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エンパイアウォー⑳~貪欲吝嗇、女怪を討て

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #日野富子

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 魔軍将。
 それは、悪鬼・織田信長が従えし強大なる幹部級オブリビオンども。
 いずれも配下ですら恐るべき強敵だが、猟兵とて手をこまねいているわけではない。
 これまでの戦いが、ついにその一角の居所を暴き出したのだ――!

「大悪災『日野富子』。彼奴は、"花の御所"――つまり、足利将軍家の旧邸宅に居を構えておる」
 グリモア猟兵、ムルヘルベル・アーキロギアは、真剣な面持ちでそう語る。
 国を乱すほどの富を得た女怪は、すでに御所を自分好みの豪華絢爛な邸宅に改装。
 巧妙に隠れ潜んでいたが、猟兵たちの奮闘によりいよいよ白日のもとに晒された格好だ。
「この戦争の最終目的は言わずもがな織田信長。されど魔軍将も見逃せぬ。
 もしも彼奴らのいずれかが生き延びたまま戦いが終われば、その動乱を隠れ蓑に彼奴らは逃げ延びるだろう」
 これまでの二度の戦争では、幸いにもすべての敵を撃破できている。
 だが此度もそうとは限らない。そして懸念が的中すれば、それは災いの種を残した決着になる、ということだ。
「であれば、狩れるうちに狩るのが、我ら猟兵と呼ばれるモノの義務であろう。
 言うまでもないが将に名を連ねるだけあり、日野富子はオブリビオンとしても強敵である」

 すなわち、絶対先制。
 その欲と捻じくれた憎悪に由来するユーベルコードは、必ず猟兵に先んじる。
 この前提をいかにして覆すか。
 防ぐか。
 避けるか。
 はたまた奇想天外な策で挑むか。
「これまでの二度の戦争で、同じような強敵と戦ってきた者も少なくはあるまい。
 だがあえて、ワガハイが初志貫徹してアドバイスするとしたら、そうさな……」
 しばし考えた後、賢者は言った。
「勝てずともよい。せめて生きて帰ってくるのだ。戦いはまだ続くのであるからな。
 ……などと言わずとも、オヌシらが生半な覚悟で臨んでいるわけでないことは承知だが」
 苦笑しつつ、賢者は本を閉じる。
「"金を失うのは小さく、名誉を失うのは大きい。 しかし、勇気を失うことは全てを失う"。
 ……ある国を治めた政治家の言葉だ。ワガハイは、この戦いに挑むオヌシらの勇気を称賛する」
 欲望そのものは悪ではない。だが彼奴は災禍とすら言えるるつぼに落ちた。
 それを討つのは、純粋なる勝利へ突き進む生きるものの意思なのだろう。
「健闘と生還を祈る」
 そして、転移が始まった。


唐揚げ
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 イカゲソです。まずはボスシナリオおなじみの注意事項から。

●注意事項
 大悪災『日野富子』は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼女を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

 ……というわけで、早速魔軍将との戦いです。VS日野富子!
 舞台は京都御所。歴史的なあれこれはありますがとりあえずそれは置いときましょう。
 金を明かした豪華絢爛な大邸宅で、はたして皆さんは欲の権化に打ち勝てるでしょうか?
 皆さんの挑戦と、思いも寄らないアイデア、お待ちしております!

●備考:プレイングの採用について
 戦術が重要になるシナリオのため、『合同プレイング以外の同時採用』は基本的に行いません。
 また、戦争シナリオである関係上、普段よりも採用数を絞る可能性があります。
 その点ご承知の上、ご参加のほうよろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『大悪災『日野富子』』

POW   :    アタシの前に立つんじゃねぇ!
【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    アタシのジャマをするな!
自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    誰かアイツをぶっ殺せよ!
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。

イラスト:みそじ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●京都:花の御所
 贅を凝らし大邸宅であった。
 当然だ。国の財をかき集めた女の、欲の皮を剥がして貼り付けたような場所なのだから。
 ……誰もが羨むような、大邸宅であるはずだ。
 だが、それだけだ。そこには、人が住むべき家としての心地よさはない。
 ただ贅を凝らした”だけ”の、がらんどうのような場所である。

 無限めいて連なる大廊下を、恐るべき形相で歩く女がいる。
 日野富子。女でありながら”大悪災”とまで仇名された魔軍将。
「ムカツク、ムカツク、ムカツク……ッ!!」
 腹立たしい。今こうしている間にも、どこかの誰かが財を使っている。
 アタシの財を。アタシのための財を。誰ともしれぬゴミが!
 腹立たしい。自分以外の財を持つゴミが生きていることが。
 徳川の治世が。己の意に沿わぬ誰か、何かが存在していることが。
 腹立たしい。腹立たしいことすら腹立たしい。
 憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い――憎い!!
「どいつもコイツも死ね。殺す。死んだのを殺してやる。そしてまた殺して殺して殺して殺して殺してやる!!」
 狂っていた。それはまさに怒りに呑まれた人型の虚だ。
 存在してはならぬ悪。ゆえにこそ大悪災。
「来るなら来いよ猟兵、天敵、全員まとめてブッ殺してやる。
 アタシが、誰も彼も殺してやる。ああ、ああ、忌々しい……!!」
 これより花の御所は地獄に変わる。
 猟兵よ、人の形をした虚無へと挑め。

 プレイング締め切りは【19/08/11 08:29前後】です。
柊・明日真
【アドリブ歓迎】
今更悪趣味だなんだと言うつもりも無いが…
派手に飾るのも程々にしといた方が良いんじゃないか?

随分と立派な家だがよ、ここまで来ると執着も相当なもんだろうなあ?
…ちょいと遊んでもらうぜ!

【怪力】で壁や床や調度品、ありとあらゆる物を引っぺがして盾にしながら家中を駆け回ってやるぞ。
奴の事だ、これだけでも相当煽れるんじゃないか?
隙を見て盾をぶん投げたり《瞬電の刻印》を仕掛ける。

火矢の怨霊?いいね、どんどん来な!
盾で防御しつつ【ダッシュ、見切り】で火矢を回避、奴ら自身でこの地獄を焼き尽くしてもらおうじゃねえか!

煽るだけ煽ってデカい隙を見せたら【捨て身の一撃】で痛いのをブチ込んでやる!



●悪災討滅:挑戦者、柊・明日真
 日野富子の目が、まるで飢えた鬼のような形相で遥か彼方を睨みつけた。
 森羅万象すべてが憎くて悪くてたまらない、という大悪災にも、憎悪の優先順位というものがある。
 首領であるはずの織田信長、(彼女の言によれば)富子のものであるはずこの世界を治める徳川の者ども。
 だがある意味、それよりも強く強く憎悪し、必ず殺すと言ってはばからぬもの。
 ……すなわち猟兵。オブリビオンにとっての天敵、相容れぬ存在こそが絶対悪である。

「悪趣味だなんだとわかったような台詞を言うつもりもないが」
 そんな突き刺すような視線を受けてなお、その男はふてぶてしく笑っていた。
 口元はたしかに笑み。されど、見返す眼差しにはありありと嫌悪と敵意を込めている。
「派手に飾るのもほどほどにしといたほうがいいんじゃないか? なあ、"大悪災"」
 燃えるような赤髪に橙色の双眸をした巨漢は、富子と比べるとあまりに比がめざましい。
 しかして両者はいずれも譲らぬ。その体格差を圧するだけの悪しきオーラを、富子がまとうゆえに。
 挑むものと迎え撃つもの。どちらがそうであるかは、ここに誰かがいたとしても一目瞭然だろう。
「……いきなり出てきてアタシに指図かよ、ムカツク!!」
 めきめきめきめき……!!
 湧き上がる憎悪の炎に応じてか、御所の柱や壁が軋んで不安げにわなないた。

 並のオブリビオンとは、比較にならぬ肌を突き刺すほどのプレッシャー。
 されど、これまで多くの戦いを乗り越えた明日真は、これを真正面から受け止める。
「ほぉ。思ったとおり、ご立派な家のご執心も相当なもんらしいなぁ。
 もし俺が、そいつを一切合切ぶっ壊して回るっつったらどうするよ?」
 戦場になれば、必然的に花の御所はあちこちが壊れて爆ぜることだろう。
 だが明日真は、それを今から、意図的にやってみせるとふてぶてしく言ったのだ。
 当然、富子はこれを面白く思わぬ。なにせ在りし頃は、自らの蓄財で修復してみせた大事な大事な自分の場所なのだ。
「ふざけんなッ!! アタシの財を使っていいのも、壊していいのもアタシだけだッ!!」
 吐き捨てた言葉が形になったかのごとく、富子の周囲にぼんやりと火の玉がいくつも現れる。
 それらはたちまち、燃え上がる火矢という正体をあらわにした。
 すなわち、応仁の乱において数多の邸宅を焼き払った火矢、それ自体の怨霊である。
「死ねよ。燃えて死ね。あの大乱で死んだクズどもと同じように焼け死ねぇっ!!」
 ごおうっ! 不可視の斥力に晒された火矢の怨霊が、明日真めがけて飛んだ!
「来やがったな! そうこなくっちゃ困るぜ、いっちょ遊ぶとしようじゃねえか!」
 カカカカ! と、跳躍した明日真を追って火矢が床に突き刺さり列を作る。
 当然のごとく、御所に火種が燃え移り、大廊下を地獄へと変えていくのだ……!

 初撃は避けた。ここまではいい調子、と言えるだろう。
 だが明日真は――彼とて覚悟はしていたものの――敵の放つ猛攻の"数"に慄くこととなる。
(さすがは災いとまで呼ばれた女だ、並じゃねえな……!!)
 カカカ! 冷や汗をかく明日真のすぐそばを、新たに三本の矢がかすめた。
 どうやらこの矢はそれ自体が意思を持ち、富子を苛立たせた敵を追尾するらしい。
 望むところだ。しかし、明日真が攻撃を仕掛けるには、あれ自体を引き付けねばならぬ。
「っと、いいとこにいいもんめーっけ!」
 だから明日真は、やおら近くの壁に手を突き刺すと、めきめき音を立てて材木を引っ剥がした!
 そして曲がり角から現れた矢の群れを、壁を盾に防御したのである!
 燃え上がる壁材を投げ捨てると、次は手近に飾られていた調度品の壺を奪取。
 向こう側に待ち構えていた矢に壺を投げつけ――ガシャン! 大きな音を立てて破砕!
「いやぁ、この家ありがてぇなあ! 防御するためのアイテムが山盛りじゃねえか!
 もしかして最初から、そのためにカネかけて建ててくれたのか? 優しいねぇ!」
 そしてこれみよがしに、大声で富子の神経を逆撫でするようなことを言う。
「それにしても不思議だな、あれだけキレてた割に自分で自分の家を燃やすなんてよ!
 さては頭に血が上って周りが見えてねえのか、御所なんぞより俺に夢中なのかね?」
 当然、そんなわけはない。富子が攻撃に荒ぶっているのも明日真のせいなのだ。
 さも己は何もしていないとでも言いたげに、悪災の短気をあざ笑う明日真。
 その軽口を縫い止めてやろうと、さらに七の火矢が飛んできた!
「甘い甘い、この程度じゃ俺は……殺せやしないぜっ!!」
 言葉ぶりは不敵だが、実際この戦いは丁々発止、危機一髪の連続だ。
 いかに盾になるものがそこら中にあろうと、火矢の勢いは強烈かつ執拗である。
 一手間違えば火だるまだ。現に、いくつかの矢が裂傷と火傷をもたらしている。
(さあ、これだけ暴れたんだ、そろそろ食いついてくれないと困るぜ)
 あれだけの怒りを燃やす性悪だ、獲物を殺すさまを自ら見たがるはず。
 走る。追われたネズミのように、獲物を誘い込むハイエナのように巧妙に!

 ……そしてそれからさらに数分後、ついに辛抱が報われた。
「いつまで生きてやがるんだ、このクソゴミがぁっ!!」
 来た! 悪鬼の形相で、燃え上がる通路を歩むさまは地獄そのもの!
 明日真は腰を沈め、富子めがけ弾丸のように疾走する!
「誰かあいつを殺せ、殺せよっ!!」
「いいや、死ぬのはてめえだ――こんなボロ屋もろとも燃えちまえっ!!」
 ここまで隠し通した牙――刻印入りの投擲短刀を、走りざま擲つ。
 だがそれすらも布石! 少なからぬ矢を浴びながら、明日真は!
「なッ」
「げんこつ食らって反省しろぉ!!」
 突き刺したナイフを狙って、富子の体を――ぶん殴ったのだ……!!

成功 🔵​🔵​🔴​

六六六・たかし
【アドリブ歓迎】

ふん、殺すと来たか
生憎だが俺には果たすべき使命があるんでな、ここで殺されるわけにはいかない。
自己中ヒステリック女にはここで退場してもらうとしよう。


【SPD】

まずは相手の先制攻撃に対して「ざしきわらし」の《呪詛耐性》《呪詛》《催眠術》あたりで対抗しつつ
俺は《第六感》《地形の利用》《空中浮遊》で爪攻撃を回避していく
ダメージは《覚悟》の上だ。
回避しながら《デビルスロットドライバー》に《デビルメダル》をセット。
『六六六悪魔の大変身』!!!
変身さえ出来ればこっちのものだ、爆発的に上がったスピードで富子に突っ込む!
受けてみろ「たかしブレード」の一撃を!!
デビル!!たかし!!スラッシュ!!!



●悪災討滅:挑戦者、六六六・たかし
「げほ、かは……っ!!」
 腹部にナイフと痛烈な殴打を受け、大廊下を転がる日野・富子。
 痛い。苦しい。どうしてアタシがこんな苦しみを受けなきゃいけないんだ。
 無論のこと、過去の自分が猟兵によって滅ぼされたことを、この富子は知覚しない。
 記憶もしていない。よしんばしていたとして、その怒りと憎悪が燃えただけだろう。
 だってアタシは悪くない。ただ財を集めて使っただけじゃないか。
 それをこいつらは。猟兵は。こいつらもアタシを苦しめて苛立たせるのか!
「くそっ、くそぉ!! ふざけるんじゃねぇええ!!」
「それはこっちの台詞だ。殺す殺すとやかましいヒステリー女め」
 ぎろり。血走った富子の目が、新たにやってきたたかしをにらみつける。
 並の人間ならば、その凝視に込められた憎悪に射竦められ、我を失うことだろう。
 心弱きものであれば、それだけで血反吐をこぼして倒れかねぬ憎悪……!
「あいにくだが、俺には果たすべき使命があるんでな。ここで殺されるわけにはいかない。
 そして――貴様を見逃すつもりもない。今回も同じように、ここで滅んでもらうぞ」
『あんまり格好つけないでよね。盾になるのは私なんだから!』
 などと減らず口を叩きながら、たかしの横にふわりと和装の童女が降り立つ。
 デビルズナンバー600・ざしきわらし。言葉と裏腹に彼女は役目を果たすつもりだ。
 当然である。目の前の、女の形をした悪鬼、油断していては命はないのだから!

 黙って聞いてればいい気になりやがって。ムカツク。ムカツク。ムカツク!
 怒り狂う富子の手が節くれだち、いくつもの血管が浮かび上がりめきめきと変異する。
 伸びた爪は、まるで鋭利な鉈を縫い付けたかのように禍々しくグロテスクだ。
「ざしきわらし!」
『わかってるわよっ!!』
 そして来る! 富子は憎悪の形相のまま、和装とは思えぬ速度で駆けた!
 ざしきわらしは即座にたかしの前に出て、富子のチャージを迎え撃つ構えだ。
 両目を見開き、富子の意識に干渉してその攻撃を鈍らせようとする……が!
『……速い!?』
 然り。富子の攻撃は、ふたりの予測を遥かに超えて早く、そして鋭い!
 単純に9倍されていることもあるが、そもそものオブリビオンとしての存在格が違う。
 ざしきわらしとて素人ではない。が、それを差し引いても動きが段違いなのだ!
「ふん、だからどうした。むざむざとやられるつもりはないぞ! なぜなら、俺は!!」
 己にも振るわれる爪の攻撃を、できるだけ致命的でない部位で受け切るたかし。
 鋭い傷が肉を裂き、骨にまで届いて激痛をもたらす。
 苦痛をねじふせて、かろうじて耐え抜いたたかしは己のドライバーにメダルをセットする!
「俺は! ――たかしだからだ! 大変身ッ!!」
 その姿がまばゆく輝き、光がとどめを刺そうとした富子を圧倒した!
「くっ!?」
「スピード勝負なら受けて立ってやる! いくぞ!!」
 見違えるほどの速度に達したたかしは、残像を描きながら富子を翻弄する。
 攻撃のスピードならともかく、それ自体のスピードに関してはいまは逆転した!
「ざけんな、さっさと死ねよ!!」
「それはこちらの台詞だ……!」
 がぎん! たかしブレードと輝く爪が、幾度も交錯し火花を放つ!
 あちこちに火の手が回り始めた御所を、まるでぶつかりあう原子めいて飛び交う両者。
 それでもなお、たかしの纏った装甲を、強靭な爪は容赦なく切り裂くのだ。
(あまり永くは持たないか、ならば……決めに行く!)
 ぎらりと、たかしの四白眼が覚悟と決意にきらめいた。
「うおおおおおおっ!!」
「ぁあああああ、ジャマだジャマだジャマだぁっ!!」
 交錯――見つけた! 被弾を糧とした敵の隙!
「デビル――たかし、スラッシュ!!」
 裂帛の気合を込めた斬撃が、富子の脇腹をざっくりと切り裂いた……!

苦戦 🔵​🔴​🔴​

セゲル・スヴェアボルグ
矛先がこちらに向いてくれるなら、寧ろ楽なんだがな。
まぁ、まずはご機嫌取りでもしてみるか。
徳川の埋蔵金を盛大に具現化でもしようか。
袖の下ってやつだな。袖の下収まるような量ではないがな。
だが、奴にとって都合のいい将軍にでもなろうとするならそれくらいは必要だろう?
苛立ちを抑えてやれば、怨霊が呼び出されることもなかろうしな。


無論、本物と遜色はないとはいえ、所詮はレプリカだ。
敵の注意を逸らしたなら消してしまえばいい。
同時にUCを発動してこちらも数を揃えんとな。
怒りの矛先を分散できれば相手は隙だらけだ。
手のあいた兵を富子へ向かわせるとしよう。

俺を意のままの操り人形にしようなんざ1000年早いな。



●悪災討滅:挑戦者、セゲル・スヴェアボルグ
「おう、どうやら宴もたけなわ、というところか?」
 花の御所には火の手が回り、あちこちでごうごうと地獄めいた音が響いていた。
 そしてがきん、ぎゃぎんっ!! といういくつもの衝突音。
 どうやら先んじた猟兵が、富子を相手に大立ち回りの最中のようだ。
「あまりまんじりともしては居られん、俺も馳せ参じるとするか!」
 重畳である。船乗り――海というおおらかで恐ろしい世界に生きるものはタフでなければならない。
 この地獄も楽しんで、何もかも飲み干してやろうとばかりに、セゲルはかっかと笑い突き進む。
 燃え盛る炎は、いわばこの悪趣味な伽藍の城を包む赤々とした海原か。
 船乗りが進むのならば、それはたとえ大地の上でも海と同じ過酷な戦場なのだから。

 剣戟――実際は爪と剣の打ち鳴らすものだが――が、出し抜けに止んだ。
 そして直後、がらがらっ! と襖を突き破り、富子が目の前に転がり込む。
「はは! これはこれは、天下の大悪災がなんともみじめだな!」
「ぐぅ……っ」
 脇腹に裂傷を受けたと思しき富子は、口の端から血を流してもんどり打つ。
 そして傷口を抑えながら、己をあざ笑うもの――すなわちセゲルを上目遣いに睨んだ。
「アタシを、見下してんじゃねぇ……!!」
「地に伏せているのは己であろうが。おっと、これも怒りに火を注ぐだけか?」
 などとわざとらしく口を抑えながら、セゲルは口の端の笑みを隠さぬ。
「どら。そこまでご立腹ならば、ひとつご機嫌取りでもしようか」
 かつん! と、手に持つ槍の石突で、セゲルは御所の床を厳かに叩いた。
 すると彼の背後に、突如として内側から輝く大判小判の山が出現したのだ!
「……っ!?」
 日野・富子は悪妻とも呼ばれた女である。財を集め使い果たすことイナゴのごとし。
 ゆえに目の前に黄金が現れたとなれば、たとえそれが電脳魔術によって生み出された偽りのものだとわかっていようとも、目を背けずにはいられない。
 目を奪われてしまう。それはもはや、性だとか癖といったレベルを超えている。
『そうである』という過去を規定されたからこそ無限に立ち戻ることができるオブリビオンは、『そうである』がゆえに己を変えられない。
 変化とは進歩であり、良きにせよ悪しきにせよ前へと、未来へと進むことであるからだ。
 過去の残骸に、それはない。ある意味では強く、ある意味では愚かしい。それがオブリビオンなのだ。
「この国で言うところの"袖の下"というやつだ。見ての通り、袖の下に収まるような量ではないが。
 どうだね、この徳川の埋蔵金、お前さんの機嫌を直すためにはいくらでもくれてやろうじゃないか」
 きっ! と、鋭い目で富子がセゲルを睨みつける。何を空言を、と。
 だが、黄金が。いや違う、これは幻だ、アタシを幻で謀るつもりか……!?

 富子にとって誤算だったのは、その苛立ちを偽りの埋蔵金そのものに向けてしまったことだ。
 彼女の召喚する火矢の怨霊は自動的であり、苛立ちを向けた対象を目標とする。
 "徳川の"埋蔵金という謳い文句が、そのネジ曲がった憎悪を刺激したのだ……!
「……!!」
 火矢に貫かれた埋蔵金がふっと消えてしまったことに、富子は目をむいて驚愕する。
 そして睨む、セゲルを! だがそこにいるのはセゲルひとりではない!
「俺を意のままの操り人形にしようなんざ1000年早いな! さあ我が軍よ、怨霊どもを退治してやれい!」
 応――!!
 鬨の声をあげ、召喚された手勢が火矢の怨霊を切り払いながら突き進む!
「く、クソ、死ね! 死ね死ね死ね死ね死ねぇー!!」
 富子の罵詈雑言は、追い詰められた獲物の悲鳴じみていた……!

成功 🔵​🔵​🔴​

須藤・莉亜
「ホントに面白い人だなぁ。敵さんじゃなかったら、サインが欲しいとこだよ。」
…白い僕で戦いたかったような?いや、収集つかなくなるか。

敵さんの先制攻撃は【見切り】や【第六感】、それと【武器受け】で出来る限り防御。

本番は攻撃を食らってから。
攻撃を受けた瞬間に、暴食蝙蝠のUCを使う。
爆散したように見せかけながら無数の蝙蝠になって周囲に散開。ついでに霧で覆って、敵さんの撹乱もしとこう。
んでもって、全方位から全力【吸血】で【生命力吸収】。

「最近の吸血鬼は灰から蘇るんだよ?知らなかった?」
僕は知らなかったけど。



●悪災討滅:挑戦者、須藤・莉亜
「ホントに面白い人だなぁ、敵さんじゃなかったらサインがほしいとこだよ!」
「うるせぇええええ!! 死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇえええ!!」
 悪鬼の形相の富子と相対するは、悪魔の力を従える吸血鬼である。
 じゅっ、と音を立てて、莉亜の銜えるシケモクが火矢にかすられ燃えた。
 降り注ぐ矢は無数。出会い頭の交戦となったのも災いしてか、見切ろうにも数の差で押し込まれている状況である。
 がきん!! 大鎌が火矢を切り裂く。だが全ては殺しきれない!
「あははははは! ほら、燃えろよ! 燃えて死ね死ね死ねぇ!!」
「こいつはやばい、かな……!」
 富子は哄笑する。獲物を追い詰める快楽に酔いしれて邪悪な笑みを浮かべる。
 莉亜はそのさまを目を細めて見る。まるで己の写し身めいて。
(……白い僕で戦ったような? いや、収集つかなくなるか)
 仮に自分の闘争心を解き放ったならば、御所を犠牲に暴れていたか。
 その思索が仇となったか、莉亜の脳天を火矢が……貫いた!
「ほら! 終わりだ、ざまぁみろ! あっははははは!!」
「あ――」
 目を見開く莉亜。その体が炎に飲まれ――そして、彼もまた笑った。
「あはははは。"このぐらいで吸血鬼が死ぬ"わけないじゃん!」
 ごおう! 炎は柱のように立ち上りごうごうと燃え上がる。
 富子は訝しんだ。なぜだ、燃え尽きたはずの猟兵の声がする。
「死ねよ……生きてんじゃねぇよ! アタシに殺されろよぉお!!」
『嫌だね。その血を僕がもらう番なんだから!』
 見よ! 爆散した炎の正体は無数の蝙蝠だ!
 驚愕する富子を霧が包み込み、それを隠れ蓑に蝙蝠が襲いかかる!
「が……あ、あぁああああっ!?」
『知らなかったの? 最近の吸血鬼は灰からだって蘇るんだよ?』
 噛み付いてくる蝙蝠を、富子は爪を振るって払おうとする。だができぬ。
 霧のなかに血が飛び散り、それが炎と混じり合い、すさまじい有様を描き出す。
 鬼と鬼が、まるで飢えた蛇めいて絡み合い、互いを憎悪して命をすすっている……!

苦戦 🔵​🔴​🔴​

メイスン・ドットハック
【WIZ】
先制攻撃に関しては、電脳魔術で自身のホログラムを作成
【ハッキング】【暗号作成】でプログラム化して自動で動くようにして狙いを分散させる
自身は【第六感】【視力】【情報収集】を元に火矢を回避し、できれば電脳爆弾で吹き飛ばしていく

先制攻撃を凌ぎきったら、UC「電脳黒死病」をばら撒き、日野富子はもちろん怨霊も感染させて動きを一時的に止める
能力的にも数秒程度だと予測されるので、その隙に【情報収集】【ハッキング】を駆使して日野富子や怨霊の構成成分を分析し、それを元にした対霊体特攻爆弾を電脳魔術で作りだす
それを部屋の中央部で爆裂させて、霊体のみに多大なるダメージを与えることで日野富子に一撃を加える



●悪災討滅:挑戦者、メイスン・ドットハック
 苛立ちを向けられた相手を追跡する火矢の怨霊に、死角はない。
 ヒュカカカカッ! と突き刺さる矢の群れが、次々にホログラムによるダミーを貫いて燃やすのだ!
「数で圧してくるとはメンドーじゃなー!」
 思考速度で電脳魔術のプログラムを編み上げられるメイスンにとって、ホログラムが5体や10体破壊されようが大した問題ではない。
 狙いの分散も功を奏している。あまり正確な狙いは出来ないのだろうか?
「クソ、クソッ、クソクソクソ!! 妙なまじないしやがって!!」
「めんどーなら改めてほしいんじゃがのー、そうもいかんかのー」
 苛立つ日野富子の背後にぼんやりといくつもの鬼火が浮かび上がり、それらはたちまち火矢としての実像をなす。
 もしも正確に数を数えようとしたならば、ざっと500本以上は一度に放たれているはずだ。
 回避の合間に電脳プログラムで生成した爆弾を投げ込もうとするメイスンだが、その弾幕によって遮られてしまう。
 周囲の壁や床に火矢が突き刺さって燃え上がる炎の壁も、電脳爆弾を遮る一種の妨害となっていた。

 しかし、メイスンも闇雲にホログラムを生成しているわけではない。
 自身の被弾を可能な限り最小に抑え、苛立つ日野富子の視線や動きを仔細に観察し、攻撃の隙やユーベルコードの特性をつぶさに分析する。
 必要なのは一瞬だ。必殺の電脳魔術プログラムはすでに組み上げられている。
 それを投げ込み、打ち込み、敵を感染し侵食する一瞬さえあればいい!
「僕はまだ生きとるぞ? 殺す殺す言っとったのはうそっぱちだったんかのー!」
 と、わざとらしく挑発する。日野富子のこめかみの血管が切れた!
「死ぃいいねぇえええええ!!」
 生成されたすべての怨霊火矢が、一斉にメイスンを全方位から包囲する!
 もはや逃げ場はない――だがその狙いを定めるために、敵の意識は集中せざるを得ない!
「こういうリスクマネジメントは嫌いなんじゃがなー!」
 電脳黒死病(スタン・パンデミック)発動!
 メイスンの電脳ガジェットから放たれた電脳ウィルスのジャミング波が富子を、怨霊火矢を貫き、さらに空気感染して花の御所を駆け巡る。
 必殺の予感に嗜虐の笑みを浮かべていた富子が、驚愕に瞠目した!
「コイツ……!!」
「隙を見せたな? こいつはおまけじゃー!!」
 ここで情報収集の成果を見せるときだ。メイスンの掌の上に生まれる新たな電脳爆弾。
 怨霊、そしてこの世にへばりつく悪災の霊をのみ破壊する特殊なウィルスだ!
「お前みたいなめんどくさい奴はこっちのほうから願い下げじゃー!」
 投擲! 怨霊火矢が撃墜するより先に……特効爆弾が、富子の眼前で爆ぜた――!

成功 🔵​🔵​🔴​

ユエイン・リュンコイス
足利将軍家、か。個人的には剣豪将軍と謳われた義輝が好きかな。衆寡敵せずとは言え、あの剣覧剛華な最後に感じ入るところはある…となれば。

戦法自体は普段と変わらない。機人を前面に格闘戦を行いつつ、ボクは後方から射撃戦を。ただし、二人とも敢えて視線へ身を晒す形で挑む。
炎自体は【激痛耐性、火炎耐性、呪詛耐性】で戦闘不能にならない程度に押し留める。傷、痛み、流血…今だけは望むところだ。
斃れるか否かのギリギリを見定めUC起動。相手の炎も取り込み、利用させて貰おうか。
本来であれば真の姿時の切り札だからね、十全とは言い難いが…それでもここまでダメージを受けさえすれば。

手にした得物、放つ斬撃はこの一刀で十分だ。



●悪災討滅:挑戦者、ユエイン・リュンコイス
 かの剣豪将軍は、末期のときにありて数多の名剣剛剣を周囲に突き立て、
 刃こぼれするたびにこれを抜き、新たな得物として大立ち回りを繰り広げたという。
 UDCアースにおいては史料として信憑性を疑われているものの、
 このサムライエンパイアに実在しただろう剣豪将軍はどうだったのか。
 もはやそれはわかるまい。あるいは足利義輝もまたオブリビオンと成っているか。
 想像する他にないが、その武名が勇ましく素晴らしいものであることは確か。
「この花の御所を舞台にするならば、その剣覧剛華に倣うのは当然だろう!」
 ユエイン、そして黒鉄機人は、高らかに凱歌を叫ぶように日野富子へ挑む。
 KBAM!! 勇気を以て踏み込んだ少女のすぐ背後、大気が爆ぜて髪の端を焦がした。
 日野富子の視線がもたらす憎悪の爆裂である。
「アタシの前に立つんじゃねえ! 来るなぁあああ!!」
 KBAM! KBAM!! KA-BOOM!!
 視線という察知可能回避不可能の起爆点による、ノーモーションの連続爆発。
 ユエインは常に足を止めずに移動することで、これの直撃を避ける。
 黒鉄機人はそのフォルムの大きさゆえに完全回避こそ不可能ではあるものの、
 逆に堅牢さゆえに、爆発を受けてなお戦闘の続行が可能となっていた。
 格闘戦の間合いに踏み込む。ガシュン――! 関節部から吹き出す蒸気!
「黒鉄機人! その悪災を吹きとばせッ!」
「アタシを殺せると思うなぁっ!!」
 KBAM!! 振るわれた機人の拳が爆裂によってはねのけられる。
 だがその時、ユエインはすでに多機能ツールを機関銃型に変形、そして射撃!
 BRATATATATATA!! 弾丸が日野富子を貫――KKKKBBBBAAAAMMMM!!
「弾丸すらも焼き尽くすだなんて……!」
 今の不意打ちは入るはずだった。これが幹部級オブリビオンの力か。
 爆導索めいて大気を焦がす炎は、弾丸を伝いユエインへ襲いかかる……!

 ……嗜虐の笑みを浮かべる日野富子に対し、ユエインも勝利を確信していた。
 かかった。相手のユーベルコードの特性も、それを食らうことも彼女は織り込んでいたのだ。
 視線へ身を晒したのも覚悟の上。この流れは想定どおりである。
(いいだろう。その炎でボクを焼き、傷を与えて血を流させるがいいさ。
 ボクはその痛みを、炎がこの身を灼く苦しみすらも飲み込み戦おうッ!)
「この攻撃は、君を討ち滅ぼすための道筋となる……!」
「コイツ!? まさか、アタシの攻撃をわざと――」
 気づいたところでもう遅い。ユエインは炎に巻かれながら眦を決する。
 あちこちが焦げた黒鉄機人……そのボディがばかりと分解変形しユエインと合体!
 そして見よ! 憎悪の炎すらも焼き尽くす焔刃、煉獄たる打刀の煌焔を!
「絶焔一刀――我らの焔は正しき憎悪と怒りのもとに!」
「コイツ!!」
「正真正銘最後の切り札、受けてみろ大悪災! その欲望を昇華するッ!!」
 紅く燃え上がる焔と鎧に包まれた煉獄の乙女が、地獄の戦場を駆けた。
 流れ出す血すらも沸騰させる怒り。すべてをこの一撃に込めて!
「はぁあああっ!!」
 ざくん――燃え上がる円弧の軌跡が、邪悪を切り裂きその身を灼く……!

成功 🔵​🔵​🔴​

ロク・ザイオン
※ジャックと

(美しい女が烏のように喚いている。
欲で満たし飾り立てた巣を
下賤な森番に。醜い獣に。
踏み荒らされるのは、さぞ腹立たしかろう)

花はここにはない。
…すべて、土にもならない虚ばかりだ。

(【地形利用】し殊更に荒らしながら【ダッシュ】
巣の主を煽り、注意を惹きつけ
烙印刀、閃煌二刀で爪を【武器受け】に専念
刃は指の数
しかし大本は二本の腕、それを操るのは二つの眼
怒らせればその分こちらを見るだろう
…見ろ
その目で、おれの相棒を見るな)

(相棒の援護で隙が出来たら
灼熱の刃二本とも敵に向け投擲、追撃する)
――あァア゛ア!
(「燼呀」の爪で【早業、傷口を抉り】)

美しい女の顔で。
醜く、喚くな。
(喉笛を食い千切る)


ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)

苛立ちを隠せないらしいな。
――思う所はあれ構いはしない。
どうあれ、お相手願おうか。

――行くぞロク。

(ザザッ)
SPDを選択。
"経験予知"。
(怒り。殺意。憎悪。苛立ち。――思い通りにならない相手。どれも敵に向けた覚えのある――"経験した事のある"感情だ。だから。)

――そうするだろうと思った。
(先制の攻撃であれ九倍の量であれ。
怒りと憎悪の篭る攻撃をどう敵に向けるか――それがどう我が身に飛びかかってくるか、予測が付く。それを回避する。)
(戦闘知識、学習力、早業、見切り、残像、視力――技能も駆使し回避を継続し)

――そこだ。
(振り翳す手を正確なスナイプで援護射撃、ロクへ助けの一手を。)



●悪災討滅:挑戦者、狩人ふたり
 ロク・ザイオンは憤る。
 花の御所? ああ、あるいはかつてはそうだったのだろう。
 すでに失われた栄華、ありし頃にはまさに花が咲くかのように、そう謳われるほどの絢爛豪華でみずみずしい美がここにあったのだろう。
 だが、もはやここにそれはない。人々が見たであろう花は、いのちの輝きはない。
 すべて、すべて土にもならぬ虚。金と欲が作り上げた伽藍の城だ。

 ジャガーノート・ジャックは何も感じない――少なくとも見せはしない。
 怒り、苛立ち、憎悪し、呪う邪悪。それを見ても鋼は揺るがない。
 ただ刈り取る獲物である。相棒とともに追い詰めて討ち果たす敵である。
 ……けれど、その鎧の下で、少年は想った。
(見覚えがある感情だ)
 怒り。殺意。憎悪。苛立ち。思い通りにならない相手への呪詛。
 わかるとも。己もそうなのだから。どれも経験したことのある感情だ。
 だからこそ。少しだけ――きっと、自分はあれを憐れんでいるのだろう。

 御所が燃えている。
 燃え盛る御所のなか、全身に刀傷を帯びた凄絶な女が、歩いている。
 引きずる和装の裾は血で湿り、ざんばら髪は生成りめいて乱れていた。
 ふー、ふーと荒く息をつくさまは、死にかけの獣そのものである。
 然り……獣だ。追い詰められた獣がそこにいた。
 だが、双眸に浮かべているのは憎悪。それは獣にあるものではない。
「アタシの、アタシのものを、奪うんじゃねぇ、壊すんじゃねぇ!
 何もかもアタシのものだ! アタシの財だ! アタシだけが好きにしていい!!」
《――ならば、お相手願おうか。本機はその歪んだ認知もろとも抹殺するのみ》
 淡々とした声音で言い、鋼の豹が傍らの女を見やる。
《――行くぞ、ロク。あの災禍を本機と君で狩る時だ》
「……おーば」
 首肯。そしてロクは一陣の、燃え上がる獣じみた閃光となった。
 疾い。両手を前脚めいて床にかけ、がりがりと引き裂きながら壁に跳ぶ。
 まだ無事であった御所の絢爛な壁材が引きちぎれ、でたらめに燃える。
「アタシのものに触れるなッ!!」
「ぐ、る、ぁアァああぁあアああッ!!」
 かたや罵詈雑言、かたや咆哮。もんどり打ち絡み合う様は餓狼の殺し合いである。
 9倍の速度で振るわれる爪はあっさりとロクの肌を、肉を、骨をすら裂く。
 陽動である。注意を惹きつける代償は傷としてロクの体に刻まれる。
 一方でロクもまた、二振りの刃を牙のごときに逆手に振るい、これを弾く。
 ぎらぎらと見開かれた双眸が、ちょこまかうごめく獲物を睨む。
 そうだ。それでいい。そのふざけた目で、濁った目で、おれの相棒を見るな。
 おれを見ろ。お前の相手はおれだ。おれが、お前を狩り、灼くのだ。
「あぁ゛ァあアああァアア!!」
「うざったらしいんだよ、その声が!!」
 たとえ刃が爪であろうが、突き詰めればそれは二本の腕の動きを見ればいい。
 その目を見ればいい。それは正しい。だが根本的なズレがある。
 ――敵は強い。これは餓狼同士の骨肉相食む殺し合いではない。
「が――」
 ぞぶり。真一文字に振るわれた爪が、ロクの喉元すれすれを裂いた。
 血の華が裂く。速度は豹、否、虎、否。いかなる獣をも超えたもの。
「テメェのその声は、アタシの財に相応しくない。死ね」
 人の形をした虚無。強大なるオブリビオンの速度である。

 しかして。
 その醜く、ねじ曲がった感情のなんたるかを鋼はよく知っている。
 鋼纏う少年はよく知っている。だからこそ鋼を纏っているのだから。
 この鋼はその証左であり、枷であり、墓標であり、そしてトロフィーだ。
 背負うと決めた。歩むと決めた。その意志を幾度も果たしてきた。
「……何?」
 日野富子は訝しんだ。今の爪撃は、獲物の首を刎ね飛ばしたはずだ。
 刎ね飛ばせた。だがなぜ出来ていない。狙いが逸れた?

 逸らされたのだ。
《――声を嫌っての喉狙い。そうするだろうと思った》
 怜悧なる銃撃。腕の付け根を狙った援護射撃。
「テメェえええええ!!」
《――そして本機を狙う。それもよくわかる》
 甘い。攻撃は必ず直線に来るのだろう――そら、予想通りだ。
 最小かつ最速の動きでこれを回避し、再びの銃撃。日野富子の片目が爆ぜた。
「あぁあああああっ!?」
《――本機の相棒を傷つけた。これはその報いだ。もはや財とやらは見れまい》
「ふ、ざ、け、る、なぁああああっ!!」
 血の涙を流し女の形をした化け物が吠える。爪撃。届かぬ。
「てきは、おれだ」
 ごぼごぼと血の混じった声でロクが言う。肩口に牙が突き刺さっている。
「ぐ……!?」
 振り払う。両者は隕石めいてぶつかりあい、飛び離れ、ロクは壁を駆ける。
 日野富子は髪を振り乱し、獣じみた雄叫びを上げてこれを妨げようとした。
 銃撃――肩が爆ぜる! えぐられた傷を狙った正確無比なスナイプ!
「おまえの、てきは! おれだ!!」
 文字通りの血反吐。投げは成った灼熱の刃(きば)が今度こそ腕を断つ!
「ぎ――!?」
「――あァア゛ア!!!」
 髪(たてがみ)が燃えた。
《――喉を裂いたならば、お前もまた喉を裂かれて死ぬがいい》
 もはや銃口は獲物を捉えぬ。狩りはここに終結した。
(うつくしい、おんなのかおで)
 ぞぶり。嫌になるくらい甘美な牙の噛みごたえ。傷口からひゅうひゅうと聞こえる呼気。
(みにくく、わめくな)
 ロクは意を決して喉笛を噛みちぎる。血が噴水めいて吹き出した。
「……ぢぐ、しょう……」
 ぼきりと首の骨が折れ、憎悪にまみれた鬼は死んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


 ――アタシのものだ。アタシのものだ、アタシのものだ!!
有栖川・夏介
※アドリブ歓迎

……荒々しいですね。まさに「金の亡者」という言葉が相応しい。
まあ、私としては相手が誰であれ敵ならばただ殺すのみ。
「……さよならの時間です」
処刑人の剣を構え【覚悟】

敵の攻撃は【第六感】【野生の勘】を駆使した【見切り】や、UC【白騎士の導き】で回避。
敵の攻撃速度が鈍ってきたら、敵の攻撃は【武器受け】する。
【怪力】でそのまま押し返し、【ダッシュ】で一気に相手との距離を詰め懐の匕首を取り出して斬りつける。
「……死ぬのは貴女のほうです。」



●悪災討滅:挑戦者、有栖川・夏介
 強大なオブリビオンは、討滅された瞬間に現世に再来する。
 これを繰り返し討ち続けることで、初めてその存在の滅却が可能になるのだ。
「……アタシは、死んだのか」
 荒れ果てた御所の有様を見て、日野富子はその事実を理解する。
 瞬間、筆舌に尽くしがたい憎悪が溢れて、その形相を悪鬼に変えた。
 わけても女を苛立たせたのは、そこに猟兵の気配が近づいていたことだ。
「はじめまして。そしてさよならです」
 赤いマフラーを巻いた処刑人が、冷たい眼差しを向けていた。
 異様な形の処刑剣を手に、真正面から日野富子へと挑みかかる!
「アタシを殺す? ふざけるなッ!!」
「ふざけていませんよ。金の亡者というべきその荒々しさ、もはや殺すほかにない」
 ガギン!! 伸びた爪と処刑剣が打ち合い火花を散らす。
「……いいえ、たとえそうであろうとなかろうと」
 ぎゃぎぃ!! 夏介は、ただ淡々と剣を交わし爪を打ち払う。
「敵であればただ殺す。それが私の仕事。処刑人としての――役目です」
 決然たる眼差しは赤赤と。それが、悪災と謂われた女の凶眼と絡み合う。
 ……夏介は眉根を顰めた。目の前の女の形をした怪物のその憎悪の醜さに。
(これが――オブリビオンですか)
 そして直後、その眼差しと表情は警戒と当惑に変わる。
 敵の攻撃が、打ち合うたびにすさまじい速度を増していくのだ。
 これが幹部級オブリビオンの力! 9倍の速度で振るわれている、ということを差し引いても、そもそもの存在格が並のオブリビオンを凌駕している。
 研ぎ澄まされた第六感と野生の勘をもってしても、徐々に斬撃を見切ることが難しくなっていく。
 チェス盤にたとえるならば、常識外の戦術で駒を取られ続ける恐怖。
「……このまま、押し切られるわけにはっ!」
 がぎん!! 夏介は首狙いの一撃を処刑剣で受け止め、怪力を以て押し返そうとする。
 日野富子が、笑った。夏介が目撃したのは、狙いすましたように構えられた右手……フェイント!
「……あいにくですが」
 そして今度は、日野富子が驚愕に目を見開く番である。
「死ぬのはあなたのほう。そして備えていたのは――私もですよ」
 見よ。夏介の片手は懐に忍ばされている。
 取り出したのは匕首。処刑剣をぐいっと力任せに外側へ伸ばし、腕の守りをこじ開けて……刃を、突き出した!
「テメェ!」
「この一撃が、あなたを討つ手がかりとなる……ッ!」
 日野富子の爪と、夏介の匕首が相手を貫いたのは、全く同時のことだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

霑国・永一
やぁ、こんにちは守銭奴の化身。笑ったら絶対綺麗なのに台無しだねぇ。
ああそうそう、早速で悪いんだけど、財は要らないから命くれないかな?

先制攻撃に対しては飛び退いて距離を取りつつ、自身へ来る爪を防ぐのではなくダガーで受け流すようにしつつ、回避をする。御所にある柱や壁とかも利用して上手い事躱せれば。ついでに事前に持ち込んだエンパイアの通貨を富子に向けてばら撒いて気も引いてみたいところ

戦闘自体は狂気の速刃発動。爪を受け流しつつ速度を奪って、いい感じになったら速度纏って高速接近、近接で高速斬撃戦闘開始と相成ろう。爪振るう腕を刻んでおくと楽になるかなぁ
「悪いねぇ。俺って泥棒だからやはり財も盗ませて貰うよ」



●悪災討滅:挑戦者、霑国・永一
 いい女だ。なのにあんな悪鬼めいた形相を浮かべるなんて、もったいない。
 ……などとは思うものの、だから殺すことを惜しむかといえば、否。
 いかに飄々と振る舞う永一でも、強敵相手の殺し合いにおいては本気になる。
「やぁ、こんにちは守銭奴の化身」
 しかし表向きはいつもどおり、リラックスした様子で挨拶してみせる。
 ぎろりと血走った目が睨み返すが、永一の笑みを消すことなど出来はしない。
「おやおや、怖いねぇ。俺が盗人だからってそんな警戒しないでほしいんだがね」
「アタシの財を奪うつもりか! 猟兵のくせに、ぶっ殺してやる!!」
「いやいや、そんなのはいらないよぉ」
 ぎらりとメガネのレンズを鈍く光らせ、永一は敵を睨んだ。
「代わりにあんたの命をもらうからねぇ」
 膨れ上がる殺気――両者の姿が一瞬にしてかき消えた!

 永一が用いるユーベルコード、その名を"盗み斬る狂気の速刃(スチールスピード)"。
 それは、速さという概念そのものを盗み出すという超常の刃。
 しかし速さを盗むには、相手を斬ることでユーベルコードを発動せねばならない。
 9倍の速度、かつ根本的に強大なオブリビオンゆえのスピードを持つ爪は、
 飛び退き刃で受け流そうとする永一を、徐々に追い詰め切り裂いていた。
「死ね! 死ね死ね死ねぇ!! あははははは!!」
「こいつはしんどいねぇ! いちいち真正面から相手したくないなぁ!」
 ぎゃぎん!! ダガーと爪が打ち合い、火花を散らして御所を照らした。
 このままではジリ貧だ。しかし永一の表情には、やはり謎の余裕がある。
「……気に入らない……殺してやる、その顔を引き裂いてやる!!」
「おやぁ? 怖いねぇ、コイツで許してくれないかなぁ?」
 チャラチャラと永一がばらまいたのはまきびし? ……否。
 それがなんであるかを理解したとき、富子は思わず目を奪われた。
「小判……!?」
 然り。サムライエンパイアにおける高価な貨幣である。
 明らかな囮。だが、財貨を求める大悪災であるがゆえに!
「あ、アタシの財だ!!」
「あーあ、残念だねぇ」
 いけないとわかりながらも、富子は手を伸ばしてしまう。そうであるがゆえに。
 永一はそれを見下ろす。嘲りを込めた眼差しで。
「やっぱりその顔、もっと余裕がありゃ綺麗だろうにさぁ」
 そして、ダガーの刃が、富子の白い肌を切り裂いた!
「ぐうっ!?」
「けどすまないねぇ、やっぱり俺は泥棒だからさぁ。財も盗ませてもらうよ」
 素早く貨幣を回収し、奪った速度を載せたさらなる斬撃。富子はこれを迎え撃つ。
 趨勢は逆転した。追い詰めるのは永一であり、受け流すのが富子だ!
「こ、コイツ!! 殺してやる、殺してやるッ!」
「本当の泥棒は、そんなこと言う前に奪ってるんだけどねぇ」
 悪女は歯ぎしりした。その男の余裕の笑みが、どこまでも己の神経を逆撫でするのだ……!

成功 🔵​🔵​🔴​

夏目・晴夜
このハレルヤの財まで欲しいと言うならば、
もっと物乞いらしく這い蹲って請うたらどうですか?
そうしたら小銭くらいなら笑顔で恵んで差し上げますよ

敵正面から向かってくる火矢は人形の巨体で防ぎ、
別方向からのは妖刀での【カウンター・なぎ払い】で凌ぎ、
序盤は防御に徹する事で敵の油断を誘います

刺さった多数の火矢による炎を纏った人形での抱擁は
身を焦がす程に情熱的できっと最高でしょうね

機を見て人形の背を全力で蹴飛ばし、一気に接敵させ『死の抱擁』
人形の豪腕で強く抱き締めさせて骨を砕き、
人形の燃え盛る身体で肌も髪も焼け爛れさせてしまいたく

しかしニッキーくんの修繕にはまた苦労しそうですねえ
いやはや、私も骨が折れそうです



●悪災討滅:挑戦者、夏目・晴夜
 あちこちに刃傷を負った日野富子が、ふらふらと大廊下を歩いている。
 速度を奪う刃。手強い敵だ、よもや己がこうして逃げ延びることになろうとは。
「くそ、クソ、クソ……!! ここは、アタシの御所だ。アタシの場所なんだ。
 猟兵どもめ……アタシの財を奪って、アタシを殺すつもり? ふざけるな!!」
 指を噛みながらぶつぶつと言う。その形相のおぞましさたるや。
「財、ですか。あなたの財とやらに興味はありませんが、
 世界のすべてを財とおっしゃるなら、それはつまり私の財にも手を出すということ」
 ぎらり。突如として響く声のほうを、日野富子は睨めつける。
 その凝視を受けてなお、晴夜は平気な顔である。
「このハレルヤの財までほしいというならば、
 もっと物乞いらしく這いつくばって乞うたらどうですか?」
「……なんだと……?」
「地面に伏して、額をこすりつけて、泣きむせびながら懇願しろということです。
 そうしたら、小銭くらいなら笑顔で恵んでさしあげますよ? さすが私、優しい」
 富子はなにも言わない。言葉すら忘れるレベルの怒りに囚われたのだ。
 その燃え上がる憎悪に呼応するかのごとく、周囲にぼんやりと鬼火が生まれ、
 さらにそれらは燃え上がる火矢……応仁の乱の怨霊に変じていく……!
「おや? 不思議ですね。このハレルヤの優しさに感動するところ」
「死ぃいいいねぇえええええええええ!!」
 言葉を切り裂き、怒号を号令として火矢が雪崩を打った!

 それに対し、晴夜の前に立ちはだかったのは優しく可愛いニッキーくんだ!
 その巨体をもって、自らのボディで火矢を盾となり防ぐ……!
「っと、ニッキーくんの愛を否定するとは度し難い」
 怨霊火矢は、まるでそれ自体が意思を持つかのように縦横無尽に飛び交う。
 それは、富子の不興を買った……つまり苛立ちを感じさせた敵を追尾するという特性ゆえ。
 しかしそれも察知済み。ニッキーくんの巨体をかいくぐる矢を妖刀で切り払い、
 晴夜はニッキーくんとともにあえて一歩退き、物陰に隠れようとする。
「はははははは! 死ねよ、死んじまえ!!」
 日野富子は哄笑し、こめかみに青筋を立てながら次々に火矢を召喚する。
 見よ。もはやニッキーくんは、人型の焔とでも言うべき有様だ。
「お前のその人形もろとも、燃えちまえ!!」
「残念ですが――」
 敵が勝ち誇ったそのとき、晴夜は……ニッキーくんの背中を、蹴り飛ばした!?
「何っ!?」
「その栄誉は、あなたに味わわせてあげますよ!」
 富子は慄く。燃え上がる巨躯が、その豪腕を広げて己を抱擁しようと……!

 ……絶叫。そして肌が焼ける臭いがあたりに立ち込める。
「しかし、ニッキーくんの修繕にはまた苦労しそうですねぇ」
 己の肩に突き刺さる矢を引き抜きながら、晴夜は言う。
 目の前では、女の形をした焔が、人形とともに燃えていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルベル・ノウフィル
【星杯】
お金は大事ですな。うむ、わかりますぞ
僕はお金をばら撒きましょう。そーれ

全行動に早業活用
オーキッド殿、トリテレイア殿、守りは任せましたぞ
僕もオーラ防御を味方に巡らせ防御支援いたします

トリテレイア殿の天井破壊撃に合わせて念動力で敵の足元にトンネル掘り。足場崩しは得意技でございます

ライア殿とゲンジロウ殿の攻勢にあわせUC遊戯
人狼病に罹患する前の記憶を一つ消し、上から下から左右から奔放に、死霊に敵を討たせましょう
捨て身の一撃、でございます
過去を引きずっている亡者を海に還すのに相応しい術でしょう
過去よ、棄てられよ
ちんけな僕の思い出と違い、お前の名は歴史に残り人々に忘れられる事はないのです


ゲンジロウ・ヨハンソン
【星杯】で参加
○アドリブ歓迎

○先制対応
攻撃自体は【激痛耐性】と【オーラ防御】で効力を緩和しつつ、【カウンター】決めるぞ!
視線を防ぐならこれじゃろな、持ち込んだ水鉄砲を取り出し【捨て身の一撃】宜しくの【クイックドロウ】の【零距離射撃】で両の目元を打ち抜くぜ!
中身?もちろんレモンの果汁じゃ。
唐揚げにはぴったりの味付けじゃが、お前さんの目にはちぃと刺激的すぎるじゃろ?

○爪の攻撃対応
「みんなー!耳を塞げー!」
兜の防音機能をONにして持ち込んだ黒板を構えて爪の攻撃から味方【かばう】!

○攻撃
奴さんの憎悪とわしの抱える怨嗟、どっちが上か我慢比べじゃな。
【怪力】で奴を掴めば【覚悟】をもって燃やしあい開始じゃ。


宮落・ライア
【星杯】
生きて悪徳。死しても悪災。清々しいほどにヒーローの敵だね。
先制攻撃は防御役に任せその後ろに隠れ凌ぐ。
大丈夫?耐え切れそう?
攻撃役のボク達の役目は、防御役の仕事を無駄にせずに出来た隙に一撃必殺の一撃を叩き込むこと。相手の注意が防御役に十分集中した瞬間に飛び出し必殺の一撃を叩き込む。
次の一手も、相手の反撃も、せめて、なんて思考も捨て去ってその一瞬で勝負を決めに掛かる。
相手の顔を万力の如く掴み上げ地面に叩きつける。
金、金、金。どうせお前なんかが治めても金を搾り取るだけだと「火」を見るより明らかだろクソ野郎が。地面の下で寝ていれば弔っていたものを…。
安寧の眠りを自らの炎で焼いて苦しむなんてね。


オーキッド・シュライン
【星杯】
●心情
憎悪と強欲が炎に現れていますわね。凄まじい熱量ですわ。炎に関してはわたくしも専門家。負ける気はありません
●先制攻撃対策敵の視線を見切り地獄の炎の左腕で武器受けしてUCを受けます。元々燃えていますし、わたくしには火炎耐性とマスデバリアのオーラがあるのでダメージはかなり軽減できる筈。盾の後ろから飛び出してしばらくは視線を引き受けます
●敵のUCを受けきったらUCで変身して空中戦をしかけますわ。空中からブラスターでの実弾攻撃や炎を纏った細剣による串刺しで速度と炎熱を活かしての戦闘をしかけますわ。飛びながら蒔いた蘭の極小花弁を起爆させて攻撃「折角の新居ごと豪火絢爛に燃やし尽くしましょう」


トリテレイア・ゼロナイン
【星杯】
あの表情……骸の海から蘇らなければ、ああも己が欲と憎しみの炎に誰も彼も自らすら焼くこともなかったでしょうに……。
気の毒ではありますが、手加減できぬ強敵、エンパイアの人々の為討たせて頂きます。
●防具改造で装甲強化した盾で視線を●盾受け。オーラの援護を受けつつオーキッド様と二人がかりで後ろの味方を●かばいます。

凌いだら●スナイパーと●破壊工作の知識を用いて格納銃器の●なぎ払い掃射で富子直上の天井を崩落させ動きを制限。
御所の破壊に気を取られて此方への注意が一瞬疎かとなるかも。

その隙を●見切りUCの隠し腕で●だまし討ち富子の顎に伸ばし上を向くよう●怪力で拘束。視線を固定し仲間の安全を確保します



●悪災討滅:挑戦者、星杯の五人
 ……燃えていた。
 女の形をした炎が、ごうごうと燃えていた。
 比喩ではない。怨霊火矢による炎を己に返された日野富子の成れの果てである。
「……あら? 手を下すまでもなく決着がついたのでしょうか?」
 めらめらと燃える火柱を見やり、オーキッド・シュラインは訝しげな表情をした。
 おそらくここでは相当の死闘があったはず……だが、この状況をなしたであろう猟兵はいない。
 あちこちに血の跡。おそらくは当人も無傷ではなかったのだろう。撤退したあとか。
「えー! せっかくやる気だったのになー!」
 と、宮落・ライアが子供っぽく唇を尖らせて所体なさげに地団太を踏む。
 体を動かしたくて動かしたくてたまらない、とでも言いたげな様子である。
「まあ、ケリがついたんならそれはそれでええんじゃないかな!
 ……ケリがついてれば、だがな。話はそううまくはいかないらしい」
 最初はリラックスしていた様子のゲンジロウ・ヨハンソンも、表情を引き締める。
 最年長のゲンジロウがそんな面持ちをしたこともあり、オーキッドとライアも緊張感を取り戻した。
「そうは問屋が卸さない、というやつですな。僕は詳しいのでわかりますぞ。
 オブリビオンは楽をさせてくれませぬからな! いや本当に面倒でございますな!」
 ふざけているのかマジなのか、ルベル・ノウフィルの物言いは得体が知れない。
 が、油断しているかといえば否である。彼もゲンジロウ同様に気づいている。
 ……炎の柱の中から、己らを突き刺す憎悪の気配があることを。
「……来ますね。あれほどの炎に包まれてなお滅びを拒絶するとは。
 己が欲と憎しみの炎で、誰も彼も自らすらも焼き尽くす悪鬼……ですね」
 白亜の騎士めいた装甲を持つウォーマシン、トリテレイア・ゼロナインの言葉は、
 大悪災に対する憐憫と同情が満ちている。敵をすら憐れむ、それが騎士というもの。
 たとえそれが模倣であろうとも、貫くべき指標であることはたしか。
 そしてこの場での己の役目は、ただひとつきりである!

 ――っぱぁん!!
 と、炎の柱が、内側から爆ぜて炎の飛沫を撒き散らした。
 ちろちろと蛇めいて燃える炎は、伽藍の城じみた欲望の御所を焼いていく。
 そして、見よ。炎の内側から現れた、焼け焦げた和装の女を。
 あるいは、女の姿をした虚無。ヒトの形をした、欲望と憎悪の悪鬼!
「……アタシのものだ」
 白い肌はそこかしこが焼けただれ、凄絶な有様である。
 髪は燃え、縮れ、一部は頭皮がめくれて骨があらわになっていた。
 だが何よりおぞましく、恐ろしく、そして一同を戦慄させたものは……目だ。
「アタシのものだ」
 熱によって沸騰し爆ぜた片目。どろりとなにかの液体が涙めいてこぼれている。
 まぶたが焼けただれ、血走ったもう片方の目を剥き出しにしていた。
 さながら、墓場で腐りかけた女の悪霊じみた有様。されど恐ろしさは霊より上。
「アタシの財だ。アタシの。アタシの、アタシの!! アタシのものだ!!」
 飢えていた。その目は飢えていた。そしてすべてを憎悪していた。
 世界を。己の財をままにするゴミどもを。
 味方を。敵を。織田信長を、他のオブリビオンどもを。徳川の血筋を。
 それに従う者たちを。生きる者たちを。そして――そして!
「殺してやる、殺してやる、殺して殺して殺して殺してやる!! 猟兵ッ!!」
 ……眼の前に立ちはだかる、天敵。己の大敵、相容れぬもの。未来の守護者。
「テメェらは、八つ裂きにして燃えて焦がして殺してやるぅうううう!!」
 死にかけの獣じみた猛烈な殺意と憎悪が、五人を衝撃波めいて打ち据える――!

「その表情、その憎悪。敵ながら哀れ、気の毒だと思いはします。が!」
 ずしん!!
 巨躯に相応しい重質量大型シールドを壁めいて立ちはだからせ、トリテレイアが一同の前に進み出る。
「手加減できぬ、そして見逃せぬ強敵。それゆえに、あなたは討たせていただきます。
 サムライエンパイアの人々のため、これまで戦ってきた猟兵たちのためにも!」
「ジャマを、すぅうるなぁああああ!!」
 ――KBAM!! KBAM!!! KA-BOOOOM!!
 髪の毛を逆立たせるほどの憎悪と怒号に呼応し、視線が大気を焦がし爆裂させた!
 トリテレイアは、己がウォーマシンであったことを今日心より嬉しく思った。
 己に与えられた質量と重量、そしてこの機能……恐れ知らぬ機械の心を。
 さもなくば、爆発の圧力で吹き飛ばされ、そして突き刺さる憎悪におののいていたであろうから!
「憎悪と強欲が炎に現れていますわね……すさまじい熱量ですわ。ですが!」
 ざりざりざり! と爆圧を耐えたトリテレイアを、オーキッドが受け止める。
 そして睨みつける富子の視線を遮るかのごとく左手を伸ばす。ごぉうっ!!
 地獄の炎で構成された左腕は、撹拌し盾めいてふたりの姿を覆うのだ!
「ジャマだ! ジャマだジャマだジャマだ!! 死ねぇえ!!」
「くぅ……っ!」
 マスデバリアの紋章が生まれ、そのたびに炎に飲まれて散っていく。
 爆裂は三度。たった三度で、左腕を構成する炎は散らされて隻腕となった!
「申し訳ありません、オーキッド様! 私も!」
 復帰したトリテレイアがオーキッドをかばい、焼け焦げた盾を構える。
 KBAM!! 視線越しの爆裂、そこに込められた憎悪の量たるや……!
「オーキッド殿、トリテレイア殿、お手伝いしますぞ!」
 後方に控えるルベルが、ふたりの(再構成された)左腕と盾にオーラをまとわせる。
「だ、大丈夫? 耐えきれそう!?」
「ふたりならやれるはずだ、ライア。俺たちは備えるぞ!」
 慌てふためくライアに、ゲンジロウは年長ものらしく静かに言う。
 仲間に守りを任せ後ろで待機するというのは、耐えがたいものだ。
 けれどもうかつに飛び出せば、おそらく死ぬ。
 それは守りを買って出たふたりへの不義理でもある。
 攻撃の瞬間を待ち、耐える……それこそが仲間への信頼の証左!

 ……それで、一体いつまでこの攻撃を耐えればいいのだ?
(反撃に転じる隙が……ない!?)
 オーキッドは内心で舌を巻いた。敵の攻撃の破壊力、間隔、そのどちらもが想定を超えていたのだ。
 視線という回避困難の動作による、ノーモーションでの爆裂。
 そこに幹部級オブリビオンのスペックが合わさると、この地獄が生まれる。
「はは、ハハハハ! 死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ!!」
 KBAMKBAMKBAMKBAMKBAMKBAMKBAMKBAMKBAMKBAMKBAMKBAMKBAMKBAMKBAM!!
「……!!」
 奥歯を噛み締め、己の魂を地獄にくべる覚悟でオーキッドは炎を燃やす。
 まだだ。耐えねばならぬ。勝たねばならぬのだ。だが、このままでは……!
「――オーキッド様。どうかあともうしばらくの辛抱を」
 静かな声。オーキッドがなにか言おうとしたとき、トリテレイアが走っていた。
 前へ。KBAM!! 盾が耐えきれず爆ぜる! だがトリテレイアは止まらぬ!
「ちょっと!?」
「トリテレイア殿!」
 ライア、ルベルはそれぞれに声を上げつつも、彼の意思を理解する。
 ここが潮目だ。ライアはスプリングじみた勢いで身を沈める!
「テメェから死――」
「その前に、どうぞひとつ騎士の戦法をお見せしましょう」
 ガギャン! トリテレイアは全身の格納銃器を展開、一斉放射!
 BRATATATATATATATATATA!! しかし弾丸はことごとくが爆ぜて焼き尽くされる!
 嗤笑する富子。だがその顔はすぐに驚愕に歪んだ。伸びてくる手に。
「これが"騎士らしくない"騎士の戦法ですよ。大悪災!」
 隠し腕が、富子の顎をつかみ、その顔を天井に向けている!
 KBAM――その一瞬前に着弾した炎が、トリテレイアの左半身を爆裂破砕……!
(こいつ……!!)
 そして富子は見た。己めがけて崩落する天井を。銃撃の狙いはこれか!
「トリテレイアさん、あなたの覚悟に敬意を表しますわ!」
 オーキッドが跳ぶ! 風になびくは金色の髪、そして揚羽蝶の羽根!
 崩落し富子を押しつぶそうとした瓦礫は、当然のごとく視線により爆裂する。
 だがその一手があればよい。オーキッドはすでに間合いのうち!
「テメェえええええ!!」
「炎に関しては、わたくしも専門家でしてよ!」
 KKBBAAMM!! 視線によって爆裂したのは地獄の左腕である!
 これを犠牲にしたオーキッド、細剣を振るいその身を串刺しにする!
「ぐ……!」
 富子はそのしなやかな体を睨みつけ、炎で打ち砕こうとした。
 はずだ。しかし、がくんと足元が崩れて視線がわずかに上にずれる……!
「足場崩しは、得意技でございますゆえ」
 ルベルの声。生意気な小細工をしかけた人狼を見ようとしたとき、その視界が覆われていた。
 跳躍によって床を砕き、"着弾"したライアによるアイアンクローである。
「金、金、金。清清しいほどにクソ野郎だな、やかましいんだよヒーローの敵がッ!!」
 ぐおん――ぐしゃんッ!!
 キマイラの超腕力を使った、掴んだ顔を支点にしての強烈な叩きつけである!
「どうせお前なんかが国を治めても、金を搾り取るだけだと"火"を見るより明らかだろうが!
 地面の下で寝ときゃ弔ってたものを、自分で苦しみに目覚めてくるなんざ――」
 ライアは片腕に力を込める。骨がきしみ、肉がきしむ。それほどの握力。
「……理解できないねッ!!」
「がッッ!?」
 KRAAAAAASH!! 別方向への叩きつけが富子の全身を粉砕破壊した!
「……あぁああああああっ!!」
 しかし敵も魔軍将! なおもこの世にしがみつき、ライアを睨む!
 決然と睨み返すライア――両者の視界を遮ったのは、おお!
「やらせねぇよ」
 ゲンジロウ! その身が、爆炎に包まれ火の柱と化す……!
「……こいつ!?」
「やらせねぇと言っただろう?」
 おお……おお! ゲンジロウは炎にまかれながらも生存!
 富子に近づいてその体をつかみ、逃すまいと引き寄せる!
 さらに見よ! 富子が与えた炎とは別の何かが全身の傷口から噴き出す!
「お前さんの炎なんぞなくともよ、わしの傷跡にゃあ炎が宿ってるんじゃよ。
 まだ死なせねぇ。命を屠る罪は、意地汚く生き延びて償えってな……!!」
 それは正しくない。それはゲンジロウという男の贖罪の念からくる思い込みに過ぎぬ。
 だが彼自身が生み出したありえぬ怨嗟は、彼に言う。
 生きろ。死ぬな。我らはまだお前に死ぬことを許さぬ。
 生きろ。誰も殺させるな。そして敵を殺せ。殺せ、殺せ……!!
「やめろ、離せ! 殺してやるぅうううう!!」
「聞き飽きてるんだよ、その手の声はな」
 ……覚悟だ。覚悟と犠牲なくして、この災の命は断てぬ。
 ルベルは瞬時にそれを決め、そして己の杖に命じた。
「さあ、どうぞ僕の記憶をお食べくださいませ」
 ……笑っていた。ルベルは、笑いながら己の記憶を杖に差し出した。
 連綿と続いてきた記憶のタペストリが、ぱちんと伐られて消えていく。
 ああ。きっと大切ななにかだったのだろう。けれどそれでいい。
「ひとは、よく笑っているではございませんか。なぜお前は笑わないのです?
 ちんけな僕の思い出と違い、お前の名は歴史に残っているでしょうに」
 富子の周囲。数多の死霊の刃が現れその身を狙った。
「――わざわざ戻ってくる必要などありませぬ。海へと還るがよいですよ」
「アタシは――」
「還りなさい。それがお前の最期の役目です」
 ライアは首を振った。安寧を自ら捨てたオブリビオンは理解できぬゆえに。
 眠っていればよかったのだ。死者には死者の領分があるのだから。
 そして、それを、死霊の刃が教える。

 その身を滅ぼす、断首というまったき制裁によって。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​


 ……どうしてアタシを悪者扱いする?
 アタシはただ財を集めただけだ。財を使うのは当然のことじゃないか。
カタラ・プレケス
アドリブ歓迎

強欲もここまでくれば立派なモノだね~
ぼくからしてみればその感情は美味しいものだけど
残す訳にもいかないし頑張って祓おうか~

怨霊は呪詛の塊みたいなものだからね
『呪槍蒐監』で喰らい尽くそう
火矢に対しては『天動観測』と『地動観測』を使った
占星術の短期予測で矢の軌道を予測して
『矛盾宝瓶』から召喚した聖水を操って防ぐ

ある程度攻撃を凌ぎ切ったら
【開花・木花咲耶姫】発動
周囲の怨霊ごと神炎の柱を多数咲かせて浄化
道が開いたなら潜めていた『天蝎縛砂』で敵の退路を塞ぎ
枝を木槍へと変じさせて呪詛を込める
そして速度と勢いを『咲かせて』敵に特攻
「さあ、神炎に呑まれてくださいな。強欲の乙女」



●悪災討滅:挑戦者、カタラ・プレケス
 幾度目だ。この再生、この出現は、己にとって何度目だ?
 火の手が回る花の御所をさまよいながら、日野富子は淡々と思った。
 ……何度目でもいい。関係ない。前のアタシが死んだなら今のアタシがやるだけだ。
 殺す。猟兵を一人残らず殺してやる。アタシの財を奪う奴ら。
「……なんだよ、オマエ」
 そんな富子の前に現れたのは、うっすらと笑みを浮かべる少年である。
 気に入らぬ。その意味のわからない笑み。わけのわからない余裕。
「強欲もここまでくれば立派なモノ。よ~く育てたものだね」
 カタラが目を細めるさまは、立派に育った牧畜を見る飼い主めいてもいる。
 呪いによって命を失いかけ、そして呪いとともに歩んできた少年は、
 その煮え立つ憎悪を、強欲を、芳醇な果実のように受け止めていた。
「ただ、それだけのものを、これ以上この世界に残すわけにもいかない。
 そういうわけだから、ひとつ頑張って祓わせてもらうよ。強欲の乙女殿」
「祓う? アタシを? 嘗めやがって、殺してやる!!」
 苛立ちに呼応し、富子の周囲に怨霊火矢がいくつも出現する……!

 ……だが、怨霊の火矢たちは、どれひとつとて放たれはしなかった。
「!?」
 日野富子は驚愕とともに背後を仰ぎ、そして愕然とした。
 ない。鬼火のごとき応仁の乱の怨霊が、どこにも存在しない!
「怨霊というものは、つまりは呪詛の塊そのもの。であればぼくの得意分野だ」
 カタラが掲げてみせたのは、何やら禍々しき鳥籠である。
 見ればその内側には、取り込まれた呪詛=怨霊火矢が、黒ずんだ炎となり渦巻いている!
 呪槍蒐監・カタラ。呪いを溜め込む力を持つ宝槍……!
「テメェエエエ!!」
 怒りとともに再召喚! 鳥籠は槍に変じ、降り注ぐ火矢を薙ぎ払った!
 占星による未来予知じみた回避行動と、聖水がダメージを最小限に防ぐのだ!
「ははは、やっぱり美味しいなあ! 君のその強欲は!」
「アタシを食らうだと! アタシのこの怒りを、殺意を……!!」
「あいにく、その手の感情は扱いなれているんだ」
 そしてカタラのその身の内側から、生命力溢れる桜の枝木が生える。
 開花・木花咲耶姫。はびこる桜の枝は怨霊を押しのけて蔓延る!
「くう……!?」
「さあ、桜の枝に飲まれてくださいな、強欲の乙女」
 めきめきと捻じくれて変じていく桜の……否、呪詛込めし木槍。
 降り注ぐ火矢の被弾と引き換えに、切っ先はその身を貫いた……!

成功 🔵​🔵​🔴​

火守・かこ
ブチギレてるとこ悪いが年貢を納めて貰いに来たぜ

先制攻撃だが炎への対抗手段には覚えがある
《火天の加護》って言う火炎耐性なんだが、これが少々特殊で、火天様から授かった神通力で火を自在に操るって代物さ
流石に全て防ぐのは難しいだろうが、被弾は元より覚悟の上!やれるだけ片っ端から消してやる!

そして反撃は、ある程度ダメージを負って油断を誘ってからの、まずは一の矢!《絡繰刀》をわざと防がれるようにぶん投げる!
続く二の矢!防がれた絡繰刀が独りでに動き奇襲する!
締めの三の矢!絡繰刀に気を取られた隙に一気に間合いを詰め正面からぶん殴る!

これぞ火守流・三矢の計!ってな!
まずは一発殴れれば十分、あとは仲間に託すさ!



●悪災討滅:挑戦者、火守・かこ
 火守という名はお前に似合わない――と、いつかに言われたことがある。
 あれは戦友だったか、はたまた手合わせをした敵軍の将だったか?
『お前自身が火の玉小娘だろうによ!』
 そんなようなことを言って、呵々大笑していた誰かの顔を覚えている。
 ただやはり、この名は自分にとってぴったりだと思うのだ。
 斯様に捻じくれた憎悪の炎をこそ、己は神通力を以て打ち払い、
 そして太平に燃える、命という名の灯火を、守ることができるのだから。

 かこは、まっすぐに突き進んだ。
 大廊下のはるか先、腹部に重傷を負ったらしい日野富子がうずくまっている。
 だからといって、これが好機なのかと言えばまったくの否である。
 むしろ追い詰められているぶん、こちらは警戒を密にして挑むべきだ。
「面倒くせぇ!」
 だのに、かこという女は、それを一笑に付してずんずんと床を走った。
 そういう女なのだ。まったくもって、当人自体が燃え上がるように力強い。
 だがこの戦場においては、それは命取りになるか――否!
「燃えろ!!」
「あいにくだね。俺にはそんなもんより、ありがたいご加護があるのさ」
 KBAM!! 爆ぜた炎は目の前で散り、火の粉が渦を巻いて四肢に絡みついた。
「俺はかこ! 火守・かこだ! ブチギレてるとこ悪いが、年貢の取り立てにきたぜぇ!」
「コイツ……炎を!?」
 憎悪のこもった視線がかこを捉える。KBAM!! だが効かぬ!
 目に見えぬ火天の加護が、着弾前にその爆炎を弾き、そして取り込む。
 護法・火天舞闘! これぞ我が火守の名の本懐にして本領なり!
「さあ、さあさあさあ! どうしたどうした、こいつで終わりかぁ!?」
 KBAM! KBAM!! KBAM!!
 爆ぜる火の粉はその肌を灼く。当然だ、無傷でなどいられない。
 だからどうした。戦傷は誉れだ。痛いからこそ生を実感できるのだ。
「死ね、死ねよ! 死ねよぉおお!!」
「死なねぇ! さあ、ならこっちの番だッ!!」
 両者の間合い、縮まる! かこはやおら、絡繰刀を投擲した!
 だが甘い。刀身が焼けて爆ぜ、その圧力によって吹き飛ばされる!
「そいつは読んでるぜ、さあ二の矢!」
「!?」
 見よ! 弾かれたはずの絡繰刀が、背後からひとりでに奇襲を仕掛けた!
 ぎろりと血走った目が、しかして担い手なき刀を睨み燃やす!
「――そして」
 富子は敵を見ようとした。だがその前に、拳が顔をうちのめした。
「が――!?」
「こいつが!」
 右拳! 視線ごと顔面を殴り飛ばして、さらに踏み込む!
「火守流、三矢の計だぁっ!!」
 左拳!! 強烈なストレートパンチが……炎とともに、叩き込まれた!!

成功 🔵​🔵​🔴​

レイニィ・レッド
気の強ェ女は嫌いじゃねェですが
アンタは強すぎます

呼び出された怨霊の数を記憶
挙動を確認しつつ
背後を取られぬよう注意しながら
少しでも暗い地点へ誘導

飛んでくるのは火矢だ
暗闇なら多少軌道が読みやすいでしょう

音も意識しつつ攻撃を見切り躱す
回避が間に合わないものは叩き斬る
致命傷が避けられれば上等
多少の負傷は目ェ瞑りましょ

一陣を凌いだら『雨の赤ずきん』
先んじてからくり人形を囮に嗾け
そちらに注意が向いた一瞬で一気に接敵
この瞬間に、総てを賭ける!

自分は弱っちィですからね
アンタ相手に無傷で帰れるとは思ってません

だからこそ
アンタの一辺倒の感情も
自分の負傷さえも利用してやります

テメェの憎悪は真っ直ぐすぎるンですよ



●悪災討滅:挑戦者、レイニィ・レッド
 悪とは何か。
 悪とは、正しくないものだ。
 あれはどうだ。日野富子。数多の人が悪と呼ぶもの。災いと呼ぶモノ。
 レイニィが相対したそれは、顔の半分が焼け焦げ無残なありさまであった。
 しかれど、双眸に宿る憎悪はいささかも揺るがない。むしろ強まっている。
「気の強ェ女は嫌いじゃねェですが、アンタは強すぎます」
 ぎらりと、その悪鬼のごとき双眸が、レイニィの軽口に応じた。
 しゅうしゅうと獣じみた吐息は、罵詈雑言すら吐けぬほどの興奮のせいか。
 みじめなものだ。あれが悪か。あれが正しくないものか。
「……強ェくせに弱っちィ面しやがる。けど、アンタは正しくない」
 ならば、殺す。決意に応じるかのごとく、怨霊が火矢となり放たれた。

 端的に言えば、現れた火矢の数はざっと500を超えていた。
 馬鹿げた数である。しかもそれ一つ一つが、獲物を狙い追跡するのだ。
 苛立ちを与えたもの。日野富子という悪党を苛立たせたもの。
 暗闇を走る雨男こそが、その哀れな獲物に他ならぬ。
「むちゃくちゃしやがりますねェ」
 頬を汗が伝う。全力疾走のせいか、あるいは緊張のせいか、炎のせいか。
 少なからぬ負傷がある。だがそれは覚悟の上での出陣だ。
 ……そうとも、己は弱い。だが覚悟に関してはいつだって決めてきた。
 正しくないものを殺し、悪を滅ぼすためならば、何度でも。
 此度も同じだ。傷がどうした。矢で穿たれ、焼かれたからといってなんだという。
 痛みを押し殺せ。こんなものは降り注ぐ雨のようなものだと思え。
 心臓を握り潰すような憎悪に耐えて、レイニィはひたすらに暗闇を駆ける。
 駆ける。駆ける。駆ける。そのたびに傷が増えて血を流す。
「死ねよ。しぶとく逃げてるんじゃねえ、死ね!!」
「――テメェら正しくねェものがみィんな死んだら、そうしてやるよ」
 悪い冗談だ。どこぞの坊っちゃんの癖でも移ったか。
 己自身に対するアイロニーに口の端を歪め、立ち上がる雨男を赤ずきんが包み込む。
「けどまだ死なねェ。だってテメェが――アンタが、生きてんですからね」
「!!」
 富子はレイニィを殺――そうとして、目の前に飛び出してきた人形に意識を奪われた。
 矢衾にされた人形が燃える。だがそのときには、すでに赤ずきんは。
「な」
「自分は弱っちィんですよ」
 目の前に。しゃきん。しゃきん。
「アンタ相手に無事で帰れると思っちゃいないンで、ええ」
 しゃきん。しゃきん。

「――テメェは正しくねェ。だがその憎悪は、まっすぐすぎる」
 しゃきん、しゃきん――ぐさり。
「自分とは、大違いだ」
 滴る赤は、雨男と哀れな女の血である。

成功 🔵​🔵​🔴​

グラディス・ドラモンド
【陰陽師と犬】
おいおいおい、随分と顔芸激しい婆さんじゃねぇか!まぁ良い、久しぶりの戦乱だ、気張って行こうじゃねぇか!
先制は晴久が受け持った、なら俺は攻めるっきゃねぇ!火矢の怨霊を結界で防御したのなら飛び出して爪の一撃(UC)を放つ!当たればそのままその一撃を基点に退いては攻めるを繰り返す!外れても塗りつぶした影の上に居りゃあ俺様の力は増幅される!
晴久の援護……黒いダイヤモンドダストは攻撃をする為じゃねぇ……俺様の影の中を移動する力を最大限に発揮する為の術式。
黒い砕氷が影を作り足場が出来る。縦横無尽に駆け抜けるこの爪牙、テメェに避けきれるか?

───いくぜ晴久ァ!!俺様に力を寄越しやがれぇ!!


芦屋・晴久
【陰陽師と犬】
さてさて……ヒステリックとは怖いものですねぇ。
行きますよグラディス、これを置いては先には進めません。

私は先制の対処を受け持つとしましょう。火矢の怨霊とはまた変わった物を……轟天の符に込めている力に私の破魔の力を乗せて呪詛を唱え続けます。発生した結界で私とグラディスへの火矢を防ぎます。ただの矢では無い、怨霊というカテゴリだからこそできる防御法ですね。
恐らく初撃を凌いだ後は私も消耗しています、グラディス、支援致します……行きなさい
五行相生、属性は闇、現象はダイヤモンドダスト。黒き細氷は日野富子の視界を防ぎ闇の空間へと誘う筈。

───グラディス……昏らき魔人よ、吼えるだけの力を見せろ!



●悪災討滅:挑戦者、陰陽師と犬
 ふたり――片割れがヒトでないにも関わらずこの数え方をするのは妙だが――の付き合いを言葉で表すには、あまりに多くの時間と紙幅を必要としすぎる。
 確かなのは、グラディス・ドラモンドと芦屋・晴久の間には、
 家族とも恋人とも異なる、しかしそれらと同じぐらいに固い結び付きがあること。
 信頼。相互理解。不敵。いずれも命を預け合う仲間には必須の要素だ。
 かつて敵対したこともある者同士、その点に関しては他の追随を許さない。
 ならば、いかな強敵であろうと、相対するには十分である。
 わけてもふたりは――なかなか、似た者同士の奴らでもあった。

 いかに降り注ぐ火矢が、応仁の乱という歴史的戦乱の呪詛によるものであれ、
 その数が500を超えるほどの猛威であれ、"怨霊"ならばやりようがある。
 医者? いやいや、彼の本職は陰陽師である。だからこそ、対抗できるのだ。
「おいおいおい、本当になんとかなるんだろうなァ晴久!」
 絵の具の黒を思うがままにキャンバスに滑らせたような、巨躯の猟犬。
 かつて魔神であったモノ・グラディスの物言いは、慌てているというよりからかっているかのようだ。
「相変わらずやかましいですねグラディス! いいから任せておきなさい!
 というかそもそも、グラディスではこれは防ぎきれませんよ!」
「ハッ! だったら役割交代するかァ? 俺は構わないぜ!」
「遠慮しておきます。ヒステリックな女に近づくほどバカではないので」
 バリバリバリバリ! と、展開された符の結界と怨霊火矢が火花を散らす。
 いや、電光というのが正しいか。超常の斥力同士のぶつかり合いだ。
 破魔の力を込めた霊符による、結界の展開。シンプルだがそれゆえに強力。
 さりとて、この数の、かつ強大な怨霊を防ぐことは晴久にとっても重労働である。
 歯を食いしばり、ありったけの霊力を込めて、真言を唱える。
 サングラスの奥、集中する男の双眸は伺い知れない……。

 対して、その結界を、そして結界の向こうでなおも生きている男たちを、
 女の双眸はすさまじき憎悪と苛烈さを以て睨みつけていた。
 なぜだ。なぜ生きている。アタシの前で、アタシに歯向かう奴らが。
「死ね、死ね、死ね! 消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!!」
 カカカカカカ! さらなる怨霊火矢が結界に突き刺さりじわじわと穴を開く!
 晴久のこめかみを脂汗が伝う。これが幹部級オブリビオンの力なのか!
「行けますね、グラディス」
「言われるまでもねェよ! いつでも行けるぜ!」
 晴久は……状況判断した。もはや結界は持たぬ。
 であれば、こじ開けられようとしているこの穴を逆に利用すべし!
「其は五行を重ねて理を創生する軌跡也――」
「! コイツ!!」
 結界が解除――いや違う、展開していた呪力が一点に集中した!
 それは緑色の陰陽方陣を描き、晴久の手の中でくるくると羅盤めいて回転する!
「水は凍りて風に乗り吹きすさぶ。すなわち水生木、水剋火! 勅ッ!」
 凝結した水気はきらびやかな氷となり、木気招来によって室内に風を生む。
 吹きすさぶ風が氷をさらい、ダイヤモンドダストを起こして視界を覆った!
「ううっ!?」
 だがその氷が異常なのだ! それは透き通る水の色ではなく濁った黒!
 否、さながら夜の闇を凝り固めたかの如き、すなわち陰気の風であった!
「ハハァ! 行くぜ晴久ァ、俺様に力をよこしやがれぇ!!」
「言われずとも――昏らき魔神よ、吠えるだけの力を見せよ!」
 陰だ。今ここには、吹きすさぶ自然が生み出す陰がある。
 太古より人々は自然を切り開き、夜の闇を火によって切り拓いてきた。
 それがヒトの業であり、強さであり、未来へ歩むことの証左だとすれば!
「本家本元の"魔"の恐ろしさ、見せてやるぜェ大悪災! ハハハハッ!!」
「が――ぁあああああっ!!?」
 陰を駆け抜け、領分を超えたヒトを罰し命を奪うことこそ鬼神の役目。
 陰を獣が駆ける。否、それは獣にあらず、一時解き放たれし神である!
「さぁ、さぁさぁさぁさぁ行くぞおらぁ!!」
 爪が、牙が! 縦横無尽に闇を駆け抜け邪悪を切り裂く!
 避けることなど不可能。そしてとどめの一撃が――災禍の女を、抉り飛ばした……!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

多々羅・赤銅
金がありゃあ地位も名誉もどうとでもなる、貧困を嘲るだけの力にもなる。
お前がそれに執着するのも無理無えんだよなあ。
つまり、ーーお前は弱い女だもんな?

抜刀、我は万物斬り裂く刀鬼。
剣刃一閃の斬撃と、耐火で凡ゆる火炎を薙ぎ払う。刀鍛治でもあるもんでね、熱にはすこぶる強ぇのよ。
どんな炎に焼かれれど。呪詛の如き怒りの筵になれど。
てめえのそんな伽藍堂な炎、
ヒリヒリ痒くてたまらねえなあ!!!

斬る。燃ゆ。刀一振りそのものの如く、ただそれのみで女の元までの距離を詰めてーー斬る。
やめようや。こんな屋敷で、独りぼっちで怒り狂うのなんざ。

寂しくて仕方がねえ。
愛したくなっちまう。

紫炎を拝借、煙草に灯して深く吸う。



●悪災救済:裁断者、多々羅・赤銅
 ……女が、ひとり、這いずっていた。
 ボロボロで、あちこちが焼け焦げ、無残な有様である。
 それは、大悪災と呼ばれる女の、成れの果てであった。
 日野富子。猟兵の苛烈な攻勢に、幾度目かの死を迎えた女。
 ……迎えようと、している女。
「あ、あぁ、く……」
 ずりずりと、血染めの和装を引きずりながら、日野富子は床を這いずる。
 まだだ。まだ死ねない。死にたくない。だってこの手にあるべきものを取り戻していない。
 財が。アタシの財が、まだあまりにも足りなすぎるじゃないか。
 それにあいつらだ。猟兵。徳川家。織田信長。ああ。ああ。ああ。
 憎い。憎い、憎い、憎い――! 殺してやりたい。殺す、殺す!!
「……なあ」
 這いずる女の先に、もうひとり、女がいた。
 いやに派手派手しいメッシュ入りの髪を、パンキッシュに剃り上げた女である。
 左目は伺い知れぬ。垂らされた前髪が不思議と覆い隠している。
「金はいいよな。金がありゃなんでもできる。困りごとも解決する」
 ……たたらの名を持つ女は、しゃがみこんで女の顔を覗き込んだ。
「地位も名誉もどうとでもなる。貧しい連中を嘲るだけの力にもなるんだ」
「…………」
「お前がそれに執着するのは無理ねえよ。私だって金好きだし?」
 なにせ、飲む・吸う・打つをコンプリートした女である。
 羅刹らしい豪放磊落さといえば聞こえはいいが、ようは放蕩癖だ。
「だからよ、わかるさ。私には」
 女は、口元に火のついてない煙草を銜えたまま、笑った。
「――お前は、弱い女だもんな?」
 赤銅色の瞳は、いっそ優しげですらある。

 しかして、日野富子はオブリビオンである。
 過去の残骸。未来の破壊者。世界を侵略し覆い尽くす絶対敵である。
 ましてやその身その性は、すべてを財として求めて貪ってきた大悪災。
 餓鬼じみた目で睨めつけて、赤銅の女を焼き尽くそうとした。

 出来なかった。
 弱っていたこともあろう。いまの"これ"はもはや文字通りの残骸だ。
 しかして、たたらの名で呼ばれた女は、一振りの刀を振るう鬼にして鍛冶師は、
 それゆえに火に強い。およそ焦げる、灼ける、融けることを識らぬ。
 爆ぜた炎は鍔鳴りとともに切り裂かれ、火の粉は肌一枚焼くには至らぬ。
「ハハ」
 子供のじゃれる姿を見下ろす親のような、泰然自若とした笑み。
「伽藍堂みてえな炎だ。ヒリヒリ痒くてたまらねえなあ」
「死ね」
「痒い痒い」
「死ね、死ね、死ね」
「痒すぎて笑い死にしそうだよ」
「死ね、死ねぇえええええ!!」
「ああ、ああ! 眠くなっちまいそうだーァ、な!!」
 斬撃。爆炎。斬撃。爆炎。斬撃。爆炎。斬撃。
 届かぬ。届かせぬ。それはもはや明らかであった。

 畜生、畜生と、鬼畜と呼ばれた女は泣いた。
 さめざめと。おいおいと、もはや泣くほかになかった。
「なあ」
 はじめと同じように、同じような声で、同じような声音で。
 赤銅は言い、鞘走り、そして振り抜き、納刀した。
「やめようや。こんな屋敷で、独りぼっちで怒り狂うのなんざ」
 最期の火を断ち切り、その残火を借りて、煙草に火を付ける。
「寂しくて仕方がねえ。お前も、私も。なあ、そうだろ」
「――アタシ、は」
「愛したくなっちまうんだよ。私は鬼だからよ」
 ……ふう、と、紫煙を吐き出した。
「死んじまえ。お前の泣き言は、私だけが聞いといてやる」
 滅びる刹那、"その"日野富子が、なんと言ったのか。
 それは――赤銅鬼だけが、識ることである。

成功 🔵​🔵​🔴​


 なんで。なんでアタシの財を、アタシの使いたいように使っちゃいけないんだ。
 アタシのものだ。アタシの金だ。ならアタシがどうしたっていいだろう。
 国が乱れた? ヒトが死んだ? 飢えて村が滅びた?
 知るか。知るか。知るか。知るか!
ボアネル・ゼブダイ
過剰なまでの財への欲が貴様自身を蝕んでいる事に気づかぬか…
では、その苦痛を終わらせてやろう

火矢の怨霊が召喚されたらカウンターでUCを発動
炎の聖騎士団を召喚し迎え撃つ
火矢がこちらを襲って来たら聖騎士達の炎で逆に飲み込み
味方に被害が出ないように操作して花の御所を炎で燃やす
底知れぬ財力への執着と欲望があるならば見過ごさないはずだ

貴様の蓄えた財は此処で潰える
その愚かな欲望と共にな

敵が燃やされた花の御所に気を取られた隙に一気に接近し
生命力吸収を乗せた黒剣グルーラングでの斬撃と聖騎士達の炎を喰らわせる

行き過ぎた欲は神への信仰すら忘れさせ、己の身を腐らせる
貴様は、貴様自身を喰らう炎を自らの手で蓄えたのだ



●悪災討滅:挑戦者、ボアネル・ゼブダイ
 ノブレス・オブリージュという言葉を、ボアネルは心に深く留めている。
 ダンピール――呪われた血を持つ半血という生い立ちを、彼は悲しく思わぬ。
 憎く思うこともない。高貴な者としての、責務と力として捉えている。
 ゆえに、ヒトの上に立つ見でありながら、財に溺れ欲に眩む者は、この女は。
 いっそ哀れですらあり、手を下すに恐れなど何一つ在りはしない。
「死してなお、骸の海より還りて、貴様自身を蝕む欲望に耽溺するか。
 それどころか民草を苦しめようとするならば、私がそれを終わらせよう」
 ばさりと外套を翻し、かくて怜悧なる黒騎士が戦場に降り立った。
 迎え撃つは、幾度目かの再生を果たした大悪災である。
「アタシを憐れむな! アタシのほうが偉いんだ! 強いんだ!!」
「その傲慢と驕慢こそが、貴様を蝕むというのに」
「うるせぇええええ、死ねぇえええええ!!」
 ぼっ、ぼっ、ぼっ――周囲に生まれる鬼火。怨霊火矢!
「来るか。業火の騎士達よ!」
 呼び声に応じ、ボアネルの周囲にもまた聖火が灯る。
 生まれしは、錯迷の境地から脱し、信仰の鎧とたゆまなき忠誠を誓う騎士たち!
 怨霊と忠義、打ち合うさまはまさに恩讐の彼方へ至るかのごとく!

 ……だが!
「なんたる強い怨念か……!」
 ボアネルは柳眉を顰めた。降り注ぐ火矢の数が聖騎士を遥かに凌駕しているがゆえだ。
 いかに従えた騎士たちが精強無比にして質実剛健たろうとも、数の利は絶対。
 ましてや、絶対先制を約束された強敵を相手に、ユーベルコードの打ち合いはそれ自体が後手である。
 騎士たちがひとり、またひとりと斃れる。否、業火の信念はこの程度で尽きず!
「許多の難を一蹴し、恐れを捨て去り武勲を立てよ!」
 ――応!!
 炎の聖騎士団は陣形を組み、盾を構え、紋章を掲げて守りとする。
 壁だ。そこに壁がある。堅牢なる城壁の如き、騎士たちの信念の壁が!
「ジャマするやつは、全員、燃えて死ね!!」
「否。燃えるのは貴様の財であり、尽きるのは貴様の愚かな欲望だ!」
 炎と炎。同じ元素なれど、それを燃え上がらせるのは対極の心根。
 ボアネルは退かぬ。騎士たちがここにいる。ならば己が退く理由がどこにあろう。
 決然と踏み出し、鬨の声をあげる騎士たちとともに黒剣を振るうのだ!
「いざ、我らの戦のときである! 騎士たちよ、その業火を掲げよ!」
 激突し飛び散る火の粉は、敵にとっての財であるはずの御所を灼く。
 日野富子はそれを望まぬ。ただ猛る憎悪が矛盾の行動を取らせているのだ。
「死ねよ、死ね死ね死ね死ね!! アタシの財を燃やすなぁ!!」
「まだわからぬか、信仰を忘れし愚か者めッ!」
 火矢がボアネルの肩を貫く。退かぬ! 踏み込むとともに黒剣一閃!
「がは……!?」
「――貴様を燃やす炎は、貴様自身がその身の裡に蓄えた欲望の代償」
 血を流し、己の身を焼きながら、怜悧なる騎士は言う。
「貴様が蓄えた財は、貴様の蓄えた憎悪に飲まれて消えるのだ」
 と。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ヴィヴィアン・ランナーウェイ
アドリブ・連携歓迎

あらゆるものを憎み、苛立ち、壊さんとする。
可哀想な方ですわね、貴女。

そのUCの肝は視線の命中。
であれば、その視線を切ればいい。
●ダッシュで駆け抜けつつ、屋敷内にある豪奢な装飾、掛け軸やら敷物やら、を利用して●野生の勘で敵の視線がむく瞬間に敵の顔へ放り投げます。
必然、敵との距離を保つのが難しいですが多少の傷は●覚悟の上です。
このまま燃やし続ければ、貴女の屋敷が応仁の乱の時の京のようになりますわよ?
火が消えれば、それこそこちらの望むところ。

貴女を裁く断頭台が来ます。
貴女に差し上げるのはギロチンではなく、槍ですが、この一撃を受けなさい。

貴女はきっとかつての私。
見ていられませんのよ。



●悪災討滅:挑戦者、ヴィヴィアン・ランナーウェイ
 ……ノブレス・オブリージュという言葉を、ヴィヴィアンは疎ましく思う。
 生まれがなんだ。名誉ある家名がなんだ。だからなんだ。
 生まれた家がそうであったというだけで、それからの生き方も定められねばならぬのか。
 それは、嫌だ。嫌だと思った。だから逃れようとした。
 逃れようとして、走って、走って……なぜだか妙なことになりはしたが、
 ただ、そのおかげで、自分はいまのように強く在れるのだと思う。

 そしてその悪鬼を前にしたとき、ヴィヴィアンは、怒りも憎みもしなかった。
 殺意を放射し、あらゆるものを蔑み、見下し、罵倒するさまは悪しきものである。
 ただそれでも……それをわかっていても、ヴィヴィアンは。
「可哀想な方ですわね、あなた」
 と、その思いを――憐憫を、口にせずにはいられなかった。

「……なんだと」
 思いがけぬ言葉に、対する日野富子も訝しげな顔で問い返した。
 何を言ったのかわからぬ、という面持ちである。無理もない。
 憎悪には憎悪が返る。それはヒトの世の常であり当然の反応である。
 さもなくば、その憎悪の正邪に関わらず、向けられた者は滅びるであろうから。
「あらゆるものを憎み、苛立ち、壊さんとする。なんて哀れなのでしょう」
 だからこそ、憎悪を憐憫を以て受け止められる者は、少ないのだ。
 そして、その憐憫が、かえってさらに憎悪を煽ることも、また摂理。
「アタシが……可哀想? アタシを見下すのか。猟兵ごときが、アタシを!!」
 KBAM!! 憎悪にまみれた眼差しが、大気を爆ぜ焦がしながら迫る!
 ヴィヴィアンは……駆けた! そして手にとったのは豪奢な調度品である!
 KRAK!! 爆炎によって砕けたそれが、破片すらも飲まれて焼けていく!
「コイツ!!」
「遅いですわね!」
 KBAM!! 再びの爆炎、だがヴィヴィアンは無事だ!
 とっさに駆け出し、手にとった掛け軸を両者の間に投げ込んだのだ!
 とはいえ、炎の勢いは強い。四散した火の粉がその白い肌を焦がす。
「く……! けれど、まだまだ! 覚悟の上ですわ!」
 駆ける! 野山を駆け巡ったあの頃のように、のびのびと!
 富子はそれを追う。憎悪が何もかもを、己の御所すらも燃やしていく!
「死ね! ちょこまかしてねぇで、さっさと死ねぇ!!」
「お言葉ですけれど、このままではあなたの屋敷があなたの手で焼けますわよ!」
「うるさい、うるさいうるさいうるさい!! アタシに指図するなぁあああ!!」
 憎悪が沸点を超えた。視線の狙いが、ほんの僅かに逸れたのだ!
「ほら――怒れば怒るほど、あなたの炎はあなたの大事なものを燃やしていく」
 燃え盛る御所がそれを示している。富子はそれを本能で理解した。
 その時、その身は――ギロチン台に、縛り付けられていた。
「……え?」
 がしゃん。紐が切られて刃が落ちる。富子は愕然とし、そして凶鬼の形相へ。
 伸びた爪で刃を台もろとも切り裂く。重畳である、間隙は得た!
「本当に可哀想なひと。最期すらも否定するだなんて」
 あるいはそれは、己の醜い鏡像なのか。
「――見ていられませんのよ」
 振るわれた槍は、浮かぬ顔の女と対称的に、その身を深く深く抉り貫いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルーナ・ユーディコット
欲と憎悪の獣のようね、まるで
憎悪に塗れている時の自分を見ているようで
負けられないって思う

肉を断たせて骨を断つ
相手の間合いのギリギリまで踏み込んで
武器を振り、私の片腕を斬り落とすよう誘導する
腕の動脈が切り落とされればそこから血が噴き出すはず
それを相手に向けて浴びせる
目に入って視界を妨げれば御の字
血で服を汚されたら激昂くらいするよね、きっと

その隙をついて月狼【凶】を発動して斬り合いに持ち込む
残る意識で私の獣を捻じ伏せ
憎悪を踏み越え戦う

私は獣じゃない、憎悪でもない
寿命を削ってでも、私は死ぬまで人として生きたい
人でありたい

私の意志頼りの賭けもいい所だけど
この作戦と覚悟で戦場に血路を切り拓く



●悪災討滅:挑戦者、ルーナ・ユーディコット
 たとえるならば、それは強欲と憎悪にまみれた獣のようであった。
 よく、"獣は遊びで殺しをしない"などと云うが、それは否だ。
 獣とて、遊びや苛立ちで誰かを殺すことはある。ヒトだけの愚行ではない。
 しかしそれでも、あの女の姿は、獣じみていながら獣よりも邪悪であった。
 ……獣性に堕したヒトの愚かさ。ルーナが顔をしかめたのも無理はない。
 それは、ともすれば、憎悪に塗れたときの己の鏡映しにも思えたのだから。

 長い大廊下で、日野富子とルーナはかなりの間合いを空けて相対している。
 敵は手負いだ。しかし――いや、だからこそか――知覚力は並のオブリビオンを超えており、不意打ちを仕掛けるのは易くない。
 下手な不意打ちは、余計な危険を生む。ルーナはそれをよく知っている。
 これまでの数多の強敵との戦い、そして人狼としての感知能によって。
「猟兵ィイイイ……!!」
 罵倒する言葉も浮かばないのか、日野富子の唸りはまさに餓狼じみていた。
 あいにくその無様さを憐れむほど、今の自分に余裕はない。
 ただ、負けられない。負けてはならないと、強く――強く、心が感じていた。
(勝負は一瞬。爪の連撃を凌ぐのは不可能……最大の一撃を、一瞬でも速く)
 いかに敵が絶対先制を確約した強敵であれ、一度に百の攻撃を繰り出せるわけではない。
 あの長く伸びた禍々しい爪には、必ず穴がある。必ずだ。
 なければ、作る。それほどの覚悟を以て、じっと、深く腰を落とす。
 ルーナがそれを狙うのと同様に、日野富子も彼女の狙いを察している。
 ゆえに、研ぎ澄まされた最速の攻撃を以て、彼女を迎え撃ち殺す構えである。
 西部劇の決闘じみた緊張。それが、ルーナの脳裏を冷やし、雑念を削ぎ落とす。

 ……炎の回った御所、どこかで庭の木々がべきべきと折れて倒れた。
 その音が合図! ふたりはそれぞれに姿をかき消し、互いめがけ突き進む!
「肉を断たせて骨を断つ――!」
 被弾を覚悟とした上でのまっすぐな突進。両者の間合いがぐんぐん縮まる!
「……ッ!!」
 だが、おお。ルーナよ、ここで目算を間違えてしまったというのか?
 彼女が急ブレーキをかけ、そして武器を振るったのは、敵の間合いのわずか外!
 日野富子の表情が嗜虐と勝利の確信に歪む。振るわれた爪が迂闊な利き腕を裂く!
「く――!」
「は、ははは!」
 ぞっとするような量の血が飛沫を上げた。ルーナの表情が苦悶に染まる。
 疾い。富子の二撃目はすでに振りかぶられて――いや。
「ッ!?」
 吹き出した、血が。その顔を、和装を! べっとりと汚している!
(こいつ、まさか……血で目潰しをッ!?)
「この身に流れる、獣の衝動よ!」
 偶然ではない。ルーナの顔を見よ。決然たる覚悟と決意。すなわちこれは!
「静寂を乱す強欲の獣を、その身の尽くを切り裂けよッ!!」
 煮え立つような血を用いた目潰し。まさに肉斬骨断の秘策だ!
 疾い! 青白い闘気を纏うルーナの速度は富子のそれに匹敵する!
「この、野良犬がぁあああ!!」
「あたしは――」
 ふしゅう、と獣じみた吐息を歯の間から漏らしながら、ルーナは言った。
 人の声、人の言葉、人であろうとするものの意思で。
「獣じゃないし、憎悪そのものでもないッ!!」
 爪を回避。がら空きの脇腹を、一度に三の斬撃が切り裂く!
「ごぼっ」
「私は死ぬまで人として生きる。生きたい。この生命を削ろうとも!」
 さらに三の斬撃! 富子はおびただしい量の血を吐き出す!
「賭けは、私の勝ちだ――!」
 叩き込まれた最後の三の斬影は、獣の爪と異なるヒトのそれ。
 それはたしかに、ルーナという女の、意地と覚悟の証である。

成功 🔵​🔵​🔴​

ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

ああ、なるほどね。なーんか違和感ある思ったら、そういうこと。
自分の手元に金銀財宝、集めて纏めて貯め込んで。…「その後」がないのねぇ、あなた。生前どうだったか、までは知らないけど。

初手はグレネードの〇投擲。燃やされても爆破されても問題ないわぁ。だって「爆弾」だもの。…炎のトリガーは視線。なら、フラッシュバンの〇目潰しは覿面に効くでしょぉ?
自分が爆破されるのはハナから〇覚悟の上。
〇火炎・激痛耐性とオーラ防御で凌いで、最短距離を全力〇ダッシュ。
乾坤一擲、●滅殺を叩き込むわぁ。
〇捨て身の○零距離射撃、喰らって吹っ飛びなさいな?



●悪災討滅:挑戦者、ティオレンシア・シーディア
「かは、かは……っ」
 あちこちに切り傷を見舞われ、炎に焼かれ、日野富子の有様は鬼じみていた。
 なにより邪悪で醜いのは、それほどの傷と痛みと苦しみを与えられてなお、
 彼奴には反省や後悔、あるいは悲嘆といった感情が一切見られないことである。

 怒り。そして憎悪。
 己をこんな醜態に陥れ、追い詰めた猟兵どもに対する怒り。
 猟兵が味方する、徳川家とそれに連なる人々、治世を謳歌する人々への怒り。
 ともすればその怒りと憎悪は、味方であるはずのオブリビオンにすら向く。
 もともと、世界の仇敵たる過去の残骸どもは"そういうもの"である。
 たとえ生前がいかな善人であろうが、どれほどの聖人であろうが、
 骸の海から立ち返った時点で、それらは世界を憎悪し破壊しようとする。
 ……だが、それを差し引いてなお、日野富子の憎悪は異常であった。
 それこそが彼の女を"大悪災"とまで言わしめる最大の理由であり、
 他のオブリビオンを凌駕する、強大にして邪悪なる魔軍将たる所以なのだろう。

「けどねぇ、それでもまだ違和感があったのよぉ」
 ボロボロの日野富子に銃口を向けながら、甘ったるい声で女が云う。
 ティオレンシアの相貌は、日野富子のそれと対称的に笑っているようにも見える。
 ……この邪悪かつ強大な敵を前にして、にへにへと笑うような女ではないが。
「自分のてもとに金銀財宝、集めてまとめてあるだけ溜め込んで……。
 あなた、財が財がって言うけれどぉ、"そのあと"のヴィジョンがないのよねぇ」
「……なァにが、言いたい……ッ!」
「それだけ財に執着しておきながらぁ、あなたにはその使い道がないんでしょお?
 生前がどうだったか、までは、あたしは知らないししるつもりもないけどぉ」
 ……笑っているように見える瞳が、わずかに開かれた。
「哀れよねぇ。ただ欲に塗れることしか出来ないオブリビオンって」
「……ッ!!!」
 嘲り。憐憫。その意味を理解した日野富子が、憎悪を込めてティオレンシアを凝視!
 KBAM――KA-BOOOOOM!! 爆発は起きた、だが妙だ!
(なんだ? アイツ、アタシに"何を燃やさせた"んだ!?)
 爆炎が、富子の想像以上に大きく激しい! これは一体!?
「ほぉら、次よぉ」
 炎の向こうから何かが来る。富子はそれを睨み――KBAM!!
「あ、あぁああああああっ!?」
 強烈な閃光、そして轟音! ……フラッシュバンだ!
 直視すれば気絶もするほどの過大な閃光を、富子はまともに浴びた!
 両目を抑えてのたうち回る! そこへ、炎を貫き、ティオレンシアが……来る!
「あらぁ? せっかくイイモノあげたのに、苦しそうねぇ?」
「貴様――」
「もう目障りなのよぉ。お返し、食らって吹っ飛びなさいな?」
 距離を詰めたのはこのためだ。捨て身のゼロ距離射撃!
 雷管を直接叩いて打ち込む"滅殺"の弾丸が、邪悪な女の体を――過たず、貫いた!

成功 🔵​🔵​🔴​

アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

先制攻撃にはセリオスを『かばう』ように前に出て
構えた盾を中心に『火炎耐性』として水『属性』の水流を纏わせた『オーラ防御』…水の障壁を作り出し展開、炎を防ぐ
爆発の衝撃に飛ばされないよう強く構えて
…僕の背に庇われる事を許してくれた彼の為にも
押し負けるわけにはいかない
僕は奴のような脅威から護る、盾だ

敵がセリオスの誘いに乗ってきたら
自分も走り出し、同時に【天聖光陣】を発動
攻撃は『見切って』『盾で受け』止める
相手の進路、視線を邪魔するように眩い光柱を障壁の如く放ち、セリオスが向かう場所まで誘導する
…このまま彼に喰らいつかせる気は更々ない
最後の光柱は敵本体に
…己の欲望で築きあげた花と散れ


セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
正直、アレスが怪我すんのは
俺が怪我すんのの何倍も痛いから
庇われたくない
けど同じくらいコイツのことを信用してるから
今、俺がすべきことは
アレスの後ろに隠れて
守られてる間に【青星の盟約】を歌う
攻撃力重視
炎に水をぶちまけ
それから跳んで一気に距離を詰める

炎を使うのがお前だけだと思ったか?
言いざまに炎を強く燃やして目を狙って斬りつけ
炎の強さで目眩まし
これ以上アイツを見んじゃねぇよ

攻撃は見切り回避
自分の戦いやすい場所へ誘う
アレスがいるから敵の攻撃をあまり気にせず
丁度いい柱の前に来たら
富子を斬ると見せかけ
柱に向かって2回攻撃
同時に下がって距離をとる
自分の改装した屋敷につぶされる気分はどうだ?



●悪災討滅:挑戦者、双星の騎士たち
 ……ボロボロの女の姿を見たとき、アレクシス・ミラが覚えたのは憐憫だった。
 無理もない。日野富子は見た目こそ麗しく、華奢でか弱い女であり、
 しかもその体は、あちこちが切り傷と火傷、そして銃槍を帯びていたからだ。
 それが"ただの女"ならば、なんと無残なことを憤るのが騎士であるべきだろう。

 ただし、それはもしもの話だ。ここにいるのは、ただの女などではない。
 見た目こそボロボロでも、それを消して余りあるほどの邪悪さと強大な力。
 目に見えないプレッシャーが、花の御所を覆うように満ちていたのだから。
 ……ただ、それでも。やはり、憐憫は抱いてしまう。感傷と言わば言え。
 それはおそらく、欲に塗れて滅びた、愚かな悪女への憐れみなのだろう。
「……セリオス、ヤツの攻撃はボクが守る。文句はないな」
 傍らに居たセリオス・アリスは、その言葉に唇を尖らせるが、口を閉ざした。
 アレクシスが怪我をすることが我慢ならない。正直、文句を言いたい。
 庇われたくない……と、セリオスが思っていることを、アレクシスもわかっている。
 当然だ。幼馴染であり、肩を並べた戦友であり、双つの星なのだから。
 ゆえに釘を刺された形であり、セリオスは出鼻を挫かれてしまったのである。
「……わーってるよ。信頼してるからな、アレス」
 とだけ言って、それ以上は何も言わなかった。
 たしかに、アレクシスが怪我をすることは嫌だ。
 けれど、彼の盾が自分を守ってくれることを、セリオスは心から信じている。
 だからいまは、その背中を見届けるとき。不承不承、一歩退く。
 アレクシスはそんなセリオスの姿を見て、わずかに微笑んでうなずき、
 そしてかなたの敵を睨みつけ、決然たる面持ちで一歩踏み出した。
「行くぞ、セリオス」
「そっちこそな、アレス」
 そして、双星は邪悪と相対する。

 未来への可能性と強い意思に満ち溢れた猟兵は、オブリビオンの不興を買う。
 わけてもふたりは、星のように強く、気高く、そして美しく輝き命の灯火。
「――死、ね、ぇえええええっ!!」
 ねじ曲がった大悪災によっては、唾棄すべき天敵に他ならない!
「!! セリオス、僕の後ろから出るなよ!」
 素早く盾を構えたアレクシス、その盾を憎悪の炎が燃やす! KBAM!!
 その表面を水の属性を孕んだオーラが、川の流れめいて常に流れ続けているが、
 それすら吹き飛ばし焼き焦がすほどの強烈な爆炎が幾度もなく破裂するのだ!
「ぐ、ぅうう……っ!!」
「おいおい、マジかよ……!」
 守りに秀でたアレクシスをして、苦渋の表情を浮かべさせるほどの猛攻。
 破られるとは万に一つも思いはしないが、それでもセリオスを焦らせる事態ではある。
 爆炎は盾を焦がしながら、踏みしめようとするアレクシスを一撃ごとに退かせる!
「……大丈夫だ、セリオス……!」
 奥歯を噛み締めて、床を強く強く踏みしめながら、アレクシスは言う。
「僕の背に庇われることを許してくれた、君のためにも、押し負けはしない……!」
 脂汗がにじむ。一瞬でも気を抜けば、たちまち爆炎に吹き飛ばされるだろう。
「……僕は、ヤツのような脅威から護る、盾なのだから……ッ!!」
「――ああ!」
 KBAM!! KBAM!!! KBAM!!!! ――爆炎が、途切れた!
「いまだッ!」
 セリオスは屈んだアレクシスの肩を踏み台に飛び出し、跳躍。
 虚を突かれた日野富子の凝視がセリオスを迎える――だが、わずかに遅い!
「星に願い、鳥は囀ずる。いと輝ける星よ、その煌めきを我が元に!!」
 KBA――バシュウッ!
 アレクシスの背後で練り上げた水の魔力が、爆炎と相殺され水蒸気に変化。
 そして立ち込める高温の濃霧を切り裂き、セリオスは宙を蹴ってさらに接近!
「この、野郎!!」
「炎を使うのは、お前だけじゃねえぜ!」
「!? ……あ、がぁああああっ!?」
 そして斬撃。入った! 軌跡を焦がすのは歌声に招かれた炎である!
 強烈な閃光を再び浴びた富子は、両目を抑えてもんどり打った!

 好機。これを逃したら、やつを倒すことは不可能だ。
 アレクシスは即座に状況判断し、残る衝撃を押し殺して疾走する。
「払暁の聖光を、今此処に! ――セリオスッ!」
 光輝の柱を立ち上らせ、セリオスと富子を取り囲む光の陣を敷く!
「応、アレス! 行くぜぇっ!」
 日野富子は視界を取り戻し、そして見た。
 いくつも突き立つ光の柱。その輝きに照らされて舞う青星のような鳥を。
 歌声は凱歌であり鎮魂歌であり、死者を滅びへいざなう葬送歌。
「己の欲望で築き上げた伽藍の城で、花と散れ」
 最後の光の柱が、剣戟とともに突き立つ。女の心臓をめがけて。
「いくら欲張ろうが、俺たちの絆は手に入れられやしねぇのさ――!」
 バツ字を描くふたつのほうき星が、邪悪なる災いに最期をもたらした。
 輝きの中、女は何かを言おうとして――言葉遺すことなく、消えていく……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


 奪ったのはアイツらだ。アタシのものを奪ったんだ。
 奪い返して何が悪い。アタシのものを、アタシが使って何が悪い!!
リア・ファル
SPD

まるで過去から染みだした、人の形の憎悪のようだね

御所内の物品を拝借し、懐に所持したりして、
先制が来たら、放ってお返ししようか
気が逸れるか、怒りで見切りやすくなれば儲けもの

多少の負傷も覚悟の上さ、
初発からどこまでかはあらゆる技術で防ぎ、躱し、捌く
「情報収集」「時間稼ぎ」「武器受け」「盾受け」「戦闘知識」
「学習力」「オーラ防御」
そして解析演算、リアルタイムフィードバック
相手の爪も霊力呪力が威力を支えてるとみて、
『コードライブラリデッキ』から対となりそうな「破魔」「呪詛」
を引き出して、武装に付与

チャンスとみたらUC【慧眼発動】を使用し、一転「カウンター」攻勢へ

「深きところへ鎮み給え」



●悪災討滅:挑戦者、リア・ファル
 ……何度目だ。
 自分がこうして花の御所に現れるのは、これで"何度目"だ?
「猟兵、猟兵、猟兵……!!」
 血がにじむような憎悪の声を滴らせ、日野富子は震える。怒りと苛立ちに。
 まだ、いる。猟兵どもが、天敵どもが自分を完全滅殺しようとやってくる。
 いいだろう。いいだろう! ならば徹底的に、"アタシ"もオマエたちを殺す。
 焼き尽くしてやる。欠片も残さず完全に、この世から消し去ってやる!

 ――そんな言語化するに尽くしがたいおぞましい憎悪を、リアは見ていた。
 まるで過去から滲み出した、ヒトのカタチをした憎悪そのもののよう。
 何をすれば、あそこまでねじ曲がり堕落することができるのだ。
 生まれた頃からそうだったのか。
 何かが彼女をああしてしまったのか。
 わからぬ。仮に判明したとして、すべては過去である。
「日野・富子! そんなに財にご執心なら、そら、お届け物さっ!」
 宇宙戦闘機イルダーナを駆り、リアは御所の大廊下を疾走した。
 血走った目がそれを迎える。総毛立つような殺意――だが、臆してはならぬ!
「キミの持ち物だろう? 大事なら懐にしまってとっておくといい!」
 そう言いながらリアが擲ったのは、道中で手に入れた御所の調度品である!
 おそらくは相当高価なのだろう茶器……この欲望に塗れた屋敷にはそぐわぬ逸品。
 こんなものを手に入れるために、どれだけの血が流されたのか。考えたくもない。
「アタシの! 財を!! 勝手に奪うなぁっ!!」
 激昂! やつの矛盾したところは、そう言いながら財を自ら切り裂く点にある!
 財を求めのたうち回るというのに、溢れる憎悪はその財貨をすら灼き、破壊する。
 満たされるはずもない。底の抜けた大釜も同然である!
「どこまでも理解できない……これだから、オブリビオンはっ」
 イルダーナを急速回避させ、茶器を叩き割った爪の衝撃波を回避。
 だがその回避先をめがけ、すでに富子は三度の引き裂く攻撃を放っている。疾い!
「く……ッ! この、くらいでっ!」
 被弾を最小限に抑えながら、リアは己の演算能力をフル活用する。
 この女の、女のカタチをした災厄の、その強さの拠り所はなんだ。
 欲望? それもある。
 憎悪? それも大きいだろう。
 だが何よりは――そう、呪いだ。
 己の魂すらも変質させ、満たされぬ欲望に突き動かすほどの自縄自縛。
 すなわち呪力! リアは、破魔の魔術プログラムを己の武装にまとわせる!
「死ね、死ね死ね死ね死ね死ねぇ!!」
「キミはたしかに強い、けど――ボクは、強いだけの敵なら"もう知ってる"よ!」
「!?」
 首を刎ね飛ばすはずの一撃が――避けられた? バカな!
「吠えろ、魔剣ヌァザ! 次元もろとも、災禍を切り裂けぇっ!」
 応報は成る。多元干渉電脳魔剣ここにあり、斬撃は逆袈裟の太刀筋!
「が――!?」
 その一撃は、憎悪の塊をして瞠目させるほどに白々と冴えていた。
 当然だ。積み上げてきた修羅場の数が、リアを強くしているのだから!

成功 🔵​🔵​🔴​

夕凪・悠那
名は体を表すってよく言ったよねホント
ていうか、世界が滅んだらお金あっても意味なくない?

『仮想具現化』に[属性攻撃]を併せて水属性の浮遊盾を実体化
飛び交う火矢を[見切り]、[第六感]も働かせて捌き切る
最悪、UCを使う[時間稼ぎ]になればいい

【迷宮創造】でゲーム空間を形成
テクスチャは京都御所をそのまま使用
そこに風魔屋敷で覚えた罠を色々と仕込む(罠使い/破壊工作)
一見いつも通りだからタチ悪いだろ?
更にエンカ率最大、数歩毎に武士・忍者が出現するレベルに引き上げ
出口は普通貴人が行かないだろう場所……台所に設定しようか

ボクは別のとこから眺めさせてもらうよ
最後は力技で突破されるとしても、だいぶ消耗するはずだ



●悪災討滅:挑戦者、夕凪・悠那
 魔軍将は、日野・富子だけではない。
 激戦の末に撃破された風魔小太郎もまたそのひとりであった。
 忍者らしいからくり罠仕掛けの屋敷を舞台にした戦いは、多くの猟兵を苦しめたのである。
 悠那は、そんな激闘に参戦した猟兵のひとりである。
 バトルゲーマーである彼女にとって、トラップを扱うということは得意中の得意。
 魔軍将が恐ろしい敵ならば――同じ強大なオブリビオンの力を利用すればいい!

「……これ、は!?」
 日野富子は驚愕した。周囲が、一瞬にしてその風景を変化させたからだ。
 己はいまたしかに、あの生意気な小娘を怨霊火矢によって追い詰めていたはず。
 そして最期の一撃を、周囲を包囲し浴びせてやった……はずだ。
 燃え上がる怨念の炎を、水の魔力でかき消すなどといういじましい努力をあざ笑い、
 この身を焦がす欲望の炎のごとき怨念で、火だるまにしてやったはず。
 まさか、奴は攻撃を受けながらも、この一瞬のための時間を稼いでいたのか!?
「くそっ、ムカつく! アイツを引き裂いてやる!!」
 怒りに悪鬼じみた形相をさらに醜く苛烈に歪め、富子は脱出手段を探る。
 だがその時である。富子が踏み出した床から、かちりと音がした。
 直後! 目の前の板が跳ね上がり、目の前に飛び出したのは爆薬……!
「!?」
 KA-BOOOOOM!! 爆炎が富子を飲み込み、その肌を灼く!
「あ、がぁああああっ!?」
 火だるまになりながら転がるのは、いまや富子の方である。
 怒りを糧に立ち上がるが……支えにした壁が、がこんと凹んだのだ!?
「まさか、これは――罠!?」
 気づいたところでもう遅い。偽りの御所は、風魔仕込みの罠を揃えて富子を飲み込んでいるのだから――!

「……エンカウント率も最大設定、と。いやー大昔のクソゲーみたいだねこれ」
 そして、富子が囚われた空間の外。あちこちに傷を負った悠那は肩をすくめる。
 設定しておいてなんだが、こんなゲームは絶対に遊びたくないところだ。
 おそらく今頃、富子はユーベルコードで生成された武士や忍者と小競り合いしているところだろう。
 とはいえ悠那も無傷ではない。出待ちして後一撃、というのは難しそうだ。
「せいぜい味わうといいよ、ご自慢の御所でのスリルある冒険をさ」
 出口は台所。そこにたどり着くか、あるいは見えない壁を破るか、
 いずれにしても奴は相応の消耗を強いられるだろう。
 求め求めた御所のなかで、己の欲に相応しい苦難を味わわされるのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

狭筵・桜人
【結婚詐欺】矢来さん/f14904

富子さんに求婚します。

全然タイプじゃないんですけどね。
あなた、もうすぐ死んじゃうでしょう?
その性格じゃ旦那さんとも上手くいってないだろうし、私が遺産相続してあげますよ!
ああ、結婚後はすぐ別居で。タイプじゃないんで。

先制攻撃を一手に引き受けて【かばう】ので暴力は任せました。
これがホントの矢面です。
怨霊であれば【呪詛耐性】で堪えますし、矢先を【見切り】避けます。
やぁ普通の火の矢飛ばされるよりいくらかマシですねえ。

はいはい、二秒ね。
活躍するとこ、ちゃんと“視て”てあげますよ。
お友達ですもんね?
――虚の孔。彼のタイミングに合わせます。
寝てても出来るんですよね、コレ。


矢来・夕立
【結婚詐欺】狭筵さん/f15055
御所ってちょっとやりづらいんですよね。
なので人を連れてきました。
持つべきものは金で動いてくれる友達です。口と頭が回ればなおよろしい。
…傍から聞いてるだけのオレもちょっとイラッと来ますもん。
コレだけ煽れば二人分の苛立ちにはなるでしょう。

気を引いて頂いてる間に《忍び足》【紙技・化鎮】。
怒りは凄まじい暴力になりえる。が、同時に判断力を鈍らせる。
そうですね。2秒。
それだけ注意を逸らしてもらえたら、隠れるには十分です。
狭筵さんの上に形代を一枚置いときます。死なれると取引先が減るんで。

経験がなければ知りようもないコトですが。
戦場では「気づかなかった」ら死にます。《暗殺》。



●悪災討滅:挑戦者、たわけた若者ども
「結婚してください!!!!!!!!!!!!!!」
「………………………………………………………………………………あ?」
 ユーベルコードで生み出された迷路空間からやっとの思いで脱出した日野富子。
 そこでいきなり、御所全体に響きそうな大声で求婚されたのである。
 さすがの大悪災をして、ぽかんとした顔……いやしてないわこの女怪。
 狭筵・桜人のことめちゃめちゃ睨んでるわ。当たり前ですわ憎悪の塊だもん!
「ひぃ!! ヤバいですよこれめちゃめちゃ睨まれてますって! どうしよう!!」
「プロ失格ですねオレに意見聞いてくるとか。知るかよ(セメント)」
 そばにさりげなーく立っていた矢来・夕立は、舌打ちしながら一蹴した。
 せっかく気づかれずに不意打ちするつもりが、これで自分の存在はバレた。
 もしかしてこいつに仕事まかせたの、大失敗ではないのだろうか。
 金で動いてくれる。口と頭が回る。いや条件は揃ってる……はず、なんだが。
「ま、まあさておきですよ! 私、正直あなたは全然タイプじゃ」
「死ね」
「ぎゃあああああああああああああ!!」
 ヒュンヒュンヒュン!! そこらじゅうから飛来する無数の怨霊火矢!
 煽りを並べるどこじゃねえ! 地雷中の地雷を踏んだ感バリバリである!
 だが桜人は持ち前のポジティブシンキング(ふてぶてしさとも言う)で思考を切り替える。
 いやなんやかや苛立ちは想起させられた! あとはここからだ!
 うまいこと夕立をかばって自分が攻撃を受ければ、役目は果たせヒュカカカボォオオオオ!!
「アババババーッ!?」
「バリバリ燃えてるじゃないですか、避けられてもいないじゃないですか」
 夕立は助けない。なんでこんな役立たずを助けねばならんのだ。いっそ死ね。
「いっそ死ね」
「言ってる!! バリバリ口で言ってアババババーッ!!」
 ところでなんやかや壁にはなっていた。肉の壁だが。

 まあそんなわけで、盛大に燃えているあの火の柱はさておき。
 なんやかや、その大げさな騒ぎっぷりのおかげで陽動の役目は担っていた。
 富子のほうとしても、このナメたガキをASAPでぶっ殺したいのはたしかである。
「さっさと死ねこのクソガキ!!」
「できれば結婚後は別居でぎゃあああああああ!!」
「うるっせえんだよォ!!」
 怒り狂う富子の背後。音もなく忍びが、そこに立っている。
(なんだかんだ仕事は果たしてくれましたね。2秒(これ)だけあれば十分です)
 一流の忍びたるもの、10分もかけているようでは日が暮れてしまう。
 仕事(ウェットワーク)をこなすには、2秒。ただそれだけあればいい。
(どれだけふざけていようが、怒りは判断力を鈍らせる――)
 然り。富子は完全に桜人に意識を散らされ、隙を晒している。
 ならば殺《ト》る。それこそが、己(カゲ)の流儀(スタイル)なのだから。
「!! ――オマエ」
 怒りに燃えていた女の目が、不可知なるカゲを捉えた。気づかれたか。
 さすがは幹部級オブリビオン。だが、もはや"遅い"。
「詰み(XYZ)ですよ。――さようなら」
 その時、富子は状況判断した。どちらを殺すべきか迷ってしまったのだ。
 そして気づいた。燃えていたはずのあのナメていたガキがいないことに。
 ……動けない。なんらかの呪いによる邪視! これは!!
 見開かれた目に、己をばっさりと断ち切る赤い死の線が走る。
 それはまるで、女を引きずりこむ虚の孔のようだった。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と

淋しい女ほど孤独を満たすため金を貯めようとする
真実の愛ほど金では買えないと言うのに

俺は貧乏猟兵で金に縁はないが、良き友には恵まれた
喚き散らす敵の攻撃はカガリか防いでくれよう
だが惹き付けるのは攻撃ばかりではない

カガリは俺の光
俺はその金髪をずっと背中から見てきた

彼が光り輝くほど俺は影となり闇に紛れられる

【金月藤門】の人の目を欺く力や【黒華外套】の忍び足をフル活用
先制の炎が尽きる直前に【流星蒼槍】を発動して【碧血竜槍】を槍投げ
それを初撃とし、炎が尽きたらすかさす召喚した双頭竜を放つ

自身も【魔槍雷帝】を手に【黒華軍靴】でダッシュ
閃光と電撃とで目を潰し、麻痺させてしまおう


出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と

ふむ、ふむ
つまり、あの女は寂しいのか
この屋敷に、一人しかいないからだろうか
今は猟兵達で千客万来のようだが…
どうでもいい事にまで怒るのは、どうでもいい相手に自分を合わせて貶めるようで、よくないと思うぞ?(ちょっと誘惑)

うん、猟兵なのでちゃんと戦うぞ
オーラ防御と【籠絡の鉄柵】の大型化でまるとカガリを囲い、防御の態勢を
うーん、見つめられただけで爆発か
これが熱い視線、というやつか(呪詛耐性・火炎耐性でできるだけ耐える)
炎が激しいほど、背後に庇うまるの動きがわかりにくくなる
それを利用して、爆破の切れ目に【駕砲城壁】を
まるへの攻撃はこれで防ぐぞ
あとは、任せるな



●悪災討滅:挑戦者、壁と槍
 欲望というものは、深ければ深いほど、強ければ強いほどその心を乾かせる。
 哀れなのは、欲望に負けてしまう心弱き者ほど、それに気づけないということだ。
 結局のところ、日野富子の災禍なる欲望も、根本はそういうありきたりなものなのやもしれぬ。
「かは、か……げほっ」
 その末路が、これだ。首元にばっさりと斬撃を受けた女の醜態。
 火の手が回る花の御所をよろめきながら歩くさまは、その美しさをアンバランスに引き立て、いかな者でも柳眉を顰めるほどにみじめである。
「……淋しい女ほど、孤独を満たすために金を貯めようとする」
 言わずもがな、マレーク・グランシャールもそんな表情を浮かべていた。
「真実の愛ほど、金では買えないというのに……な」
「……ふむ、ふむ。つまり、あの女は――寂しいのか」
 その言葉を聞いた出水宮・カガリは、得心行った様子でそう結論づけた。
 この広い広い屋敷に、たったひとりで住んでいるからだろうか?
 あるいは、愛する者を何か残酷な運命によって失ったからか?
 真実はわからぬ。サムライエンパイアで、あの女がいかな生涯を過ごしたか。
 全ては過去であり、そしてこの戦いには関係のないノイズでしかない。
 ……猟兵という天敵によって、寂しい屋敷が満たされたのは僥倖か。
 あの女の、こちらを睨みつけてくる凝視を見れば、答えは一目瞭然だが。

 ――KBAM!!
 凝視を認めた瞬間、大気が焼けながら爆ぜてふたりに迫ってきた。
 戦闘の火蓋が切って落とされたのだ。そこでいつまでも呆ける二人ではない。
 いつものように、カガリが一歩前に出て、マレークをかばい己の本領を発揮する。
 KBAM!! KBAM!!
 展開された鉄柵と、それを包むオーラの壁を、爆炎は飢えた獣のように包み込む。
 まるで火を恐れ、しかし獲物は逃さないように野営地を取り囲む餓狼の群れ。
 わけても恐るべきは、その熱量と絶え間ない爆発。切り込むタイミングが見えぬ!
「うーん、これが熱い視線、というやつ……か!」
 などというカガリの軽口も、強敵相手となればキレが悪い。
 しかし、これは好機でもある。炎の爆裂は当然視界を覆うからだ。
 敵の攻撃が苛烈であればあるほど、背中に護るマレークの動きは読めぬ!
「……――」
 そんなカガリの背中を、マレークは無言・無表情で見つめていた。
 守られることに感慨がないのか? 否。
 カガリが苦しんでいることに感慨はないのか? ……やはり、否。
 見とれていた、というべきだろうか。
 何度も見てきた、その金髪の、雄々しき背中の頼もしさに。
(カガリ、お前は俺の光だ。お前の輝きが、俺という影を伸ばす)
 今のこの状況がまさにそれ。炎はカガリという門を煌々と照らし出す。
 きっとこれが、美しさに心を奪われるということなのかもしれない。
 己の心の情動に名をつけられぬ男は、ただ目を細めて身を沈めた。
 ――そして、駆け出す。カガリが術式を発動したのは全く同時のこと。
「お前の力はよくわかった。さあ、反撃の時間だ!」
 キュキュキュキュン――鉄柵から無数の光弾が放たれる!
「な!?」
 予想外の反射攻撃! 富子はこれを爆破撃墜する。せざるを得ない!
「星を穿て――」
「まる! ――あとは、任せた」
 マレークは頷かぬ。首肯など、我らの間にいちいち必要もない。
 なすべきことをなす。半身は己を守った。そして無傷の己がここにいる。
「……碧眼の双頭竜よ。虚ろなる女を喰らえ」
 雄叫び。生まれしは碧血の魔龍。燃える空間を飲み込みながら、奔る!
「お前のその虚無を。せいぜい苦痛で埋めるがいい」
 日野富子は何も言わない。言えないのだ。龍の猛威がそこにある。

 かくて、流星のごとき龍の槍は、その切っ先を以て邪悪を貫き、食らった。
 あとにはただ、滂沱の血の痕と、猛攻の残滓だけが残される。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎

花の御所、綺麗だと思ったら残念だった
僕の櫻のほうがずっと綺麗
……あの女?そんなものを、連想させる
そんなの許さないからな

どんな財より価値あるものを
知らぬ君は哀れと思う
知らぬから君なのだろうけど

僕の宝は傷つけさせないよ
火は苦手だけれど
この身はずっと炎にやかれているようなもの
尾鰭で弾くはオーラ防御の水泡
怨霊すらも魅惑するよう歌う「薇の歌」
なかったこと、にしてみよう
少しの隙を作れればいい
この身で受け止め、櫻が無事ならそれでいい
あとは彼が、綺麗に血桜を咲かせてくれる
僕は信じてるからね
この歌を力にしておくれと鼓舞を込めて力ある限り、僕の櫻(たから)は僕が守る
彼の命は渡さない


誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎

なんて醜悪なこと
麗しさの欠片もない醜い我欲の塊
ヒステリーって好きじゃないの
…あの女を思い出すじゃない
嫌だわ
はやく首を落とさなきゃ

リル……!?
無茶はさせられない
歌うリルの水泡が弾けて消えるその前に
襲いくる怨霊の火矢を破魔宿した衝撃波で迎撃、斬り消す
「戀華」の音色と本物のリルの歌
なんて贅沢
期待に応えて斬り殺さなきゃ
痛みも憎悪も甘美だわ!全部頂戴、まとめて返してあげるから!
破魔の刀でなぎ払い傷あれば抉るわ
何度でも
第六感で危険を察知し衝撃波でなぎ払いつつ躱して殺すわ

どんな財宝も持ち人次第でゴミに変わる
リルを傷つける
あなたはまさしく不要物

最期くらい潔く美しく
散りなさい!



●悪災討滅:挑戦者、櫻と人魚
 ――……厭なものを、思い出されてしまう。
 永遠に癒えることのない記憶のかさぶたを剥がされて、塩を擦り込まれるような。
 いや、これはきっと、ずっと背負わなくてはいけない過去という枷なのだろう。
 ……なんにしても、あの姿は、厭だ。とても厭なものを、思い出す。
 醜悪で、麗しさのかけらもない、我欲の塊。ああ、ああ、よく知っている。
 女のヒステリーも、満たされぬままに求め続ける姿も、ああ、よく。ようく。
「……厭だわ、早く首を落とさなきゃ」
 敵は死に体だ。ボロボロの風体がそれを物語っている。
 決着はつけられる。だがそのぶん、最大の反撃を招くことだろう。
「………櫻」
 頭を振る誘名・櫻宵を、リル・ルリは気遣わしげに見やった。
 ……問うたところで答えはすまい。けれど彼が何を想起しているかは、わかる。

 許せない。
 許さない。
 あの女のことを思い出させるなんて。
 櫻を苦しめるなんて。絶対に許せない。
 僕では満たせぬあの女のことを――違う。違う。櫻の苦しみのほうが大事だ。
 許せない。己すらこんな気持ちにさせるあの女が、許せない!!

 ……"あの女"とは、はたして目の前の敵か?
 あるいは、愛するひとの心を、永遠に占有している、あの――。
「……!? リル!?」
 我に返った櫻宵は、気づいた。そして目を疑った。
 なぜ、リルが、自分より先に前に出て、そしてあの女を睨んでいる。
 まさか、いやダメだ、この子は守らないといけないのに!
「僕は君は許さない。哀れな女、滅びてしまえ!!」
 大音声――飢えた鬼のごとき目が、ぎろりと愛する人魚を睨む。
 いけない! 櫻宵がそう叫ぶより先に、鬼火が現れ弓弦を引いた!
「滅びるのはァ……オマエらだぁああああ!!」
 悪鬼の咆哮。怨霊どもが、雪崩を打って愛する人魚へと襲いかかる!

 ダメ! 無茶はさせられない、お願いだから下がって!
 そう叫ぼうとした櫻宵は、口を開いたところでぽかんとした。
 ……リルの周囲に、見たこともない数のあぶくが浮かび上がったからだ。
 そして恋人が謳うのは、揺蕩う泡沫そのもののようなか細き歌。
「――揺蕩う泡沫は夢、紡ぐ歌は泡沫――」
 ゆらり、巻き戻すときの秒針。
 夢の泡沫は、そのまぶたを閉じて、ありえぬはずの微睡みに沈む。
 さあ、お眠り。草よ、華よ、たとえこの伽藍の城にあらずとも。
 今はお眠り。炎も、水も、天も地も何もかも。
 全て忘れて目を閉じて――そうすれば、そう。結局すべては。
「眠りの中で見る、一瞬の夢のようなもの――」
 夜に響く悪魔の声は、風に揺れる木々のざわめきだ。
 戸を叩く魔性の足音は、雨に鳴らされる窓のきしみ。
 世界(ぼうや)よ、世界(ぼうや)。怖がることはない。
 お眠り。眠っていれば、すぐにやがて朝が来る。
 朝が来れば、たちまちすべてを忘れるだろう。
「――だから、"はじめから何もなかった"んだ」
 言の葉は紡がれた。超常すらもそれに従った。
 そして、全ては"そのようになった"。

「…………………え?」
 日野富子は、およそオブリビオンになってから初めて、当惑した。
 生娘のようにあどけない声で、思わず呆けたように声を漏らした。
 当然だ。なにせ呼び出したはずの怨霊はそこにはなく、
 御所を燃やそうとしていた火も、己の傷も、何もなくなっていたのだから。
「え」
「――ああ、残念」
 日野富子は、ともすればその時、己がオブリビオンであることすら忘れたか。
 目の前に立つ、憐れむような目の木龍を見て、心から恐れを抱いたのだから。
「憎悪があればよかったのに。痛みも在ればさぞ切りごたえがあったでしょう。
 けれど、そうね――そのあどけない美しさ、あなたなかなか、綺麗じゃない」
 女よりも細い指先が頬をなで、くすりと紅の惹かれた唇が笑みを浮かべる。
 ――片手に振るうは鬼神をも殺す魔性の剣。美しいけれど、ただそれだけだ。
「可哀想に。あなたは本当に大事な宝を識らないのね」
 恋する乙女のように熱っぽく吐息を吐き出して、櫻の男(おんな)は憐れんだ。
 憎悪すらも喪ったならば、ただ一閃にて終わらせよう。
「――散りなさい。枯れることなく散れる花は、幸せなのよ」
 斬撃は横薙ぎ。ぷつん、と音を立てて皮が切れた。
「あ」
「――そして、あなたの首を、頂戴な」
 ごとり。哀れな女の、数多の骸のひとつ。
 ごとりごろりと、呆けた首が、転がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 なんで。なんで。なんで。なんで。なんで。なんで。なんで。
 なんで! なんで!! なんで!!!
ヌル・リリファ
アドリブ、連携など歓迎です

もう死んでるんだからそんなにおかねにこだわらなくていいとおもうんだけど……。
それに。おかねはあくまでもなにかをてにいれる手段であって。それそのものにそんなに執着してもいいことないとおもうな。

まあなにいっても無駄だろうし。オブリビオンは、殺すよ。

先制攻撃は【見切り】でさけつつつ、さけきれないものは【盾受け】ではじく。

それで対処できたらUC起動。【属性攻撃】でひかりのちからを強化して、火矢の怨霊をつぶしつつ本体をけずるよ。
それぞれにつかう武器のバランスは演算装置がおしえてくれるから。

……ひとは。みんながあなたにつかえる人形じゃないんだから。いのままになるわけがないんだよ。



●悪災討滅:挑戦者、ヌル・リリファ
 そもそも、財だとか貨幣というのはヒトが使うべきものだ。
 資本主義において社会を構成するために設定された概念に過ぎず、
 オブリビオンなどというモノが集めてもなんら意味はない。
 なにせ奴らは、無から同族を生じさせ、滅びても立ち返るのだから。
 死人に銭を持たせてなんとする? そういう作戦だと?
 ……日野富子の欲はそうではない。そういう"わかりやすいもの"ではない。
 であれば、未だ幼き忘却の子が、その虚を理解できるはずもない。
 そもそも、敵の懊悩を理解するような機能は、兵器(かのじょ)にないのだから。

 ヌルは性能を絶対視する。だが戦場はそれだけで決まるわけではない。
 意思あるものの戦いは、時としてそれが寄す処とするエゴが均衡を崩す。
 趨勢を逆転させる。ありえないはずの99を呼び起こし、1%を叶えてしまいすらする。
 ましてや、敵が強大な幹部級オブリビオンとなれば、なおさらのこと。
 彼女の性能は、理論上その攻撃を見切りいなすことも出来ただろう。
 だが。降り注ぐ怨霊火矢の憎悪と、それを生み出す日野富子の欲望と、
 怒りは――たやすく、その計算と予測と防御を打ち砕き、押し潰そうとする。
「ああ、ああ、ああああ!! 死ね死ね死ね死ねぇえ!!」
 来る。燃え上がる矢が、矢というカタチをした怨念がやってくる。
 数は500以上。日野富子が苛立ちを感じ続ける限りはおよそ無限に。
(さけきれない。できるだけ致命的なぶいをぼうぎょしなきゃ)
 ヌルは冷静に思考し、稼働に支障のない部位で己の頭部をカバーする。
 つまり、腕だ。片腕が燃えながら脱落する。まだいい。足があるから走れる。
 痛みはオミットしている。見返すこともない。まだ間合いが足りないから。
「なんでまだ死なないんだ! アタシを苛立たせるヤツは死ねよぉ!!」
「しなないよ。しぬのはあなた。殺すのがわたし」
 光の武器が生まれた。怨念という絶望を払い、死の斬撃が幾重に飛ぶ。
 かたや無表情のまま、隻腕で突き進む空色の瞳の少女。
 かたや怨嗟を叫びながら、降り注ぐ光を燃やして払おうとする女。
 ともに、虚ろである。
 ともに、満たされぬものである。
 違いがあるとすれば、少女はそれを理解せず――しきれず、
 女のほうは、満たされないということを理解できず、しないことか。
「あなたにわたしは殺せない。あなたの性能ではわたしには届かない」
「こ、の、ガキぃい……!!」
「わたしも、ひとも、あなたにつかえる人形なんかじゃない。
 殺されもしないし、つかえることも、いのままになることだってない」
 ただ、少女の瞳には、まるで萌木めいた意思の種があった。
「あなたはずっと、そうやって喚くだけなんだ」
 その輝きが、傷つく少女の一撃を届かせるひと押しとなった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

橙樹・千織
アドリブ歓迎

そんなに苛立っていては見える物も見えなくなるでしょうに

敵が怨霊を召喚後、追跡・攻撃を【見切り・残像・催眠術】などで敵の空間認識に誤差を与えるなどして回避
また【武器受け・なぎ払い】でいなしつつ、こちらもユーベルコードを発動
同時に【オーラ防御・火炎耐性・激痛耐性】にて防御態勢を整える

攻撃は【破魔・呪詛】を載せた水氷属性の【属性攻撃】で対抗
【高速詠唱】による【全力魔法】や【マヒ・気絶攻撃】で怨霊撃破を試みる
それにより苛立ちの対象を自分から中々役割を全う出来ない怨霊に向けさせ、対象が移るタイミングを狙ってボス撃破を試みる
対象が移らない場合は残り2,3体になった時点でボスごと撃破を狙う



●悪災討滅:挑戦者、橙樹・千織
 憎悪というのは厄介なもので、それを燃やすこと自体は心地が良い。
 ただしそれは、怒りという不快感を伴った、いわば"不健康な快楽"である。
 精神は病み、摩耗し、腐りながらも、しかして味わうのは甘露のよう。
 くせになる……というべきか。あるいは麻薬のようでもある。
 そして摩耗した心は、次に抱いた憎悪では満たされなくなってしまう。
 より強く、
 より激しく、
 より醜い憎悪を。
 怒りを。憎しみを。それは心を鑢で削る、血反吐を吐くような自傷行為。
 そうして、ヒトは見えていたはずのものすら、見落としてしまうのだ。

 ……深く考えなくともあたり前のことなのだ。誰もが知っている。
 だのに、それを忘れさせてしまうから、憎悪というのはたちが悪い。
「怒りに狂って、そうしてあなたはそうなってしまったのですね」
 嗚呼、憐憫のため息を漏らし、千織は頭を振った。
 憐れなり。その憐憫すらも、ねじ曲がった女は憎悪の糧とする。
「アタシを憐れむな」
「どうして憐れまずにいられましょうか。その尽きぬ欲望と苛立ちを」
「アタシを! 憐れむなッ!!」
「なら黙らせればよろしいでしょう――できるものなら」
 怨霊どもが、鬼火をまといて火矢という形で即座に顕現する。
 かつてこの世界であったという大乱。そこでおそらくは死んだ兵たち。
 無念があったのだろう。晴らせぬ怒りがあったのだろう。それもまた、憐れ。
 だからといって、その勝手な炎に焼かれてやるつもりなどないが。
「こちらですよ。どうしました? さあ、射抜いてごらんなさい」
 千織は、これにあえて挑発をして、誘い込むという手で回避を試みた。
 ただ見切って避ける程度であれば、おそらく千織は相応の負傷をしただろう。
 巧妙であるのは、彼我の相対距離、すなわち敵の空間認識を誤らせたこと。
 いかに対象を追跡し射抜くとはいえ、怨霊による火矢は意思がある。
 意思があるならば、それを揺らげばいい――まさに名案と言える。
 被弾を最小限に抑えつつ、千織はけして足を止めることなく立ち回った。
 薙刀が床を薙ぐ。火矢がその衝撃を受けて、ぶわりと花びらめいて散った。
 ――好機。千織は、己が持つ霊力のすべてを、織めいて守りとして纏う。
 踏み出したそのあとには、涼やかな水氷の風が一陣駆け抜けた。

 舞う。それは神楽――すなわち神を慰める、戦いのなかの芸術だ。
 神には荒御魂と和御魂の二側面がある。どんな神でも例外ではない。
 善き神々の荒ぶりを鎮めるため、戦巫女たちは数多の神楽を生み出してきた。
 では、祟り神めいた、この怒り狂う女はどうか。当然、鎮まりはしない。
「なんで死なないんだ、殺せ! 殺せよぉ!!」
 ただ、その荒ぶる怒りの矛先を、己から敵そのものへ変えることはできる。
 本懐を果たせぬ怨霊ども。それ自体を、富子は鬱陶しがり苛立っていた。
(やはり。怒りのあまりに、敵も味方も何もかも見えなくなっているのね)
 憐れだ――その雑念を払う。見据えるべきは敵のその首のみ。
「戴きます。骸の海へと還りなさい、荒ぶる災厄よっ!」
「コイツ――かはっ!?」
 清清しいまでにまっすぐな斬撃。入った。
 ざぁ――! と、海原の波めいて、冷えた氷水が熱波を払う。
「もうひとつ!」
 裂帛の気合。腹部を狙った刺突が……大悪災を、射止める!!

成功 🔵​🔵​🔴​

ヘンリエッタ・モリアーティ
【伐首】
ああ、よく燃えて
暑いのによくやるわ、ねぇ灯理
それでは――お仕事の時間にしましょう

初撃への対策は皆さまがやってくださるけれど
【犯罪王の代理人】であえて受けます
――攻撃を喰らえば喰らうほど強くなるのでどうぞ、ぶつけて頂戴な
私でよければ喜んでお相手を。

『死樹の篭手』を装着した腕プラスで強化した体を前へ!
狼よりも恐ろしいのは後ろの銃撃よ
鳴宮さん、構いません。私ごと撃って
――傷つくのは私のUDCのみなので、余計に強くなるだけですから
Arsene殿の援護も受けて特化した彼の射線にお構いなく肉弾戦

その魂、その煮えたぎる血液すべて――
地獄のように熱くて、悪魔のように甘いあなたの命を食べさせて?


鎧坂・灯理
【伐首】
非女神殿/f15297、ハティ/f07026、ミスタ・鳴宮/f01612、Arsene殿/f01172

ああ暑苦しい、みっともない
わめき立てるな見苦しい
ええ、ハティ――仕事の時間です

初撃の火矢を念動力で逸らす
自分の分だけならばなんとかなる
次はこちらの番だ
非女神殿にわずかに遅れてUCを発動
強い者ほど自由を奪われる【嫉妬の鎖】だ
実力だけは高いのが仇になったな

私の仕事は完全な拘束
防御なんざ最低限でいい
ハティとミスタ・鳴宮が奴を殺すまで、私は決して鎖を緩めない
頭と胸部があれば死なない
死ななければUCは使えるからな

仕事は完全に遂行する
それが私のプライドだ
あとはお任せしましたよ、皆様


鳴宮・匡
【伐首】
◆ヴィクティム、鎧坂、穂結、ヘンリエッタと

初撃は可能な限り【戦闘知識】をもとに【見切り】、凌ぐ
動きまで9倍速じゃないだろうし
なにより「人型」を相手取るのは慣れてるんでね
目線の向き、姿勢、足の踏み切り、手の動き
狙いを察するための情報には事欠かない
「封じ手」が刺さるまでの時間くらいは稼いでみせるさ

封じが決まれば、こっちの手番だ
ヘンリエッタはああ言うが
「絶対に」当てないように撃つよ
横合いを衝くか、巧く「相手にだけ当たる」射線を通す
後ろに控えた女傑が怖いしな
(……本当は、味方は撃たないと決めてるってだけだけど)

ここまでお膳立てして貰ったんだ
確実に、徹底的に殺すよ
それが、兵士の役目だからな


穂結・神楽耶
【伐首】
鎧坂様/f14037、ヘンリエッタ様/f07026、鳴宮様/f01612、ウィンターミュート様/f01172

初撃は《オーラ防御》《激痛耐性》で耐えます。
炎同士なら喰らって取り込めますし…
そも、此度は前衛でないので負傷は問題になりません。
支援も込みで十全でしょう。

それではお待たせしました、日野富子様。
炎が追いつきますよ──【猩猩緋宴】。
目を閉じて、尚正確に狙い定まるか試して頂きましょう。
少しでも目を開く兆候があれば即座に同UCでの追撃を。
正確な狙いは定まらないと心得なさい。

出鱈目な攻撃を前衛陣が捌けぬ道理なし。
どうぞお願いいたします。
欲するのは勝利のみなれば。


ヴィクティム・ウィンターミュート
【伐首】

悪の華にはご退場願おう──舞台に立つには、無粋だぜ

火矢の怨霊に爪の連撃…初撃にはハードなラインナップではあるが…
俺が倒れさせない。任せろ
全サイバネを【ハッキング】して出力限界突破
【ドーピング】でコンバット・ドラッグ摂取

【見切り】で攻撃の軌道を読み、4人に脳波ハッキングで伝達
数発を捌いて──俺のUCを起動する
こいつら全員の行動の癖も、肉体スペックも把握してる
数回戦えば…どんな指示が一番効果的で、一番力を引き出せるのか…『俺は知っている』
特に匡とアイツなんかはな──見慣れ過ぎてるのさ

全員のニューロンに思考共有!
俺がこの戦場を支配する…ヘンリエッタにはいらねえかな?
では、風のように──走れ



●悪災討滅:挑戦者、つまはじき者ども
 平和というものは、ようはお天道様の日差しのようなものだ。
 暖かくて、草木を育て、万物にとって恵みというべきものなのだろう。
 ただ、人間というのはどうしても愚かなもので、それに馴染めない奴らがいる。

 どうしようもなく性根がひねくれているゆえに。
 正道では叶えられぬ信念を抱えてしまったがゆえに。
 日差しすらも届かぬ血みどろの世界で育ったゆえに。
 陽光よりもなお熱く、苦しい炎を己のものとしたために。
 ――そんなものは己にそぐわぬと、諦めて蓋を閉ざしてしまったために。

 社会からのつまはじき者。ヒトが拠って立つべき倫理(ロウ)から外れたもの。
 アウトローとは、そういう連中を指すのである。
 本人どもが、それを自覚していようといなかろうと。
 己こそがそうであると、認めていよういなかろうと。
 光に憧れ、それを求めていようと、いなかろうと。

 ヘンリエッタ・モリアーティ。
 鎧坂・灯理。
 鳴宮・匡。
 穂結・神楽耶。
 ヴィクティム・ウィンターミュート。

 彼らは、"そういうもの"だ。
 それぞれの事情、
 それぞれの理由、
 それぞれの過去、
 それぞれの意思、
 それぞれの諦観、
 立場も歩みも決めたことも目的も何もかも違えど、"そう"であるのは事実。
 日向の道など糞食らえ。あるいは、己はそこにそぐわぬと頭を振って、
 だのに完全な悪に堕ちるのかといえばそうではなく、世界の敵など狩っている。
 馬鹿げた話だ。ヒトとしての幸せを受け入れられぬならヒトなどやめてしまえ。
 そのほうがよほど楽。そのほうがよほど生産的だ。
 悪人だ悪党だ、己はヒトでもヒトならざるものでもないだとか言って、
 罪があるとかないとか、そぐうとかそぐわぬだとか理由をつけて、
 やっていることは結局悪党退治。ひいては日向の人々の命と未来を救うお仕事。
 ……業腹だろうか? 結構、ならばもっと言って聞かせてやろう。
 お前たちは、結局そうやって未来を守り、過去を破壊しているお人好しだ。
 そうでない、そんなもんじゃないと言わば言え。叫びたくば叫べばいい。
 与えられるべき恩讐を拒んで、受け取るべき栄誉と名誉を嘲って、
 我こそは日陰のものでござい、どうぞ構うことなかれとシニカルに笑おうが。
 いつかはその善行(然り、それはまさしく善行だ)が、然るべき幸福をもたらすだろう。
 それが、その者にとっての、その者が決めた信念に対する毒であれ。
 よりその心を苦しめ、みじめにさせるだけの過ぎた水でしかないにせよ。
 わかっているはずだ。だのになぜそれを拒む。
 ……否、答えもまた、とうにわかっているはずだろう。
 日向(ロウ)に馴染めぬ者とは悪であり、悪とはつまり弱さの発露。
 つまはじき者どもよ。お前たちは弱いのだ。どうしようもなく脆弱なのだ。
 目の前であがき、求め、怒り狂い、憎悪を撒き散らす、あの女のように。

 つまりそこにいた六人は、誰も彼もがどうしようもなく似通っていた。
 違いがあるとすれば、認めて踏み出せる強さが、その可能性があるかないか。
 そして――満たされぬということを、己自身がわかっているか否かであろう。

 さて。舞台をライムライトで照らし出すならば、初めに脚光を浴びせるはこの男。
 自称・端役。己の可能性に見切りをつけて、届くはずのものを届かぬと嘯く男。
「ハッ、こいつはなかなかハードだな! けどあいにく、俺には届かねぇ」
 人を食ったようなシニカルな笑みを皮肉げに浮かべ、ヴィクティムは小首を傾げる。
 かしげた首をびょう、と刃物じみた爪が薙ぎ、通り過ぎた風が頬を浅く裂く。
 跳躍。飛び退いた少年を追うように、カカッ、カカッと突き刺さる火矢の列。
 そら、逃げろ。その怯えを隠し、こらえて、強がりながら逃げ惑え。
 怖かろう。目の前に死がいる。ヒトのカタチをした災いがお前の前にいる。
 震えるか? 奥歯を噛み締め震えを殺し、見た目だけは瀟洒に駆け回るか。
 いいだろう。ならばお前は生きられる。少なくともいまの一手は超えた。
 鋼が軋む。違法改造された全身が、それでも策定された制限を一足飛びで飛び越えて、脳髄を、諸神経を、毛細血管を引きちぎり灼きながら意思に応える。
 ひとつ。ふたつ。みっつよっついつつむっつななつやっつここのつ。
 そらどうした。爪が二つ、お前の生身を切り裂いて痛みを味わわせたぞ。
 痛覚カット。過去の"日野富子"との戦闘経験と、目の前のそれのデータを照合し、
 リアルタイムで演算しながら誤差を修正していく。いじましき努力。
 プランを変更――いや、本来あるべきラインに切り替える。
 敵のデータが一瞬ごとに予測を超えるならば、不変の駒を使えばいい。
 ……仲間? なんだそれは。端役にそんなものは不必要。
『まだまだ来るぜ、どうやらお相手はダンスパーティがご所望らしい!』
 脳波越し、少年はまるでタフでクールなハッカーのように四人に呼びかけた。
 その鼻っ面を、燃える矢がかすめて、命を危険に晒して凍らせるのだ。

 負傷は、問題ない。なるほど、たしかに後衛ならばそれは是か。
 ようは一撃を届かせればいいのだ。負傷の多寡が攻撃を揺るがすことはない。
 ……戯言を。そうではないだろう。神楽耶よ。神ならぬ神よ。ありふれた器物霊よ。
 お前は傷が欲しいのだ。痛みが贖いをくれるだろうと思っているから。
 その身を焦がす炎があらば、降り注ぐ怨念など何するものぞと思っている。
 そして事実として、神楽耶は火矢を最低限の防御で耐えようとした。
 愚かなり。およそ五百を超える怨念どもは、"耐えられる"だけで耐えられはしない。
 炎が。少女の姿をした、過去に縛られし憐れなものを灼く。焼く。妬く。
 苦しめ。それがお前の無様の報いである。浴びた怨念の重さを味わうがいい。
 大乱にて死した兵どもは、命を救えぬお前を痛罵し燃やし苦しめる。
「…………ッ!!」
 悲鳴を噛み殺し、神楽耶は脂汗すらも焦がす炎の中で、太く息を吐いた。
 大丈夫か、などと声をかけるものはいない。それは少し嬉しく思う。
「いかな怨念であれど――わたくしは、それをすら取り込んでみせましょう」
 臓腑が焦げる。化身だからなんだというのだ。結局それは肉を得たヒトだ。
 苦しみもするし、痛みもするし、体の内側を炎で灼かれればのたうち回る。
 だから、耐える。それらありきたりな苦しみという逃げを甘えとし、
 神楽耶は亀裂の走った己の化身をオーラで覆い、平気なように見せかける。
 見るは敵。構えるは刃。双方の瞳が絡み合い――嗚呼。
「……こちらを見なさい。さあ、わたくしはまだ健在ですよ!」
 突き刺す憎悪の心地よきかな。後悔を忘れられるぐらいに恐ろしいのだから。
 この強がりが災いを呼ばうならば、大手を振って耐えてくれよう。

 何も、ない。己は仲間を信じているし、勝算があるし、感慨などない。
 だから攻撃を避けることに不安もないし、恐怖もなく、懸念もない。
 ないのだ。己はそういうものなのだから。ただ見えたものを避ければいい。
 いかにもそうだろう。ヒトの殺し方を知る男ならば容易かろう。
 目線の向き、姿勢、足の踏切、手の動き。すべて手に取るようにわかる。
 このあとに続く切り札がある。であれば、そこまで時間を稼げばいい。
 懸念はない。懸念は、ない。……ないはずだ。情報だけがそこにある。
「死ねぇええっ!!」
「悪いが、その頼みは聞けないね」
 猛火の如き憎悪が目の前にある。その経緯に対する怪訝も、ましてや憐憫もない。
 ……裏を返せば、それは尽きぬ憎悪を凌駕する熱量も、ないということか?
 否である。かつてはそうだったやもしれぬが、少なくとも今は違う。
 約束がある。誓いがある。生きていてくれと願う声と、それを聞き届けた意思がある。
 それは、揺らぎだ。戦場においては、情報ともたらされる結果を揺るがす、
 つまりは本来受けなくていいはずの傷を受けてしまう、致命的な揺らぎだ。
「まだ仕事が山積みなんだ。死ぬのはお前だけでいい」
 ざっくりと裂かれた肩の傷を厭うことなく、匡は変わらぬ顔で言う。
 憎悪は強い。燃え盛る怒りは、時として届かぬ場所に手を届かせる。
 今まさに、避けられたはずの攻撃を受けた、彼のその傷のように。
(――満たされない、しかし求めずにはいられない欲望、か)
 一時だけ水面を揺らした思索は、もしかすると羨望なのだろうか。
 負けるつもりも、その要因もない。ただ……あそこまで焦がれる熱も、己にはない。
 ――だからやっぱり、自分は人でなしの、それ以下のモノなんだろう。

 暑苦しい。面倒くさい。まったく理解できない。
 求めて、飢えて、餓えて、乾いて――満たされぬことにまた焦がれて。
 それになんの意味がある? なんの意味もない。ならばやはり、無駄だ。
 無様だ。醜い。醜悪は嫌悪に通じ、この世界から消し去る理由に足る。
「ねぇ灯理、さっさと消してしまいましょう」
「えぇ、ハティ。仕事の時間です」
 女たちはそう言って、わかったような顔で相対し、策を巡らせる。
 降り注ぐ怨念を念動力制御(みないふり)して、火の粉を払う。
 あるいは、後手のために、喜んでと言って受けてみせる。
 ……違う。違う、違う、違う。
 あれを見よ。おまえたちが見苦しく、暑苦しいと言ったそのざまを見よ。
 同じ女、同じ悪党、同じ弱きものの成れの果て、敵対する鏡像を見るがいい。
 お前たちもああなるのだ。"そうなる"可能性はつねに真横に広がっている。
 恐れろ。己もそうなるやもしれぬことを。そして安堵し弛緩してみせろ。
 けして満たされぬ飢えに焦がされて、狂気に狂ってまた狂うことになる。
 名状しがたい怪物? 悪行に秀でた脳髄? そのための精神?
 鉄の意思? 現実化するための思念? 無慈悲なる殺意?
 だからなんだ。そんなものは、すべて"そうならない"ための鎧だろう。
 完全な悪に堕ちることは容易い。狂気に正気を明け渡すことはもっと容易い。
 ではなぜそうしない。それこそが無様ではないのか。それこそが醜くはないか?
 弱さを拒んで、否定して、同じはずのモノどもを仕事を割り切り狩ることが、
 ただの強がりでなくてなんだというのか。
 ――だが、その強がりが、違うと言い切るエゴこそが両者を分かつ。
 降り注ぐ火矢が念動の守りすら貫いて、狂気の神の飢えすらも溢れさせて、
 臓腑を焦がして骨身を灼こうと、耐えて、笑うだけの強さを与える。
「奇遇ね。私たちもお腹がすいたの。さあ、だから食べさせて。もっと、もっと」
「ふざけんじゃねぇ!! 死ねよ、死ね死ね死ね!!」
「喚くな。騒ぐな。みっともない。化け物が」
 矢が降り注ぐ。爪が薄く笑う女を切り裂き、嫌悪する女をも襲う。
 だがふたりは退かぬ。なぜか。そんなことは簡単だ。
 ふたりだけではない。誰もが退かぬ。なぜか。そんなことは簡単だ。

 これは仕事だ。主義も、主張も、相手の事情も何も関係ない。
 関係ないと切り捨てる。切り捨てた。ならばあとは遂行するのみ。
 敵を殺す。定めた目的に突き進むことこそ、生者の特権なのだから。

 炎が降る。ヴィクティムはきりきりまいでこれを躱す。
 回避機動先に待ち構えていた爪を匡の銃撃が打ち払い、躱させる。
 ならばと後衛めがけた矢を神楽耶が受けて、さらなる追撃を灯理がそらす。
 それでも溢れてくる怨念を、うぞうぞとうごめくヘンリエッタのしもべが食らう!
 疾い。敵の激甚さ、それこそが五人の想像も想定も超えていた。
 一瞬ごとに銃弾と剣と不可視の力と触手と爪と火が交錯し、打ち合う。
 不利である。五人がかり! 脳波の思考速度で連携して、なお!
 これが幹部級か。これが厄災とまであだ名された女のヒステリーか!
『全員生きてるか? 生きてるな! そろそろクライマックスだぜ!』
 思考速度で伝わるヴィクティムのメッセージは、相変わらずタフだ。
 その割に、オーバーワークを超えた愚かなカウボーイは、全身火花だらけ。
 神速のリロード。それすらも惜しい。だが匡は焦りはしない。
 悪鬼の猛攻を銃弾で弾き、己に向けられたものは最小限かつ最速の動作で避け、
 延焼する炎を女神ならざる神楽耶が飲み込み、取り込んでいく。斬撃。通らぬ。
『いつでも参れます!』
『合わせましょう、非女神殿。ご随意に』
 言葉があったわけではない。両者の視線が交錯したまでの話である。
 それを横に立つ教授が読み取る。潮目か。躊躇なくその体は、足は、前に!
「オマエから殺してやるッ!!」
 狙いはヘンリエッタ! 怨霊火矢の切っ先が一斉に彼女を捉えた!
「残念ですが、もはや炎が追いつきました。――光、あれ!」
 燃え盛る炎に照らされて、赫々たる反射光が天輪めいて戦場を照らした。
 まともに受けたのは、狙い通り富子である! 怯えた小鬼じみた悲鳴!
「ぎゃっ!!」
「貴様は強い。求めてやる。みじめな割によくやったものだ」
 鮫が笑った。笑顔とは獲物を見定めた狩猟者の表情である。
「"だから、貴様はこれから逃れられない"」
 がしゃり。不穏な金属音を立てて、非現実的速度で魔術の鎖が飛ぶ。
 絡みつく。空想のものであるはず、だ。だがのたうちまわろうと外せはせぬ。
「離せ!!」
「莫迦が。戯言も大概にしろ」
 矢が突き刺さる。火だるまだ。女は燃え上がる火だるまとなった。
 だが離さぬ。脳が沸騰して灼けるまであと五秒――十分な間隙。
「お腹が! 空いたのよッ!!」
 悪鬼がもうひとり生まれた。いや、はじめから牙を隠していたのか。
 猿(ましら)じみた速度でヘンリエッタが飛びかかる。おお、魔狼よ!
 牙がその身をぞぶりと噛み締め、食い下がり、爪にえぐられさらに鋭く!
「ぎ、ぃいいいい!!」
「噫! 煮えたぎる血液、地獄のように熱くて悪魔のように甘い!」
 もっと、もっと、もっと!
 狂っている。だからこそ底なしの憎悪に抗することができるのだ!
「さあ! 鳴宮さん!! さあ!!!」
 狂瀾する黒き災厄を前にして、匡はやはり澄んでいる。
 相棒による思考速度と神経強化。連携。チェックメイト。とどめの一撃。
 だが関係ない。トリガーにかけた己の指と、それを引くこの意思には。
「悪いが、その頼みは聞けないんだ」
 ちらり。火だるまに向けた視線は、それを恐れるかのよう。
 悪い冗談だ。およそ恐怖などというものはこの男にない。
 味方は、撃たない。仕事をこなすうえでの、いや。
 ――ヒトに紛れて生きる上の、人でなしが決めたちょっとの強がり。
「死ぬのはお前だけだ。じゃあな」
 BLAM――日野富子は、回復した視界にそれを見た。
 ぐるぐると、スローモーションで迫る、回転する死の鉄槌を。
 その先の兵士の瞳を。己を射すくめるつまはじき者どもの眼差しを。
(――退場の時間さ。あんたはもう、舞台には必要ない)
 いやみったらしい表情で、端役が口の動きでそう言った。
 それが冥土の土産。弾丸は、過たず日野富子だけの脳漿をぶちまけさせる。

 六人は、根っこでは同じつまはじき者、弱き者である。
 それを否と拒んで強がる意地こそが、趨勢を分けたただ一つの違い。
 仕事人(プロフェッショナル)に、感傷なんて不要なのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​


 ああ。
 誰も、アタシのことは求めてくれないのか。
リンタロウ・ホネハミ
見た物を爆発させる炎の視線……
恐ろしいっすけど、なんとかならねぇわけじゃあねぇっすね

用意したるは我が身をすっぽり隠せる大きな盾
もちろん奴の視界に入った瞬間爆発で壊されちまうでしょう
ぶっ壊される前提で、オレっちがダメージを受けないよう、わざと脆く作ったっすからね

そう、この炎こそ、奴自身に作らせた、奴の視界からオレっちを守る盾!
後は炎の盾の影から奴に常にナイフや瓦礫、何でもかんでも投擲してオレっちに視線を向ける暇を与えず(2回攻撃・早業、投擲、ダッシュ)

たどり着いたっすよ、確実にあんたを殺れる距離
犀の突進にも等しいこの一撃、吐くほど味わわせてやるっす!!



●悪災討滅:挑戦者、リンタロウ・ホネハミ
 ギリシャ神話に曰く、勇者ペルセウスは鏡の盾を以て女怪メドゥーサを討った。
 敵の攻撃が、メドゥーサのそれと同じ『視線』によって引き起こされるならば。
 盾を用いてこれをかいくぐろうとする、という判断は古式ゆかしい良策だろう。
 ただし、これは石化の凝視などではない。
 見たものを爆ぜさせ燃やす、防ぎようのない邪視である。
 "だから、黒騎士はそれを利用することにした"。
「どぉおおおおおりゃああああああ!!」
 接敵と同時、リンタロウは怒号じみた鬨の声をあげて吶喊する。
 敵に己の位置を知らせるようなものだ。名うての傭兵らしからぬ悪手。
「猟兵……! またアタシを殺しに来たのか! 天敵がぁあっ!!」
 当然、日野富子はこれを睨む。敵は焼き尽くしてやると憎悪を込めて。
 KBAM――KBAMKBAMKBAMKBAM!! 大気が焼け焦げながら迫る!
「死ねよ、アタシのジャマをするなぁっ!」
「そうもいかねーっすよ、こちとら猟兵なんでなぁ!!」
 KBAM――着弾! 盾は……ああ! 言わんことなし!
 リンタロウの長身を覆うほどのサイズは、必然盾そのものの強度を犠牲とする。
 なぜコンパクトにまとめなかったのだ、傭兵よ。君は知っているはずだ!
 余計な重さ、大きさは、翻って兵士の首を絞める首吊縄になることを!
 邪視を恐れるあまり守りに入ったか? その結果がこれである!
 爆炎を浴びた盾は、あっさりと砕けて崩れて――そして、燃えた。

 然り、燃えた。ことここに至って、日野富子もなにかに気づいた。
 何かが、おかしい。なぜわざわざ"自分に盾を壊させた"のだ。
 考えろ。考えろ考えろ考えろ! あいつらはすでに何度も自分を殺している!
 なにかがある。この炎は何かがまずい。さっさとあいつを殺してしまえ。
「どこだ!?」
 ……いない。どこだ! 見えぬ! 炎が邪魔で――まさか。
「うおおおおおおおおおっ!!」
 大音声! 矢継ぎ早に投擲されるナイフ、瓦礫、さらにはベアリング弾!
 めくらめっぽうの飛び道具か? やはり違う。声の大元は……探せぬ。炎が!
「――たどり着いたっすよ」
 背後から響いた声に、日野富子は総毛立つという言葉の意味を噛み締めた。
 背筋に電撃が走り、振り向こうとして、華奢な体を衝撃が打ち据える。
 然り。先の盾の破砕、それ自体がリンタロウの布石である。
 あえて脆く構築した盾は、すなわち燃え盛る炎の壁を生み出す。
 それこそが彼の"盾"。その身を隠すための、燃え上がる守りであり……。
「〇六三番(ナンバー・シックスティースリー)」
 ばきり。不敵な笑みとともに、噛み砕いた骨は巨獣のそれ。
 直後、床が裂けた。それほどの速度でのコンパクトな突進である。
「城をも砕く一撃、吐くほど味わわせてやるっすよォ!!」
 骨喰の呪いを以て、弾丸と化した傭兵が――災厄を、吹き飛ばした!!

成功 🔵​🔵​🔴​

ニコラ・クローディア
やーねぇ、貧乏人根性の染み付いた人はこれだから
お金は使ってナンボとはいえ、これじゃあ成金丸出しよ?

…これだけ煽れば苛立つでしょうね
さぁ、ニコラを攻撃しに来なさい
来ると判っている攻撃に備える程度、やってのけるわ!
基本はオーラ防御によるダメージ低減
火炎耐性も加えて、激痛耐性でそんな簡単には倒れないわよ?
そして、倒れずにユーベルコードの発動に持ち込めれば、魔将軍、貴方に一撃を入れる程度のことはできるわ
祖龍顕現、ニコラが獲得するのは食らった攻撃に応じた戦闘力と生命力吸収能力
防御の間の力溜めから全力でカウンター・グラップルよ

利子はお好きでしょう、日野富子?
安心なさい、熨斗紙まで付けて返してあげるわ!



●悪災討滅:挑戦者、ニコラ・クローディア
 ――ごがぁんっ!!
 轟音とともに、交通事故に遭ったかのような勢いで、襖を突き破り転がる女。
 強烈な突進(チャージ)をまともに食らった、日野富子の無様である。
「げほっ、かは……! ちく、しょう……!!」
「あら、やーねぇ、見た目までボロくなったらホントに貧乏人じゃない」
 鼻で笑うような声。血反吐を吐きながら、富子はそれを睨み返す。
 女がいた。見目麗しきドラゴニアン。表情は明らかに見下しと嘲りのそれ。
「お金は使ってナンボ。とはいえ、趣味が悪かったら成金丸出しよ?
 おまけに財が財がって喚き散らして、それじゃあ僻み根性満点よね」
 ぶちり。瞬時に沸点を超えた怒りが、富子のこめかみから血を噴き出させた。
 ニコラはその怒り狂うさまをすら鼻で笑う。ころころと鈴なる声で。
「図星だったかしら? やめなさいよ、そんな顔! ますます無様よ?」
「……死ねよ。死ねよ! 殺せ、コイツを、殺せぇええええ!!」
 怪鳥音じみた金切り声に応じ、その周囲に無数の鬼火の群れが点灯した!
 応仁の乱にて滅びた兵士どもの怨霊、形作るは獲物を射抜く火矢である!
「来たわね。切れやすい堪忍袋の緒だこと!」
 たしかに敵の攻撃は、その量・速度・正確性、どれをとっても強烈である。
 真正面から喰らえば、どれほど機敏な反射神経でも避けるのは極めて難しい。
 ただしその前提条件に、敵の冷静さを失わせる挑発があったなら話は別。
 術者の苛立ちの強さゆえに、放たれた火矢はあまりにも"鋭すぎる"のだ!
「来るとわかっている攻撃なんて――ッ!!」
 だからといって、無傷で凌げるかといえばそれは否。
 ニコラの強力なオーラ防御と火炎耐性をもってしても限度はある。
 少なからぬ矢がその守りを貫き、肌をかすめあるいは焦がし、手足を貫いた。

 ……だが、生きている。そして、立っている。健在だ。
 ならばそれでよい。もとより己ひとりで決着をつけられると思ってはいない。
「殺しそこねたわね、このニコラを! それが仇よ!!」
 ぞわり。ニコラの華奢なシルエットが――揺らいだ。
「我が龍詞は祖を言祝ぐ――さあ、利子の支払いといきましょう」
 ぞわり。重なり、そして明滅するように消えるのは黒龍の化身。暴威のかたち。
 この術式、その姿は女の真なる姿、暴君の威風堂々たるそれに似れど、
 しかして威風は劣る。善き哉。龍の爪とは、それ自体が強靭かつ凶悪なのだ!
「テメェ、死ねよ!!」
「厭ね。その殺意に憎悪、熨斗紙つけてお返しするわ! 喰らいなさいっ!!」
 床を砕きながら祖龍が奔る。繰り出された拳はまさに破壊の腕(かいな)。
 己を苛む傷の痛みすらも怒りに変えて、今……龍の力が、悪災を襲う!!

成功 🔵​🔵​🔴​

ピリカ・コルテット
ぴこーんっ!
一度位はしっかり世のお役に立ってみたいですよねっ!
桜の妖剣使い兼巫女、ここに参上ですよっ♪

大悪災さんの底無しの執念、一手間違えただけでこてんぱんにされそう……!

※事前に【属性攻撃】で周辺の電気を集め、
【全力魔法】で強化して妖刀に付与します!

『桜剣解放』を発動し動きを研ぎ澄ませ、先制の爪攻撃をやり過ごします!
避けられる所は回避しつつ、妖刀で【武器受け】して受け流す!
付与させた電撃で弾き返したりも狙っていきますよっ!

敵の攻撃を捌ききった後は、高速移動で翻弄しつつ、
桜の花弁舞う斬撃&衝撃波で反撃します!悪霊須らく退散すべしーっ!!

剣術と巫術を融合させた力、ご覧あそばせっ☆
アドリブ大歓迎!



●悪災討滅:挑戦者、ピリカ・コルテット
 実のところ、ピリカはこうした鉄火場に長じていない。
 平たく言うと、斯様な強敵に挑んだ経験が絶対的に不足しているのだ。
「――これが、底なしの執念……!」
 ゆえに"それ"を相対したとき、ピリカはこみあげる緊張を隠しきれなかった。
 手負いである。おそらくはすでに二度、目の前の敵は猛烈な打撃を受けている。
 血反吐をこぼし、髪の毛を振り乱し、ふらつくさまは弱々しく見えはする。
 ただしそれは外見の話だ。この目に見えぬ、しかれど確かな圧迫感は現実。
「……アタシの、財を……奪うんじゃねぇ……」
 ぶつぶつと何かを喚くさまは、暗闇に痴れ狂った憐れな犠牲者のようでもある。
「財、ですか……そうやって、自分の欲望のために誰かを苦しめるんですね」
 じり。と、紫電を纏う妖刀を構え、ピリカは静かに言い返す。
 その飽くなき欲望のために、民草がどれほど犠牲になったのだ。
 そして放っておけば、人々が、村が、街が――国が、飲み込まれる。
 虚だ。目の前にいるのは、ブラックホールじみた暗黒の虚無だ。
「私は……それは、認められませんっ!」
「……知るかよ。アタシの財以外はどうだっていい」
 ぞっとするようなおぞましい目で、悪鬼は見返した。
「死ぬなら勝手に死ね。アタシの耳を騒がせるぐらいならむしろ苦しんで死ね。
 アタシが一番偉いんだ。全部全部アタシのものなんだ。アタシが求めて何が悪い!!」
「――!!」
 ぶわり、と全身を打ち据えるような殺意に、慄き、退きかかる。
 これまでの日々を思い返し、腰を落とし、ピリカは……猛威に、耐えた!
「こんな私でも、一度くらいはしっかりと世のお役のために立ってみたい。
 あなたちは、違う――違います。やっぱり、あなたのそれは、認められない!」
「――だったら、オマエも、死ねぇえええええ!!」
 めきめきと音を立てて両手が変異する。そして、悪意が来た。風のように!
 迎え撃つは桜剣の担い手。まったなし、ここが鉄火場、すなわち戦場なり!

 一手間違えば、斃れる。――否、おそらくは死ぬ。
 これほどまでの修羅場は、はたして味わったことがあるだろうか?
(疾い……! それに、鋭い、なんて攻撃なの……!)
 瞬きすらも惜しみたくなるほどの、爪の猛威を前に、ピリカは退かぬ。
 横薙ぎに振るわれる爪を剣で払い、フェイントを交えたひっかきを躱す。
 身を沈めて回避した瞬間、切り裂かれた髪が一房舞って微塵と散った。
「ちょこまか動き回るな、あぁあああああっ!!」
「――このっ!」
 ギン!! ガ、ガ、ギャギ――ギンッ!!
 剣で受ける。受けられはする――培った経験と戦いがそれを可能にする。
 だが、重い! 果たして目の前の女は、本当に同じ性別の人間なのか?
 言わずもがな、否。これはオブリビオン、存在からして異なる異物であり大敵!
 打ち合うたびに、刃にまとわれた電光が火花を散らし、大廊下を照らし出す!
(けど、どこかに隙はある。――やれるっ!)
 味わってしまえば、鉄火場もつまりはこれまでの戦場と同じもの。
 つまりは、己の意気……ノリを生かしたほうが勝つということだ!
「はぁああっ!」
「く!?」
 わずかに拍子を外しての踏み込み。上手い! 電光が輝き敵の目を眩ませる!
 僅かな刹那の間隙を、ピリカは呼吸の調息と桜龍加護の招来に費やした。
 もしもそこで功を焦っていたならば、今頃その首は胴から泣き別れしていたはず!
「プリム、いくよっ♪ 私たちだって、やれるんだからっ!」
 翻弄するのはピリカの番だ。倍以上の高速移動を、爪の攻撃は追いきれぬ!
 ではどうする。視線を以て焼くか? 否、敵の踏み込みを許す。
 ならば怨霊火矢を――噫。この思索そのものが敵にとっての好機!
「悪霊、すべからく退散すべし! 巫剣一閃、ご覧あそばせっ!」
「が……ッ!?」
 斬撃一刀、狙いすました真一文字の剣閃が胴を裂いた。
 入った。重い! 斬影を追って吹きすさぶ桜花が両者を覆い隠す!
「――ほら。やっぱり、私だってやれるでしょ☆」
 茶目っ気溢れるウィンクを最後に、妖狐の姿はかき消えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

花剣・耀子
酷い虚ろね。
かたちは燃やせば灰になる。
こころの底が抜けている。
そとみだけを集めて飾って、おまえ、何のために此処に居るの。

鋭い爪は刃に似ている。
その初手、憎悪を、視認するよりも意識するよりも早く、速く。咄嗟に斬り祓いましょう。
肉を斬らせて骨を断たせて、それでもいのちが残るなら、充分よ。
ここまでは必要経費。
ねえ、好きなのでしょう、財産。

一閃した剣閃を起点に残骸剣を振るうわ。
ひとつをここのつに。ここのつの閃にここのつを。
その爪の輝きを凌駕するために、何度だって重ねましょう。
ひとつ削って渡すなんて、吝嗇なことは言わないわよ。
ぜんぶおまえにくれてやる。

――からっぽだって、そこに“在る”のなら斬れるのよ。


壥・灰色
憎いか、日野富子
子に恵まれず、生まれた息子は将になる前に死に
まるで自分を爪弾きにするかのような運命が
この世が、自分の子を将に選ばなかったこのくにが

憎いだろうな、だからお前はそこまで憤るんだろう
或いは、何のために起こっていたのかすら、もう忘れたか

天下の悪妻。いや、今は大悪災か

来い
その怒り、おれが受け止めてやる

距離を取っての十分な挑発
敵のユーベルコードの発動を確認後、その一瞬後――攻撃が自らに着弾する前に第七十二番魔術数理を発現
攻撃を食らいながら、その撃力・熱・ダメージを魔力へと変換、炉心に叩き込んで増幅
『食らいながら加速する』奇怪な前進を披露

一打限りでいい、叩き込む
その怒りとともに、骸の海に還れ



●悪災討滅:挑戦者、剣士と魔剣
 酷い虚ろ、だと思う。醜いとか無様よりも、呆れと憐憫が湧いてくる。
 森羅万象、形あるものはいずれ滅びる。炎に飲まれれば燃えて灰になる。
 億年を閲する石ですら、風雨に晒されれば削れていつか砂になるだろう。
 諸行無常とはよく言ったもので、だから現は移ろい変わっていくのだ。
 それを否定して、万物を己のものだと嘯いて、何が得られるという?
 ――何も得られぬ。在るのはただ、ぽっかりと空いた虚である。
 ましてや、それを求める飢えたこころが、その底が抜けて堕ちているなら。
 満たされるはずもない。どれほど集めて飾って、そとみを満たそうと。
(何のために此処に居るのか、問うたところで答えはないでしょうね)
 怨霊の火矢が降り注ぐ地獄の中を、泳ぐように避ける女がひとり。
 この降り注ぐ苛立ちの雨すらも、鋭く恐ろしいが空っぽの虚ろな殺意だ。
 花剣・耀子は、そんな女を憐れむ。みじめなものだ、と呆れてしまう。
 冷徹。冷淡。敵に――ましてや過去の残骸に――かける情など元よりなし。
 ただ、それでも。ああして吠えて怒り狂うさまはどうにも寒々しく。
 斬って捨てるが剣士の本懐ならばこそ、もののあはれに浸るもまた刃の道。

 憎いか、と、死人じみた無表情の少年は問うた。
 子に恵まれず、せっかく生まれた息子も兜を被る前に死に果てて。
 呪いだなんだとやっかんで、首を斬らせた報いか、育った子にも見放され。
 悪女だと、悪党だと後ろ指を刺され、そしてそのまま己は死んだ。
 その運命を、策謀巡らせ万事を尽くしてなお己を選ばなかった天命を、この"くに"を。
 はたして灰色の知るそれと、この世界における歴史がどれほど一致するか。
 その真実は、それを生きた当人にしかわからぬことであり、
 あいにくその当人こそが、誰よりも痴れ狂って怒り果てていた。
 悪妻を堕ちて大悪災に成り果てた女は、その問いかけ自体を否として怒った。
 憎悪した。それが呼び水となり、今数多の火矢が、怨念が降り注ぐ。
 いいだろう。もとよりそれが狙い。その怒りをおれが受け止めてやる。
 受け止め、撃力となし、まっすぐに貫いてその身を打ち据えてくれよう。
 そうしてきた。そうし続ける。立ちはだかる障害は森羅万象区別なく。
 まっすぐに飛びゆく魔剣に、敵を憐れむ心がないのかと言われれば、それは否。
 ……悲哀がある。怒りに怒り狂うそのざまを、見苦しいと思う心がある。
 冷血などではない。彼はいつだって邪悪に怒り、外道に憤ってきた。
 だから、砕く。燃やすのは義憤であり、滾るのは怒りであり、それが糧となる。
 炎よ、逆巻くがいい。壥・灰色という名の剣は、それすらも呑むだろう。

 間断なく降り注ぐ、砲火のごとき怨念のなかで、ふたりは示し合わせることもなく、
 しかしぴたりと重なり合ったタイミングで、肩を並べて足を止めた。
 自殺行為である。獲物を狙う火矢が四方八方から鏃を向けた。
「征くんでしょう。まっすぐに」
「応。それが、おれに出来ることだ」
 魔剣顕現――それは耀子という稀代の剣士をして、担うこと能わぬ反逆の剣。
 火が降り注ぐ。巨人の如き撃力を備えた男が、蒼雷を纏いて疾走した。
 あとに続くは嵐の如き剣の者。在りようは異なれど、奔るさまはまっすぐに。
「ソイツらを、殺せぇえっ!!」
「――お前に殺されてはやれない。おれには、まだやることがある」
 食らう。降り注ぐ火を怨念を、魔剣は喰らいて、海を割るように突き進む。
 奇怪である。だがそれが魔剣というものだ。そしてこれが"壊鍵"なのだ。
 およそ五百余。過たず獲物を貫いたはずの怨霊たちは皆食われた。
 剣士があとに続く。怜悧なる瞳は、女を見ているようで視てはいない。
 富子は何かを叫んだ。憎悪を両手に込めて爪を刃と変えて、
 怨念をも切り裂き来たるふたりを、己の手で八つ裂きにしようとした。

 ……しようと、した。"そのはずだ"。本人すらも一瞬訝しんだ。
 放たれたはずの爪撃は放たれず、その証左は鳴り響く剣の音のみ。
 打ち鳴らされた鋼の音(ね)。散らす火花は、雨に咲く紫陽花のように。
「――は」
「斬り祓うなら、あたしはそれを視る必要もない」
 すでに鞘走っていた剣士が、うっそりとした声でそう言った。
「いのち在るならば、憎悪(あなた)を祓う。あたしは"そういうもの"よ」
 ゆえにその名は、咲き誇ることからなぞらえ"花剣"とされたのだ。
 悪鬼は叫んだ。喚き散らして、現実をかきむしるように爪を振るう。
 遅い。あまりにも遅い。なぜならばすでに封じられし剣は煌めくがゆえに。
「爪(やいば)を振るって、あたしに勝てると思わないことね」
 ぎん。ぎぎん。――ぎぎぎん! ガギ、ギャギギギギギギッ!!
 苛烈! 瞬きすらも惜しみたくなるほどの爪を、瞬きの如き剣が祓う!
 虚であろうと仔細なし。在るならば、斬れる。耀子の剣は、そういうものだ。

 そして火花散らして剣華咲き誇る果て、花びらという名の血が舞う鉄火場。
 弾かれた爪=守りの間隙に、炎を己のものに変えた魔剣が到達する。
「もう十分、"財(けん)"は味わったろう。――おれの拳(けん)は一撃だ」
 それで十分。この撃力にすべてを賭して、命をも叩き込む。
 身を切り裂く爪を耀子が祓う。がら空きの胴は満開の花弁のように。
 踏み込んでの右ストレート。時間感覚が……すべてが、世界に縛られる。
 KRAAAAAASH!! 蓄積した怨念もろとも、撃力込めた拳が悪災の真中を打ち据えた!

 かたや疾く、鋭く、意思すらも超えた斬り祓う花の剣。
 かたや重く、強く、怒りをも飲み込み振るわれる魔剣。
 在りようは異なれど、目指す先はひとつ。込める意思は一つ。
 邪悪必滅。かくて、双剣は悪災に到達し、これを斬刹せしめん!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

杜鬼・クロウ
【鏡刄】
アドリブ負傷◎

金は生き抜く上で必要ではあるが、
俺にとっちゃァさほど重要じゃねェ
混沌や矛盾が生じた人生を貫く為の源…
ムルヘルベルが述べてた勇気こそ俺の道標に足りうるもの
大事なモン見失ってるお前に負ける気はしねェ

来いよ!(威厳・存在感

お飾りな大邸宅見て館主の底が知れた
挑発し剣の柄握り源次を一瞥
言葉は不要
戦場で幾度と刻まれた絆と信頼

【トリニティ・エンハンス】使用
防御力重視
剣に魔水の素宿し敵の炎を鎮火(属性攻撃・2回攻撃
源次に炎が飛んだら防御(かばう
爆風に注意し敢えて利用
富子に接近
胴狙いで剣を横にし攻撃…と思いきや目を狙う(フェイント・部位破壊

汚ェ垢まみれの欲に屈する俺達じゃねェよ
ヤれ、源次


叢雲・源次
【鏡刄】

アドリブ負傷◎

金は天下の回りものというが、私財を溜め込みただただ腐らせたの貴様は、凄惨な時代の引き金となった
世界は違えど、なるほど……この世界の貴様もさほど差はないらしい
誰かの言葉を借りるのならば「金は国の血」だそうだ。そしてその血を腐らせた貴様は国賊と等しいらしい。

日野富子、お前は何故ここにいる

これ以上は語る必要はあるまい

クロウの防御を補うようにウォールデバイスにて斥力障壁を展開
先行する相棒に追随しつつ三十式特殊戦靴、起動
荒れ狂う爆風を抜け、鋭角機動で横合いから突撃、対神太刀を振りかぶり

「散れ。」

蒼炎一刀。振り下ろすと同時にエネルギーを放出、そこにいる何もかもを吹き飛ばさんとする



●貪欲吝嗇、女怪を討て
 ……花の御所が聞いて呆れる。
 もはや屋敷中に火の手が回り、崩落は待ったなしの状況だ。
 伽藍の城は崩れ果て、それがこの戦の勝利を祝う凱歌となろう。
 豪奢な調度品も何もかもが焼き尽くされるのは相応の喪失を伴うが、
 いつだって新たな何かが始まる時は、崩壊と破壊が前触れとして起きるものだ。
 きっと、戦いのあと、此処には元通りの美しい邸宅が新しく生まれるのだろう。

「う、あ、ああ……」
 幽鬼じみた足取りで、女が燃え盛る屋敷の中を彷徨っていた。
 生きていることが不思議という有様の、ボロボロの風体の女である。
「アタシの、アタシの、財が。アタシのものなのに……」
「この期に及んでまだ寝言たァ、救えねェ寝坊助だ」
 ざん。外套を翻し、杜鬼・クロウは吐き捨てるように言った。
「俺の知る世界の歴史と異なれど、貴様が起こした大乱の粗筋は変わらぬか。
 ……だがその俗悪さ、欲深さはそれ以上だろう。国の血を腐らせた大悪災よ」
 美丈夫と肩を並べるは、叢雲・源次と名乗る堅強なる魔剣使い。
「国の血、ね。違いねェ――金ってのは、生き抜く飢えで必要なモンだ。
 だが、それ以上でもそれ以下でもねェ。大事なモンは他にある、そうだろ?」
「……是非も無し。金の欲に取り憑かれ目をくらませる、すなわちそれが陥穽よ」
 クロウ、そして源次の目には、僅かな憐憫と、それを超える義憤がある。
「日野富子、貴様はなぜここに居る」
「大事なモン見失って、そこまで傷ついてどうしてまだ在りやがる?」
 ……言葉を喪っていた女は、ぎょろりと男どもを視て、言った。
「アタシは間違っているのか」
 すがるような声。
「アタシはただ求めた。財を、地位を、アタシの働きに相応しいものを!
 けれど誰も与えちゃくれなかった! だから奪った! それの何が悪い!?」
「……だから、言ってンだろ」
 黒魔剣を構え、クロウはうっそりとした声音で言う。
「その問いかけこそが、お前が大事なモンを見失ってる証拠なのさ」
「……説いたところで分かるはずもなし。貴様は国賊として生き、そして死んだ。
 ここに在るはそんな悪妻の影法師。過去の残骸よ、お前は幾億度も誤るだろう」
 ゆえに、斬る。その意思を込めて、鋼の男が剣を鞘走らせる。
「……だったら、殺すしか、ないだろ」
 女が燃え上がらせる。
「何もかも。アタシのジャマをするものを! みんなぁあああ!!」
 それは、けして救われぬ者の悲鳴のようでもあった。

 敵と交わす言葉はあれど、ふたりの男の間に言葉は不要(いら)ず。
 超えてきた修羅場の数が、ふたりの剣士に信頼と覚悟を生んでいるゆえに。
 まずクロウが踏み出し、並ぶ源次が斥力の障壁を以て爆炎を阻む。
 KBAM――大気が燃えた。残滓がそれぞれの肌を焦がすが意に介さず。
「魔水よ来たれ! 我が剣は抜けば玉散る氷の刃、てなァ!」
 斬撃! 爆炎に先んじた剣閃が、着弾数センチ前で火花を咲かせた!
 富子はこれを、両手の爪を異形化させて迎え撃つ。そして無数の爆発裂波!
「是非も無し」
 斥力障壁を押し切ろうとする猛威に対し、さらに一歩踏み出したのは源次である。
 引火した片腕が燃え上がるが、意に介すことなくさらに一歩。
 KBAM!! 邪視火炎が、義眼を視線伝いに燃え上がらせて爆ぜさせた!
「――温いな」
 見よ。焼け焦げた眼窩から噴き上がるは、男がその身に宿す地獄の炎!
 KBAM、KBAM!! 追討の火炎は、躍りかかるようなクロウの太刀筋が四散する!
「ちゃっちィんだよ、お前の炎は! これじゃ死ンでやれねェなア!」
「ぐ――!! なんでだよ、死ねよ! 死ねよぉおおお!!」
 喚くさまは童女のよう。だがその邪気こそが世界を滅ぼすのだ。手加減無用。
 燃え盛る炎の陽炎を目くらましに、身を沈めた美丈夫がたんっ、と地を蹴る。
 外套を翻しはばたく様、空へと舞い上がる濡羽の鴉のように。
「――ダチの仇だ。その眼、もらうぜ」
 ざん――! フェイントを交えた剣閃が、邪視の源たる双眸を裂いた!
「あ……ぁああ!!」
「骸の海より来たりし者よ。真なる地獄の炎を味わわせてやる」
 振り上げし一刀、纏う蒼き炎は男の中に滾りし怒りのそれ。
「悪く思え。――そして、散るがいい」
 剣閃一条。満身の一撃は、残骸を振り払い邸宅そのものをも飲み込む。
 ごおう――!! 衝撃波と蒼炎が、御所を、地獄を……飲み込み、焦がす!!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月14日


挿絵イラスト