潜入捜査!深夜のぬいぐるみショップ
●安っぽいチラシ
『ぬいぐるみフェアのお知らせ』
可愛いぬいぐるみを世界中から取り揃えました。
ハロウィンコーナー、あみぐるみコーナーあり。
お好みでラッピング承ります。
営業時間……午後10時から午前2時まで。
営業日 ……不定期(週1くらい)
●返品不可
「邪教徒らしいんでござるよ。そこの主」
グリモアベースの片隅で、集まった猟兵たちとチラシを眺めるのは四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)だ。
今回の行き先はUDCアース。日本のとある地方都市で失踪事件が相次いでいる。行方不明者は3人。共通点は女子中学生であること。警察の尽力にも関わらず彼女たちの行方はようとして知れず。
そんな矢先『広く薄暗い屋内で行方不明者たちが頭上の何かを追いかけて歩いている』予知を見たという。
おそらくはオブリビオン――邪神の復活儀式。それに絡む事件であると見るべきか。
予知の場所は都市の範囲内にあり。とはいえ、これだけでは如何ともし難い。急ぎUDC組織に問い合わせ、事件の少し前にオープンしたある店についての情報を得たのが、今日の夕方。
曰く『被害者全員が、この店に入ったのを最後に消息を絶っている』と。
現状、この店が事件との唯一の繋がりである。UDC組織としては店の扱いには慎重にならざるを得ない。集団で踏み込むにしても、確実に情報を得られる保証はないし、職員が対応出来ない危険に遭遇する可能性もある。
ではどうするか。その答えが、猟兵たちによる店への潜入捜査。
「まずは様々な手段で店を調査し、店主の目的と予知に出てきた場所を突き止めて欲しいのでござる」
「チラシの通り、店が専門に扱う商品はぬいぐるみ」
ふわふわボディのアレである。
「実のところ、UDC組織は以前から店の動向を注視していたとのこと」
この店、前々から目立っていたのだ。
現場となる地方都市は人口30万人ほど。古くから工業で栄え、今でも経済の中心は臨海工業地帯の建つ海沿いにある。
店はそんな中心地から少し離れた、どちらかといえば内陸寄り。住宅や小さな工場に紛れるようにして建っている。これが深夜に不定期でぬいぐるみを売り始めるのだから、通行人に与える違和感は凄まじい。
実際、近隣住民ほど店の前を避けて通る傾向にある。ただ、街の一部の学生達の間では、店に顔を出すこと自体が、ちょっとしたステータスになっている節もあるのだとか。
「店名は『すたっふど☆ぽっしびりてぃ』」
電光掲示板に大書してあるらしい。見落とすことは無いだろう。
営業直前には店の駐車場に白いバンが停まるのが常。その連絡が入ったのが、つい5分ほど前のことだ。
日中の捜査に間に合わなかったことを詫びつつも、各自準備が整い次第、現場に転送。そこからは好きに動いて欲しいとかごめ。
怪しまれないようにぬいぐるみを一つ二つ買うくらいの金銭はUDC組織が用立ててくれる。また、近くの中心街には都市機能の大半が集中している。警察署などの施設を利用する事も可能だ。
なにはともあれ、まずは情報収集だ。猟兵達を現場に転送するべく、かごめは印を結ぶのだった。
「それではご武運を」
白妙
はじめまして。白妙と申します。オープニングを読んで頂きありがとうございます。宜しくお願い致します。
今回の舞台はUDCアース。予知に出て来た場所の情報を掴み、事件を解決に導くのが目的です。
●第1章【冒険】
深夜だけ営業している、怪しげなぬいぐるみショップの調査を行います。調査内容は、店主やお客さんと話したり、店の様子を探ったり、情報収集したり、あるいは単にぬいぐるみを買ったり……選択肢に縛られず、ご自由にどうぞ。
店員さん…女性店主1名のみです。
お客さん…8割くらいが女子学生。残りが仕事帰りのOLさんや会社員さん、興味本位で訪れたカップルなどです。
●第2章【集団戦】
ボスに従うオブリビオンとの対決です。
●第3章【ボス戦】
不完全な邪神と決着をつけます。
拙いですが、もしプレイングをかけて頂けるのであれば幸いです。
第1章 冒険
『深淵からの使者』
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POW : そのショップに乗り込み直接対話して、店員の正体や目的を調査する。
SPD : そのショップの情報を聞き込みをして普段どういう様子なのか調査する。
WIZ : そのショップの情報をネットを使って、口コミやハッキングで調査する。
👑11
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時刻は午後十時過ぎ。
路地裏を抜ければ風が頬を撫でる。
目の前には人通りの無い道路。
周囲には小工場や住宅、小店舗。まばらに草の生えた空き地。
中心地と住宅街の境目にある、街はずれと言って良い。
左手に目を向けたタイミングで、空き地に停まった一台の車が軽くハザードランプをこちらに点灯させる。
UDC組織の車だ。猟兵たちをバックアップしてくれる。
街路を左に辿れば中心街だ。
そして右手。
黒い山並みを背に、件の店がショーウィンドウから煌びやかな光を街路に浴びせかけている。
巨大な茶色い毛玉はテディベアだろうか。
ぽつぽつと店の前に客が集まり始めている。そんな風情だ。
店の横にある狭い駐車場には、白いバンが停車している。
そのバンの前を横切り、数人の女子生徒が周囲を窺う様子を見せながら、連れ立って入店して行った。
芦谷・いろは
ぬいぐるみショップですか!
大好きなんで買い物に行きますね
学生としてお店に行き、ヌイグルミさん物色です
手触りいい子、お顔が可愛い子、生地が珍しい子目移りしちゃいます
物色ついでに《コミュ力》を発揮し、お客さんとお話したり
《聞き耳》を立てて《情報収集》していきますよ
店主と話せそうなら
営業時間の理由や、どういう風に仕入れているのか(個人?仕入れは別?)等
店主さんはヌイグルミのどの部分にこだわり持ってるんでしょう?
ヌイグルミ買っていきますね
《第六感》でキュピーンっと来た
手触り良くて、お顔が可愛い子を!
一応【影の追跡者の召喚】を準備です
怪しい動きや違和感を感じたら使用して追跡ですよ
メンカル・プルモーサ
うーん、怪しげなぬいぐるみショップね……もうチラシから怪しいけど…
ひとまずは学生のふりしてショップに入って…変な店が目に付いたから入ってみた、という感じででコミュ力を駆使して他のお客さんから情報収集…
…主になんでこんな怪しい店に入ったのか、とか…この店の評判とか…
常連がいるならお勧めぬいぐるみとかも聞いてみるか…
…あと、学生の間でちょっとしたステータスになってる、と言うのも気になる…
…どこから出た話なのだろう…聞き込めるなら聞きたいな…
…一通り聞き込みが終わったらお勧めのぬいぐるみを1つ購入…
UDC職員と合流して…【闇夜見通す梟の目】でなにか仕掛けが施されていないかを解析をしてみよう…
●
「ぬいぐるみショップですか!」
紫の双貌を子供のように輝かせ、巨大なテディベアを見上げるのは芦谷・いろは(傀儡使い・f04958)。
近所の中学校の制服に身を包むいろは。なにを隠そう、彼女はぬいぐるみが大好きなのである。そして、これから潜入する場所には、沢山のぬいぐるみたちが待っているのだ。
ドアの前に立ち、ノブに手をかける。カランカラン、とベルが鳴り、
「いらっしゃいませー」
カウンターで伝票の整理をしていた店長と思しき人物が、いろはに声を掛ける。
髪を後ろに纏めた女性だ。ピンクのエプロンを着ている。
少なくとも見た目は、特に変わった点はなさそうだ。
なにはともあれ、調査開始だ。
●
店内は広いとは言えないが、品揃えはとても良い。
バラエティ豊かなぬいぐるみが陳列された棚。その間を縫うように歩いているだけでも心地良い。
「手触りいい子、お顔が可愛い子、生地が珍しい子目移りしちゃいます」
全体の雰囲気はもちろん、細部まで見逃さない。弾む口調は無邪気な子供のそれにも似て。
やがてテディベアのコーナーにさしかかり、足を止めるいろは。
「ヌイグルミ買って行きましょう」
いろはが選んだのは、大きな目がチャーミングな、クラシックなテディベアだ。手に取ればモヘアのふわふわした感触が伝わる、
立ち去ろうとして、ふと気づく。
いろはの手に取りにくい高さにある、白い体に紅いリボンを巻いたテディベア。
あのぬいぐるみ一度気にし始めると、気になって仕方がない。
目が離せない。
二つ目を買う予定はなかったが、それでも爪先を伸ばし、左手でぬいぐるみを掴むいろは。
指先に、微かな違和感。
(……古い)
どのくらい?五年……いや、十年かそこらか。保存状態は悪くないようだが、日常的に人形やぬいぐるみに親しむいろはの触覚は誤魔化しようもない。
他のぬいぐるみは古くてせいぜい製造から二~三年といった様子。比較的新しいものばかり。その中にこれを混ぜるというのは、やや妙ではある。
「……気を付けたほうが良いかも、それ」
いろはの後ろから掛けられる、声。そこには、学生服に真っ白なローブを羽織った少女。
もう一人の猟兵、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の姿だ。
ベルの音が鳴らなかったのは、既に潜入を済ませていたからか。
「……」
つかつかと歩み寄り、白いテディベアをじっと眺めるメンカル。彼女の眼鏡には視界内の様々な情報を収集するセンサーが内蔵されている。
店内の幾つかのぬいぐるみに仕掛けがしてある。おそらくは魔術的なものだと、メンカルはいろはに自らの分析を伝える。
「詳しくはまだわからないけど……」
「……。そうだ、製造元を……!」
メーカーを確認する為、白いテディベアのタグに目を落とすいろは。そこには製造元のものと思しきマークが一つだけ。MかWをデフォルメしたものなのだろうが、他に表示が無いため、詳しい点まではわからない。
流れる沈黙。ふとメンカルが呟く。
「後で試しに買っておくね。それ……」
●
ぬいぐるみを物色しつつ他の客の話に聞き耳を立てるいろは。
とはいえ聞こえてくるのは、ぬいぐるみを愛でる声が主だ。あとは、店主がラッピングの達人らしいという情報ぐらいか。
「あの~、ちょっといいですか?」
「はいはーい」
カウンターでいろはが声をかければ店長が飛んでくる。
会話を試みると案外すんなり乗って来る。
店長の名前は綿貫・頼子(わたぬき・よりこ)。
自然と都市が一体になったこの町が気に入って、Iターンで流れて来たそうだ。
「どうしようもない夜型なんです。私。お昼はずーっと店の裏で寝ています」
店は個人経営。ぬいぐるみについては、ほとんど仕入れているとのこと。
「港が近いからバンでひとっとびです」
どこまで本当かはわからないが、対応そのものはにこやかだ。
「あっ、ラッピングお願いします」
「はーい」
いろはからぬいぐるみを受け取る店主。
作業台に乗せ、少し傾け……。
「はい、完成です」
は、早い……。
●
一方、メンカルは聞き込みをする。
いろはと同じ制服を着た 三つ編み眼鏡の女子中学生が一人。
一見暗そうな印象を与えなくもないが、メンカルが視線を合わせると近くに寄って来る。
「あなたもこの店のぬいぐるみ目当てかしら?」
聞けば、どうやら彼女は中学のオカルト同好会の部長らしい。相手が詳しいと思しい話題を中心に選んでいけば、意外に饒舌な面も見せてくれる。もちろん、メンカルのコミュ力の賜物でもあるだろう。眠たげな表情は崩さず、しかし確実に会話を進めて行く。
「この一帯、怪しい香りがするわ!」
「もうチラシから怪しいけどね……」
頃合いを見て話を切り出す。曰く、なぜこんな怪しい店に入る気になったのか、と。
営業日が限られているとはいえ、物珍しさだけで足を踏み入れるには勇気が要るだろう。他に何か、人を惹き付ける噂か何かがある筈だ。
「魔女になれるらしいのよ」
「……魔女」
この店のぬいぐるみのいくつかは、素質を持った者に不思議な力を与えるらしい。浮いたり話しかけたりもする。要するに使い魔のようなもので、店主は彼らを使役する魔女なのだ。そういう噂がごく一部ではあるが、広まっているらしい。
「部長としては見逃せないわ!」
「……はぁ」
真偽はともかく、出所を追うのが難しい話ではある。あるいはこんな噂が立つほどに、この店が怪しいということなのかも知れないが。
すっかりテンションの上がった女子学生と暫しの会話の後、やがて一人残されるメンカル。
「……魔女、ね」
●
車の裏手で数多の光が踊る。
メンカルのユーベルコードによって呼び出された解析用ガジェット達だ。光が虚空に消え、解析を終えたメンカルの手には白いテディベア。
車のドアを開けて、後部座席に座るメンカル。
「どうでした?」
助手席から声を掛けるのは、膝の上のテディベアをもふもふするいろは。運転席では車内に待機していたUDC職員がノートパソコンを広げている。
「なんて言ったらいいかな……」
ぬいぐるみにかけられていたのは、選定の魔術だ。
対象の資質や強い感情を持つ相手に働きかけ、惹き付ける。
ぬいぐるみ単体にそれ以上の効果はない。
「対象が結構漠然としてるね……あ、でも」
希望とか、将来性とか、頭の良さとか……どちらかというとポジティブ寄りのやつだと思う。とメンカル。
一方でいろはは、ぬいぐるみの製造元についてUDC職員と共に調べていた。
「正直この車の設備では難しいと思っていたのですが……」
職員曰く、ぬいぐるみが古い、といういろはの指摘から、候補を絞り込む事が出来たという。車のバックミラー越しにメンカルにピースを送るいろは。
ぬいぐるみの製造元である工場は、かつてこの都市にあった。だが、十年近く前に廃業してしまったようだ。
会社の名前は……綿貫縫製。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルネ・プロスト
ぬいぐるみ!
いいなぁ、ぬいぐるみ
ルネも新しいぬいぐるみ(お友達)、欲しいなぁ
……うん、でも見えてる罠に引っかかる程馬鹿でもないよ
さくっと片付けてぬいぐるみもらって帰ろう
直接乗り込むには情報少ないし
お店の周りで情報収集、かな
『森の友達』に死霊憑依・自律行動可能にして
『森の友達』を使ってお店の話してる人のいる場所を探して
その人たちにどんなお店なのか、ルネが直接聞きに行く感じ?
深夜営業なら見た目子供のルネが知らないのも当たり前だし
うまく人形好きの人と話し合わせられればそのノリでいけたりしないかな
……あ、『駒盤遊戯』達は突入まではお留守番ね
今回ばかりはあの子達と一緒にいると不審者みたいになっちゃうし
●
ぬいぐるみ!
いいなぁ、ぬいぐるみ。
「新しいぬいぐるみ(お友達)、欲しいなあ」
ルネ・プロスト(人形王国・f21741)は向かいの店を前に思わずそう口にした。
人通りは少ないとはいえ、夜の闇の中を燦燦と輝く店には時間が経つほどに人が集まって来る。その様は外から見れば、まるで誘蛾灯だ。
「……うん、でも見えてる罠に引っかかる程馬鹿でもないよ」
物憂げな声色で呟く。数多の人形と死霊を御し、戦いにおいては盤面を整えた上での圧殺を事とするこの少女にとって、これほどまでに怪しい店に単身飛び込むなど、思いもよらないことだ。
調べるべき箇所は、店の外にもある。
「さあ、出番だよ」
一匹、二匹、三匹……闇の中よりそれは次々顕れる。
黒猫の群れ――否。ただの黒猫は死の気配を漂わせはしない。
ルネが従える、死霊を憑依させた動物人形の一団である。
合図をすればそれらは四方の闇に駆け去る。諜報に特化したその動きは捉え難く、しなやかだ。
ほどなくして一匹がルネの元に戻って来る。
山の方から、誰か店を目指して歩いて来るのだ。
●
夜風に靡く銀髪を歩道の街灯が照らす。
直接話をするべく、自ら向かうルネの姿だ。
向かいからは、ごくゆっくりと歩いて来る人影。
「こんにちは」
学生鞄を肩からかけた、制服姿の少女だ。こちらに挨拶をしてくる。線は細く、肌もルネと同じくらい白い。
こんにちは、と挨拶を返すルネ。
「お姉ちゃん、どこに行くの?」
「えっとねー……」
少女は自分よりもずっと小さなルネが自分の行き先を知らないと考えたのだろう。たどたどしく説明する。そんな少女に人形の話題を提供するルネ。いつしか二人は連れ立って歩いていた。
彼女はオカルト研究会の部員らしい。部長と同じ塾に通っており、その帰り。
店自体にそれほど興味は無いが、可愛いものは好きだとのこと。
やや病弱らしく、部長からはゆっくり歩いて来るように言われたのだとか。
「可愛いぬいぐるみが見つかればそれでいいかなーって……」
えへへ、と笑う少女。
「よくわからない店なんだ?」
そういうの、嫌いじゃなかったりするけど。とルネ。
「お昼には普通に運送屋さんのトラックが停まったりするんだけどね」
聞けば、病弱な彼女は調子の悪い日に早退する事がある。その際に店の前を通るのが、正午過ぎ。
運送会社のトラックが空の車庫に荷物を置いていくのを、彼女は幾度か見ているらしい。
やがて二人は店の前に辿り着く。
「店、ホントに開いてるね……あっ、お話してくれてありがとう」
ルネに笑顔で手を振りながら、少女は店の中に入っていった。
「……」
残されたルネは、車庫の前に立ち、仲間の猟兵から聞いた証言を辿る。
店長が日中この店に泊まっているなら、車庫が空である説明がつかない。
そもそも運送屋が配達してくれるなら、バンを運送に使う必要はない。
よって、店長はおそらく夜型ではない。日中この店に泊まる事もない。
その間、このバンは運送にも使われず、何処かしら別の場所に停めている事になる。
ふと、何かに気付くルネ。バンのボンネットの隙間に木の葉が溜まっている。
まだ緑色をした葉ばかりが、ざっと四、五種類。
秋が近いとはいえ、街中でこれほどに葉が落ちて来る場所があるものか?
白い車体も、真新しい蜘蛛の糸や埃で汚れている。
街中を走っているだけではこうはならないだろう。
短時間に多くの葉が落ち、天然の汚れも多く付着する環境。
まるで、そう。山奥に長時間停車したような――。
大成功
🔵🔵🔵
●
潜入捜査である以上、身を隠したり目立たないようにする術があれば、それに越したことはない。
「むむむ!あのお店の調査なんだね!眠たいけど頑張るよ!!」
そう言った意味で、フェアリー故に小さな体を持つティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)はまさに適任と言える。
とはいえ、まだまだ幼いティエルである。日中は活発に動き回り、この時間帯には就寝している。それを我慢しているからには、やはり眠い。眠いのだ。
「けど、事件なら頑張るぞ☆」
ウインクひとつ。矜持が勝った。
そして、もう一人の適任者。
「深夜に営業してるけど、特別なぬいぐるみでも売ってるの?」
「あ、あの……」
たった今店から出て来た女子学生に壁ドンしながら囁きかけているのは四王天・燦(月夜の翼・f04448)。勝ち気でさっぱりとした彼女の口から紡がれるイケメンボイスは、同性にとっても魅力的なのだろう。女子生徒は顔を真っ赤にしている。
もじもじした後、女子生徒は恥ずかしそうに駆け去っていった。
「もーっ!燦、ちゃんと仕事してよー!」
「ゴメンゴメン、ちょっと聞き込みしててさ」
肩を竦める燦と、その周りを飛び回るティエル。なにやら微笑ましい光景だ。
●
闇の中。
店内の監視カメラ全てが突如として動きを止める。続いて、パチンと何かの外れる音。施錠していたはずのドアがするりと開く。
そこから音もなく滑り込む黒い影――燦だ。
彼女の本命は、隠密潜入。裏口からバックヤードに潜入した。
薄闇色の外套を纏い、気配を絶った今の燦を捉えることは難しい。一方で燦の方は、暗闇の向こうをはっきりと見通す事が出来る。
盗賊技能の独壇場である。
加えて、燦には奥の手がある。影と化し闇に溶ける符術、その名も『百鬼夜行』。
見つかる心配は無いだろう。
「さて……」
馴れた足取りで足元の段ボールを避けつつ、店裏を物色する燦。見つけたのは、古い帳簿。明らかにこの店のものでない。
「ビンゴだな……やったぜ」
それを暫し眺めれば、途中から意味の明瞭でない品名が現れる。年度が進むにつれて、売上に占める割合も増す一方だ。
「店長の祖父はこの工場の経営者。邪教団との繋がりもその頃から……ってことか」
巻頭には押印された住所。やはり、此処に行ってみるべきだろうか。
戻ろうと一歩足を踏み出せば、足元にもふっと柔らかい感触。
「ん?」
視線を落せば、そこには背中を開かれた人間サイズのぬいぐるみ。中に詰め込まれた綿は少し減らされ、人一人入る程度の余裕がある。
「ははーん……」
何かに気付いたような顔で、燦がそう呟く。
●
女子生徒達が中に入る時に一緒に店内に飛び込んだティエルは、誰にも気づかれずに巨大なぬいぐるみの陰に隠れる事に成功した。ここから店員の様子を監視できる。
「それにしても、この熊さんもふもふだね
…………」
ぬいぐるみに寄りかかるティエル。
「…………はっ、寝てないよ!?」
店員は特に動きを見せていないものの、その間ティエルは監視を怠っていない。どんな怪しい動作も見逃すまいと、一挙手一投足に気を配る。
そんな中、ふと気付く。
なんだかこのぬいぐるみ、さっきより温かくなってない?
息遣いも聞こえる気がする。押してみると、綿以外の感触がする。
「はわわ
……!!」
それらの意味を理解した時、ティエルの眠気が吹き飛んだ。
ぽす、と床に何かが落ちる音。
「あら?」
店員が振り向く。
「狸のぬいぐるみ……?こんなところにあったかしら」
席を立ち、店員の姿が棚の後ろに隠れる。
「今だー!」
急いで背中のチャックを空けるティエル。中に小さな壺を突っ込めば何かが吸い込まれる感触。
続いて手当たり次第にぬいぐるみを放り込み、チャックを閉める。
中身が足りずに少し前傾姿勢になってしまった熊さんだが、店内からはわからない範疇に留まる。
「お邪魔しましたーーー!!」
折良く退店していく客の横をすり抜け、猛スピードで飛んでいくティエル。
店員がティエルの姿を見る事は、遂に無かった。
●
車が街へ向かって走る。
ぬいぐるみの中に閉じ込められていたのは3人目の被害者だった。
意識を失っているが、命に別状はない。現在、組織の医療班と合流を急ぐ最中だ。
助手席には狐のぬいぐるみを抱えてご満悦の燦。おそらくは店からくすねてきたのだろう。
後部座席には寝かせられた被害者。その横で、ティエルが寄り添うように仮眠を取っていた。
ティエル・ティエリエル
「むむむ!あのお店の調査なんだね!眠たいけど頑張るよ!!」
猟兵とは言えど、まだまだ幼いティエルはこの時間帯は眠たい……けど事件なら頑張るぞ☆
小さな体を利用してお店の中を直接調査だよ!
女子生徒たちが中に入る時に一緒にこっそり飛び込むよ!
お店の中に侵入できたら、ぬいぐるみの陰に隠れて店員さんをじっと見張ってるよ♪
何か怪しいことしたらすぐに報告だ~!
それにしても、この熊さんもふもふだね…………はっ、寝てないよ!?
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
四王天・燦
夜中営業って盗賊ギルドじゃあるまいし。
露骨に胡散臭いな
「深夜に営業してるけど、特別なぬいぐるみでも売ってるの?」。
店から出てきた女性客に好奇心を装って質問。
イケナイ妖狐の性で誘惑&壁ドン&イケメンボイスで聞き込み。
量産品かお手製か、店と店主の評判などを聞いておく
本命の行動。
店員が他猟兵に対応している隙を狙って裏口か窓から潜入
鍵開け・セキュリティ対策に罠使い&ハッキング・忍び足・目立たないの盗賊コンボで入り、暗視と視力で店内を物色。
伝票や帳簿、邪神絡みの物品、行方不明者を隠せそうな箇所を探る。
緊急時は符術『百鬼夜行』で切り抜けるぜ
狐のぬいぐるみを盗んだり、狸のぬいぐるみを投げたりするのはご愛敬だ
●
潜入捜査である以上、身を隠したり目立たないようにする術があれば、それに越したことはない。
「むむむ!あのお店の調査なんだね!眠たいけど頑張るよ!!」
そう言った意味で、フェアリー故に小さな体を持つティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)はまさに適任と言える。
とはいえ、まだまだ幼いティエルである。日中は活発に動き回り、この時間帯には就寝している。それを我慢しているからには、やはり眠い。眠いのだ。
「けど、事件なら頑張るぞ☆」
ウインクひとつ。矜持が勝った。
そして、もう一人の適任者。
「深夜に営業してるけど、特別なぬいぐるみでも売ってるの?」
「あ、あの……」
たった今店から出て来た女子学生に壁ドンしながら囁きかけているのは四王天・燦(月夜の翼・f04448)。勝ち気でさっぱりとした彼女の口から紡がれるイケメンボイスは、同性にとっても魅力的なのだろう。女子生徒は顔を真っ赤にしている。
もじもじした後、女子生徒は恥ずかしそうに駆け去っていった。
「もーっ!燦、ちゃんと仕事してよー!」
「ゴメンゴメン、ちょっと聞き込みしててさ」
肩を竦める燦と、その周りを飛び回るティエル。なにやら微笑ましい光景だ。
●
闇の中。
店内の監視カメラ全てが突如として動きを止める。続いて、パチンと何かの外れる音。施錠していたはずのドアがするりと開く。
そこから音もなく滑り込む黒い影――燦だ。
彼女の本命は、隠密潜入。裏口からバックヤードに潜入した。
薄闇色の外套を纏い、気配を絶った今の燦を捉えることは難しい。一方で燦の方は、暗闇の向こうをはっきりと見通す事が出来る。
盗賊技能の独壇場である。
加えて、燦には奥の手がある。影と化し闇に溶ける符術、その名も『百鬼夜行』。
見つかる心配は無いだろう。
「さて……」
馴れた足取りで足元の段ボールを避けつつ、店裏を物色する燦。見つけたのは、古い帳簿。明らかにこの店のものでない。
「ビンゴだな……やったぜ」
それを暫し眺めれば、途中から意味の明瞭でない品名が現れる。年度が進むにつれて、売上に占める割合も増す一方だ。
「店長の祖父はこの工場の経営者。邪教団との繋がりもその頃から……ってことか」
巻頭には押印された住所。やはり、此処に行ってみるべきだろうか。
戻ろうと一歩足を踏み出せば、足元にもふっと柔らかい感触。
「ん?」
視線を落せば、そこには背中を開かれた人間サイズのぬいぐるみ。中に詰め込まれた綿は少し減らされ、人一人入る程度の余裕がある。
「ははーん……」
何かに気付いたような顔で、燦がそう呟く。
●
女子生徒達が中に入る時に一緒に店内に飛び込んだティエルは、誰にも気づかれずに巨大なぬいぐるみの陰に隠れる事に成功した。ここから店員の様子を監視できる。
「それにしても、この熊さんもふもふだね
…………」
ぬいぐるみに寄りかかるティエル。
「…………はっ、寝てないよ!?」
店員は特に動きを見せていないものの、その間ティエルは監視を怠っていない。どんな怪しい動作も見逃すまいと、一挙手一投足に気を配る。
そんな中、ふと気付く。
なんだかこのぬいぐるみ、さっきより温かくなってない?
息遣いも聞こえる気がする。押してみると、綿以外の感触がする。
「はわわ
……!!」
それらの意味を理解した時、ティエルの眠気が吹き飛んだ。
ぽす、と床に何かが落ちる音。
「あら?」
店員が振り向く。
「狸のぬいぐるみ……?こんなところにあったかしら」
席を立ち、店員の姿が棚の後ろに隠れる。
「今だー!」
急いで背中のチャックを空けるティエル。中に小さな壺を突っ込めば何かが吸い込まれる感触。
続いて手当たり次第にぬいぐるみを放り込み、チャックを閉める。
中身が足りずに少し前傾姿勢になってしまった熊さんだが、店内からはわからない範疇に留まる。
「お邪魔しましたーーー!!」
折良く退店していく客の横をすり抜け、猛スピードで飛んでいくティエル。
店員がティエルの姿を見る事は、遂に無かった。
●
車が街へ向かって走る。
ぬいぐるみの中に閉じ込められていたのは3人目の被害者だった。
意識を失っているが、命に別状はない。現在、組織の医療班と合流を急ぐ最中だ。
助手席には狐のぬいぐるみを抱えてご満悦の燦。おそらくは店からくすねてきたのだろう。
後部座席には寝かせられた被害者。その横で、ティエルが寄り添うように仮眠を取っていた。
大成功
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第2章 集団戦
『『都市伝説』魔法少女マスコットの怪』
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POW : 証拠隠滅
自身の身体部位ひとつを【対象を丸呑みする怪物】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD : 『ほらほら敵が出てきたよ!』
いま戦っている対象に有効な【魔法少女を屠り去る敵】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : 『これで契約成立だよ』
【対象を魔法少女に変える種】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
👑11
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猟兵達は山奥の廃工場に到着した。
表向きはぬいぐるみ工場だが、裏では邪神教団との繋がりがあり、曰くつきの品を生産していたらしい。
もっとも、十年ほど前に工場長が病気で倒れて以来、工場は稼働を停止している。
侵入した倉庫の中には、大量の段ボール。
猟兵達が近づくとそれらが一斉に震え始め。
『おいで、魔法少女』
『大丈夫、恐くないから』
『今すぐ僕と契約しようよ』
そこから様々な姿形のぬいぐるみがふわふわと浮かび上がり、猟兵達を取り巻く。
此処は、邪神教団の選定場だ。
ルネ・プロスト
きもかわいい系?
ぬいぐるみ(お友達)でもルネの敵なら悪い子だね
……雨降って地固まる
うん、とりあえず悪い子にはお仕置きだよ
人形達は死霊憑依させて自律行動
ポーン8体は味方の行動に合わせて援護射撃
敵の行動はフェイントを仕掛けさせて妨害
ルーク2体は盾受け+かばうで味方の護衛
敵のUCはルークのUCで弾く
強制契約お断り、だよ
ルネはナイトに騎乗して人形達の戦闘指揮
敵の攻撃はナイトのダッシュやジャンプで回避
ビショップ2体は雷撃魔法(属性攻撃+マヒ攻撃)で攻撃
いくつか焼けちゃうかもだけど手を抜くわけにもいかないし
まぁ、仕方ないよね
ただのぬいぐるみに戻ったのはこっそり回収したいけど
……原形、とどめてるといいなぁ
芦谷・いろは
僕と契約して魔法少女になってよ?
何処かで一時期流行ってたようなフレーズですね
……いろはとしては、丁重にお断りしたい感じです
いろははヌイグルミで遊ぶ側なんです。遊ばれる側じゃないですよ
では早速
【傀儡の宴】を使用しますね
さぁさぁ一緒に遊びましょう?
出来るだけ《第六感》を駆使しつつ、相手の攻撃を避けたり《武器受け》であやつり人形さんに受けて頂いたり
ふよふよ浮いているらしき《敵を盾にする》していきますね
痛いのも、ルール決められるのも いろは嫌なのですよ
少々敵さんの数が多い様なら、いろはのヌイグルミさんに合体して頂いて《なぎ払い》&《範囲攻撃》で一掃していきますね
●
おなじみテディベア。ふわふわどうぶつぬいぐるみ。誰もが知ってるキャラクターもの。様々な姿形のオブリビオンが工場の倉庫内を浮遊し、猟兵達を取り巻いている。
『僕と契約して……』
「魔法少女に?」
『そうそれ!』
どこかで聞いたようなフレーズだと首を傾げる芦谷・いろは(傀儡使い・f04958)の言葉に、あどけない少年の声で反応を示すワニさん。
『魔法少女になれば』
『悪いやつも懲らしめられるし』
『いろんなことが思いのままさ』
「……いろはとしては、丁重にお断りしたい感じです。いろははヌイグルミで遊ぶ側なんです。遊ばれる側じゃないですよ」
そう答えるいろは。決意は固いようだ。
「きもかわいい系?」
少し離れた場所。また違った意味で首を傾げるのはルネ・プロスト(人形王国・f21741)。飛び交うぬいぐるみの中には、可愛いとは言い難い外見をしているものも居る。元々そういうデザインだったのかは不明だが、彼女には気になって仕方がない。
原形を留めているぬいぐるみを回収したいというのが、彼女の密かな希望だからだ。
「……でも、ルネの敵なら悪い子だね」
相手はオブリビオン。ひとまずお仕置きだと、心を決めるルネ。
己が死霊術でもって、手持ちの人形達を自律行動させる。
銃剣で武装した軽装歩兵8体を前に立て、その後方には、大盾と全身鎧で武装した重装歩兵2体と、木杖を携えた僧正人形2体。
配置を済ませたルネの元に駆けつけるのは、半人半馬の騎兵人形。
鞍の上に横乗りになるルネ。馬上から戦闘指揮を行うつもりだ。
続いて、いろはも動きを見せる。
「さぁさぁ、一緒に楽しいパーティーを始めましょ~♪」
言葉と共に現れるのは、お腹に刻印を施された沢山のヌイグルミたち。
ふらふらとした動きで戦場を埋め尽くし、たちまちルネが組んだ戦陣へと合流を果たす。
人形とヌイグルミ達が地に満ち満ちる様は、壮観の一言だ。
●
ルネのポーンが銃撃で撃ち白ませ、高度を下げたところをビショップが雷撃で薙ぎ払い、トドメにいろはのヌイグルミ達が数体がかりで袋叩きにする。
敵に数の利は無く、戦いの主導権もこちらにある。
いろはを狙って放たれる種は不思議なまでに躱されていく。狙撃には絶好のタイミングで、味方が射線を塞ぐのだ。
戦場を騎馬で駆け回るルネに対しても同様だ。スピードに翻弄され、狙いが定まらない。
それでも囲みを縫って、何体かのぬいぐるみがいろはに迫る。
至近距離から桃色に輝く種が一斉に撃ち出され、あわや直撃かと思われた寸前、いろはが携えていたトランクが僅かに震える。
次の瞬間、そこから弾かれるように飛び出した何かが種を叩き落とす。
いろはが操る大型からくり人形『襲』だ。
「痛いのも、ルール決められるのも いろは嫌なのですよ」
「軽装歩兵(ポーン)、援護して」
ルネの指揮に従い、近くに居た数体の軽装歩兵が銃を向け、放つ。
轟音。地面に撃ち落とされ、ころころと転がるぬいぐるみ達。
「ありがとう~」
「どういたしまして」
馬上から動かなくなったぬいぐるみの様子を確認するルネ。ほぼ原形を留めている。
後で回収しておこう。そう心に決めるルネだった。
あまり芳しくない戦況を前にして、ワニさんが動きを見せる。
『ほらほら敵が出て来たよ!』
召喚されたのは、巨大なシュレッダーに足が生えたような怪物だ。
けたたましい駆動音を上げながら、ドスドスとヌイグルミ達に迫る。
巻き込まれるのを避け、ひとまず後退するヌイグルミとポーン達。
「重装歩兵(ルーク)、盾を構えて。あんなもの、打ち消してしまいなさい」
馬上のルネが指示を下せば。ルネが信頼を置く2体のルークが、速やかにシュレッダー怪物の進路に立ち塞がる。
構えた大盾。そこから同時に放たれたのは、厚い防護障壁。
ガキィンッ!!
2枚の障壁に挟まれ、巨大な鉄の塊であるはずのシュレッダーが歩みを止められる。
「ヌイグルミさん、合体です」
後方に下がったいろはのヌイグルミたちが合体を繰り返し、みるみるうちに巨大化していく。
気付けば、腹部に48と刻印された、巨大なヌイグルミが戦場に出現していた。
圧倒的な質量を誇る腕で、空中の敵をまとめて横殴りにする。
ぼふんっ。
ぬいぐるみ特有の反発力には抗えず、たまらず吹き飛ばされる。その放物線の先には。
『わああ』
重装歩兵と障壁に挟まれてもがく、シュレッダーの怪物。
そのまま口の中に放り込まれ、哀れ仲間と一緒に綿屑と化すワニさん。
召喚主を失い、シュレッダーの怪物が掻き消えるように消滅する。
行動の自由を取り戻したルークが、ぱらぱらと駆け寄るポーンと連携して戦線を立て直す。
「さぁさぁ一緒に遊びましょう?」
それに続いていろはのヌイグルミが前線に復帰し、巨腕を振るう。
上空を飛び回る多数の相手には、効果覿面だ。
倉庫の壁に叩き付けられ、床に落ちた彼らを、ビショップの木杖から放たれる雷撃が焼き尽くして行った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
四王天・燦
ここが人間サンドバッグ工場か…変なの出て来たし、とんだ邪神様だぜ
神鳴抜刀。
ダッシュで接近し二回攻撃で斬って斬って斬り捨てる。
種は見切りと武器受けで弾く。
数が多いと被弾も仕方ない
魔法少女姿にされ胸元が開けば必死で隠す…左胸の傷跡(石化後遺症)は絶対の秘密だ
邪神に尽くせなどのルールはダメージ覚悟で破る。
武器禁止なら符術で呪詛・破魔で攻撃
胸を隠すなと悪意全開のルールは妖狐としてのもう一つの姿―灰色狐になって切り抜け。同時にブチギレ。
残像を囮に駆けながらフォックスファイア54発撃ちで惨たらしく焼いてやる。
術者を倒すか破魔で元の恰好に戻りたいな
行方不明者が魔法少女として襲ってきたら気絶攻撃で絞め落とすよ
●
尻尾を揺らし、薄暗い工場内を音もなく歩む。
「ここが人間サンドバッグ工場か…変なの出て来たし、とんだ邪神様だぜ」
銀髪から突き出た大きな狐耳を訝しげに動かし、四王天・燦(月夜の翼・f04448)は呟いた。
犠牲者はぬいぐるみに囚われ、やがて何事かに利用される。燦自身がその身で掴んだ、貴重な情報だ。
だが、目の前を飛び回るぬいぐるみ達はそれよりも遥かに小さく……そして多い。
燦の刀術を以てしても、全て斬り伏せられるだろうか。
ひとまず、大量の荷物が乗ったスチールラックに身を隠す。
右手を神鳴の柄にかけ、すらりと抜けば刀身を這うのは紅雷。
剣先を後方に下げて構え、距離感を掴みにくくする。
刹那、羽織を靡かせ、そのまま通路を漂う敵の一団に肩から肉薄する。
ぬいぐるみ達が反応を示す。
燦の方が速い。紅い光が下から上に奔れば2体が容易く両断される。
帰す刀でもう一閃。さらに2体。
斬撃に次ぐ斬撃が、ぬいぐるみを次から次へと斬り捨てる。
『妖狐だ』
『すごい魔力だ』
『魔法少女に勧誘しようよ』
奮戦する燦につられ、敵がふわふわと集まって来る。
「おっ、来たな……返り討ちにしてやるぜ」
勝気な燦である。そう呟き、先程よりも勢いを増し、紅い風と化す。
縦横無尽に通路を駆け、乱れ飛ぶ種を避け、弾く燦。
だが敵は多い。通路が尽き、折り返そうとした所を、遂に被弾してしまう。
「なぁっ」
たちまち眩い光に包まれる燦。巻き起こる風。
やがて光が止み、その場に居たのは、和のモチーフを取り入れた、ふわふわ魔法少女の姿であった。
手にある神鳴は可愛らしいステッキに変わり、胸元と背中が大きく開いている。
両手と尻尾を使い、必死で胸を隠そうとする燦。
『ほらほらお胸から手を放して』
『恥ずかしいのはわかるけど』
『それじゃ悪い魔女を倒せないよ』
その途端、燦の雰囲気が一変した。
「てめぇ……!」
『怒ってるのかい?』
『悪い魔女を倒す為にも』
『魔法少女の掟に従うんだ』
耳と尻尾を立て、明らかに怒りを爆発させた様子を見せる燦。
燦が怒っているのはぺったんこだから……ではない。左胸から下腹部にかけて大きな傷跡があるからだ。それもただの傷跡ではない。石化の後遺症だ。
いずれ完治させるまで、この部分だけは衆目に晒すわけにはいかない。いわば逆鱗である。
力づくでルールを破るにせよ、刀が使えるかはわからない。その時の手立ては用意している。
咄嗟に懐に手を突っ込み、乱暴に取り出したのは……破魔の力を込めた霊符だ。
数体に投げつければ、バシンと音をさせて額に貼り付く。
ふよふよと揺れるような動きを見せた後、すとんと墜落していく。
「もう我慢ならねぇ!」
燦が正体を現す――五尾を揺らめかせる、灰色狐。
残像を囮に通路を駆けながら、54発もの狐火を八方に散らす。
圧倒的な熱量に巻かれ、為す術も無く焼かれていくぬいぐるみ達。
「ふう……」
燦が落ち着きを取り戻した時、彼女の通った後に残っていたのは、灰と、陽炎だけだ。
再び影に溶ける燦。既に元の姿に戻っている。残党を殲滅すべく、行動を再開するのだった。
成功
🔵🔵🔴
メンカル・プルモーサ
……魔法少女じゃなくてもう魔女なんだけど……
…この鬱陶しいぬいぐるみを倒してから工場の調査だね…
…契約はもう間に合ってるので…ん?行方不明になった子たちは魔法少女にされた…?
…契約云々には一切耳を貸さず、ぬいぐるみたちには【連鎖する戒めの雷】による雷撃で攻撃していくよ…
…発射してくる種は【愚者の黄金】により黄金の壁を作ってガード……
……黄金の壁が魔法少女になるのかなぁ…なっても困る……
…で。魔法少女を葬る敵が出てきたら【尽きる事なき暴食の大火】で焼き尽くすよ……
…それにしても、邪神教団と魔法少女…魔法少女にする、と言って生贄を選定でもしていたかな……?
アリスティアー・ツーハンドソード
※アドリブ歓迎
さて、途中からだが参戦させてもらおうか
武器である僕自身は動けないから【戦乙女モリガン】に僕を装備してもらって出撃
敵が放つ種は【カウンター】で切り落としてしまって……って、もしかてこれ僕も魔法少女になるのか!?嘘だろ!?
……なんて焦るのは演技さ、僕がルールで縛られるのは折り込み済み
僕が相手の注意を引いている隙にモリガンが小人達の作ったトンネルに飛び込み【アリスランス・クリエイション】で作った槍をその中から【投擲】
死角からの【フェイント】で確実に数を減らしていこう
……ところで、戻るんだよねコレ?
●
「…それにしても、邪神教団と魔法少女…」
戦闘が続く工場内を、独り歩む灰色の魔女。メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)。
「…魔法少女にする、と言って生贄を選定でもしていたかな……?」
これまでの経緯を整理し、メンカルは自分なりの推測を組み立てていく。
「…契約はもう間に合ってるので…ん?行方不明になった子たちは魔法少女にされた…?」
事は戦後処理にも関わって来る。既に工場の調査まで視野に入れている。そんなメンカルであった。
ふと、目の前に現れた気配に一旦思考を停止するメンカル。そこには。
アリスティアー・ツーハンドソード(王子気取りの両手剣・f19551)が床に突き立っていた。
「さて、間に合ったみたいだね」
王子様然とした口調でそう言う。
とはいえ、彼女自身は一本の両手剣に過ぎない。現に転送された場所から動けない様子だ。
ではどうするか。その答えを示すように、メンカルの横を抜け、金の髪を揺らしてアリスティアーに歩み寄る一人の女性。彼女こそが【戦乙女モリガン】――ゴーレム兵にして、戦神の名を冠する三剣士のうちの一体。彼女がアリスティアーを振るうのだ。
「じゃあ、僕が先行するよ」
「ん……頑張って」
ぎしり、とモリガンに握られるアリスティアーの後ろを、メンカルが付いていく。
モリガンと共に広間に姿を現すアリスティアーに、ぬいぐるみ達が近寄って来る。
『とびっきりのイレギュラーだ』
『対魔女の切り札になるよ』
『僕たちと契約しようよ』
二人に向けて、次々に輝く種が撃ち出される。
身体に引き付けて構えたアリスティアーを、コンパクトに振るうモリガン。飛来する種を器用にスパスパと切り落としたところで……ふと、ある事に思い至る。
「……これ僕も魔法少女になるのか!?」
モリガンの手の中で、眩い光に包まれるアリスティアー。やがて光が収束し、現れたのは……とても可愛らしくデコレーションされた両手剣だった。
淡い色合いを基調としたやたらフリッフリなデザインは彼女のいた世界の意匠を反映したものか。その柄にはピンクのリボンが柔らかく結ばれている。
『おめでとう』
『おめでとう』
『これで契約成立だね』
「嘘だろ……」
力を失った声色でアリスティアーが呟く。
カラン、とアリスティアーを取り落とすモリガン。
地面に横倒しになったアリスティアーを祝福するかのように、沢山のぬいぐるみが彼女を取り巻き、空中をゆっくりと旋回し始めた。
●
後方ではメンカルがぬいぐるみの勧誘を受けていた。
『君の素質、素晴らしいね』
『今すぐ魔法少女になって』
『悪い魔女を倒しに行こうよ』
「……魔法少女じゃなくてもう魔女なんだけど……」
現役の魔女を魔法少女に勧誘するという、若干ややこしい行動を取る個体たちであった。おそらくは彼ら自身の活動原理に基づいた行動に過ぎないのだろうが、何にせよ、見境の無い勧誘活動ではある。考え事をしていたメンカルからすれば、とても鬱陶しい。
否。彼女は平常心だ。その上で契約には一切耳を貸さない。そういった心積もりを既に固めている。
『そんなこと言わずに』
『僕たちと契約して』
『魔法少女になってよ』
メンカルを取り囲むぬいぐるみ達が次々に輝く種を撃ち出す。
対するメンカルも詠唱を開始する。
「世に漂う魔素よ、変われ、転じよ。汝は財貨、汝は宝物、魔女が望むは王が呪いし愚かなる黄金」
詠唱を終え、虚空から形成された黄金の壁が、メンカルの四方を取り囲む。
一呼吸遅れて、滑らかな金壁の表面が種を跳ね返す。
「……黄金の壁が魔法少女になるのかなぁ…なっても困る……」
幸いにもそんな事はなかったようだ。安定した素材で作られた壁は、今もなおメンカルをしっかりとガードしている。
壁同士をつなぐように、敵の攻撃を軽減する魔法陣を作り、さらに守りを固めていくメンカル。
ふと、足元に視線を移す。
足の裏から何かが微かに響いて来るような、そんな感覚。
「……しばらくは時間稼ぎかな……」
壁に寄りかかり、そんな事をぼそりと呟くメンカルだった。
相変わらず横たわったままのアリスティアー。心の中では自身が逃れ得ぬ掟に縛られてしまったのを感じる。
『動けなくても関係ない』
『今まで辛い目に遭っていても関係ない』
『全ては君の思い一つ。魔法少女に大事なのは心さ』
「大事なのは……心……」
よほど雑に扱われて来たのだろう。既にアリスティアーの心は死につつあるのだが、そんな事は知ってか知らずか、勝手な事をまくしたてるぬいぐるみ達であった。
「――なんてね」
その言葉と同時に、金の砦の周囲に展開する、青白い無数の魔法陣。
「紡がれし迅雷よ、奔れ、縛れ。汝は電光、汝は縛鎖――」
タイミングを見計らっていたメンカルが、再び詠唱を開始したのだ。
「――魔女が望むは魔狼封じる天の枷」
詠唱を終え、メンカルが身の丈ほどもある月の銀杖を地面に突き立てた刹那。
バァン!!
蒼い光が奔った。
同質の存在に次々に伝播し、動きを封じる雷鎖。
アリスティアーを中心に旋回していたぬいぐるみたちが、まとめて絡め取られる。
倉庫内に高く聳え立つ、雷光の塔。
近くの地面に穴が開いた。
そこから次々に放たれる、魔法の槍。
全ては演技。モリガンが居なくなった事に気付く者は誰も居なかった。密かに堀ったトンネルを通じて、囲みの外から攻撃を開始させたのだ。
動く気を封じられたところに、奇襲を受けて浮き足立つぬいぐるみ達。下方から飛来する槍の豪雨に少なからぬ数が貫かれる。
ボンッと煙に包まれ、すぐさま元の姿へと戻るアリスティアー。
「……あ、戻った」
そんな彼女を、トンネルから勢い良く飛び出した戦乙女が再び手に取った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ティエル・ティエリエル
SPDで判定
「ねむねむ……あんまり夜更かししてたら怒られちゃうから、さっさと解決しちゃうぞー☆」
車の中で仮眠もしたから夜でも大丈夫!頑張るぞー!
魔法少女も楽しいけど、今日はお断りだーとレイピアを構えてぬいぐるみ達に襲い掛かるよ!
背中の翅で羽ばたいて「空中浮遊」して、上空からの「空中戦」でヒット&アウェイで戦うね♪
空中にいるボクを捕まえようと『ほらほら敵が出てきたよ!』で虫取り網を持った敵が出てくるけど
そんなのに捕まるもんかーと【スカイステッパー】で空中で「ダンス」を踊るように舞いながら「見切り」で避けちゃうぞ☆
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
●
戦いの音が響く、工場内。
「ねむねむ……あんまり夜更かししてたら怒られちゃうから、さっさと解決しちゃうぞー☆」
段ボールの陰で軽く欠伸をしているのはティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)。
先程車内で仮眠を取ったとはいえ、まだまだ寝足りない。
とはいえ、戦意は充分のようだ。
背中の翅をぱたぱたと羽ばたかせ、高く高く舞い上がるティエル。
倉庫の天井近くで止まり、敵の配置を見てレイピアを構え、深呼吸をひとつ。
『あれなあに?』
『飛んでるよ』
『仲間かな?』
そんな呑気な事を言いながらティエルを見上げるぬいぐるみ達。
次の瞬間、風鳴り音が倉庫内に響いた。
ぼ、とテティベアの顔に孔が開く。
動揺するぬいぐるみ達を尻目に再度上昇するティエル。
標的を見定め、貫く。また上昇する。
これを繰り返し、次第にぬいぐるみの一団を地表近くに追い込んでいく。華麗なヒット&アウェイ戦術だ。
風鳴り音を幾度となく響かせ、卓越した空中戦闘力を見せつけるティエル。
『妖精さんだ』
『きっと戦力になるよ』
『魔法少女に勧誘しようよ』
ぬいぐるみたちも黙っていない。数体のぬいぐるみが目を赤く輝かせれば。
『ほらほら敵が出て来たよ!』
高く聳えるスチールラックの影から、何かが勢い良く駆け出して来た。
麦わら帽子を目深に被り、虫捕り網を持った少年。空中を自在に駆けるティエルを捕まるべく、ぬいぐるみたちが召喚した『敵』だ。
「むむむ、これは強敵!ならば!」
ティエルが空中での動きを変えた。
上空高く舞い上がるような動きの代わりに、宙を蹴って弾むような動きが加わったのだ。そのリズムは軽快な踊りにも似て。
やや高度を下げたティエルを狙い易しと見たか、果敢に虫捕り網を振るう少年。だが、その度に虚しく空を切る。
本当に宙を蹴っているのだ。巻き起こる風に全く影響を受けず、ティエルが宙を往く。
そのまま少年を引き連れてぬいぐるみ達の間を縫うように飛べば、後ろで悲鳴が上がり始める。
『きゃあ』
『痛い痛い』
『ひどいなぁ』
巻き込まれるぬいぐるみ達。ぽふ、と虫捕り網に収まるもの、そのまま投げ飛ばされるもの。棒の部分が当たって殴られるものもいる。
自分達の召喚した敵を逆に利用され、追い立てられていくぬいぐるみ達。
「そんなのに捕まらないよーだ☆」
彼らの悲鳴などどこ吹く風。きらきらと楽しげに宙を舞い、少年を翻弄し続けるティエルであった。
大成功
🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
「数が多いのは面倒だけど――これもウォーミングアップだと思って蹴散らすとしようか!」
情報を確認しつつ合流、討つべき敵を前に翼を広げ。
UCは【天災輪舞】を使用、加速して《空中戦》を展開。
《存在感》を放つ《残像》を無数に生み出し、上空から雷羽の《属性攻撃》《範囲攻撃》を雨のように降り注がせて敵全体を攻撃します。
敵UCに対しては《第六感》《戦闘知識》を併用して性質を《見切り》、攻撃手段を《早業》《怪力》《鎧砕き》による接近戦や視線を介した《催眠術》《精神攻撃》による意識の《ハッキング》、火炎による別の属性攻撃等に切り替えて対応します。
「アタシの手札全部に対応できるって言うならやってみるといいよ!」
●
際限無く段ボールから湧き出すオブリビオン達。
その流れが、ようやく途絶えた。
しかし、未だ敵は残っている。
そんな倉庫の内部に足を踏み入れる、新たな猟兵――カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)。
「数が多いのは面倒だけど――」
宙を漂う彼らを眺める表情は軽薄にも見えて、何処か凛とした雰囲気も感じられる。
「これもウォーミングアップだと思って蹴散らすとしようか!」
ふわりと、カタリナの身体が地面から浮き上がる。
そのまま一気に高度を上げ、浮かぶ敵のさらに高みへと。
上昇を止めた時、天井をカタリナの残像が埋め尽くしていた。
「ふ、ふふ、あはははははっ! さぁ、最っ高のパフォーマンスで魅せてあげるよ!」
準備は整った。高らかに笑いつつ、残像達と共に虹色の双翼を広げる。
次の瞬間、倉庫内に眩い光が満ちた。
驟雨の如く浴びせかけられる、雷を纏った無数の羽。
逃げ場は無い。触れればたちまち炎に巻かれる。
繊維が爆ぜる音を立て、次々と墜落していくぬいぐるみ達。
『才能の塊だ』
『魔法少女に勧誘しようよ』
『君が望めば、きっと全てを覆せるよ』
大半を灼き尽くされ、もはやぬいぐるみ達に勝ちの目は薄い。にも拘らず、本来は有利な状況でのみ真価を発揮するその手段を、またもや講じる。
『ほらほら敵が出て来たよ!』
放たれた雷羽が宙に停滞した。
推力を失い、軽く稲妻を散らした後、消える。
燐光の落ち行く先には、彼らが呼び出した『敵』。
カタリナと同じく翼を持ち、しかし魔とは対極の穏やかな雰囲気を纏った、天の御使いが如き存在。
近づくもの全てを停滞させる、秩序の体現者だ。
「アタシの手札全部に対応できるって言うなら――」
雷羽は技の一端に過ぎない。
軽く、手を翳す。
「――やってみるといいよ!」
次の瞬間、カタリナは弾丸と化した。
超高速で間合いを詰めつつ、御使いの手前にある『空間を握り潰』す。
カタリナがその身に宿す、魔人の権能だ。
『――!』
そのまま蒼雷と共に御使いに突進するカタリナ。
空間をこじ開けられ、同族殺しの力を前に、御使いが霧消する。
加速したカタリナ。気付けば既に上空に居る。
再び降り注ぐ雷羽。
●
猟兵達の手により、ぬいぐるみ達は一体残らず駆逐された。
「ふぅ……今ので最後だったみたいだね」
全霊のパフォーマンスを終え、疲労感を覚えつつも静寂に包まれた倉庫内を哨戒するカタリナ。
ふと視界の端に映りんだのは、廃倉庫には不釣り合いな、真新しい大きめの段ボール二つ。
歩み寄り、中を覗き込む。
「女の子だ……」
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『『可能性の収奪者』アニマ』
|
POW : 『可能性』の反射 / 血濡れた人皮本
対象のユーベルコードを防御すると、それを【『可能性』を記した本から引き出して】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
SPD : 『可能性』の封殺 / 千の貌の仮面
【血色の外套の影】から【『可能性』を集めて作った様々な表情の仮面】を放ち、【敵に仮面の表情と同じ感情を上書きする事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 『可能性』の発露 / 瞳の首輪と強欲の短刀
【目玉で作ったネックレスから魔力を引き出し】【血濡れたナイフに魔力を込めて】【全身に他者の『可能性』を宿すこと】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
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●
猟兵達は倉庫内で残りの行方不明者を発見した。
二人とも魔法少女のような恰好で、昏倒したまま段ボールに寝かせられていた。
呼吸も脈拍も正常。外傷も無い。ただ、顔色はやや悪いか。
少々の記憶消去を要するかも知れないが、いずれ日常に戻る事は出来そうだ。
その時。
建物の奥から溢れ出る、禍々しい気配。
気配を辿り、地下へと続く階段を、降りる。
その先には、床に魔法陣が描かれた比較的狭い空間。
儀式場だ。
魔法陣の中央に、女が俯いて立っている。
その手には、血塗られた本とナイフ。
怪人と言って良い。
『魔法少女として絶望と仮初の希望を交互に抱かせ、その過程で互いに強め合わせた『可能性』を奪う』
偏執的な、笑い交じりの掠れた声。
『あの子の案だったみたいだけど……まさか最初の選定の段階で邪魔が入るなんて……流石ね。猟兵(イェーガー)』
ゆっくりと、女が顔を上げる。
同時に、狂気的なまでに物欲しげな熱視線が、猟兵達に向けて注がれる。
『役立たずの処遇は後でじっくり考えるとして……結果オーライかしら』
様々な表情を浮かべた仮面が女の背後から伸び、空間を満たす。
逃がさない。そう言わんばかりに。
『さぁ……才能、能力、未来……何でもいい。私の完全復活の為に……貴様の『可能性』を寄越せ!!』
だ。
カタリナ・エスペランサ
「へぇ――面白いこと言うね」
視線を鋭く細めながら、口元だけで笑みの形を作ってみせ。
「させないよ。キミが奪おうとする全てを守る為にアタシが居るんだから」
UCは【閃風の庇護者】を使用。
強化した洞察力で敵の動きや攻撃の性質を《見切り》、物理攻撃に対しては《怪力》を発揮して《早業》《武器落とし》で《カウンター》。
遠隔攻撃に対しては翼から放つ《衝撃波》の《吹き飛ばし》で、呪詛等の特殊干渉に対してはこれらに《破魔》の《祈り》を込めた《属性攻撃》を纏わせて対処します。
味方に攻撃が向かうようなら《かばう》事で割り込みつつ同様に対処。
相手が隙を見せれば早業の《念動力》で呪縛して肉薄、そのまま連撃を叩き込みます。
アリスティアー・ツーハンドソード
可能性か、いいだろう。くれてやるさ!
選択UCを発動
【戦乙女モリガン】の持つ紫電の剣と融合し、その出力を何倍にも引き上げる
続けてアイテム【ウイニング・イマジネーション】を使用してモリガンの動きをサポート、剣技を持って敵を倒そう
そして相手がこちらのユーベルコードを使用したとき、それが敵の最後だ
【涙刃連結技】は自らを担い手にとって最適の武器とするユーベルコード
自分しか見ておらず、担い手がいないキミが使っても身動きのとれない武器が一本転がるだけさ。そのままモリガン全力の振り下ろしで叩き斬ってやろう
可能性に潰されたな、孤独の中で砕けるといい
メンカル・プルモーサ
……いや、可能性ぐらい自分で探せばいいのに……
…初手から奪うことを考えてるから失敗するんじゃないかな…
(瞳の首輪と強欲の短刀をみて)…ふむ。あのネックレスが魔力源でナイフに魔力を伝えることが肝か……
…それなら【崩壊せし邪悪なる符号】でネックレスとナイフの魔力のパスを断ち切るって無効化しよう…
…そして【空より降りたる静謐の魔剣】を発動……仮面に向けて発射して次々と割っていくよ…
……『可能性』というなら…こうなる『可能性』は考えていたかな…?
…最後は【尽きる事なき暴食の大火】をまとめて一つの炎にして叩きつけるよ……
…さて、二人の行方不明者を保護して帰ろう…傷とかなくてよかった…
ティエル・ティエリエル
SPDで判定
「お前なんかに何にもあげないよー!あっかんべーだ!」
ぬいぐるみ達との闘い同様に、背中の翅で羽ばたいて「空中浮遊」、上空からの「空中戦」でヒット&アウェイで戦うね♪
飛んでくる仮面は「見切り」で頑張って避けていくよ!
もし仮面が当たって怒りや憎しみなどの負の感情に上書きされそうになっても
元々の天真爛漫な性格や、お守りの宝石の「呪詛耐性」によって跳ね除けるよ!
攻撃のチャンスがあれば「捨て身の一撃」による【妖精の一刺し】で仮面ごと一気に刺し貫くね♪
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
ルネ・プロスト
……君には興味ないかな
早くぬいぐるみ持ち帰りたいんだから
とっとと消えて
引き続き人形達に死霊憑依&自律行動
ポーン8体は援護射撃とフェイントで敵の行動牽制
ルーク2体はかばう+盾受けで味方の護衛
クイーンは炸裂魔法弾(誘導弾+範囲攻撃)で攻撃
ビショップ2体は雷撃魔法(属性攻撃+マヒ攻撃)で攻撃
必要に応じてオーラ防御で防御支援も
ルネはナイトに騎乗して戦闘指揮
回避はナイトのダッシュ、ジャンプを使用
もう1体のナイトはダッシュ+フェイントで敵を攪乱
敵UCはルークとビショップで防御
同時にビショップのUCでそっくりそのままお返し
可能性可能性うるさいよ
君の未来はここで終わり
『可能性』なんて、もういらないでしょ?
芦谷・いろは
役立たずだか何だか知りませんし、処遇とかもいろははどうでもいいのですが
アナタが欲している『可能性』ってのを封じて台無しにしたらどうなるんでしょう?
いろは的にはとても興味があります
ので早速試してみようかと思うのですよ
さぁさぁ、それでは始めましょう!
【七星七縛符】を使用しますね
《第六感》を働かせ《フェイント》を入れたり、あやつり人形で《武器受け》しつつ
隙を見てユーベルコード当てるよう努力しますね
上手く当たっても、長時間封じるのは無理なので
皆さんで早めに袋叩きって奴してくれると、いろは的にはとても助かります!
四王天・燦
「馬鹿丸出しだ。自分本来の可能性以外に頼り切ってる」
見下して嘲笑。
嗤いの表情をダウナー系で上書きされたら(胸と腹の呪いが解けずに悪化したら…)と落ち込んで部屋の隅で三角座り。
落ち着いたら仮面を引きはがす
アッパー系、特に憤怒は先の魔法少女化での不機嫌が再発。
妖魔解放。女吸血鬼の魂を霊着し、ドSの性格が混ざる。
「借り物頼りのカス神風情が。這い蹲りなさい」
高速移動で詰め部位破壊で足を切断
三度の仮面は破魔を宿した神鳴で武器受けし叩き割る。
ドス黒い衝撃波を叩きつけ、殺気全開、恐怖を与え歩み寄る。
「良い表情だわ。新しい仮面にちょうどよさそうね」
トドメは首刎ねさ
さ、ぬいぐるみ屋の姉ちゃんを詰問に行きますか
●
儀式場の薄闇を、不穏な空気が上書きしていく。
不完全ながらも地上に降り立った邪神『アニマ』は、被害者たちから猟兵達へと矛先を向け直し、その『可能性』を奪い尽くそうとしていた。
『『可能性』だ……『可能性』を――』
「へぇ――面白いこと言うね」
アニマの言葉に視線を鋭く細めるカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)。
「させないよ。キミが奪おうとする全てを守る為にアタシが居るんだから」
人々を未来へと繋ぐ為に、自分の道を決めた。そんな彼女にとって『可能性』はとても大事なものだ。
故にこうした敵は想定内でもあったのだろう。カタリナは不敵な笑みを崩さない。
会話の最中にもじわりじわりと伸びゆくアニマの影。そこからびゅんっと距離を取り、舌を出すのはティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)。
「お前なんかに何にもあげないよー!あっかんべーだ!」
可愛らしい感情表現なのだが、示すのは明確な拒絶の意思だ。
「……いや、可能性ぐらい自分で探せばいいのに……」
「ああ、馬鹿丸出しだ。自分本来の可能性以外に頼り切ってる」
半ば呆れるような声色でそう零すメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の言葉に、四王天・燦(月夜の翼・f04448)が嘲笑を浮かべた表情で答える。
方向性に違いはあれど、困難に立ち向かう事を恐れない傾向を共に持つ彼女達にとって、こういった手合いは理解し難い事だろう。
「……君には興味ないかな。はやくぬいぐるみ持ち帰りたいから、とっとと消えて」
少しも心を動かさない様子で言い放つのはルネ・プロスト(人形王国・f21741)。彼女の興味は、先刻の戦いで首尾良く原形を留める事に成功したぬいぐるみを持ち帰る事に注がれている。目の前の恐ろしげな敵も、今の彼女にとっては邪魔者でしかない。
「役立たずだか何だか知りませんし、処遇とかもいろははどうでもいいのですが」
やや間延びした声でアニマに話しかけるのは、芦谷・いろは(傀儡使い・f04958)。
「アナタが欲している『可能性』ってのを封じて台無しにしたらどうなるんでしょう?」
『……』
「いろは的にはとても興味があります。なので早速試してみようかと思うのですよ」
いろはの言葉に、アニマの影が動きを止めた。
策がある。察したは良いが、それが何かまでは判らない為だろうか。そんな逡巡を断つ、凛とした声。
「可能性か、いいだろう。くれてやるさ!」
それはゴーレム【戦乙女モリガン】の片手に握られたアリスティアー・ツーハンドソード(王子気取りの両手剣・f19551)から発せられたものだった。もう片手には、紫電の剣。
「存分に受けるといい、これが僕の真髄だ!」
アリスティアーの言葉と共に、二本の剣を十字に交差させるモリガン。
瞬間、紫の電光が爆ぜ、室内を眩く照らす。
電光が止み、モリガンの手にあったのは、融合を果たし、紫電を纏った一本の大剣。
戦乙女がアリスティアーを構え直したのを切欠に、戦いの火蓋が切って落とされた。
●
アニマが身に着けた血色の外套が揺れる。
そこから溢れ出るのは、目にするだけで心を掻き毟るような、様々な表情の仮面。
押し寄せる仮面の濁流が、猟兵達に殺到する。
「行くよ!」
迷い無く濁流に飛び込むのはカタリナ。飲み込まれた、と思われた瞬間、破魔の力を宿したレガリアスシューズが風音を立てて横に蹴り払われ、返す刀で雷を纏わせたナイフが振るわれる。
たちまち派手な音を立てて砕かれる仮面。次々落ちては消えていく破片の中で舞い踊るように立ち回るカタリナ。
閃風の庇護者――この状況下において高い効果を発揮するユーベルコードだ。敵の攻勢を正面から押し留める。
カタリナが破壊し切れなかった仮面が後方の味方に迫る。
「わわっ!!」
流れ来る仮面を飛び回りながら避けていたティエルだが、憎悪と思しき仮面に触れてしまった。
「……この程度じゃ負けないぞ☆」
しかし、次の瞬間にはその呪縛を容易く跳ねのけた。彼女の母が密かに持たせた宝石の加護もさることながら、彼女自身の天真爛漫さもまた彼女を救ったに違いない。何事も無かったかのように飛び去り、仮面を華麗に見切っていくティエル。
一方、哀しみの仮面が掠ってしまった燦は、狐耳をしゅんとさせて部屋の隅で三角座りをしていた。
「(もし胸と腹の呪いが解けずに悪化したら……)」
常にその身に呪いを抱える燦である。ちょっとした切欠で悪い先行きを想像してしまうのだ。猟兵としても、女性としても、辛い。
とはいえ、戦場で蹲っている訳にもいかない。傍にいたメンカルが軽く空を仰げばたちまち降り注ぐ70余りの剣。辺りで響く破砕音に耳と尻尾をぴんとさせ、仮面を自らの手で引き剥がす燦。無事、仮面の呪縛から逃れる事に成功した。
「…初手から奪うことを考えてるから失敗するんじゃないかな…」
全てを他から奪おうとする姿勢は、消し難い盲点を作り出すに違いない。今回の儀式の失敗も、あるいはその繰り返しなのかも知れない。
『五月蠅い……貴様もその『可能性』を寄越せ!!』
メンカルに矛先を向けようとするアニマ。そこへ。
「さぁさぁ、それでは始めましょう!」
いろはが手首をくるりと返せば、その動きに合わせて大型からくり人形『襲』が身体を回し、残り少ない仮面を纏めて叩き割る。背面にある仮面すらも察知出来たのは、彼女の第六感によるものだ。
そのままふらりと予測し難い動きでアニマに肉薄し、下方から腕を振り上げるからくり人形。
アニマが右腕のナイフを狂おしく振り上げ、かち合う寸前――人形が下がる。
フェイントだ。アニマの意識が逸れた所に横合いから突っ込んでくるのはモリガン。
ゴーレムではあるが、その動きは卓越した戦士と比べても遜色無い。アリスティアーの担い手のみが使える魔法「ウイニング・イマジネーション」によるものだ。
袈裟斬りを仕掛ける。
『!?』
引き下がるアニマ。紫電を帯びたアリスティアーが振り落とされれば落雷が地面を穿つ。
ふと、奇妙な音を耳にしたアニマが上空を仰げば。
「いっくぞー!!」
視線の先にはレイピアを手に迫るティエル。
絶え間なく滑落と上昇を繰り返し、舞い踊る花びらの如き動きでアニマの後頭部を狙う。
ナイフを振りかざし反撃を試みるアニマ。だが空を切る。その度にティエルの足に巻いた紅いリボンが挑発するように翻る。
「おっと、余所見なんて寂しいね! キミの相手はアタシだよ!」
そこに加わったのはカタリナ。細身からは想像も出来ない膂力とスピードで連撃を叩き込んでいく。
ティエルのレイピアをナイフで、カタリナの連撃を本で捌きつつも後退していくアニマ。
連撃の終わりに目にも止まらぬ早業でダガーを抜き、一閃させるカタリナ。本で塞がった左腕に傷を叩き込む。
ザザザッ!!と手足で地面を掴み、踏み止まるアニマ――その先には、ルネの敷いた戦陣。
8体の軽装歩兵が駆け寄り、銃剣を突き出す。
『アハハハハハ!!』
不意に、アニマが跳躍した。
ガキィン!!交差する銃剣。その上に足を乗せる。
一段高くなった視線の先には、馬上のルネ。
『次は貴様だ……!』
どくり。
ネックレスの目玉が充血し、ナイフを持つ手がぎしりと音を立てる。
アニマの後方に魔法陣が展開し、そこから現れたのは8体の――黒のポーン。
ルネのポーンは応戦せざるを得ない。彼らの銃剣を蹴ってアニマが跳び上がる。強化された運動能力でもって順々に手駒を蹴り、ルネに迫る。ポーン、ルーク、ナイト、ビショップ、クイーン……ポーン。
アニマが振り返れば、前面では黒のポーンがクイーンと8体のポーンに駆逐されつつある。
そしてルネの前に立ち塞がるのは――新たに湧き出した、8体のポーン。
「君の未来はここで終わり。『可能性』なんて、もういらないでしょ?」
『反射』された。そう気付いた時、横合いから、衝撃。
ルークが体当たりでアニマを戦列から叩き出したのだ。
「はあっ!!」
吹き飛ばされたアニマに向けて、羽織を翻し斬りかかる燦。
火花が、散る。
●
いろはのからくり人形が敵の攻撃を弾き、カタリナがカウンターを差し込む。
戦場を縦横無尽に動き回るアニマと、それに対応する猟兵。双方、決定打を与えられずにいた。
戦いの流れを変えたのは燦だ。放たれた仮面に再び触れてしまった燦だが、偶々その表情が憤怒であった事が、彼女を奥の手――妖魔解放へと踏み切らせた。
先程の戦いで無理矢理魔法少女にされた記憶もまた、燦の怒りに油を注いだ。
「魂の奥底に宿りし魔の者よ。オブリビオンの呪縛より解かれ、この身を依り代に顕現せよ。リリース・ピュアリィハート!」
その身に宿したのは、サディスティックな女吸血鬼の魂。
爆発的な速度で距離を詰め、怒りに任せて一閃する。
紅く奔る閃光。
横一文字に両脚を傷付けられ、崩れ落ちるアニマ。
「ビショップ、動きを封じて」
間髪入れずにルネのビショップが雷撃を放つ。右腕で受けたものの、痺れに耐え切れず、ナイフを地面に取り落す。
「よ~し……」
上空から観察を続けていたのはティエルだ。もう牽制は必要無いと判断し、レイピアを引く。一切の防御を考慮しない、捨て身の構えだ。
すーっと大きく深呼吸。
次の瞬間。一際高い風鳴りが響き渡る。
「いっくぞーーー!! これがボクの全力全開だよ☆」
今まさに起き上がろうとしていたアニマの瞳に写るのは、徐々に大きくなる、ティエルの姿。
次の瞬間、レイピアが深々とアニマの胸を深々と貫通した。
今のティエルが出せる全速力での、体当たりだ。
『がはっ……!』
激痛に喘ぐアニマを残し、すぐさま飛び去るティエル。
アニマの首がぐらりと傾く。顔が天を仰いだ瞬間。
ひらり。
ネックレスに貼り付く、何か。
それまで機を伺っていたいろはが放った、人型の紙。
七星七縛符だ。
『……!!』
無傷のアニマであれば払い落とす事も容易だった筈だが、傷ついた身ではそれすら叶わなかった。
符がたちまち効果を示す。白目を剥き、完全に動きを止めるアニマ。
絶好のチャンスが訪れる。
「お願いします!」
いろはの声に呼応して動くのはメンカル。敵の性質は既に見切っている。
与えられた時間を最大限に利用し、決定打を差し込むべく、詠唱を行う。
「邪なる力よ、解れ、壊れよ。汝は雲散、汝は霧消。魔女が望むは乱れ散じて潰えし理」
空気が変わった。
アニマの魔力の源であるネックレスが、黒い泡となって分解――霧散したのだ。
「……『可能性』というなら…こうなる『可能性』は考えていたかな…?」
自分が奪われる側に回るとは露ほどにも考えていなかったに違いない。驚愕の表情を浮かべるアニマ。
「良い表情だわ。新しい仮面にちょうどよさそうね」
ドス黒い殺気を露わにして歩み寄る燦。
首を狙い一閃。恐怖のままに身を引くアニマ。
辛くも避けられ、しかし喉を断つ。
飛び散る血飛沫。
満身創痍のアニマを取り囲む猟兵達。
傍から見れば、アニマに勝ちの目は無い。
『……!』
しかし不意に何かを閃いた様子のアニマが、人皮本を乱暴に捲り始めた。
高笑いと共に禍々しい炎がアニマを包む。
その力は、戦いの流れの中でアリスティアーから奪ったものだ。
「…あー…」
止めの詠唱を開始しようとしたメンカルが、炎に巻かれるアニマの様子を眺め、ふとそんな声を漏らす。
やがて炎が収まった時、地面に転がるのは――ヒビが入った、歪に曲がった剣。
手に取る者は、勿論、居ない。
「それは自らを担い手にとって最適の武器とするユーベルコード」
剣の元に歩み寄るのはモリガン。
「他者を顧みず、担い手の居ない君が使ってもこうなるだけ」
およそ人が手に出来る形状ではない。
「可能性に潰されたな――孤独の中で砕けると良い」
破砕音。
全力の振り下ろしで、歪な剣は刃の中程から両断された、
それはやがて黒い泡と化し、骸の海へと掻き消えるのだった。
●
「終わった終わった!皆、お疲れ様、だね♪」
邪神との戦闘が終わり、UDC組織の調査班を待つ猟兵達は、廃工場の外で山の朝焼けを臨んでいた。
仲間の猟兵を労うように声を掛けていくカタリナ。その度に場の雰囲気が明るさを帯びて行くのは、旅芸人の面目躍如といった所だろう。
「お疲れ様~」
カタリナにそう返すのはいろはだ。彼女の横にある革製トランクの中には、無事に役目を果たしたからくり人形が静かに収まっている。
「…さて、後で二人の行方不明者を保護して貰おう…傷とかなくてよかった…」
倉庫の奥からメンカルが出て来た。医術の知識を持つ彼女は、戦闘後に改めて二人の容態を確かめていたのだ。経過は順調。彼女らを守り抜いたことは、大きな戦果と言って良いだろう。
ルネが後ろ手に持っているのは、今はもう力を失ったぬいぐるみだ。銃創が開いてはいるが、ほぼ無傷。
「それ、気に入ったのかい?」
ルネの後ろに居たアリスティアーが声を掛ける。戦乙女と共に最前線を支えた彼女は、今は工場内の床に突き立ち、入口から差し込む光を浴びている。
「ん……」
振り返り、無表情で答えるルネ。予定通り、持ち帰るつもりらしい。
アリスティアーの傍にある入口の柱には、毛布を掛けられたティエルが寄りかかっている。深夜の任務は流石に堪えたのだろうか。今は安らかに寝息を立てている。
「さ、ぬいぐるみ屋の姉ちゃんを詰問に行きますか」
そう言いつつ、一足先に山道に向かう燦。組織と呼応して踏み込めば、教団の壊滅を早める事も可能だろう。
彼女を後押しするように、涼やかな秋風が吹き渡るのだった。
大成功
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