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赤ずきんと薄暗い闇の動物たち

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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「やあ! 猟兵の諸君。突然だがオブリビオン討伐の依頼を受けてくれないかにゃ?」
 自慢の白いひげをふよんと揺らしたスキマ・クッロは猟兵たちを前に地図を広げて話しかけた。
 どうやら予知を見たらしく、広げた地図の一点を指してその内容について話を始める。
「アックス&ウィザーズで森に住む動物たちが、オブリビオンの影響によって怯え荒れ狂っているみたいだな。場所はこの辺りだが詳しいことは分かっていない」
 どうやらその近辺で動物たちが暴れている事は分かったそうだが、オブリビオンの現れた場所までは掴めなかった様だ。
 スキマは困った様に頬を掻き眉を寄せる。
「この森の付近には小さな村がいくつかあるんだ。そこに住む人々も動物たちの異変に薄々気が付いて、最近では森に近付こうとしないらしい。今はまだお互いに棲み分けが出来ていて被害は無いが、このままだと森から逃げ出した動物たちが村へと入って暴れ出す危険性もある」
 それだけは防ぎたいのだとスキマは白黒しっぽを揺らしながら呟いた。
「まずは動物たちを落ち着かせてオブリビオンの足取りを掴んで欲しいんだ。準備が出来たら教えてくれ。ボクが森の入り口まで送り届けよう」
 スキマはビシッと猫背を伸ばして猟兵たちの背中を押した。
「よろしく頼んだ。それじゃ、ぐっどにゃっく!」



 耳を劈く動物たちの鳴き声と何者かの雄々しい叫びが緑の多い森の中に響き渡る。
「ひ……」
 小さな引きつり声を上げて年端もいかぬ少女がその森を駆けていた。目深に被った赤い頭巾で恐ろしい声を少しでも遮断しようとその端をぎゅっと握りしめる。
 ――少女は見てしまったのだ。森の中に現れた自身の記憶には無い謎の巨大な建造物。それから自分の何倍もある大きな大きな黒い影……。
 数日前まで穏やかに森を守っていた動物たちは一様に驚き逃げ回る。
 この森に入ってはいけないと、村の大人たちからは言われていた。しかしそれを破ってしまったのは私だと、少女は取り返すことの出来ない後悔に、歯をガチガチと鳴らしながら一生懸命に大地を蹴る。
「早く、早く帰らなきゃ……」
 薄暗い闇はすぐそこまで迫っていた。


温泉スイ
 お目に留めていただき、ありがとうございます。温泉スイと申します。
 森で動物たちが暴れています。動物を鎮めて騒動の原因を突き止めて下さい。
 森には小さな女の子も残されているようです。彼女の保護は必須ではありませんが、保護してあげると手がかりが得やすくなるでしょう。

 力を合わせて頑張って下さい。よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『混乱する動物たちを宥めろ!』

POW   :    巨体を持つ熊や虎などの猛獣とタイマンバトル!

SPD   :    すばしっこいウサギやリス、鳥なんかを捕まえる、

WIZ   :    歌や音波、魔法や超能力などを使って、興奮した動物を落ち着かせる

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リリサレナ・ハイヴァーン
SPD
神狼召喚で呼び出したブラックに乗って放牧犬みたいなのやるわよ

いい?ブラック。食べちゃダメよ?追い込むだけだからね?

あらかじめ木を切り倒して袋小路にしておいたポイントに追い込んで、黒鬼の斧槍で最後の木を切り倒して入口を塞ぐわ。
【恐怖を与える、騎乗、ダッシュ、怪力】

怖がらなくていいわよー、これから楽にしてあげるからじっとしててねー
【動物と話す、優しさ、恐怖を与える】

さて、動物達をある程度纏めたら癒し担当の猟兵達に落ち着かせてもらおうかしらね。


シラ・クロア
ぐっどにゃっく……可愛いわね(心の声)
――じゃ、行きましょうか。
発見までに時間がかかって女の子が危ない目に遭うといけないから、【ハヤテ】でハヤブサを召喚してすみやかに森の中を移動するわ。
動物達を落ち着かせればいいのね。ええ、任せて。フルートで心鎮める穏やかな音色を響かせて、動物達と意思疎通するわ。大丈夫、落ち着いて。暴れないで。怖くないから。森はあなた達の居場所。私の居場所でもある。必ず守るわ。
音色で動物達に語りかけながら移動して、少女を捜そうと思う。フルートに惹かれて姿を見せてくれるといいのだけど。
皆が落ち着いたら、動物や少女から状況を教えてもらえたら。森や村を守るために大切なことなの。


旗村・グローリー
森の動物たちを鎮めよう。

成程、全て理解した。
アニマルズがパニックになっているのはキングの不在。
すなわち動物たちを仕切る、獣の王たるジャイアントパンダがいないからだ。
であればこそ、おれの出番に違いない。
連中を宥め、時には脅し、森の秩序を保つ。
それが可能なのはパンダだけなのだということを証明しよう。

優先的に接触を図るのはやはりデカい連中だな。熊やらその辺りだ。
パンダパワーをもって、まずは押し留め、そして落ち着かせよう。
おれたちがここへ来たのは、あくまで森に平穏を取り戻す為。
きっちり話せば分かってくれる筈だ。獣たちは余程人間などより賢いからな。

おれが来たからにはもう何も心配はない。


ティル・ライハ
森で動物が?? モンスターならよくある話だけど、気になるな…!
っつーことで、地元世界だし俺も手伝うぜ。まず動物をどうするか、だな。

ウサギとか小動物を相手にすっか。
[目立たない5]ように[忍び足7]で近付いて[早業2]で捕まえる!
あ、“レプリカクラフト”で『無害な捕獲罠』を作って、匂いのするポーションで[おびき寄せ7]るのもありか。
ま-、俺のスピードなら[逃げ足6]ダッシュで普通に大丈夫そうだけど…

『SPD 隠密&素早さ勝負で捕まえる』
『無害な罠を仕掛けてみる』

女の子? 俺子供相手するの得意だし、同じ世界の[コミュ力2]で会話できればいいけど…
他に適任者いるならでしゃばらねぇよ


琥星・流矢
「帰りに近くの村で土産でも買うかー」そのためにも、動物捕獲はきっちりやり遂げますか。
早さには自信があるからな、オレは地上の素早い動物とかでも狙うか。
ユーベルコードの応用だ。「クラウチングスタート」を使って一気に接近、そのまま掴んで捕獲しよう。勢いが余ってどっかに激突するだろうが…うん、まあ、動物庇えば大丈夫だろう、多分。
時間はかかるだろうが、「ま、オレにはこれが精いっぱいだ。一体一体確実にいこうか」
ついでにキノコとか花とか集めて土産にしよう。ん、なんか赤い布が見えたような…気のせいか、多分。


シュシュ・シュエット
村人さんと動物さん、お互いに傷つけ合うようなことだけは避けたいですね……っ! 一刻も早くどちらも安心してもらえるよう、がんばりましょう!
ひとまず、動物さんの混乱を鎮めることを優先します。逃げるときにぶつかったり転んだりして、お怪我をされているかもしれませんっ。
『もう大丈夫、怖いものはいないよ。』と【シンフォニック・キュア】を歌い、治療と鎮静化を図ります。
……もし、*動物さんとお話できたら『赤いずきんの女の子を見かけませんでした?』とお尋ねしてみますっ。
女の子の方角の検討をつけられたら、猟兵の皆さんへ情報を共有。わたしも*野生の勘を活用、最短距離になるよう*地形の利用をして予想地点へ向かいます。


隠月・ヨル
【SPD】
わりと物語の定番なシチュエーションね。
そんな定番に巡り会えたのは幸運だわ。いい夢が見れそう。

普通に捕まえられる仔は捕まえて、難しめの仔達は【影の追跡者の召喚】を活用して捕まえましょ。
ついでに【影の追跡者の召喚】で触ればもふもふを感じるのも2倍…になるのかしら?
捕まえる時に動物達が逃げる方向に注目ね。私と森の中の驚異。その2つから逃げるようにするんじゃないかしら?何度かやれば驚異のあるだいたいの方角が更に絞れるかもしれないわ。

だいたい絞れたら【影の追跡者の召喚】に先行させて向かうわ。
ついでに小さな女の子を見つけられたら『コミュ力』で話しかけましょ。もう大丈夫よ、おいしそうなかわいい子。


神影・鈴之
別に村がいくつ消えたって僕には関係ないけど…まあ、動物達が心配だからね。

「我招く、月夜の番人。契りを守り、護りたまへ…リン、おいで」
神獣招来でリンを呼んで
「森の奥まで連れていってくれる?」
首を撫でながらお願いしよう
森についたらリンから降りて、獣奏器である鈴を鳴らす
おいで、怖くないから
お前たちの話を聞かせておくれ
優しく声をかけながらシャン…シャン…と鈴を奏でよう
もし何かに怯えてるのなら、僕とリンが守ってあげる
…役立たずの巫女だけどそれくらいは

もし落ち着いて寄ってきれくれるなら
どっちの方角に驚異があるのか
どれくらいの大きさと数なのかわかるなら聞きたいよね

アドリブ歓迎


河原崎・修羅雪姫
「暴走する動物たちを止めないと……。
それに傷つけちゃ可哀想、気持ちよく気絶させてあげるわぁ」

熊でも虎でもドンと来なさいなぁ。
「パオーン!!」
え、象の声?
OKOK、この修羅雪姫は逃げないわよお!

さあさ、これよりお見せするは乙女と猛獣のタイマンバトル!
上手く行ったら拍手御喝采ぃ。

【サイボーグ用・内蔵ロケットワイヤーアンカー】を射出。
【罠使い】で絡めて足止めし、
【ジャンプ】で背面に飛び乗り。
サイボーグの【怪力】で、首を締めあげ気絶させる。

ふう。手強い相手だったわぁ。
さぁて、森が静かになったところで、
赤ずきんちゃん(仮称)を保護してあげなくちゃ。
【サイバーアイ】で周囲をサーチして手掛かりを探すわぁ。


紅庭・一茶
ひえ!森の動物も群れとなりましたら危険ですねえ…!
ですがですが、動物たちが暴れるのも恐れてのこと!
紅庭も落ち着かせることに貢献いたしましょう!

【WIZ】
(技能:歌唱・動物と話す・情報収集)
彼方此方と走り回る動物たちに声が届くように、
シンフォニックデバイスなども使用して歌唱。
優しい歌は、きっと動物にも通じる筈なのです!
落ち着くようにと気持ちを込めて歌って、
落ち着いた様でしたら御話して情報収集を!

「動物くん動物くん、落ち着きましたかっ?
 怖い怖いオブリビオンは何処で見たでしょう?」
「他には見ませんでしたか?人ですとか!」

少女についての情報も掴めましたら、
紅庭は絶対に助けたいのです……!紳士として!



闇が間近に迫る黄昏時、猟兵たちはアックス&ウィザーズの大地へと降り立った。目の前に広がるのは緑の鬱蒼と茂る深き森。その奥深くからは鳥の羽ばたきや獣の唸り声――生き物たちの逃げ惑う音が聞こえてくる。

(ぐっどにゃっく……可愛いわね)
「――じゃ、行きましょうか」
 森の入り口に立ったシラ・クロアは暗闇の迫る空模様に心を急かされつつも凛と表情を引き締めた。今ここから森の中へと分け入り何かしらの手がかりを得なければならない。夜が迫っていることも考えると、兎に角すみやかに行動を起こさなければならなかった。
「疾風迅雷――狩りの時間よ」
 シラは自身の倍の大きさもあるハヤブサを召喚し呼び寄せる。鋭い黒爪と嘴をもつそのハヤブサは従順にシラの元へと舞い降りた。
「私は先に森の中を見て回るわ。時間がかかって女の子が危ない目に遭うといけないから」
 言うが早いかシラはハヤブサへ飛び乗ると森の中へと飛び立った。

「村人さんと動物さん、お互いに傷つけ合うようなことだけは避けたいですね……っ!  一刻も早くどちらも安心してもらえるよう、がんばりましょう!」
 シュシュ・シュエットは駆けていくシラの後ろ姿を見て呟いた。
(別に村がいくつ消えたって僕には関係ないけど……まあ、動物達が心配だからね)
 神影鈴之は心の中でそう呟きながら動物たちの声の聞こえてくる森を眺めていた。
「我招く、月夜の番人。契りを守り、護りたまへ……リン、おいで」
 鈴之は神獣招来で白銀の毛並みの狼――リンを呼び出した。現れた白銀の狼は森の方を睨んで唸り声を上げる。おかしい……こんな様子は今まで見たことがない。
「森の奥まで連れていってくれる?」
 鈴之が落ち着かせるように首を撫でて問いかけるもリンは首を左右に振った。どうやら恐ろしい気配に足が踏み出せないようだ。仕方がないと鈴之はリンを返し、自身の足で森の中へと入っていく。

 集まった他の猟兵たちも後に続くように森の中へと足を踏み入れる。まずは森の中を逃げ回る動物たちを落ち着けなければと、それぞれ行動を開始した。

●動物捕獲大格闘
 森の中を勢いよく疾走しているのはティル・ライハ。アックス&ウィザーズ世界を地元に持つ彼は馴染みのある森の風景を楽しみながら、持ち前の俊足を余すところなく発揮していた。
 縦横無尽に駆け回ってはウサギやリスなどの小動物を見つけ、忍び足で近付き目にもとまらぬ早業で動物たちを次々に捕まえる。
「しっかし動物たちがこんなに暴れてるなんて……。モンスターならよくある話だけど、何があるのか気になるな……!」
 そんなティルの後ろを付いて走る琥星流矢は、そのスピードに目を丸くしながらも自身も捕獲をやり遂げようと気合いを入れた。
「ついでに帰りに近くの村で土産でも買うかー……っと危ねぇ!」
 勢いが付きすぎた流矢は避けた木の先に現れたタヌキとその向こうの木にぶつかりそうになる。咄嗟の判断でタヌキを掴みあげると体を反転させ背中から幹へと衝突した。
 結構な勢いでぶつかってしまったため、流矢の背中には鈍い痛みが走ったが、タヌキが無事ならばそれで良い。胸の中に優しく抱きしめると落ち着かせるように背中を撫でた。
「ま、オレにはこれが精いっぱいだ。一体一体確実にいこうか」

 ティルはある程度狙っていた動物たちを捕まえると、レプリカクラフトを駆使し、茂みの中に極めて精巧で無害な捕獲罠を設置した。何やら怪しい匂いのするポーションを設置し、獲物がかかる間にもう一度周辺を走り回る。
「大猟、大猟ー!」
 追加で数匹捕まえ戻ってきてみると罠の中には何匹かの小動物がかかっていた。

「成程、全て理解した」
 森の動物たちを鎮めようと立ち上がったのはパンダ――……いや、旗村グローリーだ。
 アニマルズがパニックになっているのはキングの不在。すなわち動物たちを仕切る、獣の王たるジャイアントパンダがいないからだ……。
 であればこそ、おれの出番に違いないと、グローリーは限りない自信を持って森の中へと踏み入った。
 体の大きな動物たちに狙いを定めて歩いていると木立の中に少し拓けた場所があるのがわかった。そこに唸り声を上げながら落ち着かない様子で幹をガリガリと掻いている熊が一匹。
 グローリーは悠々とその目の前に歩み寄り、熊へと声をかけた。
「そんなに怯えてどうしたんだ」
 言葉は通じないのだが、熊が怯えていることは見た目からもわかる。近付いてみるとどうやら熊の脇腹に刃物で切りつけられたような痕があることがわかった。
「何者かに斬られたのか?」
 顎に手を当てて考えていると、熊はグローリーに突然襲いかかり腕を振り上げる。咄嗟の判断でその腕を受け止め、熊に向かって一喝すると熊はおどおどと落ち着きを見せた。どうやらグローリーの気迫に目の前にいる者が強者であると悟ったようだ。
「ここへ来たのは、あくまで森に平穏を取り戻す為。おれが来たからにはもう何も心配はない」
 そうグローリーが力強く諭すと、熊はグローリーに従うかのように地面へと体を伏していた。グローリーはジャイアントパンダの力を今ここに証明したのであった。

 河原崎修羅雪姫は大型の動物を探して森の中を歩き回っていた。
「暴走する動物たちを止めないと……。それに傷つけちゃ可哀想、気持ちよく気絶させてあげるわぁ」
 体に傷を付けることなく動物を落ち着かせるには気絶させることが一番だと考えていた。
 しばらく歩くとガサガサと大きな音を立てて目の前の木々が揺れ動き出した。かなり大きな動物がいる事がわかる。
「熊でも虎でもドンと来なさいなぁ」
 木立の奥から現れたのは一頭の象……。
「象? ……OKOK、この修羅雪姫は逃げないわよお!」

 ――さあさ、これよりお見せするは乙女と猛獣のタイマンバトル!
 上手く行ったら拍手御喝采ぃ――

 修羅雪姫の脳内ではバトル開始のファンファーレが鳴り響く。
 修羅雪姫に気がつくと、象は鼓膜を震わせるほどの鳴き声を上げ、鼻息も荒く突進してくる。修羅雪姫は内蔵のロケットワイヤーアンカーを射出し、象の足に絡みつける。
 そうして足止めしたところに地を蹴って背中に飛び乗ると、象は怯えるように首を振って暴れ始めた。
 修羅雪姫は振り落とされないよう象の太い首に腕を回し、死んでしまわない程の強さでぐっと締め上げて気絶させる。この勝負、修羅雪姫の勝利である。
「……ふう。手強い相手だったわぁ。さぁて、赤ずきんちゃんを探しに行かないとね」
 修羅雪姫はサイバーアイを使用して周囲の手がかりを探し始めた。

 隠月ヨルは慌てふためく動物たちを前にうんと深く頷いた。
「物語としては割と定番なシチュエーションね。そんな定番に巡り会えたのは幸運だわ。いい夢が見れそう」
 さて、兎にも角にも捕まえようと一歩前進。動物たちはヨルが草を踏む音にも驚いて一目散に逃げていく。ヨルは首をかしげてその様子を見送った。
「普通に捕まえるのは難しいかしら?……なら」
 音に驚くのであれば音を出さなければ良い。ヨルはシャドウチェイサーを召喚し、再度追跡を試みる。シャドウチェイサーは動物たちからも発見され難く、ヨルと五感を共有している。生身で追いかけるよりも追跡は容易であった。
 それでも自身も別の方向から動物たちを追跡する。動物たちはヨル自身と驚異のある方向から逃げていくのではと考えたのだ。
 ――狙いはあたりだった。動物たちはヨルのいる方ともう一方へは決して逃げようとはしなかった。きっと脅威はそちらの方面にあるのだ。
「捕まえたわ」
 ヨルはシャドウチェイサーで捕まえた動物のもふもふを心ゆくまで堪能しながら、驚異のあるであろう方向をじっと見つめていた。

 見通しの良さそうな森の一角で、リリサレナ・ハイヴァーンは三方の木を切り倒し袋小路を作った。これで準備は整った。
「行くわよブラック!」
 神狼召喚でブラックと呼ばれる漆黒の狼――フェンリルを召喚する。
 リリサレナの作戦はこうだ。袋小路に動物たちを追い込んで最後の木を切り倒し入り口を塞ぐ。そうして動物たちと『お話』を――つまりフェンリルを牧羊犬にしようということだ。
「いい? ブラック。食べちゃダメよ? 追い込むだけだからね?」
 自分よりも大きなフェンリルに騎乗し、言い聞かせるように声をかけるとリリサレナは首をぽんと叩いてGOの合図を出す。フェンリルが風を切って走り出す。
 目の前に見えた足の素早い動物たちを、フェンリルはうまく誘導し袋小路へと追い込んでいく。その真ん中に動物たちが入った瞬間、リリサレナはフェンリルを飛び降りて、叩き割るほどの怪力でもって黒鬼の斧槍で入り口の木を切り倒した。――作戦は成功だ。
「怖がらなくていいわよー。これから楽にしてあげるからじっとしててねー」
 リリサレナは見た目に穏やかな笑みを湛えながら、追い込まれた動物たちへと優しく……優しく語りかける。リリサレナの『優しさ』に落ち着きを見せた動物たちは、袋小路の奥で静かに体を震わせるのであった。
「さて、後は他の人に任せようかしらね」


●心は動物たちと共に
 先に森の中へと飛び立っていたシラはフルートを手に、辺りに穏やかな音色を響かせていた。怯え暴れる動物たちの心を鎮める音楽を吹き鳴らせば意思疎通が図れるのではないかと考えていた。

 ――大丈夫、落ち着いて。暴れないで。怖くないから。
 森はあなた達の居場所。私の居場所でもある。必ず守るわ――

 追いついた鈴之もその隣で獣奏器である鈴を振り鳴らす。
「おいで、怖くないから。お前たちの話を聞かせておくれ……。もし何かに怯えてるのなら、僕とリンが守ってあげる」
 ――シャン……シャン……――
 役立たずの巫女だけどそれくらいは――鈴之は鈴の音に心を込める。

 動物も群れとなると危険だが、それも何かを恐れてのこと。自身の歌声で少しでも落ち着かせることに貢献できればと紅庭一茶は気合いを入れる。
 シラと鈴之、二人の音楽に合わせて周辺を歩き歌を歌う。あちらこちらへと走り回る動物たちにこの歌が届くように……。優しい歌はきっと動物たちにも通じると、気持ちを込めて歌い上げる。
 三人の協奏が優しく重なり温かく周囲の動物たちを癒やしていく。一匹、また一匹と音楽を奏でる猟兵の周りに動物たちが集まってくる。どうやらこの一帯の動物たちは大方落ち着きを取り戻したようだ。
「もう大丈夫、怖いものはいないよ」
 シュシュはゆったりと落ち着いた動物たちに語りかけながらシンフォニック・キュアを歌い上げる。動物たちが逃げるときにぶつかったり転んだりして怪我をしているかもしれないと思ったのだ。事実、足や胴に傷を負った動物たちもいた。
 シュシュのシンフォニック・キュアを聴いた動物たちはその歌声に共感し、瞬く間に傷が癒やされていく。

 猟兵たちは一旦合流し、落ち着きを取り戻した動物たちから情報を聞き出していた。
「動物くん動物くん、落ち着きましたかっ? 怖い怖いオブリビオンは何処で見たでしょう?」
 一茶が動物たちに話しかけると動物たちは首をかしげる。一茶の言葉を引き継いで鈴之も動物たちに問いかけた。
「お前たちの不安の種はどこにある? 大きさや数もわかれば教えて欲しい」
 動物たちは耳をぴこん! とそばだててあるものは特定の方向を向き、あるものは大きく羽ばたいてその大きさを伝え始めた。その高さは周囲の木々よりもずっと大きく……猟兵たちが軽く見上げてもまだまだ足りない程であった。
「……そんなに大きいのですか?」
 シュシュはあまりもの大きさに恐れるように表情を強張らせた。一茶も驚きを隠せないまま森の中に人がいないかと問いかける。女の子が取り残されているならば紳士としては必ず助けておきたかった。
「他には見ませんでしたか? 人ですとか!」
「赤い頭巾の女の子を見かけませんでした?」
 シュシュも同じく少女の情報を掴みたかった。赤い頭巾といえばこの森ではよく目立つ。きっと動物たちにもわかるはずだ。
 動物たちはまた別の方向を向いてぴょんと跳ねた。どうやら赤い頭巾の少女はそちらの方向へ行ったらしい。シュシュは他の猟兵たちにもそのことを伝える。
「よかったら案内してくれると助かるわ」
 シラはフルートを吹きながら動物たちに案内を頼んだ。もしかしたら少女もフルートの音色に惹かれて姿を見せるかもしれない。ふよふよと宙を舞いながらシラは動物たちについて行く。ヨルはシャドウチェイサーに先行させ、他の猟兵一行もその後に続いて森の中を歩み出した。

●赤ずきんの少女
 流矢は少女を探す一行の後に付いて歩きながら、ついでに土産になりそうなキノコや花を探していた。動物たちが暴れ回ったせいかなかなか綺麗な花を見つけることが出来なかったが、途中で無事に咲き誇る花を見つけては少しだけ摘んで袋に入れる。
 きょろきょろと辺りを見渡しながら前を行く猟兵たちに遅れを取らないよう足を進めていたのだが、ふと茂みの中に赤い布が動くのが見えたような気がした。
「……気のせいか? ――って気のせいじゃないよな!」
 流矢は猟兵たちに声をかける。確かに少女がそこにいると。猟兵たちが近付くと、少女はひどく怯えて震えているようであった。
「もう大丈夫よ、おいしそうなかわいい子」
 ヨルの発した言葉に少女は体をびくつかせる。どうやら怖がらせてしまったようだ。それでも他にも人の気配を感じたことに少女はほっとし顔を上げる。大きな瞳には大粒の涙が溜まっていた。
「だ、大丈夫かよ……」
 ティルが慌てて少女に声をかけると彼女の瞳からぼろっと涙がこぼれ落ちた。必死で今まで耐えていたのだろう。少女は嗚咽を漏らしながら赤い頭巾を頭から外して首を縦に振った。
「怖かったのね……。一緒にお家に帰りましょうね」
 シラは少女を優しく撫でながら涙を拭う。少女が少し落ち着くと、シラは驚異の元凶について問いかけた。
「詳しいことを教えてもらえる?あなたが何から逃げてきたのか。動物たちがなぜ怯えていたのかを。森や村を守るために大切なことなの」

 少女は語った――。
 いつもの遊び場、森の奥――木々の開けた泉の前で遊んでいた時のこと。いつもは静かな泉の先から幾十もの大声が聞こえてきたこと。普段とは違う森の様子に気になって少女がそちらへ足を運ぶと、巨大な建造物が建っていたこと。
 建造物は石造りで円形の闘技場――コロッセオのような形をしていたそうだ。声はその中から聞こえてきたらしい。
 少女が見慣れぬその建物に恐る恐る足を踏み入れてみると、そこでは森の動物たちが山賊風の姿をした男と戦わせられていたのだと、少女は震える声で説明した。
「動物たちはそれから逃げていたのだな」
 なるほど、とグローリーは頷いた。熊の脇腹にあった傷もきっとその時のものだろう。ということはつまり動物たちは捕まえられて戦いの道具にされていたのか。
 猟兵たちは異変の元凶について理解した。つまりそこにオブリビオンがいる――。

 少女から泉の場所を聞き出した後、猟兵たちは村の入り口へと少女を送り届けた。既に日は落ちていたがこのまま脅威を放置しておくことは出来ない。
 それぞれの思いを胸に一行は泉の奥――オブリビオンの闘技場へと進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『闘技場で力を示せ!』

POW   :    半端ない力強さでぶっとばす、攻撃をものともしない頑強さで耐え抜く、等

SPD   :    驚くべき速度で翻弄する、技量によって攻撃を難なく捌いて見せる、等

WIZ   :    凄まじい大魔術を披露する、計算し尽くした立ち回りで相手を罠に嵌める、等

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


泉の奥には確かに少女の話通りに巨大な闘技場がそびえ立っていた。闘技場の奥からは雄々しき声がうねりとなって聞こえてくる。
 猟兵たちは真正面の入り口から闘技場の中に足を踏み入れる。すると扉番の様な男が集団で訪れた猟兵たちに訝しげに話しかけてきた。
「お前たちどうやってここに来た。――挑戦者か?」
 『挑戦者』とは何のことであろうか。兎に角元凶であるオブリビオンを探さなければならない。この闘技場で目立てばオブリビオンもつられて出てくるであろうかと、猟兵たちは頷いた。
「さすれば力を見せつけよ。さあ、入れ」
 扉番が大きな石の扉を引き開けると闘技場の中央へと続く道が現れた。反対側の道から現れたのは何十人もの山賊風の男たちだ。地を揺るがすような鐘の音が辺り一面に響き渡る。

「今宵の挑戦者は迷い人――いざ、勝負!」
紅庭・一茶
……挑戦者とは!?
いえ!これもオブリビオンに繋がるならば!
紅庭はやってやりましょうっ!

【SPD】(見切り・時間稼ぎ)
「たのもー!そして紅庭の速度を見よです!」
『とっておき☆レシピ』を発動、
沢山のシュガースティックで相手を翻弄。
相手の攻撃も上手く見切って防ぎます。
皆さんの事も可能な限りお手伝いをば!

最後の決め手がない場合は相手が翻弄されている隙を見て、
シュガースティックの一つを手に取り、
……『遠回す大人味』で!ぶん殴ります!

は!もしかしなくとも闘技場少し壊しちゃいました?
すみませ~ん!全部オブリビオンが悪いのですよ~!


ティル・ライハ
へぇ、ホントに闘技場だ……。ここにいるヤツ倒せば、森が平和になるんだな? んじゃ、皆で頑張ってやらねぇとな。

んーなら、俺はスピード勝負続行させるか。山賊相手には、そこまでガチで挑まなくてもいいんだよな? 
体力温存するために、奴等の近くで[逃げ足]で翻弄しまくってやろーかな。ポーションの1つに[マヒ攻撃]効果のある物あるから、ソイツ使って他の仲間が動きやすいさせんのもアリか?
もし攻撃されそうになったら『UC』使えば攻撃はさせられそうだし。

『SPD 逃げ足で敵を翻弄』
『マヒ攻撃で足止め』
『危険時にはUCで回避』


河原崎・修羅雪姫
POW
半端ない力強さでぶっとばす、攻撃をものともしない頑強さで耐え抜く

こんな泉の奥に闘技場があるなんて。
これは夢か現か幻か……?
【サイバーアイ】で闘技場全体をサーチしてみる。
「この闘技場全体が、オブリビオンの作り出した『過去』なのかもねぇ」

闘技場内では、サイボーグの超体力、【怪力】【激痛耐性】で、
いにしえの闘技場女チャンピオンのように、威風堂々と振舞う。
(戦ったり、力比べを見せたり)
そしてビルダーのようなマッスルポーズを決める。

「ヒュー、あの筋肉を見ろよ! 象だって締め落とせそうだぜ!」という観客の歓声に、
「あは、分かっちゃったぁ?」(二ッと笑う)

さあ、早く出て来なさいな。オブリビオン!


シラ・クロア
オブリビオンは動物達を闘わせて何をしたいのかしら。
それにしても、闘技場で目立つ……、私には向かないことのようなのだけど……。でもせっかくここまで来たし。一緒に森に入った皆の方が活躍できそうだから、私は彼らの演出兼ねて頑張ろうかしら。
開戦には相応の儀式を。鐘の音に続いて、華やかに心誘う歌を歌うわ。
それから【嵐花】で乱れ飛ぶ桜吹雪を起こし、闘技場内の山賊を攻撃しながら猟兵達の登場を華々しく飾るとか、どうかしら。
他の皆が戦っている最中も、闘技場の周囲の様子、音、気配に気を配り、第六感に引っ掛かるようなことがあれば情報共有を。


旗村・グローリー
戦おう。

ほう、中々に雰囲気のあるコロッセオだ。建材も悪くない。
実に戦い甲斐のある舞台と言えよう。
万の観衆を魅了してこそのジャイアントパンダだ。
見世物結構。場を盛り上げなければ嘘になる。

双斧を構え、対戦相手となる山賊たちへの突撃を慣行。
剣と剣、斧と斧がぶつかり合い、肉と血が弾け飛ぶ様こそ剣闘の醍醐味だ。
観客の興奮が頂点に達したと感じた際は、闘技場を割る必殺の斧撃を解き放つ。

そして両手を上げ、高らかに勝利のポーズを決めよう。
ただの挑戦者だと思ってもらっては困る、おれたちこそが新時代のチャンピオンなのだと。
納得させ、後ろにいる者を引っ張り出そうじゃあないか。


隠月・ヨル
ふむ…とりあえずは流れに乗っておきましょうか?
【始業の鐘】で二人を喚び出して一人を攻撃担当、もうひとりを私の防御担当にしましょう。
攻撃担当が多少ダメージを負ったら担当を交代させるわ。
私自身は基本的には指示のみね。そうしていれば私をどうにかすればいいのはすぐに気が付くでしょう?
私が傷を受けて二人が還ってしまってからがお待ちかねよ。≪傷口をえぐる≫わ、それはもうごりっとぐりっと
ふふふ…とっても素敵な傷口よ?

自分の出番が終わったらこの『闘技場』そのものを少し調べるわ。
これだけ巨大なものが唐突に表れたということは、この闘技場そのものがオブビリオンかもしれないわね。


リリサレナ・ハイヴァーン
POW
じゃあ遠慮なくやらせてもらうわ!
撃槍で派手にぶっ飛ばしてやる!!!

黒鬼の斧槍を取り出して山賊共のド真ん中にクレーターを作るわよ
【力溜め、ダッシュ、ジャンプ、怪力】


琥星・流矢
おー、まだ背中いてぇ……
しかしデッカい闘技場だなー、先に中を見て来ても…え?ダメ?そんなぁ。

闘技場の中央に入った直後、猟兵達の後ろでクラウチングの姿勢を取っておく。
んで、頃合いを見て『クラウチングスタート』で先頭の山賊に突撃を掛けよう。スタートの合図は、自分で出そう。
その後は…やることも無いし、猟兵達の方に戻るか。
「一番槍ってな。じゃ俺は帰るわ」

本格的に戦闘が始まったら、体勢を崩した奴とか攻撃しようとしてる奴を優先的に狙って蹴る。カット役ってやつだな。
「隙を突くのは任せろ。そのかわり強い奴は頼むわ!」

まー大物との戦いだと、やれることも少ないだろうし、集団戦で頑張っておくか。


シュシュ・シュエット
こっ、これは『やがいらいぶ』というものでしょうか……っ! 日も落ちたのに、すっごく熱狂的ですね……!

わたしは猟兵の皆さんのサポートに回りましょう。*目立たぬよう後方より*援護射撃を行いますっ。
【縁の下の力持ち】を使い、迫りくる山賊さんをネズミさんたちに迎撃してもらいます。

そうして、*時間稼ぎをしていただきながら、*学習力でお相手を観察。
何十人もの方々なら、お互いにある程度の役割を定めていると見積もり、きっと年かさの『司令塔』に値する方がいるはずですっ。
見極めることができたら、*すないぱー……えっと……狙いを定めて、ネズミさんに集中的に攻撃してもらいましょうっ。



「おー、まだ背中いてぇ……」
 琥星流矢は木に打ち付けた背中の痛みに僅かに顔を顰めていた。
 石の扉を抜けた先、闘技場の舞台の上。猟兵達は立ち止まる。
 ――森の中にこんな大きな建造物があったとは。
 流矢は闘技場のその広さに驚きを隠せず、口をあんぐりと開けた。
「……しかしデッカい闘技場だなー。先に中を見て来ても……」
 入り口横から客席へと向かって伸びる梯子に興味が移ったところで闘技場の探索を始めたくなったものの、仲間の猟兵達に止められて流矢は残念そうに元の位置へと戻る。
 敵地と思しきど真ん中で単独行動は不味いだろう。仕方なしに味方の後方で戦いの為の準備を始めておく。
 一歩目の行動は決めていた。

(こんな泉の奥に闘技場があるなんて。これは夢か現か幻か……?)
 河原崎修羅雪姫は眼球に装着したサイバーアイから視覚情報を分析しながら、闘技場全体を見上げてみた。
 石造りの巨大な建造物――どこかの世界にはこれに似た壊れた闘技場があったはずだが、いま目の前にあるこの建物は一切どこも欠けること無く、ただただ勇壮にそびえ立っている。
「ほう、中々に雰囲気のあるコロッセオだ。建材も悪くない」
 旗村グローリーも戦いの舞台として相応しい見た目のその造りに深く感心したように頷いた。
 円形に造られた建物は中央に行くに従って低くなる造りになっている。客席からは容易に戦士達の動きが見えることだろう。
 ――これは戦い甲斐がありそうだ。
 側にある柱をぽんと叩いて、修羅雪姫は闘技場の中へと足を踏み出す。
「この闘技場全体が、オブリビオンの作り出した『過去』なのかもねぇ」

「ここで目立つ……? 私には向かないことのようなのだけど……」
 闘技場で目立てば敵の親玉が出てくるかもしれない――。そういう流れでこの場へと足を踏み入れたものの、シラ・クロアは自身が目立つ事にあまり乗り気では無かった。
 一方でシュシュ・シュエットと紅庭一茶は、周りを囲む熱気あふれる会場の様子に自身の気持ちも盛り上がり、ぐっと両手で拳を握って気合いを入れる。
「こっ、これは『やがいらいぶ』というものでしょうか……っ!  日も落ちたのに、すっごく熱狂的ですね……!」
 恐らく彼女の想定しているものとは少し違うだろうが、おおよそ似たようなものであろうか。突っ込むものは誰もいなかったが。
「それに挑戦者とは?  いえ、これもオブリビオンに繋がるならば! 紅庭はやってやりましょうっ! たのもー!」
 元気な二人の様子にシラも覚悟を決める。
「ええと……まぁ、どうにかなるわよね」

 ――開戦の鐘声が響き渡る。
 シラは唐突に突き付けられた難題に頭を痛めながらも、ここまで頑張ってきたのだからと、共に闘技場へと足を踏み入れた猟兵達の演出役を買って出る。
「いざや邪なるを封じ浄めん、花の嵐」
 シラがユーベルコードを唱えると、はらりはらりと幾十幾百もの桜の花びらが乱れ吹雪く。それは正しく猟兵達の登場を華々しく飾るのに相応しい。
 初手から派手なその演出に、場内からは大きな歓声が上がっていた。
「位置について。よーい……ドンッ」
 流矢もそれと同時に、構えていたクラウチングの姿勢から勢いよく敵の先頭に向けて駆けだした。
 花びらの舞い散る闘技場の中央を駆け抜けて先頭の山賊に飛びかかり、勢いのままに膝蹴りを食らわせる。
 唐突すぎる流矢の行動に敵は呆気にとられ、抵抗する事もできないまま地面に崩れ落ちもんどりを打つ。
「一番槍ってな。じゃ俺は帰るわ」
 考えていたことは終わらせた。一撃を食らわせたらもうやることは無い。
 流矢は敵に背を向けると仲間の元へと戻っていく。
 そんな流矢を追いかけ攻撃しようとする者もいたが、シラの花びらに阻まれてなかなか前に進むことが出来ない。
 花びらは向かってくる男達に触れると同時、武器へと姿を変え彼らに細かな傷を作っていく。
 シラはぐるりと闘技場の様子を眺めて思案する。壁沿いに見える檻の中には未だ沢山の動物たちが怯えた瞳で自分たちの出番が来るのを待っている。
(……オブリビオンは動物達を闘わせて何をしたいのかしら)

「へぇ、ホントに闘技場だ……」
 シラの隣に並ぶティル・ライハも、同じように闘技場の様子に驚きながら辺りを観察した。
「ここにいるヤツ倒せば、森が平和になるんだな? んじゃ、皆で頑張ってやらねぇとな」
 ティルは落ち着かない様子の動物たちを眺めながら、必ず助け出すと気合いを入れる。
 ただし元凶であるオブリビオンは未だ姿を見せていない。体力は温存しておくべきだと目の前に並ぶ山賊達を睨め付け、スピード勝負で仕掛けていこうと脳内で考えを巡らせた。

 ティルは敵の目の前に躍り出ると持ち前のスピードで迫り来る男達から逃げ回る。
 すばしっこいその動きに山賊達は翻弄され、がたがたと陣形を崩していく。
「へへっ、ついでにこいつも……ってうわッ」
 携帯していた攻撃用のポーションを投げつけようとティルは小瓶の蓋を開けたのだが、ふと誤ってその小瓶を自身の足下に落としてしまった。辺りに散らばったそれはティルの足にもかかり、マヒの効果が発動する。
 突然動きの鈍くなったティル目掛けて、機を逃さずに山賊達が襲いかかってくる。
「やべっ」
 ティルはユーベルコードを詠唱し敵の突撃を躱そうと試みる。
「逃げてくださーいっ!」
 敵にも他の猟兵達にすらも目立たぬように、後方へといつの間にか潜り込んでいたシュシュは、ティルへと襲いかかる山賊へ向けて攻撃魔法を放った。
 全く予期しなかった方向から攻撃を受けた山賊達は、ぐらりと体勢を崩してティルへの攻撃を逸らしてしまう。
 すかさずそこへ流矢が蹴りを叩き込み敵を地面へと転がし倒す。後ろから襲いかかる敵もなんとか躱し、蹴りを入れて仲間達へと言葉を掛けた。
「隙を突くのは任せろ。そのかわり強い奴は頼むわ!」

 次に孤立するシュシュの方へと狙いを定めた周囲の敵が、一斉にそちらへと向かっていく。
 シュシュは向かってくるその一人一人に意識を向ける。
「大丈夫、信じていれば叶えられるわ」
 ユーベルコードを詠唱すると沢山のネズミが召喚され、シュシュへと迫り来る敵を迎撃する。
 ネズミたちは山賊に蹴飛ばされ振り払われながらも、必死にその行く手を阻み始めた。
「紅庭もお手伝いいたします! 紅庭の速度を見よ、です!」
 そう言うと一茶の周りには沢山のメイス――シュガースティックが現れる。
 ネズミ達に足止めされる山賊へ向けて一茶は一本のシュガースティックを手に取り構える。
「お砂糖はひとつ、ふたつ、みっつと――たっくさん!」
 ばらばらに動き出したシュガースティック達は一斉に山賊達へと突き刺さる。不規則なシュガースティックの動きに翻弄されながらも男達は侵攻の足を止めようとはしない。
(どこかに司令塔に値する方がいるはずです……っ)
 シュシュは最初から統率されたように動く大勢の山賊達を見て、指令を出している者がいないか目をこらして観察する。
(――あの方です!)
 敵の中央付近で指示を出す男に向けてシュシュはネズミ達を一斉に向かわせた。
 山賊達は一斉に襲いかかってきたネズミに翻弄され右往左往する。司令塔の男も纏わり付くネズミ達に手こずり指示を出すことが出来ずにいた。
 そんな中、一茶は手にしていた一本のシュガースティックを振り上げて敵の中央へと駆けだしていく。
「遠慮せずに、考慮せずに――さあさ、たんと甘さを足しましょう!」
 明るい音に乗せてその一本を振り下ろすと、叩き付けられた山賊と場所を中心に地面に大きな凹みが出来上がる。
「あま~いひとときは如何ですか? ……は! もしかしなくとも闘技場壊しちゃいました?」
 一茶は周りの空気などお構いなしに自身の作った傷についての心配をしていた。
「すみませ~ん! 全部オブリビオンが悪いのですよ~!」

「ふむ……とりあえずは流れに乗っておきましょうか?」
 華々しく開始された戦いに、隠月ヨルは自身も流れに身を任せんと煤けたディナーベルを鳴らし、戦闘用の死霊家令と死霊執事を召喚する。
「さぁ、仕事の時間よ。いらっしゃい」
 彼らは自分の代わりに働いてくれる優秀な召使いだ。
 ヨルが指示を飛ばすと死霊家令はヨルの側に控え、死霊執事は敵前へと向かう。統率の取れなくなった山賊達を周りから崩していきながら、死霊執事は華麗に舞う。
 それでも多少の反撃を受け、死霊執事がダメージを受けたところで、ヨルは執事と家令の交代を指示した。
 二体の死霊に指示を出すヨルに気がついた山賊の一人が群れを離れ、ヨルへと突撃を始めると、ヨルは怪しく微笑んで死霊家令に足止めを命じる。
 家令を振り切り山賊がヨルに一撃を与えたとき、『お待ちかね』とヨルは拷問用調理道具を持ち出して男の傷口にそれを刺した。
 ぐりぐりと――それはもう周りが思わず目を背けてしまうほどにごりっと抉り込む。
「ふふふ……とっても素敵な傷口よ?」
 痛みにのたうち回る様を眺め微笑むヨルに、男は情けない悲鳴を上げて後ずさる。
 そうして、死霊より恐ろしい者を見たとでも言わんばかりに白目を剥き、薄くなる意識を暗闇の彼方へと飛ばしてしまった。

 猟兵達の活躍により場内がさらに熱気を帯びる中、修羅雪姫はサイボーグの超体力と肉体を見せつけ、古の女チャンピオンの様に威風堂々とした振る舞いを見せていた。
 飛びかかる山賊達を怪力でねじ伏せ、打ち付けられる攻撃をものともしない頑強さで耐え抜いては吹き飛ばす。
「ヒュー、あの筋肉を見ろよ! 象だって締め落とせそうだぜ!」
 その身一つで戦場を舞う修羅雪姫に奮え、場内から上がる歓声にはボディビルダーの様なマッスルポーズを決めて応え、悩ましげな視線を送る。
「あは、分かっちゃったぁ?」
 ――そう。事実、彼女はここへと来る前に象を一頭締め落としていたのだ。
 盛り上がる筋肉に力を込めて修羅雪姫は闘志を燃やす。
(さあ、早く出て来なさいな。オブリビオン!)

 修羅雪姫に続いてグローリーも双斧を構えて前に出る。
 万の観衆を魅了してこそのジャイアントパンダだ。見世物結構。場を盛り上げなければ嘘になる――グローリーは胸を張り、山賊達の群れへと突撃を敢行した。
 襲いかかる剣戟を一方の斧でいなし、もう一方の斧で受け止める。金属同士のぶつかる音が場内に響き渡り、グローリーは熱き闘志を燃え滾らせる。
(肉と血が弾け飛ぶ様こそ正に剣闘の醍醐味――!)
 リリサレナ・ハイヴァーンも遠慮は無用とばかりに次々に山賊達を蹴散らしていき、会心の一撃を食らわせんと力を溜め始める。
 グローリーの斧撃に合わせて会場のボルテージも勢いを増す。
 その熱が最高潮に達したとき、グローリーは鉄斧を振りかざした。
「おれの心が燃えている。止まることなく燃えている」
「はぁあああああああああ!!!!!!」
 グローリーの一撃に合わせるかの如く槍を振りかざし、ダッシュからのジャンプを決めたリリサレナと共に、敵もろとも地面を打ち砕く程の重厚な一撃を叩き付ける。
 二人の怒濤の攻撃により地面は抉れ、闘技場の中央には巨大なクレーターが出来上がっていた。
 周囲には吹き飛ばされた山賊が死屍累々。山のように横たわっている。

 ――静まりかえる場内。
 グローリーは観衆の視線を一番に集めるそのど真ん中で、高々と両手を上げ勝利のポーズを決めた。
 瞬間、割れんばかりの歓声が巻き起こる。ここに勝敗は決した。
「ナイスファイト!」
 リリサレナはグローリーとハイタッチを交わし、地面に開いた穴の縁を足先でなぞる。
 なかなかの威力で一撃を打ち込むことが出来たのでは無いだろうか。自慢げにふふんと胸を張った。

「っ……何か来るわ!」
 シラの第六感に何者かが引っかかる。肌がひりつくほどの殺気と咆哮。
『グゥゥ……俺様の城を荒らす奴はお前らか……』
 その者が姿を現すと同時。今まで自分たちがいた闘技場が、観客が、山賊達が霧のように消えていく――。
 まるで初めからそこには何も無かったかのように。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『山賊親分』

POW   :    強欲の叫び
【酒!】【金!!】【女!!!欲望に任せた叫び声をあげる事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    剛斧一閃
【大斧】による素早い一撃を放つ。また、【服を脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    手下を呼ぶ
レベル×5体の、小型の戦闘用【山賊子分】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルル・アークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リリサレナ・ハイヴァーン
POW
こんなことやって寂しいおっさんねぇ、というかこんな幻術どうやって用意したのよ。

まあいいわ、戦術槍で相手してあげる
攻撃力には攻撃力で真っ向勝負
防御力は攻撃回数で崩す
状態異常は命中力重視で武器を弾く
【怪力、串刺し、早業、見切り、武器受け、カウンター】


旗村・グローリー
勝負をつけよう。

これだけの殺気を放てる存在……間違いなくこいつが親玉だな。
風格は十分。殺意も十分。自らの欲望に忠実なのも良い。
そして何より目を引くのがあの大斧だ。
そう、男が戦うための武器として斧を選んでいるところは、何より見所がある。

であればこそ、斧使いとしてどちらが上か、決着をつける必要があるだろう。
アクスファイターの戦い方はただ一つ。真っ向から突撃し、力の限り斧を振るうまで。
賊の親玉が大斧を扱うのであれば、こちらは双斧の連撃をもって対抗しよう。

左の斧で相手の斧をいなし、右の斧を叩きつける。
削り削られの近接戦闘だ。
悪いが森の動物たちが怯えているのでな。
獣の王としては退くわけにはいかない。


琥星・流矢
うわ、クレーター出来てるよ…やっぱ大物は任せよう。オレが出る幕じゃない。

やる事ないし、シラが見つけた動物の檻でも見に行くか。
鍵とか掛かっているようなら、オレの蹴り上げで破壊できるか試してみよう(【名称未設定】使用)
「動かない檻が相手で張り合い無いけど…出来る限り速く駆けるっ」
破壊出来たら、隙をみて動物たちと一緒に闘技場の外に出るか…上手く誘導できるか?まぁ大丈夫だろ多分。

戻ってきてまだ戦っているようなら、山賊親分とのスピード比べでもするか。ここは参加出来なくても構わない。
「速い奴が相手だと、気合が入る!思いっきり駆けるぞ!」

土産どうしようか…あ、そうだ。山賊親分を倒したら、親分から貰うか。


紅庭・一茶
ええい、君ですか!
動物くんたちを脅かした悪いオブリビオンは!
ならばならば、紅庭たちが懲らしめてさしあげましょう!

【WIZ】
(見切り・一斉発射・2回攻撃)

手下を呼ばれたら厄介な事この上無し!
まずは『とっておき☆レシピ』を発動、
シュガースティックで手下からの殲滅を。
手下がいない場合は、親分に一斉発射で攻撃。
敵の攻撃は見切りで避けられる様に警戒、
可能であれば仲間たちにも注意喚起を!危ない!

戦闘中に親分の隙を見つけましたらば、
ここぞとばかりに隙を突きまして――
『ジャッジメント・クルセイド』発動!
悪い子には、――がっつり天罰なのですよ!


ティル・ライハ
おー、山賊のボスが登場……って他の奴等どこいったんだ??
……ま、いいか。
さっきは危ねぇトコありがとな。やっぱ仲間がいるって嬉しいもんだな!
んじゃ、俺はボスを倒す皆の邪魔になりそうな下っ端共を倒してこっか。

一撃でどうにかなるっぽいから、子分呼んだらナイフ2本を『先制攻撃』で『投擲』して個別に撃破。
引き抜いたりする余裕があれば戦法を継続するけど、無理そうなら先日用意した3本目で普通に倒してくぜ。
『UC』は、子分が仲間に向かいそうになった時に『早業』『逃げ足』駆使して使う。
守ってもらった分、今度は俺が守る番だぜ

『SPD 召喚された子分を先に撃破する役に回る』
『仲間に向かう敵を優先』


ネラ・イッルジオーネ
変な敵もいるものね。

悪さをする者は全て制裁の対象です。
ユーベルコード「ラ・リヴォルツィオーネ・デェラ・グローリア」
貴方に様々な審判を受けて、苦痛に耐えれる力があるか……【全力魔法】で試させて頂きます。

敵の攻撃はもっている技能をフル活用して受け流したりします。


シュシュ・シュエット
闘技場も消えていくのなら、動物さんたちの檻も一緒に消えていきそうですね……っ!
消失していたら*動物さんたちへ呼びかけて避難誘導を行いつつ、わたしも*目立たぬよう*地形を利用……暗闇に紛れ、木陰に身を隠します。

そのまま身を隠しながら【シンフォニック・キュア】を歌い、傷ついた猟兵さんの回復に尽力しますっ。
もし山賊子分さんをけしかけてきたら【縁の下の力持ち】へUCを切替。沢山のネズミさんの噛みつきで追い払ってもらいますっ。

……おひとりで『らいぶ』をされても、歌い終わったあとみんな消えてしまったら、すっごく寂しいと思います。
赤い頭巾の女の子も、動物さんを怖がらないでいてくれると嬉しいのですけど……。


河原崎・修羅雪姫
「山賊親分? 
今まで相手にしてきた邪神やヴァンパイアに比べると見劣りがするかしらぁ」と挑発する。
しかしオブリビオンなら、手加減できないわね。

●行動
【サイバーアイ】で敵を捕捉。
【20mm口径リボルバー】×【2回攻撃】と
【ヴァリアブル・ウェポン】で連続攻撃。
ドゴンッ! ドゴンッ! ドゴンッ!

味方猟兵が攻撃されて、ピンチの瞬間、
【鎧砕き】と【吹き飛ばし】で、親分の斧を弾き飛ばす。

●アフターケア
赤ずきんちゃんと森の動物に、
「もう、怖い連中は退治してあげたから安心よぉ」
と話しかける。
でも、やっぱり森の中には入らないほうがいいかも。
今度は「狼さん」が現れるかもしれないしぃ。

(ウインクを決める修羅雪姫)


シラ・クロア
……消えてしまったのね、闘技場。
それで――この、お山の大将のような――彼を討てば、ここは以前どおりに動物達が安心して暮らせる森に戻るのかしら。

私は基本的に舞い飛びながら行動を。
一撃が重そうな斧を持っているから、もし誰か深手を負うようなことがあれば、【ノクターン】で穏やかに心身を包み込む歌を歌い、治療を優先。
他に治療を行う人がいたり、大丈夫そうなら、皆と一緒に戦うわ。近接戦に集中している隙を見て、【光の穿ち】で四方八方から稲妻の刃をその体躯に。腕から手首あたりを狙って、斧を取り落とすよう仕向けてみようかしら。
手下を喚ぶようなら、閃光で貫き祓うわ。



真の強者を前にして、虚像の楽園は崩れ去る。

「……消えてしまったのね、闘技場」
 シラ・クロアは、先程までの熱狂が嘘のように静まりかえってしまった森の中で、ぽつりとそう呟いた。辺りには薄暗闇が広がるばかりだ。
(それで、この『お山の大将』のような彼を討てば、ここは以前どおりに動物達が安心して暮らせる森に戻るのかしら……)
 猟兵達の目の前に、遂に姿を見せたオブリビオン――山賊親分は闘技場の消え去った様を見て悔しそうに地団駄を踏み、歯噛みをしている。
 その筋肉は隆々として、身体の至る所には獣と戦ったときの名残りであろう傷跡が。
 胸には鋭い爪の首飾りを下げ、身に纏う毛皮はぼさぼさと毛羽立って、いかにも粗暴な暴君然とした風格を醸し出している。

「ええい、君ですか! 動物くんたちを脅かした悪いオブリビオンは!」
 紅庭一茶はそんな山賊親分を睨み付けては怒りに身を震わせる。
 心優しき動物達を攫い、痛めつけた首謀者を許すことは出来なかった。
 それに何よりこのオブリビオン、反省している様子がかけらも無い。
「ならばならば、紅庭たちが懲らしめてさしあげましょう!」
 山賊親分はそんな一茶や猟兵達を眉を顰めて見据えると、手にした巨斧を苛立ちと共にブンブンと真下に振り下ろす。
『この森は俺様の物、闘技場は俺様の城! グゥゥ……それをオマエたちは奪い去ろうと言うのか』
 自分の物を好きに扱って何が悪い――自己中心的な考えと暴虐に塗れた思想。
 リリサレナ・ハイヴァーンは、そんな男に呆れたように溜息を吐く。
「こんなことやって寂しいおっさんねぇ、というかこんな幻術どうやって用意したのよ」
 語りかけても返事は無い。
 男の脳内はいま自身の矜持を崩し壊された事で、恥辱と憤怒に満たされていた。
『許せん……許せんンンン! 頂点に君臨するのは俺様だ、消えてしまえええ!』
「聞いてないわね……まあいいわ、戦術槍で相手してあげる」
 仲間達に先駆けて、リリサレナは男の前へと飛び出した。
「高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に。つまり突っ込んでから考える!!」
 振り上げられる山賊親分の斧。その軌道を見切り、手にした槍の柄で斧撃を受けると、力を持って相手の怪力に真っ向勝負を仕掛ける。
 ぎちぎちと鳴る力と力の押し合い。一瞬の弛みを突いてリリサレナはその威力を受け流す。
 そうして身を躱すやいなや、目にも止まらぬ早業で山賊親分に槍の一撃を食らわせた。
『グゥゥッ』

 次いで、リリサレナの後方から意気揚々と躍り出たのは旗村グローリー。
「斧使いとしてどちらが上か……決着を付ける必要があるだろう」
 ――風格は十分。殺意も十分。自らの欲望に忠実なのも良い。
 グローリーは内心、己の武器と同じそれを扱うオブリビオンに、大きな興味が芽生えていた。
 あちらは大斧一本。こちらは双斧。武器の扱いは違うであろう。しかしアクスファイターの戦い方はただ一つ。
「力の限り、振るうまで――」
『動物、殺す! 殺すゥ!』
 グローリーは二本の斧をそれぞれの手に構え、正々堂々と真正面から突撃する。
「怒りがおれを強くする、怒りがおれを奮わせる」
 目の前に現れたグローリーを咄嗟に振り払うように持ち上げられた巨斧の一撃を、左の斧でいなし、右の斧で回り込むように叩きつける。
 勢いの乗ったその一撃は逞しい山賊親分の筋肉にめり込み、強烈な衝撃を響かせる。
『――ウガアッ』
「悪いが森の動物たちが怯えているのでな。獣の王としては退くわけにはいかない」
『ウウウゥ……』

 グローリーの一撃によろめく山賊親分をサイバーアイで捉えつつ、河原崎修羅雪姫はクスッと笑った。
「山賊親分? 邪神やヴァンパイアに比べると見劣りがするかしらぁ」
 今まで自身が敵対してきた者達に比べると大した強さでもなさそうだ――。
 修羅雪姫の挑発に、山賊親分は易々と乗せられ怒りを露わにする。
『俺様は強者、この森の支配者だ! 殺す、殺す……!』
 それでも敵はオブリビオン。手加減は出来ないと修羅雪姫は巨大なリボルバー拳銃を手に構える。
 常人には持ち上げることも困難な程のそれを軽々と扱いながら、山賊親分に向けてまずは二発。
 放った弾丸はどちらも共に逸れること無く、山賊親分の体に撃ち込まれた。
「的が大きくて当てやすいわぁ」
 休む間もなく駆け出すと、ヴァリアブル・ウェポンによる連撃を、二度三度とその巨体に叩き付ける。
 揺れる巨体。修羅雪姫の重い攻撃を斧で防ぐが反撃する事も出来ず――。

「うわ、クレーター出来てるよ……」
 仲間の力強さを見て、琥星流矢は大物は任せてしまおうと、シュシュ・シュエットと共に動物達の囚われていた檻へと足を向ける。
「鍵……も何も無いな。全部消えてやがる」
 流矢は不思議そうに辺りを見渡した。本当に全て消えてしまったのだ。
 動物達も突然の変化に混乱し、その場でまごまごとしているのが分かる。
「不思議ですが余計な細工がないなら好都合ですっ」
 シュシュは闘技場の消失に伴い、檻から解放された動物達に優しく声を掛けながら戦闘の様子を確認していた。
 仲間達が気を引きつけている今ならば安全に避難させることが出来る。
 戦闘に巻き込まれず、山賊親分の視界にも入らない位置は――。
「動物さん達……こっちです!」
 木々の生い茂る闇の深い森の奥へと動物達を引き連れ、自身も木陰へと身を隠す。
 流矢も群れを逸れそうになる動物達を元に戻しながらその後をついて行った。
「動物達は夜目が利きますし、ここまで連れてくればもう大丈夫でしょう」
「まだ危ないから向こうには近付くんじゃ無いぞ」
 動物達はその言葉を理解したかのように鼻をひくひくとさせて森の奥へと消えていく。
 流矢とシュシュはその背中を見送った後、顔をつきあわせて言葉を交わす。
「オレは戻るけどどうする?」
「わたしは潜みながら様子を窺います。気をつけてくださいっ」
 まだ何が起こるか分からないと、シュシュは交戦を続ける仲間達を見守った。

「哀悼の光のあとに安らぎのあらんことを」
 宙を舞うシラの青い瞳が、修羅雪姫と交戦する山賊親分に向けられる。
 攻撃の意志を持ってその視線に意識を集中すると、山賊親分の周りを稲妻の如き幾筋もの閃光が駆け抜ける。
 四方八方から迸る閃光は刃となり、山賊親分の左腕を鋭く切り裂いた。
『ヌゥ……ッ!』
 刃を受けた左腕はズタズタに切り裂かれ、鮮血が滴り落ちている。
 あの様子ではもう左腕は使えないだろう。
『オマエェ! なんと言うことを……!」
「あなたの傷付けた動物達も同じ痛みを味わったのよ」
 これ以上、何者も傷付けさせない――。
 シラは腕を押さえる山賊親分を見据え、その痛みを理解させようとした。
 痛みと衝撃により巨斧を取り落とした山賊親分は、残った右腕を持ち上げて指笛を鳴らす。
『グォォ、獣の痛みなど知ったことでは無いわ! オマエたち、来い!』
 ――ピィィィィィ!
 甲高く鳴り響いた指笛の残響が消えるその後に、土煙を巻き上げ現れたのは百にも上る数多の山賊子分達。
 皆、闘技場で戦ったあの山賊達と同じように粗暴な仕草に下卑た笑みを浮かべて、斧や剣を振り回している。
「また君たちですか!」
 一茶はわらわらと群れをなす山賊子分達を睨み付け、声を張り上げる。
 厄介な事この上無し――。
 とにかく群れるこの山賊子分達を倒してしまわなければ。
 一茶はシュガースティックを取り出して、一気に殲滅せんと『とっておき☆レシピ』を発動する。
「お砂糖はひとつ、ふたつ、みっつと――たっくさん!」
 途端、十六本ものシュガースティックが一斉に山賊子分達へと襲いかかる。
 重く硬いそれはそれぞれ不規則に動かされ、山賊子分達を触れる端から一瞬で消滅させていく。
「数は多いですけど、当たってしまえば一瞬です!」

「おお、やるな。んじゃ、俺も倒してこっか」
 ティル・ライハも一茶の攻撃に続きナイフを構え、敵の攻撃よりも素早く投擲。
 持ち前の足の速さを活かし、投げた先の敵へ接近すると、命中させたナイフを引き抜いては次の敵へと攻撃を仕掛けていく。
「へへっ、やっぱ仲間がいるって嬉しいもんだな!」
 ティルは先程の戦いで自身のミスをカバーしてくれた仲間達に感謝しながら、共に戦える友がいることの喜びを感じていた。
 一人ではどうにも出来ないこの数でも、協力して倒せば勝利はすぐ目前だ。

 動物達の誘導から戻ってきた流矢は、左腕に血を流す山賊親分へと勝負を仕掛けた。
「速い奴が相手だと、気合が入る!思いっきり駆けるぞ!」
 駆けてくる流矢に気付いた山賊親分も右手に斧を持ち直し、纏っていた毛皮を脱ぎ捨てる。
『ウウウ……ガァッ!』
 間合いに入った流矢へと素早い一撃を放つ。
 流矢も負けじとスピードを上げて鋭い足技を繰り出した。
 しかし、振りかぶったその攻撃は山賊親分の斧に弾かれ、バランスを崩し地面に打ち付けられてしまう。
 そこに山賊親分の周りを囲んでいた山賊子分が襲いかかろうと動き出す。
「危ない!」
 一茶が敵の動きを見切り咄嗟に叫ぶと、ティルが駆け出す。
「させねぇ!」
 先程守って貰った分、今度は自分が助ける番だ――。
 ティルは強い意志を力に変えて加速する。一瞬で流矢と山賊子分の間に入ると、手にしたダガーで鋭く一閃。
「大丈夫か?」
「悪い、助かった!」
 流矢はティルと腕を交わし体勢を整える。
 山賊子分達は親分を守るように前へ立ち、猟兵達を威嚇していた。

「大丈夫、信じていれば叶えられるわ」
 身を隠し、様子を窺っていたシュシュが背後から隙を突き、召喚したネズミ達を一斉に解き放つ。
「全員追い払ってくださーいっ」
 ネズミ達は残る山賊子分に噛み付き襲いかかり、次々にその数を減らしていく。
 後に残るは山賊親分ただ一人となっていた。

『グゥゥウ……! オマエたちが勝者など、あり得ない!』
 勝利にこだわる山賊親分に、ネラ・イッルジオーネは変わらぬ表情のまま首を傾げた。
「変な敵もいるものね」
 森の動物たちを捕まえて自身の力を見せつける為だけに力を使い、小さな世界で頂点に君臨する。
 ただそれだけを目的とする男の行動にネラは理解を示せずにいた。
 ――なんて小さき、哀れな男。
 しかし、ひとつの否も無い動物達を傷付け見世物として利用していた事は、紛れもない彼の『罪』である。
「悪さをする者は全て制裁の対象です」
 ネラは自身の役目を果たそうと、男に審判を突き付ける。
「天翔ける奇蹟。集いて満ちるは栄光の槍。邪悪な魂に渾沌の審判を。ラ・リヴォルツィオーネ・デェラ・グローリア」
 ユーベルコードを詠唱すると、数多の槍がネラの周囲に出現する。淡く光を纏い空を切り裂くその槍は、山賊親分の体へと次々に突き刺さる。
『やめろ、やめろ! ウゥゥゥ……!!』
 この世のあらゆる属性が幾重にも重なり、山賊親分の体を触れる端から蝕んでいく。
 重ねてきた罪の数々。ネラの槍によってその全てが裁かれる。
「悪い子には、――がっつり天罰なのですよ!」
 一茶が抵抗できぬ山賊親分に指先を向けると、天からの光が降り注ぎ、悪しき魂を骸の海へと還していく。
『グァァァァ――』
 山賊親分は大きな雄叫びを上げながら、闇の彼方へと姿を消した。

 猟兵達は元の静けさを取り戻した森を後にし、近くの村へと足を向ける。
 ――脅威は去った。この森はもう安心だ。
 そう伝えると人々は、瞳に安堵の色を浮かべて微笑んだ。森で出会った赤ずきんの少女も、母親に抱きしめられて笑っている。
 彼女の慣れ親しんだ遊び場、動物達の集うあの森に、恐ろしい光景はもう無いのだ。
「でも、やっぱり森の中には入らないほうがいいかも。今度は狼さんが現れるかもしれないしぃ」
 小さな少女に語りかける修羅雪姫に、シュシュは横からフォローを入れる。
「動物さん達も落ち着いたからきっと大丈夫ですっ。怖がらないで以前のようにまた遊んでくださいね」
 少女はそんな二人に微笑むと礼を告げた。
「うん、もう危ない目に遭わないように気をつけるね。 お姉ちゃん達、森を守ってくれてありがとう!」

 かくして猟兵達の旅はひとまずの終わりを告げた。
 猟兵達の活躍によって一つの森と動物達、周辺の村と一人の少女は元の穏やかな生活を取り戻したのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年01月09日


挿絵イラスト