ねむりこ笑めば死人揃いて
●ねむれねむれねむりこと。
「それで、貴方は死にたいのね?」
「うん。パパにもおばあちゃんにも会えるから」
「もう生きていたくないのね、貴方は」
「うん。さむくて、つめたくて、みんなこわくて……ママがね、昔お話してくれたの。死んだ人は安らかにいつまでも幸せに暮らせる場所に行けるんだよ。だからもう、死んでもいいの」
「素敵なお話ね」
「あのね、死ぬときは猫さんみたいな真っ白な色の、羽の生えた人が迎えに来るんだって!」
「……きっと私のことを『人』だと語り継がれていたのかしらね。そのお話は」
くすりとほほ笑む彼女の様子。
慈しみを帯び、そしてどこか神々しく。
しかし決して今まで自分が見てきた『怖い偉い人』とは違い、こちらを自分を見てくれる。子ははっと目を見開いた。彼女こそが──死へと導く素敵なお方!
「ええ、その通りです、賢い子。あなたを導きましょう。願いを叶えましょう」
「……ありがとう、──さま!」
カウベルの音が凍える夜空に響き渡り、地にとさりと倒れた子は先程まで漏らしていた白い息をもはや発することなく。
痩せこけ襤褸を纏った子供を見下ろすオブビリオン、気高きヨハンナ。
吹きすさぶ風に尻尾と耳が揺れる。その視線の先には山間に作られた小さな村。
家々は脆く、大人達がのろのろと修理に顔を出す。
「あら、あら……行きましょう」
気高きヨハンナ。白い猫の天使が導くは死。死こそ救い。
●グリモアベース
集まった猟兵を前にアンバー・スペッサルティン(宝石人形男子※苦労人型・f14554)は深々と頭を下げ、口を開く。
「ダークセイヴァーの北部にてオブビリオンの存在を予知致しました」
日も差さぬ世界のある一帯、切り立った山々の間にその村はあるという。
オブビリオンが当主として圧制を敷くダークセイヴァー。その世界に産み落とされたのが罪であるかのように与えられる苦難から逃げ延び、開拓し、隠れるように存在する村。
「ですがもとより何も持たぬ人々が、荒野と寒さに震えできた村」
寒さの中、飢えの中、誰かが苦しみから解放されるためにせめて来世に救いを求めるために産み出したおとぎ話。
「苦痛ある生より、一瞬の死を。偶然にも、その村にオブビリオン『気高きヨハンナ』が目をつけました……偶々遠出していた子を既に、殺しています」
とても優しいケット・シー。
慈しみを持って、相手が死を願えば与えるオブビリオン『気高きヨハンナ』。
「道も殆ど慣らされていない地故、ヨハンナが村に到着するのはかなり遅くであると予想されます」
予言した情報を元に地図を描きながらアンバーは説明する。
もし彼女が村に到着すれば、苦痛から救いの手を差し伸べにやってきたお方として村人達は死を選ぶだろう、と言い、アンバーはある一点を示す。
「ここは村人達が薪や僅かな食糧……口にできる草程度を収穫する場所、荒野です。そこから村に向かい、彼女を討伐していただければ、と思います」
険しい山々の間を通ることにより、風はより一層鋭く刃物の如く。
「……村の人々も、先の見えない状況に疲れ切っているかもしれません」
死を与えるケット・シーが慈愛の笑みを持って村人に接触する前に。
「……どうか、救いを」
転送ゲートを作り終えたアンバーはもう一度深く頭を下げた。
●荒野
寒い、寒い、と考えていても仕方がない。風の中に混じって飛んでくる僅かな木で火を焚こう。草を煮て、せめて赤子は救おう。
「──が、山の向こう側で……」
「ああ、安らかな──」
村人の、動ける男達がひそひそと話をする。
誰かが死んだらしい。ただ、それだけのことだ。
硅孔雀
ここまで目を通して頂きましてありがとうございます。硅孔雀です。
涼しいシナリオです。
本当です。
キーワード:救い、天使、慈愛、襤褸、絶望、救いなき世界に生きる人。すがってしまう手、死。
●構成
第1章:冒険『凍える夜』。
凍える夜の元、荒野を通り村まで向かってください。道中村人に会えるかもしれません。冒頭で断章追加があります。
第2章:冒険『心の病から村人を救え』
村に到着。圧制者、オブビリオンの手先ではないと判断すれば村人は猟兵の話を聞きます。既に村人は身体共に疲弊しきっており、3章のボスの甘言に耳を傾けさせないよう行動する必要があります。冒頭で断章追加があります。
第3章:ボス戦『気高きヨハンナ』。
村人が死を望めば安らげる場所への案内人として猟兵の前に立ちふさがるでしょう。
そうでなくとも、『死なせてあげないといけない』と判断し戦います。
●特記事項。
今までリリースしたダークセイヴァーのシナリオと違いグロテスクな展開、描写は控えめです。見渡す総てが絶望の中、それでも生きようとしている人々に希望はあるのか。
荒廃した世界に猟兵の皆様は何を残せるのか。
ハートフルポエミー、信条と心情が交差するようなシナリオだと思います。
ご参加お待ちしております。
第1章 冒険
『凍える夜』
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POW : 強行突破…気合と共に歩む
SPD : 一刻も早く抜ける為に脇目も振らずに走り抜ける
WIZ : 魔法で暖や光などを取りながら進む
👑11
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僅かに生えた草と木が風に揺れ今にも吹き飛びそうに身をしならせる。
根までほじくり返したような跡。岩肌の見えた大地。撃ち捨てられた真っ赤な錆の浮いた鎌。
黒に赤の混じった夜空に星空は広がれど、その光に照らされた荒涼した『収穫』の場はまるで捨てられた地の様だった。
そこが、村人の生きる糧を手に入れることができる最後の希望の地。
「ああ……これで……」
荒野に声が小さく響く。ボロボロのかごを抱え、ついに地に倒れた働き手。
このまま道を進めば同じような人々と猟兵は会うだろう。
襤褸を纏い、土色の肌に吹けば飛んでしまいそうなその体。
「かみさま……来てくれるのか……」
猟兵の目の前に広がる光景。ごうごうと風が吹く中命の灯が消える。
村へと続く道の中、選ぶ道はどこだろう。
ごうごう、ごうごう・
※道中半ば意識を失いかけた働き手達(男性)が倒れています。
判定に修正はありませんが、彼らと接触し回復や村まで連れて行く等すれば村での活動の際、有利になるかもしれません。
ヴェル・ラルフ
死を願うほど生きるのが困難な
生きる理由を見失ってしまうような
──僕の故郷は、とても、くらい。
SPD
僕に、人の心や村を救うようなことはできない。
でも、奴らに与えられる死が、人を救うことだってできないだろう?
…僕が幸せだと思えるのは…大切な人と、笑いあえるときだから
行き倒れの村人には水と携帯食料を
旅人であると伝え、彼をおぶって村まで案内を頼もう
ヨハンナが与える救いなんて、ただのまやかしだとよく分かる
本当に救ってくれるのなら、何故家畜を増やしてくれない?なぜ温かい家を用意してくれない?
…なぜ、大切な人を奪いに来る吸血鬼を駆逐してくれない?
通りすぎていく、忘れられない想いを握りしめて
★アドリブ歓迎
荒野に差す光はなく、そして、荒野を抜けても光はなく。
その世界に生きる人々にもたらされるのは一方的で理不尽な暴力、搾取、惨殺。
死を願うほど、生きるのが困難な道を歩む中、生きる理由を見失ってしまうように。
──僕の故郷は、とても、くらい。
ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)は風がごうごうと鳴りやまない道を自分の足で歩み進める。
夕焼け色の揺れる瞳に映るのは、くらい色ただ一つ。
「……ぁ、ぁぁ……」
転送ゲートを通り、村までの道のりに男が一人倒れている。
黒の空の上に救いを求めるかのように伸ばされた手をヴェルはそっと握った。
驚きと、圧制者が追っ手を差し向けたのかという恐怖が混じった視線を向ける男にヴェルはほほ笑む。
「この辺りを旅する者です。今日の寝床を探していまして……もしよければ案内を」
ヴェルの差し出された水と携帯した食料に男は恐る恐る口をつけ、少し残した。
「あ、あんたは……かみさま、か?」
「いえ……旅する者です」
立つ体力もないだろう男はヴェルに羨望のまなざしを向ける。
(……僕に、人の心や村を救うようなことは、できない)
それが一時の施しであれ、ヴェルは男をおぶり案内を頼んだ。
何故食料を残したかと聞くと、男は家族に分けてあげたいと小さな声で答えた。
「……ここまで酷い場所はなかったでしょう。でも、どうしても俺たちは逃げたかった」
くらい世界の端から端まで、悲劇から逃げるため。
「ありがとう、ありがとう……ここで死んじまったら家族も……」
「あまり喋りますと疲れてしまいますよ。滞在する許可を頂けただけで充分です……大丈夫です、少し休んでいてください」
男はヴェルの言葉を聞き、旅の方ありがとうと呟きそのまま喋らない。
服越しに伝わる熱と、温もりは消えることがない。
男は、まだ生きている。
「生きる者に……奴らが与える死が、人を救う事ができるのか?」
くらい世界のくらい道の中。
ヴェルの唇から洩れるのは白い息と、この世界に君臨する圧制者に向けられる言葉。
生きる者に安らかな死を与え、それが本当に幸せなのか?──そんなのは、ただのまやかしだ。
『救い』と呼ばれる奇跡を起こせるなら、何故家畜を増やしてくれない?なぜ温かい家を用意してくれない?
「……なぜ、大切な人を奪いに来る吸血鬼を駆逐してくれない?」
言葉は風に消え、通りすぎていく。
──僕が幸せだと思えるのは……大切な人と、笑いあえるときだから。
オブビリオンが与える救いも幸福もウェルは否定する。
くらい世界に生まれた歪なる舞台に、少しでも灯を。
忘れられない思いを握りしめるように、男を担ぐ手に力が入る。
とくんとくん、くらい世界のなか小さな温もりが道を進んでいた。
成功
🔵🔵🔴
ヴォルフラム・ヴンダー
――珍しくもない光景だ
救いきれない絶望に、この地は満ちている
それでも、俺は俺の信念のために動く
風避け可能な岩や枯木を探す
なければある物を斬って作り
そこへ発見した者たちを集める
俺はおまえたちの『神』を斬りに来た
『己』のまま在りたくば足掻け
魂が消える寸前まで、その尊厳を手放すな
身を寄せあえば微かでも暖をとることができる
意識を失わぬよう、互いに声を掛けあうことだ
抗う者は「殺気」で黙らせ対応を急ぐ
男たちを運び終えるまで
場を黒竜(槍)に見晴らせ
万が一異変が生じた場合は、俺の下へ報せにくるよう命じておく
痩身ばかりなら軽い
息のある者を優先し3~4人ずつ抱え村まで
時間があれば、可能な限り亡骸も回収し運ぶ
漆黒の世界に吹き荒れる風、その流れに逆らうように男はそれを振り下ろした。
ヴォルフラム・ヴンダー(ダンピールの黒騎士・f01774)が得物を手にし、ユーベルコード:剣刃一閃を発動させれば根を地に絡ませた木も紙の様に切断される。
周りに散らばる木の破片、そして集めた枯れ木をヴォルフラムは大き目の石の周りに敷き詰める。
「――珍しくもない、光景だ」
避難所を作り終えたヴォルフラムは周囲を見渡す。
木の折れる音に反応した男達と、既に白い骨を見せ石ころと同じように晒されるモノ達。
救いきれない絶望に、この地は満ちている。
しかしいかに世界が黒く冷たい夜、闇に閉ざされようと。
(それでも、俺は俺の信念のために動く)
── 世界を夜と闇から解放するために、黒き騎士は向けられた視線に応える。
「俺はおまえたちの『神』を斬りに来た」
ヴォルフラムが言い放った言葉を聞いた男達は、互いに顔を見合わせる。
『神』を殺すということ、それは即ち。
「こ、殺されちまうじゃねえか!」
男達の誰かが残った気力で発したのは恐怖からくる絶叫。騒めく男達を前にヴォルフラムの口が開かれる。
「『己』のまま在りたくば足掻け。……魂が消える寸前まで、その尊厳を手放すな」
その言葉は心すら冷えつかせる荒野の中、風と共に男達の心に吹く。
「で、でも……ひっ!」
灰色の双眸が纏うのは殺気すら帯びたもの。
ヴォルフラムは避難所へと視線を移す。
「身を寄せあえば微かでも暖をとることができる」
「……?」
「意識を失わぬよう、互いに声を掛けあうことだ」
「え?あ、あの……」
「不安か。ならば黒竜に見張らせる。万が一異変があればすぐに俺を呼べ」
ヴォルフラムの背負っていたドラゴンランスが黒竜へと姿を変える。見張れとヴォルフラムが一声かけると、男達の元へと寄った。
風が吹き荒れる中闇夜に消えていくヴォルフラムに、移動をし始めた男が何をするんだと問う。
「まだ息がある者がいないか確かめてくる」
身を潜めるように生きる自分たちの前に現れ、神殺しを宣言し、そして避難所を用意した灰色の瞳の男。
男たちは顔を見合わせ、黒竜が見張る中互いに身を寄せ合い始めた。
数刻後、何人かの男を抱えたヴォルフラムが顔を出した。
体力を回復させた男達が下ろされた者に水や食料を与え始める。
「本当に、殺すんですかい」
体力の戻った男の一人がヴォルフラムを見つめる。
その瞳の奥はお互い温め合い、その中から産まれた火が灯っていた。
「……そろそろ行くか。その身であればもう少し抱えられる」
村までの道を教えながら、抱えられた男がヴォルフラムのマントに何かくくられているのに気が付く。
何か入っているかと問われヴォルフラムは答えた。
「亡骸だ。村に墓があれば埋葬を頼む」
神の犠牲者と、犠牲になることから反逆を選んだ者達と共に、ヴォルフラムは一歩闇夜へと足を向けた。
成功
🔵🔵🔴
向坂・要
救い、ねぇ
まぁある意味で死も一つの救いの形っちゃ形ですけどねぇ
同情はなくそういう事もある、見てきた光景の一つ
救いのない世界に過酷な毎日に未来を諦める、なんてよくある話
さりとて放置するのも好きじゃねぇ、っと
巨大な狼の姿に転じついでに道中見つけた人を拾うように大きめのソリ付き籠を用意して
中にはクッションや毛布、癒しのルーンを仕込み
ついでに自身にもフェオとラドのルーンを纏い大地の精霊達の加護と力を分け与え
五感や第六感、精霊や動物たちの助けを借りて村人を適度に探しつつ村に向かいますぜ
動けそうになけりゃ念動力も合わせつつ咥えてカゴに放り込むなり背に乗せるなり
落し物は持ち主に、ってね
アドリブ
絡み歓迎
セシリー・アリッサム
◎
「あの、大丈夫……ですか?」
シリウスの棺に青白い炎を灯して進む道中、倒れる人々を見つける
「少しでも、良くなれば……」
左手を翳し、せめて痛みが和らぐ様にと【生まれながらの光】を放つ
聞こえた声は、祈りだろうか
「神様は、きっといます。でも」
実際神を信じている。だが少なくとも
「生命を救えるのは、あなた達です」
少なくとも、わたしは今迄見た事が無い
魔法で火を灯し、くじけそうな皆を励まし、道中を進む
「あなた達は生きる為にここへ来たのでしょう。だから」
ここで薪や食料を調達していたとの事だ
ならば最初から、誰も死ぬつもりなんて無い
「その意志は、わたしが守ります」
その生命を護る為に、わたしは力を手に入れたのだから
男が意識を失う寸前無意識の内に突き出した手が触れたのは冷たい石でも枯れ木でもなく、ふわりとしたなにかだった。
「……え?」
『──ゥ、ウウ』
唸り声と、白い息。白銀の毛並みの大狼は男を襲うわけでもなく、まるで主人を見つけた犬の様に男に寄り添う。
「な、なんだ……ん?」
次に男が見つけたのは、闇夜に突如現れた揺れる光。
「は、はは……かみさまってのは幻覚でも見せるのか。人魂に化狼……」
近づいてくる青白い炎は、段々と男の周囲を照らし出す。男は静かにそれ――死を受け入れようとしていた。
「あの、大丈夫……ですか?」
その手に持った呪術用の杖、『シリウスの棺』にセシリー・アリッサム(焼き焦がすもの・f19071)の灯した青白い炎が周囲を照らし、闇夜に響く少女の声に男は目を見開く。
「え……?」
「あの、大丈夫でしょうか……」
杖を立てかけ、セシリーは地に片膝をついた男に歩み寄る。
『――』
大狼、大地と共にありしもの(シュンカ・マニトゥ・ウゼン)の力によって姿を変えた向坂・要(黄昏通り雨・f08973)は、唸り声と白い息を吐き出し二人を見つめていた。
「少しでも、良くなれば……」
「……お、おお……!」
セシリーが翳した左手、そこからあふれる生まれながらの光が男を包み、男は再度目を見開く。軋み、蝕む痛みが柔らかな光と共に溶けていく。
礼を言おうと立ち上がった男は大狼がソリを付けた籠を身に括り付けていた事に気が付いた。
「あ、あんた達は……」
「良かった、立ち上がれるのであればどうぞ中に」
籠の中には、今まで夢でしか見た事のないようなふんわりとしたクッションや暖かそうな毛布が詰まれ。
セシリーが籠に男がうまく入れるよう支えながら、炎で明かりを灯し――籠の中からすぅすぅと寝息が聞こえ始めた。
『大地あるところに精霊ありとねぇ』
向坂――大狼から聞こえる声。フェオとラドのルーンを纏い、大狼は周囲を見渡す。風の音が鳴りやまない中、精霊が佇む場所。
彼らが教え、また自分に与えた力で向坂は辺りを見回す。
『まだまだ何人か、って所ですかねぇ。籠はいらなきゃ背にでも載せますぜ』
セシリーは向坂を見上げ頷いた。
「闇夜を灯す火はわたしが照らします……行きましょう」
冷気に覆われた大地と闇夜の中、大狼と青白い炎を手にした少女は、猟兵達は歩み続ける。
風の中に聞こえた声は、絶望の中『神』に対する祈りなのだろうか。
セシリーは向坂が見つけた男達を癒しては籠へと導く。自分達は神様かと聞かれ、セシリーは少し考える。
「神様は、きっといます。でも」
セシリーは闇夜へと、地平線へと目を一瞬向け、男を籠にまた入れる。
「生命を救えるのは、あなた達です」
安堵した顔で眠る男達の姿を見つめ、セシリーは呟く。
神様はいる、皆がそう思うようにわたしも信じている。
だが少なくとも。
「――少なくとも、わたしは今迄見た事がない」
声が風混じり、消える。
向坂は寒気を感じると同時に、冷気で頭が冴えている――そんな気分になっているのだと思うことにした。
(救い、ねぇ……まぁある意味で死も一つの救いの形っちゃ形ですけどねぇ)
凍える夜の下、長年生きてきた『存在』として彼らの過ごしている世界を紫の瞳で眺める。
見てきた光景の中、同じ欠片もあった。
同情はなく、そういう事もある――救いのない世界に過酷な毎日に未来を諦める、なんてよくある話。
そう、よくある話の中、向坂は自らの姿を大きな狼に変える。
「さりとて放置するのも好きじゃねぇ、っと」
白銀の毛並みが、四肢が地面を蹴り進む。狼は静かに闇夜を歩き最初の男を見つけ出した。
働き手の誰かをまた、セシリーと向坂は見つけ出す。籠の中に僅かにはいった食料や薪、それらを丁寧に籠の中に入れセシリーは男の支えとなる。
「あなた達は生きる為にここへ来たのでしょう。だから」
最初から、死ぬつもりで村で生きているわけではない。セシリーの瞳が見てきた、助け出してきた男達は。
「……ああ、なんとしてでも、生きたい」
最初から、この暗闇に、寒さに押しつぶされるわけにはいかないと男は精一杯笑みを浮かべた。
「その意志は、わたしが守ります」
ありがとう、と男はセシリーに会釈し、見知った顔が寝ている籠を覗き村への道を教え中に入る。
(……生命を護る為に、わたしは力を手に入れたのだから)
セシリーは再び、道中を照らす火を揺らめかせる。
『大体は回収できたみたいですぜぃ――っと』
近くに転がっていた彼らの道具を念動力で拾い上げ、籠に向坂は入れた。
落し物は落とし主にってね、と軽く言いながら向坂は照らされた闇夜を歩み続ける。
(──ああ寒い、でも寒い中にヒトがいれば、それに寄り添いたくなるのが)
ヤドリガミ、己が生なのかと向坂は考えてみる。
闇夜の中で、働き手達が見た光景。
白銀の毛並みの大狼と青白い炎を灯らせた杖を持つ少女。与えられる癒し。
彼らと共に、歩みは続く。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
霧島・絶奈
◆心情
「生きる事に意味があるのなら、苦しみにも意味がある筈だ」
有名な言葉ですね
…尤も、その境地に至れる者は極僅かでしょうけれど
◆行動
【優しさ】を以て、働き手達を介抱しましょう
倒れている近くに【範囲攻撃】の力を込めて『DIABOLOS LANCER=Replica』
まずは銀の雨の領域による回復効果で少しなりとも体力を回復させましょう
さて、喋れますか?
取り合えず水をどうぞ…
飲みましたか?
では次にこれを…チョコレートです
…急に多量の物を食べると命を落としますからね
…落ち着いたら貴方の村に案内して頂けますか?
歩けないのであれば肩を貸す位は致しましょう
…ああ、自己紹介が遅れましたね
私は通りすがりの神です
『生きる事に意味があるのなら、苦しみにも意味がある筈だ』
白い息が空中に消えていく中、有名だった句を思い出す。それ程までに目の前に広がる世界は──あまりにも生きる人々に苦しみを与えるのみ。
「……尤も、その境地に至れる者は極僅かでしょうけれど」
その言葉が風の中に消え、彼女は歩き出した。
銀の瞳が辺りを見回し、見つけたのは灰色の土の上に倒れた働き手。目を閉じ、僅かに息をしていることを確認し、口を開いた。
「……今此処に顕れ出でよ、生命の根源にして我が原点の至宝。かつて何処かの世界で在り得た可能性。『銀の雨の物語』が紡ぐ生命賛歌の力よ」
風の吹く方向が彼女を中心としたものに変わる。
猟兵たる力、DIABOLOS LANCER=Replica(ディアボロスランサーレプリカ)で作り出されるは槍の様に見える巨大な輝ける物体。
もし働き手が”それ”を目にしていれば、その光に恐怖すら抱いたであろう。
槍は地面に突き立てられ、光があふれだす。一瞬のようにあたりを照らし出した光はドーム状に、広がり、消え。
「……あ、め?」
生命賛歌、地に降り注ぎ、生命力を与えるのは銀の雨。暗闇の中、きらきらと光る幻想的な光景の中働き手は目を覚ました。
銀の髪の彼女がほっとした様子を見せる。
「さて、喋れますか?」
「ああなんとか……しかし一体、なんで急に雨なんざ」
「雨では喉を潤せないでしょう。取り合えず水をどうぞ……」
外套の中から彼女が袋に包まれた水を取り出し、震える男の手を支えながらゆっくりとそれを飲み干すのを手伝う。
ごくりごくりと喉を鳴らし、時にせき込みながら水を飲んだか確認した彼女が差し出したのは茶色の小さな塊。
「え、これは」
「これは……チョコレート、お菓子です。急に多量の物を口にするとかえって危ないです」
恐る恐る男はチョコレートを口に含み、その甘さに言葉を発することなく身を彼女に預ける。
温かい彼女の手は、優しさを持って働き手を介抱し。
銀の雨の降る中、倒れている別の働き手達の元へと彼女は同じようにその命をつなげるため働き続けた。
なんとか立てる程に回復した働き手の一人の傍に彼女は近づく。おぼつかない男の足取りを支えるように肩を貸す。
「……落ち着いたようですね。貴方の村に案内して頂けますか?」
男は驚いた顔で、彼女の銀の瞳を見つめる。
荒野、闇夜、吹き荒れる風の中、彼女の見つめている先は――自分達の村より、もっと向こう。
「助けてもらった礼もしたいが……一体あんたは、何者なんだ?」
銀の雨が降る中で、彼女はきょとんとした顔でああと呟く。
そういえば、すっかり忘れていた。
「……ああ、自己紹介が遅れましたね。私は通りすがりの神です」
「……え?」
「さあ、いきましょう」
霧島・絶奈(暗き獣・f20096)はしっとりと濡れた銀の髪を払い、男に聞いた道へと歩みだした。
成功
🔵🔵🔴
ホロゥ・サファイア
◎
さむいところだね。おれの故郷もこうだったのかも。
やあお兄さん初めまして、神様の代役だよ。なんてね、ただの怪しい者さ。
人は食べなきゃ生きられない、けれど全員満たせる食料をあげることでは救えないから。目の前の彼に、心を解すクッキーひとつ。多少の重みは『怪力』でどうにか、抱えあげて村への案内を頼みたいな。これでも結構力持ちだよ。
いいのいいの、おれのためでもあるからね。
ねえお兄さん、死んじゃあダメさ。ぽっかり青い瞳は彼方、懐かしい荒野の空へ。
生きてれば案外、いろんなことがあるんだよ。きみを待つ家族や村の仲間もいるでしょう?
彼が明日を想えたなら、きっとその思いはおれにとっても"おいしい"だろうね。
数宮・多喜
◎
まずはカブにアタッチメントを取り付けて、
後ろに【熱線銃作成】でとりあえず作った
ボロ台車を引きながら走るよ。
台車に何を載せるかって?
言わせんなよ、途中で行き会った行き倒れのオッサン共さ。
おっさんよぉ、アンタらも大変だな。
こんな土地に、運命に縛られて。
でも、だからって死に解放を求めるなよ?
ここの土地と、あまつさえ世界そのものは性悪さ。
死んだが最後、もっとひどく縛り付けられらぁ。
逃げて足掻いて、そうしてできた村なんだろ?
なら、もう少し足掻いても良いんじゃねぇの?
そんな感じで、『コミュ力』を駆使して気さくに話しかけながら
それとなく『鼓舞』するように元気付けるよ。
村まで、もってくれるのを祈りながらね。
「さむいところだね。おれの故郷もこうだったのかも」
ホロゥ・サファイア(☓と踊る・f21706)は風の吹く中、目の前でユーベルコードを発動させた数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)に話しかけたのか、自分の近くの”誰か”に話しかけたのか。
いずれにしても発した声は風のごうごうという唸り声の中に消えていく。
「ああ寒い……でも、そこで生きている人間がいる、なら!」
熱線銃作成(メーザークラフト)で作った台車──人を乗せるのには十分なそれを愛機のカブのアタッチメントと繋ぎ合わせる。
「凄いね、おれも載れるかな?」
「1人だけじゃないさ。途中で行き会った行き倒れのオッサン共皆助けるよ」
おおと頷き、ホロゥがちゃっかりと台車に乗り込む。
大丈夫だよと手を動かし合図したのを数宮は確認し、荒野を2人の猟兵と1機の機械が走り抜ける。
風に逆らいながら。
行き倒れている働き手達が目にしたのは鉄の馬──もしかしたら天国への迎えに来た神の使いかと酷く怯えていた。
「大丈夫だよ」
天国行きのそれからホロゥが飛び降りた。
「やあお兄さん初めまして、神様の代役だよ。なんてね、ただの怪しい者さ」
「……は?」
「おれ達は人間だよ……よし、これをどうぞ」
ホロゥが目の前に差し出したのはクッキーが一つ。
本物かどうか恐る恐る確かめながらも、口にする様子を青い瞳が見つめる。
「……はは、本物だ。現実か」
「そうだよ。現実。ねえお兄さん、死んじゃあダメさ」
風は未だ鳴りやまず、凍えた空気は灰を満たす。
風の向く方、来る方、懐かしい荒野の空へとぽっかり青い瞳は彼方を見つめ。
「生きてれば案外、いろんなことがあるんだよ」
「……そうだな」
「きみを待つ家族や村の仲間もいるでしょう?」
「子供が1人、俺と一緒に逃げてくれた女房も……そうだ、生きていないとな」
カブを一度止め、数宮が声をかけたのは大分年を取っている働き手だった。
目の前に現れた見知らぬ人間、しかも女性の姿に驚く老人に数宮は努めて明るい笑顔で話しかける。
「おっさんよぉ、アンタらも大変だな。こんな土地に、運命に縛られて」
運命という言葉に老人は深くため息をつき、そんな老人の傍に数宮は座る。
「でも、だからって死に解放を求めるなよ?」
「儂はもう……駄目かもしれないがな。しかし子と孫は、せめて……」
せめて助けたい、と言いたかったかもしれない。しかし、目の前に広がる荒野と伸し掛かる冷気はそれを許さず。
「ここの土地と、あまつさえ世界そのものは性悪さ……でも、死んだが最後、もっとひどく縛り付けられらぁ」
老人は静かに頷く。この地に骨を埋めた所で、野ざらしにされる。
「逃げて足掻いて、そうしてできた村なんだろ?」
「ああ……何年も前に、着の身着のままで」
「いい度胸だ。なら、もう少し足掻いてもいいんじゃねえの?」
数宮は老人に寄り添い、立ち上がるのを手伝う。老人は、数宮に小さな声で礼を言い立ち上がった。
「おーい!今度はそっちのおじいさんでいいのかな?」
ホロゥが駆けつける。先ほどまで相手をしていた働き手はよく見ると台車に乗っている。
「村まで、連れて行ってくれるのか」
「まあね。それがあたし達の目的さ」
「そうだよ。よし、おじいさんもちょっと、我慢してね、っと!」
ひょいとホロゥは老人を担ぎ上げる。重くないか?と老人に聞かれこれでも結構力持ちだよとホロゥはわらい答える。
「いいのいいの、おれのためでもあるからね」
一人、また一人と台車に働き手が乗せられる。
荒野を走る鉄の馬、向かう先は村へと。
大分人数オーバーみたいだと数宮は笑い、台車に乗せた働き手を怯えさせないようゆっくりとカブを進める。
後に続くのは空を見上げるホロゥ。
荒野に倒れ、そこに救いの手をさし伸ばし産まれたのは命と絆、そして感情。
「……彼が明日を想えたなら、きっとその思いはおれにとっても"おいしい"だろうね」
おいしく甘く、身の内に燃える炎はめらめら。心嚥(アパタイト)は感情を食べ、心を昂揚させる。
1人の猟兵が1機の鉄の馬で村人を運び、1人の猟兵が後に続き歩み始めた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リンネ・ロート
(人格・口調リンネ)
さ……寒い……まるで魂まで凍りつくよう……
今まで見たどの地方より厳しい土地みたい
私に出来ることをして差し上げたい
倒れた方達を見かけたら一緒に村へ足を運ぶよう試みます
途中、弱めのUCで火を起こして暖を取りつつ
動けないようでしたら、くまちゃんに運ばせます
私自身は靴のおかげで疲れずに歩けるから大丈夫
……私は自分が恥ずかしい
こうして必死に生きようと、救いを求めている方がいるのに、私は泡沫のように消えてしまいたいと思っていたことがある
今でこそ愛しい方と過ごせたら幸せだと感じられるけど、それすらここではきっと許されないんだ
自分がどれほど恵まれているか、この方を見て思い知らされる
風は冷たく、靴を履いていたとしても地から蝕む冷たさは酷く。寒い。ただひたすらに寒い。
「……まるで、魂まで凍りつくよう……」
リンネ・ロート(RegenbogenfarbeFlügel・f00364)が漏らした言葉は白い息と共にあっという間にかき消される。
(……今まで見たどの地方より、厳しい土地みたい)
リンネの金の瞳がとらえるのは荒野──ここが、この村に生きる人の糧を得るための場所。
一歩、闇夜と荒野に足を向け、リンネは歩みだす。
──私に出来ることをして差し上げたいから。
凍える夜、荒野の中には車輪やソリの跡、何かを刺した跡、風を防ぐように作られたらしき個所もある。
(他の猟兵の皆さんも来ていらっしゃるのですね……っ!)
岩と岩の隙間に挟まる、否、倒れて動けなくなっただろう働き手を見つけたリンネは慌てて駆け寄る。
「あ、あの!大丈夫ですか!?」
思わず出た大きな声に、虚ろな双眸を瞬かせ働き手は呻き声をあげる。まだ息をしている。
「えっと、とりあえず暖める物を……」
猟兵達が残していった、あるいはリンネ自身が集めた草木を前に炎を纏った矢を放つ。凍える夜の荒野に灯る火。
「お、お嬢さん……」
リンネは働き手の方を振り返る。口元を綻ばせた働き手が口を開く。
「そっちだと風で火が消えてしまうよ。そこの枝で火を分けよう……ありがとう」
焚火が揺らめく中働き手はリンネから話を聞き、リンネはゆっくりと説明した。
村を助けたい、助けるために動いている人がいる。
「神様じゃなくて人間が、か……」
沈黙が続き働き手は視線を炎に向ける。大分温まったと笑うが、足が腫れていた。
「捻ったか挫いてしまったのですね……では」
くまちゃん、と声をかけるとリンネのからくり人形が姿を現しあっというまに働き手を担ぎ上げる。
突然の出来事にも関わらず働き手はその意図を察したのかリンネに村の方向を告げ身を委ねた。
荒野の中を歩く猟兵。その歩みは止まらずとも心はきしきしと軋む。
(……私は自分が恥ずかしい)
凍える夜の世界。
そこで必死に生き、それでも救いを求める人がいるのに。
──私は泡沫のように消えてしまいたいと思っていたことがある。
今は愛しい方と過ごすときの幸せで温もりを求めることの出来る身。
されどこの地ではその温もりすら許されず、凍えの中──絶望の中生きているのだろう。
(私はどれだけ恵まれているのかこの方を見て、思い知らされる)
猟兵が流した涙は荒野に染み、あっという間に地に吸い込まれた。
ごうごう ごうごう。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『心の病から村人を救え!』
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POW : 近くの森で狩りをしたり、頼れる部分を見せつけたりして情熱的に勇気づける
SPD : 領主を除く現在の困りごとを聞き出し、スマートに解決し負担を和らげてあげる
WIZ : 親身になって相談に乗ったり、心の消耗を和らげる薬を作るなどで心を軽くしてあげる
👑11
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村は煉瓦が積まれ、家はそれなりの形を保っていた。
村人達は帰ってこない働き手達の帰りを待ちわび、運んできた猟兵達の様子を窺った後、働き手を抱きしめた。
「この村の、村長……いいえ、長と呼べるものではありませんが、お礼を」
嗄れ声で猟兵達に声をかけたのは老婆。
老婆は自分の家の椅子に腰を掛け村の成り立ちを語り始める。
十数年前に亡くなった夫、村長と彼に続いた仲間達が開拓し出来た村。
されどその開拓には多くの犠牲を払い、手に職を持った人々が流行り病で死んでしまった。
「生憎ここには奴隷出身者も多く……学も無く、壊れた物の修理ですら精一杯なんです」
朽ちていく村をかつて技術を持っていた者達がやっていたように見よう見まねで保とうとしていたが限界が近づき、死を救いだと思う人々が生まれていった。
「本当はこの村の裏にも畑があったのですが、耕すための道具が壊れ、わざわざ風の強い麓まで働いてもらって……」
老婆は息を吐き、猟兵達を見回す。
「ここまでしていただいて、本当に感謝しております。何もない村ですが……一時の寒さしのぎにはなるでしょう」
老婆の家に集まった猟兵達、その話声を何とか耳に入れようと女性達はそわついていた。
村のあちこちには埃をかぶった家──鍛冶場や、工房が残っていた。
「もしかしたら、なんてねぇ……」
「流石にそれは……」
ため息をつき女達はひび割れた窯に水を汲む。
漏れそうになった部分を子供が支えていた。
「……かみさまなら、なんとかしてくれる?」
※働き手達が戻ってきてくれたので、助けてくれた猟兵の皆さんは「お客様」として受け入れられています。
※選択肢のSPDの困りごとは『村のインフラ整備』を中心とした『村の存続対策』になります。
村に技術を持った人が殆どいないため、壊れた物の修理はできず、食べ物を入手するための知識がない状態です。
古いものですが鍛冶場や工房等施設はあるので、使い方を教える等すれば手助けになるかもしれません。
ホロゥ・サファイア
◎
食べ物を得る手段、物の修理の仕方…
おれがわかるものならと思ったんだけど。影(きみ)の手を借りないやり方を知らないや。
村の力仕事や他の猟兵を【怪力】で手伝うことはできるかな。
力仕事に関しては、ちょっとした効率化とかあんまり腕力のいらないやり方とかの話はできるかも。そうして体力が少しでも他に回せれば、心に余裕もできるかも?
おれもさ、おなかが空いて死にそうだったことは何度もあるんだよ。
でもなんとか生きようとして生きて、今は"ともだち"がいるから大丈夫になった。
わかんないものだよ、人生。
そんな話をしたり、へたくそに明るい鼻歌を歌いながら。
霧島・絶奈
◆心情
死にたいのではなく苦しみから逃げたいのでしょう
為れば其の苦しみを和らげる、または乗り越える心を持つ事が肝要ですね
◆行動
さて…
まずは食料問題を解決しないといけませんね
栄養が足りていなければ労働力も判断力も落ちます
ですので、講義の前にまずはチョコレートをどうぞ
私も専門的な知識を修めているわけではないのですが…
取り合えず、じゃが芋、トマト、玉蜀黍、南瓜…
これ等は痩せた土地にも適合し、手間もそんなに掛からない野菜です
其々の野菜の特徴と栽培時の注意点、あとは保存方法や調理方法をお教えします
実際にやって見せますが、憶えきれないならば紙に書いておきましょう
字が読めない場合は絵を描けば伝わるでしょうか?
町を覆うのは闇夜と冷たい風だけではなく緩やかに滅びへと向かっていく停滞した空気。
自分達ではどうしようもなく、仕方なく破滅への道を歩む中、浮かんでしまった感情。
この世で叶わなかった幸福が叶い。苦しみからは解放され、いつまでも安らかなる眠りを。
それが――死。
(……死にたい、のではなく苦しみから逃げたいのでしょう)
霧島・絶奈(暗き獣・f20096)は村の荒廃した様子を観察しながら考える。
「為れば、空気を払うには」
――村が、そこに生きる人が持つ苦しみを和らげる、または乗り越える心を持つ。
そのために、自分は何をすべきか闇夜に銀の瞳を向け霧島は老婆の話を思い出す。
「さて……まずは食料問題を解決しないといけませんね」
「食べ物を得る手段、物の修理の仕方……うーん。やり方を……」
ホロゥ・サファイア(☓と踊る・f21706)はうんうんと、村のために何が出来るか考えていた。
(おれがわかるものなら……)
きみならわかる?とホロゥが問いかけるのは影とよばれるそれ。黒い揺らめきをしばらく眺めたホロゥはふうと息を吐く。
――きみの手を借りないやり方を。おれは知らない。
「……あれ?」
気が付くと何人かの村人が霧島の周りに集まっている。
「この村にあった畑を改善してみましょう」
しかし、栄養が足りていなければ労働力も判断力も落ちますと言い霧島が取り出すのはチョコレート。
畑、力仕事、ホロゥの青い瞳は開かれる。
(力仕事があるならおれの怪力なら役に立てるし、手伝えるかも)
ホロゥの腕が鳴る。力を自在に使えるということは、それだけ己の肉体の使い方を知っていることを意味する。
「畑に行くのかな?だったら荒れた畑を直すのと、うまく耕せる方法を見つけられるかもしれない」
霧島の配ったチョコレートを食べながら、村人たちは現れたホロゥの方を振り返る。彼らの目には僅かに希望の光が灯っていた。
「これは……如何とも」
畑だった、という場所には大小の石が転がり慣らされていただろう地には草が覆われている。
山間に村を作った故に山上からの石が風で転がり落ち、それを防ぐために積んでいた石壁が壊れて久しいという。
「じゃあまずは畑を綺麗にするために、その石壁をおれが積みなおすよ」
えいっとホロゥが子供の身の丈ほどの石を抜き、担ぎ上げる。村人の一人が石壁のある場所まで案内を始めたのを横目に霧島は納屋を見つけた。
(私も専門的な知識を修めているわけではないのですが……)
彼女の脳内に思い浮かぶのは痩せた土地でも十分に育つ作物の数々。じゃが芋、トマト、玉蜀黍、南瓜……
「果たして、あればいいのだけれども……!」
納屋に置かれたのはまだ使えそうな農耕用の道具に、麻袋。
冷たい風が吹き込む土地が幸いしてか、麻袋の中には保存状態の良さそうな種芋や種類が詰められていた。
「あ、あの……」
「昔ここに畑があった時には何が作られていましたか?」
麻袋を見やりながら霧島が尋ねると、村人が口々に作物の名を言う。ジャガイモと南瓜、そして。
「玉蜀黍も……それであれば、栽培時期と収穫、それに調理の仕方を皆さんに知っていただければ食料問題は解決しそうですね」
霧島達が種や農耕に必要な道具を運ぶ中石壁の再建のためホロゥは往復して石を運んでいた。
手伝えると言い出した村人に笑顔を浮かべ、持てそうな石を的確に指示し畑は元に戻っていく。
「そう、重心を落としたり道具……そこら辺に棒と石で簡単なてこを作れば簡単に掘り出せるし運べるね」
村人達の体力にあわせ、腕力をあまり使わない方法を教えながらホロゥは闇夜を見上げる。
「おれもさ、おなかが空いて死にそうだったことは何度もあるんだよ……でもなんとか生きようとして生きて、今は"ともだち"がいるから大丈夫になった」
くすりと笑い、最後の石積みを終えホロゥは戻る。
畑には2人の猟兵、村人達、そして農耕道具と種が揃っている。総出で草を払い、各作物について霧島が指示を出しながら、ホロゥが手本を見せるように畑に鍬を入れる。
「じゃがいもは切った面を埋めて……ああ、玉蜀黍は地中に根を深く張ります。もっと深めに土を耕しましょう。南瓜は特に生命力が強いです、多めに植えるのがいいでしょう」
「よーし!皆、おれに続けー!」
整備された畑。種が詰まっていた麻袋に各野菜の収穫時期を絵で霧島が書く。元農奴だった住民が霧島の指示を拙いながらも字と共に纏めた。
「どれも保存のきく作物。水があれば……いつか水車を作り、玉蜀黍の粉を作れるようになれば美味しくなると思います」
顔を見合わせ喜び合う村人達を前に、ホロゥは笑う。荒野で見かけた働き手、村人達の昏い瞳はそこにはなく。
「……わかんないものだよ、人生は」
明るい鼻歌を歌い、もう一度土に鍬を。
ホロゥに続き村人達は畑の拡大化はどうかと話し合いを始める。
その瞳の先は、未来へと向かっていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴェル・ラルフ
極限状態でも、家族を想う村人の優しさ
こういう人を守らなくちゃ、オブリビオンがいなくなっても世界は救われないね
腹が減っては戦はできぬって言うらしいし
僕は森で獣を刈ってこよう
【雄凰】、手伝って。
荒れ地だし…鳥や蛇、小動物を狩れるかな
捕まえた獣肉をまずは食べて力をつけてもらおう
血抜きの仕方も教えながら
腹ごしらえが済んだら
僕の年齢以上の男性の方がいいかな、森までいくのも遠出で体力使うだろうから
森へ同行してもらって、獣道を探す方法を教える
落ち葉が砕かれているところ、よく見ると細い線上の道かできているから
落とし穴と近辺に括り縄も設置
空腹は心が荒むけれど…ここの人は、きっと大丈夫だろう
★アドリブ・連携歓迎
畑が何とか使えそうだ、と駆けこんできた村人の声に住民が反応する。
水をどうするか等話し合う様子――極限状態でも、家族を想う村人達の優しさが広がるのをヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)の琥珀色の瞳が映す。
(こういう人達を守らなくちゃ、オブリビオンがいなくなっても世界は救われないね)
村人達の賑わいに、一歩歩み寄りヴェルは口を開く。
「なら、僕は森で獣を狩ってきます……腹が減っては戦はできぬって言うらしいし、まず肉でお腹をいっぱいにしてから山での狩りを」
山で獣を捕ったことがある人間はいるかとヴェルが尋ねると昔はしていたという。
『おいで、雄凰』
山の中一瞬空気が揺らめく。ユーベルコード:雄凰(ユウオウ)でヴェルの召喚した蛇食鷲は大きく羽根を広げた。
彼に騎乗し、改めて山の上から獣達がいるかヴェルは探索を開始する……と同時に滑空する雄凰。
「わっ、ちょ……!」
ヴェルの考えた通り、鳥や蛇、そして兎が次々と爪で、嘴で捕えられていく。
地面にヴェルが足を付けた時――多少は眩みはしたが、村人達に振る舞える分には十分な獣肉が揃った。
村人達はヴェルへと視線を向ける。
「獣を捕まえた時、美味しく食べるなら血を抜くのが一番です。血も時には栄養になりますが……内臓も上手く出しながら」
ヴェルは短剣で器用に兎の腹を裂き、内臓を取り出す。食べられる部分とそうでない部分。鳥の羽のむしり方や蛇や兎の革の剥ぎ方を丁寧に教える。
村の女性達が肉をスープの具にし村人達の腹を満たす頃にはすっかりヴェルは村人達と打ち解けていた。
「俺の親父が確かにああいう風に狩りをしていたなぁ」
「でも、あんたみたいに捕まえられるか不安で……」
ヴェルは村人達を見回し自分より年が上の男性達を呼び集める。
「全員に教えるのは遠出の際では危険ですので、まず皆さんに山での狩りについて教えられることを教えたいと思います」
手入れされていない山は足元に草が絡む。ヴェルがしーと指を立て、音を立てないよう皆にジェスチャーする。
もう片方の手で指さしたのは落ち葉が砕かれている個所だ。
「獣道ですね。恐らく森に獣は留まっているのでしょう」
村人達に山の『探索』方法をヴェルは的確に教えていく。
獣道の近くには窪みがあった。ちょうど良いと簡単な落とし穴、そして周囲に編んだ紐でくくり縄を仕掛ける。
「へえ、それはそうやって使うんですか。何か良く分からない代物だと危うく捨てるところでした」
村人達が感心するようにヴェルの方を向き、彼の行動を覚える。
「これでもうすこし大きな獣も捕れるようになるでしょう。……スープの具も、多く」
男達は腹を撫で、笑顔を見せる。
(空腹は心が荒むけれど……ここの人は、きっと大丈夫だろう)
大成功
🔵🔵🔵
数宮・多喜
◎
……こりゃひでぇ。
造りはしっかりしてるんだろうけど、
壊れてちゃ動かしようもないよな。
まぁ、アタシも『メカニック』の真似事くらいはできる。
さすがに鍛冶場は燃料の問題があるだろうけど、
工房の道具類ならアタシもなんとか直せるかもね。
……ついでに、使い方も教えられるだろ。
工房をこれからも使う意気のある希望者を何人か募って、
【超感覚探知】でアタシと感覚を繋いでもらう。
そうして、道具ごと工房を直しながら、
アタシの技術とか道具の使用法とかを
まるで自分がやっているかのように体験してもらう。
勘のいい奴ならそこから何に使えるかなんかも気付いてくれるだろ。
アタシ達は直すだけ。
その後は村人皆に頑張ってもらわないと。
向坂・要
なるほどねぇ。
とはいえこんなとこを開拓しようと思うのも、ここまで開拓しちまうのもまたヒトの強さ、っなわけで
なんて思いつつ影の鴉を放ち村の様子を把握
なんとかしてやるのは簡単ですがそれじゃ一時凌ぎにしかなりやせんしね。自分達で出来るようにならなきゃ意味がねぇ、と。
世界知識や医術、毒使いとしての知識を活用して薬の作り方や煎じ方、薬草などの知識を教え手が足りてるようなら農作業道具の修繕、手入れ方法や過酷な環境でも育つ植物などの知識を伝授
じゃがいもとかね
ついでにこっそりとルーンや精霊の加護を頼んでおきますぜ
手を貸したり教えたりは出来ますが所詮は通りすがり
自分で立って歩く事を覚えねぇと意味がねぇでしょ
向坂・要(黄昏通り雨・f08973)は紫色の瞳を瞬かせる。
猟兵達がこのまま来なければ村はオブビリオンの甘言を受け入れるか、そうでなくとも滅んでいた。しかし彼らは、それでも開拓することを選んだ。
「ここまで開拓しちまうのもまたヒトの強さなわけで……とはいえ俺達は風、吹いた後に残せるものを残さないと。なんてね」
喧騒から離れた場所で向坂はユーベルコード:八咫影戯(ヤタエイギ)を発動させた。闇夜に包まれた世界では影は無数に、そして、その影から生まれた闇色の鴉達も無数。
五感をカラスと共有した向坂の頭の中に村の地図が出来上がっていく。
広場らしき跡、晒された墓場。そして。
「……工房や鍛冶場は北に、か」
その声に数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が反応した。
「流石に鍛冶場の動かし方は難しいだろうけど、工房で直せそうなものがあれば見てくるよ」
「そいつはありがたい話なもんで……まぁ」
「ああ多分同じ意見だと思う。『その後の村人のために』何を残せるか……だろ?」
数宮の口にした言葉に向坂はその通り、と闇夜を仰ぐ。
「なんとかしてやるのは簡単ですがそれじゃ一時凌ぎにしかなりやせんしね。自分達で出来るようにならなきゃ意味がねぇ、と」
「腹いっぱいになる方法も知った、じゃあ次は生きていくための在り方だねぇ」
「……ま、なんとかなりますよ」
数宮は工房に、向坂は女性達のいる場所へと足を向けた。
「……こりゃひでぇ」
工房の扉は今にも外れそうで、中の道具は埃まみれ。
「造りはしっかりしてるんだろうけど、壊れてちゃ動かしようもないよな」
数宮は工房に入っていった自分を追ってきただろう村人達に振り返る。
「わっ!」
「悪いね。……使われなくなってからどれ位かい?」
村人達は十数年前だと答えた。
「鍛冶場を動かすための材料は、他の村との交換でなんとかなりそうだね。まずは工房を直して、一つでも使える道具を直していく」
直した道具で村を立て直し、長期的に食料を集め備蓄。余剰分を他の村に卸し村に資金を。
村人達が工房の修理に立ち会いたいと何人か手を挙げた。
「よぉし、じゃあ道具を作っていきながら、この工房を直していこう。なあに、アタシもメカニック……っと物を手で弄るのには慣れてるからね」
村人の一人を指さすと数宮はユーベルコード:超感覚探知(テレパシーリンク)で村人と感覚をリンクさせる。
「とりあえず……お、組み立てかけの鍬が沢山。一緒に組み立ててみるかい?」
「え?……うわっ!」
数宮が鉄製の平鍬にうまく棒を差し込み、近くにあった木のハンマーで叩きはめこんでいく。まるで数宮と同じように手が動いた村人は驚く。
「体で慣れてもらうよ。どうやら作りかけの物がやたら多い。最初から作るとしたら木のハンマーからかねぇ」
村人達は数宮の指示で簡単な工作道具を作りそしてその道具で工房に残っていた農具や皮なめしの道具を直していく。
誰かが箒の作り方を教えてくれと自ら手を挙げた事に数宮は笑い、共に掃除をする。
(勘のいい奴なら、ここで手にした技術から気づくこともあるだろう)
村人の誰かが竈に火をつけられそうだと数宮に笑顔で話しかけた。
村にある畑では主に食料を、森で狩りが行われていた時には一緒に薬草を積んでいたと女性が答えた。
「成程、村の薬は」
「……森に近づかなくなったし、最近は」
向坂の視線の先に見える生垣。その葉の形に気が付いた向坂は生垣に手を入れる。
「ちょ、ちょっとあんた!」
「お、あったあった。西洋榛か。……うん、なかなか」
向坂はすりつぶす様に実を食べる。驚きを隠せない女性達を前に、頭を掻きながら向坂はニコリと笑った。
「あの生垣にある身はすり潰して食べられますぜぃ……村の周りでも何かあるかもしれないでしょうねぇ」
空の籠に視線を向けた向坂は周りの女性達、何か楽しそうだと集まってきた子供達を前に口を開く。
「よし、ここいらにある草花を何種類か集めてみましょうか」
数刻後、山盛りの籠を前に向坂は苦笑しつつ何種類かにそれらを分けていく。
「まずこれはバーベナ、搾り汁があれば腫れたり打ち身、怪我には効きますぜ。フェンネルも。食べられるし、何より食欲が沸く」
次々と薬草や逆に毒となる草、その効用や使い方を次々と説明する向坂。
薬草を煎じたり潰す道具はまだ壊れていなかったようで女性達は家々から道具を持ち出しにその場を離れる。
残った子供たちが赤い実を見つけたと向坂の掌にそれを乗せた。
「おお、これはニワトコ、これがあれば医者いらずといわれた位ですぜ……っと」
子供達の一人が握っていた枝。宿り木に目を見開く。
「これ、別の木にくっついていた?」
「うん、いつも木登りで遊んでるから……これも、危ないの?」
ルーンを扱う上で最も神聖視されるものが揃っているとは皮肉だと思いながら向坂は首を振る。
「聖なるお守りを作るのには最適ですぜ。しかし……」
ニワトコの実を保存するには瓶のほうが良い。そんな時だった。
「工房から色々出てきたぞ!」
声のする方に向坂が振り向くと、数宮を先頭に大きな荷物を抱えた一団。
「食器や空き瓶、農具も出てきた!工具の使い方も教えて貰ったぜ!窯に火も入れられる!」
「硝子瓶が残っていたのね!……お鍋はあった?」
村人達がそれぞれ猟兵から得た知識を活用し、生活に必要な道具類が揃っていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リンネ・ロート
(人格・口調リンネ)
私に出来ることをと思って来てはみたけど、私に出来ることって何だろう……
何にも考えてなかったからどうしよう……
そうだ、私ので良ければ……
女性達にマニキュアとアイシャドーを施してみましょう
地味かもしれないけどないよりはましです!
手先の器用な方に装飾品の制作も頼んでみましょうか
木でできたものでも可愛い物は作れます……よね?
少しでも華やかさが宿れば男性達の心の潤いにならないかな?
愛しい方の活力になれば、お互いに死を救いだなんて考えなくなる……かも
それから子供達相手にくまちゃんを使ってお遊戯しましょう
やったことないけど腹話術とか……
失敗しても恥ずかしくない、恥ずかしくない……
セシリー・アリッサム
◎
わたしも自分の住んでいる塔……殆ど任せきりだし
こういう事がとても大事なのは知っているけれど
「……あの、大丈夫ですか?」
力も知恵も無いわたしは、話し相手ぐらいにしかならない
傷を負っているのならば、せめて心でも身体でも癒してあげられれば
「……皆が皆の為に動けるって、素敵です」
力が無い事は罪じゃない
一人では無力でも、沢山集まれば十分な力になると思う
落ち込む人たちを励まして、やれる事を考えていこう
「だから諦めないで欲しいの。今頑張っているあの人たちの為に」
畑が無ければこれから作ればいい
家畜がいないなら掴まえればいい
壊れたものが直せないなら、新しく作ればいい
出来る事を、やろう
それは私も、きっと同じ……
村人達はかつて開拓を始めた時に広場だったという場所で火を焚き、今後のことについて話し合っていた。
猟兵達が考え、行動し、残してくれた『生き残る術』を確認する声の中、リンネ・ロート(RegenbogenfarbeFlügel・f00364)の姿は火に照らされ、影は伸びていく。
(私に出来ることをと思って来てはみたけど、私に出来ることって何だろう……)
この村に来る間、何も考えておらず、そのまま時だけが過ぎ……リンネは一人、取り残されたような気持ちになっていた。
「……きれい、だなぁ」
空に向かって赤を伸ばすかのように伸びる炎を見つめるセシリー・アリッサム(焼き焦がすもの・f19071)は、照らされる村の様子をそっと見る。
再建計画が始まったとはいえ、まだ話の段階。家々はとても脆く。
(わたしも自分の住んでいる塔……殆ど任せきりだし、手入れは大変だよね)
それがとても大事なことは知っている。だからこそ、自分にできること。
広場から少し離れた場所に、自分達に村の話をした老婆が座り込んでいることにセシリーは気が付く。とてとてと駆け寄る。
「……あの、大丈夫ですか?」
「あら、あなたは外から来てくださった……ありがとう」
老婆を適当な椅子に座らせ、セシリーが隣に並ぶ。
老婆はどこか遠い目で空を見上げていた。
「皆さんのお話や行動。とても感謝しています」
老婆の声は優しく、しかし、どこか不安げそうだとセシリーは思った。
「……この先、この村が真に幸せになるのか、少し心配で」
「おばあさんは……いっぱい考えているんですね」
セシリーは話し相手として目の前の老婆の話を静かに聞く。
(……力も知恵も無いわたしは、話し相手ぐらいにしかならない)
目に見える傷、心に残る傷。ユーベルコード:生まれながらの光が炎の灯りと混じりながら、老婆を包み込む。
──傷を負っているならば、せめて心でも、体でも癒してあげられれば。
「……皆が皆の為に動けるって、素敵です」
「こんな老婆を助けるために……若い子にはこれから苦労させるでしょう」
「ううん、おばあさんも、今まで村を纏めてきたよ」
力なき老婆、しかし、力が無いことは罪であるか?──否。一人では無力でも、沢山集まれば十分な力になると思う。
「だから諦めないで欲しいの。今頑張っているあの人たちの為に」
「お嬢さん。ありがとう。神様がいるとしたら……こうして、温かいんだろうねぇ」
畑を新しく作る者も、狩りをする者もいる。壊れた物を修理し、村の立て直しが進められればいずれは家畜や鍛冶場も動き出すだろう。
(そう。だから、今は……わたしに出来る事、は)
凍える夜空の下、誰かを励まし共に歩む。そうして出来ることを見つけ、行動する。
(それは私も、きっと同じ……だから)
「あ、あの!」
セシリーと老婆は振り返る。視線の先にはほほ笑むリンネと、何人かの女性達。
「……あんた達、その目の周り、いったいどうしたんだい?」
リンネの傍、炎を囲みながら女性達が話していた。
村の再建のため今日は随分働いたねえという彼女たちは甕に組んだ水で手を洗う。
(……!そうだ、私ので良ければ……)
「あ、あの……」
「まあ、うちの旦那を助けてくれたお嬢さんじゃないかい!ありがとう!」
軽く抱擁され、心が軽くなったリンネは女性の手を握り、開かせる。
「その、皆さんとても頑張っていらっしゃって、これからこの村も良くなるかと思いますので……おまじないをさせてください」
女性達は困惑した顔を見せるが、自分たちを救ってくれた恩人を前に頷く。リンネが取り出したのは化粧品。自らに施している赤のアイシャドーとマニキュア。
マニキュアのベースコートを手を動かさないようにというと女性は珍しそうにそれを見守る。炎に照らされきらきらと輝く十指の爪に、女性たちの眼も煌めく。
「素敵!」
「綺麗!」
「すごいわねえ!」
(良かった、笑ってくれている……)
「それと、私の目の赤と一緒の線を引けば完成、です」
女性達にアイシャドーを、僅かな幸福をようやく手に入れられたその目の上に引く。彩られた女性達は──とても美しかった。
(少し地味かもしれませんが、ないよりはマシ!です)
ゆっくりとアイシャドーの筆を顔から離し、水瓶に映った姿を女性達は驚いた顔でみやり、互いを見て笑う。
「こんなきれいな顔、おとぎ話のお嬢様みたい。お嬢様にはちょっと年を取りすぎたけど……ありがとう」
そうだと女性の一人が積んでいた赤い花を髪に差す。
「えっと、綺麗で華やかな物……装飾品も作ってみてはどうでしょうか?」
リンネの問いかけに、女性達は頷き合う。女性の一人が祖母の家に木彫り細工の道具が残っていたし、なにか作れそうだと答える。
この村に少しでも華やかさが宿れば、男性達、そして女性達自身の心の潤いになるだろう、そうリンネは思っていた。
(愛しい方の活力になれば、お互いに死を救いだなんて考えなくなる……かも)
リンネの思った通り、女性達が別の女性を連れ、化粧と華やかな話題は続く。
「……あれ、村長がいない?」
村の誰かが言った。
「あ、あの……これから、子供達相手にくまちゃんを使って、遊びを見せたいと思うんです」
華やかな女性達を前に老婆は笑顔を見せる。
(もしかしたら、失敗するかもしれないけど……恥ずかしくない、恥ずかしくない……)
村長である老婆、笑顔を取り戻した女性達が子供を呼び集める。
「何をするの?」
見上げるセシリーにリンネが答える。
「腹話術とか……でも、初めてだし……」
「じゃあ裏方としてお手伝いします。子供達も、笑ってくれると嬉しいです」
セシリーに礼を言い、くまちゃんを取り出したリンネ。
炎の揺らめきの中、猟兵と猟兵の握った人形は村人達の笑いを生み出す。
どんなに凍えそうな夜でも──もう、村に死を願うものはいなかった。
大成功
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第3章 ボス戦
『『気高きヨハンナ』』
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POW : 鳴かずのカウベル
【悲嘆や苦痛】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【音を聞いた者を永遠に眠らせる鈴】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : 天使の猫
自身の身体部位ひとつを【翼】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : 安寧なるかな
【空から降り注ぐ羽根】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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広場を照らす灯りは、『彼女』にとっても目印になっていたようだ。
カウベルの音を鳴らし、『彼女』は村の目の前に来る。
「ごきげんよう──救われるべき方々」
闇夜の中でも一際深い、黒。即ち骸の海から蘇ったオブビリオン、『気高きヨハンナ』は凛とした声色で告げる。
「もう大丈夫です。そこの火が消えようとも、安らかな眠りの中では永遠の暖が、幸せが」
そうして子は死を受け入れた──はずであった。
村人達は、その気配を察知し家々に逃げ込む。神の使いを……かつてはそう思っていたかもしれないオブビリオンを前に『抵抗』し、拒否をする。
「あら?あらあら?」
オブビリオンが見つけるは猟兵、恭しく礼をしながらヨハンナは憐憫の顔すら浮かべながら問いかける。
「貴方達の与える幸せは、消えてしまうでしょうに。だからこそ死にたいと言ったのを、私は叶えただけです」
気高きヨハンナの思考──安らかなる死を村人達は拒んだ。
「愚かなことを、残酷なことを。でしたら……貴方達にまず安らぎを与えましょう」
猟兵達に話しかけるヨハンナの声は鈴を転がした様に綺麗なそれだが、猟兵達には理解できる。
彼女はオブビリオン──救いなど、決して与えない存在だと。
※村に損害が発生しない場所での戦闘になります。ギミックや特殊な判定要素はありません。
数宮・多喜
◎
ヨハンナ。
なんて言えばいいのかねぇ。
アタシは、アンタのやろうとした事が
すべて悪だとは思わねぇ。
そりゃヒトの人生一つや二つ、
何もかも投げ出して楽になりたい時もある。
それを見かねるってのも分かる。
でもな。
アタシ達は、そこに「抗う」って手を差し伸べたんだ。
アンタとは真逆の手をな。
だから、恨みっこなしさ。
お互いの想い、通し合おうじゃねぇの!
サイキックの電撃による『マヒ攻撃』の『援護射撃』を主軸にして、
アタシは周囲のカバーに回る。
飛び来る羽根を迎撃するように『衝撃波』を放ち、
味方の行動を阻害させない。
なるべくなら音は聞かないよう、
戦いが始まったら耳栓はしておきたいね。
最後は【黄泉送る檻】の監獄行きさ!
ホロゥ・サファイア
◎
悲嘆や苦痛。嘆きをたべるなら、おれとお揃い?
でも気は合わなさそうだなあ。ざんねん。
『影華』をひらいて影に【目立たない】よう紛れ【だまし討ち】、【属性攻撃】とともに【部位破壊】を狙うよ。鈴が鳴らないように、翼が空を掴めないように。
傷をつくれたなら【傷口をえぐる】、【怪力】で傷をひらいてあげる。
きみの配る救いは終わりなんだもの。それじゃあお腹は満たないのだもの。
安らぎのラベルを貼った諦めは、あんまり"おいしく"なさそうだから。
●夜明け
「……ヨハンナ、だっけか」
数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)、猟兵の呼びかけに『気高きヨハンナ』は静かに視線を向ける。
「なんて言えばいいのかねぇ。アタシは、アンタのやろうとした事がすべて悪だとは思わねぇ」
「……あらまあ、人間も随分物分かりが良いのね」
ヨハンナは感心したようにカウベルを軽く鳴らす。彼女がもたらす死への苦痛は一瞬。
「悲嘆や苦痛。嘆きをたべるなら、おれとお揃い?」
二人の間に入る声、ホロゥ・サファイア(☓と踊る・f21706)の青い瞳はヨハンナを見つめ――残念そうに首を振る。
「でも気は合わなさそうだなあ。ざんねん」
「そこの坊やは……ああ、可哀想に、安らぎを知らないのね」
ヨハンナのため息。彼女はオブビリオン。故に、壊し、故に、殺す。
「気が合わないのはアタシもだよ。そりゃヒトの人生一つや二つ、何もかも投げ出して楽になりたい時もある。それを見かねるってのも分かる」
数宮とホロゥの視線が合い、お互いの行動を確認する。目の前に立つヨハンナは不思議な顔で猟兵を見つめる。
「でもな」
数宮が一歩前に出た。闇夜に紛れるようホロゥの姿が消える。
「でも?」
「アタシ達は、そこに「抗う」って手を差し伸べたんだ。アンタとは真逆の手をな」
ぴりぴと張りつめた空気を体現するように数宮の両手から、全身からそれはあふれ出す。
「だから、恨みっこなしさ──お互いの想い、通し合おうじゃねぇの!」
閃光。そして衝撃。この世界を照らし出すかのように電撃が数宮の周囲に展開される。
「ふ、ふふ……その隙間、飛んで響かせましょう。私は天使、天使の猫!」
ヨハンナの両手が翼に変化し、数宮の元にとびかかるように宙に浮く。
それを防ぐのは数宮のサイキック能力を応用した衝撃波。不意に電撃の檻へとヨハンナが触れれば、全身を雷撃の衝撃が襲い動きを麻痺させる。
(なにが天使なんだか……ま、こっちへの攻撃に目を向けていればいいさ)
数宮の狙いはヨハンナの引き付け、囮。カウベルを鳴らそうとヨハンナがもがく寸前につけた耳栓で周囲の音は聞こえない。
しかし、『彼』が動く気配は感じ取っていた。
「光がきれいだね、だから、影も濃く深く」
「な……なんなの!?」
もがくヨハンナの周りにはらはらと落ちる影の欠片。翼を包み、カウベルに貼りつき。
『きれいだろ?』
閃光に包まれ産まれた陰からの不意の一撃、ホロゥのユーベルコード:影華(ブレイズブルーミング)がヨハンナの体を燃やす。
冷たい影色の炎のなか、過去の海より還りしオブビリオンが絶叫を上げ、黒い瘴気を吐くがそれすらも燃やす。
「きれいだろ。冷たいのに、火傷するんだ」
ホロゥが地面を蹴り上げる。その動作の意味することを理解したヨハンナは逃げ出そうとする。
「悪いね……だったらアンタを縛らせて貰うよ!ashes to ashes,dust to dust,past to past...収束せよ、サイキネティック・プリズン!」
数宮のユーベルコード:黄泉送る檻(サイキネティック・プリズン)により雷撃の檻がヨハンナの体を貫く。
「なによ……どうして……あ、あああああ!」
「きみの配る救いは終わりなんだもの」
ホロゥの腕がヨハンナの傷口に触れ──めりめりと引き裂かれる。
「それじゃあ、お腹は満たないのだもの」
──安らぎのラベルを貼った諦めは、あんまり"おいしく"なさそうだから。
倒れるヨハンナをホロゥは見下ろす。
「素敵なものを、もう、皆見つけているんだ。だからおしまい」
耳栓を外した数宮が駆け寄る中、ホロゥはじっと闇夜に現れたオブビリオンを見ていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴェル・ラルフ
リンネ(f00364)と
生きていくのが厳しい世界でも、きっと彼らは乗り越えていける
だから、なんの迷いもなくオブリビオンを絶てるよ
SPD
狂哉と前衛で共闘
敵の体力消耗、ひいては抹消を狙う
如意棒「残紅」で 早業をいかして距離を詰め前線へ
フェイントを織り交ぜながらなぎ払い、突き、吹き飛ばし
なるべく飛翔させないように矢継ぎ早に
いいよ、リンネ
僕はリンネが狙われないように全力を尽くすだけ
ふふ。狂哉、それはこっちの台詞 リンネを危ない目に遭わせたら承知しないよ?
もしヨハンナがリンネに狙いを定めたら、その背に【日輪葬送】
ひとすじの緑閃を放つ
──近づくの、許した覚えはないけど?
リンネ・ロート
ヴェルさんと
(人格・口調リンネ)
ごめんなさい、ヴェルさん
本当は嫌だけど、狂哉を呼びます
狂哉にグレンツェンドを持たせて前衛に
私はシュタルカー・ヴィントで援護を
私の持つ知識だったらヴェルさんと狂哉からの攻撃の合間に放たれる弾丸は鬱陶しいはず
私を先に片付けようとするところを追いつかれる程度に背後を見せてダッシュで逃げます
追いつかれたら背負ったくまちゃんの出番、大きく開いたグロテスクな口で噛みつかせてだまし討ちです
(狂哉)
リンネがオレを呼ぶなんてなあ?嫌ってるくせに
ヴェル、オレの足引っ張るなよ
第六感が冴えて楽しいぜ!
ヨハンナ、お前の血が何色かたっぷり見せてみろよ!
オレは血を見るのが好きなんだからよお!
闇夜の中、気高きヨハンナの瞳がぎらつく。猟兵達の攻撃を受け、その本性──過去の海から蘇りし悪意がそこにはいた。
「……ごめんなさい、ヴェルさん」
「どうした?リンネ」
リンネ・ロート(RegenbogenfarbeFlügel・f00364)の金の瞳が一瞬伏せられ、ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)が名を呼ばれたことに反応する。
「本当は嫌だけど、狂哉を呼びます……私の持つ知識だったらヴェルさんと狂哉からの攻撃の合間に放たれる弾丸は鬱陶しいはず」
マスケット銃『シュタルカー・ヴィント』を構えたリンネから発せられる言葉。自らの心に眠る朱鳥狂哉の解放。
(……彼なら、やってくれるはず。でも、私も、私の力で……)
「大丈夫。いいよ、リンネ」
「えっ」
ヴェルがにっかりと笑う。──僕はリンネが狙われないように全力を尽くすだけ。
「……はい!」
リンネが空中に何かを放り投げる。同時に発動させるユーベルコードはオルタナティブ・ダブル。
空を舞うフォースセイバーを受け取るのはリンネが産み出した『彼』
「グレンツェンド!いいねぇ、烈光か!暗えここでは最高の武器って奴だ!リンネがオレを呼ぶなんてなあ?嫌ってるくせに」
狂哉が眉を吊り上げてニヤリと笑う。
「ヴェル、オレの足引っ張るなよ」
「ふふ。狂哉、それはこっちの台詞……リンネを危ない目に遭わせたら承知しないよ?」
「ははっ!銃構えたお姫様を守る、違うだろ。オレ達は猟兵」
狂哉の瞳はオブビリオンのヨハンナに。その体は綻びつつあったが依然として纏う漆黒、そしてその毛並みは白い。
「ヨハンナ、お前の血が何色かたっぷり見せてみろよ!オレは血を見るのが好きなんだからよお!」
「……不躾な方が増えるとは、人の子には安寧を。死の眠り、翼でくるんであげましょう」
メキメキと音を立て、ヨハンナが巨大な翼を形どる。歪なそれがバサバサと羽ばたき、ぎろりと二つの瞳が三人を睨む。
(生きていくのが厳しい世界でも、きっと彼らは乗り越えていける)
この世界がオブビリオンに支配されたとしても、そこから逃げ延び立ち上がった人がいる。
「だから」
狂哉に続くようにヴェルは如意棒「残紅」を構え、駆けだす。
「なんの迷いもなくオブリビオンを絶てるよ」
「はは!まずは地面に叩き落としてやるからな!」
「……っ!」
『己』の第六感、そして手にした武器を軽々と狂哉はヨハンナに近づき空に線を描く。
攻撃を外したことに嘲笑の笑みをヨハンナが笑みを浮かべた瞬間──その翼を地に縫い留めるように「残紅」がヨハンナを叩き払った。
「な──っ!」
くるくると「残紅」を回し、ヴェルの瞳がヨハンナを捉える。再びヨハンナが翼を広げようとすれば狂哉が飢えたように襲い掛かり、それを避けようとすればヴェルが巧みにその隙間から攻撃を当てる。
そして、その間を縫うように飛んでくるリンネの銃。
体に空いた穴を一瞬見て、ヨハンナが勢いよく駆けだす。
「可愛らしい子……貴方から、貴方からああああああ!!!」
「──近づくの、許した覚えはないけど?」
ヨハンナが二人の猟兵の間を強引に突破しようとした、その時であった。
ヴェルのユーベルコード:日輪葬送(ニチリンソウソウ)が良い出すのは漆黒の炎。渦となったそれを纏ったヴェルの赤い髪が照らされ、そして周囲に、空を埋め尽くさん限りの緑色の炎の光芒が浮かび上がる。
己を闇に沈ませそして輝く光芒が一筋の緑閃を放つ。
リンネに狙いを定め背を向けたが故にヨハンナは何が起きているか分からず絶叫。体に今まで以上の穴が開いていることに気がついていなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
※諸事情で一度執筆中断いたします。9月11日8:30~に再送していただけると幸いです。
向坂・要
何が幸せか、ってのはそれこそ千差万別。
本人が決めるべきなんじゃありやせんかぃ?
いくらお前さんの理想が素敵だって自負しても押し売り、ってのはどうかと思いますぜ
UCで攻撃
風の精霊やルーンの加護による遠吠えや爪牙に宿した真空でカウベルの音を封じ/破壊を試みますぜ
第六感や地形も生かし全体を俯瞰把握するよう意識
何かあれば声かけ含め連携を意識させてもらいますぜ
戦闘後、立ち去る前にもなんか希望があったら教えられるもんなら教えてさせてもらいますぜ
活用するもしないも本人次第、ってね
アドリブ
絡み歓迎
気高きヨハンナ。
今やその体は裂け、穴が開き、過去の海から来たものであることを示しているかのように黒いそれを垂れ流す。
白い毛並みを汚しながらも、カウベルに手を伸ばす。
「おろか、な、人間、達に……安らかに、ねむりを。しあわせ」
「何が幸せか、ってのはそれこそ千差万別。本人が決めるべきなんじゃありやせんかぃ?」
向坂・要(黄昏通り雨・f08973)の声色は冷たい。
悲劇を。絶望を、傍観しながらも、寄り添ってきた存在が口を開く。
「いくらお前さんの理想が素敵だって自負しても押し売り、ってのはどうかと思いますぜ」
ヨハンナの顔が険しくなり、毛並みが逆立つ。
「滅びの苦しみの前に……与える安らぎを拒否、する、か!」
残った体から発する痛み、ぎらぎらとした目でカウベル──自らの苦しみを込め音を聞いた者を永遠に眠らせる鈴に変わったそれがちりんと小さく響く。
「空ですかい、ならば偉大なる精霊よ。今ひと時、力をお借りしますぜ」
向坂の声と共にユーベルコード:大地と共にありしもの(シュンカ・マニトゥ・ウゼン)が闇夜の世界に存在する大精霊に語り掛ける。
我が身に加護を。白銀の毛並みの大狼が闇夜から飛び出した。
そして。
『……オォォォォン
!!!!!!! 』
闇夜を切り裂く遠吠えは風の精霊の力を借りてどこまでも鳴り響く。地まで揺らすようなそれに、カウベルはまさに鳴かず、否鳴けず。
「き、さ、ま……があっ!!」
白銀の毛並み、そして手足の先から生まれた真空刃がカウベルをヨハンナの手から叩き落す。
白き猫には白銀の狼の姿が見えない。巧みに地形を利用し、ヨハンナの持つカウベルを、その喉首を狙い撃ち、食いちぎる。
闇夜の中、もう一度黒き空に向かって吠えると同種が来たのかと遠吠えが返ってくる。
(……人だけでなく、獣もこの世界で生きている、ですか)
その身を削り、ヨハンナを退けた向坂はふと視線に気が付く。
自分が最初の地──荒野で助けた働き手達のそれは、怯えと、神を見るかのごとき尊敬のそれ。
「……お」
向坂は気が付くと、白樺の木にもたれかかっていたことに気が付く。
「母なる大地、どんな土地でも育つ樹木……良き村に、なりますぜ」
そういって、向坂は笑った、
成功
🔵🔵🔴
セシリー・アリッサム
◎
「あなたのは……安らぎでも救いでも無いわ」
【天狼覚醒】――空から降り注ぐ羽根を避ける為に
オラトリオの力を開放して翼を広げる
高度を取って先ず回避に集中しつつ
シリウスの棺に炎と呪詛を込める
「安らぎが死んで終わりだなんて……絶対に、認めない」
私自身が救われた様に、今度は私が救う番だ
炎を纏わせた呪殺弾を高空からヨハンナへ放つ
これで牽制くらいは出来る筈だから
「死にたくなるほど苦しい時だってある、けど」
呪殺弾には動きを鈍らす呪いの罠を仕込み
当たらなくてもヨハンナを囲う様に
「こうやって乗り越える事は出来る、だから」
狙いは相手が大技を出す瞬間
罠を発動し動きを鈍らせる
「誰も諦めたりなんかしないわ……わたしも」
セシリー・アリッサム(焼き焦がすもの・f19071)はヨハンナを前にシリウスの棺を構える。星の力を宿し、淡く輝くそれは仄かに温かい。ぬくもり。
「私が救うのです……安らぎと共に!」
「あなたのは……安らぎでも救いでも無いわ」
体の残った部分を無理矢理粘土の様にこねくりまわし、産み出された『天使の猫』。羽根一枚一枚が舞い落ちる先に咲く花が枯れる。
セシリーは一瞬考え──開放した。
『――焼き焦がす!』
オラトリオの力の証たる背中から生えた一対の白い翼、髪に花を生やし翼を広げた天狼形態。ユーベルコード:天狼覚醒(シリウスブラッド)の発動と共にシリウスの棺に青白い炎が灯される。
ヨハンナよりはるか高度へと翼はセシリーを運びヨハンナがまき散らす羽根を回避する。
ひゅんと飛んできた羽根がシリウスの棺から湧き出る炎に焦がされ散る。
(シリウスの棺、白き翼。オラトリオの力、開放しよう……全てを! )
空を舞う青白い炎に込められていく思い。燃え上がる炎と燃え盛る呪詛。
「安らぎが死んで終わりだなんて……絶対に、認めない」
荒野の先導者。希望を与えた白狼と聖女の忘れ形見。セシリーの瞳もまた決意に燃える。
(私自身が救われた様に……今度は私が救う番だ)
シリウスの棺が一層燃え立ち闇夜を照らす。それは弾となってヨハンナのいる方へ降り注がれる。
ヨハンナは翼を焼け焦がしながら、オブビリオンの執念──死への手招きのように翼を広げるが近寄れない。牽制するように呪殺弾をコントロールしながらセシリーは呟く。
──死にたくなるほど苦しい時だってある、けど。
村を明るく照らしているかのように呪殺弾をセシリーは撒く。ヨハンナがその網を破らないと燃え尽きるように囲む。
「あら、不思議!……ん?」
ヨハンナの動きが突如壊れた玩具の様にふらふらと。
「わたしが込めたのは、動きを鈍らす呪い」
「のろ、い……あら?貴方も私と」
「一緒じゃない。わたしは、死んで終わらせはしない……あなたとは違う。こうやって乗り越える事は出来る、だから」
杖を片手で構え、胸を広げるように立つ。
嗤うヨハンナがその喉元を狙うように羽根を鋭く伸ばした時──罠として仕掛けていた炎がヨハンナを包む。
相手が大技を出すように誘導し、そして炎に焦がされヨハンナが堕ちていく。
明るい空に驚き出てきた村人達とセシリーの目が合い、村人達は頭を下げる。
セシリーは地に足が着いた時、改めて闇夜を見つめる。
「誰も諦めたりなんかしないわ……わたしも」
成功
🔵🔵🔴
霧島・絶奈
◆心情
死は救済ではなく虚無でしかない
虚無は、救済とは為り得ない
「生きる事に意味があるのならば、苦しみにも意味がある」
もうこの場所に虚無は必要ありません
◆行動
<真の姿を開放>し『暗キ獣』を使用
軍勢が槍衾を展開し、屍獣の群れが遊撃し【二回攻撃】
私は【目立たない】事を活用
軍勢に紛れて行動
その際には【罠使い】の技能を活かし「ワイヤートラップ連動の指向性散弾地雷」を設置
比喩でなく、羽根が触れただけでも起動するようにしておきましょう
設置後は死角から接近し【マヒ攻撃】を【二回攻撃】
敵のユーベルコードに対しては【範囲攻撃】する【衝撃波】を【二回攻撃】し羽根を迎撃
負傷は【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復
希望を持って開拓された村への道中、森に落ちたヨハンナは呻く。
「ありえない……ありえないのです……苦しき、死しかない村に何故……! 」
「生きる事に意味があるのならば、苦しみにも意味がある」
ヨハンナが声のする方を振り向くと霧島・絶奈(暗き獣・f20096)が銀の瞳を細め立っていた。どこか憐れみすら感じさせる声で霧島は言葉を紡ぐ。
「死は救済ではなく虚無でしかなく、虚無は、救済とは為り得ない」
耐え難い絶望も、胸をかきむしる悲しみも、安らかも安寧も総ては。
「総ては生きる上に存在することです。もうこの場所に『虚無』は必要ありません」
ヨハンナの眼がぎょろぎょろと動き、天を仰ぐ。
「愚かな、愚かな! ……ああ、安寧なるかな! 」
気高きヨハンナの絶叫。森に羽根が降り注ぎ──霧島はそっと目を伏せた。
『闇黒の太陽の仔、叡智と狡知を併せ持つ者。私を堕落させし内なる衝動にして私の本質。嗚呼……、此の身を焦がす憎悪でさえ『愛おしい』!』
森に霧島の声が響いてすぐヨハンナは異変に気が付いた。地が僅かに揺れる。とんとん、どんどん。
様々なリズムが混じるが、一定の感覚で森を侵攻するは疫病を纏う屍獣の群。
悲鳴を上げ、自らも瘴気を振りまく存在だというのを忘れ逃げた先には屍者の軍勢の槍衾。
霧島のユーベルコード:暗キ獣(ソラト)が呼び出した軍勢。それは過去の海から還ってきた『だけ』の存在よりずっと、ずっと黒く、深く。
軍勢の攻撃と屍獣の群れの死の行進の中、蒼白き燐光の霧を纏い端の神々の似姿をした霧島は「ワイヤートラップ連動の指向性散弾地雷」を設置しその時を待っていた。
ざわざわと森は風に吹かれ、ヨハンナの叫び声が聞こえる。
もうすぐ、近くに来る。
「ヨハンナ、わたしはここです」
体のありとあらゆる場所から黒い物をまき散らすヨハンナが、愚かにも自分の安寧を求め羽根を降らす。
「……愚か、ですね」
地雷に吹き飛ばされながらもヨハンナの羽根は、最期のあがきの様に降り注ぐ。
仄かに蒼く輝くオーラを纏いながら、霧島は衝撃波で羽根を次々に薙ぎ払う。
気高きヨハンナが最初に感じたのは四肢が、五感が、肉体がだらりと垂れ下がり崩れていく肉体的感覚
「あ……ああ……」
そして、最期に残るのは。
「心も無くなれば、」
銀の瞳の女がなにを口にしたか、
それが自分の心の何を動かすのか知らないままヨハンナは闇に散った。
森での出来事に村人達は総出で飛び出し、心配そうに霧島の立つ場所を見ていた。
霧島が歩み寄ってみると、眠たげに目を擦る子。
「もう、大丈夫です……ゆっくりおやすみ下さい」
眠り子眠れば、人は子を抱きしめ、温め合う。
生の中で、何度でも。
成功
🔵🔵🔴