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あかさらまに怪しいコンビニエンスストア

#UDCアース

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#UDCアース


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 おぞましい咆哮と共に、禍々しい雷が村を焼いていく。
 召喚された邪神を制御する事が出来なかった召喚者は、物言わぬ死体となり、地に付しているだけだ。
 このままでは、理性ある存在は、この村から完全に消えるだろう。

 残るのは、過去にそこに村があったと言う事実だけだ。


「いらっしゃいませ」
 何もないド田舎に、真新しいコンビニエンスストアが一軒だけあった。
 店員は二人しかいないし、小さなコンビニではあったが、村の人々にとっては貴重な場所だった。
 近所に住んでいる、老人がレジで煙草を買う。
「2カートンくれるか?」
 店員は無言で頷き、奥から煙草を2カートン用意する。
(愛想のない店員だなぁ)
 いつ見ても陰気な店員である。
 死んだ魚のような目に、青白い肌、禿げあがった額。
 年齢はまだ30代にも届いていないと聞いたが、その仕草は非常に億劫そうで、初老と言われてもさして驚かないくらい緩慢である。
(まぁ、こんな村に来てくれるだけでも良しとしないとなぁ)
 高齢化の進んだ村だ。
 少しでも若い者が来てくれるようにしなければならないのだから、贅沢は言っていられないのだ。
 それに、最近は女性の不審死が相次いでいる。
 外傷は無く病気でも無いのに、遺体からは内臓がごっそり無くなっていると言うおぞましい事件だ。
 この事件で、今よりも若者たちが離れてしまえば、本当にこの村は無くなってしまうかもしれない。
 実際、隣の家の若夫婦が、他の村への移住を検討していると話していた。
 薄気味の悪い事件ではあるため、止めようもないが……願わくば、明確に判明してほしいものである。
(そういえば、コンビニが出来たのも同時期だったか……)
「ありがとうございました……」
 ゆったりとした動作でお辞儀をする店員を内心では不気味に思いながらも、老人はコンビニを後にした。

 老人が去った後、店員はにやり、と不気味な笑いを浮かべる。
 老いた男は気づかなかったが、そのコンビニエンスストアには、仄かに血の匂いが充満していた。


「よ。また、会ったな。お前ら」
 グリモアベースで、ミスティ・ティヌーヴィエル(白銀の人形遣い・f00778)が、UDCアース原産のポテトのジャンフードを食べながら、軽快に話しかけてきた。
「いやー。この世界のお菓子ってマジで美味いな。ジャンクフードっつーらしいんだが、こういうのも乙だぜ。食べてみる? いっぱい買ったからよ」
 大のお菓子好きであるミスティは、このUDCアースのスナック菓子がかなり気に入ったらしい。
 丁重に断る君に、そう? とミスティは首を傾げたあと、袋の中を全部ぺろりと平らげた。
 パンパンと手についた粉を払いながら、急に真剣な表情になったミスティが、びしっと君たちを指さした。
「んじゃま、本題に入るわ! 此処に呼ばれたんで、予想はできてるだろうが、急いで収束にあたってほしい件がある。見てわかる奴は分かるだろうが、場所はUDCアース。舞台は、日本のド田舎だ。俺の知識じゃこの世界は、科学っていうのが発達しているとあったんだが、今から行くところは、ぶっちゃけ何もない。見渡す限り、山、森、畑、川しかない」
 勿論、生活に必要な最低限のパイプラインはあるため、自動車とかもあるし、電気もある。ただ、娯楽施設とか、近代的設備は殆どない。この村で唯一近代的だと感じられるのは、一軒だけあるコンビニエンスストアだ。
 緑の看板の新しいコンビニエンスストアは、二人の店員さんしかいないらしい。
「んでだ。事件なんだが、な。この村では最近、女性の不審死が多発しているんだ。外傷は無く病気でも無いんだが、遺体からは内臓がごっそり無くなっているらしい。年齢も住む場所もバラバラで、唯一共通しているのは、全員同じ痩せ薬を服用していたと言う事だけ。……まぁ、あからさまに怪しいわけだ。十中八九この薬が何かあるんだろうよ。んで、問題はこの先な。俺が見た未来では、出るぞ。邪神」
 まるで明日の天気を話しているかのような気軽さで、ミスティは言った。
 むしろ、本来はそちらが本命であり、伝えてほしい内容だったのだが、ミスティのマイペースな性格からすれば、致し方ない事かもしれない。
「想定内だろ? 普通の殺人事件に俺らが駆り出されるわけねぇんだから。お前らには、今回やせ薬の関連調査と、邪神の討伐の二つの任務があるって事だ。内臓だけ持ってくなんて普通の事件じゃねぇ。大分死んでるからな、コレがもし儀式に必要な事件なら、そろそろ復活してもおかしくはねぇだろ。復活を阻止できなかったとしても、せめて弱体化はさせてぇところだな。どっちみち倒さないと、村ごと消える。……一応、俺が見た未来では、邪神は結構な力を持ってる。日本の邪神じゃねぇだろうな。雷を纏った姿は、差し詰め龍神と言ったところか。ああ、西洋ならドラゴンかね。んで、アホな事に、召喚したは良いが、制御できずに暴走って話だ。俺の見た未来の断片では、雷で焼き尽くされた村しか見えなかった。あと、そいつ一体だけじゃねぇ。眷属だか仲間だか分かねぇが、そいつの周囲に気色の悪い化け物どもが見えた。能力は不明だが、邪神と比べればいくらかは弱ぇ。普通に考えれば、邪神の召喚前に戦う事になるだろうよ。……こういう時、未来が全部見えれば良いんだがなぁ。実際の調査も戦闘も、細かい所はお前らに任せるしかねぇんだ。悪ぃ。」
 見ることの出来る未来は、狭く断片的だ。
 ミスティは少し考える様に視線を彷徨わせた。
「……俺が見れる未来は一部に過ぎねぇ。だから、油断だけはするなよ。他にも、もしかしたら危険な事があるかもしれねぇからな」
 ミスティは現地との行き来を担当するため、戦闘に参加する事は出来ない事もあり、苦く笑って見せる。

 だが、こうして立ち止まっている間にも、この忌まわしい事件はゆっくりと始まってしまっているのだ。
 だからこそ、君たちは行かなければならない。

 ――それがたとえ、血塗られた道だったとしても。


夜来香
あけましておめでとうございます。

邪神討伐が今回の依頼になります。
疑わしい状況はオープニングで示唆させて頂きました。

1章は調査および追及、2章、3章は純戦闘となりますので、よろしくお願いします。


余談ですが、UDCのため、コンビニのイメージは、緑の看板の例のコンビニです。
(分かる人には分かるネタ)
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第1章 冒険 『友達の友達から聴いた話:痩せ薬』

POW   :    痩せ薬を売っている人を探し出して殴り込む。

SPD   :    痩せ薬の販売ルートを辿り調査する。

WIZ   :    痩せ薬に含まれているものや、服用を始めた女性を調べる。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

バジル・サラザール
そもそも痩せ薬って時点で怪しいのよね……

まずは痩せ薬を手に入れましょう。「痩せ薬の噂を聞いたんだけど……どうやって手に入るのか知ってる?」みたいな感じで、村で聞き込みをしたり、お店、といってもコンビニくらいかしら。そこのサプリメントコーナーとかで売ってないかも調べましょうか。
ついでにどこでどうやって手に入れたかとかも聞きたいわね。
手に入ったら「毒使い」の知識も用いつつ、分析をしましょう。
これのせいで内臓が無くなってるとなると普通の薬じゃなさそうだけど、頑張って調べてみるわ。

痩せたい気持ちにつけこんで、とんでもない薬を飲ませる……正直ちょっと腹立たしいわね。


アデル・タイアン
(PC口調です)
WIZで、服用を始めた女性を調べる

村だったり、若い女性に聞き込む
村で聞けば、例えばお喋り好きな女性は痩せ薬を使い始めたと漏らすかもしれない
それを聞いた近所の人から…狙う

若い女性は言うのを渋るだろうけれど、「ワタシも使いたい」と恥ずかしそうに聞く
痩せてるのに何故?と言われたら「ワタシは甘いものが大好き。でも食べるとすぐ太るから…運動も苦手」
これでどこから入手したか聞き出せればいいけれど
コンビニが怪しいかカマをかけてみよう


ミーナ・ヴァンスタイン
物騒な薬もあったものね、これ以上被害が出る前に何とかしないと

WIZを使用します。【毒使い】の知識を使い、やせ薬に含まれている物を調べます。
「さて、どんな厄介なものが仕組まれているのかしらね」

また、ミーナが成分調査中に女性たちに異変が起きないか監視の為【使い魔召喚】を行います。
服用を始めた女性が居たら使い魔たちに見張るように指示します。
「お願いね?」
もし、異常があれば他の猟兵たちにも伝えて対処に当たります。
「彼女が危ないわ。一緒に来て頂戴」

女性が危険な状態なら【生まれながらの光】やミーナの所持している【回復薬】を使用します。
「お願い、効いて頂戴」


尾守・夜野
あぁ、嫌だ。鬱だ。最悪だ…なんでこんな事件に関わっちまったんだ…UDC関係が嫌で世界跨いでの家出してたんだが、買い出しにいこうとした時に知っちまったから関わるぞ。…痩せるねぇ…この薬、怪しいな。【WIZ】判定。薬をなんとか手に入れて、そうさな。買った生レバーの間にでも挟んで見るか。もしくは血の中に薬を落として溶けるところの観察な。生きてないと駄目っていうなら近くの森の中の適当な小動物を捕まえて餌に混ぜて喰わせて経過を観察する。痩せるっていうか、多分溶かしているか、食ってるんだろ。中身。そりゃ中身が無くなれば痩せてるように見えるだろうな。って予想して動くぜ。


エン・ギフター
俺が探偵のエンだ。嘘だ。
そして助手の猫(f09059)だ。嘘だ。
ややこしい仕事は不得手だが、挑戦する事に価値がある。
そうだろハチ公。嘘は勢いで吐いた。

【SPD】
痩せ薬の販売ルートを探ってみるか
ここはあからさまに怪しいコンビニ張り込むしかねえな?
店の裏口近辺の目立たない所でスマホゲーする振りで待機
【野生の勘】も駆使して怪しい挙動してるクロっぽいの探す
あと【聞き耳】立てて目星つけたヤツの会話拾えないか試すな

助手(猫)とはスマホで情報共有

目星付けたら尾行してみるか
また別の怪しいヤツと接触するかもしらん
ちっこいヤツのが尾行得意だろ
助手よ後は任せたぞ

俺はおやつ選んだら行く
お、これ新作のパンじゃねえか


一文字・八太郎
エン殿(手渡しの明日・f06076)、なぜそのような嘘を…?
挑戦に価値があることには同意しよう
だが拙者は助手にござらんよ

【SPD】
事件発生と同時期に出来たというならば
そのコンビニは怪しいでござるな
人の出入りがある店ならば
怪しい薬を売買する誰かの隠れ蓑にもなろう

事前に【猫の毛づくろい】で身のこなしの準備を
拙者は店内を物色するするフリで表より出入りの人物を見張ろう
怪しまれぬ為にも、ここは【覚悟】を決めて堂々と店内へ
鼻も耳も活かし不審な点を見逃さぬように

スマホに連絡があれば小柄さ活かして尾行へ
棚や在庫、建物の影に隠れ移動
ルートの証拠を押さえられると良いのだが

了解し…エン殿、買い食いは後にするでござる


花菱・真紀
【SPD】
ん、とりあえず【情報収集】してみるか…まずはネットでそれらしいサイトを探してみてだな…ダイエット関連だと膨大な量になるだろうからその辺はどう絞り込むかが問題か…まずは出回りだした時期で絞るか。
薬の名前がわかるとてっとり早いんだが。
後は使用者がその関係者と連絡をとってみたようか。『効果』のあるものならSNSでの口コミもあるだろうしな。
(【コミュ力】使用)

痩せる薬ってのはいつでも人気だよな…手軽に痩せることができたらってのは俺も思わなくはないけどな。


隠月・ヨル
まぁ!せっかくのお肉を減らしてしまうだなんてもったいない!
…とは口に出さないでおくわね。

その薬について調べましょう。
「私の友達が欲しがっている」という話で販売ルートと薬そのものの入手を試みるわ。
話をする際には「私」自身が欲しいのだけどあくまでも友達の話にしている風を装いましょう。
追及された最初は交わすけど、相手が確信を持った風だったら観念した風で自分が欲しいと言うわ。
その方が真実味増すでしょう?
あまりこちらからは強引に行かないで、話し相手が踏み込む流れに話を持っていくわ。
その方が相手も気持ちがいいでしょ?
話をしている間にあらかじめ喚んでおいた【影の追跡者】でバレない程度に家探しをさせてもらうわ




「見事に別れたな」
 グリモアベースに集まった初期メンバーは、それぞれの行動を開始していた。
 今回は、見事に販売ルートの調査組と、成分及び被害者の女性の調査の二手に分かれる事になった。
 呟いた花菱・真紀(都市伝説蒐集家・f06119)は、同じ販売ルートの調査メンバーを一瞥した。
 一文字・八太郎(ハチ・f09059)、エン・ギフター(手渡しの明日・f06076)、隠月・ヨル(死霊屋敷の女主人・f10374)、そして真紀の4人がその面子だ。
「俺は、まずは情報収集をしようと思う」
 さすがに文明社会。
 ド田舎であることは間違いはなかったが、公民館の中に借りられるパソコンがあるらしくネットは通っていた。ただ、回線が貧弱すぎたため、結局はスマートフォンで調べる事になった。電波は良いとは言い難かったが、調べる程度やSNSを見る程度であれば支障はないのが幸運だった。
「なるほど、な」
 ダイエット薬が出回りだした時期を調べるためには、まずは薬の名前が必須だった。
 コミュ力のおかげで、聞き取りはスムーズだったため、薬の名前はすぐに分かったので、その後の調べも順調である。
 やはり、コンビニエンスストアが出来た時期と、薬が出回り始めた時期は一致する様子だった。しかし、SNSでの情報は反対に皆無だった。
 SNSをやる年代が居ないのが大きな要因だろう。
 若者の数が本当に少ないのである。
 若者でも、所謂都会的にSNSを駆使するタイプも本当に少ない。
 唯一あったのは、都市伝説みたいなのが数件である。
 ただ、やせ薬自体はやはり多く販売はされているらしかった。
「痩せる薬ってのはいつでも人気だよな……手軽に痩せることができたらってのは俺も思わなくはないけどな」
 同時刻、ヨルもまた聞き取りを開始していた。
(まぁ! せっかくのお肉を減らしてしまうだなんてもったいない!)
 この話を聞いた時、ヨルはそう思ったが、空気を読んで口には出さなかった。
 人間を肉と換算するのは、いささか特殊な性癖と言えよう。
「私の友達が欲しがっているのだけど……」
 理由付けはシンプルだったが、それゆえ相手に不審感はない様子だった。
 情報の届きにくい田舎であること、ネットを使用する年代が少ない事から、どうも使用する女性たちはやせ薬と事件の因果関係を予想もしていない層がいるらしい。
(それは、被害者が居なくならないわけだわ)
 ネットが普及している都会であれば、情報はSNSですぐに広まっていたのは間違いない。敵も馬鹿ではないらしい。
 ヨルが心配していた追及もなく、女性たちは気さくに色々な話をしてくれた。
 やせ薬は、コンビニエンスストアに置いてあるらしく、その女性はたまたま持ち歩いていたので、見せてもらった。
 どうも二週間ほど服用するタイプらしく、その女性は飲み始めたばかりだと言う。
 影の追跡者を利用しての家探しは必要なかった。
「ありがとう」
(コンビニエンストアでしか売っていないと言うけれど、それだと普通はこの村の人たち以外も被害者になるはずだけれど……)
 真紀とたまたま道先で会えたため、情報を交換した。
「ネットで調べてみたが、薬自体はあのコンビニエンスストアで売ってる全国規模の薬みたいで間違いない」
「そう。私は聞き取りをしてみて実際薬を見せてもらったけれど、見る限りでは不審な所は無かったわ。あと、その女性はしばらく薬を飲んでいるみたいだけれど特に問題は発生していないようよ」
 ヨルの言葉に、真紀も訝し気な表情を浮かべる。
「SNSには何件か都市伝説的なのはあったが、そこまで大きな規模の話じゃなかった。薬の存在自体が問題ならもっと広がっている筈……」
「そうなると、件のコンビニエンスストア自体が問題なのかもしれないわね」


「俺が探偵のエンだ。嘘だ」
そう、初対面で言ったエンに、八太郎が戸惑いながら突っ込んだのは、メンバーが初対面の時だった。
 八太郎を助手だと紹介したが、実際は別に助手ではない。
「ややこしい仕事は不得手だが、挑戦する事に価値がある。そうだろハチ公。嘘は勢いで吐いた」
「挑戦に価値があることには同意しよう」
 二人のやり取りは、仲間から生暖かい視線で見られたのは言うまでもない。
 残念ながら突っ込み属性は少なかったらしいが、特に衝突も起きることは無く、二人は共に調査していた。
「ここはあからさまに怪しいコンビニ張り込むしかねえな?」
 エンの言葉に、八太郎が頷く。
「事件発生と同時期に出来たというならば、そのコンビニは怪しいでござるな。人の出入りがある店ならば怪しい薬を売買する誰かの隠れ蓑にもなろう」
 色々と不自然だし、村でちらりと聞いたところ、皆が口を揃えて「ちょっと変わった店員さんだけど」と言うのも気にかかる。
 村の人の表情が引きつっていたので、あれは結構嫌がっているとみている。
 店の外で八太郎は、中に入ろうか迷う振りをして、中を覗く。
 可愛らしい容姿は無邪気に見えるのか、特に変な視線は感じない。
 それに、レジに立っている店員は、全く気にした様子もないのである。
 裏口に近い店内でスマホを弄りながら、エンは店内をぐるりと見た。
 見た感じ不審な所はない、普通のコンビニである。
 品ぞろえがあまり良くないのは、田舎だからだろうか。
 野性の感と聞き耳を使用してみたのだが、そもそも客自体がレア過ぎた。
(結構長い時間いるけど、イェーガー以外で来たの、店員以外で見た客二人だぞ)
 ちらりと店員に視線をやると、確かに不気味である。
 容姿もそうなのだが、生気が感じられないのだ。
 八太郎は、覚悟を決めて店内入る。
 客二人に不審な所はないし、購入したのは肉まんとアルコールのみの様だったため、追跡はしない。
 何より、二人の意見は一致していた。

――店員が怪しい、と。
 それに、仄かに香るこの香りは、おそらく血の匂いだ。
 聞き耳を立てていると、この店員は何事かをぶつぶつと呟いているのであるが、どうも誰かに充てての言葉の様だった。

 1時間ほど経過した頃、もう一人の店員が出勤してきた。
 こちらは、40代くらいの素朴な中年女性である。
 男の店員とは違い、普通のどこにでもいる店員に見えるし、男と違いきびきびと動き、品出しなどをやっていた。
 八太郎のメッセージに「ちっこいヤツのが尾行得意だろ。助手よ後は任せたぞ。俺はおやつ選んだら行く」と届いたのを見て、八太郎は一瞬液晶画面を見つめてため息を吐いた。
「お、これ新作のパンじゃねえか」
 聞こえた声に、「エン殿、買い食いは後にするでござる」とだけ送り返し、八太郎は男の店員へと視線をやった。
 男が奥へと入って行ったのを確認し、八太郎はそっと後をつけた。


 男の店員はコンビニエンスストアの裏手へと足を運んだ。
 手には何も持っていない。
 男はごみを捨てる場所である倉庫の後ろ側に回るようだ。
 八太郎はその後をそっとつける。
(あれは……?)
 男は倉庫の壁にそっとを手を置き、軽く3回コンコンと叩いた。
 すると、壁がゆっくりと開くではないか。
 
 おぼつかない足取りで入っていく男。
 男が入ってすぐに、壁は普通の壁に戻ってしまった。
「やっぱりビンゴじゃねぇか」
 いつの間にか追いついていたエンが、呟く。
「間違いなさそうでござるな」
 八太郎の言葉に、頷きながら、エンはスマホを取り出し、調査メンバーへとメッセージを送信した。


「そもそも痩せ薬って時点で怪しいのよね……」
 バジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)は、そうため息交じりに呟いた。
「物騒な薬もあったものね、これ以上被害が出る前に何とかしないと」
 ミーナ・ヴァンスタイン(罪人殺しの聖女・f00319)は、その言葉に同意し頷く。
 やせ薬で簡単に痩せるなら、世の中にあるダイエットなど存在しない。
 本当に痩せるのであれば、使用されている成分が劇物だったり、身体に有害である可能性は高すぎる話である。痩せると言うかやつれた、と言ったところだろう。
 まぁ、今回に至っては内臓を持っていかれると言う、副作用なんて言葉で片付けられない話なのだが。
(あぁ、嫌だ。鬱だ。最悪だ……なんでこんな事件に関わっちまったんだ……UDC関係が嫌で世界跨いでの家出してたんだが、買い出しにいこうとした時に知っちまったから関わるしかなねぇ)
二人の横で、尾守・夜野(群れる死鬼・f05352)が憂鬱そうな顔でため息を吐きながら歩いている。
 UDCには良い思い出がないのだから、仕方がない。
 本心では関わりたくないのだが、こうなってしまえば関わるしかない。


 薬を手にれるのに時間がかかるかと思いきや、あっさりと薬は手に入った。
 コンビニエンスストアで販売していたのである。
 先ほど、真紀からメッセージが届いており、早速購入した。
 帰り際に、イェーガーのエンと八太郎を見かけたのを見るに、おそらく皆遅かれ速かれコンビニエンスストアにたどり着くような気がするが、まずは薬の調査である。
「……痩せるねぇ……この薬、怪しいな」
 ラベルにはすぐ痩せる! と書かれているのを見て、夜野は嫌そうに顔をしかめた。
 この手のキャッチコピーはうさんくさいし、何よりこの文章は本来販売の際に、引っかかりそうだ。
「さて、どんな厄介なものが仕組まれているのかしらね」
 薬への感想はともかく、手に入れた薬は早速調べる事にした。
 結局、ミーナたちは、同じ場所に集まり協力体制を取った。
 時間も惜しいし、違う能力のあるメンバーが集まったのだから、個々で調べる意味もないし、こちらの方が早いと踏んだのだ。
 ちなみに作戦が始まってすぐに、ミーナは使い魔たちを利用し、やせ薬所有者を張ってみたのだが、薬を飲んでも、彼女たちに異変は見受けられなかった。
「これのせいで内臓が無くなってるとなると普通の薬じゃなさそうだけど……」
 バジルは渋い顔で成分を調べる。
 夜野は、まずスーパーで購入した生レバーにやせ薬をつけてみた。
 だが、反応はない。
「変わらないな」
(生きていないとダメなのか?)
 そう思い片付けようとした夜野だったが、時間が経過すると、様子が変わった。
 一本全部のやせ薬を使用したのだが、生レバーが液体をどんどん吸い始めたのだ。
「これは……」
 その速度は異常だったが、生レバーが液体をすすると言うよりは、液体が生レバーにまとわりついているように見えた。
 それを見てバジルが眉間に皺を寄せた。
「薬の成分と言うより、この薬自体が何らかの妖しい力を持っているという事なのかもしれない」
 ミーナが調べた内容を纏め、そのまま発表する。
「やせ薬の成分自体は、普通の栄養ドリンクだったわ。調味料とかハーブとかは合ったけれど、別段毒が入ってるわけではなかった」
 設備がないため、細かい配分までは分からなかったが、毒物ではない事は、独知識の能力を持つバジルとミーナによって証明された。
「使い魔に見張らせた時に女性が飲んでも効果が無かったのは、少量では効果が無いのかもしれないわ。今も見張らせているけれど、異常はないみたい」
 夜野は、その言葉に苦く笑った。
「まぁ、実際は痩せるっていうか、多分溶かしているか、食ってるんだろ。中身。そりゃ中身が無くなれば痩せてるように見えるだろうな」
 夜野の予想通り、生レバーだった物体は、液体にからめとられた後、まるで食い尽くされたかのごとく、その存在自体を消してしまった。
 そして、液体だったそれはまるで最初から存在しなかったかのように消えた。
「問題は、この消えた臓器がどこに行ったかだが……」
「儀式に関係しているなら、おそらくは召喚場所に、かしら」
 夜野の言葉に、調査の道具を片付けながらバジルが続けると、ミーナも神妙な顔で頷く。
「召喚場所の特定が必要だけれど……」
 女性の聞き取りをしているはずの、アデルを思い浮かべる。
 彼女ならば既に何か掴んでいるかもしれない。
「合流しましょう」
 バジルの言葉に、皆頷いた。


 アデル・タイアン(シュヴァリエ・f10904)は、成分調査ではなく、服用を始めた女性たちへの聞き取りを行っていた。
 成分を調べる技能は所有していなかったため、こちらを希望したのである。
 やせ薬を使用していそうな、若めの女性を狙い声をかける。
 評判のやせ薬を聞いて試してみたいと話をすれば、話好きな女性が色々と教えてくれた。
 コンビニエンスストアで購入したやせ薬が、効果があるのだと言う。
「あなた痩せてるのに、まだ痩せたいんだ?」
「ワタシは甘いものが大好き。でも食べるとすぐ太るから……運動も苦手」
 当初、誘導尋問を予定していたが、村の女性たちの警戒心などまるで存在しないかのように、すらすらと答えてくれる。
「ああ、分かるわ。私もそうなのよ~」
 結構な人間が死んでいる筈だが、彼女たちは薬との因果関係を疑わないのだろうか? と疑問を感じる。
 だから、あえて少し不安そうに聞いてみた。
 副作用とかはないのか? 変な噂はないのか? と。
「今のところはないかな? 噂かぁ。そういえば、なんか前に警察が来た時に、殺人事件がどうとか聴取された事があって、その頃、やせ薬が怪しいんじゃないかってSNSで見た記憶があるかな? でも、私も友達も飲んでるけど別に身体に異変はないから、たぶん都市伝説みたいなものなんじゃない?」
 女性は見るからに健康体であり、見たところどこかが悪い様にも見えないので嘘は言っていないようである。

 女性と別れた後、アデルは成分を調査していた三人と合流した。

 互いが得た情報を話し、顔を見わせた頃、連絡用のバジルの携帯がメッセージの着信を知らせた。
 それは、コンビニエンスストアを張っていた、エンからの連絡だった。

――犯人と儀式の場所をおそらく特定した、と。


 連絡を受けたメンバーは、至急コンビニエンスストアに集合していた。
 エンの案内で、壁の仕掛けを起動し、中へと入ると、そこは大きな洞窟だった。
 と言っても入り組んだものではなく、入ってすぐの所が広い広場になっているだけのものだ。
 地面には、おそらく血であろうもので描かれた不気味な魔法陣があった。

 洞窟の中には、思わず顔を顰めるほどの血と臓物の匂いが充満している。
 おそらく、地面に捨てる様に散らばっているのは、女性たちから奪った臓物なのだろう。
 魔法陣の真ん中には、あの店員が祭具を持って、大きな声で呪文を唱えているのが見えた。

 男を捕まえようと、一歩を踏み出したその時、びちゃり、と嫌な音が響く。
 ずるずると這う何かが、近づいているのだ。
 それは、一体だけではなかった。
 イェーガーたちが通ってきた道からも、洞窟の上からも、そいつらはやって来た。

 紫色の醜い巨体を揺らしながら、幾重にも存在する太い触手が、君たちを狙い襲い掛かった。

 儀式を阻止するには、まずはこの化け物を倒さなければいけないようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『パープルテンタクルズ』

POW   :    押し寄せる狂気の触手
【触手群】が命中した対象に対し、高威力高命中の【太い触手による刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    束縛する恍惚の触手
【身体部位に絡みつく触手】【脱力をもたらす触手】【恍惚を与える触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    増殖する触手の嬰児
レベル×5体の、小型の戦闘用【触手塊】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エンティ・シェア
やぁ、大変な状況だ。心ばかりだが手伝えることがあるだろう。努めたまえよ

…ええ、化け物退治は「僕」の仕事です。こちらの能力を削ごうという辺り、厄介なことです。ならば真似をしてやりましょう。僕にもできるんですよ、あなたと同じように、技を封じることが
上手く決まれば他の方の助けになるでしょう。ならなかったら大変です。その時は武器を振るうことも考えましょう。拷問具を取り出して戦います。
なんでもいいですよね、振り回してぶん殴れれば。だって近づくのは嫌ですから
動かす燃料が足りないなら「エンティ」を傷つけても構わない。…倒れない程度にはしてあげましょう。彼のために他人の手を煩わせるのは、かなり癪ですから


バジル・サラザール
始めてみるわけじゃないけど、やっぱりこの見た目は慣れないわね……。

数にはこちらも手数で対抗、弱ってそうな相手から優先して極力敵の攻撃範囲外から攻撃。
前衛は他の人にお願い、主に「ウィザード・ミサイル」で援護射撃するわ。
後衛から全体をよく見て、状況を把握、他の人にしっかり伝えましょう。
触手塊が現れたら優先的に攻撃、敵の頭数を減らしていくわ。
当たったら厄介そうな攻撃が多いわね……「野生の勘」も使いつつ、回避や相殺をしていきましょう。

早く片付けて、すぐにでも儀式を阻止しないと……慌てず急ぎましょう。




 強烈な悪臭が周囲に香る。
 ゴミを煮詰めたような、不快な匂いにバジルが嫌そうに顔を顰めた。
「始めてみるわけじゃないけど、やっぱりこの見た目は慣れないわね……」
 比較的見かけるクリーチャーのため、衝撃こそは無かったが、決して愉快な存在ではない。
 醜く、悪臭を放つ化け物だ。
「確かにね」
 この場所に駆け付けたメンバーは、先ほどのメンバーよりも増えていた。
 グリモアベースに新しく呼び出され、連絡を受けてかけつけたのは、エンティ・シェア(欠片・f00526)だ。
 こちらは、敵を飄々とした表情で見つめると、首をすくめる。
「やぁ、大変な状況だ。心ばかりだが手伝えることがあるだろう。努めたまえよ」
 どこか芝居がかったと言っても良い口調で、彼は己の拷問具の一つを取り出した。
「化け物退治は「僕」の仕事です」
 続いた言葉を発したエンティの雰囲気が変わった。
 その台詞に僅かばかり違和感を感じたのか、バジルが興味深そうに見る。
 まるでその台詞が自身にではなく、誰かに主張するかのように聞こえたからだ。
 普通に考えれば、バジルを含めたメンバーの誰かへの言葉とも受け取れるが、そうなってくると少しおかしな台詞だった。
 ただ、今はそんな事に思いをはせる時間はない。
「早く片付けて、すぐにでも儀式を阻止しないと……慌てず急ぎましょう」
 目の前の化け物を倒さなければ、儀式を止める事が出来ないのだから。


 触手の化け物の一体から、3本の触手がエンティへと狙いを定め、攻撃をしかける。
 捕まれば、様々なバッドスタータスが付与される、言わば毒のようなものだ。
「こちらの能力を削ごうという辺り、厄介なことです。ならば真似をしてやりましょう。僕にもできるんですよ、あなたと同じように、技を封じることが」
 だが、エンティにも秘策がある。
 彼にも、化け物と同等のユーべルコードがあったからだ。
 拘束用の長いロープを鮮やかに操ると、一体の触手を器用に絡めとり、動きを封じた。
 ユーベルコードを封じられた化け物は、身体を捻ったが、時すでに遅し。
 バジルのウィザード・ミサイルがエンティの後ろから鋭く放たれた。
「数にはこちらも手数で対抗。弱ってそうな相手から優先して、極力、敵の攻撃範囲外から攻撃は、常套句よ」
 前衛は他のメンバーの任せる代わり、後衛からの援護を行う。
 それが今回選んだバジルの戦闘スタイルだ。
 煌々と燃える炎の5本の矢が、化け物の身体に突き刺さると、化け物が金属音にも似た叫び声を上げ、燃えた。
(まずは敵の頭数を減らすのが先決ね。当たったら厄介そうな攻撃が多いわ)
 冷静に判断し、バジルは次の化け物へと狙いを変え、再び炎の矢を作り上げていく。
 触手の攻撃を相殺しつつ、戦線を切り開く。
(動かす燃料が足りないなら「エンティ」を傷つけても構わない。でも、倒れない程度にはしてあげましょう。彼のために他人の手を煩わせるのは、かなり癪ですから)
 バジルの援護を行い、触手を縄で絡めとりながら、エンティは次の獲物に狙いを定め、己が武器を手にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尾守・夜野
こんな異形を見ちまった、まともな方の俺は気絶し、発狂済みの人格が出てくるぞ。

多分、言葉はまともなの出てこねぇけど少なくとも他の奴の邪魔はしねぇはずだ。

あ、あくまでそういう人格なだけで俺自身は発狂まではいってないからな?

【生命力吸収】【吸血】使いながら行動するぞ。
黒剣で主に戦うが…何せ色々吹っ飛んでるからな。
何するかわからんぞ

後、魔方陣を壊すために、切り落とした触手ぶん投げて、陣歪ませ…ようとはするはずだ。
それがまともに出来るかは置いといて。

アドリブ、共闘歓迎するぜ


花菱・真紀
無くなった内臓は供物か…。
痩せ薬で内臓がなくなる、なんてただの都市伝説なら面白いんだが。実際に起こってるんだから止めないとな。

【WIZ】
増殖する触手の嬰児、ね。
数には数でってな。
エレクトロレギオンで機械兵器召喚。【先制攻撃】【だまし討ち】で積極的に攻撃。
敵の一撃でやられるのはこっちも同じ先にやっちまうぜ。


ミーナ・ヴァンスタイン
これは……早く潰さないとマズそうね。

2丁拳銃による【2回攻撃】を行います。光の精霊との契約で生み出される魔力弾は【破魔】の力を持ち、邪悪なものにとっては【マヒ攻撃】となります。
「悪しき者よ。我が神の下に滅せよ!」

敵が小型の触手を呼び出したら、横薙ぎに連射し触手たちを【なぎ払い】ます。
「目障りだわ。消えなさい!」

敵の攻撃は【視力】【聞き耳】を駆使して【見切り】【残像】による回避を行います。
「そんな動きじゃ当たらないわ」

一度見たコードは【断罪撃】を使用。【怪力】によって放たれる拳や蹴りは【鎧砕き】の一撃となって全てを粉砕する。
「その技はもう見飽きたわ。これで、茶番は終わりよ」




 一体一体はそこまで強力ではないが、それでもやはり数が多い。
「これは……早く潰さないとマズそうね」
 構えた2丁拳銃で化け物を撃ちながら、ミーナが苦い顔で呟いた。
 光の精霊と契約しているミーナの拳銃から放出されるのは、魔弾。
 邪悪な者を祓い、時に動きを止める事の出来るその一撃に、化け物は吠えながらその触手を伸ばした。
「そんな動きじゃ当たらないわ」
 触手の攻撃を無駄な動き無く俊敏にかわし、次の魔弾を撃ち込む。
「目障りだわ。消えなさい!」
 的確に撃ち抜かれていく様を見た夜野は、感心した様子で笑った。
「やるじゃねぇか」

――血が足りない。

 夜野の中で、別の人格が顔を出したのはすぐだった。
 血と臓物の狂った世界を見た瞬間、普段の夜野は眠り、ソレが現れた。
 容姿に変化はないが、その雰囲気はがらりと変わっている。
 彼の瞳を見れば、それが狂人のものであると気づくだろう。
 手にした黒剣で、触手を切り捨てると、その血を啜り己の糧へと変える。
 視線の先には、魔法陣がある。
 切り捨てた触手を投げると、祭壇で跪いた男が気づき、胡乱な目で振り返った。
 感情の読めない虚ろな視線で見つめた後、にやりと笑うさまは不気味以外の何物でもなかった。
 男もまた狂っているのだろう。
 触手の化け物が己の分身を生み出し、イェーガーたちを阻もうと迫る。
「悪しき者よ。我が神の下に滅せよ!」
 しかしそれらは、ミーナの魔力の込められた蹴りによって粉砕されていく。
 どうやら生み出された化け物は、本体に比べるとやや弱いらしい。
 夜野もそれに気づくと、それらを誘導し、確実に倒していった。


(無くなった内臓は供物か……)
 真紀は、戦いながら祭壇の付近に散乱している、臓器の残骸を苦々しい思いで見た。
 かつて女性たちの体内に存在していたそれは、命を構成すると言う大切な役目を終え、ただの肉塊と化していた。
 痩せ薬で内臓がなくなるなんて、ただの都市伝説なら面白いんだが、と思っていたが、現実目の前で繰り広げれているのは惨劇だろう。
 戦いに身を置き、ある程度血肉に慣れている者でさえ、今の光景は顔を顰めざるを得ない。
 目の前の化け物が、増殖する触手の嬰児によって己が分身を生み出すのと同時、真紀は機械兵器をこの場へと召喚した。
 小型の機械兵器の数は、大群と呼んでもおかしくはない程だった。
「数には数でってな」
 真紀の方が、化け物よりも行動が早かった。
 素早い動きで化け物たちへと群がった機械兵器たちは、その身体を引きちぎって行く。
 振るわれる触手の一撃が機械兵器に触れると、機械兵器たちの身体は簡単に破壊されたが、その数でもって次第に化け物たちを圧倒していった。
(敵の一撃でやられるのはこっちも同じ。先にやっちまうぜ)
 その作戦は功を奏し、化け物たちは徐々に討伐されていき、ミーナが最後の一体を魔弾で撃ち抜いた。


 「やめなさい!」
 ミーナの叫びと同時、夜野と真紀が召喚陣へと走る。
 いや、彼らだけではない、他のメンバーもだ。
 
――だが、少し遅かった。

 男が器を掲げ、奇声を発したと同時、魔法陣が禍々しく光る。
 響いたのは、形容しがたい音だった。
 金属の音とも、生物の声でもないその声は、とてつもない声量でもって辺りへと響き渡る。
 思わず顔をしかめ、耳を抑えた真紀は、眼前に広がった光景に僅かに目を見開いた。
 触手とは比べようもない巨体が、視界いっぱいに広がっている。

 蛇とも、西洋のドラゴンとも表現できる、その化け物の正体は紛れもない邪神の姿だった。

 召喚した男は、邪神を敬う様に腰を低くし拝謁の姿勢を取った。
「おお、よくぞ……!」
 歓喜の声を上げる男を、邪神はその目でしばし見つめる。

 男はその時まで、こう思っていた。

――邪神の力を借りる事ができると。

 だが、現実は違う。
 邪神と呼ばれるその存在は、只人になど使役できるはずもない。

 瞬間。
 眩しすぎるほどに輝いた邪神の身体から放たれた雷撃が、男の身体を直撃する。
 男が抵抗する事は不可能だった。
 一瞬のうちに、雷はその身体を焼き尽くし、男の命を奪っていたのだから。

 化け物は巨体を震わせ、イェーガーたちを睨んだ後、雄たけびを上げた。
 理性など残っていない、狂える化け物が、そこには居た。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『雷穹龍グローレール』

POW   :    雷霆光輪
【超高熱のプラズマリング】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    撃ち砕く紫電
レベル×5本の【雷】属性の【破壊光線】を放つ。
WIZ   :    ドラゴニック・サンダーボルト
【口から吐き出す電撃のブレス】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠神楽火・皇士朗です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

バジル・サラザール
まさに邪神といった感じの佇まいね。これ以上暴れられる前に止めないと。

引き続き前衛は他の人にお願い、極力敵の攻撃の射程外から「ウィザード・ミサイル」で攻撃するわ。敵は細身の体で狙いづらいけど、しっかり当てていきましょう。
後衛から相手の動きをよく見て、それをみんなに伝えましょう。

反撃する暇も与えないのが理想だけど、ダメなら「野生の勘」も利用しつつ、回避や防御をしていくわ。

呼び出されてすぐに悪いけど、お帰り頂こうかしら。




 雷の残量が周囲へとその熱を伝える。
「まさに邪神といった感じの佇まいね。これ以上暴れられる前に止めないと」
 目の前に召喚された邪神の姿に、厳しい眼差しでバジルが言った。
 西洋のドラゴンに近しいその姿は、神々しくも見えるが、その纏う空気が、それが邪悪な存在であると、知らしめている。
 バジルは、あえて邪神から距離を取った。
 彼女にとっては、近距離よりも、遠距離からの攻撃の方がやりやすい。
 近接戦を張れるメンバーが他にいる以上、己の得意な戦い方が一番だ。
(敵は細身の体で狙いづらいけど……)
 邪神の身体は、ドラゴンに似ては居たが、良く知られているドラゴンと違い、身体が薄い。
 勿論、薄いと言っても重量があるため、針の穴を通す様にという訳ではないが、攻撃が当たりにくいのは間違いがないだろう。
 後衛から相手の動きをよく見て、それをみんなに伝える事、それも重要な戦略である。
 バジルの手によって燃える炎の矢が、5本生み出される。
 煌々と燃える激しい炎は、収束し、鋭い槍のように変化した。
「反撃する暇を与えたいのが理想ね」
 炎の熱量に気づいた邪神が、狂った咆哮をあげて、その身体をまるで尻尾のように振ると、壁にぴしりとヒビが入った。
 狭い室内での戦いは、邪神にとっては幾分か動きづらいようだった。
 それは、バジルにとっては好機である。
「呼び出されてすぐに悪いけど、お帰り頂こうかしら」
 むしろ、外へ出してはいけない。
 生み出された炎の矢が、邪神の身体へと放たれる。
 邪神は、雷の矢を瞬時に生み出し、炎の矢へと放った。
 奇しくも、矢の数は互角だ。
 真正面から、その二つはぶつかりあい、その熱量が周囲へと伝わり、空気が震えた。
 矢の一つは、雷の矢を貫通し、邪神の肉体へとダメージを与えたが、それでも致命傷にはまだ遠い様だ。
 忌々し気な、くぐもった咆哮が、バジルへと向けられていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミーナ・ヴァンスタイン
ティアリス(f12213)が来たら
「間に合ったわね……頼むわよ、小さな竜騎士さん」

竜を一瞥し銃を構え
「ここで仕留めるしかないわ。全力でいきましょう」

【破魔】の弾丸による【2回攻撃】を行う。
「流石に硬いわね」
竜の鱗の同じ個所を攻撃し【鎧砕き】
「一度でダメなら、貫くまで撃ち込み続けるだけよ!」

敵の攻撃は【視力】【聞き耳】で【見切り】【残像】で回避します。
「やっぱり、簡単にはいかないわね」
ブレス動作を見たら全力で。
「あれはマズいわね」

一度見た攻撃は【怪力】【断罪撃】で防御しみんなを守ります。
「一度見た技は通用しないわよ!」

味方が危ない時は【毒使い】【マヒ攻撃】【投擲】で麻痺毒を塗ったダガーを投げる。


ティアリス・レイン
ミーナさん(f00319)に呼ばれてさんせんするよ!
「よし、まにあった!」

小竜に【騎乗】し【空中戦】
「あいてはドラゴン!気合い入れていくよ、ユーちゃん!」

精霊魔法で電撃【属性攻撃】を纏わせた戦斧を【怪力】で振り下ろす。
「こっちだってかみなりだ。ごーらい、いっせん!」

攻撃は【動物と話す】【見切り】【残像】で回避
「ユーちゃん、さがって!」
間に合わないときは雷の【全力魔法】で防御魔法、小竜の炎ブレス、ティアの戦斧による【武器受け】でガードします。
「みんな、ぼうぎょして!」

敵に【捨て身の一撃】で特攻し、加速したドラゴンを槍に変形させ【投擲】【串刺し】【ドラゴニック・エンド】
「ユーちゃん、いっけーッ!」




 ティアリス・レイン(f12213)が合流したのは、戦況の動く少し前だった。
 雷と炎のぶつかり合う轟音と共に、滑り込むようにその場へと現れた。
「よし、まにあった!」
 ミーナに場所を教えてもらい急いで向かってきたものの、間に合うかどうかが心配ではあった。
 到着したら討伐済みは、参加しているイェーガーたちが多ければ十分あり得る話だからだ。
 ミーナ、そんなティアリスを見つけると、少し安心した様子で微笑んだ。
「間に合ったわね……頼むわよ、小さな竜騎士さん」
 己の銃を構え、敵へと向けながらそう呟くと同時、銃から破魔の弾丸が放たれた。
 二連続で放たれた弾は、邪神へと直撃するが、邪神の鋼の鱗を貫通するまでには至らなかった。
「流石に硬いわね」
 効果が無いわけではない、良く見れば鱗の表皮は剥がれている。
 ただ、巨体ゆえに、そのダメージでは一手に欠けていた。
 だが、あくまでこれは小手調べである。
 小竜に跨り宙へと浮かんだティアリスが、戦斧を手に駆ける。
 少々飛び回るには手狭ではあったが、小竜ゆえにその体躯は程よい感じに小回りが利いた。
「あいてはドラゴン! 気合い入れていくよ、ユーちゃん!」
 己の相棒を励ます様に明るく言うと、雷を纏わせた斧を、怪力と呼べる力で振りかぶる。
「こっちだってかみなりだ。ごーらい、いっせん!」
 掛け声とともに、邪神の腹部へと叩きこまれた一撃に、邪神がよろめいた。
 だが、邪神は、体勢を崩しながらも起き上がり、怒りの咆哮と共に周囲に雷を集め始めた。
「あれはマズいわね」
 そうミーナが呟いたと同時、雷は辺りへと無差別に攻撃を始める。
 広い空間であるとは言え、一応は室内であるそこは、おそらく長時間はもたないだろう。
 凄まじい音で壁が削られ、熱によって溶解して行く。
「ユーちゃん、さがって!」
 その言葉に反応して、イェーガーたちは各々ガードをする。
 間一髪、直撃は避けられたものの、ミーナもティアリスも後方へと吹き飛ばされた。
(硬いし、ブレスは厄介だけれど……)
 空中でくるりと、ミーナが体制を整えて隙無く銃を構えながら、思案する。
 ティアリスの一撃は強打はしっかりと決まっていた。
 ならば、そこにはダメージが蓄積されている筈だ。
 だからこそ。
 ミーナは、なおも暴走を続ける雷の隙間を掻い潜りながら、破魔の弾丸を連続で打ち込む。
「一度見た技は通用しないわよ!」
 器用に雷を避けながら、撃ち込まれる弾丸は、同じ場所を的確に撃ち抜いていく。
「一度でダメなら、貫くまで撃ち込み続けるだけよ!」
 硬い装甲も、ダメージが蓄積されれば、いつかは破れる。
 幸運にも回復の手段を邪神は持っていない。
 
――Gueeeeee!

ダメージは、着々と邪神の体力も気力も削っていた。
 再び小竜に跨ったティアリスは、その隙を見逃さない。
「ユーちゃん、いっけーッ!」
 捨て身の一撃で突進すると、槍は確かに邪神へと届き、先ほどとは比べようもない威力で、邪神をなぎ倒した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花菱・真紀
うわービリビリしてる。下手に近付いたらさっきの男の二の舞になりそうだけどそんなこと言ってられない。きちんとやっつけないとな。
【バトルキャラクターズ】を使用だ。
2体くらいに分けて一体は【援護射撃】もう一体は【だまし討ち】しつつ攻撃。出来るだけユーベルコード以外の攻撃は【見切り】で避けたいところだな…頭混乱するー。
でも、やってやるさ。




 凄まじい音をたてて、地面に倒れた邪神だったが、まだ死んではいなかった。
 鱗を破魔の力で焼かれ、強打の一撃によってなぎ倒されても、まだ、その力は消えてはいない。
 再び収束を始める雷の力に、真紀は厳しい表情で顔を引きつらせた。
「うわービリビリしてる」
 真紀の手によって生み出された二体のゲームキャラクターは、主のそんな言葉を気にした様子もなく、己の仕事に従事していた。
 一体は援護射撃、一体はだまし討ちによる攻撃である。
「下手に近付いたらさっきの男の二の舞になりそうだけど、そんなこと言ってられないな」
 最初に召喚者を消滅させたその光景は、中々忘れようがない光景だったし、先ほどの範囲攻撃に関しては、何とか見切りで、あらかたは避けてはいたが、さすがに無傷ではいられなかった。
 いくら、今回はゲームキャラクターを召喚しての、比較的後衛からの戦闘メインの構成にしていても、力を使える距離を保たなければいけないのだから。
 だが、今こそが畳みかける時ではあった。
 邪神は、大量のイェーガーの攻撃によって、その動きを間違いなく鈍らせていたのだから。
「さぁ、あと少しだ」
 具現化されたキャラクターたちは、真紀の指示に、トリッキーな動きと攻撃で応え、邪神を徐々に追い詰めていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エン・ギフター
ああ、こりゃ酷いモンだ
まあ邪神相手に即死で済んだんだ
死ぬに死ねない苦しみ永劫味わうよりゃ
なんぼかマシだったと思って成仏しとけな、オッサン

胴長すぎて間合い広そうだよなあ
まあ、勘頼りにどうにか潜り込めそうな場所探して飛び込むか
距離詰めんだから、敵のプラズマ攻撃だのは食らうのは覚悟しとくわ
タダでやられる気は無ェがな!
[蹴刃]で狙うのは手足か角か
食らったら動きが鈍りそうな箇所を

おうハチ公(f09059)隙作れたら追撃頼むぞ
やれやれー!畳みかけりゃ幾らかは削れんだろ!

【野生の勘、マヒ攻撃、激痛耐性】


一文字・八太郎
…間に合わなんだか
女性達のその臓腑を対価と呼び出したというのに
幕引きは呆気ないものでござったな
何、案ずることはない
貴殿が呼び出したその邪神
拙者ら猟兵がきちんと還してしんぜよう

しかし雷とはまた厄介な
びりびりと毛の逆立つ空気は好まんが
そうも言っておられんでござろうな
刀構え、【猫の毛づくろい】にて下準備
エン殿(f06076)の攻撃で動きが鈍ったのが見て取れたなら
【剣刃一閃】にて一太刀の元切り飛ばさん
厄介なブレス吐く口かそれとも雷纏うその長き尾か
何れにせよその長い胴を少しでも短くしてやろう
流れる電流とてそれと分かっていれば覚悟の決め方もある
焦がし尽くされる前に倒すまでのこと
我慢勝負といざいかん!




「案ずることはない。貴殿が呼び出したその邪神、拙者ら猟兵がきちんと還してしんぜよう」
 死亡した男に視線をちらりとやり、古風な言葉で八太郎はたたらを踏んだと同時、相棒であるエンもまたその体を鋭く躍らせる。
 他のイェーガーへの注意もあり、邪神に近づくのは比較的容易だった。
 負傷しているのもあるし、元々理性が残っていない、もしくは最初から存在しなかったのか、この邪神は臨機応変に知性で対応するのが困難なのは、その動きで見て取れていた。
 邪神から放たれる雷が、エンの身体を震わせ、衣服の一部が壊れた。
 広い間合いに入るために、ある程度の攻撃は受けるしかない、とエンは踏んだのである。
 だが、当然直撃する気などなかった。
 身軽な身体を使い、邪神の長い胴を、逆に影替わりに使い近づいた。
 エンに気づいた邪神がその身体をエンへと振るうが、八太郎はその隙を見逃さない。
「おうハチ公! 追撃頼むぞ」
 エンの言葉に、八太郎は邪神の身体に一閃を切り込んだ。
 雷の追撃はやむことは無く、辺りを震わせ、イェーガーたちは傷ついていく。
 しかし、その威力は徐々に下がっていた。
(焦がし尽くされる前に倒すまでの事……!)
 直撃を食らいそうになると、他のイェーガーがそれをフォローし、それを全員が行う事で、その戦況はジリジリとイェーガーへと傾いていく。
「我慢勝負といざいかん!」
 切り込み続ける八太郎の言葉に、エンも他のイェーガーも力強く同意した。
 鱗を鋭い刀で跳ね上げ、その体力を奪っていくのは、八太郎の見事な剣裁きだ。
「やれやれー! 畳みかけりゃ幾らかは削れんだろ!」
 エンが、そう鼓舞しながら邪神の角を砕く。
 忌々しそうな邪神の咆哮には、焦りがあった。
「そら、骸の海へお還りなさいってなァ!!」
 邪神の身体に、見事肉薄したエンの、強烈な一撃が、咆哮と共に繰り出される。
 相手の極近くに接近できなれば威力の発揮できない技ではあったが、その狙いは今回は外れる事は無かった。
 直撃した身体が体制を崩したのを、八太郎は見逃さない。
 磨き上げたその美麗な一撃は、邪神が最後の抵抗でブレスを吐く前に、邪神の身体を打ち砕き、その身体を一刀両断した。
 轟音と共に、その身体は地へと伏し、そこに残ったのは禍々しい肉片だけとなっていた。


「女性達のその臓腑を対価と呼び出したというのに幕引きは呆気ないものでござったな」
 倒れ伏した邪神を見下ろしながら、八太郎が言う。
 召還の儀式を止める事は間に合わず、召喚者も死亡した事には、残念ではあったが、元々邪神召喚はその性質上、阻止しにくい事もあり、納得するしかない。
 もう少し未来予知が細かければ、もっと先手を打てたかもしれないが……今回はそれは難しかった。
「ああ、こりゃ酷いモンだ」
 死亡したコンビニエンスストアの店員の変わり果てた姿に、エンは近づき呟いた。
「まあ邪神相手に即死で済んだんだ。死ぬに死ねない苦しみ永劫味わうよりゃ
なんぼかマシだったと思って成仏しとけな、オッサン」
 苦しまずに行けた分だけ、マシだったのは間違いがない。
 共闘したイェーガーたちは、互いに顔を見合わせ、安堵から僅かな笑みを浮かべた。


 今回も、依頼は完遂された。
 戦い終わったイェーガーたちもまた、ミスティが待つグリモアベースへと帰還する。
 去り際、村は少々騒がしかった。
 コンビニエンスストアの店員が帰ってこないのだから当然だろう。
 心あるイェーガーの一人が、店員の死体を上手く人目に付く様に細工をしたが、おそらく見つかるのはもう少し時間がかかる。
 だが、あの惨状の死体をイェーガーたちが見せれば、あらぬ噂がたちかねないのだから、仕方がない。

 それから3日後、TVでこの村の事件が取り沙汰されるようになったものの、いつしかその事件は人々の記憶から消える事になった。
 そして、やせ薬は不思議な事に、これ以降、誰の命を奪う事も無かったと言う。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月16日


挿絵イラスト