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エンパイアウォー⑱~名将、討ち取りて~

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #上杉謙信



 ぱらり。手のひらに収まる程度のメモ帳を捲り、エンティ・シェア(欠片・f00526)は訪れる猟兵達を見やった。
「上杉謙信という武将をご存知だろうか。私はそれほど詳しくはないのだがね、彼が飛び抜けた統率力を持つ武将だという事は、此度の戦争で知ったよ」
 車懸りの陣という、巨大な軍勢を目まぐるしく移動させ、まるで風車が回るかのごとく最前線を配置換えすることによって常に最善の兵を敵にぶつけるという作戦を実行し、陣の中心で指揮を執る武将だ。
 彼の元へ近づくだけでも困難極まりないわけだが、勿論、その実力も折り紙付き。
 加えて陣が防衛機能を果たし、蘇生に十分な時間を掛けることを可能としているときた。
「もっとも、その陣は随分と崩されて来ているようだ。今ならば、比較的上杉謙信に近づきやすくなっているだろうね」
 あくまで、序盤と比較するならば、ではあるけれど。
 ともかく、と切り替えて、狙うべき強敵の仔細を述べていく。
 上杉謙信の武器は、12本の『毘沙門刀』である。
 そしてその12本の内10本は、それぞれが「水・光・土・火・樹・薬・風・毒・氷・闇」と言った属性を持つ。
「浮遊するそれら10本と、両手にはアンヘルブラック、ディアブロホワイトの銘を持つ刀を持っているんだ。さて、どこかで聞いた名前だね」
 銀河の彼方で刃を交えたオブリビオンがそのような名前だった。
 彼らの名が、どのような由来で上杉謙信の持つ刀に与えられたのかは、定かではない。
「まぁ、どのような経緯があろうと今は重要ではないね。その二振りも名刀であることに変わりはなく、属性の備わった12もの手数が彼にはあるということだ」
 素直に12本を振るうだけでも脅威だろうが、こちらに対して、弱点をつくような属性で攻撃してくる可能性もある。
 属性に応じた強烈な自然現象を巻き起こしてくる点にも、気をつけなければならない。
 他の魔将軍のように、必ず先制攻撃をしてくるような能力は有していないものの、その実力はまさに一騎当千と言えるだろう。
「油断はしないだろう。君達ならば」
 戦場は、関ヶ原。決戦の舞台へ続く道を開きながら、エンティは再び猟兵達を見やった。
 熾烈を極めるサムライエンパイアの戦争。驚異に晒されながら行軍する幕府軍はもとより、その驚異を排除するために奔走する猟兵達も、疲弊しないわけがない。
 それでも、行ってくれるのなら。
「武運を、祈っているよ」
 そう言って、静かに微笑んだ。


里音
 強敵との対峙です。張り切ってまいりましょう。

 車懸りの陣を突破し、上杉謙信と相対してからの開始となります。プレイングも対峙時点からのつもりで問題ありません。
 陣を蹴散らしている部隊の功績によりほぼノーダメージで掻い潜れた状態です。
 戦闘に影響しない、格好良さ演出程度に怪我をしている描写が入る場合もあります。
 また、先制攻撃のない通常のボス敵と同等の処理がされますが、勿論強敵ですので厳し目判定となります。

●特殊ルール
 軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
 つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。

 ※このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『軍神『上杉謙信』』

POW   :    毘沙門刀連斬
【12本の『毘沙門刀』】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    毘沙門刀車懸かり
自身に【回転する12本の『毘沙門刀』】をまとい、高速移動と【敵の弱点に応じた属性の『毘沙門刀』】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    毘沙門刀天変地異
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
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ガルディエ・ワールレイド
敵ながら尊敬に値する名将だ
故にこそ全力で討つのみ
黒竜の騎士ガルディエ・ワールレイド、いざ参る!!

◆戦闘
武装は《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流

【因縁の連鎖の果て】使用
《属性攻撃/呪詛/全力魔法》による無数の黒い雷槍を上空から弾雨として放ち続ける

同時に俺も《見切り/武器受け》で防御や雷槍での迎撃を行いつつ前進
どうせ長期戦は出来ないユーベルコートだ。短期的に耐え、その間にダメージを与えられるなら上等って方針で行くぜ
自分への攻撃を全てを躱せない時は最小限の被弾に抑えた上で《気合》で意識を保つ
上空からの弾雨を効果的に防ぐ毘沙門刀があれば、《捨て身の一撃》覚悟で打ち払う


エア・ルフェイム
猟兵が一人エア・ルフェイム!
上杉謙信!
世のため人のため、貴方を討ちに参りました!

真っ直ぐに彼の軍神へと名乗りあげるのは
私なりの覚悟の証
大きく深呼吸をし、いつもの笑顔を向けたなら
いこう、ロン君。私達の時間だよ

ロン君を巧みに操り攻撃
相手の手は見切れるものは躱し、武器受けでいなす

疲弊し防ぎきれないと感じた際に華焔を使用
纏った焔の外套で剣戟を弾き返す

――これは私の心
絶えず、朽ちず、咲き誇る苛烈なる炎
私が私である限り、この炎の輝きは消せやしない!

焔の衣を無敵の盾として
炎精宿る真紅で切り裂き、進む
痛みは感じても
歩みを止める理由にはならないわけ!

この世界の未来と笑顔を奪う
その剣ごと!貴方を打ち砕いてみせる!


御剣・刀也
ふふふ。越後の竜
相手にとって不足なし!俺の武!戦国の名将にぶつけてやろう!

毘沙門刀連斬を武器受け、見切り、残像、第六感で避け、捌き、受けつつ、着実に距離を詰めていく
焦らず逸らず、勇気でもって恐れることなく踏み込んでいき、自分の間合いに入ったら、カウンター、二回攻撃、捨て身の一撃のいずれかで、上杉謙信に渾身の一撃を打ち込む
「さすがは軍神。越後の竜と呼ばれるだけあるすげぇ武士だ。が、戦場では俺は死人。死人は死を恐れない。さぁ、俺の一撃!受け切れるもんなら受けてみろ!!」




 車懸りの陣を突破し、その喉元へと迫った猟兵達。彼らの前に悠然と立つその男は、上杉謙信。
 戦国時代に名を馳せた武将と相対するその高揚に、ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)は打ち震えた。
「敵ながら尊敬に値する名将だ」
 彼がオブリビオンでなかったなら、などとは言うまい。そうでなかったなら、こうして相対することさえなかったのだ。
「故にこそ全力で討つのみ。――黒竜の騎士ガルディエ・ワールレイド、いざ参る!!」
 陣中に響く名乗りは、共に陣を突破したエア・ルフェイム(華焔・f02503)にも響く。
 すぅ、大きく息を吸って、口角を上げて。
「猟兵が一人エア・ルフェイム! 上杉謙信! 世のため人のため、貴方を討ちに参りました!」
 浮かべた笑顔は、エアの覚悟の現れ。
 さぁ、いつもどおり、出来る限りを全力でぶつけるだけ。
「いこう、ロン君」
 私達の時間だよ。掛ける声に、絡繰り黒猫は声なく応えた。
 高らかな名乗りに、豪気なことだと笑うのは御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)。
 もっとも、越後の竜の異名を持つ彼に怯むことがないのは彼もまた同じ。
「相手にとって不足なし! 俺の武! 戦国の名将にぶつけてやろう!」
 エアと刀也が地を蹴ると同時、ガルディエの姿が変貌。爆発的に増した魔力が黒い雷へとなり彼の身体を焼きながら立ち昇る。
 その雷は、天にて凝縮し、黒い雷を伴った槍となって、謙信へと降り注いだ。
「ほう……」
 頭上のみ成らず、広域に渡る雷は、敵対者を狙いすますように雷槍を落としてくる。
 それに対し、謙信は光と土、二つの毘沙門刀を掲げ、その軌道を逸らすように、柔らかにいなしていく。
「属性持ちというのは、便利で、厄介なことだな!」
 ならばその刀さえも打ち払うまで。槍斧と剣の二つを構え、真っ直ぐに謙信へと突き進む。
 雷槍へと対処する以外にも、十もの刃を有する謙信は、怪力を活かすべく設えられたどの重厚な武器をするりと視線で確かめ、帯びた魔力の存在を検知し、雷槍と同様、柔らかにいなしてはガルディエとの距離を開ける。
「ふむ……」
 思案するように呟いた謙信は、ガルディエの身体が崩壊していくのを見つけていた。
「貴殿のそれは、長くは持たぬようだが」
「……ああ、そうだとも。だからこそ、こうして食らいついているのだろう!」
 時間を稼ぐ策など無しだと言うように、ガルディエは繰り返し武器を振るう。
 その間にも、その身体は徐々に崩壊して、それを代償に、黒雷は雷槍へと転じていく。
「その意気や良し……だが、貴殿の相手ばかりもしていられぬようだ」
 激しい剣戟の間を縫うように、小さな影が駆け込んでくる。
 エアが操る黒猫が軽やかな動きで振るわれる刀の上を駆け、距離を詰め、鋭利な爪で攻撃していく。
 しゃっ、と頬に走った傷から、血が飛散した。
 姿は小さな猫とて、絡繰り仕立ての黒猫は非常に頑丈で、刀で薙ぎ払ったところでがしゃりと地面に転がってはまた元気に飛び掛かってくるばかり。
 破壊することは難しそうだと思案する謙信の視線が、ちらりとエアを捉える。あれが、操り手ならば、あちらを叩く方が早かろう、と。
 一つ一つ冷静に分析をしながらも、殺到してくる猟兵達への攻撃の手は止まない。
 鋭く突き出された炎を帯びた刀を最小限の動きで躱し、刀也は一歩、踏み込んだ。
「さすがは軍神。越後の竜と呼ばれるだけあるすげぇ武士だ」
 一太刀ごとに、首を持っていかれそうな感覚に襲われる。
 その感覚は、背に冷たいものを走らせ、刀を握る手に要らぬ力を込めさせてしまいそうになる。
 ――刀也が、まともであったならば。
「……が、戦場では俺は死人。死人は死を恐れない。さぁ、俺の一撃!受け切れるもんなら受けてみろ!!」
 痛みなどに立ち止まるものか。
 既に死んだ身として振る舞う刀也は、目の前の存在に一太刀を浴びせることだけを信念に、突き進む。
 二本の腕が繋がっているならば。その刃が届くならば。やるべきことは決まっている。
「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん!!」
 最上段から振り下ろされるのは、渾身の力を込めた一撃。
 その軌跡は真っ直ぐに謙信を捉え、その身体を切断するほどの勢い。
 ――だが、その一太刀が謙信自身に届くことは、なかった。
「見事なものだ」
 きん、と軽やかな音を立てて、彼の周囲に浮いていた毘沙門刀の一つが折れた。
 己の手となる刀は十二本。如何に距離を詰め、懐へ踏み込もうとも、真っ直ぐな一太刀のみでは、届かない。
 刀也が距離を取るより早く、謙信の両手の刃が閃いた。
 深く、その生体機能をも断絶しうる程に切り裂かれては、刀也は膝をつかざるを得ない。
 だが、倒れる間際、刀也は確かに見た。彼が折った刀は一振りのみであったが、その一撃を受けるために幾つもの刀を重ねるように使っていた。
 そして、使われた刀のいずれかに、罅が入っていた。
 他の猟兵達がそれに気付けば――いや、気付かずとも、彼らが臆せず斬り込めば、無力化することだって出来るだろう。
「ロン君!」
 刀也への追撃を防ぐように、エアは黒猫を走らせる。
 追って、ガルディエも謙信との距離を詰め、二つの武器を振るう。
「はあぁッ!」
「ボロボロの身で、まだこれほどの力が出るか」
 降り続ける雷槍の雨は、掠めただけでもその雷撃に晒されひりと焼ける痛みを覚える。
 だが、それもそろそろ打ち止めかと、目に見えて勢いのなくなった雷を見据え、呟く謙信。
 その言葉と同時に、ガルディエを幾つもの刃が襲い、切り刻んでいく。
 もはや歩を進めることさえ叶わぬほどであったガルディエに、それを躱すことは出来ず。ついに、その膝を折った。
 既に戦闘の継続が難しい者らへは手は出さず、謙信はエアへと肉薄する。
 一つ折れても衰えることのない剣閃に、エアは徐々に押され、黒猫を満足に操ることもできなくなっていく。
 くん、と引いた糸に呼び寄せられるように駆けつけた黒猫が、寸でのところでエアへの斬撃を引き受け、遠く、弾かれて。
 次はないと射すくめるような眼差しと共に、刃が振るわれる。
 だが、エアは、引かなかった。
「負けないよ、私が私である限り」
 怯えることはない。屈することもない。自身へのまじないのような言葉と共に、エアの身を炎が包み込む。
 それは強力な――無敵の盾となって、エアを斬撃から守る、焔の華。
「――これは私の心」
 絶えず、朽ちず、咲き誇る苛烈なる炎。
 ごうと音を立てて燃え上がる、鮮烈な紅に、その熱に、謙信は素早く距離を取った。
 すらり、からくり人形に変わり、抜き払われた刃を手に、今度はエアの方から、謙信へと詰め寄る。
「私が私である限り、この炎の輝きは消せやしない!」
 きん、と甲高い音を立てて、刀身が打ち合う。身を寄せてせめぎ合えば、燃え上がる炎が謙信の衣をじりりと焼く。
 猟兵とは見た目にそぐわぬ力を持つものだと感心したように瞳を細め、謙信は外套の形となった炎の向こうにある強い瞳を、見据えた。
「それが貴殿の心だというのなら、決して朽ちることはないのだろう」
 この剣が、通ることはないのだろう。
 けれども。
「それは、貴殿の全てを守るものでは、ないだろう」
 例え、外套が剣戟からエアを守ろうとも。その身体そのものが強化されたわけではない。
 力任せに叩きつけられた刀は鈍器と等しくエアの体躯を弾き飛ばし、地面へと叩きつけられる。
「くぅ……! けど、こんなことで、歩みを止める理由にはならないわけ!」
 その程度の痛みでエアの心が折れるわけがない。知っている。上杉謙信とてそんなつもりではいない。
 ただ、知らしめただけ。無敵の『鎧』があろうとも、ダメージを与えることが出来るのだと。
「どこまで折れぬか……挑んでくるが良い」
 あくまでも、己は挑戦を受ける存在。
 高みから見下ろすようなその眼差しを、真っ直ぐに睨み返し、エアは再び真紅を構える。
「この世界の未来と笑顔を奪う、その剣ごと! 貴方を打ち砕いてみせる!」
 それでいい、と。ほんの少しだけ口角を上げた上杉謙信は、十一となった刀を構え、相対した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

上泉・祢々
弱点を言い出すとそもそも私遠距離攻撃が弱点ですし……
対応する術はもちろんあります
気にしない方向で行きますか

迂闊に突っ込んで斬り捨て御免は勘弁ですし
まずは相手の出方を伺いましょう
回避に専念すれば例え10の刀でも避けられる筈
それだけの鍛錬はしましたから

とはいえ避け続けても埒が明きません
ふむ……閃きました
次に飛んできた刀の刀身を手刀で下に叩きつけ地面に突き刺してしまいましょう
それを足場に跳躍して次の刀も同様に
10の刀を足場にして敵の元へ突撃です

最後に振るわれる両手の刀はタイミングを見切って大跳躍して回避
そのまま前方宙返りと共に踵落としを脳天に叩きこみましょう

手の数が足りないんですから増やし過ぎですよ


クロエ・ウィンタース
なるほど。流石音に聞く上杉の軍略。たいしたものだ
しかし、俺も幕府の軍もこれ以上足止めを食う訳にはいかん
斬らせてもらうぞ。オブリビオン

【SPD】アレンジ共闘歓迎
>沙門刀車懸かり対応
自分の弱点となる属性は判らんが妖刀と質が異なるだろう「光」と
病毒を与えそうな「毒」を警戒

妖刀を解放し妖気を解放し一気に接敵する
妖刀「黒」と脇差「白仙」の2刀で飛んでくる刀に対応
飛んでくる刀12本を【見切り】、両手の刀で【2回攻撃】【カウンター】で3、4本落とす
残りの刀はUC【奈落】(自傷、味方への攻撃無し)でまとめて弾き飛ばす

凌いだら一気に距離を詰め、敵の脇を通り抜け際に刀で一閃
浅いようならもう一度UC【奈落】でとどめ


夕間暮・漁
軍神とは大層な肩書じゃのう
しがない一平卒が一太刀でも浴びせりゃその鼻も明かせるか
安い挑発も効くまいが
さて、と己も刀を構え

毘沙門の名を負う刀在らば
暴走伴う自然現象絡みの技は奥の手と見た
手持ち二振りは手の動きで読める
放射される十本が厄介じゃ
ま、速さにおいては儂も覚えがある
戦闘知識を生かし感覚を研ぎ澄ませ接近を試み
放たれた刀は見切るか武器で受け
軌道を読み極力僅かな動きで…なんて上等には行かんじゃろがの!

ハ!一歩近付く毎に圧が増す!肺が潰れそうじゃ
最接近したら構えた刀を手放し
軍神の――この際どこでもえい!
【暇無】早業で鋼糸を絡ませ横をすり抜けながら渾身の力で引く
これでちぃとでも動きが鈍れば上等じゃ!




 毘沙門刀はそれぞれが属性を持ち、こちらの弱点を突いてくる。
 そのような話に、上泉・祢々(百の華を舞い散らす乙女・f17603)はふむと思案し、己を省みる。
(弱点を言い出すとそもそも私遠距離攻撃が弱点ですし……)
 己の手足こそが武器である。そんな祢々にとって、浮遊する刀を自在に操り攻撃を仕掛けてくるという技の形態そのものが弱点になりうる。
 だが、己が自覚しているからこそ、その対策を何も考えていないわけではない。
 つまるところ、気にすることはなかった。その時、その時の対処を、いかに即断できるかが祢々にとっては重要なのだ。
「なるほど。流石音に聞く上杉の軍略。たいしたものだ」
 突破した陣をちらりと一瞥し、クロエ・ウィンタース(刃狼・f15418)はほんの少し乱れた髪をなでつけ、軍神たる上杉謙信を見やる。
 既に相対した猟兵達の猛攻を凌ぎ切ったさまを見れば、彼の個人的な武人としての才もまた秀でたものであるのだろうと伺えて。
 けれど、それが何だと言うように、黒鞘の太刀と脇差を構えた。
 手に馴染むそれは、いつだって、クロエの力となる。
「俺も幕府の軍もこれ以上足止めを食う訳にはいかん。斬らせてもらうぞ。オブリビオン」
 相対する者らと謙信との間に張り詰めたぴりりと鋭い空気。
 謙信の視線が、祢々を捉え、クロエを捉え、そうしてもう一つ、陣を突破した人影を見据える。
 はーやれやれと肩をすくめるような素振りで夕間暮・漁(誰そ彼・f05693)は刀を一つ払う。
「軍神とは大層な肩書じゃのう。しがない一平卒が一太刀でも浴びせりゃその鼻も明かせるか」
 漁の挑発めいた口ぶりにも、謙信が表情を変えることはない。安い挑発に乗るほど浅はかでもなく、少なからず陣を突破した者を侮る気もない。
 隙を見せないその態度に知らず上がるのは、口角。
「さて……」
 いくか、と。独り言のような呟きは、合図でも何でもなかった。けれど、それぞれが狙う機は同じで。
 同時に駆けた猟兵達を、謙信は素早く見定め――妖刀の妖気を開放し一息に距離を詰めたクロエへと、その視線を向ける。
 纏った十二の――今は十一に減っている――刀は、謙信に高速移動を可能にする力を与え、クロエが詰めた距離を一瞬で開かれた。
「逃さん!」
 一つ吠え、更に追いすがろうとするクロエへ向けて、数振りの刀が放射される。
 見て取れる属性は光、毒、更には氷。その刀を真っ直ぐに見据え、軌道を見切ると、一つ、刀でいなす。
 氷の毘沙門刀に振れた瞬間、刀身がぱきりと凍りついたように感じたが、纏う妖気がそれを打ち払ったようだ。
 ならば、妖気と相反する光の属性をまともに受けるのは危険かと判じ、躱す。毒の刀もまた、妖気の放出に賭けて、打ち払う。
 と、そこへ、とん、と一つ身軽に跳んだ影が、手刀で以て浮遊する刀を叩き落とす。
 地面へと突き刺さる勢いで落とされた刀を足場に、祢々はまた身軽に飛び、別の刀をも同様に叩き落とした。
「この手、この足が私の刀です」
 武器は持たない。己の肉体こそが刀だから。
 己で編み出し極めた百華流の武術は、何も祢々自身を強靭な肉体にするわけではないけれど。それでも、己を刀と見立てて放たれる武闘は、鋭く、力強く、相手を切断しうる刃と化していた。
 それゆえ――だけではなく、既に戦った者がその刀身に傷を入れていたがために――手刀を当てた刀の一振りが、折れた。
 かすかに瞳を細めてそれを見た謙信は、地面に叩き落とした刀を足場にしようとする祢々からそれらを遠ざける。
「おや、自分から退いてくれますか」
 好都合です、と一気に距離を詰めた祢々への攻撃は、止んだわけではない。
 両手に握られた万全な二振り。その一つ、ディアブロの名を持つ刀が大きく横薙ぎに振るわれる。
 大振りな一閃は避けるのも容易く。後方に跳んで、更に迫りくるアンヘルの名を持つ刀を、大きく跳び上がって躱した。
 くるり、空中で身軽に宙返りを決めた祢々は、その勢いで足元の謙信へと踵落としを決めようとして――。
「何のために、刀を退いたか」
 横合いから迫る刀を咄嗟に防ぎ、体制を崩して地面に落下した。
 素早く体勢を整えた祢々へ、振り翳された刀が、未だに浮遊する刀が、迫る。
 自身を庇うように掲げた両腕に、鋭い痛み。見立てであり生身でしか無いその身体が切り裂かれるのは、防ぎようがなかった。
 それでも、幾多も突き立てられかねなかった刃の感覚は、なく。
 霞む視界の中で、漁とクロエがその刀を次々と弾き祢々を守ったのを見つける。
(もう一振りくらい……折ってやりたかったのですが……)
 叶わぬようだと、倒れ伏した。
 自身を狙わぬ刃とて、その一振りごとが重く、付与された属性の影響を与えてくる刀を捌くのは難儀なことだ。
 それがかろうじて仲間を救えたのなら挑んだかいもあろうと切り替えて、漁はここまでの謙信の動きを鑑み、考察する。
(暴走伴う自然現象は奥の手か……)
 刀が健在であれば、制御の難しい大技を駆使する必要性は乏しいのだろう。
 それならば、こちらも対処の難しいその技を使われる前に、片を。
 間合いへと入り込む漁は、地面に突き立てられた刀の動きにも気を配りながら、冷静に見極める。
 その手に握られた二振りは、両腕という予備動作がある以上、他のものより軌道が読みやすくなるだろう。
 ならば問題は放射される十振り。
「ま、速さにおいては儂も覚えがある」
「ほう。ならば見せてみよ」
 この手の誘いにならば乗るのか。
 幾らか数を減らしたとは言え、まだ両手両足より数の多い刀を差し向けられるのはたまったものではない。
 見切るのも武器で受けるのも、限度がある。
(最小限の動きで……なんて上等にはいかんとは、思うたが……!)
 集中してくらい続ければ膝を付きかねない。そう感じた刹那、踏み込んできたクロエの妖刀が放つ妖気が、怪しく輝いた。
 その輝きに促されるかのように、妖刀が次々と閃き、漁と、そしてクロエにも迫る刀を次々と弾いていくではないか。
 それはクロエの寿命と引き換えに、その攻撃回数を九倍に引き上げるもの。二振りの刀で二度の攻撃を繰り出すクロエの手数は実に十八回。
 己か、仲間を、攻撃すれば代償となる寿命は払われなくなるけれど。クロエは構わず、刀へと全て打ち込んだ。
 凌ぎ切ったなら、反撃だ。素早く距離を詰め、謙信の脇をすり抜けざまに、白の刀身を持つ脇差で深く切り込む。
「くっ……」
「浅いか……!」
 さすがは武人、と口元だけで呟いて、クロエは再び妖気を輝かせる。
 さしもの謙信も、己の刀より多い手数全てを捌き切ることは出来まいと、放った剣戟は、目論見通り、謙信を打ち据える。
 ――けれど、それは、どれも彼の致命傷にはなり得なかった。
「貴殿の剣筋は、既に見切った」
 肉を切らせて骨を断つとは、よく言ったもので。一度は見た技、かつ高速移動を可能にする状態の謙信だからこそ、漁が理想とした最小限の動きでの回避が出来たのだ。
「貴殿は、よくやった」
 吸い込まれるように、容易く、腹部へと突き立てられた名刀の刀身に爪を立て、苦悶の声を上げながら、クロエは崩れ落ちる。
 その威圧的な眼差しから逃れるように――いや、その死角に、紛れるように。漁は握った刀を手放し、代わりに鋼の糸を手繰る。
(――ハ! 一歩近付く毎に圧が増す! 肺が潰れそうじゃ)
 それでも無理やり呼吸をすれば、喉がひりつく。全身乾ききって、冷や汗ももう流れない。
 だが、この機を逃すまいと、震えることのない指先で謙信の身体に鋼糸を絡ませた。
(――この際どこでもえい!)
 どこでもいいから、斬れてしまえ。
「貴様に遣る時は尽きた―――芥の如く、散れ」
 謙信が振りほどくより早く、早く。渾身の力で引いた。ただそれだけを考えて、それ以外を考えることをやめて、引いた。
 絡んだ糸は、謙信の四肢に食い込み、その身を引き裂く。ぎちりと重い感覚が指先から伝わってくるが、それが不意に途絶えたのを、漁は感じる。
 それが四肢のいずれかを切断したがためならば、良かったけれど。
 断ち切られたのは、糸の方。そして全力を込めて糸を引いた漁の身体が反動でぐらりと傾いだその隙を突くように、二振りもの刃が放射され、突き立てれる。
(その手の二振りじゃぁ、ないんか……)
 これほど近くへ詰めたのに、わざわざ放射したのは、恐らくは、即座に振るえなかったのだろう。
 意識の遠のく間際、ずたずたになった白の衣を赤く染め上げる両腕を見た。
 謙信にその身を癒やす術がなければ、その傷は致命的な隙を生むことだろう。
 それを見届け、上等だと労うように笑って、漁は意識を飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

千桜・エリシャ
【桜鏡】

あの軍神と戦えるだなんて
強い上に美しい首…嗚呼…
血が滾って仕方ありませんわ!
ふふ、それにあなたと一緒ならば
向かう所敵なしですわね
ねぇ、クロウさん?
ああ、御首は私が貰い受けますからね

クロウさんと連携
お互いの戦い方は把握していますから阿吽の呼吸で参りますわ
二人で撹乱するように接近
お互いの死角や背後を注視することも忘れずに
徒花想葬――攻撃回数を重視
それに加え二回攻撃
見切りで12本の刀をカウンターで迎撃

クロウさんが作ってくださった隙は見逃しません
呪詛だなんて
あなたの想いが流れ込んでくるような心地よさを感じますわ
私自身の呪詛も載せて
黒き花道に残るは血桜のみ
攻撃力重視の刃で御首をいただきましょう


杜鬼・クロウ
【桜鏡】

ほぼエリシャと呼ばず

ハ、怖ェ女(首への異常な執着心…だが穢れ無き無邪気そのもの
強敵と対峙した時の高揚感は俺も同感だ

随分評価してくれンじゃねェの
言われる迄もねェ
足引っ張ンなよ羅刹女

玄夜叉を顔の前で両手持ちで構え背で語る
羅刹女と連携し前へ出る
腰のスカーフ代償に【無彩録の奔流】使用
柔軟性ある黒剣へ

刀の動きや速度を撹乱しつつ見る(情報収集
敵の12本の刀の攻撃を吸収し包み込む様に防御(武器受け・かばう
刀を握り潰す様にへし折り攻撃緩和(部位破壊
羅刹女が本体へ攻撃しやすいよう隙作る
呪いを込めた魔の業火を羅刹女の刀へ付与(属性攻撃・呪詛

剛の桜鬼と柔の鏡(見た目と逆
黒き花道を渡れ
きっちり首取ってこいや


コノハ・ライゼ
ジンノ(f04783)と
ふふ、どんだけ満たしてくれるだろうネ?

対峙次第「氷泪」からマヒ攻撃乗せた紫電奔らせ目眩ましでの撹乱狙おう
動き鈍らせりゃ儲けモノ
でなくても四方八方から雷で喰らいつき邪魔してくヨ

12の刀は厄介ダケド
軌道読み見切り躱して致命傷避け、カウンターの雷で撃ち落としてく
ジンノへ向かう攻撃はオーラ防御纏い激痛耐性足しに押し切られぬようかばうネ

受けた傷の血はそのまま「石榴」に与え
ジンノと入れ替わりに踏み込み【紅牙】発動
牙状の刃で一噛み生命力吸収
味見とばかりすぐさま離れ、また入れ替わるとみせだまし討ち
同時にイタダキマスと喰らいつき
刻んだ傷口をえぐるヨ

折角のごちそう、たぁんと喰らわねぇとネ


神埜・常盤
コノ君(f03130)と
――此れは喰らい甲斐が有りそうだ

コノ君が攪乱してくれている隙に影縫へ血を捧げ
暗殺の業で目立たぬよう彼奴に肉薄し串刺しを
お前と違い僕は闇に潜むモノ
此の玩具も、僕も――其の血を啜る為にこそ在る

オーラ纏わせた護符を盾状に展開し武器受け
然し紙だからねェ…盾だけに頼らず
敵の動きをよく見切り第六感で避けたいなァ
疵などは激痛体勢で堪えよう

さァ、コノ君も行っておいで
次は僕が援護する番だ、呪詛や麻痺毒を滲ませた護符を
どんどん敵に投擲して目晦まし

最後は2人で「いただきます」
捨て身の一撃にて再度、影縫で串刺しを
序に怪力で其の身を掴まえ吸血して仕舞おう
軍神の命は果たして美酒より旨いものかなァ




 血の芳香が漂う。戦場らしい空気感が、増していく。
 そんな只中に血の色を纏って立つ姿に、神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)は緩やかに口角を上げた。
「――此れは喰らい甲斐が有りそうだ」
「ふふ、どんだけ満たしてくれるだろうネ?」
 同意を示すのはコノハ・ライゼ(空々・f03130)。軍神と名高い名将相手とて、彼らにとっては、食事の時間と相違無い。
 香る血の味を確かめる機会は、もうすぐそこに。
 高揚は、何も彼らだけのものではない。相対する存在の、血に塗れてなお凛とした佇まいに、打ち震えるのは千桜・エリシャ(春宵・f02565)。
「あの軍神と戦えるだなんて。強い上に美しい首……嗚呼……血が滾って仕方ありませんわ!」
 一片の迷いすら無い首への執着。けれどそれには悍ましさなど感じない。むしろ、純粋で無邪気な情さえ感じたものだ。
「ハ、怖ェ女」
 くつりと喉を鳴らして、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は小さく笑う。
 怖い、だなんて。うっとりとしたままの顔でクロウを振り返ったエリシャは、少し高い彼の瞳を覗き、ニコリと笑む。
「ふふ、あなたと一緒ならば、向かう所敵なしですわね。ねぇ、クロウさん?」
「随分評価してくれンじゃねェの。言われる迄もねェ。足引っ張ンなよ羅刹女」
 視線はくれない。くれる必要はない。顔を見合わせずとも、手の内知り合う者同士、意思の疎通は出来ていた。
 強敵との対峙で高揚するのはこちらも同じ。いつまでもお預けを食らうつもりもない。
 そしてそれは、常盤やコノハにとっても同じこと。狙う獲物目掛け、それぞれが地を蹴り、駆けた。
「ああ、御首は私が貰い受けますからね」
 誰へともなく囁いて、エリシャは謙信との距離を詰める。
 浮かぶ刀は随分と減り、そのその幾つかには目に見えてわかる日々が見える。地面に突き立ち、かたりと揺れる音のする物もあった。
 それら全てを見極め、油断なく、桜花を模した鍔から聳える大太刀を構える。
「あなたの首が欲しいと、この子も仰っていてよ」
 彼が幾度の戦を経験し、幾つの敵を斬ったのか、知りはしないけれど、その一欠片の怨念を携えて、エリシャは大太刀による斬撃を見舞う。
 毘沙門刀と打ち合えば、元々罅の入っていた刀身は、ぱきりと音を立てて砕けた。
「随分脆い刀ですのね」
 それとも酷使しすぎたか。伺うように見た謙信はその表情を変えはしない。保たぬと分かって、それでもエリシャの一手を奪えるならと放たれた刀が、ただ役目を終えただけのこと。
 ふぅん、と口元で呟くエリシャの傍ら、腰に帯びたスカーフをふわりと靡かせ駆け込んだクロウは、術式を唱える。
「神羅万象の根源たる玄冬に集う呪いよ。秘められし力を分け与え給え」
 ふわり、靡いていたスカーフが消えて。彼の握る黒い魔剣に刻まれたルーンが力を帯びる。
「術式解放(オプティカル・オムニス)──我が剣の礎となれ!」
 一見して、大きな変化のない剣。けれど、それが毘沙門刀の一振りを捉えれば、ぐにゃりと歪んで、剣にあるまじき柔軟性で以て、その軌道を逸した。
 繰り返し閃くエリシャの大太刀に、変幻自在と化したクロウの剣が次々と浮遊する刀を退けていくのを、感嘆混じりに見やり、コノハはその右目に刻まれた印から、紫電を奔らせる。
 謙信の間近で放たれる閃光は、彼の目を眩ませるに足りる光だが、その程度で攻撃の手が止むことはなかった。
 殺意に満ちた敵対者ならそれも致し方なしかと笑いつつ、ならばとコノハは雷を帯びた牙を向ける。
 四方八方から迫る雷は、それそのものが謙信に明確なダメージを与えるには至らずとも、その行動を阻害し、意識を散らすには十分で。
 己の血を捧げた影縫を手に、足音忍ばせその死角に入り込む常盤は、気付かれることなく接敵した。
 血を啜ったクロックハンドはその形容をより鋭利に研ぎ澄ませ、死角から深く、深くを刺し貫けば、どぷりと血の塊が爆ぜ、散った。
「お前と違い僕は闇に潜むモノ」
 音もなく忍び寄り、引きずり込んで、闇にこそ相応しい鮮烈な赤色を、好むもの。
「此の玩具も、僕も――其の血を啜る為にこそ在る」
 どんな美酒よりも喉の渇きを満たすその雫が零れた唇をかすかに舐めて、常盤は刺し貫いた鉄の塊を引き抜いた。
 指先にまで流れてきた血の味を確かめるのは後。今は、攻撃を仕掛けることで気取られた己の身を、守ることが先決。
 オーラを纏わせた護符を盾状に展開すると同時、振り向きざまに放たれた黒き名刀を受け止める。
 無論、それだけで謙信の一太刀が防ぎきれるとは考えていない。けれど常盤がほんの一瞬を稼いだ間に、駆けつけたコノハがオーラを纏ったその身を投げ出すようにして刃の前に立ち、軌道を逸らさせることで、常盤自身も間一髪での回避が出来た。
「随分と、腕が重そうだネ?」
 自分達より先に対峙した誰かに付けられたのだろう、腕の飛び切り深い傷。あれがあったからこそ、常盤の護符が一瞬で消し飛ぶこともなく、コノハのオーラで容易くいなすことが出来たのだろう。
 無論、庇うために覚悟した程度の傷は、負っていて。それさえも必要経費とばかりに、己の武器に滴らせた。
 磨いだ鉱石だった一対が、より鋭利な牙状へと転じる。解放された刃は、まさに、敵へと食らいつくための牙。
「さァ、コノ君も行っておいで」
 己の武器は十分に血を吸った。今度はコノハの番だと、護符を飛ばし、援護する常盤。
 呪詛や麻痺毒そのものが謙信にさほど影響を与えずとも、繰り返し投げつければ目くらましにはなる。
 後押しを受けて、間近から更に踏み込んだコノハはその牙で一噛み。傷の深い腕へと食らいついてやって、その生命を味わった。
 反撃を警戒して、即座に離れ。けれど、紫電を閃かせ動き出した常盤を再び援護すると見せかけて。
 ――イタダキマス。
 コノハ自身もまた、常盤と挟撃するように、喰らいついた。
「ぐ、ぁ……ッ」
「折角のごちそう、たぁんと喰らわねぇとネ」
「軍神の命は果たして美酒より旨いものかなァ」
 先程は味見程度だったけれど。今度はその生命、吸い尽くすまで離すまいと、コノハは、常盤は、綺麗な顔で笑う。
 その両腕が万全ならば。常盤かコノハ、あるいはどちらもを落とすことは出来ただろう。
 毘沙門刀が健在ならば。クロウとエリシャの手を、それだけに縛り付けることも、出来ただろう。
「首の狙い時だぜ、羅刹女」
「ええ、またとない好機ですわね」
 最後の一振りとなった毘沙門刀を叩き伏せたエリシャの大太刀を一撫でし、呪いを込めた魔の業火を与えてやった。
 剛の桜鬼と柔の鏡。たおやかに咲く花の鬼は剛なるもの。硬質に姿映す鏡は柔のもの。
 見た目と相反する性質を持つまじないが、エリシャのために黒い花道を作り上げる。
「あなたの想いが流れ込んでくるような心地よさを感じますわ」
 これが、呪詛だなんて。そう笑って、エリシャもまた、己の呪詛を刀に乗せる。
 黒き花道には、血桜だけが残るもの。
「きっちり首取ってこいや」
 背を押す声に跳ぶ足は軽く。
 一瞬目の合った常盤が謙信の喉元に食らいつこうとするのを見れば、にこりと微笑みかけて。
「御首は私が貰い受けると」
 そう、申しましたのに。咎めるでもなく、ただ少し待ってくださるかしらとばかりに大太刀を振りかざし。
 そっと首を逸した常盤の眼前を綺麗に掠めて、上杉謙信の首をはねた。
 血の雨が、一瞬だけ降り注ぎ、けれどすぐに収まる。
 ごとりと重い音を立てて幾度も跳ねた首もまた、エリシャの手に渡る前に、消えていく。
 朽ちればその身は骸の海に還るだけ。
 だからこそ、くれてやるものは何もないと言わんばかりに。その身は音もなく、消え去っていく。
「……随分と、潔いことですのね」
 血に塗れ、焼け焦げた白の纏も、瞬く間に風化して消えていく。
 それを引き止めるでもなく、見届けて。
 エリシャが呟いた声は、幾許かの寂寥感が、滲んだように聞こえた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月17日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト