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エンパイアウォー⑧~石英の骸

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●叫
 上がるのは、悲鳴。
 悲痛で、悲惨な声が。そこかしこから聞こえる。
 男も、女も、子供も――恐怖に支配されればもう、助け合うことも難しい。
 突然現れたのは肩に煌く水晶を宿した人。それは死、腐敗した身体を動かし。ただ生者を襲い続ける。
 抗うことの出来ない強い力で女の長い髪を掴み、その首筋へと噛み付けば溢れるのは鮮血。地面に広がるその紅に目もくれず、屍は次なる対象へと腕を伸ばす。
 平和に生きる人々を襲う、突然の亡者。
 彼等は命令なのか、本能なのか。ただただ、一般人を襲うだけ。

 それはかつて、己がされた悲惨な死を。
 再現しているかのようにも、見えた。

●屍の末路
 サムライエンパイアの世界で行われる、数多の戦い。
 そのひとつを、救いに導いて欲しいと――ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)はいつもは穏やかなその苺色の瞳に、真剣さを宿して口を開く。
「皆さんに倒して来て貰いたいのは、水晶屍人です。強化された存在なので」
 十分に注意をして下さい、と念を押すように言葉を添える。

 向かうのは、山陰道。数多の軍勢の中、安倍晴明は奪った鳥取城を拠点として、猟兵と幕府軍を壊滅させる準備を行っているらしい。
 その鳥取城は、有名な『鳥取城餓え殺し』が行われた場所。恨みの念が強く、強く残っている場。――その場に、近隣住民を集め。彼等を閉じ込め飢え死にさせることで、奥羽の戦いで使用した『水晶屍人』の十倍以上の戦闘力を発揮させることが出来るらしい。彼等は、悲惨な最期を迎えた怨霊を利用して生み出された存在だから。
「そんな敵が沢山現れてしまったら、山陰道を通る人々全てを……殺しても、余るほどの戦力になってしまいます」
 殺す――その言葉はあまりにも苦しくて、少し戸惑いながら口にする少女。
 気持ちを整えるように一つ息を吐くと。すぐに真剣な眼差しを猟兵へ向け口を開く。
「皆さんを、人々が水晶屍人に襲われる現場までお送りします。村の入り口にあたる開けた場所なので、特に戦闘に支障は無いはずです」
 戦いが起これば、人々は逃げ出すだろう。その為、真っ先に動き戦闘を行えば問題は無い。いくら強化されているとは言え、猟兵が集えば対処出来ない相手では無い筈だ。
 だから――出来る限り、一般人は無傷で終えられるようにと。祈りを込めるようにラナは言葉を添えた。勿論、それは今回の戦争に必須の事柄では無いけれど。

「彼等は、悲惨な最期を遂げた人々の怨霊です。再びこの世に呼び出されて、操られるように戦いを強いられる事は」
 ――生きていた時の彼等は、どう思うのでしょうか。
 伏せた瞳に微かに雫を纏わせ、少女は呟く。
 少女の問いに答えはない。ただ――悲惨な未来を防ぐ為に。屍を倒すのが、猟兵達の行うべき任務だから。


公塚杏
 こんにちは、公塚杏(きみづか・あんず)です。
 『サムライエンパイア』での戦争シナリオをお届け致します。

●敵
 水晶屍人が10体程。お1人につき1~2体を相手すると考えて頂ければ。
 割と強敵ですので、その辺りを意識して頂ければ。
 技能に関しては、どのように扱うか、どのような想いで扱うか等の補足が無い限りはプラス判定致しません。

 周囲の一般人は自身で逃げるので、特に何かすることは必須ではありません。
 ですが心情を掛けて頂ければ、出来る限り採用させて頂きます。

●シナリオフレームについて
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●その他
 ・戦闘依頼ですが、心情多めだと採用しやすいです。
 ・同伴者がいる場合、プレイング内に【お相手の名前とID】を。グループの場合は【グループ名】をそれぞれお書きください。記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。
 ・今回はシナリオに成功に必要な最低人数~余力の範囲という、少人数での運営の予定です。ご了承下さい。
 ・受付はOP公開時から。締め切りの連絡は、マスターページにて行います。

 以上。
 皆様のご参加、心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『水晶屍人』

POW   :    屍人爪牙
【牙での噛みつきや鋭い爪の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    屍人乱撃
【簡易な武器や農具を使った振り回し攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    水晶閃光
【肩の水晶】の霊を召喚する。これは【眩い閃光】や【視界を奪うこと】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

冴島・類
何処も彼処も阿鼻叫喚と化す
それが戦だとしても
晴明のやりようは度が過ぎる

させない
此処を地獄には

村に着き次第、村人達へは
落ち着いて
家族や近所の人と助け合い避難を、と
声かけを行い
屍人は此方がと告げ駆ける

発見次第、最も村へ近付いているものへ
破魔の力込めた薙ぎ払いで
武器持つ手を狙い落とさせたい

負傷しようと構わず来るのは
既に知っているので
向かって来るだろう向かって来るだろう爪と牙は
見切りと、瓜江用いた陽動のフェイントで
致命傷逸らし懐に飛び込み
二回攻撃にて首をつき、落とす

負傷で血が流れれば
その血で相棒の封印解き
風刃で水晶砕き、倒しきりたい

これでしか解放できないなら
出来るだけ、早く

もう、操られないで良い
お眠り




 どこもかしこも阿鼻叫喚と化す――それが戦だとは、分かっている。
 けれど、死した人を怨霊として呼び出し。罪も無い人を飢えさせる安倍晴明のやりようは度が過ぎると。そう冴島・類(公孫樹・f13398)は想うと、眼前から迫ってくる既にその生を終えた存在を見て瞳を細める。
「させない」
 ――此処を地獄には。
 紡がれる言葉は、決意の証。
 その言葉は異変に気付き、悲鳴を上げる人々の声にかき消されてしまう。けれど、それで良い。迫り来る敵の姿に背を向け、振り返ると類はすぐ傍で恐怖に身体を震わせる人に向け、口を開く。
「落ち着いて。家族や近所の人と助け合い避難を」
 腰に携えた刀を手にすれば、銀杏色の組紐が揺れ動く。
 ――屍人は此方が。
 その一言を零した後。すうっと、ひとつ息を吸い。類は真っ直ぐ鮮やかな緑の瞳を敵へと向け距離を詰めた。狙うは、何の罪も無い村人から一番近い存在。
 眩い水晶の煌きが、類の視界を奪うよう。けれど彼は迷うことも、足を止めることも無く。真っ直ぐに、その朽ちた身体へと駆け寄ると。その短い刀を農具を持つ手に狙いを定め勢いよく振るう。
 雄雄しいその身体に刃が食い込み、確かに相手へとダメージを与える。けれど朽ちた身体では痛みは感じないのか、敵はクワを握る手を緩めることは無い。
 低い唸り声を上げると、敵を認識して本能のまま空いた手を勢いよく振るった。類の腕を抉ろうと、強い意思を持ったその一振りを捉えると。素早く彼は距離を置くように後ろへと跳躍する。――その拍子に、突き刺さっていた類の刃が敵の身から抜けた。
 相手は、負傷しようとも構わず向かってくる。
 それは十分分かっていたから、類は臆する事無く敵の動きを見極め、軽やかに戦場を駆ける。からくり人形を赤い糸で操り、短刀の刃を光に煌かせ。距離をはかり、敵の懐へと飛び込むと――迷い無く、刃を突き立てる。
 それは敵から受けた傷から零れる、血液を用い殺傷力を増した一撃。
 もう彼等は、この手段でしか解放出来ないことは重々承知。だからせめて、出来るだけ早く。そう願うのは、類の優しさだろうか。
 深く、深く突き刺さるその刃。手に伝わるのは、確かに人を貫く感覚で。
「もう、操られないで良い」
 ――お眠り。
 近い距離で。光を宿さぬその瞳を見つめ。静かに――類は最期の言葉を述べた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白波・柾
……悲惨な最期を終えてなお、さらに悲惨な渦中へ投げ出されることを、
かれらが知って……なお意志があるならば、嘆き絶望するほかないだろう
そして、それこそが安倍晴明の狙うところなのかもしれないな
―――少しでも、一人でも。安らかに逝けるように、この力を振るおう
いざ尋常に―――戦おう

可能ならば他の猟兵と連携をとりたい
敵が一般人を狙うならば「殺気」を放ちこちらに「おびき寄せ」て意識を向けさせてから、
「傷口をえぐる」「鎧無視攻撃」「鎧砕き」「なぎ払い」を併用した【正剣一閃】で攻撃する

攻撃を受けそうならば「オーラ防御」「激痛耐性」で耐え
「カウンター」による「咄嗟の一撃」の「なぎ払い」で反撃を行いたい




 眼前から攻めてくるのは、かつて悲惨な最期を遂げた人々の怨霊。
 そんな彼等が、悲惨な渦中へ投げ出されること。それを彼等が知って、尚意思があったのならば――嘆き、絶望するほか無いだろうと。白波・柾(スターブレイカー・f05809)は輝く灯りの瞳を細めてそう思う。
 けれど、それこそがこの件の頭である安倍晴明の狙うところなのだろう。それは当然思いつくこと。だからこそ、今回の出来事が許せないのだ。
 身の丈程の大太刀の、柄を握る力を強め彼は近付いて来る敵を真っ直ぐに見据える。
 少しでも、ひとりでも。安らかに逝けるように。
「いざ尋常に―――戦おう」
 この力を振るう事を決意した彼は、金属の音を立て手にした大太刀を構えたかと思うと――鋭い眼差しで、敵を見遣る。
 その眼差しのせいか、それとも光に煌く大太刀のせいか。意識を奪われた水晶屍人は、真っ直ぐに柾目掛けて近付いてくる。
 距離が詰まるのは、予想以上に早い。朽ちた身体であろうとも、怨霊である彼等のスピードは悪くないようだ。身の丈程の武器は扱いが本来は難しいはずだが、柾にとっては一心同体。自身の手のように、慣れた様子で眼前から鋭い爪の伸びた腕を伸ばす水晶屍人目掛けて、長い刃を向ける。
 向ければ――そのまま、薙ぐだけ。
 鈍い感覚が柄を掴む柾の手に伝わる。それは、確かに敵の身を斬った証。強靭な肉体にも見えたその身体を傷つければ、一瞬だけ腕を止めるがそのまま水晶屍人は爪を柾目掛けて振るい、その牙を突き立てようと顔を近づける。
 ひらりとその鋭い攻撃を見切ると、柾はかわしつつ武器に込める力を強める。
「俺の一刀―――受けてみろ!」
 一瞬、瞳を閉じ息を整えたかと思うと――大太刀を振るい、素早い一撃を柾は放つ。
 それは目にも止まらぬ素早い一振り。経験を詰んだ者でないと、あのような武器を扱うのは難しい。そんな一撃を受けた敵は、苦しそうに呻く。
 どうか、安らかに。
 最期を遂げるその姿を見ながら、柾は心でそう想った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キトリ・フローエ
お腹が空いたらとっても寂しくて苦しいわ
それをずっと続けて命を奪うなんて冗談じゃないわ!
それに、死んでしまったいのちが生きているいのちを奪うのは、…駄目
世界も未来も、今を生きている人のためにあるの

逃げようとしている人達より前に出て、声をかけるよりも詠唱を優先
全力込めた空色の花嵐で、少しでも速く攻撃を当てられるように
水晶の眩しい光はぎゅっと目を瞑って回避…出来るかしら?
でも、ベルの花はあたしの目が見えなくてもどこまでも追いかけてみせるわ

…ちゃんと助けてあげられなくてごめんなさい
この地に積もった恨みの全てを晴らすことはきっと出来ないけれど
でも、この世界を襲う災厄は、あたし達の手で絶対に退けてみせるわ




 ――今は穏やかなこの場も、しばしの遅れで悲惨な光景が広がっていたことだろう。
 そんな未来を避ける為に、キトリ・フローエ(星導・f02354)は小さな身体で。迷う事無く最前へと飛び出ると、その口元から零れるのは魔法の詠唱。
 その詠唱は一瞬で。すぐに戦場に吹き荒れるのは、青と白の花びら。陽光を浴びて、キラキラと煌く花弁はくるりと戦場を舞ったかと思うと、襲い来る水晶屍人の身体を包み込んでいく。
 その敵の姿を見て――キトリは、煌く瞳を細めた。
 彼等が行おうとしているのは、何の罪も無い一般人の虐殺。飢えを強いて、最悪の末路を与えようとしているその計画を思えば、キトリの心に宿るのは怒気。夜空を映した翅は、彼女の感情を映すかのように微かに震えている。
 お腹が空いたら、とても寂しくて苦しい。それを続けて命を奪うなんて冗談じゃないと、強い心が彼女の小さな胸に溢れてくる。
「それに、死んでしまったいのちが生きているいのちを奪うのは、……駄目」
 その眼差しが捉えた水晶屍人は、既に命を落とした存在であることは一目瞭然で。朽ちた身体で、小さなキトリを狙うようにその手にした農具を構えたかと思うと。その肩に煌く蒼い水晶を強く、強く煌かせた。
 思わず、キトリはその瞳を瞑るけれど――微かに見えたその瞬きが、彼女の身体を動けなくする。けれど、きゅっと花纏う金細工の杖を握る手に戸惑いは無い。
 視界が通らなくとも問題は無い。
「ベルの花はあたしの目が見えなくてもどこまでも追いかけてみせるわ」
 その心に反応するように、杖が煌いたかと思えばまた戦場に吹き荒れる花弁。
 恐る恐る、アイオライトの瞳を開くと――花びらに包まれ、どこか苦悩するように唸りを上げる水晶屍人の姿が見えた。
 小さなキトリにとって、歪で大きなその存在は不気味に映るけれど。彼等の出自を考えると、恐怖よりも心に宿るのは――。
「……ちゃんと助けてあげられなくてごめんなさい」
 悲しげに瞳を伏せて、紡ぐ少女。
 もう、助けることは叶わないけれど。どうしても、その言葉を伝えたかった。
 この地に積もった恨みの全てを晴らすことは、キトリにはきっと出来ない。けれど、この世界を襲う災厄は、絶対に退けてみせるから。
 その強く優しい心を込めて、少女は花弁の嵐を生み出し続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロヌ・ノーブル
生きたいのならば、守りたいのならば強くなるしかない
弱い者に、その価値はない――けれど

そんな姿になってまで、戦うことを強いられる気持ちは推し量れない
…自分なら、死にたいとすら思うかもしれない

「――きさまらに、慈悲をあたえてやる」

サイコキネンシスを敵に放ち攻撃
その隙に予一気に距離を詰め【威厳】に満ちた太陽の剣を振るう
常に【捨て身の一撃】
向かう数多の攻撃があても自分が傷つくことは厭わない
血を啜った分だけ、この剣は力を持つのだ

腕を奪われようとも死ぬわけにはいかなかった
あれの姿をした自分を殺すのは自分だと決めている
どれだけ傷を負っても立ち上がる、そして殺す
強くならなければならない
それは揺るがぬ【覚悟】だ




 襲い来る水晶屍人の血塗られた爪の一撃をひらりとかわしながら、クロヌ・ノーブル(亡国に華綵を・f14818)は藍宝の瞳を細めた。
 眼前にてただ乱雑に暴力を振るうその存在。
 生きたいのならば、守りたいのならば強くなるしかない。弱い者に、その価値はない。けれど――そんな姿になってまで、戦うことを強いられる気持ちは推し量ることは出来ないとクロヌは想う。
 彼等は生前、悲惨な死を遂げた人々の怨霊だと言う話。
 その末路も哀れならば、再びこの世に呼び出され、何の罪も無い人々を襲うことも彼等の本意では無いのかもしれない。強い恨みを持つ程の最期を遂げたことで、むしろそれを望んでいるのかもしれない。
 それは、会話が出来ない以上理解することは出来ない。
 けれど自分に当てはめて考えたら。そのようなことを強いられたならば、死にたいとすら思うかもしれないから。
「――きさまらに、慈悲をあたえてやる」
 クロヌの口から零れる言葉。
 その言葉は、小さなその身体とは不釣合いなほど威厳に溢れていて。けれどどこか自然なのは、彼が宿る元が関係しているのだろう。
 瞳を細めると、放たれるのは見えない力。襲い来る巨体を弾くようにその力を用いれば、彼は降り注ぐ陽光に当てるかのように手にした太陽の剣を掲げる。
 月桂樹の紋章が、応えるかのように強く煌く。
 距離を詰め、刃を振るう。迷うこと無いその一撃は、何の恐れも無い鋭い一振り。
 反撃するように敵から振るわれる鋭い爪が彼の身体をかすり、その身こそ無事だが衣服に綻びを作る。朽ちた身体から放たれる攻撃にも、クロヌは躊躇などしない。自身の身から血が零れようとも、止まることは無い。
 だって――地をすすった分だけ、この剣は力を持つから。
 狙いを定め、剣を振るう。確かに敵の身を貫くが、既に屍である敵には急所にあたる部分に深く刺さっても止まることは無い。一瞬クロヌの動きが鈍ったその隙を狙うかのように、その牙を彼の腕へと突き立てる。
 ――痛みが、少年の小さな身体を襲う。
 けれど彼は止まることなど無い。何度でも立ち上がると、心に強い意思を宿している。あれの姿をした自分を殺すのは、自分だと決めているから。
「強くならなければならない」
 自身に言い聞かすように、小さな声で紡いだそれこそが。彼の揺るがぬ覚悟だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オズ・ケストナー
飢え死に
しってる、お腹がすいてすいて
栄養がたりなくて…しんじゃうって
わたしは食べなくても大丈夫だから
それがどれだけくるしくてつらいのか
想像することしかできないけど

強くするためにひどいことをするなんて、そんなの…っ

早く逃げてっ
水晶屍人と対峙しながら声をかけるよ
逃げ遅れそうな人がいたら武器受けで守る
あせらせてごめんね
わたしがくいとめるから、転ばないように気をつけて

そこからカウンターで反撃
蒸気の力で刃を押し込む
早く終わらせるからね
今度こそちゃんとねむれるように

同じ大きな獲物を扱うんだもの
軌道を予測して避けられる攻撃は避け
連続攻撃を続けているところに攻撃を叩きこむ

つらいことは繋いじゃだめ
断ち切らなきゃ




 悲惨な死のひとつである、飢え死に――。
「しってる、お腹がすいてすいて。栄養がたりなくて……しんじゃうって」
 いつもの楽しげな煌き抱く青い瞳ではなく、どこか曇った色でオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)は悲しげに言葉を零した。
 オズ自身は、食べなくても大丈夫な魔導人形。
 だからその死に方が、どれ程苦しくて辛いのか。それは想像することしか出来ない。
 けれど、想像するだけで胸がきゅっと苦しくなるようで。その感覚は、彼が心優しいからだろう。曇った眼差しで、まるで涙を浮かべたかのように瞳を輝かせ。
「強くするためにひどいことをするなんて、そんなの……っ」
 悲痛の叫びを上げるかのように、彼は言葉を零す。
 最悪の未来は起こさせない。
 そんな強い意思を宿すように、彼は金色の斧を強く握ると人と屍の間へと一気に駆けていく。振るう爪をその長い柄で受け止めて、ちらりと後ろを振り返ると。
「早く逃げてっ」
 必死な声で、紡いだ。
 わたしがくとめるから、転ばないように気をつけて。
 必死な声色に、優しさを宿し言葉を添えるオズ。
 見るからに妖しく強靭な存在に、人々は悲鳴を上げている。背後で逃げる気配を感じれば、どこかほっとしたようにオズは笑った。
 巻き込まれる人が居なければ、目の前の存在と対峙することに迷いなど無い。怨霊として、この地に呼ばれた彼を――終焉へと導くことに。
 柄で受け止めた爪を弾くように武器を振るえば、甲高い金属音が戦場に響く。軽やかに跳躍し、ひらりとベストの裾を宙に舞わせオズは再び距離を取ると。握る斧に蒸気の力を宿し、煙を上げながら再びその距離を詰めた。
 大きな瞳で、真っ直ぐに見据えるのは既に朽ち果てた身体。
 水晶が不気味に煌き、血塗られた身体を迷い無く動かし、光を宿さぬ白い瞳はオズを見つめ返しクワを構える。
 縮まる距離。振り下ろされた農具を軽やかに避けると、オズは蒸気を吹き荒らしながらその斧を力強く振り下ろす。その身を刃が喰らえば、噴出す蒸気が更なる喰いこみを作る為に強く強く吹き荒れる。
「早く終わらせるからね、今度こそちゃんとねむれるように」
 災魔である怨霊となった彼等を、救うことなど出来ないから。
 だからせめて、そのひと時が一瞬であるように。怨霊として存在する時間も、辛く苦しい痛みの時間も。
 同じ長物を扱う者として、相手の軌道を読むことは容易いこと。相手は農民のようで、クワの扱いには長けているけれど戦闘としての動きは素人も同然。
 だからオズは血の流れぬその身を庇いながら、迷う事無く巨大な刃を振り下ろす。
 つらいことは繋いじゃだめ。断ち切らなきゃ――。
 その想いを叶えるように、金色の斧の刃がキラリと煌いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
――全く、厭になるな
彼等の『嘗て』にも、僕は思い馳せてしまう

けれど。思い馳せても、手は届きはしない
或いは、の想像は潔く捨てよう
そうして、唯ひとつを、想像しよう
望まぬ物語の続きを終わらせる、剣の姿を

《ダッシュ/先制攻撃》で、
数を減らすべく一体を先に集中攻撃
手足を切り付け《部位破壊》を狙い、
敵の攻撃手段を封じ/行動を妨害する
屍人同士の距離が近ければ、
剣を大きく振るい薙ぐ様に《範囲攻撃》
遠くとも隙有らば《属性攻撃》で氷を放ち、
《時間稼ぎ》を試みる

攻撃は《見切り/第六感》で避け、
避けられぬ物は薙いで《カウンター》を

鎮魂を紡ぐのは苦手なんだ
だから、声が震えても赦して欲しいな
――ああ。どうか、静かな眠りを




 ――全く、厭になるな。
 肩から映える煌く巨大な水晶。朽ちた身体はすっかり変色し、真白の瞳は透明度など無い濁った死したその瞳。
 彼等の『かつて』に思いを馳せて、ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は笑みのまま溜息を零した。
 けれど、想いを馳せても手は届かない。或いは、の想像を潔く捨てようと、彼は静かに首を振った。そうして、唯ひとつを、想像しよう。
 常にポケットに入れられた両の手を外に出せば、夏の空気を孕んだ風がその手を撫でる。何も無いその空間で、まるで物語の頁を捲るかのように。ライラックが手をゆるく動かすと、そこには剣が現れた。
 それは、彼の物語から創造された無敵の怪物をも貫く童話の剣。
 敵は迷い無くこちらへと向かってくる。その1体を鮮やかなライラックの眼差しで捉えると、彼は迷うこと無く距離を詰める。
 素早い動きで近付けば、彼の纏う長い外套がふわりと和の世界に踊るよう。帽子が落ちないようにと剣を持たぬ手で押さえ、長い爪を振り下ろそうと構える水晶屍人に向け創造の剣を振り下ろす。
 狙うは、強大な力を持つ爪と武器を操るその腕。
 ひとつでも封じることが出来れば、多大な戦力を削ることが出来るだろうから。
 その剣から繰り出される力は相当のもの。創造で作られた剣は、強力だがどこか危うさを抱いている。彼の、思い描く強さに揺らぎが生じればその形が正しい姿を取れなくなるという。――けれど、想像上の友人を見たままに執筆続けるライラックには、そのような迷いは無い。
 むしろ斬りつけるその剣は、攻撃を振るうごとにますます鋭さを増しているよう。素早く動き、行動を阻害するように立ち回る彼に敵は翻弄されるかのように爪を振るう。 ひらりとその攻撃を避けながら、ライラックは辺りを見回した。
 辺りに居る水晶屍人は、他の猟兵が押さえている。けれど押さえきれず、向かってくる対象が居ることに気付くと――ライラックが剣で宙を切るのとほぼ同時、夏空に生まれるのは氷の欠片。キラキラと光を浴びて煌くその欠片は鋭さを宿し、彼の剣の動きに合わせ遠くで唸る屍へと真っ直ぐに飛んでいく。
「鎮魂を紡ぐのは苦手なんだ。だから、声が震えても赦して欲しいな」
 静かに零れる声はどこか物語を読み聞かせるようで。
 死を忘れてしまった彼等に、せめてもの手向けの言葉を送るように。
 ――ああ。どうか、静かな眠りを。
 鋭い一閃の後、瞳を伏せてライラックが紡げば。どしゃりと倒れる屍の姿があった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴木・蜜
無辜の人々を蹂躙するだけでなく
悲惨な最期を遂げた彼らの眠りを妨げるとは

死を冒涜するような行為
これ以上許すわけにはいかない
骸も残さず還しましょう

体内毒を凝縮
身体を液状化し影に紛れる形で潜伏
目立たなさを活かし屍人の背後へ

屍人の注意が逸れた瞬間
攻撃力重視の『毒血』
融けた毒腕で包み込み
まず足を融かし落とす

裂かれたり噛まれたりするかもしれませんが構いません
敢えて躱さず攻撃を受け
喰われた肉体さえも利用し
捨て身の『毒血』

生憎私は液体でして
はらわたから全て融かしましょう

たとえ化け物と罵られようと
未だ救えるものたちを見捨てたくはない
私は手を伸ばし続けたい

だから此処で貴方がたに
人々の命を奪わせたりはしない、絶対に




 ――眼前に広がるのは、穏やかな生活を送っていた人々が異変に声を上げる姿。
 そして彼等を狙うように、朽ちた身体で迷い無く歩むのは水晶を纏う屍。
 生を持ち、今を生きる者。生を失いつつも、再び亡き身体を動かす者。正反対のその姿を見て、冴木・蜜(天賦の薬・f15222)はひとつ息を零した。
 無辜の人々を蹂躙するだけでなく、悲惨な最期を遂げた人々の眠りを妨げる。そんな今回の敵の意志を考えると、それは死を冒涜するような行為で。これ以上許すわけにはいかないと、強い心がタールである彼に宿る。
「骸も残さず還しましょう」
 その強い意思を言葉にして、蜜はその身を影に紛れさせると真っ直ぐに一般人を狙うべく歩む水晶屍人の背後へと回った。
 白衣を纏う彼の手から零れるのは、真逆の黒。どろりと零れるその液体を用い、蜜は目の前の水晶屍人の足を包み込む。強い威力を秘めたその液体は、むき出しになったすっかり変色した朽ちた脚を絡めて行く。
 身動きが取れなくなり、やっと事態に気付いたのか。水晶の骸は無理に動こうとするのを止め、すぐ傍で毒を生み出す蜜を認識する。
 敵と蜜の距離は、近い。この距離ならば彼が毒を用いれるのと同じく、敵だって蜜に触れ、その鋭い牙を突き立てることが可能なのは必然。
 戸惑い無く、まるで本能のように。蜜の首筋へと牙を立てれば――鮮血が零れるはずの彼の首元から零れるのは、黒い液体だった。
 蜜の身体に満ちるのは、毒。 
 その毒の身を喰らう彼等は屍故に、効果はないのか。それとも、それが表面に見えないだけなのか。それは分からないけれど、蜜はさほど苦しそうにも、驚いたようにも見えない。むしろこれを望んでいたかのように、口元から毒を零しつつ瞳を細める。
「生憎私は液体でして。はらわたから全て融かしましょう」
 話せなくとも、こちらからの言葉は通じるのだろうか? それは分からないけれど、その朽ちた大きな身体が蜜の毒で包まれていけば。水晶屍人はどこか苦しげな呻き声を上げている。その毒を払うかのように、手にした農具を振り回している。
 それは生前は普通の農民であったことを表すかのようで――けれど蜜は怯む事無く、ただただ敵を討つ為に自身の身を用いる。
 たとえ化け物と罵られようと。未だ救える者達を見捨てたくは無い。
(「私は手を伸ばし続けたい」)
 それは蜜が、その身に宿した力を不本意に用いられた故に抱く強い想いなのだろうか? 今度こそは、この毒の手でも人を救いたいと。人外が強く想うことは、決して悪いことでは無いはず。
 だから蜜は、眼鏡の奥の虚ろな瞳に。どこか強い意思を宿して口を開く。
「だから此処で貴方がたに。人々の命を奪わせたりはしない、絶対に」
 彼の言葉に応えるように、ぽたりと零れる毒は。しっかりと、朽ちた身を侵した。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月16日


挿絵イラスト