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エンパイアウォー㉞~雲竜風虎

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #オブリビオン・フォーミュラ #織田信長 #魔軍転生

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●魔空安土城・広間
「タヌキの孫に、ここまでやられるとはな……」
 織田信長は嘆息し、目を閉じる。
 城の防備を任せていた柴田勝家や丹羽長秀ら、有力な家臣たちの軍勢も、10万を超える幕府軍に押さえ込まれていた。
 各地に放った魔軍将たちも粗方討ち取られ、彼らが張り巡らせた数々の策も、その悉くを突破されている。残るはこの魔空安土城と己のみだ。
「……ふむ」
 信長は閉じていた目を開く。既に勝ち筋は断たれたというのに、その瞳に悲観の色は無い。
「あまり気は進まぬが、信玄坊主の力を使うとしよう。このまま終わっては彼奴も浮かばれまい」
 信長がニヤリと笑う。その傍らには、何時の間にか豪壮な甲冑を身に纏った白い虎が浮かび上がっていた。

●グリモアベース
「ここまで長かったけど、ようやく織田信長と戦う時が来たよ」
 集まった猟兵たちの顔を見渡して、上崎・真鶴は説明を始める。
「場所は勿論、島原の魔空安土城。本当はオブリビオンになった織田家臣の武将たちが守りを固めていたんだけど、彼らは幕府の軍勢が相手をしてくれるみたい。これも皆が頑張った結果だね」
 そう言って真鶴は笑顔を見せた。これで猟兵たちを阻むものは何も無い。後は信長との決戦に集中するのみだ。
「その信長が待ち受けているのは、安土城の一角にある広間の一つだよ。それなりに広いから、思う存分戦えると思う」
 広間の大きさは縦40m横20m程の長方形で、天井の高さは約5m。とは言え、壁や襖などは壊そうと思えば壊せるのだから、そこまで気にする必要は無いのかもしれない。
「それと信長は『魔軍転生』って術を使ってくるらしいよ。あたしにもちょっと理屈は分からないけど、他の魔軍将を自分に憑依……じゃなくて憑装って言ったかな? 相手の力を借りて戦う術なんだってさ」
 今回信長が憑装するのは、『甲斐の虎』武田信玄。三方ヶ原の戦によって彼の復活を阻止したのは先月のことだが、その力だけは『魔軍転生』によって信長の下にあるらしい。
「織田信長と武田信玄って厄介な組み合わせだと思うけど、ここで信長を討ち取れば戦は終わる。もうひと踏ん張りだよ」
 ぐっと拳を握った後、真鶴はその手を開いてひらひらと振った。
「それじゃ後は任せたよ。よろしくね」


若林貴生
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 第六天魔王『織田信長』は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

 こんにちは。若林貴生です。

 上で挙げたこと以外、特に言うことはありません。
 織田信長を倒して戦を終わらせましょう。

 今回は判定が少し厳しめです。
 また戦争シナリオであることを踏まえて、多くのプレイングを採用することよりもシナリオの完結を優先します。ご了承ください。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『第六天魔王『織田信長』信玄装』

POW   :    風林火山
【渦巻く炎の刀】【黒曜石の全身甲冑】【嵐を呼ぶ樹木の翼】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    甲斐の虎
自身の身長の2倍の【白虎状態に変身した武田信玄】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    武田騎馬軍団
レベル×5本の【武田軍】属性の【騎馬武者】を放つ。

イラスト:UMEn人

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

音羽・浄雲
※アドリブ、連携歓迎です。
【WIZ】

「待ったぞ信長ァ!」
 両腕広げ雄叫びを上げるその貌は怒りと悦びの入り混じった復讐鬼。
「甲斐猫共が邪魔をするな!」
 大音声を張り上げ両腕を振るえば、腕を広げた際にしたたかに張り巡らせた詭り久秀を手繰る。
「張るは蜘蛛糸巡るは思索。御先御先を斬り捨ててもとつ神前に舞い上がらん」
 浄雲の神歌に合わせて糸が躍り、呼び出された甲斐武田の騎馬達を絡め引き倒し切り倒さんとする。
「布留部由良由良止布留部!音羽忍法【絡新婦】!我らが怒り我らが恨み、受けろ信長!」
 張り巡らされた糸と共にUCの糸が放たれる。絡める糸と刻む糸、どちらも囮でどちらも本命。選択肢等与えぬ渾身の一糸。


勘解由小路・津雲
アドリブ等歓迎
 甲斐の虎、まさか本当に虎になるとは。まあいい、三方ヶ原の戦に参戦した縁もある、このまま封じてくれようぞ。

【作戦】
【氷術・絶対零度】を使用。そうすると相手は先に白虎状態の信玄を召喚、騎乗し攻撃をしてくるはず。その一撃をしのぎ、反撃する作戦。

 まず道具「式神」を使い、信長に突撃させる。敵はそれを切り捨て、こちらに向かうだろう。そこで渾身の「オーラ防御」を、自分ではなくあえて「式神」に。

 簡単に切り捨てられるはずの「式神」が思わぬ抵抗をすることで隙を作り、そこで「カウンター」の【氷術・絶対零度】を。いかに信玄とはいえ、広範囲無差別攻撃はかわせまい。

(他の猟兵を巻き込まぬよう注意)



●怨気衝天
 勘解由小路・津雲は、小さな亀の姿をした玄武を肩に乗せて、魔空安土城の回廊を歩いていた。城を守っていた織田の軍勢は、幕府軍を相手取るために出払っているのだろう。進む先は常に無人で、敵の気配は全く感じられない。
「しかし、こんなものを造り上げていたとはな……」
 城の内部は豪奢の一言に尽きた。柱など至る所に金の蒔絵が施され、名のある絵師によるものであろう金碧障壁画が壁や襖を彩っている。しかし事ここに至っては、その豪壮かつ華麗な様相も、どこか空虚なものに感じられた。
 だが音羽・浄雲はそういったものに目もくれず、真っ直ぐに織田信長の居場所へと向かっていく。彼女が心の内に抱くのは織田家に対する復讐心。信長への憎悪、怨み、殺意。渦を巻く己が心の捌け口を求めるかの如く、その歩調は無意識の内に早くなっていった。
「……此処か」
 目当ての場所に辿り着いた浄雲は、襖を乱暴に開け放つ。そこは百畳敷きの大広間であり、奥の上座には探し求めていた信長の姿があった。彼の背後には、魔軍転生によって憑装した武田信玄が立っている。
「待ったぞ信長ァ!」
 広間に踏み込んだ浄雲は雄叫びを上げながら、やや大仰に両腕を広げた。怒りと悦びが綯い交ぜになった凄絶な笑みを浮かべつつも、浄雲はその身振りに無数の糸を紛れ込ませる。
 振り上げた手の先で、細く鍛え上げられた鋼の糸がきらりと光った。浄雲が手を緩めると、張り巡らせた無数の糸は、そのまま床に垂れ落ちる。ほんの一瞬、しかも距離が開いていたこともあってか、信長には見えてはいないようだった。
「とうとう此処まで来たか」
 信長が浄雲を睨め付けると、彼の背後に立っていた信玄が唸り声を上げ、軍配を掲げて浄雲たちを指し示す。
 すると信長の周囲に霧が立ち込め、その中から何十もの騎馬武者が姿を現した。揃いの赤い甲冑を纏い、背中に武田の旗指物を靡かせた武者たちは、槍を構え、あるいは刀を振り上げて突進してくる。
「甲斐猫共が邪魔をするな!」
 浄雲は声を張り上げて両腕を振るい、張り巡らせておいた糸を手繰り寄せた。
「張るは蜘蛛糸巡るは思索。御先御先を斬り捨ててもとつ神前に舞い上がらん」
 神歌を紡ぐ浄雲の手元が軽やかに舞い、それに合わせて幾筋もの糸が踊り煌いて、彼女を守るかのように蜘蛛の網を形作る。それに気付かず突っ込んできた騎馬隊は、鋭い鋼糸に絡め取られて躓き倒れ込んだ。
 だが前衛の騎馬たちが足止めを受けているにも拘らず、後続の騎馬武者たちは足を止めずにそのまま突っ込んでくる。恐らくは糸に絡まった仲間たちを踏み越えて、力任せに糸の結界を破るつもりなのだろう。
「猫共がぞろぞろと!」
 浄雲は忌々しそうに騎馬隊の第二波を睨み付けた。だが再び糸を繰り出そうとした彼女を、津雲が軽く手で制止する。すると彼の肩に居た玄武が錫杖に姿を変え、津雲の手に収まった。
「少し下がっていろ」
 浄雲にそう呼び掛けて津雲が前に出る。そして迫り来る騎馬武者たちの前に立ち塞がり、玄武の錫杖を畳の上に突き立てた。武者たちが口々に鬨の声を上げる中で、錫杖の遊環がシャンと涼やかな音を立てる。
「氷帝招来、破っ!」
 途端に津雲の足元から激しい冷気が噴き上がり、周囲の空気が凍り付いた。同時に氷の刃が撒き散らされて騎馬武者たちに突き刺さる。吹雪に飲み込まれた彼らは、そのまま氷の彫像となって動きを止めた。
「なかなか、やるようだな」
 騎兵が一網打尽となったにも拘らず、信長は愉しげに口元を歪める。津雲たちが騎馬武者たちとやり合っている間に、彼は巨大な白虎となった信玄の背に跨っていた。
「布留部由良由良止布留部! 音羽忍法【絡新婦】!」
 浄雲は信長に向けて粘性の糸を放つ。しかし白虎は素早く横に跳んでそれを避けた。
「……甲斐の虎、まさか本当に虎になるとはな」
 白虎に騎乗した信長を見据えながら、津雲は錫杖を構え直した。
「まあいい、三方ヶ原の戦に参戦した縁もある。このまま封じてくれようぞ」
 津雲は式神の鳥にオーラを纏わせ、突っ込んできた信長を狙う。弾丸のように飛来する式神を、信長は一刀の下に斬り捨てた――はずだったが、式神は形を留めたまま食らい付いたかのように刀から離れない。
「チッ!」
 舌打ちをして足を止めた信長は、式神を引き剥がして突き破った。式神が力を失い舞い落ちたその隙に、再び生み出された冷気が渦を巻いて、鋭い氷片と共に信長たちへと降り注ぐ。しかし流石は織田信長と言うべきか、騎馬武者たちのように凍り付かせるとまではいかなかった。
「儂も甘く見られたものよ」
 身体に突き刺さった氷の刃を抜き取り、纏わり付いた氷雪を振り払うと、信長は一足飛びに津雲へと襲い掛かった。津雲は振り下ろされた刀を錫杖で受け止める。だが白虎と化した信玄が爪を振るい、彼の祭祀服を切り裂いた。
「くっ!」
 続けざまに振るわれた爪を避けて津雲が後ろに下がる。それを追って信長が飛び掛かろうとした、その瞬間だった。凍り付いた騎馬武者の陰から疾風のような速さで糸が伸び、信長を捉えて絡み付く。
「信長ァ! 今度こそ捕らえたぞ!」
 愉悦の表情を浮かべ、糸を手繰りながら浄雲が姿を現した。氷の彫像と化した騎馬隊の陰に身を隠し、距離を詰めて隙を窺っていたのだ。
 粘着性の糸が信長と白虎の身体を絡め取り、同時に放たれた刃の糸が信長の肌を裂く。流れ出した血が糸を伝い、畳の上に幾つもの血痕を描き出した。それを一瞥し、信長は浄雲を振り返る。
「……貴様、何者だ?」
「我ら音羽衆を……伊賀攻めを! 柏原を! よもや忘れたとは言うまいな!」
 吼える浄雲の脳裏に、死した仲間たちの顔が浮かんだ。
「我らが怒り我らが恨み、受けろ信長!」
 浄雲は鬼の形相で怒りを吐き出す。そしてその叫びと共に放たれた手裏剣は信長の甲冑を砕き、彼の身体に深々と突き刺さった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ステラ・アルゲン
カガリ(f04556)と

あれが織田信長……あいつを倒せばこの戦争も終わるか
さぁ決着を付けようか!

先制攻撃をカガリと共に防ぐ
彼の盾に触れ【全力魔法】の【オーラ防御】を施し【かばう】
傷一つなく退けられるように【祈り】を込めて

ソル、お前にとって今回のはやりづらいかもしれないが手伝ってくれるか?
【太陽剣】のソルを手に【影炎】を使用
呪いの大剣故に使うと【呪詛】に体を蝕まれるがその分力が強化される
信長の最後は本能寺で臣下の裏切りに合い、死んだのだったか……
カガリのUCと共にそれを再現するように黒炎で騎馬武者を複製し攻撃させよう

裏切られての死には少しばかり思う所もあるが
お前を倒さない理由にはならないからな


出水宮・カガリ
ステラ(f04503)と

まさかこんな形で、新たな魔軍将の顔を見る事になるとは
しかし、オブリビオンにならずとも、フォーミュラに使役されるとは
死ぬのは嫌だなぁ、と思ってしまうな

行こうか、ステラ
無理は禁物だぞ
放たれる武田軍をオーラ防御、全力魔法に加えて【鉄門扉の盾】を【隔絶の錠前】で補強、門の内側の自分達を騎馬軍団から世界ごと隔絶する

さて…カガリは、ひとの歴史に詳しくは無いのだが
織田信長、とは、どう滅んだのだったか
確か…部下に謀反を起こされ、寺が燃えたのだよな
恐らく――こんな風に

【神都落城】で城内を炎上させ、ステラの技と合わせて擬似的な本能寺の変を再演
これ以上に無い、相応しい舞台と思うが、どうか?



●火天の間
「……少々遊びが過ぎたようだ」
 織田信長は白虎に跨ったまま不機嫌そうに顔を顰め、糸の縛めを引き千切った。追い縋る猟兵たちの攻撃を素早く躱し、仕切り直すかのように後ろへ跳んで距離を取る。
(「まさかこんな形で、新たな魔軍将の顔を見る事になるとは」)
 出水宮・カガリは白虎となった武田信玄の姿をじっと見詰めた。
 猟兵たちと戦うことも無く、復活を阻止された魔軍将、武田信玄。オブリビオンとして復活しなかったことは、彼にとって幸か不幸か。それはカガリにも分からない。だが死した後、力の残滓をいいように使われるのは、恐らく本人の望むところではないだろう。
「奴らを食い破れ」
 信長が射るような視線を猟兵たちに向けると、低く唸り続けていた白虎が大きく吠えた。途端に霧が辺りを包み込み、その中に騎馬隊の横列が浮かび上がる。朱塗りの甲冑に身を包んだ武田の赤備えだ。
 それを真っ向から受け止めようと、カガリは鉄門扉の盾を構える。
「行こうか、ステラ。無理は禁物だぞ」
「ああ、分かっている」
 ステラ・アルゲンは頷きを返し、彼の盾にそっと触れた。
(「……どうか傷一つなく退けられるように」)
 真摯な祈りを込めながら、ステラは鉄門扉にオーラの防護を纏わせる。加えてカガリは己自身でもある盾に、草花の彫刻が施された錠前を下ろした。その瞬間、盾の内側に居た2人は外界と隔絶される。それによって辺りに満ちていた冷気が遮断され、迫り来る騎馬たちの蹄音もほとんど聞こえなくなった。
「来るぞ」
 カガリは盾を構える手に力を込め、ステラは彼の腕に手を添える。
 騎馬武者たちは凍り付いた味方を踏み砕きながら、真っ直ぐに突進してきた。だが幾重にも強化された鉄門扉は、正面から衝突する騎馬隊を文字通り弾き返す。彼らの突き出す槍は折れ砕け、重なり合った馬たちは横倒しになって消えていった。
「さて……カガリは、ひとの歴史に詳しくは無いのだが。織田信長、とは、どう滅んだのだったか」
 独りごちるかのようなカガリの横顔を、ステラはちらりと見やる。
「信長の最期は本能寺で臣下の裏切りに遭い、死んだのだったか……」
「そう、確か……部下に謀反を起こされ、寺が燃えたのだよな。恐らく――こんな風に」
 カガリがそう口にした後、信長が最初に感じ取ったのは臭いだった。何かの焦げる臭いが辺りに漂い始め、何処からかパチパチと火の爆ぜる音が聞こえてくる。
「火を放ったか」
 信長は落ち着いた様子で周囲を見回した。襖や欄間から薄い煙が少しずつ入り込み、次第に増していく熱気が喉と肌を灼く。更には柱や壁が派手に軋み出した。
「……上か」
 信長が天井を見上げる。するとそれが合図であったかのように、天井が崩れ落ちてきた。そこから洪水のように降ってきたのは、燃え盛る黄金の甍だ。
「ぬぅ……やってくれたな」
 続けざまに降り注ぐ瓦礫と炎に焼かれた信長は、苦悶の声を漏らしながらもそれを払い抜け、叩き落とした。畳に燃え移った炎は波のように広がり、大量の火の粉が波飛沫のように舞い踊る。
「ソル、お前にとって今回のはやりづらいかもしれないが手伝ってくれるか?」
 一面が火の海と化した広間の中で、ステラは黒い大剣に呼び掛けた。そして柄を握り締め、意識を集中させる。
 その途端、掌から身体の奥底に向かって、黒い何かが染み出していくような感覚を覚えた。それは太陽の力を宿すと共に、使用者を呪う黒の大剣によるものだ。剣に込められた呪詛はステラの腕から身体全体へと根を張るかのように侵食し、彼女を食らい尽そうと大きく重く圧し掛かる。
 だが同時にソルの刀身からも、黒い炎が勢いよく噴き上がった。激しく燃え盛る炎はステラの身体をも焦がすほどに大きく広がり、その中から黒炎を身に纏った騎馬武者たちが現れる。
「さぁ決着を付けようか!」
 ステラの言葉と共に、黒炎の騎馬隊が横列を組んで突撃した。
 だが、それに応じるかの如く、信長も再び騎馬軍団を召喚する。どうやら騎馬同士で一戦交えるつもりのようだ。
「裏切られての死には少しばかり思う所もあるが、お前を倒さない理由にはならないからな」
 信長さえ倒せば、この戦も終わるはず。ステラの意志を感じ取ったのか、黒炎の騎馬隊は遮二無二突っ込んでいく。
 赤と黒の騎馬武者たちは互いに刀槍を振るい、ぶつかり合っていたが、形勢は少しずつ黒炎側有利へと傾き始めた。黒炎の騎馬隊は徐々に相手を押し込み、一塊の巨大な炎となって敵の騎馬隊を突き破る。そして騎馬隊の後ろに控えていた信長を飲み込むと、炎塊はそのまま広間の壁をも突き破った。
「落ちたか?」
「いや、分からない」
 カガリとステラは警戒しつつ、青空が覗き見える大穴へと歩み寄る。しかしその破れ穴から吹き込んだ激しい風が2人の足を止めさせ、それと共に信長の哄笑が響き渡った。
「此処は本能寺にあらず、貴様らも金柑ではない。……となれば、結末も同じというわけには行かぬな」
 信長は宙を舞い、再び広間に降り立つ。その背には樹木の翼が生え、大きく羽ばたいていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジュリア・ホワイト
騎馬軍団、か
広い場所で呼び出したら脅威だったろうに
「流石に城内で戦うのに向いた兵科とは言い難いんじゃないかな」

騎馬軍団が襲ってきたら
【挑発】しながら逃げ回り、狭い城内で足並みが乱れたところを
【念動力】で足元をすくって転ばせよう
完全壊滅と行かなくても、こっちのUCの準備が整うまで時間が稼げればいいさ
「ははは!たとえ騎馬だろうと、地を走るものでボクに追いつけるものは無いよ!」

そして反撃の準備が整ったら
【線路開通、発車準備よし!】で攻撃開始だ
敵はフォーミュラー、単独の戦闘力も高いはずだけど
この技でこちらの戦闘力を底上げすれば渡り合えるようになるさ
「うん、ここからが本番だよ」

【アドリブ歓迎】



●東走西馳
 広間を埋め尽くさんばかりに見えた火勢は、衰えを見せ始めていた。崩落した天井の瓦礫は今も巨大な篝火のように燃え盛っているが、それ以外の畳や壁、襖の多くは黒く焦げた状態で燻り続けている。そこかしこから立ち昇る煙は広間に充満することなく、崩れ落ちた天井や壁に空いた大穴から、吸い出されるかのように外へと流れ出していった。その様子を眺め、織田信長が薄く笑う。
「フッ……戦場らしくなったものよ」
 再び彼の周囲に白い霧が生まれ、それは広間に棚引く煙と混ざり込んだ。霧の中で淡く煙る騎馬武者たちに、ジュリア・ホワイトは余裕たっぷりの顔を向ける。
「流石に城内で戦うのに向いた兵科とは言い難いんじゃないかな」
 ジュリアが八重歯を覗かせて笑うと同時に、騎馬隊は白い霧を引き裂きながら一斉に駆け出した。彼女は向かってきた騎馬の蹄や、繰り出される槍を器用に避けて広間の中を動き回る。そして彼らを存分に引っ掻き回し、注意を引き付けたところで、包囲が固まる前にそこから抜け出した。
「さあ、ボクはこっちだよ!」
 ジュリアは燃え盛る襖を開け放ち、素早く廊下へと飛び出す。するとそれを追って十数騎の武者が襖を蹴倒し、廊下へと続いていった。

 魔空安土城の内部は複雑に入り組んでいた。無数の回廊と階段、そして幾つもの部屋が組み合わさり、城を迷宮のように仕立て上げている。
 ジュリアはその中を縦横無尽に駆け巡り、追っ手の騎馬隊を翻弄していた。回廊を真っ直ぐに駆けたかと思えば前触れも無く脇の部屋に飛び込み、真っ直ぐに抜けて別の回廊へ出た途端、あっさり引き返して騎馬の足元を掻い潜る。そして急勾配の階段を上ったり下りたりしている内に、騎馬では付いて来れなくなったのか、追っ手の数は激減していた。
「あれ、ひょっとしてもう疲れたのかい?」
 ジュリアは時折これ見よがしに足を止め、敵が追い付くのを待ってみせる。そうして挑発に乗った武者が単身向かってきたところを念動力で転ばせた。不意に足元を掬われた騎馬武者は、馬ごと階段を転げ落ちていく。
「ははは! たとえ騎馬だろうと、地を走るものでボクに追いつけるものは無いよ!」
 それを何度か繰り返していると追っ手は少しずつ数を減らしていき、何時の間にか敵はジュリアの視界から姿を消していた。
「じゃあ、そろそろ反撃といこうか」
 追っ手を片付けたところで、ジュリアはくるりと元来た道を振り返る。するとその眼前に、異空間から射出されたレールが次々と並び始めた。そうして曲がりくねった回廊に延々と線路を繋ぎ、ジュリアは元居た広間までの道を作り出す。
「オブリビオンが居る所は、どこでもボクの運行路線さ!」
 そう言ってニヤリと笑い、ジュリアは線路の上を駆け出した。彼女は加速を続け、蒸気を纏いながら来た道を引き返していく。そしてあっという間に広間へ戻ると、そのまま信長に向けて一直線にレールを繫いだ。
 彼の前には新たに召喚された騎馬隊が轡を並べていたが、猛然と疾走するジュリアはスコップやチェーンソー剣を振り回して彼らを蹴散らしていく。
「ここからが本番だよ」
 騎馬隊を討ち破って信長との間合いを詰め、ジュリアはチェーンソー剣を横薙ぎに振るった。
「貴様ぁッ!」
 それを受け止めようと、信長は咄嗟に刀を抜き放つ。だがジュリアの握る武骨な刃は、激しい唸り声を上げながら、信長の刀ごと彼の胴を深く切り裂いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルミィ・キングフィッシャー
ちっ、ビーストマスターか
と言うか本当に虎だったとはね
こっちにも策はあるさ

予め唐辛子や胡椒などの香辛料とマタタビの粉を混ぜた小袋をいくつか用意しておく
いくつかは持てるように、そして一部は皮鎧の中に仕込む
信長が騎乗して走ってきたらカウンター気味に小袋を投げつけて目や鼻にダメージを、そしてその隙に革鎧を投げつけて信長の首元目掛けて一撃を見舞おう
アタシに二撃目はない、鎧相手じゃ分が悪いからね

覇道ねえ、そんなに良いものとは思えないけどそんなに欲しいものかい?
アタシはここらのお宝を金に変えて一杯やるほうが余程価値があると思うがね

まあとにかくアンタに酒所を潰されるわけには行かない、トドメを刺させてもらうよ



●夢幻泡影
「……ふむ」
 織田信長は不満そうに鼻を鳴らし、折れた刀を放り捨てる。そして後ろに控えていた信玄の刀に手を伸ばし、それを抜き放った。それと同時に信玄は白虎に姿を変える。
「ちっ、ビーストマスターか。と言うか本当に虎だったとはね……」
 文字通りの獣となった武田信玄。その背中に跨った信長を見やり、アルミィ・キングフィッシャーは軽く舌打ちした。
「けど、そういうことなら、こっちにも策はあるさ」
 不敵な笑みを浮かべ、懐から幾つかの小袋を取り出す。その中身は唐辛子や胡椒、更には粉末状にしたマタタビを混ぜたアルミィの特別製だ。
 そしてアルミィは、太刀を構えて突っ込んでくる信長に向け、その小袋を礫のように投げ付ける。しかし小袋が当たる寸前、信長は横に跳んでそれを躱した。
「そう来ると思ったよ!」
 アルミィは信長が身を躱したその先を狙って、小袋を二つ三つと続けざまに投げ付ける。
「小賢しいわ!」
 信長は至近に迫った小袋を太刀で斬り捨てた。
「む、これは……」
 裂けた袋から刺激物の粉が撒き散らされ、信長は咄嗟に手で口元を覆う。だが白虎の方は鼻先に降り掛かった粉を吸い込んでしまい、堪らずにくしゃみを連発した。
 そうして敵の足が止まったところへ、アルミィは素早く脱いだ革鎧を放り投げる。
「何のつもりだ?」
 信長は反射的に鎧を斬り払ったが、そこに仕込まれていた小袋から、先程と同じ粉末が洩れて辺りに散らばった。再びそれを吸い込んでしまった白虎は、苦しそうに悶えて足をふらつかせる。
「トドメを刺させてもらうよ」
 アルミィは短剣を抜き、一気に距離を詰めた。
「ちぃっ!」
 信長は白虎から飛び降りると、アルミィの首目掛けて太刀を一閃する。しかし身を沈めて斬撃を掻い潜ったアルミィは、すれ違いざまに信長の首を切り裂いた。
「……不覚」
 信長の身体が崩れ落ち、その顔が苦しげに歪む。首の傷を押さえる掌からは血が溢れ、彼の甲冑と畳を赤く濡らした。
「覇道ねえ、そんなに良いものとは思えないけど、そんなに欲しいものかい?」
 アルミィは蹲る信長を見下ろしながら問い掛ける。
「アタシはここらのお宝を金に換えて一杯やるほうが、余程価値があると思うがね」
「……宝か」
 信長は呻きながら、ちらりと隣の部屋に目をやった。
「名物が幾つか残っていよう。くれてやる、欲しくば持っていけ」
「……いいのかい?」
「もっとも、先程の火で焼けてしまったやもしれぬがな」
 そう言って信長は、くつくつと笑う。そしてゆっくりと息を吐いた彼は、力を失い静かに頭を垂れた。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月27日


挿絵イラスト