エンパイアウォー⑧~鳥取城の怨霊
「わがめらーのようなくそだらず、わしがしごする!」
そう一人の勇敢な農民が叫びながら鍬を振りかぶり、田畑に現れた『水晶屍人』に力いっぱい振り下ろす。鍬の一撃は『水晶屍人』に直撃したものの、『水晶屍人』には傷一つ付ける事も敵わない。
驚いて逃げ出そうとする農民に『水晶屍人』は素早く襲い掛かり、喰らいつく。「ぐわっ!」という声を残して喉を食いちぎられた農民は、力なくその場へ崩れ落ちる。死者となった農民を『水晶屍人』は襟をつかんで引き摺りながら、次の獲物へと目を向ける。目を向けられた他の農民たちは、恐怖のあまりにわっと散り散りに逃げ出す。
しかし、どこからか湧いた他の『水晶屍人』が逃げ道を阻む。残る道はただ一つ、安倍晴明が乗っ取った鳥取城へ向かう道だけだった……。
「っつーわけだから、安倍晴明が奪った鳥取城に向かって追い立てられてる農民たちを助けてやってくれ」
そう話すのは加藤光廣。光廣は怒りとも悲しみともつかない表情をしながら、話を続ける。
「悪ィが、最初の一人は助けられねえ。俺の予知が遅かったせいだ……」
だが、残りの農民達を助ける余地はあると言う。そう、安倍晴明が操る『水晶屍人』を倒せばいい。このまま鳥取城に農民達を向かわせれば、城に集められ閉じ込めた上で、飢え死にさせられてしまう。
飢え死にさせられた農民達は安倍晴明によって、奥羽に現れたものより十倍以上の戦闘力を持つ『水晶屍人』にされようとしている。この強化された『水晶屍人』が大量生産されれば、幕府軍はおろか猟兵達を倒し尽くしても有り余るほどの戦力になるという。
ただ、幸いなことにここへ現れる『水晶屍人』は十体程度であり、数は多くない。しかしこの『水晶屍人』達は超強化が施されており、十体程度でも猟兵達と渡り合える程だという。油断は禁物ということだ。
「俺は今回、みんなをここから送り出すことしかできねー、悔しいけどな……。だから俺の代わりに何とかしてやって欲しい、頼む!」
篁佐登花
こんにちは、篁佐登花です。OPをご覧頂き、誠にありがとうございます。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
なるべく早くリプレイをお渡しできるよう努めますので、よろしくお願い申し上げます。
第1章 集団戦
『水晶屍人』
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POW : 屍人爪牙
【牙での噛みつきや鋭い爪の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD : 屍人乱撃
【簡易な武器や農具を使った振り回し攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 水晶閃光
【肩の水晶】の霊を召喚する。これは【眩い閃光】や【視界を奪うこと】で攻撃する能力を持つ。
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女性や子供、老人達を伴っている農民達は鳥取城へ向かってはいても速度が上がらない。その中で諦めた者たちは、何かに祈るようにその場で天を仰ぎ、他の者たちは立ち上がらせようと必死になる。
その間にも『水晶屍人』の群れは農民達へ追いすがろうと、みるみるうちに距離を縮めてくる。
鈴木・志乃
アド連歓迎
あたしが、行かなきゃ
連戦で疲れてなんかいない
あたし、が、行く!!
念動力で周囲の器物を巻き上げ屍人と村人の間にぶち落とし混乱させる
そのまま足払いからの転倒を狙い、第六感の見切りで敵の攻撃を予測し光の鎖を食ませ腕も捕縛(早業武器受け)
力いっぱい抱き締める(手をつなぐ)
これ以上人を呪わなくていい
貴方達はもう、休んでいいんだ
UC発動
祈り、破魔を乗せた全力魔法の衝撃波で安倍晴明の邪法、怨念、呪詛、力の源の一切合切をなぎ払う
これ以上人を食べなくていい
その餓えはまやかしだ
貴方は楽になっていいんだ
大丈夫、何も心配することなんてない
ただ安らかに、眠れ
……。
そこへ空から水晶屍人の群れへ向かって、農民達が放り捨てて行った鎌や鍬といった農具が降り注ぐ。気を取られた水晶屍人は足を止め、キョロキョロと生気のない目で辺りを見回す。その目に入ったのは猟兵の鈴木・志乃。
彼女は鳥取城一帯へ向かう農民などの領民を次々と助けて回っていた。おそらく連戦に次ぐ連戦で疲れているだろう身体からは、それでも強い意志を放っているように見えた。まるで(私は疲れてなんかいない! 私が行かなきゃ……私がこの世界の人達を助けるんだ!)と叫ぶように。
敵である猟兵を目にした水晶屍人は、農民達から志乃へと目標を変える。志乃は淡く光る鎖を手にして、水晶屍人めがけて薙ぎ払うように振るう。本能のみで動く水晶屍人は志乃の動きを感じ取り、鎖を躱そうとする。しかし力の込められた早業で繰り出される鎖は、水晶屍人を衝撃波を伴って弾き飛ばす。弾き飛ばされた一体は他の水晶屍人も巻き込んでいく。
その時に横から志乃の首を刎ねようと鋭い爪が赤黒く光る。志乃は咄嗟に第六感を働かせ、水晶屍人の爪を躱す。水晶屍人の動きを見切った志乃は再び光の鎖に力を込め、振るうではなく真っすぐに放つ。
放たれた鎖は水晶屍人二体を絡め取って、身動きできないように縛り上げる。志乃は縛り上げた水晶屍人を手元に引き寄せると、何を思ったかその身体で力いっぱいに抱き締め始める。
そして水晶屍人へ祈るように言葉を掛ける。
「もうこれ以上人を食べなくていい……苦しかっただろう、悲しかっただろう。だから貴方達は楽になっていいんだ」
志乃の言葉に呼応するかのように【祈願成就之神子(オレンジ)】が発動し、まばゆい光が志乃と二体の水晶屍人を包み込む。破魔の力が水晶屍人の『仲間を喰らい、仲間に喰われた』怨念を浄化していく。怨念が浄化された二体の、いや二人の水晶屍人は安倍晴明の邪法から解き放たれて姿を消した。
それを見届けた志乃は残りの水晶屍人へも呼び掛ける。
「大丈夫、何も心配することなんてない。ただ安らかに、眠らせてあげるから」
残った水晶屍人の群れに、志乃の言葉が届いたかどうかは分からない。
大成功
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デナイル・ヒステリカル
気を落とすことはありません。
グリモア猟兵である貴方が予知しなければ、さらに多くの人名が失われかねなかった。
最初の一人を助けられない、のではなく、
それ以外の全てを救えた、と考えるべきでしょう。
さて、救いに行きますよ。
UC:レギオンを召喚
あらかじめ予測される妨害は不意打ち足り得ません
レギオンたちへ視覚以外のセンサーを活用するように指示を飛ばします
敵の身体に張り付く結晶の高度は分かりません…
しかし生身の部分は火器が通じる可能性が高い
その弱点、撃ち抜かせていただきますよ
「駆けつけることができて良かった……予知がなければ一人どころか、延いてはサムライエンパイアの人々の命が失われかねないのですから」
こう独り言を呟きながら、農民達を救いに来ていたのはデナイル・ヒステリカル。
送り込まれてすぐにデナイルは【疲れ知らずの僚属たち(バーチャルレギオン)】を起動する。起動した二百六十体の小型戦闘用電子精霊達へ指示を飛ばしていく。
「さぁ、状況開始だ!」
指示を受けたレギオンは視覚以外のセンサー、温度や音を感知して農民達と水晶屍人の位置関係を割り出し、デナイルへと送信していく。
デナイルは集めた情報を基に、最も農民達へ近づいている水晶屍人の前へ立ち塞がる。
「かつての貴方がたは同僚を食べ、自らも食べられるという惨い目にあったと聞いています。そんな悲しい出来事を繰り返そうというのですか?」
デナイルの言葉はオブリビオンと化した水晶屍人達には届かない。
水晶屍人はデナイルを目にすると肩の水晶から眩い閃光を放ち、視界を奪おうとする。その時にデナイルは、あらかじめレギオンの一部を自らの前方に展開していた。
「予測される妨害は不意打ち足り得ませんよ?」
眩い閃光はいくつかのレギオンを消滅させたが、それでも数は十分に残っている。それを目の当たりにした数体の水晶屍人が、デナイルへ直接飛び掛かる。しかしこれも動きを見切ったデナイルの操るレギオンによって阻まれる。
情報収集を終えたレギオンはデナイルを援護するように高熱源、いわゆるレーザーを水晶屍人へ放ち、その身を焼き焦がしていく。
「僕の思った通り、生身の部分は火器が通じるようですね。その弱点、撃ち抜かせていただきますよ」
数体の水晶屍人はレギオンの放つレーザーに焼き尽くされ、消滅していく。
「残念ながら最初の一人は助けられませんでしたが、他の皆さんを救えたと考えるべきでしょうね。できることなら、オブリビトンと化した魂も救えたら良かったのですけど」
大成功
🔵🔵🔵
『水晶屍人』の群れを足止めすることができた猟兵達だが、問題は農民達の行く先だ。『水晶屍人』の群れから逃れられても、鳥取城に辿り着いて閉じ込められては意味がない。
何とかしなければ。
薄荷・千夜子
これ以上の被害は出させません
笛を鳴らし、相棒の鷹の彗に農民たちを鳥取城方面に行かせないよう誘導をお願いしましょう
「鳥取城は危険です、ここは我々に任せて他の場所に避難してください!」
そして、UC『操花術式:花神鈴嵐』を使用
水晶屍人を農民たちの方に向かわせないよう目眩しも兼ねつつ【吹き飛ばし】【拠点防御】で花嵐を巻き起こし近寄らせないようにします
うまく時間が稼げれば、次はUCの対象を水晶屍人に
「あなた方も巻き込まれてしまったのでしょうね……もう私達にできることはここで終わらせることだけです」
【破魔】の力を込めた鈴蘭の花で水晶屍人を浄化していきます
「これ以上の被害は出させません、農民の皆さんを鳥取城方面に行かせないようにしないと……!」
薄荷・千夜子が笛の音色を響かせると、千夜子の相棒である鷹の『彗』が農民達を誘導するように鳴き声を上げる。不思議に思った農民達へ、千夜子が背中越しに叫ぶ。
「鳥取城は危険です、ここは我々に任せて他の場所に避難してください! 案内はあの子がしてくれますから!」
千夜子がetolie montreの仕掛けを作動させ、盾として身構える。そして農民達が彗に誘導されていくのを確認すると【操花術式:花神鈴嵐(ソウカジュツシキ・カガミスズラン)】を発動させて、水晶屍人が農民達を追えないようにする。
危険を本能で感じ取った水晶屍人は、距離を取ろうと強化された脚力で跳び退る。だが数体の水晶屍人は間に合わず、破魔の力が宿った鈴蘭の花びらに包まれて身動きが取れなくなる。
「かつての貴方がたも巻き込まれてしまったのですよね……私には想像できないような惨い戦に。でも、もう終わりにしましょう?私はこれ以上悲しく、辛く、苦しい人達が増えるのを見ていられませんから」
破魔の力が宿った鈴蘭の花びらが、千夜子の言葉に呼応するように水晶屍人を浄化していく。
「うまく時間が稼げたでしょうか?彗が安全な場所まで誘導してくれるといいのですけど……」
成功
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突如として現れた水晶屍人も半数以上が片付けられていた。農民も誘導を受けて、鳥取城方面から逸れて避難しつつある。状況は好転していると言っても差し支えない。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
チッ、犠牲者が出ちまったか……!
仕方ねぇ、一気に片を付けに行かないと被害が広がる一方か!
それなら逆に大技を仕掛ける、一気に殲滅できるくらいの奴をな!
屍人どもの動きは衝動的な物だろ、
それなら手始めに電撃の『属性攻撃』を込めた『衝撃波』で
牽制し、奴らの注意を『おびき寄せ』る。
続いて放つのは『マヒ攻撃』を込めた電撃の『範囲攻撃』さ。
そうやって動きを鈍らせつつ、周囲を帯電させる。
そして聖句を唱えつつアタシへ殺到するその一瞬を『見切り』、
間合いを離すようにバックステップ。
着地と同時に【黄泉送る檻】を織り上げるよ!
そこまでにお仲間さんが数を減らしてくれてると嬉しいね!
残りの水晶屍人を目がけて宇宙バイク「宇宙カブJD-1725」で突っ込んできたのは数宮・多喜。突っ込んできた多喜に対して、水晶屍人は衝動的に群がろうとする。飛び掛かって引き倒そうとした水晶屍人はバチッ! と激しい音とともに電撃の衝撃波を浴びて、地面へと落ちる。
多喜はバイクに跨ったまま「通信強化スマートフォン」で情報を確認する。他の猟兵からの情報によれば、水晶屍人の半数以上は片付き、農民達も安全な場所へ向かっている。しかし、多喜はチッと舌打ちを一つすると独り言を呟く。
「犠牲者が出ちまってるのはしょうがねぇ」
だけど……と言葉を続ける。
「お仲間さんが色々と手を尽くしてくれてて助かるね。後は残りを一気に片付けるだけか。大技を仕掛ける、一気に殲滅できるくらいの奴をな!」
通信強化スマートフォンを触っている多喜に対して、おびき寄せられるように水晶屍人はそれぞれに草刈り鎌や鍬を手にして襲い掛かってくる。
水晶屍人は手にした農具を素早く連続で振り回し、多喜へ向かって放つ。多喜は通信強化スマートフォンを手にしながらも、巧みに宇宙カブJD-1725を操り、その場で前輪を持ち上げ、水晶屍人の農具をはじき返す。
そのままサイキックエナジーを纏うと、周囲に電撃として周囲にまき散らしていく。電撃を浴びた水晶屍人は動きが鈍くなり、多喜にとってのチャンスとなる。
水晶屍人から次の攻撃が来る前に聖句を唱えつつ宇宙カブJD-1725でバックステップを踏むと、サイキックブラストの檻が現れ、視認されている水晶屍人達を閉じ込める。
「ashes to ashes,dust to dust,past to past...収束せよ、サイキネティック・プリズン!」
『黄泉送る檻(サイキネティック・プリズン)』に閉じ込められた水晶屍人達は、その高電流・高電圧には耐えられず黒焦げになって消滅する。
「悪いな、こんな形で荼毘に付すことになって……」
成功
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リーキー・オルコル
悪趣味なもんだ
ま、犠牲になるのは弱いものって相場が決まってる
残念ながら悪意も、不幸も連鎖する
ならこの辺で止めてやらないとな
屍人を見つけたら農民との間に割って入り
ナイフを投げつけて攻撃
まずは屍人達に向かってナイフをばら撒き牽制してから
一投目は敵の四肢を狙って動きを止め
二投目で重なるようにナイフを増やし
敵の頭部を撃ち抜いて倒そうとする
仲間が近くにいるなら
ナイフを投げて敵を牽制したりしてサポート
誰かがやってくれるならそれに越したことはないからな
村人に
おい、お前ら、動けるなら速く村に帰りな
お前らがいなけりゃ、戦いが終わった後にうまい飯も食えないからな
屍人に
後はお前らを楽にしてやるだけだな
「餓え殺し……悪趣味なもんだ。ま、犠牲になるのは弱いものって相場が決まってる。残念ながら悪意も、不幸も連鎖する。ならこの辺で止めてやらないと、なっ!」
そう言いながら水晶屍人へ向かってナイフを投げつけるリーキー・オルコル。
リーキーの投げた一本のナイフは、一直線に水晶屍人の身体へ突き刺さる。しかしそれで動きを止めるような水晶屍人ではない。
ならば、とリーキーは水晶屍人の足元へ狙いを付ける。リーキーの手元から離れたナイフは水晶屍人を地面へ縫い付けるように突き立つ。
足を止められた水晶屍人を見てリーキーは一度距離を取る。そして、もう一度ナイフを投げつける。同時に【つむじ曲がりの落ち葉(ツムジマガリノオチバ)】を発動させると、リーキーの投げたナイフが三十本に複製され水晶屍人へ向かう。
水晶屍人は両手の草刈り鎌を振るって払い落とそうとするが、三十本のナイフは明後日の方向へ軌道を変える。そのまま水晶屍人はリーキーへ向かって突進してくる。素早く振り回される鎌の切っ先が触れる寸前に、リーキーは左の口角を軽く上げる。
「俺はとっても素直だからね。後はお前を楽にしてやるだけだな」
明後日の方向へ飛んで行ったナイフは全て水晶屍人の頭部を突き抜け、ズタズタにする。頭部を失った水晶屍人は背中から地面へ倒れると、あっさり消滅する。
「さて、農民達を村へ帰してやらないとな。でなけりゃ、戦いが終わった後に美味い飯も食えないからな」
そう言ってリーキーは他の猟兵達と共に、農民達を村まで送り帰した。
成功
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