エンパイアウォー②~刀破之陣
●魂を喰らうモノ
「は、初めまして。こんにちは」
グリモアベース――ぺこりと礼をした喜羽・紗羅(伐折羅の鬼・f17665)は、初めてのグリモア業務にしどろもどろしながらも、現状を淡々と説明する。
「ええと、先の寛永三方ヶ原の戦いに勝利した猟兵達は、『第六天魔軍将図』を手に入れたんだけど、三方ヶ原で討ち取った武田信玄以外の『第六天魔軍将』達が、サムライエンパイアを征服せんと、一大攻勢をかけてきたの……って、知ってるよね、もう」
本日夜半より戦争が始まったのだ。最早悠長な事はしていられない。
「……私が見た予知は、奥羽地方で大量の『水晶屍人』が発生して、奥羽諸藩が危機に陥ってるって内容。奥羽は知ってる? あの犬が」
犬違いだと何処からか声が飛ぶ。これ以上いけない。
「……犬は関係ない、そうよね。で、この『水晶屍人』は、『魔軍将』の一人の『安倍晴明』って陰陽師が、屍に術をかけて造り出した、肩から奇妙な水晶を生やした動く屍……ゾンビみたいな? 奴らしいんだけど、とにかく数が多くて――」
戦闘能力自体はそれほど高くはないが、『水晶屍人』に噛まれた人間も新たな『水晶屍人』となる為、雪だるま式に数が増え続けている。この『水晶屍人』の軍勢は、『安倍晴明』配下のオブリビオンが指揮しており、各地の砦や町、城を落としながら江戸に向かって南下している状況だ。
このまま『水晶屍人』の軍勢が江戸に迫れば、徳川幕府軍は全軍の2割以上の軍勢を江戸の防衛の為に残さなければならない。そうなれば織田信長との決戦に十分な軍勢を差し向ける事が出来なくなってしまうだろう。
「で、『水晶屍人』を指揮するオブリビオン1体を撃破する事が今回の目的。その指揮官は『刀喰らい』っていう妖怪でね、ちっとも可愛くない上に刀とか人を食べちゃうんだって」
何でも数多の戦で喰らった戦いの技術を我が物とし、異界の邪神の力をも秘めて、手にした二振りの刀剣を増殖させて戦場を蹂躙するという、正にはた迷惑な輩だ。戦う際はそれらを如何に封じ込めるかが勝利の鍵となるだろう。
「これを倒せれば『水晶屍人』は指揮を失って総崩れになるよ。そうなれば奥羽藩の武士でも戦えるって事」
歴戦の奥羽武士なら『水晶屍人』だけになれば十分に対処出来るそうだ。
「だからお願い、サムライエンパイアを救う為に――皆の力を貸して!」
深々と礼をして、紗羅はスマホから立体映像を――グリモアの扉を出した。
ブラツ
ブラツです。帝国の興亡この一戦にありです。
本シナリオは速度重視でお返ししようと思います。
その為採用をお見送りさせてもらう場合があります。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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以下補足です。
戦闘は【ボス戦】となります。
数百~数千の『水晶屍人』の軍勢の中に飛び込み、『水晶屍人』を蹴散らしつつ指揮官であるオブリビオンを探し出し、撃破しましょう。
幸いなことに猟兵は噛まれても『水晶屍人』にはなりませんが、攻撃自体は普通に受けます。
先ず『水晶屍人』をいかに防ぐか、あるいは蹴散らすか。またはボスを如何に敵の軍勢から見つけるか等、どれか一つでもプレイングでご指定頂けると戦闘が有利になります。
プレイング募集期間はお手数ですがマスターページをご確認ください。
それではご武運を。
第1章 ボス戦
『妖怪『刀喰らい』』
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POW : 烈刀王断
【戦い】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【邪神「第六の蟷螂」】から、高命中力の【全てを両断する真空波】を飛ばす。
SPD : 魁刀爛魔
技能名「【】内に力か撃か戦の文字が入る【戦闘系技能】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ : 万刀血災
自身が装備する【妖刀『炎刃』と『善壊』】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
👑11
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メイスン・ドットハック
【SPD】
水晶で出来た屍人とは、何か親近感を感じるのー
じゃけど、おぞましいものなのは間違いないけー、蹴散らしてやるとしようかのー
主に水晶屍人を大量撃破し、ボスを探し当てることに集中する
ユーベルコード「星の海を制覇せし船」を発動し、大型宇宙戦艦を召喚
ワープで乗り込み、ビーム機銃で近づく水晶屍人を蹴散らし、固まっているところに大量破壊ミサイルを撃ち込む
そうやって攻撃している間に、戦場を分析し、空間を【ハッキング】【情報召集】して、敵の配置からボスがどこにいるかを分析する
そして割り出した場所に対して、レーザー砲を撃ち込んで、水晶屍人を消し飛ばすと共にボスへの道を切り開く
アドリブ絡みOK
シーザー・ゴールドマン
【POW】
『水晶屍人』か。なかなか壮観だね。
数の多さから安倍晴明の実力が窺い知れる。
『ウルクの黎明』を発動。オド(オーラ防御)を活性化させて上空へ。
空中からボスの位置を把握。空を駆けてボスの下へ。
(見切り×空中戦)
ボスの上空まで飛び、そこでボスを巻き込む形で衝撃波を放ち、周りの水晶屍人を滅ぼします。
(衝撃波×破魔×属性攻撃:聖×範囲攻撃×なぎ払い)
その後、オーラセイバーを剛柔自在の剣術で振るってボスとの決戦へ。
(先制攻撃×怪力×鎧砕き)(フェイント×2回攻撃×鎧無視攻撃)
(属性攻撃:斬×衝撃波×なぎ払い)などなど
敵の攻撃は直感で回避して同時にカウンター攻撃
(第六感×見切り×カウンター)
ミハエラ・ジェシンスカ
水晶の人と言うからにはクリスタリアンを連想したが……
似ても似つかんなアレは
【念動加速】で上空に逃れつつフォースレーダーで【情報収集】
敵軍の中でも群ではなく個、それもはっきりとした意思で自ら動く者がいれば
そいつこそがこの軍を指揮するボスという事だろう
見つけ次第、上空からそいつの元へと強襲を掛ける
道中の水晶屍人どもはオーラと速度に任せて突っ切るとしよう
セイバードローン2基を先行させて牽制しつつ
敵の真空波は可能な限り【見切り】で回避
【武器受け】する場合は【念動力】との併用で真っ向から受け止める事は避け、逸らすに留める
接敵後はこちらを迎撃しようとする隙を【カウンター】で狙い【捨て身の一撃】を叩き込む
リア・ファル
POW
アドリブ・共闘歓迎
水晶屍人……は一気に蹴散らして、
刀喰らいを攻略しよう
制宙高速戦闘機『イルダーナ』で「空中戦」「空中浮遊」で空から攻める
それでも相手をしなきゃ不味そうな
水晶屍人は『セブンカラーズ』で四肢や水晶を射撃
突破を優先
刀喰らいには、多元干渉デバイス『ヌァザ』でお相手しよう
全力のリアタイム演算による相手の「情報収集」で「時間稼ぎ」、
チャンスとみたら、重力錨『グラヴィティ・アンカー』を絡めた、
「マヒ攻撃」からの、ヌァザによる「鎧無視攻撃」「部位破壊」の斬撃一閃!
烈刀王断にはUC【銀閃・次元斬】で真っ向勝負!
「その真空波、我が魔剣にて次元ごと絶つ! ――邪剣、滅ぶべし!」
ヘスティア・イクテュス
●
炎刀って言う位だから
炎を出せたり熱を持ってないかしら?
それならアベルで熱源探知で楽に見つけられるのだけど…
まぁ、ダメでも死んでるゾンビより体温は高いはず…と信じて
空を飛んで攻め入るわよ!
見つけたら空中からスモークミサイルとマイクロミサイルの合わせ技!
相手から視界を奪わせてもらう&周囲の水晶屍人を吹き飛ばす!
ティターニアを全開!ビームセイバーを喉に突き立てるわ!
刀を食べるんでしょ?この刀をご召し上がれ
ビームの刀、は喰らえるかしら?
●黒船強襲
魔軍将が一人、陰陽師『安倍晴明』――その名も高き、かつては朝廷に仕えた歴代随一の呪力を誇った伝説の術師であった。それが何故オブリビオンとして甦り、第六天魔王『織田信長』が配下としてこのサムライエンパイアに混沌を齎そうというのだろうか。
『――まあ、んな事ぁ知ったこっちゃねえがな』
ぞろぞろと列を成して街道を歩む『水晶屍人』に混じって、『刀喰らい』もゆらりと前進する。炎天の中、炎の様な双眸、継ぎ接ぎの身体、鋸の様なギザ刃の二刀を鞘も無く肩に掛け、尻尾を揺らして戦場を見据える。
『この数だ、猟兵どもも早々手出しは――』
手出しは出来めえ。足も届くか……。ならば、別の手段で蹂躙すればよい。
突如、何も無かった空を巨大な黒い影が覆う。
『何だいありゃあ……船が、飛んでる』
そして影より放たれるは、無慈悲な炎の洗礼だった。
「水晶で出来た屍人とは、何か親近感を感じるのー」
ブリッジで戦場の把握に努めるメイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は、召喚した大型宇宙戦艦で上空を悠然と飛行する。ワープ解除後の対空攻撃を警戒したが、どうやらその類の武装はない様だ。
「じゃけど、おぞましいものなのは間違いないけー」
自らの同類かと思いきや、屍人の群は全く別種の存在だった。それぞれがぼろの衣服や鎧を纏い、手にはばらばらで武器を持ち、肩口から巨大な青い水晶の柱を一対生やしている。まるで水晶に寄生されたゾンビの群。この中のどこかに刀喰らいがいるのだろうが、数が多すぎて直ちには発見が適わない。
「まあ、エンパイアっちゅうなら、既に一つ終わらせとるしのー」
蹴散らしてやるとしようかのー。探すのはその後じゃー、と、メイスンは立ち上がり、ドロイドのクルーへ命令を放つ。
「全艦通達、対地砲撃並びに爆撃用意じゃー。全タレット展開、ハッチ開けー」
号令一下、ゆらりと対空機銃がその牙を大地へ向けながら、周囲の空間から電脳魔法陣が――追加の爆装タレットが出現する。更に艦隊後部の垂直発射管が展開し、無慈悲な対地ミサイルがその顔を覗かせた。
「照準は任せるのー。それじゃ」
ぶちまわしてやるのー。瞬間、灼熱の日差しすら凌駕する炎が、空を裂いた。
「……この戦場が隕石のじゃなくて良かった」
『そうですね。ですが油断は禁物、敵の数は一等多い激戦区です』
制空権が確保されていれば、航空支援は絶対の威力を持つ。サポートAIのアベルと語らうヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)にしてみれば、この状況に持ち込めただけで勝利した様なものだと感じられた。しかし目的は敵の殲滅だけではない。ここで指揮官の刀喰らいを逃しては、また同じ悲劇が起こるというもの。
「そうですよ。だからこそあの屍人達は一気に蹴散らして、刀喰らいを攻略しましょう、ヘスティアさん」
刀喰らいさえ倒してしまえば、残る雑兵は物の数ではない。モニタ越しにヘスティアへ語り掛けるリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は愛機のシートに身を沈め、出撃の時を今かと待つ。制空権さえ確保すれば、空からの精密射撃で敵の分断も偵察も思いのまま。自慢の制宙高速戦闘機の足ならば、瞬く間にそれらを成す事も可能だろう。
『カタパルト接続完了、4番ハッチ開きます。カウントはモニタに……グッドラック、イェーガー』
シグナル青。電磁カタパルトが紫電を撒いて、強化ホイールに火花が走る。射出と同時に展開したウイングが揚力を稼ぎながら、補助電脳が空力特性を再計算、カウルのコンディションを細かく調整する。星の海を駆けた『イルダーナ』――万能の戦闘機はサムライエンパイアで、その翼を広げて飛翔した。
『続いて3番、カタパルト接続完了』
武骨なウォーマシンがその足を固定具に装着して――ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)は正面のシグナルを睨む。
「水晶の人と言うからにはクリスタリアンを連想したが……」
似ても似つかんなアレは。メイスンとも他の誰かとも違う……言うなれば、忠実に命令を実行するだけのドロイド兵の様なものだ。そして自我が芽生えるような気配は、一切無い。
「3番カタパルト、ミハエラ・ジェシンスカ。出るぞ」
圧縮された電磁加速が解放されて、空に巨体を飛ばす。軽量級とは言え大柄なウォーマシンだ、相当な力が加わっているだろう。軋むフレームが弾力的に力を開放して、ミハエラはフォースレーダーを張り巡らせる。狙いは敵の大将首、それ以外は捨て置いていい。
『エアロックが解放されています。注意して下さい』
「大丈夫じゃー。カタパルト無しでも飛べるじゃろー」
のらりとしたメイスンの言を耳にしたのか、ふらりと舷側に姿を現したのは真紅の美丈夫、シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)だ。両腕を組んで、眼下の戦場を見据える。
「なかなか壮観だね。数の多さから安倍晴明の実力が窺い知れる」
数だけは、だが。シーザーにしてみれば1体だろうと100体だろうと、あの程度物の数ではない。ただ大将首に届くまで、幾何か時間が稼がれる程度だ。
「では行かせて貰おうか。何せ戦だ、遠慮はしないよ」
ふわりと空中へ飛び降りて、纏ったオドが真紅の光の筋を描く。初期の重爆撃で戦線は混乱している。にも拘らず動きが良き所――そこに刀喰らいはいる筈だ。
「全く……こんなスカイダイビングを演じる羽目になるとはね」
『宇宙船内より大気組成が若干濃い模様です。燃焼パターンは調整しましたが、燃料切れにはくれぐれも』
「分かってるわ。4番カタパルト、ヘスティア・イクテュス――出る!」
ガシャンと、飛行ユニットごとヘスティアを懸架したクレーンアームが加速して、その質量を大空へ放つ。
『ロック解除確認、メインスラスター点火。行きますよお嬢様』
「ええ、さっさと終わらせてランチにしましょう」
その前にこの光の刃を喰らわさねば。空を舞う妖精は眼下の戦場に目を凝らして、倒すべき敵を見定めた。
『一体何だってんだ、あんな種子島イカサマだろうが!』
続々と上がる火の手が刀喰らいの目の前で屍人をひたすら蹂躙していく。最早街道の形も無い。電脳タレットから放たれた爆弾が地形を穿ち、対地掃射されたレーザー機銃が屍人を水晶ごと襤褸切れの様に消し飛ばす。その攻撃から逃れようと艦の真下へ進もうなら、イルダーナの強襲が戦列ごと吹き飛ばす。外側へ広がろうと天翔ける魔人の赤い衝撃が行く道を塞ぎ、機人と妖精の乱舞が戦線を立て直す事を許しはしない。制空権どころか、戦場の支配権は最早猟兵にあるも同然だった。
『全くよう、清明様よう……分かっててこんな事やらせたな』
面白え、喰らってやんよ。ぐずぐずに崩れ落ちた大地の上で、刀の妖が咆哮する。
『テメエらの狙いは俺だろうが、掛かって来いや戦争の時間だオラァ!』
その背後に巨大な蟷螂の幻影が――憑りついた邪神がその巨大な姿を現す。ぎょろりと飛び出した複眼が全周を睨みつけるように蠢き、その両腕から不可視の真空の刃が四方八方へ放たれた。
「成程、余り賢くはない様だ」
「そうだな。仕掛けるならば今が好機か――行かせて貰う」
シーザーとミハエラは空中から、刀喰らいの真空波に巻き込まれて飛ばされた屍人を払いのけて、その首を狙い一直線に迫る。
「先手必勝だ、卑狂とは言わんな?」
『言うかよ南蛮被れ、さあ、テメエの魂を――』
喰らわせろ! 抜き身の妖刀『炎刃』『善壊』がシーザーのオーラセイバーと斬り結ぶ。空中からの一撃、足場は無くとも重力と加速が威力を上乗せして、重たい一撃を放つ。されど刀喰らいの膂力も負けてはいない。踵で大地を抉りながらその斬撃を受け止めて、返す刃でシーザーを斬り付けようと試みる。
『斬りづれぇな、降りてこいや』
「断る。君風情が私の足を地に付けられると思うな」
シーザーの暴力的な乱舞が上段、側面、下段から自在に飛び出す。威力に手心を加えれば、受ける一方の刀喰らいの手元が狂う剛柔自在の剣術。空間戦闘もこなすシーザーにしてみれば、重力に縛られた不自由な妖怪など物の数では無かった――しかし。
『それじゃあこいつはどう……だ!』
刃と刃が重なる激しい音が響く。それは刀喰らいではない、邪神『第六の蟷螂』からの攻撃。
「フン、幻影ではなかったか」
『蟷螂は肉食なんだ、喰らわせろ』
ぎょろりと複眼がシーザーを睨む。衝撃波と真空波がぶつかって空中に軌跡を刻み、大きな鎌がオーラセイバーを受け止める。
『ハッ、卑怯とか言うなよ? 元よりテメェ等の方がよっぽどインチキだ』
「そうだな、故に死んでもらう」
不意に赤黒い光剣が刀喰らいの懐を掠める。ミハエラが音も無く刀喰らいの間合いに入っていた。間一髪その一撃を妖刀で凌いだが、もう一撃、二撃、三撃と止まらないミハエラの応酬が刀喰らいに休む暇を与えない。
『お次は絡繰り人形か、随分と派手にやるじゃねえか!』
上段の一撃をすり上げて、下段を払い、懐に入りミハエラへ蹴りを喰らわす。ミハエラの切っ先が多少肌を掠めようと、刀喰らいの動きは止まらず、むしろその勢いを増していた。
『テメェ俺より刃が多いぜ、それもまたインチキか?』
ブンと振るわれた妖刀から炎が迸る。属性を乗せた衝撃波がミハエラの機動を潰す様に、花火の如く中空で爆ぜて軌跡を広げる。
「迂闊に近寄る事も難しい……と言うとでも思ったか?」
炎を纏った衝撃はミハエラの放つ歪な波動――念動のフィールドがその威力を消し飛ばした。
「言っておくが、私も一人ではないぞ」
ミハエラの周囲にはセイバードローンが、先端に光剣を光らせて刀喰らいの動きを遮る。
『六本持ちか、流石にそんなのはやった事ねえが……』
じゃあこれはどうだ? 刀喰らいがニヤリと笑えば、ミハエラの周りに黒い影が纏わりつく。それは倒された筈の屍人達。
『念動殺法屍人返し、あるいは肉の壁』
既に動きを止めた屍人の骸が十重二十重に、刀喰らいの念動力で浮かび上がってミハエラに殺到する。
『悪ぃな、こっちは一人どころじゃねえんだわ』
「雑な操作だが……この数ならでは、戦えるという事か!」
増幅した念動力で津波の様な屍人の群を押し返すミハエラ。飛翔するセイバードローンを妖刀で叩き落とし、その首を狙ってのっそりと近寄る刀喰らい。しかし敵はそれだけでは無かった。
「勝手に初めて終わらせないでよ!」
『熱源探知をするまでもありませんでしたが、これは――』
妖精の翼を全開にしてヘスティアが舞う。くるくると螺旋を描く様に、不規則な軌道から無数のミサイルが放たれて、その爆炎の向こうから光剣を両手で抱え突進する。
「刀を食べるんでしょ? この刀をお召し上がれ」
『抜かせ……どいつもこいつもギラギラ目立たせやがって!』
視界を潰された刀喰らいが片手で煙を払えば、その隙に超小型の誘導弾が喰らいつく。かろうじで切り払うも、両手を塞がれた刀喰らいはヘスティアの一撃を避ける事が出来ない。
「ビームの刀、は喰らえるかしら?」
『喰った事ねえからな、毒見してくれるか?』
『それはいけません。こんなものを食べてはお腹を壊します』
その一撃を器用にも、地に伏せていた屍人の肉塊を跳ね上げて盾にして、間一髪の所で必殺の威力を削ぎ落す。
「それでも……届きはしたみたいね」
『ああ、クソ不味いな……!』
両腕を交差する様に一閃、肉塊ごとヘスティアを真っ二つにせんと殺意を剥き出しにする刀喰らい。アベルの急加速が無ければ、そのまま両断されていたかもしれない。しかしその切っ先が刀喰らいの脇腹に赤黒い筋を付けていた。
「ありがと……でも、あれ」
『ええ、あの間合いに入るには生半な腕前では至難の業』
ですから、こういう時は専門家に任せるべきです。アベルの一声と共に、上空を白い影が音より早く通過した。
蟷螂の化け物、屍体の津波、絶妙なる剣技、その全てを――三界の魔術師はつぶさに観察していた。
「ディメンションデバイス・アクティヴ! その銀の腕で邪悪を払え!」
リアが抜き放った多元干渉デバイスが白銀の剣と化して、そのまま音速で刀喰らいへ飛び掛かった。
『何でえ奇天烈な格好しやがって、手前も物の怪の類か、あ?』
左の妖刀を前に突き出し、右の妖刀を肩に担ぐ。距離を測って二の太刀で反撃を狙う守りの形、しかし宇宙を駆けた汎次元戦闘術に、原始的な刀法がそのまま通用する訳もなく、空中でくるりと身を翻したリアはもう一つの手に隠し持った重力アンカーを放って、突き出した妖刀を無力化する。そして。
「半裸の妖怪に言われたくないな、そういう事は!」
瞬間、縮められたアンカーの勢いで一気に間合いを詰める。変幻自在、緩急自在の先の取り合いは、僅かにリアが優勢だった。纏った衝撃波が周辺の屍体を吹き飛ばして、そのまま一閃――刀喰らいの右手首ごと妖刀を地面へ叩き落す。
『ハハッ! そう来るか、流石だ――そうでなきゃあ面白くねえ!』
ぼとりと地に落ちた自らの手と、失くした腕から止めどなく流れる赤黒い液体を眺め、歯を剥き出しにして狂った様に笑う刀喰らい。その背後には再び、巨大な蟷螂の邪神がその姿を現した。
『それじゃあフィナーレと行くか、ああ?』
蟷螂が真空波と共に、屍体ごと巻き上げた巨大な竜巻を形作った。
「肉の壁で攻撃……何と惨い」
幾ら物言わぬ屍体とは言え元はと言えば生命ある人間だったもの。それを物のように扱うのは、刀喰らいがそもそも器物の妖怪だったからか。だからといって、そのまま見逃すわけにはいかない。
「――ヘスティアさん、あの蟷螂の化け物はボクが始末する。だから」
その奥のアイツを、始末してくれないか。虚実入り混じった存在故の感傷か、静かに頼むリア。手にしたヌァザは必殺の時を今かと待ち望む。既に演算結果は出ている、やるべき時期を誤らなければ――次で終わる筈。
「分かったわ。アベル、ミスティルティン展開、チャージ後直ちに撃つわよ」
ガシャンと、バレルを伸長した超大型ビーム砲を腰溜めに構えて、ヘスティアは刀喰らいを見据える。
『承知しました。発射タイミングをリア様に同期します。後は』
「聞こえたぞ、やるなら早くしてくれ。こっちはいつでも仕掛けられる」
ノイズ混りのミハエラの声がアベル越しに伝わる。チャンスは一度切り、それで仕留められなければ、この戦の趨勢は大きく変わる。
「まあ制空権は確保してるからのー。有象無象はこっちで何とかするかのー」
メイスンが上空から、屍体の竜巻を照準に入れる。如何なる数だろうと、宇宙戦艦の対地砲撃ならば、その全てを捌くのも容易い。
「ありがとう。それじゃあ……行くよ!」
リアが飛ぶ。その動きに合わせてメイスンの宇宙戦艦がその咢を開き、無数の光弾を地に降らす。それは竜巻の縁を削ぎ落して、刀喰らいまでの道を切り開いた。
「その真空波、我が魔剣にて次元ごと絶つ! ――邪剣、滅ぶべし!」
『抜かせ! 滅ぶのは貴様らだ!』
正面の蟷螂の邪神ごと、放たれた長き銀の腕は伸長した刀身が大上段から、真空波ごと邪神を真っ二つにした。そして。
「そういう物言いはな、決まって滅びる側が言うものだ」
「三番、四番展開。逃げられると思うな、ガラクタ風情が」
シーザーの奇襲が刀喰らいのもう一刀をへし折って、守りを失ったその身体をミハエラが伸ばした隠し腕が捕らえる。最早反撃も、逃走も叶わない。
『まだ動くか、手前ェェェェ
!!!!』
『チャージ完了、カウント省略』
「射線確保、発射!」
ヘスティアがトリガーを弾くと共に、空間を抉る様な轟音が一条の光となって放たれる。その一閃が刀喰らいの頭部を捉え、爆光がその全身を飲み込んだ。
「……腕はまあ、大丈夫か」
「嫌に頑丈な刀剣だったが、もし本体だったならば成程……分からなくもない」
折れない一片の邪念が最後まで戦う事を望んだか、しかし猟兵の刹那の連携がその願いを打ち砕いた。
「やったの……?」
「そうだといいんじゃがのー……まだ動いとるんじゃ」
水晶屍人がのー。メイスンが言ちる。刀喰らいの統制が無くなれば、本来の有象無象と化してばらばらとなる筈が、それでも彼奴等は行軍を止めない。
「……まさか、もう一振り!」
『正解だコノヤロウ』
ばらりと、屍体の中からギザ刃の妖刀が姿を見せる。
『まさかここまでやられるとはなあ……だが!』
ビュンと風を切り、妖刀が空を駆ける。向かう先は、屍人の群の最前列。
「この状態で、まだ突破する気!?」
不意を打たれた猟兵達の間隙を縫う様に妖刀が翔ぶ。その先には水晶屍人が――その腹を抉る様に刀身が刺さって、新たな『刀喰らい』が誕生した。
『残念だったなぁ! 戦はまだ終わらねえよ!』
からからと奇声を上げる刀喰らい。そしてそれを守る様に大勢の水晶屍人が列を成して、猟兵の前に立ち塞がる。
「ちょっと距離があるのー。じゃが」
僕らもこれで終わりと思われるのは心外じゃのー。メイスンは手元の端末を操作して、未だ潜む仲間達へ次の指示を伝える。
「これで追い込んだからのー、挟撃成功じゃー」
きらりと眼下の戦場に光が走る。
戦いの第二幕が始まった様だ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィーナ・ステラガーデン
ふふん!ゾンビを焼くのなら慣れてるわ!
「水晶屍人」は【範囲攻撃、属性攻撃】で
爆発させたり炎を撒き散らして蹴散らして進軍するわ!
噛まれた人は元に戻らないのよね?
なら構うことは無いわね!容赦なくぶっ飛ばしてやるわ!
で!ボスね!
っていってもこれだけ数多いならよくわかんないわね!
全部まとめてぶっ飛ばせばいいんじゃないかしら!
刀が念力で飛んできたら、それも巻き込む形で
でっかい炎の竜巻を戦場に発生させて水晶屍人もボスも一緒に巻き上げるわ!【全力魔法、高速詠唱UC】
これだけ敵まみれだもの!制御なんてする必要ないわね!暴れ狂うのよ!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)
アメリア・イアハッター
死人を操るっていうのは、趣味が悪すぎるよね
絶対に首謀者を見つけ出してやる!
水晶屍人っていうならば、本当に水晶の様にしてあげましょう
集団に接近し、UCの範囲内に入った所でUC発動
肉体部分を凍らせ、凍った屍人を足場にし集団の頭上へ跳躍
UCを発動し続け、氷屍人の足場を渡りながら指揮官を探す
指揮官を見つければ、UCは発動したままにして、来た道を戻り逃走を図る
第1目的は味方に敵指揮官の位置を知らせること
ここまでの道はある程度氷漬けになっているから味方もわかりやすい筈
第2目的は凍らせることにより相手の動きを鈍らせること
自分が倒すのではなく、動きを封じて、味方の高威力技が当たるように
誰か来るまで只管回避だ!
石上・麻琴
■心情
いやはや、面倒なものですねぇ『水晶屍人』とやらは
……これでも陰陽道を嗜む身としては、見過ごす訳にもいかないでしょう
では、参るとしましょう
■戦闘
『水晶屍人』を蹴散らす方向性で挑みます
やることはシンプルで、ユーベルコードを使用して巨人に変身し、技能:破魔、技能:なぎ払いを使用した剣による斬撃で敵軍を攻撃します
さすがに巨人が大暴れしているともなれば、敵指揮官も何らかの動きを見せるでしょう
そのまま指揮官に一太刀でも浴びせられれば幸いですが……そうはいかなかったとしても他の猟兵がその機会を見過ごすとも思えませんので、そちらにお任せします
■その他
アドリブ等は大歓迎です
峰谷・恵
「強くなりたい手合なら派手に暴れれば勝手に出てくるでしょ」
敵指揮官を釣り出すためにまずは屍人の数減らしを優先。
水晶屍人の群れの一点にアームドフォートとMCフォートを連射(範囲攻撃+2回攻撃)しながら突撃、可能な限りの屍人を範囲内に収めたところでフルバースト・マキシマムを発動し一掃。
その後はアームドフォートとMCフォートで屍人を蹴散らしながら、神殺しの直感(第六感)で刀喰らいが内包する邪神の力を探り見つけ出す。
敵の攻撃はダークミストシールドで防ぎ(盾受け+オーラ防御)、熱線銃で反撃。
敵が攻撃後即屍人に紛れようとしたら再度フルバースト・マキシマム発動、紛れた屍人を巻き込んで攻撃。
●ブロークン・ブレイド
「死人を操るっていうのは、趣味が悪すぎるよね」
アメリア・イアハッター(想空流・f01896)は、眼前の巨大戦艦の下で繰り広げられた壮絶な戦いを思い返す。最早物のように扱われ、されど普通の人に対しては尋常ではない威力を発揮する恐るべき敵。そしてあれだけ戦って、妖刀一振りしか叩けなかった刀喰らいという指揮官も。
「……いやはや、面倒なものですねぇ『水晶屍人』とやらは」
あれ程の戦いがあってまだ健在とは。その横で石上・麻琴(虹の彼方の空の星・f01420)が肩を竦める。
「……しかし、陰陽道を嗜む身としては、見過ごす訳にもいかないでしょう」
それも陰陽師の大家、安倍晴明直々の呪術と来た。生半なものでは無いだろうし、同じ術師としての興味も、そして憤りもある。
「ふふん! ゾンビを焼くのなら慣れてるわ!」
フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)はぴょこぴょこ跳ねながら戦場を観察する。凄まじき物量だ。だが噛まれた人は元に戻らないというならば、容赦なくぶっ飛ばしてやればいい。
「ま、強くなりたい手合なら派手に暴れれば勝手に出てくるでしょ」
その後ろで装備の最終確認を行う峰谷・恵(神葬騎・f03180)。汚らわしい陰陽術の悪しき屍人を見逃す事など出来る訳が無い。それが只の人だったというのならば尚更――止めなければ。怒りに震える心は淡々と、その牙を研いでいた。
不意に上空の巨大戦艦からチカチカとシグナルが走る。どうやら敵指揮官をこちら側へ追い込んだ様だ。これで自分達と、先遣隊の二方面による挟撃が完成したことになる。すっくと立ちあがり、帽子を被り直したアメリアがくるりと向いて宣言した。
「じゃ、改めて――ミッションスタートよ!」
「野郎オブクラッシャーッ!」
漆黒のマシンに跨って戦場を駆ける。その横をふわりと浮いたフィーナが追従して、二人は一陣の風となった。
「では、参るとしましょう」
「セーフティアンロック、アームドフォートアクティブ――さあ、行くよッ!」
麻琴と恵も立ち上がり、視界に入る屍人の群れを一瞥して戦場へと駆け出した。
「釘付けにしてあげるわ。そこで私だけのステージを眺めながら――」
「全部まとめてぶっ飛ばしてあげるわ!」
アメリアの描いた軌跡が絶対零度の氷を形作る。密集した屍人の群れは躱す事もままならない――触れた傍から一人、また一人と肩口と同じ様な氷の塊と化して、身動きが取れないそれらをフィーナの爆炎が露一つ残さず消滅させる。出来上がった氷の足場をアメリアがマシンで駆ければ、宙を舞うフィーナが爆炎を振りまいて、屍人共が動く間もなく戦場を蹂躙していったのだ。
「名就けしは十二天将が一つ、天一貴人上神家在丑主福徳之神吉将大无成!」
一方アメリアらと対の方向で、麻琴は印を組み呪いを唱える。その姿が巨大な武人と化して、手にした隕鉄の刃がジワリと熱を帯びる。
「さあさあ皆の者お立会い、遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ、と」
古の武者口上――しかし屍人には聞こえまい。目的はただ一つ、刀喰らいだ。
「あんまり近付くと潰されますが、まあ分からないでしょう」
ですから容赦は出来ませんよ、と。破魔を込めた剣を振るって立ち塞がる屍人の尽くを薙ぎ払う。一歩、また一歩と吹き飛ばされる屍人が津波の様に来た方へと返されて、巨人と化した麻琴は歩みを止める事は無い。そして。
「これでも僕はね、あまり機嫌が良くないんですよ。分かります?」
悪しき術で望まぬ身体と化した屍人を憂い、元凶たる安倍晴明への憤りを微塵も隠さない。こうして暴れている内に、指揮官の刀喰らいも気づくだろう。
「この数じゃあ――目視で巻き込んだ方が早い」
恵はじわじわと近づく屍人らを一瞥すると、手早く火器管制のシステムを解除した。
「FCSマニュアル、ロックサイト解除……発砲遅延なしで弾幕」
コンマ幾つも待ってられない。それにこんなのたりとした連中ならば、目で追って撃った方が早いのだから――新たなコマンドを受けた武装がその制御を全て恵みに受け渡すと共に、猛烈な火線が牙を剥いた。
「シールド展張、吶喊」
外套を翻し、両手のフィールド発生器に力を込める。そして両腕と両肩に展開したアームドフォート群を敵陣へと向けて、腰だめに配された小型ブースターを点火――弾丸と化した恵は一路、屍人の群れへとその身を投げ込んだ。
『……とまあ、好き勝手やってくれるじゃんよ』
正面両翼と縦横無尽に屍人を蹴散らす猟兵の動きを後ろより見据える刀喰らい。その手には一振りの妖刀『炎刃』が。『善壊』は先の戦いで破壊された――しかしこの一振りがあればまだ、戦える。
『さて、それじゃあ……喰らいに行くか!』
ふわりと跳ねて、獣じみた妖怪は再び戦場へと舞い戻った。
「さー汚物は消毒! なのよ!」
炎を振り撒きながら、高速で移動するアメリアに追従するフィーナ。勿論分かれても良いのだが、余り分散し過ぎても良くは無いし、確実に敵の動きを止められるアメリアの技が、威力をひたすらばら撒くフィーナの魔術と相性が良かったのだ。
「これだけ固まってれば……上に出るわ!」
マシンで進路上の屍人を蹴散らしながら絶対零度を振り撒くアメリアは、そのまま前輪を持ち上げて跳躍――器用に氷の足場と化した屍人の群れの上に躍り出た。
「この方がよく見えるものね。それに――」
あれかしら? 跳ねながら屍人を吹き飛ばして近寄る影が、アメリアの視界に入る。
『よう、面白そうだな。俺も混ぜろや』
「いいわよ。お代は高くつくけどね!」
アメリアはフィーナに目配せして、マシンを前進させる。既にこの一帯は氷の足場だ。向かってくるアメリアのマシンへ、刀喰らいはその刃を振るって、炎を纏った衝撃波を発生させる。
「やらせないわよ! こっちもいるんだから!」
その衝撃を爆炎が相殺して、続いて放たれた炎の連弾が足元の屍人をぐずつかせた。
『何でえ……手前も飛べるってか』
ふわりと空中に浮かんだ刀喰らい――空中戦を挑もうというのか、手にした妖刀を八相で構えて、フィーナの方へ突っ込んでくる。
「そうやって余所見してると……足元掬われるわよ!」
ブォンと、屍人の影からアメリアのマシンが跳躍する。その先端が、加速した重量が刀喰らいの懐にもろに当たって、その勢いのままアメリアは氷の足場へと戻る。
『痛ぇな……矢張り一振りじゃあ、十全に力も出ないか』
「そのようですね。しかし――それで止まるわけにもいきませんので」
お覚悟を。刀喰らいを黒い影が――巨大武人と化した麻琴が手にした刃を豪快に振るって、アメリアの追撃を受けて引いた刹那を容赦なく襲う。
「本来は貴方のボスにお会いしたい所ですが……致し方ありません」
死になさい。その巨体に似合わずふわりと体を浮かせた麻琴が、空中から続けて刃を振るいつつ、呪言を込めた霊符をばら撒く。それが触れた屍人が爆ぜて、刀喰らいに休む暇を与えない。しかし。
『手前ら随分と調子乗ってくれてよう……キレちまったぜ、久しぶりに』
刀喰らいが手にした妖刀を宙へ放り投げる。その刀身が瞬く間に――まるで剣の塔の様に数を増やして、麻琴に襲い掛かったのだ。
『躱せるもんなら躱してみろや、とっておきだぜ!』
風を切り殺到する殺意を、手にした薙刀で払いながら宙を駆ける麻琴。確かに一人でこれを相手にするのは骨の折れる作業だ。しかし今は、そうではない。
「やっと手札を全て切ったね――これを待ってたんだ」
全砲門開放、FCSリンク、ターゲットインサイト――撃て。
恵が全身の武装から荒々しい威力を放った。超常の力で放たれたそれらは、同じく超常の刀の群れの尽くを叩き落す。火線はそのまま刀喰らいの方へと向いて、誘導弾と速射砲の雨霰が容赦なく降り注ぐ。
『また種子島のお化けかよ……上等だッ!』
ブン、と空気が振動する。邪神――第六の蟷螂が実体化して、火線を防ぎ立ちはだかったのだ。だがそれも想定の内。
「真空波と竜巻、それに両腕の鎌による攻撃。複眼による探知能力に注意」
全部分かっているんだよ、と恵は淡々と伝える。
「シールド最大展張、ナノマシンアーマー硬度10、神殺しを解く!」
恵の本質は神殺しだ。邪神と言えど例外ではない。
「見誤ったね妖怪、こっちがぼくの本職――だッ!」
ガコンとアームドフォート群を外し、加速する。放たれる弾丸の雨は止まず、されど恵は術式を刻んだ剣を手にして、巨大な蟷螂の化け物へと向かった。
『そんなちゃちい南蛮剣で何が出来ると――いや、テメェ!』
邪神の鎌がバターの様に切り裂かれる。それは対神兵装――これまでの暴力的な刃とは根本的に違うのだ。
『そいつだけはヤベェ……戻れ第六!』
「遅いんだよ」
すれ違い様、邪神の頭と胴が分かたれた。切先にこびりついたその跡と一緒に、邪神の身体は宙に溶けていく。
「これで仕舞いだ」
恵は抜いたブラスターを刀喰らいへ放つ。その一撃が顔面を消し飛ばし、姿を消したかに見えた。
『危ねぇ……所だったぜ……』
邪神を失い、仮初の肉体を失った刀喰らいは、複製した己の刀身に紛れて、かろうじで新たな肉体を得る事が出来た。最早往時の力も無い――それでも尚、刻まれた使命を全うすべく、三度戦場へ戻ろうとした。
「いや、危ないのはこれからよ」
頭上から爆音が――アメリアの漆黒のマシンが舞い降りて、そこを起点に周囲を凍らせ尽くす。
「それじゃあ皆カモン! フィナーレよ、派手にやっちゃって!」
「了解よ、さあお前の罪ごと地獄へショータイムなのよ!」
捻じ切れなさい! フィーナが叫ぶ。超常が巻き起こす地獄の炎めいた竜巻が、身動きのとれぬ刀喰らいを呑み込んで。
「それで……やったつもりか……!」
炎が勢いを増して、刀身を――複製された妖刀の尽くを呑み込んで、反撃の糸口を与えない。
「制御なんてする必要ないわね! 暴れ狂うのよ!」
火柱が轟音をかき上げて、刀喰らいを焼き尽くす。
『まだだ……まだ……』
「いや、もう駄目だ、お終いです」
ブンと振られた隕鉄の刃が、妖刀炎刃を叩き折ったのは僅か後の事だった。
「……よく、本体が分かったわね」
「ああ見えてあいつ、小心者でね。一振りだけ動きに迷いがあったのですよ」
それに二度目でしたから。フィーナに対しからりと言ってのけた麻琴は、氷と炎でグチャグチャになった戦場を見据え、残った水晶屍人に睨みを利かす。その動きはどれもが覚束ない。刀喰らいを倒した事で、その統制も解除されたのだろう。
「後はあれらですが――奥羽武士団に任せますか。今は」
我々は敵の首魁を叩かねば。時間はありそうで、そう残ってはいない。
続く戦いを思って、猟兵達は暫しの休息を得る事にした。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年08月06日
宿敵
『妖怪『刀喰らい』』
を撃破!
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