†漆黒の血塗られた黒騎士†
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ふぅ……困りましたね。
――あぁ、こんにちは。今日はまた一段と冷えますね。
――? いえいえ、「困った」というのはこちらの話です。
何ですか、気になる?うーん……まあこれを解決できるのもあなた方猟兵だけでしょうから、結局はいずれかお願いすることになるのですが。
僕が視た新しい予知の内容がまたちょっと……頭の痛い内容でして。貴方は子供の時に「自分設定ノート」みたいなものを書きませんでしたか?
ホラ、あれですよ。「聖剣●●」とか「私だけのカッコいい王子様」みたいな。
――俗にいう、黒歴史ノートですけど。
その黒歴史ノートをですね、アルダワ魔法学園の百万迷宮・図書館階層の奥深くに仕舞いこんだ学園生がかつて居たようです。そのノートには「虚空から呼びかけに応え来たりし暴虐なる顎の王よ、我が命に従いて悪しき魂を噛み砕け――Dragon Bite!」とかその類の……要するに、改めて見返すと恥ずかしい妄想が書き連なっているようです。
――それだけなら青臭い思い出として笑い話にもなるのですが。
どうやらノートのありかを宝の地図風に書き記し、いくつかのピースに分けた上で、彼はそれを学園の中に隠したようなのです。その地図のピースがたまたま今回見つかったので、学園の中は上を下への大騒ぎとなっています。
宝の中身が黒歴史ノートであることを知っているのは、隠した本人と、予知が視えた僕だけなんですけどね。
学園の中はいまだに謎が多く、トラップが仕込まれた危険な階層もあるようです。
更に間の悪いことに――宝の噂を聞きつけて、迷宮の深部からは手下を引き連れたオブリビオンも徘徊し始めた気配があります。
なんにしても、この危険な状況を放置することもできず。かといって……黒歴史を掘り返すのは個人の尊厳に関わるのではないかと、なかなか頭を悩ませていたんです。
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目を伏せて黙考し、こめかみをぐいと押してから意を決したように。
グリモア猟兵のジョルジュ・ドヌールは「貴方たちの力をお貸し願えますか」と頭を下げたのだった。
かもねぎ
こんにちは、かもねぎです。今回はアルダワ魔法学園の奥深く、スチームパンクとゴシックファンタジーの迷宮が舞台です。ボスはなかなかに強敵ですが、その目的は黒歴史ノートなのでちょっと間抜けな感じですね。
全般的にコメディ寄りの雰囲気になるかな、と思っています。
それでは皆様のご参加、お待ちいたしております。
第1章 冒険
『探せ!宝の地図』
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POW : 生徒たちをなぎ払いながら地図を見つける
SPD : どの生徒たちよりも早く動き、地図をみつける
WIZ : 生徒たちを罠にかけて動きを封じる
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ユリ・アップルヤード
「地図のためにこの美しい機械たちに挑むかい!? 特にうちのリアンは見ての通り、器用な子じゃないからね! この鉄柱で加減なく叩きのめし、薙ぎ払うしかできないよ!?」
機械巨人リアンと偵察ロボットコロマル、万能型ドローンルーをリミッターを外して展開。
リアンには装備した鉄柱を地面に叩きつけて、挑むか様子を見よう。
怪我なしに越したことないし。
来るならリアンは最前衛で薙ぎ払い、大楯でガード&カウンター。
コロマルとルーはそれを抜けてきた敵へ斉射。
「ヒューズ、いつも通り私の護衛よろしく」
リミッターを外してない戦闘用機械兵ヒューズは直掩。
私に近づく敵に狙撃と銃剣攻撃。
それを越えたら、私が直接対応しよう。
「おい、まだ間に合うはずだ。急げよっ、ホラ!」
迷宮内にかつて主席としてその名を轟かせた卒業生の隠したとっておきのノートがあるとの噂は、瞬く間に学園内を駆け巡った。血気盛んな中等部・高等部の学生はもちろんの事、冒険心に逸る初等部のちびっ子たちも、己の技術を誇示する舞台を求めていたアカデミアの頭でっかちも誰もがみな我先にと迷宮へと向かっていく。
――その行く先に。
「おっと、この先は行き止まりだよ。うちのリアンは見ての通り、器用な子じゃないからね……ケガしたくなければ回れ右してお帰りだ」
ユリ・アップルヤード(パーツ屋「アップルガレージ」・f00153)がその傍らに自ら傑作と称して憚らない戦闘用ロボットたちを侍らせて、胸を張る。青い作業用のツナギに「APG」のワッペンがその存在を誇示するように張り付けられたそのいで立ちは、自身の名を冠したパーツ屋「アップルガレージ」のもの。そのワッペンがユリの渾身のドヤ顔の横で踊っている。
学園内では見知らぬメカニックの女性を前に、「誰だアイツ」「知らねぇな」「ほっとこうぜ」と学園生たちは触らぬ神に祟りなしとばかりにその横を通り過ぎようと。
その姿を見てユリは舌打ちひとつ、「無視するんじゃないわよっ!」と戦闘用機械兵「ヒューズ」をけしかけて学生の足元に威嚇射撃を叩き込む。
タタンッっとタイルを欠片に変えて土埃を巻き上げる銃弾を目にしては、さすがに怖いものなしの学園生たちも少しばかり腰が引ける。
そこに、ダメ押しとばかりに機械巨人「リアン」が手にした鉄柱をフルスイングする。剛――と大気が震え、ビリビリと学生たちの頬を撫ぜる。
「やべぇよコイツ」「関わり合いにならない方が良さそうだぜ……」
彼女の本気を悟ってか、学園生たちも薄ら笑いを浮かべておずおずと後ずさり。
「まだ、用事かい?」
ニッコリと笑うユリの紅い瞳が笑っていないことを見てとれば、一目散に散っていく。
大成功
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ネメシス・アレクトー
宝の正体は、黒歴史ノートのようですが、学園は、まだまだ危険がいっぱいです。それに、危険を冒して、その成果が、痛い内容のノートが宝とかリスクも大きすぎて、笑えないです…ロボ。
◆WIZ
先行して地図探索された方々から危険な場所を事前に確認しつつ、生徒たちが探索の為に、奥に進まないように、出来る限り追い払いや「時間稼ぎ」を行います!…ロボ。
【スチームレギオン】を召喚して、数で生徒たちの動きを封じるように、安全な場所まで追い立てるようにします。
ペッシ・モルティ
他人の過去は掘り返すものではない、という考えは同感ですが、わざわざそれに辿り着く手がかりを拵えているのは………と、今は言っている場合ではありませんね。
宝探しをご所望でしたら、探すべき宝物を増やして差し上げましょう。
私は、ユーベルコード【水精憑依:浚うモノ】を使用して姿を消しつつ生徒さん方に近づき、敢えて異変には気付くよう【盗み攻撃】で各々の大事そうな所持品を盗むことで彼らを足止めします。
さて、宝の地図と盗まれた所持品、どちらが大事でしょうか?
勿論、充分な時間を稼いだら盗んだ品物はお返ししますよ。
先を急がねばなりませんから、目につく場所にでもそっと置いておきましょう。
「危険を冒して得られたその結果が、黒歴史ノート。ハイリスクローリターンは笑えないです……ロボ」
身の丈程のランスを手に、ネメシス・アレクトー(止め遁れられぬ・f06227)は学園生たちを追い回していた。彼女が展開するスチームレギオンもまた、四方八方へ走り去っていく背を追いかけながら、彼らをさりげなく学園迷宮の深部から遠ざけるように誘導をかけていく。
グリモア猟兵の予知を確認して学園に急行したネメシスは、迷宮に潜ると踏破済み階層の情報をもとに危険な地域を割り出し、未然にそれらの脅威から学園生を遠ざけるべきと判断した。その結果がこれである。
「この先は何もないですよ~ロボ」
至極マジメに彼女は任務に取り組んでいるのだが、どうにもその語尾のせいか雰囲気が締まらない。
「なんだよこのロボット」
「ロボ……とか言ってるぞ!」
学園生も直接的な害意が無いことを悟ってか、ネメシスの口調を耳にしてからかい半分にちょっかいを出す。
――学園生が注意をネメシスに払ったその一瞬の隙に。
「なるほど、中等部の彼女に片思いしている……と」
人知れず【水精憑依:浚うモノ】を発動してその身を隠したペッシ・モルティ(人間の暗殺者・f04834)が、こっそりと学園生の袂から、おそらくは彼の大切な想い人であろう女性の写真を抜き取って「ふむ」と頷く。
「あっ……それは俺の!」「いつの間にやりやがった!?」
事を為した後は敢えてその姿を現し、ヒラヒラと写真を見せつけるように振って見せるペッシの姿に気が付くと……学園生たちは困惑と怒りを露にする。
「さてね、この写真をどうしましょうか」
ネメシスに目配せして合図すると、ペッシは学園生に行く末を見せつけるようにしばらく駆け――再度ユーベルコ―ドを発動して迷宮の闇に消える。
「消えたぞ!」「どこへ行った、あの野郎」
虚空へ消えたペッシの姿を追って右往左往する学生らに、再びネメシスと配下のk小型ロボが迫る。
「ほらほら、迷宮は危険がいっぱいですよ」
――だから早く、ここから立ち去るのです……ロボ。
猟兵たちの連携によって学園生たちの動きも鈍くはなっているが、何にしても学生の数は非常に多く、迷宮は複雑に入り組んでいる。
時間稼ぎにもいずれは限度がくる。
「これは……先に地図を解読してノートを確保する必要があるかもしれません」
学園生の一団をようやく迷宮から追い払ってから、そうネメシスはため息をついたのだった。
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ややあって。
学園の掲示板に一枚の写真が貼られることになる。
『中等部2年 ××、迷宮内での落とし物です』
そんな但し書きが書かれた紙が添えられた写真はもちろん……
「やりやがったな、あの野郎!」
男子学生の悲鳴が学園に木霊した。
「ちょっとやりすぎたかな?」
掲示板からは死角になるその暗がりの中で、ペッシは精霊に向けてそう問いかける。彼が使役する精霊はそれに言葉を返すことはなかったが、彼の言葉に応えるように淡い黄色の光がぼんやりと明滅した。
成功
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アルバ・ファルチェ
罠ってほどじゃないけど、お嬢さん方を中心に声をかけてみようかな。
あ、ナンパじゃないよ?普通にお話聞くだけだから。
……でも、口説くみたいになっちゃうのは仕方ないよね。
癖みたいなものだし。
『普段どんなことしてるの?』とか『女の子が危険な事するのは僕は嫌だな、折角の綺麗な肌が傷ついたりしたら心配だもの』とか『僕が一緒なら守ってあげられるのにな』とか…あ、急に触ったりセクハラはしないよ?
ノリは軽いけど僕は騎士だからね☆
もしもだけど女の子…あと一応男子にも怪我人が居れば治療するよ。
そうやって気を引いてたら足止めになったりしないかなぁ?
隠月・ヨル
【WIZ】
あらたいへんね。別名若気の至りってヤツかしら?巡り合わせが悪かったわね、ご愁傷さま。
でも騒ぎになるってことは、それだけ地図の出来がよかったという事よね?
そうなると本命のノートの出来は如何ほどかしら…?気になるわ。そうと決まったら思い立ったが吉日。
すっきりしたらきっといい夢が見れるわね。
【リザレクト・オブリビオン】で喚び出した二人で生徒達を驚かせましょ。驚いてくれたらきっとかわいいわ。
『コミュ力』で話しかけて地図の手がかりを得られたら嬉しいわね。
驚いてくれなかった子達は呼び出した二人に抱きつかせたり、探索済の安全地帯に運搬したりさせちゃいましょ。生徒達は傷つけるわけにはいかないしね。
セラータ・ファルチェ
とりあえず…生徒達を止めようか
生徒を罠に掛ける……というのはあれだが、やることはどっちかというと色仕掛けみたいな物だ。
コミュ力と礼儀作法を駆使して女子生徒達に声掛けをしてみよう。
そうだな…今度転校してくるからその下見に来た、という設定にでも。
一応、騎士道精神は叩き込まれたからな、女性や幼い子に何かあれば手を貸したりもする。
すみません。学校の中を生徒さんに案内してもらえると聞いて来たのですが…
よろしければ案内してもらえないでしょうか。
……貴女方にしかお願いできそうになくて
ユーベルコードは万が一敵と接触してしまった時のみに使用する。
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双子の人狼、アルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)・セラータ・ファルチェ(蒼蒼の盾・f03368)と、隠月・ヨル(人間の死霊術士・f10374)は迷宮の低層階を連れ立って歩いていた。
「学園の中に迷宮があるなんて、不思議だねぇ。そう思わないかい?セラータ」
紺碧の瞳を揺らして、アルバが呼びかける。
「そうだね、アルバ。聞いたところによると、ここではオブリビオンは『災魔』って呼ばれているそうだぞ」
暁闇の瞳を細めて、セラータが応える。
そんな二人の後ろ姿を眺めながら、ヨルがころころと笑う。
「こうして後ろから見ていると、本当に二人はうり二つなのね」
――かわいい、と二人の風貌を評して琥珀の瞳が好奇心に輝く。
「そうだね」「そうだな」と二つの声が重なって。
カラコロと少女がまた笑う。
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二人の猟兵はノートを追って迷宮に突入した学園生たちに、親しげに声をかけて回る。この世界では猟兵たちは全て「転入生」として歓迎されるため、彼らを訝しがるものは多くは無い。何より、学園生そのものが変わり者の集まりなのだ。災魔に立ち向かうべく教育と訓練を受けるこの学園の学生たちは、その全てがいずれ劣らぬ手練れぞろい。
それであれば、年若い少年少女であってもこの騒動にあって好奇心のままに迷宮に足を運ぶものは少なくない。
「すみません、そこの貴女。学園内を案内してもらえると、助かるのですが」
「学園の中にこんな大きな迷宮があるなんてね。驚いちゃったよ。キミたちみたいなカワイイ女の子が迷宮の中を歩いていて、危なくないの?」
迷宮内を探索して回る少女たちに、にこやかに笑いかけながらセラータとアルバは話しかける。
「そうそう、こんな地図のきれっぱしが学園の中で見つかってさぁ」と猟兵たちの気を惹こうと話しかける少女らに相槌を打ちながら、一行は迷宮を探索する。
時に罠を超えながら、またある時はモンスターから彼女らを護りながら。それはさながらちょっとしたアトラクションのようでもあり。数時間ほど探索を共にすればおおよその状況はアルバとセラータの把握する所となり、手元には彼女らに手渡された地図の写しが何枚か。
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「あらあら、随分と出来がいい地図なのね」
――これなら学生たちが騙されるのも無理はないわねと、二人が手にする地図の写しを後ろから覗き見てはヨルが頷く。これなら本命の『黒歴史ノート』もさぞや面白い出来なのでしょうと期待に胸を躍らせながら、彼女は迷宮に歩みを進める。
「こんにちは。あなた……学園の生徒さん?」
ふらりと迷宮の物陰から現れて声を掛けるヨルの姿は、壁に掲げられた松明の灯に照らされて、あたかも薄闇から少年を誘う夢魔の如く。蠱惑的な瞳と優しい声音に誘われてふらふらと寄れば、その後ろから死霊騎士と死霊蛇竜が無垢な犠牲者をそっと抱きしめる。
「ぎゃぁ!」と飛び上がって一目散に走り去る姿を見遣りながら、ヨルは口に手を当ててクスクスと笑みを零す。
「あの辺りにはゾンビを使役する魔女がいる」
そう、まことしやかに学生の間で噂が流れたのはまた後日のお話。
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なかなか首尾は上々だね――語り合う猟兵たち。
彼らの働きによって、地図のピースもおよそは埋まりつつある。
だが、まだいくつかの区画の情報が足りない。肝心のノートの在り処も杳として知れず。
成功
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ベール・ヌイ
「黒歴史とは・・・なんぞや・・・」
年齢的に黒歴史がないためまったくわかってないですが依頼は依頼でしっかりやります
とりあえず罠にかけましょうかね
【楽器演奏】で【誘惑】して袋小路にお誘いしましょう
きたところをゴリラのハグで絞め落とせばいい感じかも?
念の為【動物会話】でそれとなく動物さんたちにお願いして誘導してもらうのもありかもしれませんね
唐木・蒼
ノートを隠したって学生にとってはやっぱりお宝だったのかしら…ある意味伝説みたいに語られてる今の状況はむしろ望む所だったのかも?真実はわかってても宝探し的冒険はできるし、うん、ここはノッてみるのも面白そう!
【POW】
私は今回が初めてのアルダワ魔法学園で地の利はない、罠を作れる知識も器用さもない。となれば…力づくね!
結構な騒動になってるみたいだし、見つけたって学生とか地図のピースがある場所の噂なんかその辺で訊いてみましょう。情報を元に接触して「気絶攻撃」で穏便に譲って貰ったり、並み居る学生をUCと「衝撃波」で吹き飛ばして穏便にピースを入手していきましょう。
情報は都度味方猟兵と共有するわ。
キャナリニア・カルコメラン
何でも、最強の武器と必殺技と詠唱を考えてみるまでが義務教育らしいのでありますなー。
自分はしていないでありますよ?実は王族に代々受け継がれた特別な人形で、満月の夜には瞳の奥に紋章が浮かび上がったり、なんーて設定など考えたこともないのであります。
はい、そんなことよりも宝の地図でありますね。奥に通ずる道を召喚したスクラップの壁で塞いでしまい、行き止まりの方へと誘導してしまうのはどうでありましょう。上手く周りの壁と同じような芸術性の高い壁なら時間稼ぎになりそうであります!
後は、そうでありますな。操り糸を通路足元に張って、引っ掛けたら瓦礫が崩れかかってくる拠点防衛用のトラップでも仕掛けておくであります。
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「あれ……おっかしいなぁ。この辺りに通路があるはずなんだけど」
学園の片隅から地下へ延びる迷宮の入り口付近。その前で、一人の青年が何かを探してウロウロと彷徨っていた。その片手には、ボロボロに擦り切れて、光を黒く照り返す羊皮紙が一枚。これまでに猟兵たちが手に入れたピースよりも一際古ぼけたそれは、だが遠目にも丹念に書き込まれたインクの染みが見て取れた。
「ふふふ、迷っているでありますな。だがしかし!この自分が作り出したスクラップの装飾は完璧。そう易々と見破れはしないのであります」
キャナリニア・カルコメラン(スクラップドール・f07077)は、自らが作り出したスクラップの壁を前に右往左往する青年を見ながらほくそ笑んでいた。
「しかし、黒歴史ノートですかー。一体全体どんなイタ……カッコいい設定が書いてあるのでありましょうなぁ?」
そう、かく言う自分も実は王族に代々受け継がれた特別な人形なのであります。満月の夜には瞳の奥に隠された王家の紋章が浮かび上がり、真の力を――そんな妄想を「むふふ」と頭に浮かべながら、キャナリニアは手に繰り糸を握りしめて機会を待つ。
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「黒歴史……とは?」
其れはなんでありましょうか――と小首を傾げてベール・ヌイ(桃から産めれぬ狐姫・f07989)は疑問符を浮かべる。幼い妖狐である彼女にとっては、黒歴史はこれから来るべきものであったか。もしくは……かつて名前と共に捨てた過去が彼女にとってはそれであったか。いずれにしても、今の「ヌイ」にとっては与り知らぬことである。
それはそれとして、仕事は仕事。
「今は亡き雷獣よ、どうかその力をここに……」
気を取り直したヌイがパンッと両の掌を合わせて祈りを捧げると、その声に応えて彼女が使役する【雷獣ゴリラ】が「とぷん」と空間の切れ目から現れる。
「うんうん、来てくれてありがと。ボクが楽器を演奏しながら、みんなを誘惑して連れてくるからね。キミは来たひとを電撃でハグして」
そう雷獣に語り掛けると、ゴリラは力強く「ウホホッ」とドラミングして応える。恐るべきゴリラの罠が、犠牲者を待ち受けていた。
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「隠されたノート。宝探しの冒険みたいで面白そうね!」
唐木・蒼(喰らい砕くはこの拳・f10361)は眼を爛々と輝かせて言った。豪放磊落な気性を持った彼女は、この異界……アルダワ魔法学園にあってより一層その好奇心を強くしていた。
ここは彼女にとってはある意味で天国のような場所。ギチギチと噛み合い回る歯車に蒸気機関、それを使いこなすはファンタジーな衣装に身を包んだ学生たち。そんな学園の中に密かに仕舞いこまれたノートの物語は、例えそれが単なる黒歴史ノートであると分かってもなお彼女の心を惹き付けていた。
「でも……そうね。私は学園に来たのも初めてだし、勝手もよく分からないわ」
だから、力ずくで聞き出せばいいのよね!と拳を打ち付けると、狐火がその両拳に宿って紫焔がぼぅと燃える。
●前門のゴリラ、後門の狐。そして迫る壁。
「――ひっ……なんなんだよ、お前ら!俺は何も知らないって!!」
哀れな男子学生の悲鳴が細い通路に木霊する。そう、彼は悪くない。
ただちょっと運が悪く、ただ軽率にヌイの誘いに応えてホイホイ付いていったのが良くなかった。だが、それも思春期の青年ならば無理もない事。
……まさか、その先にバチバチと雷をその両手から走らせる毛深いゴリラと、にこやかに殺気を漲らせたバーバリアンがいるとは思うまい。
「た……助けてくれぇ……」
正面からは両手を広げてゴリラハグを繰りだそうとする黒い影。背後からはゴツンゴツンと床や壁を砕きながら「お宝について知ってることは全部教えなさ~い!」と迫る蒼の姿。ほうほうの体で逃げ出す青年の足元に、「えいっ」とキャナリニアが張った繰り糸がその動きを絡めとる。
ガラガラ、ガッッシャアァァアァアン!!
壁が崩れ、瓦礫が青年と悲鳴を埋め尽くしていく。
……ちょっと、やりすぎたかな?
思わず顔を見合わせた猟兵たちの足元へ、ヒラヒラと羊皮紙が飛ばされて。
それは、求めていた最後のワンピース。地図の片隅、迷宮の最下層には宝を示す×の印が朱く記されていた。
大成功
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第2章 冒険
『あれトラップダンジョン』
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POW : 壁はぶち破るもの、床は掘り抜くもの。筋肉は全てを解決する。
SPD : 罠回避!罠外し!当らなければどうということはない!
WIZ : 仕掛けを見破れ、魔力を感じろ。頭脳の力で乗り越えろ。
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猟兵たちの手元には迷宮の地図が。
未だその全容明らかならぬ百万迷宮であれば、その地図に記された部分はごく一部。
だが、その片隅には確かに宝(黒歴史ノート)の在り処を示す×の印が。
さあれば為すべきはただ一つ。迷宮へ潜りて其の宝を手にするのみ。
シン・ドレッドノート
「行きなさい、チェイサー」
【漆黒の追跡者】で漆黒の鴉を召喚、先行させます。
私も罠には少し心得がありますし、自分ならどう罠をしかけるか、と考えて床、壁、天井の状態に注意しつつ進みますが…
ま、解除するより回避した方が早いですし、トラップを力技で(鴉でトラップを発動させた上で)回避しながら探索していきます。
いつでもどこでも反応できるよう体勢を整えて進むとしましょう。
左手のビームシールドもすぐに起動できるよう準備しておきます。
「確かに、当たらなければどうということはありませんね。」
「さて、次は…?」
電脳ゴーグル『怪盗の単眼鏡』のコンピュータに取り込んだ迷宮の地図を確認しながら探索を進めます。
ユリ・アップルヤード
「さぁさぁ、いざ黒歴史ノートを暴きに行こうか!中身が楽しみだね、意外と面白い発想もあるかも?」
パパッとリアンで壁ごとブチ抜いて進んで行こう。
有事に備えて、リアンは鉄柱と大楯をいつでも使えるようにしておこうね。
コロマルとルーも戦闘態勢を維持させるよ。
ルーには壁を抜く前に一仕事してもらおう。内臓のレーダーで壁の向こうの反応を伺ってみようね。敵反応があるかもしれないしね。壁を打ち抜くのはいい奇襲になるはず。
リアンには巨体を生かして全体の盾になってもらいつつ、薙ぎ払ってもらうよ。
コロマルとルーは有事の援護射撃と牽制。
ヒューズは念のため私の直掩。
リアンが前面にいるから大丈夫だと思うけど、念のためにね。
ベール・ヌイ
「ゴー・・・ゴー・・・ゴリラが・・・ゴー・・・ゴー」( ˘ω˘)スヤァ
【楽器演奏】で【誘惑】した動物さんたちに【動物会話】でお願いして罠の有無を調べてもらいましょう
その後はゴリラの背に乗って突撃します
多少の罠はゴリラの腕力で破壊してもらいましょう
ちょっぴりゴリラの電気が漏れて感電するかもしれませんが、ヌイは激痛耐性持ちです。気にせず寝ます
唐木・蒼
【POW】
地図が完成して、件のノートの場所がわかったと。迷宮にはトラップもあって普通に攻略しようとすると時間がかかると。なら単純明快、目標まで一直線に突き進めばいいのね!力はパワーよ!!
とりあえずまずは階層合わせ、見えざる拳「鎧砕き」とUCで下に下にー。壁巻き込んで崩落とか降りてる最中に生き埋めも拙いから瓦礫はこまめに取り除いて、土ならきちんと固めながら進みましょう。目的階層まで降りたら次は方角合わせて横に横に。
床も壁も、罠を殴って発動は自分も味方もキツいだろうから罠探知する味方がいれば探知の結果を教えて貰ってから掘り進めたいなー。
気をつけても罠はかかるかも…卑猥系にかかりませんように!
ヴァシリッサ・フロレスク
・ウル(f09937)と共闘、アドリブ大歓迎!
・手元の地図と、ウルちゃんの眼と勘を頼りに進むよ。頼もしいねえ。
・ウルちゃんが罠や最短路を見抜いたら、パイルバンカーを【弐八式掩蔽壕爆砕鎗(ランス・オブ・チェルノボグ)】に換装して発破!罠や壁ごと木端微塵だよ。
……他の猟兵を巻き込まなければいいけどね。
・万一罠に嵌ったら、【早業】の銃撃や【武器受け】で強行突破するよ。
それにしても、『黒歴史』ねぇ
……全く、過去にするから葬りたくなるんだ。
まあ、“元始からの記憶(アカシックレコード)”を今この瞬間も刻んでいるアタシには、隙は無いよ。……皆もそうだろう?
――さあ、刹那(いま)を愉しもうじゃないか。
ウル・ヘーニル
共同プレイングf09894
SPD 暗視、野生の勘、ガジェットを駆使し、最短ルートで進行
危険個所は極力避けつつ、大回りになる際は連れが筋肉解除
「なあなあ、くろれきしって何?」
ってリサに聞いたらあやつ目が泳いでおった。ようわからんが、なんぞゆかいなものなのはまちがいない。
「よーし、おもしろいもの頼むぞピヨちゃん!」
小さな機械にトラップトラッカー?って書いとる。あぶないものが前にあると光の点で表示されるようじゃ。
「お、この辺怪しいニオイがするのぉ。じゃ、あとリサよろしく~」
あやつの爆発怖いからわしは後ろに下がっとこ。
「リサくろれきし~~!」
声かけたらなんかビクッてなった。しばらくこれで遊ぶんじゃ。
隠月・ヨル
学生が隠した…しかも想定される内容からするにおそらく単独で…
そのあたりも考慮して動く必要があるかしら?
【リザレクト・オブリビオン】で喚びだしたふたりのうちひとりは私を守らせましょう
もうひとりを先行させるわ。罠の露払い、お願いね?あからさまな罠はちゃんと外してね。
外すのが無理そうだったらわざと罠を発動させましょうか。
倒れちゃったら…喚び直してもう一回よ、がんばってね。上手にできたら頬にでもキスしてあげましょうか。
物理的に解除できる類でないあからさまな罠があったら…そうね、地図に何か書いてあったらソレが鍵かもしれないから唱えて?みましょうか。
そういった病の定番よね、確か。
セラータ・ファルチェ
とりあえず、アルと協力しながら罠は回避して進もうか。
余計なダメージを食らうのもこの後のこと考えると良くないだろうから
野生の勘・見切りの技能を活用して罠の回避をする。
まぁ、罠を発動前に発見することが出来れば解除して先に進もう。
丈夫だから…と言ってはいるけれど、アルが心配だからなるべく注意して進む。
大事な家族なんだから当たり前だろう?
回避のタイミングを逃してしまったなら、スナイパー・なぎ払い・武器受けなどの技能を活かしてどうにか切り抜ける。
アルバ・ファルチェ
罠を外す器用さは無いし、頭脳もね…そう言うのはセラに任せた。
と、言うことで!セラがわからなかった場所は各種耐性に見切り、第六感まで駆使して突き進んでみようかな。
…あ、僕は丈夫だから平気だけど皆は危ないからちょっと離れてね?
大丈夫、大丈夫。僕には神の加護もあるから…祈りは届く、ハズ……届くよね?(何となく不安になったらロザリオを軽く握り締める)
あと、万が一セラや他の人が罠にハマりそうだった場合は庇えるなら庇うし治療が必要なら治療もするよ。
特にセラは大事な家族だから、1番に守る。
しかし盾役兼役囮兼治療係…ちょっといろいろ抱えすぎかな?
でもこれが僕の生きる方だから仕方ないよね☆
●
『この地図を手にし者に告ぐ。学園の迷宮最深部、そこに我が叡智を遺す。百の罠と千の苦難、万の敵を退けて辿り着きし強者にその全てを授けよう――法衣を纏いし全知全能の勇者より』
ピースをつなぎ合わせて解読した地図には、作者からと思しきメッセージが朱の文字で綴られていた。その文字もまた手にした地図と同じ年月を重ねてきたのであろう……所どころに掠れ、滲んだそれは挑戦者を迷宮に誘う。
地図を目にした猟兵たちの反応は千差万別だった。
●いざ往かん万象司る根源へ
「まったく、『黒歴史』だなんて。過去の遺物として記憶の海に沈めようとすれば、その分だけ浮き上がってくるのは当然じゃないか」
――そう思わないかい?とヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)は傍らのウル・ヘーニル(キマイラのガジェッティア・f09937)を振り返って問いかける。 愛用のパイルバンカー……『スヴァローグ』の切っ先を撫でさすりながら「途中に立塞がるものは、この血で全て浄化(もやし)尽くしてあげよう」と笑う彼女を周囲の猟兵たちは胡散くさげな目で遠巻きに眺めていた。
――約3名を除いて。
「いずれにしても、だ。“元始からの記憶(アカシックレコード)”を今この瞬間も刻んでいるアタシには、隙は無いよ」
安心しな、と太鼓判を押すヴァシリッサの姿に、猟兵たちの眉間のシワが一層深くなったのはむべなるかな。
「リサ……なぁなぁ、リサ!聞いておるのか?」
悦に入って自分の世界に浸ってしまった相方の肩をゆさゆさと揺さぶりながら、ウルは逆に聞き返す。
「くろれきし……って何じゃ?」
ヴァシリッサの問いかけは、残念ながらどうやらウルには理解できなかったようだ。物腰は穏やかな老人のそれだが、その実、ウルはまだ齢13歳のキマイラ。好奇心真っ盛りの彼にとって、「黒歴史」という単語はとても魅力的に見えたようだ。
「ようわからんが……何ぞ、ゆかいなものに違いないのじゃ!」と一人合点した彼は、にんまりと笑みを深くしてバナナを一本、懐から取り出して食べる。
バナナはおやつに入りますよね?
「ゴー……ゴー……!ゴリラ……が、あぁっ!?」
ゴリラが――何?という周囲の猟兵たちの疑問をよそに、ヌイは『雷獣ゴリラ』の背に乗ってすやすやと寝息を立てていた。時たまゴリラから電流が漏れるのか、「バチィッ」っと肉のはぜる音と何かが焦げるような音がするが、当の本人は穏やかな顔でぐっすりと寝入っている。恐らくはこれまでの地図探しで体力を使い果たしてしまったのだろう。
そして、そんな主を護るのは自分の役目とばかりに、ウホホホホッと勇ましくドラミングするゴリラ。
……大丈夫だよね、これ。いきなり襲ってこないよね?
猟兵たちの脳裏に一抹の不安がよぎったが、そんな心配を知ってか知らずかゴリラはのっしのっしと先頭を歩んでいく。なんだかその視線がチラチラとウルのバナナに向けられている気がするのは、考えすぎだろうか。
封印されし秘宝(黒歴史ノート)を暴きに、いざ往かん――目を輝かせてユリは猟兵たちにそう宣言する。「そう、もしかしたら新しいガジェットの着想が得られるかもしれないしねぇ」と楽し気に呟く彼女の瞳には、星さえ飛んでいるかのようだ。
『この世で最も美しく、神に愛された芸術品!それこそが機械!』
みんな、お出で――と声を掛け、自身の持てる技術の粋を集めて作り上げた最高傑作のロボットたちを召喚すると、ユリはそれぞれに対して事細かに指示を出してゆく。
「さぁさぁ、みんな。早く行こうじゃないか!」
改めて自身が喚び出した機械巨人『リアン』を先に立たせ、彼女はずんずんと大股に歩を進める。
●姫は騎士を侍らせて進む
その後方では、蒼とシン・ドレッドノート(真紅の奇術師・f05130)、ヨルとアルバ、セラータがそれぞれが隊列を調整していた。
「トラップダンジョンの定番って言ったらエッチな罠じゃないかしら。もし、そんなのに掛かっちゃったら嫌だなぁ」
そう言って普段の自信に溢れた笑みを心なし曇らせ、俯いて呟いたのは蒼である。気風の佳い性格が故に誤解されやすいが、妙齢の女性であり、旅先ではファッションや文化の違いを楽しむのを良しとする彼女。自然と心配事もそういった方面に向いては行く手に待ち受けるであろうトラップを想像しては身震いする。内心の不安を映してか、常に蒼の身体から漏れ出ている青い焔もちろちろと小さく間欠泉のように光を放っていた。
「心配はいりませんよ。唐木君のことは私が護りましょう」
稲穂色に輝く尾と長くポニーテールに結わいた髪を揺らして安心させるようにシンが蒼に語り掛ければ、蒼も自身の尾をぶわっと膨らませて喜び、微笑み返す。
「お守りにこれを上げましょう。持っていてくださいね」
そう呼びかけて虚空で手首を返す事、数度。
直前まで何も持っていなかったはずのシンの手の中には、自身がトレードマークとする赤い狐を描いたカードが一枚、何処からともなく現れる。淑女をエスコートする紳士の如く、シンは蒼の手にそっとカードを握らせたのだった。
「さぁ、仕事の時間よ。いらっしゃい」
ヨルが呼びかけてディナーベルを振ると、その声に応えて昏い顏をした『死霊家令と死霊執事』がいずこともなく現れる。礼装に身を包んだ従者たちは主の命に応え、家令は露払いに先行し、執事は影の如くヨルに付き従う。その姿はまるで舞踏会に招かれた令嬢のようにも見えた。
(黒歴史ノートがお宝ということは、一人で隠したってことで良いのかしら?)
それならば罠や仕掛けの内容も自ずと予想が付きそうね――そう、ヨルはまだ見ぬ迷宮の深部に待ち受ける脅威に思いを巡らせる。
「それじゃ、私の家令が先に露払いをしますから」
殿の警戒はあなた方にお願いしますと、猟兵たちの最後尾を歩く人狼の兄弟にヨルが声を掛けると、恭しく執事も礼をして主の意を伝えるのだった。
「ねえ、セラ。ホントの所、なんで迷宮の奥にノートなんて隠したんだろうね」
双子の人狼、アルバは前を歩む兄に話しかけながら迷宮を歩いていく。迷宮の通路は暗く、手にしたカンテラの灯が揺れるたびに影が大きくさざめいては、あたかも何者かの気配があるかのように錯覚させる。光の届かぬ階段の下、大きく曲がりくねった通路の奥に伸びる影は不気味さを増してアルバは思わず手にしたロザリオを握りしめる。手元に輝く澄んだ碧いロザリオの装飾を指でなぞると、不思議と心が落ち着く気がした。
「……俺にも理由は良く分からないけど」
暗闇を見据えて手にした銃に弾を込めながら、セラータは言葉少なに返す。グリモア猟兵の予知に依れば、オブリビオンもどうやら迷宮の奥、宝を求めて彷徨っているとの話。
――それならば、余計なダメージを追うのはやはり避けるべきだろうと彼は神経を研ぎ澄ませながら進む。幾ら弟は誉れ高き盾の騎士と言えど、兄からすれば大切な家族が心配になってしまうのは自然なこと。
(アルは俺が護る……)
そう決意を新たに、セラータもまた猟兵たちと共に進んでいく。
●迷宮攻略は土木工事と共に
猟兵たちによる迷宮攻略は、地図の助けもあってか怖い程に順調に進んだ。
迷宮に入る前に立てた計画のもと、シンが召喚した『漆黒の追跡者』が迷宮内の饐えた空気を叩いてバサバサと羽音を立て、一行を先導する。
「セラータ君、そこの壁の部分。少しへこんでいる窪みのところを狙えるかな」
カンテラの明かりが届かない先まで見通すことが出来るほど暗闇でも光をよく集める瞳と罠使いとしての知識を活かし、シンがトラップの仕掛けられた箇所に当たりを付けて進んでいく。
そこに、セラータがロングボウを構え、精神を集中すると『千里眼撃ち』で矢を放つ。シンが示した位置に吸い込まれるように矢が突き刺さると、カシャン!と小さく何かが壊れるような音がした。遠くは100メートル以上も離れた敵をも貫くことができるセラータの弓の腕は、トラップの発動に必要なセンサーなどの仕掛けを壊すのにうってつけであった。
「この程度……私にかかれば造作もありませんよ」
針の穴を通すような精密な射撃を見せた後にも関わらず、淡々とそう呟くと、セラータは壁に刺さった矢を抜いて確認する。果たしてそこには、前を通った犠牲者の体温に反応して自動的に火矢を放つ罠の仕掛けがあった。
「リサはくろれきしなんじゃな?」
「違う!ウルちゃん、それは絶対に違うから!?」
迷宮にヴァシリッサの悲痛な叫びが木霊した。何やら『黒歴史』を面白いものだと認識したウルは、道中ウルを弄り倒すことにしたようだった。
「リサ……『くろ』うさせてすまないの」
「リサの『くろ』……ちがった。クルースニクは良く切れるのう」
「切れたナイフ――二つ名?」
「リサ……」
――さあ、刹那(いま)を愉しもうじゃないか。最初はそう嘯いていたリサであったが、次第に笑みが引きつり、目線が泳いで最後には頭を抱えてしゃがみ込む。
「リサ……?」
「もう勘弁して~~」
「いや、この辺怪しいニオイがするからのぅ。景気よくぶっ飛ばしてくれないかの?」
見ればウルが呼び出したガジェット……『トラップトラッカー』がチカチカと赤と黄のライトを明滅させ、危険を知らせている。どうやらこの先に迷宮の主が仕掛けたトラップがあるようだ。
「……消し飛べ!」
いつものニヤニヤ笑いは影を潜めて、真剣な面持ちになると、ヴァシリッサは『弐八式掩蔽壕爆砕鎗』を構えてウルが指し示す箇所を発破したのだった。
ガキッ……ドッ――カアァァァァァン!!
迷宮の壁に杭が突き立つと、一拍置いて爆発性のヴァシリッサの血液が沸騰したように泡立ち、壁を構成するレンガやモルタルを土台ごと吹き飛ばすのだった。
「ゴリゴリ……ゴーゴー。強いぞ、ゴーゴー……Zzz」
ヌイは相変わらず寝ていた。そしてゴリラは相変わらず一団の先頭を歩いていた。
背中に背負ったヌイの命令に従って、寡黙な森の賢者は迷宮を踏破する。その力強い両の腕で、猟兵たちの前に立塞がる壁を、敵を、罠をゴリラは粉砕する。猟兵たちと言葉は通じなかったが、確かにそこには「必ず秘宝(黒歴史ノート)を手に入れる」という強い意志が間にあったはずだ。
いつしか、猟兵たちは前を歩くゴリラの背中に頼もしさすら感じていた。
――バチバチバチ!!
時たま感電していると思しきヌイの様子は相変わらず少し不安ではあったけれども。
ガン!ゴン!!ゴウゥゥゥンン!
砂煙をもうもうと巻き上げながら猟兵たちは尚も進む。地下深くに潜るにつれて、壁は厚く、固くなり……力押しでの破壊活動は困難を極めた。ダンジョンそのものが崩落するような危険はどうやら無さそうだったが、派手な物音を聞きつけてかモンスターは幾重にも波のように押し寄せる。
その悉くを、アルバは殿となって凌ぎきる。
(正直なところ、楽ではないね。でもこれが僕の生きる道だから……!)
「だから、盾の騎士の血にかけて、僕は皆を護ってみせるよ!!」
身体を投げ出して『Scudo di Orgoglio』を頭上高く掲げると、薄暗い迷宮の奥深くにあるにも関わらず盾が白昼の太陽の如く眩い光を放つ。その光は暖かくアルバの身を包み、仲間の為に何度でも立ち上がる力を湧きあがらせるのだった。
●静かなる地の底にて
「なるほど、この奥に広い空間があるみたいだね」
それにしても……この壁はさすがに私のリアンでも一人では骨が折れそうだ。――そう、ユリは迷宮の壁を叩きながら呟く。ここは迷宮の最奥部。赤茶けた煉瓦造りの通路はいつしか天然石の洞窟となり、ピチョン……ピチョンと水滴が石畳を穿つ音が反響していた。
地図に示された宝の在り処はこの岩壁の奥。その間にはかつての崩落の影響だろうか、大岩がぴったりと行く手を閉ざしていた。
『万能型ドローン「ルー」』が内蔵するレーダーで反響定位した所によると、岩の向こう側はぽっかりと開けたホールのような空間になっているようだったが、だがしかし、力自慢の猟兵たちが自らの獲物を手に岩を砕こうと試みること幾たびか。火花を散らして刃を突き立てるも岩が砕ける気配はなかった。
「フフッ、ここはこの私に任せてもらえないかしら」
蒼は余裕すら感じさせる笑みを湛え、一団から一歩、前へ歩みを進める。
――こういったのは、ちょっとしたコツがあるのよね……。
そう呟きながら息をゆっくりと吐き、精神を統一すると「破ッ!!」と気合と共に真っすぐにその右拳を撃ち抜く。清澄な湖の水面のように、穏やかに、滾々と力を蓄えた青い焔が丹田から拳へ、そして岩へと伝播する。
――ピシリ。
――ピシピシピシ!
――ガラガラガラ!!
巨岩の表面にうっすらとヒビが入ったかと思えば、刹那、亀裂は瞬く間に蜘蛛の巣のように一面を覆いつくして……終いにはバカンッと音を立てて岩は割れ落ちる。
●そして……。
岩が崩れ落ちた先は、光り輝く苔で覆われた洞窟だった。
太陽の光など届くべくもない地の底であるにも拘わらず、ぼんやりと淡く緑色に光る苔が辺りを照らすため、猟兵たちは苦も無く洞窟の内部を見て取ることが出来た。広さは半径15メートル、高さ20メートルほどであろうか。
その最奥部に。
石灰岩で作られた白亜の祭壇が、前に立つべき者を待ちわびて永き時を超えて佇んでいた。その両脇には大剣を掲げた甲冑姿の騎士を模した石の像が二体。祭壇の上で各々が剣を交差させるように立っている。
『汝は何を求める者か?』
祭壇の前まで歩みを進めたヨルがもう一歩を踏み出した時、何処からともなく声が聞こえた。
『再び問う。汝は何を求める者か?』
「これに答えないで宝を取ろうとすると、襲って来るっていうのは定番よね」
どれどれ……と手元の地図に視線を落とし、書き込まれた内容を確認しなおすと、一区切り置いてヨルは高らかに謳う。
「我求む、法衣を纏いし全知全能の勇者が遺せし叡智を!」
多分に芝居がかった台詞回しでヨルがそう宣言すると、ゆっくりと音もなく石像が剣を下ろして直立不動の体勢を取るのであった。
『汝を百の罠と千の苦難、万の敵を退けし強者と認め、我が叡智を授く』
地の底から響くその声が猟兵たちを資格ありし者と認めたその時、彼らの背後から新たな声が聞こえた。
成功
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第3章 ボス戦
『騎士の怨鎧』
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POW : 戦鎧の妙技
【縦横無尽の剣閃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 闘鎧の秘技
【自身に刻まれた戦闘経験から的確に】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 魔鎧の禁忌
【魔核の稼働制限を解除。超過駆動状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑17
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●
「ここまでの案内、ご苦労だった。罠を越える手間が省けたぞ」
チャキリ……と手にした両手剣を霞の構えに携え、眼前の黒騎士は猟兵に告げる。
学園の叡智の粋、その真髄たる宝は我のものだ――と。
よもや宝の中身は黒歴史ノートだと知る由もない騎士は、殺気をその身から立ち上らせている。どうやら、戦う他は無いようだ。
隠月・ヨル
【SPD】
こんな女子供の後をつけるなんて…
騎士様の様なお姿をなさっていてもまるで盗賊(シーフ)のようね?
だから、あの方もあんな風に…いえ、これ以上は言い過ぎですわね
そんな感じに、まるでどこかで黒騎士の陰口を聴いたことがあるかのように挑発しながら回避に専念いたしますわ。
攻撃は他の方におまかせしましょう。
随分と格好付けなさってますし…黒歴史の病に罹患してらっしゃるのとあまり差はなさそうです。
そういう方って現実の周囲の評価を気になさリますものね。そこらへんを責める感じの《傷口をえぐる》でしょうか
スキをみて【咎力封じ】で黒騎士を拘束しますわ。
この方を持ち帰って材料にするのも良さそうです
…冗談ですわよ?
「あらあら、精強な黒騎士様ともあろうものが女子供の跡をつけて……それどこか、その宝を横取りしようだなんて」
随分と浅ましい、まるで盗賊のような振る舞いではありませんか――そう、ヨルは『騎士の怨鎧』を前に一人、頷いていた。
「なるほど、やっぱりあの方が仰っていた通り……」騎士だなんて立派なものではないと継ごうとしたその言葉は、しかし、無言で騎士が振り下ろした剣に断ち切られる。
「お喋りが過ぎるようだな。五月蠅い女は好みではない」
話し終わるのを待たずして黒騎士が振り下ろしたその切っ先を、ヨルは最小限の動きで躱して、なおも笑う。
「今度は不意打ち?その御大層な騎士の鎧は飾りなのかしら」
クスクスと口に手を当てて笑いながら、ぽーんとステップを踏んで距離を取ると、その間隙を埋めるように【咎力封じ】をお返しとばかりに繰り出すヨル。
何の変哲もないものに見えたヨルの服の袂からスルスルと伸びる【拘束ロープ】は、狙い過たず黒騎士の左の足首に絡みつく。グイ……とヨルが力を籠めてロープを引けば、屈強な黒騎士と言えどバランスを崩してその歩み足がもつれる。そこへ、時間差で襲い掛かる【手枷】が手首と剣を拘束し、その動きを制限する。
「ふふふ、何とも情けないものですわね。滑稽だわ」
自身を見下ろして冷笑するヨルの姿に、黒騎士はギリ……と甲冑の奥の顔を歪ませて歯噛みした。
成功
🔵🔵🔴
ユリ・アップルヤード
「んー、騎士のお兄さんはやっぱりただの甲冑かー。なんか中身機械だったりしないの?」
機械巨人リアンは鉄柱と大楯で、薙ぎ払い、叩き潰していこう。
コロマルとルーは騎士の動きを妨害するように、斉射。小型の機動力を生かして、ガンガン動き回りながら妨害してやろう。
ヒューズは私の直掩につきつつ、狙撃態勢を維持。寄ってきたらヒューズの銃剣捌きと私の解体工具で殴りつけるよ。
向こうが大ぶりな攻撃をしてきた瞬間が勝負所。
リアンにカウンターでショルダータックルをぶつけさせて、騎士の態勢を崩させるよ。
そしてその瞬間、狙いを澄ませてたヒューズの狙撃でShoot&Bomb発動。
でかいのを叩き込んでやろう。
唐木・蒼
幾多の罠が張り巡らされた危険なダンジョンを踏破しついにお宝へ、しかしそこに立ちはだかるは同じく宝を狙う強大な敵、と。字面はカッコいいのよねー…事実を知っちゃってると真面目にやってる敵さんが本当可哀想だわ。せめて幻想を抱いたまま散らせてあげたい(笑)
【POW】重視
獲物的に私の得意な近距離だとちょっと分が悪いかも…まぁ味方の猟兵もいるし、タイミング合わせて手数で勝負ね。
味方の攻撃に合わせてUCの狐火展開、敵周囲を舞うようにしつつ時々突っ込んでは止まったり方向転換したりで気を散らすわ。そう撹乱しつつ「ダッシュ」からの「ジャンプ」で頭上へ、降下の勢いを乗せて見えざる拳「鎧砕き」を叩き込む!
体勢を崩していたのもわずかな間。手にした長剣で強引に拘束ロープを切り落とすと、ガシャンッと鎧を鳴らしながら黒騎士は猟兵たちと間合いを離す。
「生意気な小娘どもよ。大人しく秘宝を渡せば命ばかりは取らずに措こうとも考えたが、もはや手加減はせぬよ」
剣を収めて大仰な身振りで彼が十字を切ると、鎧の胸部に埋め込まれた深紅の宝玉がその輝きを深くする。
「ククク……恨むならば俺を本気にさせた自分自身の浅はかさを呪うんだな」
こうなった俺は加減をしらないのでな――つい、やり過ぎてしまうかもしれん。
そう呟いた黒騎士の姿が陽炎の様に揺らめいたかと思うと、手にした剣はツヴァイハンダーかの如く巨大になり、洞窟の明かりを照り返して鈍く輝く。
その手を戒めていた手枷もブチンッっと音を立てて千切れれば、動きを遮るものが無くなった騎士は試しとばかりに巨重剣を軽々と振り回す。風鳴り音すらビリビリと大気を震わすほどのその圧力を前に、蒼は、躊躇なく飛び込む。
(まるでゲームの宿敵イベントの様ね……その宝が『黒歴史ノート』じゃなかったら)
そう一人呟くと、蒼は自身の異能で喚(よ)び出した狐火を縦横無尽に飛ばしながら黒騎士を翻弄する。その足に履いた『狐火ブーツ』に火が灯れば、跳ね脚は加速度を増してステップを踏む。
私がまず黒騎士に隙を作らせるから――そう声には出さずに目線でユリへ合図すれば、ユリも意図を汲んで小型のロボ……『コロマル』と『ルー』に指示を出して敵の視線を散らして的を絞らせない。
「小賢しい真似は終わりだ。全てまとめて薙ぎ払ってくれる」
チラチラと目の端に映る狐火やドローンに業を煮やしたか、黒騎士は手にした剣を腰溜めに構えなおし、気合を溜めてゆく。
「大技、来るわよ。気を付けて」
「分かってるよ!ヒューズ、私を護りなさい!!」
声を掛け合って防御態勢を取る蒼とユリを睨みつけ、黒騎士は倒れんばかりの前傾姿勢で突撃し、その勢いのままに大剣を薙ぎ払う。
「ぬうぅぅぅんんッ!!」
邪ッ――と裂帛の気合と共に振り抜いた剣の軌跡を、蒼は上空へ飛び上がって避け、ユリは近衛としたロボットを盾に凌いでいく。
ガキィィィンッ
火花を散らして黒騎士の大剣を『戦闘用機械兵 ヒューズ』が放ったライフルの銃弾が僅かに逸らし、寸毫ばかりのその隙に、『機械巨人 リアン』が肩口に備えたスパイクシールドをねじ込むようにタックルで身体ごと割り込んでいく。
ゴッ……っと重い音が響き、脇腹にリアンのタックルを受けた黒騎士は洞窟の石畳を破片に変えながら大きく吹き飛ばされる。
そして。
「その大振りを」「待っていたのよ!」とユリと蒼の声が揃い、猟兵たちは反撃に転ずる。正面からは獲物をスレッジハンマーに持ち替えた巨人リアンが。頭上からは、天井を蹴って反転、重力のままにダイブする蒼が。
――それぞれが持てる力の全てを黒騎士に叩きこむ。
時間にすれば物の数秒にも満たない攻防だが、戦いの趨勢は猟兵たちに大きく傾いていた。ユリと蒼の攻撃を受けて、なおも立ち上がる黒騎士はオブリビオンとしての強大さを示していたが、その鎧にはいくつものヒビが入り……大剣も折れこそしないものの遠目にも刃毀れが明らかであった。
大成功
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アウグスタ・ヴァイマール
生徒の妄想ノートを宝と信じているとは、なんとも憐れな…
とはいえ災魔を見逃す道理はありませんわね
「ベルンハルト、働いてもらいますわよ」
緑に光る人工精霊による魔法力供給で精霊銃に充填するのは風属性
【2回攻撃】【属性攻撃】【全力魔法】を乗せた雷鳴舞踏による高速射撃攻撃をお見舞いしますわ
打ち出す弾丸は切れ味抜群、直撃すればひび割れた鎧はただではすみませんわよ
しかも剣で防いでも散弾の如く弾けて敵を襲い
仮に避けたとしても風の弾道は弧を描いて戻り、敵を背後から撃ち抜きますわ
まさに全方位死角なしというところですわね
さあ、どう捌くか見せてもらいますわ
キャナリニア・カルコメラン
(この雰囲気、肝心のお宝がただのノートだと言っても聞き入れてはくれそうにないのでありますなー。)
事情はどうであれ、迎え撃たせて頂くことに変わりはないのでありますが。自分は剣を、騎士人形には盾と槍を、更に援軍を呼ばせてもらうのであります。「屑鉄の傭兵部隊」、18の力を一つに、全機合体であります!
人形も含め、3対1。卑怯とは言いませんよね?コソコソと後をつけてきただけの騎士様が。
騎士人形で【ダッシュ】【串刺し】の突撃で【先制攻撃】を行い、続けて連携攻撃を繰り出すのであります。大技は【盾受け】【かばう】で対処、【力溜め】【カウンター】で反撃。大仰な鎧など打ち砕いてみせるであります!
セラータ・ファルチェ
自らは何も護らず、何もせず、他者を利用し、宝を横取りするお前が騎士だと?
ふざけるな、騎士の名はそんなに軽いものではない。
アル、コイツを叩き潰すぞ
無差別だったり、大振りだったり…やる気あるのか、お前
【野生の勘】【見切り】【地形の利用】を活かして攻撃は回避
回避が間に合わないなら【武器受け】で大ダメージは避ける
こちらの攻撃はアルや味方と連携し、【鎧砕き】【マヒ攻撃】【援護射撃】などで確実にダメージを与える
トドメをさせるなら【零距離射撃】で仕留める
…Arrivederci
確かに、その方が学生にとって知恵や判断力とかを鍛えられたってことになるわけだしいいんじゃない?
アルバ・ファルチェ
仮にも騎士を名乗るなら人の手柄を横取りするような卑怯なまねはやめてもらえないかなぁ
それにね、もしかしておびき寄せられたとかとか、考えないの?(くすくす)
さぁて、セラ…悪い子にはおしおきだよね。
容赦なくやっちゃって。
高威力だろうが、無差別に攻撃してくるなら【戦闘知識】【第六感】【見切り】色々駆使して仲間を庇いながら防戦と回復に徹するよ。
ほら、僕を倒さなきゃ終わらないよ?
先に潰してみたらどうだい。
…まぁ簡単にはいかないけどね。
黒歴史ノートは回収、宝の地図は罠を見抜けるかの試練だった…みたいに終わらせられたらもうこんな事にはならない
のかなぁ…なんて思っちゃうよね。
猟兵たちは一気呵成の勢いを得て、膝をつく黒騎士へ殺到する。
だが、それを鋭く制止する声がひとつ。勝利を確信して走る猟兵らの中にあって、アルバだけは満身創痍の黒騎士に、只ならぬ予感を感じて一人、背筋を凍らせる。
「危ない!下がるんだ!!」
普段の飄飄とした雰囲気からは別人のように強い語気で味方を押しとどめると、次いで手にした盾とその身で突出した猟兵を庇う。
縺れあって倒れ込んだその背の上を、黒騎士が横薙ぎに薙いだ長剣が空を切る。
「む、浅いか。大人しく我が無尽の剣閃の下に倒れていれば楽にもなれようものを」
膝立ちから立ち上がる勢いを利用して縦横無尽に振るった黒騎士の攻撃は、洞窟の岩壁を抉り百千の傷を残していた。あと一歩、あと一瞬アルバの反応が遅かったなら。
猟兵は自らに何が起こったかも知ることなく血煙と消えていたに相違なかった。
●
(いやいや……追い込んでなお、この攻撃力でありますか。油断大敵であります)
内心の焦りをポーカーフェースに押し殺し、うっすらと笑みを浮かべてキャナリニアは黒騎士へ問いかける。
「随分とお宝にご執心のようでありますが、この奥に何が奉られているのか騎士様はご存知なのでありますか?」
不用意な接近は危険だ。だが、このまま手を拱いていても為す術がない。彼女は眼前のオブリビオンの反応を探りながら、打開策を探していた。
出来れば、このまま退いてもらうのがありがたいのだが――。
「賢者の叡智であろう。我はその知識を得て、『深淵を識る暗黒騎士』となるのだ」
「そうでありますか」
……既にノートは必要ない気もするであります。
その言葉は溜息と共に飲みこんで。
「それならば、やはり迎え撃たせていただくことになりますなー」
付け入る隙もなくその意思も固いとなれば、最終的には意地と意地、業と業で雌雄を決する他にない。覚悟を決めたキャナリニアがパンパンとその手を叩き、「さあさ皆様方。今一度、お仕事の時間でありますよ!」と声を掛ける。
すると、いずこからともなくガラクタ人形が18体、ずらりと彼女の前に整列する。屑鉄の騎士に率いられた小さな傭兵たちは歯車やボルト、ケーブルを互いに組み合わせて合体し、瞬く間にキャナリニアと身の丈同じほどの一体の傭兵となる。
「これが自分のとっておきであります。まさか……卑怯とは言いませんよね?迷宮を自分で攻略もせず、コソコソと私たちの後を付けてきただけの騎士様が」
満身創痍なれど戦意を失わぬオブリビオンに向かい、三体の人形は各々が手に獲物を持って駆ける。
●
「学園生が残した妄想の産物、そのノートを宝と信じているとは」
なんとも哀れなものですわね。アウグスタ・ヴァイマール(魔法学園のエリートお嬢様・f02614)はそう言って冷笑する。旧くから此処アルダワの地を護ってきた侯爵家の一人である彼女は、この迷宮にそのような宝が無いことを「知っている」。
だからこそ荒唐無稽な学園生のお遊びも児戯としてこれまでは見逃してきた。
だが、それが災魔を呼び寄せるのであれば話は別。誇り高きヴァイマール侯爵家の次期当主として、黒騎士の行いは咎めざるを得ない。
「ベルンハルト、ここは貴方に働いてもらいますわ」
手にした杖を振りながら舞うようにステップを踏むと、杖に埋め込まれた淡緑色の宝玉がその輝きを増す。プラシオライトの光は魔導銃に風の精霊を宿すと同時に、アウグスタに目の前の敵へ向かう勇気を思い起こさせる。
「そのひび割れた鎧で、どこまで凌ぎきれるかしら。死角はありませんわよ?」
雷鳴が轟く程の情熱的なステップを踏むと、霞と消えたアウグスタは四方八方から銃撃をオブリビオンに浴びせかける。貴族令嬢然とした彼女が誘うは、死の舞踏。一つ一つが心の臓を止めるに十分な威力を持った弾丸が、緑の風を纏って黒き騎士を襲う。
●
「俺はお前を認めないぞ。何も護らず、何も為さず、他者を利用するようなその行いは騎士に相応しくない」
「そうだね、セラ。人の手柄を横取りするような卑怯な真似は、仮にも騎士を名乗るなら恥ずかしくってできないよね」
身を挺して猟兵を護ったアルバの手を、セラータは引き上げて助け起こす。
体制を整えた双子の騎士の前では、死闘とも言うべき猟兵とオブリビオンの攻防が続いていた。アウグスタが弾丸を雨あられと降らせれば、黒騎士は再度、魔核の封印を解いて黄金の鉄の塊のごとき防御力を得てこれを凌ぐ。動きを止めたオブリビオンに対してキャナリニアが自身の人形と挟撃をかけるも、これは読まれていたか、最小限の動きで振るう剣が邪魔となって致命打を与えるには至らない。
猟兵らは数で勝るが故に、無差別に剣を振るう黒騎士を攻めあぐねていた。
「狙いも定めずに大振りばかり……お前の騎士道とやらはその程度のものか」
無闇やたらと力を誇示するのは騎士の本懐ではない。それであれば、道を踏み外した者を介錯するのもまた騎士の役目。
そう心に決め、セラータは双子の弟の援護を受けて懐からの零距離射撃を試みる。
「――随分と口が回るようだが、我の剣を受けてその減らず口がまだ開けるか?」
迷いなく一直線に自身へ向かってくるセラータの姿を認め、黒騎士は正眼に剣を構えて力を溜め込む。
「勢いだけは一人前だが、その速度では我の剣は避け切れぬ」
動きは見切ったとばかりに振り下ろした長剣は、だが。
「頭に血が上っちゃった?単純なんだね。セラ、こんな悪い子にはお仕置きしないと」
後方にて負傷した猟兵たちに応急処置を施していたアルバは、その裏で『Corno di Lancia』を放っていた。やるべきことは単純――「黒騎士の武器を、落とす」。本来であれば達人と言っても過言ではない黒騎士の、その手にした武器を叩き落す事など容易ではない。だが、セラータに向けて真っすぐに剣を振り下ろしたこの一瞬であれば。
「速いと言っても、知った太刀筋ならば僕が防いでみせるよ」
騎士の誇りの前に、漆黒の殺意は目標を見失ってカラカラと石畳を打つ。
アル――良くやった。そう弟に向けて称賛を贈ると、セラータはオブリビオンの額へ黒銀の銃口を押し当ててトリガーを引く。
――パキリ、と音がして。
今度こそ黒騎士の鎧は音を立てて砕け散ったのだった。
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鎧を打ち砕かれ、その身を護る術を失ったオブリビオンは、それでも尚果敢に猟兵たちに立ち向かったが……高速機動で縦横無尽に死角から攻め立てるアウグスタやキャナリニアの前には遠からず屈することとなる。
どう、と天を仰いで倒れると、その身体は細かい漆黒の粒子となって消えてゆく。
「叡智さえ我が手にあれば遅れを取るような事は無かったはず……」
怨嗟の声を残しながらその存在を薄れさせていく黒騎士に、アウグスタはノートを手にしてその内容を示す。
「概念武装 ダーク・ロア:存在全てを喰らいつくす暗黒剣。本来であれば所有者の存在すらも喰いつくすほど貪欲な性質だが、主と認めた者に対しては忠実に力を貸し与える。敵の生き血を滴らせることで更に切味が増す――ですってよ。こんな、読み上げることすら憚られるような恥ずかしい設定が貴方の求めた叡智の真実」
ここに、災魔の居場所など無い。彼女がそう告げると、オブリビオンは今一度の恨み言を遺して消えて行った。
「これで終わりでありますか?」
闇が掻き消えるように雲散霧消するのを見送って、キャナリニアが声を上げる。
ようやく張り詰めた空気が緩み、アルダワ魔法学園で起こった一つのバカげた騒動は終わりを告げた――。
大成功
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