暮だったかねぇ。まぁごゆっくり」
 にまにまと笑みを残し他の客の相手に戻る職人。踏み込みすぎないよう配慮してくれたのだろう。
 描くものはもう決めてある。袂からお守りを取り出しそっとうちわの隣に置く。桔梗の花を模したお守りだ。
「上手くかけるかな」
 筆を手にとり、はにかみ笑う。これを渡したらどんな顔してくれるのでしょうか。その顔に出会えることを楽しみに丁寧に描いて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴北・誉人
志崎(f17340)を連れまわして、参拝する
で、饗への土産も買ってってやろう

いちいち立ち止まって、海を見る志崎の背を叩く
「ぼーっとしてんな、シャキッとしろよ
そっち見たくなるのは、わからんでもねえけどな
「ンなやわじゃねえだろォが

ホント、鹿いっぱいだな
おーおー、かァいい顔して!
残念だなァ、食いもん持ってねえわ
持っててもやんねえけどォ
来るか?
躱してやっからな!

「饗?あー…(鹿の突進に警戒してる
テキトーに食いもんでいいだろ
しゃもじ?アイツ、そんなん頼んでたか?
しゃもじ持ってる饗か…(想像した
ふはっ、似合うんじゃね?

「っしゃ、金落としに行くぞ、復興の手伝い!
「アキラチャンはなに食いてえの?
「ん、探そうな


志崎・輝
世話になった香神乃さんに土産は賛成だけど
なんで鳴北(f02030)と歩かなきゃなんないのかわかんない
復興の手伝い…これも仕事…
(まさか一緒に歩く羽目になるとか…
ため息とまんない

でも参拝はする
本当に不思議なところ(きょろきょろ、表情あまり変えずに見回す
瀬戸内を見てると、やっぱりちょっと帰ってきたって感じ
この海の先に――
「背中叩かれて)った!手加減しろ!
「鹿に食われてろ

それにしても、鹿いっぱい
鳴北は楽しそうだし
冗談抜きにそのまま突進されればいいのに

はあ…お腹すいた
「なあ、香神乃さんの土産は?
しゃもじ買ってくんでしょ?

(アキラチャン…(イラぁ!嫌そうな顔
「屋台で一番高いヤツ!
バカみたいに食ってやる!



「復興の手伝い……これも仕事……」
 言い聞かせるようにぶつぶつ呟く志崎・輝(紫怨の拳・f17340)。
「(まさか一緒に歩く羽目になるとか……)」
 はあ……ため息を一つ。聞こえるようについているのはわざとなのか。
 憂鬱な理由は隣を歩いている男のせいだ。チラりとみると、白いシャツが目に入る。鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)だ。輝のバアちゃんの刀、唯華月代を我が物顔で帯刀している、志崎道場の後継者だという。その姿を見ているだけで腹立たしい。刀も道場もアタシが貰うはずだったのに。
「世話になった香神乃さんに土産は賛成だけど」
 なんで鳴北と歩かなきゃなんないのかわかんない。漏れそうになった言葉のかわりに再びため息をつく。ついてもついてもため息がとまらない。
「だろォ、良い土産買ってやろうぜェ」
 ため息を気にもかけず話しかける誉人。再開してから何故か目の敵にされているのだが、折れずに話しかけ続けている。今回も戦争中に2人共通で世話になったグリモア猟兵の土産をだしにして声をかけたのだがこの有様だ。
「拝殿が見えてきたぜ、小銭あるか?」
「ある。鳴北こそ小銭あるの? そもそもアンタお金持ってるの? 文無しじゃない?」
「バッカ、持ってるに決まってンだろうが。たんまり持ってるよォ」
 ひと騒ぎ鎮めて拝殿で参拝を済ませる。廊下を振り返れば、平舞台の奥に海が広がる。穏やかな瀬戸内海に大鳥居が空に向かって聳え立つ。
「(本当に不思議なところ)」
 表情をあまり変えず見回す。右を見ても海、左を見ても海、廊下が海に浮かぶよう。
「(瀬戸内を見てると、やっぱりちょっと帰ってきたって感じ。この海の先に――)」
 藤色の猫目を細める輝。どこか遠くを、瀬戸内の海の先を見通すように。寄せては返す波の向こうに想いを馳せる。
「った! 手加減しろ!」
「ンなやわじゃねえだろォが」
 その背にバシっとカツが入る。誉人の手だ。
「ぼーっとしてんな、シャキッとしろよ。そっち見たくなるのは、わからんでもねえけどな」
 なだめるように言い瀬戸内海を見る誉人。その表情は凛として変わらず、鋭い藍色の瞳が海をうつす。
「鹿に食われてろ」
 つんとそっぽを向いて吠える輝。叩かれた背はたいして痛くもないのだが、心にいら立ちが募るのは、きっと鳴北の態度のせい。アタシも平気だっていうの。つかつかと出口に向かって歩き始めた。

 そうこうしている間に鹿たちがくつろぐ広場に到着した。どこを見ても鹿、鹿、鹿で、
「ホント、鹿いっぱいだな」
「それにしても、鹿いっぱい」
 声をそろえて言ってしまった。思わず見合わせた顔は驚きに満ちていて、
「真似しないでよ!」
 顔を真っ赤にして怒る輝。
「真似じゃねぇ」
 逃げ腰になる誉人。
「いいいいいいいいいいいい!!!」
「「――――っ!」」
 輝が威嚇するような声をあげた時だった。気配を感じ退く2人。その間を我が物顔で通り抜ける鹿。厳島の鹿は神の遣いといわれる、気安く触れて良い存在ではない。そう、この広場では鹿が一番偉いのだ。のそりのそり。のんびりと歩く姿を見れば怒る気もうせる。小競り合いは思わぬ横やりにより食い止められた。

 1匹やりすごしても鹿はまだ沢山いる。別の鹿がすぐにまとわりついてきた。黒い瞳をきらきら輝かせ、鼻をふんすん鳴らして。まるでおいしいものないですかーと尋ねるよう。
「おーおー、かァいい顔して! 残念だなァ、食いもん持ってねえわ。持っててもやんねえけどォ」
 しっしと手をふる誉人。でもその顔は言葉と裏腹に緩んでいる。普段は隠しているのだが実は動物好きだ、こうして懐かれるのは嬉しい。
ギイイ……と不満げに鳴きながら、誉人の顔をみつめては頭を下げ、落ちつかなげにお辞儀をする鹿。
「来るか? 躱してやっからな!」
 受け止めるように構える誉人。のそのそと歩く鹿。ひょいとかわして又待ち構える。
「冗談抜きにそのまま突進されればいいのに」
 あきれるよう呟く輝。その声が聞えたのだろうか、ふんすっ! と鼻息荒く突進する鹿。
「っ、いきが良いじゃねぇか。おぉっ?」
 再び、ひらりと避ける誉人。避けた先にも鹿がいて再び身を翻す。避けて、避けて、避けている間に鹿の群れの中に飲み込まれてしまった。
「全然当たんねェぞ、さぁ来い」
 それでも笑顔でひょいひょいと器用に避け続けている。群がられても楽しいのだ。機嫌よく鹿の群れに埋もれる。

「はあ……お腹すいた」
 その姿を他人事のように眺めながらぽつりと漏らす輝。鹿には興味はないし、遊んでいる鳴北にはもっと興味がない。早くきりあげよう。
「なあ、香神乃さんの土産は?」
「饗? あー……」
 頭をぐしゃりとかきまわす誉人。目線は鹿たちに向け突撃を警戒したままだ。鹿とのやりとりが楽しくて忘れていた。そうだ、饗の土産といえば、
「テキトーに食いもんでいいだろ」
 ほくほく食べている姿が目に浮かぶ。高価なものを買って帰れば何事かと心配される、お手軽価格の食べ物くらいが丁度いいのではないか。
「しゃもじ買ってくんでしょ?」
 再びため息をつく輝。すっかり忘れてるじゃないと呆れるよう。
「しゃもじ? アイツ、そんなん頼んでたか? しゃもじ持ってる饗か……」
 満面の笑みで山盛りにもりつけてくれる饗の姿が見えた気がした。
「ふはっ、似合うんじゃね?」
 違和感はない。むしろ溶け込んでいる、ご機嫌に同意して。
「っしゃ、金落としに行くぞ、復興の手伝い!」
 スイスイと軽々鹿の群れから抜け出る誉人。ギィィーと鳴く鹿たちに手を振り、露店に向かい歩き始める。
「アキラチャンはなに食いてえの? 奢ってやるよ」
「アキラチャン……」
 イラぁ! 眉間に縦皺を寄せ、口をピクっと引きつらせ、あからさまに嫌な顔をする輝。
「屋台で一番高いヤツ! バカみたいに食ってやる!」
 怒り散らす代わりに無理難題をふっかけた。
「ん、探そうな。何があるかなァ、焼きそばと焼きとうもろこしもあると良いなァ。焼きとうもろこしはちょっと季節はずれだけどォ……」
 にこにこ笑顔で躱す誉人。これくらい妹に強請られるようなものだ、とても可愛らしい。元々復興支援のために資金は余分にもってきている、贅沢しても大丈夫だろう。
 こうして2人は縁日の露店に消えて行く。一番高いヤツとしゃもじを探しに。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

出水宮・カガリ
【楽園】まる(マレーク)と、篝と
おみくじ:31

大好きなまると、妹のような篝と
3人で日常を過ごせるとは思わなかった
確かここは、こるてすが居座っていたのだったか

せっかくなので、おみくじも引いてから、鹿の所へ
…寄ってくる
……とても寄ってくる
この勾玉だろうか(【竜角勾玉】)
これを貰った時は…守るべきひとがいなくなっても、と渡されて
ひとがいないのに、ひとの為の門が残り続ける意味はない、と嘆いてしまった
後から、彼の大事な角だったと知って
……この鹿達のような、あるいはもっと立派な角だったのかな

あ、いや待て、髪を食うな
まる、鹿に食われる、まるー

まるに撫でられるのは、とても嬉しいので
大人しく撫でられておくぞ


照宮・篝
【楽園】まる(マレーク)と、カガリと
おみくじ:10

まるは、私の竜
カガリは兄のような人
共に親しい二人だったけれど、この三人で過ごすのは初めてだ

凶が出やすいおみくじらしいけれど…
でも、おみくじの凶とは、悪運を呼ぶものでは無くて、悪運を退ける忠告のようなものだから
もし凶でも、あまり気にする事は無いぞ

鹿に…乗る?大丈夫だろうか…
一応、鹿に訊ねて(動物と話す)から乗ってみよう
乗ること自体は、【飛梅釵子】の加護があるから、きっと大丈夫
まるから貰った冠、梅花が愛らしくて好きだ

カガリは背が高いから、髪を干し草とでも思われたのだろうな
まる?どうし……わっ!?
…びっくり、する…(驚きつつも体を預け)


マレーク・グランシャール
【楽園】籤25
カガリは無二の友
篝は俺の女神

カガリの【竜角勾玉】は俺の角の片方を折ったもの
ヤドリガミとして残り続ける彼が鳥や動物に好かれて淋しくないように願って贈ったもの
数多の鹿に群がられるだろう

篝の【飛梅釵子】は道真公を慕って飛んできた梅の花のように、
愛する女神が動物に乗って俺の元に光と共に飛んで来てくれるように祈って贈ったもの
鹿が喜んで乗せてくれるだろう

俺はそんな二人をほのぼのと見守るが、少し羨ましくなってくるな、鹿が
篝を片腕に座らせて抱き上げ、もう片方の手でカガリの頭を撫でてやろう

どちらの「かがり」も俺にとっては愛しいもの
だから厳島の祭神に祈ろう
いつまでも離れず俺の側にいてくれと



●楽園リプレイ

 出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)、照宮・篝(水鏡写しの泉照・f20484)、マレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)は、並んで厳島神社の廊下を歩いていた。
「この三人で過ごすのは初めてだ」
 隣に居る二人を交互に見上げる篝。まるは私の竜、カガリは兄のような人。共に親しい二人だったけれども、こうして一緒に出かけられる日が来るとは。
「ん。そうだな。3人で日常を過ごせるとは思わなかった」
 幸せそうに言うカガリ。まるとは一時離れていた。篝とは因縁があった。だが今では仲を持ち直し大好きな友と妹のような関係になれた。
「全くだ」
 マレークも同意する。カガリには一度切り捨てられたこともあったが、今では再び無二の友に戻れた。篝とは接し方に迷うこともあったが憎む気にはなれなかった。今では女神のような存在だ。
「確かここは、こるてすが居座っていたのだったか」
 まるで初めて見る場所だという風に見渡すカガリ。物覚えが非常に悪いカガリのことだ。戦争中に実際にこの場に赴いていたのだが、既に記憶の彼方に消えている。敵の名前を覚えていただけでも御の字だ。所々壊れている建物を見て独り心を痛める。この建物はひとを守りきれたのだろうか。ここでひとは死ななかったのだろうか。
話しているうちに拝殿に到着した3人。並んで参拝を済ませ、お御籤をひく。

●出水宮・カガリ『[凶]正しい心で物事を行わなければ、悪事としてかえってきます。慎み深く過ごしましょう。女性から災難を被るかもしれません』
●照宮・篝『[吉]失敗しても後々好転するでしょう。ただし、すぐ目上の人の忠告を素直に聞き、正しき道に従い悔い改めましょう』
●マレーク・グランシャール『[吉]真っ当な考えで正しき道に従えば、様々な協力を得て望みが叶うでしょう。謙虚で素直な心を持ち続けましょう』

「凶を、引いてしまった……」
 がーん! ショックだ。しょんぼりするカガリ。
「凶が出やすいおみくじらしいけれど……」
 まさかカガリがひいてしまうとは。驚きを隠せない篝。
「おみくじの凶とは、悪運を呼ぶものでは無くて、悪運を退ける忠告のようなものだから、もし凶でも、あまり気にする事は無いぞ」
 神として目いっぱいの知識を搾り出し慰める。
「引いたその時の状況での神託だ。これ以上下がりようが無い上がるだけだ。それに、カガリが正しい心をなくすことはあるのか。なくさなければ良いだろ」
 淡々と慰めるマレーク。
 3人共通の課題は《正しさ》だ。それぞれの正しさとは何か、考えてみるのも良いかもしれない。

 おみくじをひいて広場に向かう3人。勿論、目的は鹿だ。鹿たちは秋の穏やかな日差しに照らされ、のんびりと寛いでいる。
「鹿、こんなにいるのか」
 カガリが呟くのも仕方ない。見渡す限り、鹿、鹿、鹿、鹿の山だ。ギィィと鳴きながら寄ってくる。
 …寄ってくる。
 ……とても寄ってくる。
 …………執拗に寄ってくる。
 3人居るのに、カガリにだけ寄ってくるのだ。カガリが右に行けば右に、左に行けば左に、逃げても逃げても何故か追いかけてくる。群がり囲んでくるのだが敵意は感じられない、むしろこれは好かれているのではないか。

「篝、鹿にのってみないか」
「鹿に……乗る? 大丈夫だろうか……」
 まるにそんな事を勧められるとは思わなかった。鹿の背は篝の腰にも届かない程小さく、足も棒のように細く弱々しい。どうしよう、迷った末に鹿に訊ねてみる。篝は動物の言葉が解るのだ、直接聞けばいい。
「こんにちは鹿、乗せてもらってもいいだろうか」
『えっ、のせるの? そんなむりだよー。えー、でも、そのかんむりー? しかたないなあ……』
 厳島神社に居る鹿はニホンジカという小柄な鹿だ。本来人やそれと同等の大きさのものを乗せられる体の構造をしていない。だが幸い、どんな獣でも逆らえない、神獣をも従える祈りが篭った冠《飛梅釵子》がある。篝に頼まれれば断れない、必ずのせてくれるのだ。
『またれい!』
『あっ、ちょうろうさま!』
 振り返ると大きな鹿がどーんと立ちはだかっていた。
 普通の鹿の倍くらいだろうか、馬を一回り程大きくしたような立派な白鹿だ。肩の高さでも篝が見上げるほどの位置にある。
『光がおりて来ておるから来てみれば、なんじゃおまえは』
《飛梅釵子》をじっと見る大鹿。続いて篝の顔を値踏みするよう、ぎろりと睨みつける。
『おんな、そのかんむりはお前のもちものか』
「飛梅釵子か、まるから貰った大事な冠だ」
 冷静に語りかける篝。どれだけ迫られようと獣相手であれば《飛梅釵子》の加護があるから大丈夫。《飛梅釵子》は梅花がとても愛らしい篝のお気に入りの冠だ。
『わしは鹿の主、厳島の神につかえるものじゃ。めずらしいものがみえたからの、降りてきてやったわ、なにようじゃ』
「鹿の背に乗せて欲しいんだ」
『そうか、のりたいのか』
 ずもももっと威圧的なオーラを背負う大鹿。例え篝が神だとしても、大鹿は厳島の神に仕える身だ。知らぬ神を背に乗せるわけにはいかないのだろう。
「はい、乗せて欲しい」
 物怖じせず頼む篝。世間知らずな所がこういう場面で生きる。
『フン……』
 渋々地に膝をつく大鹿、乗れといわんばかりに。そっと横に座る篝。ちらりと振り返り背を確認し、立ち上がる大鹿。篝の視界がぐんっと上がる。自分で立つよりも高い、カガリもまるも見下ろす高さだ。
「すごい……」
 感嘆の声をあげる篝。
『フン……まんぞくしたか、おんな』
 はいと応え、大鹿の背を優しくなでる。新しい景色を見せて貰えた感謝を込めて。

「この勾玉だろうか」
 首飾りに触れるカガリ。黒曜石の勾玉《竜角勾玉》に。
 あまりにも鹿が集まりすぎるので原因を考えてみた。思い当たるのはこの勾玉。これには鳥や動物に懐かれやすい祈りが込められている。効果が発揮されたのではないか。
 これを貰った時は酷く嘆いた。
 ――守るべきひとがいなくなっても。
 ――ひとがいないのに、ひとの為の門が残り続ける意味はない。
 贈った者、受け取ったモノ、互いの想いがすれ違った。
 だが、後からこの勾玉は彼の大事な角だったと知った。この鹿達のような、あるいはもっと立派な角だったのかもしれない。
 例えひとがいなくなっても、この角は、勾玉は在り続ける。門番はいつも門とともに。
「あっ」
 引っ張られるような感覚に声をあげるカガリ。何事か。振り返れば鹿が髪を食んでいた。腰まで伸ばした金髪をむしゃむしゃと。
「いや待て、髪を食うな」
 しっしと追い払っても、群がりついてくる鹿たち。祈りが効き過ぎるのも問題ではないだろうか。
「まる、鹿に食われる、まる――」
 もう手に負えない、たまらず助けを求めるカガリ。
「カガリは背が高いから、髪を干し草とでも思われたのだろうな」
 くすくす笑う声が聞こえる、篝だろうか。

 マレークは眺めていた。鹿と戯れる『かがり』達を。
 カガリが身につけている《竜角勾玉》はマレークが贈ったもの。
 魔竜の印である捻れた黒曜石の角、マレーク自身の角の先端を折って作った勾玉の首飾りだ。
 ヤドリガミの寿命はモノの寿命だ。モノとして在り続けられる限り生きられる。つまり、人よりも長い時間を生きるのだ。長生きをするという事は当然遺される事も増える。遺されたとしても鳥や動物に好かれ独りにならないように。淋しくないように願って贈ったものだ。
 その祈りは今も効果を発揮している。カガリは無数の鹿に群がられていた。

 篝が身につけている《飛梅釵子》もマレークが贈ったもの。
 折れても老いても主の為に花を咲かせる梅の花で飾られた金冠だ。
 道真公が京の都を離れた時、かの人を慕って飛んできた梅の花のように、マレークが愛する女神、篝も飛んで来てくれるように。俺の元に光を運んできてくれるように。愛慕の心をこめ祈って贈ったものだ。
 飛べない篝のため動物に好かれるよう祈祷してある、たとえ神獣でも喜んで乗せてくれるだろう。あの大鹿のように。

 マレークの贈り物を身につけ、幸せに包まれる2人。
 とても楽しそうだ。マレークが望む幸せな景色が眼前に広がる。
「少し羨ましくなってくるな」
 なごむ。ほのぼのする。だが湧き上がるもどかしさ。この気持ち、なんといえば良いのだろうか。
「――鹿が」
 えっと……鹿に嫉妬ですか。確かに今の状態は無二の友と女神を鹿に占有され、マレークだけが蚊帳の外だ。これは宜しくない。目の前に居る2人の片割れには俺が居るべきではないのか。

 大鹿に近づき有無を言わさず篝を抱き抱え、片腕に座らせるマレーク。
「まる? どうし……、
わっ!? ……びっくり、する……」
 突然の行動に篝が見上げても、そこにあるのはいつものまる、表情の無い顔だ。でも、その腕はとても心地良く安心する。されるがままに身を預ける。

 更に鹿を掻き分け、カガリの元へ。
 もう片方の手でカガリの髪を絡めとる、これでもう食べられないだろう。その手で頭を撫でる。さらりと指の間を流れ落ちる髪、とても愛おしい金色だ。
 大人しく撫でられるカガリ。まるに撫でられるのは、とても嬉しい。

 どちらの『かがり』もマレークにとっては愛しいもの。
 両手におさめ厳島の祭神に祈る。この島は島全体に神が宿る、何処で祈っても神に届く。
「(いつまでも離れず俺の側にいてくれ)」
 いつまでもこの楽園が続くよう、二度と分かたれる事がなきように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

タビタビ・マタタビ
\サムライエンパイア!/
何度か来てる世界だけど、ゆっくり観光する機会はあまりないから楽しみ!

縁日だー!
せっかくだし、うちわ作ってみたい!
ケットシーサイズのはさすがにないと思うから、普通サイズので大丈夫です。……おっきい方がお祭りっぽいし!

そういえば、あんまり絵とか描いたことないなあ……そうだ!
(自分の手に墨をつけて、ぽむんとうちわに押す)
肉球手形!
タビタビ印のマイうちわ完成!
さっそく使ってみよう~……って、しまった! 大きいから両手を使わないと扇げないー!

あ、時間がありそうなら神社でおみくじも引いてみたいな!
引けたのは……「22番」? どんな結果かな……(わくわく)

アドリブ等大歓迎です



 \サムライエンパイア!/
 万歳! するタビタビ・マタタビ(若き猫黒騎士・f10770)。瀬戸内海に元気な声が響き渡る。
 潮風が心地いい、金の瞳を細めて海原を眺める。サムライエンパイアは何度か来てる世界だけど、ゆっくり観光する時間はあまりなかった。とても良い機会だ、じっくり楽しもう。

「縁日だー!」
 わくわくと胸を躍らせ、あちらこちらの店を覗いてまわる。
「うえええ……全然とれないよう」
 泣いている男の子がいた。楽しい縁日なのに、そこは絶望に満ちていた。
「どうしたんだ? ボクに出来ることなら力になるよ」
 男の子の顔を覗き込むように、見上げるタビタビ。
「えっ! 猫さん!?」
 はっと顔をあげる少年。そこには冠を被り、赤いマントを纏う、真っ黒なケットシーがいた。金の瞳が心配そうに見つめている。その姿に、ちょっとビックリしたみたいだけど、泣いていた理由を教えてくれた。
 金魚すくいをしていたのだが、すくえなくて困っているのだという。妹にあげたいのに。
 台を覗き込むと赤や黒の小さな魚、金魚がゆらゆら泳いでいる。これは……ケットシー心がうずく。そわそわするタビタビ。
「お兄さんが泣いてたら妹さんに笑われちゃうよ。この輪っかですくうんだね、ちょっと借りるよ!」
 紙が貼られた竹輪を借りて、じっと金魚たちを見る。

 うず。うずうず、うずうずうずうずうずうずうずうず…………しゅばっ!

 猫ぱんちが炸裂! 目にもとまらぬ速さで振りぬかれた輪っかが金魚をはじきとばす。きらきらと宙に舞う金魚。すかさず桶で受け止めて少年に差し出す。
「わあ、猫さんすごい! かっこいい!」
 ぱああっと顔を輝かせる少年。もう泣くことはないだろう。
「騎士たるもの、弱きを助けて当然なのだ」
 えへんと胸をはるタビタビ。用が終わったら長居は無用だ。さらばだ!別れの言葉とともに大きなマントをばさりと翻し立ち去る。
「猫の騎士さん、ありがとうー!」
 去り行く背にお礼の声をかける少年。その勇士は少年の心に深く刻まれることだろう。

「せっかくだし、うちわを作ってみたい!」
 うちわが名物だと聞いていた。それなら作らないわけにはいかない。
「おじさん、ボクもうちわを作ってみたい! ケットシーサイズのはさすがにないと思うから……」
「あるぞ」
「普通サイズので大丈夫です。えっ、あるの?」
 目をぱちくりするタビタビ。まさかケットシーサイズがあるとは。
「ああ、あるぞう。うちを何屋だと思ってやがるんだ、うちわ屋だぞ。とーぜんある、フェアリーサイズから揃えてあるぞ」
 恰幅が良い中年位の店員が、うちわをずらりと並べて見せてくれた。肉球と同じ位の小さいうちわ、これがフェアリーサイズだろう。それより少し大きいものや、人間が使うような大きさのもの、様々なうちわがある。店員のおじさんの後ろには、巨大なうちわも置いてある。おじさんよりも大きなものだ。
「ケットシーならこれなんかどうだ、丁度良いだろ」
 小ぶりのうちわを出してくれた。豆うちわより少し小さい。試しに持ってみるとしっくり手になじむ。
「えーっ、すごい! でもどうしよう……」
 うーんうーんと悩んでから、決めました!
「おっきい方がお祭りっぽいし!」
 人間サイズのうちわを受け取ります。でもやっぱり大きい、背丈と同じくらいあるかもしれない。

 大きなうちわを前に悩むタビタビ。そういえば、あんまり絵とか描いたことないなあ。どうしよう?
「……そうだ!」
 自分の手に墨をつけて、ぽむぽむぽむんとうちわに押していく。
「肉球手形! タビタビ印のマイうちわ完成!」
 じゃーんとかざすうちわには、黒い手形がいっぱい! かわいいうちわができました。
 じゃあ、さっそく使ってみよう~!
「……って、しまった!」
 大きいから両手を使わないと扇げない! これはとても扇ぎ辛いじゃないか。どうしよう、わたわたしていると、
「お前さんのマントがその大きさになってる理由がなんとなく解った気がするよ」
 くっくと笑う、うちわ屋。本当にケットシーサイズは要らないか? と確認してくれたが、
「いずれ勇者のうちわになるものだから、これくらい立派なのがいいんだ」
 キリっ! キメ顔で断って店を後にする。うちわは剣と一緒に背中に背負って。

 まだまだ時間はある。神社も見てまわろう。おみくじもひいてみたかったんだ。
「どんな結果かな……」
 わくわくしながらくじを開く。その結果は――、
『[始凶末吉]上手くいかない事があってもいずれ手を貸してくれる人が表れます。今はじっくりと力を溜めましょう』

大成功 🔵​🔵​🔵​

篝・燈華
お祭りって、とってもわくわくして思わず踊りたくなるよねっ
イカさん達がおびき寄せられるのも、分かるなあ
(くねくね手足を動かして、イカ踊りをしつつ)

まずは、たっぷりお祭りを楽しんじゃおう!
絵付けをしたうちわ片手に、神社の鹿さんと遊びに行こうっと
ほらほら、屋台で買ったおせんべいをあげるよー

って、それはうちわだよー! おせんべいじゃないよっ
(イカの絵柄のうちわを、必死で死守)
あ、あっ、そうしている内に、僕の大好物の油揚げが取られちゃう!
もう、食いしん坊さん!
(両手をわたわたさせてパニックに)

……もみくちゃになったけど、こうして遊べるのは嬉しいなあ
平和を取り戻したことをじんわり噛み締めて
楽しく過ごすんだ



「お祭りって、とってもわくわくして思わず踊りたくなるよねっ」
 くねくね手足を動かして、まるでイカのように踊っている篝・燈華(幻燈・f10370)。高ぶる気持ちを全身で表しているかのよう。
「イカさん達がおびき寄せられるのも、分かるなあ」
 縁日を見てまわる。くねくね踊ったままだ。なんだかちょっと後ろが騒がしいような、すれ違う人がちらっちらっと振り返っているような……気のせいだよね。
「まずは、たっぷりお祭りを楽しんじゃおう!」
 くねくねくねくねくるりん☆ミ うちわ屋さんに向けて出発進行だよ。

「うちわを作りたいんだよ」
 うちわと書かれた屋台をみつけて声をかけてみれば、
「わ! なんだそりゃ、タコか? イカか?」
 くねくね踊る燈華に驚きの声をあげる中年男。『うちわ』と書かれた法被を着ている、うちわ職人だろう。
「イカ踊りなんだよ」
 くねくねくねくね、くるっとまわってしゃきっと両手を挙げてみせる。
「イカか……。おう、イカがどうした? うちわ、作ってくのか?」
「そう! イカのうちわをつくるんだよ!」
 ひらめいた! 何の絵を描こうか迷っていたけどイカに決めた! 顔をぱああっと輝かせる燈華。
「聞いちゃいねぇ。イカがイカをねぇ……いかがなものか――イカだけに。あいよ、これに描いていきな」
 くっくと笑いながら、てきぱきうちわ作りの準備をしてくれた。
「うちわ屋さんありがとうー。じゃあ……」
 すらすらと筆を滑らせる燈華。しばらくして、大海原の中しゃきっと両手をあげ楽しそうに跳ねるイカの絵が描かれたうちわが完成する。

 絵付けをしたうちわ片手に、神社の鹿さんと遊びに行こう。
「ほらほら、屋台で買ったおせんべいをあげるよー」
 ほわっと笑っておせんべいをさしだす燈華。おせんべいの気配に群がってくる鹿さんたち。
 先頭の鹿が舌でぺろっと舐めてからぱくり。その隣からひょっこり顔をだし、ふんふん鼻を近づける鹿。2頭の隙間からにょきっと顔をだし、もぐりと食む鹿。鹿たちはおしあいへしあい、むしゃむしゃもぐもぐ。みるみるうちに1枚たいらげてしまった。
「じゃあ、次のおせんべいをあげるよ……って、それはうちわだよー! おせんべいじゃないよっ」
 もう片方の手のうちわに鼻を近づけている鹿さんがいる。食べられないように両手でぎゅっと抱きしめて必死に死守していると、
「あ、あっ、それは僕の大好物の油揚げ!」
 腰に結わえた風呂敷包みに顔をつっこもうとしている鹿さんが。この包みには燈華の大好きな油揚げがはいっているのだ。あげるわけにはいかない、わあ、どうしよう!? 両手をわたわたさせてパニック。こういう時は……そうだ!
 \もう、食いしん坊さん!/
 両手をしゃきっとあげてイカのポーズをきめる燈華。その手には舞扇《神狩舞》が握られている。はっと顔をあげる鹿さんたち。
 \待って欲しいんだよ!/
 \おせんべいは順番に並んでね!/
 くねくねくね。再びイカのように身をくねらせたあと、しゃきっと両手を挙げる。くねくね、しゃきん!くねくねくねくねくね、しゃきっ! しゃきっ!
 神狩舞は荒神をも鎮めるという力が込められた舞扇だ。この扇の力で鹿たちが静まってくれるかもしれない。祈りをこめて、くねくねしゃきんっ!
 イカ踊りをじっと見守る鹿たち。ギイイ……と鳴きながらお辞儀をし始めた。通じたのかは解らない、でもなんとか落ちつきを取り戻してくれた。

「……もみくちゃになったけど、こうして遊べるのは嬉しいなあ」
 ふたたび、のんびりおせんべいをあげる燈華。
 戦争中は戦場に狩り出され鹿と遊ぶ暇もない。鹿も争いの気配があれば姿を隠すだろう。のどかにほのぼの過ごせる今、平和を取り戻したことをじんわり噛み締め、ふわりと笑う。鹿さんたちも一緒にふわり。笑顔に包まれた優しい時間がまったりと流れる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

榎・うさみっち
【ニコうさ】
※ステシSDイラストの甚平姿で

厳島神社!俺もネット知識でだけ知ってるぜ!
青い海の中に立つ真っ赤な鳥居!実に絵になるぜ!
そっちも勿論気になるけど、実は俺は今腹が減って仕方ない!
というわけでニコ、お祭りだ~!

ニコー!アレとアレとアレ買ってー!!
たこ焼きとりんご飴と綿あめを順番に指差す
フェアリーサイズ?ノンノン、うさみっち様にかかれば
人間サイズも余裕のよっちゃんでいけるぜ!
たこ焼き!ふわとろでたこはコリコリでうめぇ!
りんご飴!甘いカリカリ飴とりんごの酸味のハーモニーがたまらん!
食べ足りないからこっそりニコの綿あめをもぎって食う

神社行っておみくじも引くぜ!『1』
結果&リアクションお任せ


ニコ・ベルクシュタイン
【ニコうさ】

此処が厳島神社か、俺の拙い「世界知識」では
時により大鳥居が海上にあるように見える程度しか知らぬが
さぞや素晴らしい景色なのだろうな
…と、其れよりもやはりお前は食い気に走るか
分かった分かった、縁日へ行こう
気合を入れて甚平を着て来たうさみと共に屋台の並ぶ通りへ

当然ではあるが、全て人間サイズの食べ物ばかりだが…
…何?取り敢えずたこ焼きとりんご飴と綿あめが食べたい?
分かった分かった、仰せのままにと其々二つずつ購入
フェアリーと侮るなかれ、此奴は人間サイズの飲食も余裕でこなすのだ
UCを使うなり何なりで頑張って食べると良い

む、おみくじも気になるとな、此の欲張りさんめ
数字を指定出来るのか…25、かな



 榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)と、ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)も厳島の地に降り立っていた。
 涼しげな甚平を着ているのはうさみ。青甚平を身に纏っている、水色で描かれた兎のプリント柄が愛らしい。青色鼻緒の草履を履き、青色コーデでシャレオツにまとめている。
「この甚平に1匹だけ悪兎が紛れ込んでるぜ。見つけられたら今日1日ハッピーだ!」
 カメラ目線でどや顔どん! ぶーんぶーんと飛び回る。
「此処が厳島神社か」
 対して、落ち着いた色合いの洋装に身を包むニコ。すらりと伸びた足全体をロングブーツで覆い、シャツにカマーベストを羽織ったいつも通りのクールな装いだ。パンツとジャケットをモノトーン風の色で揃えているため、首に巻いたリボンの赤が映える。
「俺の拙い『世界知識』では、時により大鳥居が海上にあるように見える程度しか知らぬが」
「俺もネット知識でだけ知ってるぜ! 青い海の中に立つ真っ赤な鳥居!」
 厳島神社といえば鳥居だ! 噂の鳥居は目の前に聳え立っている。これでもかと言わんばかりにどどーん! っと。
「素晴らしい景色だな」
「実に絵になるぜ!」
 揃って感嘆の声を漏らす。実物の迫力は写真とは違う。
「だが、俺は今腹が減って仕方ない! ニコ、お祭りだ~!」
 ぎゅぅぅーと腹を鳴らす、うさみ。花より団子、鳥居より縁日だ。
「分かった分かった、縁日へ行こう。うさみよ、やはりお前は食い気に走るか」
 呆れるニコ。だがすぐに顔を綻ばせる。これでこそいつものうさみではないか。こうして二人は厳島神社を尻目に屋台の並ぶ通りへ向かった。

「ニコー! アレとアレとアレ買ってー!!」
 たこ焼き、りんご飴と綿あめを順に指差すうさみ。
「当然ではあるが、全て人間サイズの食べ物ばかりだが……うさみよ、食べすぎではないか」
 冷静に突っ込むニコ。大きさから鑑みても収まりきらないのは明白だ。
「ノンノン、うさみっち様にかかれば、人間サイズも余裕のよっちゃんでいけるぜ!」
 チッチッチと指を振るうさみ。フェアリーナメたらいかんぜよ。啖呵を切る。
「分かった分かった、仰せのままに」
 これ以上言っても無駄であろうと、渋々其々2つずつ購入するニコ。休憩処の御座に座り、買ったばかりの食べ物を広げ、いただきます。
「ユーベルコードを使うなり何なりで頑張って食べると良い」
「言われなくともそうするぜ! たこ焼き! ふわとろでたこはコリコリでうめぇ!」
「甘いカリカリ飴とりんごの酸味のハーモニーがたまらん! このリンゴ飴もうめぇ!」
 たこ焼き! りんご飴! もりもりぱくりと食べるうさみ。その体より大きい食べ物がうさみの口に触れたとたんにフッと消えるのだ。そう、消えるとしか表現できない。フェアリーが人間サイズの食べ物を一つ食べるだけで胴がパンパンになりそうなものなのだが、うさみの体には何の変化も見られない。食べ物は一体どこに行ってしまったのか……。巷の噂ではうさみが食べたものはフェアリーランド送りになるのではないかと言われているようだが真相は謎だ。
「うさみよ、お前はいつ見てもよく食べるな」
「人の金で食べるご飯はおいしいからな!」
「お前はそういう奴だったな」
 ぺろりと平らげるニコ。うさみも同時にたいらげ、ピースピース!
 最後にとっておいた綿飴をつまみながら、のんびり一服。
「奇体な。この綿菓子、聊か少な過ぎやしないか……」
 冷えた目をするニコ。綿菓子が減っていた。食べている側とは反対側が断崖絶壁になっていたのだ。うさみを見れば既に自分の綿菓子を食べ終わっている。ニコと目線を合わさないよう目を逸らし口笛を吹いている。嗚呼、犯人は……。
「相変わらず食い意地の張った奴め」
 うさみの耳をギュイーっと引っ張るニコ。呆れて物が云えん、お仕置きだ。
「や〜〜〜っ! 食べ足りなかったんだぜ!」
 耳を引っ張られるうさみ。いつもの展開である。じたばたもがいてニコの手をすり抜けぴゃああああっと飛んでいってしまった。
「こら、うさみ何処へ行く! ……全く。其の内帰って来るか」
 呆れ返るニコの溜息だけが残された。

「俺のなうでやんぐなセンスにぴったりだぜ!」
 ひょっこり顔を出すうさみ。黒狐のお面を被りイケイケだ。
「うさみよ、戻って来たか。其の面は一体何処から持って来た?」
「そこにあるお面屋からだぜ。俺にぴったりなイカスKI・TSU・NE面だ!」
 ビシっと指差す先はお面屋だ。数々の面が竿にかけられている。かけてあるのは全て人間サイズのようだが、フェアリーサイズも揃えているとは。随分と品揃えが良い。
「そうか、良い面だ」
「ニコの分も選んでおいたぜ! この面似合うんじゃねぇの?」
 一つの面のまわりをぶーんぶーんと飛び回る。うさみと色違いの銀狐の面だ。ニコの髪と同じ色合いの優しい銀色だ。赤い目と耳が良いアクセントになっている。
「どれ、似合うかうさみ」
 頭につけてみるニコ。面などつけても頭が重くなるだけだが、折角うさみが選んでくれたものだから。
「似合うじゃないか! 俺ほどじゃないけどイケてるぜ、グレイトだぜぃ!」
 ニコのまわりをぐるりと一周! どこから見てもイケメンだ!
「そうか……ならば店主、此の面を貰おうか。うさみの会計も纏めて頼む」
 フッと笑むニコ。満更ではない。揃いの面を買って、揃って縁日を後にする。

「当然、おみくじも引くぜ!」
「む、おみくじも気になるとな、此の欲張りさんめ」
 最後は神社行っておみくじを。ニコうさの結果や如何に!?
●榎・うさみっち『[吉凶末分]最初は思うようにいかなくても、根気よく続ければ上手くいくでしょう。焦らずゆっくり進みましょう』
●ニコ・ベルクシュタイン『[吉]正直な心であり続ければ、夜が明けるように今まで続いていた闇を脱し幸せになれるでしょう。信心深く物事を進めましょう』

 結果の良いくじを奪い合う2人の目撃情報があったとか、なかったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

豊雛院・叶葉
■方針
・【WIZ】使用
・アド/絡◎

■行動
信仰の形や対象こそ異なれど、私も神に仕える身に御座います。
まずは、此方の神社へと御挨拶させていただくのが宜しゅう御座いましょう。
私の身に着けております衣装は、当方の信仰に於ける装束の一つに御座いますが、此方の神社にては不敬と申されるのであれば、郷に入りては郷に従えと申します。
代わりの品を御用意いただけるのであれば、着替えることと致しましょう。

御挨拶を終えましたら、折角の機会に御座います。
どの様なお祭りが催されているのか、見て回ることと致しましょう。
私にとっては、この様な規模のお祭りは極めて珍しゅう御座います故、縁日を中心として回ってみることと致します。



「もし、何方かいらっしゃいませんか?」
 豊雛院・叶葉(豊饒の巫女・叶・f05905)は厳島神社の東回廊入口を訪れていた。
「美と豊穣を司る女神にお仕えする巫女、豊雛院・叶葉 と申します。信仰の形や対象こそ異なれど、私も神に仕える身に御座います。お見舞いを申し上げたく馳せ参じました」
 参拝受付にいる神職に事情を伝えれば、宮司をつれて来てくれた。
「お気持ち痛み入ります。たいした御持て成しも出来ませんが、どうぞお寛ぎ下さい」
 宮司は復旧指示の手が離せないため案内は出来ないのだが、かわりの者を紹介してくれた。この神社の巫女、2人だ。2人とも似た顔をしている、双子かもしれない。違うところは髪の長さだ。年は叶葉と同じくらいかもしれない。もっとも体格は叶葉には敵わない、貧相なものだ。標準的な発育具合には見えるのだが、見劣りしてしまう。

「其の……」
 もじもじと身じろぐ叶葉。これから参拝するというのに。
「如何なさいましたか」
 心配げに声をかけてくれる。
「私の身に着けております衣装は、当方の信仰に於ける装束の一つに御座いますが、此方の神社にては不敬と申されるのであれば、郷に入りては郷に従えと申します。代わりの品を御用意いただけるのであれば、着替えることと致しましょう」
 叶葉が身に纏っている装束は《豊饒の巫女装束》だ。白い着物、赤袴の巫女装束だが、布が覆う面積が通常のものより少なく、脇や横腹、太ももなどが露わになっている。また布が体に沿うような造りになっているため凹凸が強調される。その装束は叶葉の豊満な身体を一層魅力的に引き立てているのだが、他の神社では受け入れられないこともある。
「お気遣い痛み入ります。信仰に於ける装束でございましたら、お召し替え頂かなくとも差支えございません」
 頭を下げ優しく笑む巫女たち。礼儀正しさに好印象を抱いたようだ。

 参拝した後、建物を巡る。夫々の建物の用途や歴史、行事などを説明してくれた。解り易いうえ語調が良く、聞き飽きることがない。日常の話なども交わしながら、次々見て回る。所々にまだ戦争の爪跡がくっきりと残っていた。でも戦っていなければ今この神社は跡形もなくなっていたかもしれない。今ここに厳島神社が在るのは叶葉たち猟兵が守った証なのだ。
「こちらが能舞台でございます。毎年、春に神能を行います」
 細い廊下を抜けた先には能舞台。海水が満ちると、まるで海に浮かぶよう。
「何とも素敵な能舞台にございます」
 感嘆の息を漏らす叶葉。
「もし、宜しければこちらで舞をご披露頂けませんか」
「わたくしどもも叶葉さまの旅路の無事を祈って一差し奉納いたします」
「お互いに披露いたしませんか?」
「其れは良き提案にございます。では私はこの地の一刻も早い復旧を祈って奉納させて頂きましょう」
 二つ返事で引き受ける叶葉。こうして、海に浮かぶ能舞台で舞を披露することとなった。

 《豊饒天の薙刀》を構える叶葉、豊乳女神の神勅・雫纏を唱えながら薙刀を翻し舞う。
 ――掛けまくも畏き豊麗なる女神へと
 ――白すことを聞こし召せと
 ――恐み恐みも白す
 清浄なる空気が一帯に満ち、蕩けそうな甘い香りが辺りに漂う。
 刃を振るうたび、豊満な胸が揺れる。たゆたゆと揺れるさまが非常に神々しい。その姿を見た者は釘付けになるだろう。
 舞を終え、一礼。
 大きな拍手が沸きあがる。見渡せば回廊に人だかりができていた。参拝客が足をとめ舞台を見ていたのだ。舞を終えたあと暫くの間、賞賛の声があがり続けた。

 互いの舞を披露し終え、出口に到着した3人。
「このあとは如何なさいますか」
「折角の機会に御座います。縁日を見て回らせて頂く予定でおります。私にとっては、この様な規模のお祭りは極めて珍しゅう御座います故」
 日々英才教育を施されている叶葉にとって、大規模な祭りを見る機会はなかなかない。今を逃せば次はいつ見られるか解らないのだ。
「左様にございますか。宜しければ縁日もご案内いたしましょうか」
「この島は島自体が祭神です、縁日も神の一部と言って良いのかもしれません。ええ、これも巫女修行の一環です」
 一人旅を気遣ってのことだろうか、巫女たちは引き続きの案内を申し出てくれた。
「ええ、是非ともご教示頂けますようお頼み申し上げます」
 微笑み、頭を下げる叶葉。願っても無い話だ。こうして三人は神社を後にし、祭囃子が鳴り響く縁日に向かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『骨抜き妖怪『衣蛸』』

POW   :    随分と凝ってるタコ~。俺たちのようにほぐすタコ!
【タコの保護色能力で全身を迷彩して接近し】【筋肉の塊である8本の触手で相手を捕まえ、】【マッサージで弱らせてからの絞めつけ攻撃】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    カッピングもやってますタコ~。血流良くなるタコ!
【タコの保護色能力で全身を迷彩して接近し】【非常に強力な吸盤で相手を捕まえて、】【カッピングで生気を吸い取り弱らせる攻撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    運動不足じゃないかタコ~?ヨガは身体に良いタコ!
【再生能力を活かして非常にしぶとく接近して】から【筋肉の塊の触手と強力吸盤で相手へ捕縛攻撃】を放ち、【操り人形のように強制的にヨガをさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:まめのきなこ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


2章:昼さがり、おやつの時間です。
●戦闘は発生しません。
 ・ユーベルコードを活性化し『倒す』と書いていただければ倒せます。(2章開始時に倒します)
 ・本格的に戦うプレイングを頂いた場合は相応に描写します。ギャグバトルも出来ます、プレイングの雰囲気に合わせてノリノリでかきます。『マッサージなどのおもてなし』技を受けたい方はどうぞ!ただしエロいものは受付しません。

●『タコ料理』が食べられます。漁師が料理してくれます。自炊もできます、道具を貸してくれます。器具の持ち込みもOKです。場所は浜辺です。
 -おしながき-
  ・浜焼き。とれた魚介類を浜で焼いて食べる、海の塩味でバリっと頂く。
  ・タコ飯。茹蛸コリコリ、出汁醤油で味付けをしたあっさりご飯。
  ・刺身。噛めば噛むほど味が出てくる。
  ・てんぷら。タコの弾力と天ぷらのパリパリした食感を味わえる。
  ・半球形のくぼみのある鉄板を使ってたこ焼き。ころころ、じゅうじゅう。
 ※おしながきは一例です、この他の料理も指定があれば提供できます。

●タコと一緒に浜に打ち上げられたアジ、クロダイ、カレイ、コンブ、ワカメ、アオサなどの『海産物』も食べられます。
●『飲み物は指定通りのもの』が用意されます。『地酒』もあります。純米大吟醸、キレのある爽やかな辛口酒です。飲酒は20歳以上限定とさせていただきます。
●『鹿』がいます。鹿と遊べます。餌をあげたり、触ったり。
●その他、『水遊び、砂遊びなど浜辺で出来ること』なら自由にどうぞ。

●お一人さまで参加しづらい場合は漁師などにお声かけください。ふさわしい同行者をつけさせていただきます。(つっこみが足りない場合も誰か登場します)
●多くとも2~3シーン位に絞って行動してください。ご希望のシーン数が多い場合は非常にあっさりした描写になります。

●プレイング受付は【9/12(木)午前8時31分から開始】します。それまでにお送り頂いたプレイングは受付せずに返却いたします。
●1日7名様まで執筆できます。我侭を申しますが、参加人数を確認し分散頂けると助かります。詳細はMSページにてご案内します。(団体さまは同日にお送りいただけると執筆しやすいです)
【9月11日21時追記】
●『お任せ』機能での参加の場合は『お好きなシーン1つ』をお選びください。

●『骨抜き妖怪『衣蛸』』討伐
 宴もたけなわ。盛り上がりをみせる祭りの喧騒につられて、大タコたちが顔を出した。
「わあい!祭りタコ~!」
「やっほぉ!お祭りタコ~!!」
「「「「タコ~~~~~!!!」」」」
 大海原にぷかぷか浮かぶ赤い頭、頭、頭!!! ぞろぞろと港に向けて押し寄せてくる。そこに立ちはだかるのは猟兵たち。港には近づかせない! タコの群れに向け全力のユーベルコードが叩き込まれた!!!

『さっくり! バッサリ! バリバリどっかーん! ずしーんずしーん! ばっさばっさ! ごおおおお! しゅばばっ! ずばー! どかっばきっ!』

 こうして大タコたちは仕留められ、本日のおやつとして振舞われるのであった。
榎・うさみっち
【ニコうさ】
タコはさっくり倒す!

そしてニコとレッツタコ料理クッキング~!!
今日はタコ飯を作っていきまーす!
作り方は結構簡単!
タコを一口サイズに切る!
醤油・だし・みりんなどの
調味料系とお米とタコを一緒に炊く!完成!

俺はタコを一口サイズに切るから
その間にニコはお米の準備をしておいてくれ!
【かくせいのうさみっちスピリッツ】で
増やしたゆたんぽ達にタコやまな板を
押さえてもらいつつ俺が包丁でスパーンと…
ぴゃああああ!足が動いた!吸盤が!吸盤がほっぺにー!
ニコ助けてー!!

…トラブルもあったけど無事完成!
んーっ縁日で食べたたこ焼きに負けないくらいコリコリ!
口の周りをご飯粒まみれにしながら貪り食う!


ニコ・ベルクシュタイン
【ニコうさ】
タコはバッサリ一刀両断

うさみと揃ってエプロン姿になり、タコ料理に挑戦と行こう
うさみ先生、今日のお料理は?タコ飯?其れは難しそうだな…
と思いきや、うさみのざっくりとした説明を聞いて少し安堵する
俺は指示通り米の用意をしよう、うさみでは研ぐのも大変だろう

米を潰さぬように手際良く…と思っていたら何だ何だ!?
隣でタコと格闘していたうさみの悲鳴が聞こえるではないか
見ればタコ足の吸盤がうさみのもちっとした頬に吸い付いており
申し訳無いが其の様子にフフッとなってしまう
片手にうさみ、もう片手にタコ足を持って慎重に引っ張って…

ふう、何とかタコ飯が完成したな
…うさみよ、顔中に米粒が付いているぞ…(取る)



「ニコと」
「うさみの」
「「レッツタコ料理クッキング~!!」」
 キラリ輝く笑顔が眩しい! 『レッツタコ料理クッキング』本日は宮島の浜辺よりお送りします。担当は、料理はそこそこ得意! 今だけタコ料理家の榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)先生と、今だけ助手のニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)です。よろしくお願いします。おっと! お揃いのエプロンです! うさぎアップリケ付きのエプロン! うさみ先生の手作りエプロンです!
『この番組は第六猟兵 ニコうさお料理部隊の提供でお送りします!』

 提供を挟んだところで、早速始めましょう!
「うさみ先生、今日のお料理は?」
「今日はタコ飯を作っていきまーす!」
「うさみよ……タコ飯を作るとは、聊か難しくは在るまいか」
「ノンノン、作り方は結構簡単!」
 うさみ直筆デフォルメキャラが描かれている説明ボードをよいしょっ! っと取り出し説明を始めます。

 うさみ先生のタコ飯レシピ、ざっくり説明だ!
 ひとーつ! タコを一口サイズに切る!
 ふたーつ! 醤油・だし・みりんなどの調味料をあわせておく!
 みぃっつ! お米とタコと調味料を土鍋にドーン!
 ぐつぐつぐつぐつぐつぐつ…………。

「はい、出来上がりだ!」
 バン! とボードを叩くうさみ。とてもどや顔である。簡単だろ!
「成程、其れなら作れそうだ」
 安堵の息をつくニコ。手に負えないほどの複雑な手順があるのかと思っていた。これなら出来る。

「俺はタコを一口サイズに切るから、その間にニコはお米の準備をしておいてくれ!」
「承知した」
「じゃ、タコ飯大作戦スタートだぞ! 命が宿ったゆたんぽの本気! 喰らえー!!」
 《うさみっちゆたんぽ》をぽこぽこぽこ! 増やすうさみ。うさみと同じ形をした湯たんぽが分身、その数50ほど。うさみお料理お助け部隊が勢ぞろいです。全員甚平にエプロンを纏っています。その一人一人を念力で操作し、タコ足やまな板をぎゅ、ぎゅ、ぎゅ!トドメは、うさみ自身がその手に握る包丁で、スパスパスパーン!
「――またつまらぬものを斬ってしまったぞ!」
 ぶんと包丁を血振るいするうさみ。パカ! パカ! パカ! タコ足は綺麗に三分割! お見事です!

 タコと格闘し始めるうさみ先生に優しい眼差しを送ってから、ニコは米の準備を始めました。
「矢張りうさみに米を用意させるのは酷であろうからして……」
 人間サイズの料理も作れる事を知っていても、うさみはフェアリーだ。切るだけならまだしも、あの身丈では人間が食べる量の米を研ぐのは一苦労だろう。それにニコにも米を研ぐくらいは出来る。
桶に入れた米に水を注ぎかき混ぜる。米を潰さないよう手際よく、ぐるぐるぐるぐる。すると――、

「ニコ助けてー!!」
「何だ何だ!?」
 隣でタコと格闘していたうさみの悲鳴が聞こえる。見ればタコ足の吸盤がうさみのもちっとした頬に吸い付いていた。
「ぴゃああああ! 足が動いた! 吸盤が! 吸盤がほっぺにー!」
 じたばたじたばた! 剥がそうと懸命にもがくが、一向に剥がれる気配がない。
「フフッ」
 頬が緩むニコ。申し訳無いとは思いつつも、愛らしいその姿に微笑まざるをえない。
「笑ったなーニコー!」
 顔を真っ赤にして怒るうさみ。でも真っ赤になればなるほど、タコ足に負けないタコうさみになっていく。
「すまない……」
「もうそんなのどうでもいいからニコーー!!」
 催促されたニコは、片手にうさみ、もう片手にタコ足を持ち、ゆっくり、ゆっくり、慎重に引っ張り、きゅぽんっ! 軽快な音とともに、なんとかタコ足を引き剥がした。
「ぴゃああああ……」
 ぺたりくたりと座り込むうさみ。ほっぺに吸盤が吸い付いた赤い跡がくっきり残る。ひりひり痛む頬、ちょっと涙目です。
「うさみよ、痛みがとまる魔法をかけてやろう。ちちんぷいぷい痛いの痛いの飛んで行け」
 その赤いほっぺにニコの指が添えられた。痛み止め薬を指にとり、ほっぺを優しくぐりぐりぐり。
「この呪文か? 医術と世界知識を駆使して編み出したサムライエンパイア式痛みの軽減呪文だ」
 この呪文の一部は春日の局が徳川家光をあやす際に用いた言葉が元になっているのだという。痛みが治まるまで優しくぐりぐりし続け、柔らかほっぺを堪能するのであった。

 なんやかんやトラブルもあったけど、タコ飯は無事完成のときを迎えます。
 土鍋からパチパチパチパチ音が鳴る。これはとっても良い頃合。
「ふう、何とかタコ飯が完成したな」
 土鍋の蓋をおもむろに開けようとするニコ。
「――――っ」
 思いのほか熱かった、慌てて手をひっこめる。
「ニコー! 何してるんだよ!」
 ニコの指を懸命にふーふーするうさみ。その指にぴたっと頬をくっつける。実は耳をくっつけているつもりなのだが、ニコの指が大きいため頬に当たってしまう。うさみっち湯たんぽもこの時ばかりはひんやりモードに切り替えて、全力でニコの指を冷やします。
「……だ、大丈夫だ、手数をかけたな」
 微笑ましいさまをずっと眺めていたい気もするのだが。
「こんなとこで怪我していたらタコ飯が食べられないからな!」
 ふいっとそっぽを向くうさみ。そう、これ以上炊き続ければ土鍋が焦げる。切り上げて土鍋の仕上げといきましょう。蓋をあけかき混ぜ、茶碗によそって、完成です!

「「いただきます」」
 揃って合掌、ぱくり!
「んーっ縁日で食べたたこ焼きに負けないくらいコリコリ!」
 満面の笑みを浮かべるうさみ。ふわっと広がるタコ出汁がうめぇ、米うめぇ、タコ飯うめぇ。口の周りをご飯粒まみれにしながら、うめぇうめぇと貪り食べまくる。
「……うさみよ、顔中に米粒が付いているぞ……」
 呆れ返るニコ。フェアリーサイズの小顔に人間サイズの米がついている、まるで顔が米粒になっているようだ。そっと優しく指で拭いぱくり。
「うさみ味のタコ飯か、タコ味のうさみ飯か。――ご馳走さま」
 フフっと笑みんで甘い味を独り占めして噛み締める。
「デレシュタイン! なんだよこの爽やかイケニコ! お前本当にニコか? ニセシュタインじゃねぇのか?」
 売り言葉に買い言葉、うさみの言葉に再びニコが言葉を返し。揶揄をつまみに、二人はタコ飯をたいらげていった。

 最後はドリンクで乾杯です。
「ニコー! ニコも飲むー? 抹茶ラテ貰ってきたぞー! 産地直送抹茶ラテだ!!」
 人間サイズの大きな器を持ってぶーんぶーんと飛ぶうさみ。好物の抹茶ラテにありつけて大歓喜。器には吸い口が2つついたハートのストローがさしてある。
「うさみにしては殊勝な心がけではないか、いつもの邪悪さは何処に成りを潜めている、ピュアッピュアに漂白されてしまったのか」
「なんだよニコー! 要らないのか? 要らないなら全部飲んじゃうんだぞ!」
 器を下ろしてストローにとまるうさみ。とりあえず、ニコももう片方のストローを手にとって。では、いただきます!
『……ずご、ごごごっ! っっっっっっごっ!!!』
 吸っても吸っても何も飲めない。不思議に思って器を見るニコ。空っぽだ。さっきは確かに抹茶ラテが注がれていた、それが一瞬で空っぽになっている。おのれ……。
「うさみよ……お前という奴は人に勧めておいて全部飲むのか、食い意地が張りすぎではないか」
 期待した俺が阿呆だった。うさみの耳を持ってギュイーーーっ!!
「や~~~っ!」
 本日2度目の悲鳴が浜辺に響き渡るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マレーク・グランシャール
【楽園】
蛸を倒したらカガリと篝が楽しそうに砂の城作りを始めた
篝はいつも『楽園の土』を持ち歩いているが、こういう造形物の制作は燃えるらしい
城門のヤドリガミでスクラップビルダーでもあるカガリの過去の姿の再現か?
二人が仲良く戯れているのを見ると心が和む

しかし砂の城か
どんなに苦労して築きあげても、波や風に攫われ一瞬で跡形もなく崩れてしまう
儚いものだな、まるで俺の人生のようだ

と言っていたら砂の城が動き出したぞ
女神から命を貰ったなら名前を付けねば
名付けなら任せろ
サキ(砂城)はどうだ?

仲間が増えたところで俺がアリスランス(山祇神槍)を千枚通し代わりに作ったタコ焼きでも喰え
(あーんして食べさせて貰う)


出水宮・カガリ
【楽園】まる(マレーク)と、篝と

かがり、かがり
まる曰く、タコの足が体に巻き付いたりする、のは、えろ…?らしいので
さっさと倒してよかったと思うぞ
砂の、門を…?カガリも多少、工作はできるが
何なら道具もあるぞ(【七つ道具】)

…神とは、すごいのだなぁ
砂を固めたものでなく、石を彫ったような門だ
大きさは、カガリの肘先ほども無いが…
まるは何にでも名前を付けるな?
カガリのヤドリガミの話を聞いて、物を大事にしたいから、らしいが
ヤドリガミに…なるのかな…この門…

タコ焼き…作れたのか、まる
そう言えばいつか、食べに行こうと言っていたな
お前は覚えていないかもしれな…、
…まる、その槍はカガリが作った、山祇神の…(あわわ)


照宮・篝
【楽園】まる(マレーク)と、カガリと

タコのマッサージ…少しだけ、気になったのだけれど
今は倒してまるが調理してしまっているし…
カガリ、カガリ、ここの砂で何か作ってみよう
私はこういう事は得意だぞ
まるは、カガリを頼りにしているから
門とか作ってやれば、喜んでもらえるかもしれない(アート)

まるが、悲しいことを言うので
儚くない砂の門にしてやる
【楽園の土】で補強して、石の門に
【ゴッド・クリエイション】で人間以上の知性を与えよう
ゴーレムのように歩いたり、意思疎通くらいはできると思うぞ
砂の城で、サキか
よかったな、名前が付いたぞ

たこやき…まるが作ったのか!
それにしても、大きな…まるも食べよう、ほら(差し出す)



「カガリ、カガリ、ここの砂で何か作ってみよう」
砂を手にとり微笑むのは照宮・篝(水鏡写しの泉照・f20484)だ。指の間からすべり落ちる砂が昼下がりの日差しを受けキラキラ輝く。
「カガリは多少、工作ができるが……」
経験したことがない未知の提案に口ごもる出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)。しゃがんで地を撫でる。もろく崩れ去る砂山、撫でた所が平地にかわる。こんなにバラバラになるモノでモノを作るのは難しいんじゃないか。
「私はこういう事は得意だぞ。まるは、カガリを頼りにしているから、門とか作ってやれば、喜んでもらえるかもしれない」
自信満々に告げる。造り産みだすのは神の仕事だ、門のひとつくらいは造作もない。たとえそれが砂からでも造ってみせよう。
「砂の、門を……?何なら道具はあるぞ」
料理を作ってくれている間に作れば喜んでくれるだろうか。七つ道具を取り出すカガリ。道具入れには器物の修理や手入れに使う、様々な種類の道具が詰めこまれている。作業に使えそうなモノを手にとり、砂を集め水を汲み門作りを始める2人。作業の手は止めずに雑談を続ける。

「タコのマッサージ……少しだけ、気になったのだけれど」
後ろ髪をひかれる篝。骨抜き妖怪『衣蛸』はヨガ、カッピングなどを施すという。それらは美容に良いと聞いたことがある、女子としては気になるものだ、一度試しても良かったのではないか。
「かがり、かがり、まる曰く、タコの足が体に巻き付いたりする、のは、えろ……?らしいので、さっさと倒してよかったと思うぞ」
止めるカガリ。オブリビオンに身を委ねるのは危険じゃないか。そして『えろ』いのはいけないと思います。でも――、
「カガリ、カガリ、えろ?とはなんだ?」
きょとんとする篝。そもそも『えろ』とは?美容マッサージが『えろ』なのか?タコが『えろ』なのか?
「そうだな……俺も解らない。まるに、聞いてみてはどうだ?」
言われてみれば、『えろ』……とは。タコに巻きつかれれば『苦しく』『痛い』のではないのか、どうして『えろ』なのか。カガリにも解らない。
「わかった、後で聞いてみる」
解らないなら聞けば良いのだ、幸いマレークは側にいる。今は倒したタコを料理している最中だが、終われば時間があるだろう。今は城作りに集中しよう。

その頃、マレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)は2人とは少し離れた浜辺でタコ焼きを作っていた。じゅうじゅうと音をあげる鉄板。あとは、ひっくり返し焼き上げるだけだ。生地が温まるまで少しだけ時間があるだろうか。
カガリと篝が砂で何か作っている。二人とも良い顔をしている、とても楽しそうだ。篝はいつも《楽園の土》を持ち歩いているが、こういう造形物の制作は燃えるらしい。やはり、手作業で作るのと、楽園の土で作るのは手応え違うのだろう。
あれは何を作っているんだ?スクラップのような部品と、城門、――ヤドリガミでスクラップビルダーでもあるカガリの過去の姿の再現か?
二人が仲良く戯れているのを見ると心が和む。こんな姿を見られる日が来るとは。
はっと現実に引き戻される。
「そろそろ頃合だろうか」
獲物を構え、シュババババッ!獲物の先端で穴あき鉄板の穴の淵をなぞるよう、ぐるっと一周させてから、くるりと回せば、丸く纏まった生地がひっくり返る。それを続けて、非常に素早く行う。目にも留まらぬ速さと言っても良いかもしれない。くるくると次々に生地がまとまっていく。丸くまとまったタコ焼きをコロコロと転がし、表面だけをカリっと仕上げる。これ位で良いだろうか。

タコ焼きを作り終えたマレークは、かがり達に合流した。
「まる、これを見てくれ!」
示す先には砂の門、先程出来たばかりの大作だ。
「砂の城か。
どんなに苦労して築きあげても、波や風に攫われ一瞬で跡形もなく崩れてしまう」
波打ち際を眺めるマレーク。あんな所に小さな貝殻が落ちている。あっという間に波が貝を飲み込み、ひいた後には何も残らない、ただ砂浜が在るのみだ。波が貝殻を消し去ってしまった。小さな存在は、大きな力の前では無力なのだ。きっとこの城も波の前には無力だ。
「儚いものだな、まるで俺の人生のようだ」
その瞳は寂しげに何処か、遠くを見つめる。運命の奔流の中では、自分のようなちっぽけな存在は一瞬で消し去られるだろう。
「まる……」
顔を曇らせる篝。なんて悲しいことを言うんだ。
「それなら儚くない砂の門にしてやろう」
《楽園の土》を取り出し、振り掛ける。これは人も、霊も、黄金すらも作り出すという土だ。この世でない場所、楽園から持ち出したのだという。その土は見る間に砂の門を石の門に変える。
「篝の名に於いて、この門に、人間以上の知性を与えよう」
門にそっと触れると、ぼうっと淡い光が門を包む。自身の創造物に生命を与える神の力《ゴッド・クリエイション》を使ったのだ。
「これでゴーレムのように歩いたり、簡単な意思疎通くらいはできると思うぞ」
誇らしげに告げる。これでマレークの悲しみも晴れるだろうか。
「……神とは、すごいのだなぁ」
一部始終を見守っていたカガリ。その手腕を目の当たりにして感嘆の声をあげる。
目の前にあるのは先程までカガリが作っていた砂を固めたものではない。石を彫ったような立派な門だ。大きさこそ、カガリの肘先ほども無いのだが……。この門にはもう魂が宿っている、百年を待たずして宿っているのだ。
「女神から命を貰ったなら名前を付けねば。名付けなら任せろ」
改めて、建物を眺めるマレーク。砂で出来た立派な城だ。俺が悲しまないように女神が力をこめ創造したもの、人を、人の心を護ることができる建造物だ、そう――。
「《砂城》と書き《サキ》と呼ぶのはどうだ?」
地に文字を書いて読んでみせる。
「砂の城で、サキか、よかったな、名前が付いたぞ」
門をひと撫でする篝。産み出した存在に名がついた。一つのモノとして認められたことが喜ばしくて。
「まるは何にでも名前を付けるな?」
感心するカガリ。以前、カガリはマレークに自身の生い立ちを含めたヤドリガミの事を話した。器物に魂が宿ること、その魂は人間型の肉体を得る場合があることを伝えた。マレークはそうなるまで物を大事にしたいから、名付けるようになったらしいのだが、
「ヤドリガミに……なるのかな……この門……」
素直な疑問を口にするカガリ。この門は神から直接命を貰った存在だ。ヤドリガミのような魂が篭るのかは、神のみぞ知ることだろう。

「仲間が増えたところでタコ焼きでも喰え」
頃合だと、タコ焼きを差し出すマレーク。1人1舟づつ、三舟分だ。
「タコ焼き……作れたのか、まる」
タコがはみ出すことなく、綺麗に焼けている。まるで職人が焼いたようだ。そう言えばいつか、食べに行こうと言っていたな。お前は覚えていないかもしれな……、
「まる、タコ焼きを作る道具は借りたのか?」
ふと、思い当たって尋ねてみるカガリ。調理器具は借りられると聞いていたが、自前のものを持ち込んだのだろうか。
「ああ、アリスランス《山祇神槍》を千枚通し代わりに」
「……まる、まる、その槍はカガリが作った、山祇神の……」
あわわと泡を食うカガリ。ただの槍ではないのだ。そもそも槍でタコ焼きを作るものなのか。どうしてそうなった!?
「たこやき……まるが作ったのか!」
篝が顔を出す。カガリの言葉を遮るよう、ひょっこりと。
「それにしても、大きな……」
物珍しそうに眺め、目を輝かせる篝。爪楊枝で一つさし、くるりと回してみる。皮の表面がパリっと焼けている、きっと中身はとろとろで、パリとろ食感が楽しめそうだ。タコ焼きの独特の香りが鼻腔を擽る、とても美味しそうだ。
「まるも食べよう、ほら」
笑みを浮かべて差し出す篝。ふーふー冷まし、落ちないように手を受け皿に添えて差し出す。
「あーん」
口を開け、差し出されたタコ焼きを一口で頬張るマレーク。女神が手づから食べさせてくれるとは。ほふほふ息を漏らしながら、至福の時を噛み締める。
「そうだ、まるに聞きたい事があった。『えろ』とはなんだ?」
咽るマレーク。盛大にだ。いつも崩れぬ表情が一瞬驚愕に変わった。その様子を歯牙にもかけず更に続ける篝。
「タコの足が体に巻き付いたりするのはどうして『えろ?』なんだ?教えてほしい」
真摯な顔で見つめてくる篝。言葉につまるマレーク。如何しよう。女神に真実を伝えるべきか思索しながら、まずは『えろ』を連呼しないように頼み込むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

豊雛院・叶葉
■方針
・【WIZ】使用
・アド/絡◎

■行動
蛸に御座いますか。
私どもの教義に於いて禁止されている食べ物では御座いませんし、美味しくいただきましょう。

「浜焼き」や「お刺身」等はいただいたことが御座いますね。
新鮮な蛸ですと、非常に美味しゅう御座います。
その他の海産物も、いただける範囲でいただいてみましょう。
お飲み物は、冷たいお茶がいただけますと有難いでしょうか。

折角の機会に御座います故、見様見真似では御座いますが、私の郷に伝わる料理を一品、御用意させていただきとう存じます。
茹でた白身魚とほうれん草を微塵切りにして用いた「茶碗蒸し」に御座いますが、如何でしょうか?
お気に召していただけますと良いのですが。



 豊雛院・叶葉(豊饒の巫女・叶・f05905)は、さっそく倒した蛸を頂くことにした。
 浜に打ち上げられた魚を採る漁師たちに声をかける。
「蛸に御座いますか」
 投網で引き上げているのは蛸だろうか。網の中でうねうねと動く足が見える。
「ああ、そうだ! ねえちゃんも蛸、食ってくか?」
 気付いた漁師が返事を返してくれる。
「蛸は私どもの教義に於いて禁止されている食べ物では御座いませんし、美味しくいただきましょう」
 胸の前で軽く両手を合掌し、ふわりと笑う。それに蛸は美容効果が非常に優れていると言われる食材だ、美と豊穣を司る女神にお仕えする身として食べない理由はないだろう。
「そうかいそうかい、たらふく食ってきな!」
 ざぶざぶと網が引き上げられる。浜に打ち上げられた蛸や魚たちが網の中でびちびちと跳ねる。漁師たちは網の中身を改め分類し、浜辺で調理が始まる。出来上がった料理は猟兵たちにも振舞われた。
 料理を見てまわる叶葉。どれから頂きましょうか。
「『浜焼き』や『お刺身』等はいただいたことが御座いますね」
 まずはさっぱりと刺身でいただきましょう。醤油をつけてぱくり。
「非常に美味しゅう御座います」
 感激する叶葉。今倒したばかりなのだから間違いなく新鮮な蛸だ。とれたてならではのハリがあり、一層美味しい。

「蛸がこれだけ美味しいのだから、その他の海産物もきっと美味しいでしょう」
 いただける範囲でいただいてみましょう。炊き出しをしている人々に声をかけてまわる叶葉。アジの炊き込みご飯、クロダイの味噌汁、カレイの唐揚げ、海草の酢の物を一皿づつ貰ってきた。
「それでは、頂きます」
 順番に箸をつけていく。アジの炊き込みご飯は、ふわっと炊けた米が美味しい。所々に混ぜられている身も美味いのだが、アジのうまみが米によくしみこんでいる。
 クロダイの味噌汁は、コクのある味噌汁だ。クロダイの濃厚な出汁が汁によく染み出ている。浮き実のクロダイも、よく火が通っている、口の周りのゼラチン質がなかなかの珍味だ。
 カレイの唐揚げは、パリッとよく揚がっている。柔らかいものが続いていたから、尚更、この食感が爽快だ。一口食べれば口の中にカレイの味が広がる。
 コンブ、ワカメ、アオサの海草の酢のものは、爽やかな海草の味が気持ち良い。
 どれもとても美味しい。舌鼓をうちながら、ぱくぱくぱくり。無理なく全てたいらげて。
「お飲み物は、冷たいお茶がいただけますと有難いのですが……」
 お茶を飲んで一息。とれたての海の幸が体に染み渡る。細胞の一つ一つが活性化するようだ、豊満な体が一層育つことだろう。発育の喜びに震える体をぎゅっと抱きしめ、海の実りに感謝の祈りを捧げた。

「折角の機会に御座います故、見様見真似では御座いますが、私の郷に伝わる料理を一品、御用意させていただきとう存じます」
「お! 気が利くねえ、お嬢ちゃん。なんだなんだ、どんな料理でい」
「白身魚とほうれん草を用いた『茶碗蒸し』に御座いますが、如何でしょうか?」
「茶碗蒸し! なんだそりゃ?」
「わしらが知らん、えぇとこの料理だな! ほんまに作ってくれるんか!?」
 叶葉の申し出に驚く漁師たち。こんなべっぴんさんに料理を作ってもらえるとは!
「はい。少し場所を拝借いたします」
 にっこりと微笑を浮かべる叶葉。美味しく出来上がりますようにと祈りをこめ料理を作り始めます。
 まずは出汁を用意し、冷ましておきます。次は、具の用意です。白身魚を茹で、ほうれん草を微塵切りにし、下準備が出来たら器に入れておきます。卵を用意し、先程用意しておいた出汁とあわせてから裏ごしをし、具を入れた器に注ぎ、蒸し器にいれ蒸しあげれば完成です。
「嬢ちゃん上手いね、いいお嫁さんになれるぜ!」
 慣れた手つきで作る叶葉をひやかす漁師。ふふふと笑って返す叶葉。その動きには隙がなく、作るさまも美しい。英才教育の賜物だろう。そうこうしている間にも、卵が蒸しあがった美味しそうな香りが漂ってくる。
「お気に召していただけますと良いのですが」
 それでは皆さんに振舞いましょう。優しい笑みを浮かべて器を差し出す。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篝・燈華
まずは狐火を舞わせて、タコさん退治だよっ
恥ずかしさ耐性はばっちり! ヨガのポーズもくねくね踊って乗り切るんだ

\くねくねくねくねくるりん☆ミ/
華麗にポーズを決めて、この襲撃も楽しいイベントにするんだよ!
部位破壊で、すぱっと触手を切り離して……タコ料理を楽しもうっと

折角だから僕は『たこ焼き』を作りたいなあ
鉄板にタコの足を入れて、生地をねりねり、ころころ、じゅうじゅう
こんがり表面が狐色になるまで、鹿さんと一緒にくねくね踊って
あ、なんだかお揚げの色みたい……(じゅるり)
ぼーっと見惚れて、焦がしたりしないようにしないとね!

じゃーん、\たこ焼き!/
周りにも振る舞うんだよ、他の皆は何を作ったのかなあ?


タビタビ・マタタビ
\タコさん!/
必殺の爪でしゅばばっと倒すよ!

戦いは終わった……

料理は猟師さんにお任せ! ゴー!
(と思ったら浜辺のワカメに足を取られワカメ巻きになる)

猟師さん! ……あ、ワカメのお化けじゃないよ! 腹ペコケットシーだよ!
タコ料理のオススメは何ですか? それをまずいただいた後、ボクの本命は。
\タコ焼き!/
実は初めて食べるんだよね。
ありがとうございますと受け取って、さっそく一口……の前に。
ふーふーふー……

あ、猟師さん。今ネコだからネコ舌なんだな、って思った!?
た、ただ冷めてる方が好きなだけで……
え、アツアツを食べろって? そんな、きゃー!(猟師さんにタコ焼きを押し込まれる)
熱いー! けど美味しいー!



●ほんのちょっとだけ時間を巻き戻して討伐中のお話です。
 篝・燈華(幻燈・f10370)は『骨抜き妖怪『衣蛸』』の討伐に死力を尽くしていた。
 \くねくねくねくねくるりん☆ミ/
 狐火を纏いタコ踊りを決める燈華。ヨガのポーズも踊って乗り切るんだ。
「この襲撃を楽しいイベントにするんだよ!」
 そう、今日はお祭りなのだ! ただ戦うだけでは楽しくない! イベントにして盛り上げよう! 舞の舞台なら誰に見られても恥ずかしくない!
 再びタコ踊りをキメながら、タコを見定める。うねる足を狙って、――そこだね!
 すぱっ!
 薙刀《神薙》が閃き、蛸の足を一刀両断! そうこうしている間に、猟兵たちの活躍により『骨抜き妖怪『衣蛸』』たちは討伐された。

「さ、タコ料理を楽しもうっと」
 蛸足をぶんどった燈華。調理器具を借りに行こう! ふと振り返れば、黒い山。そこには山盛りのワカメがもっそもっそ動いていた。
「???
 この山はなんなんだよ? ワカメのお化けかな?」
 つんつんつん。つついてみる。
「……あ、ワカメのお化けじゃないよ! 腹ペコケットシーだよ!」
 声が聞こえる。よく見ればワカメの山に黒い尻尾が生えていた。この山はワカメじゃない!
「わ、腹ペコケットシーさん? ワカメに食べられたのかな?」
 ワカメをめくって掘り出してみれば、
「ぷはっ……」
 ケットシーが顔を出す。金の瞳の黒ケットシーだ。ぷるぷると頭をふりワカメを振り払えば、赤い王冠が姿をあらわす。
「ケットシーさん、大丈夫?」
「有難う、助かったよ! ボクはタビタビ・マタタビ。君は?」
 そう、ワカメに埋もれていたのはタビタビ・マタタビ(若き猫黒騎士・f10770)だ。
「篝・燈華だよ。このワカメ、一体何があったのかな?」
 手を差し出す燈華。手を取り引っ張りワカメの山から引っこ抜く。助け出されて浜辺に座るタビタビ。一息ついて語り始めた。あれは『骨抜き妖怪『衣蛸』』討伐が終わった時のことだ。

「戦いは終わった……」
 目の前には蛸の山。勇者タビタビの活躍により、この浜にひとたびの平和がもたらされた。
「料理は猟師さんにお任せ! ゴー!」
 いざ次の戦場、美味しいものの元へ! ばさりとマントを翻し、浜辺から旅立とうと一歩踏み出すタビタビ。
 ――ツルンッ!!!!!!
「にゃっ!? にゃにゃにゃぁっ!? にゃん???これは!!??」
 足をとられた! これはなに!? じたばたじたばた!!! もがいている間に、ワカメに巻きつかれワカメ巻きに。どうにもこうにも身動きがとれなくなってしまった。

「助けてくれてありがとう!」
 にっこり笑うタビタビ。タコを食べる前にワカメに食べられる所だった。
『ぎゅううううううう……』
 お腹が鳴り照れ笑いを浮かべるタビタビ。そろそろお腹も限界だ。さぁ、今度こそ何か食べにいこう!

「タコ料理のオススメは何ですか?」
 漁師さんにお勧めを聞いてみるタビタビ。美味しいタコ料理ってなんだろう?
「そりゃ刺身に決まってるだろ、食ってけ」
 足をぶつ斬りにしてくれる。斬られたタコは皿の上でうねうね踊っている。
「わあい! お刺身だあ! いただきます!」
「口の中に張り付かれる前に食いきるんだぜ」
「ひゃっ! 張り付くの!?」
 ドキドキしながら醤油をつけてぱくり。口の中でうねうね動くタコの足。コリコリかみ砕いて、ごっくん。
「美味しーい!」
「さっぱりしてるね!」
 2人の笑顔が弾ける。新鮮な海の幸を食べ軽く腹ごしらえを済ませる2人。さて、お次は。

「ボクの本命は――」
「折角だから――」
 \たこ焼き!/\たこ焼き!/
 声を揃えて万歳! ダブルたこ焼きのポーズが決まった!
「タコといえば『たこ焼き』だよね!」
「そうそう、『たこ焼き』作りたいなあ」
「えっ、燈華さんたこ焼き作れるの!?」
 目を輝かせるタビタビ。まさか、作れる人だったとは!
「じゃあタビタビくん一緒に作る?」
 二つ返事で頷くタビタビ。こうして2人のたこ焼き作りが始まりました。
 生地をねりねり、鉄板にじゅわじゅわ注いで、タコの足をぽいぽいぽいぽい! 仕上げに揚げ玉もざばー! くるくるひっくり返して、鹿さんと一緒にくねくね踊って焼きあがりを待ちます。
「燈華さん、それ何?」
「たこ焼きが美味しくなるタコ踊りなんだよ」
「じゃあ……ボクも一緒にやってみようかな」
 \くねくねくねくねくるりん☆ミ/
 皆でタコ踊り。踊っている間にこんがり表面が狐色に焼きあがってきた。おや、これはどこかで見たことあるような?
「あ、なんだかお揚げの色みたい……」
「燈華さん、よだれがでてるよ」
「おっと、いけないんだよ」
 よだれをふきふきする燈華。ぼーっと見惚れて、焦がさないようにしないとね! 千枚通しでくるっくるっとひっくり返していく。
 その様子をじーっと見守るタビタビ。丸くてコロコロ転がるたこ焼きたち。うずうずず……ケットシー心が揺らぎます。
「ボクもいいかな、返してみたい!」
 千枚通しを持って構える。
 じり、じり……うずうずうずずず…………しゅばっ!くるっ!
 ころんとひっくり返るたこ焼き。
「わあ、上手いなあ! 僕も負けてられないよ!」
 くるくるくるくる、鉄板の上を競うようにたこ焼きが跳ねる、跳ねる、軽快に跳ねる。たこ焼きたちは次々と焼きあがっていった。

「じゃーーーーーん!!!」
 \たこ焼き!/\たこ焼き!/
 再び、声を揃えて万歳! たこ焼きのポーズ!
 焼きたてのたこ焼きは皆に配ってまわった。喜ぶ顔がその味を証明している。2人のたこ焼きはとても美味しく焼きあがっていた。勿論、自分たちが食べる分も残してある、さぁ食べよう!
「実は初めて食べるんだよね。あっ、ありがとうございます」
 舟を受け取るタビタビ。わくわく、どんな味なんだろう、期待に胸を躍らせる。
「へえ、タビタビくんは初めてなんだ。でもあんなに上手に焼けて凄いんだよ」
 では、手をあわせて、頂きます! さっそく一口……の前に。
『ふーふーふー……』
 念入りに冷まし始めるタビタビ。
「タビタビくんどうしたの?」
「今ネコだからネコ舌なんだな、って思った!?
 これは……た、ただ冷めてる方が好きなだけで……」
 しどろもどろ弁解する。猫舌じゃないんだよ? ちがうんだよ!?
「たこ焼きはアツアツがおいしいんだよ」
「え、そんな、きゃー!」
 たこ焼きを1つ刺して、ぐいっとタビタビの口に押し込む燈華。
「熱いー!」
 ぎゅっと縮こまり、ぷるぷる震えるタビタビ。
「けど美味しいー!」
 すぐにぱあっと顔を輝かせた。熱くても美味しいのだ! これがたこ焼き! ほふほふ頬張る。初めて食べるたこ焼きは熱くても、とっても美味しくて。黒い尻尾がご機嫌にぱたぱた揺れる。
「ねっ、熱いままでも美味しいよね」
 ふわあっと笑う燈華、釣られてふわあっと笑うタビタビ。ほんわかほっこり、笑顔の2人。あつあつ、ほっふほふ、たらふくたこ焼きを食べまくった。
「他の皆は何を作ったのかなあ?」
「見に行こう!」
 腹ペコ2人組の胃袋はまだまだこれからだ。まだ見ぬタコ料理を求めて、二人は新たなる地に旅立った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
仔竜の月代は海で生活していたからやっぱり海を見るとはしゃいでしまうんですね。
それに新鮮なお魚が食べられるから更に嬉しそうです。

漁師さんからタコや一緒に打ち上げられたお魚を分けてもらって、道具も借りて(料理)開始です。
お刺身だったら月代も食べれますよね。
月代が食べやすい大きさのお刺身を用意して、タコはたこ焼きと明石焼きに。
外側はカリっと中はトロっとさせたたこ焼きとお出汁で食べるふわふわの明石焼き、どちらも美味しいです!
月代も食べてみたいのですか?
味がついてるけど食べてもいいのかな…?
あ、熱いから気をつけて食べないと火傷してしまいます!
熱いけどおいしい?
ふふ、じゃぁ、これも一緒に食べましょうね。



 浜辺で討伐を見守っていた、吉備・狐珀(ヤドリガミの人形遣い・f17210)と仔竜の月代。猟兵たちの活躍により、妖怪変化たちは討伐され海にひとときの平和が訪れた。漁師たちが魚を投網で引き上げている。

 狐珀の肩の上でじっと海を見つめ続ける月代。時々スンと鼻を鳴らしている、まるで興奮しているように。故郷であるアックス&ウィザーズのトゥシュ村では海で生活をしていた。故郷である海を見るとはしゃいでしまうのだろう。新鮮な魚が食べられるのが解るのだろうか、海色の瞳を一層青く輝かせ、ことさら嬉しそうに見える。
「少し泳いでいきますか?」
 浜辺にそっとおろしてあげると、ざぶざぶと海に入る月代。すっと海に吸い込まれるように姿が見えなくなった。
「あっ、月代、どこに行くんですか」
「キュー」
 波間から月白色の頭が覗く。ご機嫌に泳いでいたのだろう。
「よかった。月代、気持ち良いですか」
「キュー!」
 ひと鳴きして再び海に潜る月代。少し待っていると、魚を咥え戻ってきた。獲物をぽいっと狐珀に投げてよこす。お土産だと言わんばかりに。
「採って、きたのですか」
 驚く狐珀。スンと鼻を鳴らす月代。どこか、自慢げに見える。その体よりも大きい魚だ。海の中でひと冒険してきたのかもしれない。
「有難うございます」
 ふわりと笑む。月代の頭を優しく撫でながら、水に濡れた体を拭き、再び肩にのせる。この魚も食べられるようにしてあげよう。

「私にも魚を分けて貰えませんか?」
 海から上がり、漁師たちに声をかける。
「いいぜ、ねぇちゃん。好きなだけ持っていきな」
「新鮮なのはいってるぜ、タコにアジ、クロダイ……勿論、タコもあるぞ!」
 気前よく返してくれる漁師たち。たっぷりタコや魚を分けてくれた。月代がとってきたのと同じ魚も数匹分けて貰った。たまたま採れたのかもしれないけど、好物かもしれないから。
 では、道具を借りて調理開始です。
「お刺身だったら月代も食べれますよね」
 さっき採ってきた魚の鱗をとり、三枚におろす。元々小さい魚を食べていたようだ、一口で飲み込めるくらいが食べやすいだろうか。小さく切り分け、皿に盛り付ければ刺身の完成です。試しに一皿目の前においてあげる。
 物珍しげにじっと見つめる月代、鼻を近づけスンスンと臭いをかぎ、ぱくり。
「キュウ!」
 声をあげる。大人しい月代が声をあげるという事は、美味しいという事だろう。ばくばくと残りに食らいついている。
 ほっと安堵の息をつく狐珀。食べてくれた、しかも美味しそうに。見ていれば自然と頬が緩む。続いて残りの魚もおろして皿に。力仕事に向いた竜に育てるなら魚や肉が良いと聞いている。これだけ魚が好きなのだ、きっと力強い竜に育つだろう。

 月代が刺身を食べている間にタコ料理にとりかかります。
 タコはたこ焼きと明石焼きに。たこ焼きは外側はカリっと中はトロっとなるよう焼いておいた。明石焼きはふわふわに、お出汁をつけて食べられるようにした。焼きたてをひとつづつ摘んでぱくり。
「どちらも美味しいです!」
 その味は自画自賛してしまうほど。月代も興味津々に右に左に首を揺らして覗きこむ。
「月代も食べてみたいのですか?」
 くすりと笑みが漏れる。その様子が愛らしくて。
「味がついてるけど食べてもいいのかな…?
 あ、熱いから気をつけて食べないと火傷してしまいます!」
 ふーふーさまし、差し出すとぱくりと食らいつく月代。きゅ! と小さく鳴きながら、かみ締めている。
犬などの動物には糖や塩分が体に負担をかけると言われるが、竜はどうなのだろう? 少しくらいなら大丈夫かな。心配する狐珀を尻目に、ぺろっとたいらげる月代。ごくりと飲み込み、ふうと息を吐く。少し熱かったのだろうか。
「熱いけどおいしい? ふふ、じゃぁ、これも一緒に食べましょうね」
もう一つ、差し出す。ぱくり、大口をあけ再び食らいつく月代。タコ料理もわけあって、2人で海の幸を堪能するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴北・誉人
志崎(f17340)と

ほんっと、はしたねえ…なんのために刀佩いてンだ
殴ったり蹴ったり、ヤメろよなァ…(ため息)
ちょっと腹ごなしに付き合えよ、タコォ!(UC発動)

なになにィ?ホタテじゃねえか!でっか…!
サザエも一緒に網にのせよォぜ、うめえから
「おっちゃーん、コレも焼いてやってー

アジのはら捌いてる志崎の手元のぞく
「へえ、器用なもんだな…すげえすげえ!
「俺はできねえ、だからすげえよ

いろんなモノが焼けてくる香りに、ソワソワする
さァ食うぜ!
うめえ!タコ、んま!
お前の捌いたアジもうめえよ
醤油垂らしたか?

志崎ィ、こっち見ろ
スマホで写真撮る
浜の様子は…動画で残すか
「んァ?思い出だよォ、これも土産!だから笑えよ


志崎・輝
鳴北(f02030)と

タコ…!
まだ食べ足りないからタコ料理になってもらう
UCで仕留める

「見て鳴北!でっかい!ここまでおっきいの初めて見た!
拾ったホタテを鳴北に自慢してやる
あとサザエも、え、いっぱい落ちてる!

漁師が焼いてくれるなら任せる
タコと貝とアジ持ってく
いろいろ焼いてもらってる間に包丁借りてアジ開く
(見られてる…
「…フツーだろ、こんなの
開いたアジを網の空いてるところにのせる

焼き上がったら食べる
いただきます
パカって開いたホタテ、サザエもおいしそう…!
「ちょっと、アタシのアジ!
…すっごい美味しそうに食べてるし…(ため息
アタシもタコ食べる、タコ飯もおいしい

呼ばれて振り返る
土産?
笑うわけないじゃない



「ちょっと腹ごなしに付き合えよ、タコォ!」
 《唯華月代》の白銀の刃が閃き、蛸を一刀のもとに切り伏せる。うねる足など関係ない、足も、胴も関係ない、全てぶった斬る。
「タコ……! まだ食べ足りないからタコ料理になってもらう」
 雷電を纏った拳の応酬が蛸の腕という腕をめくりあげ、がら空きになった胴に右回し蹴りが炸裂する。紅黒い着流しの裾がめくれ上がるのも厭わずに放たれた嵐のような一蹴に、吹き飛ばされていく蛸。
 猟兵たちの活躍により、妖怪変化は全て討ち倒された。

「ほんっと、はしたねえ……なんのために刀佩いてンだ。殴ったり蹴ったり、ヤメろよなァ……」
 ため息をつく鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)。足を丸出しにして何してるんだ。
「アタシの勝手じゃない! アンタに言われる筋合いは無いわ!」
 ふいと、そっぽを向く志崎・輝(紫怨の拳・f17340)。アタシはアタシの戦い方があるんだから。その視界に――、
「見て鳴北! でっかい! ここまでおっきいの初めて見た!」
 拾って掲げてみせる。特大のホタテだ。手と同じ位、いや、手より大きいかもしれない。
「なになにィ? ホタテじゃねえか! でっか……!」
 驚嘆する誉人。本当に大きかった! そんなでっかい奴いンのか!
「あとサザエも、え、いっぱい落ちてる!」
 タコが暴れたことにより様々な海産物が浜に打ち上げられていた。拾い放題だ。2人揃って拾い始める。屋台でたらふく食べてきたが、まだまだ食べる気だ。

「サザエも一緒に網にのせよォぜ、うめえから。おっちゃーん、コレも焼いてやってー」
「おお! いっぱい拾ったな! いいぞ、網用意してやるからドンドン並べてけ!」
 漁師たちに声をかけ、浜焼きの焼き網を用意して貰った。拾った海産物をドンドンのせていく。
 その間にアジを捌きはじめる輝。慣れた手つきでぜいごをとり始める。
「へえ、器用なもんだな……すげえすげえ!」
 いつの間にか誉人がにょきっと顔を出し、覗き込んでいた。まじまじと見つめている。
「……フツーだろ、こんなの」
 見られてる……。揺れる心を見抜かれないよう、黙々と作業を続ける。
「俺はできねえ、だからすげえよ」
 キラキラと目を輝かせる誉人。そこには普段纏っている鋭さは微塵もなく、とても無邪気にはしゃいでいて。
「邪魔だから退いてて」
 しっしと手を振り追い払う。そんな目で見られたら、やりにくいったらありゃしない。……照れてるんじゃないんだから。

 じゅうじゅうと音をたて始める海産物。タコやホタテ、サザエ、アジなど、浜焼きの網には隙間がないほど、ぎっしり海の幸が並べられていた。ソワソワする誉人。いろんなモノが焼けてくる香りが鼻腔を擽る。そろそろ食べ頃だろうか、いや、もう食べよう。我慢の限界だ。
「さァ食うぜ!」
 蛸串を1本手にとる誉人。焼き具合は食べれば解る、蛸なら生でも食べられるから安心だ。がぶりっと一口。
「うめえ! タコ、んま!」
 満面の笑みを浮かべる。ぷりぷりした歯ごたえがたまらない、よく焼けている。自然な塩味が効いていて美味い。両手に1本づつもって、がぶり、がぶりとかぶりつく。
「アタシもタコ食べる」
 ぼーっとしていたら食べ尽くされそうだ。網の隣で炊いていた土鍋を開ける輝。パチパチ鳴っていたから炊けているだろう。タコ飯を茶碗によそってぱくり。
「タコ飯もおいしい」
 ほっと頬が緩む。ご飯はふっくら、蛸はぷりぷり。じっくりかみ締めるほど蛸の味がが染み出してくる。よく炊けている。
「どれどれェ、あ、これもんま!」
 誉人も茶碗によそってぱくり。ああ、これも美味い。でもご飯といえばもう少し塩味が効いていても良いんじゃないか。そう、何か塩味の……アジだ! さっき開いて焼いていた。網の上を探してみれば、じゅうじゅうと音をたて、こんがり焼けている。食べられそうだ。身をほぐしてぱくり。
「うめえ! お前の捌いたアジもうめえよ」
 この塩味だ! ぱっと顔を輝かせ、頬を緩めてにっこり笑顔。がつがつとご飯をかきこみ、ほおっと満足げに吐息を漏らす。うめぇうめぇと言いながら、アジをぱくぱく、ごはんをぱくぱく、交互に口にかきこむ。
「ちょっと、アタシのアジ! ……すっごい美味しそうに食べてるし……」
 ため息一つ。折角、焼いておいたのに鳴北にとられた。あんな顔してたら返してなんて言えない。もういいやと諦めたところに。――パカっ! これは……ホタテの音だ。焼けたんだ!
「あっ! ホタテ、サザエもおいしそう……!」
 一番大きいホタテを手にとる輝。浜辺でさっき見つけたものだ。特大貝殻がぱかっと開き、ぷりっとした大きな貝がじゅうじゅうと音をたてている。見ているだけで口の中にツバがたまってくる。
「あ、それェ俺のォ!」
「誰のだ! アタシのだろ!」
 キッと睨んで追い払う。やっぱり狙われていた、最初にとって正解だ。
「お前……」
「なんだよ!」
 声をかけられて再び睨み返す。まだ何かあるのかと思えば、
「醤油垂らしたかァ?」
「……もうかけてる」
 醤油をぽたり。面倒をみてくれているのだろうか。でも、いちいち構われると調子が狂う。思わず溜息をつきながら、ぱくり。あら、美味しい。ぱっと顔を輝かせる輝。

「浜の様子は……動画で残すか。志崎ィ、こっち見ろ」
 串を咥えながらスマートフォン《IMPULSO》を構える誉人。一体どうしたのかと尋ねれば、
「んァ? 思い出だよォ、これも土産! だから笑えよ」
 スマートフォンをぽちぽち弄りながら答える誉人。少々苦戦しているのだろう、画面から顔をあげずに返してくる。写真は土産――写真があれば後から見直す事も出来る、今日の思い出を永遠に残すことが出来るのだ。
「土産?」
 急にそんなことを言われても、笑うわけないじゃない。――隣にアンタが居るんだから。
「いいからそこに立ってろ。えっと、このボタンで……撮るゼ」
 逃げ出そうとする輝の横に並んで、撮影ボタンをパシャリ。
 ご機嫌さんの誉人と、いつも通りの凛とした固い表情の輝。二人の姿は瀬戸内の海の幸と共に一枚の写真におさめられたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『皇帝烏賊』唐鞠・咲』

POW   :    ボクの仲間イカよ!
レベル×1体の、【えんぺら】に1と刻印された戦闘用【ダイオウホウズキイカ】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
SPD   :    海の幸スペシャル
【新鮮素材を使った極上の海鮮料理】を給仕している間、戦場にいる新鮮素材を使った極上の海鮮料理を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    秘伝のタレ
【自分以外の何でも溶かせる特殊なイカスミ】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を幻想的な水墨画の世界に変えて】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:まめのきなこ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はミモザ・クルセイルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


3章:満月の夜
●戦闘は発生しません。
 ・ユーベルコードを活性化し『倒す』と書いていただければ倒せます。(3章開始時に倒します)とはいえ、この章は『ボス戦闘』章です、ボスを倒すためにユーベルコードの活性化をお願いします!活性化し忘れると参戦できません。
 ・本格的に戦うプレイングを頂いた場合は相応に描写します。ギャグバトルも出来ます、プレイングの雰囲気に合わせてノリノリでかきます。『海の幸スペシャル』などのおもてなし技を受けたい方はどうぞ!

●『イカ料理』が食べられます。旅館で料理してくれます。自炊もできます、道具を貸してくれます。器具の持ち込みもOKです。場所は旅館の敷地内です。
 -おしながき-
 ・浜焼き。とれた魚介類を網で焼いて食べる、海の塩味でバリっと頂く。
 ・イカ焼き。醤油とみりんで味付け、皮はぱりっと、肉はもっちり。姿焼きもできます。
 ・大阪風イカ焼き。卵で作ったもちもちの皮と一緒に焼いたもの。
 ・イカ飯。甘辛いイカ肉で餅米を包んで。
 ・刺身。コリコリ。トゥルン。醤油とみりんで味付けした『いかのづけ丼』にも出来ます。
 ・天ぷら。イカの弾力と天ぷらのパリパリした食感を味わえる
※おしながきは一例です、この他の料理も指定があれば提供できます。
※分身する個体のため、姿焼きなどで1匹丸ごと食べられます。

●イカと一緒に浜に打ち上げられたアジ、クロダイ、カレイ、コンブ、ワカメ、アオサなどの『海産物』も食べられます。
●たこも残っています。2章同様の料理が食べられます。
●『飲み物は指定通りのもの』が用意されます。『地酒』もあります。純米大吟醸、キレのある爽やかな辛口酒です。飲酒は20歳以上限定とさせていただきます。

●『波打ち際にある露天風呂』に入れます。
 ・岩で囲まれた温泉です。岩の向こうに瀬戸内海が広がります。空には満月が浮かんでいます。
 ・臭いのない透明な湯です。癖がなく肌触りが良いです。温度は心地が良い程度です。
 ・混浴です、水着か湯着を着用してください。
 ・飲んだり食べたりしながら入浴できます。
 ・バディペットも一緒に入れます。

●その他、『旅館で出来ること』なら自由にどうぞ。

●お一人さまで参加しづらい場合は旅館の案内係りなどにお声かけください。ふさわしい同行者をつけさせていただきます。(つっこみが足りない場合も誰か登場します)
●多くとも2~3シーン位に絞って行動してください。ご希望のシーン数が多い場合は非常にあっさりした描写になります。

●プレイング受付は【9/19(木)午前8時31分から開始】します。それまでにお送り頂いたプレイングは受付せずに返却いたします。
●1日7名様まで執筆できます。我侭を申しますが、参加人数を確認し分散頂けると助かります。詳細はMSページにてご案内します。(団体さまは同日にお送りいただけると執筆しやすいです)

●『サポート』機能をご利用中の方で、このシナリオに参加をお考え頂いている方は、ごはを嫌いなMSにご登録ください。
●『お任せ』機能での参加の場合は『お好きなシーン1つ』をお選びください。
フローリア・ヤマト(サポート)
『大丈夫よ、私達に任せて』
『うるさいわね……ちょっと黙らせるわ!』
呪いにより余命1年と少しの、クールな美少女です。
口調は上記のように少しツンとした感じですが、人間が嫌いなわけではなく、仲間や人々のことを心の底では大切に思っており、戦闘でもうまくサポートしようと立ち回ります。
また、敵に対しても怯むことはなく、時には挑発めいたセリフも交えながら、死角や弱点を突いて確実に仕留めることを狙って戦います。
フローリアのユーベルコードは、嵌めている「呪いの指輪」から黒い糸や影を放つ……みたいなビジュアルイメージなので、そのように描写していただけると嬉しいです。



「最初に受けた依頼もイカ絡みだったのよね……。ちょっとだけ因縁を感じるわ」
 イカと戦う依頼だと聞き、溜息をつくフローリア・ヤマト(呪いと共に戦う少女・f09692)。しかし、現場に到着した彼女はすぐさま表情をひきしめた。子供たちがイカに襲われそうになっている。そのイカはフローリアが見上げんばかり――大きな船ほどあるだろうか――とても大きなイカだ。分身しているのだろうか、ボスは1体と聞いていたが数体いる。
 夫々に対処するために猟兵たちは戦場に散っていった。

「一緒に日向ぼっこしなイカ~~!!」
 逃げている子供たちに向けイカ足を伸ばすイカ。
「いやー! 助けてーーーー!!!」
 少年が少女を守るように立ちはだかった。
 少年がぎゅっと目を瞑る。だが、いつまで経っても腕が絡みつく気配が無い。
「大丈夫よ、私達に任せて」
 優しい声に目をあけると、黒い巫女服に身を包んだ少女が立ちはだかっていた。少年ごと包み込み守るように。――フローリアだ。手には刀を握っている、この刀でイカ足をいなしたのだろう。敵に背を向けたまま、子供たちを見つめ語りかける。
「怪我してないかしら?」
 そう、敵に背を向けるなんて、らしくない。いつもはもっと冷静に立ち振る舞うのに。これ以上怖がらせないように、そして何より近くで子供たちの顔を見たかったのだ。
 助けた少年と少女の顔は似ているようだ、これは、やはり兄と妹かもしれない。逃げる2人の姿に過去のフローリアの姿が重なっていた。兄は私を守ってオブリビオンに殺された、私と同じ思いはさせたくない。だからこそ――、
「何をするイカ~~! 邪魔をするんじゃなイカ~~~!」
「うるさいわね……ちょっと黙らせるわ! このまま走れるかしら? 逃げて、浜辺を抜けたら助けてくれる人が居るわ」
 イカがわめき散らす声に現実に引き戻された。子供たちの背を押し、駆け出すのを見送ってからイカに向きなおる。ここは通さない。青い瞳に決意の炎をともして。

「よくも邪魔をしてくれたじゃなイカ! 日向ぼっこに誘っただけじゃなイカ!」
 一番長い足、触腕を振り上げプンプン怒るイカ。
「日向ぼっこって……怖いに決まってるじゃない。こんな大きいイカの誘いなんて、私もお断りだわ」
「がーん! お断りなんて酷いじゃなイカ! 失恋の秘伝のタレボンバーーイカ!」
 口から黒い液体を吐くイカ、イカスミだろうか、秘伝のタレというからには美味しいのかもしれないのだが。嫌な予感がして横に飛んで避けるフローリア。じゅうと音をたて、さっきまでフローリアが立っていた地面が溶けた。溶けた地は墨で描いたような海に変わる、これは水墨画だろうか。
「避けちゃだめじゃなイカー!」
 再び秘伝のタレを放ってくる。後ろからまだ子供たちの足音が聞こえる。私一人ではこのイカを倒す力はないけれど子供たちが逃げる時間くらいは稼がないと。使えるユーベルコードは一つだけ。いつものように飛べないのだけど、何かいい方法はないかしら。
「避けるわよ、避けないほうがだめじゃない」
 岩場だ、遮るものがあれば狙い難くなるかもしれない。迫る秘伝のタレを転がり避け駆けるフローリア。
「逃げるんじゃなイカ~! 待って欲しイカ~~!」
 イカがついてくる気配がある、このままひきつけよう。
「言われて待つ人が居るわけないでしょ」
 秘伝のタレを右に左に避けながら、岩場に転がり込む。
「岩に逃げ込んでも無駄じゃなイカ! 秘伝のタレは無敵じゃなイカ! 秘伝のタレボンバーーイカ!」
 岩場があるなら、全部溶かしてしまえばいい。全てをなぎ払うように秘伝のタレを吐くイカ。
「そう上手くいくかしら?」
 岩場から飛び出してくるフローリア――その数10ほど。
「くっ、ちょこざイカ!」
 幾ら増えても全て撃てば良い。でも、撃っても、撃っても姿が消える。消えるどころか増えているのかもしれない。しかも、ひとつたりとも手応えが無い。――残像だ。元いた場所に像が残るほど速く駆け回っているのだ。今ではイカをぐるりと取り囲んでいる。
「さあ、当ててごらんなさい。どれが本当の私なのか」
「どうなっているのかわからないじゃなイカ!」
 ぐるぐる回り混乱するイカ。しかし、フローリアの体力も無限では無い。息切れしないよう、イカに残像を撃たせては、岩場に逃げ込み、逃げ込んでは撃たせ、フェイントをかけ翻弄する。無論、言葉で挑発し、ひきつけ続けるのを忘れずに。

「どうしたイカ、逃げてばかりじゃなイカ!」
「バカね。溶かされるのが解ってて、捕まるわけ無いじゃない」
 あれから幾ら経っただろうか。逃げて、逃げて、逃げている間に、水墨画の大海原が出来上がっていた。イカはその上で上機嫌だ。触腕を挙げ、くねくね踊っていた。
 避けている間に解った事がある。秘伝のタレは、物を溶かす効果と水墨画の海を生み出す効果がある。水墨画の上に居るイカは強くなっている気がする。情報分析も終わった。逃げた子供たちの足音や声は聞こえない、浜辺の外に逃げ切ったのだろう。もう時間を稼がなくてもいい。反撃の時間だ。

「そろそろ終わりにしてあげるわ」
 巨大イカの前に歩み出るフローリア。もう片方の手で指輪に触れながら。白く繊細な指にはめられているのは、黒く禍々しい《呪いの指輪》。愛らしいフローリアには不相応に見える。
「追い詰められているのはお前じゃなイカ?」
「そうかしら?」

 ――ぽつ、ぽつと水滴が落ちてきた。雨だろうか。

 ざあざあ音をたて辺り一面がたちまち雨に染まる。見上げる空に雲はない。これは――影の雨だ。フローリアの指輪が怪しく光を放っていた。《黒似》、相手の技の全てを模倣し打ち消す力を使ったのだ。
イカはあたりの地形を水墨画にして力を得ている、ならば水墨画を消してしまえば良い、上書きしてしまえば力を削ぐことができる。
 一面を覆い尽くす影の雨、水墨画を黒く塗りつぶしていく。大海原は消え、小さな芽が出て、花が咲き始める、黒い黒い影の花が一面に咲き乱れる。樹が生え小さな蕾をつけ、花を咲かせる、桜だ。満開に咲き乱れる黒い黒い影の花弁が風にのり、ひらひらりと舞い落ちる。またたく間に黒一色で描かれた影絵のような花園が辺り一面に広がった。
「なっ! 大海原が消えちゃったじゃなイカ! まずいじゃなイカ!」
 わたわた慌てるイカ。力場を壊され、こそこそ逃げ出そうとしていた。
「どこに行くのかしら?」
 そこにはフローリアがいた。冷えた瞳がイカを貫く。その目立つ巨体でこそこそなんてありえない。
「邪魔じゃなイカ! 退かなイカ!」
 秘伝のタレを放ってくる。今日、何度目だろうか。黒い液体がフローリアに迫る。
「大丈夫、それもう見たから」
 顔の横に指輪を掲げる。指輪から《影》が解き放たれ壁を作る。タレと壁が衝突し、ジュッと短い音を残し双方消え去った。
「なっ……! 消えるじゃなイカ! そんなの聞いてなイカ!」
 目を見開くイカ。全てを溶かす秘伝のタレが消えるなんて信じられない! 矢継ぎ早に秘伝のタレを放ってきた。
「奇遇ね、私も《黒》を使うのよ」
 放たれた秘伝のタレは、ジュッと音をあげ次々と消えていく。フローリアが放つ《黒》――影の力に相殺されているのだ。
「私の《黒》と、あなたの《黒》」
 一歩、また一歩、ゆっくりと歩みを進める。
「どちらの《黒》が強いのかしら?」
 まるで威圧するように。否、威圧するほどの力を放っている。影の花園上に居る限りフローリアの力が高められるのだ。
「聞かなくとも解るわ」
 腕を組み立ちはだかるフローリア。青く澄んだ瞳に強い輝きを宿し睨みあげる。いつの間にかその手足は漆黒が覆っていた。かつて兄を蘇生させた代償を求め、全てを喰らい尽くさんとする呪いだ。

「私の《黒》のほうが強いわ、闇より深い《影》に呑まれて死になさい」

成功 🔵​🔵​🔴​


猟兵たちの活躍により、巨大イカは仕留められ、夕食として美味しく振舞われるのであった。
豊雛院・叶葉
■方針
・【WIZ】使用
・アド/絡◎

■行動
蛸に続いて、烏賊に御座いますか。
楽しみに御座います。

『お刺身』と『天麩羅』をいただきとう御座います。
『漬け丼』というのはいただいたことが御座いませぬが、美味しそうに御座いますね。
此方も宜しいでしょうか。
お食事への御礼を兼ねまして、『干物』や『塩辛』等、日保ちする品が御座いましたら、皆へのお土産に多めに買い入れて参りましょう。

お食事を終えましたら、露天風呂にてゆっくりさせていただきましょう。
私の体では、旅館でお借りすることが少々難しゅう御座います故、『湯着』と『着替え』は持参した品を使わせていただきとう御座います。

楽しい時間をいただき、御礼申し上げまする。



「蛸に続いて、烏賊に御座いますか。楽しみに御座います」
 豊雛院・叶葉(豊饒の巫女・叶・f05905)は旅館の一室で寛いでいた。すべてのオブリビオンの討伐を終え、あとはこの宿で寛ぐのみ。ご褒美の時間だ。

「お刺身と天麩羅をいただきとう御座います」
 女中が夕食のお品書きを確認しに来てくれた。食べたいものを伝える叶葉。
「ご飯は如何なさいますか? 漬け丼などもございます」
「漬け丼というのはどの様な物に御座いましょうか」
 漬け丼とは。食べたことがないものだ、いったいどんなものなのだろうか。興味はあるのだが、食べられるものだろうか。
 女中に聞き返すと、
「刻みノリとオクラ、魚の切り身の醤油漬け、卵黄を白米にのせたものになります」
 簡単に説明をしてくれた。魚の切り身は刺身とは別の魚をのせることもできるらしい。
「美味しそうに御座いますね。此方も宜しいでしょうか」
 漬けると味が変わるかもしれない、イカの漬けと、お勧めの肴をのせて貰うことにした。
「畏まりました。ご用意いたしますのでお待ち下さい」
 暫くして料理が運ばれてきた。刺身、天麩羅、吸い物に漬け丼だ。刺身と天ぷらには、イカのほかにクロダイやカレイなどの瀬戸内の海の幸が賑やかに盛り付けられている。漬け丼にはイカとマグロがのせられていた。赤と白、緑が鮮やかに器を彩る。合掌してから箸をつける。
 まずは刺身に箸をつける。イカの身を挟んでいる箸が透けて見える、新鮮なうちに捌いた証拠だ。コリコリした食感が心地よく、噛めば噛むほど甘い。のど越しも良く、つるっと飲み込める。次に天ぷらをぱくり。味はもちろんのこと、触感が楽しい。サクサクした衣の軽い食感と、イカの肉厚な食感が同時に味わえる。最後に漬け丼をぱくり。醤油の辛さが食欲をそそる、刺身より身がとろっとしているのではないか。刺身と同じ生の肴なのに、舌触りが変わって飽きがこない。
「どれも美味しゅう御座います」
 満足げに笑みを浮かべて。優雅な仕草で全て美味しく平らげるのであった。

 食事を終えた叶葉は、土産物屋に足を運んでいた。
「皆へのお土産は如何致しましょうか」
 干物や塩辛などを手にとっていた。土産にできる、日持ちのする、いい食べ物はないだろうか。迷った末に店員に声をかけてみることにした。
「日持ちがするものは御座いませんか」
「そうさね、せんべいはどうかね。食べてみ」
 店員が試食用の煎餅を差し出してくれた。海老やタコなどが押し潰されたように平たく広げられた煎餅だ。魚の煎餅にはゴマが振られている。受け取り食べてみれば、
「干物とはまた違った味の深みが御座います」
 カリっと音をたて割れるせんべい。香ばしく焼けていて、口の中で軽くバリバリと砕けていく、干物より食べやすい。作り方を聞いてみれば、タコや海老を味つけしながら煎餅と同じように焼いて作ったものだという。海の幸と味醂のような甘みが口の中に広がる――美味しい。
「此れも頂きましょう」
 微笑を浮かべる。お食事への御礼を兼ねて、多めに買っていくことにした。沢山買い物をする事がこの地の復興に何より役に立つのだから。

「そろそろ月が昇ってきた頃合に御座いましょうか」
 露天風呂に向かう叶葉。湯着と浴衣は持参したものを使うことにした。旅館の備え付けの衣類を確認したが、残念ながら叶葉の豊満な体がおさまる大きさのものはなかった。湯着を身に纏い、露天風呂に踏み込めな。
「まあ……」
 思わず声をあげてしまった。目の前に大海原が広がる。海と温泉の境目は岩で仕切られているのみ、遮るものはない。まるで海に入るような開放感がある眺望だ。身体に湯をかけて清めてから、湯舟につかる。ふうと声が漏れる。暖かい、今日一日の疲れがとれるようだ。
 今日は一日、色んなことがあった。厳島神社をお見舞い参拝し、縁日も廻った。妖怪変化を倒した後は、タコ、イカ料理を堪能した。振舞った料理も、とても喜ばれた。沢山の笑顔をもらった。お見舞いに来たのに、かえって力を貰ったかもしれない。
「楽しい時間をいただき、御礼申し上げまする」
 見上げた月は真ん丸で。まるでにっこり微笑み返すよう。暖かい湯に肩までつかり叶葉は心行くまで羽を伸ばすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

タビタビ・マタタビ
\イカさん!/
必殺の巨大剣で真っ二つ!
また美味しそうなものを斬ってしまった……

それじゃあ旅館にゴー!
今度は何にも邪魔されずに辿り着けたよ、ふう。

イカ料理!
どの料理もおいしそうで迷う~。けど、ここはやっぱり……
\イカ焼き!/

焼きたてをいただくよ! さっきのたこ焼きで熱々耐性が付いたからね!
ぱくっ。
…………
\あつい/
やっぱり熱い! でも美味しい!!(落ちそうになるほっぺたを両手で押さえる)

イカの他にも海の幸!
お魚だとアジが好きかな。
それとこれは……むむむっ(ワカメを見つけてにらみ合う)(不倶戴天の敵)
えーい、ボクが食べちゃえばボクの勝ち! ワカメなんかに負けないぞ!

※ツッコミ、連携OKです



 \イカさん!/\ネコさんじゃなイカ!/
 両手を挙げ見詰め合う二人。互いの出方を伺っている。
「あまねく勇者たちの魂よ、剣に宿りてボクに力を!」
 先に動いたのはタビタビ・マタタビ(若き猫黒騎士・f10770)だ。まばゆく輝く金色の姿に変身し、巨大化した《ゆうしゃのつるぎ(仮)》でズパッと一刀両断!
「また美味しそうなものを斬ってしまった……」
 カチンっ。納刀をするタビタビ。
「ひどいじゃなイカ~~~……」
 どうと音をたて巨大イカが崩れ落ちた。

「それじゃあ旅館にゴー!」
 空に向け拳を突き上げる。戦いは全て終わったのだ、あとは旅館で寛ぐのみ。軽快な足取りで向かう。暫くして、何事も無く宿に到着した。
「今度は何にも邪魔されずに辿り着けたよ、ふう」
 額の汗をぬぐい、安堵の息をつく。ワカメの襲撃はなかったし、苛められた亀も見つからなかった。ふつうに宿にたどり着くことができたのだ。それもそのはず、旅館までの道のりは誰かが綺麗に掃除していた。同じネタは……もとい、同じ過ちは二度と繰り返してはいけないお約束なのだ。

 部屋に荷物をおろし食堂に向かう。倒したイカを食べるためだ、新鮮なうちに食べるのが一番美味しいんだから仕方ない、そう食いしん坊じゃないんだから。
「イカ料理! どの料理もおいしそうで迷う~」
 目を輝かせ、みてまわるタビタビ。舟に盛られた刺身、イカの姿焼き、てんぷら、煮物、ご飯など豪勢な料理が所狭しと並べられている。好きなだけとって食べて良いのだという。大きなイカが採れたあとの大盤振る舞いだ。海の幸の美味しそうな香りが辺りに漂い、食欲を刺激する。さて、どれから食べようかな。
「けど、ここはやっぱり……」
 \イカ焼き!/
 両手を挙げて万歳! 食べるならやっぱりイカ焼きだ。皿に山盛りに詰まれたイカ焼きを1本手にとる。表面がバリッとこうばしく焼け、ふわっと蒸気があがっている。ほっかほかの焼きたてだ。
「焼きたてをいただくよ! さっきのたこ焼きで熱々耐性が付いたからね!」
 もうねこ舌は卒業なんだ。大きな口をあけ、ぱくっ。
「…………」
 ぞわわわっ、熱さが体を駆け抜けるようだ。逆毛だった尻尾をピンとたて、両目をぎゅっと瞑りぷるぷる身を震わせている。大丈夫だろうか?
 \あつい/
 両手を挙げて万歳! ほふーっと幸せそうな息を漏らす。
「やっぱり熱い! でも美味しい!!」
 落ちそうになるほっぺたを両手で押さえ、身悶える。顔には満面の笑みを浮かべ、ご機嫌に尻尾をぱたぱた振って。ああ、熱い食べ物って美味しい。今まで怖がっていたのはなんて勿体無かったんだ。残りのイカ焼きに、ぱくりとかぶりつく。熱いものでも食べられる幸せをかみ締めて。

 イカの他にも海の幸! イカ焼きを食べ終わったタビタビは、再び料理を見てまわっていた。次は何を食べようかな。
「お魚だとアジが好きかな」
 舟の上できらきら輝く刺身に箸を伸ばし、皿にとりわける。アジが良いからアジなんだ。駄洒落じゃないんだよ。醤油をかけ、一切れぱくり。
「これこれ! 美味しい!!」
少し旬は過ぎているけど、まだしっかり脂がのっていて口の中で蕩けるようだ。
「これは……むむむっ」
 隣には海草の山、ワカメだ。これは不倶戴天の敵! さっきはよくも巻きついてくれたな! 再び尻尾を逆毛だてピンとたてる。思わずシャーッと吼えてしまいそう。
「えーい、ボクが食べちゃえばボクの勝ち! ワカメなんかに負けないぞ!」
 アジの上にどーんとワカメをのせる。思い切ってたっぷりよそったのだ、ワカメの山が出来ていた。
「アジとワカメ……一緒に食べたらどうなるんだろう」
 好きなものと、永遠のライバル。どちらが強いかといえばきっと好きなものだ。アジにワカメを巻き、醤油をたらしてぱくり!
「ん! 美味しい!!」
 ワカメをコリコリ噛み砕くと、アジのとろっとした食感が口の中に広がる。この食感、癖になりそう。アジと一緒ならワカメも幾らでも食べられそうだ!
「こうなったら、いっぱい退治してあげるんだ!」
 タビタビのワカメ退治は止まらない、山に盛られたワカメをたっぷり食べ尽くすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

篝・燈華
まずはじゅわっと、イカさんを倒すよっ(狐火)
輝いていた君のことは、忘れないんだよ……

気を取り直して、イカさんを美味しくいただくよー
やっぱり、ここはイカ焼きだよね!
イカさんの秘伝のタレも加えて、ぱりぱりの姿焼きにして

それと、さっきのタコさんも加えてもちもちの皮で大阪風にもしてみるんだ
名付けて『イカさんとタコさんのマリアージュ』!
微妙に違う食感も楽しみつつ、口の中で踊る食材に舌鼓を打つんだよっ
「こ、これは深海の玉手箱だよー!」

たっぷりご馳走を楽しんだ後は、お風呂でのんびり
お月様を見上げながら、楽しかった一日を振り返って
明日はどんな日になるのかな、わくわくしながらぱっと両手を広げるんだ
\イカ焼き!/



 狐火の中、大空に向け両手――触腕を突き上げ、雄たけびをあげた君。
 \イカ焼き!/
 焼かれる運命を知らなかったのか、否、知っていたのかもしれない。それでも今を楽しんで、今を生きる。じゅわっと焼きあがる、最期の一瞬まで。
「輝いていた君のことは、忘れないんだよ……」
 キラリと輝く涙を拭う篝・燈華(幻燈・f10370)。ロックな生き様に敬意を示しつ、こんがりと焼きあがった巨大イカに合掌するのであった。

 気を取り直し、美味しいものを食べよう! 旅館の部屋に荷物をおろした後、庭を借りて料理するんだ。
「イカさんを美味しくいただくよー。やっぱり、ここはイカ焼きだよね!」
 七輪で火をおこし始める燈華。炭を入れ、さっき作ったばかりのイカさんうちわを使ってぱたぱたぱた。ごうと火がつき燃え上がる。網をのせたら準備万端だ。
 次はイカさんの支度だ。切れ目を入れたイカを湯に通し、用意しておいた七輪にのせる。
「仕上げはイカさんの秘伝のタレだよ!」
 ぱりっぱりに焼き上げるんだ。タレを何度も重ねてかける、かけられる度に炭がじゅうじゅうと音をたて、こうばしい香りが漂う。身がぷっくり膨れ、表面がこんがりぱりぱりに焼きあがった。
 焼きたてを、ぱくっ。
 \イカ焼き!/
 両手を挙げて万歳! 肉厚で歯ごたえのあって美味しい、タレとの相性も抜群だ。秘伝のタレというだけある。大空に両手を突き上げ輝いていたイカさんが脳裏によぎる。あのイカさんのように最後の最後、足の先っぽまで丸ごと全部楽しく美味しく食べ尽くそう。イカさん……ご馳走様だよっ。
 タコ足も焼いてみよう。七輪にのせてじゅわっ!
「タコさんも美味しいんだよ!」
 タコさんはイカさんより弾力があり、ぷりぷりしている。イカさんは甘いけど、タコさんはうまみがぎゅっと詰まっている気がする。同じ海に住んでいるものたちだけど、食感や味が違ってとっても楽しい。

 次は大阪風のイカ焼きを作ろう。でも、イカさんだけじゃなくて、
「さっきのタコさんも加えてもちもちの皮で大阪風にもしてみるんだ」
 タコさんも入れよう。イカ焼きもタコ焼きも美味しかったから一緒に食べたらもっと美味しいはずなんだよ。
 七輪に鉄板をのせ替える。タコさんとイカさんに軽く熱を入れてから一旦取り出します。混ぜておいた生地を流し込み、タコさんとイカさんをのせ、焼けるまでにイカ・タコ踊りを踊ります。くねくねくねりん☆ミ 生地が焼ける臭いがしてきたら、ぽんっとひっくり返します。押さえつけながらじゅうじゅう焼き上げれば完成です。
「名付けて『イカさんとタコさんのマリアージュ』!」
 2つのぷりぷり食材が肩を並べる卵焼きをさっそく、ぱくり。
「こ、これは深海の玉手箱だよー!」
 ぱあああっと顔を輝かせる。燈華の周りにぽんぽんぽんと至福の花が咲いた。感動が体から溢れ出る、玉手箱から出る煙のように。今まで経験したことが無い食感なんだよ! イカさんはむにむに、タコさんはぷりぷり、生地はもちもち、微妙に違う食感も楽しみつつ、口の中で踊る食材に舌鼓を打つんだよっ。

 たっぷりご馳走を楽しんだ後は、お風呂でのんびり。
 大海原に浮かぶ、まんまるお月様。湯気がふわふわ浮かぶ湯につかり、岩に身を任せてまったり。一日、色んなことがあったよね。イカの絵柄のうちわを作って、鹿さんと遊んだ。鹿さんに大事なお揚げさんをとられそうになったけど、イカ踊りをして仲良くなったんだよ。その後、タビタビくんとタコ焼きを作って食べたんだ。あつあつのたこ焼き、美味しかったな。タビタビくん、ちょっと熱そうだったけど、美味しく食べられてよかったんだよ。夕ご飯にはイカ焼きも作ったんだ。姿焼き、大阪風、どっちのイカ焼きも美味しくて、おっとよだれが……。くいっとよだれを拭う。
「楽しかったな。明日はどんな日になるのかな」
 わくわくしながら、ぱっと両手を広げるんだ。
 \イカ焼き!/ 

大成功 🔵​🔵​🔵​

フロッシュ・フェローチェス
宝海院・棗(f02014)と連携
協力しての突進攻撃だ。一瞬遅れでアタシもUCを打ち込むよ。
……何でスピードが落ちてないかって?そりゃ海鮮料理もちゃんと楽しんでるし。(料理を手に格好つけ)

さてそれじゃあ本格的に食べるとしよう。まずは丸々一匹のイカ焼きから――大阪風のも頼んでみるか。
いか飯や握り寿司も外せないね。
浜焼きも確り貰っていこう。ここまで新鮮なのは中々食べれないしな。
そして宝海院が頼んだ料理とシェアしつつ楽しんでくとしようか。面白いアイデアも出してくれたな……美味しくいただこう。
おっと、他にも海産物があるんだな。イカと合わせて海鮮丼でも……飲み物のオレンジジュースが進みそうだ。
※アドリブ可


宝海院・棗
【フロッシュちゃん(f04767)と】
【倒す】
ラバーボール形態で超高速回転しながら突進だよ!

イカ倒したらフロッシュちゃんと一緒に料理を食べるよー。
天ぷらおいしいなー!あとゲソ焼きもおいしそう!あ、タコ飯やタコ焼きもある!
そうだ、タコやイカに衣をつけてプレスすることでせんべいっぽくするのもどうかな?
フロッシュちゃんとシェアしながら楽しんじゃおう!飲み物はレモネードとグレープソーダがいいかな



「……幾ら戦っても何でスピードが落ちてないかって? そりゃ海鮮料理もちゃんと楽しんでるし」
 すかさずエネルギーチャージ! イカ足をバリっ! カメラ目線でカッコよくキリっとキメるフロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)。
「その足……ひぃ! 勝手に足を食べるんじゃなイカ!」
 足が1本足りない。気付いた巨大イカが悲鳴をあげる。フロッシュの動きがあまりにも速すぎて、言われるまでもぎとられた事に気付いていなかったのだ。
「私も後で食べるんだよ! その前に、素敵な私の特技を見せてあげる!」
 鉱石の体をゴムで出来た球体――ラバーボールに変え、突撃する宝海院・棗(もち・ぷに・とろり。・f02014)。転がる速さは疾風の如く、胴を貫かんばかりに突き刺さる。
「じゃあアタシもそろそろトップスピードで行くよ」
 ――デバイスゴーグル分析完了、メカブーツ機動、機械ブーツ可変完了。加速式励起。
「目視なんてさせると思う? ――飛べ」
 一瞬出遅れたかのように見えたが、それは自信があったから。貯めた力を爆発させ即座に加速し、追いつき、追い抜いて、神速の蹴撃を炸裂させる。
「何がなんだか解らなイカ~~~!」
 瞬く間に叩き込まれた連撃に、有無を言わさず吹き飛ばされ爆発四散する巨大イカ。大輪の花火が夕空に打ち上げられた。

 部屋に荷物をおろし食堂に。そこには豪華絢爛な料理――呪術法力を駆使して作られた洋食風の料理など珍しい逸品も含め、所狭しと並べられていた。好きなだけとって食べて良いのだという。大きなイカが採れたあとの大盤振る舞いだ。海の幸の美味しそうな香りが部屋中に漂う。
「さてそれじゃあ本格的に食べるとしよう」
 どの席に着こうか、見渡すフロッシュ。両手に山盛り料理を持っている。
「フロッシュちゃん、一緒に料理を食べない?」
 ひょっこりと顔を出す棗。同じく両手に山盛り料理を持って。
「宝海院もたっぷりとってきたんだね。いいよ、一緒に食べよう。とってきたのをシェアしない?」
「いいよー! シェアしよう!」
 即決だった。1人で食べるより、2人で交換するほうが色んなものを食べられる。同じ席につき、貰ってきた料理をずらり並べて、いただきます。

「まずは、丸々一匹のイカ焼きからだな」
 イカの姿焼きを摘み、かぶりつくフロッシュ。皮はパリっと焼け香ばしい、むにっとした身を噛めば噛むほど甘い味が口の中に広がる。
「胴も良いけど私はこれかな。ゲソ焼きおいしい!」
 ゲソ焼きにかぶりつく棗。ゲソは胴より一層香ばしく歯ごたえもある。引き締まった甘い身をしっかりとしっかりかみ締める。
「ゲソ焼きも良いよな。でも、イカ焼きと言えば大阪風のも忘れちゃいけないな」
 フロッシュの箸が大阪風イカ焼きに伸びる。摘んでぱくり。むちむちしたイカの身を包み込む生地の独特のもっちり感が癖になる。
「大阪風のイカ焼きって粉物でしょ? 粉物だったらタコ焼きも負けてないよ!」
 楊枝で刺し、ぱくっとほおばる棗。焼きたてで熱い、自然とほふほふと息が漏れた。表面はカリッと中はトロッと、生地の中に潜むタコはぷりぷりで、それぞれの食感が楽しい。甘辛いソースがその美味しさを一層引き立てている。
「粉物の後はご飯が欲しくない? ……いか飯、いや、握り寿司も外せないね」
 迷うフロッシュ。もっちりしたいか飯か、あっさりした寿司か、どちらから食べよう。
「あ、ご飯といえばタコ飯もあったんだよね。忘れてた」
 そういえばタコ飯をとってきていたんだ。思い出した棗は茶碗を手にとる。
「そのタコ飯、宝海院が貰ってきたのか。いつの間にかアタシがとってきたんだと思ってたよ。
 あ、そうだ、浜焼きも貰ってきたんだよ。ここまで新鮮なのは中々食べれないしな」
 サザエの身を楊枝でついて取り出し、口に放り込むフロッシュ。とれたてのサザエを焼いただけある、易々全ての身がとれた、新鮮でなければ途中で身が切れていただろう。コリコリした食感と、独特のほろ苦い味が口の中に残る。口直しに海老を剥き始める。
「そうだよね。とれたてをそのまま焼くなんて、海の近くに住んでないとできないよね。
 あっ、この天ぷらおいしいなー!」
 イカの天ぷらをぱくり。サクサクの衣に包まれた甘いイカに舌鼓をうつ棗。次はタコ飯にのせてぱくり。イカタコ天丼にして食べる。サクサクの天ぷらに、ふっくらご飯が合わさり一層箸が進む。

 あっと言う間に平らげてしまった。山盛り盛られていた料理が、もう一皿もない。

 再び新たな料理を求め、連れ立ち歩きまわる2人。
「そうだ、タコやイカに衣をつけてプレスすることでせんべいっぽくするのはどうかな?」
 ふと思いついたことを口にする棗。
「面白いアイデアを出してくれたな……さっきそういう機械がなかったか」
 プレスできるような機械の前を通り過ぎた気がする。どこだったか、フロッシュが来た道を戻ろう振り返ったところに、
「おっと、他にも海産物があるんだな。イカと合わせて海鮮丼でも……」
 刺身の舟が置かれていた。いつの間にか料理が追加されたのだろう。イカにマグロ、アジなどの肴や、ワカメや昆布などの海草が盛り付けられている。白米にのせれば豪華な海鮮丼が作れそうだ。
「丼物があればオレンジジュースが進みそうだ。飲み物も貰っていこうか」
「レモネードとグレープソーダ貰っていこうかな。スッキリするよね」
 2人の夕食はこれからだ! まだまだ食べるつもりで料理を見てまわるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シン・バントライン
クロウさん(f04599)と

UCを展開し、包丁を持った蛇竜と騎士にイカを捌いてもらう。

風呂の後は卓球勝負。
「やったこと無いけど絶対勝つ!死に晒せぇ!」
(ダイス判定で勝敗を希望)

旅館でイカ焼きや刺身を頂きつつ酒を飲む。
「イカって刺身やとなんか甘いよなぁ。調理法変わっただけで何でこんなに色んな味すんのやろう?」
目の前に座る知り合ったばかりのイケメンも見方を変えれば随分味わい深い人なのだろうな、と友人になりたく思う。
「暴き暴かれで繋いでくのが友情やんな」

「ちょっと過ぎてしまったけど中秋節や。月を愛でるにはええ場所やな」
一年の内で最も美しいといわれる月を盃に映して乾杯を。
数奇な縁に、これからの縁に。


杜鬼・クロウ
シン◆f04752
アドリブ◎

虹駆で跳躍し格好よく十字斬りで倒す

一風呂後に卓球勝負
ハ、卓球ヤったコトねェの?…俺もだ
絶対負けねェし
お前殺意高すぎだろ!(サーブぶっ飛んだり
俺の渾身のスマッシュ、食らえやオラァ!

酒に舌鼓
色が透明の良いイカ
刺身とよく合う

シンは料理…あァ(察し
イカ焼きは俺が焼くわ(手際はいい
面白ェよな、同じイカなのにこんなに変わるモンなんだなァ(箸でつつき

お前との出会いは依頼で偶然だったが
今日だけでシンの色んな一面見れて凄ェ楽しかったわ
でもまだ、俺の知らないお前があるンだろ?
(仮面の下の素顔ってヤツが
…いつか、見せてくれや(暴いてみろと言われるか?

ン、ご尤も
シンのお猪口に酒注ぎ月に乾杯



 《虹駆》を履いた杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)が風の魔力を纏い宙に跳ぶ。
「イカァ! 三枚卸になりやがれェ! ――来たれ、我が剣は抜けば玉散る氷の刃っ!」
 黒魔剣《玄夜叉》を横一文字に抜きつけ、間髪入れず大上段から切り下ろす。その速さは刀身に施されたルーンのきらめきが十字の残像を生みだすほど。
「ひええええええっ冷え冷えじゃなイカ……ァッ」
 ぴききききき、ぱっきーん!
 瞬く間に巨大イカは巨大な氷塊に変わり果てた。炎を魔力を反転させ、剣の刀身を絶対零度に凍てつかせ斬りつけたのだ。
「まァた、つまンねェものを斬っちまったぜェ……っ、この台詞、前に誰か言ってタだろォが! 二番煎じかよォ!」
 吼えるクロウの後ろで、シン・バントライン(逆光の愛・f04752)が喚んだ蛇竜と騎士が包丁でツンとイカ氷をつつく。
 ぱっりーーん! 軽い音を残し、巨大イカは粉微塵に砕け散った。

 妖怪変化をサクっと討伐した後、旅館に行き、ひとっ風呂浴びた2人。
 クロウは菖蒲の花咲く菖蒲色の浴衣に身を包み、白い帯を締めて。
 シンは桔梗の花咲く深青色の浴衣に身を包み、薄水色の波柄の帯を締めて。
 涼しげな装いに着替え、部屋へと続く廊下を歩いていた。
「こういう旅館だったら、やっぱアレがあるンじゃねェか」
 噂をすればなんとやら。誰が持ち込んだのだろうか、古ぼけた卓球台が踊り場の片隅に置かれていた。網が張られていて、球もある。ラケットは見当たらないが、何故か非常に硬いわらじが転がっていた。これを使えということだろうか。
「へえ、卓球台あるんや。俺やったこと無いけど」
「ハ、卓球ヤったコトねェの? ……俺もだ」
「クロウさんもやないか。じゃあ勝負せーへん?」
「問題ねェよ! 絶対負けねェし」
「アホか、俺が勝つっちゅーねん! 3ゲームマッチや!」
 売り言葉に買い言葉、互いに譲らずぶつかり合い、2人は卓球勝負をすることにした。
「ほな、ちょっと練習しよ」
 わらじで球を叩き、カツンカツンと弾ませるシン。
「――死に晒せぇ!」
 雄たけびとともに叩き込まれたシンの弾丸サーブが突き刺さる。コートで跳ねた球はクロウの顔面横を通り抜け、後ろの壁にぶっささる。――カツーンカツン……。重力を思い出したかのように、めり込んだ球が床に転がった。
「お前殺意高すぎだろ!」
 呆気にとられるクロウ。球の音に正気に戻って突っ込んだ。
「オイオイ初心者には優しくしろよー、バントライン君よォ」
「いやいや初心者はおとなしくしとけーて言うやないか、杜鬼さんよぉ」
 ずごごごご! 燃え上がるような熱い闘気を背負い、睨みあう2人。交わる目線がバチバチと火花をあげる。やる気、否、殺る気満々だ。

 こうして、仁義なき卓球対決が始まった。
 2人とも卓球は初めてだが、猟兵には日ごろの戦いで磨いた運動能力がある。すぐにラリーが続くようになった。フェイントや催眠術などを活用した魔球が飛び交い、見切り勘に任せてカウンターをかけたり捨て身の一撃で打ち返す、罵声をあげながら身につけた全ての技能を駆使したギリギリの戦いが続いた。
「いてまうぞ、必殺ドライブや!!」
「俺の渾身のスマッシュ、食らえやオラァ!」
 肘を振り抜いたクロウ、わらじで球の真後ろをしばき倒す。――パンッ! 短くはぜるような音がした。卓球台にたたきつけられた球が猛烈な速度でコート外に飛び出していく。
「―――っ!!!!」
 横っ飛びに飛んで手を伸ばすが、届かない。倒れこむシン、その手の先に無常にも球が転がった。ぐっと拳を握り勝利を噛み締めるクロウ。
 結果:1対1で3ゲーム目までもつれ込み、接戦の末クロウが勝利を収めたのであった。

 汗だくになった2人は再び風呂に入りなおし、1室に集まり涼んでいた。
 こぢんまりとした和室だが、障子を開ければ瀬戸内海が見える。開放感たっぷりの眺望が良い部屋だ。もうすぐ月も顔を出すだろう。闇に閉ざされる前に行灯に火を灯しておく。薄暗い室内が優しい灯りで満たされた。
 そうこうしているうちに、頼んでおいた膳が運ばれてきた。イカ焼きやイカ刺しなどの料理と酒がのせられている。酒宴の始まりだ。
 小さな七輪の上でぱちぱち音をたてるイカ焼き。焼きたてを食べられるよう配慮してくれたのだろう。つけ焼きのタレも添えられている。
「シンは料理……」
 即座に事情を察するクロウ。あからさまに目線を逸らされた、聞かんとってと顔に書いてあるじゃねェか。
「あァ、イカ焼きは俺が焼くわ。お前に任せたらなンか焦げそうな気がしたから俺に任せとけや」
 ひっくり返し、つけ焼きのタレを塗る。これくらい簡単なものならお手の物だ、手際よく焼き上げる。
「へえ、器用やな。もう食べられるんか?」
 物珍しそうに、まじまじと見つめるシン。まさかこんなに料理が出来る人だったとは。
イカの身が美味しそうにぷっくり膨らんできた。炭に落ちたタレがじゅうじゅうと音をたて、辺りに甘辛い臭いを漂わせる。見ているだけで、食欲が湧いてくる。
「そろそろ食えるかァ、始めねェ?」
 手でお猪口を作り、くいっと持ち上げた。

 まずは、お猪口に酒を注ぎ乾杯!
 きゅっと飲み干す。酒が喉を通り抜けると、ピリッと痺れるような刺激が走り、爽やかに駆け抜ける。後をひかず、キレが良い。美味い。一息ついたところで食べよう。
「イカって刺身やとなんか甘いよなぁ。調理法変わっただけで何でこんなに色んな味すんのやろう?」
 イカ刺しに舌鼓をうつシン。さっき食べたイカ焼きとの違いに驚きながら。
「面白ェよな、同じイカなのにこんなに変わるモンなんだなァ」
 焼き立てのイカ焼きを箸でつつくクロウ。その姿をじっと見つめるシン。目の前に座る知り合ったばかりのイケメンも見方を変えれば随分味わい深い人なのだろうな。
「どうしたァ、俺の顔に何かついてるゥ?」
 視線に気付いたクロウ。イカを口に放り込み問いかければ、
「いや、なんでもあらへん」
 何事も無かったように目線をイカに落とし箸をつけるシン。噛み締めながら思案していた。その深みを味わえる仲、友になりたいと願って良いものだろうか。
「そうか、まァ良いけどな。お前との出会いは偶然だったが、今日だけで色んな一面見れて凄ェ楽しかったわ」
 上機嫌で盃を屠るクロウ。風呂で、卓球で、調理で――特に卓球はお互い吐いてはいけないものを吐いた気がするのだが。ともかく、共闘するだけでは見えなかった姿を多々知ることが出来た。
そもそも2人の馴れ初めは、灯籠流しを襲撃する無粋な輩の討伐に向かった時のことだ。首謀者を追い詰めた際、共闘したのが、覆面で顔を覆った黒衣の官服姿の男――シンだった。依頼で触れ合うことなど多々あることだが、何故か興味が沸いた。しかも、互いにだ。そこで、体育館裏に集合し、馳せ参じることにしたのだ。
「でもまだ、俺の知らないお前があるンだろ?」
 膝に肘をつき、その上に顎を乗せ、目の前に座る男を見つめた。空いたお猪口を突き出して。隠れたモノ、仮面の下の素顔ってヤツを抉り出すとでも言わんばかりに。
「……いつか、見せてくれや」
 ニイと笑う。そう易々と通らねぇだろ、暴いてみろと言われるか? 内心密やかに身構える。
「暴き暴かれで繋いでくのが友情やんな」
 突き出されたお猪口に酒をなみなみと注ぐシン。美味い酒があれば不味い酒もある、酌み交わす酒の味は口をつけなければ解らない。互いにそれを望み時を重ねるのなら、いずれ明らかになる情景があるだろう。
「ン、ご尤も」
 くくっと笑み、ポンと膝をうつ。満たされたばかりの盃を一息に呑み干して。これが答えだと言わんばかりに。
「ちょっと過ぎてしまったけど中秋節や。月を愛でるにはええ場所やな」
 フフと微笑を返し、盃を飲み乾す。見上げれば、金の月が夜空を丸くくりぬいていた。
互いのお猪口に酒を注ぎあい、夜空に浮かぶ月――1年の内で最も美しいといわれる満月を盃に映して乾杯を。

 ――数奇な縁に、これからの縁に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
鮮度を保つということも考えて凍らせてしまいます。
なるべく身に傷をつけないように気をつけて。

湯着に着替えたら月代と温泉へ。
一緒に入っても良いということですし、月代も興味があるみたいですが…お湯に浸かって大丈夫かな?
のぼせるといけないので風呂桶の中に水を入れて冷ました温泉を入れて様子見。
気持ちよさそうにしているのを眺めながら私も浸かります。
温泉はやっぱり気持ちいいですね。疲れも吹き飛びます。

温泉から上がったら、イカ料理を楽しみます。
イカ刺しとイカ飯を頂こうかな。
新鮮な刺身は透明で臭みがないし、イカ飯ももちもちとした食感が美味しいです!
他のイカ料理も気になるのですか?ふふ、一緒に選びに行きましょう。



「言の葉のもとに魂等出で候」
 吉備・狐珀(神様の眷属・f17210)は狐火を喚び、青い炎をけしかける。冷たく燃える炎がイカを包みこむ。
「火なのに冷たいじゃなイカッ!? こおるどじゃなイカ!!」
 ぴきき、ぱっきーーーん!! みる間に氷像が出来上がった。
 鮮度を保てるよう、また、なるべく身に傷をつけないよう細心の注意を払って丁寧に。これから食べるものなのですから。

 討伐を終えた狐珀は、仔竜《月代》を伴い旅館の温泉にいた。
 目の前に大海原が広がる。海と温泉の境目は岩で仕切られているのみ、遮るものはない。まるで海に入るような開放感がある眺望だ。
一緒に入っても良いということだったので月代を連れてきたものの……、
「……お湯に浸かって大丈夫かな?」
 ちらりと見れば、月代はフンスンと鼻を鳴らし、海と温泉を交互に見ている。温泉にも興味があるようだが、湯に入れたことがない。
急に湯にいれてのぼせるといけないので、風呂桶の中に水と温泉の湯をいれ、そのなかにそっと入れてみる。
「キュウッ!」
 湯に驚いたのだろうか、小さく鳴いてびくっと跳ねる月代。尾でばしゃばしゃと波をたてせかせかと泳ぎ回っていたが、少し様子を見ているとゆったり泳ぎ始めた。湯に慣れてきたのだろう。今は気持ち良さそうに泳いでいる。
 安堵の息を吐く狐珀。風呂桶を湯に浮かべ、自分も湯につかる。湯が全身を包み込む。程よい熱さに体が溶けていくよう。戦いなどにより知らず知らずの間に体に貯まっていた緊張が全て緩んでいく。
「やっぱり気持ちいいですね。疲れも吹き飛びます」
 両手で湯をすくってみれば、手の中に金色の満月が浮かぶ。顔もふわりと自然に緩んで。
「きゅうー……」
 月代も風呂桶のふちに頭をのせてくつろぎモードだ。
 風呂桶の中にも丸い月、月風呂の中でまったりゆっくり羽を伸ばした。

 温泉から上がったら、次はやっぱりご飯。イカ料理を楽しみましょう。お気に入りの桔梗柄の浴衣に着替えて食堂に。舟に盛られた刺身、イカの姿焼き、てんぷら、煮物、ご飯など豪勢な料理がずらりと並んでいる、大盤振る舞いだ。好きなだけとって食べて良いのだという。海の幸の美味しそうな香りが辺りに漂い、食欲を刺激する。さて、どれから食べようかな。
 まずは、イカ刺しとイカ飯を。
「月代、もう少しだけ我慢してくださいね」
 肩から乗り出し今にも料理の皿にとびかかろうとしている月代の頭をなでる。撫でられた月代はおとなしく肩にとまりなおす。でも、目線は料理に釘付けだ。月代用に色んな魚の刺身も貰っておこう。山盛りの刺身も加えて、席につき、いただきます。
 まず、肩から月代をおろし、刺身を前に置いてあげる。
「もう食べて良いですよ」
 待ってましたと言わんばかりに、ぱくりと刺身の山にかじりつく月代。
「キュウ!」
 新鮮さが解るのだろうか、がつがつと夢中で食べ始める。
 目を細めて眺める狐珀。私も食べましょう。刺身とイカ飯をぱくり。
「新鮮な刺身は透明で臭みがないし、イカ飯ももちもちとした食感が美味しいです!」
 はっと息をのむ。歯ごたえが違う。甘みも一層濃い気がする。新鮮なイカを使っただけある、とても美味しい。一口あげようと、月代を見れば、しきりにきょろきょろしている。皿はもう空っぽで、視線は並べられた料理に釘付けだ。
「他の料理も気になるのですか?ふふ、一緒に選びに行きましょう」
 ふわりと笑う。愛らしい相棒をひと撫でして。
 席をたち、再び料理を選びに行く。まだ食べていないものは沢山ある、色々食べて楽しもう。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 満腹になるまで食べ尽くした狐珀たちは、みやげ物屋に立ち寄り、和小物コーナーを見まわっていた。
 桔梗の花の髪留めを手にとり、髪の前にかざし鏡で見れば、興味深々に覗き込んでいる月代が写りこんだ。
「欲しいんですか?月代もつけてみますか?」
 ためしに一つ月代の頭にのせてあげる。生え始めの小さい角の間、頭上に咲く花は冠のようだ。邪魔になるかもしれないけど、とても可愛い。
「キュウ!」
 尾をぱたりと振り、ひと鳴き。冠を貰って誇らしげに見える。
「じゃあ、お揃いのを貰いましょうか」
 クスリと笑う狐珀。月代用と自分用の二つの髪飾りを手にお会計に向かう。

 ――共に旅をした記念、この地の思い出に。
照宮・篝
【楽園】まると、カガリと

旅館の部屋で、皆とイカ料理を

イカとの戦いは、二人がいなかったらどうしようかと
温泉は…いつもの風呂では、何も着ないから…他の風呂は、入った事が無くて
二人には、恥ずかしい思いをさせてしまっただろうか
でも、まる
風呂でも言っていたが、えろとは何だ?

今月は、私とカガリの誕生日があった
まる(マレーク)がそれを祝ってくれるらしい、とても嬉しい!
まるがカガリに贈ったという酒も、瓶が綺麗でいいな
甘くて、飲みやすいような、でもジュースとは少し違うような…
何だろう、酸味、というのか
でも、ほかほか、する…あと、ちょっと眠い…

(寝る準備をされそうになるとごねる・最終的に最初に寝落ち)


マレーク・グランシャール
【楽園】
イカ墨を温泉に漬かって落としたら、旅館に戻って部屋で一杯
二人が今月ハタチを迎えた祝いも兼ねて
地酒のつまみは勿論倒したばかりの新鮮なイカ料理
甘い方がいいならカガリに贈った【竜血果酒】も飲もう
ドラゴンフルーツを白ワインに漬けたサングリアだ

しかし‥‥篝が露天風呂に全裸で入ろうとしたのには驚いたぞ
風呂は裸で入るものだが混浴なら話は別
えろについて聞くのも俺だけにしておけ

え、どうしてダメなのかって?
‥‥‥‥お前達、さては酔ってるな?

三人で遊ぶのも、川の字になって寝るのも楽しいものだ
また来年もみんなで来ような

(寝落ちる二人を湯冷めしないよう布団に寝かせたら、幸せを噛みしめつつ自分も布団へ)


出水宮・カガリ
【楽園】

旅館の部屋で、イカ料理を楽しみながら

いや、はや
何でも溶かすイカ墨、強敵だったなぁ
まる(マレーク)がいてくれてよかった

温泉はとても心地良かったが…篝は普段、まるに預けているはずなのだが…?
(疑いの眼差し)
まあ、篝もこれからは、知っておいてくれな

誕生日を迎えて、飲酒解禁、というやつだ
酒というのは、身体が温まるのだなぁ
水のように見えて、水とは違う熱さ?を感じる
まるから貰った【竜血果酒】も開けたいな

何だか、気持ちがふわふわして、楽しいな
まる、まる、篝にちゃんと、えろについて教えてやらないと駄目だぞ
カガリもちゃんとは知らないのだからな

また来よう、なー…(絡み酒からの寝落ち)



「ビリビリするじゃなイカ~~~!!!」
 どっかーーーーーん!!!
「いや、はや。何でも溶かすイカ墨、強敵だったなぁ。まるがいてくれてよかった」
 額の汗ならぬ額のイカ墨を拭う出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)。
「そうだな。二人がいなかったらどうしようかと」
 胸をなでおろす照宮・篝(水鏡写しの泉照・f20484)。
 そして、涼しい顔をしているマレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)。一体何があったのかは居合わせた三人のみぞ知る。

 討伐を終えた三人は、温泉でイカ墨を洗い流し、旅館の部屋で食事をとろうとしていた。
 イカ焼き、イカ飯、刺身など倒したばかりの新鮮なイカを調理した豪華な料理と、ホール状のスイーツが2つ並べられていた。
「これは……」
 首を傾げるかがり達。イカ料理はわかるが、このスイーツはどうしたのだろう?
「二人が今月ハタチを迎えた祝いも兼ねて用意しておいた」
 マレークが頼んでおいたものだ。誕生日祝いといえばケーキじゃないか。
「まる、有難う……カガリは嬉しいぞ」
「まる、祝ってくれるのか……私はとても嬉しいぞ」
 声を揃えて喜んで、ぱあっと顔を輝かせるかがりたち。
 スイーツは、マロンペーストをたっぷりのせたモンブランと、リンゴの甘煮をカスタードムースで包みパイ生地で挟んで焼いたミルフィーユ風ムースケーキだ。2本の蝋燭をたて火を灯す。20本立てたかったのだが、収まりきらなかったので1本で10歳分の計算だ。
「これを、吹き消せば良いのか」
「ああ」
 息を揃え、一息に吹き消すかがりたち。ヤドリガミや神には20年などという年は短くたいした意味を成さない時間なのかもしれないのだが、祝わずにはいられない。
「20歳おめでとう、かがり」
 無二の友と女神の記念すべき20年目なのだかから。今日という日に祝福を。至福の時を見守って。

「20歳になったので飲酒解禁、というやつだ。まるから貰った《竜血果酒》も開けたいな」
 ガラス製の切子徳利を取り出すカガリ。赤い液体と果物のようなものが入っている。
「それがまるがカガリに贈った酒か、瓶が綺麗でいいな」
 それを珍しそうに覗き込む篝。表面には猪目文様――魔除けや福を招く意味合いがあるという柄が刻み込まれている。堅牢無比なカガリを想いマレークが心をこめて彫ったのだ。
「中身はドラゴンフルーツを白ワインに漬けたサングリアだ。地酒より甘いぞ。甘い酒のほうがいいなら開けてやろうか」
「最初に呑む酒は、まるの酒が良い」
 嬉しいことを言ってくれる。封をきれば甘い香りが辺りに漂う。元は白ワインだが、赤色に染まっている、氷砂糖と果汁によるものだ。
 3人分、グラスに注いで乾杯を。
「酒というのは、身体が温まるのだなぁ」
 水のように見えて、水とは違う熱さのようなものを感じるカガリ。
「甘くて、飲みやすいような、でもジュースとは少し違うような……」
 甘い味の後に残る刺激をどう表現して良いものか悩む篝。
「何だか、気持ちがふわふわして、楽しいな」
「何だろう、酸味、というのか。でも、ほかほか、する……」
 ふわふわと、ほわほわと、柔らかな笑顔を浮かべて。甘く、蕩ける美酒を堪能する。

「しかし……篝が露天風呂に全裸で入ろうとしたのには驚いたぞ」
 1杯目を飲み終えて、地酒を片手にイカの刺身をつつきながら切り出すマレーク。
「温泉は……いつもの風呂では、何も着ないから……他の風呂は、入った事が無くて……」
 イカ焼きを箸でつつきながら、言いよどむ篝。全て脱いで露天風呂に入ろうとしたら、まるとカガリがとんできて湯着を着せられた、理由は後で話すといわれていたが。
「温泉はとても心地良かったが……篝は普段、まるに預けているはずなのだが……?」
 イカ飯を食べながらマレークを見るカガリ、疑いの眼差しを向けている。ちゃんと世間一般常識を教えてくれているのだろうか、風呂に入れているのだろうか、と。
「風呂は裸で入るものだが混浴なら話は別」
「まあ、篝もこれからは、知っておいてくれな」
 端的に伝えるマレーク。たしなめるカガリ。心配する男二人。世間知らずなのは仕方がない、繰り返さないよう一つづつ根気よく伝えていくしかない。
「ああ……気をつける」
 そういうものなのか……素直に聞き入れる篝。もしかして、二人には、恥ずかしい思いをさせてしまっただろうか。

 空っぽの皿が目立ってきた。宴もそろそろ終盤を迎えようとしている。
「そうだ……風呂でも言っていたが、えろとは何だ?」
 マレークにしなだれかかる篝。頬を赤く染めている。
「まる、まる、篝にちゃんと、えろについて教えてやらないと駄目だぞ。カガリもちゃんとは知らないのだからな」
 マレークの肩を抱くカガリ。その顔は篝に負けないくらい真っ赤だ。
「解った。だが、えろについて聞くのも俺だけにしておけ」
 カガリの手をそっと退けるマレーク。払いのけるのは何度目だろうか、そろそろ面倒になってきた。
「何でまるだけにしか聞いちゃいけないんだ?」
 体を揺らしながら話す篝。まるで舟をこぐように、カクカクと前後左右に揺れ始めた。
「そうだ……まるだけにしか聞いちゃいけないなんてずるいぞ」
 再びマレークの肩を抱くカガリ。マレークの襟を掴み、じっと顔を睨みつける。
「え、……お前達、さては酔ってるな?」
 答える前に、同じことをしつこく聞いてくる2人に違和感を感じた。カガリがこんなに絡んでくるのはおかしいし、篝はゆらゆら揺れている。
「まる、面白いことを言うな。カガリが酔っているわけないだろ」
 マレークの肩をポンポン叩く。ご機嫌に笑っている。ご機嫌すぎるほどだ。
「――――っ。酔ってる?酔うってなんだ?」
 カクンっと大きく頭が揺れた。篝の目は据わっていて、まぶたが今にも閉じてしまいそうだ。
「(完全に酔ってるな)」
 予想を確信に変え、言葉を飲み込むマレーク。酔っていると言っても無駄だろう。初めての酒なら呑むペースがわからなくとも仕方ない、微笑ましい姿だ。
「そろそろお開きにして寝るか」
 絡んでくるかがりたちをそっと振りほくマレーク。
「いやだ……まだ寝ないぞ」
 片付けようと腰をあげかけるマレークの足にくっつく篝。嫌だ嫌だと首を横に振って。
「……」
 そっと優しく頭をなでるマレーク。心地よさそうにとろんと蕩け、そのままカクっと意識を失う篝。安心して寝付いたのだろう。
「まる、まだ話が終わって無いぞ」
 座れと言わんばかりに、マレークの浴衣の袖をぐいぐいひっぱるカガリ。
「ああ、何の話だ」
 腰をおろすマレーク。こっちのカガリはまだ元気なのか。倒れこんだ篝をそのままにはしておけないので、引き寄せ膝に頭をのせておく。
「まる、篝だけずるいぞ」
 カガリも膝に頭をのせてきた。マレークの顔を見上げながら、機嫌よく語り始める。
「まる、今日は良い日だったな。
 鹿と遊ぶつもりが鹿に遊ばれた、鹿は恐ろしい生き物だ。何でも食べてしまう……。
 篝と砂で門を作った。まるがつけてくれたなまえ、砂城だ。まるはなんにでも名前をつける、な。
 まるが、やいて、くれた、……たこやきも、たべた。
 聞いているか、まる。あのやりは、カガリが…………った……ものなんだ……だいじにし…………。もう……たこやきなんか……つかっては……ない…………っ。
 あとは、なんだ………………さけだ、あまくて、あつくて……ふわふわで?
 …………うんーー?
 はぁー…………ともか……く、カがり……たの……っっ………………」
 くてん、とカガリの頭が転がる。くうくう寝息を立てている。漸く寝付いてくれたのだ。幸せそうに笑みを浮かべて。
 今日の思いでを語るカガリを相手に、随分と長い間相槌をうっていた気がする。楽しかったというのは同意するのだが……全く、酔うとこうなってしまうのか。金の髪を一度だけふわりと撫でる。

 膳を下げて貰い、布団を敷いてもらった。
 かがりたちを布団に寝かせ一息ついたマレーク。
「また来年もみんなで来ような」
 また来年、次の年も、共に側に居てハレの日を祝おう。かがり達に声をかける。――聞こえては居ないのだろうが。
「また来よう、なー……」
 カガリが返してきた。起きていたのかと顔を覗き込めば、変わらず寝息をたてている。寝言だろう。
 驚かせてくれる。でも、同じ気持ちで居てくれることが嬉しい。明日、起きたら話してみようか。
 かがりたちが湯冷めしないよう布団をかけなおす。どちらのかがりも穏やかな顔で眠り、静かな寝息を立てている。平和な夜がそこにあった。
 かがり達の間、真ん中の布団に潜り込むマレーク。
 3人で遊ぶのも、川の字になって寝るのも楽しいものだ。
 幸せを噛みしめつつ目を閉じるのであった。闇の中でも《楽園》は色褪せることなく輝き栄え続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
【ニコうさ】

『おまかせ』
希望のシーン:露天風呂
1・2章のようなノリで自由に書いていただけると嬉しいです。

■補足
・真面目で礼儀正しく、お作法などはきちんと守る性格
・人間の肉体は無駄に鍛え上げられていてちょっぴりナイスバルク
・親しい相手にはそれなりにラフな態度も取る
・うさみっちの事は「うさみ」と呼び、何かと気に掛けている
・返答に困ったり悪態を吐かれたらたれ耳をギュイーと引っ張るのは
最早手癖になってしまっている


榎・うさみっち
【ニコうさ】

『おまかせ』
希望のシーン:露天風呂
1・2章のようなノリで自由に書いていただけると嬉しいです。

■補足
・ノリと勢いで生きているネタキャラ
・口悪いし態度もでかい、でもヘタレでビビり
・可能なら浮き輪持ち込み
・ニコとは何でも言い合える悪友のような関係
・ちょっかいかけてワーワーするのが楽しいお年頃
・クールにあしらわれたりするとちょっと寂しい



「ニコと」
「うさみの」
「「レッツ3秒クッキング~!!」」
 再び始まりましたお料理の時間です! 今回は3秒で仕上げちゃいます。
「うさみよ、本当に3秒で出来上がるのか」
「うさみ先生にお任せだ! さっそく始めるぞ、勝利に飢えたやきゅみっちの一球入魂! 喰らえー!!」
 ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)の疑問をよそに、さっそく料理に入る榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)。喚び出した《野球服うさみっち軍団》がバットをフルスイング! 巨大イカに釘バットがめり込み、カッキーーーーン!!!
「ほーーーーむらんじゃなイカァッッ!」
 打球が伸びる! 伸びる! 伸びる! おっと、飛来先に待ち構えていた野球服うさみっち軍団がタレをかける! かける! 飛んでるイカにばしゃばしゃかける!!
「甘い、辛い、甘辛いじゃなイカーー!!」
 最後に待ち構えるのはニコだ!
「過去は過去に、未来は我らに――仕上げだ」
 精霊銃《エレメンタル・ワン》の照準をあわせ撃つ! 炎を宿した弾丸が散開しイカを射抜く!
「だいぶ雑じゃなイカーーーー!!!」
 激しい勢いで 燃え上がり、とってもこんがりやけました! イカ焼きの完成です。
「ぴゃっ♪3秒ぴったんこかんかんだ!」
 まごうことなき3秒クッキングでした。おしまい。

 またまた、さっくり討伐を終えた2人は旅館の温泉にいた。服を脱ぎ踏み込めば、目の前に大海原が広がった。海と温泉の境目は岩で仕切られているのみ、遮るものはない。まるで海に入るような開放感がある眺望だ。
「海が俺を呼んでるぜ!」
 台に片足をのせ、その上に肘を置きポーズを決めるうさみ。フェアリーらしい繊細な身体に纏っているのは、セパレートタイプの水着だ。水色の生地に青のボーダーが描かれている。羽や瞳とあわせた涼しげな色合いだ。胸には小さく愛らしいアップリケ――桃色の兎顔が1つ、ちょこんと張り付いている。愛用の浮き輪も忘れてない。赤みがつよい桃色に黄色で兎顔が描かれている浮き輪だ。どの兎顔もバッテンお口をしている。
「うさみよ、秋の海は存外に冷えるぞ。況してやもう夜だ、辞めておくのが懸命だ」
 真面目に止めに入るニコ。精悍に引き締まった、ちょっぴりナイスバルクな身に纏っているのは、ボックスタイプの水着だ。黒い生地には歯車柄が描かれている、本体である懐中時計が一枚脱いだ後の中身だとでも言うのだろうか。普段着と同じくモノトーンカラーでまとめ、同じ赤いリボンをつけている。眼鏡はかけたままだ。
 2人とも8月に開催された水着コンテストで上位に入賞するほどのオシャンティなイケ水着姿である。

「仕切りなおしだ! 温泉が俺を呼んでいるぜ!」
 今度こそ! ぶーんっと湯船に飛んでいこうとするうさみ。
「待て、うさみよ。突然湯につかるのはマナー違反だ。ここは体を綺麗に洗い流してから入るべきではないか」
 湯船まっしぐらなうさみを止め、洗い場に向かうニコ。
「じゃあ、流し合いしないか?
 超一流カリスマ美容師うさみっち様がニコの頭を流してやるぜ!」
 ニコの周りをぐるぐる回るように飛びながら、ついてくるうさみ。
「頭から洗い流すというのか、良いだろう」
 椅子に座るニコ。目を瞑って委ねる。うさみの小さい体でどうやって人間サイズの頭を流すのかという疑問を飲み込んで。湯たんぽを使って如何にかするのだろうなどと思案していると、程よい熱さの湯がざばーっと頭にかけられた。
「ニコー、悪い髪はいねぇか? かゆいところはねぇか?」
 わしゃわしゃと髪がかき混ぜられ、ふわりとシャンプーの香りが漂う。
「ナマハゲか。悪い髪の心当たりは無いし、ハゲている訳も無い。痒みも特には感じない」
 痒いというよりは気持ちがいい。全体的に満遍なく洗っている、強さも申し分ない。なかなか上手いのではないか。
「遠慮なくじゃんじゃん言ってくれて良いんだぜ。
 さぁ出来あがりだ! モデルシュタイン、ヘアスタイルショーの始まりだぜ!」
「此れは、シャンプー追加、泡マシマシ、ボリュームマシマシか」
 うさみの声に目をあけるニコ。鏡に映る姿は、頭が泡まみれになり、普段の倍ほどボリュームアップしているように見える。目を細めまじまじ眺めているのだが、眼鏡が曇ってよく見えないのだ。
「ボリュームアップアフロニコの一丁あがりだぜ! 次は……ダンディにキメるオールバックニコだ!」
「フン……」
 髪を後ろに流された。キリリと顔を引き締め一番イケてる角度でキメる。前髪をあげる機会はなかなか無いのだが、似合っているのだろうか。
「イケニコだ! タラシュタインが出たぞー! じゃあ、今度は……もふもふ系タレ耳ウサニコだ!」
「そろそろ良いか、流すぞ」
 耳の横にも泡がたれているような気がする。うさみの遊びに付き合ってやるのは、これくらいで十分だろう。桶を手にとり頭から湯を被る。
「えー、もう流すのか。まだとっておきのイケてるヘアスタイルがあるんだぜ」
 ぶうぶう言う、うさみ。とても不満げに。
「俺で試さずとも、次は俺がうさみの髪を流してやろう」
 タオルで眼鏡を拭くニコ。漸く見えるようになった。
「ニコが洗ってくれるのか? じゃあ、ニコ美容師のお手並み拝見だ!」
 喜んでいるのか、両手を挙げくるんとまわるうさみ。頭に兎型シャンプーハットををかぶり、ぐいっとつき出してきた。手で湯をすくってかけ、指にシャンプーをつけ、ぐりぐり混ぜてやる。
「ニコー、もっと上、上のほうだ!」
 目をぎゅっと瞑ってゆび指すうさみ。
「上とは、此の辺りか」
 指さしている辺りを混ぜるニコ。こうして大人しくしていれば可愛げもあるのだが。
「ぴやっ! ニコー! 痛い痛い! シャンプーが目に入ったんだぜ!」
 びくんと跳ね、ごろごろと転がり始めるうさみ。
「うさみよ、其のまま動くな。直ぐ流してやる」
 全く以って思い通りにはならない。思わず苦笑しつつ、手で湯をすくい丁寧に流してやるのであった。

 全身を綺麗に洗い流し、並んで湯につかる2人。心地良い温度の湯だ、ほっとする、疲れが溶けていくようだ。
「ぴゃ~♪あっつい湯が染み渡るぜ!」
 ぷかぷか浮くうさみ。ぽかぽか、気持ちいいのだろう。浮き輪にくったりと体を預けてご機嫌だ。
「そうだな。熱くもなく、冷たくもなく、丁度良い湯だ」
 満足げに同意するニコ。本体が精密機器であるニコが水や湯に入っても大丈夫なものかと悩んだ事もあったが、全くもって問題なかった。人間の身体というものは利便性が高い。
「そして、月が綺麗だな」
 湯の中に月が落ちている。見上げれば、いつの間にか頭上に浮かんでいた黄金の円。優しい光が湯船を包み込んでいる。
「すごい満月だぜ! まるで空っぽの大皿みたいだ!」
 うさみの言葉に溜息をつくニコ。情緒の欠片も在りやしない。
「3秒で焼いたイカがあるが。うさみよ、あれだけ食べても未だ入ると言うのか」
「まだ食いたりねぇ! 余裕のよっちゃんイカでいけるぜ!」
 どや顔で言う、うさみ。このぺったんこの腹が目に入らんかと言わんばかりに、ぽんと叩いてみせる。
 底なしの食欲に呆れるニコ。今に始まったことではないのだが。
 桶に入れたイカ焼きをうさみの前に浮かべる。勿論人間サイズのイカ焼きだ。
「さっそく頂くぜ! この肉厚さがたまらねぇ! タレが効いててうめぇ!」
 皿にのせられたイカ焼きの周りを飛び回りながら、むしゃむしゃかぶりつくうさみ。
「……此れが3秒の味か」
 自分の分に箸をつけるニコ。ほうと小さく驚きの声をあげる。調理に3秒しかかけていないのだが、しっかり火が通っている、タレの味もついている。案外ありなのかもしれない。

「うさみよ、今日は如何だった?」
「もちろん楽しかったぜ! ニコはどうだ?」
 即答だ。縁日を巡って、お御籤をひいて、たこ焼きを作って、イカ焼きも焼いた。抹茶ラテも……一応飲んだ。風呂場で遊んで今に至る。たっぷり食べて、飲んで、遊んで、笑った。
「案外悪くない、有意義な一日だった」
 イカ焼きをもう一口摘もうと箸を伸ばすニコ。しかしその箸は空をきる。一瞬、目を離した隙にイカ焼きが消えていた。イカ焼きのかわりに皿の上に横たわっているのはうさみだ。目線をあわせないよう逸らしているが、食べかすが顔についている。そう、イカ焼きを食べた犯人は――、
「うさみ……お前という奴は……」
 ギュイーーーっ!!! 思い切り耳を引っ張る。
「や~~~っ!!!」
 本日何度目だろうか、うさみの叫び声が風呂場に木霊するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴北・誉人
またっ!志崎ィ(f17340)!足ィ!
イカは倒す

「何作ってもらう?俺、天ぷらと、イカそうめん
「じゃあ俺、挟んである方、はんぶんこしよう
「んー?なんでもいいだろォ
(つついたら面白えんだからほっとけるか、もったいねえ)

「っし、食った!じゃ風呂入ってくっからァ
解散!
また明日な(手を振って別れる(暇ンなったら構いに行くけどォ

一人で温泉入って一息いれる
イカもタコも美味かったァ…
今日食ってばっかだったな
明日っから動かねえと

饗への土産は買った
土産話の写真も撮った
(いっぱい話してやろォ
縁日でも貢献した
鹿も志崎も構った
(思いのほか面白かったんだよなァ
海鮮も食ったし
敵も、あー、食った

夜空見上げてため息
はァ…満足!


志崎・輝
鳴北(f02030)と

次はイカ!これもきっと美味しいんだろう
きっちり仕留める、食べるから倒す!

「全部美味しそう…選べない…けどイカ焼きは食べたい、姿焼きの方
「はんぶんこ?……なんで構うんだ、もう、ほっといて
朝から晩まで鳴北といて、本当に疲れた
けど、ずっと食べてれる
美味しい!
「よく食うって…鳴北だって大食いじゃない
ゆっくり食事を楽しむ
屋台や浜で食べるのも良いけど
座って食べれるのは、やっぱり落ち着く

「解散!?
ほんとに嬉しい!
自由だ!
風呂行きたいけど、鳴北と鉢合わせんのだけはイヤだから後回し

庭に出れないかな
ちょっと月見てお茶飲んで落ち着きたい
今日いろいろあったけど、なんだかんだ楽しかったって思えた



「次はイカ! これもきっと美味しいんだろう」
 一気呵成に間合いをつめる志崎・輝(紫怨の拳・f17340)。やる気、否、殺る気満々だ。
「きっちり仕留める」
 拳がイカの横っ面に炸裂する。拳から発した紫電がイカの体を駆け巡り動きを止めた。
「食べるから倒す!」
 身を翻し、強烈な右回し蹴りが叩き込まれた。吹き飛ばされる巨大イカ。
「足なら負けなイカ~~~!!!」
「またっ! 志崎ィ! 足ィ! イカにも言われてンじゃネェか!!」
 吹き飛んできたイカを《唯華月代》で真っ二つに掻っ捌きながら、鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)が吼える。また輝が足を丸出しにして蹴り飛ばしている。色気もへったくれもない、はしたないにも程が在る。
「またつまらぬものを斬ってしまったんじゃなイカァァッ~~!!」
「何で斬られてるほうが言うンだァ?」
 納刀しながら突っ込む誉人。さっくり戦闘は終わった。
 これにて港を襲撃していた《『皇帝烏賊』唐鞠・咲》は全て討伐され、完全なる平和がもたらされたのであった。
「足、足って煩い。どう戦おうがアタシの勝手でしょ?」
 だが、2人の小競り合いは暫くの間続いていたのだという。

 気を取り直して、旅館の部屋に荷物をおろし、2人は食堂に向かった。
 そこには、贅の限りを尽くした料理が所狭しと並んでいる。舟に盛られた刺身、イカの姿焼き、てんぷら、煮物、ご飯など、とれたばかりのイカや魚介類を捌いて作ったものだ。好きなだけとって食べて良いのだという。実演調理コーナーもある、その場で捌いて料理を作って貰えるようだ。海の幸の美味しそうな香りが辺りに漂い、そこに居るだけでもお腹が減ってくる。
「何作ってもらう? 俺、天ぷらと、イカそうめん。オッチャン、作って貰えるゥ?」
 さっそく実演調理の料理人に声をかける誉人。
「全部美味しそう……選べない……けどイカ焼きは食べたい、姿焼きの方」
 輝の目は料理に釘付けだ。どの料理も美味しそう、目移りしてしまう。ひとまず一つ選んで伝えたものの、諦めきれないのか周りに置かれた料理を見続けている。
「じゃあ俺、挟んである方。はんぶんこしよう。オッチャン、姿焼きと大阪風イカ焼きも追加で頼ンだぜ」
 追加分を伝えれば再び、あいよ! と威勢のいい声が返ってきた。
「はんぶんこ? ……なんで構うんだ、もう、ほっといて」
 不服そうに睨み、しっしと追い払うように手を振る。わざわざ分け合わなくても、あとで頼みなおせばいいじゃない。
「んー? なんでもいいだろォ」
 くつくつ笑う声が返ってきた。追い払われようと退く気配は無い。こうしてつついたら面白えんだからほっとけるか、もったいねえ。

「へいお待ち!」
 席で待っていると、2人前の膳が運ばれてきた。
 大阪風イカ焼き、天ぷら、イカそうめんが誉人の前に、イカの姿焼きが輝の前に置かれた。
「ネコチャン! かァいい!!」
「なにこれネコがいる! 可愛い!」
 声をそろえて言ってしまった。顔を見合わせる2人。フイっとそっぽをむく輝。
 イカの姿焼きに白ネコがかぶり付いていた。大根おろしを猫の形にまとめた、大根おろしアートだ。海苔を刻み目や口を作ってある。
「ネコチャン良いなァ、かァいい! ……でも、食いにくくねェか?」
 きらきらと目を輝かせる誉人。興味深々に覗き込んでいたが、はっと息を飲む。この可愛いネコチャンを食べるなんて無理難題じゃないか。
「普通に潰せば良いだろ」
 崩そうと猫に箸を伸ばす輝。食べ物なんだ、容赦はいらない。
「あっ!」
 声をあげる誉人。世界が終わるかの如く寂しげな表情を浮かべ、じっとネコちゃんを見つめている。
「鳴北うるせえ! 食いにくいだろぉが」
 思わず箸をとめ、誉人を睨みつける。いちいち声をあげられては落ち着いて食べられない。
「やっぱり食いにくいンだろォ、ネコチャン……」
 名残惜しそうにじっと見つめている。そんなに見られてたら尚更食べにくい。でも、
「アンタが声をあげるからじゃない」
 今度こそ食べよう。有無を言わさず、イカに猫の頭をのせ、ぱくり。
「美味しい!」
 ぱっと顔を輝かせる輝。肉厚な身のむにむにした食感がたまらない。甘辛いタレに甘目の大根があわさり、さっぱりとした味に仕上がっている。ご飯と交互にぱくぱく、箸が進む。
 朝から晩まで鳴北といて、本当に疲れた。けど、今までずっと食べてれる。心も体も満たされて、思わず顔がほころぶ。
「お前ホントによく食うなァ」
 その食欲は誉人が感心するほど。屋台の食べ物や、浜焼きをたっぷり食べたというのに、まだそれだけ食べられるのか。
「よく食うって……鳴北だって大食いじゃない」
 大阪風イカ焼きの半分をばくばくと口に放り込み、ほっぺをぱんぱんにしている誉人。美味しいのだろう、ご機嫌な笑みを浮かべながら噛み砕いている。
「アンタに言われたくない」
 あきれ返る輝。今日一日、一緒に沢山食べまくって、今も食べてるじゃないの。
ぱくりとご飯を口に放り込み、ゆっくり噛み締める。屋台や浜で食べるのも良いけど、座って食べれるのは、やっぱり落ち着く。ゆっくり、まったり、楽しんで食べる。

 暫くして、膳には空の皿が並んでいた。2人は頼んだ料理を全て食べつくしていた。
「っし、食った! じゃ風呂入ってくっからァ」
 膝をぱんと手で打って、立ち上がる誉人。
「解散! また明日な」
 手を振り、輝に背をむけ食堂を出ていく。当然、暇ンなったら構いに行くけどォ。内心、まだまだ構う気満々だったのだが。
「解散!?」
 突然の出来事に呆気にとられる輝。だが、直ぐにぱああっと顔を輝かせた。ほんとに嬉しい! 自由だ! やっと鳴北と別れられた!
 風呂に続く廊下をちらっと見る、誉人の背が消えて行くところだ。本当は輝も風呂にいきたいのだ。でも、鳴北と鉢合わせては解散した意味が無い。仕方ない、後回しにしよう。溜息をつき、食堂を後にするのであった。

 くったりと湯に身を委ね一息いれる誉人。温泉――大きな風呂に入るのが好きだ。この温泉は、瀬戸内海が一望でき、満天の星が見える、眺望も良い。目も体も楽しめる良い風呂だ。満喫しない理由がない。肩まで漬かり、手足をゆったりと伸ばし、寛いでいた。
「イカもタコも美味かったァ……」
 腹がパンパンに張っているのが解る。腹肉を摘んでみるが、まだ摘めるようなものはついていない。ふうと安堵の息をつく。
「(今日食ってばっかだったな、明日っから動かねえと)」
 今日はたらふく食べた、風呂に入る直前まで食べていたのだ。食べただけでは無い。そう、今日は色んなことがあった。今日の出来ごとを思い返す。
「饗への土産は買った。土産話の写真も撮った」
 一つ、二つ、指折り数える。土産のしゃもじを渡していっぱい話してやろォ。友の喜ぶ顔が目に浮かぶ、釣られてニカッと笑みが漏れた。
「縁日でも貢献した。鹿も志崎も構った」
 三つ、四つと指を折り、噛み締めるように頷く。鹿はかァいかった。輝は会うたびに一方的にまくし立てられ困っていたのだが、一日共に過ごして解った。――思いのほか面白かったんだよなァ。
「海鮮も食ったし。敵も、あー、食った」
 五本目――小指を折り、全ての指を握りこんだ拳を眺めて笑む。改めて思う、色々あったンだなァ。岩に頭と腕を預け、夜空見上げてため息を一つ。心の底からあふれ出た言葉は、
「はァ……満足!」

 その頃、輝は庭に出ていた。東屋の椅子に腰掛け、見上げる空には天満月。ふわふわ湯気をあげているお茶を飲み、ほっと一息。
「今日いろいろあった――」
 湯飲みに浮かぶ満月を見つめ、一日を振り返る。
 鳴北と厳島神社を参拝して、鳴北が鹿に追われて、縁日で鳴北に一番高い奴を奢らせた。
タコ、イカとも戦った。戦い方について鳴北に文句を言われた。足が丸見えだとかどうでも良い、先に手足がでてしまうのだ、今更変えられるものじゃない。
 浜焼きを食べてたら、鳴北に捌いたばかりのアジをとられた。絶許だ。
 最後にイカ料理を食べた、鳴北が大阪風イカ焼きを半分くれたけど……。思い出せば思い出すほど、鳴北の楽しげな顔がチラつく。もう、なんでアイツの事ばっか考えてんの、馬鹿じゃないの。
「けど、なんだかんだ楽しかった」
 フフッと笑みを漏らす輝。空に浮かんだ月だけが、その姿を見守っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年09月27日


挿絵イラスト