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エンパイアウォー⑲~増長せし渡来人

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #コルテス


●侵略渡来人
 弓状に広がる遠浅の浜。背負う山は、神が降り立つと信じられている。
 そこに在るのは、神の島として崇められた島。
 その神の島を祀るには、陸地では余りに恐れ多いと海上に建てられた社殿。
 神聖なるその場所で彼――、侵略渡来人コルテスは瞳を眇めて猟兵達を見下ろした。
「ほぉ、下等生物どもがノコノコ雁首を揃えてやって来たか」
 『侵略して滅ぼした別世界の神』。
 『戦利品』。
 隷属の呪いを与えた神、ケツァルコアトルの手綱を引き絞ると、コルテスは心底下らないモノを見下す態度を隠しもせずに、マスケット銃で肩を二度叩いた。
「お前らの小競り合いなど全く興味は無いが、気持ちの悪い虫が並んでいるのも不快だな。その小さな脳味噌で少しでも理解ができたならば、――さっさと死んでくれないか?」

●グリモアベース
「センセ達、連日連戦お疲れ様っスよォ」
 小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)が、猟兵達の前でお辞儀を一つ。
「次にセンセ達にお願いしたいのは、侵略渡来人……コルテスの撃破っス!」
 猟兵達の活躍によって、判明したコルテスの所在。
 ――彼は厳島神社の社殿に居る、といすゞは言う。
「コルテスは隷属した別世界の神……ケツァルコアトルに騎乗して、土足で神聖なる神社を荒らしているっス。なァにが大いなる神、偉大なる王、麗しの姫君に捧げる宝物を吟味っスか。……本当にヤなヤツっスよー」
 思う所もあるのであろう。
 いすゞはムッとしながら、眉根を顰めつつ言葉を次ぐ。
「……ケツァルコアトルには『隷属の呪い』と『コルテスが死ぬと自身も死ぬ呪い』が掛かっているっスから、例え隷属されている身とは言え決して懐柔する事は出来ないっスよ」
 骸の海から蘇ってくるとしても、死する事は厭う物だ。
 何よりコルテスらは『撃破されて、骸の海から蘇った』と言うことを認識していない。
 何度ここで倒されていたとしても、その事自身をさっぱり忘れたコルテスが厳島神社に出現しているのだ。
 ――そして、ソレこそが彼らの弱点でもある。
「コルテスは、とっても強いっス。しかし、その強さ故に慢心しているっス」
 コルテスは強い。
 異世界を侵略し、幾つも滅ぼしたという事は事実である。
 しかし彼が直接戦ったのは、最初の数度のみであった。
 それ以降は『侵略して滅ぼした世界の戦力』を利用して、自らは王か神のように世界を侵略し、虐殺し、滅ぼしてきたのだから。
「――それ故にコルテスは『戦い方を忘れて』いるっス!」
 コルテスは強い。
 正面から斬りかかるだけの攻撃や、わかりやすい予測の出来る攻撃――或いは『今回のコルテスが似たような攻撃を既に受けている』場合。
 腐っても幾つもの世界を滅ぼした身だ。予測さえできれば、その攻撃を簡単に避けてしまうであろう。
 しかし慢心しきった彼は、忘れているが故に予測の出来ない攻撃を全て食らってしまうであろう、と予知に出ている。
「コルテスは本当にとっても強い敵っス」
 骸の海から蘇ったと言う事を認識できていない、と言う事は。
 彼は何度倒されようが、その姿を顕す時は慢心して油断をしているという事だ。
「しかし、その慢心こそが彼の弱点。彼の予測が出来ない攻撃を繰り返せば、センセ達の勝利は堅いっスよォ!」

 さあさあ、神の地を土足で侵す不届き者に鉄槌を。
 コーンとぽっくり下駄を響かせたいすゞは、もう一度頭を下げた。
 囁くような願い、その細められた瞳の奥に揺れているのは信頼の色。
「頼んだっスよ、センセたち!」
 彼女の掌の中で、グリモアが輝いた。


絲上ゆいこ
 いつもお世話になっております、絲上ゆいこ(しじょう・-)です。
 今回、皆さんに立ち向かって頂く敵は侵略渡来人コルテスです!
 悪辣見下し慢心おじさんをブチ倒してください!

●特殊ルール
 コルテスは『戦闘の仕方を忘れて』います。
 その為、予想できないようなユーベルコードの攻撃に対しては、一方的に攻撃されてしまいます。
 しかし予測が出来る攻撃に対して彼は、激烈な反撃を行うでしょう。

 また、このシナリオは「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 その性質上沢山採用はできないかもしれませんが、出来る限りがんばります!

 それでは、皆様の格好良い予測不能なプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『侵略渡来人『コルテス』』

POW   :    古典的騎乗術
予め【大昔にやった騎馬突撃を思い出す 】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    マスケット銃撃ち
【10秒間の弾籠め 】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【マスケット銃】で攻撃する。
WIZ   :    奴隷神使い
【ケツァルコアトルの噛みつき 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
天御鏡・百々
神を隷属させるのも
日輪の力を利用するのも許し難し
ここで討ち取ってくれようぞ!
(百々の本体の神鏡は日輪の神の神器)

持ち込んだ幾枚もの通常の鏡を念動力10で操り
コルテスの周囲に浮かべるぞ

そして、手元の鏡より『鏡渡り』を使用して
コルテスの死角より急襲だ!

破魔69を乗せた真朱神楽(武器:薙刀)にて
敵の防御の隙間を切り裂いてくれる(鎧無視攻撃5)
攻撃後は再度鏡渡りを使い、死角となる鏡から追撃だ

無理はせず、敵が戦闘手段を思い出す前に撤退するぞ
戦闘前に撤退用の鏡をコルテスから見えぬ離れた位置に置いてある
それを利用すれば撤退も安全であろう

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ連携歓迎
●本体である神鏡へのダメージ描写NG


シル・ウィンディア
略奪に、人を見下す様に…
おじさん、悪い人だねっ!
そんな人は、お仕置きしないとねっ!

初手は精霊電磁砲で敵の足元を【一斉射撃】で【範囲攻撃】!
直接当てるんじゃなくて、砲撃の煙&音で接近を悟らせないようにして
【空中戦】で敵の側面につけて
二刀流の光刃剣で【フェイント】を織り交ぜ【二回攻撃】

そのまま【残像】ができるくらいまで速度を上げる【空中戦】で
敵周りを飛び回って
こちらに注意を向けたら
【空中戦】で【フェイント】を駆使して精霊電磁砲を敵の目の前でパージしつつ後退
少しでも意表を突ければ…

その隙に【高速詠唱】【全力魔法】のUCで精霊電磁砲ごと
敵を撃ち抜きますっ!

これがわたしの全力全開っ!
全弾、もってけーっ!



●わすれている
「――おじさん、悪い人だねっ!」
 シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)の言葉に、コルテスはうんざりとした様子で片眉を上げた。
「集ってきた虫を踏み潰す行為が悪いと言うのならばそうだろうな」
 コルテスは別段同意を求めるでも無く、ケツァルコアトルの手綱を引き。
「神を隷属させるのも、日輪の力を利用するのも許し難し」
 別世界とは言え、神を乗騎と化す驕傲たるその振る舞い。
 何よりこの島を汚す行為に、天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)はぐっと息を呑んで愁眉を顰め。
「悪辣非道の振る舞いも、もはやこれまで! ここで討ち取ってくれようぞ!」
 朗々と言った百々の周りに、ゆらりと浮き上がったのは幾つもの鏡。
 敵へと向かって放たれた鏡に合わせて、一瞬で精霊電磁砲を展開したシルは頷いて砲を構えた。
「そうだよー! わるーい人は、お仕置きしないとねっ!」
 ぱちぱちと砲口で星の様に弾ける魔力。
 シルが流し込んだ魔力を一気に解き放てば、砲がケツァルコアトルの足元で炸裂する!
 ぐうるりと自らの周りを回る鏡。
 足元で炸裂した砲に生まれた煙幕、酷くつまらなそうにコルテスは息を吐いて。
「はン、まともに銃も打てんその身でどんな余興を見せてくれるというのだ?」
 彼を移す幾つもの鏡がぴかりと輝いて、煌めいた瞬間。
 精霊の加護を纏った外套に魔力を宿して、一気に翔び駆けたシルが突撃じみてコルテスへと距離を詰めると、精霊電磁砲を宙へと投げ捨てて、両手に光刃剣を宿した。
「言ったでしょ、お仕置きだよっ!」
「……くだらん」
 突風のように叩き込まれたシルの光刃を、マスケット銃の銃身で交わし受け止めたコルテスは吐き捨てるように言葉を紡ぎ。
「歓迎の余興すら十分にできんのか、お前らは――」
「いいや! まだだ!」
 鏡から鏡へ。
 鏡の世界を通じて、渡れ。
 そうして鏡の中から飛び出した百々が、マスケット銃を掲げたコルテスの脇腹へと背後より薙刀を抉りこむ!
「……ッ!」
 ぎり、と奥歯噛んだコルテスが反射的に肘を振るうが、既に百々は鏡を渡っている。
 割れるのはただ、鏡だけ。
「お土産が欲しいなら――」
 百々の攻撃と同時に光刃をひっこめたシルは、ちょうど手元へと落ちてきた精霊電磁砲を両手で受け止め、軽くバックステップ。
 漲る魔力を全て砲へと、叩き込む!
 警戒に身を震わせるケツァルコアトルの咆哮が天を衝くが、その手綱を握るコルテスはその慢心より『避ける事すら覚えては居ない』。
「わたしの全力全開ッ! 全弾もってけーっ!」
「奸譎なる輩よ、観念せよ!」
 シルの放つ四属性が籠められた魔力が炸裂し。
 再び鏡より姿を表した百々が、ケツァルコアトルの影より突き上げる薙刀。
 ぱっと鮮血が床へと落ち――。
「三十六計逃げるに如かず、という訳だ」
 同じ攻撃を繰り返せば、コルテスだって戦い方を思い出すだろう。
 百々はシルの腕を引き。
 二人はそのまま鏡の中へと、溶ける様にその姿を消した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

火神・五劫
随分と傲慢な輩だな、コルテスとやら
富士の噴火を目論み
数多の人々の命を奪わんとしたこと
けして許しはせんぞ!

コルテスの目の前で『オーラ防御』を展開
「いざ、尋常に!」
堂々と鉄塊剣を構える…そう、構えるだけだ
いかにもこれから接近して
切りかかりに行くと見せかけて、だ

本命の攻撃は【怪力乱神】にて行う
その場で行う蹴りの動作に合わせた
見えない蹴撃をお見舞いしてやろう

蹴りだけでは足りないか?
ならば拳も味わうといい

貴様が踏み躙ってきた者達の痛みはきっと
こんなものではなかろうよ
奪われた者の怒りを思い知るがいい!

※連携、アドリブOK


狭筵・桜人
お、強敵らしい態度のデカさ。
慢心してくれるのは有難いですねえ。
それがないと私ではかすり傷ひとつつけられませんから。

喚び出したUDCを傍らに、挨拶しときますね。礼儀正しいので。
こんにちは!良いお土産見つかりました?

奴隷神使いならUDCを見て使い魔で戦うと思ってくれないかな。
いざペット対決――と見せかけてUC発動。
隣の化け物はブラフです。私は“視る”だけ。

まぁ上手くいっても範囲攻撃じゃないので
ケツァルコアトル略してケツコの反撃に警戒して挙動を注視。
UDCはそのまま攻撃から【かばう】盾にして使い捨て。
動きを【見切り】逃げます。超逃げます。当て逃げです。

これお土産の【呪詛】です。持ち帰ってくださいね!



 かき消えた少女達に、コルテスは慍色を隠す事もせず。流れた血を弾くように腕を振るった。
「下等生物が……。揃いも揃って使えもせん癖に突いて直ぐ逃げるとは、全く鬱陶しい」
 悪態を吐く彼の前。
「随分と傲慢な輩だな」
「ハハ、強敵らしい態度のデカさですねー」
 火影の名を持つ鉄塊剣を携えた火神・五劫(送り火・f14941)は片眉を上げて、鹵獲したUDCを侍らせた狭筵・桜人(不実の標・f15055)がゆるく笑った。
 小さく嘆息したコルテスはケツァルコアトルの上より彼らを見下ろし。
「何だ、次の余興はお前達か?」
「はい、そうでーす! こんにちは、コルテスさん、良いお土産は見つかりましたか?」
 ぎらぎらと瞳を輝かせるUDCの頭をぽんぽんと叩いた桜人が、軽い調子であどを打ち。
「――富士の噴火を目論み、数多の人々の命を奪わんとしたことけして許しはせんぞ!」
 地獄の炎を防御に纏い身を低く、鉄塊剣を構えた五劫が戦意も顕にコルテスを睨めつけた。
「はぁ……お前達が邪魔をしなければ土産も見つかろうが。――常識で考えろ、羽虫を駆除する事で心が痛む訳も無いだろうが?」
 下らん事を言うヤツだ、とコルテスは肩を竦め。
「何処までも傲慢な輩だ、――いざ、尋常に勝負せよ!」
「ええー、私はそこまでめっちゃモリモリやる気って訳じゃないんですけれど……」
 構えた五劫と、UDCがコルテスを睨め付ける。
 桜人は一歩後ろで、視てるだけ。
 そう、視てるだけ。
 瞬間。
 コルテスの肌が苛らぎ、背に氷柱をねじ込まれたかのような悪寒がぞわぞわと身を侵す。
「……っ、お、まえ……ッ!?」
 桜人の琥珀色の視線の奥に揺れる、狂気の色。
「なんだか体調が悪そうですが、大丈夫ですか?」
 コルテスの額に一気に浮かんだ脂汗に、ただ桜人はやんわりと微笑んで。
 五劫がぎゅっと地を踏み切って、振り上げた片足。
 そしてコルテスへと――向かわない!
 その場で円を描くように彼の脚が空を斬った瞬間、念力に薙ぎ倒されたコルテスの身体が宙に浮いた。
「蹴りだけでは足りないだろう? 拳も味わうといい」
 フォロースルーから、軸足へと体重を乗せて。
 腰を入れて更に五劫が拳を振り抜くと、空中でコルテスが更に強かに身体を弾き飛ばされる。
「貴様が踏み躙ってきた者達の痛みはきっとこんなものではなかろうよ」
 過去の幸福は、過去より滲み出した妖に全て喰らわれた。
 奪われたのは、懐かしくも狂おしく愛おしい日々。
 ――過去にこれ以上未来を喰らわれてなるものかと。
 世界を全て喰らい、奪ってきた男を五劫は睨め付ける。
「羽虫共がァ……ッ!」
 ぐらぐらする頭。コルテスの一喝に嘶いたケツァルコアトルの手綱が引き絞られ。
 ケツァルコアトルが主人たる彼を護るようにその身を一度丸めてから、大口を開く。
「ナイス慢心ありがとうございました。あっ、これお土産の呪詛です、大切に持ち帰ってくださいね!」
 なんたって慢心してくれて居なければ、攻撃をした上で無傷で逃げる事も出来なかっただろう。
 食らいつこうと牙を剥いたケツァルコアトルへとUDCを盾代わりに投げ込んだ桜人は、更にその視線に呪詛を絡ませて、手をひらひらと振って後退する。
 なんたって病弱だから、あんまり戦場とかいると咳とかでてきちゃうもんね~。
 たいへん。
「――奪われた者の怒りを思い知るがいい!」
 退く間際にもう一発コルテスの顎に念力を撃ち抜いた五劫が、一気にバックステップを踏んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
ほう、随分と口達者の様だ
――ふふん
斯様に腕に自信があるならば
その手並み、拝見するとしよう

彼の満身の権化を仕留めるには
彼奴の想像から、更に上を往く魔術を行使せねばならぬ
描いた魔法陣より召喚するは【暴虐たる贋槍】
一本はフェイント、次で隙を突き死角を狙うよう
間髪入れずに槍を放っていく
然すれば何れは私の攻撃を覚えてしまう事だろう
――まあ、それも策の内だが
その内、奴は私の腕を勝手に理解するだろうよ
攻撃を避け、慢心の侭に竜を駆り、噛み砕かんと接近したならば
ぎりぎりまで引き寄せた後
竜に対して光の魔術で目潰しを試みる
そして高速詠唱で召喚した贋槍で包囲、頭上に落す
安心せよ、狙うはコルテスのみ

喜べ、大盤振る舞いだ



「鬱陶しい羽虫共めが、揃いも揃って小癪な事ばかりしおってからに――、態々潰されにまた姿を現すとはな」
「ほう、随分と口達者の様だ」
 汗を拭ったコルテスがマスケット銃を握り直すと、燃ゆる星を揺らめかせて首を傾いだのはアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)だ。
「斯様に腕に自信があるのならばその手並み、拝見するとしよう!」
 鼻を鳴らして笑ったアルバが振るった杖を擬したルーンソードが、ほうき星のように尾を描いた。
 ぴかぴかと星屑めいた魔力を散らして。風が渦巻き、生まれた幾本もの槍がコルテスへと撃ち込まれる。
「下らんと言っておろう、その様な攻撃――」
 一直線に向かってきた槍をケツァルコアトルの手綱を引いて避けたコルテスは、先程より幾度も狙われた事により死角にも注意を払う事を『思い出している』。
 軽く飛び退くだけで、本命であろう死角より矢の如く撃ち込まれた槍の合間を縫って。
 嘶いたケツァルコアトルが駆け奔る。
「……ううむ、避けるか。参ったな」
 杖を振るう度にほうき星を煌めかせて、アルバは眉を寄せて小さくつぶやき。
 その言葉に、コルテスは被虐に染まった唇を歪めた。
「では、そのままそのまま食らってやろう!」
 ――掛かった。
 風を纏うその身。
 槍を避けながら突進めいて突っ込んできたケツァルコアトルが、低い位置から鎌首を擡げてアルバへと大口を開き。
「このような稚拙な演技にも騙されてくれるとは、優しい限りだ」
 槍が避けられる事は策の内。
 敵がアルバの攻撃を避けてうかうかと距離を詰めたが、最後。
 アルバは瞳をぎゅっと瞑って、光の魔力を解き放った。
 瞬間。
 世界が白に染まる。
「!?」
 強い光にケツァルコアトルの視力が一瞬喪われ。
 身体をねじったアルバは、サマーソルトでケツァルコアトルの口を閉じてやるように、顎下を蹴り上げてバックステップ。
「――喜べ、大盤振る舞いだ!」
 アルバの魔力が再び膨れ上がり――。
 ケツァルコアトルの上へと跨るコルテスに向かって、風の槍が幾つも雨の如く降り注いだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
困った子だなあ
こんなのが味方で織田さんも可哀想に…
僕の得意な【精神攻撃】と【言いくるめ】で
悪い子には反省させよう

こんにちは渡来人さん
侍の国へようこそ
きみにこの国の文化を教えてあげるね
友好的な態度で【挑発】しつつ
UC【模範解答】を用いた強力な【催眠術】をかける

沢山の世界を滅ぼしたきみは悪い子だ
悪い子はごめんなさいしないといけない
この国では反省を『土下座』という儀式で表すんだ

両手両膝をついて座り
頭を深く下げてみて
ほら土下座したくなってきたでしょう

出来ないなら僕が手伝ってあげる
角度が足りないな
頭を踏み床につけさせる
『ごめんなさい』は?
【恐怖を与える】で駄目押し

よく出来ました
褒める事で更に精神的打撃を


リダン・ムグルエギ
へー
コアトルって面白い模様なのねー
デザインの参考になるかも
あ、アタシは見に来ただけだから
虫だと思って気にしないでね、侵略おじさん
(スマホで撮りつつ

というわけで、野次馬根性でおちょくりに行くわ
無理にカッコよく言うと精神攻撃ね

勿論対策は万全よ
アタシは事前に防御強化した催眠模様の入った服を着てるわ
此方を見たら、既にもう術中よ

コードで「三半規管と視界を揺らす」事で精神的にも視覚的にも不安定にさせ
噛みつきを一度回避ちゃう事で煽りの効果を高めるの
精神的に不安定にさせる毒煙を葉巻から撒いてるアタシに近づけば効率はさらにアップね


うん、いいものが撮れたわね
それじゃ、アデュー!

本格的な反撃前に脱兎のごとく逃げるわ



 スマホのモニタの中に映る、地に落ちたケツァルコアトル。
 ぼやけた緑色をタップすると、ピントが合う。
 うーん、よしよし。
「へー……コアトルって面白い模様なのねー」
 パシャと軽い音を響かせて、スマホで写真を一枚。
 リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)が柔らかな青髪をぴょっこり跳ねさせ。コルテスが死ぬほど嫌そうな顔をした。
「こんにちは渡来人さん、侍の国へようこそ」
 床に倒れたコルテスに向かって、どこか作り物めいた笑みを浮かべた鵜飼・章が(シュレディンガーの鵺・f03255)手を差し伸べるように腕を広げ。
「あっ、アタシは見に来ただけだから。虫だと思って気にしないでね、侵略おじさん」
 リダンはスマホを向けてもう一枚パシャー。
 めちゃくちゃ嫌そうな顔をするコルテス。
「……ッッ!」
 しかし、彼は言葉を紡ぐ事も出来ない。
 リダンの服の模様は、催眠のちからを宿した模様。それは彼女の得意とする衣装デザインを利用した攻撃だ。
「あれ、静かになっちゃった? インタビューくらいしたかったのだけれど」
 コルテスの顔に向かって葉巻からふう、とリダンが煙を吐けば。それもまた彼女の得意とする『毒』である。
 先程は瞳から、今度は服から。
 見るだけで、見られるだけでダメージを与えられる攻撃は、過去にもあっただろう。
 しかし、忘れていた。
 忘れていたからこそ。コルテスは今、自由を奪われている。
 ふらつきながらケツァルコアトルが身体を起こすも、主は揺れる視界にうつ伏いて、屈辱にそのかんばせを歪ませる。
「折角訪れてくれたんだ、きみにこの国の文化を教えてあげるね」
 言葉を重ねる章の声は、底冷えしそうなまでに優しく空寒く響くもの。
 ケツァルコアトルがリダンへと喰らいつかんと鎌首を擡げるが、『模様』のちからにケツァルコアトルもまた視界が揺れている。
 口を開いたまま、床へと頭を垂れる異界の神。
「おおっと! あぶないあぶない。でもその動きも勢いがあって良かったわ。うーん、創作意欲を感じちゃう」
 もう一枚パシャー。
 誂うような言葉を重ねて、軽く跳ねて避けたリダンがスマホのアルバムをスワイプしながら大きく頷いた。
「うんうん、沢山いいものが撮れたわね。それじゃ、アタシはこの辺で!」
「……ッ、待て……ッ!!」
 ぴょーいとリダンが脱兎の如く駆けだすと、コルテスが絞り出すような声音で吠えてマスケット銃を引き絞るが。
 くい、と章がその顎を引いた。
「駄目だよ、こっちを見て。――悪い子はごめんなさいしないといけないでしょう?」
「ええい、ああ、煩い……ッ」
 淡々と言葉を紡ぐ章は人間だ。
「……この国での最上級の反省の表し方があってね。『土下座』という儀式なんだけれど」
 人間であるというのに、どこか人間らしさの抜け落ちた声で章は、優しく優しく語りかける。
 それは、酷く、心地の悪い。――恐怖を生む響き。
「……やめ、ろ……っ!」
「ほら、両手両膝をついて座って、頭を深く下げてみて?」
「やめろッッ!!」
 『模様』のちからに身体の自由を奪われたコルテスは、章に向かって叫ぶ。
 その響きに宿るのは虞。
 抗いがたい心地悪さを、身体を跳ねさせて。
「……出来ないの? 仕方ないな、手伝ってあげる」
 章は、優しく優しく、笑う。
 困った悪い子には反省させなければいけないだろう?
 ……しかし、こんなのが味方で織田さんも可哀想にね。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

喜羽・紗羅
奴は装填に十秒掛かる……
だから、その前にこっちから撃つぞ
位置取り、隠蔽、陽動、砲撃――九秒で仕上げるんだ

(分かった――正念場ね)

まず戦場の全景を目視で情報収集
姿を隠して砲撃出来る場所を探すぜ
続いてダッシュでその場所へ
何か仕掛けてくるだろうが
フェイント使って上手く躱す

目標地点に着いたら私が分かれて待機
地形を利用し隠れてスマホで擲弾銃の照準を合わせるわ
装具展開、弾種榴弾、近接信管、残り何秒――
ええぃ数えてる場合じゃない!

俺は分身を悟られない様
そのまま社殿に飛び移る勇気で走って奴に向かう
攻撃は太刀で打ち落とし兎に角俺に目を向けさせる

奴の慢心を誘う為あと少し届かないフリをして陽動
――時間切れだ、髭野郎


鈴城・有斗
人間以上ってだけで偉そうな奴らも居れば、人間ってだけで傲慢な奴も居る。
オブリビオンになると性格まで悪くなるのかな。

UCダークハンドで自身を丸ごと影に包み、コルテスの周囲に影で作った同じ人型を自身から分裂するように広げて包囲していく
その際自身もコルテスの後ろに回れるようどれかの影に潜んで元居た場所から移動
包囲後さらに影を縦に伸ばして檻の様に敵を囲い尖らせた影の刃で一斉攻撃
攻撃の際、地面を這わせてコルテスの足元まで伸ばした影で敵の足を拘束(騎乗していたら細く尖らせた影で足裏を刺して縫いとめる)
同時に、影から飛び出しコルテスの後ろから切りかかる

同じ様な作戦ぽい人が居るなら、合わせて同時に攻撃したい所


境・花世
神さまでさえ敵わなかったとか
幾つもの世界を滅ぼしたとか、
そんなのはどうだっていいんだ

わたしの気に入ってるこの世界を壊そうとするのなら
何度でもあの海へ送りかえす、それだけ

中距離から記憶消去銃を撃ち、
自身へ意識を向けさせて
共に戦う仲間たちのために隙を作ろう

この花咲く身の異形はきっと目立つはず
ここにいるよとあえかに笑んで
攻撃を誘う――その刹那を見極めて、“滄葬”!

コルテスの至近にいる仲間のもとへ瞬時に転移
思いがけぬ位置から、さらに隠し武器の燔祭を敵の身に投擲して
その血を糧に百花王を咲かせよう

見たこともない花を、うつくしい花を
――今、手向けに、してあげる



「人間以上ってだけで偉そうな奴らも居れば、人間ってだけで傲慢な奴も居る」
 社殿の先にいまだ居座る渡来人を真っ直ぐに見やった、鈴城・有斗(未来を導く意志は今ここに・f18440)は朗と言う。
「――オブリビオンになると性格まで悪くなるのかな?」
「……何か勘違いしているようだな?」
 瞳を眇め口を開いたコルテスは、幾分か焦燥をした様子。
 猟兵達が攻撃をしては姿を消す、短い戦いを幾度も重ねた彼は少々戦いを『思い出して』きていた。
 ちりちりとへりつくような、あの焦燥感が燻る。
「たまたま私達に姿が似ているだけの下等生物と、態々口を利いてやっているというのに。私がどれほど気を利かせてやっているかも、その小さな脳味噌では理解が出来ないようだ」
 過去の栄光、敵を一方的に嬲る快楽は未だ訪れてはいない。
「ふうん。コンキスタドールと言うのは、本当に随分と傲慢で性格が悪いみたいだ」
 彼の返す言葉は唾棄すべき者として有斗に判断させる材料として、十分な程度には性格が悪い返事だ。
 有斗より伸びる影が薄く広がり、彼自身をとぷんと飲み込み。
 影がゆらゆら、揺れて、伸びて。
 彼より生み出された影は、彼と同じ大きさの人影を幾つも生み、さらに広がる。
「また下らぬ余興か。――もう、飽いたぞ」
 コルテスを囲んだ影達に、うんざりした嘆息を洩らした彼は、ケツァルコアトルの上で、マスケット銃に弾を籠めるはじめ。
 その瞬間。
 ひっそりと柱の影より二人の喜羽・紗羅(伐折羅の鬼・f17665)が駆けだした。

 ――おい、紗羅分っているな?
 奴は装填に十秒掛かる。
 位置取り、隠蔽、陽動、砲撃――九秒で仕上げろ。

 もう、……分かってるわよ。
 正念場って事でしょう?

 それとは逆方向から姿を見せた境・花世(*葬・f11024)が構えた銃口より弾を放ち。
 ケツァルコアトルは、弾をゆっくりと籠めるコルテスを護る形でその弾を受け止めた。
「――一気に鼠が増えた様だな、全くもってうっとうしい」
 自らに迫る幾つもの人の影も気になりはするが。
 それよりも先に自らに手を出した花世を、慍色に染まった視線で睨め付けるコルテス。
「そうだね。きみがいなくなるまで、きっと増え続けるよ」
 そんな彼と視線を交わして尚、微笑む花世。
 眼窩に咲き誇る大輪の八重牡丹の薄紅が、合わせてあえかに揺れた。

「きみがわたしの気に入ってるこの世界を壊そうとするのなら、……わたしは何度でもあの海に送り返してあげるよ」

 きみに、神さまでさえ敵わなかったとか。
 きみが、幾つもの世界を滅ぼしたとか。
 そんなのは、どうだって良いんだ。

 なんどでも、なんどでも。
 ――この世界に手を出すのならば、海へと送り返してやろう。
 それだけだ。

「そうか。では先にその海とやらで、待っていろ」
 冷淡に呟いたコルテスが、たっぷり10秒かけて弾を詰め終えた銃を笑う花世へと向けて。
「へッ、全く良く動く口だなァ!」
 その引き金が引かれようとした、その瞬間。
 銀に煌めく、刃筋。
 柱の影から紗羅――彼女の無頼漢の先祖『鬼婆娑羅』が太刀を振りかぶって、地を蹴って一気にその距離を詰めた。
「……ケツァルコアトル」
 見えている攻撃等、何も怖くないと言わんばかり。
 コルテスは斬りかかる彼女を見やることも無く、隷属する神に声を掛けて構わず引き金を引いた。
 コルテスの銃口より鋭く放たれた弾は、花世へと真っ直ぐに向かい――。
 身体を捻ったケツァルコアトルの尾が鬼婆娑羅の刃とカチ合って、鬼婆娑羅はその勢いに負けて弾き飛ばされ。
 強かに打ち据えられる身体。床を滑りながら鬼婆娑羅は、笑った。
 ……いいや、これで良い。
 届かない事で。
 攻撃を一撃防いだ事で。
 ヤツはなによりも、慢心してくれるだろう?
「――滄葬!」
 弾が彼女へと届く寸前。
 祈りに似た言葉を花世は口に。
 ざん、と。
 遠く波音が響いたその刹那、花世の姿は掻き消える。
「!」
 瞳を見開いたコルテス。
 何も居ない空間へと放たれた弾が、虚しく弾け。
「バーカ、髭野郎。何も見えてねェんだな」
「……時間切れだよ」
 ぺ、と口内に溜まった血を吐き捨てる鬼婆娑羅。
 その横に味方の元に現れる事の出来るテレポートで姿を表した花世は、コルテスに向かって花の種を投げつける。
「小癪な……!」
 コルテスが振り向こうとすれば、牙を剥く怪物の如く膨れ上がった影がコルテスを喰らうように広がった。
 取るに足らぬこと。
 防げるであろう。
 慢心から対策を怠ったコルテスを追い詰めるその影より。
「下らない余興で倒される気分を、たっぷり味わってもらおうかな?」
 飛び出した有斗が床を推し割る程踏み込むと、上半身を捻じり。
 鋭く息を吐くと、逆袈裟に刀で斬り上げる!
「ぐっ!」
 コルテスが咄嗟にガードにあげた腕より、ぱっと鮮血が散った。
「おい、退くぞ!」
 鬼婆娑羅の声に、同時に猟兵達は後ろへと駆け――。
「い、っけェ!!!!」
 刹那。
 隠れて機会を狙っていた紗羅の声が、朗々と響いた。
 腹に響く音を立ててコルテスへと炸裂する擲弾。

「……ッ!」
 爆ぜ焼ける肉の匂い。
 とくとくと溢れる血を吸って、大輪の花が咲き誇る。
 身体を蝕み、血を喰らい、あえかに揺れる百花の王。
 見たことも無い程、うつくしい花を手向けに。

「――あの海に、お還り」

 花世の言葉に、コルテスは気づいた。
 気づいてしまったのだ。
 このままでは、『勝てない』であろう事に。
「行け、ケツァルコアトル!」
 焦りの滲む主の声音にケツァルコアトルは、一目散に社殿を駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
予測ができない攻撃、と言われれば
――「視えない」攻撃は予測しようがないだろう

相対距離にして1000~1500m程度離れた、
上空にいる相手が、こちらからはしっかりと視える位置へ
樹上、建物の陰、岩陰など身を隠せればもっといい

相手の動きをしっかりと「視る」
一撃限り、針の穴を通すような狙撃になっちまうからな
万に一つも撃ち漏らすことのないように、しっかりと観察して行動予測
タイミングを見計らって、頭部を狙撃

最良は、他の猟兵の戦いへ気を向けているタイミング
意識が他へ向いている時は、その分気付きにくいだろう
無理であっても最低でも「こちらを見ていないとき」を狙うよ

慢心はあらゆる場面において致命的
死に繋がる隙だぜ


ヴィクトル・サリヴァン
まったく酷い奴だねー。
やってる事も腹が立てば他人任せの戦いもイラっとする。
こーいうのを地面に叩きつけて頭踏んで角へし折り見上げるしかできなくさせるってのも面白そうかもね。
…その位屈辱与えないと祟り神一柱増えちゃいそうだし。

海から泳ぎ神社に接近。
深めに潜り気配を消して様子見、
気づかれるか隙見つけたら銛を投擲、俺に注意を惹き付ける。
海なんだしシャチ位いるよ。…まあこっちだけじゃないかもね?
UC発動し上空からシャチの群を降らせて不意討ち狙う。
同時に高速詠唱で周囲の海を媒介に水魔法を発動、
鞭のような水塊作り叩きつけ騎竜ごと海に落とし引き摺り込む。
弾丸込める前に一気に畳みかけるよ。

※アドリブ絡み等お任せ


花剣・耀子
その根性の悪さは、大分業腹だわ。

――機械剣《クサナギ》、全機能制限解除。
あの過去脳に、当世の業を見せてやりなさい。

加速のトリガーを引いて接近。
同時に目を狙って五寸釘を、胴を狙って鋼糸を射出。
ひとまとめに引き摺り墜として、辿り着くための道を付けましょう。

御機嫌よう、侵略者。
おまえは何時の景色を見ているのかしら。
生憎おまえたちと違って、あたしたちは前へと進んでいるのよ。

十秒も与えない。
嵐を連れて、斬り果たす。

どれくらい文明を憶えているかが肝かしら。
二番煎じになりそうなら、他の助けになるよう、其れを以て此方に気を惹きましょう。
死ななければ其れで良い。
あたしが無理だって、おまえに辿り着く未来が在るわ。



 時は満潮。
 目前に広がるは海。
 今にも外へと飛び出さんと、ケツァルコアトルの手綱を握ったコルテスは低く宙を駆ける。

 ――機械剣《クサナギ》、全機能制限解除。

 今は予算の事など、四の五の言っている場合ではないのだろうから。
 チェーンソーに取り付けられた補助機構のトリガーを引き絞り、風のような速度で駆けて海と神との間へと割り込んだ、花を散らす嵐。
「御機嫌よう、侵略者。そんなに急いで何処に行こうというのかしら」
 釘弾と鋼糸を射出した花剣・耀子(Tempest・f12822)が、凛とケツァルコアトルの前へと立ち塞がって、小さく首を傾ぎ。
 放たれた五寸釘には、片腕をガードにあげ。傷口より更に芽吹きだした花を根付く肉ごと引き刳りながら、コルテスは吠えた。
「邪魔だ!」
 次いでマスケット銃へと弾を詰めようとした瞬間、コルテスの肩を更に貫く一本の銛。
「――ああ、まあ。海なんだしシャチ位いるよね?」
 眼下に広がる海よりカッ飛んできた銛は、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)の一撃だ。
 トボケた調子でウンウンなんて頷いてから、再びじゃぼんと水の中に姿を隠すヴィクトル。
 ……しかし本当に、まったく酷い奴だねえ。
 コルテスが今している事も、他人任せの戦いを重ねてきた事も。
 ヴィクトルからすれば、全てが気に食わない要素でしかなかった。
 ああ、あのクソみたいな顔を地面に叩きつけて、頭を踏みしめて、角をへし折って。
 屈辱に、恥辱に染めてやりたい。
 コルテスが奪ってきたモノを、全てあいつから奪ってやりたい。
 ヴィクトルは自分でも気づかぬ内に、きっと怒っていたのであろう。
 あの哀れな神の無念を晴らしてやる事が出来ないかと、水中を進みながら掌に魔力を宿し――。

「……ぐ、ぅッ……!」
 憎々しげに銛を引っこ抜いて顔を歪めたコルテスは、上空へと逃れようと。
 鋼糸が絡んだままのケツァルコアトルの手綱を引き絞る。
 しかしケツァルコアトルはその手綱を拒否するかのように、顔を無理矢理擡げて身を捩って。
「……言うことを聞け、この馬鹿野郎ッッ!」
 コルテスは叱責と共に、手綱を更に引くが――。
 轟く、甲高い嘶き。
 次の瞬間には、余りに遠くから飛んできた弾がケツァルコアトルの身体を貫いていた。

 ――視認していない場所から放たれた攻撃は、予測しようがないだろう。
 例えば、その距離が例えば、1000m先であったら?
 例えば、その距離が例えば、2000m先であったら?
 鳴宮・匡(凪の海・f01612)は、視えてさえいれば2916m先の敵であろうが、精確に急所を射抜く事が出来る力を有している。

 厳島――厳島神社の望むことの出来る対岸。
 遮蔽物の無い海の先が戦場だったという事は、匡にとって幸運だったと言えよう。
 直線距離にして、実に2300m。
 万に一つも撃ち漏らすことのないように。
 全てを研ぎ澄まして因果を見通す瞳を細めれば、そこは匡の射程範囲だ。

「……慢心はあらゆる場面において致命的な、死に繋がる隙だぜ」
 コルテスが社殿の外へと出てきてくれて良かったとも、出てこなければ良かったとも思える。
 狙撃なんて、行う必要がなければそれに越したことは無いのだ。
 匡が異能の力を籠めた一撃は、ケツァルコアトルを貫き――。
 ああ、アレは、主を庇ったのであろう、と匡は理解した。
 誇りを汚され、民を殺され。
 隷属させられて尚、あの神は自らより全てを奪った相手を庇ったのであろうと。
 ――すこしだけ、あの日を、思い出す。

「……あ?」
 コルテスのどこか間抜けにも聞こえる声。
 ケツァルコアトルの身体が、海へと向かって落下を始める。
「何だお前、……死んだのか?」
 コルテスの問いに、もう応えるモノは居ない。
 ああ、クソ。
 ……そうかよ。
 コルテスはマスケット銃を構え――。
「……祟り神にはならなかったみたいだね」
 そこに海より飛び出して突撃してきたのは、ヴィクトルの召喚した幾匹もの空飛ぶシャチ達であった。
 重ねて魔力で練り上げた水の鞭をヴィクトルが叩き込むと、手綱を握ったままのコルテスが空中へと投げ出され。

「あたしが例えば、ここでおまえに届かなかったとしても」
 コルテスを追って地を踏み切った耀子は太陽を背に、彼の上へと影を落とした。
 ねえ、おまえは何時の景色を見ているのかしら。
 ねえ、おまえはもう進む事もできない過去なのでしょう?
「おまえに辿り着く未来は、必ず在るのよ」
 コルテスのマスケット銃が、耀子の眉間に向かって構えられる。
 耀子は構うこと無く、大きく機械剣を振りかぶり。
 ねえ。
「生憎おまえたちと違って、あたしたちは前へと進んでいるのだから」
 もうお前には、1秒たりとも与えてやらない。
 嵐を連れて、斬り果たす。
 そして耀子の機械剣は、コルテスの脳天を貫き――。

 蕩けるように、解けるように。
 ケツァルコアトルの手綱を握ったままのコルテスの身体が、躯の海へと還ってゆく。

 対象を失った機械剣を振り抜ききりながら、海へと飛び込む形となった耀子は、一人盛大な水しぶきを上げ。
 ヴィクトルが彼女を回収すべく、すいすいとそちらへと泳いで行った。

 暫しの平穏を取り戻した、社殿。
 猟兵達は、またコルテスを討ち取る事に成功をしたのであった。
 揺蕩う水面。
 ――願わくは。
 哀れな神と傲慢な男が、もう過去より滲み出る事が無い様に祈りを捧げ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月23日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト