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暖かな日

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 灰色の空が暗い森を覆っている。
 少女は、薄い色素の瞳に空の曇りを映していた。
 深い森の只中に開かれた村。それが彼女の世界、その全てだった。
 年中空を覆う薄雲は日光を遮り、その僅かな光を求めた針葉樹の森は、墨を塗ったように黒い葉を宿して、他の植物の実りを更に妨げている。
 村人達は、命を繋ぐ為に痩せた大地に鍬を入れ、か細い穀物を集めている。
 外の森に生きる環境はなく、生まれたその日から彼女の世界は、長閑な薄闇に鎖されていた。
 寒い、と彼女は褪せた色の髪を震わせて、両腕を抱える。
 昨日から空気の温度は大差無いように思えるのにも関わらず、少女は底冷えするような感覚を覚えていた。まるで、熱だけを食う虫が身体中を這い回っているような悪寒。
 空の灰へと投じていた視線を、暗い森へと向けたその時、彼女は古びた虫に食われた羊皮紙を想起して、肌を粟立てさせていた。
 影があった。
 影、影、影、影。
 見える森の木々の隙間から数十、無数の影が不気味な静寂を保ちながら、少女の体をひたすらに見つめていた。
 ただ、落ち窪んだ眼窩から、暗い視線を投げ掛けている。
 膝が湿った痩土を鈍く叩いていた。とさん、と彼女の体の軽さを思わせる音が、自身の耳朶を打って初めて、少女は体から力が抜けている事に気付いた。
 喉が震える。
 ずっと、見られてるの。
 少女の友達はそう怯えた声で泣きじゃくった次の日に、冷たい棺の中で眠っていた。
 畑にいた少女の父親が、駆け寄ってくる。
 生白い頬が凍りついたようだった。


 グリモアベースは、仄暗い天に突き立つような針葉樹林を形作っている。
「ダークセイヴァー、オブリビオンが支配する世界だ」
 長雨は、片腕を顔を洗うように擦りつける。
「ああ、ごめんね、失礼」と、彼にとって非礼にあたるのだろう行動に謝罪して、再び世界を見つめた。
「命を食らう呪いなんてもの、淘汰されて然るべきなんだけど」
 それが、少女を襲っている。
 いや、彼女だけではない。彼女の親の親、そのまた親の代、はたまたそれ以前から。
 そして、先の先、その先のこれからも。
 災厄は、村そのものを覆っている。
「救おうか、この村を」
 長雨は、猟兵達に言う。
 彼女が見た影。それは呪いの元凶ではない。あれにそれだけの力は無い。
「あれは、呪いに殺されて呪いを宿した魂の慣れ果て、残影だ」
 だが、彼らが呪いを運んでいる事も確か。
 数を減らせば、少女の呪いも薄まるかも知れない。それに、彼らを標に森を行けば元凶へと辿り着けるはずだ。
 今なら元凶の周りは手薄になっている。黒い森の主を攻め落とす好機だ。
「彼ら 、呪いの残影は、端末と同時に運搬役だ。呪いと命を交換する血管そのものだ」
 その長雨の言葉を借りるならば、元凶は心臓になるのだろうか。辿っていけばそこへと必ず通じている。
「影を殲滅しながら、元凶を殺す」
 それが村を救う、最適な方法だと、長雨は告げる。
「さて、冒険に出掛けよう」
 その声に愉快げはなく、そして、僅かに沈んでいた。


おノ木 旧鳥子
 おノ木 旧鳥子です。よろしくお願いします。
 ダークセイヴァー世界、鎖された村を積年の呪いから救うシナリオです。

 第一幕、集団戦は、基本個別に描写します。
 第二幕、ボス戦は、ある程度まとめた描写となります。ご了承ください。

 連携描写大歓迎です。【グループ名】を分かりやすく記載頂けますと連携を強めに描写致します。
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第1章 集団戦 『残影』

POW   :    怨恨の炎
レベル×1個の【復讐に燃える炎の魂】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD   :    同化への意思
【憐憫】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【異形の肉塊】から、高命中力の【絡みつく傷だらけの手】を飛ばす。
WIZ   :    潰えた希望の果て
【悲観に満ちた絶叫】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

栖夜・鞠亜
まりあ達も呪われたら、死んじゃう?
今回の敵は質量が無さそう。 まりあの武器は狙撃銃だし、銃弾はすり抜けて効果がないかも知れないから属性攻撃で弾丸に光属性を付与する。 それにユーベルコードで残影ごと、炸裂弾の爆発で森を耕しながら、進む。

【潰えた希望の果て】に対しては距離をおくようにするけど、森の中だと接近に気づかないかもしれないから、やっぱり炸裂弾で木を吹き飛ばして視界を広く保ったほうが、良さそう。 派手にやりすぎて、村の人がびっくりしてるかも?



 少女が『呪い』にかかった、という話は瞬く間に集落を駆け巡っていく。
 だが、そこに混乱は無い。
 それが普通であり、寿命を全うする以上の不条理を彼らは見出していなかった。
 曇る空も、黒い森も、朝に目を覚ます事と、同意義でしかなかった。
 彼らは知らない。残霊と呼ばれる存在が少女を見つめている事を。
「――!」
 その聞こえぬ声に、しかし感じた寒気に身を震わせた瞬間、弾けた轟音を、彼らは知らない。
「まりあ達も呪われたら」
 死んじゃう? と眠たげに、否、目を逸らすように鞠亜の無関心な紅色の眼が疑問に彩られた。
「……いいか、どうでも」
 白い肌から流れる金色の髪を揺らし、鞠亜が向けた銃口から弾丸が発射される。
 つい先ほど、爆音を鳴らしたものと同様の弾丸は、木々の隙間を直線の軌道で進むと、残霊のすぐ近くの地面へと着弾した。
 瞬間、眩い光と共に、再び爆音が弾ける。
 光属性を付与した炸裂弾が、込められた力を十全に発揮したのだ。
 爆風に斬霊は、その姿をかき消していく。だが。
「ちょっと違う?」
 それは、込められた光の属性ではなく、弾けた力の発散によって掻き消えているように思え、鞠亜は首を傾げながらも狙撃銃の中に残った薬莢を、排出する。
 次弾を装填するために、手動で抜け殻を弾き飛ばす手並みは、幼くも、しかし手慣れている。
 距離を離してなお、耳、だけでなく意識そのものを揺さぶりにくる残霊の絶叫に、ぶれる照準の手綱を握り、鞠亜はまたしても、木々を吹き飛ばさんとばかりに次弾を射出する。
 派手にやりすぎて、村の人が吃驚するかも。と頭の片隅で考えながらも、しかしその手が止まることは無い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

彼岸花・司狼
犠牲者にこそ哀れとは思えど、成れの果てに興味はない。
…成れの果ては本人の意志とは既に無関係、
とはいえそんな姿で人を呪われては、救いがなさ過ぎるよな

【追跡】で元凶へ続く痕跡がないかを探しつつ、
残影を発見次第、視界に映る分はできる限り斬りに行く。
【残像、フェイント、スライディング、だまし討ち】のトリッキーな動きで近づき
【範囲攻撃、なぎ払い、衝撃波、吹き飛ばし】からの【二回攻撃】で
【マヒ攻撃】を乗せた【一斉発射】による【零距離射撃】。
また外した武装も死角からの【誘導弾】による【暗殺】等で
形振り構わない【捨て身の一撃】をたたき込み、
模造武装で【鎧砕き】から【生命力吸収】で根こそぎ奪い取りに行く。



 残影が不意に視線を上げた。
 頭上を何かの影が過ぎたか。と呪いに蝕まれた思考に危険信号が走るよりも早く、振るわれた短剣が背後から、その首を掻き切った。
 血すら弾けぬ幽鬼の首が体から零れ落ちる最中、回り背後へと向いた眼にそれを為した少年の姿を捉えることは出来なかった。
 透明な水晶の反射が残影の視界を覆い尽くす。止めと放たれた水晶は、狙いを違わず残影の落ちる頭蓋を砕き貫いていた。
「……」
 首を失って、蟠る煙のように散る体を見送り、司狼は残影の姿を発見し駆けだす。
 それが、元はこの奥にいるだろうオブリビオンの被害者たちであったとしても、武器の振るいは乱れず、乱さない。
 木の幹を蹴りつけ、三体が疎らに固まっていたその中央へと降り立つと、複製した武装の数々を周囲に投げ射る。
 それだけで散る残影に、残るは二体。
 ボロボロに傷を纏った腕が、召喚された肉塊から救いを求める様に飛んでくるが、その悉くを曲線と直線を織り交ぜた動きで回避、迎撃しながらその肉塊を切り刻むと、それを召喚した残影へと迫る。
 連結した長剣の刃で胴体を斬り撥ねる、その動きに回避を行おうとした残影の脚に、連結した短剣の刃が突き刺さる。
「っ」
 背後で、もう一体の残影が、口を開くのを視界に収めながらも、司狼はそれを看過し、足を崩した残影の胴体を今度こそ、分割してのけ。
「――ッ!」
 言葉にならぬ、悲痛の叫びを放たんと開いた背後の残影の頭が、体が、空から降った鉄塊の鉈に引き千切られた。
「こっちか」
 初撃で上空に打ち上げていた鉈で潰した残影には、僅かに視線を向けるばかり。
 残影達の動きは二方向。村へ向かう動きと、もう一つ。その方向を見つめ司狼は再び移動し始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アニエス・エーラ
「仲間を増やそうとするその行為に同情の余地はありません。例え、集落の方々がそれを運命と受け入れようとも、私が此処に来た事もまた運命なのです!」
村へ近付く残影を誘き寄せ、距離を取りながら、武器で振り払い動きを観察し死角に回って攻撃。オーラ防御してユーベルコードで攻撃。敵の攻撃は全て武器、と自己暗示し当たりそうな攻撃は武器受けし攻撃。



 アニエスは、影へとゆっくり近づきながら、ふと疑問を浮かべた。
 残影たちを誘き寄せようとしていた彼女だが、その視界に捉えられているだろうにも拘わらず、残影たちはアニエスに近づこうとはしないのだ。
「なるほど」
 とアニエスは、一人頷く。
 残影にとっての優先は、村、その村の中にいる呪いの対象へと近づき、命を啜る事にあるらしい。
 よって、近くにいる部外者たる猟兵達には、余程の事、攻撃を受けるなどしなければ干渉すらしてこない。
 ならば。
 アニエスは、バスタードソードを抜く。
 彼らに同情はしない。仲間を増やそうという彼らの行動にその余地など感じない。
 敵意を示した瞬間に、近くの残影がアニエスへと視線を差し向けた。その瞳に怨嗟の炎が浮かべば、それは具現化してアニエスへと打ち放たれる。
「……っ」
 バスタードソードを盾に、その火炎を吹き散らしたアニエスは容赦なく、残影へと迫っていく。
 例え、集落の人々がこの状況を、大切な人の命を搾取される状況を運命と受け入れていたとしても、彼女は行動を変えることは無いだろう。
 鋼鉄の刃が、解けるように鈴蘭の花弁へと形を変え、風に舞う。
 白き刃は、無数に散って周囲の残影たちを切り刻んでいく。
「だって」
 周囲への攻撃に巻き込まれた残影から火炎が、叫声が放たれるが、それを躱し、身に受けながらも彼女は、集まる残影たちを片端から打ち滅ぼしていく。
「私が此処に来た事もまた運命なのですから」
 鈴蘭の刃が元の形へと帰っていく。叫び声に耳鳴りの消えない頭を振るった彼女の周囲には、もうすでに残影の姿は一つ残らず消え失せていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

護堂・結城
さて、終わった以上はちゃんと寝てもらいたいもんだ
もう俺達には救えない
だから、終わらせてやる

【POW】

残影を追いつつ元凶を探す
まぁ、見つけた残影も放置する気は毛頭ないけどな

敵が集団なら、こっちも集団で対抗するのが筋だろうよ
『雪見九尾の混沌召喚』を発動
【追跡】と【第六感】を活用して命中率重視だ
【属性攻撃・範囲攻撃・生命力吸収】で強化してやるからしっかり行って来い
追い立て、追い詰め、狩りたてろ

俺自身を狙うやつは氷牙の大鎌で【見切り・怪力・カウンター】
●怨恨の炎は吹雪と一緒に歌って【歌唱】にのせた【衝撃波】と【火炎耐性・オーラ防御】で対処だ

願わくば二度と死後を利用されぬように
元凶の外道は殺す、必ずだ



 結城は、白狐の頭を撫でた。
 ただ慈しんでいるのではない。彼の力を循環させて、その集団の強化を行っているのだ。
 凡そ百。それが結城の従える狐の数だ。
「狩り取れ」
 指先がその毛先から離れると、同時に言い放つ。それを合図に狐は軍団を作り、周囲に散った。
 敵は多く、一人では手が足りない。だから、集団で対抗する。
 真っ当であり、そして効果的な一手を打った結城は、周囲から火炎の灯りと叫び声が弾けるのを感じながら、青い体の竜を手に乗せる。
 竜は、彼の意を言葉もなく汲み取り、その姿を大鎌へと変じさせた。
 狐の襲撃に、その力の源である結城にも残影の矛先が向けられているらしい。円を描くように振り下ろし、急制止させ逆回転する。明らかに鈍重な大鎌を振り回しながら放たれた火炎を弾き飛ばした結城は、息を吸い込む。
「抜けてきたか」と、狐の攻撃を掻い潜った残影に声もなく、見渡す。
 囲む複数体から、叫び声と火炎が一斉に放たれたその瞬間に、肩の上に上った白竜が、歌う。結城も共に吐き出したその歌は、異なる音色の和を響かせ、迫る音波と火炎を全て打ち消していた。
 攻撃を全て無効化された残影たちはしかし、怯む様子も恐れた様子もない。
 恨みの色だけが全身を包んでいる。
 その不変は、正しく死者のそれであり。
「もう俺達には救えない」
 救う事の出来ない証明でもあった。
「だから」
 と、彼の脚は大地を蹴った。振るう大鎌の刃が風を切る。
「終わらせてやる」
 薙いだ刃は、残影の首を一寸の狂いもなく、刈り取っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『不服従の賢王』

POW   :    贄の叫び
自身が戦闘で瀕死になると【墓場の亡者 】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    闇の嘆き
自身の装備武器を無数の【黒百合 】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    葬られる孤独
【死の恐怖 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【有象無象の蛇のかたまり】から、高命中力の【恐れを喰らう蛇】を飛ばす。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠揺歌語・なびきです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 雲の帳の向こうで陽が落ち、夜が濃くなっていく。
 生気が失せ、色褪せた少女はベッドの上で、只管それを眺めていた。
 彼女にとっては、黒色の中で薄らに灰色に浮かぶそれが月であった。
 生まれた時から、その向こうに何かがある等考えもすらした事が無い。
 森が騒がしい、と大人達が狼狽えていた。
 それももう収まり、しかし、異変に誰もが恐れ、家に閉じ籠っている。灯りすらつけていない家も多い。
 そんな中で、少女は眠らずにいた。いや、眠れずにいた。
 上半身を起こす事すら難しい。
 疲れたら寝る事も出来ないんだ。などと現実逃避じみた事を退屈を紛らわすために嘯く。
 少女の友人は、森の影を見た次の朝にいなくなった。もう森の木々は黒く影の帳を下ろしていて何も見えないが、きっとそこにはあの影が少女を見つめている。
 明日、私を攫うまで、見つめている。
 そんな想像が頭を離れない。

 鞠亜は、先導する狐の後を追っていた。黒い葉の木々を抜け、ふと見上げて、黒い葉の隙間から僅かに漏れていた光すら閉ざされている事に気付き、いつの間にか夜を迎えていたことを悟る。
 狐の案内の先、一人の少年、司狼を見つけた。
「あんたも案内されてきたのか」
「ええ」
 短く答えた鞠亜は言葉を零す。
「私以外見かけないと思ったけど、やっぱりいたのね」
「ええ、今は私たちだけですが」
「他にもいるかはともかく」
 と長髪の女性、アニエスが頷くと、その視線を結城に導く。数による捜索で一早く残影の経路を辿り、この森の中央部を見つけた彼は、視線を鋭く尖らせながらその中央部を睨む。
 彼らがいる木々の先、森に空いた穴のように開けた場所の真ん中には、朽ちた枯れ木がひっそりと佇んでいる。
「あいつが、元凶だ」
 殺意を滲ませた言葉。
 それは枯れ木に留まった灰色の梟へと向けられていた。
 この森を、集落を呪いで掌握するオブリビオン。異物の入った笛を吹くような声が響く。
「さて、歓迎しよう」
 静かに、眠るように。それは確かに猟兵達を見つめている。
 討伐する。
 その声に、猟兵達の心は、一つに定まっていた。
彼岸花・司狼
結城との連携

死人になっては何もしてやれん。
殺す相手と悠長に語り合う気も、ない。
別に恨みはないが、まだ助かる人間が手遅れになる前に死んでもらうぞ。

呼び出した剣を矢に見立てて【武器改造】し、
【生命力吸収、マヒ攻撃】を乗せた武装を【残像】を残す速度で【一斉発射】、【鎧砕き】を狙い。
敵の花びらなどは【怪力】に任せた投擲で【衝撃波】を伴う【吹き飛ばし、なぎ払い】攻撃、
また飛び立とうとした場合は羽を狙うといった【援護射撃】を行う。

【フェイント】で外した剣も【2回攻撃】のために、【誘導弾】として【だまし討ち】に使用。

基本的にはダメージを与えるよりも
他人が攻撃しやすいよう、相手の攻撃への対処を優先する


護堂・結城
司狼と連携

さぁ、ようやく辿り着いた…行くぞ、狩りの時間だ
ただの自己満足でも、死者への手向けにならずとも
死後すら弄ぶ外道、殺すべし

【POW】

吹雪と【歌唱】して戦場の感情を【生命力吸収】し『雪見九尾の劫火剣乱』発動

氷牙はレッグギロチンに変更
劫火剣乱の剣群を脚部の刃に集めキックを主体にした【怪力】の【グラップル】を仕掛ける

司郎の援護射撃で隙ができれば【属性攻撃・生命力吸収・衝撃波】を載せた全力の跳び蹴りだ

飛び立とうとしたときは大罪の尾を刀に変え
司狼よりワンテンポ遅らせて【怪力】で【投擲】
命中した刀に【念動力】で【傷口をえぐる】

雉も鳴かずば撃たれまい、見つけた以上は逃がすものか
貴様はここで討ち墜とす



 誰のものか分からない白骨の断片が散らばっている。
 まるで枯れ木の枝のように、散らばるそれらは、まるでぞんざいに墓から暴かれたように土に塗れ、一つ足りとも揃っていない。
 だが、その全てが呪いを帯びている。オブリビオンを憎み、生者を恨む呪いがそれらを繋いでいる。
「では」
 罅割れた笛のような声。梟が折り畳んでいた翼を緩慢に広げ始めた瞬間に、一つの影が木陰を飛び出し、踊り出でた。
「――っ」
 一瞬、視線が交差する。
 飛び出す直前、司狼が交わした視線に、結城は瞳の中に同様の光を灯し、口を結んで返事とした。
「ああ、殺す」
 結城の声が梟に届くのを遮るように、司狼の武器群が展開した。複製された刃は、片端から全て掃射される。
 薄暗がりに無数の銀閃が線を引く。音すら食い破らんと放たれた武器に、梟の対処はひどく静かだった。羽ばたく事なく、その身は死骸のように枯れ木から落ちた。
「チッ」
 飛び立つルートを塞ぐように散らばっていた刃を、軌道を急速転換し落ちる梟へと殺到させた司狼は、直撃の瞬間を目に捉えながらも舌打ちを放つ。
「……硬い」
 いかにも柔い毛を蓄えている梟の翼が、殺到した刃を弾いていたのだ。鋭く硬質な衝突音が重複しながら響き渡る。
 地面に突き刺さり、はたまた転がって動きを止めた刃に、梟の姿に大きな傷は見えない。
 刀剣の群れに、掘り起こされた土煙の中で彼はそれを睨んだ。
 地面すれすれに羽ばたき、その体を宙へと浮かせた梟。結城は、そこへ脚を浮かせる。
 喉の奥が拒絶するように収縮する錯覚が、彼の眉を顰めさせていた。この場にある感情は、狂った甘さを孕んでいる。
 味、と形容しきれないそれは、しかし、質としては純度の高いものだ。青い刃に、竜が変化した脚部の刃に、劫火の刃が追従する。さながら炎の翼を踵に従えたような火炎が灰色の夜に舞う。
 飛び込んだ勢いをそのままに旋回した体から、踵から脹脛をなぞるように沿う刃が、梟を真上から叩き落す断頭台の刃さながらの軌道で、梟を大地へとぶちこんだ。
 猛烈な勢いを伴って地面へと梟が突っ込んだ衝撃の一瞬を遅れ、劫火の刃が爆ぜて闇に慣れた猟兵達の目を白く焼いた。
 熱の波が風船のように膨れ上がり、体表を撫でては霧散する。
 再び訪れた夜闇に、地面の呪いを焼き屠る火の揺らめきが光を灯している。
「っ!」
 地面にめり込んだ梟が作り出した穴は、火炎に縁どられその空虚を結城に示す。
「どこに」
「上だ」
 梟の短い声が、結城の視線を咄嗟に上空へと向けさせる。毛先に僅かに炎の名残を灯しながら、死に彩られた褐色の体を枯れ木へと戻していく梟を結城は目で追い。
「下だっ」
 視線を誘導されていた結城は、見る。
 梟のめり込んでいた穴に埋もれた白骨が、黒い百合の花弁へと変じて湧き上がるのを。
 黒の花吹雪が、つむじ風に巻かれるように舞い上がる。その一片一片に鋭利な刃の凶意を含ませ、結城を切り刻まんと彼の体を包む。寸前。
 風を叩き割り、豪速で振るわれた大剣が花弁を吹き散らした。
「――っ」
 瞬間的に怪力を開放した司狼の投擲した重量的な鉈が生みだした間隙に、結城は後方へと宙返りざまに脚刃に引く炎剣の尾で、即座に埋められる花弁の隙間を焼き拓き距離を取る。
 カラカラと、歪な吹奏が震える。
「宙には留まらないようだな」
「ああ、引きずり落とす必要は無えな」
 飛び退った結城が、着地の衝撃を屈み込んで和らげながら返す言葉に、司狼が散らばった自らの武装の場所を再確認しながら、数秒前と変わらず枯れ木に留まり、周囲に黒百合を舞わせるオブリビオンを睨みつけた。
「死んでもらうぞ」
 それは会話ではなく、一方的に突きつける宣告だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

後藤・吉丁
未来を潰す呪い、断ち切らないとね。

敵の攻撃手段わからないからね。
長巻の長さ生かして距離を縮めすぎないようにして、木々の間から不意をついて攻撃、離脱(ヒット&アウェイ)を繰り返していく(技能:地形の利用、だまし討ち、フェイント)
迫られたら薙ぎ払って距離とるよ(技能:なぎ払い、吹き飛ばし)

ま、相手もアタシが手こずってるのは見抜くだろう。
油断して一気に攻めて来ようとしたら、ユーベルC「丁の笄」を当てる(技能:だまし討ち)
先に封じちまえば、相手がどう来ようが関係ないだろ?

他の猟兵がこのスキ生かしてくれてもありがたい。
所詮、老い先短いババアの寿命だ。
遠慮なく使っとくれ。

※アドリブ、他の方との絡み:歓迎



「さて」
 と、吉丁は凭れさせていた木の幹から背を離すと、縦に据えていた長巻を握りなおす。
 残影を追って辿り着いた森の穴には、既に到着していた猟兵が戦闘を開始していた。
「老骨、若いのに役立てるとするかね」
 枯れ木に再び戻った梟のオブリビオンへと彼女は駆ける。どんな攻撃を行うか。黒百合の刃が舞っている以外は分からない。
 梟の爪の届く範囲は狭い。彼女の握る長巻であればその外から攻撃する事は容易い。
 吉丁は、完全に隙を突いて木陰から飛び出していた。
「っ」
 だが、三歩、足を進める間に梟面が百八十度の回転を終えて、吉丁を正面に見据えていた。表情など分かるはずもない。しかし、その瞳は黒い笑みを、紛れもなく湛えている。
 花弁が動く。吉丁へと動いたその黒い群れに長巻を持たない腕で、笄を模した護符を投擲した。
「冷や冷やさせるねえ、全く」
 黒い刃が彼女に届く前に、梟へと吸い込まれるように擲たれた笄は、司狼の刃を弾いたとは思えぬほど柔らかく羽毛の中へとその刃を滑り込ませた。
 その瞬間、花弁の動きが乱れる。制御を失ったように、八方へと散らばる黒百合を潜り抜けると、笄に渡した力に拘束された梟へと刃を振るう。
「っ」
 水面を渡るように流麗な軌跡を描く長巻の刃は、動きの滞る梟の胴体へと吸い込まれて、柔らかい感触を返すとともにその羽毛の表面を滑るように阻まれて、梟の体を吹き飛ばした。
「……今、っ!」
 何かに気付いた吉丁は、その感触と視覚を整理するよりも先に、ぞわりと背筋を走る悪寒に長巻を振るった。だが、その直感に基づいた刃に巻き付くように這う蛇が、長巻を伝い吉兆の腕へと噛み付いていた。
 蛇を引きちぎるように振りほどいた吉丁が痛みを押さえ、視線を梟へと戻せば刺さっていた筈の笄の護符は消え、花弁は再び梟の制御下に置かれている。
 吉丁は、蛇牙の返しに抉られ血を流す腕を押さえながら、差し向けられた花弁から身を翻した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アニエス・エーラ
真の姿開放 WIZ 協力、アドリブ歓迎
死は、神の御下へ行く祝福、何を恐れる事があるのでしょうか。
もし人々が死を恐怖と感じると知り、殺すのであれば、これほど罪深い事はありません!
「悔い改めなさい!」
【オーラ防御】し敵の弱点を【世界知識】と【第六感】【学習能力】で探り攻撃します。弱点は共に戦う方々と共有し、弱点へ敵の弱点を【全力魔法】で【属性攻撃】します。
敵の攻撃は【第六感】と【学習能力】で回避し、【生命力吸収】しながらユーベルコードも弱点の属性に変化させ攻撃します。
攻撃を受けた方々には【祈り】で回復します。



 アニエスは、バスタードソードを構え、その刀身を風に溶かしていく。
「彼らの感じた恐怖を知りながら、彼らに呪いを運ぶというのであれば」
 舞う鈴蘭と黒百合が交差し、嵐を巻き起こしてく。
「これほど罪深い事はありません!」
 彼女を包むように巻き起こった黒百合の刃をオーラを展開して弾きながら、アニエスは鈴蘭の刃を梟へと届かせる。
 刃はその羽に弾かれて逸れていく。
 だが、それを見るアニエスの瞳には、刃が確かにその羽に埋もれる瞬間が映っていた。
「……効いていないわけじゃない」と思考するアニエスに直感が危険を告げた。咄嗟に身を翻すと、オーラの防御を貫いた黒百合の花が直前までアニエスのいた場所へと渦を巻いて大地を耕す。
 直後、土を裂くように現れた蛇に腕を裂かれた彼女は、更に距離を取りながら、刃を使役する。
「ならば」
 あのオブリビオンが猟兵の攻撃を受けても殆どダメージを負っていないように見えるのは、命を吸収する呪いで得た生命力を、即時回復と、直後の硬質化に使用しているからだろう。
 攻撃の瞬間にのみ羽を硬くし、移動にも支障を無くしている。
「一つは意識の外から強力な一撃を入れるか」
 もう一つは、硬化した羽を砕く攻撃で回復を振り切るか。舞う鈴蘭の刃が梟へと襲い掛かった。

成功 🔵​🔵​🔴​


「呪いで得た力、か」
 司狼は、アニエスの気付きと同様の事を吉丁から聞き、僅かに顔を顰める。
 振るう力の全てが犠牲者の命で賄われているとすれば、あれは他者の命を燃やして生きている。
「ああ、あの感触は、ただ硬い、だけじゃないね」
 手持ちの武器で、アニエスよりも更に接近した吉丁の手ごたえは、確かに柔らかい肉を裂く感触と、刃が押し戻される感覚、そして鋼鉄に触れたような硬質さ。それらを彼女自身に伝えていた。
「この骨も、その呪いを受けた誰かの物って事かもな」
 と結城が、黒百合へと変じるその骨を見渡す。
 呪いを深く、その身に宿しているからこそ、梟と繋がりその武器として利用されている。
「どこまでも、罪深いですね」
 と梟から距離を取ったアニエスが、祈りによる治癒を施す。
 見れば、黒百合の乱舞で鈴蘭の刃を押し戻した梟が、やはり、傷を修復した状態で羽ばたいている。
「行くぜ」
 暗がりを照らす治癒の光を浴びながら猟兵達は、再び枯木に留まったオブリビオンへと展開する。
 呪いから得る力によって回復し続けるのであれば、その全てを、得たもの全てを吐き出させば、攻守ともに猟兵達には然したる脅威とはならない。
 そう一致した彼らは、再び会敵していく。
 少女の見上げる夜は、今も呪いを湛えている。
 その雲が晴れるのは。
政木・朱鞠
【狐の宿】で連携で戦うよ。

敵達にどんな過去の因縁が有ったか気になる所だけど…モタモタと考察して私達が困っている人をほったらかしにしてたら未来は過去に喰い潰されちゃうもんね…。
抗う術のない人達に不安と厄災を撒き散らして苦しめた咎はキッチリ償ってから骸の海に帰ってもらうよ。

【SPD】
動き回られるのも少し厄介だし、「咎力封じ」を使用して『不服従の賢王』の動きを拘束する攻撃していきたいね。
武器はメインは刑場槍をチョイスして【串刺し】→【鎧無視攻撃】→【傷口をえぐる】でダメージを狙うよ。
動きをを封じ切れないかもしれないけど…もしも、逃亡の兆しがあった場合は追い打ちに忍者手裏剣を叩き込んであげるよ。


ナノ・クロムウェル
【狐の宿】で連携します

生きる者に呪いを運ぶ貴方を終わらせましょう
そのためならば私は悪魔でも死神にでもなりましょう
「七つの万能薬」を服用し「激痛耐性」を得て戦いへ赴きます

さあ、『不服従の賢王』よ、私と共に踊りましょう
「蒸気式飛行ユニット」で飛行し「空中戦」です
「翠炎剣」に翠の炎を纏った「属性攻撃」による「鎧砕き」です
防御を崩してみせましょう

敵が地に下りたら好機と捉え一気に急降下、その勢いとサイボーグの「怪力」を乗せ、ユーベルコード「爆裂剣」をぶち込みます
周辺地形をも破壊するこの一撃…ただで済むとは思わないことです


護堂・結城
【狐の宿】で連携 アドリブ歓迎

今宵、あの村には『何もなかった』
『だから』明日も平和に日が昇る

冷たい夜を終わらせるぞ

【POW】

いつもは援軍してるがたまには援軍貰うのもわるかねぇ

次は『雪見九尾の獣皇咆哮』だ
複製した風雷を纏う武器を射出および
敵の攻撃に合わせて纏った風雷を解放して【属性攻撃・範囲攻撃】で【カウンター】だ

大きな隙ができれば【念動力・怪力】で複製した武器を大鎌のようにまとめて
横から首を狩るように【属性攻撃・捨て身の一撃・生命力吸収】を載せて一閃

「合わせ一刀…混沌の大鎌」

贄の叫びで防がれようと【2回攻撃】でもう一閃

「眠れ、二度と利用されることの無いように」


彼岸花・司狼
【狐の宿】と連携 アドリブOK

敵を殺す以外の守り方は知らん。
だから、せめて力でも救えないと認めるわけにはいかないんだ。

【生命力吸収,捨て身の一撃,激痛耐性】で爆裂剣を迎え撃つように構える。
先に弾かれている【武器改造】で飛ばした【誘導弾】の刃を集め、
インパクトの瞬間に轟刀目がけて【零距離】で【一斉発射】。
その勢いで首を目がけて【吹き飛ばし,なぎ払い,衝撃波】、
さらに重ねて【怪力】をもってその強靱な羽ごと【鎧砕き】に行く。

無謀は承知の上、地に威力をくれてやることはない。
「呪いなんて無かった」そう言える結末のために、派手な痕跡は残させない。
そのためなら、多少の無謀は押し通すさ。


シン・ドレッドノート
【狐の宿】で連携します。アドリブOK!

「ターゲット・ロック、目標を狙い撃ちます!」
梟から距離を取り、天川さかなさんの前に立って銃を用意します。
【雷光閃く刹那の弾丸】を発動、右手の真紅銃と左手の精霊石の銃を一瞬のうちに【乱舞する弾丸の嵐】で複製したら、前面に扇型に配置。怪盗の単眼鏡で正確に梟をロックオンしたら、一斉射撃で狙い撃ちます。

基本的に梟の動きを止めるよう、連射で梟を足止め。墓場の亡者や蛇が現れたら、そちらを優先して狙い撃ち。味方が攻撃しやすい状況を作りだしますね。

さかなさん達、後衛を狙った攻撃に対しては、閃光の魔盾で受け止め、攻撃の隙を狙ってカウンターの射撃を撃ち込みます。


狐宮・リン
【狐の宿】で参加します。
ここに住む人々の、そして亡くなった人の安息のため
罪はその命で償ってもらいましょう。

覚悟するといいです・・・
オブリビオン

霊刀【白狐】は雷の属性を纏います。
【SPD】
残像1、防御1、属性攻撃1、範囲攻撃1、武器受け1、戦闘知識1、暗視1
を使用し【白狐】による斬撃で攻撃を行います。

援護、追撃は【狐の嫁入り】を使用します。
連携戦闘時は召喚する刀剣を抑え、前衛の隙をカバーします。

逃走の兆候がある場合はただちに本体優先で最大数の刀剣を打ち込みます。


天川・小恋
【狐の宿】団員として参加
ふむ、呼ばれて来てみれば何とまぁ・・・

不快じゃな

オブリビオンとはどうしてこうも・・・
わしらを不快にさせてくれるのか・・・っ

【WIZ】
全力魔法1
後方から【小狐召喚古今混々】を使用し2匹の狐を使い攪乱攻撃をします。
攻撃より動きの疎外を重視、視界を遮るように移動したり
手足の関節を狙ってまとわりつかせます。


天川・さかな
【狐の宿】団員として参加

ねこはきまま、思うまま生きるの
さかなはだれかがないちゃうのいや・・・
だからたたかう

さかなには大きな力はないけど
だいすきなひとたちがいっしょにいるの

まけない

【WIZ】
後方から【生まれながらの光】を当ててみんなの治療をするの・・・!
前衛重視にちりょうする

聖痕で痛いの嫌な子は痛いの代わってあげるけど・・・
きっとみんなへいき?

祈り1
たおしたら少しだけしんじゃっただれかにお祈りするの



 防御の術は、認知した攻撃に対して能動的に行っている。
 となれば、その眼を盗んで攻撃を加えていく事が効率としては良いのかもしれない。
 だが。
「力でも救えないと、認めるわけにはいかない」
 司狼は、己の信念を確かめるように、突貫する。
 からから、と嘲笑う声が彼を正面から見据えていた。
 付き合う気すら無いと、それは翼を広げ、宙へと舞い上がる。
「逃げるか」
 長く飛行しないとはいえ、地に縛られる結城達にはその距離は、遠い。
「ははっ」
 結城は、攻撃の届きにくい空へと逃げるそれを嫌悪を抱きながら見上げ、しかし、直後笑いを零した。
「いつもは援軍してるが」
 その眼は、空へと上がる梟と、空に現れた影を追っていた。
「たまには援軍貰うのもわるかねぇ」
「さあ、踊りましょう?」
 空の舞踏に誘うは、背中から蒸気の尾を引き、梟と同じステージへと舞い上がったサイボーグの女性。
 その手には彼女の背丈に匹敵する大剣が、翠の炎を纏い煌々と輝いている。彼女、ナノの背部に装着した飛行ユニットが唸りを上げる。闇に暗く尾を引く蒸気は、彼女の振るう剣閃と交わり、翠に輝く。
 灰の翼と、翠の刃が頭上で複雑な螺旋を描く。
鋭い戟音が舞い踊る空の下。
「不快じゃな」
 一人の妖狐が結城に語り掛けた。
 結城は、援軍と言った。つまり、この場に現れたのは、一人ではなく。
 翠の火花が上空で弾けた。
 閃光に照らされた彼女の顔が瞬く。
「オブリビオンとはどうしてこうも、わしらを不快にさせてくれるのか……ッ」
 妖狐、小恋は吐き捨てた。
 一度は跳び上がった梟がナノを振り切り、地へと降りる。一人では抑えきれなかったのだろうナノがその後を追う。
それが通った近くの骨が、黒百合へと変換され、ナノの動きを阻害しながら舞い上がっていく。
「……っ」
「厄介なその動き、まずは封じさせてもらうよ」
 ナノに代わり、地上にてそれを待ち受けていたのは、槍の長い刃先だった。
 朱鞠の握る槍の穂先が、暗い灯りを照り返す。対し梟は、上へ、下へ、右から回り込み上へと俊敏な動きでその突きを躱し切って、彼女の傍を過ぎる。
「鈍い」
「……さあ、どうかな」
 足元の骨がみきり、と軋み上げる。枯れ木とは違う、硬い軋みに一瞬その意識が、誰かの物だっただろう骨へと向きそうになるが、その思考を瞬時に切り替えて、短く挑発をした声に笑みを返す。
「っ!」
 槍の刃先を逃れた梟が、僅かに声を漏らした。その体に纏うはローブの束。地面へと繋がるそれは、梟の体を確かにそこにつなぎ止め。
 槍を手元で回した朱鞠は、振り返りざまに逆手に持った槍を突き出す。
 黒百合が舞い、ロープを切り裂いて梟は脱出を図るが、先んじたのは朱鞠だった。
「鈍いのね」
 突き出された槍は、その長く鋭く磨かれた先端の効果を十分に発揮し、硬化した羽を貫いて、胴体へと深々と突き刺さる。
「グっ」
「まだ、よ」
 逃れようとした梟に告げ、朱鞠は刺さった刃を捻じりながら、抜き切ると更に一撃を構える。
 捻じった刃が刺し傷を更に抉り取り、一瞬、力なく梟の体は重力に従い、追い打ちを掛けようとした朱鞠は、しかし、真下から湧き上がる黒百合の刃に腕を弾かれ、攻撃を中断される。
「……っ」
 この場には、地中に幾つもの骨が埋められている。その全てが梟の武器である。攻撃を受け、脱力したように見せかけ、足元の骨へと呪いを与えたのだろう。
 細かな刃で幾百もの傷を刻まれた腕からは、血が溢れ、力が抜ける。その瞬間を、それは逃さない。
 舞い上がった黒百合の刃が、頭上で切り返し、殺到する。
 更に、頭上に向いた朱鞠の視線を潜るように、地面から数匹の大蛇が彼女の首を目掛けて跳び上がっていた。
「上は私が!」
 銃声が重なり、白雷と黒百合が渦を巻く。
 朱鞠が一人であれば、空の刃か地の牙に圧し負けていただろう。
 金の尻尾を揺らし、妖狐が駆ける。その金の毛先が通った背後に、白い銃を扇状に展開した金髪の妖狐がまた一人。
 彼、リンがその声に柔く笑み返す。
「任されました、リンさん」
 地を跳ねた蛇に目もくれず、シンにリンと呼ばれた妖狐は足も止めずに梟へと肉薄する。
 その手には、頭上で黒百合の刃を迎え撃った、幾本もの刃と同じ雷を纏う剣が握られていた。
 頭上では白雷の刃が、黒百合の刃を吹き散らす。リンが朱鞠を追い越す、その一瞬。
 銃声と共に弾き飛ばされた弾丸が、白い銃身から走り、真っすぐに闇の中を貫いていく。その轟音が蛇達へと達するよりも速く。シンの放った弾丸は、螺旋を描きながら進み、蛇の瞳がそれを映す。
 リンが傍を走り抜けるや否や、朱鞠へと跳び上がっていた蛇達が、その牙を届かせる前にその頭部を破裂させた。
 白い銃身から放たれた弾丸が、全ての蛇を穿ったのだ。
 リンは、その音を背後に聞きながら霊刀を薙ぐ。ナノが軌跡に残すのが揺らぐ翠であれば、彼女が軌跡に残すのは、白き瞬きだ。
「罪は、その命で償ってもらいましょう……っ!」
「愚かなッ」
 バチバチと、空気の壁を叩く白雷の爆音が灰の梟を薙ぐ。
 受けるべき翼に、硬化の術が張り巡らされた、その直後、構えたリンの腕の下を、脇の横を、弾丸が走り抜けた。
 発射音は、梟の翼を弾丸が弾いてから届く。着弾の衝撃に梟の体が宙で泳いだ。
「覚悟、するといいです」
 雷を纏う刃が強かに梟を打つ。
 その刃は、しかし硬化した羽を通す事は無い。だが、伝う雷が羽を焼き、肉を殺していく。
「ぐ、ぅ……!」
 オブリビオンが苦悶の声を上げる。受けた傷から焦げる煙を上げ、潰れた細胞を修復したそれは、咄嗟に距離を取るために一度、宙へと舞い上がる。
 だが、それを追う影が一つ。
「おねがい」と、それを目で追う少女が、声を発した。
 飛びあがった梟に、絶えず銃弾を放ち、地上の蛇を掃討していくリンに守られるように、彼女はここにいた。
 未熟な身では、戦中の回復すら手間取ってしまう。だが、誰かが泣いているのは嫌だった。
 さかなは、祈る。輝く聖なる光が大好きな人たちの助けになる事を祈る。
空にも逃げ場はない。また、翠の閃光が跳ねた。
「終わらせましょう。貴方を、呪いを」
 ナノの導く第二曲が始まる。
 梟の硬化した羽の毛先鋭く、脅威ならずとも凶器足りえる。それは先ほど、十分に身をもって理解した。
 刃と翼が交わる剣戟に、ナノは自らの皮膚を裂かれていくのを感じながら、しかし、それを意に介さず剣を振るう。
 さかなの治療で、初めの傷は治癒している。剣閃が舞う。
残ったさかなの与えた光に、薄い傷ならばすぐに塞がる。風切り音が跳び、刃のぶつかる音が躍る。
 先程は振り切られたが、体が慣れたのか、それとも、オブリビオンの動きが鈍ったのか。地上から舞い上がった黒百合の刃を焼き切り、避けながら、ナノは一気に梟との距離を詰める。
 目の前で踊るオブリビオンが全ての傷を回復しようというのなら、その防御毎。
「崩します」
 言下一閃。ナノを迎えた翼の鑢を身に受けながらも上々段から振り下ろした一撃が、硬化を食い破りその半ばを切り裂く。
 衝撃に体勢を崩した梟は、しかし、直後回復させた翼を羽ばたかせ、地面へと急降下していく。一瞬にして離される距離。
 それを、ナノは待っていた。跳ねる肺で僅かに息を吸う。
「全て、ぶち込みます」
 重力を振り切るほどの推進力を発揮する飛行ユニットの推進方向を、重力に従う向きへと変更する。
 さながら、獲物を定めた猛禽の如く曲線を描いていた翠の尾すらも直線になって、梟へと延びていく。風圧を押し退け、彼女の体は加速する。
 梟へと届くその瞬間、その尾が真横に炎を描いた。刃は炎を纏ってはいない。その全てを剣へと凝縮された剣は、それ自体が炎のように輝き、鋭い軌跡を描いている。
 推進方向を変化し、体を旋回させ遠心力を加算した翠の剣閃が梟を追い詰める。
 肉薄し。
 一閃。
 周辺地形を変える程の怪力じみた威力で落とされた一撃は、硬化した羽すらも砕き、その奥の翼を両断せしめていた。
 直後、余剰エネルギーが爆発するように緑の球体となって周囲に弾ける。無防備にその近くにいれば、無事では済まないかもしれない。
 だが。
「殺す以外は、知らない。ならば」
 爆ぜた衝撃を突き貫いて、無数の剣刃が奔る。猟兵達が、空中の攻防を只見上げていたわけがない。
「圧し通す、までだ!」
 弾けた翠炎に身を焼かれながらも、司狼はそこにいた。先だって羽に弾かれたまま散らばっていた刃が彼の意志によって射出される。
 既に硬化を始めた梟にそれらをぶつけても、先ほどと同様に弾かれるだけだろう。しかし、それらが向かう先は梟にではない。
 地面に衝突し跳ねる片翼の梟は、地面から巻き上がる黒百合の花弁で攻性障壁を成す。直後、全ての武器が衝突した。
 合わさるは、衝撃。司狼が振った鉄塊じみた鉈に、射出された武器が更に勢いを与える。
 ぶれた照準を更に次弾を鉈にぶつける事で強引に修正しながら、その巨重な刃は黒百合の刃群を割ってその先の梟の首へと吸い込まれていく。
「冷たい夜は」
 黒百合を裂いた先、梟の更に奥。
 司狼と挟撃するように、結城が梟へと言い放っていた。
 今宵、あの村には、何もなかった。
 そう言えるように。
 彼が薙ぐは、風雷の武群。
 複製した武器を重ね、連ね、束ね合い、無数の刃を生やす大鎌。
 梟を包むよう渦を巻いた黒百合の壁を突き破った二人は、最後の一歩。
 呪いなんて無かった、と。
 そう言えるように。
 その結末へと向けて。
 前後の猟兵、左右から迫る刃は、呪いの元凶を決して逃がさぬようにと、刃の咢を閉じていく。
 踏み込む。寸前。
 カラカラと、笑い声が上がる。
「ッ!」
「な」
 骨だった。
 黒百合の花弁の剣を持った骨の腕が、地面から突き立ち、踏み込む直前の結城、そして司狼の脚を薙いでいた。
 痛みなどは問題ではない。
 構造として、健を断ち切られた脚では攻撃の支えには不十分に過ぎる。
「狂い立て」
 湧き上がるのは骨の軍勢。
 継接ぎの亡者が地中から姿を現した。女性の骨盤に男性の脚。子供の腕に欠けた頭蓋。揃う骨を只手当たり次第に繋いだというような歪な人骨が、湧き立ち。
 祈りが、形となる。
「……ぉ」
 声を凍らせたのは、猟兵ではなく、目の前のオブリビオンだ。
 呼び出した骨の軍団は、瞬時にその身を芥に還していた。
「潰させやしないよ」
 骨を長巻が裂く。
 骨を刑場槍が貫く。
 骨を翠炎が焼き、弾丸が砕き、雷刃が薙ぎ。
 無数の弾丸が地と平行に走り抜け、無数の雷剣が天に垂直に突き立つ。
 司狼は、結城は、大地を踏みしめていた。
 傷ついた足でではない。傷の名残を服にだけ残し、力強く、二人の脚は大地を踏んでいる。
 アニエスとさかなの祈りによる聖なる光を纏い、刃は駆けた。半ばに蘇生した両翼を羽ばたかせた梟の目の前に、影が躍る。
 二匹の狐が羽ばたきを阻害した。
 梟の視界を塞ぎ、もう一匹が梟を足蹴に跳び上がる。
 生まれたのは、どれ程の隙だったのか。研ぎ澄まされた感覚に、時の流れを遅く感じる。黒百合の壁を破り、数秒と、一秒とすら経っていないかもしれない瞬時の攻防の中で、同時に放った攻撃が連鎖していた。
全身全霊の力を込めて、挟み込んだ二つの刃は、硬化させた梟の首との一瞬の拮抗の後。
 互いに梟の肉の中ですれ違いながら、通り過ぎていった。
 別たれた胴体と首が互い違いに跳んでいき、地面に転がった。
「終わりだ」
 結城が、動かなくなった残骸に告げる。
 散らばった雷の剣達は夢幻に掻き消え、僅かに地面を舐める翠の炎も潰えていく。
 静寂が場を包み、雲に覆われた暗い空の下で誰かが詰めていた息を漏らした。
「――」
 瞬間、跳び上がった首の無い梟を手裏剣が穿ち、深々と刀が突き立った。朱鞠が放った手裏剣に、地面に転がしていた一刀、封狼刀が不意打ちをかけたのだ。
 雲が晴れていない。
 その事が、彼らにそれの生存を告げていた。
 そして、それは訪れた。
 首の再生すらなく、直前まで吸い上げていた呪いの力を全て使い切ったのだろう。
 今日までの、今現在までの全てを使い切ったオブリビオンは、果たして、その攻撃に立ち上がる事は無かった。
 呪いの王が玉座としていた広場に光が下りる。
 銀の光が、中央の枯れ木を照らす。
「っはあ、しぶとい奴だったな」
 結城が確信に今度こそ、息を吐ききった。
 それに小恋が二匹の狐を引き連れ、労うように声を掛けた。
「全くじゃ、それも呪いから得たものというのが何より気に喰わん」
 だがま、と小恋は空を見上げる。
「少しはすっきりしたがの」
 見上げた先には、晴れ渡る空から覗く月と、満点の星空が広がっていた。
 よかった、とさかなが両手を握りしめ、それを見つめた。
 犠牲になった人たちが解放されて、願わくば安息を得られることを、その光に祈った。


 村はいつもよりも暗い。
 怪音に怯えた集落の人々は、何を恐れてか灯りを消して寝静まっている。
 空には、薄ぼんやりと光る空があるだけ。
 ただ闇ばかりがある。
 いや、ただ闇ばかりがあった。
 眠れぬ少女は、ただ一人それを見上げる。
 金色。散りばめられた光の帳。
 夜の紺。光が、空を流れていく。
 それが動いていると気付いたのは、空が明るみ初めてからだった。
 そうして気付く。
 雲の向こうにあったのは、月で。
 紺色の中に煌めく光は、星というものだ、と。
 空の色が変わっていく。
 紫に、赤に、緑に、そして、蒼に。
 知らない色だ。
 少女は、白金の瞳にその色を輝かせて、真珠のように白い肌に僅かばかりに朱を差した。
 朝露が、濃緑の葉を揺らす森から覗かせた光の塊を受けて虹色に輝いている。
 土の色は、あんな色だったろうか。
 家の壁は、畑の苗は、自らの手は。
 そうして、陽が昇る。
 差し込む光が彼女の体を包み込んだ。
 その熱を知らない。
 そのぬくもりを知らなかった。
 最後に残った灯が、喜びに満ちて色を付けていく。
 僅かに残った炎が喜びに震えている。
 少女の世界は、色付き、照らされる。
 そうして、一日が始まる。
 少女の人生で最初の暖かな日が始まる。
 少女の人生で一番の暖かな日が始まる。
 そして。
 少女の人生で最期の、暖かな日が始まる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『暖かな日』

POW   :    村人や周囲の手伝いをする。冒険談を話す

SPD   :    料理や芸などを見せ、振る舞い、周りを楽しませる

WIZ   :    人との交流を楽しむ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 呪いに蝕まれた命は戻らない。
 オブリビオンは、その得た全てを消費し、息絶えた。
 少女は、もはや立ち上がれぬほどに衰弱している。
「お父さん! お客さんだよ!」
 なのに、少女は自らの脚で立ち、明るい声を発している。
 医者は言う。
 もってあと一日だ。
 この集落の医者は、傷病よりも呪いの進行を把握術に長けている。何世代にも渡り、呪いの患者を診てきた彼の言葉は、両親の胸を打つ。
 だが、それ以上に、目の前の喜ぶ娘の美しさに、愛らしさに。
 今は忘れようと誓った。
 夢心地なのかもしれない。
 明るい光に照らされる村は、人々は、隣に寄り添う人は、こんなにも美しいと突きつけられて。
 現実味を帯びていないのかもしれない。
 それでも、と父親は願う。
 強張る感情を、笑みで繕って娘に笑いかける。
 幸福であるように、と。


 第3章

  集落は救われました。
  呪いをかけられていた少女と、その集落の人々に、冒険談をしたり、芸や珍しい料理を振舞ったりしてください。
  集落の人々は、集落の広場に集まっています。長雨や猟兵たちから呪いが無くなった事は伝わっていて、突発的ではありますが宴が開かれています。
  少女の世界が、美しく、明るく、幸福に満ちている事を、示してあげてください。
 夜まで行動できますが、時系列順に執筆となりますのでご了承ください。


 時系列順とありますが、最終的にまとめるものが時系列順になります。
 プレイングに連なる部分(メール等にお知らせがいく部分)は、内容の準備段階等を描写する形となります。時系列関係なく、プレイング順に採用します。
 宜しくおねがいします。

アニエス・エーラ
…あと1日の生命で…あんなにも明るく振る舞える少女の心が美しいです
私にどうにか出来ないでしょうか?
余計な事とは思いますが、お手伝いをしながら、祈り、封印を解く、聖痕や祝福のロザリオを当ててみる等、周囲にも当人にも分からないように試みます。…一生懸命忘れて燥ごうとする姿を見て、現実を突き付けるような真似は出来ませんので
「この世界は、今まで見た中で一番輝いて、美しいです…!そんな世界に生を受け、幸福ですね」
心の底から、そう思います。この少女の、この心が。そして、少女を見守る人々の瞳が優しさに溢れています
彼女の好きな物、大事な場所等、聞けるお話は全て聞きたいです。楽しい一時だけ、思い出させるように…


政木・朱鞠
狐の宿】のみんなと参加するよ。

【WIZ】
私だって人の咎を狩ってきたから悔しさの残る勝利は幾つか経験しているけど…今回ほど胸が痛むことは無かったかも。
でも、絶望したらオブリビオンの思うツボ…私達が悲しみで涙を流したら村の人たちを不安にさせちゃうよね。
だから、笑顔で【フォックスファイア】を使った火遁の術を芸として披露するよ。
それから、屋台やお神輿…そして、みんなでお囃子に合わせて踊ること…サムライエンパイアの楽しいお祭りの話を少女や村人に語るよ。
いつかこの理不尽な支配を覆し、光射す未来を諦めない様にね。

でも、救えなかった言い訳とか全部乗り越えるために一段落したら人が居ない所で大声で泣きたいかな…。


シン・ドレッドノート
【狐の宿】の皆さんと、宴を盛り上げます。
サムライエンパイア風料理を振舞って、皆さんの宴を演出するとしましょう。

「妖刀・紅蓮。最高の切れ味を持って、食材に新たな命を!」
集落のご婦人やお嬢さんに料理の手ほどきをしながら、【永遠の輝く放つ星】の中の冷蔵庫から取り出した魚や肉、野菜をさばいて、一つ一つ丁寧に『料理』。刺身やちらし寿司、お吸い物などを美しく盛り付けたら、宴の席に並べてもらいましょう。
「さぁ、遠慮せずに召し上がってくださいね。」

皆さんが料理を味わい、楽しんでいる間に村の周囲を巡り、指輪のエメラルドの力で『破魔』の『祈り』を。
「エヴァー・グリーン。二度とこの地が呪われることがないように…」


彼岸花・司狼
さよならは嫌いなんだ、本当は。
殺すだけじゃ救えないことばかりだから。

村人の手伝いをしつつ、
夕暮れには希望者にUCの天を駆る狼に乗せて、空から地上を見せよう。
過酷な世界でも、確かに美しいモノはあると知って欲しい。
…生まれ故郷だしな。


救い損ねた泣き言は、涙は全て終わってからで良い。
殺すしか能が無いと解ってはいても、
掌からこぼれ落ちていくものがただただ、辛い。

永遠の灰色よりも、一瞬でも輝くあの虹の方が綺麗だ、なんて言うが
最期だけ、そんな輝きは本当に救いだったと言えるのか。
最期に幸せだった、だから救われた?
いいや、生きていればまだ幸せもあったさ。
こんな世界を変える、そのために刃を選んだんだから


護堂・結城
なんともやるせない結果だ…だがまぁ
いつまでも暗いツラしてたら宴が台無しだわな
ようし、この際だ、派手にやろうぜ

広場を借りて【歌唱】と【楽器演奏】にのせた冒険譚を歌おう
『雪見九尾の混沌召喚』で呼び出した狐で劇のようにしてみるのも面白いか?
そうと決まれば打ち合わせだ【動物と話す】

・夜は司狼と合流
冒険譚みたいに救いばかりだったらどれだけいい事か
…俺らは神様にゃなれねぇ、全ては救えず零れ落ちるものもまだ多い

今はただの一日しか見せられない、辛くて後悔しかなくとも進め

だから、刃を選んだんだろ?
この世界で理不尽な悪の所為で流れる涙を止める為に
俺達にはここで立ち止まってる暇なんてねぇぞ


サンディ・ノックス
ダークセイヴァー出身だからこんな状況は見慣れてるくらい
でも何も思わないわけじゃない
辛いと思うけど最後まで笑ってください
娘さんが暖かい気持ちに包まれながら逝けるように


【狐の宿】の皆と参加
宴では穏やかに笑顔を浮かべ『優し』い声と言葉を選び場を和ませる役
『コミュ力』っていうのは縁の下の力持ちだと思ってる

シンさんが腕を振るった料理を配膳
盛付が映える様に向きや配置はしっかり考えるよ

芸を集落の人と一緒に鑑賞、ここぞというときにリアクション


少女の命が尽きる時は許される範囲で傍にいる
両親、集落の人にやりきれない気持ちで当たられてもいい
感情を偽った事などで彼らが自責の念に襲われるなら
強めにプレ冒頭の心情を訴える


ナノ・クロムウェル
【狐の宿】の人達と一緒に宴に参加します

私は翠の炎を使い場を暖めます
翠の炎で綺麗な花を作りながら村の人達とお話しましょう
この村の事、他の世界でのことでも何でも…
とは言え基本は聞き役になろうとは思っています

…こっそり駄目元でユーベルコード「命の炎」を使って呪いの軽減をやってみましょう
…何が奇跡の力ですか…少女一人も救えないじゃないですか…

今だけは私の感情が封印されていて良かったと思います
……泣いたり、悲しい顔で見送るわけには行きませんから…
きっとこの夜が終わるまでは解けることはないでしょう

この夜が終わったらこっそり解きますかね…
(封印解除中は口調変化)
ナノは忘れないよ…この村での出来事を…


天川・さかな
【狐の宿】で参加
みんなは何してるかな?
シンはお料理するって言ってた、さかなも手伝うよ?

さかなはね難しいことはわからないけど……、たくさん悲しいことがあった……なんとなくそう聞こえる……

だからね、さかなは祈るよ?
悲しいことがないように、じゃなくて、この先たくさん笑えるように……

あ、そういえばお料理
シンはお魚……食べさせてくれるっていってた
お魚美味しいの、焼いても煮ても蒸しても、生も美味しいよ?
あなたも食べる?


天川・小恋
【狐の宿】で参加するのじゃ!
そうか……、仕方ないか……の、わしらは全てを救う事は不可能じゃものな……

わしは……、わしの目指す正義があるゆえ、それでも全てを救おうと足掻くのじゃ

しかし、今一時はみなの笑顔のために力を振るうとしようかの?

【SPD】
ユーベルコード小狐召喚古今混々を使用して皆と戯れさせよう、無邪気な狐達をみて少しは癒されると良いのじゃが……

なんならわしの尻尾をもふってもよいぞ?
妖狐の尻尾じゃここらではそうそう触れまい?


狐宮・リン
呪いで蝕まれた命は戻らずとも……
たとえ私の行為が無駄だとしても……

私はこうするしかありません、


私は問います今幸福かと……

私たちの行動が無駄ではないと思いたい……自分勝手な思いかもしれませんが、

幸福と思ってくれているのなら
ユーベルコード【幸福の未来】を使用して天使という概念を披露しましょう。
生命力の根源を与え今このときだけでも、彼女をただの何処にでもいる元気な少女に

辛さも、痛みもない……
ささやかな平穏を……

最後であろうと心からの本当の自由を……


そして、私はこれでも猟兵ですから、彼女に暗さなんてみせませんよ……♪

楽しむ場にしんみりとした顔は似合わないのです♪



 アニエスは祈る。
 胸に手をあてながら、僅かに瞑目し、目の前の光景に、祈る。
 呪いの解けた集落は、しかし、困惑だけを映し出していた。彼らの世界は常に呪いに覆われていたのだ。
 猟兵達の話に、ただどうすればいいのか。と呆然とするばかりだった。
 だが、昼も近くなれば、動き出す者もいた。数人の村人が祝いの宴を開くことを提案し、その日のうちに開催が為されたのだ。
 始めの一声に従っただけなのだろう。彼らの視線は絶えず、上向きに、澄んだ蒼の天蓋を眺めている。
 笑い声。
 アニエスは、少女の声を聴いた。駆ける足音は不揃いで、軽い。
 見れば、一人の少女が、二人の男女を連れて広場へと歩んでいた。薄い色素の、白金の瞳に青空を映して、心配そうな両親の視線に笑みを返している。
 薄い金の髪が、緩い円を描いた。同時に、少女の体が何もない場所で蹴躓いて、地面に倒れ込んでいた。
 駆け寄る両親に、しかし少女は、面白そうに、楽し気に、快活な息を返した。堪え切れないとばかりに、零れた笑い声は、ころころと転がりだす。
 美しい、と浮かんだ。
 見た目は、言ってしまえば貧相なものだ。簡易的なワンピースは草臥れてる。髪も乱れて、痛んでいる。
 それでも、ただ、美しいと感じた。
 きっと、少女の笑みが、声が、動きが、アニエスにそう思わせている。
 胸に当てていた手をそっと、下ろす。僅かに手を握り締め、アニエスは少女へと踏み出した。

 手の中に一つ、狐火を熾して、揺れ動くその先端をじっと、見つめていた。
 一つ、瞬きをして、息を吸って、朱鞠は火球を動かし始めた。
 一つから二つ、三つから四つへと、その数を増やしていきながら、二十にまで増やしたそれらを個別に動かして、調子を確かめる。
 これなら、十分芸として楽しませられそうだ。と頷いて、ふと川を見つめた。
 一応、火を扱うので屋内ではなく、近くの小川で準備をしていた彼女は、青を反射する穏やかな流れを覗き込んだ。
 駄目だ。と、朱鞠は一度顔を上げると、両手で顔を覆う。
 朱鞠は、空から流れてくる子供たちの声に耳を澄ます。その中のどこかに、その少女の声もあるのだろうか。
 先程見た少女の姿は、酷く脆く見えた。
 目を閉じたまま、手の平の作る影に安らぐ。
 せせらぎの音と、水の匂い。地面が温められて湿った土から上る空気が、痩せた土の香りを運んでいる。
 手の平を外し、陽の光を浴びてもう一度、朱鞠は川を覗き込んだ。
 大丈夫。と、微笑む自身の顔が、そう紡いだ。

 閉じた集落であったのならば、此処ではない場所の料理はさぞ珍しいだろう。
 シンは、暫く宴準備を手伝いながら、その確信を深めていった。
 陽光を吸い込んで煌めく、新葉を思わせる様な透明な緑の宝石を指先で軽くなぞり、誰にともなく頷いた。
 野外で作られた調理場は、始めこそ、探り探りの様子だったが、毎日繰り返してきた炊事に変わりないからだろう。すぐに調子を取り戻した母親たちが、物珍し気に調理場に居座っていた子どもたちを追い出すのに然して時間はかからなかった。
 サムライエンパイアの料理は、調理段階から勝手が違う。きっとその過程もいい見世物になる。
 あれを作ろう、それを作ろう、とざわめきだした調理場の一隅でシンは、ユーベルコードで作った空間の冷蔵庫から使える食材を取り出して、簡単な試作を始めた。
 一瞬静まった調理場で、俄かに母親たちの顔に対抗意識が募っていくのがシンには見えた。
 火が灯る。
 この集落にも祝いの料理は幾つもある。どうせなら、今作れるものを全部作ってやろう、と悪巧みのように口角を上げた母親たちは、近くの男を捕まえて食糧庫へ走らせ始める。
 加熱していく。
 声が弾ける。
 心地の良い温度が、ぬくもりが調理場を包んでいく。

 息を吐く。
 息を吸う。
 意識して、それを繰り返さなければ、それすらも忘れてしまいそうな、痛みだった。
 湧き立つのは匂いで、すり抜けていくのは温度で、溢れているのは声だ。
 司狼のすぐそばを、一言すれ違いざまに会釈しながら男性が走っていく。遅いと叱咤するのは、彼の母だろうか、妻かもしれない。
 対する男性は、膝に手をついて、息を整えるばかりで返す言葉もない。
 ただ、楽しそうだと思った。
 次なる指令を受けて、再び走り出す男性は、また司狼の傍を通ってどこかへと駆けていく。
 また、司狼の後ろから誰かがすれ違う。
 走ってはいない。ゆっくりと踏みしめる様に歩く少女は、司狼の顔を覗いて、不思議そうな顔をした。
 そうして、笑う。
 瞳に、虹が瞬いているかのような、笑みだった。

 発声を繰り返しながら、結城は喉を開かせていく。
 披露するのは冒険譚だ。ありきたりな、それでも希望にあふれた物語。
 暗い闇の中で、小さな灯火が幾つもの蝋燭に火をつけて、闇を溶かしていく優しい、冒険譚。
 キャストは、結城の召喚した狐達だ。主人公には光を、悪者には闇を、風を、水を、雷を、配役に合わせて属性を纏わせ、吟遊に劇を合わせるように動物たちと輪になって打ち合わせをする。
 楽器の音と結城の歌声で、たくさんの狐達が躍り、演じ、進んでいく。
 しけた劇じゃつまらない。
 狐達が賛成とばかりに尻尾を揺らす。
 派手に、盛り上がるような。そんな、馬鹿馬鹿しいような話が宴にはよく似合う。

 サンディは、シンの傍で母親達の間を行き交いながら笑みを浮かべる
 優しい笑みは、そよぐ風のように心を撫で、柔らかい言葉は人と人の間を心地の良い糸で繋いでいく。
 不均等なバランスで揺れていた、調理場という秤にサンディは調整役としての重りになっていた。
 一人、違う行程を進めるシンに代わって、その手順の意味や仕方を説明しながら、出来上がる料理を配膳していく。
 形は目賑わしく。
 色は移ろわせて。
 味を華やかに。
 悲劇は見慣れている。
 この世界に、それはありふれている。
 走る事すら出来ない少女が、それでも頬を赤らめて並んでいくそれらを見つめている。
 サンディは彼女の周りで笑顔が浮かんでいる事に、安堵しながらそれを隠し、小さな匙を手に取った。

 灰の翼を焼き、空を彩った色が、花の形に広がっていく。
 それは誰も焼かない、優しい炎だ。
 ナノの操る翠の炎が舞い踊る。
 揺れて走る光と影が、自然と人の目を惹きつけている。
 ナノが語るのは、他の世界での出来事だ。
 男性が語るのは、彼の母親の故郷の話だ。
 女性が語るのは、父の描いた渓谷の絵についてだ。
 ナノは、やがて話す事をやめ、耳を傾ける。揺れる翠が暗くなってきた地面を、穏やかに照らしている。
 老人が語るのは、この集落で新しい作物が取れた日の事。
 青年が語るのは、最近芽生えた恋の話。
 ナノは、ゆっくりとその声に聞き入り、相槌を打ち、呑み込んでいく。
 少女が語るのは。

 さかなは木の皿を抱えている。
 彼女が見知った人達はそれぞれに動いていた。
 だから、さかなも、人々の間を小さな体ですり抜けながら、足をとたとたと動かして、耳を動かしていた。
 いろんな所から、声が聞こえる。
 笑い声に混じって、小さく囁く声が聞こえる。
 大人たちの話す言葉は、遠回りで、知らない言葉も多くて、さかなの耳が拾っても、さかな自身が覚えることはない。
 しかし、それでも、その声色が楽し気出ない事は、さかなにも、なんとなく分かった。
 悲しいことが、たくさんあった。
 きっとそうなんだろう。それでも。
 シンの作った料理をサンディが運んでいる。
 そのすぐ近くで上がった声のように、明るい笑い声が響く。
さかなは、吸い寄せられるように、サンディの運んだ料理へと近づいていく。

 呼び出した二匹の狐が、びくびくと興味を引かれながらも怖がっている子どもたちにゆっくりと近づいていく。
 あと一歩。近づいたら、きっと逃げてしまうだろう距離で止まった狐、コン太とコン助は、少し顔を見合わせるとその場に横になった。
 不可能なことは、ある。
 どうしても、不可能なことは、無くならない。
 小恋は、ゆっくりと心の中でそう噛み締める。
 手を伸ばした先には、既に失われたものがある。そんな事は当然にあり得る。
 だが、と。
 しかし、と。
 それでも、と彼女は足掻く。
 丸まったコン太、コン助に、暫く固まっていた子どもたちが近づいていく。
 恐る恐る伸ばした手が、狐の毛皮に埋もれる。と同時に、感心か感動か。歓声が上がっていた。
 触れても跳ね起きないコン太とコン助に子ども達は次々とその手を伸ばしている。触られて嫌な場所は尻尾で弾く二匹に、小恋はもう一度、しかし、と思う。
 今は、今この時ばかりは、みなの笑顔の為に。

 自らの行いが善だと、断言できずにいる。
 この思いが身勝手なものかもしれないと、訝しんでしまっている。
 リンは、これから自分がする行いを贖罪のようにすら感じていた。
 否定することができない。
 だが、例えそうであっても、間違っているとは思わない。
 だからいつものように、笑う。
 少女がそうするように、リンも笑う。
 辛さも、痛みもない。そんなささやかな平穏を、少女に与える為に。
 問い掛ける。
 きっと、彼女にとって残酷な問いだろう。
 それでも、問い掛ける。
 今幸福か、と。

「なんでだろう」
 少女は、小さく呟いた。
 どうして、私はここに寝ているんだろう、と。
 きっと、もう、今まで当然のように迎えていた朝を迎える事も出来ないだろう、と、思っていた。
 それは、その通りだった。しかし、それは少女の思い描いていたものとは違う姿で少女の目の前に現れた。
 虹色に輝く、朝露を湛える道端の草葉は、土の中に根を張って、小さな白い花を咲かせている。
 きっとそれは、今までも当然のようにそこにあった。
 それでも、ベッドから起きて、窓から見るそれは、別世界のものだった。
 少女の友達は、影を見た翌日の朝にはもう目覚めなかった。
「昨日、の、音」
 暗い村に響いた、あの音が少女の目を覚まさせたのだろうか。
 眠りに付けなかった少女は、その音で目覚め続けたのだろうか。
 少女の脚は、再び彼女の体を外の世界へと、導いた。
「あんまり早く歩くなよ」
「分かってるよ! お父さんこそ遅い、よぅぁ……!」
 少女の脚が縺れて、柔らかい土の上に少女の体が横たわる。
 名前を呼んで父親が駆け寄ってくるのを傍目に、少女は笑いを堪え切れなかった。
 触れた土は温かい。きっと、今までも、温かかった。そんなどうでもいい事が、どうしようもなく、嬉しかった。
 転んだ事が面白かったのかもしれない。自分でも分からない。少女はただ、嬉しかった。
「大丈夫ですか?」
 と手を差し伸べたのは、お客さんだ。
 でも今までのお客さんじゃない。森から出られずに、集落に住み始めるお客さんとは違って、呪いを解いた、猟兵という人。
「立てますか?」
「うんっ」
 銀の髪を揺らした女性に少女は頷いてその手を取った。
「ねえ、お姉ちゃんは知ってる?」
「なんでしょう?」
「夜って、キラキラしてるんだよ」
「それは」
「星って、言うんだよ」
 少女は、知っている事を機能体験した事に交えて語る。
 歩いて少し、女性は少女の頭を少し撫でた。
「お手伝いしてきます」
「うん、行ってらっしゃい、お姉ちゃん」
 女性は、少女の髪から手を離し、息を呑んだ。
 何かを言おうとして、口を噤み、そうしてもう一度口を開く。
「幸福、ですね。この世界は」
「……?」
 少女は僅かに首を傾げる。
「今まで見た中で一番輝いて、美しいです」
「うん、綺麗だよね!」
 少女は、大きく頷いた。
 女性が、離れた少女に小さく手を振った。少し後ろを歩いていた両親の元に戻った少女は、二人の手を引いて歩いていく。
「いい匂い」
 と少女は、両親を振り向き仰ぐ。
「ねえ、行こ」
「ええ。本当いい匂い。それに少し、不思議」
 母親が、少女に頷いて漂う香りを嗅いだ。
 甘い匂い、酸い匂い、嗅いだことのない芳醇な匂いだった。
「大きい……」
 少女は、初めて見る大きさの魚にくぎ付けになった。少女の知る魚は、彼女の手の平より大きい位の細長いものだ。
 しかし、今皿の上にあるのは、幅広の、少女の顔よりも大きな魚。
 更に、金色の髪の男性がまな板に載せているのは、それよりも大きな魚だ。他にも運ばれてくる料理は、彼女が見たことも無い鮮やかな料理ばかりだった。
「さ、遠慮せず召し上がってくださいね」と言葉を投げるのは、今も魚を捌いている男性だ。
「はい、これ使ってね」
 茶色い髪の、料理を運んでいた男性が少女にそう言って、小さな匙を手渡した。小分けされていく料理の数々は、それ自体が宝石のように煌めいている。
 どれから食べようか、と視線をあちこちに彷徨わせる少女の傍に、小さな影が不意に現れた。
「うあ、吃驚した!」
「……ん」
 少女は、現れたその影に驚いて声を発する。
 少女よりも少し年下くらいの女の子は、物静かにその赤い瞳で少女を見つめ返した。
「……お魚、すき?」
「え? うん、でもこんな大きなお魚初めて」
「そう。……お魚、焼いても煮ても蒸しても美味しい」
「蒸してるお魚、私も好き!」
「うん……でも、生も美味しい」
 と言うや、女の子は生の魚の切り身を口に放り込む。もくもくと動かす口から何とも言えない明るい表情の変化が広がっていくのを見て、少女は少し遠ざけていた、生の魚を取って、食べる。
 柔らかく、弾力のある身が、舌の上でざらついた表面を窪ませて、透明な香りと塩み、丸い甘みとほんのちょっとの苦みを広げていく。
「……! 美味しい!!」
 思わず出た声に、配膳していた男性も料理をしていた男性も、思わずと笑みを零している。だが少女はそれにも気付かず、次の料理に手を伸ばしていた。
 生まれてこれ以上、食べたことが無い。と言うほどに食べた少女はまた歩いていく。
 気付けば、少し駆け足でも大丈夫になっていた少女は、更に両親を急かしていく。
 次に彼女が見つけたのは、色とりどりに力を纏う狐達が舞う、劇の風景だった。
「わ、あ」
 白い髪の男性が、慣らす楽器と、歌う声に合わせて狐達が、冒険譚を綴っていく。
 そうして物語は大詰め。白い光を纏った狐が、黒い闇を纏った狐を跳ね飛ばして、捕まっている狐にどんどんと近づいていく。
 激しくなっていく音に、歌声が合わさって、そして音楽が唐突に止む。
「悪の親玉は、討ち取った! さあ、姫はどこにいる。きっとこの奥」
 光を纏う狐が周囲を見ながら、ゆっくりと囚われた狐へと近づいていき。
「ああ! そうして目の前には、美しき姫が」
 主人公は、お姫様を助け、再会を約束して、次の旅へと向かう。
「必ず、また相まみえる」と、男性は終幕を演じる。それは運命でなく、彼の選択だから、と言葉が歌う。
 少女は気付けば、手を叩いていた。誰かが始めた拍手に、四方八方から拍手の音が鳴り響いている。
 ただ、見入っていた。少女は、目の前で起こった物語の興奮に胸を高鳴らしながら、また視線をめぐらせた時、先ほどの劇が脳裏に貼り付いていたのか。
 その目に移ったのは、またしても狐であった。
「ふ、かふか……」
 少女はその誘惑に耐え切れず、触れる瞬間までの数秒を忘れていた。
 二匹の狐の毛は、さらさらと手の上を滑り、柔らかい肉と合わせて手を包む。手に触れる温度は、熱いほどに温かく、脈動が命の音を奏でている。
 すぐ傍に、狐の少女が立っている事に気付いたのは、どれくらい経ってからだろうか。
「なんじゃ、なんならわしの尻尾ももふってみるか?」
「いいの?」
「よいよい」
 妖狐は言う。妖狐の尻尾は珍しかろう、そうそう触れまいぞ。と揺らす金色の毛並みに、少女は、それに手を伸ばした。
 もふりと、柔らかな感触が手を、手首までを包んでいく。
「……ん、んむ」
「……」
「なんじゃ、その」
「……」
「童、そろそろじゃな」
「え、……あ、ごめんなさい」
 少女が我に返った時には、いつのまにか空が赤く染まり始めていた。
「……わ、赤い」
「どうせならもっと、高い所から見てみるか?」
 初めて見るその色に目を丸くする少女に、声がかけられる。
「あ、さっきのお兄ちゃん」
「あ、ああ」
 と少女が追い越しながら振り返った少年が鋼の狼に跨り、少女に手を差し伸べる。
 少女は、両親を振り返ると二人はゆっくりと頷いて送り出そうとする。
「いや、良ければ、二人もだ」
 とその少年が言うと、鋼の狼が一匹、現れて二人をその背に乗せた。
「行くぜ、捕まってろよ。落ちると怖いぞ」
「え、うんっ……ぅあ!」
 鋼の狼が僅かに屈伸するような動きと共に、一気に空へと舞い上がる。
 少女の頬に風が過ぎて、思わず目を瞑る。どんどんと上に上がっていく感覚に少年の背中を離さない様必死に握っていると、上昇はゆっくりと止まって、少年の声。
「もういいぞ」
「……」
「ほら、こんな世界でも美しいものは、あるんだ」
 その声に少女は、ただ頷くだけしかできなかった。
 染められる赤色の下、黒い森が途中から無くなっていくのが見えた。少女の世界で、黒い森は世界の終わりだった。端だった。
 それが、ちっぽけなものに見える。
 遠くに太陽が落ちていく色に、あ、と少女が声をだす。
「お母さんの玉ねぎ」
「え?」
「お母さんがスープ作る時の、玉ねぎの色」
「……は、はは」
 少年は笑う。
 そうかと、笑う。
 きっと少女にとって、それは何よりも美しい色をしているのかもしれない。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「……ああ」
 絞り出す声と共に、彼らはまた地上へと帰っていく。
 地上に降りた少女たちは、少しの間浮遊するような錯覚にふらつきながらも、暗くなってきた空を見上げ、進む。
「綺麗だね」
「ええ、こんな色をしてたのね、雲の向こうは」
 雲の色は変わらなかった。空の色は変わり続けている。
「私の世界ではね、色んなお店があって、お囃子に合わせて皆で踊ったりするんだよ」
 と少女に聞かせるのは、火球を操る女性だ。
 暗くなり始めて、落ち着きが場を満たし始めている。
 人々は広場の至る所に座って、話を交わし合っている。
 狐火と、そしてもう一つ、翠の火の灯りが暗くなっていく広場を照らしていた。
「私ね、昨日凄いもの見たの!」
 と少女は語る。柔らかい翠と赤に照らされながら、空を指さす。
「空にね、ひゅーって、綺麗なのが、ひゅーって」
 身振り手振りで少女は、集まる視線に教えている。だが、その言葉に納得の色を出すものは殆どいなかった。
 それに理解を示せたのは猟兵達だけだ。
「流れ星っていうのよ」
 と、狐火を操っていた女性が言い、空を見上げる。
「……今日も見れるかもね?」
「ほんと?」
「ええ、澄んだ空をしているもの」
 空に跳び上がりそうな程、はしゃぐ少女に緑の炎の花が、くるくると回る。
 少女は、ふらついた体を父親に支えられながら、空を見て、近づく人影に気が付いた。
「おひとつ、聞いていいですか?」
 と明るい口調で女性は問いかける。
「うん、なに?」
「今、貴女は……」
 女性は、少し言葉を区切り、微笑んだ。
「幸福ですか?」
「……」
 少女を抱き上げた父親が息を呑む音だけがやけに大きく聞こえた。父親が動く、母親が動く。
「うん」
 その前に、少女が口を開いた。
「幸せだよ」

 広場の片隅で、少女は父親の膝に頭を乗せて、空を眺めていた。
 それを少し離れた場所で見ていた朱鞠は、男性から声を掛けられた。
「あの……少しいいですか?」
「ええ」返す朱鞠は視線は親子に注いだままだ。
「あの子に、何かしましたか」
 問いに、彼女は笑みを含ませた息を吐く。流石に夜になれば、冷える。僅かに白んだ息を見送る。
 リンの、最後の問い掛け。だけではないだろう。他にも、きっと気付かれないように少女に何かしらの補助を行っていた。
 時間が立つごとに、元気になっていくように見えたのは、それが原因だろう。
「ええ」
「……そうですか」
 短く答えた朱鞠に、男性は満足したように踵を返す。
 小さく。彼は言い残した。
「ありがとう」と。

「お父さん」
「ん?」
「お母さん」
「どうしたの?」
「楽しかったよ」
「……そうか、お父さんも楽しかったよ」
「お母さんも?」
「当たり前じゃない、楽しかったわ」
「そっか、良かった」
 父親が、膝の上の少女の髪を撫でる。
「流れ星、だって」
「ああ、ここで一番最初に流れ星を見たんだ、凄いな」
「えへへ、でももいっかい見たいな」
「そうね、流れるかしら」
 炎を消した広場の上には、満点の星空が広がっていた。
「ん……」
「どうした、眠くなってきたか?」
「うん、今日はたくさん遊んだから、疲れちゃった」
「たくさん遊んだわねえ、空も飛んじゃったし」
「お母さんずっとしがみついてたもんな」
「ちょっと、貴方もじゃない」
「わたしも、怖かったけど、楽しかったなあ」
 すと息を吸う。
「ねえ、お父さ――」
 少女の声を遮って、父親が娘の名前を呼んだ。
「また、あしただ」
「……」
 少女は、星空から目を離す。流れ星が見えた気がした。
「うん」
 頷く。
「また、あした」
 微笑んだ少女は、ふと声を上げる。
「あ」
 星空を見つめた少女の声に、二人は、人々は空を見上げた。
 見上げた時、流れ星は、もう瞬きを終えていた。

 何が奇跡の力だというのか。
 体を翠の火が焼く。
 意味が無かったわけじゃない。それでも、届く事の無かった己の手を、炎が覆っている。

 静かに、指に嵌めたエメラルドが光を放つ。色を失わない、その輝きの祈りが大地に染みていく。
 願わくば、二度と呪いに苛まれぬようにと。

 何度見た光景だろうか。
 理不尽な気持ちをぶつけられる覚悟はしていた。だが、そうだ。
 彼らはこの理不尽が当然であったのだ。だから、最期、少女が微笑んだことに何より救われていた。

 問いかけに、少女は天使を見た。
 少女は、本当の自由を得たのだろうか。それは少女にしか分からない。
 だから、信じる。きっと幸福であったと。

 すり抜けていく。
 それでも、もう一度、何度でも、手を差し伸べる。
 
 祈る。
 悲しいことが無くなるように、でなく、嬉しいことがたくさんおきますようにと。
 そうすれば、たくさん笑えるはずだから。

 嗚咽が喉を枯らすようだ。
 一人。抑えきれない涙が零れ落ちる。
 何を言っても、何と言われても。救えなかった事実がただ、喉を枯らすようだ。

 その少女の周りは美しく輝いていた。
 それは、暗い世界だからこそなのか。取り戻せないものだからなのか。
 否、きっとそれは、少女の心が、美しい世界であって欲しいと願ったからだ。
 そう思う。

 殺すだけじゃ救えない事ばかりだ。
 神様みたいにはなれない。
 掌からこぼれ落ちていくものがただただ、辛い。
 すべては救えず、零れ落ちるものもまだ多い。
 生きていれば、まだ幸せもあった。
 今はただの一日しか見せられない。
「さよならは嫌いなんだ、本当は」
「俺達にはここで立ち止まってる暇なんてねぇぞ」
「ああ」
 零れるものは自分の手の平で受け止めた。
「こんな世界を変える」
「この世界で理不尽に流れる涙を止める」
 その為に、刃を選んだのだから。

 夜が明ける。
 陽が昇る。
 朝露がまた、輝いている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月19日
宿敵 『不服従の賢王』 を撃破!


挿絵イラスト