エンパイアウォー⑰邪悪なる陰陽師・安倍晴明を討て
●晴明の関心
「エンパイアの戦も、佳境の趣でありましょうか」
全身を水晶に覆われた男はそう呟くと、退屈そうに欠伸をした。男の名は安倍晴明。
ここは鳥取城。自ら生み出した水晶屍人達の軍勢を放ち、幕府軍の必死の抵抗を紙のように容易く破り、信長軍の防御拠点としてこの城を支配した晴明だが、実のところ、戦争の勝敗にはまるで関心が無かった。
「此度の私の目的は、ただ『持ち帰る』事のみ。この世界はよく『似て』おりますゆえ、「業(カルマ)」の蒐集も興が乗りませぬ」
否、そうではない。不死で、繁殖もできて、生存の為のエナジーも必要としない。それは、賽も振らずに勝つようなもの。斯様な存在に成り果てた自分に、自分自身が飽いているのであろう。
「戯れに、山陰を屍人で埋めてみましょうか」
その思い付きが実行されれば、夥しい数の血が流れるだろう。しかし、その光景を思い描いても、それ自体には晴明は何の感情も抱かない。
「それとも、コルテスが崇める神の偽物でもこしらえて、信長の後釜に据えましょうか」
これもやはり、その光景自体にはさしたる関心はない。彼が今、わずかばかりの関心を抱いている対象とは。
「はてさて、それらを全て行ったとして。猟兵とやらの怒りは、果たして、どれほど私の心を動かすものやら……」
●グリモアベース
「皆さん、連日の戦争での戦い、お疲れ様です。また新たな魔軍将の居場所が見つかったそうです。名は陰陽師・安倍晴明。場所は鳥取城。戦国時代、最も悲惨な死に方をしたとされる人々の怨念が今も色濃く残る因縁の土地です。晴明は怨念を利用して戦いを有利に運ぶつもりなのだと思います」
道化師の恰好をしたグリモア猟兵、渡月遊姫は集まった猟兵達に対し、予知した魔軍将についての説明を始めた。
安倍晴明は奥羽に惨劇をもたらした水晶屍人達を作り出した魔軍将らしい。放置すればまた忌まわしき屍人の軍団を作り上げ、今度こそ徳川軍に壊滅的な打撃を与えてしまうかもしれない。実際、鳥取城に人々を追い立てようとする水晶屍人達の軍勢も報告が上がっている。どこぞに雲隠れしてしまう前にここで叩いておくべきだろう。
「晴明は強敵です。1対1の状況ならこちらのユーベルコードが発動するより先に、向こうの攻撃がこちらに届いてしまう可能性がかなり高いと思われます」
晴明の扱うユーベルコードは三種類。手にしたチェーンソーによる連撃と、合体する水晶屍人の群れの召喚、そして呪符による土地の怨念の解放だ。これらの攻撃をうまく凌ぎ、反撃の糸口を見つけ出さなければならない。
「ですので、必ず敵の攻撃に対する対策を用意して戦いに臨んで下さい。ご武運をお祈りします」
大熊猫
●こんにちは。大熊猫です。今回は戦争恒例の先制攻撃持ちの強敵、安倍晴明を撃破するシナリオとなります。このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
※以下のルールをよく読んでからプレイングをお書き下さい。
●特殊ルール
陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
※今回の敵は強敵なので、いつもより厳しく判定させていただきます。
合わせプレイングでのグループ参加の場合は、迷子防止の為プレイング冒頭にグループ名、ないしお連れの方の名前とIDを記載をお願いします。また、なるべく近い時間に送付頂けると助かります。
また、文字数を節約したい場合はプレイング末尾か冒頭に次の記号をお使い下さい。
連携歓迎→★アドリブ歓迎→☆
以上です。皆様の熱いプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『陰陽師『安倍晴明』』
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POW : 双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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尾守・夜野
★☆
「どちらか片方が…
つまり両方を同時に受け止めれば次の一刀までに猶予は生まれるか…?
…行くか」
スキットルの中身は飲み干した
強化するなら受け止めた後の一瞬
それにかけるしかねぇな
UCだと先制を受けるなら元のを使うまで
普段は懐に入れている触れた物の運動エネルギーを0にする懐中時計、その鎖を腕に巻き付けるようにしてから左手に握る【盾受け】
時計で止められなくとも、鎖で巻きつけ【ロープワーク】歯の回転が止まれば耐えられない痛みじゃないはずだ【激痛耐性】
まぁその後削られるだろうが…そうされる前に動けばいい
「飢えとは死だ
…悲劇を意図的に繰り返させはしない!」
血が足りない飢餓を感じつつ、だが許せないと叫ぼうか
リグレース・ロディット
兄が言っていたよ!セイメイって奴は殴って良いって!殺した方が良いって!兄?うん。実はいたよ。それはそれ。これはこれ。殺るよ!!
【SPD/★☆】うわぁ。何あれ。剣?チェーンソー?悪趣味ぃ。
けど僕が相手するのは水晶のたぶん気持ち悪そうな奴ら!『導きの銀』で弱点を探しながら『暴食紫炎』やサイキックエナジーで作った武器で『範囲攻撃』するよ。何回でも立ち上がれるように『生命力吸収』もして。けどそのままは痛いから『第六感』で避けたり『激痛耐性』使うよ。僕にとって血は武器だし問題ないね。我慢できるよ!我慢するよ!!
UCが使えそうなら『凍血焼刃』で肩にバーン。召喚場所を潰したら召喚はされないはず!……たぶん。
鈴木・志乃
★☆
安倍晴明お前は自分のしたことが分かっているのか?
絶対に許さん
怨念攻撃なら第六感で見切りやすい筈
オーラ防御常時発動しながら破魔を籠めた早業魔法を撃ち
セーマンを自身から逸らしつつ至近距離まで急いで接近する
ように見せかける
実際は限界ギリギリまで怨霊に溢れさせた所で(力溜め)
念動力で周囲の器物を巻き上げ晴明を背後から急襲しつつ
UC発動
本命はこっちだよ!!
負の感情を余すことなく吸収し(失せ物探し第六感)自身の力と変換
念動力で光の鎖を操り晴明を一瞬捕縛か転倒
零距離から祈り、破魔を乗せた全力魔法の衝撃波で一切合切をなぎ払う
(本当の心情)
許す許さないではない
私の見てきた惨状を止める為貴方を止める、それだけ
九十九曲・継宗
★☆
脚部に仕込まれた絡繰の車輪を使い、高速で移動しながらフェイントをかけつつ接近
敵の攻撃を躱して、そのまま叩き斬る
……と、簡単にはおそらくいかないでしょう
高速移動によるフェイントは囮
本命はもう腕に仕込まれたもう一つの絡繰である細い鉄糸
高速移動の最中に、自分と周囲の物とを鉄糸で結びつけます
そして、敵が攻撃に移る瞬間にその糸を巻き取り、
本来の慣性とは別方向に急激に方向転換をすることで、
敵の攻撃を躱しましょう
躱す距離は最小限に抑え、すぐに反撃の一振りをお見舞いします
態勢は崩れてますが、私は人間では無く人形
本来の関節を無視した動きでも問題なく動けますので
七那原・望
★☆
セイメイ……骸の海から湧いた出がらしが屍を使役するってなんかあれですね。
さて、まずは屍から処理です。合体される前に殲滅しましょう。
【第六感】と【野生の勘】で相手の行動を【見切り】ながら戦います。
【念動力】で遠隔【操縦】の機掌・プレストに銃奏・セプテットを持たせ、【一斉射撃】で屍を散らします。
同時に【果実変性・ウィッシーズアリス】を発動、ねこさん達と一緒に幻覚で合体とセイメイの妨害をしてから【高速詠唱】した魔法による【範囲攻撃】でセイメイ諸共屍を殲滅。
最後はプレストの【一斉射撃】とねこさん達との【全力魔法】をセイメイに叩き込みます。
いい加減転生も飽きた頃でしょう?二度と蘇らないでください。
天御鏡・百々
★☆
奥羽に山陰と、屍人の兵を造り出すために
一体どれほどの民を犠牲にしたのか!
貴様のような外道、絶対に許してはおけぬ!
ここで討ち取ってくれようぞ!
敵の放つ『五芒符』は第六感10を頼りに軌道を読んで回避を試みる
我にとってはこの五芒符自体よりも、その後に発生する怨霊の方が対処しやすいのだ
もしも回避が不可能であれば、
神通力(武器)による障壁(オーラ防御64)か
真朱神楽(武器:薙刀)の武器受け5で対処だ
首尾良く回避出来たならば
破魔69を乗せた『天鏡破魔光』にて
溢れる怨霊を悉く浄化し
敵の強化を消し去った上で
清明本体も破魔の光で攻撃してやろう
●神鏡のヤドリガミ
●本体の神鏡へのダメージ描写NG
カイム・クローバー
★☆
陰陽師にしちゃ、趣味の悪い武器持ってるじゃねぇか。
んなモン、ブンブン振り回されちゃ参るぜ
どちらかのチェーンソーが当たれば追撃が来る。最初の一刀目を【第六感】で予感し、【見切り】。【残像】を残して、空振り誘えると良いんだが。
俺の狙いはどちらか片方の腕。斬り落とせば、コイツのUCの一つを封じられるかもしれない。…そう単純な話じゃねぇのは分かってる。
剣に【属性攻撃】と【二回攻撃】を交えてUC。広い範囲を【範囲攻撃】でカバーしつつ、腕を本命に狙いつつも本体も巻き込んだ【衝撃波】。最悪、斬り落とせない可能性は充分にある。無理な追撃はせず、一旦距離を取る。
呪詛ってのは…やれやれ、考えたくもねぇな
●鳥取城最上階・城主の間
「7人ですか。退屈しのぎの余興にはちょうど良いぐらいの人数ですね」
鳥取城最上階・城主の間。陰陽師・安倍晴明は彼を討つべく駆け付けた猟兵達を前にしてそう呟くと、ゆらりと立ち上がり、両手に武器を構えた。
晴明に相対する猟兵達は全員無傷だ。城に突入してからこの最上階まで、猟兵達は拍子抜けするほどあっさりと辿り着いた。城の周囲は水晶屍人達で固められていたが、城内は無人な上に罠の類は一切なく、まるで、「城主の元まで辿り着いて下さい」でも言わんばかりの手薄さであった。
「では、始めましょうか。少しは楽しめると良いのでございますが……」
次の瞬間、晴明の姿が掻き消える。陰陽師という肩書に似合わぬ身体能力を以て、晴明が猟兵達の元へと踏み込んだのだ。
ギュイイイイン!
晴明の両手のチェーンソー剣が獲物を十文字に引き裂かんと唸り声を上げる。晴明が最初の標的に選んだのは、尾守・夜野(墓守・f05352)だった。
「チッ!」
左右から迫るチェーンソーに対し、普段は懐に入れている懐中時計を取り出し、その鎖を腕に巻き付けるようにしてから左手に握り込み、チェーンソーに対して勢いよく突き出した。懐中時計が晴明の刃を受け止める。晴明のチェーンソー剣の運動エネルギーは時計に触れた瞬間、0となったのだ。
しかし、懐中時計がチェーンソー剣の刃を受け止められたのは一瞬だった。晴明が陰陽道で時計の術理に干渉したのだ。静止したはずのチェーンソーの刃は再び回転を始め、夜野に迫る。一撃目は態勢を崩すための牽制。この二撃目こそが呪詛を込めた晴明の本命の刃だ。だが。時計によって静止した刃が再び動きだすまでの一瞬。そのほんのわずかな時間に、夜野はすでに反撃の準備を終えていた。晴明の攻撃を受け止め、二撃目が来るまでの間の一瞬。夜野はそこに全てを賭けていた。夜野はここに来るまでの間に、すでにユーベルコード発動に必要な分の血液の補充を完了している。
『強化式【累】(オーバーロード)』。鮮血を過剰供給された夜野の刻印が明滅する。逆に、鮮血の大部分を刻印に与えた夜野は強い飢餓感に苛まれた。
「飢えとは死だ……悲劇を意図的に繰り返させはしない!」
無辜の民を水晶屍人の材料とし、死後の安らぎすらも奪いながらサムライエンパイアを蹂躙していく晴明のやり方は到底許容できるものではない。こいつはここで殺す!
夜野は晴明に向かって右手に構えた怨剣村斬丸を振りかぶる。刻印に宿る強化術式の暴走により爆発的な速度で繰り出された斬撃は、晴明のチェーンソー剣が夜野に迫るより先に、晴明の脇腹を薙いだ。
「お見事です。これほどの速さとは……些か侮っておりました。……ですが、その術は貴方自身の生命をも危うくする諸刃の剣とみました。何が貴方をそこまでさせるのです?」
晴明の言う通り、この術は夜野の体にかかる負担も大きい。けれど。
「確かに血が足りない飢餓を感じるよ。だがそれでも、オレはお前を許せない!」
●水晶屍人殲滅戦
「フフフ。なるほど、怒りですか。少し、興味が湧きました。信長が支配したこの世界を見たならば、貴方達がどのような怒りを見せてくれるものやら……」
晴明の背中の水晶が妖しく輝く。すると一瞬にして、晴明の周囲に五十近い数の水晶屍人が出現した。力の大本である晴明が真近にいるので、水晶屍人達は奥羽の時よりも1体1体の強さも桁違いに増していると考えるべきだろう。
「さあ、水晶屍人達よ。彼らを引き裂いてしまいなさい」
晴明の命令に従い、水晶屍人達は一斉に猟兵達へと襲い掛かる。
「セイメイ……骸の海から湧いた出がらしが屍を使役するってなんかあれですね」
晴明の言葉を聞いた七那原・望(封印されし果実・f04836)は辛辣な意見を述べた。幼い少女の容姿に似合わず、いや幼い子供であるが故か、微塵の容赦も無い毒舌である。まさか彼女の挑発に乗ったわけではなかろうが、呼び出された水晶屍人達は彼女をあっという間に包囲した。視覚を封印されている望ではあるが、それゆえに視覚以外の感覚は鋭い。彼女は水晶屍人達の気配を敏感に感じ取り、器用に攻撃を避け続けていた。それと同時に、機掌・プレストの左右の手に一挺ずつ持たせた銃奏・セプテットと穿奏・ヴィヴァーチェを念動力で操り、十字砲火を浴びせ、水晶屍人達を返り討ちにしていく。
同時刻。
「兄が言っていたよ!セイメイって奴は殴って良いって!殺した方が良いって!兄?うん。実はいたよ。それはそれ。これはこれ。殺るよ!!」
ハイテンションで叫び声を上げているリグレース・ロディット(夢みる虚・f03337)は左目のモノクル型デバイスで水晶屍人達の弱点を探りながら、暴食紫炎ーー炎を噴き出す鎌とサイキックエナジーで作り出した無数の血の刃を操り、周囲を薙ぎ払って水晶屍人達に応戦していた。リグレース本人は時折回避が間に合わず、水晶屍人達に噛まれていたが、負傷した分は生命力吸収能力で水晶屍人達のエネルギーを奪い取ることで補っている。
そして、望とリグレースの激しい攻撃で出来た水晶屍人達の群れの隙間を駆け抜けた猟兵が晴明へと迫っていた。
●人間を超えた一撃
水晶屍人達の戦列をかいくぐり、高速で晴明へと接近する九十九曲・継宗(機巧童子・f07883)。彼は脚部に仕込まれた絡繰の車輪を使い、高速で移動しながら左右にフェイントをかけながら晴明に接近していた。
(敵の攻撃を躱して、そのまま刀で叩き斬る。それが理想ですが……)
おそらくそこまでうまくはいかないだろう。晴明は強敵だ。ならば、もう一手先を用意する。刀による攻撃だけではなく、もう腕に仕込まれたもう一つの絡繰である細い鉄糸が切り札だ。
「フフフ、素早い動きですが、捉えきれないほどではありませぬ」
継宗が晴明へと刀を振り降ろした時、晴明はフェイントに惑わされず、正確に九十九に向かってチェーンソーによるカウンターを放ってきた。
(やはりそう来ましたか。ですが)
こうなることを見越して、継宗はすでに手を打っている。継宗は晴明のチェーンソーの攻撃が当たる寸前、慣性を無視した駆動で後方へと緊急回避した。
「なんと?」
驚きに目を見開く晴明。継宗は高速移動の最中に、自分と周囲の物とを鉄糸で結びつけていた。そして、敵が攻撃に移る瞬間にその糸を巻き取ることで敵の攻撃から逃れたのだ。しかし、強引な回避により、継宗の態勢は大きく崩れている。そのままの姿勢では態勢を立て直さずして反撃は難しいだろう。ただし、継宗が人間ならば。
継宗は人間では不可能な関節の曲げ方で刀を構え直し、そのまま勢いよく晴明へと振り下ろした。絡繰人形の猟兵である継宗は人間には不可能な関節の動きによる攻撃が可能である。晴明は継宗の作戦に見事に引っかかったのだ。
「ぬうっ……!」
継宗の斬撃は晴明の肩口を深く切り裂いた。晴明の肩から、水晶が欠け落ちる。
晴明は大きく後ろに飛んで距離をとると、再び水晶屍人を召喚し、継宗を足止めしながら、態勢を立て直した。
●黒銀の炎の魔剣
態勢を立て直した晴明に対し、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)が追撃を仕掛けた。魔剣を振り上げ、迫り来るカイムに対し、晴明は両手のチェーンソーを振りかざし、迎撃を試みる。その太刀筋の鋭さたるや、剣士顔負けである。もっとも、チェーンソーを両手に一本ずつ持って使う剣士などそうそういないだろうが。
「陰陽師にしちゃ、趣味の悪い武器持ってるじゃねぇか。んなモン、ブンブン振り回されちゃ参るぜ」
カイムは悪態をつきながら、耳障りなエンジン音を立てるチェーンソーの軌道を第六感で見切り、残像が残るほどの足さばきで回避した。一撃目を回避したカイムは晴明の二撃目に合わせ、『無慈悲なる衝撃』(インパルス・スラッシュ)を放つ。二撃が同時に見えるほどの素早い斬撃と共に、魔剣から黒銀の炎が迸り、晴明を焼き尽くさんと迫る。狙いは晴明の右腕だ。だが、魔剣から放たれた斬撃の巨大な衝撃波と炎は狙った右腕のみならず、晴明の体そのものを真っ二つにしかねない威力で飛んだ。晴明はその斬撃を、慌ててチェーンソーを引き戻し、盾にすることで、腕を守った。しかし、黒銀の炎がチェーンソーの燃料タンクに引火し、晴明の右のチェーンソーは大爆発を起こした。右腕は奪えなかったが、これで奴のユーベルコードはもう使用不可能だ。
「今のは危ないところでございました。褒めて差し上げましょう」
褒美とばかりに、晴明はカイムに向かって青白く光る不気味な呪符を数枚投げつけた。目標を達成した今、深追いはすべきではないと判断したカイムは、いったん距離を置き、仕切り直しを図ったのだった。
●晴明の誤算
「いやはや。猟兵というものは思いのほか多様な能力を持っておりまする。そろそろ切り札を使わせていただきましょうか」
武器の一つを失い、ようやく少しばかり本気になったのか、晴明は五芒符が描かれた呪符を取り出した。
「安倍晴明……お前は自分のしたことが分かっているのか?絶対に許さん」
ダメージが重なりつつある今もなお、どこか余裕のある態度を崩さない晴明に対し、鈴木・志乃(ブラック・f12101)は怒りに満ちた目で問いかけた。
「良い目でございますな。それでこそ、こうしてこの戦争に参加した甲斐もあるというものです。まあ、正直な所、戦争そのものの勝ち負けには関心はございませぬが」
晴明は志乃の怒りに対し、悪びれずにそんなことを宣う。
「奥羽に山陰と、屍人の兵を造り出すために一体どれほどの民を犠牲にしたのか!貴様のような外道、絶対に許してはおけぬ!ここで討ち取ってくれようぞ!」
晴明の言葉に対し、怒りを露わにしたのは天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)だ。百々は此度の戦で晴明が作り出した水晶屍人達が起こした惨状を数多く見てきた。戦争の勝ち負けに関心がないというのなら、水晶屍人達は趣味で作っていたとでも言うつもりか。それは死者達への許しがたい侮辱だ。
「面白い。では、あなた方の怒りの程を見せていただきましょう。これを凌いで私を仕留められるというならば……『五芒業蝕符』!」
晴明は居並ぶ猟兵達に向かい、禍々しい魔力を纏った五芒符を投げつけた。百々は発達した第六感でこれを全て回避した。志乃は強力なオーラによるバリアを展開し、五芒符の直撃を防ぎながら破魔の魔法を乱打しつつ、晴明の間合いへと踏み込んでいく。
「この呪符は攻撃を当てることが目的ではありませぬ。さあ、ご覧なさい。この地に満ちた業(カルマ)が溢れ出していますよ」
猟兵達が避けた呪符は、空間を切り裂き、鳥取城に満ちた怨念・怨霊たちを活性化させていた。怨念の力を吸収した水晶屍人達や晴明はさらなる禍々しい魔力を纏っていく。
「これこそ、我が『五芒業蝕符』の真の力でございます。この地に満ちた怨念が私にさらなる力を与えてくれ……ん?」
切り札である五芒業蝕符の力を解放した晴明だったが、なにやら様子がおかしいことに気付く。集まってくる怨霊の数が妙に少ない。何故だ?
「これは……!神気!しかも二つ!?」
鳥取城に蠢く怨念を活性化させ、自身に有利な戦場を作り出そうとした晴明だったが、大きな誤算があった。晴明を討つべくやってきた猟兵達の中に、悪霊・怨念の類の天敵となる者が二人混ざっていたのだ。
『私は祈願成就の神の娘。全ての人々の意志を守る神子。その呪い(願い)をこそ、力に変えて魅せましょうとも』
『我は真実と未来を映す神鏡なり。我が力にて民を救わん』
一人はオラトリオの聖者、鈴木志乃。彼女の祈りの力は周囲の負の感情を吸収し、浄化して自身の力へと変えてしまう。彼女の先ほどの怒りは演技である。晴明が怨念を吸収するということを事前にグリモア猟兵から聞いていた志乃は、晴明の間近でこのユーベルコードを発動する機会を伺っていたのだ。
もう一人の天敵は神鏡のヤドリガミ、天御鏡・百々。破魔の力を秘める彼女の本体は妖魔・死霊を悉く浄化する。
二人の聖なる力により、鳥取城の怨念は悉く浄化・吸収され、晴明へと流れる力など、無いに等しいものだった。
「くっ……!これは誤算でございました……かくなる上は……!超巨大水晶屍人を呼び出し、この城ごと全て破壊して差し上げましょう!」
晴明の肩の水晶が妖しく光る。だが。
「燃える痛みをその身に刻め!『凍血焼刃(フリーズブルート)』!」
生命の背後から飛来した血の刃が晴明の肩の水晶を凍結させ、粉々に打ち砕いた。
「なんだと……!」
「そこを破壊すればもう水晶屍人は呼び出せないんじゃないかなって思ったけど、当たりだったみたいだね!」
血の刃を放ったのは、すでに召喚されていた水晶屍人を全滅させ、手が空いたリグレースの仕業だ。彼の持つ「導きの銀」は晴明の弱点をきちんと割り出していたのだ。そして、彼の手が空いたということはすなわち。
『わたしは望む……ウィッシーズアリス!』
リグレースと同じく水晶屍人を殲滅していた望の手も空いたということだ。彼女の召喚した4匹の猫が放った魔法と、プレストから放たれた銃弾が一斉に晴明へと叩きこまれた。
「ぐうう!」
片腕ごともう1本のチェーンソーを吹き飛ばされ、苦悶の声を上げる晴明。そんな晴明に対し、望は大人びた口調でこう告げた。
「いい加減転生も飽きた頃でしょう?二度と蘇らないでください」
決着の時だ。晴明にトドメを刺すべく、志乃と百々が歩み寄る。
「許す許さないではない。私の見てきた惨状を止める為貴方を止める、それだけ」
「悪しき者よ、我が破魔の力によりて滅び去るがいい!」
静かに呟いた志乃が放った全力の衝撃波と、百々の本体から放たれた破魔の閃光が炸裂し、晴明を包み込む。光が止んだ後に、邪悪なる陰陽師の姿はもはやなかった。
成功
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