スペースシップ解放作戦
●帝国騎士、強襲
「この宇宙船はこれより、我ら銀河帝国の領土となる。抵抗は無意味だ」
茫漠たる宇宙の彼方より現れたその侵略者は、船内の住人たちに向かってそう告げた。
漆黒の機械鎧に身を包んだ騎士。それは、はるか昔に滅び去ったはずの宇宙の伝説、そのものの姿をしていた。
船を守護する鎧装騎兵の突撃も、ブラスター銃の一斉射撃も、その機械鎧に傷ひとつ付けられない。
騎士が腕を一振りするだけで、サイキックエナジーの嵐が吹き荒れ、隔壁は捻じ曲がり、兵士が吹き飛んでいく。
「抵抗は無意味だ」
漆黒の騎士は繰り返し告げる。その歩みを止められる者は誰もいない。
その後方からは、まるでロボットのように統一された動きで、顔の見えない歩兵の一隊が付き従う。
人々は船内のモニターから、彼らが自分たちの船を制圧していくのを見ていることしかできない。
そして人々は恐怖と共に知った。
かつてこの宇宙に覇を唱えた、悪辣なる銀河帝国の復活を。
●猟兵、逆襲
「緊急事態なの~!」
グリモアベースに集められた猟兵たちに、グリモア猟兵のサクヤ・ニイヅキ(ムーンレイカー・f01673)が告げる。
道化師の格好をしたミレナリィドールの死霊術士である彼女は、ドクロマークの爆弾型ボールをジャグリングしている。どうやらそれで緊急性を表現しているらしい。
「スペースシップワールドで、銀河帝国に制圧された宇宙船の情報をキャッチしたの!」
サクヤの予知によれば、制圧された船は食糧生産用スペースシップとしての機能を持っている。
となれば事態は宇宙船一隻の問題ではなく、この船から食糧を供給されている宇宙船すべてが、銀河帝国に命綱を握られたに等しい。
「一刻も早く、銀河帝国の連中をこの船から追い払う必要があるの!」
想定される敵は帝国騎士が一名と、彼の配下のクローン騎兵が一部隊。
彼らはすでに宇宙船の機能をほぼ掌握しており、船を奪還しに来るであろう敵の襲撃を警戒している。
「宇宙船への突入には、こっちで手配した小型宇宙船を使ってもらうの」
小型宇宙船の操縦はオートマチック自動車くらいの難易度で、誰でも操縦可能だ。
しかし接近に気付かれれば当然、帝国軍は迎撃してくるだろう。制圧された宇宙船に搭載された武装はスペースデブリ破壊用の熱線砲くらいのものだが、直撃すれば小型宇宙船くらいは破壊できる。
「でもラッキーなことに、この宇宙船が航行中の宙域の近くに、小惑星の集まる暗礁宙域があるの☆」
この暗礁宙域に身を隠しながら接近すれば、小惑星が敵の攻撃に対する盾となって、突入が容易になるだろう。
しかし暗礁宙域の移動はそれ自体が危険を伴う。密集する小惑星に衝突してダメージを負わないよう、スピードや回避力が求められる。
「そもそも迎撃を受けないように接近する、って手もあると思うの」
制圧された船は軍艦というわけではない。その索敵網は完璧ではないし、熱線砲がハリネズミのように船全体を覆っているわけでもない。
そうした敵の防衛の隙を見つけ出せれば、弾幕の薄い場所や気付かれない方角から接近することもできるかもしれない。
「そ~ゆ~のが面倒くさいって人は、正面突破って手もアリなの☆」
猟兵として身に付けた能力を頼みに、力尽くで迎撃を突破するという戦法だ。
言うまでもなく危険だが、上手くすれば敵の注意を引き付け、他の猟兵たちの突入をサポートする効果もあるかもしれない。
「みんなが同じ作戦をとる必要はないし、一人でやらなきゃいけないわけでもないの。難しいと思ったら、仲間を頼ってもいいの☆」
一人が小型宇宙船の操縦に専念し、もう一人が敵からの攻撃を迎撃する。そんな作戦も可能だろう。
「宇宙船への突入が成功すれば、その後はいよいよ帝国軍との戦いなの」
統率されたクローン騎兵の群れ、そして剣技と超能力を自在に操る帝国騎士。一筋縄ではいかない相手であることに間違いはないが、決して敵わない相手でもない。
「宇宙に支配者なんて必要ないの。ましてや"過去"に支配されるなんて、馬鹿らしい話なの」
かつて骸の海へと去り、今再び世界に帰還した、過去よりの侵略者オブリビオン。
彼らから未来を守れる者は、猟兵をおいて他にいない。
「みんな、頑張ってなの☆」
ボールをキャッチして一礼すると、サクヤは猟兵たちを送り出すのだった。
戌
皆様はじめまして、戌と申します。
いよいよ始まりました猟兵たちの戦い。私からの最初のシナリオは、星の海を舞台とした帝国との戦いになります。
うちのグリモア猟兵から幾つかプランは提示しましたが、突入のアイデアは他にもあるかもしれません。思いついたら気軽にチャレンジしてみてくださると幸いです。
以下、補足になります。
●シナリオの最終目標
帝国騎士の撃破。
●最初の目標
制圧された宇宙船への突入。
●宇宙船について
大きさは全長数百メートル程度で、船内で働いている住人は数百人ほど。
帝国軍の力に心を折られ、抵抗の意思を失っています。
戦闘に巻き込まれる恐れは基本的にありません。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしています。
第1章 冒険
『小型宇宙船で突入せよ』
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POW : 正面から力づくで突破する
SPD : 素早い移動や的確な回避で危機を切り抜ける
WIZ : 敵の警戒範囲を読んで隙をつく、電子機器をハッキングする
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トリテレイア・ゼロナイン
騎士を名乗りながら無力な食料船を襲うなど同じ騎士を名乗るものとして看過できません。
しかし御伽噺のように白馬で優雅に救出に向かうのは難しいですね
操縦技術も電子機器も詳しくない私は愚直に正面から最大船速で突破します。
迎撃を避けて宇宙船に乗り込めればそれでよし。
迎撃が避けられないならばユーベルコード「無敵城塞」で宇宙船の破壊をやり過ごして最大船速の勢いのまま食料船まで飛ばされていきましょう。ウォーマシンなので真空は問題ないはずです。外壁に取り付いて侵入します。
食料船の方向に飛ばされなかったら「無敵城塞」を解除して漂う破片を蹴って目指すしかありませんね…
侵入が派手なので後続への陽動にもなるでしょう
漆黒の宇宙を切り裂く、一条の閃光。
この宙域に集った猟兵たちの先陣を切ったのは、トリテレイア・ゼロナイン(ウォーマシンのパラディン・f04141)だった。
「騎士を名乗りながら無力な食料船を襲うなど、同じ騎士を名乗るものとして看過できません」
機械の身体に騎士道精神を宿した彼は、目標の食糧生産用スペースシップへ向けて一直線に小型宇宙船を飛ばす。
スロットルレバーは最大で固定され、後方から放たれるジェットが流星のように尾を引く。
「しかし御伽噺のように白馬で優雅に救出に向かうのは難しいですね」
トリテレイアは宇宙船の操縦や電子技術に明るくない。
故にこその正面突破。
故にこその最大船速。
自分が派手に動けば、後続の仲間たちへの陽動となることまで、折り込み済みだった。
異常なスピードで突っ込んでくる小型宇宙船の存在は、帝国軍にもすぐさま察知される。
艦に備え付けられた熱線砲の砲口がトリテレイアの宇宙船に向けられ、灼熱の光線が次々と放たれる。
熱線が船をかすめ、船内に警報が鳴り響く。それでもトリテレイアは進路を変えない。
そしてついに、一条の熱線が宇宙船を直撃した。
無音の爆発を宇宙空間に響かせながら、四散していく宇宙船。
……だが、トリテレイアは爆発の直前に無敵城塞を発動し、超防御モードとなって爆発を凌いでいた。
この状態では身動きのできない彼の身体は、直前までの宇宙船の加速と爆発の慣性に乗って、宇宙空間を漂っていく。
その向かう先は、食糧生産用スペースシップだ。
撃墜したものと判断されたのだろう、それ以上の妨害を受けずに済んだトリテレイアは、スペースシップの外壁に取り付くと無敵城塞を解除し、内部への侵入を果たしたのだった。
成功
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クオン・セルフィライト
食料はとても大事なもの、それを奪うものは決して許されてはいけない。
超高速機動で攻撃を翻弄し回避しながら、進入路に突入する。
無理そうなものが飛んできたら【剣刃一閃】で叩き斬る。
熱光線? だから何、私は猟兵、その程度こなせずしてどうするのか。
派手に侵入したのもいる以上、目もある程度それているだろうし。
トリテレイアの宇宙船が爆散した直後、それを好機と見て急接近したのはクオン・セルフィライト(双剣双銃・f00566)の宇宙船だった。
帝国軍の意識が完全に陽動へと向いたその瞬間を狙って、一気に敵艦との距離を詰めていく。
それに面食らったのは帝国軍だ。熱線砲が照準を再設定しようと右往左往する様が、その慌てようを物語っている。
対するクオンも、まるで蝶が舞うような機敏さで宇宙船を操り、敵の照準を絞らせない。
ようやく照準が合わさった時、クオンの宇宙船は既に敵艦に肉迫する距離まで来ていた。
あと少しで接舷できる……まさにそのタイミングで、熱線砲が光を放つ。
一直線に向かってくる熱線を見て、クオンはすっと操縦桿から手を離すと、
斬っ。
抜き放った刀から繰り出された剣刃一閃が、熱線を「斬った」。
熱光線、だから何だと言わんばかりのその技量は、猟兵にして概念すらも絶つという剣豪の名に恥じぬもの。
「食料はとても大事なもの、それを奪うものは決して許されてはいけない」
シンプルで、それゆえに強い想いを胸に、クオンは敵艦内部へと突入する。
大成功
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ジョゼ・ビノシュ
先の方々のおかげで少し時間が確保できたわね。この間にハッキングを成功させて無力化、せめて熱光線を撃てないくらいまで持ち込みたい…油断は禁物だけど、食料船のセキュリティなんてたかが知れているから。
もしそれでもダメそうなら、エレクトロレギオンを囮兼砲台にして突入することにしましょう。どのみち私も侵入ルートを確保しないといけないから、どこかなるべく内密に動けそうなところから入りたい。管制システムまで手を出すのは…難しいかしら。他の人と合流したいところね。
…商船みたいなものでしょう、これは。それを狙うなんて到底看過できないわ。
「先の方々のおかげで少し時間が確保できたわね」
そう呟くのはジョゼ・ビノシュ(曇蒼・f06140)。
装着した電脳ゴーグルに映し出される情報の流れを追う彼女は、物理的なものとは異なる戦闘の真っ最中だった。
その思考は電脳空間を飛び回り、敵船のセキュリティの奥深くまで侵入していく。
「食料船のセキュリティなんてたかが知れているわね」
とは言っても油断はしない。失敗時に備えて、囮兼砲台用のエレクトロレギオンも召喚している。
相手に電子戦の専門家はいないらしく、電脳魔術士であるジョゼを止められる者はいない。
やがて船の防衛システムまで辿り着いたジョゼは、熱線砲の機能を停止させた。
矢継ぎ早に閃光を放っていた砲台が、突如として沈黙する。
『何をやっている。早くシステムを復旧させろ』
傍受した船内通信で、ジョゼは苛立ちの混ざった男の声を聞いた。恐らくこの声の主が帝国軍の指揮官なのだろう。
「……商船みたいなものでしょう、これは。それを狙うなんて到底看過できないわ」
聞こえていないと分かっていても、そう呟かずにはいられない。
電脳ゴーグルを装着したまま、ジョゼは小型宇宙船を発進させる。敵が熱線砲の制御を取り戻す前に内部に侵入するために。
管制システムに介入し、自身の船が相手の索敵に掛からないように操る。
同時に侵入ルートの検索。目標の後部に古い物資搬入口を見つけると、そこへ進路を向ける。
護衛のエレクトロレギオンが戦う必要もない、見事な手際だった。
秘密裏に侵入を果たしたジョゼは、足を止めることなく動き出す。
合流のために、仲間の位置情報を検索しながら。
成功
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カル・フラック
ふむ、これはシューティングゲームみたいなもんっすね。俺にかかればどうってこと無いっすよ!
共闘モードになって操縦役とナビゲート役に分かれた上で、暗礁宙域を乗り切って行くっす。
操縦時にはゴーグルやらデバイスを小型宇宙船に接続して、操縦精度を高めてみるっすよ。
みんなのおかげでこっちに意識は向いてないだろうけど、小惑星に衝突は洒落にならないっすしね。
ゲームで鍛えたテクニックで上手いこと避けてみせるっす。
正面から突破する者、裏口から忍び込む者――
猟兵たちがそれぞれの手段で敵船に侵入する中、カル・フラック(ゲーマー猫・f05913)が選んだのは暗礁宙域に身を隠しながらの接近だった。
他の猟兵の陽動や妨害によって、帝国軍の意識はこの宙域から逸れている。もし発見されたとしても、漂う小惑星が攻撃を防ぐ盾となる。
それはカルの思惑通りだったが、同時に小惑星は彼の移動を阻む障害でもあるのだ。
「ふむ、これはシューティングゲームみたいなもんっすね。俺にかかればどうってこと無いっすよ!」
暗礁宙域を少し飛び回ることでコツを掴んだカルは、慣れた指さばきでゲームデバイスを操作する。
「隠しコマンド発動っす!」
デバイスの画面から光が溢れ、カルの隣に背丈や格好がそっくりの分身が現れる。
しかしカル本人の毛並みが茶色いのに対し、現れた分身は白い毛並みをしている。よく見れば服装も若干違う。
自分自身の「2Pカラー」を出現させて共闘する、それがバトルゲーマーの彼が操るユーベルコードなのだ。
「ゲームで鍛えたテクニックで」
「上手いこと避けてみせるっす」
1Pカルが操縦席に愛用のケットPCを接続すれば、宇宙船はゲームの自機のような変幻自在の機動で暗礁宙域を飛び回る。
そして2Pカルはレーダーに電脳ゴーグルを接続し、この宙域を抜ける「攻略ルート」を的確にナビゲートする。
自分同士だからこそできる完璧な協力プレイの前には、暗礁宙域もイージーモード同然だった。
「はい、ステージクリアっす」
一度も被弾することなく暗礁宙域を突破した二人のカルが、互いの拳をこつんとぶつけあう。
その勢いのまま、彼の宇宙船は敵船内へと突入するのだった。
成功
🔵🔵🔴
坂之上・聖
船内にはケガ人や子供も残ってるはず、助けないと!
未成年だし運転は得意じゃないけど、できることを試そう。
まずは通信で獣奏器の音色が届けられないか試すよ。食料生産してるってことは家畜も居るはず、その子たちに協力してもらって、暴れ出したら慌てるんじゃないかな。
あとは、今までの侵入経路と応戦の内容から、カメラの位置を推測しよう。
そしてできるだけ少ない位置からそっと近づく。
どうしてもカメラの視覚がない場合は、サモニング・ガイストで真っ黒な霊を召喚して、カメラを塞いで全速前進! 思い切りも大事だね!
今でのハッキングで防衛網も緩んでるはず。
頼むよ、小型宇宙船さん!
「船内にはケガ人や子供も残ってるはず、助けないと!」
弱き者を虐げる帝国への怒りを胸に秘めるのは、坂之上・聖(ひとりどうぶつえん・f00423)。
不慣れながらも懸命に宇宙船を操る彼の頭には、ある秘策があった。
「まずは通信が届くかどうか……よし、通じた!」
ハッキングによって混乱する敵船の通信システムに割り込んだ聖は、おもむろに獣奏器を奏でる。
食糧生産船の内部に不思議な音色が流れだし、船内の人間は住人、帝国軍問わず何事かと首を傾げる。
だが、その音色に最も反応したのは、食糧生産のために船内で飼育されていた家畜たちだった。
「モォォー!」
「メェェー!」
「コケェーッ!」
ウシが、ヤギが、ニワトリが、ビーストマスターたる聖の呼びかけに応えて暴れだす。
ケージを壊し、飼育区画から飛び出して、さならがブレーメンの音楽隊を思わせる大騒ぎが始まった。
とはいえ普通なら、ただの動物がオブリビオンの脅威になり得るはずもない。
しかし幸運は聖に味方した。
「家畜の飼育区画で異常発生だと……まさか、敵の破壊工作か?」
度重なる侵入とハッキングを受けた帝国軍は、そこに振って沸いたこの騒動を過剰に警戒してしまった。
宇宙生活において家畜が貴重な資産であることは間違いないので、彼らの警戒も杞憂とは言えないものだが。
何にせよ、騒ぎの詳細を確認するために帝国軍は人員と手間をそちらに割くことになる。
「よし、今のうち。頼むよ、小型宇宙船さん!」
敵の注意が内に向いている間に、聖は敵のセンサー網を避けて敵船に侵入する。
仲間の活躍と幸運があったとはいえ、彼の作戦は予想以上の成果を挙げたのだった。
大成功
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第2章 集団戦
『クローン騎兵』
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POW : ジェノサイダー
【自身の寿命】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【ジェノサイドモード】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : インペリアル・インテリジェンス
【銀河帝国式戦術ドローン】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ : ブラスターレイン
【熱線銃(ブラスター)】を向けた対象に、【連続射撃】でダメージを与える。命中率が高い。
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帝国軍に制圧されたスペースシップへの侵入を果たした猟兵たちは、まずは仲間と合流するために動き出す。
情報技術に長けた猟兵がいたこともあって、この合流はスムーズに成し遂げられた。
船内は既に混乱状態にある。猟兵の侵入、ハッキング、家畜の暴動など、帝国軍の予想を超える事態が次々と起こったがゆえだ。
このチャンスを勝利へと繋げるために、猟兵たちは帝国軍の指揮官がいるであろう、この船の中枢へと向かう。
しかしその途上で、彼らは立ち塞がる兵士の一団と遭遇する。
「帝国に従わぬ反逆者を発見。抹殺する」
「抹殺する」
「抹殺する」
「抹殺する」
一糸乱れぬ統率、不気味なほどに連携の取れた動きで彼らは熱線銃を構えた。
銀河帝国の主要戦力のひとつ、クローン騎兵。優秀な兵士をクローン化し大量生産したそれは、生命ではなく「兵器」として徹底的に効率化された存在だった。
帝国への鋼の忠誠心を宿し、その身を纏う機械鎧を脱ぐことも許されぬ、戦うためだけに生まれた兵士。
銀河帝国の負の象徴と言うべきそれが今、オブリビオンとなって現代の人々に再び銃口を向ける。
ここを突破しなければ、指揮官のいる中枢へは辿り着けない。
決意を胸に、猟兵たちは各々の戦闘態勢を取った。
クオン・セルフィライト
均一な質を保った量による戦術。それは戦術の基本的にして基礎的なもの。
だけれど、時として質が量を凌駕することがあると言うことを教えてやろう。
「双剣双銃、名乗る意味はないだろうけど」
そう名乗りながら、機先を制して敵の真っ只中に突入する。
【人狼咆哮】は無差別で味方を巻き込んでしまうから、敵しかいない所でそれを用いるため。
一気に範囲攻撃でなぎ払い、数の優位を減らしてしまおう。
「グルルルルルルルル、アオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」
咆哮一閃、放たれた衝撃波は敵を打ち破るために叫ぶ戦火の始まりの雄叫び。
「双剣双銃、名乗る意味はないだろうけど」
そう告げながら愛刀と愛銃を手に先陣を切ったのはクオン。
対するクローン騎兵隊からの返答は当然のように皆無。ただ無機質に接近する敵を迎撃するのみ。
「インペリアル・インテリジェンス起動」
「起動」
「起動」
召喚されたドローンが兵士たちの動作性を向上させ、コンマ1秒の誤差もない熱線銃の一斉射撃が放たれる。
完全に均質化された物量による攻撃。それは戦術のもっとも基礎的なことだが、それゆえに強力であることをクオンは認める。
「だけれど、時として質が量を凌駕することがあると言うことを教えてやろう」
姿勢を低くして人狼の少女が駆ける。その俊敏な動きはまさに獣の如し。
クローン兵の狙いは正確。しかし正確すぎるがゆえに、予測を超えたクオンの機動を彼らは捉え切れない。
熱線の雨を掻い潜りながら、クオンが向かうのは敵陣の真っ只中。
彼女が先陣を切ったのは、自らの技で味方まで傷つけてしまわないためだ。
今、クオンの周囲には敵しかいない。この状況でなら何も遠慮する必要はない。
「グルルルルルルルル、アオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」
咆哮一閃。
放たれた衝撃派が破壊の嵐となって、クローン兵の群れをバラバラに吹き飛ばす。
至近距離にいた兵士の中には、その一撃で戦闘不能になった者もいるほどだ。
クローン兵は苦痛に表情を歪めることも、悲鳴を上げることもない。だが、その連携は大きく乱された。数の優位とは、個々の連携があってこそ活きるもの。
戦火の始まりを告げるクオンの人狼咆哮は、敵部隊の戦闘力を確実に削いでいた。
成功
🔵🔵🔴
龍統・光明
やっぱり物量は怖いな。
常に囲まれない様に動き続け攻撃
数を減らす事を優先し
攻撃より回避重視
体力が2割切ったら撤退
乱された敵陣へと続いて飛び込んだのは、龍統・光明(千変万化の超越者・f02421)。
その手には漆黒の長刀【絶】を携え、氣のオーラを纏った彼は、自らの流派が奥義を解放する。
「喰らい尽くせ、総餓流秘奥義【創破】顕現」
湧き上がった光明の氣が、威風堂々とした双頭の龍の形を成す。
光明と龍は互いの死角を補いあい、敵に包囲されぬよう戦場を駆け回りながら、二心一体の動きで敵を蹴散らしていく。
だが、クローン騎兵もただ薙ぎ払われるだけの木偶人形ではない。
動揺という言葉を知らぬ彼らは一度は崩された隊列を迅速に組みなおし、反撃を開始する。
「インペリアル・インテリジェンス再起動。敵の行動予測をアップデート」
戦術ドローンの援護の下、再び放たれる熱線銃の一斉射撃。
回避を重視していた光明だったが、敵の攻撃は一射ごとに精度を増していく。
そしてついに、幾つかの熱線が彼の身体を焼いた。
「やっぱり物量は怖いな」
自らが定めた限界点を意識し、まだ体力が残っていることを確認すると、光明は刀を構え直した。
苦戦
🔵🔴🔴
ユア・アラマート
数が多いな。まあ、突破しなければ道が拓けないというのであれば行くしかない
敵陣へ向けて視線を走らせ、少しでも層が薄い部分が無いかを確認
攻撃をぶつける場所をその場で索敵して目星をつけ、そこに穴を開ける作戦
数が減るに越したことはないが、私達の最終目標はここじゃないからな
できるだけ効率的に片付けて、体力を温存させておきたい
花片の花吹雪で薄い部分に穴を開け、ある程度敵集団を分断させてから、合流前に人数が少ない塊を率先して攻撃
少しずつでも確実に、敵を減らして此方が優位になる状況を作り上げていく
トリテレイア・ゼロナイン
敵も態勢を整えてきましたね。
相手集団の矢面に真正面に陣取り「怪力」でじりじりと前進して前線を押し上げます。攻撃は「武器受け」「盾受け」で対処
接触したら大型シールド殴打で「鎧砕き」、装甲服ごと砕いていきましょう。
主目的は敵の殲滅ではなく、猟兵側の攻めの態勢準備の時間稼ぎ。
大技を繰り出す準備中の仲間がいれば積極的に「かばう」で援護します。
騎士と振る舞う者として皆様の盾となりましょう。
ジョゼ・ビノシュ
エレクトロレギオンで前衛を援護する。なかなか乱戦状態だけど、敵も多いし、上から撃てば問題ないと思うし。
原則として、攻撃する場合には全機で弱っている敵から集中砲火。これを主眼に置けば、前衛の戦線保持も楽になるはず。前衛が足りないようなら囮に使って相手を撹乱して隙を作る。孤立している人にはいくつかそちらに向かわせるわ。
戦線維持の都合から、火力どうこうよりなるべくドローンの数を確保して支援したいところ。
「敵も態勢を整えてきましたね」
「やはり数が多いな。まあ、突破しなければ道が拓けないというのであれば行くしかない」
鋭い視線を戦場へと向けながら、トリテレイアとユア・アラマート(セルフケージ・f00261)が呟く。
現在の戦局はほぼ五分と五分。勢いは猟兵側にあるが、クローン騎兵も損耗を恐れぬ覚悟と数の力で対抗する。
この拮抗状態を有利に傾けるために、二人の猟兵は視線と言葉を交わす。
「敵陣を観察する時間が欲しい。頼めるかい?」
「勿論です。騎士と振る舞う者として皆様の盾となりましょう」
重厚な盾と剣を手に、トリテレイアが前進する。
超重量の装甲を纏った巨躯のウォーマシンが進撃する様は、まるで城塞が動いているような威圧感である。
それに動揺したというわけでは無いだろうが、クローン兵は攻撃を彼に集中させる。
狙いやすい的と判断したのかもしれない、だがそれは誤りだ。降り注ぐ熱線をトリテレイアは盾で受け止め、あるいは剣で逸らしてみせる。
稀に受け切れなかった熱線が直撃しても、怪力と巨体を誇る彼はその程度では小揺るぎもしない。
そのままゆっくりと敵陣に接触すると、最寄にいたクローン兵を盾で殴打する。
3メートル近い質量の塊を叩き付けられたクローン兵の鎧はぐしゃりと凹み、その場に崩れ落ちた。
トリテレイアの進撃によってじりじりと戦線を後退させられていくクローン兵団。
この状況を打開するべく、彼らは新たなコマンドを口にする。
「ジェノサイダー起動」
「全武装のセーフティを解除」
「ジェノサイドモードへの変形開始」
クローン兵の持つ熱線銃が、より禍々しく凶悪な形状へと変化していく。武装の封印を解き、殺傷力を向上させるユーベルコードである。
その力の代償は、自らの生命。いくらでも換えのきく「消耗品」である彼らにとって、それは余りにも安すぎる代償だった。
強化された熱線銃が、今度こそトリテレイアを撃ち抜くために、その銃口を向ける。
だが、クローン兵がトリガーを引く寸前、突如として戦場に銀の花吹雪が舞った。
「間に合ったな」
敵の陣容を完全に把握し終えたユアが、自らのユーベルコードを放ったのだ。
花片――インサイト・エッジ。吹き荒れる銀の花弁は、その一片一片が敵を追尾し切り裂く薄刃。
「裂いて、咲いて」
ユアが指差せば、花片は敵の隊列の脆くなった箇所へと殺到し、兵士たちを分断していく。
一つの強固な集団から、幾つかの小さな集団へと。
そして、その中でも最も数の少ない集団を、包み込むように花片が殲滅する。
「私達の最終目標はここじゃないからな。できるだけ効率的に片付けて、体力を温存させておきたい」
少しずつでも確実に。敵の強さの要である「連携」を破壊して、此方にとって有利な状況を作り上げるのがユアの狙い。
味方と合流しようとするクローン兵に、させじと尚も花片を舞わせ続ける。
ならばユアを先に倒そうと熱線銃を構える兵士の射線上には、トリテレイアがその巨躯を以って立ち塞がる。
「援護するわ」
そこに追撃を仕掛けたのは、ジョゼがエレクトロレギオンで召喚したドローン軍団だった。
彼女の狙いは有利に傾いた戦線の維持。ドローンで敵を撹乱し、隙が生じれば弱った敵に向かって全機での集中砲火。
「なかなか乱戦状態だけど、敵も多いし、上から撃てば問題ないわよね」
数の力を削ぎ落とされたクローン兵が、数の力に各個撃破されるのは、皮肉な逆転劇だろう。
インペリアル・インテリジェンスによって召喚された戦術ドローンにも、ジョゼのドローンは攻撃を仕掛け、敵の戦闘力を低下させていく。
「孤立している人はいない? いくつかそちらに向かわせるわ」
自らは後方から戦場を見渡すジョゼは、時には味方の護衛や囮にも、臨機応変にドローンを操ってみせる。
「敵戦力の増大を確認。ブラスターレイン発動」
この新たな脅威に対して、クローン兵は熱線銃の連続射撃で対抗しようとする。
ジョゼの主目的はあくまで支援。無理に敵を倒すよりもドローンの数を保つことを優先し、即座に回避行動を取らせる。
エレクトロレギオンは耐久性に難があるため、それでも数機が撃墜されるが、大きな被害は出ていない。
結果的にジョゼのドローンが囮となっている隙に、トリテレイアが前線を押し上げ、ユアの花片が追撃する。
個性豊かな猟兵たちの連携は、均質化されたクローンの連携を上回りつつある。
ここまでの攻防で、クローン騎兵の残存兵力は当初の二割以下にまで減少していた。
成功
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カル・フラック
スペースシップに入れたのはいいんすけど、やっぱりいるっすよねこういう量産型。多分性能はそこまでじゃないだろうし、物量には物量で対抗っすよ。
てことで上空にプログラム展開、実体化させたブロックを雨あられと落っことすっす!それなりに高さがある分、頭に落ちたらぐわんぐわんするだろうし。ここまでで大分人数も減ってるだろうから、掘り起こせないレベルまで大量に落として生き埋めにしてみるっすかね。
「中に入れたのはいいんすけど、やっぱりいるっすよねこういう量産型」
数を減らしながらも抵抗を続けるクローン兵を見据えながら、カルはゲームデバイスを操作する。
「多分性能はそこまでじゃないだろうし、物量には物量で対抗っすよ」
デバイスの画面に「GAME START」の文字が躍り、展開されたプログラムが戦場の上空で実体化する。
赤い正方形、青い長方形、緑の凸形――色も形も様々なそれは、カルが最も得意とするジャンル、パズルゲームのブロックだった。
「解けるもんなら解いてみるっすよ!」
カルの号令と同時に、大量のパズルブロックがクローン兵目掛けて落ちていく。
「理解、不能」
「意味、不明」
兵士たちは熱線銃を連射してブロックを破壊しようとするが、一つ二つ破壊しても雨霰と降り続けるブロックの物量に抗うには、残存兵力が少なすぎた。
ある者はブロックに囲まれて身動きが取れなくなり、またある者はブロックが脳天に直撃して立ちくらむ。
それでもブロックは止むことなく彼らの頭上に降り積もっていき――
「残念、ゲームオーバーっすね」
カルがそう告げた時には、兵士たちは完全にブロックの生き埋めとなっていた。
まだ戦闘力の残っている個体がいたとしても、その中から脱出するのは不可能だろう。
戦うために作られた存在には無縁の「ゲーム」という娯楽の力が、彼らにトドメを刺したのだ。
そして、積み上がったブロックは上り階段のような形を組んで、先へと進む道を作っている。
障害を排除した猟兵たちは、決戦のラストステージへと向けて走り出すのだった。
成功
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第3章 ボス戦
『帝国騎士』
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POW : インペリアルブレイド
【念動力を宿した「飛ぶ斬撃」】が命中した対象を爆破し、更に互いを【念動力の鎖】で繋ぐ。
SPD : ダークフォースバリア
自身に【鮮血の如きオーラ】をまとい、高速移動と【赤黒い電撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : インペリアルフラッグ
【念動力で形成した帝国の旗】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を『帝国の領土』であると見る者に認識させ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑17
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クローン騎兵部隊の妨害を突破した猟兵たちは、ついにスペースシップの中枢へと辿り着く。
そこに待ち受けていたのは、漆黒の機械鎧に身を包んだ一人の騎士だった。
その手には、赤黒い色に染まったフォースセイバーが握られている。
「貴様らか。我ら帝国の領土を荒らす反逆者は」
猟兵たちを目にした騎士は、冷酷な声でそう告げた。
彼にとってこのスペースシップは既に帝国の一部であり、それを解放しようとする猟兵こそ侵略者、という認識なのだろう。
あるいは、この銀河全てが帝国の統べる国土だと、今も信じているのかもしれない。
「ここまでよく辿り着いたものだが、スペースデブリの如き雑魚共に名乗る名はない。帝国騎士の力、その身に刻んで死ぬがいい」
その言葉から感じ取れるのは、傲慢なまでの己の力に対する自信。
だが、この騎士がその傲慢さに見合う力を持っていることは間違いない。
果たして、この戦いに勝利するのは過去か、現在か。
スペースシップの運命を決める決戦の火蓋は、切って落とされた。
シオドリック・ディー
「いたな!おまえがここの親玉ですか!」
「騎士が相手なら、こっちも騎士でいきます!」
技能【高速詠唱】【全力魔法】を併せユーベルコード起動。オレは後方に下がり戦況を見極めます。
襲ってくるフォースセイバーや旗を槍で叩き落とし攻撃を繰り出す。旗の効果で地形状態が変化したら、手に持った杖で地面を指し、こう言います。
「帝国の領土だーって言ってますけど、この宇宙に支配者なんていらないですから。さっさと星海の藻屑と消え去ってくださいね!」
こちらの騎士へ【2回攻撃】を付与し戦闘力を上げます。手数で翻弄します。くらえー!
戦いの先手を取ったのは猟兵側だった。
「いたな! おまえがここの親玉ですか!」
びしっ、と帝国騎士に指を突きつけて、シオドリック・ディー(チョコミルクミント・f03565)がユーベルコードを発動する。
「騎士が相手なら、こっちも騎士でいきます!」
現れたのは槍を構えた勇壮な騎士。シオドリックが操るゼンマイ式ガジェット、オートマタの一体だ。
「さーあ、蜂の巣攻撃だ!」
後方に控える主の命令に応えて、槍騎士のオートマタが前進する。
「フン。旧式の機械人形か」
傲慢な態度を崩さず、帝国騎士は念動力で帝国の旗を作り出すと、オートマタを払いのけようとする。
旗の形をしていても、その実態は念動力の塊だ。触れれば只では済まないそれを、オートマタは槍で受け流す。
しかし、帝国騎士が旗を翻すたびに黒いオーラが周囲に広がり、オーラに染まった地形が帝国騎士の有利なように歪んでいく。
その変化にシオドリックは眉根を寄せて、手にした杖を突きつけた。
「帝国の領土だーって言ってますけど、この宇宙に支配者なんていらないですから」
「笑止。帝国の繁栄は永劫不滅。すなわち宇宙の支配も永遠なのだ」
「そんなの冗談じゃありません。さっさと星海の藻屑と消え去ってくださいね!」
両者の会話は平行線。互いの力をぶつけ合うことでしか、未来は切り拓かれない。
「くらえー!」
シオドリックのオートマタが繰り出すのは、雷の如き高速の刺突。
その初撃を、帝国騎士はフォースセイバーで受け流す。だが、直後に放たれた二撃目の刺突が、帝国騎士の肩を掠めた。
「何……?」
掠り傷とはいえ、予想外の手傷に帝国騎士が動揺する。その隙を逃さず、オートマタは更なる連撃を放つ。
「小癪な!」
ゼンマイ仕掛けの騎士の手数に翻弄されながらも、帝国騎士はその連撃を切り払う。
戦いはまだ、始まったばかりだった。
成功
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クオン・セルフィライト
「……雑魚かどうかはその身で覚えるといい」
銃を両手に、双剣双銃の名にふさわしき構えを取って。
白兵射撃戦闘によって近接戦闘で行動を封じていく。
インペリアルブレイドを撃たせないように、かつ、近接戦闘によって高速行動も封じるように。
どちらかと言うと倒すための戦いではなく、他の猟兵たちの為の布石となるような行動を心がける。
つまる所、足止め、行動の抑制を主目的とする。
二人の騎士が切り結ぶ前線へと次に踏み込んだのはクオンだった。
その両手に二挺のリボルバー銃を構え、疾風の速度で近接戦の間合いに飛び込む。
「銃を持ちながら、わざわざ我が剣の間合いに入ってくるとは」
「……雑魚かどうかはその身で覚えるといい」
クオンのその言葉には、自らの技と力に対する確かな誇りがあった。
「――――その身に刻め、鉛の鼓動」
双銃乱舞・鉄火乃嵐。毎秒14発の速度で放たれる銃弾の嵐が帝国騎士を襲う。
対する帝国騎士は鮮血の如きオーラを身に纏い、残像を残すほどの速度で銃弾を回避すると、掌から赤黒い電撃を放って反撃する。
クオンは跳躍して電撃を避けると、船内の天井を蹴って加速し、帝国騎士の死角に回りこんでさらに銃撃を放つ。
回避や移動を織り交ぜて近接戦闘の距離を保ちながら、一瞬たりとて銃撃を途切れさせない。その姿はまさしく双剣双銃の二つ名にふさわしい。
「成程。動きは悪くない。だがそれだけでは私を倒すことなど不可能だ」
帝国騎士の言うとおり、銃弾は騎士の身体を掠めはしても、高速移動する騎士に有効打は与えられていない。
「どうやら貴様の技は、我がダークフォースバリアとの相性は良くないようだな」
「……それでも構わない」
騎士の耳に届かぬようにクオンは呟く。
彼女の狙いは、この一手で帝国騎士を倒すことではない。騎士の行動を抑制し、味方のための布石を打つこと。
常に近接戦闘の間合いを保つことで、相手が遠距離攻撃を放つ隙を封じ。
弾幕と近接攻撃の合わせ技で足止めし、高速移動の範囲も狭める。
知らず知らずのうちに、騎士はその行動を制限されつつあるのだ。
この布石が実を結ぶ時は必ず来る。
その時を信じて、クオンは引金を引き続ける。
成功
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坂之上・聖
うう、戦闘は苦手だけど、避難してる人や動物の為にも頑張らないと!
「あなた達の目的は何ですか」
「退いては貰えませんか」
一応確認しよう。
決裂したら、以下の行動を取るよ。
弱点の検証。
言動から推察すると、あの騎士は高速移動で飛び道具を避けることが得意なんじゃないかな。
剣技も得意そうだけど、不意打ちに動揺してる。
察するに、精神的な攻撃や魔法なんかが不得手じゃないかな?
「銀河帝国の時代は終わりました!」
「終わったんです!」
帝国の威光に触れて精神的に揺さぶってみよう。
そこにサモニング・ガイストの【炎】を放つことで、隙が作れないか試すよ。
そして情報共有する。
僕は弱い。
でも、僕らは強いんだ。
後続の人、頼んだよ。
「うう、戦闘は苦手だけど……」
守るべきもののため、聖も戦場に足を踏み入れる。
サモニング・ガイストによって召喚された古代戦士の霊が、槍を手に帝国騎士に挑みかかる。
「また奇怪な技を使う……これは超能力か?」
帝国騎士は再びインペリアルフラッグを発動して古代騎士を迎え撃つ。
その戦いを観察しながら、聖は帝国騎士に問いかける。
「退いては貰えませんか」
「愚かな。退くべきは帝国の領土を荒らす貴様らだろう」
逃がすつもりはないがな、と帝国騎士は不敵に告げた。
元より聖も本気で相手が退くとは考えていなかっただろう。
完全に対話が決裂したことで、彼も覚悟を決める。
聖が指示を出すと、古代戦士の霊の動きが変わる。
それが本気の一撃を放つ構えだと悟った帝国騎士は真っ向から受けて立つ。
「ようやくやる気になったか。来るがいい」
「行きます!」
古代戦士が渾身の刺突を放つ。だが、騎士は念動力の旗を盾として広げ、それを受け止めてみせた。
この程度かと騎士がほくそ笑んだ時――
「銀河帝国の時代は終わりました! 終わったんです!」
魂を震わせる聖の叫びと同時に、槍の矛先から真紅の炎が放たれた。
「何ぃっ!?」
予想外の攻撃を受けた騎士の体が炎に包まれる。
「やっぱりだ……あの騎士には魔法に関する知識がない」
スペースシップワールドの住人だった帝国騎士にとって、魔法は未知の能力。
そう推測した聖の不意打ちは成功し、彼はそれを口にして仲間との情報共有を図る。
だが。
「帝国が終わった、だと……?」
銀河帝国の旗が翻り、騎士を包んでいた炎が一瞬で鎮火する。
「よくもそんな戯言を吐けたものだ。その蛮勇を苦痛に満ちた死で讃えてやろう」
口調こそ冷静だが、その声には凄まじい殺意が込められている。
騎士が驕りを捨てたことを悟り、聖の額を冷や汗が伝った。
苦戦
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トリテレイア・ゼロナイン
流石は騎士と謳われるだけあって凄まじき剣の冴え、私の腕では鞘から抜く暇すら与えてくれませんね。ですが爵位も主も無き身なれど騎士の負の側面を煮詰めたような貴方相手に退くわけにはいきません。
攻撃を躱さず全て受け止める覚悟で臨みます。「武器受け」「盾受け」「怪力」で攻めを凌ぎながらじっと機会を伺いつつ相手の体力と集中を削いでいきます。
仲間の猟兵が大技を繰り出す際に「かばい」つつ相打ち覚悟の大盾殴打で「鎧砕き」し、装甲服にヒビをいれて差し上げましょう。
強敵相手に無謀な攻め、腕の一つは持っていかれるでしょうがこれが私の騎士道です。
(希望・派手にぶっ壊しちゃってください)
ユア・アラマート
さあて、あれを片付ければ解決か
偉そうだが、面倒そうなことには違いない。もう少し頑張るとするか
SPD判定
敵の攻撃が当たらないよう、ダッシュと見切りの技能も駆使しながらすばやく移動
的を絞らせないようにして撹乱しつつ、自身の攻撃の間合いまで詰めていく
速さ勝負というのであれば、こっちも負けていられないな
間合に入った所で魔術回路を起動
風の力を身にまとい、瞬間的に速度を更に上昇させてから突撃
正面から突っ込んでいくように見せかけ、暗殺技能を利用して死角に回り込み
持っているダガーで敵の急所を斬りつける
他の猟兵の攻撃と合わせられるようなら積極的に合わせ、与えるダメージの底上げに務める
「我が全身全霊を以って、貴様らを排除する」
帝国騎士が再び鮮血のごときオーラを纏う。先程も見せた、超高速移動を可能とする強化状態だ。
右手にフォースセイバー、左手からは赤黒い電撃を迸らせる構えには微塵の隙も無い。
だが、その程度のことで怯む猟兵たちではない。
「速さ勝負というのであれば、こっちも負けていられないな」
研ぎ澄まされた刃を手に、銀髪の妖狐――ユアが駆ける。
「爵位も主も無き身なれど、騎士の負の側面を煮詰めたような貴方相手に退くわけにはいきません」
重厚なる盾を手に、白きウォーマシン――トリテレイアが進む。
「塵に還れ!」
帝国騎士が放つ電撃を、ユアは持ち前の俊敏さと培った技能を駆使して回避すると、攻撃の的を絞らせないよう駆け回り翻弄する。
騎士も高速移動で追随しようとするが、ここに来て他の猟兵による妨害が実を結んだ。
戦場を自由に動けるユアに対し、騎士はその動きを牽制されている。
「ええい、鬱陶しい!」
次々と電撃を放つ騎士。だが、その何れもユアの影を焼くばかり。
そしてユアが敵を翻弄している隙を突いて、トリテレイアが猛然と距離を詰める。
接近に気付いた騎士の放つ電撃を盾で受け止めながら、長剣を振り下ろす。
「機械人形めが!」
騎士のフォースセイバーがトリテレイアの剣を受ける。同時に、接近の機をうかがうユアを電撃で牽制する。
「流石は騎士と謳われるだけあって、凄まじき剣の冴えですね」
自分一人では剣を抜く暇すら無かっただろうとトリテレイアは考える。
事実、複数の敵と同時に戦っているこの状況でも、騎士は一歩も退いてはいなかった。
「偉そうだが、面倒なことには違いないか。もう少し頑張るとするか」
拮抗した戦況を動かそうと、ユアはその身に刻まれた魔術回路を起動する。
属性の力を強化する回路【一乃片】を励起させ、風の力をその身に纏う。
「今度はどんな技を使うのか知らんが……させるものか!」
加速したユアの動きを見て、何か仕掛けてくると読んだ帝国騎士は、フォースセイバーに電撃と念動力を纏わせる。
ユアが準備を整える前に、渾身の一撃で彼女を葬るために。
「させません」
だが、その前にトリテレイアが立ち塞がる。
その身を盾に仲間をかばおうとする彼に、帝国騎士は憤怒と共にフォースセイバーを振り下ろす。
「邪魔だ、退けっ!!」
斬撃と衝撃がトリテレイアの体を切り裂く。その破壊力は、彼の強固な装甲でも防ぎ切れない。
「一撃では分からぬか? ならば何度でも食らうがいい!」
今度は超高速で放たれる赤黒い斬撃の乱舞が、トリテレイアを襲う。
装甲が切断され、身体から火花が散る。それでもトリテレイアは退かない。
片腕の関節が砕け、剣が手から落ちた。それでもトリテレイアは退かない!!
「何故だ。貴様、何故退かん?!」
「これが、私の騎士道です」
たとえ満身創痍となっても決して退かず、全てを受け止めて仲間を守る。
目の前の誇り高き「騎士」の姿に意識を奪われた男は、その一瞬、ユアの存在を忘却した。
「好機だな」
【一乃片】に加えて【三乃片】【四乃片】を起動。更なる身体能力と瞬発力を得たユアが急加速する。
気を取られている帝国騎士の死角へと、音も無く回り込み。
そして、標的の急所となる機械鎧の隙間を一瞬で見極めると、最高速度で刃を突き出した。
それと同時に、トリテレイアも動く。
「御伽噺に謳われる騎士たちよ」
満身創痍のはずの身体に力を漲らせて。
「鋼のこの身、災禍を防ぐ守護の盾とならんことをここに誓わん!」
騎士の宣誓と共に、その証たる大盾を叩き付ける。
背後から深々と貫く疾風の刃。
正面から機械鎧を砕く大盾。
その二つを同時に受けた帝国騎士の口から苦悶の声が漏れる。
「ガハッ
……?!」
猟兵たちの牙は、徐々に深く深く、このオブリビオンの命に届きつつあった。
大成功
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ジョゼ・ビノシュ
そろそろ最後なのね。そろそろいいでしょう、全面火力支援に回るわ。強力とはいっても相手は一人なんだから必ず隙は生まれる。誰かを攻撃するときに隙ができるはずだから、それを狙う。出来たら前衛の誰かの後ろ上くらいからばこばこ撃ちたいわね。もちろんあいつの後ろからでもいいけど。例えダメージがなくても煙幕とか気をそらすくらいにはなるわよ。たぶん。
あとはあの、旗? みたいなのが始末の悪い効果があるみたいだから、あれも破壊できるといいんだけれど難しいかな?
クオン・セルフィライト
牙が届くと言うのならば、その命に届くと言うのであるならば。
最早足止めは不要、その双刀を逆手に抜き放ち挑むのみ。
「――――いく」
端的に呟き、踏み込む。
人狼の身体能力を活かした双刀による高速連打。
最早防御を考える必要はないと判断したが故のひたすらの乱撃を叩き込みにかかる。
帝国騎士のその息の根を止めるその時まで攻撃を叩き込み続ける。
「お、のれ……貴様ら……っ!」
もはや、帝国騎士から当初の余裕は完全に失われていた。
槍騎士に、銃弾に、炎に、刃に、盾に、体力と余裕を削られ続け。
今やその身に纏う機械鎧は大きく破損し、背後から受けた傷の出血は止まる様子もない。
それでも騎士としての矜持が、帝国への忠義が、その男を戦場に立たせ続ける。
たとえ過去の妄執だったとしても、それは間違いなく信念と言えた。
「私は負けぬ! 帝国が在る限り! 帝国騎士の名と旗を背負う限り!」
残された力を振り絞り、帝国騎士は再び念動力の帝国旗を形成する。
戦場に翻る帝国の旗は、邪悪なオーラを放ってこの戦場を帝国の領土であると主張する。
だが、そこに浴びせられるのは無数の銃弾。
ジョゼの召喚したエレクトロレギオンによる一斉射撃だ。
「何っ
……?!」
念動力を散らされた帝国旗が穴だらけになって消滅していく。
「その旗みたいなのが、始末の悪い効果があるみたいだけど……破壊できるみたいね」
恐らくは、騎士の力が当初よりも弱まっているのもあるのだろう。
戦場を包みかけた帝国のオーラが霧散する。
「貴様、帝国の旗を傷つけるとは……っ!!」
激昂した騎士がフォースセイバーを振り切るよりも早く、動いたのはクオン。
一瞬の早業で武器を双銃から双剣へと持ち替え、攻勢をかける。
「――――いく」
その呟きは短く、踏み込みは鋭く。
足止めではなく、全力でその息を止めるための高速連撃が放たれる。
「舐めるなっ!」
だが、手負いといえど騎士もまた練達の剣士。
四散した帝国旗の念動力をフォースセイバーに宿すと、クオンの連撃と切り結ぶ。
今のクオンは防御を捨てて、攻撃に全力を割いている。
そこに生じた隙を突いて、騎士は反撃のインペリアルブレイドを放たんとする。
だが、そこに再びジョゼのエレクトロレギオンが一斉射撃を放ち、騎士の攻撃を妨害した。
「そろそろいいでしょう、全面火力支援に回るわ」
ジョゼはレギオンをクオンの後方、やや上の位置に待機させ、騎士のみを正確に狙って射撃を行わせる。
「ええい、鬱陶しい……!」
騎士がジョゼから先に始末しようとそちらに意識を逸らせば、すかさずクオンが乱撃を放つ。
ならばとクオンに攻撃を仕掛けようにも、ジョゼの援護射撃がその隙をカバーする。
ジョゼもクオンも、戦いが終わりに近付いていると感じていた。
だからこそ、ここで決着をつけるために火力と攻勢に全力を注ぐ。
二人の前衛と後衛は見事に噛み合っており、騎士に反撃のチャンスを与えない。
「何故だ! 何故なのだ! 帝国に敗北などありえぬはず
……!!」
ジョゼの射撃が騎士の頭部に当たり、割れた仮面の隙間から絶望に染まった瞳が覗く。
その隙に、クオンの双剣が騎士の手からフォースセイバーを弾き飛ばす。
「帝国の栄光は終わらぬ! 帝国は――」
「――終わり、だ」
武器を失った騎士に、クオンが放つは双剣乱舞・刃金乃舞。
目にも止まらぬ斬撃の嵐が、騎士の鎧を砕き、肉を割き、骨を断ち――
「ああ、あ……」
遂に膝をついた帝国騎士は、その身体を末端から崩壊させてゆき。
「帝国……に……栄光、あれ……」
その言葉を遺して、塵ひとつ残さず消滅する。
それが、悪しき帝国の支配から、ひとつの宇宙船が解放された瞬間だった。
大成功
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