エンパイアウォー②~屍人の山を掻き分けて
テレポートの向こう側にひしめく屍人屍人屍人。奥羽は今屍人によって埋め尽くされていた。周辺の砦を、その圧倒的物量で飲み込みながら、江戸に向かって南下を続けている。仮にこの数の屍人が江戸に流れ込んだ場合、崩壊とまではいかなくとも、罪なき民が大勢死に至るだろう。
そうさせないためにも、もしこのまま見過ごすのであれば、徳川幕府軍は全軍の2割以上の軍勢を江戸の防衛の為に残すだろう。そうなれば織田信長のいるあの魔空安土城を打ち破るための術は大きく削られてしまう。
「そうさせないために、私たちがいるんだもんね!」
そういって振り返るのは、クトゥルティア・ドラグノフ。彼女の父親はこの世界、サムライエンパイアを愛していた。ゆえにこの戦争にも思うところがあるかもしれない。だが今はそれよりもだ。
「みんな既に知ってると思うけど、織田信長が島原に【魔空安土城】を築き上げ、何らかの陰謀を成就させようとしてるんだ。魔空安土城には強固な防護が張り巡らされ、それは猟兵にも破壊できない……でも江戸幕府には、この防護を唯一破壊できる「首塚の一族」が存在してたんだ! この一族と、彼らを補佐する1万の兵があれば、魔空安土城の防護を打ち砕けるらしいんだ! それを妨害しようと、信長に着き従う魔軍将が妨害してくるんだよ」
ここまでの全容を話すドラグノフ。そして今回自分が予知したこのエリアの説明を行う。
「今回皆にしてもらうのは、ここ奥羽に現れた水晶屍人の指揮官撃破だよ! 水晶屍人は魔軍将の一人である陰陽師【安倍晴明】が屍に術をかけて造り出した、肩から奇妙な水晶を生やした動く屍で、戦闘力はほぼ皆無だけど、噛みつかれた人間も水晶屍人になっちゃうんだ。今、城や町や砦を落としながら南下してるから、その数もすごいことになってるよ。あ、猟兵のみんなは噛まれても大丈夫だよ、安心してね! さて、これを止める方法だけど、戦闘力自体は高くないから、指揮官さえ倒せば奥羽の人たちでもどうにかできるみたい。だから手ごわい指揮官をみんなに倒してほしいんだ。本当はその指揮官の前にみんなを送りたいんだけど、見ての通りどこも水晶屍人だらけで全く分からないんだ。ある程度近くには出すから、そこからは連携して探し出して!」
私が伝えられることはこのくらいといい、ドラグノフは一旦口を閉じる。そうしてテレポートを完全につないだ。ひしめく水晶屍人の中にちらちらと見える巨大な存在。おそらくあれが指揮官だろう。あそこを目がけて進むしかない。
「指揮官を素早く見つけ出すとか、軍勢を一気に消し飛ばしたりして一気に進むとか、そういうことで時短をするのもいいかもね。それじゃあみんな、頑張って!!」
そういって、ドラグノフは猟兵を見送った。
しじる
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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どうも初めての方は初めまして。そうでない方はお世話になっております。しじるです。
それでは手短に。このシナリオでは無双アクションなみの活躍を描写する予定です。アドリブが普段より多めに入る可能性もありますので、アドリブが苦手な方はプレイングの最初のほうに【×】を入れていただけるとありがたいです。
それでは皆様のかっこいいプレイングお待ちしております!
第1章 ボス戦
『仮面の武僧』
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POW : 末世読経
予め【読経を行う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : 狛犬噛み
自身の身体部位ひとつを【狛犬】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : 金剛力士の招来
戦闘用の、自身と同じ強さの【金剛力士(阿形)】と【金剛力士(吽形)】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑11
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神崎・鳴海
アドリブ・連携歓迎だ。
戦闘中、戦いながらも、戦場全体や仲間の状態に常に気を配る。
敵の足や足元を破壊し機動力を奪うよう心がけよう。
仮面の武僧の「末世読経(POW)」に対し、ユーベルコード「ブレイズフレイム」を使うことで、敵を燃やし尽くす。
最大の目的は、敵に目印をつけ目立たせること。
俺の力は微力だが、俺一人ではない。
その為なら、ある程度のダメージはやむを得ない。
アーサー・ツヴァイク
※何でも歓迎
こいつはヤバい組み合わせだな。屍人の群れに隠れて読経をする時間を稼がれるか…まずはこの屍人共をどうにかしねぇと
ライドランに【騎乗】して敵陣に突撃。敵陣のど真ん中で【サウザンド・フラッシュエッジ】を発動し、剣刃を飛ばしまくって屍人共をぶった切っていくぜ!
そのまま屍人にフルスピードで突撃して【吹き飛ばし】たり、【怪力】で力任せにぶっ飛ばしたりしながら進み、敵の読経の声を頼りに探してみるぜ。声を潜めて…って可能性は低そうだな。時間が経つ程に強力になるが、その分力が籠って読経の声も大きくなりそうだ。
ボスを見つけたら【2回攻撃】で【サウザンド・フラッシュエッジ】をもう一発だぜ!
なんて危険な組み合わせだ。【アーサー・ツヴァイク】はこの組み合わせの危険性に気づいていた。このオブリビオン仮面の武僧のユーベルコード【末世読経】は読経を行う事で、その時間に応じて戦闘力を増強するもの。故に見破られやすく避けやすいのだが、屍人が壁になってその姿を隠している。つまり素早く見つけなければ、強力になった一撃を視界外からもらって一撃ノックダウンも考えられるということ。
そうはさせない。変身と高らかに叫び光に包まれるツヴァイク。説明しよう。アーサー・ツヴァイクは改造人間である。邪悪なるオブリビオンの魔の手が力無き人々に迫る時、彼は闇をぶち破る光の戦士・ドーンブレイカーへと変身するのだ!
「しゃあ! いくぜ!!」
大型可変バイクライドランに騎乗し、敵陣目掛けて一気に突っ走る。群がってくる屍人を轢き吹き飛ばしながらさらに奥地へ、そこでユーベルコード【サウザンド・フラッシュエッジ】を発動させる。
『Select…SLASH ACTION!』
特徴的な機械音、遅れて無数の光波が打ち出され、屍人を一掃していく。それはまさにヒーロー番組のスーパーヒーローの活躍のように、数千もの屍人を両断していく。時には持った怪力で切り伏せ、殴り潰し、轢きとばし。アクションゾンビ映画の
主人公の様でもあった。
さて、肝心の指揮官を探す。読経をおそらくしているだろうから、おそらく聞こえてくるはず、その声が。集中していると少し離れた場所から火の手が上がった。もしやそこに? そう思ったツヴァイクは早速向かうことにした。
一方時を同じくして戦地に飛び込んだのは【神崎・鳴海】。彼は戦場の全体を常に見続け、動き続ける屍人の流れを読んでいた。それの邪魔をする屍人は足や足場を破壊することで行動困難に陥らせ放置していた。どうせ放っておいても奥羽の兵士たちが撃破する。なら無駄に体力を消耗しないでおこうという賢い判断だった。
さて戦場を眺め続け、ついに一部おかしな流れをしている集団を見つける神崎。それは進行するというより、固まるといったもの。おそらく……試しにユーベルコード【ブレイズフレイム】を打ち出して見せた。紅蓮の焔は集団に着弾し、高く高く炎の柱を建てて見せた。炎に飲まれた屍人は焼け焦げ灰に変えるが、その中央から炎をかき分け現れる者一人。仮面の武僧だった。
「よくぞ我を見つけた……だがそれだけよ。十分読経はさせてもらったわ! 死ねぃ!!」
手に持つ武器を振り上げ襲い来る武僧。その攻撃を紙一重で躱していくかん神崎。しかし読経で強化された武僧の攻撃は苛烈で、少なくない被弾をしてしまう。
「全ては信長様のため、覚悟!!」
武僧が一際大きく武器を振りかぶった。それを見て、ふっと笑う神崎。死ぬ覚悟でも決めたのか? 武僧が疑問を感じた。それに答えるように神崎は言った。
「俺の力は微力だが、俺一人ではない。俺の最大の目的は、お前に目印をつけ目立たせること!」
その声に答えるように、ユーベルコード【サウザンド・フラッシュエッジ】が神崎の後ろから発生する。完全に構えに入っていた武僧がこれを避けることはできない。光波に切り刻まれ、うぉっという声を漏らすしかなかった。
「遅かったか?」
「いいや、ちょうどよかった」
ツヴァイクが神崎に聞く。神崎は安心した様子でふっと微笑んだ。
「おのれ……傷が思ったより深いか。一時撤退だ!」
「逃がすかよ!!」
追いかけるツヴァイク。しかし屍人の山が立ちふさがる。悔しいが追いかけるのは困難のようだ。深追いは禁物。二人も一旦引くことにした。しかし武僧に与えたダメージは大きいはずだ。
大成功
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鈴木・志乃
あたし嫌いなんだよね
屍人を操るワザもこの状況も!
さァさ
派手に行きましょ大花火
咲かせて魅せましょ死出の花
UC発動
【祈り、破魔、呪詛耐性】も籠めた【歌唱の衝撃波】も合わせて
敵をガンガン【なぎ払う】よ!
戦争を嫌う民衆
自身の命すら懸ける侍達
その意志あたしが力に変えてやる!
一撃でも当たればそのUCは解除されんだろ?
【歌唱の衝撃波】を避けながら
あたしのUCまで回避できると?
やれるもんならやってみな
敵攻撃は【第六感で見切り】
光の鎖で【早業武器受け】からの【カウンター】
必要に応じて敵の死体を【念動力】で巻き上げ防御と攻撃に転用するよ
【オーラ防御】常時発動
楽しいことが大好きなパフォーマーである彼女にとっては、屍人を操る術もこの状況も好ましいものではないといえよう。
「さァさ、派手に行きましょ大花火。咲かせて魅せましょ死出の花」
【鈴木・志乃】はユーベルコード【意志の花(ファイアーワークス)】が発動する。破魔の祈りの込められた聖属性の光の大花火は、周囲の屍人を吹き飛ばしていく。それは戦争を嫌う民衆、自身の命すら懸ける侍達の思いを力に変えたようだった。さらに彼女の歌唱は衝撃波を放ち、屍人の雪崩を薙ぎ払っていく。それはまさに面白いように屍人は消し飛び吹き飛び、宙へ紙ように舞っていく。
だがそれを良しとしないものが一人いる。武僧である。
「おのれ猟兵、だがこれはどうだ!」
金剛力士の招来、彼の呼び声に反応して阿形と吽形の金剛力士が召喚される。それぞれ巨大で、また力も強い。しかしこの技に弱点があることを鈴木は知っていた。
「一撃でも当たればそのUCは解除されんだろ? 【歌唱の衝撃波】を避けながら
あたしのUCまで回避できると? やれるもんならやってみな」
「小賢しい小娘が! やれぃ!!」
阿形と吽形が怒涛の攻めを見せる。しかしそれを鈴木は宙を舞う木の葉のように紙一重で躱して見せる。彼女の六感が指示し、技を見切り、光の鎖で受け止める。そして反撃とばかりに動かなくなった屍人を念動力で浮かせ、投げつけた。それは狂うことなく武僧に直撃し、技が解除された。
「がっ! 貴様!」
「これで終わりだ!」
怯んだ武僧の懐に飛び込み、至近距離でユーベルコードを発動させる。眩い聖なる光が弾け飛び、武僧を遥か先まで吹き飛ばした。しかしまだ息絶えてないのか、屍人の行動は統率が取れている。
もう一度この屍人の山から奴を見つけるには体力が厳しい。そう感じた鈴木は一旦退くことにした。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
吸血鬼が使うゾンビとは少し趣きが違いますね……
どちらにせよ邪道外法の類い、滅ぼします
【属性攻撃】【破魔】で聖槍に破邪の炎を纏う
聖槍を縦横無尽に【なぎ払い】、【衝撃波】を起こして周囲の敵を【吹き飛ばす】
見晴らしが良くなったら武僧へ向かって吶喊(ダッシュ)する
――そこっ!
敵がこちらを見つけて迎撃をしようとしたら、【転身・炎冠宰相】で白い翼の姿へ変身
飛翔による急激な加速で迎撃タイミングを見誤らせる
天来せよ、我が守護天使――!
【怪力】を以って聖槍を叩きつけ、斬り打ち穿つ
錫杖を【聖槍で受け】流し、空いた胴を蹴り飛ばす(カウンター・踏みつけ・吹き飛ばし)
【全力魔法】で聖槍の炎を強大化し、超熱量で叩き斬る
吸血鬼が使うゾンビとは少し趣きが違う。だがどちらにせよ邪道外法の類いであることは間違いない。故に滅ぼすことに変わりはない。黄金の穂先の槍が破邪の炎を纏う。【オリヴィア・ローゼンタール】は目の前に広がる屍人を睨んだ。
「行きます!」
走り出すと同時に槍を振り抜く。聖なる炎が屍人を燃やし切り捨てる。槍が薙ぎ払われるたびに屍人の一部が宙に舞い、鮮血が美しくローゼンタールを彩る。さらに槍から生み出される衝撃波は、体液が枯れた屍人を軽く吹き飛ばし、その隊列に巨大な穴を開けた。
この異常事態、猟兵以外に誰が起こせるか。すぐさま猟兵の仕業と気づいた武僧は早速前線の様子を伺うべく前に出る。屍人が幾人も消し飛ばされ、見晴らしが良くなった戦場でローゼンタールを発見するのは容易い事だった。しかしそれは彼女からも同じである。
武僧は距離があるうちに読経を読み、攻撃力を上昇させようとしたが甘かった。
「天来せよ、我が守護天使――!」
ユーベルコード【転身・炎冠宰相(モード・メタトロン)】が発動、彼女の速度は一瞬にして時速4900キロに達し、武僧の懐へ飛び込んだ。もちろん驚愕し動きがほんの刹那止まるが、安倍晴明に戦地を任されただけあって優秀。すぐに意識を取り戻し、攻撃される前に錫杖を振り下ろそうとする。
しかしそれは彼女の槍によって防がれ弾かれ、空いた胴に怪力の乗った斬撃と蹴りが撃ち込まれる。武僧の巨体が軽々と吹き飛び、宙に浮いて防御も受け身も取れぬ武僧へ全力魔法を込めた聖なる炎が襲う。
「ぬがああああああああ!!?」
炎に焼かれ、屍人の集団地へと吹き飛んでいく武僧。しかしまだかろうじて息きがあるのか、集団の統率は崩れない。
「仕留めそこないましたか……まあいいでしょう、それより兵士たちを援護しましょう」
また集団に突っ込んだところで見つけられるとは限らない。同じ手を食うほど愚かではないとローゼンタールはあの武僧を評価した。ゆえに兵士たちを援護して、その負担を減らすほうが賢いと思った。ローゼンタールは仕留められなかったことを少し悔しく思うも、確かなダメージを与えられたと考えることにした。
事実武僧はもはや虫の息で、しかし退けば安倍晴明に首をはねられると頭によぎり、退くも地獄、進むも地獄に苦しめられていた。このエリアの指揮官討伐は近い。
大成功
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アレク・アドレーヌ
…成程。大体分かった(わかってません)
とりあえずぶっ潰せばいいんだな
ならサクッと片付けてしまうか…相手がそこそこデカブツで小回りが利かなさそうなのでUCを用いて速さに特化。
【ダッシュ】【早業】【ジャンプ】【吹き飛ばし】【逃げ足】の併用により一撃離脱戦法で応対。
あくまでも初見による印象からの選択なのでより効果的な攻撃手段(比較的弱い部分)があるならそこを狙って攻撃
アイリ・ガングール
ココココココ。火責め火責めじゃ。所詮指揮官以外は知能もない屍人なんじゃろ?燃やせばようよう燃え移るじゃろうて。
火を燃え移らせてどんどん数を減らさせようかねぇ。嫌やろ?せっかくの屍人の数が減って行くのは。けれど屍人じゃ対応しきれないよ?対象が出るしかないやでなぁ。
おやま、同じような事考えとる奴もおるかね。っていうかアレか。燃えとるっぽいのが大将かねぇ。
じゃあいっちょ行こうか。金狐霊糸を駆使して《ジャンプ》に《スライディング》しつつ《地形を利用》して移動していくよ。使うは新谷守・宗光。《戦闘知識》でずんばらりと。いやさ、護国だなんだ言うても結局みどもも人でなし。戦は、楽しいねぇ。
「ココココココ。火責め火責めじゃ。所詮指揮官以外は知能もない屍人なんじゃろ? 燃やせばようよう燃え移るじゃろうて」
そう快活に、かつ妖艶に笑うのは【アイリ・ガングール】。彼女がとった行動は単純明快、兵士たちに油を撒かせ、火矢を放たさせたのだ。ゆえに油に溺れた屍人達は乾いていたこともあり勢いよく燃えだした。その炎は止まることを知らず、津波のように火が燃え広がる。まさに炎の海。痛みを感じることができない屍人は炎を止めることができず次々と飲まれていく。それは誘蛾灯に誘われる虫のよう。
「ココココココ。いやさ、護国だなんだ言うても結局みどもも人でなし。戦は、楽しいねぇ。……おんやぁ?」
死の匂いが炎に乗って運ばれてくる中、それはガングールの目にとどまった。一つ燃えてない集団がいた。おそらくあそこが武僧の居る場所か。ニヤリと嗤い、傍でいつでも突撃できるといわんばかりに準備運動する【アレク・アドレーヌ】を見つめる。その意味をアドレーヌも理解していた。彼はクラウチングスタートの構えをとる。
「じゃあいっちょ行こうか」
刹那二人が消えた。ガングールは自身の髪や尻尾の毛をより合わせて呪術で作り上げた糸である【金狐霊糸】を上手く使って、アドレーヌはユーベルコード【スタイルチェンジ・スピードシフト】を使って、それぞれ常人では目に捕らえられない速度で、炎の中を駆け抜けていく。一方は浮遊するように、一方は風のように走り抜く。その速度で生まれた余波が、炎の壁に丸い穴を開けた。
さて、先ほどから自身の周辺の炎を消すのに必死になっているのは武僧。生まれた大火はもはや水ではどうしようもない。風にあおられ、燃料がいくらでもあるこの状況ではもう止めようがない。
「ここまでかっ!」
流石にもうどうしようもない。首がはねられる覚悟で退くしかない。しかしここで自爆を覚悟して突っ込んでおけば、奥羽に大きな被害がもたらせたのに。退くことを選択した武僧は、優秀ではあったが保身に走りすぎたといえよう。
故に死角から高速でやってくる二人に気づけなかった。まず一撃、鋭い蹴りが武僧の腰を打ち砕いた。突然の激痛、驚き声が出ない。それが猟兵の攻撃であると気づくのに数秒時間を必要とした。しかしその数秒にも攻撃はやまない。蹴りが、アドレーヌの重いそれが間髪入れずに襲い来る。しかしやられっぱなしではない。もはや逃げることはできないと、この連撃から理解した武僧は、ここが死に場所と心に決めて奮い立つ。
「そこか!!」
ユーベルコード【狛犬噛み】を発動させて、変形させた腕でアドレーヌを喰らおうとする。しかし喰われるそのギリギリで彼は踏みとどまる。地面が咄嗟の停止に抉れる。だが止まっただけでは二度目の攻撃を避けれない。
「勝ったぞ!!」
武僧が喜びを隠すことなく攻撃を再開しようとした。しかし、仮面の下でアドレーヌは笑っていた。
「ああ、勝ったな」
「勝ったのぅ」
アドレーヌのつぶやきに遅れて、もう一つのつぶやき。それが武僧に聞こえたとき、武僧の腕は斬れ飛んでいた。ユーベルコード【冥門開錠・屍山血河・黎明一閃(シヲコエ・チニヌレ・アスヲヒラク)】。ガングールの一閃がきらりと光った。
【新谷守・宗光】、既に滅んだ新谷の国随一の名刀。ユーベルコードによって真の姿を解放したその刃は、悪を断ち、明日を救う。遅れて二閃。すらりと武僧の胴が飛んだ。斬れ飛んだ胴は炎の中に飲まれあっという間に黒へと変わっていく。武僧の苦痛の叫びがあたりに響く。
「の、信長様ぁ
!!!!」
血の一滴残すことなく、武僧は灰へと還った。それに合わせるように、屍人も統率を失い、燃えながらまばらに動く。もはや放っておいても、炎が別の屍人に移るを繰り返し、勝手に焼け死ぬだろう。
このエリアの屍人の軍団は焼け滅びた。次のエリアを鎮圧しに向かうのが吉だろう。こうしてサムライエンパイヤでの戦争の焔は舞い上がったのであった。
【END】
大成功
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