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地の底から至る場所

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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 ドワーフ達は語る。かつて、その鉱山は良質の鉄が取れるために賑わっていた、と。
 過去の栄光、その夢の跡。それこそがその鉱山であった。しかし、どんな大地の恵みにも限りはある。鉄を取り尽くしてしまったそこは、廃坑として今は名残を残すのみだ。
 その廃坑の先に、そこはあった。かつて、このアックス&ウィザーズの世界に隆盛を誇り、滅びたとされる古代都市、その迷宮の奥にソレはいた。
 カツン、と苔の生えた石畳を蹄が打てば、そこに木々が芽吹いていく。ソレの名はヒューレイオン――深い樹海の奥に棲息するはずの、オブビリオンであった。
 木々は育ち、古代帝国の迷宮を埋め尽くす勢いで成長していた。その光景を、迷宮の上に空いた穴から陽の光が照らしていた……。

「そう、その穴からそいつはいつでも出られるのじゃよ」
 ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)の表情が険しい理由はそれだ、ガングランは言葉を続ける。
「ドワーフの残した廃坑の先に、どうやら古代帝国時代の迷宮が繋がっておったらしくてな。その迷宮に、ヒューレイオンが住み着いておるのじゃよ」
 ガングランが言うには、その迷宮がどこにあるのか、廃坑からつながる道しかわからなかったとの事だ。そうなれば、遠回りになろうと確実に行ける道から行くしかない。
「廃坑は、今では整備する者もおらん。ゴブリンなどが住み着いておるようだし、慎重に探索してくれ」
 崩れたり、住み着いたゴブリンが掘り起こしたりで、かつての廃坑とは変わっているため、道は定かではない。そのため、迷宮に繋がる道もみんなで手探りで見つけ出さなくてはならないだろう。
 ガングランは、しみじみと顎髭を撫でながらため息をこぼす。
「しかし、あそこが古代帝国の迷宮に繋がっておるとは……わしも知らんかったわい」
 ガングランは遠い目をしながら、猟兵達を見て言った。
「とにかく、ヒューレイオンが何かをしでかす前に片をつける必要がある。よろしく頼むぞ」


波多野志郎
地下へようこそ! 波多野志郎です。
今回は、ヒューレイオン退治となります。そのために、ドワーフの廃坑へと潜っていただきま す。
皆さんには、【POW】で力任せに攻略したり、【SPD】で技量を頼りに攻略したり、【WIZ】で推理して攻略していただきます。

得意分野をどう活かすか? その勝負となります。振るってご参加くださいませ。


それでは、強敵との戦いのためにいざ、冒険へ! 存分にお楽しみください。
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第1章 冒険 『廃坑探索』

POW   :    廃坑の中を体力に任せて進む。落盤や瓦礫、住み着いたモンスターなど力で排除せよ。

SPD   :    廃坑の中を慎重に進む。事前に危険を察知し、状況を打破するだけの技量があれば安心だ。

WIZ   :    事前に調査し、現状を推理しながら進む。調べた廃坑の情報を元に最適なルートを推理、攻略せよ。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アクアヴィーテ・ワイズメル
ドワーフ達のたむろする酒場や食堂に向かい、廃坑の事をよく知る人の話が聞けないか聞いてみます

もちろん、ただでは教えてくれないでしょうし……シンフォニック・キュアを乗せた歌で場を賑やかしたり、ドワーフ達の穴掘り歌とかあれば、教わって歌ってみたりと友好を深めて

何人かに気に入って貰えたら、お酒を奢ったりして年嵩の方を紹介して貰ったり、ご先祖から廃坑の話を聞いてる人を教えて貰います

紹介して頂けたら、廃坑に住み着いた魔物のことを話し、そいつを倒すために廃坑の中の様子を教えて欲しいとお願い
口伝はメモしたり仲間と一緒に聞いて忘れないように

もし、地図とかお借りできれば最高ですが、無理は言いません
しっかりお礼を



●とある酒場にて
 夜の酒場には、喧騒があった。今日一日の疲れを癒そうと酒を浴びるように飲む、間違いではないが『彼ら』にとっては正しくもある。
 ドワーフ、大地に生まれ、大地で死す者達。彼らにとって、酒とは水と同じだ――飲まないほうが、体に悪い。
 しかし、今夜の酒場の盛り上がりは一層騒がしいものだった。ドワーフの炭鉱に伝わる歌が、見事な演奏と共に響き渡っていたからである。
「ははは、昔はな。こいつを鼻歌混じりにツルハシ振るっていたものじゃ」
「それって、あの廃坑?」
 アクアヴィーテ・ワイズメル(フェアリーのフォースナイト・f10170)の問いかけに、おうとドワーフがうなずいた。アクアヴィーテの演奏で昔を思い出したのだろう、木製のジョッキを傾け、ドワーフは語る。
「あの頃は、炭鉱そばにドワーフの街があってな。鍛冶屋もたくさんおったんじゃ。近くに昏き森という樹海があったのも良かった。鍛冶仕事のために燃やす木が、たくさんあったからの」
 昔を懐かしんでいるのだろう、目を細めて語るドワーフの声色はどこか遠い。アクアヴィーテは、ピクシー用の椅子に腰掛けたままドワーフを見上げた。
「炭鉱に住み着いたゴブリンを退治したいの」
「おお、そいつぁいいの! あん小鬼、穴ぐらとなるとどこにでも湧きよるからな」
「廃坑の中の様子を教えて欲しいんだけど……」
 アクアヴィーテの言葉に、ドワーフは立派な髭を撫でるとああ、と思い出したように言った。
「あそこの地図じゃったらあったの。そいつをやろう」
「本当ですか!?」
「ああ、昔を思い出させてくれた礼じゃよ」
 豪快に笑うドワーフに、アクアヴィーテは頭を下げる。その夜、遅くまでドワーフ達の合唱とアクアヴィーテの演奏が酒場から聞こえてきた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ
【WIZ】
僕の出身はアルダワで迷宮は身近なものだったが、他世界のそれも大いに興味を惹かれるな!
具体的に言いかえるなら財宝が欲しいのだが、さて、持ち帰る事はできるだろうか?

先ずはガングランに話を聞きたいな。
『あそこ』なんて距離感の近い単語で表すぐらいだ、この廃坑は既知の様子。岩盤が崩れやすく危険な箇所など、知っていたら教えて欲しいのだが。
道中の安全確保も勿論だが、崩れやすいと周知の場所には普通近付かないだろう。ガングレンが迷宮への道を知らないのなら、彼の把握していない所を探す必要がある、という事だ。
ま、中が荒らされているという話なので、正確にはわからないだろうがな。大体の指標になればそれでいい。



●とあるドワーフの話
「僕の出身はアルダワで迷宮は身近なものだったが、他世界のそれも大いに興味を惹かれるな! 具体的に言いかえるなら財宝が欲しいのだが、さて、持ち帰る事はできるだろうか?」
 目を輝かせるシェーラ・ミレディ(四連精霊銃・f00296)に、ガングランは小さく笑った。
「さて、あそこにそんなものがあるかのぉ」
「うん、だからガングランに話が聞きたくてね」
 シェーラの言葉に、ガングランは「ふむ」と目を細める。シェーラは、言葉を続けた。「『あそこ』なんて距離感の近い単語で表すぐらいだ、この廃坑の事は知っているんだろう?」
「確かにの。なかなか鋭いではないか、こいつは一本取られたわい!」
 ガハハ、とガングランは笑う。ガングランは、髭を撫でながらシェーラへと語った。
「じゃが、わしはあの廃坑を知っておるというだけじゃ。中身はさっぱりじゃ。そもそも、知っておったら素直に話す。黙っておる意味がないからの」
 おぬしならわかるじゃろう? とガングランは、シェーラに言う。シェーラも小さく肩をすくめただけだ。
「確かにな」
 グリモア猟兵として仲間に危機が降りかかるか否かの瀬戸際だ、自分でも情報の出し惜しみはしない。シェーラも納得できる理由だった。
「わしが持つ情報は、わしが出した分ですべてじゃ。後は頼むぞ」
「ああ、わかった」
 シェーラは、猟兵としての役目を果たすとしっかりとうなずいた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

柊・雄鷹
なんや、廃坑探索かいな!
こう言ぅんえぇよなー、冒険心くすぐられてっ!
よっしゃ!ほなまずは、ゴール目指して頑張ろか

なんや馬鹿力、馬鹿力よぉ言わよったけど、役にたって良かったで
自分の第六感を頼りに、怪力を駆使して道を行くでー!
道は作るもんだって、確か誰かが言よった

なるべく、他の猟兵が通りやすいように瓦礫なんかをつこて道を空けよか
どうしても邪魔な瓦礫や壁はぁ、ワイのユーベルコードでー……
バン!!やでっ!!
大丈夫や、これは事故やっ!!

モンスターの現れた道が怪しい気ぃするけど
難しいことは分からん!!
そのあたりは、誰か賢い人がなんとかするやろっ、任せるでっ!!


箒星・仄々
心情
栄枯盛衰が世の常とは言え
沢山の人々で賑った鉱山が廃坑だったり
栄華を極めた古代都市が迷宮とは
何となく物悲しいですよね…

手段
WIZ

廃坑近くの住民や廃坑周辺やその中に住む動物さん達と
歌を通して仲良くなったり手伝ったりして情報収集
鳥さんから聞ければ
迷宮の穴を見た場所の見当がつくかも知れません
:恩返し・優しさ・手をつなぐ・動物と話す・歌唱・祈り・楽器演奏

複数の方からのお話しをピースとして繋いでいけば
大よその推測はつくのではないでしょうか?

緑を生む存在ならば
坑道で迷ったらより緑が多い方へ進みます

魔法の迷彩を纏いつつ忍び足で慎重に進みます
:迷彩・忍び足

狭い場所は毛づくろいですり抜けます


ワズラ・ウルスラグナ
ふむ。
廃坑、迷宮、強敵と、浪漫を詰め込んだような状況だな。
胸を高鳴らせている場合ではないのは承知の上だ。気を引き締めて挑ませて貰おう。

やる事は力任せの攻略だ。怪力と体力に物を言わせて突き進む。
と言いたい所だが、仲間が居ればその支援に回りたい。
無策な俺は策士を支援するのが一番効率的だ。

荒事は任せろ。
技能のかばう・盾受け・武器受け・激痛耐性で仲間を守り、敵が出たならなぎ払い等も使い、殲滅する。
炎は酸欠等の恐れがあるなら使わん。代わりにドラゴニアン・チェインで敵を繋いで仲間の方へ向かえぬ様にする。

仲間が居なければ突っ込むだけよ。
罠は踏み抜いて壊す、敵も踏み込んで蹴散らす。
ただ油断だけは無しで行こう。


エグゼ・エクスマキナ
ゴブリンが掘り起こしたり、崩落したりで以前とは変わっているだろうけど、
メインとなる坑道がわかるだけでも大分違うので、事前に廃坑地図を入手してそれを参考にマッピングしながら進んでいく。
崩落したところなどはエクスターミネーターソードで地形ごと粉砕……。
したいが、崩落が怖いので自重して無理のないルートを探して進んでいく。


ミハル・バルジライ
廃坑に連なる迷宮とは、如何にも御伽噺の趣だな。
是非此の目で見てみたい。

【SPD】
無用の戦闘を避ける為、探索には慎重を期す。
照明を使用する際は極力光量を絞り、徘徊している可能性のある敵に気付かれないよう留意。
出来得る限りは暗視を駆使し、第六感にも頼って事前に危機を察せられるよう心懸ける。
敵の姿を見掛けた場合は種族や数を確認の上、見咎められぬ内に回避しよう。
罠等を発見した際は解除し通行の安全を確保しておく。

風の流れや足跡、蹄跡、獣毛の痕跡等、使用されている道を特定する要素を蒐集し、迷宮への経路を見極める。
得た情報は他の猟兵達へ伝達、共有して効率化を図る。
迷宮の主へ続く道、必ず解き明かそう。


メンカル・プルモーサ
ん……廃坑、古代迷宮……つまり、探検(わくわく)

まず……地元で廃坑についていろいろ聞いて……まずは鉱山が生きてた頃の地図、かな…
それと、ゴブリンが棲み着いてるなら…退治の依頼がでてた、かも
冒険者の人に聞いて…廃坑に入ったことがあるか、そのとき崩れてた場所があるか、確認してみるね…(情報収集・コミュ力)

廃坑に入る前に…水と軽食、ロープや明かりと言った探索用品を準備して…袖にしまっておく(物隠し)

事前に手に入れた地図に崩れた場所を記入、風の通り道とかから道が通じてそうな場所を推理して進んでいくよ
【現実を侵せし狩猟団】をちょっと呼び出して、【不思議な追跡者】をつけて簡易偵察機にして探索の手を広げるね


日向・楓
採り尽くされた廃坑、慣れない世界で彷徨っていた所だ
僅かな鉱物でも見つかれば今後の冒険に役立つだろう

全ての作戦は、準備で決まる
投げ網
ツールキット
ピッケルロープランタン10フィート棒食料水に
空白地図&ジイさんが知っている時期の地図があるなら用意し
自分や後続の情報を集めて行く

暗い道々に数日持つ魔法媒体の松明を次々灯し
道がないなら軽く均す

ああ見かけた罠は潰すからな
発動=手遅れな大掛かりなヤツはチョークとロープで危険サインだけ残す
魔物……?他のに任せる。どうせいるんだろう

目に入る扉、古収納を開錠し
健全安全なダンジョン化していく

まあ、希少な鉱石を最初に見つけた際は
誰にも知らせずに懐に入れたりするんだけど


ポノ・エトランゼ
 廃坑の先に古代都市……うんうん心躍る状況ね♪

 ゴブリンがひょっこり出てきて、いきなり戦闘になっても困るだろから、
 きっちりルートを推理していきましょう。
 その方が、皆さんも進みやすいだろうし。

 当時の資料を残している部屋とか、廃坑に入った辺りにないかしら?
 持てれば地図を、または記憶して進みましょう。
 【情報収集】で坑内をよぉく見たり嗅いでみたりするわね。
 【第六感】で草木豊かな匂いが、微かに香る道とか、分かるかしら?

 とりあえず進む道が確定したなら、慎重に進んでいきましょう。危ない物がいるかもしれないものね。



●いざ、地の底へ
 そこは、神殿の入り口のように厳かな空気だった。しっかりと木枠で固定された道は、とても廃坑には見えない。今でも現役だと言われても驚かないぐらい、ドワーフ達の丁寧な仕事ぶりが伺えた。
 そんな地の底へ続く穴の前に立って、メンカル・プルモーサ(プルモーサ家の魔女・f08301)は眠たげな視線で呟いた。
「ん……廃坑、古代迷宮……つまり、探検」
 テンションが低いように見えて、メンカルはワクワクしている。好奇心と知識欲が強く、知らないことを知る事が大きな楽しみなメンカルにとって、まさに未知がこの先にあるのだ。
 それは、メンカルだけではなかった。
「こう言ぅんえぇよなー、冒険心くすぐられてっ!」
「ふむ。廃坑、迷宮、強敵と、浪漫を詰め込んだような状況だな」
 目を輝かせる柊・雄鷹(sky jumper・f00985)に、ワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)も胸を高鳴らせている場合ではない自覚はあっても、そう思わずにはいられない。「廃坑の先に古代都市……うんうん心躍る状況ね♪」
 ポノ・エトランゼ(エルフのアーチャー・f00385)も、廃坑の地図に視線を落とす。仲間が手に入れてくれた物だ、当時のままではないが探索にはとても役立つ。
「気を引き締めていこう」
 ワズラの言葉に、猟兵達は廃坑の中へと踏み入っていった。

●栄枯盛衰
「栄枯盛衰が世の常とは言え、沢山の人々で賑った鉱山が廃坑だったり……栄華を極めた古代都市が迷宮とは何となく物悲しいですよね……」
 廃坑を進みながら、しみじみと箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)が呟く。それこそが過去、オブビリオンになるのだと思えば、猟兵としては複雑だ。
(「山の向こう……構造的には峡谷になっているのでしょうね」)
 事前に廃坑周辺の動物、特に鳥類に会話を試みて見て得た情報は、険しい崖の向こうに緑が見えた、という情報を入手できた。仄々はその情報と合わせて、廃坑を進んでいたのだが……。
「んー、山の向こう側までは繋がってないみたいだから……」
「そうなると、崖があるのは迷宮の方なのだろう」
 地図を眺めて呟くポノに、ミハル・バルジライ(柩・f07027)は指摘する。ただ、とミハルは自身が指さした道があるはずの眼前に視線を向けた。
「見事に塞がっているな」
 崩落した、というにはおかしいとミハルは指摘する。
「天井の土が崩れていない。だとすれば、誰かが塞いだ穴だろう」
「魔物かな?」
 ポノは、疑問を口にする。ゴブリンなら、確かに手作業で岩を持ってくれば塞げただろう。
「道は作るもんだって、確か誰かが言よった!」
「そうだな」
 雄鷹とワズラが、目の前を塞ぐ瓦礫を力技でどかしていく。日向・楓(銀流紀行・f09695)は、ふと足元に転がった石を手に取った。
「鉄鉱石かな?」
 黒い石の色から、そこに鉄が含まれている事がわかる。枯れきった訳ではない、問題はこの鉄鉱石から鉄を取り出すための手間だ。利益になるか否か、その線引きで割に合わないと判断されて、鉱山として捨てられたのだろう。
「採り尽くされた廃坑、慣れない世界で彷徨っていた所だ。僅かな鉱物でも見つかれば今後の冒険に役立つだろう」
 これだけで、すぐお金になる訳ではない。それでも、楓は大きめで状態のいい鉄鉱石を懐に入れておいた。
「あ」
 エグゼ・エクスマキナ(エクスターミネーターソード・f00125)が、ふとこちらへ向かって来るいくつかの人影に気づいた。瓦礫を動かす音に気づいたのだろう、ゴブリンの一団だ。
「蹴散らすか」
「せやな」
 ワズラの言葉に、雄鷹がうなずく。粗末なショートソードを構えたゴブリンの一団が襲いかかってくるのを、振り返りざまポノがエルフボウを射放った。
「ギ!?」
 肩口に受けて、先頭のゴブリンの動きが鈍る。そうすると突進してきていたゴブリンの一団が失速し――。
「お願い」
「よし」
 ポノの言葉を受けて、エグゼが駆け込む。振り上げるのはエグゼ・ザ・ヴァリアヴルメイス――巨大でゴツイモンキーレンチ型メイスだ。
「コード・エグゼ!! ロック解放(リリース)!! 大地に還れ。エクスターミネーターソード!!」
 ドォ! と豪快な振り下ろし、エクスターミネーターソード!! が炸裂する。地面の爆発と共に吹き飛ぶゴブリン、その一体をジャラララララララ! とドラゴニアン・チェインが絡みつく――ワズラだ。
「お前らー! 出番やでーっ!!」
 そして、雄鷹の呼びかけに応えた燕、雀、鳩、鶏、鴉型の精霊達がゴブリン達へと突っ込んだ。
「ギギ、ギ!?」
 ゴブリン達は、ようやく敵が自分達では歯が立たない存在だと思って逃げようと試みるも、ミハルが回り込んでいた。
「逃がすと厄介そうだ」
 ここで潰す、とミハルが拷問具を振るう。ゴブリン達はショートソードで反撃するも、絶望の福音で先を読んだミハルにはかすりさえしなかった。
 目の前を塞がれたゴブリンをメンカルのシルバームーンによる一撃と、楓の黒曜石による斬撃が背後から倒していく。
「障害になり得るものは、先に排除しておきに限ります」
 仄々は素早くカッツェンナーゲルを振るい、ゴブリンにとどめを刺す。ゴブリンはこちらを把握していないが、敵がいると身構えていた猟兵とは心構えや準備が違った。
 こうして、ゴブリンを排除し瓦礫をどかした猟兵達は先へと進んでいった。

●丁寧に、確実に
 先頭を行く楓が、10フィート棒で丁寧に地面を探りながら攻略していく。時折、ゴブリンが仕掛けたのだろう簡素な罠もあったが、確実に先に気づいた楓が解除していく。この辺り、ダンジョンに潜り慣れた熟練のシーフの動きだ。実際、かなりの損耗が抑えられていた。
「もうすぐ、かな?」
 ポノが地図に視線を落してポノが言うと、メンカルがうなずく。
「多分……この、崩れた先……風、感じる……」
「そうだな」
 一部、天井が崩れた先から風の気配を感じて、メンカルとミハルが言う。人が通るには、小さな穴。それを見て、仄々が名乗り出た。
「私なら通れそうです」
「なら……小さき者よ、追え、暴け。汝は狩人、汝は猟犬。魔女が望むは獲物逃さぬ鋭き眼」
 猫の毛づくろいで小さな穴をすり抜けた仄々に、メンカルは不思議な追跡者(リドル・チェイサー)で追跡させる。仄々が崩れた壁の向こうへと抜けると――そこにあったのは、大きな穴だった。
「……石?」
 降り立った仄々が乗っていたのは、石の板だ。自然物ではない、滑らかな表面はまるで……。
「間違いありません、この先です」
「……だって……」
 動物の聴覚から得た仄々の言葉を仲間達に、メンカルは伝える。そうなれば、後は力作業担当の者達が土や石を退けていくだけだ。
 楓は、その中に混じった瓦礫に気づく。
「……これは、文様? 文字?」
 瓦礫に刻まれていた模様は、間違いなく自然のものではない。それは、この瓦礫が建造物だという証拠だ。
「繋がったでー!」
「この先が迷宮か?」
 雄鷹が歓声を上げ、ワズラがこぼす。それに、メンカルは呟く。
「……自分の目で見た方が……いい……」
 不思議な追跡者(リドル・チェイサー)でその光景を既に目にしているメンカルの言葉に、猟兵達はカツンと石の足場を歩いていく――そして、ついにその光景を目にした。
「廃坑に連なる迷宮とは、如何にも御伽噺の趣だと思ったが……」
 ミハルが、言葉に迷ったようにこぼす。
 目の前に広がるのは、石造りの迷宮だ。しかも、ただの通路ではない。天井は高く、三階建の建物の屋根に匹敵する高さがあるだろう。十字路や三叉路、丁字路など入り組んでいる――ただ、迷わせる事だけが目的の道がそこにはあった。
 御伽噺などではない、現実の迷宮がそこにはあった。
「……壁が、何かの拍子に倒れたのか」
 楓は、廃坑と壁が繋がった理由を理解する。おそらく、ゴブリン辺りが掘り進んで行ったら壁に行き着いてしまい、地盤が緩くなったところを土砂崩れが起きて壁の崩壊を招いたのだろう。
「後はオブビリオンのいる場所を見つけるだけ」
 エグゼの言葉に、仲間達はうなずく。廃坑を抜けて、地下迷宮へ――この先を目指して猟兵達は探索を開始した……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『古代帝国の迷宮』

POW   :    手当たり次第に力づくで攻略する。どんな障害だろうと、力任せに攻略してしまえば問題ない。

SPD   :    罠やモンスターに警戒して進む。危険を早期発見、罠を解除したりモンスターを速やかに排除せよ。

WIZ   :    迷宮を注意深く観察して進む。人の手による罠なら、予測できるはずだ。知識はどんな場面も有効活用できる。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●古代帝国の迷宮
 かつて、このアックス&ウィザーズで隆盛を起こっていた古代帝国。滅んだ帝国の、忘れ去られた迷宮の一つが、ここである。
 誰が何のためにこんな迷宮を作成したかなど、記憶はもちろん記録にも残っていない。ただ、現在も迷宮には罠が生きており、侵入者を拒んでいるという事だけは確かだ。

 さまざまな罠や、迷わせるための複雑な道。幸い、モンスターは潜んでいないようだが、単純な力技だけで押し切れる場所ではない。

 だからこそ、心技体全部を駆使してこの迷宮を攻略しなくてはならない。
エグゼ・エクスマキナ
罠というのは一度発動すれば即座にセットしなおしてもう一回発動とは
行かないものが多い。

まぁ、一部自動セットで連射してくるのもあるかもだけど
それはそれで罠は不意打ちしてなんぼなので一度発動してしまえば
脅威度も下がる。

というわけでレッツ漢解除!!(なお、罠を発動させるのはエグゼではない)

ユーベルコード・エレクトロレギオンでレベル×5体の小型戦闘用機械兵器を召喚して、先を進ませて罠を発動させ無力化していく。


アクアヴィーテ・ワイズメル
松明等の明かりを持って、天井近くを飛びながら罠や敵に警戒
天井に妙なモノが吊されてたり、敵が潜んでないか警戒を

罠を仕掛けるなら、曲がり角や分岐点の先の死角に仕掛けたりしそう
あとは部屋の扉がスイッチになってたり、部屋に全員が踏み込んだ頃合いドアが閉まり起動する罠があるかも
他にも、延々と続く通路で油断した頃合いに、床や壁に落とし穴とかあったり、天井に吊り天井とかの罠が仕掛けられてるかも

お宝に見せかけた罠もあるかも

そういったモノがあれば、器用な仲間にお願いして解除して貰ったり、迂回できそうなら迂回したりと対処

あと、ゴブリンとかが逃げる振りして罠に誘導したり、野生動物は罠を避けて活動してるかも

観察しよう


ワズラ・ウルスラグナ
うむ。ダンジョンだな。
何が有るやら、今から楽しみだ。

とは言えやる事は変わらん。
力任せの攻略、怪力と体力に物を言わせての突撃。
ただし仲間と歩調を合わせ、支援する、と。
先陣を切って見落とした罠には俺が掛かるようにしよう。落とし穴はかなり得意だぞ。翼と鱗、空中戦の嗜みまで有るからな。

仲間を守り、敵が出たならブレイズフレイムの薙ぎ払いで殲滅する。
酸欠の恐れが無ければ良いが、拙そうなら地獄の焔は使用後即座に消す。
しかし灯り代わりにも地獄の焔は便利だな。
そう言えば迷宮の天井に穴が開いているとも言っていたな。ならばこの火で風向きを調べてみるのも良いかも知れん。

引き続き油断は無しだ。
さあ、迷宮制覇と行こうか。


箒星・仄々
心情
いよいよ古代王国の迷宮
未来を喰らう敵が
ヒューレイオンが何処かにいるのですね…
心して進みましょう!

手段
WIZ

相手は緑を生む存在
なれば迷宮に不自然に盛る植物群の
その中心にいる筈です
動き回る存在ですから一様ではないでしょうが
一番の手がかりではないでしょうか?
:見切り&追跡

罠にも注意を払い注意深くこっそりと進みます
:暗視&聞き耳&迷彩&忍び足&目立たない

戦闘時は魔法で残像分身し
トリニティで攻撃力を強化した魔法剣を振るいます
:属性攻撃&残像&早業&先制攻撃&見切り&串刺し


シェーラ・ミレディ
【WIZ】
僕の推理は的外れだったようだが、まぁ良い。これから挽回するとしよう。
……迷宮と言えば、宝もあるだろうしな!

第六感や野生の勘、見切り、罠使い等の技能を駆使して罠を見付け、クライミングや早業、地形の利用等を使って避けて進むぞ。
モンスターが潜んでいないとしても、何が起きるかわからない。警戒は厳に。

情報収集や失せ物探しで、オブリビオンの痕跡を見付けられれば良いのだが。具体的には足跡か……オブリビオンは排泄は必要なのだろうか。そういった物も発見できれば手掛かりにはなるだろう。どちらに向かったか、とかな。

迷子にならないよう、学習力で道順は覚えておくが、万一の為に小刀で壁を削って目印にしておこう。


ラムダ・ツァオ
【SPD】
迷宮の踏破の基本なら、まずは足元に注意ね。
向かった足跡、帰ってきた足跡、魔物の痕跡、それらを見れば向かうべき先はわかるわ。
入った足跡ばかりだと危険だ、とかね。
あとは空気の流れ。仕掛けがあればそれを仕掛けるために余計な仕組みを作る必要があるから。
さて、曲がりなりにも盗賊だし出来る仕事は頑張るわね。
解除できる罠ばかりならいいけど、
古い罠だと、罠によっては解除すると不味い状況になる場合もあるから、その場合は避けて通るのが賢明かしらね。


ポノ・エトランゼ
WIZ活用

迷宮攻略、がんばるわ……っ
(皆頼もしい。頑張りたい気持ち)

異変あれば直ぐに仲間に知らせる。
石造りの迷宮かあ。罠探しの時に光の精霊(エレメンタルロッド)に頼んで、高い天井を照らしてみる?
『第六感』を働かせ周りをよく見て耳を澄ませておく。
『情報収集』で周囲の壁、床、それこそ石板一枚分の色変化にも気付けるように。
変な所から風が微かに吹いているのも要注意よね。
落とし穴かしら? 壁がぐるんっ、とか?

手の届かない位置に罠があって、どうしても迂回できない時は、仲間の指示の下に『スナイパー』で石とか矢とかを放って罠発動を促すわね。
魔法で、風圧でぽちっともできると思う。
みんな気を付けてね。
アドリブOK


メンカル・プルモーサ
……ん、怪物はいないみたいだから……マッピングしながら、慎重に……
【現実を侵せし狩猟団】でひとまずガジェットを呼び出すね……
罠を踏ませるもよし、盾にするもよし、伝令に使うもよし……みんなも利用してね…

……で、手段が電脳から実世界になるだけで……セキュリティを破る、という意味でハッキングと一緒……
ファイアウォールの代わりの迷宮、攻性防壁代わりの罠……巡回ソフト(モンスター)がいないのが救い…
……構造や配置から製作者の意図にどれだけ迫れるかが、ポイント……
罠が厳重な道が「あたり」とは限らない…目立たないように、多くも少なくもない場所があたりのこともある…
(情報収取・世界知識・ハッキング)


日向・楓
先輩が言っていた
全ての外敵が剣を持って現れる訳ではないと

思ったより総探索範囲が広く複雑で深いな…
備品保つといいけど
進行上に枝や木片があれば折り、薪用に集めながら進む

棒じゃ天井届かないなこれ…
罠屋敷確定か
なら避けては通れない奴が絶対にある
私はそうするから

そして罠対処はローグだけの仕事ではない
素直に頭を下げて人様の手の借りよう
ルート選択、術系の不明物はWizの方やサイバーアイに頼る

罠探知解錠伝達に専心

でも解除は考えて
これだけ潤沢なら
罠に罠ぶつけて対処出来る場面もある筈

登攀跳躍水泳の邪魔なら余分な荷物を置いていく

大型遭遇前に治癒の焚火で近くの子全員の疲労回復
決戦で探索役は役立たずだから
これが効率的だ


ミハル・バルジライ
嘗ては守られるべき何かが其処に存在したのだろう。
今や過去より来たる魔が君臨しようとは、些か皮肉だな。

【SPD】
引き続き慎重に、迷わぬよう地図を書き留め乍ら。
行止り等の枝道には起点の壁に印を付ける等、他の猟兵達への情報提供と協力を惜しまず、安全に踏破叶うよう心掛ける。
道程は第六感を働かせ乍ら罠を警戒し、発見すれば解除に努める。
踏み入った形跡の無い箇所や古い血痕等の汚れ、不自然な構造等、周囲との差異を感じる場所は特に観察を。
仕掛けられた当初こそ巧く隠されていただろうが、長い年月の後には多少の瑕疵も垣間見えよう。



●古代帝国の迷宮
 かつて、このアックス&ウィザーズで隆盛を起こっていた古代帝国。その迷宮を見上げ、ミハル・バルジライ(柩・f07027)が呟いた。
「嘗ては守られるべき何かが其処に存在したのだろう。今や過去より来たる魔が君臨しようとは、些か皮肉だな」
 過去から現れるオブビリオンが、古代に失われた帝国の遺跡に現れる――それを偶然と呼ぶにはあまりにも「らしい」出来事だと感じたからだ。
 石造りの迷宮を見上げ、ワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)がこぼす。
「うむ。ダンジョンだな。何が有るやら、今から楽しみだ」
「迷宮攻略、がんばるわ……っ」
 ワズラの言葉に、ポノ・エトランゼ(エルフのアーチャー・f00385)もうなずく。
(「皆頼もしいわ」)
 一人であったなら、右も左もわからなかったかもしれない――ポノは頼りになる仲間に感謝しつつ、だからこそ頑張らなくてはと決意する。
「いよいよ古代王国の迷宮、未来を喰らう敵がヒューレイオンが何処かにいるのですね……心して進みましょう!」
 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)が告げるのと同時、猟兵達は迷宮へと挑み始めた。

●迷宮攻略
 高い天井を見上げ、日向・楓(銀流紀行・f09695)が静かに唸った。
「棒じゃ天井届かないなこれ……罠屋敷確定か。なら避けては通れない奴が絶対にある――私はそうするから」
 楓は、思い出す。先輩が言っていた、全ての外敵が剣を持って現れる訳ではないと。その言葉の真意を、確かにこの迷宮は現していた。
 かつて、この迷宮に居ただろう守護者はいない。しかし、罠は生きている――この迷宮に踏み入る事を許さない、製作者の意志は確かに残っているのだ。
「思ったより総探索範囲が広く複雑で深いな……備品保つといいけど」
 探索者にしてシーフである楓にとって、ここは自らの独壇場だ。しかし、同時に知っている――自分一人の力で罠に対処する必要もない事を。
「この道を頼める?」
「任せて。レッツ漢解除!!」
「いや、男じゃないけどね」
 エグゼ・エクスマキナ(エクスターミネーターソード・f00125)に、楓が思わずツッコミを入れる。エグゼの周囲に浮かび上がった無数の小型戦闘用機械兵器が、目の前の道を浮いて進んでいく。ただ、普通に通り過ぎてはいみがない。
「あ、そこで地面に下ろしてくれるかい?」
「こう?」
 楓の指示を受けて、エグゼが戦闘用機械兵器を下へとゆっくりと下ろしていく。戦闘用機械兵器が石畳に触れた瞬間、カチンという音がした。
 その刹那、ガギン! と石畳と石畳の隙間から刃となった金属の板が跳ね上がる! ガキン! といくつもの戦闘用機械兵器が、両断されて爆発した。
「殺意が高いね」
 10フィート棒で床を叩いてみても、反応はない。ある程度の重さ――例えば、歩いている人間ぐらいか――、あるいは衝撃がないと作動しない仕掛けらしい。どうやら、古代帝国時代の人間も、なかなかに迷宮探索という者を理解していたらしい。
「……これ、人間を相手にしてる……」
「そうだね」
 メンカル・プルモーサ(プルモーサ家の魔女・f08301)の感想に、楓は肯定する。
 メルカルは、セキュリティを破る、という意味でハッキングと一緒と考えた。ファイアウォールの代わりの迷宮。攻性防壁代わりの罠。巡回ソフト替わりのモンスターがいないのが救いか。
「……構造や配置から製作者の意図にどれだけ迫れるかが、ポイント……罠が厳重な道が「あたり」とは限らない…目立たないように、多くも少なくもない場所があたりのこともある……」
「あー……ようするに、どういう意味だ?」
 ワズラの疑問に、メルカルは説明する。
「……考えられる頭がある、知性を持つ相手を……想定した迷宮という事……」
「古代帝国時代の外敵にそういうのがいたのかもね」
 少なくとも人間と同等かそれ以上の知性のある相手を相手するために作成された迷宮なのは、間違いない。楓は、そう結論づけた。
「みんな、力を貸して。まずは、あの鉄の板だけを上手く破壊できる?」
「任せて」
「おう」
 エグゼとワズラが、武器を構えて慎重に前に出る。そのまま、目の前の鉄板を豪快に破壊した。

●深き緑へと至る道
 ラムダ・ツァオ(影・f00001)の視線は、足元に集中していた。
(「迷宮の踏破の基本なら、まずは足元に注意ね。向かった足跡、帰ってきた足跡、魔物の痕跡、それらを見れば向かうべき先はわかるわ」)
 足跡こそ見つけられなかったが、確かに足元は情報の宝庫だ。おかしな擦り傷や、自然のものとは思えない跡など、罠の情報は死角となる足元に残されている事が多い。
 普通に歩いていたら気づかない程度の角度が床にある事に、ラムダは気づいた。
「――やっぱりね」
 そして、視線を上げてラムダは壁を見る。一度作動しても終わらないトラップがあったなら、そこに必要なものとは何だろうか? それは、再び罠を仕掛け直す手間だ。管理している者がいれば、それは簡単だ。しかし、ここは古代帝国の迷宮であり、そんな者がいるはずがない。
 ならば、どうやって仕掛け直すのか? そういう機構があるのだ。そして、そういう機構を設置し無くてはならないのなら、余計な仕組みを作る必要がある――ラムダの予想通り、床の石畳に不自然な境目があった。おらくは、落とし穴になっているのだろう。
「曲がりなりにも盗賊だしね」
 ラムダは、器用にトラップが作動するスイッチである石畳を踏み越えて先に進む。古い罠だと、罠によっては解除すると不味い状況になる場合もある、そう考えての判断だ。
「あの天井の窪み、何かした??」
 アクアヴィーテ・ワイズメル(フェアリーのフォースナイト・f10170)の指摘に、ラムダは天井を見上げた。下に注意を払うラムダと上を警戒するアクアヴィーテ、そして正面を見張るポノとミハルで組んで攻略していたのだが――。
「さっきから、いくつか同じものがあるんだけど……」
「あれ? ちょっといい? その窪み、よく見てくれる?」
 ポノに頼まれて、慎重にアクアヴィーテは慎重に窪みへ近づく。ポノは、指さしながら言った。
「その、黒っぽいの……苔?」
「ええ、そうみたい」
 アクアヴィーテがよく確認すると、確かにそれは苔だった。ポノは、小さく呟く。
「そこだけ湿気があったのかな? んー……」
「待て」
 床を観察していたミハルが、考え込むポノに声をかける。ある可能性に行き着いたのだ、だからこそミハルは言った。
「他のみんなと合流して意見を聞いてみたい。いいか?」

 器用に、壁をシェーラ・ミレディ(四連精霊銃・f00296)が「下って」いく。そこは、ラムダが発見した落とし穴だ。シェーラは、上にいた仲間達へと言った。
「当たりだ、確かにその機構がありそうだ」
「どういう事だ?」
 ワズラの疑問に、話し合っていた楓とメンカル、ラムダ、ミハルが顔を上げた。
「……天井が高い、理由……」
「これは天井と床に着目してたのが大きいね」
 メンカルの言葉に、楓は笑みと共に言った。答えは、口でいうよりも見てもらった方が早い――仕掛けを見つけた楓は、敢えてトラップを「作動させた」のだ。
 バキン、バキン、バキン、と等間隔に天井に空いていた窪みから、水が落ちていく。わずかな斜面になっていた道は水を一点に――落とし穴へと流し込んでいく。
「すごい」
 高い安全な場所からその光景を見下ろし、素直にエグゼが感心する。水攻めのトラップだと思えば、普通はそれ以上考えない――しかし。
「……そこが、盲点。ただ、トラップをトラップとして、終わらせなかった……」
 メンカルの言葉を継ぐように、シェーラが言った。
「そろそろ、見れそうだ」
 ドドドドド……と、水が流れる音が聞こえるものの、いつまで経っても落とし穴から溢れる事はなかった。それに気づいたポノが、目を丸くする。
「あ、落とし穴から水が流れてる!?」
「おそらく、あの通路自体が水攻めと同時に、あそこに水を送り込む仕掛けだったんだろう」
 ミハルは、自分の仮定が正しかった事を確信した。床や壁の表面にも、わずかにだが苔が残っていたのだ。だから、あそこはただの通路ではなく水路であるのではないかと考えたのだ。
「……この音は。こっちですね」
 ぴくりと耳を動かし、聞き耳で気づいた音の元へ仄々が仲間達を誘導する。辿り着いた先で、仄々が感心したように言った。
「ああ、もしかして――水のエレベーターなのですか!?」
 落とし穴から流れた水は、その穴へと流れ込んでいた。水には足場が浮かんでおり、浮力を得て浮いて水面と共に上がってきていた。
「みんな、乗って」
 ゆっくりと、仲間達が足場に降り立った事を確認すると、楓はトラップを作動させる。すると、やって来た道がガシャン! と塞がる。こうして、先程いた迷宮よりも高い場所まで水のエレベーターは彼らを運んでいった。
「どうやら、本命のようだ」
 シェーラの指摘に、仲間達も見る。もうすぐたどり着くだろう上に、不自然なほど緑が繁っていたのだ。深い樹海の奥に棲息するオブビリオン、ヒューレイオンは自身の周囲で緑を繁らせる能力を持つ。シェーラが痕跡を探していたからこそ、あそこにヒューレイオンがいるのだと確信した。
「ようするに、あそこに倒すべき敵がいるって事だろう?」
 戦闘狂であるワズラの出した答えは、端的だ。だが、楓や一部の人間は気づいている――この水のエレベーターが使えた事による、大幅なショートカットの意味を。
「消耗が大きく下げられたね」
「うん、助かったよ」
 楓の呟きに、ラムダも同意する。シーフという専門家だからこそ、わかった。これ以外にあそこにたどり着くルートはいくつかあったはずだ。だが、そのどれもが少なからず消耗を強いられた事が、想像に難くない。
 やがて、水のエレベーターは猟兵達をそこへと運んだ。今までの迷宮と違い、植物に覆われたエリアだ。そして、天井の一部が崩れ大穴が空いているのが見えた。
 ここに倒すべき敵、ヒューレイオンがいる――そう誰もが思った瞬間だ。

「オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ――!」

 大気を震わせる咆哮が、迷宮内に響き渡っていく。それは、忘れ去られた迷宮の今の主が放った、敵意の声だった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ヒューレイオン』

POW   :    ディープフォレスト・アベンジャー
【蹄の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【自在に伸びる角を突き立てて引き裂く攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    チャイルド・オブ・エコーズ
【木霊を返す半透明の妖精】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ   :    サモン・グリーントループ
レベル×1体の、【葉っぱ】に1と刻印された戦闘用【植物人間】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ミレイユ・ダーエです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●迷宮の獣
 森と化した迷宮の中を、ヒューレイオンが進む。

「オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ――!」

 その声は、自らの領域へと侵入してきた者への敵意に満ちていた。それは獣の本能か、それともオブビリオンの本能か。
 ただ、言える事は一つだ。ヒューレイオンは、己の全存在を懸けて猟兵達を排除しようと動き出したという事――。

 ヒューレイオンが一歩、また一歩と踏み出す度に加速する。その蹄が打つ床に、植物を繁らせながら、疾走した。
日向・楓
頼もしき戦士がおり
一度も見た事がない異界巨大獣を前にやる事はただ1つ
罠を張る

ワイヤー
手持ちの魔導網、UC光網
これらを茂み・暗がりに紛れさせ
即席のトラップを仕込む

一例として
左側には見えない妖精でも掛かる程目の細かい魔導網を
右側には獣・植物人間の歩幅に合わせた足止め罠を
それぞれ敵の死角で仕掛ける

これを予め戦闘前に全員に大雑把に位置を伝達しておけば混線がなくていいね

罠使いが無くロープワークで出来るか不安だけど
くくり罠や網を配置して何かが1回引っかかれば儲け物じゃないかな

基本皆様の戦闘をサポート
狙われたら逃げるよ

咆哮よりも先に目を奪われた
私の世界に存在しない荘厳で神秘的な色
隙を見て彼の角を折り盗みます


箒星・仄々
心情
堂々たる森の王のようなお姿

自然に触れたい
森を守りたい
そんな願いから受肉されたのかも知れません

あなたがかつて慈しんでいたこの世界を守る為
未来を喰らう敵となったあなたを還します
それが私達猟兵ですから

手段
魔法で姿を隠した後
残像分身して包囲攻撃!
小柄な体を活かし懐に飛び込み魔法剣で貫きます
:迷彩&忍び足&残像&早業&先制攻撃&見切り&属性攻撃&串刺し

敵攻撃は迷彩&残像&早業&見切り&忍び足で回避
音がなかったら妖精さんも追えませんよ?

今を生き未来へ進む者たちを称える歌で仲間を鼓舞・癒しつつ(Sキュア)
Kリートを奏で聖なる調べで敵の行動を鈍らせます
:歌唱&破魔&楽器演奏&祈り&優しさ&勇気&手をつなぐ


シェーラ・ミレディ
ち、迷宮の中に森だと?!
射線が限られてしまって、やりにくいことこの上ないな!

仕方がない、数を撃って当てる方針で行こう。4丁の精霊銃を曲芸のように駆使し、「彩色銃技・華燭之典」で矢継ぎ早に弾丸を放つぞ!
植物人間を召喚されたら、合体される前に潰していこう。

銃声は響くだろうし、どうあっても目立つ。
ならば隠れるのはやめて、囮を努めようじゃないか。
トリニティ・エンハンスで水の魔力を纏い、防御力を強化して挑むぞ。
零距離射撃、オーラ防御、カウンター等、技能も大盤振る舞いだ!
此処は敵の縄張りだからな、こうでもしなければ大技が当たるまい。
止めは、頼むぞ?


アクアヴィーテ・ワイズメル
迷宮を植物だらけにされたら困ります
ただでさえ古そうなのに、根が蔓延ったら石壁が崩れるかも

急いでこいつを排除しましょう

私は壁や床の凹凸や段差の地形を活かしつつ、敵の死角に位置どるように飛び回り、隙をみて氷結剣を叩き込み敵の動きを止めますね(地形の利用1、空中戦1)

動きが止まったり、もう一撃入れる隙があれば、2回攻撃を叩き込み、敵の動きを止めることに集中(2回攻撃2)

植物人間や敵の攻撃は、上下左右前後と攻撃に応じ回避し、立体的な動きで翻弄しましょう
攻撃を回避しきれない場合は、エレメントセイバーで受け流し、直撃を避け即座に立て直しますね(武器受け1)

古代の迷宮は、浪漫とともに地底深く眠る…それでいい


ポノ・エトランゼ
木々を育てる穏やかな獣だったなら、放っておけるのにね…。
うん(気を取り直して)、行きましょう!

ヒューレイオンへは基本的に、仲間の援護を意識して立ち回る。
エルフボウで『スナイパー』『援護射撃』を使い、仲間の攻撃を繋げていくように。
射るのは得意よ、任せて!

サモン・グリーントループは直ぐに対処するわね。
数字が若いうちに、合体される前に倒しておきたいわ。
WIZを活用するわね。
エレメンタルロッドを氷属性に。『範囲攻撃』で植物人間を攻撃!
上手く凍ったりしたら、ウィザード・アローか普通の矢で射貫く。
ぱりぱり砕けたら、成功かしらね。

戦闘後は余裕あれば、古代帝国の迷宮と育った緑の光景を堪能するわ。
アドリブOK


メンカル・プルモーサ
……ん、都市の探索もしたいけど……その前に、倒さないと……
【現実を侵せし狩猟団】を召喚、援護射撃を放って植物人間を足止めするよ……みんなが攻撃されそうならガジェットを盾にして防ぐよ(援護射撃・かばう・時間稼ぎ)

稼いでる時間で情報を集めて…・・【崩壊せし邪悪なる符号】で植物人間の一掃を狙うよ。(情報収集)

植物人間を一掃したら、後はヒューレイオンを【ウィザード・ミサイル】で攻撃……再度植物人間を召喚してきたら片っ端から消してやる……

……戦闘が終わったら、古代都市に何か残ってないか探すよ…
何か研究の資料になる物があるといいな…魔法技術とか……


ミハル・バルジライ
他者の領域を侵した点ではお互い様だ、そう猛るな。
慌てずとも冥府への途は確と開いてやる。

野放しの獣は始末に負えんな、躾けてやろうか?と揶揄する言葉に呪詛を込め。
他の猟兵が付けた傷を更に抉るよう狙い、フェイントを交えて咎力封じで能力を鎖す。
敵の視線や動作へは警戒怠らず、使用する技や標的の選択の見極めを。
俺への攻撃は見切って極力躱し、他の猟兵への攻撃は叶う限り注意喚起を行い被害を減らすよう努める。

彼岸にも草が生い花が咲く余地はあるだろう。
迷宮に籠るより居心地が良いかも知れんぞ。


ラムダ・ツァオ
相手は基本は草食動物。
なら、視野と聴覚は良いけれど、側面からの攻撃には弱いとみるべきかしら。
とりあえず敵の攻撃の来やすい前後には立たないように注意しつつ、
手近にきたグリーントループをダガーで切り裂きつつ、機会を伺うわ。
相手が角を伸ばして他所へ攻撃した時がチャンスね。
外套を脱ぎ捨てて囮代わりにし、
側面から一気にシーブズ・ギャンビットで四肢の何れかを狙うわ。
一撃で機動力を奪えるとは思わないけれど、
弱らせるだけでも皆の手助けにはなるでしょう。
四肢が既にぼろぼろであれば少し危険だけど首を狙うのも一つの手かしら。



●迷宮と森林の主
 ――その光景は、幻想的と呼ぶしかなかった。
 カツン、と苔の生えた石畳を蹄が打てば、そこに木々が芽吹いていく。朽ち果てた古代王国の迷宮を、自然で覆い尽くす過去からの来襲者――ヒューレイオンが、深い森の中からこちらへ向けて疾走してくるのだ。
 そこには空想を描いた絵画のように、現実感に乏しい美しさがあった。
「木々を育てる穏やかな獣だったなら、放っておけるのにね……」
 エルフであるポノ・エトランゼ(エルフのアーチャー・f00385)だからこそ、そう思わずにはいられない光景だった。しかし、訪れた猟兵達に向けられる殺気は、決して存在を許していいモノではなかった。
「他者の領域を侵した点ではお互い様だ、そう猛るな。慌てずとも冥府への途は確と開いてやる」
 ミハル・バルジライ(柩・f07027)が、静かに言い捨てた瞬間だ。ヒューレイオンの足元から舞い散った木の葉が、戦闘用植物人間へと変化していく。

「オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ――!」

 戦闘用植物人間達が、ヒューレイオンに先んじて猟兵達へと襲いかかった。

●過去と現在の激突
 木々を足場に、戦闘用植物人間達が跳ぶ。猟兵達の頭上を取って襲い来るそれらに、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は身の丈ほどある大きい杖、シルバームーンの月の装飾部分をかざした。
「邪なる力よ、解れ、壊れよ。汝は雲散、汝は霧消。魔女が望むは乱れ散じて潰えし理」 パパパパパパパパパパパパパパンッ! と戦闘用植物人間達が、内側から爆ぜていく! メンカルの崩壊せし邪悪なる符号(ユーベルコード・ディスインテグレイト)だ。
「……させ、ない……」
 直後、シェーラが横へ跳ぶ。雪月風花、花鳥風月、千紫万紅、花紅柳緑――シェーラは、4丁の精霊銃を艶麗繊巧を引き抜き宙へ放おった。
「ち、迷宮の中に森だと?! 射線が限られてしまって、やりにくいことこの上ないな!」
 ダダダン! とシェーラは撃っては放り投げ、放り投げては掴み撃って、と四丁の精霊銃をジャグリングさながらに入れ替えながら撃ち込んでいく。火が、水が、風が、地が、彩色銃技・華燭之典(アトラクティブガンアーツ・フルバースト)による様々な精霊を纏った多彩な弾丸がヒューレイオンへと――オブビリオンはその弾丸の雨を、植物を盾に受けきった。
「迷宮を植物だらけにされたら困ります。ただでさえ古そうなのに、根が蔓延ったら石壁が崩れるかも……急いでこいつを排除しましょう」
 アクアヴィーテ・ワイズメル(フェアリーのフォースナイト・f10170)が、森の木々を縫うように動き出す。ヒューレイオンは目敏くそれを見つけると、アクアヴィーテへと視線を向けようとする。
「こっちよ!」
 ヒュガガガガガガガ! とポノの射放った風属性の魔法の矢がヒューレイオンへと降り注ぐ。ポノのウィザード・アローに気を取られたヒューレイオンへミハルが言い放った。
「野放しの獣は始末に負えんな、躾けてやろうか?」
 揶揄する言葉に呪詛を込め、ミハルが拘束ロープを飛ばす。ミハルの咎力封じを、ヒューレイオンはわずらわしいと角を振るって振り払った。
(「――そうだ、それでいい」)
 ミハルは、ヒューレイオンに気付かれないように視線を走らせる。ラムダ・ツァオ(影・f00001)と日向・楓(銀流紀行・f09695)が、森の奥へと駆けていくのを確かに見届けると、後方へ下がった。
 ヒューレイオンは、猟兵達を追うように駆ける。だからこそ、気付かない。今、この時、密かに進行している事態に……。

●過去と現在の――
 ゴォ! と迷宮の遺跡が一部砕け散った。ヒューレイオンの伸びた角が、迷宮の一角を薙ぎ払ったのだ。
「……大事な、資料……」
 起伏のないメンカルの声に、怒気が宿ったように聞こえたのは錯覚か否か。追いかけてくるヒューレイオンに、猟兵達は真っ直ぐに迷宮の通路を走っていく。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――!」
 逃さない、そう言いたげにヒューレイオンが吼える。チャイルド・オブ・エコーズ――木霊を返す半透明の妖精が追尾する限り、ヒューレイオンが猟兵を見逃す訳がない……その、はずだった。

「――ッ!?」

 不意に、ヒューレイオンの疾走が止まる。追わせていたはずの、妖精が掻き消えたからだ。
「申し訳ありませんね。音がなかったら妖精さんも追えませんよ?」
 魔法で姿を隠した箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)が、妖精を魔法剣で断ち切ったのだ。仄々は、気配を消したまま森の中へと溶け込んでいく。
 ヒューレイオンは、即座に疾走を再開した。妖精を失ったのならば、視界から消えられたら追えなくなる――それだけは避けたい、当然の思考だ。
 その当然の思考こそが、猟兵達の勝機だった。

「頼もしき戦士がおり、一度も見た事がない異界巨大獣を前にあたしがやる事はただ1つ――罠を張る」

 ダン! と迷宮の壁を蹴って、日向・楓(銀流紀行・f09695)がワイヤーを引いた。ギュオ! とワイヤーは壁の割れ目を基点に引っ張られ――ヒューレイオンの足を地面に隠していたワイヤーの輪が締め上げる!
「オ、オ――!?」
「畳み掛ける」
 後退を演出して引き寄せていたミハルの、咎力封じによってヒューレイオンの巨体が拘束される。この一瞬、楓のトラップへと誘い込むための誘導だったのだ。
(「二度目はない、ここで決める」)
 トラップを成功させた楓が、一番その事を自覚していた。ヒューレイオンが持つ獣の本能は、二度引っかかる事はないだろう。だからこそ、これが最後にして最大の好機だ。
「相手は基本は草食動物。なら、視野と聴覚は良いけれど、側面からの攻撃には弱いはずよ」
 ラムダが、外套を脱ぎ捨てて上に投げる。ヒューレイオンが、外套を視線で追った。その間隙に、身軽になったラムダが低い体勢で駆け抜け――ワイヤーで拘束された方と反対の脚を、黒刃と白刃で切り裂いた。
 ヒューレイオンが、大きく体勢を崩す。そこへ、ポノがエレメンタルロッドを振るい氷属性の魔法を放った。ビキビキビキ! とヒューレイオンの体が、氷に覆われていく!
「お願い!」
 ポノの声に、ヒュガガガガガガガガガガ! とメンカルのウィザード・ミサイルが降り注ぎ、氷とヒューレイオンに突き刺さっていった。
「堂々たる森の王のようなお姿。自然に触れたい、森を守りたい、そんな願いから受肉されたのかも知れません」
 シュタ、とヒューレイオンの背に降り立ったのは、仄々だ。カッツェンナーゲルを振り上げ、全力で仄々が振り下ろした。
「あなたがかつて慈しんでいたこの世界を守る為、未来を喰らう敵となったあなたを還します。それが私達猟兵ですから」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
 トラップに絡め取られながら、強引にヒューレイオンが前に出る。その出鼻をくじいたのは、楓の黒曜石だ。渾身の斬撃が、ヒューレイオンの角を切り飛ばした。
「咆哮よりも先に目を奪われた、私の世界に存在しないその荘厳で神秘的な色……いただきます」
 ヒューレイオンが、大きくのけぞる。四丁の精霊銃を放り投げ、シェーラが言い放った。
「遠慮するな。馳走してやろう!」
 放たれる彩色銃技・華燭之典(アトラクティブガンアーツ・フルバースト)が、ヒューレイオンを撃ち抜いていく。
「止めは、頼むぞ?」
 シェーラは呟き、ラムダとアクアヴィーテがヒューレイオンの横から駆け込んだ。
「その首、もらうわ」
 ラムダが逆手構えたダガーをヒューレイオンへと突き刺し、アクアヴィーテがエレメントセイバーを刺突する。
「冬の氷に囚われなさい。あなたにはもう……春は来ない。永遠に」
 バキバキバキ! と絶対零度の冷気が、ヒューレイオンを飲み込んだ。アクアヴィーテの氷結剣(ヒョウケツケン)の刺突が止めの一刺しとなり、澄んだ破砕音と共にオブビリオンが砕け散った……。

●失われるもの、残されるもの
「彼岸にも草が生い花が咲く余地はあるだろう。迷宮に籠るより居心地が良いかも知れんぞ」
 風に散っていく氷の破片に、ミハルはそう言い捨てる。その隣で、メンカルは小さなため息と共に森に飲まれかけた迷宮を見回した。
「何か研究の資料になる物があるといいな……魔法技術とか……」
 見つかるかどうかは、運次第だ。メンカルにとって、この迷宮はまさに夢の詰まった宝箱なのだ。
「古代の迷宮は、浪漫とともに地底深く眠る……それでいい」
 上に空いた穴から漏れる太陽の光を見上げ、そうアクアヴィーテが呟いた。

 こうして、古代帝国の迷宮に住み着いたオブビリオンは猟兵達の活躍により駆逐された。過去からの滅びを打ち倒す、猟兵達の一つの戦いが、ここに幕を閉じた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月10日


挿絵イラスト