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都市型儀式:百物語

#UDCアース

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#UDCアース


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●百物語の怪
 しとしとと雨の降る夜のことでした。
 県立平木小学校の宿直室に、一人の教師と六人の子どもたちが集ったのでございます。
 この場唯一の大人、英語教諭のキャサリン・メイ。
 彼女の息子、中学二年生のエディと六年生のフレッドの兄弟。
 同じく六年生、礼門雄二。五年生、南嶺にいる。四年生の椎葉那留と拝野斗真。
 英会話クラブに在籍する男子四人、女子二人と女性教諭ひとり。これがこの日、百物語を楽しむべく夏休み最終日前夜に集った面々でありました。
 各々とっておきの怪談をひとり五話。百を語れば本物の怪異を招く、とも申します。三十と五話というのは、ひと夏の思い出として楽しむに程よい塩梅でございましょう。
 日のある内に宿題の仕上げを済ませ、日が落ちた頃合いを見てキャサリン教諭の買ってきた菓子とジュースを囲み、LED蝋燭を灯してとびきりの怖い話を語っては蝋燭の電源を落としてゆく。
 そうして、最後の一話に至ったのはまもなく日付も変わろうかという頃でした。
 最後の一人は礼門少年でした。彼が最後の最後まで取っておいたとびきりの怪談、それを語り終えたその時のことでした。
 新品のはずの蝋燭がふっと明滅して消え、辺りは突然の暗闇に包まれたのでございます。
 そうして視界が暗黒に閉ざされたのはほんの数秒のことでございましょう。長くとも一分には満たない僅かな時間。
 すわ悪霊を呼び覚ましたかと肩を強張らせながら、明かりを求めて蝋燭のスイッチや電灯の紐を探し手を彷徨わせたのも束の間、再び灯った光に六人はほうと安堵の溜め息を吐いて、電灯の紐を引いて光に満たされた宿直室を片付けると荷物を纏めて傘を差し、校庭の隅に停められたキャサリン教諭の車へと向かったのでした。
 肝を冷やすようなアクシデントも、過ぎれば楽しいイベントでございます。男子四人、女子ひとりに女性教諭ひとり。英会話クラブの面々は、夏休み最終日前夜の日本文化体験会と銘打った百物語を楽しんで、翌々日からの新学期に心踊らせ雑談に花咲かせながら、教諭の車で各々の家へと帰っていったのでございます。
 その車のテールランプをじぃっと見つめる四つの眼があったことに、ついぞ誰も気付くことはありませんでした。
 上のふたつは爛々と。下のふたつは一杯に涙を溜めて、助けを求めるように。
 されど怪異に囚われた南嶺にいるのことは、彼女の両親を除いた世界中の誰も……つい今しがたまで共に笑い合い、怪談を楽しんだばかりの英会話クラブの面々ですら覚えてはいなかったのでございます。

●災いの根を断つために
 からり、からから。糸車型のグリモアで糸を紡ぎながら、麻布綿花はそう語り終えた。
「これが、これより起こる事件のあらましでございます」
 F県K市、平木小学校。その英会話クラブに所属する生徒と教師が、夏休みのレクリエーションの一環として始めた百物語。
 それは百には遠く及ばぬ話数であったはずなのだが、最終話と共に怪異が現れ生徒のひとりが「連れて行かれて」しまう。
「厄介なことにこの怪異、拐われた当人とその最も縁深いひとを除いてすべての人々から拐った相手の記憶を消すのでございます。そのうえそのひとの存在した痕跡すらも残さず消し去ってしまうために、一度拐われてしまえば僅かな違和を辿って助け出すことも困難なのでございます」
 UDC組織でも中々対策を打てていないのは、それが引き起こした失踪事件そのものが「なかったこと」になってしまうため。
 はじめからこの世に存在しなかった人間が拐われたなど、それを実証し調査することはほぼ不可能だ。
「ですので皆様には、怪異の先手を打って拐われる前に子供たちを守っていただきとうお願いいたします」
 綿花の予知とUDC職員としての知識は、この百物語という怪談自体が儀式となり、また礼門少年が仕入れた「とっておき」の話がそれを起動する詠唱となって怪異を呼んでしまうという結論に至った。
 これを避けるためには礼門少年が最後の話に至る前に猟兵たちで話数を水増しして百話を語り終えて不完全な状態で儀式を完了させるか、百物語自体を中断させるか――子供たちのひと夏の思い出を中断させるには相応の理由が必要であろうし、守るべき子供たちから反感も買うであろうが――が必要だ。
「それでも儀式自体が始まってしまうのは避け得ません。さすれば不完全なりと怪異は現れましょう。ですが妨害が成れば猟兵ですら気づけぬ間に子供を拐い存在を消してしまうほどの力は出せぬはず、そこを皆様の手で討ち取ってくださいませ」
 からから、からり。糸車が紡ぐ糸を四本の腕で器用に巻き取り、転送陣をあやとりのように編み上げた綿花は、猟兵達の武運を祈るように微かに微笑んだ。


紅星ざーりゃ
 こんにちは、紅星ざーりゃです。
 お盆のお墓参り以外、夏らしいイベントにめっきり触れなくなったこの頃、昔を思い返せばやっぱり花火大会より家で読書、海に行くより自室でゲーム、と昔から大して行動は変わっていないなと自覚してやや凹みました。
 閑話休題。
 今回は夏の定番イベント百物語に介入し、それが呼んでしまう不気味な怪異を撃退して子供たちを守る、そんなお話でございます。

 一章では百物語に対してのアプローチ。
 教諭や子供たちに働きかけて強引に中止させるもよし、怪異のフリをして脅かし続行の気力を削ぐもよし、猟兵たちで百話語り終えて最後のトリガーとなる話をお蔵入りさせるもよし。
 ただし選択や行動次第では子供たちが反発したり、逆に怯えすぎていざという時に足が竦んでしまう――なんてこともあるやもしれません。

 二章では怪異出現の予兆たる怪現象が発するでしょう。
 恙無く儀式が完遂されてしまった予知内ではLED蝋燭が突然消灯する程度でしたが、儀式妨害が行われればそれを行った猟兵を排除するため暴力的なポルターガイストとなるでしょう。
 また、この事象の発生中は校舎全域のあらゆる扉や窓がなんらかの力で封鎖されてしまうため、怪異が本格的に現れるより前に子供たちを逃がすことはできません。

 最後に三章では出現した怪異との決戦となります。
 強力なUDC怪物です。油断なく対処してください。また、積極的に子供を狙うためこの対応も必要となるでしょう。

 加えて今回も、説得に必要そうな道具や身分の調達、怪現象のヤラセや事後処理などの各種支援は同行するUDC組織のスタッフが適宜猟兵の指示に従って行います。
 指示がなければ校庭に乗り入れた車輌で待機しているでしょう。彼らの協力が必要なものがあればプレイングで指定してください。
 ただし、軽武装こそしていますが戦闘においては殆ど役に立ちません。ホラー映画の警察や軍隊の如く、怪異と戦えばたちまち全滅してしまうでしょう。お気をつけを。
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第1章 冒険 『止めろ猟兵!百物語の怪!』

POW   :    百物語中の現場へ押し入って強引に中止させる

SPD   :    百物語中の怪異に見せかけて妨害する事で中止させる

WIZ   :    百物語の話し手に紛れ、怖くない話で妨害する

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「さあミンナ、そろそろ今日のメーンイベントを始めましょ」
 夕刻。七時を回り、日もそろそろ沈もうかという頃、金髪で恰幅のいい中年の女性――英語教諭のキャサリンは両手をパンと鳴らして子供たちに呼びかけた。
 意外と広々とした宿直室は、これが生徒指導室も兼ねていることの恩恵だろう。通常の教室の半分よりやや広い程度の室内、畳の上で各々好きなように過ごしていた子供たちがその声に応じてもそりもそりと集まり、キャサリン教諭の置いた背の低い長机を囲むように座る。

 年長から順に、スマートフォンでUMA系のサイトを閲覧しながら机に頬杖をつく、キャサリンと違い黒髪の、しかし日本人離れした彫りの深い顔つきの少年、エドワード・"エディ"・メイ。
 この場唯一の中学生である彼はキャサリンの息子で、母親譲りの丸い輪郭と肉付きのいい体格が特徴的だ。対人関係より趣味を優先し、また気が弱くあまり社交的ではないいわゆるナードではあるが、オカルトへの造詣が深くまたその語りは子供たちにも分かりやすいということで、今日のレクリエーションにも招かれた。

 続いて小学六年生組として、エディの弟でキャサリンの次男、フレッド・メイ。
 兄とは違い、校区のフットボールチームで鍛えられたガッシリとした体格で、西洋人ならではの大人びた顔つきも相俟ってまるで兄と同じくらいの年頃の中学生のようだが、兄の二つ下だ。
 体型だけでなく正確も兄とは正反対で、快活で勇敢、下級生への面倒見がよく英会話クラブのリーダー格と言ってもいいだろう。

 もうひとりは礼門雄二。こちらは線の細い美少年の部類に入る見目の少年だ。
 目元にかかる長めの前髪も、彼の容姿であれば不潔さより神秘的だという感想が先に立つ。寡黙で落ち着きがあり、エディとは別の方向で血気盛んなフレッドと真逆ながら彼とは仲のいい関係にあった。
 一方で雄二も怪談などのオカルト話を好み、掲示板などに投稿される真偽不明の"怪奇体験談"、いわゆる洒落怖を好んで集める趣味の持ち主で、今しがたも携帯ゲーム機用の動画アプリで洒落怖の朗読動画を見ていたらしい。画面をぱたりと閉じるなり、すごいのを見つけたとエディに自慢している。

 そして五年生、南嶺にいる。いかにもお嬢さん、といった風貌にふさわしく、控えめで優しい少女である。
 身体が弱く、つい三日ほど前まで夏風邪で寝込んでいたらしい。寝込んでいる間にやる予定で溜まってしまった宿題をエディや雄二に教わりながらようやく片付け、キャサリンが冷蔵庫から出した缶ジュースを目元に当ててくたびれたようで居ながら、百物語の開始が楽しみでならないといった風に笑顔を浮かべていた。

 最後に四年生のふたり、椎葉那留と拝野斗真。
 少年に見まごうようなよく日に焼けた小柄な少女が那留で、同じくこんがりと焼けた肌の少年が斗真だ。
 昨今の子供たちには珍しく、家でスマホやゲーム機をいじるより外で遊ぶほうが好き、というふたりは、その嗜好もあってよくふたり一緒で居ることが多い。
 夏休みも川でザリガニを捕獲したり、山でカブトやクワガタを採ったりと大いにアウトドアを楽しんだようだが、おかげで宿題がピンチだったらしくなんとかドリルだけはやっつけたことで二人揃って安堵の長い息を吐いて机に突っ伏していた。

「はいはい、それじゃあロウソク配るわよ。火はサスガに駄目だから、電気のヤツにしたわ。スイッチはココよ。一回入れたら後はフッてすれば」
 手にしたLEDロウソクを点灯させ、フッと息を吹きかけるキャサリン教諭。するとロウソクの明かりが消え、もう一度息を吹きかけると再点灯する。
 それを見て四年生組が歓声を上げ、自分たちのロウソクをやたらと点けたり消したりするのを電池が無くなってしまうとやんわり嗜めるにいる。
 それぞれ今日のために調べて、あるいは思い出し、または盆に会った家族や親類から聞き出して集めた怖い話を胸に、長テーブルの長辺に三人ずつ座ってお菓子をほおばる。
 上座にキャサリン教諭。
 教諭から向かって右側に、にいろを挟むように斗真と那留の四年生組。
 向かって左側にメイ兄弟、一番奥が雄二。
「それじゃ、はじめましょ。先生が一番手で、そこから時計回りでいいかしら?」
 異議なし、と同意する子供たち。斯くして、それと知るものは誰も居ないまま儀式の幕が開く。


「――到着です。すみません、渋滞さえ無きゃもう少し早く着いたんですが」
 申し訳無さそうにシート越しに振り返るUDC組織の運転手。
 学校行事のために借りられたマイクロバス、のように偽装したUDC組織の軽装甲車は、しとしとと雨が降り出した街を走り、ようやく平木小学校の校門をくぐる。
 ぬかるんだグラウンドにタイヤの跡をしっかりと残して侵入したバスの中には、猟兵とその支援のために派遣されたUDC職員たち。
 貨物室にもこの作戦の為に準備された資材や道具が詰め込まれているが、敵の正体がわからない以上何が必要かはっきりせず、猟兵に言われるままに載せたものやなんとなく必要そうだ、という曖昧な理由でとりあえず積み込まれたものまでその中身は不明瞭だった。
「とにかく、我々はここから支援します。何か必要な物があれば連絡を寄越してください。持ってきてないものでも、五分くらい走れば24時間営業のホームセンターとコンビニがあったのでそこで調達してきますよ」
 すでに被害者が居るのか、今回が初めてなのか。UDC組織の情報力をしてそれすらわからないというのは、つまりひょっとすれば自分の知り合いがすでに犠牲者となっていてもおかしくはないということ。
 ここでその怪異を止めねば、最悪の想像が現実になるかも知れない。
 だから彼らは、戦う力のない者なりに全力で猟兵を支援すると誓う。
「猟兵の皆さん、子供たちを頼みます」
 自分ですら気付かないうちに知っている誰かの存在が忽然と掻き消え、自分がその誰かのことを忘れていることにすら気づけない。そんな恐怖に立ち向かうならば、頼れるのは猟兵だけだ。
 その願いを背に受けて、猟兵達は雨が降りしきる校庭へと降り立った。

「――というわけで、その時見たものが何だったのか……おばあちゃんも最後まで不思議がっていました」
 ふっ、と蝋燭を吹き消すにいる。
 怪談はすでに六話目。果たしてにいるの祖母が見たものは何だったのか……そして、一緒に居たはずの友人は何処に消えてしまったのか……出来事に何一つ解の見いだせない、なんとも後味の悪い消化不良気味の話にフレッドが眉間にシワを寄せて呻く。
 そんなときだ。こん、こんと宿直室の引き戸を叩く音がしたのは。
 子どもたちの肩がびくりと跳ねる。それもその筈、遅くまで部活動に励んでいた運動部の生徒たちももう一時間は前に帰宅している。地方都市の学校では常駐の警備員など居らず、その代役として最後の戸締まりを任されたのはいまここに居るキャサリンのはず。
 そして百物語を始める前、買い出しから戻ったついでにキャサリンは全階全ての教室で戸締まりを確認し、残った生徒が居ないことも確認している。
 となれば、風かなにかで物が動いて扉に当たったのか。しんと静まり返った宿直室に、窓ガラスを叩く雨粒の音がたぱたぱと響く。
「聞き間違いだろ。ほら斗真、お前の番だぜ……?」
 強がってみせるフレッドが斗真に促せば、肩をこわばらせた斗真は頷いて、意を決して蝋燭をひとつ手に取る。
 そこでまた、こん、こん。口を開いた斗真も声を殺して黙り込む。
 聞き間違いではない。何しろ男の声で「すみません」などと聞こえるのだから。
 子供の声ではない。そしてキャサリンにも聞き覚えがない声、ということは生徒でも教師でもない。
 不審者が入り込んだならば、確かめて通報しないといけない。キャサリンは押入れからさすまたを取り出して、子どもたちに部屋の奥に居るように伝えて扉の方へ。
「何かあったらマドから逃げなさいね。エディ、いつでも110番にコールできるようにしてなさい」
 下級生を守るように一歩前に出るフレッドと、スマホを操作して通報を待機するエディ。
 那留と斗真はにいるにしがみつき、雄二は固唾を呑んでキャサリン教諭の背中を見つめている。
 がたがたと引き戸の滑車が揺れる音を立てて、宿直室の扉が開かれる。
 と同時にさすまたを構えたキャサリンの前に、七人の人間が現れた。
「あ、やっぱりいらっしゃいましたか。いやあこの雨ですから中止になったかと思いました」
 その真ん中、一歩前に出たスーツ姿の男がにこやかに笑う。
「あなたは……?」
「あ、怪しいものでは無いですよ。――なんてすごく怪しいですけど。一応校長先生の許可は得てお尋ねしてます。私、K市役所市民課の江藤といいます」
 すっと名刺を差し出す男。その名刺を確かめ、後ろに立つ人々にも視線を向けてキャサリンはなお怪訝に首を傾げる。
「市民課のヒトがこんな時間に何ですか? 後ろのヒトたちは?」
 江藤と名乗る市役所職員――に偽装したUDC職員は、この校区で九月から始まる留学生受け入れの前に、地域に馴染んでもらうレクリエーションの途中だったと説明して、その一環としてこの百物語にも参加したいと言う。
「はぁ……ですケド、あくまで身内のちょっとしたイベントですから……」
 難色を示すキャサリン。そこでふいに江藤たちに助け舟を出したのは雄二だった。
「いいじゃないですか先生。人数が多ければそれだけいろんな話が聞けます。僕はそっちのほうが楽しいと思う」
 そうかしら、と困り顔の教師に、雄二に続いて那留と斗真も皆で参加すればいいと訴えれば、キャサリンもついには頷いた。
「よかった! 私は表のバスで待ってますので、終わったら皆さんバスまで戻ってくださいね。ああ、これ良かったら皆さんでどうぞ」
 追加の飲食物を差し入れて、江藤はバスへと戻っていった。
 人数を倍に増やし、百物語は続行される。
空雨・かがり灯
WIZ

恐ろしい怪異に、子供たちの楽しいひとときを壊させてはいけませんよね

市への転入者を装い、地域との親睦を深めるため
この会への飛び入り参加を勧められた、という設定で参加
UDCの方にも市役所職員に扮していただき、多少無理があっても【言いくるめ】てしまいます
その後皆さんと打ち解けられるかは【コミュ力】の見せどころですね!

これは私の地元で本当に起こった出来事なんです
ある夜、家の中からカタカタと物音がするんです
音は日を追うごとに大きくなって…ついに、見てしまったんです
暗い部屋の中に光る、大きなふたつの目を……

なんて話を情感たっぷりに語ってみましょう!
タヌキ、遠目では可愛らしいのですけれどね

アドリブ歓迎




「それじゃあ、次は私ですね」
 斗真の語りは子供らしく纏まりのないながらに、彼が経験した不思議な出来事を臨場感たっぷりに一同に伝えた。
 恐怖を煽るような内容ではなかったが、それでも不可思議な出来事には違いないだろう。怖がりな那留などは明らかにほっとしていた。
 そんな様子を見回して、かがり灯は切り出した。
「来月からこの校区の中学校に転入します、空雨かがり灯です。エドワード君は中学生でしたっけ。卒業までの半年間だけですが、よろしくお願いしますね」
 にこりと微笑む彼女に、緊張で頬をわずかに染めて短くよろしくと返すエディ。
「それでは失礼して……これは私の地元で本当に起こった出来事なんです」

 ある晩のことでした。
 妙に寝苦しかったその日、私は深夜まで布団の中でただ目を瞑って意識が眠りに落ちるのを待っていました。
 でも、そういうときってついついいろいろなことを考えてしまいますよね。
 明日はどうしよう、とか。今日はもう少しここをこうしておけばよかった、とか……そういう日頃のあれこれへの反省とか、少し喉が渇いた気がするから水を飲みにいこうか、でもそうすると目が冴えてしまうから悩ましい、とか……
 そんな風にとりとめのない考え事に没頭していた私は、ふと気づいたんです。
 カタカタ、カタカタと音が聞こえるんですよ。外からじゃありません。家の中からでした。
 眠れない深夜は時計の秒針の音が気になるものですが、時計の音にしては不規則ですし何より音の感じが違います。
 では泥棒? とも思いましたけれども、どうにも人の立てる音にしては小さいので私はきっと家の何処かが家鳴りしているのだろうと思って、その日は確かめることをせずに寝てしまったんです。
 翌朝確かめて見ましたけれど、やはり金品が荒らされているということもなく家鳴りだったのだと安心して、その晩も布団に入ったんですね。
 ですがその晩も音が聞こえる。カタカタ、カタカタ……これは家鳴りだから気にすることはない、と。何しろ田舎で古い家ですから、そういう音もするのだと言い聞かせて気にしないようにして眠る。けれど毎晩毎晩その音が聞こえるんです。
 しかも、その音は日を追うごとに大きくなっているように感じました。これはどうもおかしい、家鳴りじゃないぞ、ということである晩ついに私は布団の脇に置いておいた木刀を握って、音の出処を確かめることにしたんです。
 木刀は両手で振るものですから、懐中電灯なんて持てません。暗い家の中を手探りでゆっくりと進み、床が軋む音もなるべく立てないように静かに静かに歩く我が家は、何年も慣れ親しんだ建物だというのにまるで何処か知らない建物に独りで放り出されたように心細く不気味でした。
 そしてついに、音の出処らしき部屋を突き止めた私はぞっとしました。
 そこは今は誰も使っておらず、倉庫として使っていた部屋だったのです。私達家族ですら、なにか必要なものを取りに行く時くらいしか開けない、半ば開かずの間――そのドアノブをゆっくりと回し、覗き込んだ私は……ついに、見てしまったんです。

 暗い部屋の中、私の背後にある廊下側の窓から差した微かな月明かりを反射して光る、大きなふたつの目を――

 かがり灯の語りに、那留が悲鳴を上げてにいるにしがみつく。
 フレッドが大きく息を吐いて緊張を解き、それから恐れを隠すように強気にかがり灯に問う。
「それで、その目って何の目だったんだよ」
「それはですね……」
 勿体つけるように沈黙するかがり灯に、一同の視線が集中する。
 誰もが息を止めて、その怪物の正体に身構える数秒間。それからかがり灯は重々しく口を開いた。
「――タヌキ、でした。田舎の古い木造建築ではたまにあるんですよ、屋根裏や軒下から穴を開けてタヌキが入ってきちゃうんです。倉庫にあった防災袋の保存食を食べに来ちゃったんですね」
 カタカタというのはタヌキがエサを得るために走り回る音。
 日に日に音が大きくなっていたのは、よりたくさんのエサを求めてタヌキが家の中の行動範囲を広げていたために近づいてきていた音だったのだ。
「何が怖いって、だんだん遠慮の無くなっていたタヌキがもし人間の生活スペースまで荒らし始めたらと思うと。タヌキ、遠目では可愛らしいのですけどね」
 皆さんも野生動物には気をつけましょうと結んで、かがり灯の話はおしまい。
 蝋燭をふっと吹き消して、次の語り手へとそれを渡す。

成功 🔵​🔵​🔴​

波狼・拓哉
昔から伝わってる系ってのは本当に面倒だよね。猿夢しかりメリーさんしかり百物語しかり…まー止められるだけマシか。
さて…後のことも考えると渦中にいた方がやりやすいかな。水増しだな。
偶々学校にいた超常現象専門の探偵として接触。…UDC組織の力で校長、教育委員会から依頼でもあったとかやれば怪しまれないかな。雨が上がるまで居させてほしいのと暇なんで参加してもいいかなとコミュ力、言いくるめ使って頑張ろう。
さて話…んーあ、ベタなのでいいのか。聞き飽きてるレベルだろう。知ってるとか言われれば更に数を重ねれる…流石に全部それだと怪しまれるし狂ってないUDC案件も真実隠したうえでいくつか話すか。
アドリブ絡み歓迎)




「じゃあ次は俺かな」
 受け取った蝋燭に光を灯し、青年は居住まいを正す。
「俺は波狼拓哉、超常現象専門の探偵です。この人らとは別件で偶々学校に居たんだけどね」
 その肩書きに、一気に生徒や教師の視線が胡散臭いものを見るそれになる。
 同じ仲間であるはずの猟兵からもそんな視線を向けられることに苦笑して、拓哉はそんなに怪しくないですよと皆を宥めるところから入るのだった。
「超常現象専門の探偵ったって、何もインチキ拝み屋みたいな悪霊がいるからお祓いしなきゃいけない、とかって言いふらすような仕事じゃありません。むしろそういう変なものが悪さをしてるんじゃないか、って不安を持ってる人に調査の結果理屈で説明できるこういう現象でした、って報告して安心してもらう方が多いかな」
 どうしてもオカルトを商う人間には胡散臭い、詐欺めいたイメージを抱きがちなのがこの情報化社会と化した現代の傾向だ。信心深いキャサリンですらそう疑ってしまったのだから、超常探偵さもありなん。
「今日も教育委員会から頼まれてこの学校の調査に来てたんですよ俺。なんか子どもたちの間で変な噂が流行ってるから、新学期の勉強に影響が出る前にそんなものはない、って証拠を見つけてくれって」
 君たちはなにか知ってる? と問えば、雄二がこくりと頷いた。
「怪談おじさん、のことかもしれないです。すごく面白い怪談を聞かせてくれるんだけど、その怪談を誰かに話すと話通りの怪奇現象に襲われる、ってやつ。会ったことあるって友達は居ないけど、少し前から噂になってて」
 藪をつついて蛇が出たか。子供たちを信頼させるための建前で、なにかのしっぽを踏んだ感覚に拓哉は微かに眼光を鋭く、その話後で聞かせてくれるかなと雄二に確かめた。
「ま、そういうわけで俺は仕事柄いろんな超常現象に触れる機会が多いんで、話のネタなら一人で百物語できるくらいには持ってますよ。雨宿り賃と俺の暇つぶしも兼ねて、今日はその中からいくつか話そうと思う」

 これは俺がまだ新人だった頃に受け持った依頼の話なんだけど。
 その依頼人は小高い丘のてっぺんに立つアパートの住人。なにかに怯えるようにいつもキョロキョロしてる人だった。
 部屋を訪ねた時窓際に大きな望遠鏡が置いてあったのが印象的で、俺はその依頼人に聞いたんだ。
「天体観測がご趣味なんですか?」
 って。そうしたら依頼人は少し迷ったように視線を泳がせてからおずおずと話しだしたんだ。
 上じゃなくて下を見てたんです、って。
 褒められたことじゃないけど、その依頼人は望遠鏡で眼下の街を見るのが趣味だったそうで。普通に盗撮まがいなんで絶対真似しちゃダメだぞ?
 で、話を戻すんですがその依頼人、数日ほど前に日課の街の観察をするために望遠鏡を覗いたらしい。
 仲良く腕を組んでコンビニから帰る途中のちょっとチャラいカップルとか。
 くたびれたサラリーマンがとぼとぼと家路に就く様子とか。
 公園の噴水前で、真夏だってのに真っ赤なコートを着込んだ変な女とか。
 街にはいろんな人が居るもんで、それを眺めるのが楽しかったんだそうで。
 そんな風に街のあちこちを眺めてた依頼人がふと、アパートの下、丘を登る道の入口のところを見たとき、そいつはいた。
 そこにはジュースの自販機があったらしいんですが、その側面になんか動いてるものがある。
 なんだろう、と望遠鏡を向けると、どうやら人がいる。それが自販機に額を打ち付けているみたいに見えた。
 酔っ払いかな、それとも自販機を壊そうとしてる変な人なのかな。通報したほうがいいのかな、と思ったそうなんだけど、でも通報して事情を聞かれた時に望遠鏡で街を見てました、なんて言えないよな、と悩みながらそいつを見てた依頼人は、すぐにそれを後悔したらしい。
 そいつが急に振り返って、依頼人のほうを見たそうなんだ。距離にして数百メートルは離れてる。俺もその自販機から依頼人のアパートを確認したけど、暗い夜中にそこから見てる人間に気づいてばっちりそこをピンポイントに見れるかっていうとそれは中々難しいと思うんだが、依頼人は絶対に見られたと思ったらしいんだ。
 それで慌てて窓を閉めてカーテンも閉じて、今日はもうやめようと布団に潜り込んだら――

「それ知ってます。そいつが走って坂を登ってきてアパート中のドアノブガチャガチャして回る、って話でしょ。怖いけど有名な洒落怖じゃん」
 話のオチに至る前に、雄二からツッコまれる拓哉。
「ありゃ、知ってたか。まあ大筋はその洒落怖の通りなんだけどね。結局このときの依頼人は心を病んでて、そんな変なヤツは現実じゃない妄想の中の存在だったってオチなんだ。しまいには俺までその自販機の奴に見えはじめたらしくて、暴れるのを取り押さえるのが大変だったよ」
 生きてる人間が一番怖いって本当かもね、と笑って、拓哉は考える。
「じゃあネタバレした話は置いておいて、これは俺があるカルト教団の調査をしたときの話なんだけど……ねこがにげてたんだ」
 それは壮絶なアクションスペクタクル。逃げたねこ……ねこ? 描写からして猫ではなさそうだが拓哉がねこって言うんだからねこなんだろう。
 ねこの捕獲劇やカルト教団との死闘、復活したSAMEとの戦いなど、手に汗握るアドベンチャーに下級生組は手に汗握る大盛りあがり。
 おとなしそうなにいるまで拳を振ってノリノリであった。
 こんな話題から普通に怖い話題まで、いろんな経験を積んできた超常探偵は伊達ではない。
 次は何の話をしようかと考えながら、拓哉は吹き消した蝋燭を次へと手渡した。

成功 🔵​🔵​🔴​

イデアール・モラクス
【PPP開発室】
クックック…つまり真夏の怪談に横槍を入れてやればよいのだろ?
ならば真夏の夜に最も相応しい話をしてやるよ…一夏の淫らな夢の話を。

・準備
パッツンパツンの白シャツに短すぎるタイトスカートの女教師スタイルで決め、用意させた偽りの英会話教師としてスルリと介入だ。

・行動
UC【淫魔のギアス】により強化された『誘惑、催眠術、コミュ力』の力で子供や女教諭すら上気せるほどの魅了フェロモンを纏い、淫靡な『呪詛』を交えながら話をして怪談を猥談に変えてしまう。
「昔々あるところに、1人の可愛い少年と熟れた女教諭がおりました…2人は人気のない音楽室で…ピアノに腰かけ…激しく絡み合って…ククク」

※アドリブ歓迎


フィーナ・ステラガーデン
【PPP開発室にて参加】
じゃあ次は私の番ね!(しれっと学生服を着て百物語に参入)

これは実際に私が体験した話しよ。
私はーちょっと友達と船にいたのよ!
そこの船には屈強な乗組員の男達がいて私達と遊んでくれたわ!
私達は船の中心部に足を向けて歩いていたのだけど
そこで気付いたのよ!今までいた男達が一人、また一人と姿を消しているのことに!
私は暗がりを見たわ!すると一瞬見えたのよ!
あれは何ていうのかしら。無数のタコの足のようだったわ!
その足に引きずられる男の姿!その足と一緒に不適に笑う女が見えたわ!
哀れ107飛行隊はその女に・・!あ、その女はこいつよこいつ

怪談より身内が怖い。そんな話をするわ!
(アレンジ自由!




「クックック……真夏の夜に相応しい話か。任せておけ、私にはそんな話題が腐るほどある」
 ふふん、と一人押入れの上段に腰掛け脚を組むイデアール。
 派手な下着が見えそうなくらい胸元を大きく開けて、それでもなおはちきれそうな白いシャツ。
 豊かな肉体が弾けそうなほど短いタイトスカートに身を包み、スマートな眼鏡を掛けたその姿はまさに女教師――のコスプレしたいかがわしいお店のお姉さん。
「来月から寿退職の英語教師と交代で中学英語を担当する、イデアール・モラクスだ。ふふん、男子諸君見たければ堂々と見るがいい!」
 ドヤ顔で一般人相手にユーベルコードまで使って魅了を施すイデアール。
 その血に眠る淫魔の力が目覚め、一同に得も言われぬ悶々とした感情を植え付ける。
「か、母さん……モラクス先生って本当に先生なの?」
「キャサリン先生、あの人先生っぽくない……」
 落ち着かなさげに視線を彷徨わせるエディに、明らかに警戒感を高めるにいる。
 キャサリンもイデアールのユーベルコードにあてられながらも、子どもたちの前だという一点で踏みとどまる。
「モラクス先生、アナタ本当に先生ならもう少し服装に気を遣いなさい」
「ん? ああ済まないな。正式に出勤する時は改めよう」
 ――尤も、出勤することは無いんだがな。とイデアールは内心で苦笑する。中学英語教師というのは今回のレクリエーションに参加するための偽りの肩書き。今の教師が寿退職するのは事実だが、実際に手配される教師は別の人間だ。
 まあ、その辺りも魅了して若い男子が大勢いる学校に勤めるのも楽しそうだな、と思わなくもないのだが。
「では私の番だ。クク……皆、特に男子は聞き逃すなよ?」

 それは"昔々"のことだ。あるところに一人の可愛い少年と、熟れた女教師がいた。
 女教師は少年を我が子のようにたいそう可愛がっていたが、そこは学校。目に見えて贔屓をすれば他の生徒も気に入らないし、同僚や教頭たちからも注意をされるということで二人は次第に他者の目のないところで交流するようになっていった。
 特に音楽室なんかは、その頃誰も居ないはずのそこからピアノの音が聞こえるとかなんとかで人がめっきり近寄らなくなっていてな、私…………んん゛っ、二人にはとても都合が良かった。
 その日も女教師は鍵盤の上に腰掛け、少年はその前に――

「しゅーりょー!! そこまでよイデアール!!」
 びしぃ、とイデアールを指差し立ち上がるフィーナ。
 話の流れが妙な方向にズレ始め、胸を強調するように我が身を抱いて息も荒く身を捩る仲間の姿に嫌な予感を感じた彼女は、これ以上怪談もとい猥談を続けさせるかと妨害に入る。
 小さい子供だって居るんですよ!! 他所でやんなさい他所で!
「ほんとアンタが妙にウキウキノリノリだったから嫌な予感してたけど期待を裏切らないわねイデアール!」
 こんな事もあろうかとUDC職員から貰っておいた結束バンドでイデアールの親指を後ろ手に束ね、その上からロープでぐるぐる巻きにして押入れに蹴り込んだフィーナは、何事もなかったようにその襖を閉じて座布団にぼすんと座り直す。
 学生服に身を包んだ彼女はどう見ても中学生、ともすれば小学生にも見えるがれっきとした成人である。彼女の国では二十歳以下で成人扱い、とかそういうアレではなく、日本国の定めるところである二十歳という年齢を満たす成人だ。むしろこの成長の乏しさが怪談のような気もする。
「私はフィーナ、フィーナ・ステラガーデンよ。ヨーロッパのなんとかって国からの転校生! よろしくしなさい!」
 なんとかって何処だよとか、なんでこんな偉そうなんだ、とか、モラクス先生蹴り飛ばしたぞ怖いとか、そんな意見を一睨みで封殺してフィーナは自信満々で持ち込んだ怪談を語る。

 これは私が実際に体験した話よ。
 あれは冬だったかしら。私は――その時、ちょっと用事で船に乗っていたわ。
 その船には屈強な乗組員の男たちがいて、私達と遊んでくれたわ! 花火とかしたわね!
 そうやって遊びながら私達は船の中心を目指して歩いて居たのだけど、そこで私は気づいたのよ。
 さっきまで遊んでくれていた男たちが、気がつくと一人、また一人と姿を消しているのことに!

「のことに?」
「日本語は不慣れなのよ! スルーしなさい!」
 斗真を速やかに黙らせたフィーナは更に語る。

 あいつらも船員だもの。他に仕事があるのかもと思って気に留めなかったんだけど、ふと振り返った私は見てしまったのよ!
 暗がりに一瞬だけ蠢くなにかを! それが船員の口と脚を絡め取って音もなく暗闇に引きずり込んでいくのを!
 それはまるでタコの脚のようだったわ。タコと違うのは吸盤がないのと、太さや長さの違う脚だけが通路いっぱいに詰まっていたこと……
 恐る恐るその脚の大元を視線で辿った私は、そこでもっと恐ろしいものを見たわ。
 蛸足に絡め取られた無残な姿の男達と、その中心で不敵に笑う女…………
 哀れ107飛行隊はその女に――これ以上は私の口からはとても言えないわね!

「いや誰だよ飛行隊」
 フレッドの率直なツッコミ。船員設定じゃなかったんですか。
「そ、それでその女は一体……?」
 怖いながらに続きが気になるにいる。
「ん? 気になるなら本人に聞いてみるといいわ! ただし自己責任よ!」
「本人いるんですか……!?」
 騒然となる一同。
「居るわよ。だってその女ってこいつよこいつ」
 押入れの襖をすぱんと開ければ、縄で芋虫になって艶めかしくのたうつ妙齢の女教師モドキ。
「……………………あー」
 全員が納得するように頷く中、フィーナは再び押入れの襖を勢いよく閉めるのだった。
「怪談より身内が怖い、そんなお話ね!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

四季乃・瑠璃
緋瑪「百話終了で怪異…いかにもって感じ」
瑠璃「現れた時点で殺せれば楽なんだけど。でも、なんで35話で起動?」
緋瑪「百話よりも話の内容がトリガーだった?」

SPD、WIZ

今回は最初は緋瑪は分身せずに待機。
一応、【高速詠唱、全力魔法】による魔術結界で怪異が現れた際の妨害を試みて置くよ。
その後、UDC組織に作って貰った偽造身分と【コミュ力、言いくるめ、誘惑】で学校のOBで立ち寄ったとかどうにか話し手の輪に紛れ、自身と緋瑪をモデルにした「ドッペルゲンガーの殺人鬼」という話を生々しく話し、話し終える瞬間に【ダブル】を発動して緋瑪を召喚。
自身の騙りと併せて恐怖演出でこれ以降の話を中断させ、完成を妨害するよ




「次は私だね。蝋燭、頂戴?」
 手渡された蝋燭をふっと吹いて点灯させた瑠璃は、揺らめくオレンジ色の光に照らされながら微かに微笑んだ。
「私は四季乃瑠璃、この小学校のOBなんだ」
 OBという単語にまだ親しみのない小学生たちが首を傾げるのを、エディが卒業生ってことだよ、と補足する。
 つまり先輩ということであれば、体育会系のフレッドはぴしりと居住まいを正すし、リーダー格の彼がそうするのであれば四年生組の二人もそれに倣う。
「いいよ、楽にして。じゃあ早速、私の怖い話はさっきの話に似てるかな。居るだけ、怖いだけで何もしてこないようなお化けじゃなくて、明確に危害を加えてくる人が怖いよね、って話に近いんだけど……」

 これは昔、ある街で実際にあった出来事の話なんだ。
 その街では連続殺人事件が起こって、でもまだ犯人が捕まっていないからってみんな怯えてた。
 二十四時間営業のコンビニでさえ警察に夜十時までには店を閉めるようにって言われるくらい、街全体が事件にピリピリしてたらしいよ。
 それで、ある女の子……仮にA子さんって呼ぶけど、A子さんはその日、どうしても夜遅くまで出かけなくちゃいけない用事があったそうなの。
 今となってはその用事が何だったのかはわからないんだけど、とにかくその日は帰りが夜遅くになっちゃって……
 それで事件もあって人気がまったくない夜道を、怖いなあ怖いなあって早足で帰ってたら、どうも後ろから足音がしたらしいんだ。
 人気がないって言っても、もうひとりくらい出歩いてる人が居てもおかしくない。だから気にしないようにして、A子さんは気持ちスピードを上げたんだけど、足音は全然遠ざからなかったんだって。
 流石におかしいから立ち止まってみたら、足音も立ち止まる。意を決して振り返ってみたら、A子さんと同い年くらいの女の子がじっと立ってたの。
 学生服を着た女の子。その子がずっと付いてくるから、A子さんも怖くなって走って逃げ出したんだけど、女の子も走って追いかけてくる。
 もしかしたらあの子が殺人鬼なのかもって怖くなったA子さんは、携帯で家族に助けを求めようとしたの。走りながら鞄の中の携帯を探して視線を落として、見つけたから視線を上げたら――

 目の前に
 居 た ん だ っ て。

 追いかけてくる女の子とそっくり鏡写しの女の子が、優しく微笑みながら立ってたの。
 でもね、その道は見通しのいい一本道。隠れるところなんて電柱の陰くらいだけど、それも街頭が照らしてるから誰か潜んでたら影でわかるはず。
 そんな予兆は一切なかったのに、目の前に現れた女の子に驚いてA子さんは引き返そうと振り返ったんだけど、後ろには今まで追いかけてきてた、目の前にいた子とやっぱり瓜二つの女の子が追いついてきていて、にこにこした笑顔でA子さんを見てたんだって……
 翌日、A子さんはナイフで斬り裂かれた遺体で見つかったの。
 彼女が出会ってしまった女の子たちは、果たして双子の殺人鬼だったのか、それとも人じゃないなにかだったのか……
 え? どうしてA子さんは死んでしまったのに、そんな話が広まってるのかって?
 それはね……?

「私がその殺人鬼だからだよっ!」
 突然子どもたちの背後から掛かる声。
 驚かすようなそれに、悲鳴を上げて飛び上がる生徒と教師、そして一部の猟兵。
 そんなドッキリを成功させて、くすくすといたずらっぽく笑うのは瑠璃によく似た少女だ。
「緋瑪、お見事」
「んーん、瑠璃のトークが上手かったおかげだよ」
 茫然自失というのか、呆ける皆の前でハイタッチを交わす二人。
「紹介するね。双子の妹の緋瑪です」
「違うよ、双子の姉の緋瑪だよ」
 どっちが姉だ、と軽く揉めて見せるのも、二人が双子だと印象づけるためのパフォーマンス。
 本来は実体化した別人格というオカルト極まる存在で、なおかつ殺人鬼なのだけれど、必要以上に脅かすことはないと判断してのことだ。
 現に、緋瑪は扉も窓も開けること無く突然宿直室の暗がりに実体化して現れたのだが、息ピッタリの双子アピールは子どもたちが抱くそんな違和をきれいに洗い流している。
 そうやって彼女らが時間をかせぐ間に猟兵達はより実践的な――百物語を肝試しに変貌させるようなあれこれを準備しているのだ。
 瑠璃と緋瑪がやったようなそれを一気に畳み掛ければ、百物語の続行どころではないだろう。

「それにしても百話終了で怪異が出るなんて、いかにもって感じだよね」
「そうだね、緋瑪。現れると同時に殺せれば楽なんだけど……でも、どうして予知だと三十五話で怪異が出たのかな」
「うーん、話の内容がトリガーだったとか? 雄二君だっけ? あの子に最後の手番を回しちゃだめだよねぇ……」

 果たして、百物語を未完のまま完結へ導くほどの怪談とは一体どんなものだろうか。
 気になりこそすれ、それを聞かず済むように誘導するのが今回の猟兵の役割だ。
 子どもたちが落ち着いた頃合いを見計らって瑠璃の隣に腰掛けた緋瑪が愉しげに血糊成分増量のスプラッター怪談を語るのを見守りながら、瑠璃は怪奇現象をでっち上げるために奔走する仲間たちが少しでも早く準備を整えることを願うのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アイ・リスパー
「人の存在を消す怪異など許せません!
というわけで、私は今回は後方支援で……
って、やっぱりダメですかーっ!?」

非科学的なものは勘弁してくださいーっ!
やっ、ちょっ、エージェントさん、引きずらないでー!

「くすん。
え、えっと、飛び入り参加のアイです。
よろしくお願いしますね」

怪談の水増し係として、嫌々百物語に参加します。

「きゃああっ、いやーっ」

怪談を聞くたびに悲鳴を上げますが……
ついに私の番が来てしまいます。
わ、私、怪談なんて知りませんよ?

仕方なく【チューリングの神託機械】で万能コンピューターにログイン。
怪談を検索してそれを朗読しましょう。

「って、先の展開が分からないと、ますます怖いんですけどっ!?」




 ――どうしてこうなったのだろう。
 アイはそう自問する。赤い目いっぱいに涙を溜めて、耳から入ってくる音声情報を言語として認識しないように他のことを考えようと努めている彼女だが、その努力は残念ながら実を結んでいるとは言い難い。
 むしろそうやって聞かないことに集中しているせいで、却って意識が怪談に向いてしまっているような有様だ。
 それもこれも全部あの職員――江藤が悪いのだ、と雨水でまだら模様を描く窓ガラスの向こうを睨むけれど、そこには黒々とした闇夜が広がるばかり。そこから今にも何か良くないものが飛び出してきそうで、アイは視線を慌てて蝋燭の光に向け直す。

「人の存在を消す怪異など許せません!」
 数十分前、車中のアイはそう意気込んでいた。直接的に生命を奪うようなタイプではないが、しかし拐った相手に関するあらゆる痕跡をこの世から消し去ってしまうというのは、死よりも惨い行いであろう。
 死者は悼まれることが出来るが、この怪異の犠牲者にはそれすらも赦されない。そんな存在をアイは許せなかった。
 それはそれとして。
「というわけで私は今回も後方支援で……」
 バス内からの情報支援に徹する――あくまで一般参加者に偽装して参加する猟兵達は表立ってその技能を使えない場面もあるだろう。そこを、会場の外からの探査や通信でカバーするのだ――と理論武装したアイは、シートにピタリと背中と尻を押し付け深く座り込むとホログラムのディスプレイやキーボードを展開する。
 断じて怖くて参加したくないからもっともらしい理由を付けて引きこもろうとしているわけではない。ないったらないのだ。
 故にこれは彼女なりの戦い方、人には得手不得手、向いている戦場というものがある。
「でしょう、江藤さん!」
 メリーさん事件から数えて何度目かの遭遇にしてようやく名前を知った――とはいえ偽名だろうが――男性職員に同意を求めれば、彼は特徴らしい特徴の挙げづらい典型的日本人、といった顔を微笑ませて、こくりと頷く。
 やはり死地を共にした者同士の間には、ある種の理解と信頼関係が生まれるのだ。すばらしいことである。
 そんな江藤の微笑みにすっかり油断して視線をディスプレイに戻したアイの手首ががしりと掴まれ、引っ張り上げるように立たされる。
「!?」
「アイさん。心配しないでも支援は私達が遂行します。それより今は一人でも現場に展開できる猟兵が多いほうが安心なんです」
「いや、あの、ちょっ……でもほら、適材適所って」
「ええ、あの時から何度も協働させて頂いて、貴女の実力が十分現場でも通用することは私、知ってますとも!」
「えっ、やっ、非科学的なものはちょっと勘弁して……江藤さん!? いたたたたたごめんなさいごめんなさい歩くから引きずらないでくださーい!!」

 斯くして雨降る校庭に引っ張り出され、中学三年の留学生としてのカバーを入念に説明された上で放り込まれた宿直室。
 一話ごとに悲鳴を上げたおかげでアイの喉はカラカラ、声はかすれてすでに瀕死だ。
 だが、無慈悲にも蝋燭はアイの手元に回ってくる。室内の全員が、今か今かと彼女の話を待っていた。
「あ、えと……どうしましょう……話さなきゃダメですよね……」
 怖いものに耐性のないアイだ。怪談など知っているはずもない。
 だが、ここで実は怪談知りません、というのもそれはそれで怖い。この期待の眼差しが裏返る瞬間が恐ろしくてならない。
「し、しかたありません……うう、やだなぁ…………」
 仕方無しに自身の思考を万能コンピュータに接続し、そこで検索してきた怪談を朗読することにしたアイ。

 この後、アイは自らの朗読にすら恐怖シーンごとにいちいち迫真の悲鳴を上げたせいで、一同からおかしな子を見るような生暖かい眼差しを向けられるのだった。
 初めて参加したイベントで場の空気にうまく馴染めない、それが一番恐ろしいというお話。

成功 🔵​🔵​🔴​

葛籠雄・九雀
SPD

ふーむ。怪異譚は嫌いではない。正直、この件も『面白い』。
が、…もしや知らぬ間に『子』を失った『親』は居らぬか。実子の不在には気付く、ならば、養子は?
親にはなれずとも愛していた『子』は?
それを失うのは…哀れというものであろう。

では怪異として赴くか。輸血パックか血糊を用意してもらい、手を汚す。布を汚さぬよう慎重にな。髪は解く。
そうして【忍び足】で近付き、窓を叩くなどして注意を引いた上で、暗闇に乗じ、校舎内から素直に部屋へ入る。
子らは…面倒であるな、【毒使い】で眠り薬を用いて『投げ針』で眠らせていくか。忍び寄って首筋辺りに少々刺す程度なら、フ、夜明けの小さな怪異譚にはなろうぞ。

アドリブ連携歓迎


仇死原・アンナ
アドリブ絡みOK

ほどほどに怖がらせればいいのかな…
やってみようか…

怪異に見せかけて妨害

処刑人の仮面を被って【大鴉の訪問】を使い、メイ兄弟の背後に現れよう
[呪詛]を纏い[殺気、存在感]を放ち[恐怖を与えよう]かな

妖刀を抜き構える[パフォーマンス]をして皆に[精神攻撃]を与える

「話をやめろ…さもなくば…」
子供達を避けるように妖刀を振り下ろし、再び【大鴉の訪問】を使用しその場から姿を消そう

…このぐらいでいいのかな?
もうちょっと怖がらせたほうがよかったかな…?


ロウガ・イスルギ
連携・アドリブ歓迎

今回のケースが数年前からの記憶と共に存在が消えた
傭兵団の仲間達と「消え方」が酷似している事に気付き参加
(似てやがる、オレの仲間たちが消えた状況と・・・・・・
関わりはわからないが調べておいて損はなさそうだ、な)

怪異のフリでの中断を狙う
凝りすぎて怯えさせ過ぎないようにシンプルに攻めよう

前もってシーツをUDCスタッフに頼んで調達
【不空羂索】で複製したグレイプニルにシーツを被せて操作
頭部分+両手で3本一組、これを3体分ほど
窓を叩く、空中を漂う等のオバケ的な演出で脅かしていく
「・・・・・・まあ、念力操作なんざ別の意味でオカルトだが・・・・・・
ソレはソレ、コレはコレ!」


夕凪・悠那
百物語かぁ
夏の定番だよね、ホラー系
ボクは精々ホラゲとか、小学校の時に肝試ししたくらいかなー
……まあ、ホラーはスパイス程度で楽しい思い出であるべきだよね

WIZ
ボクは演出に専念するよ
【精神回線】を全員に接続
ちょっと恐怖心を強める方向に働きかける
薄暗い中で"回線"を見つけることはできないだろうしバレる心配はないかな

後は話の内容に沿う形で演出
電脳魔術で幻を見せたり、プチ怪奇現象を起こして気力を削ぐ
やりすぎてトラウマになっても困るから、回線を通して感情の動きを読み取って、ギリギリのラインを[見切]らないとだけど

こんなガチホラーがひと夏の思い出でいいのかな
いやまあ記憶には残るだろうけどさ

アドリブ絡み歓迎




「百物語かぁ、夏の定番だよね、ホラー系」
 ボクは精々ホラゲをするくらいか、こういうイベント事は小学生の時に肝試しに参加したくらいかな、と思い出に浸る悠那。
 ホラーは思い出を彩るスパイス程度で丁度いい、後になって楽しかったと言えるものがよい恐怖体験なのだと彼女が説けば、アンナはそれにこくりと首肯を返す。
「ほどほどに怖がらせればいいのね……わかった、やってみようか……」
 暗い学校の廊下となればただ待機するだけでも中々に恐ろしいものだが、どっしりと構え全く怯える様子のないアンナの姿は心強い。
 当のアンナ自身はそういう学校の持つ恐怖の魔力を全く感じ取ること無くただぼんやりとしていただけなのだが。
 ごそごそと荷物から小道具を取り出すアンナは大丈夫だろうと、悠那はさらに待機する二人の仲間に目を向ける。
 それぞれに思うところがあるのか、考え込むように黙した二人の猟兵。
 かたや不気味な長躯の男――にその身を被らせたヒーローマスク。そちらはそちらでニタニタとした笑みを象ったような、呪い師めいた図柄が暗闇で見るには些か不気味である。
 かたや巨躯の白虎のキマイラ。戦士然とした精悍な雰囲気は猛獣と対面したときのような恐怖を与えるのだろうが、その恐怖は今回求められているものとは少し違う。むしろ知性を宿す瞳は、子供たちにとっては恐怖より先に興味が立つだろう。

 仮面の男――九雀は想う。
 怪異譚そのものは嫌いではない。個人的な感情のみを語れば、今回の神隠しも面白いとさえ思える。
 だが。
 世界で最も縁深い、絆で結ばれた相手でなければ神隠しには気付けないという。それは、どれだけ相手を愛していようと二番目、三番目の人間であれば相手のことを忘れてしまうということでもある。
 人間の絆に順位を付けるというのは烏滸がましく罪深いようで、しかし人は自然とそれをやっている。
 最も大切に思う相手。我が子の中ですら、若干の差ではあれ親の抱く愛情には差が生じてしまうものだ。
 その二番目、三番目に愛していた子を失った親が居ないと誰が言えようか。
 あるいは我が子と同等に愛していた養子を連れ去られた親が居たかも知れない。
 恋人が、兄弟が、姉妹が――真に世界で一番愛しているかなど、本人にもわからないのだ。それをある日突然奪われ、そのことに気づくことも出来ないならば――それは、
「哀れというものであろう……」
 仮面のつぶやきは、強まる雨足がかき消してゆく。

 白虎――ロウガは想起する。
 失われた数年間の記憶。その間に経験したであろう出来事に繋がる一切合財がこの世に始めから存在しなかったかのように消え去っていた、という体験は、今回の事件にあまりにも似すぎてはいないだろうか。
「何度考えても似てやがる、オレの仲間たちが消えた状況と……」
 あの時何が起こったのか。仲間達は何処へ行ったのか。それを知る義務がある。
 誰かに調べろと言われたわけではない。ただ、ロウガ自身がそうせねばならないと強く感じているのだ。
「だったら、関係があるか無いかはわからないが調べておいて損はなさそうだ、な」
 故に、怪異の到来を待つ。なるべく儀式は妨害して弱らせた上での召喚ならば、わけも分からぬまま二度目の記憶喪失に叩き込まれることはないだろう。
 そのために、ロウガは儀式を妨害――百物語の完遂を妨げるべく、持ち込んだ純白のシーツを大きな手の中で弄ぶのだった。

「皆、準備はいい? ボクがタイミングを指示するからその通りに動いて」
 わずかに開いた扉の隙間から糸を這わせ、教師と生徒に接続することに成功した悠那。
 これで雨音はもちろんのこと、さっきからひっきりなしに響き渡る少女の悲鳴に妨げられること無く中の状況が分かる。
 誰が何を話しているのか。それに対して、子供たちがどう感じているのか。全ては悠那の手の中に集まってくる。
「――早速だけどまずはロウガくん、キミから出番だ」
 中では今、エディが某国のホテルを徘徊する白い幽霊の話を臨場感たっぷりに語っている。
 ここにロウガの仕込みは最適だろう。
「ああ、任せろ。こいつが「白い幽霊」になるか「ただのシーツ」になるか、全ては貴様ら次第……なんてな」
 ふわ、と浮き上がるシーツ。それはまるで中に人がいるように、頭と腕の位置で内部から押し上げられている。
 グレイプニル――ロウガの得物であるワイヤーフックを念力で操り、シーツを内側からまるで人が入っているかのように巧みに動かしているのだ。
 それを三体分用意したロウガは、仲間達にも隠れるように指示してシーツのゴーストを行動させる。
 まずは一体目が窓を軽くノックしてから外を横切る。
 雨を吸って重くなったシーツは操るのも一苦労だが、にわかに室内が騒然としたことで成功を悟った。何かが外を通り過ぎれば、こんなイベントの最中だ。気になるだろう。
 暗闇で白はよく目立つ。そうして怪談から現実に意識を引き戻したところで、次は廊下だ。
 ここに悠那が接続した糸から参加者の五感に働きかけ、妙な寒気と廊下からの奇妙な光を錯覚させる。
 変なものを見た、と困惑と僅かな恐怖に触れた一同の視線が廊下へと向いたのを確かめて、悠那はロウガの肩を叩く。
「今だよ」
「おう」
 続いて二体目が廊下をすーっと駆け抜け、確かめようと勢いよく扉を開けたフレッドが二体目の消えていった方を見ている間に三体目をその真横に立たせる。
「おわぁぁぁ!!」
 気づいたフレッドの悲鳴と同時にシーツからグレイプニルだけを引き抜けば、先程まで"誰かが中に居た"ようなゴーストはただのシーツに戻り床にふぁさりと落ちて広がった。
 誰かのいたずらではなく、不可解ななにかがシーツを被ってそこに居た。
 外を通り過ぎる姿を除けば、直接その姿を見たのは血気盛んなフレッドだけだが、その彼が悲鳴を上げて普段見せない真っ青な顔で戻ってくれば、否が応でも子供たちは動揺せざるをえない。
「オカルト演出に凝りすぎて怯えさせ過ぎても良くないしな、こんなもんだろう。まあ、念力操作なんざ別の意味でオカルトだが……ソレはソレ、コレはコレ」
 第一波は見事に子供たちに動揺を与えることに成功した。ここは畳み掛けるべきだな、と悠那は次を促す。
「――思った以上にロウガくんのが効いてる。二人共一斉に行こう、今なら崩せるかもしれない」
「ほう、であらばオレも向かうとしようぞ」
「ん……任せて」
 元より恐怖を煽る格好の上、UDC組織に用意させた血糊を両手にべっとりと付けた九雀が、まず廊下側の窓をばしばしと叩く。
 真っ赤な手形が貼り付けられていく窓に、室内では低学年組とシーツゴーストに対面してしまったフレッド、それとさっきから叫びっぱなしの猟兵一人が混乱に陥り大騒ぎになっている。
 仕込みを知っている猟兵たちが子供たちが無軌道な逃走にはしらないよう、キャサリンやエディ、にいると協力してそれを宥め留めているが、そこへアンナが追撃をかける。
 窓の外で夜中だと言うのにカラスの声がする。
 大雨の中、日が暮れているのにカラスが鳴くなど考えにくい。その異常な声に、子供たちの動きがふと止まったところへ、アンナは乗り込んだ。
 何処からともなく湧いて出たカラスの群れが羽ばたき、その向こうから黒衣に身を包んだ仮面の女が現れる。
 ペスト医師のような死神のような、おどろおどろしいその姿に、元来気の弱いにいるなどは腰を抜かしてしまう。
「……………………めろ」
 女――アンナは呟き、殺気を放ちながら手にした首切り役人の呪われし妖刀の鯉口を切る。
 悠那はすかさず、子供たちが感じるアンナへの恐怖のイメージを調節して行き過ぎないように加減を加えるが、それを以てなお恐ろしい処刑人の圧力たるや。
「話を……やめろ。さもなくば…………」
 ひゅん。アンナの眼前で竦むメイ兄弟――を庇おうと飛び出したキャサリンの鼻先を掠めて目にも留まらぬ速さで振り下ろされる刃。
 キャサリンはその一撃で、これが模造刀を使ったイタズラではなく真剣による警告だと理解するだろう。
 そして彼女がへたり込むのと入れ替わるように、再びカラスの群れに呑まれ、カラスとともに消えるアンナ。
 さらにアンナが引き起こした騒ぎに乗じて侵入した九雀が、睡眠薬を塗布した針で子供たちを昏倒させようと――これ以上の儀式進行を妨げ、戦いに巻き込まれるリスクを下げるべく――したのは、悠那によって止められた。
「……儀式がもう始まっちゃった以上、どうやっても怪異は来るって言ってたでしょ? 子供たちが眠ってしまうと避難もさせられないし、守る側の負担も重くなる。それは一旦ストップでいいかな?」
「……ふーむ、一理はあろうな。であればここは見送ろう。何、暴れて逃げ惑うようなら面倒であるなと思うてのこと、紛れ込んだ猟兵がうまく子らを御したならば無理強いすることもあるまいて」
 す、と針を納めた九雀は双眸を歪め、喜色満面の笑みを浮かべる。ただでさえ恐怖を掻き立てる仮面はより一層恐ろしげな雰囲気を纏い、そして仮面を残し装着者だけが進入時と同じく音もなく退出すれば、宙に浮く恐ろしい仮面が出来上がった。
 その上でクツクツと嗤い、アンナの登場で呆けていた子供たちの視線を己に集めながら、貌を一同に向けたまま廊下に退いてゆく孔雀。
 ともすればトラウマは避け得ないほどの恐怖を刻んで、猟兵怪奇現象班の乱入は幕を閉じた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

エドゥアルト・ルーデル
拙者の鉄板トークを話さざるを得ない

【忍び足】しながら輪の中にスッ…と入り込みますぞ!
拙者の顔が既に【恐怖を与える】だって?ヴァカめ本番はここからですぞ!

これは拙者が友人とキャンプした時の話でござるよ
友人はちょっとトイレへ行くと言って一旦離れたんですぞ
拙者は先に寝ようと思いテントで横になってんだ
ちょっとして物音がして初めは友人が帰ってきたんだとその時は気にせずに寝続けたんだよね
…朝起きて、隣の簡易ベッドにいたのは…

全くの【知らない人(極めて発見され難い)】だったんDA!
ほら、君達の後ろに…誰!ねぇ…誰なの!?怖いよォッ!あっちへ行け!
ふぅ…危ない危ないまさか本当に出てくるとは…UC使ったっけ…?




「はえー何だったんでござるか今の」
 白い幽霊、謎の黒い仮面の女、そして空飛ぶ不気味な仮面。
 連続して襲いかかった怪奇現象――に扮した猟兵たちに、もはや百物語は続行不能だろう。
 混乱する子供たちや教師と、それを宥める猟兵たち。その様を眺めながら、エドゥアルトは至極マイペースに呟いた。
 いや待て、いつから居たんだお前は。
「何、忍び足でスゥーッと入り込んだだけのことでござるよ。あちょっとそこの幼女拙者の顔見てビビるの酷くない? 拙者の顔がすでに恐怖だってのかヴァカめ本番はここからですぞ!」
 誰が聞いているのかも定かではないような状況で語りだすエドゥアルト。正気か? という猟兵達の視線に、甘いでござるなあとキメ顔を返す。
「今までの話が猟兵の水増しコミコミで九十九話。儀式の終了条件が微妙にハッキリしない以上、ヘンなところで雄二少年がウッカリラストネタ話して怪異召喚なんてB級クソホラーの全滅エンドオチしないとも限らんでござろうが」
 故にきっちり百話目を騙って儀式を遂げ、不完全な形で怪異を引きずり出す。

 というわけでこれは拙者が友人とキャンプしたときの話でござるよ。
 翌日に備えて荷物の点検をしたり焚き火でイグアナ焼いたりして楽しい時間を過ごしたんでござるが、気がつけば日もとっぷり暮れておりましてな。
 寝る前にちょっとトイレに行く、と言って友人は一旦離れたんでござるが、随分長便だもんで拙者先に寝ようと思ってテントで横になってたんだ。
 ちょっとしてうとうとし始めたころ、物音がした。拙者てっきり友人が帰ってきたもんだと気にせずそのまま眠っちゃったんだよね。
 で、朝起きて隣の簡易ベッドに居たのは……

「全くの知らない人(極めて発見され難い)だったんDA!」
 迫真のエドゥアルト。いやそれ怪談っていうか変質者的な怖さなのでは? と思わずには居られない。
 まあタヌキネタとか混じった百物語だからアリなのかもしれない。アリなんだろう。アリです。
「ところでほら、君たちの後ろに……誰!!」
 とここで突然窓の外を指差すエドゥアルト。窓の外、上階からぶら下がるように逆さに覗き込んでいる知らない人(極めて発見され難い)!!
 めっちゃガン見している! エドゥアルトと目と目が合うがその瞬間恋に目覚めることもなく普通に怖い!
 泣き出す子供たち! 阿鼻叫喚のパニック!
「ねぇ、誰なの!? 怖いよォッ!! あっちへいけ!!」
 ここでまさかのエドゥアルトまでパニック状態! もう誰にも止められない! なおもガン見し続ける知らない人(極めて発見され難い)!


 一通りの騒ぎが落ち着く頃には、極めて発見され難い知らない人は割としっかり発見された末に消失していた。
 これにて百物語は完遂。トリガーとなる雄二が見つけてきたという怪談に至ること無く百話を終え、なおかつこれがただのレクリエーションの域を超えて怪現象を招いてしまうという意識を子供たちに持たせることができた。
 本番たる怪異の襲来に対しても、突然の接敵で完全に無秩序に陥ったまま子供たちを守らねばならない、というような最悪の事態だけは避けられよう。
「ふぅ……危ない危ない、まさか本当に出てくるとは…………あれ? でも拙者ユーベルコード使ったっけ……?」
 使って……ない、ような気がする。エドゥアルトの頬を汗が一筋流れた。
「ま、まあ気にせんとこ……それにしてもあの日の友人は結局何処までトイレしに行ったんでござろうか……ていうかどんな顔してたっけアイツ……あれぇ、思い出せんでござるなあ……」
 ――果たして、キャンプ場とここと。エドゥアルトが出会った全く知らない人(極めて発見され難い)の正体は何だったのか。それを知るものはもはや居ないのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『襲い来る怪奇現象』

POW   :    物理的に押さえ込む

SPD   :    お札など呪術道具を使う

WIZ   :    怪奇現象を起こしている存在へ説得をする

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 百話の怪談は成った。
 儀式は遂げられ、しかして人を拐う怪異の召喚には致命的なピースが足らぬ。
 儀式の最後を飾るべき呪文。この怪談儀式を広めし者が仕込んだ最後のひとかけら。
 故に、欠落したまま完成した絵図は崩壊しながら顕現する。
 窓を殴りつける雨は勢いを増してもはや外を伺うことすらかなわない。
 雨は降れどもさして酷くはならぬ筈が、いまや滝のような水が降り注ぎ鉄筋コンクリートの建物ですら雨音に揺れているように感じられる。
 そんな中で、押入れの襖が勢いよく開く。
 すわ縛り付けられ放り込まれた猟兵が逃げたか、と視線が集まれば、たしかに彼女は縄を解いて抜け出す支度こそしていたが、そうではない。
 襖がひとりでに、凄まじい速度で開閉を繰り返す。
 廊下に通じる扉が揺れ、小さな物が飛び交い、そして怪奇現象は校舎全体に波及する。
 理科準備室を飛び出した人体模型が走り回り、音楽室では狂ったようにピアノの鍵盤を叩く音がする。
 職員室ではひっきりなしに電話機が鳴り響き、誰かが置き忘れていったのか袋の内側がすっかり苔緑に染まったパンの袋が廊下を飛翔していった。
 ポルターガイストだ。
 本来であればあまりの恐怖に恐慌状態に陥ってもおかしくない子供たちだが、猟兵が気遣って振り向けば狼狽え、キャサリンの背に隠れるようにして怯えながらも意外に落ち着いている。
「だ、だってさ、あの化け物よりは怖くないじゃん……?」
 なるほど、猟兵怪奇現象班の脅しは効果があったらしい。
 ともかく、このポルターガイストをどうにか鎮圧せねばなるまい。こんな状況で怪異の現界が成れば、戦闘どころではないのだから。
 戦いを邪魔する面倒な騒霊現象を撃退するべく、猟兵達は立ち上がった。
アイ・リスパー
「きゃっ、きゃああっ!
なんか立て続けに起こる怪奇現象(注:猟兵によるものです)にポルターガイストっ!?
そ、そんな非科学的なものが存在するはずありませんーっ!」(大混乱中

猟兵として立ち上がろうとしますが、腰が抜けて床に尻餅を着いてしまいます。

だから私は後方支援の方が向いてると言ったんです、江藤さんーっ!

「うう、と、とにかく子供達だけは守らないとっ!」

腰が抜けたままホロキーボードを展開。
怪奇現象の分析を行うために電脳空間の【チューリングの神託機械】にアクセスしようとしますが……

「ああっ、手が震えてパスワードを入力できませんっ!?
って、きゃああっ、いま廊下を何か通りましたっ!?」(子供の後ろに隠れる




「きゃっ! きゃあぁぁっ!!」

 連続して襲いかかった恐ろしい怪異存在の襲来に悲鳴を上げて逃げ惑っていたアイ。
 その眼前で襖が暴れ狂い、物がひとりでに飛び回るのだからもはや彼女にとって落ち着けと言うのが無理な相談だった。
 だって怖いんですもん! とは後に彼女が語った言葉だ。どれだけ知性溢れる人物であろうと、一度恐怖すると人は判断力に以上を来して冷静な行動を取れなくなる。
 その一方で、自分より取り乱している人物を見るとどういうわけか冷静さを取り戻せることもあるのが人間の不思議なところであろう。
 混乱し尻餅をついたアイも、そんな人間の精神性の不思議を体現していた。
 彼女と同じく怯えていた年少組、斗真と那留。いくら直前により恐ろしい怪人の襲撃を目の当たりにしていたとはいえ、まだ幼い少年少女にこの恐怖に耐えよというのはいささかに酷であったろう。そんな彼らとアイの目が合う。
 互いに涙をいっぱいに溜めた視線同士が行きあって、三人の時が一瞬止まったような錯覚。
 そうして、自分より怯えている存在を見たことで彼女は立ち直った。

「斗真くん、おねえさん、し、しっかりして! キャサリン先生と一緒に逃げよ……!」
 どうにかパニックから立ち直った那留が斗真の手を握りキャサリンのもとへ引っ張っていく。
 そうして斗真をキャサリンに預け、勇敢なことに再びポルターガイストが暴れ狂う中を床を這うように身を低くして、アイを迎えに来てくれたのだ。
 これにはアイも奮起せずにはいられなかった。自分より何歳も年下の少女が恐怖を堪え、お姉さんであるはずの自分を助けに戻ってきたのだ。彼女たちを助けるべく乗り込んできた猟兵が、どうして腰を抜かしたまま頭を抱えて震えていられようか。
「わ、私は大丈夫ですっ! 那留ちゃんは先生と一緒に斗真くんを見てあげてください! わ、私だって猟兵なんです……やってやります! とにかく今は子供たちを守ることだけを考えてっ!」
 頬をぱちんと張って気合を入れ直し、再び立ち上が――るのは無理だったので尻餅をついたまま、ホロキーボードを展開。
 発光する非実体の入力端末が現れれば、そこから電脳空間上に存在するアイのもう一つの頭脳とでも言うべき神託機械へと接続を――
《パスワードを入力してください》
[●●●●●●]

《パスワードが違います》
*[●●●●●●]
 [パスワードを忘れたときは?]

「…………」

[●●●●●●]

《パスワードが違います》

「ああっ、手が震えてパスワードがうまく入力できませぇぇん!!」
 だから次回から自動ログインにチェックを入れておけばよかったのに。
 過去の自分に文句を言いたくなる。セキュリティ上よろしくないとは言っても、そもそも神託機械にアクセスできるのはアイだけなのだからそこまで気にする必要はなかったのではないか。
 次からこういう怪奇系相手だけでも自動ログインをどうにかしたほうがいいのだろうかとも思うが、そういえばそもそもがアイは前線に出張るつもりはなかったのだった。
 こんな怖い目に遭っているのも、パスワードがうまく認証できないのも、それもこれも全部あの役人風の慇懃なエージェントのせいだ。そうに違いない。
「だから私は後方支援のほうが向いてると言ったんですよ江藤さんーっ!!」
 その絶叫は分厚い雨のカーテンに遮られ、外の社内で待機する江藤らUDC職員たちには届かない。
 届いたところでポルターガイストによって完全封鎖された校舎内に干渉する術は彼らにはないのだが。
「か、かくなる上は、オベイロンを呼んで……」
 恐怖が限界値を振り切ったか、校舎内に戦車を突入させる散弾までつけ始めたアイ。いきなり宿直室に呼び出しては収まりきれなかった戦車が壁をぶち破るどころか、柱を砕いて崩落する危険もある。
 神託機械にアクセスできず、完璧な演算ができない以上はその危険は避けねばならない。やはり外に呼び出し、そしてすぐさま乗り込むしかない――アイの視線が廊下に向く。
 その時だ。じっと覗き込んでいた何かと目があったのは。
 左半分は虚ろな丸刈りの少年。
 右半分は筋繊維や眼球、歯がむき出しの生皮を剥がされたようなそれ。
 塗料をベタ塗りしたような艶のある彼は、目が合ったのを感じ取ってひょいと姿を隠す。
「いやぁぁぁあああぁぁぁぁあぁっ!! いま外に! 外に! なにかいました! ゾンビみたいなのがぁぁ! もうやだぁぁぁあ!!」
 人間は不思議なもので、腰を抜かしていてもいよいよ恐怖が極まると火事場の馬鹿力のようなものが出るのだ。
 アイもまたその例に漏れず、ゾンビみたいなの――人体模型との遭遇で抜かした腰が再びハマり、支援役を自称する彼女としては初めてに近い俊敏さを発揮して――那留の後ろに転がるように逃げ込み、彼女の背にしがみつくことに成功したのだった。
「お姉さん……」
「いやっあの、そのこれは違うんですよ! 私は決して隠れてるんじゃなくてあなたを守りに……」
「それでいいから離れないでね。ちゃんと歩ける?」
「はい…………」
 もはやどちらがお姉さんなのか。アイは那留の後ろにぴったりと張り付いて、安全地帯を探す子供たちに同行するのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

空雨・かがり灯
まさにポルターガイストてんこ盛りなこの状況…!
呪術・霊術的なアレコレは詳しい方におまかせして、私は物理が通用しそうなものに対処するとしましょう。

まずは…大暴れしている襖からですね。
念のため中に誰も入っていないことを確認してから、開閉できぬよう思いきり押さえつけます。
【力を溜め】て【気合い】で踏ん張り、ポルターガイストとの我慢比べといこうじゃありませんか!

子供たちは落ち着いているようですが、さらに安心できる(?)よう声を掛けておきます。
私の地元、タヌキと同じくらいポルターガイストもよく出るんですよ。
こういうのも慣れてますから、大船に乗ったつもりでいてください!

※アドリブ・連携歓迎


エドゥアルト・ルーデル
いかん!このままでは例のアレが!
今すぐこの現象をやめるんだ!間に合わなくなっても知らんぞーッ!!

ほら見ろ!大量にガタガタさせるから【物理演算の神】がハッスルして【お戯れのバグ】をお放ちになられたぞ!
物という物が壁や地面にめり込んだりもの凄い勢いで吹き飛んだり人体系は上半身のみのブレイクダンスしたりと地獄絵図に!
さっきまで人体模型だった物が辺り一面に転がる…

物理演算の神は存在する限り相手を選ばない!
恐らく騒霊共も身体が尋常じゃないぐらい伸び散らかってる事だろう…身体が有るかは知らんが
だからこれに懲りたらウカツに物理現象を起こすのは止めるんでごz(天へ向けて射出)

アドリブ・連携歓迎




 たとえ原因が霊的なものであっても、物質に干渉して引き起こされた減少であるならば物理的な介入で対処できる。
 そう結論づけたかがり灯は、霊的存在に対する直接的な根治療法を他の猟兵に委ね、ひとまず宿直室内部の異常現象に対する対症療法として物理に訴える。
「まずは……大暴れしている襖からですね」
 なにしろうるさい。今の所飛び交う菓子の空箱やジュースのボトルより危険度こそ低いが、こうも絶え間なくすぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱんと開閉されては耳が疲れるし、このまま放置していると声による意思疎通にも支障を来しそうだ。
 それにこころなしか音が次第に大きくなってきているような気もする。早い対応が必要だろう。
「中に誰も……いませんね」
 ぐるぐる巻きでブチ込まれていた魔女は先程連れらしい少女に無理やり引き出されていた。よく挟まらなかったものだと思う。
 ともあれ、中に取り残されたものが居ないのであればあとは動きを封じて問題あるまい。
 襖がスパァンと小気味よい音を立てて閉まったその瞬間、かがり灯が動く。
「ェイッ!!」
 剣を振り下ろすかのごとく、研ぎ澄ませた気合の一声。力を溜め、可憐な少女は襖にがっちりと喰らいつく。
 五指はしっかりと襖の引き手に引っ掛け、反対の五指で枠をがっしりと掴む。そうして二度と開かないように抑え込むのだ。
「ポルターガイストさん、これから私と我慢比べといこうじゃありませんか!」
 がたがた、がたがたと抵抗する襖だが、どうしても開くことができない。かがり灯の細腕のどこにそんな力があるのだろうか。
「これでも人並み以上に剣術を嗜んでいるつもりです! 力比べでそこらのか弱い少女と同じと思わないでくださいね!」
 その台詞に反応してか、ポルターガイストの動きがしゅんと静まった。無軌道にガタガタと暴れることをやめ、諦めたか――とかがり灯が様子を伺うと、今度は衝撃の間隔を広げる代わりに重さを増した動きで封印を突き破ろうとする襖。
「くっ……!」
 これにはかがり灯も歯噛みせずにはいられない。侮ったつもりは微塵もないが、実体なき霊減少がここまで力強いとは思わなかったのもまた事実。
 蒸し暑い雨の夜、激しい戦いの中で頬を一筋伝う汗。
 それを見ている子供たちの目が、かすかに不安の色を帯びたのを感じて、かがり灯は振り返り微笑んだ。
「大丈夫ですよ。私の地元、タヌキと同じくらいポルターガイストもよく出るんです。こういうのも慣れてますから、大船に乗ったつもりで居てください!」
 その言葉に安堵する子供たちだが、状況は良いとは言い難いだろう。かがり灯の膂力と疲弊、そして彼女がふと力を緩め指先を休めるタイミングを学習しつつあるポルターガイストが、再び襖を暴れさせるのは時間の問題かもしれない。
「いかんでござるな……!」
 その様を見て、エドゥアルトは真剣な様子でつぶやく。
 このままではまずい。いや、襖がすぱぱぱする程度であれば特に実害もないといえばないし、最悪ふっ飛ばせば済む問題ではある。
 が、エドゥアルトの懸念はそこではない。もっと良くないものがこの校舎に迫っている。
 感じるかい、感じるだろう。君もこの不穏な気配をさぁ……なんてエディ少年に神妙な面持ちで囁いてみたりするのだ。
「空雨殿、今すぐこの減少をやめさせるんだ! 間に合わなくなっても知らんぞ――ッ!!」
「できるならやってます! 少しくらい待ってください!」
 ひょいひょいと飛来物を躱しながら、一見して何もしていないように見えるエドゥアルトの叫びに、現在奮戦中のかがり灯が強めに言い返す。
「怒られちったぜ……女の子はこえぇでござるな……」
 やれやれ、首を横に振ったエドゥアルトは感じ取った。
 奴だ。奴がついに降臨したのだ。
 はじめは小さな、注視していなければ気づかないような異常から始まった。
 菓子の空袋がまるで風に巻き上げられたかのように回転するが、端の一箇所だけが床に引っかかったように固定されて動かず、そのまま回転する袋が伸び縮みしながら床にめり込み消失する。
 廊下をダッシュで駆けていった二宮金次郎像の頭だけが扉の前に残され、引き伸ばされた首がまるで棒のようにまっすぐつながったままの胴体が、突如重量感のない挙動で吹っ飛びなんだかよくわからないオブジェみたいになって壁に突き刺さる。
 あげくさっきの人体模型が戻ってきたかと思えば、上半身だけを関節を無視した挙動でグルングルンさせた挙げ句タスケテとか宣いながら爆発四散する有様。
「ほら見ろ! 干渉とか処理限界とか考えずに大量にガタガタさせるから! 物理演算の神がハッスルしてお戯れのバグをお放ちになられたぞ!」
 別の方向にホラーを増した怪現象を指して叫ぶエドゥアルト。
「バグってなんですか冗談を言ってる暇があったら手伝ってください!」
 本来動くべき横方向のスライドを諦め、なぜか軸回転の動きを取り入れ始めた――これもポルターガイストが意図したものか、あるいは"神のお戯れ"の仕業か――への対処に追われながら彼を叱責するかがり灯。
「さっきまで人体模型だった物があたり一面に散らばる……アレは肝臓かな……じゃアレは膵臓で、アレは膀胱……キャッ。なんて言ってる場合じゃないでござるな! 物理演算の神は存在する限り相手を選ばない!」
 今頃ポルターガイストを引き起こした霊たちも尋常じゃないくらい全身を伸ばし散らかしている頃だろう。何体か地面の裏側、世界の外に放り出されて無限にスカイダイビングしているかもしれない。
 だが、このままではその対象が猟兵や子供たちにシフトするのも時間の問題だろう。
「聞こえてるでござるか騒霊ども! これに懲りたらウカツに物理現象を起こすのは止めるんでごz」
 かがり灯を助力するべく立ち上がったエドゥアルト。しかし一歩踏み出した瞬間彼は垂直に射出され、天井やらの当たり判定をすり抜けて高高度へ!
 そのまま落下し、屋根をすり抜けて校舎内のどこかに着弾したのだろう。彼の断末魔がここまで聞こえてきた。
 そこでかがり灯は、襖の抵抗が弱まっていることに気づく。さしもの騒霊も、物理演算の神の怒りに触れたものの末路を見て怖気づいたか。
「ひとまずああはなりたくないのでしたら、襖から離れてくれますね?」
 かがり灯が静かにそう提案すると、襖にかかる圧力がすーっと引いてゆく。
「…………ええと、言ったでしょう? 慣れてるって」
 子供たちに笑顔を向けるかがり灯。だが、彼女自身も子供たちも、なぜだか素直に喜べなかった。
「世界にはいろいろな神がいるものですね……」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フィーナ・ステラガーデン
【PPP開発室にて参加】【POW】
どったんばったんやかましいーーー!!!
イデアールあんた少しは落ち着きなさいよ!え?違うの?
こんなの力づくで抑えればいいのよ!(襖の取っ手を握り締め)
ふああああああああああっ!?(取っ手と握り締めたフィーナごと開閉ばったんばったんびゅーんずさー)

(パンの袋、カビ等を頭に付けた状態で)
・・・コケにしてーー!!
もーーいいわ!全部焼き払ってやるわ!建物も全部焼いてやるわ!!
【殺気、恐怖を与える】
ってあんたら何よ!?ああああっ!?
(ビードットとイデアールの呼び出した人海戦術に運ばれていく)

(アレンジ、アドリブ・・?大歓迎!)


イデアール・モラクス
【PPP開発室】
フン、この建造物を丸ごと結界に取り込んだのか?
大した術式だよ、全く(集まる視線を意識して相変わらず艶めかしい仕草で縄から抜け出して)

・行動
「本当はこの場所ごと吹き飛ばしてやりたいがなァ、ガキどもがいるからそうもいかん」
UC【使用人召喚】によりメイド達を呼び出し、まずはメイドらのスキルでポルターガイスト現象により荒れた部屋を無理矢理に封じ片付けさせ。
「さて、この術式を見せてもらうとしようか」
私は血の魔法陣を床に描いて『全力魔法、吸血、生命力吸収、属性攻撃』を組み合わせた【展開された術の魔力や妖力を強引に奪う吸血魔術】を展開し、現象を起こしている術式そのものを弱める。

※アドリブ歓迎


ビードット・ワイワイ
【PPP開発室】
大統領である
大統領とは大統領であり大統領のことである
大統領であれば大体のことは解決することができる
ありとあらゆる困難を可能とするそれが大統領である
 大 統 領 で あ る

大統領は力強い。大体のことは大統領が殴れば解決する
戦争であろうと怪奇現象であろうと全て殴り壊せば解決する
それが大統領力である。ここに大統領として宣言しよう
第一の政策、我が国民よ立ち上がれ。殴れ壊せ叩き潰せ
学校ならば使えるものはいくらでもある。人間性を解放せよ

大統領としての第一の行動である。大統領は同盟国であろうと守る
全ては国益と私益の最大化の為に




「フン、この建物まるごと結界の中、というわけか」
 大した術式だな、とそれを成した術者、騒霊あるいはその背後に巣食う怪異、またはこの儀式を仕組んだ何者かを評価しながらイデアールは笑う。
 百物語だとかいうイベントを儀式へと改変した何者か、それがこの中に居るとは思えないが、居ないという保証もない。
 いっそ容疑者も騒霊も纏めて建物ごと吹き飛ばしてやろうかとさえ思うが、それは守るべき子供たちをむやみに傷つける行為だ。
 彼女はやるといえば躊躇いなくやるが、好き好んで無意味に敵でないものを傷つけるほど無分別ではない。
「この場所ごと吹き飛ばしてやりたいところだがなァ、ガキどもが居るからにはそうもいかん。命拾いしたな騒霊とやら!」
 高笑いしながら縄抜けを成し遂げるイデアール。豊かな胸や際どいスリットの入ったタイトスカートから覗くストッキングに包まれた脚を無駄に艶めかしくくねらせながら自由を取り戻した魔女は、気恥ずかしげにチラチラと向けられる男子たちの視線をむしろ心地よさげに浴びてブラウスのボタンをいくらか外す。
「此処から先は教員としてではなく、悪霊に挑む魔女として振る舞うとしようか!」
 果たして先程までの振る舞いが教員らしかったかは甚だ疑問の残るところではあるが、右手を高らか掲げた魔女が指を鳴らせばどこからともなく現れたメイドたちが命令を待たずして部屋の片付けを開始する。
 ポルターガイストによって飛び交う物品を戦闘職顔負けの体術で制圧し、、二度と動かぬよう雁字搦めに縛り付けて部屋の隅に丁寧に集積すれば、部屋の中はすっきりと片付いた。
 未だに縛り付けられた物たちはガタガタと暴れているが、そこはメイド体がしっかりと押さえつけている。
「ちょ、ちょっとイデアール!? さっきの根に持ってるでしょ! 根に持ってるのよね!? やめさせなさいよ解放しなさいよ!?」
 押さえつけられている机や座布団、菓子やジュースの容器etcの山から金髪のような糸がはみ出ているような気がするが、
「……フン、気のせいだな! いくらなんでもポルターガイスト諸共封じられるほど阿呆ではないだろう!」
「大 統 領 で あ る」
 その金髪の真横のあたりから見覚えのある金属バケツが突き出してなにか言っているような気がするが、
「……フン、ヤツがこんなところに居るはずがなかろう! 仮にヤツなら破滅だサメだと宣うはずだしな!!」
 それが知り合いであるという説を否定して、イデアールは自ら親指の腹を犬歯で破って血を流す。
 血とはすなわち生命力である。生命力とはつまり魔力であり、そしてマイナス方向への干渉に振り切ったそれは霊力と言ってもいいだろう。
 陰と陽は表裏一体、魔力と霊力もまた似て非なるものながらに表裏一体と言えないこともない。
「つまり魔法陣による介入が可能だということ! さあ、我が魔術で以てこの結界術式を見せてもらうぞ!!」
 流れる血で畳床に魔法陣を描き、霊力への干渉力が強い生命力溢れる子供たちを他の猟兵の護衛に任せて外へと退避させたイデアールが魔術を発動させる。
 それは校舎を包む霊力の結界を、強制的に魔力へ変換して吸い上げる魔道。
 百物語によって呼び寄せられたものも、もとよりこの学校に巣食っていたものも、区別なく一切を魔力に転じてその身に吸い上げる術である。
 紅の魔法陣から伸びた根のような文様が室内を覆い尽くし、蠢きながら青白く発光し始めた霊力の枝葉を引き込み呑み込んでゆく。
 だが、
「……手応えが軽いな。食いついた側から切り離して本体を守っているのか……このままでもこの部屋くらいは守れそうだが、大物が控えているのなら本体を見つけて直接叩くのが近道だな」
「然り。ならば同盟国の少年少女を守るのも大統領の使命であろう」
 応えたのは聞き慣れた声。やっぱり気のせいじゃなかったんかい。
 大統領を自称するその金属バケツはもぞもぞと積み上げられた雑多な物の山から這い出し、三つの光る眼で周囲を睥睨する。
 メイドとイデアールと、そして傍らで彼が抜けた穴へ崩れ落ちた物に巻き込まれ一層深く埋まった金髪。
「子らが退避したのであれば、我は彼らに降りかかる災厄の芽を摘もう」
 そして彼は――バケツの乗った未確認飛行物体は宣言する。
「我は――大統領である。大統領とは大統領であり大統領のことである。大統領であれば大体のことは解決でき、ありとあらゆる困難に打ち克つことができる。それが、それこそが大 統 領 で あ る」
 UFO、サメときて大統領である。何言ってんだこのバケツ。B級映画のキメ過ぎだろうか。
「ビードットお前……一回普通の映画に触れたらどうだ、今度私がオススメのピンクな映画見繕ってやろうか?」
 ピンクは断じて普通の映画ではないと思うが、論点はそこでもないはずだ。
 いつも暴走しているこのロボの暴走度合いが今日は一段と激しいのもきっとポルターガイストの仕業であろう。そうに違いない。
 ひとまず強引にでも納得をしなければ、頭がおかしくなって霊の餌食になる被害者枠の仲間入りは間違いない。
「大統領は力強くあらねばならぬ。故に大抵の問題は大統領が殴れば解決する。議会の紛糾も、戦争も――怪奇現象であろうと」
「いや大統領なら言葉で解決しろよ」
「――大統領の力、すなわちそれが大統領力である。ここに大統領として宣言しよう。……第一の政策、我が国民よ立ち上がれ。子らに害為すものは殴れ壊せ叩き潰せ」
 わかったぞ! こいつ合衆国的な大統領というより政情不安定な国に定期的に現れる反体制派の自称大統領とかそういう手合いだな!?
 そんなツッコミを圧殺するように鬨の声を上げて立ち上がる民衆――どっから湧いた――が、「No! Poltergeist」だとか書かれたプラカードや横断幕を掲げてぞろぞろと廊下に出ていく。
 彼らは自由にして静寂な夜を勝ち取るため戦うだろう。子供たちを守るため戦うだろう。
 その後姿満足気に見守るバケツ頭と、困った顔をした黒髪の魔女、そして民衆によって崩れた物の山を積み上げ直すメイドたち"だけ"が宿直室に残された。

「ちょっと何よあんたたちー! 離しなさいよ下ろしなさいよ! 降ろせって言ったけど誰がそんな力ずくで投げろってあーっ!!」
「いったぁぁぁあい! 何よ何よばったんばったんやかましいわね! ドアなら開くか閉まるかどっちかにしなさいよね! 私が押さえつけてやろふああああああああああああああああっ!?!?」
「どいつもこいつも力加減しなさいよってわぷっ、なによこれ緑色の袋? うわカビ臭っ!! ばっちいじゃない! ……なによ私ばっかりコケにしてー!! もーいいわ、全部焼き払ってやるわってまたあんたたち!? 担ぐのやめなさいわっしょいじゃなーい!!」

 遠くから聞こえる聞き覚えのある悲鳴は、きっと気のせいだろう。
「少なくとも私は悪くないしな! 強いて私に責任があると言えばメイドたちが間違えて縛って積んだことぐらいだ!」
「我も悪くないな。なぜなら大統領であるから」
 左様ですか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

波狼・拓哉
…あーうん。UCを日常的に見てるとポルターガイスト程度じゃなんともねぇわ。
さてさて…モデルガンとはいえ流石に子供の前では出しにくいか。仕方がない蹴り壊して進むか!
…いや、壊して1個1個それらしい理由を付けて言いくるめて行ければ安心するかなって。理由がわからんから怖いわけで何かしらのイタズラだと思わせればいいだろ。探偵として偶に見るとか言えば説得力も増すだろ。
まあ、全部止められる訳には行かないんでサラッとミミックさんをバレないように読んで置いて『かみ』壊しておいてもらおうか。自分で壊せないような大物を目立たないように壊しといて。後、元凶いたら噛んどいて。
(アドリブ絡み歓迎)


仇死原・アンナ
アドリブ絡み共闘OK

急に騒がしくなったね…
彼らを助ける為にこの騒ぎを鎮めないとね…

「さっきは怖がらせてごめんね…今度はちゃんとあなたたちを護るから」
仮面を取りメイ兄弟に謝りながら子供達を[かばい]つつ[呪詛、狂気耐性]を施して怪異に立ちはだかる
[呪詛]を纏わせた妖刀を抜き降りかかる怪異を[なぎ払い]ながら護衛する

「これ以上彼らに手を出すんじゃあない…さもなくば!」
妖刀を翳しながら【とても怖いな仲間達】を召喚。[存在感、殺気]を放ち怪異を起こす存在に[恐怖を与えて恫喝]しこの騒ぎを黙らせてやろう…

今度はワタシ達が怪異を起こす存在とやらを怖がらせてやる…!




 両目を赤く光らせながら目の前をふよふよと浮遊して横切っていく石膏の胸像に、拓哉は苦笑せざるを得ない。
 チープな怪奇現象である。それこそ学校の怪談に語られるような。百物語でも二、三この手の話題が出たくらいには、よくある怪談の姿。
 それが今まさに眼前で展開されている、というのは超常探偵にとって本業発揮の機会である。
 だが、その数が一々多いのが厄介だ。どうにか宿直室は制圧したが、そこを起点に猟兵が校舎全体を覆う異様な霊力場に干渉を仕掛けるために、子供たちとともにそこを出た。
 が、さすまたを持ち出して臨戦態勢とはいえ運動が得意そうには見えない中年女性であるキャサリンと拓哉のふたりでは、六人の子供たちを守り切るのは困難だろう。
 どこから湧いたのかわからない謎のデモ隊がポルターガイストと衝突しているが、それでもなお子供たちに向けられる圧力は十分に脅威と言っていいレベルだ。
「あー……うん、UDCを日常的に見てるとポルターガイスト程度じゃなんともねぇわ。けど……」
 子供たちはそうではない。ショックから立ち直りつつあるとはいえ、今までこういった世界には全く接点のなかった少年少女だ。彼ら彼女らはなんともないなどと幾ら本人が言ったところで、強がりであると判断して行動せざるを得まい。
「となると……キャサリン先生? ポルターガイストは俺が相手しますんで子供たちがパニックにならないようにケアお願いしますよ」
「え、ええ……でも、本当に大丈夫なの? いくら専門の探偵だって言ってもアナタ、武器も何も持ってないじゃナイ」
 キャサリンは心配そうにさすまたを渡そうとしてくるが、それを制して拓哉は一歩前に出る。
「大丈夫ですよ、慣れてるんで。さてさて……一個一個それらしい理屈をつけて壊してきゃ安心するかな。こういうのは理由がわからんから怖いわけで」
 とはいえ、子供たちの前だ。モデルガンとはいえ銃を使うのは教育上よろしくないだろう。となると、使えるのは自らの脚と頼れる相棒だけ。
 ――否。だけではない。
「急に騒がしくなったね……」
 す、と。非常口の緑と消火栓の赤だけが輝く廊下に現れた黒い影。
 近世の医者のような、鴉の嘴めいた仮面のそれは、音もなくやってきてそう呟いた。
 その姿に子供たちが悲鳴を上げる。なにしろそれは、百物語の最中に現れ剣を振るって消えていった黒衣の怪人そのものであったから。
 その怪人はすっとメイ兄弟の前でかがみ込み、視線の高さを合わせて仮面を外す。
 仮面の下から現れたのは、生気に乏しいながらに美しい女性の顔。整った造形の年上の異性と近距離で見つめ合う自体に、恐怖が一瞬麻痺したところへ怪人――アンナは優しい声音で呼びかけた。
「さっきは怖がらせてごめんね……今度はちゃんとあなた達を護るから」
 そうして振り返り、妖刀を抜いて拓哉に並び立つ。
「もう怪人のフリはいいんだ?」
「……ええ、彼らを護るのが私の仕事。そのためにも早くこの騒ぎを鎮めないとね……」
 上等、と笑う拓哉と視線鋭く前を見据えるアンナ。
 双方の得物――鋭い蹴脚と閃く剣刃が、飛来した石膏像を粉微塵に打ち砕く。
「目が光ってるのは仕込みLEDかな! 飛んできたのは――お姉さんどう思う?」
「ポルターガイスト……でしょう」
「残念、こういうのはトリックで説明できるのさ」
 人智を以て超常を陳腐な小細工に貶める。超常をよく知る拓哉だからこその戦い方だ。
「ほらテグスで浮いてるだけ!」
 踏み壊した空飛ぶベートーベンの肖像の残骸に、すかさずポケットから放ったテグスを混ぜる。
「電話が鳴ってる? 学校の電話は内線で繋がってるんだから一斉に鳴ることだってあるさ! どうせこんな下らないイタズラを仕掛けた奴の仕込みだよ!」
 タネ明かしとは名ばかりの怪奇の簒奪。だがそれでは説明のつかないものも存在する。例えば動き回る銅像であったり、例えば前触れ無く壁に描かれる血の手形であったり。
 そういったものを相手取るのは拓哉の相棒の役割だ。
「ミミックさん、あのへんのアレとそこのソレ、目立たないようにかみ壊しといて」
 理屈での説明が難しい物に出逢えば、そっとそう指示を出す。
 すると携えた箱のようなものから闇に紛れて影が伸び、不可視の何かに喰らいつき破壊してのけた。
「ありがとミミックさん、引き続きよろしく。ついでに元凶見つけたら噛んどいて」

 一方で寡黙に迎撃を続けるのがアンナである。
 呪詛を帯び、霊体すら切り裂く妖刀で迎撃されれば、さしものポルターガイストとてひとたまりもあるまいに、それでも怒涛の攻勢は収まる兆しを見せない。
「これ以上彼らに手を出すんじゃあない……」
 鋭く尖った先端を向けて勢いよく飛んできた鉛筆やペンを弾き落とす。
 道を塞ぐように積み上がった机を蹴散らし、子供たちめがけて飛びかかる骨格標本を一刀両断にバラバラにする。
「さもなくば…………!!」
 振りかざした妖刀が放つ禍々しい呪詛。それは魔道の才覚など持たない一般人の子供たちやキャサリン教諭の視線をも惹きつける。
 原因不明の恐怖。それが己に向けられたものではないと分かっていても恐ろしいのは、その刃の持つ尋常ならざる魔力故か。
 そしてほぼ全員の視線が刃に向いたその一瞬で、彼らは到来した。
 アンナが扮した怪人と同様の格好をした集団――見るものを生者死者の区別なく、等しく恐怖させる黒装束の仮面の刑吏たち。
 手に手に拷問具を、処刑具を持つ彼らは子供たちを己の放つ恐怖から少しでも護るように、飛来する騒霊の攻撃から彼らを背に庇うように円陣を組んで行進を開始する。
「黙らなければ……今度はワタシたちがお前たちを恐怖させてやる……!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

夕凪・悠那
うわぁ……これはまた。
除霊とか専門外もいいとこなんだけどなぁ……

まあ、やるだけやってみますかー

【WIZ】
電脳世界を展開
とりあえず一階ずつ校内をサーチ([情報収集])して数値の異常を調査
特に異常値が大きいところを中心に、[ハッキング]で割り込みをかけて修正を試みる
後が控えてるんだ、さっさと済ませちゃおう([早業])

【エレクトロレギオン】に[武器改造]で各種センサーとカメラを装備
異常値が観測された場所の照らし合わせと、修正後の正常化を確認するために校内に放つ
あとなんか飛び回ってる小物に邪魔されないように幾つか残しておこうかな
飛び掛かってくるの自動迎撃で([カウンター])

アドリブ絡み歓迎


葛籠雄・九雀
POW

ぽるたーがいすと、であるか。
…いや申し訳ない。正直に言えば、やれることがあまりに少ないのであるぞ。
現象を起こしている者?などおるのやもしれんが、オレは説得などまるで出来んであるしな。止められるような道具も持っておらん、というより、オレはそういうものに全く詳しくないのである。

であるから、誰かが指示をしているのであれば従うであるぞ。
そう言うことが特に何もないのであれば、そうであるな、飛んでいく何かが猟兵や子供、教師などに当たりそうなのであれば、【かばう】で守りながら防いでどうにか元の場所へ戻すか。エピフィルムで能力を上げればそれなりには動けよう。下手に壊すと危険であるしな。

アドリブ連携歓迎


四季乃・瑠璃
緋瑪「なんだか、心霊現象のオールスターだね~」
瑠璃「不完全とはいえ、成立しちゃったからね。仕方ないけど…」
緋瑪「あまりに煩い様だと、幽霊だろうと殺しちゃうよ♪」
瑠璃「できれば大人しくしておいてほしいかな」

【チェイン】に分身を切り替え

瑠璃が【高速詠唱、全力魔法、情報収集、ハッキング、範囲攻撃、マヒ攻撃】で校内に発言した怪異に対して魔力でハッキングを掛け、強引に封じ込めつつ、緋瑪が走り回る人体模型や飛んでくるパンやピアノ等、比較的物理的対処(破壊)しても問題なさそうな怪異をボムで爆破したり、大鎌で叩き斬る等、強引にねじ伏せるよ

緋瑪「死にたい幽霊から出ておいで♪」
瑠璃「静かにするのを薦めとくよ」




「うわぁ、これはまた」
 ぽつりと溢れた嘆息は、専門外にも程がある除霊業務へのささやかな抵抗感の表れか、それとも混沌極まる猟兵たちの鎮圧作戦の顛末への呆れだろうか。
「それでもこのままボス戦は避けたいし、まあやるだけやってみますかー」
 要はホラーゲームのようなものだ、と悠那は考える。こちらからは干渉のしようがなく、向こうからは干渉し放題の騒霊たち。
 彼らの攻撃でこちらの――子供たちの体力が尽きる前にクリア条件を満たせばよいのだ。それが彼らに通用する攻撃手段の発見であるのか、その根源の制圧であるのかはまだ不明だが、対抗手段が全く存在しないということはないだろう。
 安全圏を求め移動中の子供たちをいつでもカバーできる位置を維持しつつ、身を隠してついて行く悠那はゴーグルを身に着け、視界に電脳世界を重ね合わせる。視えるのは校内の地図だ。フロアごとに分けられたそれに、さらに観測情報を重ね合わせる。
 電波、磁場、放射線、温度、湿度――幾重にも積層された情報は、七色で以て異常を示す。
「よし、思ったとおり異常数値が出てる……ここはえっと」
 地図に示されたのは校庭に続く昇降口。てっきりどこかの教室が根源だと予想していたが、なるほど校内と外界が封鎖され隔離されていると言うのであれば最大の接続部であるここが騒霊の根城でもおかしくはあるまい。
「この後にボスが控えてるんだ。さっさと済ませちゃおう」
 ハッキングを仕掛けようと試みる悠那だが、複雑怪奇な波長で乱れ飛ぶ霊的な怪電波がここからの介入を思うように進めさせてくれない。
「はぁ……仕方ない。直接対処するしかないね」
 呼び出した自動機械に霊的異常を検知できるよう各種センサーとカメラを増設し、昇降口をはじめ異常を検知したポイントに放つ悠那。
 だが、程なくして半数からの応答が絶えた。簡易的な機体とはいえ戦闘用のそれが、状況をこちらに伝えることもなく消失したとなればただ事ではあるまい。
「ロストした機体の向かったのは……やっぱりそこか。九雀くん、瑠璃さん、緋瑪さん、昇降口が本命みたい。行ってくれる?」

「うむ。ぽるたーがいすと相手ではやれることがあまりにも少なかったのである。何しろオレ、説得などまるで出来んであるし止められるような道具も持ち合わせておらん。何よりこういうものにまったく詳しくないのである」
 故に、己より少しでも状況を理解し、判断を下せるものがあらばそれに従うことこそこの場での最良。何より長期戦ともならば猟兵はおろか子供たちにも不要な怪我を負うものが出るやもしれぬ。
 ならば、それを食い止めるため敵の胃袋に飛び込めという指示も上等。
「向かったところで何をすればよいかはわからぬが、どうすればよい?」
「瑠璃さん緋瑪さんをフォローして。こっちでも可能な限りモニタリングと援護はするから」
「あい分かったのである。では行くか」
 手の中で針を弄び、飛来する小物を弾き落として先行する九雀。
 その後ろを続く二人の少女は、この怪奇現象をまるでアトラクションでも眺めるかのように暢気に受け止めている。
「なんだか心霊現象のオールスターって感じだね~」
「不完全とはいえ儀式が成立しちゃったからね。この後の怪異戦の安全を考えると仕方ないけど……」
「あんまり煩いようだと幽霊だろうと殺しちゃおう!」
「でもできればおとなしくしておいて欲しいかな」
 双子のように息を合わせて楽しげに語らいながら、九雀の守り確保した道を上履きの音をぺたぺたと鳴らして跳ねるように駆ける緋瑪と、同じく上履きの音を鳴らして至極当然のように歩く瑠璃。
 二人の少女は気楽に振る舞っているようで、隙なく魔力の網を張り、霊力の脆弱な部分を侵食してそこから騒霊を封じ込めていく。
「お、幽霊発見ー! 九雀さん、ちょっと退いて!」
 狂ったように鍵盤を叩きながら飛来するグランドピアノ。いくら九雀とて針や短剣で相手するには大物にすぎるソレに手榴弾が投げ込まれ、木っ端微塵に爆砕する。
 その様子をレギオン越しの視界に視た悠那は、なるほどこれでは子供たちと一緒に行動できないわけだと嘆息すると同時に、緋瑪を抑えて別行動を判断した瑠璃に感謝を抱く。あんな範囲攻撃を護衛対象の間近で放たれては溜まったものではない。誤爆がなくても精神的な負荷は相当なものだ。
 そうして砕け散ったピアノの残骸を瑠璃が拳銃で撃ち落とし、あるいは九雀が針で壁に縫い止める。
 そんなド派手な制圧劇を幾度か繰り返し、一行は破壊された先発のレギオンの残骸を踏み越え昇降口へとたどり着く。
 騒霊の根城、校内全域を包む怪異の根源ともなれば空気が違う。
 そこに立つだけで精神が侵されるような、得も言われぬ恐怖と悪寒。だが、これはポルターガイストに対する恐怖というよりも、もっと別の――例えば、誰かの恐怖が流れ込んでくるような。
「これは……妙であるな」
「気持ち悪い。さっさと爆破でもしちゃおうよ。ほら、死にたい幽霊から出ておいで」
「この感じ、心細い……寂しい? 何で? ……わからない、けど……」
 この感情が誰のものであれ、現実にポルターガイストは危害を加えて来た。制圧せねばならない存在に変わりはない。
 大鎌を構えた緋瑪と、針を抜いた九雀。二人が戦闘態勢に入ったのと同時に下駄箱の扉が一斉に開いては閉じ、バタバタと騒がしい音を立てながら荒れ狂う。
 誰かの上履きが飛翔し、野球クラブのメンバーなのだろうか、金属製の杭が生えたスパイク靴すらも襲いかかる。
「やらせぬであるよ!」
 それを切り落とし、演舞するように針と刃を踊らせ緋瑪と瑠璃を守る九雀。
 その背後で、瑠璃は拾い上げたレギオンに問う。
「悠那さん、見えてる? ……"どこ"?」
 その問いに、悠那はカメラ越しに視た視界の中でもっとも異常の色濃い部分、センサーが捉えたごく低温の一角、不気味な電磁波を生じさせるそれを瑠璃に伝えた。
「だって緋瑪」
「はーい! それじゃあ…………出てこない悪い子にはお仕置きだよ!」
 靴による抵抗を潜り抜けた緋瑪、彼女の担ぐ大鎌が一閃。
『――きづいて くれて ありが』
 かすかに感じた声。それはまるで、自らを殺した緋瑪たちに心底からの感謝を伝えるような、穏やかで安心に満ちた――
「瑠璃、九雀さん、悠那ちゃん……今の」
「聞こえたよ、緋瑪。ありがとう、って」
「殺されて礼を言うとは妙な……いや、成仏するのであれば正しいのであるか? しかし違和感の残る最期であったな」
 この場で戦っていた人々には確かに聞こえた声。その残滓がかき消えると同時、不気味な恐怖……誰かに忘れ去られてしまったような、寂しさと焦燥の混じった怯えが失せ、ポルターガイストも一気に沈静化していく。
「…………ありがとう? そんな音声データ、ボクの方では観測できなかったしレギオンのログにもないけど……本当に聞こえたのかな?」
 唯一、この場に居らず遠隔で観測しながら別動の猟兵たちに根源の撃破を伝えていた悠那だけがその声を聞き届けることができず、怪訝に首を捻るのだった。

 ――気づいてくれてありがとう。
 世界の誰もから忘れられ、生きた痕跡をかき消され、最愛の人が存在しない己を探し求めて狂いながら死んでいくさまを見せつけられてきた者たち。
 存在しないがゆえに、存在する者たちに己がここにいると気づいてほしくて、いつしか騒霊の身に堕してしまった哀れな犠牲者の霊は、二度めの死を受け入れきっと解放されたことだろう。
 だが、彼らを騒霊に変えた――絶望に至るほどのことを成した、ヒトを拐い存在の痕跡をかき消す怪異はまだ残っている。不完全ながらに顕現するであろうそれを迎え撃つため、猟兵たちは態勢を整えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『十尺比丘尼』

POW   :    臓腑抉り
【全身を奇妙に蠕動させて】から【腕を伸ばし、鋭く変異させた手での近接攻撃】を放ち、【対象の体を抉り、部位欠損や激痛を与える事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    接近遭遇
【ふわりと浮かび上がった後、瞬間移動する事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【近接攻撃】で攻撃する。
WIZ   :    怪光焔
【両目を見開き、そこから放つ稲妻めいた閃光】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を焼き、独特の金属臭を周囲に立ち込めさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:猫背

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠一郷・亞衿です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「終わっ……た?」
 苦闘の末にようやくさすまたで押さえつけた給食室の寸胴が力を失って転げ落ちた。
 猟兵たちが迎え撃ち、破壊した物も同じく二度動く気配はない。
 ポルターガイスト現象の根源が、騒霊が無力化されたのだ――そう認識した猟兵たちは、一目散に退却中の子供たちのもとへ集う。
 教師や子供たちと面識のあるものもないものも、ひとまず騒霊現象の終結を確認して子供たちを護るように陣形を組んで、警戒を減に校舎からの脱出を図る。相変わらず窓は固く封じられているらしく、数メートルに一回鍵をがちゃがちゃと弄っては窓枠を力の限り引っ張り脱出できないか試していたフレッドにもそろそろ疲労の色が見え始めた。
「フレッド、そろそろやめよう。またポルターガイストが襲ってくるかもしれない、体力は残しておこうよ」
 肩で息をする彼を見かねた雄二が顔を真赤にして肩で息をする親友を心配し、兄であるエディがどうにか持ち出せたジュースのボトルを弟に手渡し水分補給を促す。
 すっかりぬるくなったコーラの、じゅわじゅわと粒の粗い炭酸が口の中のいやな感じを溶かして流し込む。
「ありがと兄貴。……そうだな、あんたたち……転入生とか嘘なんだろ? MIBだか、なんかそういうエージェントかヒーローみたいなやつなんだよな。あんたたちについていけば、俺達はみんな帰れるんだよな?」
 さすがのフレッドも参ってしまったのか、猟兵にそんな弱音を零す。猟兵たちは心配するなと胸を叩いて彼を励ました。
 そんなときだ。
「ねぇ斗真くん、アレ何!?」
「椎葉、どうしたんだよ? うわっ!!」
 ふと窓から外を覗った那留と斗真が、驚きの悲鳴を上げる。
 一同がその声に釣られて外へと視線を向けると、豪雨が視界を遮り、数メートル先すら見えぬほどの暗闇の中、遥か彼方に光る金色のなにか。
 ふたつ並んだその金色の物体は、ゆっくりと滑るように移動しているではないか。
「何だあれ……あれは……」
 窓に張り付き、目を細めてその正体を探る雄二が、みるみる青ざめていく。
 弾けるように窓から離れた雄二は、ただ一言逃げろと叫んだ。

 それは地面から四メートルほどの高さにあった。
 それは目であった。瞼のない、瞳だけのギョロリとした金色の眼球。
 それは彼我にこれだけの距離があり、雨で視界を遮られ、そして暗い建物の中にいるというのに確かに子供たちを見ていた。

 雄二が叫んだのと同時に、まるで瞬間移動でもするかのようにそれは接近し、そして壁など最初からなかったかのように平然と透過して校舎内に出現する。
「うっ……なに、この……」
「おえぇぇっ!! げほっ、ごほごほっ!!」
 それが現れた瞬間、周囲を濃密に満たす臭気。鼻が焼け、喉が痛み、吐き気を催すような異様な金属臭を伴って、それはやってきた。
 地面からおよそ三尺(九十センチ)ほどの高さを浮遊するそれは、身の丈十尺(三メートル)ほどの巨躯を持つ。
 葵の葉のような形の黄金の光背を背負い、尼僧の格好をしたそれは、しかし仏に連なる存在のような厳かさや優しさを感じない。その瞳に宿るのは、子供たちへの執着と生者への怨念だけ。
 ボロ布のような袖から伸ばされた両手は緑色の膚に鋭い爪を生やした人外のそれだ。
 あまりに強烈な異臭に、身体の弱いにいるなどは咳き込み、えずきながらうずくまってしまう。
 四年生組はそんなにいるに寄り添いながらも恐怖で動けず、比較的正気を保っているエディとフレッド、雄二さえも蛇に睨まれた蛙のように動けない。
「ど、どなたデスか。こ、ここは部外者の立ち入りは……」
 そんな中、子供たちを守らねばとさすまたを手に果敢にそれへ誰何の声を飛ばしたキャサリン。しかし、それの返答は鋭い爪でさすまたの柄を中程から切り落とすという友好的には程遠いものだ。
 切り飛ばされたさすまたの柄が窓に直撃し、ガラスが大きな音を立てて砕け散る。
 ――外界と校内を遮断する結界は、いつの間にか消失していた。
 とはいえ子供たちが身動きを取れず、逃げたところでこれが先程同様の瞬間移動で追ってくるならば逃げ切れるとは思えない。
 ここで迎え撃ち、これを倒す他にないと猟兵たちは覚悟を決めた。

 十尺比丘尼。
 怪異へ堕した巨躯の尼僧は、ただその両目で子供たちを見つめ手を延ばす。
 まるで己が喪った何かを欲するように。あるいは、飢えた獣が美味そうな餌を見つけたかのように。
波狼・拓哉
あー話にあった怪談おじさn…おじさん?ってあれかな。…おじさん???うん。いやまあどうでもいいことなんだけど凄く引っ掛かるのはなんでだ。
まーここまで見ちゃったら記憶処理入るか。というか出し惜しみして勝てる相手じゃないですし。ほらおいでミミック。化け撃ちな。どういう存在かは知らないけど光線当たれば死ぬだろう。
自分は衝撃波込めた弾を装填しつつ、バレッフで牽制ぎみに撃っておこう。
飛びあがったら周囲を第六感と戦闘知識使いつつ警戒し予測し、出てくるとこにノットの銃口を先に置いておいて零距離射撃で態勢崩して衝撃波伝わる脚蹴りで距離を離して上手いこと立ち回っていきますか。
(アドリブ絡み歓迎)


ロウガ・イスルギ
連携・アドリブ歓迎

何はともあれコイツを倒して任務完了だ。個人的に
確かめたい事もあるし、な

臓腑抉りを使用してきたら「残像」にて受け止め「カウンター」で
こちらの装備武器グレイプニルによる捕縛拘束を狙う
とはいえグレイプニルを単なる拘束ワイヤーと思うなよ、コイツには
まだ先があるのさ!

【絶冥拘縄】により拘束した部分から切断攻撃していこう
まずは腕か爪を狙ってダメージを与えつつ攻撃力を削ぐか
すでに弱ってるとかなら首落しや胴体寸断狙って仕留めよう

コイツを倒せば拐かされた連中も戻れる・・・・・・といいんだが
どうなる事やら。雇われの身でも心配ぐらいはさせてほしいモンだ、
オレの過去や記憶とも無関係じゃないならな




「あー、話にあった怪談おじさんってあれかな。……おじさん??」
 あれはどちらかというと怪物だし、百歩譲っても怪談ババアであろう。なによりあれと意思疎通ができるとは到底思えない。
「うん? いや、どうでもいいことなんだけど……凄く引っ掛かるのは何でだ」
 雄二に儀式の仕上げとなる話を伝えたという怪談おじさんの怪と、目の前の十尺比丘尼の影が重なるようで重ならない。その違和に得体のしれない気持ちの悪さを感じた拓哉は、努めてその懸念を意識の外へと押し出した。
「考え事は後にしろ。何はともあれコイツを倒して任務完了だ。――個人的に確かめたいこともあるし、な」
 両手にワイヤーを絡め、その長さを手先で調節しながら油断なく敵を見据える白虎のキマイラ、ロウガがそう唸る。
 この怪僧こそ今回の事件の元凶であることに違いはない。このまま放置すれば子供らが攫われ、そして記憶と存在の痕跡を消し去られてしまうのだ。
 それはロウガにとって望むところではない。彼自身がそうであったように、彼の同胞がそうなってしまったように。世界から忘れ去られるのは、何かを忘れてしまうのはとても苦しいことなのだから。
「それにな。ヤツに拐かされた連中が戻れる……かはわからんが、ヤツを倒さないことにはどうしようもないだろう」
 これ以上の犠牲を増やさぬよう。己が受けた記憶の疵、その正体を暴くきっかけが掴めるならば。そして、犠牲者たちに再び笑える日が訪れる可能性がほんの僅かでも残っているならば。
 それを追い求めるのがロウガという猟兵だ。
「だな。まーここまで見ちゃったらどっちにしろ記憶処理は入るか。こんなモンに出会っちまった記憶なんて忘れられるなら忘れたほうがいいに決まってるしな」
 奪われてはならない記憶を守るために、捨てるべき記憶に"超常"を紛れ込ませよう。
 ここまで一般人に見えるよう徹してきた拓哉もついにその武器を抜く。
 それはまるで玩具のように色鮮やかな二丁銃だ。いや、まるでではない。まさしく玩具である。ヒトを殺傷せしめるための鉛の銃弾を放つ機能は持ち合わせておらず、オレンジに塗られた銃口のフタはそれが実銃ではないとなにより雄弁に語っている。
「こんなときに言うのも何だが、その武器で大丈夫なのか?」
 思わず問うてしまうのは、実践経験豊富な傭兵であるロウガだからこそだろう。猟兵がときに突飛なアイテムをまで戦闘に利用し、多大な戦果を上げることは理解していても、ことそれが銃という見慣れた兵器の形をしていながら兵器としての役割を全力で放棄しているデザインであれば彼の感じる違和感も大きいことだろう。
「大丈夫大丈夫。まあ見てな、っと」
 二丁の片割れ、バレッフにやはり玩具めいた弾丸を込め、もう片方のノットにも同じく。そうして拓哉はバレッフで十尺比丘尼へ発砲する。
『……ァ、ア』
 両手を前に突き出し、虚ろに迫る十尺比丘尼へと、凄まじい衝撃を内蔵したプラスチック製の弾丸を叩きつけた拓哉。
 並の人間ならたやすく吹き飛ばす強烈な衝撃だが、巨躯の怪異存在には通用しない。
 とはいえ態勢を崩し、厄介な邪魔者として拓哉を認識した比丘尼は得意の瞬間移動で姿を消す。
 狙うのは邪魔な大人どもではない。ただ、子供たちを連れていきたいだけだ。
 ならば相手をする必要はない。彼らの守りを悠々とすり抜け、子供たちの背後に現れて――
「分かりやすいんだよ! ロウガ、押さえてくれ!」
 第六感でその行動を察知していた拓哉が比丘尼の出現位置に向け滑り込み、にいるに向けて手をのばす比丘尼の前に割り込み準備万端のノットを押し当て再度発砲。ついでに無理な姿勢での介入と発砲で崩れたバランスを勢いに変えて、銃撃の衝撃に姿勢をわずかに崩した比丘尼を蹴り飛ばす。
「ああ、任せろッ!」
 そのよろめいた先にはロウガが編み上げたグレイプニル――鋭利なワイヤーによるネットが待ち受けている。
 一度絡めば二度と対象を離さない捕縛の網へと比丘尼が飛び込み、絡むワイヤーを引きちぎろうと奇妙な蠕動とともに鋭く尖った両手の爪を振り回す。
「くそ、暴れやがって! 拘束も長くは持たん……と、ただのワイヤーならばそう呻くところなのだがな。グレイプニルを単なる拘束ワイヤーと思うなよ、コイツには――」
 暴れ狂う比丘尼の両腕に絡むワイヤーがより深く食い込むようにロウガはそれを引き絞る。
「まだ先があるのさ!」
 すると食い込んだワイヤーが比丘尼の緑色の膚を引き裂き、不気味なオイルめいた体液を噴き出させた。
「お前には聞きたいことが山ほどある。死ぬ前に話してもらいたいところだが……生かしておくリスクのほうが大きいな。やれ、拓哉!」
「了解、ほらおいでミミック。奴さんを化け撃ちな! どんな存在かは知らないけど、光線が当たれば死ぬだろう!」
 呼び出されたミミックが、小さな宇宙戦艦の模型に化ける。
 だが、見た目が玩具であろうと殺傷力は優秀であるのはバレッフとノットに同じく。
 放たれた光線は、拘束された十尺比丘尼の胴を違わず撃ち抜いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

四季乃・瑠璃
緋瑪「さて、やっと殺すべき相手が来たね、瑠璃♪」
瑠璃「ここは貴女の居場所じゃない。早々に貴女の居場所に還してあげる」
「「さぁ、私達の殺戮を始めよう」」

UCの効果で分身&能力、武装強化

二人で互いの死角を補いつつ戦闘。
瑠璃がK100による【早業、ドロウ】の射撃で牽制を掛け、緋瑪が大鎌の機巧を利用した【早業、残像、ダッシュ】高速斬撃で斬り込み、即座に離脱。
離脱と同時に瑠璃が【範囲攻撃、鎧砕き、鎧無視、早業】の接触式ボムで離脱支援+追撃を仕掛け、更に緋瑪が追加で更にボムを投入して飽和爆撃。

最後は切り札、二人の魔力チャージした【力溜め、範囲攻撃】ジェノサイドノヴァで一気に吹き飛ばすよ




 怪異であろうと死ぬ――その認識は誤りではない。
 オブリビオンであるUDC怪物は、猟兵自身がよく知るようにユーベルコードで撃破可能である。
 また、かつての人類がそうして秘密裏に抗っていたように、人智を尽くした武器や兵器による強力な殺傷力の投射で撃破することも、至極困難であれど不可能ではない。
 だが、怪異はそういった人間の抵抗をときに圧倒して見せるからこそ怪異として、ヒトの理の外の存在として恐れられるのである。
 十尺比丘尼もまた、そういった埒外に在る怪異であった。
 何しろ受けた傷が瞬く間にふさがっていくのだ。しゅうしゅうと肉の灼けるような異音を伴い、纏う金属臭に汚泥のような油の匂いを混ぜながら、両腕の肉を糸に刻まれ胴をレーザーに焼かれた怪僧はまるで無傷であったかのように立ち上がる。
 だが怪異であろうとも殺せる以上、無尽蔵に再生し続けるわけではない。
 そして見かけ上不死身の如きこの化け物の前に立ちふさがるのは、そういった"殺し続けること"を得意とする殺人姫だったのである。

「さて、やっと殺すべき相手が来たね、瑠璃♪」
 楽しげに謳い、決して広くはない廊下で巨大な鎌をぐるんぐるんと手の中で回す緋瑪。
「ここは貴女の居場所じゃない。早々に居るべき場所に還してあげる」
 拳銃に弾倉を叩き込み、薬室に弾丸を送り込んで安全装置を外す瑠璃。
「「さあ、私達の殺戮を始めよう」」
 二人は焼け焦げ、ワイヤーで細断された鋭い爪を除いてほぼ元の健在を取り戻した比丘尼に相対する。
 双子のように、双子以上に強く結びつく二人は、そんな不死身の怪物へと特段の高揚も怯えもなく、いつもどおりに襲いかかった。
 攻撃も防御も牽制も回避も何もかも、声どころか目配せすら必要としない抜群のチームワーク。それが彼女たちの強みだ。
 そして、であるからこそ彼女たちは絶え間ない攻勢を以て敵をこの場に釘付けることができる。
 防御を一切考慮しない、攻撃偏重の防衛戦。
 彼女たちの立ち回りを表すならばこうだろうか。
 瑠璃が自動拳銃を目にも留まらぬ速度で連射し、被弾や回避で生じた微かな隙間に緋瑪がその身を捩じ込み大鎌の刃を振るう。
 ただの鎌ならば、少女一人の膂力で生み出せる破壊力などたかが知れていよう。だが、彼女の振るうそれは特別だ。内部に装填された炸薬が爆ぜ、反動がそのまま斬撃の重さと速度を倍増させる。
 この斬撃で比丘尼が怯めば、深追いはせず即座に離脱。そこへ瑠璃が手投げ弾を放り込み、逃げる緋瑪の後を追う比丘尼の追撃を砕き、あるいは瞬間移動で子供たち側へ抜けようとするその初動を潰してゆく。 
 そして煙幕となってくれる爆煙の晴れぬうちから銃撃を叩き込み、そこへ緋瑪が斬り込んでゆく繰り返し。
 比丘尼は僅かずつではあるが、確かに追い詰められていく。
 その時だ。二人にとっては歓迎しかねる、比丘尼にとっては救いのそれとなる雨が降り注いだのは。
『――火事です。火事です。一階、職員室前、廊下で火災が発生しました。生徒のみなさんは、先生の指示に従って、グラウンドへ避難してください』
 登録されていた自動音声が再生され、突然の土砂降りが立ち込める爆炎を押し流す。
「緋瑪、しまった……かも」
「火災報知器? あちゃー、反応しちゃったか。じゃあ次で大きいのかますっきゃないね」
 スプリンクラーの放水が収まるまで十数秒だろうか。だがそれだけの時間を攻勢のリズムを失ったまま座して待つのは得策といえまい。
 ならば比丘尼がこの文明の恩寵を正しく理解し、戦術に取り入れる前に仕留めねば。
「緋瑪、最後のひと押し分の力を貸して?」
「おっけー、任せてよ瑠璃!」
 瑠璃の手の中にはひときわ大きな手投げ弾。二人分の魔力を数秒に渡って注がねば起爆しないそれに、緋瑪の手が乗った。
「これが私達の最後の一撃、かな」
「そうだね、仮に耐えたとしてもタダで済む筈がないよ。それは後に続くみんなが楽になる、いい事だよね」
 それじゃあ、と緋瑪にうなずいて、瑠璃がその爆弾を受け渡す。
 任せて、と瑠璃にうなずいて、緋瑪がそれを比丘尼に投げつけた。

 ――爆発。そして壁が崩れる音。
 外と職員室、廊下と両サイドの空間を隔てる壁が崩れゆくのを感じながら、、二人は比丘尼に痛打を与えたという確かな手応えを感じるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィーナ・ステラガーデン
【PPP開発室】
あー。えらい目にあったわ!
ってまた酷い匂いね!?
あいつをぶっ飛ばせば解決ってわけね!全部わかったわ!!
とりあえず外が雨なら室内で戦いたいわね!

室内だからって手加減とかすると思ったかしら!私はしないわよ!(というか何も考えてない)
【属性魔法】で爆発で牽制しつつ【高速詠唱、全力魔法】でどかーんよどかーん!
爪の攻撃は【ジャンプ】とか【ダッシュ】とか【ブラックオニキス】で気合避けするわ!
基本は距離をとって仲間2人と連携して隙を見つけたら一気にどかーんが望ましいわね!!

そしていつも通り建物を壊しすぎたら私は胸をはって言い放つわ!
あいつ(オブリビオン)がやったって!

(アレンジアドリブ歓迎!


ビードット・ワイワイ
【PPP開発室】
見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり
恨みで動きしその体、子供を奪いしその思考
空虚な己を顧みて己の惨めさ理解できぬか
猟兵相手に通じぬ力でのさばり続けたが汝の失策
己の力の限界を知れ。ここが汝の破滅なり
そして我は大統領

あそこに居るは我を脅かそうとするもの
つまり次期大統領の座を狙っておる政敵なり
そしてあの思想はまさに反社会的勢力に間違いあらず
癒着は正に害悪である。政権から排除せねばならぬ
第二の政策、内閣改造政権浄化、癒着の罪で拘束する
大統領特権によりスピード審判、銃殺刑
今こそ力ある政治を、ビードッ党
これで我が党のCM完成である

それはそれとして少年少女よ、選挙には行くのだぞ


イデアール・モラクス
【PPP開発室】
フン、あの女教師なかなか勇敢じゃないか…息子ともども可愛がってやりたくなる…グフフ…おっといかんいかん…。
クク、その為にもまずはこの巫山戯た遊びにケリをつけねばなぁ!

・行動
「何を求める?何を欲する?何が貴様の幸福だ?
クク…あぁ、答えなくて良いぞ、全ては私のモノだからなぁ!」
UC【七星覇天煌】を『全力魔法』と『属性攻撃』で威力を増した上で『高速詠唱』を用い一瞬で行使、膨大な魔力光線の『一斉射撃』による『範囲攻撃』で敵の放った閃光を『武器受け』し眼前の敵ごと『なぎ払って』完全に消し去る。
「今日だけは私はこのガキ共の先生でな、貴様には決して渡すわけにはいかんのだよ」

※アドリブ歓迎




 古びた校舎の壁が爆砕され、黴臭い塵を巻き上げて熱風が吹き付ける。
 とっさに子供たちに覆いかぶさるように庇ったキャサリンと、彼女を魔導障壁で庇うイデアール、そして彼女も含めて味方の遮蔽となるべく最前線に立つビードット。
「ふん、いらぬ世話だが一応は感謝しておこう、ビードット」
「我は大統領なれば、友人を守るのは当然である」
 ――国民の支持率を高めるために、そういうパフォーマンスも重要だと語る鋼のバケツヘッド――否、いつの間にか親しみやすい二頭身のお祭りスタイルへと変形していたゆるきゃらがどこまで正気であるのか、そもコイツが正気と呼べる思考形態をこれまで有していたことがあったろうか、という思考はさておいてイデアールは振り返る。
 子供たちも、そしてキャサリンも無事のようだ。少なくとも急を要するような傷は負っていないように見える。
「フッ、なかなか勇敢じゃないか……これが終わったら息子ともども可愛がってやりたくなる……」
 ぐふふ、と下品に喉を鳴らしてよだれを拭うこの魔女がどこまで正気であるのか、いやこの魔女にとってこの状態こそが正気であったかという思索をさておいてビードットはもうひとりの仲間――国民たちの報告によれば、デモ行進に加わった挙げ句ほぼすべてのポルターガイストと交戦して最終的にカビパンが顔面直撃したあの魔女の姿を探す。
 国民が続々と集結しつつあるのだ。彼女もそのあたりに転がっているだろうとビードットは大きな球形の頭を旋回させてその姿を探せば、顔面に緑や青灰、黒の粉でまるでコマンドーめいた迷彩を描いて咳き込む彼女の姿はすぐに見つかった。
 いい歳をしてこの辺りの公立中学校の制服に身を包み、それが馴染んでいるのはもう才能のレベルかも知れない。もっともその制服はあちこちが薄汚れてほつれ、先の爆風をもろに浴びて埃まみれになっているのだが。
「あぅー、えらい目に遭ったわ! げほっ、またひどい臭いね! 埃臭いわ黴臭いわ。それに――」
 漂うは古ぼけたカビの臭いだけではない。それは金属臭だ。吐き気を催すような、喉や鼻の粘膜を貫き焦がすような臭気は、その発生源がまだ死んでは居ないことの何よりの証左。
 立ち込める塵煙を切り裂き、暗い廊下を眩く照らした光線がフィーナの放った爆炎魔法と激突する。
「アイツの臭いね、これ。鼻が曲がるったらありゃしないわ! 外は雨だしここで戦うしかないけど……」
「容赦は無しだ。だろう、フィーナ! あっ待てこっちには来るな。そのままゆっくり元の場所まで下がれ。お前凄くカビ臭いぞ。どうしてそうなったんだ」
 炎使いであるフィーナにとって、これだけの豪雨ともなれば手足を封じられるに等しい最悪の気象条件だ。故に彼女は室内戦を選ぶ。選んだのだが、そこに室内だから多少威力調節をしようだとかの配慮はない。
 どうせUDC組織が修理するんだから怪異を吹き飛ばすほうが先決という理論はわからなくもないが、もう少し遠慮とかないんですかね。
「台詞を取らないで頂戴イデアール! カビてボソボソになったパンが突っ込んできて私は今すっごく不機嫌なのよ! このムシャクシャを発散したいわ!」
 違う、この魔女全然考えなしに本能で最大火力をぶっ放そうとしてる!!
「話はそこまで。我が政敵が動き出す、迎え撃つ準備をせねばならぬ」
「……そうね、この恨みはアイツにぶつけるわ!」
「クク……女教師とナードとジョックな息子たちとのめくるめくお楽しみのためにもこの巫山戯たお遊びにケリを付けねばなぁ!」
 三人が戦闘態勢に入ると同時に、十尺比丘尼の両目が真円に見開かれる。眼球が転げ落ちそうなほど開いた眼から迸る怪光焔は、フィーナではなく、ビードットでもイデアールでもなく、彼らが庇うキャサリンに向いていた。
 まずは子供を拉致するにあたって不要な大人を消そうというのか。そうはさせるかとイデアールの放った魔導レーザーが幾条も閃き、これを迎え撃つ。
「今日だけ私はこのガキどもの先生でな、貴様には決して渡すわけにはいかんのだよ!!」
「カ……エ…………!」
 焦げ付くような魔力と霊力の激突。レーザーの数でも魔力の量でも圧倒するイデアールが十尺比丘尼を相手に押し切れない。拮抗する光線の激突は、双方動くに動けぬ膠着状態を作り出した。
 だが、なにもこの戦いは一騎打ちではない。
「手加減なんてしないわ! キャサリン先生、子供たちをしっかり守るのね! 行くわよ化け物、食らいなさい!」
 杖を振るうフィーナ。彼女が腕を一振りするたびに、小さな爆発が生じて十尺比丘尼の視野を塞ぐ。
 炎と煙に視界を封じられた彼女は、ただ正面で撃ち合いに徹するイデアールしか見えていない。そしてこの大きな隙を逃すビードットではなかった。
「見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり。恨みで動きしその体、子供を奪いしその思考、空虚な己を顧みて己の惨めさ理解できぬか。猟兵相手に通じぬ力でのさばり続けたが汝の失策。己の力の限界を知れ。ここが汝の破滅なり」
 彼女がなんの恨みでここに呼び出されたのかは知らない。知る必要もないだろう。だが、その身に宿す空虚を埋めるために子供を拐うなど惨め極まる振る舞いだ。それを見逃す術を、大統領は持ち合わせない。
「あれは我を脅かすもの。つまりは次期大統領の座を狙う政敵なり」
 それは仲間や比丘尼に対しての言葉ではない。彼が呼び出した国民に対する演説だ。
「その思想はまさに反社会的に違いあらず、そういった勢力との癒着は害悪である。故に政権から排除せねばならぬ」
 ――ここに我が第二の政策を宣言しよう。
「十尺比丘尼議員を癒着の罪で拘束する。大統領特権で判決を下す、銃殺刑。これにて政権浄化は成るであろう」
 それを昨今の民主主義国家では独裁恐怖政治って言うんですよ。この大統領やっぱソレ系の「大統領」じゃないか。
 軍服に身を包んだ国民たちが銃を構え、イデアールを援護するように比丘尼に弾丸を浴びせ撃つ。それをバックに振り返った丸い二頭身の自称大統領は、妙にフレンドリーな声音で子供たちに囁いた。
「少年少女よ、大人になったらきちんと選挙には行くのだぞ。――今こそ力ある政治を。ビードッ党」
 なんなんだこの。
「だが良い支援だビードット! 丸っこいのも伊達ではないな!」
 銃撃の援護を受け、それを阻むために爪を振るう比丘尼の集中が途切れたか光線を押し返したイデアールが笑う。
「何を求める?何を欲する?何が貴様の幸福だ? クク……あぁ答えなくて良いぞ、全ては私のモノだからなぁ! アーッハッハッハ!!」
「カエ…………ッ!!」
 哄笑を浴び、レーザーに弾き飛ばされた比丘尼が呪わしい声で憎悪を洩らす。
「買えだか飼えだか煩いのよ! アンタなんて――」
 どかーんよ!
 牽制魔法を放った直後から全力魔法の詠唱を編み上げていたフィーナが、ついに完成した大型の爆発魔法を叩きつける。
 大仰で芝居がかった二人はこういう陽動には最適ね。仲間としても頼もしいけど! そんな考えは露と零さず呑み込んで、吹き寄せる爆風を小さな爆発の壁で相殺したフィーナは胸を張る。
「今ので壁がだいぶなくなったけど……アイツがやったのよ! いいわね!!」
 比丘尼が吹き飛んだほうを指差すフィーナ。
 ぽっかりと壁に大穴が空き、豪雨降りしきる校庭がきれいに見渡せるそこを見て、子供たちはただただうなずくしかできなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アリシア・マクリントック
怖いのはもう終わりましたか……?
それならここからは私も!へんし……っ!?
(物音か何かに驚いてキーを落とす。それを拾ったマリアがセイバーギアへと差し込み、起動。マジカル・マリアに変身!)

……ええと。任せましたよ、マリア!私は子どもたちをそばで守ります。敵が怖いとかそういうのじゃないですからね!

金属臭を風の魔法で吹き飛ばしながらマジカルハンマーで攻撃!武器を振るう技術も扱う魔法も拙いが、どう立ち回るべきかは野生の感覚で理解している。
魔法少女マジカル・マリアの一番の武器は獣の本能なのだ!


アイ・リスパー
「きゃ、きゃああっ!
お、お化けーっ!?」

子供たちの後ろに隠れ……こほん、背後を警戒していたところに出現した謎の存在。
宙に浮いて両目から怪光焔を放ってくる非科学的な相手にパニックになります。

「こうなったら、私の持つ最大火力で消し飛ばしますっ!」

幸い結界は消えている様子。
これなら召喚して攻撃ができるはず!
【クラインの壺】で電脳空間から『列車砲』をレールごと校庭に実体化させます。

味方や子供たちを巻き込まないように【チューリングの神託機械】(今度はログインに成功した)で精密計算し、大火力で攻撃です!

「こんなお化けと戦うことになったのも江藤さんのせいですからねーっ!」

恨み言をいいつつ校舎ごと砲撃します!




 比丘尼は校庭まで押し返された。
 とはいえ瞬間移動で襲い来る怪物相手に、物理的な距離が如何程の意味を持つかは些か疑問ではあろう。
 それでも、脅威との間合いがひとまず離れたという事実は子供たちのみならず猟兵たちにも僅かな安堵を齎したことに間違いはない。
 アリシアもまた、安堵の息を吐いた猟兵の一人であった。
 百物語の怪談を辞退し、こっそりと後方で"警戒"に徹し、騒霊たちが暴れ始めれば相棒であるマリアを抱きしめ"退路確保"に徹していたアリシアだが、いつまでもそうして隠れているわけにもいかない。理解不能な怪奇現象の終息を待って合流し、単純明快な回答――つまるところの倒すべき敵の出現に合わせて参戦したのである。
 恐怖とはすなわち理解できないものへの拒絶感であるならば、少なくとも子供たちに危害を加える敵であると理解できる十尺比丘尼は恐怖の対象ではないのだ。
 と、自身に言い聞かせながら子供たちの前に立ち猟兵として、貴族として、ヒーローとしての責務を果たすべく武器を取る彼女。
「怖いのがもう終わったのなら、ここからは私も! 変し――」
「きゃ、きゃああああっ!!」
「っ!? あっ!」
 グリモアたる鍵をバックルに差し込み、戦闘用の鎧を身に着けようとした瞬間絹を裂くような悲鳴がアリシアを背後から襲う。
 突然の悲鳴に肩を跳ねさせ鍵とバックルを取り落してしまったアリシアが振り向いている間に、マリアがそれを上手に咥えて拾い上げ、バックルの鍵穴に差し込んだ。
 ――そんな悲鳴をあげた張本人、彼女に言わせれば後ろを警戒していたというアイは、誰が見ても後方警戒ではなく怯えきって子供たち同様キャサリンに守られている格好のまま外を指差す。
 そこに浮かぶ比丘尼は、ゆらゆらとその身体を揺らしながら跳躍を繰り返すように短距離の瞬間移動を幾重も重ねて引き剥がされた距離を詰めてきた。
「おおっおばお、おばけーっ!!」
 錯乱して何がなんだかわからなくなってしまっているアイは子供たちの後ろから飛び出したかと思うと、今この場で最も頼りになる相手――アリシアの背中にしがみついて泣き喚く。
「アリシアさん! なな、なんとか、あれなんとかしてくださいーっ!!」
「わ、わかりました、わかりましたから! 一旦放して、手を離してくださ、いやぁぁっ! もうすぐそこに居ます、居ますから手を! 離して!」
 混沌である。
 みるみる接近する比丘尼を前に、断固離れるものかと両手両足でガッチリアリシアを背後から拘束するアイ。
 そして恐怖に混乱するアイに身動きを封じられ、比丘尼から目を逸らすこともできず取り落した変身アイテムを拾えないアリシア。
 万事休す、ついに崩落した校舎の穴に手をかけた十尺比丘尼が身を屈めながら再度侵入してくる。
 雨を浴びてふたたびずぶ濡れになった頭巾や着物の端からぴとぴとと雫を滴らせて押し入る怪異を前に震え上がる二人の少女。
『カ、エ……』
 嗄れた声で呻く比丘尼。それが両目を不気味に輝かせ、怪光焔を放つ。
 異様な臭気を帯びた光が無防備な二人を、そしてその後ろのキャサリンと子供たちを焼き尽くさんと迫る。
「――――――!!」
 だが、その光は誰をも焼くことはできなかった。
 一同を護るように割り込んだ一陣の疾風。
 にくきゅうのハンマーを振るい、光線を一撃で霧散させた彼女は――
「マリア!!」
「わうッ!!」
 アリシアの相棒、マリア。彼女がアリシアの持つ変身アイテムを使ったことで、ヒトの姿を得た――それが魔法少女マジカル・マリアという乱入者の正体であった。
 どこかアリシアに似た面影の表情を真剣な色に染め、纏う疾風で臭気を押し流し駆け出すマリア。それをアリシアとアイは見送り、応援するしかできない。
 アイが離せば援護もできようが、恐怖の次は自らを救ったヒーローの背中に夢中で自身が味方を拘束していることを失念した彼女が両手両足を離すまでいま暫くの時間と気付きが必要そうだった。
「ええと……任せましたよマリア! 私達は子供を側で守ります。決して、決して敵が怖いとかそういうのじゃないですから! ね!!」
「うぅー、わふ!!」
 ほんとかな、と言わんばかりに疑いの目を二人に向け、技や戦術などないながらに鋭い連撃で比丘尼を抑え込むマリア。
 彼女は狼である。変身したことでヒトの姿を得たとはいえど、本質的には獣だ。
 故に、器用に武具を使った戦技や戦術、高度な魔法は難しかろう。
 だがそれを補って余りある鋭さ、獣の本能とでも言うべき直感から繰り出される攻撃は比丘尼の突破を許さない。
 攻撃を見切るだけでなく、瞬間移動で抜けようとすれば察知してその初動を潰す。だがそれでも、ここぞで押し切るだけの決め手がない。
 本来であればそれを担うはずのアリシアがやや弱腰かつ動けないいま、攻めきれぬマリアは長期戦で疲弊を強いられることになるだろう。
「うう……怖いです。怖いですけど、このままじゃ……」
 アイは今度こそログインパスワードを正しく入力し、神託機械と自らの頭脳をつなぐ。そこで視た未来演算の結果は、押し切れぬまま体力を削られたマリアが比丘尼に膝を屈する可能性未来の姿。
 そうはさせない。そうなったら次は自分たちの番で、その次は子供たちだろう。
 本当は結界が消失した今、すぐにでも全力ダッシュで撤退したい気持ちがあるが腰が抜けたままではそうも言っていられないというのもあるが、とにかく比丘尼を倒さないことにはなんともならないだろうというのは確実だった。
「こうなったら最大火力で消し飛ばします……こんなお化けと戦うことになったのも江藤さんのせいです……江藤さんのせいですからねーっ!!」
 絶叫は果たして車中のエージェント江藤に届いたろうか。
 さておきアイの恐怖と怒りとその他諸々を得て、電脳空間からそれは実体化した。
 まずはレールが校庭の空中にジェットコースターばりの曲線を描きながら何本も敷かれ、泥濘んだそこに道を作る。
 続いて轟音とともに滑り込んできたのは、何車線をも纏めて占有する巨大列車。
 それは列車砲であった。子供たちの中に歴史や戦史、兵器に興味を持つ子が居ればその威容になにかの反応を返しただろうが、そういった物に興味を持つのはかろうじて土曜のロボアニメを観ていたエディと斗真の二人で、彼らは現実の兵器にはさほど造詣が深いわけでもない。なんか凄くでかい砲を載せた凄くでかい列車が来たぞ、くらいの認識で、にいるや那留などは何が出現したかすら理解できているか怪しい。
「マリアさん、やっちゃってくださーい!!」
 アリシアにしっかりしがみついたまま、その肩越しに叫ぶアイ。
「……っ、なるほど。ええ、マリア! 彼女の言うとおりに!」
「うる゛る゛る゛ぅ゛……あぉーんっ!!」
 主とその背中にくっついた少女の声を受け、裂帛の気合を込めた遠吠えとともににくきゅうハンマーを振り抜くマリア。
『カ……エッ!!』
 その打撃を受けて吹き飛ばされ、レールに押し込まれた比丘尼が列車砲に押し出されるように校舎から引き離されてゆく。
「撃てーっ!!」
 ――深夜の校庭に、超弩級の砲が尋常ならざる俯角で咆哮する。
 鼓膜が震え、ガラスが衝撃でビリビリと振動するなかで、列車砲に押されさらには砲撃を受けた比丘尼はその姿を消していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

夕凪・悠那
こいつが怪異の元凶か
それじゃあ、今までのツケを払ってもらおうか

瞬間移動なら壁は無意味……ボクも前に出た方がいいね
【英雄転身】その役は双銃構えし狩人
[武器改造]で威力を上げ、神聖属性を付与([属性攻撃])した強装弾を装填
――頭、吹っ飛ばしてやるよ

有視界内の瞬間移動ならボクも同じようなことができるから感覚は掴める
比丘尼の視線の向きや蓄積する情報から対象を推測([情報収集+第六感+見切り])
転移直後に[早業]で[カウンター]を叩き込んで近接攻撃を妨害する
自分が狙われても冷静に見切ってガン=カタで捌き、接射を撃ち込んでやるさ
傾向は判った。子供を積極的に狙うっぽいね
性格悪いよオバサン!

アドリブ絡み歓迎


エドゥアルト・ルーデル
何だこれは931!!!
お前のような尼がいるか!

所で叩きつけられたおかげか拙者も幽波紋使いに目覚めた世界だ
ここは敵に向けて幽波紋を先行させ囮に使う世界ッ!
こいつの特徴は自らの意思で動き、不定形に変形して様々な攻撃を加えられる
そして不定形の身体故【腕を伸ばす近接攻撃】には滅法強い世界という訳だ…
つまりこの幽波紋は囮であると同時に無敵の壁役の世界を兼ねたッ!
いやぁ正体はタダの【流体金属生命体】でござるけどね

囮を放ったら拙者は隠れながら【忍び足】で敵の背後に近づき手榴弾を【スリ渡し】てステルスキル狙いですぞ!
せっかくだから芳香剤も付けちゃう!
その臭さ、決して許される世界ではない…ッ!
汚物は消毒だァ~!


葛籠雄・九雀
SPD

己が何を喪っていようと、他人のものを奪って良いという理由にはならん。
己の問題は己のものである。そこをはき違えると、碌なことにならんのであるぞ。
まあ、言っても仕方がないのであろうが。

さて。大きさに似合わず動きが速そうであるなあ…仕方あるまい。
【かばう、挑発、おびき寄せ】でこちらに注意を向けられるか?
もしそれが可能なら、瞬間移動してこちらに攻撃をしてくるのに合わせて【見切り】で避けつつ【カウンター】でグロリオサを使用するである。【毒使い、串刺し】で威力が高められれば良いが。失敗した場合、【激痛耐性】で耐えるであるぞ。
使うのは…麻痺とするか。少しは鈍くなって欲しいものであるな。

アドリブ連携歓迎




 物理演算の神の怒りに巻き込まれ、天空高くから墜落したエドゥアルトが目を覚ます。
 彼が横たわっていたそこは壁がまるごと消し飛び、床だったであろう木目調の板が転がっていることでかろうじて校舎内だと判る程度に外との境目を喪失していた。
「へぇェーっくしゃィ! うゥ、寒いでござるなあ……ずびうぇっほげほっごふぉ!!」
 雨に濡れた身体をぶるると震わせ、夏場とはいえ夜、それも雨風に晒されては体温も下がるというもの。
 垂れそうになる鼻水をずびびと堪えて、ついでに肺を満たした異臭に咳き込む。洟は垂れた。ティッシュでかんだ。
「何だこれは931!!!!」
 ゲロ以下の臭いじゃねーかと爽やかな目覚めを全力で妨害した悪臭の発生源を探すエドゥアルトは、程なくそれを発見した。すなわち、悪臭を纏い瞬間移動を繰り返しながら猟兵を防戦に追い込む巨体の尼僧の姿だ。
「なるほどあの尼さんの臭いでござるか。……お前のような尼がいるか!!」
 尼は三メートル近い身長などしていないし(異種族も含めて世界中探せば一人くらい居るかも知れないが)、まして緑色の肌もしていない(これももしかしたらいるかも知れない。宗教上の理由で緑色の化粧を義務付けられているとか)。なにより瞬間移動しながらヒトを襲うそれが尼であろうはずがない(いや、法力が極まって瞬間移動を会得した尼僧がいないと言い切ることもできないが)。
「…………案外居るような気がしてこなくもないでござるな。バイオモンスターの聖者×破戒僧だったりすればワンチャン……」
「無いよ!! 起きたなら手伝ってくれないかな!!」
 二丁拳銃を手に、悪魔狩人のような衣装に身を包んで比丘尼の転移先を先回りの銃撃で迎え撃っていた悠那が叫ぶ。
 経験と技術――同じく短距離での瞬間移動を使用できる者としての知識を武器に比丘尼の行動を予測して行動を潰す悠那だが、先程から大火力の攻撃を受けても起き上がり続けていた十尺比丘尼の耐久力の前に徐々に追い込まれつつある。
「いっそ飛び込んできてくれれば強烈なカウンターでもお見舞いしてやるのに……」
 そう。比丘尼がしびれを切らして悠那から潰そうと襲いかかってくるのであれば、反撃の手は幾らでもある。
 だが、彼女は決して悠那を排除しようとしない。あくまで子供たちに狙いを絞り、悠那が一瞬でも気を緩めればたちまちに誰か一人を攫ってしまうだろう状況を作り上げることに徹している。それは悠那の精神を削り、持久戦で致命的なミスを犯すその瞬間を待ち続ける陰湿な戦術だ。
「あくまで子供狙いね。性格悪いよオバサン!」
 またも放たれた銃弾が比丘尼に吸い込まれるように命中し、油臭い体液を撒き散らさせる。
 苦悶の呻きを上げながら、それでもただ執念で耐えて突破の機会を伺う十尺比丘尼の姿を見て、エドゥアルトは厄介な敵だと眉根を寄せた。
 何しろ臭い。それで瞬間移動などという卑怯なチート持ち。あと臭い。それから臭い。
 体液はオイル臭がするし、身体は金属臭がすごい。なによりその存在自体から漂う邪悪の臭いが凄まじい。
「それはさておき、叩きつけられたお陰か拙者も異能に目覚めた世界だ」
 今まさに銃撃とリロードを忙しなく繰り返す悠那が、突然何いってんだという視線を向ける。
 その隙を逃さず飛び込んだ比丘尼に視線を戻した悠那は、もう銃撃では阻止できないところまで踏み込まれると判断してとっさに銃把で殴りつけ、銃口を押し当て発砲。だがそれでも比丘尼は止まらず、鋭い爪の両手を後輩を庇うフレッドへと延ばす。
「なっ、くそ……無理やり押し通るなんて!!」
 押しのけられた悠那が態勢を整える頃には十尺比丘尼はまんまとフレッドを拐ってゆくだろう。かといってここで無理に射撃すれば子供たちに当たりかねない。
「いいや、諦めるのはまだ早いでござるよッッ!!」
 書き文字の擬音を背負ってポーズを決めていたエドゥアルトが叫ぶ。
「ここは敵に向け能力を先行させ囮に使う世界ッ!!」
 銀色の流体がエドゥアルトの背後から蛇のように這いずり、人智を超えた速度でフレッドと十尺比丘尼の間に割って入る。
 邪魔だと言わんばかりに爪を振るった比丘尼によってあえなく切り裂かれたそれは――否、切り裂かれていないッ! 爪に押しのけられるように大きく曲がりこそすれ、その身はゴムのようにしなやかに比丘尼の腕を受け止め絡め取っていたのだッ!!
「コイツの特徴は自らの意思で動き、不定形の身体を変形させ様々な攻撃を繰り出す……そう、不定形故に物理攻撃には滅法強い世界という訳だ……」
 つまり――と、息を吸い込むエドゥアルト。
「この能力囮であると同時に無敵の壁役の世界を兼ねたッ!!」
 絡みつく流体を引き剥がそうともがく比丘尼を指差し、高らかに宣言するエドゥアルト。そのまま拘束するよう命令を下して姿を晦ます彼に入れ替わって、十尺比丘尼の頭上から落下する者がある。
「己が何を喪っていようと他人のものを奪って良いという理由にはならん」
 九雀である。比丘尼の首にしがみつくように腕を回しぶら下がると、振り落とそうと暴れ始めた異形の尼僧に諭すように言葉を紡ぐ仮面の怪人。
「己の問題は己のものであろう。そこを履き違えると碌なことにならんのであるぞ」
 仮に彼女の持つ怒り憎しみ恨み悲しみが正当なものであったとしても、それを今無関係な子供に対してぶつけることに正義はない。
 間違うな、お前の哀しみを他者に移したとてお前自身のそれが癒えはすまい。
 そう語りかける九雀の言葉を耳に入れ、ひたと動きの止まる十尺比丘尼。
「さて……分かってくれた、訳はないのであろうな! 言っても仕方のないことであるとは分かっておったとはいえ!」
 止まったかと思えば全身を不気味に蠕動させ、絡みつく流体を強引に引きちぎり暴れる比丘尼にしっかりと張り付いて九雀は針を取り出した。
「死ぬかどうかはわからぬが……少なくとも痛いのは確かであるぞ!」
 ついでに塗布した麻痺毒が多少なりと効けば御の字だとばかりに、それを十尺比丘尼の首筋に突き立てる。
 と同時に背中に取り付いた敵を排除するべく比丘尼は背中から壁へと突っ込んだ。
 十尺比丘尼の巨体と膂力、そして瞬間移動に等しい速度で押しつぶされた九雀は、しかしてその動きを見切り、持ち前の痛みへの打たれ強さでダメージを押し殺して比丘尼から離れる。
 そして、
「ナイス誘導でござるよ!」
 その九雀を抱えてすたこらと走り後退するエドゥアルト。
「夕凪殿もさっさと逃げるでござるぞ! なんたって今からこの辺り一帯はフローラルになっちゃうからな……」
「は? フローラル? 何が!?」
 ともかく逃げろと言われれば逃げ、エドゥアルトが呼び出した流体の壁の裏側に滑り込む一同。
 それから間を置かずして十尺比丘尼の懐が爆ぜ、ケミカルに再現されたお花畑の香りに包まれた。
「一体……何をしたのであるか」
「なーにあんまり臭いからちょっと手榴弾とお花の香りをこっそりプレゼントしてきただけでござるよ。汚物は消毒だァ~! ってな!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

仇死原・アンナ
アドリブ絡み共闘OK

あれが怪異の元凶…!
あれを叩き潰せば終わる…
行こうか…!

「怪僧め、彼らに手出しはさせない…!」
[オーラ防御、呪詛耐性]を纏い子供たちを[かばい]つつ戦闘

敵の攻撃を妖刀で[武器受け]し[なぎ払い]しながら防ぐ
[激痛耐性]で攻撃を耐える

「怪僧よ消え去れ!さもなくばこの剣で討つ…!」
瞬間移動した敵を見逃さないように[視力、見切り]を使い、近接攻撃してきた際に【剣樹地獄の刑】で[カウンター]攻撃をする
[早業、範囲・2回攻撃]による攻撃を重ね、敵を八つ裂き串刺して退治してやろう…!




 幾度もの爆撃を受けてなお、その両の眼は暗闇の中から子供たちを見つめていた。
 爆発とともに広がった、ケミカルな花の香りが漂う夜の学校。
 壁は爆破され、雨が降りしきる校庭には砲撃によって生じた巨大なクレーターが刻まれすでにそこが学校であるなど言われなければわかるまい。
 むしろ戦場跡、廃墟といった趣のそこを守るように黒衣の女が一歩を雨の中へと踏み出した。
 彼女も女性にしては背の高い部類ではあるが、その倍近い巨体の怪僧はもはや元がヒトであったのかすら判然としない。所々が引き裂かれ、焦げ付いた法衣を身に纏い、ギラギラと両眼を光らせるそれは、まるで怨念そのものが地獄から這い出してきたかのようではないか。
『カエセ……カエセェェ……』
 絞り出すような嗄れ声。返せ返せと呻く彼女がその言葉の意味を理解しているかすらもはや怪しい。
 存在に焼き付いた情念がその声を吐き出させているならば、死してもそれを癒やすことは出来はすまい。
「なら……討つまで。あれを叩き潰せば終わる……」
 黒衣の女――処刑人、アンナが首斬りの刃をぶんと振るえば、雨粒が彼女の髪から肩、腕を伝って刃先へと落ちる。
 さあさあと雨の降る中で、地面はどんどん泥濘んでゆくことだろう。水溜りは深く、底に溜まった泥は剣技がための踏み込みを咥え込み、どこまでも深く飲み込む泥沼へと変わってゆく。
 もはや短期決戦を気にする意味など無いほどに足場は悪いが、それでもこれ以上長引かぬよう戦わねばならぬとアンナは分かっていた。
 なにも攻防に不利だからだけではない。百物語への猟兵の介入、そして騒霊現象からの逃走。予定外の出来事に直面した子供たちの心身はすでに限界が近い。
 身体の弱いにいるだけでなく、体力自慢のフレッドまでもが疲弊しきり、もしこれ以上の長期戦で猟兵が万が一にも突破されたとき、彼らは逃げたり抵抗したりする余力を持ち合わせていまい。
「怪僧め、彼らに手出しはさせない……!」
 だからアンナは彼らを背にかばい、あえて不利な屋外に踏み出してまで十尺比丘尼の視界に立ちふさがる。
 行きたければ私を殺せ、さもなくば死ぬのはお前だぞ、と。
 いよいよ猟兵を己が本懐を果たすに邪魔な存在であるとその視野に捉えた比丘尼もまた、憎々しげな視線で以てアンナを射抜く。
 尋常の人間であれば、腕自慢の大男や怪異や恐怖に強いUDC職員であっても数秒持たず泡を吹いてひっくり返るか泣き喚きながら遁走するような強い憎悪と怨念の視線を、アンナは子供たちに見せるまいとその背中で怪僧の姿を隠しながら我が身で受け止めた。
「……痛いほどの憎しみ、呪い。だけれど……あの子達に手を出した時点でアンタのそれはワタシには通じない……ッ!」
 どれほどの悲劇を経験しようが。どれほどの絶望に呑まれようが。その想念が生者に牙を剥いた時点で、死者の思いは呪いに墜ちる。そんな呪詛を処刑人として受け止め続けたアンナに、今更十尺比丘尼の呪詛など膝を屈する理由にはなりはしない。
『我ガ子ヲ……ォ!』
「アンタの子じゃないッ……! あの子達にはこれ以上手出しをさせない!!」
 一瞬で眼前に出現し、鋭い爪を振り下ろす比丘尼。
 それを妖刀の刃で受け止め、刃を滑らせて受け流すアンナ。
 速度でも膂力でも比丘尼が上回る。ぞぶりと爪先から足裏が泥に押し込まれる不愉快な感触に怯むことなくアンナが刃を払って比丘尼を弾き返せば、その反撃の直後を狙って再度の瞬間移動で比丘尼はアンナを抜けて子供たちに向かおうとする。
「手出しはさせないと言った……!」
 雨粒すら切り裂いて閃く白刃と、それを受け止め火花を散らす黄色く濁った爪。
 何度押し戻されようと一瞬で距離を詰め舞い戻る怪僧と、足場の悪い中力強く生者のため踏みとどまる処刑人、二人の女の譲れぬ思念が刃となってぶつかり合う。
『我ガ子……我ガ子ヲ、奪ワセヌ……カエセ、カエセ……!』
「何があったのかは聞かない。もしかしたら……アンタも被害者のまま理不尽に死んでしまった存在なのかもしれない……」
 けれど。アンナは攻撃の手を緩めない。靴底の痕を深く刻みつけ、裂帛の気合とともに重い一撃を幾重重ねて比丘尼を追い詰める。
「でも……それがアンタと同じ思いをする親を、増やしていい道理にはならないッ……!」
 きぃん。
 一際異質な、耳を打つ金属音とともに妖刀に打ち上げられた比丘尼の腕が跳ね上がる。
 みしりと音を立て、根本からひび割れ砕け落ちた爪。武器の一つを喪って、アンナの眼前にカウンターめいて落とされた比丘尼の腕は砕けた爪の長さ分彼女の身体に届かない。
「怪僧よ消え去れ、さもなくば――」
 言っても無駄であろう。もはや意思さえ存在するまい。
 子を連れ去り、我が物とする。何故そうするのか、その後どうしたいのか。そんな想いはとうの昔に擦り切れて、ただ子供を拐って小さく深い哀しみだけをこの世に置き去ってゆく怪異存在に、道理の言葉は通じまい。
「この剣で討つ……!」
 ひらり。
 刃に乗った想いはこれもまた恨みだ、殺意だ。決して綺麗な心ではない。
 子を奪われた親の。祖父母の。兄弟を奪われた子の。大切な誰かを攫われた者たちが、誰もが彼らの存在を"知らない"世界で狂いながら残した、何より強く十尺比丘尼のことを想う想念。
 それが、肉や骨の抵抗などまるで存在しないかのように比丘尼の首を撥ねた。
『返して……私の…………』
 ひゅん、すぱり。ひらり、ぼとり。
 連撃は子を抱きしめる両腕を叩き落とし、子とともに歩む両足をもその身体から切り離す。
 そうしてどうと泥水の地に沈んだ胴体に足を掛け、処刑人アンナは罪人に堕ちた尼僧の心の臓めがけて鋒を落とした。



「――昔々、この地方を飢饉が襲いました」
 エージェント江藤が印刷したてのまだ暖かい報告書を捲りながら、帰路の猟兵たちにそう語り聞かせる。
 今でこそ大きな川から引かれた豊かな水によって地方でも有数の農業盛んな地域であるF県K市だが、その大河こそ治水技術が未熟な戦国時代には幾度も氾濫し田畑を押し流し、飢饉の原因となったらしい。
 そしてその年の梅雨も川は溢れ、田畑は沈み、人々は飢えた。
 口減らしのため働けぬ老人や子供が真っ先に捨てられ、それでも飢えを鈍らせることのできぬ中で人が死んでゆく。
 地獄のような――いや、地獄であったと地方史を綴った文献には記録されていた。
 そんな中、飢饉に苦しむ人々を見かねて都から一人の尼僧が訪れた。
 きっと救われると人々を励まし、この地を治める代官に治水の重要さと都の進んだ技術を伝え、私財を投じてまで飢饉の原因となる暴れ川を封じた立派な尼僧だったという。
 彼女は口減らしされた子供らを引き取り、寺で養った。たいそう慈しまれて育った子供らは飢饉の中でも健やかに育っていったが、ある時その寺を民が襲った。
「人々が飢える中、あの寺だけは何人も子を養い、子らも飢えた様子がない。思えば近頃尼僧が寺から出てきた姿も見ない。はて、さては食べ物を施しもせず自分たちのためだけに蓄えておるに違いない」
 その疑念はすぐに暴力へと転じ、尼僧に恩あるものや代官の家臣である武士たちまで巻き込んで暴動となり、寺は踏み荒らされた。
 自分たちが苦しい思いをしている中、尼僧たちは自分たちばかり腹を満たしている。その憎悪に駆られた暴徒は、本堂で座り込む尼僧に武器を突きつけ詰め寄った。
 それを子供たちが庇おうとしたのだという。尼僧は決してそのようなことをしていないと。この寺に食べ物など隠されていないと訴えた子供たちは――
「殺された、そうです。尼僧の目の前で、嫉妬と憎悪と怒りに狂った人々によって生きたまま引き裂かれて」
 神仏に操を立て、血の繋がった子を持てぬ代わりに我が子のように可愛がっていた子供たちが目の前で殺されて、尼僧は狂ってしまったのだろう。
 ゆらりと立ち上がった尼僧の背丈はいつの間にか十尺に及び、爪は鬼のように鋭く、眼は金色に爛々と輝いていたのだそうだ。
 妖怪変化へと堕ちた尼僧はたちまちに民を引き裂き殺し、逃げるものは縮地の法で追いかけ殺し、立ち向かった武者は鎧ごと焼き融かす光で殺した。
 そうして誰も居なくなった廃寺に巣食い、皮肉にも尼僧の伝えた治水で飢饉の減って子を口減らしせず良くなった村々から子を拐ってどこかへ隠す化け物となった尼僧。
 それをある日やって来た高僧が三日三晩の戦いの末に調伏し、この地を襲う怪異は封じられた。
 高僧曰く、尼僧は大層子供たちを愛し慈しみ、仏の御心に逆らうと知って己の頬や足の肉を削いで子供たちに与え飢えから守っていたのだという。
 そうまでして守った子を目の前で殺され、最後に残った愛情や仏への信心すら憎悪に乗っ取られた彼女は魔に堕ちた。
 もし彼女が禁忌と知ってなお自らの肉すら子供たちに与えるほど子供へ深い愛を注いでいなかったなら。
 もし疑心に駆られた村人が子供たちまでも手に掛けなかったなら。
 この哀れな妖女が生まれることもなかったであろう、と。
 彼女の魂を鎮めるためには、廃寺を復興させ再びまっとうな寺として祀り、そして彼女、比丘尼のことは忘れてあの世で先に逝った子らと静かに過ごさせてやるほかないと高僧は説き、自らその寺の住職を買って出たのだという。
 そうして怪僧――十尺比丘尼の祟りはぱたと止み、人々はその存在を語らぬことで、忘れることで慈しみ深いがゆえに怪物になってしまった尼僧を供養したのだ。

「全国各地に点在する十尺比丘尼伝説の中でもマイナーな……というか、我々ですら把握していなかった逸話ですよ」
 エージェント江藤は肩を竦めた。ではどこでそんな逸話を見つけてきたのか、という猟兵の問いに江藤は真剣な表情で頷く。
「あの少年……礼門雄二君から記憶処理の前に聞き出しました。間違いなくこの逸話に紐付けられた十尺比丘尼個体は皆さんが討伐してくれましたからね、うっかり召喚してしまう危険は少ないと判断してのことでしたが……いや、聞いてる間ヤツが窓から覗き込んできやしないかとヒヤヒヤしましたよ」
 雄二だけが知る怪談。それは彼曰くの"怪談おじさん"とやらから聞いた逸話で間違いないだろう。
 この街に蠢く何者かが、意図的に怪異を呼び覚ましているのであれば。
 怪談おじさん、そして先日の事件で姿の垣間見えた"顔のない先住人"こそがその張本人、あるいはそれに通じる存在であることはもはや疑いようもない。
 ――事件は解決したが終わりではない。車の屋根を叩く雨音の中で、猟兵たちは子供たちを守り抜いた達成感と事件解決の心地よい疲労感に深くその身をシートに沈めながら、迫りくる次なる事件の気配を確かに感じ取ったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年09月20日
宿敵 『十尺比丘尼』 を撃破!


挿絵イラスト