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因幡国に流れる川、それに沿った道は古くから行商人が行き交い活気のある道だった。
しかし今日は様子がおかしい。農民達が木立のしげる土手を河口の方面へ追い立てられるように走って行くのだ。
それを追いかけているのは、元は人間の身体の一部であろう赤黒い肉塊を片手に、口からはそれを喰らったあかしとして血をぬらぬらと滴らせるまるで理性のカケラも持ち合わせていない、人形。
「「「あ゙ あ゙あ゙あ゙ あ゙あ゙」」」
水晶屍人だ。
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「人の肉は食べたことあるかな?」
グリモアベースの片隅にある作戦室の中、キル・トグ(空の語り部・f20328)がラベルの貼られていない緑色の缶詰を片手に猟兵達へ問う。
「意外と人間追い詰められれば何でも食べてしまうのさ」
鳥取城飢え殺し。かつて鳥取城を舞台に行われた秀吉の兵糧攻め、それは城に閉じ込められた兵と農民による狂気のカニバリズムを迎合した。
「魔神将阿倍晴明、鳥取城を拠点に山陰道を通る幕府軍を壊滅させんと飢え殺しの再現にて兵力の増強を図る、らしいのさ」
元々鳥取城に漂っていた怨念を利用して水晶屍人を作り出し、それを用いて鳥取城に付近の農民を追い込み飢餓にさらす事によって濃密な狂気と怨念を発生させ、また水晶屍人を生み出す。負のサイクルだ。
「今はまだ農民達を追い立てている段階だからそんなに被害は出ていないのだけど、突っ立って見ている訳にはいかないのさ、今回の仕事はこの事態の解決だね」
放っておけば、山陰道を通る幕府軍は壊滅の憂き目に合うだろう。解決方法は簡単明解、増える前に水晶屍人を殲滅する、これだけだ。
「だけど、少し困った事に材料にした怨念が強過ぎたようでね、奴ら物凄く強いみたいなのさ」
10体で猟兵1人と同じほどの強さを持ちそれが山程、因幡国に溢れかえっている。
「まあ、一人で百体とか言わずにジリジリ、コソコソ削っていこうじゃないか、ゾンビ狩りがゾンビになっちゃあ洒落にならないからね」
「さあ、用意はいいかな?お掃除の時間だ。」
キル・トグは緑色の缶詰を片手に弄びながら獣の遠吠えと共に転送の用意を始める。
「この缶詰?人類の食料問題を解決するブレイクスルーらしいよ」
と最後に付け加えて。
柄縞倉庫
こんにちは、柄縞倉庫です、精進します。
鬼畜緑を呼ばなきゃ。
というシナリオです。
フレーバーとして初めに長ったらしい文章を入れます、ご留意下さい。
以下留意事項です。
●このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。はい。
●一応の地理設定は「木立がしげる川の土手とそれに沿う街路」です、気にしなくても良いです。
●頂いたプレイングは全て採用、執筆する予定ですが参加者8人を超えると栄養ドリンクが鳥取城に捧げられるので、どうぞよろしく。
●執筆は変則となります。
●細かいことはMSページへどうぞ。
第1章 集団戦
『水晶屍人』
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POW : 屍人爪牙
【牙での噛みつきや鋭い爪の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD : 屍人乱撃
【簡易な武器や農具を使った振り回し攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 水晶閃光
【肩の水晶】の霊を召喚する。これは【眩い閃光】や【視界を奪うこと】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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通常ありえない速度で男達が押す大八車の上でイカの干物が踊る。
「アニキィ!らっきょうじゃだめだぁぁ!ニンニクじゃねぇと!」
「おまっ…食いもんは大事にしやがれぃ!鳥取城の魂が泣くぞぃ!それにあいつらぇ血吸い鬼じゃねぃ!」
彼らは半農半漁で生業を立てる海辺の集落の男衆、いつまでたっても役人が年貢の徴収に来ないことに煮えを切らし自ら鳥取城へ向かおうと大八車を押していた所に水晶屍人と出会ったのだ。
ねじり鉢巻の男衆が走る速さを上げる度に水晶屍人も同じくらい速さを上げ鳥取城へと追い立てる。前方には川に架かる巨大な木橋。
「おまえらぇ!ここが年貢の納め時でぃ!突っ走れぃ!」
「「「おう!」」」
代官の詰所まであと少し、頭領が発破をかける。
橋の半ばまで渡りきった時だろうか。バキュッ!。と音が上がり殿を務めていた若い衆が倒れこむ。
その足は木橋の床を突き破って生えた土気色の腕にしっかりと掴まれていた。
「アニキィ!助けてく…ガボっ!!」
「佐吉ィィィ!!!」
若い衆、佐吉はそのまま空いた狭い穴から無理矢理橋の下に引きずりこまれ、それからはうんともすんとも言わなかった。
「神でも仏でも鬼でもいいっ…誰か助けてくれぃぃ!!」
橋の欄干からしゃこしゃこと登ってくる水晶屍人に囲まれながら大八車は走り続け、秋口の高い空には号泣する頭領の声が響く。
火土金水・明
「まったく、趣味の悪いやり方ですね。東北地方に続いて山陰地方でも、『水晶屍人』ですか。この流れだと、島原周辺にも『水晶屍人』が出てきそうですね。」
【WIZ】で攻撃です。攻撃は、他の方に合わせて【援護射撃】にして【高速詠唱】した【破魔】の【属性攻撃】の【全力魔法】の【コキュートス・ブリザード】を【範囲攻撃】にして、『水晶屍人』達を巻き込めるようにして纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「『水晶屍人』達よ、骸の海に帰りなさい。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。
●コキュートスの息吹 side:火土金水・明(人間のウィザード・f01561)
眼下には水晶屍人の海、夏の太陽に水晶が照らされしまるで大海原の反射をその身に受ける様だ。
あまりの眩しさに目を伏せながら明は詠唱を終わらせる。
解き放たれたコキュートス・ブリザードは詠唱に込めた真言に従い通常の状態とは大きくかけ離れた表象を表す。
その力は海原を飲み込む大鯨の如く、吹き荒れる銀は邪悪な怨念を零度の監獄に封じ込める破魔の月光。
太陽の下、吹き荒れる氷嵐に凍りつく水晶の海から一匹の鯱が飛び跳ねるように屍人が踊り出し、続けて高らかに詠唱を始めていた明の喉を噛み切ろうとする。
屍人が獰猛な牙を噛み合わせた時、既に明は残像を残し後方へバックステップしていた。
「水晶屍人よ、骸の海に帰りなさい」
二度目の詠唱に成功した明は、柔らかな首筋に噛み付いているつもりで動きを止める水晶屍人を杖の先で、トン、と押して水晶の海に返し、諸共の怨念を骸の海へ返すために氷銀の矢を再び解き放つ。
地獄の嵐吹く戰場に静寂が訪れた時、水晶屍人達は跡形もなく消え去っていた。
大成功
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風薙・澪
大八車が襲われている場所の少し前方の離れたところから全力疾走、大きく跳躍し空中で銃撃と予め詠唱しておいたUC鋭氷矢の集中砲火で不意打ち気味にまずは一体を倒す
あとは大八車の進路を確保すべく先頭に立って銃撃中心に攻撃し橋を通過させきってしまうわ
進路を確保するためにはとりあえず倒さなくてもいいから橋から撃ち落とすなり蹴り落とすなりして退ける
止めは後で刺すなり他の猟兵に任せるなりするわ
でも川に落とせたやつは纏めてUC鋭氷矢で川面ごと氷付けにして足止めはしておく
初撃後
「神でも仏でももちろん鬼でもないけど、とにかく助太刀参上」
アドリブ、共闘可
ルルティア・サーゲイト
「いいえ、妾は遠慮しておくのじゃよ」
例の缶詰は置いといて範囲殲滅と言えばコレである。
携えた大鎌を中空でゆらり、と振るう。流れる動きで二度、三度と大鎌を振るう。その刃先から桜の花弁が散り、全てを魅了するように舞う。
円を描く動きから垂直に飛び上り、
「天武桜花陣ッ!」
真下に大鎌を振り下ろす。地面に突き立てた瞬間、一瞬にして桜吹雪は消え、ただ斬られたという事実のみが残る。
「本当に食べてしまったのか? ……緑は害悪じゃな。ほれ、とりあえずコレでも食っておけ」
戦闘後に兵糧丸を詰めた袋を配布するのじゃよ。コレならこの世界でも作れるからのう。
●
砂漠しかない片田舎にしてはいやに立派な呪術建築の橋が目の前に広がる。
幅三軒はあるだろうか、その橋上を大八車と男衆が水晶屍人に追われながら二人の猟兵が立つ側に向かって全力疾走してくるのが見える。
「取り敢えず突っ込んで助けるわ、あなたもくる?」
「いいえ、妾は遠慮しておくのじゃよ」
一人は走り、一人は悠然と死の橋へ向かった。
●run and shoot side:風薙・澪(ウィザードウォーリア・f17869)
全力疾走、大八車までは少し距離がある。
走りながら手に持つ散弾銃を確かめる。弾倉の重み、銃身の歪み。ポンプアクション。
射程に入っていないわけでは無いが大八車を巻き込んでしまうため、今撃つわけにはいかない。
代わりに詠唱を開始。鋭氷矢。周囲に五つの氷の矢が生み出され、射出を待つだけの状態となる。
走る道を欄干の上に移して更に接近、意外と大八車の速度は早い。視点が上がった事により、泣きわめきながら一番後ろを走っている農民に水晶屍人が組みつこうとしているのが見える。
跳躍。全力で欄干を蹴り、大八車の上に弧を描く、最高高度で一番近い屍人を標準に捉え鋭氷矢を解放。
射出された氷の矢が農夫に組みつこうとしていた一体に突き刺さり、続けて跳躍の勢いを乗せた跳び蹴りが橋の床板に水晶屍人を沈める。
『SHOOT!!』
屍人に突きつけた散弾銃【雷光】の引き金を絞りその頭部を粉砕した。
「神でも仏でも、もちろん鬼でもないけど、とにかく助太刀参上!」
「うぁあ゙あ゙ぁぁありがてぇぇぃ!」
その場で農民達が泣き崩れる。
「ちょっと!止まらないで走って!でないと…ああもうほら!」
また新しい水晶屍人が左右の欄干からひょっこり顔を出してきた。
大八車が再び走り出したのを見届け散弾銃をポンプ。進行方向に向かい右側の屍人を散弾で弾き飛ばし、左側はその顔面に回し蹴りを叩き入れ川へ突き落とす。
少しの間足を止めたせいか橋桁から登ってきた屍人達が進行方向を塞いでいる。
「私が先行するから走り続けて!」
再び散弾銃をポンプ。鋭氷矢の詠唱を開始。次に装填するシェルの重みを確認し、走る。
「なんかデケェ鎌持った鬼みてぇのが奥の方にいやがる!やべぇぞ!」
「大丈夫、あれは味方よ!」
●sakura wind side:ルルティア・サーゲイト(はかなき凶殲姫・f03155)
「でけぇ鎌とはなんじゃ、聞こえておるぞ」
ため息混じりに呟き欄干へ飛び乗り五尺はあろう大鎌、【凶鳥の翼】を片手に戦場を俯瞰する。
先行した猟兵は道を塞ぐ水晶屍人を銃で吹き飛ばしたり蹴りで川へ叩き落としたりしながら着実にこちらへ向かってくる。
時折呼び出す氷の矢は屍人を攻撃するよりも川へ落とした屍人を足止めする目的で使っているようだ。
川面へ吸い込まれる氷の矢は着弾地点から花開き、水晶屍人を呪縛する氷の花弁となっていた。
「しかし止めは刺せていないようじゃの、ならば…」
ゆらりと無造作に、だが静謐に片手で鎌を右へ払う、夏の蝉が息を潜め、一瞬の静寂。薙いだ跡には淡い桜色の軌跡が残る。
流れる動作で大鎌を返し、両手を添え左へ振り抜くと桜色の軌跡が斬り裂かれ桜の花びらが溢れ出す。
凶鳥の翼を頭上に旋回させ下段に構え、斬り上げる動きでさらに一振り。桜の花びらが吹き上がり、橋と戦場を覆い尽くす。
そして猟兵達と大八車が交差したとき、まるで菩薩がもたらしたような桜吹雪の中で、年老いた農夫が魅了されたように呟いた。
「サクラの風だ」
声を後ろに得物を掲げ、欄干から身を翻し氷の花咲く川面へと跳ぶ。
「天武桜花陣ッ!」
振り降ろした大鎌が冷たい花弁の中心に突き刺さり一瞬にして桜吹雪が収束する。
耳障りな声をあげていた水晶屍人達の首が一斉に黙りこくり、やがて、するりと地に落ちた。
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「お疲れ様じゃったの、これでも食うとよい」
ルルティア・サーゲイトが橋を渡りきり息を切らしている面々に特製兵糧丸が入った袋を渡す。
「おお!ありがてぇ年貢を食い散らかす訳にゃいかねぇからな!助かるぜ!」
農民達は嬉しそうに走り続けで空っぽの胃を満たしていく。
「…本当に食べてしまったのか?」
「……?」
なんでもないのじゃよ。と最後に彼女はお茶を濁す。
その様子を見ていた風薙・澪はそっと兵糧丸を袋に戻し、静けさを取り戻して水晶と真夏の太陽にきらめく川面を眺めたのだった。
大成功
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レナ・フォルトゥス
…ゾンビを使役する連中って、大概ろくでもない連中なのよね。
人の迷惑も試みないわけだし。
まぁ、ともかく。
今回のも同様に、安倍晴明ってのが関わっているわけで、それを止めないといけないですわね。
こうなれば、浄化するしか無いわね。
ゾンビがいると思われる領域に近づくと、まずは使い魔や精霊を呼んで周囲を確認、ゾンビがいそうならあたしのところへ報告していただければね。
目視したら、ウィザードミサイル(UC)を撃ちまくって、念には念を入れて【属性攻撃】【範囲攻撃】【全力魔法】でファイストーム(火嵐)を放って燃やし尽くすわよ。
●explode!! side: レナ・フォルトゥス(森羅万象爆裂魔人・f09846)
爆発を起こすためには、混合、圧縮、燃焼の行程が必要だった。
出発前に映像で見た光景はここに近いのだろうか、川辺の木立に立ったレナ・フォルクトゥスはエレメンタルロッドを振り炎の精霊を呼び出し、敵を探すように伝え、程なくすると炎の精霊は大気に溶け込み周囲へと散らばっていった。
混合、燃やす対象を見つけるための下準備を終え、レナはどんな爆発を起こそうか思考を圧縮していく。
火は熱い方がいい。規模も大きい方がいい。少し突っついて怒りの炎に合わせて燃やすと楽しそうだ。全て燃やし尽くして終焉の狼煙にしてやろう。なにせゾンビを使役する連中なんて人の迷惑も鑑みない、今回の阿部晴明という奴もどうせ碌な奴ではないのだろう。
思考が炎のように散らばって行きそうになり、修正する、良い爆発を起こすためには燃料の純度が大切だ。再び集中。
炎の精霊が耳元で水晶屍人の集団を見つけたと報告してくる、レナは圧縮された炎を胸に舞台へ歩む。
水晶屍人達は土手の舞台のうえで群を成しうめき声の合唱を奏でている。
その大根役者が集う不協和音の舞台へ投げ込まれる靴や空き瓶のごとく水、いや、火がさされる。
幾本ものウィザードミサイル、火の矢が飛来し屍人の乾いた身体を燃やす。少し火がついた位では水晶屍人の動きを止める事は出来ないが炎の矢は大量に降り注ぎ、辺りは火の海となった。
怒りに駆られた様に迫る火達磨の水晶屍人を見やり、胸に秘めたとっておきの炎を解放する。
「舞台から降りる時間だよ!燃え尽きな!」
パチパチと拍手の様に炎が爆ぜる音が聞こえ、屍人たちの合間に空気を送り込む一陣が吹く。
火の海の熱を喰らい炎の嵐が現れた。
一瞬、爆心に空気が吸い込まれ、次に解放された高熱の爆風は風の檻の中で乱反射を起こしながら水晶屍人を轢き飛ばし、全てを消し炭に変えていく。
ふと見上げた空には燃えカスすら舞っていなくて、阿部晴明に恐れを抱かせる狼煙には少し足りないかもしれないとレナは口端を釣り上げた。
大成功
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