エンパイアウォー④~その魂を、血を捧げよ
●命の権利も既に無く
――その赤子は震えていた。
自らは生まれ落ち、祝福されるべき命だった筈なのに。
今や、自らの命は嘆きを持って成立する破滅の歯車でしかないのだと。
「――まぁ、そこまで智慧が回るとは思えませんけれど」
酷薄に眼の前の姫君は嘲笑う。なにせ、この仔を殺し、この樹海に祈りを捧げれば――
「素晴らしい『災禍』を見せて頂ける、と言うんですもの。高鳴りますわ」
まるでそれを合図とせんとばかりに、姫君の家臣達は仔を蹂躙する。
泣くことも、悲鳴を上げることも、せめて親の許で眠りたいと願うことも出来ずに――
……血が1つ、大地に染み渡る。
●仔竜の死が全てを齎すのか
グリモアベースにやってきた猟兵達を迎えたのは仔竜の唸り声だった。
珍妙な鯛焼きのような『彼』を知っているものには腹が空いたのかとか勘違いされたが、どうやらそうではないらしい――
「――『悲劇』の1つが演算予測に引っ掛かった」
そう語るのはその仔竜、ドラゴンランスの『たいやき』の主である霧島・カイト(氷獄喪心の凍護機人・f14899)。
「サムライエンパイアの富士樹海……そこで『富士山を噴火』させる為の儀式が執り行われようとしている」
淡々と語る彼に反して、たいやきの唸り声は収まらない。
「これが滞りなく執り行われれば、周辺の生活領域に甚大な被害が発生し、幕府も行軍に割く人員を削り、救助に当たらなければならない。無論『無傷』といかないだろう。故に、お前達には富士の樹海の『とある一角』に向かって貰う。そこに此処での儀式を仕切る『姫君』が居る筈だ」
「……無論、目的は儀式の阻止だが、この儀式は秘密裏に行われている。儀式場の探索が完了次第、奇襲などを活用し、巧く遂行してくれ」
簡潔な説明の後、カイトはそのまま転送の準備を開始するが、まだ、傍らの仔竜の唸りは収まらない。理由を問うと、彼は淡々と答えた。
「――この儀式は、太陽神ケツァルコアトルの仔を殺し、血を捧げる事で成立するようだ。……きっと、こいつの怒りもそれと無関係では無いのだろうな」
いかなる理由で、異国の地の神の仔が、此処に居るのか――
謎は尽きぬが、その死が多くを齎すならば、防がねばならない。
逢坂灰斗
富士の樹海が齎すものは……?逢坂灰斗です。
今回は『富士の樹海で行われている儀式の1つの阻止』が目的となります。
【MSより】
・このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
・この戦場では、『樹海に隠れて儀式を行っているオブリビオン(ボス敵)を発見して撃破』して頂きます。
・なお、チームや団体で参加される方は迷子防止の為【一緒に参加される相手】か【一緒に参加するグループ名】を必ずご記述ください。
では、お目に止まりましたら、宜しくお願いします。
第1章 ボス戦
『怨霊姫』
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POW : 怨霊乱舞
【無数の怨霊の群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 怨霊傀儡
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【怨霊を憑依させることで、自らの傀儡】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ : 怨霊家臣団
【レベル×1体の、怨霊武者】の霊を召喚する。これは【刀や槍】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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リズ・ルシーズ
アドリブ・連携歓迎だよ!
【SPD】
まずは場所を特定しないとどうしようもないよね
【ルシーズ】を使って、量産型Rシリーズを召喚だよ。それぞれが光学【迷彩】をつかい敵から見つからないように【情報収集】だね
皆、散開して敵を探すよ!
敵を見つけたら量産型を経由して、他の猟兵に伝えてボクは【地形を利用】して【スナイパー】として動ける場所で待機かな。仲間が揃ったら疑似刻印による光【属性攻撃】で【先制攻撃】だね
援護は任せて!
初弾を打ち込んだ後は量産型と一緒に【援護射撃】と【時間稼ぎ】だね。【怨霊武者】に取り付かれたら量産型は自爆して死なばもろともかな!
暮陽・黎明
アドリブ連携歓迎
まずは儀式場探索が必要かー?
樹海の中だからなー、ヒントになるようなもんはそうそうねーだろうが……噴火させんのが目的なんだ、自分らが被害に合わない場所を選びそうだなー。世界知識と情報収集でその辺りに該当しそうな場所に目星をつけておきたいところだな。それ自体が目立っちまうが、変装とか駆使して空から探すのが手早そうなんだがなー?
手段はどうあれ、見つけたら目立たないよう奇襲を仕掛けようか。
取り巻きいるだろうが、指揮役を狙って木々すれすれの低空飛行から指定UC叩き込むぜ。戦闘知識を始めとした使えそうな技能は全部駆使していくぞ。
それと敵さんの攻撃は第六感、オーラ防御辺りで受けか回避だな。
芦谷・いろは
儀式ですか~
…無音でやってる訳ではないでしょうし、小さな子が居るのなら
泣き声がするかもしれないですね
【第六感】を頼り【聞き耳】をたてながら、儀式の場所を探しますね
上手く見つけられたら、仲間に知らせつつ、奇襲しかけてちびっ仔を保護です
撃破でしたね
全力で数勝負してきそうなお姫様ですね。まったく面倒な
いろはも数でいっちゃいますよ!
《傀儡の宴》を使用して、ヌイグルミ合体させ手短な敵さんを【なぎ払い】していきますよ
ただ、なるべく優先的に仔を守ったりしようかと思ってます
皆が撃破優先で動ける様に仔の周囲に気を配りつつ、いつでも守れる様に臨機応変に動きますね
●暗躍の樹海
「――知ってましたけど、暗くて薄気味悪い所ですねぇ」
くるりくるりと樹海の中で周囲を見回しつつ芦谷・いろは(傀儡使い・f04958)は呟く。
鬱蒼とした樹海の中で秘密裏に儀式が進むというのだから……溜まったものでは無い。
「こりゃあ生えすぎてて、空に上がりすぎるとちょっと見えないな……」
一旦上空からの探索を試した暮陽・黎明(瑠璃色に染まる空の果へ・f00383)だが、少し諦めたように彼女達の場所へ戻る。
UDCアースにも同じ樹海は存在するのだが――名の表す通り、木々が海の様に連なり、上を覆い隠すという環境である以上、相当目視が効かない限りは非現実的だろう。
「私でも出来て木々に隠れながら、って所だなぁ」
「そういう状況だからね……ひとまず人手を増やす方向で行こうか」
リズ・ルシーズ(Re-Z・f11009)は二人を見回しながらも、自らの複製体を増やす――
「そーですねぇ、お一人ずつお借りして情報共有しながらの『人海戦術』? でいきましょーか」
いろはと黎明にそれぞれルーシーズを一人づつつけて、彼女達は樹海の中へ散っていく。
「――えーと、結構探索は進んでるけど……んー、嫌な気配はしないなぁ」
半分呑気ながらもふよふよ中空を漂いながら黎明は進む。知識と照らし合わせながら付ける検討としては……『噴火』に対処出来る場所。
完全に被害を免れる事は出来なくとも、初動から逃げ去ることが出来るなら十全――ならばと、拓けた道から少し回った所へ。
「となると此処なんだけど……当たり、だよねぇ アレ」
その先に見えるのは樹海に似合わぬ豪奢な着物に身を包み……何かに一瞥をくれる『姫君』の姿。
「『えーと、そちらも見えますですかね? お姫様』」
「『うん、皆見えてるみたいだね。ちょうど立ち位置は囲える形みたいだし』」
同時、ルーシーズ達を介した通信が入るが、全員一様にこの光景をしっかりと捉えていた。それぞれの探索の果て、全員が連絡を共有しきるよりも前に集結したのだ。
「『――最初、いろはが攻めますね。混乱に乗じてやっちゃって下さい!』」
「――さぁ、始めましょう。せめてその小さな声で悲劇の序章でも奏でてくださる?」
姫君が恍惚としながら、贄に手をかける事を家来に命じようとした瞬間――
……儀式場で、光は咲いた。
「これは、太陽神の力……!? いえ、違う!!」
儀式場に対し開戦の合図の様に打ち込まれたリズの閃光弾が視界を奪い取る。……同時に家来たる怨霊達を横殴りにするように、傀儡の群れが殺到した。
「……ちびっこはいろはが頂いてきますよ!!」
懐に飛び込むように繰り手であるいろはは、姫君の下に囚われていたケツァルコアトルの仔を奪取した。だがこのまま素直に逃してくれるわけもなく――
「……私の家来達と合戦をお望みのようですね? 良いでしょう……『供物』は返して頂きますわ?」
儀式場は、樹海の静寂を打ち破るような混戦と化した。
(『――いろは、そっちは大丈夫!?』)
(『リズさんのお蔭で時間は稼げてます、ですけど子供を護り切るには指揮が苛烈すぎます!!』)
ルーシーズが援護に入ることにより、傀儡達は大量の怨霊達に拮抗していたが、相手の特性上、倒されれば倒される程向こうに戦力が回ってしまう――
(『つまりは――私が一瞬でも指揮を崩せばいいって事だよねぇ』)
刹那、黎明は低空を『翔ける』。二人が生み出した混戦――その隙間を鎧通すか如く、真っ直ぐに進み、進み――
そこは、姫君の背後!!
「五ノ刻、黎明。十七ノ刻、薄暮。始り、終わりの交わり、来たりて――」
「……伏兵、ですって!?」
「――勿論、ただの伏兵の一撃で終わらせてあげないに決まってんだろ? 『宵闇、瑠璃斬』!」
姫君をすれ違いざまに二つの刻が『交差』する。その斬撃を捉える暇もなく、纏われた衣が『断ち切られた』。
「――やってくれますわね、猟兵共。良いでしょう……貴方方もこの儀の副葬とさせて頂くまで」
一瞬停滞した指揮。明確な深手を1つ与えられた姫君の眼差しは、紛れもなく『怒り』に彩られていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
宇冠・龍
由(f01211)とは一旦別行動
※描写別でも構いません
「子供を、殺すですって……?」
それはいけないことです。子供を悪意を持って、それも贄にするという暴挙、許せるわけがありません
(しかしこちらの戦力は可能な限り残しておかなければ後々の戦場に支障がでる、現状の戦力差で数がものをいうのなら、少しでもそれを埋めましょうか)
【談天雕竜】で梟の動物霊を百羽召喚
薄暗い樹海でも夜目に優れた梟なら探索探知は容易。ましてや空からなら場所の特定と儀式場まで直行でいけます
これは時間との勝負
由が引きつけている間、梟霊による突撃で怨霊武者を倒し、囚われている生贄の子の救出救助を最優先に行います
宇冠・由
お母様(f00173)と一旦別行動
※描写別でも構いません
さて、今回の目的は、いかに犠牲を出さすに儀式を阻止できるか
ならば敵の殲滅は二の次、阻止のためにも子供の救出を優先しなくてはいけませんわ
(隠れていても儀式が始まっては全てが泡沫。なら――)
私は囮となって敵の目と攻撃を一身に引きつけかばいます
【七草仏ノ座】で30Mの鬼の姿に変身
その存在感で儀式場にいる敵戦力を私に向かわせ、他の方が思い思いの行動をしやすい隙を作りますわ
私は燃えるブレイズキャリバー
傷を負っても修復し、持久戦は得意です
二振りを火炎剣を大げさに振り回し、怨霊の群れを攻撃しましょう
挑発に乗ればそれは私の作戦勝ち
後は皆さまにお任せします
氷雫森・レイン
探索向きではないから誰かと同行したいわ
精霊のラルが私を乗せて飛んでくれるから鈍足という意味の足手纏いにはならない筈、一緒に探しながら移動してほしいだけ
その代わりになり得るだけの仕事ならきちんとするわよ
怨霊や怨霊武者が大量に召喚されては姫君に辿り着けないでしょう?
「ラル、あの大群のど真ん中まで連れて行って」
群の頭上でラルには離れるように言って飛び降りる
私だって飛べるもの、怪我なんてしない
それに何より…
「消し飛びなさい!」
全方位に放つ全力魔法が私にはクッション、敵には無差別殲滅になるわ
姫君は他に任せるわね
私の飼い主以上に傲慢で、生きてもいなくて美しくない
骸に帰しちゃって頂戴
●子の命を喪わせぬ為に
「――お母様!」
「……ええ、これは既に始まっているようですね」
転送が終わった直後、梟霊を散開させた宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)は娘たる宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)と共に樹海の中を只管に走破している。
「そうね。……あれだけ派手な開幕の合図なら、苦手な私でも気付けるわ」
鳥精の背に乗り、二人に追従していくように進んでいた氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)も気付いた通り、彼女達は『閃光弾』に気付いたのだ。
「けど……あの軍勢をまともに相手しようと考えると、相当に消耗するんじゃないの?」
(そう、彼女の言う通り……しかし、こちらの戦力は可能な限り残しておかなければ後々の戦場に支障がでる)
梟霊を飛ばして状況把握に務めながらも死霊術の遣い手たる龍は思考を巡らせ続ける。それは由の方とて同じ。
(隠れていても儀式を遂行されてしまえば全ては泡沫――誰かが常に『妨害』を仕掛ける必要がありますわ、なら)
少し閃いたようにした由は二人の方へ顔を向ける。
「私が先に先行して『囮』になりますわ! その隙にお二人は態勢を整えて下さい!!」
娘の提案にこくりと頷いた母は、レインを導きながらも、脳裏にグリモア猟兵の告げた言葉を過ぎらせる。
「子供を、殺すですって……?」
そんな暴挙を、一人の母親として、なにより、その重みを知る者として――許せる筈が、無かった。
「――手酷い邪魔を食らったものですわね」
仔を奪い取られ、目に憤怒をくゆらせる姫君は、突如現れた焔で象られた仏へとその眼差しを注いでいた。
「けれども、私の家来はとうに肉など失っておりましてよ? ましてや、御仏など唾棄すべき物ではありませんか」
まるで神仏だろうと堂々と唾を吐いてやろうと言わんばかりの言葉で以て、焔仏に向け、彼女は怨霊を殺到させた。
(……思ったより私の姿其の物に挑発されているようですわね、これは好都合ですわ)
嘆きの海に身を晒しながらも、その焔で出来た由の身は再生を続ける。元より囮としての役割を自ら請け負ったのだ。惹きつける役割を全うできているのならば――
その眼差しは姫君の向こう側――母の座す『そちら』に注がれていて。
「――行くわよ、ラル。あの怨霊達のど真ん中まで連れて行って」
先行するように、鳥精は軽やかに、海の最中へ舞い踊る。
姫君の後背を取るように飛来したラルの背より、小さき氷刃は舞い降りて。自らと相反するその『囮』へと告げる。
「纏めて吹き飛ばすわよ! しっかり防御しなさい!!」
「承知しておりますわ!!」
その瞬間、レインが巨大な絨毯を敷くかのように、轟雷と巨大なる雹を生み出す。
「――消し飛びなさい!」
眼前の御仏が防御態勢を取った瞬間、いや、背後に舞い降りた氷精に気づけぬままに姫君は怨霊を薙ぎ払われ、自らも深手に追撃を受けるような形で全身に雹の破片の雨を浴びる。
「……私の儀式にどこまでも邪魔を――!!」
苦々しい声で恨み言を告げる姫君に、返礼を告げたのは――皮肉にも霊を操る者だった。
「ええ、邪魔はさせて貰います」
さらに梟霊をけしかけ、完全に彼女の態勢を崩す事に成功した龍は、傍らに抱きかかえた仔竜に慈しむような眼差しを向けた後――
「――このような子の命を奪ってでも果たされる儀式など、私が許しはしませんから」
憎々しげな眼差しを向ける姫君へと、宣告を告げたのである。
大成功
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死之宮・謡
アドリブ&絡み歓迎
怨霊、ねぇ……下らないな…望みも果たせず逝った愚物が甦ったところで何かを為せるものかよ…
「呪詛」感知で強い呪いを抱く怨霊姫を探知し、急行
接敵後「先制攻撃」で腐食の「呪詛」を籠めた大槍で「鎧砕き」の奇襲を浴びせる
戦闘開始後、相手の動きを「見切り」ながら「怪力」で妖刀を振るい「なぎ払い」の要領で相手の攻撃を弾きながら「傷口をえぐる」様に端から斬り刻む…
更に、他方向から遅滞の「呪詛」を籠めた黒矢を放ち攻撃(全力魔法)
最後は【黒絶斬禍】でフィニッシュ
さぁ…嗤え…
アマータ・プリムス
広大な森に隠れ策を練る
なかなか強かなようですね
ですがそれも看過できません
悲劇など当機は許しはしませんから
木が邪魔ならその木を超えればいいだけのこと
UCを発動しアルジェントムから周囲の木々の背丈を超えるバネ足ジャックの人形を作りあげます
「これほど大きなサイズを操るのは久々ですが……なんとかなるでしょう」
その人形の肩に乗り樹海を飛び回り上から儀式を探します
儀式を発見したらジャックの身体の大きさをフルに活用しそのカギヅメを振るい攻撃
戦場で気絶した方は申し訳ありませんがジャックのお腹の中へ避難していただきます
こうすれば操られることも無いでしょう
最後はジャックのバネ足で踏んづけてしまいましょうか
オスト・ラーン
アドリブ連携歓迎
悪いが世界は終わらせません……ですが、私一人では力不足も甚だしい
ここは仲間の支援に全力を尽くしましょう
儀式場の探索ですか、秘密裏とは言え人通りがあれば
恐らく道の様になっている筈……掃除は得意です
そう言った違和感を探しましょう
あるいは、わざと汚して道を隠すか……
枯れ木や枯葉が不自然に積もっていないか
そういう所が怪しいでしょうね
敵を見つけられたらクォンタムブレードを斧状に変形し
殺戮プログラムを起動――敵が操る傀儡を片っ端から破壊します
その隙に仲間に本命を叩き込んでもらえれば……
最後は仔竜を取り上げて、クォンタムブレードを檻の形にしましょうか
この仔を殺さなければいいのですよね?
●全てが終わり、染み渡ったもの
既に交戦が始まったことが功を奏した。樹海には先行した者達の道行きが克明に記されている――
「――それに、ほら」
「……巧妙に足跡を隠していましたか。猟兵の足跡のみが残ることなど有り得ませんから」
オスト・ラーン(Last One・f20169)が示す『細工された』跡を払いのけると、そこには群衆の列が通り過ぎたような道筋が埋められていた。
その様子にアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)も同意を示し、敵の強かさを確かに感じ取っていた。
「だが、急がんと儀式は未練塗れの家来の主に進められてしまうぞ? ……たとえ足止めは出来ているとて、隙を突かれれば此方の負けだ」
だが、道筋の先に確かな怨嗟を感じ取った死之宮・謡(統合されし悪意→存在悪・f13193)は事の早急性を説く。
猟兵達の体力があったとて、この樹海を走破している最中に状況を返されでもすれば――
「では、この木々を『乗り越えて』しまいましょうか。……ガイドだけはお願いすることになりそうですが」
アマータがアルジェントムより開いたのは普段彼女の繰る人形達よりも遥かな巨躯を誇る――『バネ足ジャック』。
「つまり、『飛んで』急行しようと言う訳か、面白い」
「位置さえ特定できれば確実に『最短』で向かえますね」
その巨体を見上げる二人を招くように、操り手たる人形はジャックの傍らへ向かう。
「これほど大きなサイズを操るのは久々ですが……なんとかなるでしょう。皆様、ジャックの肩へ」
再び儀式の手筈を進めんが為に仔竜ににじり寄ろうとした姫君は――儀式場が暗雲に覆われたように暗くなるのを感じた。
ただでさえ樹海の中は薄暗いというに、更にそれが暗くなるのだ。だとすれば原因は――
「……広大な森に隠れ策を練る。なかなか強かなようですね」
遥か上空より声が響く。それと共に影はどんどんと濃くなっていき――
「ですがそれも看過できません。悲劇など当機は許しはしませんから」
儀式場の一角を踏み荒らすかのように、そのバネ足人形は樹海を踏みしめたのだ。
「……くっ、私の邪魔をこれ以上はさせてなるものですか」
家来へと命を降さんと、扇を振るうが、それは一槍にて非情にも叩き落される。
「怨霊、ねぇ……下らないな……望みも果たせず逝った愚物が甦ったところで何かを為せるものかよ……」
冷ややかな眼差しを向ける謡に反し、姫君が返す眼差しは憎々しげで。
「ふふふふふ! そんな愚物というならば貴方方もそれに加えて差し上げますわ!!」
半ば逆上するかのように、怨霊や傀儡の群れがけしかけられるが、この場に新たにやって来たのは『二人』では無い。
「――プログラム起動。敵対反応勢力を排除します」
右腕が鈍く輝きながら、そのプログラムは振るわれる。既に死した者を正しく『死の舞踏』に招くように――オストの精密に編み込まれた殺戮が、怨霊も、傀儡すらも吹き飛ばしていく。
その最中に織り込まれていくのは謡の紡ぐ呪詛の一矢。動きを鈍らせる『遅滞』の呪いが家来達の動きを奪い、右腕の殺戮より逃れる術を奪ってゆく。
「『災禍』を受けるのは私ではない、貴方方の筈。国が崩れる様を――」
「そのような御託はいりません。猟兵(わたし)達に見つかった事が貴方の敗因なのですから」
家来を次々に失い、狼狽する姫君へ、アマータは淡々と事実のみを告げる。
「子供はしっかり私が保護しました。お二人は彼女を――!」
後方で仔竜を右腕の『籠』に収めているオストの姿を移した怨霊姫は、一体どの様な顔をしていたのだろうか。
「――さぁ……嗤え……」
姫君は、魔剣の一閃で、豪奢な衣もズタボロのまま、2つに別れ。
仕舞いに、バネ足の下敷きとなって、代わりに大地に染み渡っていったのである。
大成功
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