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エンパイアウォー⑳~金はアタシが回すもの~

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #日野富子


 ――京都、花の御所。
「金、金、アタシの金……!」
 まだ木の香りの新しい床や壁。決してけばけばしくないのに色鮮やかなきらびやかな内装と重厚な調度品。庭師が苦心して整えたであろう緑と池と飛び石の庭園。
 ただ一目で贅沢と形容できる豪華絢爛な、その邸宅の主は怒り狂っていた。
「アタシの金だってのに畜生どもが! 徳川の財の大半は、元々アタシの集めた金なんだ……!」
 ――大悪災『日野富子』。
 鴉の濡れ羽のような黒髪を波打たせ、紫炎を怨念と共に吹き上げて撫でられた天井が黒く焦げていく。
 手の中からは血が流れていた。怒りのあまり拳を握りしめ、爪が刺さってしまっているのだが構う様子もない。
「ああムカツク! ああああムカツク!」
 腹の底からの大声量はびりびりと傍にあった壺を揺らし、音を立てさせた。まるで壺が震え上がっているかのように。そして振り下ろされた拳が壺を叩き割り、ただの破片に変えてしまった。
「どいつもコイツも、アタシが殺してやる! 徳川を殺して、猟兵を殺して、もちろん信長の野郎も、ぶっ殺す!!!」

「皆の働きのお陰で大悪災『日野富子』の居場所が判明した。ここに攻め込んで日野富子を討って欲しい」
 幽暮・半月(一葉・f00901)はブラックタールの体を心なしか引き締めて説明を始めた。
 場所は京都、足利将軍家の邸宅だった場所に建てられた御所。今の時代には別の建物になっていたのだが、蘇った日野富子の莫大な資金力で新たに作ったのだ。
 そんな贅を極めた作りとだけあって、空間も有り余っている。
「戦場は庭も屋内も広い。存分に戦えるはずだ」
 建物まで含めてどこにあるものも高価で手のかかったものだが、非常時故に構ってはいられない。
「それで、日野富子と戦うにあたって非常に大切なことなのだが」
 半月が声に緊張感を孕ませた。
「強力なオブリビオンとだけあって、必ず先制攻撃を行ってくる。まずはこれをどうにか耐えなければならない。こちらの攻撃はそれからだ」
 まともに喰らったら一撃で倒されてしまう可能性がある。入念に対策を練ったほうがいいだろう。
「難しい戦いになるだろうが、お前たちなら大丈夫だろう。よろしく頼む」


赤城
 赤城と申します。
 少しお休みするつもりでいましたが日野富子さんが美しすぎたのでうっかり参加してしまいました(シナリオを出す理由が概ねこれ)
 戦争シナリオなので厳しめ判定になります。以下の注意文をご一読ください。

 !=============================!
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 !====================!
 大悪災『日野富子』は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼女を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
 !====================!

 それではプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『大悪災『日野富子』』

POW   :    アタシの前に立つんじゃねぇ!
【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    アタシのジャマをするな!
自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    誰かアイツをぶっ殺せよ!
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
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「――あァん?」
 日野富子はぐるりと首を回し、瞳孔の開き切った目で猟兵たちを眺めた。
「ははぁ、お前たちが猟兵だね? アタシの邪魔をよく邪魔してくれたね……!」
 元より怒りに満ちていた彼女に戦わないなどという選択肢は有り得ない。
 そして同じく、猟兵たちにも。
鈴木・志乃
※人格名『昨夜』で戦闘
憎悪、怨念、どちらも志乃の得手とする相手ですね
けれど相手は強大
……それでも、やるしかありません

こちらのUCを発動するまで、とにかく時間を稼ぎましょう
【第六感】で攻撃を【見切り】つつ
【祈り、破魔、呪詛耐性】を籠めた【オーラ防御と歌唱の衝撃波】を響かせ
身の守りと攻撃を一度に行います
火矢であっても怨霊なら、効くはず……っ

可能な限りの【早業】でUC発動
志乃の浄化の力と私の光の鎖で行きます
【祈り、破魔】も籠めて周囲の全てを強制浄化

心願成就の神子
昨夜と志乃、参ります

【祈り、破魔】を籠めた光の鎖で敵攻撃を【早業武器受けからのカウンターなぎ払い】
【念動力、ロープワーク】で縛り上げましょう



 いの一番で憤怒の眼差しに射抜かれたのは白髪赤目の女性であった。
 肉体に付けられた名は鈴木・志乃(生命と意志の守護者達・f12101)。そして今、日野富子と相対している人格の名前は『昨夜』。
「ここはアタシの屋敷だ、勝手に上がり込みやがって!」
 日野富子が苛立ちを表すように足を強く踏み鳴らす、紫の炎が合わせるように揺らいで生まれた隙間。
 そこから塵が集まる様にして現れたのは禍々しく燃える火矢の怨霊。それも手がいくつあっても到底足りない数が、召喚者が乱雑に腕を振っただけなのに正確に『昨夜』へ殺到した。
「アイツを――ぶっ殺せ!」
 顔も声も動きも殺意と憎悪に満ちていた。ここに覚悟のない者がいたらこの空気だけで気を失うだろう。
 こういった相手と戦うのは本来『志乃』の方が得意である。まして日野富子という大物であれば少々荷が重い。
「……それでも、やるしかありません」
 『昨夜』は負けじと睨み返した。
「心願成就の神子。昨夜と志乃、参ります」
 手にした光の鎖が明るさを増したようであった。
 目線は静かに火矢の位置を把握し、研ぎ澄ました勘にどこに当たるかを問いかけた。そしてすう、と胸いっぱいに息を吸うと――歌う。力強く、衝撃波をも生み出すように。
 音量だけなら日野富子にも引けを取らない。しかしひたすらに鋭く叩きつけるような日野富子の声とは違う、包み込むような柔らかさを持ち合わせた声であった。
 呪詛を打ち払う力を籠められた歌は火矢の怨霊を叩き落とし、薙ぎ払う。
 数々の戦いで鍛えられた力は、しかし長くは持たないだろう。故に。
 振り撒かれる火の粉はそのままだ。そんなことに構うよりも早く己のユーベルコードを顕現させた。
『私の親友は光そのもの。その力で全てを薙ぎ祓う』
 白金の輝きが薄いヴェールのように『昨夜』を覆い、腕を動かすと生き物のように光の鎖が伸びた。未だ『昨夜』へ向かっていた火矢を弾き飛ばして日野富子へと向かう。
 日野富子は避けることはしなかった。正面から掴み取り、逆に振り回そうとでもしたのだろう。
 掴み取ることには成功した。だがその位置は少し、深かった。懐に入り込んだ鎖が彼女の腕に巻き付いたのだ。
「この程度の攻撃で……この程度の攻撃しかできないのにアタシに楯突いたってのか!」
 煮え滾った目つきで見下ろし、ぎりぎりと均衡を保っていたが――日野富子は捉えられた腕を気合の叫びと共に振り払った。
 言葉とは裏腹に、白い腕にくっきりと痕を残して。

成功 🔵​🔵​🔴​

高柳・源三郎
「こんな怖い顔をしてると美人さんが台無しじゃぞ」と着ぐるみを着て登場します。
敵のPOWの攻撃には【第六感】で視線を察知して【早着替え】で着ぐるみを脱ぎ捨てます。
上手くいけば着ぐるみだけが燃えるじゃろう。
着ぐるみを脱ぎ捨てた後は【目立たない】【だまし討ち】で敵の死角からUC絶対王政酒宴を使い「嫌な事は忘れてわしと一緒に酒を飲もう」と宣言します。
酒を飲まなければダメージ、酒を飲んだら酒に酔ってしまって本調子で無くなるはずじゃから、この後続く猟兵に有利に働くかもしれん。



「そんな怖い顔をしてると美人さんが台無しじゃぞ」
 体勢を立て直した日野富子の視界に入ったのは高柳・源三郎(流浪の酔いどれおやじ、たぬき人形と共に・f15710)であった。
 飄々とした声や可愛らしい着ぐるみ姿は、もっと別の相手であれば気分を和らげたかもしれない。だが日野富子には神経を逆撫でするものでしかなかったようだ。
「ああ? そんなことが気になるならさっさとくたばっちまいな!」
 視線を矢のように例えることはよくあることだ。だが今込められた憎悪は槍と言っても過言ではないだろう。
 その槍に射抜かれた着ぐるみが紫に燃え上がった。怒りを表現するように爆発する炎は畳も柱も燃やし出すが、舌打ちと共に鎮火された。自分の屋敷だと思い出したらしい。
 当然ながら着ぐるみは鎮火されなかった。憐れ、中にいる源三郎は炎に包まれお亡くなりに――
「なあ、嫌な事は忘れてわしと一緒に酒を飲もう」
 ――ならなかった。逆立った黒髪に投げられた盃が掠めた。
 幾度となく繰り返した早着替え。旅芸人の彼には必須ともいえるスキルが今、着ぐるみを身代わりにして脱出するという形で輝いていた。
 日野富子の死角から首を出し、源三郎は盃を片手に選択を迫った。
『この源三郎様の言う事が聞けんのか、ぁあ!?』
 ユーベルコード絶対王政酒宴。宣言したルールを破ればダメージを与える。今回のルールは『嫌な事は忘れてわしと一緒に酒を飲もう』。
 日野富子とてこれが罠であると既に直感していた。だからこそ即座にもう一度燃やすことはできない。 
 顔の筋肉をぴくぴくと痙攣させ、日野富子は――盃をひったくると力一杯床に叩きつけた。
「オマエの言う事なんざ誰が聞くか!」
 罠だと分かっていても、彼女は矜持と己の怒りを取った。
 木端微塵になった盃の破片が全て畳に落ちるよりも早く、日野富子の表情が歪んだ。外見からでは分からない、しかし体の内部に確かに傷を付けたのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

コトト・スターチス
ふえぇ、とってもこわい顔ですが……こわがらずにがんばりますっ

怨霊は自動で対象をねらうはず
なのでぼくは【ハッキング】と【残像】の技能を応用して「ぼくと同じ姿で同じ魔力を発し、怨霊をまどわすオトリ」を魔力でつくってばらまきますっ!
本体のぼくをねらう数がへれば、怨霊の動きを【見切り】、被弾をおさえられるはずですっ
いずれ対策されてしまうかもですが、それまでには反撃のチャンスをつかんでみせます!
敵の行動パターンを【情報収集】して、かわしきれない怨霊は『ねこきゅーと』のしろにゃんさんでふせぎ、ここぞという時にくろにゃんさんの魔弾を敵の死角からねらいうちます!
「おかねのムダづかいはダメゼッタイ、ですよっ!」


紗我楽・万鬼
虫の居所悪そうですねぇ
往生際悪いですよ別嬪さん
彼の世に金は要りませんから、執着もイライラからも解放されますよ!
あっしですか?苛立ち何てとんでもない!
愉しいですよ何処までも!
てな訳で
あっしは火の矢怨霊の追跡範囲外ですね

まぁ対処はしますよ
禍槍片手に突き進み、千破夜を呼べば突然あっしが大炎上!
心配御無用御犬様の火が焼くのは敵対者のみ
来る火矢を逆に燃やし返してやりますよ
まだ来るってなら火矢の影に片っ端から取り憑いて貰いやしょ
火が飛び交うなら影も有り放題ですもんね

矢を無力化したらさぁお前さんだ
日野のお嬢さんにも影ができてますね
残念ですが既に御犬様が憑いてますよ
動けぬ体を燃え盛る槍で貫いて差し上げますよ!


シホ・イオア
WIZ

綺麗な人だよね。
聖痕に伝わるこの痛みは何だろう?
お金の魔力に目を曇らせてしまってるのかな。
せめて、その邪念から解放されますように。

ロイヤルミストガードの霞で残像を作り出し空中戦の回避力を上げて
属性攻撃・破魔・祈りを付与した剣と光輪で火矢を迎撃。
空飛ぶ謎のハートには上記に加えて精神攻撃・誘導弾も加えて
日野富子本体を狙わせる。

富子ちゃんに隙ができたら
全力のハート・ロンドでアタック!
数発おとりに使いつつ
全力魔法・高速詠唱・属性攻撃・破魔・祈り・誘導弾・精神攻撃で
邪念を断つ!
戦争以外でお金を生かす使い方をする富子ちゃんの姿が見たかったな。

連携アドリブ歓迎



 日野富子は濡れた畳を穴でも開ける勢いで踏みつけた。その様子にコトト・スターチス(バーチャルネット辻ヒーラー・f04869)はぎゅっと両の拳を合わせた。
「ふえぇ、とってもこわい顔をしているのです……」
「虫の居所悪そうですねぇ」
 小さなコトトと対照的に、大柄な紗我楽・万鬼(楽園乃鬼・f18596)はどこか愉しげであった。ぎろりと日野富子に睨みつけられてもそれは変わらない。
「でも、綺麗な人だよね」
 コトトよりも年上でありながら、フェアリー故に更に小さいシホ・イオア(フェアリーの聖者・f04634)は表情を曇らせた。
「お金の魔力に目を曇らせてしまってるのかな」
 いくら美しい者であっても表情が恐ろしければ鬼にも等しい。
 シホは聖痕から伝わる痛みに目を伏せた。具体的なことは分からなくても、何かあることが分かれば十分だ。
 そんなシホに苛立ちを募らせた日野富子は、吠えた。絶対の殺意を伴わせて。
「金はアタシのもんだ!」
「往生際悪いですよ別嬪さん、彼の世に金は要りませんから、執着もイライラからも解放されますよ!」
「アタシはこれからずっとこっちにいるんだよ! オマエらも、信長も皆ぶっ殺してさあ!」
 万鬼のからかうような言葉に一寸たりとも同意する様子はない。天井を舐めるほど燃え立つ紫炎の間から火矢が飛ぶ。オレンジの軌跡を描くそれに猟兵たちはそれぞれ構えた。
「ぼく、こわがらずにがんばりますっ」
 コトトの姿がぶれたかと思うと一つ二つと増え、いくつもの魔力持つ残像として火矢を惑わした。
 シホが滑らかな輝きを持つ鞘を構えると、霞がシホの姿を映しながら生み出される。
 魔力で作られたオトリ、霧に映された残像。火矢が分散して本体に向かう数を減らした。
「ちッ、残像が……!」
 ぎょろぎょろと眼球を動かし、的が大きい方をと判断したのか。コトトへと矢が集中的に降り注き、囮をすり抜けた火矢がコトトに迫る。
「あうぅ……」
「死ねえええ!」
 勝ち誇るでもなく激情に任せた日野富子の叫び、そして襲い来る熱の予感。コトトは口を開いてユーベルコードを唱えようとしたが間に合うかどうか。
「大丈夫だよ!」
 だが、訪れたのはばしっと木が叩かれる音。シホがオーバー・ザ・レインボーを振るって切り捨てたのだ。安心させるようにコトトに笑いかけ、そしてもう一本飛んできた矢を、今度は慌ててルミナス・リングで弾く。ぱあっとコトトは顔を輝かせた。
「ありがとです!」
「痴れ者どもめ、本体はそこか!」
 髪を振り乱して日野富子は二人を見据え、次々と新たな怨霊が生み出されていく。
 二人と日野富子の間に割って入ったのは万鬼だ。
『此れより語るは、鬼と共存する地獄を宿した番犬の御噺』
 ただ槍と呼ぶには禍々しいソレを手にした万鬼の体をごう、と炎が包み込んだ。勢いは紫炎を立ち上らせる日野富子にも負けないほど。
「ああやお嬢さん方、心配ありゃしません。これはあっしの千破夜の仕業」
 滔々と万鬼は語る。傍に付き従う――というより並び立つようにして現れたのは影のように黒い大型犬、その霊体。千破夜がくるりと振り返って小さく頷くと、目を瞠っていた少女二人はほっと一安心だ。
 その間にも飛んできた火矢は万鬼の炎に負けて燃え尽きていく。
『くろにゃんさん、しろにゃんさん、お願いしますっ!』
 その隙にとコトトの声が響いた。白猫型と黒猫型のドローンが呼び出され、白猫型のドローンが防壁を展開した。
 さらに生まれた時間に、The Key to My Heart――そうシホに名付けられたハートが日野富子を惑わすように周囲を飛び、彼女の開き切った瞳孔に映された。不愉快だと言わんばかりに、人の者とは思えない威嚇の咆哮が上げられた。
 放たれたビームを日野富子は避ける。だが数歩歩行ったところで何かにつんのめる様に動きが止まった。
 ばっと足元へ目を向けると、千破夜が前足で日野富子の影を抑えていた。おもちゃでも押さえているようだが、実際には憑りつき影の持ち主の動きまでもを抑えている。
 わなわなとした震えは前兆であり、そして噴火は早かった。
「この――犬如きがッ!」
 裾をたくし上げて千破夜を蹴り飛ばした。はしたないだとか野蛮だとか止める、お供の者はいない。
 彼女の動きが止まった隙にと、足音もなく近づいていた万鬼も流石にそれには気を取られかけ、だが攻撃は止めない。踏み込みは大きく、ブレは最小に火槍を突き出した。
 黒い煙が上がり、万鬼はわずかに目を眇めた。刃は命中したが、袖を燃やし腕に僅かな傷を負わせるに留まったようだ。
「こりゃ残念」
 万鬼を追撃しようと前へ突進した日野富子の、その脇から飛び込んできたのは深紅の炎だ。
『輝石解放、ルビー! 愛の炎よ、優雅に舞い踊れ!』
 シホの火球だ。激しさよりも穏やかさを感じさせる、愛から生まれたもの。
 狙われた方はばっと袖を振って消し飛ばそうとしたが、先程の残像と同じく囮。死角から飛び込んだ炎が肩を焼いた。表情が一層烈しいものになる。
 そんな彼女にシホは呼びかけた。
「お金を生かすには、戦争以外にもあるんだよ!」
「金はアタシのところで死ぬもんだ! オマエらもな!」
 聖者の愛の炎すら、大悪災の金銭への執着は燃やしきれないらしい。日野富子は自ら紫炎の中に手を突っ込み、火矢を掴み出すとシホに向かって投げつけた。
 火矢を火球が包み込み、シホは胸を痛めながら一歩引いた。彼女の邪念は一体どうしたら祓えるのか……。
 そんなシホの鼓膜を少女の声が震わせた。コトトのものだ。
「わんこさんのかたきです!」
 日野富子が視線を向けた時にはもう遅い。黒猫型ドローンは水属性の魔弾を放ち、紫の炎の中へ飛び込んでいく。そしてその背後からはシホの火球も。
「それと……おかねのムダづかいはダメゼッタイ、ですよっ!」

 それでも大悪災、日野富子は立ち上がった。
「どいつも、こいつも……!」
 血に塗れ、脂汗を飛ばしながら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

才堂・紅葉
【芋煮艇】にて
「他人を見てる気がしなくて、やり辛いわね」
少しばかし頭痛を堪えながら六尺棒を構えて中衛に立つ。
防御に向き、三節のギミックでリーチを更に伸ばせる武器だ。
前衛越しに飛んでくる爪を【情報収集、見切り、戦闘知識、野生の勘】で捌いて凌ぐ。
「どう言う勢いよこれ!?」
受けごと吹き飛ばされそうな勢いに焦りつつ、後衛に爪が届かないように【気合、拠点防御】だ。
受身は不味いので【怪力、二回攻撃、メカニック】で延ばした棒で富子を攻撃し、防御にも意識をむかせる。

魅夜さんのUCに合せ【忍び足、グラップル】の歩法で間合いを詰めUC。
重力詠唱弾による【属性攻撃】で拘束/【マヒ攻撃】と【吹き飛ばし】を狙う。


ルエリラ・ルエラ
【芋煮艇】で出撃
そういえば幽霊って本当に足がないのかな?確かめよう。

初手さえやり過ごせば勝機は十分。
攻撃をしてきたらハロと協力して前面に出て〈私の戦闘服〉に魔力を込めて障壁を展開。『オーラ防御』と合わせて防御力を上げて〈純金のゴボウ〉と〈ハンティングナイフ〉を構えて『武器受け』しながら『第六感』と『見切り』でやり過ごすよ。
敵の連撃が終わりかけたら、爪攻撃を受け流しつつ攻撃の衝撃を利用して後方まで一気に後退。勝機はそこかな。そのタイミングで、魅夜のUCが上手く決まれば最高だね。皆で一気に畳みかけよう。私は全力を込めた一撃。【アインス】を叩き込むよ。
幽霊だろうが神様だろうが私に貫けない物はないよ。


黒城・魅夜
【芋煮艇】で出撃。

ハロさんとルエリラさんのガード、そしてヒロコさんの迎撃に合わせ、私も『早業』『なぎ払い』『ロープワーク』『範囲攻撃』で鎖の結界を張り巡らせ、爪を防御しながら、この身を斬り裂いて鮮血の霧を迸らせましょう。

攻撃は『激痛耐性』『覚悟』で耐え、その傷でさらに血の霧を深くします。
あなたの攻撃の条件は『爪が輝いている間』。
我が血の霧によって輝きが失われれば、能力は発動しませんね。

同時に、この霧はあなたの五感を低下させ、ルエリラさんとヒロコさんの攻撃を命中へと導くでしょう。

さらにこの霧は攻撃をも兼ねます。その体内を引き裂く鎖の雨として。
紅葉さんと共に、とどめを刺させてもらいましょう。


リネットヒロコ・マギアウィゼルーク
【芋煮艇】で出撃

◆対先制
先制攻撃はアイテム「スケープシープちゃん」と
防具の「ホワイトローブ(耐刃仕様)」で凌ぎます。

◆戦闘
複製魔法円多重展開術式を使用
「機導工具・ナナツール」「バリアブル・バレット・バズーカ」の2種を各×20ずつくらいに増殖させ、
爪の脅威がある間は機導工具・ナナツールのドリル・カッター・ニッパー・ハンマーで襲いくる爪を解体。
自分、味方への被害を防ぎます。

防御と並行して富子を囲むように魔法円を配置、バズーカを増殖、展開。
魔法攻撃“まじかる・冷凍光線”を一斉照射。
ダメージを付与+動きを封じてトドメを援護。

爪封じの作戦が成功したら工具を全てバズーカに変更、
冷凍光線の威力を高めます。


ハロ・シエラ
【芋煮艇】で。
まずはとにかく爪を捌く事に集中します。
ルエリラさんと一緒に前衛へ。
【第六感】で攻撃のタイミングを【見切り】、【武器受け】で魅夜さんを【かばう】事にします。
可能であれば指を【部位破壊】し【武器落とし】も狙っていきます。
魅夜さんのユーベルコードによって爪の輝きが失われれば反撃のチャンスとなるでしょう。
そこでユーベルコードに【ジャンプ】を組み合わせ、下から斬り上げてそのまま天井まで跳びます。
博子さんのミサイルやルエリラさんの射撃に巻き込まれないよう【ロープワーク】で天井に張り付き、最後まで敵から目を離しません。
何かしようとしたらレイピアを【投擲】して邪魔してやりましょう。



 満身創痍の日野富子の前に立ったのは【芋煮艇】の面々だ。
「アタシの金だ……横取りして邪魔までしやがって……!」
「他人を見てる気がしなくて、やり辛いわね」
 才堂・紅葉(お嬢・f08859)は額を揉んだ。紅葉自身、金銭に対する執着は中々のものとという自負がある。
「あんなにひどくないと思いますよ~?」
 ローブを軽く整えながら、リネットヒロコ・マギアウィゼルーク(【本名】マギア=ウィゼルーク・リネット・博子・f01528)がぽやぽやな口調でフォローした。
「お金がいくらあっても芋煮が無いんじゃね」
「どうしてそこまでお金に拘るんでしょう……」
 最前で武器を構えているのはルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)とハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)だ。最年少のハロは緊張した面持ちで日野富子を見据えていた。
『鮮血の屍衣を纏いし呪いの鋼、喰らい尽くせ汚濁の魂』
 黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は詠唱と共に、手にした血浴みの女王で柔らかい腕の肉を裂いた。ぼたぼたと流れ落ちる鮮血は床を染める前に霧となって散っていく。
「ゴチャゴチャ喋ってんじゃない! アタシの……アタシのジャマをするな!」
 ぼろぼろになっても戦うのは金銭への執着故に。良く研がれた爪が伸び、布陣した猟兵たちに迫った。
 風を切る音と共に狙われたのはハロ。見よう見まねで猟兵の戦い方を真似ているハロの振る舞いに与しやすいと思われたのかもしれない。
 気迫のせいか、紫炎のせいか。一回りも二回りも大きく見える日野富子を前にして――それでもハロも立派な猟兵である。タガーのサーペントベインを握りしめ、大悪災の爪を受け流した。指を狙ったが日野富子の動きが速すぎる。
 指切りから逃れた日野富子は次のターゲットを視線で射抜いた。青いポニーテールのルエリラに、斬るというより突き刺すような動きで爪という凶器が襲い掛かる。
 それを遮ったのは純金のゴボウと飾り気の無いハンティングナイフ、そしてオーラ防御を纏わせた制服であり戦闘服であった。幾重にも築かれた強固な防壁に爪が刺さり、だが貫通は防ぐことができた。
 指を引き抜いた勢いそのまま、魅夜の元へと飛び込む。日野富子と目が合った時、そこが噴火口のように思えた。
 魅夜もまた迎撃の準備をしていた。鮮血の霧から鎖を生み、結界のように張り巡らせるが――その隙間を日野富子は縫った。
「ぐうっ……!」
 魅夜は呻いた。だが崩れ落ちたり後退したりなどしない。唇を噛み、覚悟を滲ませて立つ。更に流れ出た血が濃度を上げて日野富子に纏わりつき出した。
「どう言う勢いよこれ!?」
 次に狙われた紅葉が叫んだ。三節の六尺棒で手の甲を叩き、それでも追撃が飛んで来るのだ。
 そこにのんびりとした声が割り込んだ。
「おおっと、これ以上はさせませんよ。『マジカル・セルクル・レプリエイション! でろでろアイテム~!』」
 リネットヒロコが杖でも振る様に腕を振った。機導工具・ナナツールがくるくると回転しながら増殖し、持ち主の手の中に収まると使用方法に則って存在意義を発揮し始めた。
 ドリルにカッターにニッパーにハンマー、そんな道具たちがバキバキと爪を圧し折る。爪切りなどという可愛らしいものではないが、実際美容のための爪切りではないのだから仕方ない。
「よくもアタシの爪を!」
 初めて日野富子が金以外に怒りを見せた瞬間でもあった。
 再び攻撃しようと手を振り上げ――違和感を覚えたようだった。おかしい、爪の輝きが鈍っている。
「我が血の霧によって輝きが失われれば、能力は発動しませんね」
 魅夜の仕掛けた罠であった。彼女が自身を傷つけ、日野富子に傷つけられて流れた血は霧となってその爪を普通の爪に成り下がらせた。
「さっさと終わらせましょう!」
 隙を見てとってハロは叫んだ。魅夜のユーベルコードは寿命を削るものだ、あまり時間をかけるわけにもいかない。
 懐に飛び込んでサーペントベインを振り上げた。下から上へ、鍛えたジャンプ力で天井まで高々と飛び上がる勢いだ。日野富子の口の端に縦線が赤く入り、ハロが天井に触れた時にはたらりと流れを作っていた。
「この……ッ!」
 日野富子はロープワークで天井にしがみつくハロを睨みつけた。だが降りてこない意味を考えるべきであった。
「さっき複製したのはナナツールだけじゃないんですよ~?」
 バリアブル・バレット・バズーカ――通称なんでもバズーカをずらりと囲い込むように並べ、
「まじかる・冷凍光線です~」
 白青の光が日野富子を包んだ。紫の炎を消すには至らなかったが勢いは明らかに落ちている。
「そういえば幽霊って本当に足がないのかな?」
 すすすっと後退したルエリラのポニーテールが揺れる。目線は日野富子の足元に、己の手元には魔力の矢を。
「幽霊だろうが神様だろうが私に貫けない物はないよ――『貫かせてもらうね』」
 びいん、と矢羽が震え、日野富子の足の甲を床に縫い付けていた。
 ここで止まっていては敗北だと彼女も分かっているのだろう、傷にもなりふり構わず進もうとするが鈍った動きはこの場面では致命的でしかなかった。
 頭上からレイピアのリトルフォックスが投擲される。ごぼりと口から血が溢れ、尚あがくが――
「この霧は攻撃をも兼ねます――その体内を引き裂く鎖の雨として」
 冷淡に告げたのは魅夜。寿命を犠牲にした霧は、ただただ幻惑のためだけに使っているわけではない。びきびきと骨と肉の鳴る音がした。
 だらだらと布地を紅に染め上げながらも、日野富子は壊れかけた人形みたいな動きで猟兵たちを視線で打ち据えようとした。
 だがもう遅い。ミリタリージャケットを纏った少女が眼前にいて、その背後の猟兵たちの姿は見えない。
『ったく……こんな古臭い武器は好みじゃないんだけどね』
 瞬き一つの間に銃声が一つ、リボルバーから発射された弾丸は六つ、日野富子の顔面に開いた穴は一つ。
 果たして大悪災『日野富子』はそのことを認識できたのだろうか。
「アタシの、金……は、ァ…………」
 最後の最後まで、何一つぶれることなくその体は崩れ落ち、紫の炎と共に溶けるように消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月10日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト