エンパイアウォー⑤~ 離散する2つの極
「みなさん、サムライエンパイアで大きな動きがありました」
猟兵達の拠点「グリモアベース」
そこに集まった猟兵たちに、平・胸盛(三枚重ね・f18162)は硬い表情で告げた。
オブリビオン・フォーミュラ『織田信長』と、信長に従う第六天魔軍将たちがサムライエンパイアを国盗りしようと一大攻勢をかけてきたのだ。
対する徳川幕府も諸藩と力を合わせて10万の軍勢を結集し、この野望を打ち砕こうとしているのだが。
「戦争とは軍勢同士の合戦だけではありません。様々な重大な要素があります。作戦、進軍、統率、そして兵站」
へいたん、という言葉を口にする時も胸盛は言いよどんだりしない。自体はそれだけ切迫している。
魔軍将の一人、大悪災『日野富子』が有り余る財力にものを言わせて、サムライエンパイア中の兵糧など補給物資を買い占めているのだ。そのせいで需要が爆発した物資の値段は天井知らずに跳ね上がり、幕府軍の編成を苦しめている。このままでは必要な数の軍勢を動員できないのは明らかだ。
「そこで、お金にはお金です。伝説の徳川埋蔵金を掘り当てて、マネーパワーでオブリビオンの妨害を打ち破ってください」
神君家康公が有事のために残しておいた徳川埋蔵金。その一つが隠されている場所の地図を胸盛は猟兵に手渡す。
ある山の洞窟に隠された魔法の部屋に埋蔵金はある。
猟兵ならばたどり着くことは容易いだろう。しかしそれだけでは埋蔵金は手に入らない。
「埋蔵金を手にするためには、示された謎を解いて、受け止めに相応しい者であると示さないといけません」
そう言って、胸盛は一枚のメモを取り出した。
陽即是有。
陰即是無。
ならば『陽陰陰陽陰陰』は如何。
「この謎を解くことで、埋蔵金を受け継ぐことができます。でもそれ以外の方法、力ずくや別の魔術的な方法で無理やり手に入れようとすると、おそらく不幸なことになると思います」
胸盛は猟兵たちに頭を下げた。
「予知とは言えない曖昧な感じですが、おそらく謎には数字が関係していると思います。
こんな情報だけで送り出すのは心苦しいです。
でも、どうか世界を救ってください」
斑鴉
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
お世話になっております。斑鴉です。
プレイングには必ず『謎の答え』を書いてください。
正解者多数の場合はキャパシティの問題でプレイングを採用しきれないかもしれません。ご容赦ください。
みなさまの回答をお待ちしております。
第1章 冒険
『神君家康公の謎かけ』
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POW : 総当たりなど、力任せの方法で謎の答えを出して、埋蔵金を手に入れます。
SPD : 素早く謎の答えを導き出し、埋蔵金を手に入れます。
WIZ : 明晰な頭脳や、知性の閃きで、謎の答えを導き出して、埋蔵金を手に入れます。
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亜儀流野・珠
織田信長で戦争で徳川埋蔵金か!濃いな本当に!
ともかく今は目の前の、文字通り問題を何とかしないとな。
有と無か…もし数字が関係しているならば。
有と無で表すもの…二進数か?0、1、10、11、100…と数えていくアレだ。
有無無有無無…有を1、無を0とすれば…100100。
つまり36!どうだ?
埋蔵金が運ぶの大変な量だったら「離世一服」の空間に持ち込んで運び出そう!
部屋は多少汚れるが…そんなこと気にしてる場合ではないからな!
コノハ・タツガミ
肩に乗って見つめているミズチの頭を撫でながら)陽が有る、陰が無いね。有ると無いと二値しか無いといえば2進数かね
となると、と。メモの文字の下に数字を書いていく
『陽陰陰陽陰陰』
『100100』
このままの値で良いかは判断しかねるところだから、よくある10進数に置き換えるとするかね、これで36が答えじゃないかね?
宝が見つかったら【指定UC】を使って、神々の分霊を使い埋蔵金を持ち出すとするさね
大きく欠伸をして)これで少しは矢銭が補えるのかね、その分却って人死が増える可能性もあるのだろうけどね
パルピ・ペルポル
うーん。シンプルイズベストな問いかけねぇ。
でもお宝のためには頑張らないとね。私の懐には入らないけど。
数字が関係しているというのなら、まずは数字に置き換えてみましょうか。
有は1、無は0に置き換えるとして。
そうすると『陽陰陰陽陰陰』は『100100』になるわね。
うーん、これがこのまま答えとは思えないわね。
これを二進数と見るなら、十進数に直すと『36』になるけれど。これが答えかしら?
埋蔵金見つけたら雨紡ぎの風糸と火事場のなんとやらで洞窟の入り口ぐらいまでならなんとか運べるかしら。
さすがに着服はしないわよ。必要経費なんだし。
魔法の扉はあっさり開いた。
当代の将軍家光公の居城から若者の健脚で7日、猟兵ならば転移と合わせて数刻とかからずたどり着けるある山の洞窟の奥。
薄暗いごつごつとした岩肌の扉が開くと、場違いに質素で清潔な和室が眼前に広がり、そのさらに先には大きな蔵の入り口のような扉が固く錠前に閉ざされている。
錠前といってもよくある南京錠ではなく、0から9までの数字が碁盤のように並ぶこの世界の住人には見慣れないものだ。
迷い家と呼ばれる伝承の一端は、あるいはここから始まっているのかもしれない。
「織田信長で戦争で徳川埋蔵金か! 濃いな本当に!」
真っ先に和室に足を踏み入れたのは銀髪の妖狐、亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)だ。別の世界の歴史と似たような道をたどってきたサムライエンパイアだけに、違う部分が強く印象に残るのだろう。とりわけこの混沌とした決戦ならばなおさら。
錠前の上に、転移前に説明された『謎』とまったくおなじものが刻まれている。
すなわち、
陽即是有。
陰即是無。
ならば『陽陰陰陽陰陰』は如何。
「うーん。シンプルイズベストな問いかけねぇ」
そう呟くのは身長24cmのフェアリー、パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)
お宝という言葉に下町育ちの血が騒ぐのか、しきりに羽をはばたかせている。もちろん彼女も情勢は理解している。懐に少しちょろまかすつもりなどない。
「陽が有る、陰が無いね」
肩に乗る有翼の蛇を頭をなでてから、コノハ・タツガミ(放蕩亜神・f17939)は受け取っていたメモを取り出す。
「有ると無いと二値しか無いといえば2進数かね」
その言葉に、珠とパルピも同意を返す。
有、つまり陽を1に。
無、つまり陰を0に。
コノハはメモに変換した数字を書いていく。
すなわち『100100』
「うーん、これがこのまま答えとは思えないわね」
パルピの声に、二人がうなずく。
「これを二進数と見るなら、十進数に直すと……」
「つまり36! どうだ?」
「36が答えじゃないかね?」
「36になったけど。これが答えかしら?」
指折り換算していた三人が同時に自らの答えを口にした。
お互いに顔を見合わせる。みな異存はない。
近くにいた珠が慎重に数字の刻まれたボタンを順に押し込む。
回答には自信がある。しかし万が一なにか見落としでもあれば、それだけ世界は破滅へと直に近づく。
誰かが飲み込んだ唾液の音に応えるように。
蔵を閉ざしていた魔力が消えて、ゆっくりと扉が開いていった。
36。奇しくも骸の海に浮かぶ世界と同じ数だが、神君家康公がどのような知識を持って、どのような意図でこの数字を鍵としたのか。答えはもはや骸の海に沈んでいることだろう。
開かれた蔵の中にあったのは、無数の金銀や宝玉。どれも肌身離さず持ち歩けるサイズで、中には細かい彫刻を施された芸術性の高いものもある。
戦乱に巻き込まれ、取るものもとりあえず住居を離れなければいけないような災いにこそ必要な品だ。この埋蔵金が必要とされる時には、きっと必要になる。だからこそ高く売れる。神君の先見の明だろう。
「これで少しは矢銭が補えるのかね、その分却って人死が増える可能性もあるのだろうけどね」
コノハがそう呟くのは、母親が生と死を司る神と言われているためか。自然と生死に関しては敏感になるのかもしれない。
持ち帰ったこの埋蔵金で、きっと多くの死人がでるだろう。戦って、他の多くの命を守るために死ぬ。未来の多くの命を守るために死ぬ。それもこの世界の住人たちの生き方なのだろう。
3人はそれぞれの方法で埋蔵金を運び出し、帰還の途についた。
サムライエンパイアの運命を決める戦は、まだ始まったばかりだ。
大成功
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