エンパイアウォー⑧~飢渇
●地獄から、地獄へ
鳥取城付近、とある農村。
其処はのどかで農作業が盛んな場所だった……つい、先程までは。
「はっ、はぁ……!」
何処に向かっているのかも、今の女性には分からなかった。
いや、女性だけではないだろう。近くで同様に駆ける者達もそうだ。
……走る、走る、走る。
あの水晶の化物がいない場所へ、ただひたすらに走るしかない。
食らって、食らわれてを繰り返した成れの果ての様な。
……無謀にも立ち向かった男達は食われた。
逃げ遅れた者も居た気がするが、きっと同じ様に食い散らかされてしまった筈だ。
嗚呼、恐ろしい!恐怖で足が竦んでもおかしくない。
其れでも動くのは生きたいという本能か、胸に抱く子を守らねばという親心か。
早く、早く、早く――ッ!!!
同じ化物同士でも喰らい合っている程、奴らは飢え狂っている。
逃げた先もまた地獄と知らず、村人達は駆け続ける。
意図せず向かう先は、鳥取城。
●望まぬ共喰い
「……サムライエンパイアで戦争が起こっているのは、皆知ってるわよね」
ミラ・パーチェ(夢追い人・f09057)は静かに、呟く。
普段の様子とは明らかに違う真剣な様子に、集った猟兵達も口元を引き締めた。
魔軍将の軍勢、山陰道を侵攻する幕府軍を守る為。
つまり、今回猟兵達が相手取る敵は――。
「陰陽師『安倍晴明』が造り出した、水晶屍人の強化型十体。急いで撃破してほしいの」
急ぐ理由は幕府軍の為でもあるが、其れだけではない。
強化型『水晶屍人』量産の為、近隣の村を襲撃。
鳥取城へと誘き寄せて、飢え死にさせようとしているからだ。
……鳥取城の怨霊、飢餓によって死に絶えた村人。
其れらは素材となり、次の強化型『水晶屍人』を生む。
しかし――今ならばまだ、間に合う。
既に犠牲者は出てしまったが、救える命がある。
「予知で視た時、赤ちゃんもいたの。……見過ごせない、見過ごしたくないの」
自分は行けないから、猟兵達の力を借りるしかない。
歯痒くても今は、役目を果たさなければと……ミラは話を続けようとする。
「今回の敵は数が少ないけれど、十体でも互角に渡り合えるみたい」
知性が無く、本能のままに動く事は幸運だったかもしれない。
元が農民などの一般人だが、其の一撃一撃が強力だ。
持久戦を挑むよりも、短期決戦を狙う事が出来れば理想だろう。
「……貴方達に神様の御加護がありますように。お願い、無事に帰ってきてね」
自身の頼みを聞き届けてくれた者達を、ミラは送り出す。
せめて、と……猟兵達や残る村人達が無事である事を強く、祈りながら。
ろここ。
●御挨拶
皆様、お世話になっております。
もしくは初めまして、駆け出しマスターの『ろここ。』です。
二十一本目のシナリオは今回も戦争シナリオとなります。心情寄りの戦闘メイン。
戦争シナリオの為、一章のみでシナリオは完結となりますので御注意下さい。
飢え死にの末に、亡骸を弄ばれた者達が十体。
そして、生きる者達に同じ末路を辿らせない様に……彼らに安息を。
●補足
今回は短期間募集、少人数採用を試みさせて頂ければと思います。
プレイング多数の場合、誠に申し訳御座いませんが不採用とさせて頂く事もあります。
基本はプレイング内容次第、其れでも絞り切れない場合はダイスで決定致します。
受付期間はOPが承認され次第、お知らせ致します。
お相手がいる際にはお名前とIDを。
グループ参加の場合はグループ名をプレイングの先頭に記載をお願い致します。
迷子防止の為、御協力をお願い申し上げます。
それでは、皆様のプレイングをミラ共々、お待ちしております。
第1章 集団戦
『水晶屍人』
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POW : 屍人爪牙
【牙での噛みつきや鋭い爪の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD : 屍人乱撃
【簡易な武器や農具を使った振り回し攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 水晶閃光
【肩の水晶】の霊を召喚する。これは【眩い閃光】や【視界を奪うこと】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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ヴィクティム・ウィンターミュート
──やらせるかよ
クソッタレ晴明の企み通りにはさせねえ
敵も殺して、一般人も守る
ヘビーなオーダーだな?ま、問題無い
セット『VenomDancer』
パンピーどものケツを追いかけ回してんじゃねえよ、屍人野郎
俺だけを見ろ、俺にだけ殺意を向けろ
道化と一緒に踊ってくれや──死ぬまでな
屍人のヘイトを一手に引き受けながら、一般人がいない方向へ【おびき寄せ】、【ダッシュ】【ジャンプ】【早業】【フェイント】で変幻自在の高速機動で逃げ回り、鈍化と猛毒のパルスを乱打
俺に付き合えば、それだけ毒が回り、弱体化し続ける
だが俺を無視することは出来ない
…ハッ、一般人守る為に、テメェの命を削るか
まぁ、勝つ為なら…やるさ
いくらでもな
●永久飢餓、終刻 第一節
飢えて、餓えて、渇きが止まらない。
誰も助けてくれなかった、誰も食い物や飲み水をくれなかった。
……今もだ。今も飢えて、辛くて。
鳥取城に追い込め、そんな命令が水晶屍人の頭の中を巡るが。
目の前の餌がホシイ。ホシイ、クワセロ。
化物共が村人達に手を伸ばした――其の瞬間、だった。
「パンピーどものケツを追いかけ回してんじゃねえよ」
――カニバリズムのターンは終わりだ。
己を超一流の端役と定義した、牙を隠す道化は此処に。
ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)は村人達と水晶屍人の群れの間に割って入り、即座に『何か』を敵へと放つ。
怨念に、渇欲に何かが、強制的に混ざり合う。
「俺だけを見ろ、俺にだけ殺意を向けろ」
……憎い。憎い、恨めしい、怨めしいッ!!!
屍人の視線、そして水晶に映し出されるのはヴィクティムのみ。
グリモア猟兵から説明を受けた時には、ヘビーなオーダーだと感じたが……問題無い。彼にはもう、勝ち筋が視えている。
クソッタレ晴明の企み通り?――やらせるかよ。
「――道化と一緒に踊ってくれや」
VenomDancerと化物のダンス、どちらかが死ぬまで終わらない。
……そう、長く付き合わせるつもりなど更々ないが。
ヴィクティムは人々から、鳥取城から離れる様に地を駆ける。
屍人達は命令も忘れ、農民達を無視して憎悪の対象を追い始めていて。
全て引き受ける事は難しかったが――残りは他に任せても問題ないだろう。
一般人に寄り添う役目も然り。彼はまず、目の前の二体を仕留める事に決めた。
「目を離したらブスリといくぜ――あぁ、いや」
内側で軋むような音、生命が壊れ始める音が聞こえる。
積み重ねた末に明確に聞こえた其れは、高く跳躍した直後に発生。
……ヴィクティムはニヤリと笑った。
鈍化と猛毒のパルスは充分に打ち終えている。
屍人達は気付かず、止められない連続攻撃を空へ放つが……嗚呼、そんなに激しく踊ってはいけない。道化と踊り狂った、其の先は――。
「もう、遅かったみたいだな」
――屍人二体が、不意に動きを止める。
得物を放棄、両手で首を押さえる様子は渇きからではない。
ぶくり、口の端から泡が溢れる。獣じみた呻き声が上がる。
死して尚残る生への執着が、暴食への渇欲を凌駕する瞬間……声が、消えた。
ヴィクティムにとって、此の勝利の代償は決して軽いものではなかっただろうが。
「まぁ、勝つ為ならやるさ。いくらでもな」
華々しい主役がする様な、スマートな勝ち方よりも。
……多少リスキーで命懸けの方が、端役(おれ)らしい。
大成功
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グラナト・ラガルティハ
飢えとは苦しいものだ。死してなおそれに囚われたままに戦わされることになるとは悲惨だな…止めねばさらなる犠牲も出る。
ならば止めるしかあるまい。
【高速詠唱】でUC【柘榴焔】に【破魔】を乗せ【属性攻撃】炎で火力を上げて焼き尽くす。
屍人を倒しきれなかった場合は神銃に【破魔】【属性攻撃】炎を乗せて攻撃。
距離が近付いたら武器を蠍の剣に変え同じく【破魔】と【属性攻撃】炎で攻撃。
敵攻撃は【戦闘知識】で対処。
この炎が送り火になればいいが…。
…死者を冒涜するのも大概にしろ。
アドリブ連携歓迎。
●永久飢餓、終刻 第二節
憎悪に駆られた屍人の中には、先の猟兵に追い付けずに逸れた者も居る。
木々の少ない平地で彷徨う、此の一体の様に。
死して尚、利用される……元は人間だったオブリビオン。
射抜く様な金の双眸、其れに向ける視線にグラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)が籠める感情はどんなものだろう。
人々に愛されてきた兄弟。一方、戦の時だけ祭り上げられた己。
正直な所、彼は人間にはあまり良い印象を持たない。
だが……其れを踏まえても、水晶屍人の姿はあまりにも悲惨過ぎた。
「……飢えとは苦しいものだ」
心身共に衰弱した上で、其れでも生きようと隣人を貪って。
漸く解放されたと思えば、未だに囚われ続けている。
――飢えに、渇きに、何よりも生者への憎悪に。
「(これは、あまりにも……惨い)」
大戦の為に飢餓に囚われたまま、戦わされる姿にグラナトは思う。
止めねば、さらなる犠牲も出てしまう。ならば――止めるしかあるまい。
……戦神の焔を以って、終わらせなければならない。
「征くぞ」
グラナトの言葉に、戦意に本能で危険を察したのか。
唸り声を上げながら水晶屍人が召喚するのは、水晶の霊。
同時に水晶の輝きが増して行く。目が眩む様な眩い光、そして霊自身が視界を遮ろうと。しかし――其れよりも、彼の詠唱が速かった。
熱源の数は四十以上、まるで一つの果実から溢れ出す様に現れて。
其の名の通り、柘榴の様にも見えるだろう。
……普段よりも激しく燃え盛るのは、破魔の力を宿すから?
いいや、其れだけではない。彼の静かな怒り、も理由の一つだろうか。
――死者を冒涜するのも大概にしろ、と。
「柘榴が如く、燃えよ」
一つ一つが強力な神焔が轟々と燃え盛り、屍人に迫る。
眩い光、水晶の霊による妨害。諸共に焼き尽くさんとする勢いのまま。
グラナトへ近付こうとする事さえ出来ずに、屍人の全身が焔に包まれる。
其れら全てが当たらずとも、敵の動きは止められた。後は――。
「この炎が、送り火になればいいが……」
片手で神銃を構えた瞬間、紺碧の指輪が視界の端に映る。
――大丈夫だって、グラナトさん!
そんな聞き慣れた声が背を押してくれた、気がして。彼は迷わず引鉄を引く。
更に勢いを増した浄焔は屍人を焼き続けて。
……やがて、共に消えて行った。
大成功
🔵🔵🔵
華折・黒羽
襲われる村
逃げ惑う人々
視界に飛び込んたその光景は
いつかの後悔の記憶を呼び起こさせる
炎に包まれる村
立ち向かうも斬り捨てられていく人々
家族だったあの人達も…同様に
知らず柄を握り締める力は強くなる
もう逃げるしか出来ない子供じゃない
俺は守る為に、強くなったんだ
獣の脚で地を蹴り
村人へ襲い掛かる敵との間に飛び込めば
武器受けで防いで薙ぎ払う
逃げる様声をかけてから
改めて対峙
戦場を駆ける中で出来た傷から流れる血が
刀身へと伝えばどくりと脈打ち
屠は捕食体へと覚醒する
…もう誰も死なせない
──啜り喰らえ、屠
広げた両翼は風を捉えて
振り抜く刃は堕ちた命を啜る
後悔を背に渇望を胸に進む先は強さを求め
敵を屠る為、駆け続ける
●永久飢餓、終刻 第三節
襲撃により、荒廃した村を見た。
無残に貪られた挙句、放り投げられた亡骸を見た。
そして……怯え惑う村人を見て、華折・黒羽(掬折・f10471)の脳裏にいつかの記憶が過ぎる。否が応にも、呼び起こされてしまう。
あかい、あかい、消えない炎。
身に余る程の幸いが、沢山零れて落ちてゆく。
零さぬ様にと立ち向かうも虚しく、するりするりと指の隙間から零れてしまう。
家族だった人々が、炎とは別の赤を噴き出して、嗚呼――。
「(――もう、逃げるだけしか出来ない子供じゃない)」
黒剣の柄を握り締める力は、強く。
弱い己を捨て、あの子に恥じぬ強い男になると誓ったんだと。
……華折は獣の足で地を蹴りつけて、駆ける。
命令を思い出した様に、再び村人達の所へ戻ろうとする水晶屍人共の元へ向かうのだ。
此れ以上、先へと進ませない為にも。此の二体を必ず、仕留める。
「もう、誰も死なせない」
鋭い眼差しに宿す決意、其れは屍人共には敵意と映ったのか。
敵の異形の牙、爪が素早く……しかし、連携など考えていない様で。
闇雲に振るわれる攻撃に対して、華折は冷静に武器で受け止めては対処。
……金属を爪で引っ掻く音に僅かに眉を顰めるが、其れだけだ。己の方が、強い。
黒剣を持つ腕に一筋の裂傷を作らせたのも、彼の狙い通りだった。
「……空腹、なんだろう?」
屍人を薙ぎ払い、距離を取った直後――華折がぽつりと呟いた。
腕から流れる赤色が、つぅ……と。やがて、黒剣の刀身に届く。
どくり、脈打つ音。黒剣が、屠が、目を覚ます。
捕食体へと覚醒した屠は一際強く、再び脈打っていた。
……ああ、そうだ。まだまだ足りない。宿主へそう、伝えようと。
「構わない――啜り喰らえ、屠」
華折の両翼が広がる音。
手にした刃が振り抜かれて、風を切る音。
其処に混ざるのは、堕ちた命を啜る音だった。ぐちゅり、と。余さず啜る。
異形と化した者達の、二度目の命が終わる瞬間を見届けて……彼は屠を手に背を向ける。
更なる強さを手にする為に、敵を求めて駆けるのだ。
あの日の後悔に圧し潰されそうになりながら。
強くなりたい、俺は強くならなければいけないんだ、と。
其の為に……渇望塗れの決意を胸に抱えたまま、彼は戦い続ける。
大成功
🔵🔵🔵
マナセ・ブランチフラワー
戦争には、様々な脅威がありますが……これを知って見逃しては、聖者の名が廃りましょう
もし屍人より先に村人を見つけたら、ここは僕達猟兵が引き受けることと、鳥取城方面には近づかないよう言っておきます
屍人を見つけたら、【全力魔法】の【エレメンタル・ファンタジア】。炎の嵐をぶつけてやりましょう
逃げも隠れもしません。取り逃すことのないよう、敢えて真っ向から挑むことで、注意を確実に引き付けたいです
……彼らも元は、飢えた人々だったというなら。僕の体の少しくらい、持っていかれても構いませんから
その代わりにここでおしまいです。「敵」が動かなくなるまで、この炎は消しません
どうか、安らかな眠りを
(アドリブOKです)
●永久飢餓、終刻 第四節
猟兵達により、逃げ惑う村人達はまだ水晶屍人と遭遇していないが。
彼らは今もまだ、其の場に留まっていた。
今の内に離れた方がいいのではないか。
だが、村に残した者達を弔わなくていいものか。
いいや、此処から動くのは危険過ぎるのではないか。
……どうすればいいか。動けない村人達の元へ、一人の少年がやって来た。
「あ、あんたは……?」
「ここは僕達、猟兵が引き受けます。それから――」
どうやら、屍人が近付いて来たのか。
第六感が告げる方向へ視線を向けた後、彼は――マナセ・ブランチフラワー(ダンピールの聖者・f09310)は村人達へと微笑んだ。少しでも、彼らが安心出来る様にと。
「鳥取城方面には近付かないように。今、あの場所はとても危険ですから」
其れを告げた後、マナセは先程視線を向けた方角へと駆ける。
戦争には様々な脅威があるが、知った上で見逃す事は出来なかった。
困っている無辜の民を助けるのは当然だから。だって――。
「僕は、聖者ですから」
遭遇には然程、時間は掛からない。
マナセが今、対峙するのは二体の水晶屍人。周辺は幸いにも人気は無く。
敵の攻撃を防ぐ様な遮蔽物も見当たらないが、彼にとっては構わない。
最初から敢えて、真っ向勝負を挑む事で己に注意を惹き付けるつもりだったのだ。
……絶対に取り逃す事がない様に、人々の所へと向かわせない様にと。
「(せめて、彼らにも救いを)」
両手の甲に刻まれた、炎が仄かに光る。
同時に彼を中心として、凄まじい熱量を持った炎の嵐が現れる。
死して尚、天へと昇れぬ魂に終わりを。聖者として、少しでも出来る事を。
嵐が完全なものとなる前に、屍人共が接近を試みる。
……肩や腕に思い切り食らい付かれても、マナセは動じない。
彼らも元は、飢えた人々。
救いを求める人だったというのならば。
……己の身体を少し食われるくらい、構わないのだ。
死しても救いを求める者達を拒むつもりなど、マナセには無いのだろう。
其の代わりに――。
「ここで、おしまいです」
――敵と成り果ててしまった者達を逃がさない、炎は更に燃え盛る。
二体の屍人を焼き尽くそうとする勢いは、衰えを見せない。
焼けて、焼けて、灰と帰して……風にさらわれて消え逝く魂へとマナセは祈る。
「……どうか、安らかな眠りを」
其れは、聖者としてだけではなく。
マナセ自身の気持ちも込められた、祈りだったかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
灰神楽・綾
俺は血腥い殺し合いが大好きなどうしようもない奴でね
互いに殺意を向け武器を向け
血を流し生きてる心地を実感しながら絶頂の末に動かなくなる
そんな死に方が出来るなら本望だなと本気で思ってる
でも飢え死には、何ひとつ向けられず放置され
少しずつ生きてる心地を奪われて物のように死んでいく
…俺には耐えられないなそんなの
自身の身体を切りつけその血で【指定UC】発動
増強した反応速度で屍人の攻撃回避を試み
回避後の隙を突いてEmperorで攻撃
頭部・水晶などを狙い最短で倒せる方法を探る
屍人達が俺に向けるのは殺意ではなく
只動く者への望んでいない破壊本能なんだろう
なら俺が出来る事は、悪戯な殺し合いではなく
少しでも迅速な葬送
●永久飢餓、終刻 第五節
灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)という男は、血腥い殺し合いを好む。
好む、どころではない。とても、とても大好きだのだろう。
そんな自分をどうしようもない、と理解しながら。
彼は目の前の水晶屍人を眼鏡越しに見て……直ぐに、理解した。
どうやら此の相手とは、自分が望む様な殺し合いは出来そうにないな、と。
「(それに……やっぱり、俺には耐えられそうにないな)」
きっと、此の男は殺意どころか何一つ向けられずに放置され続けて。
生きている心地を実感するどころか、削ぎ落される様に少しずつ奪われて。
互いに人として相対した末の高みへ登りつめる事も無く。
……物の様にただ、心身共に壊れて動かなくなるのを待つだけの死。
嗚呼、考えれば考える程に……心から望む死に方とは全く正反対だと、灰神楽は思う。
――ならば、己に出来る事は一つだ。
「(きっと、これも殺意ではないんだろうね)」
屍人が、其れが召喚した水晶の霊が己へと向ける何か。
……殺意の様で、殺意じゃない。飢餓に狂った、破壊本能。
其れは駄目だ。其れでは殺し合いにならない、殺意の一方通行は望まない。
灰神楽がJackを手にして、掌を迷う素振りも無く笑顔のまま切り裂く。
ぱっくりと開いた傷口がEmperorに触れるのと、水晶の霊が輝くのは同時だった。
眩い光が輝いて、消える頃……屍人の眼前に彼は居ない。
「ちゃんとついてきてね……って、無理かな」
得物を振るえる間合いを取った上で、既に背面へ立っていたのだ。
重量のあるEmperorを手にしていても、灰神楽のユーベルコードは高速移動を可能とする。
敵から受けた攻撃による、傷口から溢れる血を利用する事もあるが。
……敢えて己を傷付けた理由は、少しでも迅速な葬送を行う為だろうか。
「おやすみ」
――望んでいない破壊本能に、終わりを。
水晶を砕く様に、頭部を潰す様に。最短で倒す為に。
灰神楽は槌の部分を用いて、部位を破壊する全力の殴打を仕掛ける。
破砕の一撃でも足りぬならば、斧部で胴体を縦に両断。
……本体が動かなくなった故か、いつの間にか水晶の霊は姿を消していた。
物足りなさを感じながら、灰神楽は別の方向へ歩み始める。
既に他の猟兵が倒している可能性もあるが。
もし他に見掛ける事があれば、同様に葬ろうと考えたのかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
ロカジ・ミナイ
追うモノと追われる者の間に颯爽と割って入って
やぁやぁ此処から先には行かせないよ、なんて言って
追う方をコテンパンにやっつけちゃう
とある世界じゃ、こういうのをヒーローなんて言うんだよ
いつかその赤ん坊に教えてやってよ
さぁ奥さんさっさとお逃げ
アテが無けりゃせめて隠れておいで
せっかく死んだのに、まーだ腹が減るなんて辛かろうねぇ
その体が遊び尽くされる前に壊してやろう
刀一本、正々堂々と真っ直ぐ屍人に立ち向かう
引き付けて袈裟斬り、爪を避けたらそのまま一太刀二太刀
こう見えて接近戦は苦手じゃないのよ
ましてやこんな場面だもの、剣技を見せ付けないと締まらないでしょ
誰にってんじゃないけどね
●永久飢餓、終刻 第六節
鳥取城から離れようと、村人達が移動を始めた後。
……遂に、水晶屍人の一体が彼らと再び遭遇してしまった。
先程までの恐怖が蘇るだろう、数々の悲鳴が上がり始める事だろう。
屍人は村人を鳥取城へ追い詰めようと動く――筈、だったが。
「やぁやぁ、此処から先には行かせないよ」
追う者、追われる者。
間に割って入るは、煙管を手にした妖狐の男。
長妖刀を背負って立つ、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)の姿だ。
予想外の人物が現れるのは二度目だが、村人達は再び目を丸くする。
……ふと、背後の赤子を抱く女性に視線を向けて、彼はぽつりと。
「とある世界じゃ、こういうのをヒーローなんて言うんだよ」
「ひい、ろぉ……?」
「そうそう、ヒーロー。いつか、その赤ん坊に教えてやってよ」
美しいレディに対して、ロカジは柔らかく。
此処は自分に任せて、村人達と共に逃げるか。或いは、隠れておいでと告げる。
……案ずる気持ちはあれど、他の村人達に説得される事で彼女は此の場を去って。
残されたのは己と、飢え狂う屍人のみ。
「せっかく死んだのに、まーだ腹が減るなんて辛かろうねぇ」
飢餓によって苦しみ抜いた上で死んでも尚、飢餓に囚われたまま。
死した身に処方出来る薬は無い、せめて身体を弄び尽くされる前に。
ロカジはすっと刀を抜いて、正面から立ち向かう。
……剥き出しの牙も、鋭利な爪も、彼にとって恐るるに足らず。
獣の其れにも似た唸り声と共に、振るわれる爪を刀でいなす。
「こう見えて、接近戦は苦手じゃないのよ」
再び振るわれる爪の一閃も、動きが大振りだったからか。
ひらりと避けて、ロカジは其のまま一太刀を浴びせて。
動きが鈍った所を狙って、畳み掛ける様に肩からの袈裟斬りを仕掛ける。
「ましてや、こんな場面だもの」
剣術はこどもの頃から其れなりに、もっとも上には上が居たけれど。
――折角だ、剣技を見せ付けないと締まらないでしょ。
其れは誰に?別にロカジとしては、誰にという訳では無いのだろうけれど。
名椎の約束、窈窕たる長妖刀が振るわれる度に切断されていく。
……屍人の肉も、骨も、突き刺さる様に生えている水晶も。
みんな、みんな、はんぶんこ。
遠くから覗き見る目は、誰のもの?さあ、誰だろうね。
大成功
🔵🔵🔵
ディフ・クライン
【鳥籠】で参加
逃げる人々をそのままには出来ない
二人に断って、まずは避難誘導をさせてほしい
【死せる深き森の主】を召喚し、その背に乗って救助活動
地形の利用をし、情報収集して人々を逃がすのに最適なルートを森の主の背から探して誘導するよ
走れない人が居るなら、森の主の背に乗せて
ある程度引き離し誘導が完了したら、急いで二人の下へ
ムース、全速力で頼めるかな
シーカーが居てくれるから二人とも大丈夫だと思うけれど
マレークは…怪我、しすぎてないね…?
全速で駆けて、その蹄と風の角で水晶屍人に突撃を
敵が放つ眩しさは、森の主の影に隠れてやり過ごし
オレが見えるなら、ムースに伝えられる
…彼らも被害者なんだ
君の蹄で終わらせよう
シーカー・ワンダー
【鳥籠】で参加
マレークさん(f09171)の背中にくっついて【貴方が不屈である限り】を発動。『騎乗』『グラップル』も使って絶対離れないようにし、邪竜化したマレークさんに被弾を気にせず戦ってもらいます。『戦闘知識』も活用。邪竜化の流血は『救助活動』で治療できないかな
隙があれば【平和を祈って】で敵のUCを妨害。ディフさん(f05200)合流後は力を合わせて【貴方に甘い一時を】で相手の速度を落として攻撃を補助!
「俺たちのバトルフェイズはこれからだ!ビスケット・オブ・スタグネイト!」
戦闘後はスポンジと石鹸を使って邪竜マレークさんの血を綺麗にしてみようかと。俺の汚れは帰ってお風呂入れば治るし平気平気
マレーク・グランシャール
【鳥籠】
ディフが避難誘導する間、俺は敵の前に立ち塞がる
敵の攻撃に当たれば大ダメージ必至だが俺にはシーカーという心強い仲間がいる
ならば俺の血を捧げ、ここに暴食の邪竜を顕現させよう
頼んだぞ、ディフ
シーカーよ、血で汚すことになるが‥‥振り落とされるなよ?
【邪竜降臨】で自らを片方の角が折れた暗黒の邪竜へ変えて敵に特攻
【黒華軍靴】のダッシュとジャンプ、【金月藤門】のフェイクと残像を駆使して敵を攪乱
反撃の隙を与えず敵に喰らい付く
捨て身の一撃だが今の俺はシーカーのUCの恩恵で無敵だ
土に還ることなく貶められた肉体ならば、せめて俺が喰らってやろう
猛威を振るう間、二人のことは考えない
信じているからな
●永久飢餓、終刻 終ノ節
――森の主が駆ける、召喚者と其の想いを乗せて駆ける。
襲撃を受けた村から鳥取城へと向かう事が出来て、其の上で人が通る事が可能な道はある程度限られている。故に、ディフ・クライン(灰色の雪・f05200)が生き残った村人達と合流を果たすのに然程時間は掛からなかった。
「……良かった、間に合ったかな」
「あ、あんたも……猟兵で、ひいろぉ……?」
「ヒーロー?……猟兵は正しいけれど、俺はただの人形だよ」
――君達を助けに来た、と。
ディフ加えて伝えれば、村人の表情は明るさを取り戻し始める。
道中怪我を負った者は森の主、巨大なヘラジカの背に乗せて。
……まだ少しだけ余裕がありそうだと、赤子を抱いた女性達も出来る限り、ヘラジカの背に乗ってもらう。
「そういえば……何処へ向かえばいいんだろう」
村人達曰く、鳥取城からは離れるべきだと理解した上で……村を、亡骸を野ざらしのままにしたくないと。村へ戻ろうとしていたらしい。
……死者を弔いたい、埋葬してやりたい。
ディフは村人達の気持ちを充分に理解出来た訳ではない。だからこそ、危険ではないかという思考も過ぎる――けれど、不思議なもので。
彼は同時に、村人の心を尊重したい。そんな風にも思うのだ。
「わかった。君達の村まで、オレとムースが送るよ」
此処に辿り着くまでにある程度、地形の把握等は済ませてある。
村までなら、ディフは最短ルートで向かう事が出来るだろう。
其れでも多少、時間は掛かるかもしれないが――彼らならきっと大丈夫。
無自覚の信頼が、彼の胸中にあったのかもしれない。
「(マレーク、シーカー。もう少しだけ、待っていてくれ)」
――さて、場所は変わって。
村から程近い、人気の無い森の中。
其処には木々が揺れる音、獣にも似た呻き声。それから……。
「シーカーよ、血で汚す事になるが……振り落とされるなよ?」
「大丈夫!しっかり掴まって、絶対に離れないようにしますよー!」
普段通りの、のんびりとした顔文字のまま。
シーカー・ワンダー(ファーフロムホーム・f00478)の力強い頷きに、マレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)は笑む。
既に避難誘導に動いてくれているディフも含めて、とても頼もしい仲間だと感じるからこその微笑みだろう。シーカーの小さき手が、肩をぎゅっと掴むのを認識してから――此処に暴食の邪竜を顕現させよう、と。
「――ッ!!!」
己の内側で起こる現象に、マレークは目を見開く。
急速に血が煮え滾ると思えば、其れらが急速に失われていく感覚。
代わりに……彼の身体が少しずつ変化を見せ始めた。
普段の怜悧な双眸、人間の爪、全てが鋭さを増していく。
高い背格好は一回りも大きくなったかのようで。
……次第に現れるのは巨躯の黒き邪竜。片側の角を自ら折った、暴食の権化。
先程までは肩を掴んでいたシーカーだったが、今は背に乗っている様な体勢に変わっていた。勿論、離れない様に力は篭めている。
ただ、離れないのではない。彼なりのサポート方法。
――大切な仲間が不屈である限り、守る力を授けましょう!
「行きましょう、マレークさん!」
「オオオ――ッ!!!」
鮮血のヴェールと優しい加護。
交差する様に纏う黒竜が、猛々しい咆哮を上げた。
其れは飢餓と命令に支配された屍人にさえ、畏れを抱かせる程。
爪を振るい、牙を食い込ませろ!食われる前に、食らい尽くせ!
本能が叫ぶ、だが屍人の足は竦んだ様に動かない。
……土に還ることなく、貶められた肉体ならば。
「(せめて俺が喰らってやろう)」
暴食の黒竜が翼を広げる、残像が残る程の速さで翔ぶ。
気付いた時には、まるで大砲にでも撃ち抜かれた様に……屍人の肩が抉られていた。
一体、何が起きた?簡単だ、ただ食らっただけの事。
黒竜は止まらない、高速で接近しては屍人を食らい尽くす。
今のマレークは二人の事は考えない、敢えて考えていない。
理由は一つ――仲間である二人を信じているから、に他ならない。
圧倒的な力量差、そして漸く足を動かす事が出来たからか。
屍人は黒竜とは反対方向へ、食らわれた足を引き摺りながら走る。
鳥取城へ逃げて、己を造り出した者へと情報を……などと考えられる程の知恵は無い。ただ、本能的な恐怖のままに逃げている。
――瞬間、美味しそうなビスケットが飛来する。
「逃さないですよ!俺たちのバトルフェイズは、これからだ!」
ハンマー型のぬいぐるみ、叩けばビスケットがぽんっと現れる。
其れを何枚も生み出しては、シーカーは屍人へ向けて発射、発射!更に発射!
テレビウムサイズの為か、ビスケットはやや小さい。
其の上、あくまでも菓子だ。殺傷力も無い……が、侮るなかれ。
ただでさえ動きが鈍い屍人の足が、益々遅くなっているではないか。
シーカーのユーベルコードによる効果だった。
とっても美味しいビスケット。食べてくれないなら、遅くなーれ!とイタズラのおまじない。
其れでも尚、逃げようと屍人は進む。
だが……背後から迫る黒竜よりも先に、不意に現れた黒い影に気付いた。
反射的に見上げれば、其処には……嗚呼、二度目の死が迫り来る。
「ムース、君の蹄で終わらせよう」
風纏う角を持つ、気高きヘラジカの蹄が屍人を捉える。
少し前に避難誘導を済ませたディフが、全速力で駆け付けたのだ。
……被害者である彼らの魂を、解放する為に。
ムースが屍人を力強く踏み付けて、地面を揺らした直後の事。
ディフは静かに、まるで祈る様に目を閉じた。
其れが無自覚の行動だったかは……彼自身さえも知らないけれど。
サムライエンパイアの、とある小さな村。
踏み躙られる筈だった生命を、弄ばれてしまった亡骸を。
……猟兵達は見事に救い上げてみせたのだった。
無事に戦闘を終えた後。
【鳥籠】の三人が汚れや血を拭い合っていたのは、また別の話。
大成功
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