にちゃりと、粘性を帯びた液体の音が闇に鳴る。
怖気を誘う音と共に広がる顎には、無数の牙が唾液に濡れてぬらぬらと輝いている。ぐちゅり、ぐちゃりと湿った肉を咀嚼する。がり、ごりと硬い骨を噛み砕く。
ごくりとそれを嚥下する音は、ソレの口の数だけ響く。
取り込んだ肉の分、命の分だけ成長したその邪神は、次の捕食対象を得る為に蠢き、口へと変わってしまった目で得物を探し求める。
「良く集まってくれた。早速だが、予知された内容の説明に移ろう。」
グリモアベースに集った猟兵達の前に立ち、面々の顔を見遣り頭を下げる。
事の起きる場所はUDCアースの日本にある片田舎。余所者をあまり受け入れようとしない、言ってしまえばよくある閉鎖された村落だ。
その村落を利用して邪神の復活を企む者がいる。
「皆にはまず、その村へ赴いて情報を集めて貰いたい。」
困難な点は、村が閉鎖的な環境だという事だ。村人はいきなり現れた余所者である猟兵たちに、自分たちからべらべらとあれこれ話してくるようなことは無い。寧ろ逆に、警戒して遠巻きに監視しようとすらしてくるだろう。猟兵が情報を得る為には、何らかの行動を起こしていく必要がある。
例えば、村人たちに自分たちの力を見せることで話をさせる、或いは村の要所にでも忍び込んで何かしらの情報を盗んでくる。もしくは、上手く話しを誘導して情報を聞き出すことだって構わないし、当然他の手段を使ったところで問題は無い。
「それから、現在分かっている邪神に関する事だが、奴は『牙で喰らうもの』と呼称されている存在だ。」
曰く、複数の口に無数の牙を持ち、生物を捕食する度に無限に成長を続けていくと言われる。過去に現れた際には、都市一つを瞬く間に喰らい尽くしたらしい。
「もしこの存在が完全に復活することになってしまえば、また多くの犠牲が出ることは想像に易い。」
想像して欲しい。もしこの邪神が現れれば、村が、街が、そこに住む無辜の人々の命が数えきれないほど失われ、多くの血が流れるだろう。それは、なんとしても阻止しなければならない。
「人々の平和は守られなければならない…皆、頼んだ。」
宗嗣
初めまして、第六猟兵よりマスターとなりました宗嗣と申します。
ついに始まりましたね、第六猟兵!私はこれが初めてのオープニングとなりますので非常に気合いが入りますと同時に、とても緊張しております。
色々と不手際はあるかと思いますが、皆様と一緒にこの世界を作り上げ、そして守り抜いていきたいと思いますのでどうかよろしくお願いします!
それでは皆様のプレイング、楽しみにお待ちしています!
第1章 冒険
『閉鎖的な村』
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POW : 腕力などの力を誇示する事で情報を引き出す
SPD : 村の要所に忍び込む等して情報を調査する
WIZ : 村人との会話で必要な情報を引き出す
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トウロ・コーラル
村へ赴いての情報収集
まずは私の方へ視線をおくってきた村人を見つけます。
不自然過ぎない笑顔で挨拶を。
「私はトウロと言います。最近おかしな事とか人とか見た事ないですか?私そういうのを調査するのが趣味なんです!」
なんだコイツは?と若干警戒させる。追い払いたい、関わりたくないと思わせた所でオブリビオンの危険性と被害が最近多い事を伝えます。
立ち去りたいけども、自分の身に危険が降りかかるんじゃ、という不安を煽るように。
その後聞き取る内容としては、これまでこの辺りで見たことがない人をみかけなかったか? 人の出入りが急に増えた建物や場所はないか?を聞いてみます。
「やぁそこのおじさん、どうもこんにちは。」
シャーマンズゴーストの笑顔というデフォルメされた顔文字のような印象を受けるそれに、畑仕事をしながら彼に視線を向けていた村人は何とも言えない怪訝な表情を浮かべる。その表情は分かり易く、話しかけるな、と言っているのが誰にだってわかるだろう。
「私はトウロと言います。最近おかしな事とか人とか見た事ないですか?私そういうのを調査するのが趣味なんです!」
そんな彼の事を意にも介さず、トウロ・コーラルは立て板に水と畳み掛ける。話しかけられるのを無碍にも出来ず、しかして相手もしたくないという様子を隠しもせず、鍬を杖のように持って致し方なしと口を開いた。
「おかしな事とか人ねぇ…そんなら今、目の前にとびっきりがいるよ。」
皮肉だけをトッピングされた言葉だが、トウロの笑顔が崩れることはなく。不気味な奴、と顔を渋面にして背ける。
「このあたりではどうか分かりませんが、都会では最近妙な事件が良く起きる様になってるんですよ。だからこの辺も、いずれは他人事ではなくなるのでは、と思いましてね。」
関わるな、という言外の要望にも引かないトウロの態度に、仕方なしと彼は左手の親指を立て、村のはずれの方向を指した。
それが答えだという事を察し、感謝と非礼の詫びとして深く頭を下げ、その方向へと向かう。村へ迫る牙は近く。故にこそ、人々を守る剣であり盾とならんとして。
成功
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吾唐木・貫二
山に入り、熊や猪などの力の強い生き物を生態系や村の経済に悪い影響のない範囲内で真正面から打ち倒す。
その後、血抜きなどの適切な処置をした毛皮や肉等を提供しつつ、一つ山を越えた先にある自分の村の話をして怪しくないことをアピール。
ある程度打ち解けたところで「そういえばこんな噂を聞いた」という体で話を聞きつつ「自分には力があるから手伝いたい」と申し出る。
失敗する度に相手を変えて一からやり直す。
「やぁ、すまねぇな。山の向こうから来たんだが、コイツを引き取ってもらえねぇか?」
肩に担いだ茶色い塊、見事な猪を見せながら大柄な青年、吾唐木・貫二は遠巻きに彼を見ていた村人に話しかける。
ずしり、と地面に降ろされた獣は大きく、しかし目立つ外傷は心臓を貫いただろう刃傷と首の血抜きの痕しか見受けられない、という点に狩人として山に入ることも多々ある村人の一人は驚愕に顔を染める。
「あんたがこれを仕留めたってのか?…銃の痕も罠に掛けたような傷跡も無い。まさか正面から…?」
里山で猪は比較的良く見る獣ではあるが、かといって弱い獣では断じてない。猟銃も持たない人間が刃物一つで狩れるような生き物ではないのだ。
「ま、ちっとばかり変わった事情があってな。ほら、せっかくなんだから皆でもってけって」
言いながら水場を借り、手早く解体していく。しっかりと血抜きされた肉は新鮮そのもので、美味しく食べるには暫く寝かせた方がいいだろう。反対に内臓は綺麗に洗って早く食べるに限る。
そう言いながら嫌味なく配られては、余所者を嫌う村でも受け取らずにはいられず。いつの間にやら溶け込んでしまうのは貫二の人柄だろうか。
「そういや、道すがら噂聞いたんだが。最近、変な奴がいるって?」
「ああ、最近村のはずれのほうに居ついた奴がいてな。何してるのかわかんねぇが、気味がわりぃよ。」
打ち解けた中で日常会話に滑り込ませ、本題へと斬り込む。自然な言葉の流れに、警戒も薄れついと言った様子で聞きたい事は聞くことが出来た。
「何か出来るなら手伝おう。それなりに力があるからな」
嘘偽りない本心からの、貫二の言葉。それは人を寄せ付けない村人にも信頼させるに足る物で。彼らからの何とかしてほしい、という願いに応、と強く頷いた。
成功
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銀鏡・瑠香
「この寂れた田舎が例のクソッタレUDCの居場所っすか…‥おあつらえ向きっすね」(手首に傷をつけ追跡者を召喚する
行動手順
影の追跡者を使用し村の警備と指揮系統を観察し最も事情を知って良そうな人物と邪神の情報をを割り出しあらかじめ見つけた警備の穴を突き漁村を強襲。素早く証拠品と証人を回収してそこから情報を引き出す
基本事項
任務に支障でる範囲の負傷を負った場合最低限の情報を手に撤退する
他の猟兵の邪魔をしない、手助けがいるなら出来る範囲でやる
「この寂れた田舎が例のクソッタレUDCの居場所っすか…‥おあつらえ向きっすね」
ぼたり、ぼたりと赤い雫が落ちる。手首に引いた一本線から滴るその液体が地に一定量溜まると、じくりと滲み出すように黒い影のヒトガタを作りだす。
銀鏡・瑠香の作りだした影の追跡者は、文字通り影のように行動を開始する。使用する事の出来る時間は最低限に、それでいて最大効率で。
追跡者の追跡すべき対象の選定は存外に早く。人目を避ける様に行動する男に目をつけると、その動きを観察する。
影のように付き従い、それでいながら影のように誰も気にも留めない。そんな自身のユーベルコードの仕上がりに瑠香は舌なめずりと共に笑みを零す。
標的は定めた。ならばあとは実行するまで。
「声を上げるんじゃあねぇっすよ、痛い目はみたくねぇでしょう?」
ぴたりと、男の首に冷たい感触がある。ワイヤーに繋がれたフックの先端が、鈍く猛禽の嘴のように肌に僅か食い込む。
「っ、お、お前は…。」
ぞぶり。浅く、鉄は肉を裂く。皮膚を裂く痛み、背筋に湧く脂汗が背後から自身を脅迫する小柄な少女が幻などではない現実なのだと訴える。
「お前さんに質問する権利はねぇです。分かったら、あんたが村のはずれまでわざわざ出向いて何やってたか、自分に話すことっすね。」
男よりもずっと小柄で、年下にしか見えない彼女には、本物の修羅場でしか味わうことのできない凄みがある。その迫力は、ただ村で日々を過ごしていただけの男に抗えるものではなく。協力を強制されたこと。場所や糧の供給をさせられていたことを口にする。
助けてくれと、もうこれ以上話せることはないと、よくある小説のように囀るその様に瑠香は十分情報は吐かせたと判断し解放した。
フックに付着した男の血を顔を顰めながらぺろりと、小さく赤い舌で舐めて一人呟く。
「私みたいなのが、これ以上生まれないようにしないと、ね。」
大成功
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九条・文織
赤月・句穏(f05226)と共に行動する。
情報収集のため、一人になっている村人を探しだし接触。
硬軟取り混ぜた方法で村人から情報を引き出すために
村人と接触したら、
自分は威圧的に殺気を放ち接する。
まともな思考させる暇を与えないように畳み掛ける。
「最近村で変わった事が無いだろうか?些細な事でも包み隠さず話をした方が身のためだと思うな」
「それこそ、何かあってからでは遅い。そうだろう?」
そう言って刀を一閃すると目の前に突き付ける。
そのまま眼は笑っていない冷たい微笑みを見せて。
句穏が自身の元に向かってきたのに気付くと
「っと、句穏か。すまなかったね」
先ほどと一変したような柔らかい微笑みを句穏に向けると
納刀
赤月・句穏
九条・文織(f05180)と同伴
・村での情報収集
「こんにちは。あの、近くで車のガソリンが切れてしまいまして、
徒歩でこちらまできたのですが…」
近くの子供に声をかけ大人がいないか聞いてみる。
都会で購入した人気っぽいカード付お菓子をお礼に手渡し、なにか異変がないのかそれとなく話題誘導してみる。
その際、しゃがんで子供の視線に合わせ優しく微笑みかける。
文織がいない事にきがつくとそっと子供の目を盗み文織のところへ
「ああ、文。一人にしないでください。」
寄り添うように立って。脅されていた村人に優しく微笑みかける。
「こんにちはですわ、旅行者なのですがガソリンが切れてしまいまして分けていただけないでしょうか」
困った様子を隠さずに歩いてくる女性、赤月・句穏は辺りをきょろきょろと見回した。片手でスーツケースを転がし、空いた片手を頬当て僅かに首を傾げる様は何か困った旅行者といった風情だ。
「お姉さん、どうかしたの?」
「こんにちは。あの、旅行中なのですが近くで車のガソリンが切れてしまいまして、徒歩でこちらまできたのですが…。誰か、大人の人をお願いできます?」
外で遊んでいた少女が彼女に近づき、声を掛ける。それに安堵した吐息をつき、膝に手を当てて目線を合わせて答える。
はい、と差し出されたカード付きのお菓子はこの辺りではなかなか手に入らないもののようで、わぁー!とキラキラした目で少女は受け取る。
「ありがとう、お姉さん!旅行してるんだ!大変なんだね」
「ええ。この辺の大人の方は、見かけて声を掛けようとしてもすぐ離れてしまって…なかなか助けていただけないんですよね。」
お菓子の効果とでもいえばいいか、心を許したようでにこにこと微笑む少女に笑みを返し、顎に人差し指を当てて困っています、とアピールする。
「ならあっちにお父さんがいるから行ってみよう。ガソリン分けてくれると思うよ。」
「それは助かります、ありがとう。ああ、それから…文はどこに行ったのかしら。」
上手く助力を得られそうな状況に得心しつつ、共に行動する女性…九条・文織が上手くやっているのかに思いをはせた。
殺気が、世界を侵す。チリチリと肌を突き刺す凶気は、物理的な圧力さえ感じさせる。喉がカラカラに乾き、呼吸することさえ困難だ。鼻先に突き付けられた刀は、真っ当に生きていては受けることのない暴力だろう。そんな状況に、少女の父親は置かれていた。
「最近村で変わった事が無いだろうか?些細な事でも包み隠さず話をした方が身のためだと思うな。」
「か、変わった事って言われても…。それに、そんなことを聞いてあんたに何の得が…。」
精一杯の反論に、力はなく。ちゃり、となる刀の鍔に込められた力を感じ取り、尻すぼみに終わる。
「何かあってからでは遅い。そしてそれを解決するのが私達の役目、それこそが私の得だ。」
三日月が夜空に咲くように、吊り上がった冷たい笑みは彼の心胆を寒からしめる。生きた心地がしない、とはまさにこのことだろう。
「ああ、わかった。俺の知ってることを言うよ…。」
力なく震える声で、文織に村の外れに居ついた者の事を話す。
それからすぐに。
「ああ文、何をしているんですか!もう、刀を下ろしてください。すみません、大丈夫ですか?」
「っと、句穏か。すまなかったね。」
様子を遠目に見るや駆けつけてきた句穏に優しく微笑みを返し、言われた通り刀を収める。
「まったくもう…一人にしないでくださいね。」
とことこと少女が父に駆け寄り、話をしている。どうやら、先ほどの句穏とのやり取りから助けて欲しいということを伝えてくれているようだ。
父としても、(グルっぽいことは差し置いて一応は)助けてくれた上に娘の面倒を見てくれた彼女の事は信用するようにしたようだ。
句穏が真摯に謝罪してくれたこともあり、文織との一件は無かったことに…とは難しいが、怪我もしなかったし水に流してくれるらしい。警察に駆け込まれれば色々と大変だったため、二人としてもその申し出は有難い。
それでは改めて、と。優しく微笑みを浮かべて申し出る。
「こんにちはですわ、旅行者なのですがガソリンが切れてしまいまして分けていただけないでしょうか。」
大成功
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第2章 集団戦
『嘲笑う翼怪』
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POW : 組みつく怪腕
【羽毛に覆われた手足】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 邪神の加護
【邪神の呪い】【喰らった子供の怨念】【夜の闇】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ : 断末魔模倣
【不気味に笑う口】から【最後に喰らった子供の悲鳴】を放ち、【恐怖と狂気】により対象の動きを一時的に封じる。
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猟兵達が各々の手段で獲得した情報を精査した結果、村の外れにある廃墟となった建物に外から来た奇妙な男が住み着いた、という事が解かった。
余所者を嫌い変化を避ける質のある村だという事を差し引いても、彼ら彼女らは一様に口をそろえ、その人物のいることを疎んじていることを察することが出来る。
様々な方向性から同じ事実を得た猟兵は、邪神を信望し復活させんとする男に近づきつつあった。
「ちっ…どこから嗅ぎ付けてきやがった。」
だが当然、彼らの取った手段は人の口の端に乗って広がっている。風の流れが堰き止められぬように、流れる水を留める事の出来ぬように。
それは当然のこととして男の耳にも届いていた。
「どこにいても邪魔をしに来る…薄汚い秩序の飼い犬が…。」
男は口汚く猟兵を罵ると、テーブルの上で解体していたモノの一部に手を伸ばす。
心の臓は大切だ、例えそれがそこらを歩いていたやせ細った野良犬の物であったとしても、贄には欠かせない。
ならばと、太い鉈を振り下ろす。がつん、がつんと力づくで骨を叩き割り、首を胴から切り落とす。
つい数刻前まで生きていたモノの虚ろな眼球が男を見上げるのに頓着せず、空いた手で鷲掴みにした犬の頭部を後ろに放る。
ごり、がり、ぐちゅ、にちゃ。
深淵の目に三日月の口を持った、半鳥半人の異形が不味そうに与えられた餌を咀嚼する。本来なら人の子供をこそ最高の美食とするソレには、あまり口に合う食材ではないのだが。腹が減ったままでは、主の命に応えることもできない。
そうして腹を満たした翼怪に、男は顎で指図をする。
「猟兵どもをブチ殺してこい。」と。
銀鏡・瑠香
「コイツは標的とは形が違うけど……ああ眷属とかそんな感じなんすかね?まぁやる事は同じっす」
戦闘を始める前に予めレプリカクラフトで仕掛け罠を作成し見通しの悪い所に大量に配置しておき、戦闘が始まったらそこに翼怪を誘導して動きを封じる。
又動きを封じるまではヘイトを稼ぐために銃火器を使って攻撃回数重視で遠くから攻撃し対象が仕掛け罠に引っかかり動けなくなった後は触肢変成に持ち替えて攻撃力重視で攻撃。(ついでに触手の色は真紅
「依頼に関係あろうがなかろうがオブリビオンはいかして返せねぇっす特にUDCって奴はね」
ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!
廃墟に続く道すがら、響く耳障りな声に戦闘の予感を銀鏡・瑠香はつぶさに感じ取った。
確認したその冒涜的で悍ましい異形に、思わず眉根を寄せる。
「コイツは標的とは形が違うけど……ああ眷属とかそんな感じなんすかね?まぁやる事は同じっす。」
目が合った。そう認識した時には、体は既に動いていた。アレは必ずここへ来る。確信めいた直感に従い、ユーベルコードを使用する。
レプリカクラフトで即座に作り上げたのは、道端にあった立て看板。仕上げは上々、後は――ぺろりと唇を舐めると、突撃銃を肩に駆け出した。
パパパッ、パパパッ――。
三点バーストの音が響く。接敵した翼怪から一定の距離を保ち、冷静に、しかし勇敢に攻撃を繰り返す。
人間ならとうに死んでいるだろう銃撃を受けているにも関わらず、件の怪異は気味の悪い笑みを崩しもしない。
崩しもしないが、それでも銃撃はダメージにはなるらしい。銃弾の当たった個所は肉が弾けて血が咲く。故に、翼怪は彼女を喰って良い餌であり排除すべき敵であると、主の命を超えて認識する。
その僅かな挙動の変化に、策に掛かった事を確信。自身の作り出した罠の元へと誘導していく。綱渡りのような攻防。ああだが、瑠香にとって今の綱は石橋のように盤石に感じられた。
そして――。
「残念、そこは自分の狙い通りの場所っす。」
道端のガードレールにどん、と背中を当てて足を止めざるを得なくなった彼女の様に、にたぁ、と怪異は笑みを深くする。
恐怖を煽るか、食欲を満たすか。一瞬の逡巡の後に後者を選んだ怪異が飛び掛かった瞬間、彼女は呟いた。
ガクンと、飛び掛かった姿勢のまま怪異の動きが封じられる。弾け飛んだ立て看板…レプリカクラフトで作った仕掛け罠はしっかりその仕事を果たし。深紅の触手は怪異を締め上げ、射抜く。
『アアアアァァァァアアアッッッ!!!』
濁った子供の泣き声のような、不快極まる叫び。自分は狩る者ではない、狩られる者だと理性ではなく本能が理解した恐慌。
血を撒き散らし、強引に触手を引き千切ると翼怪は全力で彼女から離れ、逃げていく。それを見て瑠香は銃口を下ろす。
追撃出来なかったのではなく、見逃した訳でもない。
「依頼に関係あろうがなかろうがオブリビオンはいかして返せねぇっす。特にUDCって奴はね。」
奴にトドメを刺すのは、自分である必要はない。猟兵達は、決して獲物を逃さないのだから。
大成功
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我人・百四子
あの廃墟に『牙で喰らうもの』を復活させようとしている黒幕がいるかもしれないのね。
復活前に取り押さえられればよいのだけれど……。
私たちの情報も黒幕に伝わっている可能性が高いから、廃墟への突入前から戦闘態勢で臨みましょう。
屋内の戦闘なら<念動力>で壁や天井を壊して攪乱を望めるわね。<目潰し>を使えば視界を限定することもできるかもしれない。
ただ、同じことは相手にもできる。だから相手の動きに注意を払い、相手が仕掛けてきたときはその威力が相殺できるように壁や天井を吹き飛ばすわ。
私自身の攻撃は致命傷を与えられないと思うから仲間との連携が重要ね。仲間が傷ついた時はユーベルコードで癒やしてみましょう。
吾唐木・貫二
敵の拠点にある程度近づいたら『厄災の騎士』を発動し、いつでも戦える準備をして周囲を警戒。
敵を発見し次第、捨て身の一撃1で相手の攻撃を受け止めつつ、串刺し1、マヒ攻撃2で敵を拘束し属性攻撃1で電気属性を付与して相手の気勢を削ぐ。
その後、2回攻撃1と生命力吸収1で体力を回復。
拘束が外れて敵が離れようとしたら範囲攻撃1と2回攻撃1とマヒ攻撃2で叩き落とす。
高いPOWを活かし他の人への攻撃を割り込んで受けつつ強引に敵を押さえこむ。
味方の邪魔はしない。コンビネーションをとれるようならとる。
生命力吸収1で敵UDCをモグモグと捕食し、刻印で取り込む。
マヒ攻撃2や範囲攻撃1を誤射しないよう細心の注意をはらう。
嘲笑う翼怪が遭遇した少女から受けた傷は決して浅いものではない。寧ろ、人間であるのならば即座に病院に行くべきことを進める程の深手だ。
故にそれは一時撤退を選ぶ。一度戻り、主の元へと帰還して指示を仰ぎ、願わくば傷が癒えるまでの休息を取るのだ。
二本の異形の脚で駆けながら、ソレは恐慌から醒めぬ頭で考える。
さて、主のいる城(はいきょ)の前に、人間が二人もいただろうか、と。瞬間、黒銀に染まる槍を持った大柄な男は眼前にまで暴力的な速度で踏み込んでいて。焼けるような痛みが、腹部を貫いた。
「あの戦闘の音は…。」
「きっと、私達と同じく邪神復活を妨げようとする猟兵のものでしょう。」
黒幕のいると目される根城を目前、吾唐木・貫二は自身と同年代に見える女性と出会った。彼女の独特の雰囲気、佇まいからも貫二は彼女が猟兵であることが即座に見て取れ、また彼女…我人・百四子も同様のようだ。
「私、百四子といいます。これも何かの縁、私では致命に届く攻撃は難しいと思いましたので、協力しませんか?」
そういう百四子の申し出は、貫二としても渡りに船。こくりと頷き、右手を差し出す。
「私としても、助かります。貫二といいます、よろしく百四子さん。」
「あら、ご丁寧に。もし子とか、もっしーと気軽に呼んでくれていいのよ?」
朗らかに微笑み、握手を受ける彼女の申し出は、貫二としては面食らうものであった。
「あ、ああ…善処、するよ。」
翼怪の暖かい血で手を濡らす不快感を受けながらも、貫二は彼女の読みの的確さに得心した。
「『もし私があの敵ならば、深手を負えば主の元へ戻ってくる』…成程、完璧な読みだぜ百四子!」
ごり、と。より力を込めた槍が怪異の骨を削る手応え。ああ、それはまさしく。彼女には足りないと言っていた敵の命へと届き得る力だ。
だが当然、怪異もまた命あるものだ。奪う側でいるならば良し、奪われる側でいるなど、受け入れがたい。
『グギャギャギャギャッ!!』
耳障りな叫びが耳朶を打つ。不思議と、子供が傷ついて泣き叫んでいるような錯覚を受ける声に、思わず貫二の手から力が抜ける。
その瞬間を待っていたように、横合いから異形の腕が彼を殴り飛ばす。頭蓋の芯まで揺さぶるような重い打撃に槍は怪異から引き抜かれ、貫二も衝撃のまま宙を舞う。
ばさりと、視界から光が遮られた。未だ飛翔する自身の眼前には、虚空を映す虚ろな眼窩。空中で貫二に追いすがった翼怪は、その足で彼を地面へと縫い留める。
否、だ。縫い留めようとした、が正しい。念動力で飛んできた石が怪異の意識を逸らした。
その僅かな隙を見逃さず、貫二は体勢を立て直し着地する。瞬間、まるで母の腕の中のような温もりが彼を包む。
「『もし私が慈母ならば、私はあなたを救いたい』…大丈夫ですか?」
傷の痛みは既にない…いや、もはや傷痕すら残っていない。攻撃を受けたという事実すら否定されたようだ、これならば。
「ありがとう百四子、これならいくらでもやれるさ。」
「あら、どうせならもっしーと。」
ふふ、と優しく微笑む彼女は、そこが血が咲き肉が千切れる戦場であることを忘れてしまいそうだ。だが、そこは戦場だ。
嘲笑う翼怪は、怒りを抱いていた。先程から狩る者であるはずの自分がいいようにいたぶられる事に。否、やっとそれをやり返す機会を得たというのにそれを奪われた事に、だ。――いたぶられた事には、恐怖しか感じていなかったのだから。
だからこそ、自身の意識をそらした彼女を許せない。
『アアアアァァアアァァァァッッッ
!!!!』
断末魔の絶叫。それは、果たしていつなのだろうか。誰なのだろうか。それも解からない、猟兵達には知るすべもない、翼怪に喰われた子供の悲鳴。末期の叫び。死にたくないと、助けてと、そんな声。
それを真正面から受けた百四子は、思わず動きを止める。それは、絶対の隙であり好機で――
「させんさ!」
飛び掛かった翼怪の異形の腕の一撃は、貫二の槍の柄に受け止められた。
「貫二さん!」
「もっしー、今だ!」
貫二の窮地に見えるそれは、その実、怪異の窮地でもある。彼の叱咤は、百四子の判断を後押しする。
「『もし私が獄吏ならば、私はあなたを逃がさない』」
伸ばした手から、不可視の鉄球が放たれる。ドスンッッ!!重い激突音が響き、翼怪が吹き飛ぶ。
何が起きたかわからない、異形の裂けた口が、目が、恐怖に歪む。
「『厄災はここに来たれり!騎士よ!鎗を持ち彼の者を討ち滅ぼせ!!』」
バキンと、不可視の封印が解ける。厄災騎装と化した彼の武具はその力を後押し、限界以上の性能を発揮する。放たれた捨て身の、渾身の一撃は翼怪の嘲笑いを消しさり、吹き飛ばした。
シン、と静かになった辺りに、風がそよぐ。
「――やったか?」
「貫二さん、それは言ってはいけない言葉よ。」
軽口を叩き合う。それが出来るくらいには、余裕がある。命に届かなかったという手応えがある。だが、問題は無いだろう。
こくり、と二人頷き、廃墟を見上げる。此処にいるであろう黒幕と、胎動する邪神。それは止めねばならないと、決意を新たにした。
大成功
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キケ・トレグローサ
我人さんの手伝いをしに追っかけてキケの人格で追っているところに吹き飛んできた怪鳥と遭遇する。
遭遇の瞬間、内気なキケは驚いて尻餅をついて叫び、隙だらけに見えるが、キケの中の別人格、キケの兄エドがユーベルコードでキケと同じ姿で怪鳥の背後に実体化、そのまま攻撃する。
戦闘はエドとキケが兄弟のコンビネーションを活かし絶え間なく交互に攻撃、常にどちらかが怪鳥の死角に潜り込むように動き、細かくダメージを連続して蓄積させる。狙えるならば(スライディング1)バランス崩したり、わざと死角にいない方が隙を見せ、もう一人が攻撃する(だましうち1)。常に二人で取り囲み続け、残り僅かに見える敵の体力が尽きるまで逃さない。
「少し遅れちゃったけど…我人さん、もう戦ってるのかな?」
『そうじゃないか?戦闘の音が聞こえる…やってるはずだ。』
キケ・トレグローサの、傍から見れば独り言にしか呟きに応える声がある。とは言っても、他人に聞こえるものではない。自身の内面から聞こえる声、自分の別人格のものだ。
その声の主、エドの言葉を受けて良く耳をすませば、確かに聞こえる戦闘の音に知人の声が混じっている。成程、と納得し助力に来て遅れる訳にはいかないと更にスピードを上げようと、一度目をつぶり、前を睨み付けるようにしっかりと開ける。
そうして、血と肉片を撒き散らしながら必死の様子で吹き飛ばされた怪異と目が合った。
「うわぁぁぁあ!」
相当の距離を跳ね飛ばされたのだろう。赤い襤褸切れのような有様のそれは、地面を転がり痙攣するようにずるずると、のろのろと立ち上がる。思わず尻餅をついたキケを見る虚ろな眼窩は、嘲笑する口は、怨嗟に染まっていて。
せめて目の前の命を奪うことで無聊を慰めようとしたのか、怪異が腕を振り上げる。その腕は、いかな瀕死の怪物の物とは言え人間一人の命を奪うには十分過ぎるものだ。
「させねぇよ!」
それがキケ目掛け叩き付けられる一拍前、背後に現れた人影が怪異を蹴り飛ばす。完全な不意打ちに抵抗すらできず、また誰もいないはずの背後からの攻撃に理解も追い付かず、翼怪はゴロゴロと転がっていく。
その一撃そのものは深手にまでは至らない様子で、すぐに立ち上がろうとする敵を見て彼――エドはキケに手を差し伸べる。
「やっぱ歌じゃないと上手くいかねぇな…キケ、立てるな?」
「兄さん…うん、ありがとう。」
差し出された手を握り、立ち上がる。大切な兄という助力を受け、翼怪を見据える目は、怯えるだけの少年のものではない。悪を討つ、猟兵の物だ。
ここに趨勢は決した。キケとニケのコンビネーションは一朝一夕のモノではない。キケのフェイントにニケが応え、ニケのバックアップを受けてキケが躍る。
万全の状態ならまだしも、いつ消えるかも知れぬ蝋燭では抗うにも足りず。
「「これで、終わりだ!!」」
空を蹴り、鏡写しのように両側から挟み込み放たれた二人の蹴撃を受け、ここにいくつもの子供の命を喰らってきた怪異の命が、潰える事となった。
「何とかなったね。良かった。」
「ま、美味しいとこを貰っちまったみたいで悪いけどな。」
ふ、と兄弟が微笑む。一段落、とはいえまだ敵は残る。黒幕を討たねばこの一件も終わらない。決意を新たに、一人へと戻った二人は前を見据えた。
成功
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第3章 ボス戦
『牙で喰らうもの』
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POW : 飽き止まぬ無限の暴食
戦闘中に食べた【生物の肉】の量と質に応じて【全身に更なる口が発生し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 貪欲なる顎の新生
自身の身体部位ひとつを【ほぼ巨大な口だけ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : 喰らい呑む悪食
対象のユーベルコードを防御すると、それを【咀嚼して】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑17
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「クソッ!クソクソクソッ!馬鹿にしやがって…っ!」
ガンッと机を殴り付ける。粗末な木製のテーブルはみしりと軋み、罅が入る。解体された野良犬の血が跳ね、頬に付いた。
契約を通じ、嘲笑う翼怪が猟兵達に討滅されたことは感じ取れた。それは即ち、猟兵達が間も無くこの廃墟へと乗り込んでくることを意味しており。
自身の目的を達成するにはまるで時間が足りていないことを意味する。
「嗚呼、我が神よ、我が主よ。御身の望みを叶えるに足りぬこの身をお許しください。そして願わくば愚かな我に天啓を…!」
両手を組み、地に膝を付き天を見上げる。暗い天井に神は居らず。しかし、それはまさに天啓として。すべき事が、成せる事が、電撃のように脳裏に奔る。
「ああ、嗚呼、神よ…そうなのですね、それこそが我が役目…。」
滂沱の涙を流し、神の温情に心底の感謝を込めて。彼は立ち上がり、贄とした犬の心臓を握りしめる。
「我が神よ、世界を食む王よ、牙で喰らうものよ。御身の全てをこの世に呼べずとも。御身をこの世に呼ぶことが、我が宿願なれば。この贄を以て、御身を呼びましょう。」
何の躊躇いもなく。血の滴る心臓に喰らい付く。
鉄錆じみた血の味が、ぐにゃりとした内臓の感触が、口の中に広がる。それが己を通じて神へと繋がっている。そう確信する狂信者は悦楽に浸る。
ぐちゃり、にちゃりと喰らい、咀嚼し、嚥下し。それが自分の胃ではなく、神の胃の中へと落ちていくのを感じ。意識が暗転する。
ぞぶり。まずは喉だ。『内側から』喉を食い破り、大きな顎が現出する。ついで背中、腹、腕、足。全身各所、余すところなく。内側から生えた牙が、口腔が、狂信者の肉を、命を食い破る。
グギャシャシャシャシャシャッ!!!
久方振りに得た人の肉の味に歓喜し、咆哮する。血に濡れた全身で、肉片を咀嚼する顎達で、この世への生を謳歌する。
完全ではない。だが、肉を味わうには十分すぎるカタチだ。
そして。廃屋へと踏み込んだ猟兵達はソレと相対する。数多の顎、無数の牙を持つ、冥府より来たりし牙神と――。
アサノ・ゲッフェンルーク
「神様よりも、断然っ!水鞠さんの方がステキかな!かな!」
エレメンタルロッド『泡沫ノ長杖』の
気まぐれな水精霊たる水鞠さんに声をかけながらゆるりと微笑む。
「あぁ、でも大好きな水鞠さんを、あんなクチだけのゲテモノと比べるのは失礼でしたね。」
WIZで勝負を挑む。
<属性攻撃2>を蒼硝子との遭遇の
水属性に合わせて<全力魔法1>で使用。
牙神の大口のひとつに水刃を一点集中で狙い放ち続ける。
相手が攻撃を咀嚼しきれなかった場合は水鞠さんに御礼を言う。
「水鞠さん、ありがとうございます。たのしめましたか?」
防御しきられたら無理せず水鞠さんを連れて一度後退する。
水鞠さんが気まぐれに好きなことしてくれてれば私は満足かな!
銀鏡・瑠香
「復活は出来たみたいっすけど、まだ復活は不完全なんすかね?まぁ此処で仕留めない理由は無いっす」(輸血パックを飲みながら
他の猟兵への対応に気を取られている内に暗視1を活用し暗がりから奇襲。殺戮捕食形態で傷口えぐる1と捨て身攻撃1二回攻撃1を活用しながら、出来るだけ深手を牙で食らうものに負わせて自分の刻印に力を取り込む。逆に食らうものからの攻撃は逃げ足1を利用し回避。此方が手傷を負った場合は生命吸収力1を利用してダメージを回復しつつ戦闘続行。奇襲後は他の猟兵との連携を重視。激しく攻撃し続けることで出来るだけ味方から食らうものの注意をそらす。
「この廃墟から一歩だって外には出させ無いわよ……!」
真っ先に廃墟に飛び込んだのは、二人の女性だ。血で汚染された薄暗い廃墟の一室とそこにそびえる異形の姿とは、少女と女性の間と言えるような年齢の二人には本来、些かショッキングな光景だ。尤も、猟兵である彼女たちにはそうとも言えないのだが。
『グルルルルル……。』
にたぁ、と。大きく裂けた邪神の顎が嗤う。火に入る夏の虫、いや空きっ腹に入ってきた肉。
「復活は出来たみたいっすけど、まだ復活は不完全なんすかね?まぁ此処で仕留めない理由は無いっす。」
嬉しそうに嘲笑う姿に、銀鏡・瑠香が血液パックをちゅーちゅーと気の抜ける音で吸いながら、呟いた。
「うんうん、ようだよねっ!それに神様よりも、断然っ!水鞠さんの方がステキかな!かな!」
「あー…そうっすねー。」
元気よく頷くアサノ・ゲッフェンルークはエレメンタルロッド『泡沫ノ長杖』を掻き抱く。正しくは、それが表す水の精霊、水鞠さんをだろうか。
「あぁ、でも大好きな水鞠さんを、あんなクチだけのゲテモノと比べるのは失礼でしたね。」
「あー…そうっすねー。」
瑠香はアサノに視線を合わせない。此処に来るまでずっと抱えたロッドに話しかけている彼女に、『うわーこの子ぜってーやべー奴っすよー』と思っている。いや、彼女も猟兵だからきっと何かあるんだろうけど。でもやべーよこの子。
そんなコントを繰り広げる二人に、邪神の牙が襲い掛かった。
ガチンッ!!!狂気のみを孕んだ異形の顎が空を切る。咄嗟、左右に分かれて離脱した二人には触れることは無い。
「っと、いや舐めていい相手じゃねぇっすね…!」
即座に思考を戦闘に切り替えた瑠香は、右手を伸ばす。触肢へと変異したそれを更に殺戮捕食形態へ移行、急速に伸びたそれで牙神へと喰らい付く。
「水鞠さん、ご機嫌如何です!?」
同時、反対へと跳んだアサノがロッドを邪神へと向ける。ロッドの先端に5つ、拳大の水塊が浮かび上がるや、それが即座に刃となって襲い掛かる。
『ギギッ…!』
伸びた捕食触肢が邪神の脚へと齧りつく。力比べをするには、相手に遥か分がある勝負。だが、この場にいるのは一人ではなく。
思わず瑠香を向いた牙神の背後から、5つの水刃が襲い掛かる!
音もなく、肉を切断する水刃――ただし、一本のみ。残りの4つは、背に生えた口が噛み砕き、咀嚼し、飲み込んだ。にたりと、怖気を誘う笑みを浮かべ二人に答え。
意趣返しとばかり、2本ずつを口腔から二人へと放つ。
「おおっとっ、危ないっすね!」
「わわっ…ふふ、水鞠さん、楽しめました?」
「楽しめましたーじゃねーっすよ」
突っ込みを入れつつ、互いに冷静に状況を把握する。相手の戦力は自分たちよりもかなり上だ。例え未完成の儀式で呼ばれたとしても、元の性能が違い過ぎる。
交わした視線は同じ言葉を音に無く伝える。
「水鞠さん、遊んでくださいな!」
水塊を再び召喚、花弁状に変化させたそれは牙神を囲み、動きを封じる。とはいえ、浅い。致命には程遠い、どころかダメージと呼べるのかも妖しいものだ。だが、十分だ。相手の行動に逡巡を与え、次の行動への隙を作れれば――!
「もう一丁、いくっすよ!」
伸ばした触肢が分裂、牙神の両手両足に絡みつく。敵が振り払わんと力を籠めるが、それが最大になるよりも先に、瑠香が動く。力尽くの捨て身の一撃。全力を超えた全力で牙神を振り回し、壁に叩き付ける!
罅が入り脆くなった壁はそれだけで崩壊し、邪神を飲み込み砂埃に巻き込む。それを見据えて、決意を新たに呟く。
「この廃墟から一歩だって外には出させ無いわよ……!」
大成功
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社守・虚之香
完全に出遅れてるじゃん!
安全圏から「インテリジェンス・レギオン」を発動し、ドローンだけを突入させるよ。
50機いるからまずは8機で広さに余裕があるかどうかを見るよ。
それらの様子は全部ドローンの搭載カメラを通じて電脳ゴーグルに映し出される。
空間に余裕があれば4機ほど追いドローン。
先に突入しているメンバーたちと目標を捉えたら、位置関係を計算して人のいない方もしくは全方位から高出力レーザーで攻撃!
数を減らされたら順次追いドローンで最大12機を維持。
どこまでダメージを与えられるかな?
キケ・トレグローサ
(キケ)「あ、あれが、牙神・・・怖いな」
キケの人格で相対してすぐさま「流浪の楽団」で背の高い青年の姿のエドと可憐な少女の姿のルナを実体化させる。
(エド)「さぁ、クライマックスだ!我ら『流浪の楽団』、この舞台を沸かせて見せよう!とくとご覧あれ!」
神話上の神々の戦争の唄を奏で、歌い、舞い、戦場の猟兵を鼓舞し、支援する。
(キケ)「ルナ、無茶、しないでね・・・(ルナ)「わー口だらけ気持ち悪いー!こっちまでおいで
!」・・・ル、ルナったら・・・」
曲に合わせてルナが牙神の前で舞い注意を惹いて仲間が攻撃しやすい隙を生む。仲間が傷ついたらエドの歌声で回復。(シンフォニック・キュア)
//家庭荘の仲間と連携する。
「ととっ、完全に出遅れてるじゃん!出でよ、電子の妖精たち!」
遅ればせながら廃墟に到着した社守・虚之香は、戦場へと飛び込むより先に自身のユーベルコードを起動する。小型ドローンを8機召喚、それらに戦域の偵察と状況補足を命じる。
「じゃ、行くんだね?」
「ええ、サポートお願いします。」
キケ・トレグローサがこくり、と頷く。それを見て、幸運を祈る、とサムズアップを送り。微笑みを返した少年は死地へと飛び込んでいった。
ガラガラと一抱えもある壁の欠片をいとも容易く崩してのけ、邪神が砂煙の果てから現れる。とはいえ、無傷とはいかないようだ。先んじた猟兵の攻撃は確実のそれの命を縮め、滴る血が傷の深さを表している。
「あ、あれが、牙神・・・怖いな。」
怯える声を漏らしつつも、すぐに決意を秘めた視線で敵を射抜く。
「行くよ、二人とも!」
彼のユーベルコード、流浪の楽団により寄り添うように現れるのは青年と少女。彼の兄と妹となる、いなくなった、しかし今もなお存在する者たち。
自分は一人ではない。その心強さが有難い。強敵なのは違いないが、嗚呼、我らが負けるはずはないと。
「さぁ、クライマックスだ!我ら『流浪の楽団』、この舞台を沸かせて見せよう!とくとご覧あれ!」
エドが気取ったように、開演を告げる。奏でる歌は、神話上の神々の戦争の唄。耳へと届いた猟兵の魂を鼓舞し、力を与える曲。それはこの場にいない者へも力を貸すものだ。
『お、有難いね。それじゃ、牽制は御任せあれ!』
まずはドローンが邪神へと向かう。搭載されたレーザーが放たれ、毒々しい邪神の皮膚を穿つ。
『ギシャァァアアッ』
熱を伴う穿孔の痛みに牙神が咆哮する。一つではない、三つも四つもある口が一斉に吠えるものだから、その不協和音たるや。
だがそんな三流以下の音楽であろうと、舞う者次第では天上となるのだろう。邪神の眼前で少女が舞う。神へと捧げる冒涜的なものではなく、人々を助けるための勇ましい舞。
「わー口だらけ気持ち悪いー!こっちまでおいで!」
「ルナ、無茶、しないでね
・・・。」
キケの妹、ルナが敵の眼前でくるくる、ひらひらと踊る。飛び込んできた餌は、空腹と傷を癒すのに十分だ。捕らえんとして、異形の腕が少女へ伸びる。
勿論、それが届くはずはない。兄であるキケが、そして三人をサポートする虚之香がそれをさせない。ドローンから放たれたレーザーが頭部を打ち、キケの蹴りが腕を弾き飛ばす。
『油断せずに、きっちり行くよ!』
「うん、僕らの一芸、最後までご覧あれってね!」
少女が舞う。青年の唄が皆へ力を与え、少年と機械の妖精が鋭く穿つ。邪神の牙が彼らを掠めようとも、深手には届かず。徐々に、徐々に。邪神の命が削り取られていく。
『よっし、仕留めるよ!』
「オッケー、じゃあ行くよ!」
敵の動きが明らかに鈍った。演技ではないそれを虚之香が見抜き、皆に声を掛ける。それに真っ先に応じたのはルナだ。眼前からとん、と跳ぶ。ひらりと舞い上がったそれを追う邪神の背を蹴り、空中で一回転。花弁が舞うように、虚空を華が踊り。
「トドメは譲るぜ、お二人さん!」
その隙を逃さず、踏み込んだのはエド。空中でさらに跳躍。地面を走るかのように自在に駆け抜けるその様は世界の理から外れるように。理から外れた命を討つべく、背にリュートを叩き込む。
『レギオン、オールレンジ攻撃!』
たたらを踏んだ牙神が苛立たし気に牙を、顎を振り翳す。掠めただけで常人ならば命を奪うそれも、命無き妖精には恐れるものではない。減らされた残数の残りは気にすることなく全てのドローンを放ち、360度全方位からのレーザーが射抜く。
『グッ…ギ…。』
肉の焦げる臭い、鉄錆のような血の臭い。過去を想起させる、悍ましい臭い。それを振り払うように、キケが飛び込む。
「これで終わりだ!」
エドから投げ渡された愛用のリュートを手に取りざま、叩き込む。頭部を集中して狙ったレーザーに加え、渾身の威力を乗せたそれは過たず牙神の頭部を叩き潰し、その命を刈り取る。倒れ伏した邪神は、最期の力で顎を動かして。飛び散っていた、贄か、狂信者か、己のものかも定かではない肉を食む。
僅かにでも飢えを満たした牙神は、また次の召喚を次の招来を待ち望み。その命に終わりを告げる。
「これにてカーテンコールってとこかな。」
『次の演目をお楽しみに?』
動きを止めたソレに、ふっと笑みを漏らし。やっとつけるようになった冗談一つ、キケはこつんと虚之香のドローンに拳を当てた。
大成功
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命を終わる?それは、誰が決めたのか。
そも、この世の理の外にある命である邪神の命の終わりなど、はて誰が解かるのか。誰に決められるのというのか。
まだだ。まだ肉を食い足りない。まだ世界を食い足りない。
死は確かに訪れたのだろう。『生物としての』死は、だ。
ならば、邪神としての命はまだ尽きてはおらず。餌が、欲しい。喰いたい。蠢く牙神は骸のまま、しかしそこにある。
『オオオォォォォォオオオオ』
亡霊の嘆きのように、咆哮する。この世の全てを己の胃に納めんと。死した躰の蠢く限り。
花盛・乙女
ほほう、随分とこいつはまぁおぞましい姿の化け物だな。
【家庭荘】の仲間と共に戦場に立つのだ。多少は骨があってくれよ。
不肖の身ながらこの花盛乙女、助太刀させてもらう!
敵の攻撃を瞬きもせず観察し、回避と前進で距離を詰める。私の役目は刀となること。
短刀と刀の二つを両手に構え、敵の懐に潜り込んだならすかさず斬り付ける。
我流実戦術【雀蜂】、初撃が当たれば追撃の拳骨でもっておぞましい顎を下から打ち抜いてやろう。
私の拳骨は貴様の母より痛かろう!最も母がいるかもしらないがな!
牙の一つでも折れてくれればひるみもしよう。だが休息の暇は与えんさ。
私は手数も多いのでな、重ねて今一度同じく痛い目をみてもらう!
我人・百四子
家庭荘の方たちと戦うわ(キケさん、乙女さん)。
顎の醜悪な主張に思わず顔をしかめてしまうわね…。
でも背けることはできないわ。私たちで何とかしないと。
私は念動力で手当たり次第あたりのものをぶつけて敵の気を逸らすわ。
敵はきっと顎で噛み砕く攻撃をするでしょう。
口を大きく開けた時に念動力で舌を引っ張り出してみるわ。
噛むのを一瞬躊躇すると思うから近接対峙する仲間が
回避したり致命傷を軽減したりしやすくできると思うの。
仲間の攻撃は強力だからその分カウンター攻撃に注意ね。
敵が防御の体勢を取ったら私のユーベルコードを放って反射対象を変えてみるわ。
自分のユーベルコードを受けてしまうかもだけど仲間が倒してくれるなら。
べきり、ごきりと音を立て、邪神が立ち上がる。首は裂け、手足はあらぬ方向に曲がっている。到底、立てるどころか生きているものとも思えない姿で。それでもなお、その命は冥府に居ながらも生を叫ぶ。
『グシャアァァァァアアッ!!!』
言葉にならない狂哮に、合流を果たした我人・百四子が思わず顔をしかめる。それでも決して背けはしない。この敵は、自分たち猟兵が倒さねばならないのだから。
「随分とこいつはまぁおぞましい姿の化け物だな。まぁ、せっかく皆と戦場に立つのだ、骨はあって欲しいものだな。」
「頼もしいわね。それじゃあ、行きましょうか!」
ふふんと腕を組み、強気に笑う花盛・乙女に思わず百四子も笑みが零れる。ああ、そうだ。こんなに頼もしい仲間がいるのだから、一体何を恐れようか、と。
「では始めよう、彼奴に引導を渡しにな!」
短刀と長刀、二振りの刀を抜き放ち、乙女が二幕の開始を宣言した。
一足、刹那の間さえ有ったか否か。それだけの瞬間があれば、互いの距離を零にすることなど容易い。まずは敵の戦力を減らす。滑らせた目が狙いを付けたのは、千切れかけた腕。
「…そこだ!」
滑り込んだ身体が横へと駆け抜け様に長刀を下から払う。肉と骨を断つ感触が伝わり、異形の腕が空を舞った。
良し、そう思った瞬間だった。
「花盛さん、飛んで!」
百四子の叫びが届くのと、背筋に氷柱が突き刺さるような怖気が走るのは同時。跳びながら咄嗟に掲げた短刀に、『先程腕があった場所に生えた口』が喰らい付いた。
「なんと…!」
それだけではない。これまでに猟兵達が与えてきた傷口が、ぎちぎちと音を立てて顎へと変貌していく。流れる血はそのまま、ただ口というカタチだけが与えられているのだろう。口というよりはそれは、牙の生えた傷口だ。だがそんな有様であろうと、それが脅威であることに変わりはない。
「これなら…!」
ならばと動いたのは百四子の方。念動力を全力で行使、砕けた瓦礫が宙に浮かび上がると、凄まじい勢いで殺到する。増えた口腔はそれすらも餌であるかのように喰らい付き、噛み砕く。それこそが彼女の狙い。大きく開いた口から伸びた、長い舌を念動力で絡め取り、思い切り引っ張った。
『グッ、ゲェェェッ…!』
「いいタイミングだ、百四子殿!」
そこへ再び乙女が切り込む。同じ旅団同士、呼吸は心得ていた。一撃で足りぬなら手数で押すのみ、口へと変わるならそれが追い付かない程に斬ればいい!
袈裟懸けに太刀が一閃、そこから滑るように短刀が大腿部を掻き裂き、背中に回って口を更に引き裂くように左右に両の刀を薙ぐ。
人の理を外れた邪神がいかな化け物であろうと、それが生命であろうが動く死体であろうがそこにある存在の核へと届き得る。
動きの鈍った牙神へと放つのは、百四子の切り札でもあるユーベルコード。
「『もし私が獄吏ならば、私はあなたを逃がさない』!」
翳した掌、不可視の鉄球と鎖が飛び、邪神へと絡みつく。ぎちぎちと締め上げるそれに、悶えた巨体からは鮮血が零れ、肉と臓腑が零れていく。
あと一歩、この世へと留める奴の核へと届く。そう思えたところで、しかしまだだとばかりに足掻いて見せた。
不可視の鉄球をその大きな顎で噛み砕く。未だ残る縛鎖はそのままで動くことはかなわないが、それで十分だ。
喰らい呑む悪食は一度限りではあるが、咀嚼したユーベルコードを使用出来る。意趣返しとばかり放たれた百四子の『もし私が獄吏ならば』は過たず、その本来の使用者であった彼女を縊り、締め上げる。
「百四子殿!?」
「花盛さん、今!」
ぎりぎりと体を締め上げる鎖に苦痛の声を漏らす。それでも、この千載一遇を逃してはならない。邪神もそれが解かっているのだろう、残る限りの力で動く顎が全て、乙女を喰らわんと鎌首を擡げる。
引くわけにはいかない、彼女の覚悟を受け取ったのだ。先の困難を知ったうえで乙女が踏み込む。
一歩、二歩。顔をしかめる。刃の射程圏内に捕らえるよりも先に、奴の牙がこの身に届くのが先だろう。それでもと、足は止めない、止める訳にはいかない。
それに、応えたものがある。水の刃が、赤い触腕が顎を押しとどめる。足りない牙はドローンが身代わりに。彼女の脚を唄が後押しする。
一人ではないことが、こんなにも心強い。
まずは一太刀!深く、身体の奥まで断ち切ったそれは肉でも骨でもないものを断った確信がある。そして――。
「私の拳骨は貴様の母より痛かろう!最も母がいるかもしらないがな!」
その拳骨を以て、牙神を打ち砕いた。
「…ふぅ、どうなる事かと思ったぞ、百四子殿。」
「ふふ、でもお陰で助かったわ。有り難う。」
鎖の後が残る腕をさすりながら、百四子が微笑む。その礼が向けられている先は、乙女一人ではなく。この場で戦ってくれた、全ての皆へ。
構わないさと応えたのは、誰だっただろう。解からないが、それはきっと皆の代弁だったのだ。
何故ならその場にいる皆が、微笑んでいるのだから。
ここに、牙神は討たれた。猟兵はこれからも戦い続けるだろう。沢山の人々の、この微笑みを護るために。
大成功
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