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水が黒へと誘った

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●選別
「オラ行け!オラア!そこだよボケ!何でもっと死ぬ気で行かねえんだ!?アア!?」
 ダークセイヴァー。人の価値が極めて低いその世界の辺境の村のどこかで、今日も人々はオブリビンに支配され、そして蹂躙されていた。
 どこかの城の中だろうか、広く大きな、大広間のようなその空間。その空間で行われているのは、争いであった。
「うっ……うえ、え、もう、いやだよう……」
「いたい、いた、いたいよう。でも、たたかわないと……あたし……」
 そこでは、少女たちが鎌や鍬、包丁などを持たされて、互いに戦う光景が広がっていた。
「はーやーくー戦えっつってんだろっがァ!アア!?オラ行けよそこだよボケッ!全員ぶっ殺して最後の一人になるまで戦ったらよォ、ここから助けてやるって言ってんじゃねえか!アア!?今死ぬか?!」
 巨大な斧を片手に構える闘奴牢看守と思しき人物が、戦おうとしない子供に折檻を行う。すでに端の方には動かなくなって久しい子供の姿もある。
「死にたくない、しにたく……で、でも、もう殺したくなんて……」
「え、えへへ……ご、ごめんなさい、すいません、すいません、神さま……あたし、もう……あなたの教えを……」
 どうやら最後の一合が済んだらしい。看守は最後まで立っていた子供をどこかへと連れていく。そこには、黒衣に身を包んだ何者かがいた。
「ゼラ様ァ、今回の勝者が決まりやしたよォ。しかも今回は……どぅるるるるるるる……だぁん!なんとォ、結構可愛い子だァ!」
 看守は正に喜色満面といった様子で報告を済ませていく。報告の内容は、今回の参加者が何人で、この子はどんな風に生き残ってきたのか。そんなことである。
「……顔を見せなさい」
「うス。オラ、ガキィ!とっとと寄ってゼラ様に面を見せンだよ!」
 既に言葉を失ってしまったかのように、呆けた表情で歩み寄る少女の顔を、黒衣のオブリビオンは一目見ると、こう言った。
「ん……趣味じゃないわね」
「ッたァァァァァ!またですか!ちッくしょォ、今度は良い線言ってると思ったんだけどなーッ!」
 それじゃ、コイツは好きにして良いンすね?明日また持ってきますわァ、などと看守はゼラと名乗るオブリビオンに発言すると、女の子を肩に担いで部屋を後にした。
「ンッンー♪今日はどうすっかなーッ!蛇共に食わせて悲鳴を聞くのはこないだやったしなー、縛ってウジに食わせっか、酒で造った池に落として溺れさせるか?悩むぜ、ウッヒョア!」
 少女は看守の声を聴いて、誰にも聞こえないような声を、喉の奥からわずかに絞り出した。
「……さむい……だれか……かみ、さま……もしいらっしゃるのなら……あたしを、この、せかいを……」
 言葉を言い終わる前に、少女の意識は恐怖によってブラックアウトした。

●地下水路の中を進んで
 納・正純は部屋に入ってきた猟兵を確認すると、いきなり本題に入った。
「ダークセイヴァーで、オブリビオンの存在を感知した。そいつらを倒してきて欲しい。名前はゼラ。女吸血鬼のゼラだ」
 更に詳しく伝えるなら、今回の事件を起こしたのは女吸血鬼、ゼラがこの世に残した意思だという。彼女は死後、自身の遺髪に強い念を残したらしく、それを部下に編ませ、黒衣としたらしい。
 その黒衣は、猟兵やオブリビオン、一般人を問わず、少女であればどんな存在にも憑依し、少しづつ相手の自我をゼラの自我で塗り潰すというのだ。恐らく、今回の事件の狙いも、自身の新たな器を求めてのことだろう。
「どうやらこいつは、多くの村から少女たちを大量に誘拐して回っているようなんだ。既に多くの少女たちがゼラの被害にあっている」
 正純は今回ここでコイツを発見できたのは僥倖だと続け、奴の討伐に力を尽くして欲しいと猟兵たちに言う。
「今回、オブリビオンが潜伏している城への道はすべて閉ざされている。だが、侵入する方法はある。地下だ」
 地上がダメなら、地下から。ゼラの潜伏している古城には、元々大昔に貴族が住んでいたという。そして、その城には貴族が脱出するための地下通路が存在しているという話だ。
 しかし、元々貴族が緊急時に脱出するための通路だったが故に、城へと易々と侵入するような作りにはなっていないという事。中は迷宮のように入り組んでいるらしい。
「入口は既に割り出している。猟兵の皆にはまず、地下通路に侵入した後、ゼラの潜伏している城へと繋がる道を探し出して欲しいんだ」
 だが、気を付けて欲しい。正純はそう言って説明を続ける。どうやら地下通路は老朽化の影響で、どこかから水が湧きだして、半ば地下水路のようになっているという事だった。
「そのため、敵の潜伏している城への道はますます分かりにくくなっているだろう。難しいとは思うが、そこ以外にオブリビオンの潜伏している城への侵入経路は無いんだ」
 手掛かりとなるのは、そこが貴族によって大昔に建てられた地下通路であるという事。人為的に建造された通路である以上、何かしらの法則が存在すると考えて良いだろう。
 また、もしかしたらオブリビオン達が城で行っている悪行の痕跡も、どこかから流れ着いているかもしれない。そういったものの流れを見つけ出してみるのも効果的だろうか。
「侵入の詳しい方法は各自に任せる。厳しい作戦だが、何とか頼む」
 敵に繋がる道を見つけ出してくれ。正純はそう言って、作戦説明を締めくくった。


ボンジュール太郎
 ボンジュール太郎です。
 初のダークセイヴァーなのでがんばります。
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第1章 冒険 『地下水路』

POW   :    濡れるのも構わずとにかく走る

SPD   :    隠し通路や扉を探してみる

WIZ   :    水の流れや光を頼りに出口を探す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

荒谷・つかさ
【WIZ】【地形の利用】
何処かから水が湧き出しているなら、それを逆に利用できないかしら。

例えば……それだけ血生臭いことをやらかしているなら、恐らくはそういう血の混じった排水が流れているルートがあるはず。
ルートが多数あって絞れないならそれでも構わないわ。
何故なら、それは全て当たりってことだから。
火の無い所に煙は立たず……血が流れてきているなら、そこは通じているってことよ。
その中で、更に空気の流れが感じられる空間ならベターね。
光が射している地点なら尚良いわ。

一応、探索する時は迷わないように目印も残しながら動くわ。
きっと、後々追いかけてくる人達の役にも立つでしょう。


アトシュ・スカーレット
【心情】
殺し合いさせて、最後には何もかも奪い去る?
ふざけんな!そんな奴、ぜってーぶっ飛ばす!

【判定:WIZ】

【行動】
水の流れは指で流れている方向を確認しながら流れに逆らうように【追跡】するよ
もし、死体とかが流れれば、冥福を祈りたいなぁ…

「うーん…流石に地下迷宮、しかも水路じみてるのは大変だなぁ…。見つからないように行けるかな…?」
(証拠を発見した場合)
「…!!連中、人を何だと思ってんだ…!!」
「辿り着けますように…!!」


赭嶺・澪
【SPD】隠し通路や扉を探してみる
私は壁面や天井に隠し通路がないか調べてみるわ。
迷わないようにナイフで壁面に矢印を刻みながら慎重に奥に進んでいきましょう。
見逃してしまったら元も子もないし。

侵入防止のために迷宮になっているとはいえ、『貴族が脱出するための地下通路』であるならば、脱出したいのに自分達が迷った、なんてバカな作りにはなっていないはず。
脱出するために何らかの目印があるんじゃないかしら。

痕跡が流れてくる、というのであれば技能『追跡』を利用しながら水の流れの上流を目指してみましょう。



●許されざるはその所業
「殺し合いさせて、最後には何もかも奪い去る?……ふざけんな!そんな奴、ぜってーぶっ飛ばす!」
 アトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)は、苛立ちを隠そうともせず、地下通路の入り口に繋がる墓地の前で吠える。
 怒りを声に変え、作戦開始前に少しでも自身の精神的ストレスを和らげようとしているのだろう。実際、作戦行動を開始してからは全ての行動が結果に直結する。既に油断は禁物なのだ。
「気持ちは分かるわ。でも、そのためにまずは敵に繋がる道を見つけ出すことが肝要よ。それが猟兵の、私たちの仕事だもの」
「ええ。澪さんの言う通り。これ以上の被害の拡大を許しちゃいけない。そのために、ここは抑えて。……その怒りは、奴らに直接ぶつけましょう」
 アトシュを嗜めるのは赭嶺・澪(バレットレイヴン・f03071)と荒谷・つかさ(護剣銀風・f02032)である。三人は同タイミングで出発したこともあり、侵入時に力を合わせることとしたらしい。
 すでに来る人も絶え、朽ちた墓石に視線を遣るのは死肉喰らいのカラスたちだけ。そんな墓地から、彼らの作戦は始まった。

 貴族の墓を暴き、棺桶を開けると、現れたのは骸ではなく地下迷宮への入り口。階段を降りると、そこは確かに人に手によって整備されていたのだろう跡が見える、地下通路が広がっていた。
 少し進んだだけで、停滞した空気は行き場を無くした妄念のように彼らの体にまとわりついてくる。ぼろぼろになっている道の石煉瓦は、少し手を触れるだけで砕け、住処を壊された虫たちが蠢き、飛び出してくる。
 饐えた悪臭、重苦しい空気、異常に冷たい足場を覆う地下水、汚らしい害虫と鼠、枝葉のように広がる地下迷宮。全ての要素が、侵入する物を拒んでいた。一般人なら怖気付くような通路を、しかし猟兵たちは進んでいく。
 この先にいるであろう、諸悪の根源を倒すためだ。どうやら、入口に入ってすぐは水も少なく、ただ大きな水たまりが出来上がっている程度のものであるらしい。
「うーん……流石に地下迷宮、しかも水路じみてるのは大変だなぁ……。見つからないように行けるかな……?」
 既に靴を若干濡らしながら歩くアトシュは、広がる地下迷宮を見て、今後の方針にため息をつく。実際のところ、このままあてどなく彷徨い、体力と集中力を切らすばかりでは相当に厳しい。
「……何処かから水が湧き出しているなら、それを逆に利用できないかしら」
「それはオレも思ったけど……流れに逆らっていこう、ってこと?」
 最初に意見を出したのはつかさだった。彼女はこの先の行きつく先、オブリビオンの古城について考えを巡らせる。
 水のない場所でわずかに足を止め、水の追跡を考えていた三人は議論を交わし、古城への正しい侵入経路を探し出すべく知恵を出し合っていく。
「例えば……それだけ血生臭いことをやらかしているなら、恐らくはそういう血の混じった排水が流れているルートがあるはず」
「そういった痕跡が流れてくるというのであれば、追跡には自信があるわ。それを辿って、水の流れの上流を目指してみましょう」
「あ、そうか、血か……!もしかしたら、他にも……死体とか、流れてくるかもだな……」
 もしも少女たちの遺体が流れてきたら、冥福を祈りたいなと想像力を働かせてしまうアトシュ。しかし、次の瞬間には他の二人同様頭を切り替えたようだ。
 ここに潜入した目的は、これ以上の被害を出さないため。無駄に足踏みしている時間は無い。
「侵入防止のために迷宮になっているとはいえ、『貴族が脱出するための地下通路』であるならば、脱出したいのに自分達が迷った、なんてバカな作りにはなっていないはず。脱出するために何らかの目印があるんじゃないかしら」
 澪はそのように意見を出し、なるほど、確かにそれは一理あるかもと他の二人は頷く。何かしらの目印が見付からずとも、惨劇によって流された血がオブリビオンに繋がる目印になることだろう。もちろん明確な目印が見付かれば、言う事は無い。
「でも、血が流れてくる道が……例えば複数あったら、その時はどうするんだ?」
「それでも構わないわ。何故なら、それは全て当たりってことだから」
 火の無い所に煙は立たず……血が流れてきているなら、そこは敵の住処に通じているってことよ。地形利用に自信を持つつかさはそう続けると、更に暗闇の中を進み始めた。

 わずかな明かりしかない真っ暗闇の中で、三人は静かに進んでいく。水を踏む音と、時折澪とつかさが目印として壁を傷付けていく音以外、聴覚に頼れる情報もない。
 視覚情報は既にアトシュの電脳ゴーグルであるCronosと、そして澪の暗視ゴーグルだけが頼りとなっていた。そして、彼らは迷い、行きつ戻りつしながら、水浸しの地下通路を進んでいく。
 澪は壁面や天井に隠し通路がないか、常に暗視ゴーグルを利用して調べているようだったが、未だにそう言った反応は出てこない。それでも先に進む彼女たちは、迷宮内でついに「それ」を見付けた。見付けてしまった。
「待って、探査レーダーに反応がある。……何かが小刻みに、揺れるように動いているわ」
 それに最初に気付いたのは、手持ちの探査レーダーを併用していた澪。すぐそこを曲がった角に、なにか動くものがある。彼女たちは曲がり角に近付き、そこで他の二人も感付いた。
「……ッ!二人とも。……この匂い」
「これは……!くっ」
 大きな水溜まりが進行を邪魔する通路を進み、ようやくわずかに水の流れを発見した彼らは、そこでわずかに慄いた。そこにあるのは、まるでーー。
 そこはどうやら、どこかから流れてきた水が停滞し、そして溜まっていくだけの場所。匂いから分かる。強烈な死臭だけで分かってしまう。
 地下水路の一角。角になって水の流れが曲がる場所のはずのそこには、夥しいまでの少女の遺体と、遺体だったもの、そして血と臓器とが淀み、腐り、塊りになっていた。中には血が結晶化してしまったような箇所さえある。
 そして、「それ」が本格的な地下水路の流れをせき止めてしまっていたのだ。近付くまで匂いがそれほどしなかったのは、地下水によって冷やされていたからだろう。
「……ッ!!連中、人を何だと思ってんだ……!!」
「こんなの……ッ!許されることじゃない……!」
「……探査レーダーに引っかかっていたのは、新しく流れてきた女の子の手が、水流によって動いていた反応……」
 百戦錬磨の猟兵である三人も、目の前の光景に一瞬冷静さを欠いてしまう。眉をしかめ、目をそむけたくなる。だが、ここで歩みを止めるわけにはいかない。猟兵たちはかつての少女たちを悼み、冥福を祈りながら、「それ」を退かし、今できる限りの丁重さで弔った。
 城の様々な場所から棄てられ、あるいは適当に放置された少女たちがオブリビオンに繋がる水の流れをせき止めてしまっていたのは、痛ましい皮肉である。気付けば、少女たちの遺体のほど近くには、壁に血で何かを書こうとしていたような痕跡も見受けられた。
 流れる水で既に血文字は掠れて見えないが、こんな地下にまで生きたまま流されて、死んでいく彼女たちの苦悩はいかほどのものだったろう。
 水の流れが復活し、地下通路の中を赤黒い水が流れ始めた。強烈な血の匂いが辺りを覆う。後からくる猟兵たちもこの流れを逆算し、澪とつかさが残した目印を併用すれば、三人が到達した「ここ」まで苦も無く辿り着けるはずだ。
「仕事を……完遂しなきゃね」
「……行きましょう」
「ああ。……辿り着けますように……!」
 三人は紛れもなく功績を残し、大いなる活躍を行ったとさえ言える。大活躍と言えるそれだ。しかし、地下通路の半分ほどを踏破したはずの彼女らの表情は、重い。
 猟兵たちの心を晴らすには、そして少女たちの無念を晴らすには、オブリビオンを討伐するより他にないのかもしれなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミルフィ・リンドブラッド
…何も悪いことをしていない女の子をさらって未来を奪う。到底許せることじゃねぇです。こうしてる今も命が奪われているかもしれねぇのですフィーが吸血鬼の居場所を見つけてやるです

【POW】…フィーは体力しか取り柄がないので地下通路をとにかく突っ走って探すくらいしか思いつかねぇのです。あてもねぇですし通路の入り口の壁に左手をついて出口に行き着くまで走り続けてやるです。力こそパワーです。大体突っ走って探してればなんとかなりやがるのです。
手で触って薄い壁やヒビが入っている壁を見つけたらユーベルコード『終焉の悪魔』で攻撃して壁をぶち抜いくです。隠し通路があったらラッキーです?

アドリブ、他者との絡み等歓迎です。


オリヴィア・ローゼンタール
POW
死してなお人に仇成す邪悪な吸血鬼め……!
必ずや遺髪の一本も残さず滅ぼしてやります

体力に物を言わせて駆け抜けます(【ダッシュ】)
右手法……ひたすら壁沿いに進み続ければいつか必ず出口へ辿り着きます
槍で壁や床に傷を付けて目印にして(【視力】)、同じところをぐるぐる回らないように(【学習力】)
びしょ濡れになっても炎を操ること(【トリニティ・エンハンス】【属性攻撃】)には長けているので、乾かすことで足跡などを残すこともないでしょう



●何者にも止めること能わず、彼女らはただ進むのみ
「何も悪いことをしていない女の子をさらって未来を奪う。到底許せることじゃねぇです」
「死してなお人に仇成す邪悪な吸血鬼め……!」
 猟兵たちは、通路内に残された目印を辿って素早く移動を行っていく。オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)とミルフィ・リンドブラッド(ダンピールの竜騎士・f07740)の二人も同様だ。
 彼女ら二人は、先に訪れていた猟兵たちがそのままにしておくには忍びないとして、僅かにでも手の施された少女たちの遺体と血溜まりを見やると、決意を新たにする。オブリビオンの行いを看過できないという強い気持ちは、出身世界がどこであろうと変わるものではない。
「ミルフィさん……、と仰いましたよね?見れば、この先の分岐は今までよりも一段と複雑になっている様子。どうでしょう、手分けして探してみませんか?」
「こうしてる今も命が奪われているかもしれねぇのです。フィーが……ううん、フィーたちが、必ず吸血鬼の居場所を見つけてやるです。もちろん協力するのです」
 彼女たちは元々知り合いでも何でもない、この作戦で会ったばかりの、冷たく言ってしまえば他人である。しかし、オブリビオンの行為によってもたらされた犠牲が、彼女たちの意志を一つにしたのだろう。
 今も捕らわれているであろう少女たちを少しでも早く助けるため、二人は意見を出し合っていく。
「私は右手法……ひたすら壁沿いに進み続ければいつか必ず出口へ辿り着くという、この方法で進んでみようかと思っています」
「それじゃあ、フィーは左手をついて走り続けてやるです。その途中に行き止まりがあったら、目印を付けていけば無駄になることもねえです」
 相談は簡潔に、そして十全に行われる。二人の考えはどうやら似たようなものだったらしい。そのため、話し合いもわずかな事柄を言えば充分であった。
 そして、二人の前にいよいよ多くの分帰路が姿を現した。進んできた道から見えるのは、隣り合った四本の道。さらに、その四本の道の先にもそれぞれ分岐があるように見える。
 貴族が城から通って出る時はまっすぐに歩くだけで良い仕組みだが、しかし城へ侵入しようとなると非常に厳しい作りになっているのは、どうやら本当のようだった。
「もしかしたらこの先、手で触って分かるような仕掛けや隠し通路があるかもしれねぇのです。オリヴィアさんも、一応気にしてみて欲しいのです」
「ええ、分かりました。ミルフィさん、ゴールに……敵の古城にたどり着いたら、私の炎で足元を温めてあげますね。炎の扱いには長けていますから。……それでは、また後で。気を付けてくださいね」
 二人はそう言って別れると、それぞれ凄まじいほどの速さで駆けていく。足場のぬかるみにも、地下水の冷たさにも、まるで興味がないかのように。
 ただただ走る彼女らの狙いは、オブリビオンだけ。そのために自身の体力がいくら削れようが、どれだけでも走ってやろうという気迫すら感じた。恐らく二人は、作戦終了時までその歩みを止めないのだろう。それこそ、敵を倒すその時まで。

 オリヴィアは、相当数の分岐をものともせず、逡巡することなしにただ走る。ひたすらに走る。道中に野生動物や虫の類、時には停滞した少女の遺体を見ても、彼女は歩みを止めない。今は一人一人に祈る時間は無いからだ。
 時には血混じりの水たまりで見えなくなっている朽ちた通路の穴に足を取られ、足を捻りそうになる。それでも、彼女は止まらない。いや、止まろうとしていないのかもしれない。
「あの少女たちのことを考えれば、この程度なんの障害にも……!」
 槍で壁や床に傷を付けて目印にし、体力に物を言わせて通路を駆け抜ける。オリヴィアの槍、破邪の聖槍が通路の苔むした壁にがりがりと異音を響かせる。地下通路の中には、既に流れる水の音とオリヴィアの立てる音しか聞こえない。
 その音は分岐の右端から聞こえたかと思うと、音が大きくなった次の瞬間にはすぐさま次の分岐に飛び込んでいく。異音は即ちオリヴィアが地下迷宮を踏破する音であり、彼女のグリーブが鳴らす足跡と同義であった。
 分岐を片端から潰していく彼女は、行き止まりにまでたどり着いた分岐の前には大きく印をつけ、この先が行き止まりであることを他の猟兵たちが分かるようにしていく。
「どこだ、吸血鬼!必ずや、遺髪の一本も残さず滅ぼしてやります!」
 オリヴィアを突き動かすのは、猟兵としての義務感故か、それとも怒りなのか。それは恐らく、今の彼女ですら分からないことだろう。
 時を同じくして、地下通路の大量の分岐点をオリヴィアとは反対方向から虱潰しに進んでいくのはミルフィだ。
「……フィーは体力しか取り柄がないので、地下通路をとにかく突っ走って探すくらいしか思いつかねぇのです」
 だからこそ思いがけず協力者が見付かり、そしてその協力者と作戦が合致するとは思わなかったという心持ちだろう。彼女もまた地下水路の中を、障害をものともせず進んでいく。
 オリヴィアの立てる音こそ聞こえないが、彼女もまた手にした黒剣で迷宮を反対側から潰していく。全ての道を通り、印さえ付けていきさえすれば、果ての無い地下の迷宮であっても必ずゴールまでたどり着けるはず。
 彼女たちはゆっくりではあるが、しかし確実に、着実にオブリビオンの住処へと迫っていた。
「力こそパワーです。大体突っ走って探してればなんとかなりやがるのです。……あれ?」
 ミルフィは、自分が通った壁に傷を付けていく道中で、僅かにその音が甲高くなったのを聞き逃さなかった。足を止め、流水に体を冷やしながらもその周辺を精査していく。
 黒剣だけではなく手でも直に触れ、ぼろぼろになってネズミの巣のような有様になっているこの壁の向こうに確かな空間が存在するのを確認すると、自身のユーベルコード、【終焉の悪魔】を発動する。
「命を食らい常闇を統べる悪魔よ、契約に従い……」
 眼前の壁を破壊せよ。彼女がその詠唱を唱え終わるや否や、ミルフィの二倍ほどの巨躯を持つ悪魔は、手にした巨大な剣で薄い壁を破壊した。
「ゲホ、……これは……隠し通路っぽいです?」
 瓦礫の破片と鼠の糞とが土埃となって舞い、周囲を支配したのは一瞬のこと。淀んだ通路に、ミルフィが破壊した壁の向こうから風が吹き、わずかに奇麗な水が流れ出てくる。
 地下水に血や死体が溜まってない所を見ると、この道はもしかしたらオブリビオンたちですらまだ見付けていない、城からの正規の脱出経路かもしれない。
 土埃が辺りから去ると、そこにはやはり明らかに人の手によってつくられている通路が見えてきた。奥には階段も存在している。
 見れば、ミルフィが壊した壁はいわゆる仕掛け扉のようになっていたらしい。破壊して埋没した瓦礫の中から、恐らくは城から脱出するときに仕掛けを動かすため用いるはずのものだったであろうレバーが見付かった。
 彼女ら二人の捜索によって、地下水路は更にその姿を変えていく。悪鬼外道のオブリビオンへと、猟兵の手は着実に近づいていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴァーリャ・スネシュコヴァ
……ここが、ダークセイヴァー? 暗くてジメジメしてて…本当に俺はここで生まれたのかな…

いや、そんなことより猟兵の仕事だな!ここできちんと討伐しておかないと、どんどん被害が広がってしまう。許せぬ輩だ!
ふむ、水が湧き出してわかりづらいなら……ここは俺の出番だな!氷の【属性攻撃】を応用して、【第六感】で水の流れを把握し辿りながらどんどん水面を凍らせて道にしていくぞ。凍らせながら他のみんなを先導していけば、水に濡れずに地下水路を進める筈なのだ!あと、誰かが隠し扉とかを探すときの足場にもなれたらいいな?

凍らせる道の途中に何か不審なものや敵がいた場合、そちらを優先して接触・攻撃を試みるぞ!


藤塚・枢
SPD

私は咎人殺しだからね、しかも人形遣いだ
この世界の神様とは反りが合いそうにないし、奇跡は見せてあげられない
けれどあのクズ共を、擦り減って一片もなくなるまで引き摺り回す手品なら見せてあげられるよ

着替えやタオルくらいは持っていくか
水中に何かあるかも知れないしね

城の地下というのなら、どこかに城内へ続く階段があると考えるのが妥当か
暗視を駆使して不自然な壁や天井を探る
風の向きや音、不自然に水が流れ込んでいたりするところは特に注視

漂流物も要チェックだね
ま、ダストシュートにしているかどうかは知らないけれど、天井に穴とか開いている可能性はあるかもしれない
高いor遠くて届かないところは、ユーベルコートで対応



●「水」が「黒」へと誘った
「……ここが、ダークセイヴァー? 暗くてジメジメしてて……。本当に俺はここで生まれたのかな……」
 地下迷宮の別ルートを行くのはヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)。彼女は自分の出身の世界のこと、自分の出生の記憶を失っている。
 夥しい死臭と血が混じった水が流れ、生きるものは死肉を食んで生きる羽虫と鼠程度のものしか見ない。既に鼻は正常な機能を失いかけている。そんな地下通路の中で、一体彼女は何を思うのだろうか。
「……その問いはとても難しいね。私は咎人殺しだからね、しかも人形遣いだ。この世界の神様とは反りが合いそうにないし、奇跡は見せてあげられない」
 それに、君の問いに答えることも出来そうにない。誰に言うでもなく呟いたヴァーリャの疑問にそう言葉を返すのは、同道する藤塚・枢(スノウドロップ・f09096)である。
 しかし、彼女はヴァーリャの方に向き直って、けれど、とつなげてこう言った。
「あのクズ共を、擦り減って一片もなくなるまで引き摺り回す手品なら見せてあげられるよ。それが私たちのーー」
「……猟兵の仕事で、少女たちへの手向けだな!うん、ここできちんと討伐しておかないと、どんどん被害が広がってしまう。許せぬ輩だ!」
 赤い河を溯ることができるのは、今を生きる生者だけ。ここで立ち止まり、諾々と流れに従ってしまっては、死者と何も変わらない。既に道半ばまでは先達の猟兵たちが残してくれた目印によって進んでいるはずだ、ここで足を止めてどうとする。
 猟兵としての責務を思い出したヴァーリャと、その様子を見てアンニュイに、しかしわずかにほほ笑む枢。彼女ら二人は、道中に見かけた少女たちの亡骸の山に恥じぬよう、再度行動を開始した。

「ん、……参ったな、ここから先は地下水が至る所から湧き出しているようだ。それに流れも速い」
 血の流れも追いにくいな。枢はそう言って僅かに足を止める。今までは膝程までだった水位も、水かさが明らかに増したことで高くなり、更に彼女らの侵入を拒んでいるかのようだった。
 水量が増えて流れも速くなり、彼女たちの腰元までが浸かるほどになった水流は、強烈な冷たさを伴って猟兵たちの足取りを重くする。
 二人は一度水があまり流れてこない、分岐している道の出っ張りに移動すると、これからの移動方針について話し合うことにした。
 感覚的にはもう相当奥まで進んできているはず。枢は暗視を用いて分岐の先、最も水の流れが強くなっている方向へ目を凝らすが、やはり最奥までは良く見えない。
「城の地下というのなら、どこかに城内へ続く階段があると考えるのが妥当と思いここまで来てみたが……この流れは、少し厳しいね。他の道から当たってみようか」
 ここまで来てまた虱潰しかと思われたその瞬間、ヴァーリャが意見を出した。
「ふむ、水が湧き出して進みづらいなら……ここは俺の出番だな!任せて欲しい!」
 何か考えがあるのかい?と尋ねる枢に、ヴァーリャは言葉ではなく行動で示すことにしたようだ。
 彼女はルーンソードであるスノードームと、レガリアスシューズであるトゥーフリ・スネグラチカを構えて、自ら濁流の中に入り、機を待つ。
「俺の氷なら、出来るはずだ……!」
 待つ。待つ。彼女の身体が冷水をもろに被って冷えていく。それでも、ヴァーリャは待ってーー。そして、その時が来た。水位がわずかに下がった瞬間、彼女は高くジャンプし、流れる水の上部分のみを瞬時に冷凍する。
 左右の壁を巻き込んで瞬間的に冷やされた水は、厚みのある氷となり、流れの上にただあるのみ。ヴァーリャは氷の属性攻撃を応用して、水面を凍らせて歩けるような道に変えたのだ。
「あとは流れの上のみを凍らせながら俺が先導していけば、水に濡れずに地下水路を進める筈なのだ!いかがかな、枢!」
「これは……考えたな。でも、キミの体がびしょぬれじゃないか?ほら、これを使うと良い」
 枢はヴァーリャの手を取って氷面の上に上がると、彼女にタオルを差し出した。元々は水中に何かあるかも知れないとしての準備であったが、こういう使い方も無しではないだろう。
 礼を言うヴァーリャと、お互い様だと応じる枢。二人はそのまま、ヴァーリャの先導で氷の道を作り出して進んでいく。そして血の量が多く流れる方向へ向けてほどなく進んだ頃、枢が何かを発見した。
「待ってくれ、あそこの天井。なにか不自然に水が垂れていないか?流れるではなく、滴るというか……」
 そこは地下通路の分岐の先、行き止まりになっている場所の一つ。二人は不審な天上の真下まで水を凍らせて進むと、急速に凍って空気を取り込み、白くなった足元の氷面に赤黒い雫が落ちたのを目にした。
「これは……!血が滴っているのか」
「ダストシュート……のような物かは分からないけれど、ここの天井、調べてみる価値はあるね」
 枢は氷の足場の上から【颯の歩法】を発動すると、天井付近を自分の手で触って調べていく。どうやら、ここだけは石煉瓦が相当もろくなっているようだ。ずっと水を吸った結果柔らかくなっているような、そんな印象を受ける。
 ヴァーリャはそれを見て氷の足場を更に上へと積み上げ、調査の手助けを行う。そして、二人がその天井にわずかな刺激を与えると、相当脆くなっていたのだろう地下通路の天井は簡単に崩れ、古城の一室への道が顔を出した。
「飛び回るのはちょっと疲れるんだ、助かったよ」

 城への侵入を果たした彼女らが見た光景は、血と、そして惨い状態で放置されている少女たちの死体。中には服を剥かれたり、四肢を失っている子も見受けられた。そこはどうやら、看守が少女たちを拷問する部屋である様子。
 彼女たちの身体から流れ出た血や涙の水分が、城の床に敷かれた石煉瓦を長い年月をかけてわずかに脆くし、地下通路に滴っていたのだろう。
「これは……!こんな、酷い……」
 二人の猟兵はこと切れている少女たちの身体に布をかけてやると、少しの間黙祷を行う。そんな彼女らに、声をかける人物がいた。
「お、おねえ、ちゃん、たち……だれ……?いじわるな、あの、こ、こわ、こわいひとじゃない……かか、かみ、さま……?」
 その声を発したのは、高濃度のアルコールを全身に浴びたのだろうか、身体中が爛れたように灼け、真っ赤になっている少女。既に目も殆ど見えていないようだが、まだわずかに息がある。
「私たちは猟兵だ。キミ達を助けに来たんだ。待っていろ、今治療をーー」
 枢はその子の手を取ると、痛くないように優しく握る。彼女の言葉を遮り、目の焦点も合わないまま少女は言った。
「りょう、へい、さん……?わ、わたしね、か、かみさまの教えを、守れ、なかった……。……人を、人を殺しちゃ……、いけ、いけないのに、わ、たし……」
 これは、その罰だったのかなあ?少女は途切れ途切れの声でそう二人に問いかけると、枢の手をつないだまま静かに息を引き取った。
 これ以上、オブリビオンによる被害を許すわけにはいかない。猟兵たちの反撃が、古城の下層から始まろうとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『闘奴牢看守』

POW   :    ボディで悶絶させてからボッコボコにしてやるぜ!
【鉄製棍棒どてっ腹フルスイング 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【鉄製棍棒による滅多打ち】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    チェーンデスマッチたこのやろう!
【フックと爆弾付きの鎖 】が命中した対象を爆破し、更に互いを【鎖についてるフックを肉に食い込ませること】で繋ぐ。
WIZ   :    嗜虐衝動暴走
【えげつない嗜虐衝動 】に覚醒して【『暴走(バイオレンス)』の化身】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●反撃開始
 古くなった古城。ゼラが子供を攫っては、自分の次なる器を求めるための場所。
 地下通路を様々なルートを通って通り抜けた猟兵たちは再度集合し、城の中を進んでいく。
 城の最北端に立つ塔の最上階に位置する部屋。そこにほど広い部屋を構えるゼラは、既に猟兵が侵入してきたことを察知していた。彼女は城中の看守たちへ念波を送ると、命令を下す。
「…………看守どもに通達。仕事よ。子供をいじめる暇があるのなら、私の城に潜り込んだネズミたちを駆除してきなさい」
 それを耳にした看守たちは、侵入者という響きに驚くのではなく、いきり立つ。
「ウッヒョア!マジスか!やっべ、侵入者とかマジいつ振りだオイ!?」
「ゼッゼッ、ゼラ様ァ!そいつら、俺らが殺ったら俺らのモンにしても良いっすよねえ!?」
 今も捕まっている少女たちで悪趣味な宴を行っている看守たちは、いずれも筋骨隆々で2m近い身長を誇る、上半身裸の巨漢たちである。
 それらが一気に涎をたらし、腕を振り上げて狂喜乱舞する様子は、とても奇妙で、狂気すら感じる絵面であった。
「……構わないわ。だけど、10歳から16歳程度の顔が良い女の子は、私の元に連れてきなさい。それ以外は好きにして」
「アーーーーーーーパァァァァッッッ!!マジやっべえ!!マジかよォ?!」
「ガキじゃねえメスとかやっぱいんのかな!?いやっ、男も最近ぶん殴りたかったんだよなァァァァ!!」
 看守たちは今まで弄んでいた少女たちなどにはもはや目もくれず、ゼラからの命令を真剣に聞いている。
「侵入者は……地下通路かしら。そこから侵入してきたみたい。……なら、必ず大広間を通るわ。そこで全員止めなさい」
「アーーーーイアイサーーーーーーァァァ!」
 猟兵たちが侵入してきたのは、いずれも地下通路から。であれば、ゼラの部屋に行くには、二階に位置する大広間を必ず通る必要があるのだ。看守たちはそこに陣取るべく、順次移動を開始した。
 彼らとの戦闘は避けようもないが、それは猟兵にとっても好都合。諸悪の根源とは言わずとも、少女たちを痛めつけて弄ぶオブリビオンは大広間に自ら集まった。そこに、一人残らず集まってくれている。

 奴らに裁きを下す時は今だ。今をおいてほかにない。
 一切の容赦も情けもなく、ただ外道どもの罪に罰を。
 少女が受けた痛みの幾分かでも、奴らへと返す番だ。
 手心も手加減もこの際不要。悪因には悪果あるべし。
 自分たちの全ての力を用いて、鬼畜共に鉄槌を下せ。
アトシュ・スカーレット
【判定:POW】

【心情】
…美人さん2人と行動してたけど、冷静に考えれば、あいつら、2人くらいの女の子が欲しいのでは…?(ぱっと見の印象がボーイッシュな女子であるのと年齢なら自分も該当するのは見ないふりして)

【行動】
「は、前哨戦ってか?いいぜ、準備運動といこうじゃねぇか!!」

【トリニティ・エンハンス】は【炎の魔力】を選択

腰のJoyeuseと村雨を銃形態のまま取り出し、同タイミングで戦闘している仲間の援護、後方の仲間に近づけないように【クイックドロウ】で即射撃できるようにする

近接戦に持ち込まれたら、Joyeuseを剣形態、村雨を刀形態に変更し、応戦する


アルジェロ・ブルート
遅参失礼、いやー迷うかと思ったわー。
うるっせぇ声が聞こえて来なきゃァ辿り着けなかったカモ。

さっき子供見かけたけど、アレ、お前ら?
…へぇ。イイシュミしてやがる。
まーでも生憎【激痛耐性】はあるんだわ。痛がってやれなくて悪ィねぇ。
つーかそもそも喰らってやる気がないわけね。【絶望の福音】で先読みできるし、【逃げ足】にゃ自信があんの。

それで、あいつらには何したんだよ?
あーいやいや、別にキレちゃいねぇし、お前らみてーな趣味もねぇよ。
ただ折角ここに【拷問具】があるからさァ。
イロイロできんの、お望みは?



●戦いのプレリュード
 大広間に猟兵が次々と集っていく。鬼畜外道の看守たちを排除し、ゼラの元へ進むために。
「来たぜ! マジで来た! サイッコーかよ……!」
「アアッアァァッァ……! マジアガるぜ……! 思い切り殴っても壊れにくいんだろ、猟兵ってよォ……ァァ……」
 看守たちは彼ら猟兵のそれぞれの姿を見ると、男女や年齢の差別なく、どの猟兵に対しても自身の殺戮衝動を隠そうとせずに気炎を上げる。
 一番先に階段を上がり、大広間ーーおそらく、昔は貴族たちがダンスホールとして使用していたのであろうそこに足を踏み入れたのは、アルジェロ・ブルート( ・f10217)とアトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)であった。
「遅参失礼、いやー迷うかと思ったわー。うるっせぇ声が聞こえて来なきゃァ辿り着けなかったカモ。……さっき子供見かけたけど、アレ、お前ら? あいつらには何したんだよ?」
「……ア? 子供ォ……? わっかんね、何の話してんだと思う?」
「ア~、酒に突っ込んで溺れさせてやったあのゴミのことじゃね? ほら、コイツら地下から来たんだろ? 俺らのスイートルーム見てきたンかもヨ」
 アルジェロの言う、子供という言葉。看守はそれに対して全く興味も関心も無いとばかりに、そういって茶化しながら下卑た笑いを浮かべる。
 ……へぇ。イイシュミしてやがる。アルジェロは小さく、誰にも聞こえないように小声で吐き捨てるように言うと、敵に目線を向けたまま懐から拷問具を取り出していく。
「……美人さん2人と行動してたけど、冷静に考えれば、あいつら、2人くらいの女の子が欲しいのでは……?」
「関ッッッッ係ねェよ! お前らは肉だ! 柔らかく気持ちよくブッ叩いて、壊して斬って、全部喰ったらクソにしてやるぜェ!? げへひゃあははひゃ!」
 ぱっと見の印象がボーイッシュな女子であるのと年齢なら自分も該当するのは忘れてそう考えるアトシュ。彼は腰元の獲物を手に取って、臨戦の構えを取る。
 そんな二人の姿を見て、狂笑する看守たち。もう問答は無用。これより先は言葉ではなく技と力で語る場面だ。
 戦いの幕が上がる。プレリュードは、アルジェロとアトシュの手によって。

「は、前哨戦ってか? いいぜ、準備運動といこうじゃねぇか!!」
「こっちは端ッからフルスイングなんですけどねェェェ! 行くぞテメェらァァァァ!」
 アトシュは戦いが始まるや否や【トリニティ・エンハンス】を即座に発動。エンチャントは炎の魔力を選択すると、腰元のJoyeuseと村雨の二丁拳銃に手を触れた。
 次の瞬間に二つの銃口から飛び出していくのは炎を纏った銃弾の雨。それらは鉄製の棍棒を掲げて突撃してくる看守たちの腕、足、胴、首元、武器。それらを選り好みすることなく、ただただ吸い寄せられるように敵にばらまかれていく。
「ヒッイヤアッッアオッァ! ハギホギイャアッァッ!」
 眼球に直接炎の銃弾を受けた看守が激痛にのたうち回る。ジュウウという肉が焼ける音と、看守の声にならない叫びが広間にとどろく。
 生臭く、湿った肉が生焼けになったような焦げていく匂いが、煙を多く放って辺りを覆う。しかし、看守の数は多い。狙いをこれと定めなかったのがアダとなったか、足の付け根や腕、胴や武器などに銃弾を受けた看守は激痛をものともせず突撃を続ける。
 その戦いの喧騒の中で、鉄製のこん棒で銃弾を弾いた看守たちが、アルジェロに走り寄っていった。高く構えたこん棒を見ると、狙いはフルスイングのようである。
「分かるぜェ、怒ってンだろォ!? 猟兵様たちは正義の味方だもんなァ!?」
「えひゃひゃ、可愛らしいお顔だねェ! ぐちゃぐちゃにしたくなるぜ! アァアッハヒャアアア!」
 複数の看守が一斉にアルジェロに駆け寄り、拷問具を構えた彼に襲い掛かった。彼らのこん棒は大広間の淀んだ空気を裂きながら、高音を伴って勢いよく放たれていく。
「あーいやいや、別にキレちゃいねぇし、お前らみてーな趣味もねぇよ。ただ折角ここに【拷問具】があるからさァ……」
 イロイロできんの、お望みは?そう問いかけるアルジェロに、看守たちはこん棒の振り下ろしにて答えるのであった。しかし、一撃、二撃とアルジェロは最小限の動きで敵の攻撃をかわしていく。
 まるで10秒先の未来が見えているかのよう逃げ足を駆使して立ち回る彼であったが、しかし看守たちの物量に押され、一発もろに胴に受けてしまう。
「ッ決まったァァァァ! 肋骨粉砕コーーーーーッス! オラオラオラオラ……ァ?」
 フルスイングを命中させた看守は滅多打ちを放つが、何かがおかしい。アルジェロが倒れる様子を見せないのだ。
「……喜んでるとこ悪いんだが……生憎激痛耐性はあるんだわ。痛がってやれなくて悪ィねぇ」
 彼はダメージを胴に受けながらも、しかしその十指で拷問具を手足のように扱っていく。
 そしてそのまま自分のことを殴った看守の鼻と耳を引きちぎると、更に痛めつけるように眼球をえぐり、痛みで開いた口の中から下を引っ張り出し、そちらも寸断なく切断した。
「ッ……!!!!……ッァァ……!ァ……!」
「汚ェ。望みには叶ったかよ?」
 表情を変えずに一人の看守を抹殺したアルジェロと、自身を取り囲む看守の包囲を取り払うべく行動を開始した。それを助けるのはアトシュの銃弾である。
「アルジェロって言ったよな、カバーする! 後ろは任せてくれ!」
「ありがてェ。アイツら思ったより数が多いみてェだ」
 同タイミングで戦闘している仲間の援護を行えるようにしていたアトシュは、アルジェロの背後をカバーするように立ち回り始めた。
 猟兵たちとオブリビオンの戦いは、今始まったばかりである。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ミルフィ・リンドブラッド
いよいよ城の中に突っ込むぞ、です
地下水路の道中で見た女の子達…フィーと変わらねぇ歳だったです
…ゆるせねぇのです。こんな目に合わせやがった吸血鬼は滅ぼしてやるです

看守には上には上がいることを教えてやる、です。殺してきた女の子と同じ年ぐらいのフィーがぶっ殺してやるです。
ユーベルコード『血統覚醒』を使って戦うです。相手がこん棒を振り回してきたら『怪力』+『武器受け』+『オーラ防御』で攻撃をはじくのです。そのあと『カウンターで』槍を敵に突き刺して『串刺し』にして『吸血』+『生命力吸収』で減った体力を回復させるです。

仲間が危ない状態になったら『怪力』『武器受け』『かばう』『オーラ防御』で守ってやるです。


オリヴィア・ローゼンタール
POW
生き残るために邪悪に媚を売っているのですらなく、
ただ自身の欲望がために人を辞めましたか……
であるならば是非もありません、骸も残さず焼き払います

【トリニティ・エンハンス】【属性攻撃】で聖槍に炎の魔力を纏い攻撃力を増大
これだけ集まれば狙う必要もありませんね
敵陣に駆け込み(【ダッシュ】)、聖槍を【怪力】にて【なぎ払い】、まとめて吹き飛ばす(【衝撃波】)
強引に突っ込んでくるなら、ガントレットで殴り(【グラップル】)、グリーブで【踏みつけ】る
棍棒攻撃は槍で受け流して(【見切り】【武器受け】)体勢を崩させ、顎を石突でかち上げる(【カウンター】)
縦横無尽に槍を振り回し、当たるを幸い薙ぎ倒していく



●嵐のように、双炎のように
 ミルフィ・リンドブラッド(ダンピールの竜騎士・f07740)とオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の二人は、古城の正規の脱出経路を通って古城に侵入を果たした。
 今はもう使われていない地下倉庫の中へ階段を登り、埃を被った隠し扉を開けると、濡れた衣服をオリヴィアの炎で乾かしていく。二人は自身の体力に任せて侵入を果たしたために、他の猟兵たちよりも体を冷やしてしまっていた。
「ねえ、オリヴィア? 地下水路の道中で見た女の子達……フィーと変わらねぇ歳だったです。……変わらない年に、見えたのです」
「……ええ。惨いことです。決して……決して、許されることではありません」
 二人の衣服が水気を纏わなくなり、足跡も残らなくなったころ、無言だったミルフィが口を開いた。それをオリヴィアはあくまで静かに聞いていく。
「……フィーもです。フィーも、ゆるせねぇのです。こんな目に合わせやがった吸血鬼は滅ぼしてやるです」
「はい。私もそう思います。一緒に滅ぼしてやりましょう。ゼラを、吸血鬼を」
 二人の猟兵が、地下の倉庫で闘志を燃やしていた。

 彼女ら二人は自分の装備を再点検すると、急いでゼラのいるであろう最上階に向けて移動を開始する。そして、「そこ」にたどり着いた。
 大広間。かつては貴族がダンスパーティを開き、少し前までは看守たちが子供らに殺し合いを命じた血に濡れた場所。今は猟兵と看守のバトルダンスが繰り広げられているそこへ、二人は足を踏み入れた。
「生き残るために邪悪に媚を売っているのですらなく、ただ自身の欲望がために人を辞めましたか……であれば、是非もありません」
「あの看守たちには上には上がいることを教えてやる、です。殺してきた女の子と同じ年ぐらいのフィーがぶっ殺してやるです」
 二人の表情は硬く、眼差しは鋭い。
 オリヴィアはヤツらの骸も残さず焼き払うべく、【トリニティ・エンハンス】を発動。破邪の聖槍に炎の魔力を纏うと、奴らの肉を貫き、筋を燃やし、骨まで炭に変えるべく、槍の破壊力を増して見せた。
 ミルフィは自分の腰に下げた短剣血吸とドラゴンランスの手触りをひと撫でして確かめると、一切の躊躇も葛藤もなく、【血統覚醒】を発動する。彼女の瞳が紅に染まり、ヴァンパイアの力がミルフィの心臓を圧迫していく。
 二人は、引き絞られた弓に番えた矢のように静かに準備を整えていく。粛々と、着実に、全ては敵を滅せんがために。
「オオオオオオオイ!!! 新しい奴ら来てんじゃん!? しかも……ッ! 両方メスじゃねえか!」
「うっしゃあ殺す! マジ殺す! ブッ叩いて目玉ほじくり返してよォ~、はらわた喰って余ったら犬にやろうぜ! ヒヘヘヘヘ!!」
 看守たちは彼女ら二人を見ると、嗜虐衝動に支配されたように突撃を開始する。すでに目は真っ赤に充血し、皮膚の下の血管は千切れんばかりに浮き出ている。
 寿命を縮めていることに気付いているのかどうかすら分からないが、戦闘能力を増大された彼らを迎撃するべく、猟兵二人は武器を構えるのだった。

 力任せに振り回される棍棒を受け止めるのは、ミルフィが操る槍。対格差も筋肉の量も関わらず、彼女は身に秘めた吸血鬼の力を遺憾なく発揮しては敵の攻撃を思い切り弾き、隙を作っていく。
 そしてそのまま開いた敵の右側から、敵の首元に向けてカウンターで槍を敵に突き刺してやるミルフィ。柔らかい首の肉を彼女の槍はいともたやすく貫くと、看守に声すら出す暇を与えずに更に連撃を行う。
「グアッ……! え、オ、……ア? ……カッ」
 彼女は敵の身体を乱雑に、しかし的確に急所を狙って串刺しにしていく。敵が漏れた声は音にすらならず、ただ首の穴から漏れる空気としてあたりに響く。
「舐めンなガキィ! 数で押しちまえばよォ、テメエの肉くらい簡単にボコれんだぜェ!?!?」
 ミルフィが敵の最奥を突き刺した槍を引き抜く間に、他の看守たちが彼女に向かって襲い掛かる。胸の奥まで突き刺さってしまった槍は、筋肉によって止められているのか中々引き抜けない。
「……ッ」
「ミルフィさん、お任せください。……これだけ集まれば狙う必要もありませんね」
 その窮地を救うのはオリヴィア。彼女は半ば無理やり勢いに任せて敵陣に駆け込むと、炎を纏った聖槍で敵をまとめて薙ぎ払う。触れれば肉は焦げ、先端は命を奪うその槍に、看守たちの足並みは乱れていく。
「アチいのが何だッてんだよ! 上等だぜェェェェウフワハフウワハハア」
 しかし、理性を失った看守の何人かは強引にその槍の内側に体を滑り込ませてくる。そしてそのまま棍棒での殴打を狙う敵の腕をオリヴィアはガントレットで殴り、回避行動を取ろうとした敵の脚をグリーブで踏みつける。
 白銀の輝きが敵の動きを鈍らせている間に、ミルフィの体制も整った様子。オリヴィアが動きを止めた看守の背後から近付いた彼女は、敵を突き刺し、切り刻み、串刺しにして、切断面から血を吸うと自身の上がった息を回復させた。
「ギィヤアアアアアアアアアア!」
「クソクソクソクソクソ、クソがァァァァ! さっさと死にやがれよ、アアアア!!」
 二人は互いに短く礼を言い、視線を交わすと、それぞれの距離を一定に保ちながら戦場を荒らしまわった。
 オリヴィアの背後から近付く敵の不意打ちからかばうべくミルフィが怪力によって武器で受けると、そのまま反撃とばかりに短剣血吸の刃を滑らせて敵の肌を裂き、鮮血を啜る。
 ミルフィへと振り回される棍棒の一撃を、オリヴィアは聖槍でいなし、攻撃を滑らせがら敵の顎を石突でかち上げる。
 二人の猟兵は縦横無尽に戦場を駆けると、手当たり次第に敵に血を流させた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

赭嶺・澪
あいつらを少女たちと同じように、惨たらしく殺してやりたい気持ちはあるけど、私情は挟まず目の前の敵を排除しましょう。

『POW』『SPD』どっちにしても大振りな攻撃だから、銃の利点を生かすために距離を取って回避を優先しつつ、技能『2回攻撃』と攻撃回数重視のUC『アサルトブラスター』で対応。
特に敵の『POW』は当たるとマズイわ。あれは必ず避けないと。

もし距離を詰められた場合は、それはそれで好都合ね。
技能『零距離射撃』『2回攻撃』、攻撃力重視にしたUC『アサルトブラスター』を叩き込んでやるわ。


荒谷・つかさ
……お前達にかける言の葉など無いわ。
速やかに躯の海へと還れ、外道共ッ!

最初から手加減は無しよ
妖刀「黒耀」を抜き、暴走しそうな「殺気」を心の中でしっかりと練り上げる
奴らが襲い掛かってくるのに合わせてカウンターじみた「先制攻撃」として【羅刹の眼光】を発動
私に意識(敵意)を向けていた奴らを、「範囲攻撃」で纏めて「なぎ払い」よ
その嗜虐衝動もろとも、私の殺気で精神を磨り潰してやる……!
結果がどうあれ「2回攻撃」で妖刀での追撃を図るわ
徹底的に……挽肉になるまで刻んであげるわ……!

※補足
つかさには12歳の妹がいるので、今回の被害者達に妹の姿を重ねている
それ故、表情に変化は無いもののめっちゃブチギレモードです



●洗練された蹂躙
「……お前達にかける言の葉など無いわ」
 赭嶺・澪(バレットレイヴン・f03071)と荒谷・つかさ(護剣銀風・f02032)の二人が大広間に上がってきたのは、他の猟兵たちが戦いを始めて間もなくのことであった。
 階段を上がり、大広間に染み付いている異常なまでの血の跡を見て、つかさはそこでかつて子供たちが何をされていたのかを理解する。口を付くのは、もはや行き場を求めて渦巻く怒りだ。
「あいつらを少女たちと同じように、惨たらしく殺してやりたい気持ちはあるけど……私情は挟まず目の前の敵を排除しましょう」
 敵を殺すことに執着しかけるつかさに対し、敵との戦闘を仕事と割り切るのは澪。幼少のころから多くの戦場を渡り歩いてきた彼女は、努めて冷静な態度を崩さずにそうつかさに声をかけた。
「……ええ。確かに……少し冷静さを欠いていたわ。今やることは八つ当たりではなく、どれだけヤツらを効率的に排除するか……!」
 つかさは澪の忠告を聞く入れと、気を抜けばあふれそうになる殺気を抑えて心の中で練り鍛えた。彼女の気配はまるで、心の中で刃を研いでいるようですらあった。
 銃の利点を生かすために距離を取る澪がMvf20を片手に構え、敵をレティクルに収めていく。つかさは妖刀である黒耀を鞘から抜き放ち、激化する戦乱の中に身を投じると、叫ぶように吠えた。
「速やかに躯の海へと還れ、外道共ッ!」

「あ? おいおい! あんまガキって感じじゃねえけどよォ、そそる女がいるじゃねえか! 殺す?! 殺しちまうか!?」
「カタナなんか持っちゃって怖いねェ~、俺らがお仕置きしてやらなきゃいけねエんじゃねェの!? フヒャッ!」
 つかさの突進を見て、看守たちはニヤニヤと余裕の笑みを崩さずにフックと爆弾付きの鎖を手に持ち、投擲の構えを取った。そんな敵の動きを把握しながら移動を続けるつかさは、突進の加速を続けながら【羅刹の眼光】を発動する。
 そのユーベルコードは、つかさに敵意を向けた対象に対してダメージを与えるもの。鎖をつかさに投げつけようとしていた看守たちへ、一瞬ではあるが、異様なまでの重圧がのしかかる。
「ヒッガッ……!?」
 看守によってはその一瞬で息が止まり、呼吸困難になって泡を吹くほどのそのプレッシャーの正体とは、つかさの殺気であった。看守たちが次々と体勢を崩していくのを見て、澪はそれを好機と捉える。
「……今」
 彼女は姿勢を低く保って構えた可変型サブマシンガンをタッピング撃ちし、敵一体に付きリズムを保って二度ずつ発砲を行っていく。攻撃回数を重視したユーベルコード、【アサルトブラスター】だ。
 胴、胸、首、目、頭。正中線を沿って、的確に澪のバースト射撃は行われていく。そして銃弾を撃ちきる直前のタイミングで一度リロードを挟むと、もう一度同じリズムで発砲を再開する。
 しかし、澪は照準器越しにつかさの剣の間合いに敵が入り込んだのを見ると、今度は更にばら撒くように銃弾を放っていく。命中率を重視した弾幕が、看守たちの足先や腱を砕いていく。
「イッ、~~~~~ッ!! イッテエエエエ!! グアッ!」
 人の身体で痛みを感じやすい部分として、腱はよく挙げられる部位である。そこを粉々に破壊された看守たちは、痛みに耐えきれずつかさの目の前で倒れるように足を折りたたんでいく。
 その隙を見逃す彼女ではない。
「徹底的に……挽肉になるまで刻んであげるわ……!」
 彼女の抜き身の剣、黒耀が黒い空の中で目に残る稲光のように、白い大広間の中で煌めいた。今も尚視界にわずかな線として残るその煌めきが、倒れ伏してくる看守たちの胴をまとめてつなげ、二度走っていく。
 一本目はつかさの腰元から放たれた、左から右への薙ぎ払い。そして二本目は、倒れ伏す看守の自重を利用した逆袈裟である。看守たちは瞬く間に腰から下にさよならを告げることとなり、痛みに耐えきれず気絶していく。
「あ、エエエ、おげ」
 つかさの剣筋には、堪えようのない怒りが込められていた。それは彼女に12歳ほどの妹がいたことと、今回の事件の被害者の年齢が近いこと。
 もしかしたらそれに起因することなのかもしれなかったが、彼女以外に分かることではなかった。
「クッソがあ! なんだよ、猟兵ってクソ強いじゃねえか! ざけんな、くそっくそっくっえっああえ」
 さらに追撃を重ねんと妖刀での攻撃を試みるつかさから逃げるように直線的に移動する看守たちなどは、もはや澪の餌食である。動きが単調になるという事は即ち、偏差射撃も容易になるという事。
「テッテッテメエ!遠くから撃ってんじゃねえよ、そんな一方的な攻撃なんて卑怯だろっがっあっあ」
「あら、じゃあどんどん寄って来てみる?それはそれで好都合だけれど」
 逃げるのがまずいと理解した看守などは鎖を片手に澪へと迫ろうとするが、彼女に近寄った看守たちは、スナイピング技術によって眼球を射貫かれていく。目を潰されていく味方に看守は恐怖さえ覚えるが、そうなればもはや彼女の独壇場だ。
 一方的な戦闘では、優位な側の攪乱は最大限の効果を発揮する。彼女はスタングレネードを腰元から取り出すと、看守たちの目の前に投擲し、目線を外しながらすぐに走る。
「ま…………アッ!!」
 圧倒的な閃光と衝撃。それを受けて体を丸めた看守たちは、零距離まで距離を詰めた澪の【アサルトブラスター】の前に蹂躙されていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

藤塚・枢
私は牧師じゃない、懺悔を聞いても赦しを与えることはできない
けれどね、こんな不釣合いな罰を与える神サマなんぞクソ食らえだ
自称天国で肥溜めに浸かりながら、審判の日まで聖歌の練習でもしてればいい

ごめんね、また後で来るよ
埋葬は全てが片付いてからだ
それまでは醜悪なクズ共の悲鳴を、鎮魂歌代わりに奏でておこう
「やあ、薄汚い害虫以下の諸君
何本ナイフが刺さったらくたばるのか、試させて貰いに来たよ」
戦闘中は目立たないよう、どさくさに紛れての罠やナイフの投擲で暗殺を狙う
出来るだけ遠距離攻撃を心がけるけれど、接近されたら人形と【鏖の猟場】で対応
【颯の歩法】で空中も戦術的に使い、鋼糸で吊り上げたりして密やかに数を減らす


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
お前達か…あれだけの惨いことをした輩は…!
この所業、死だけでは償えないぞ!

まず『トリニティ・エンハンス』の水の魔力で状態異常力を高める。
次に敵の攻撃を誘い、その攻撃を受け止める。鍔迫り合いになった際に、氷の【属性攻撃】で相手の武器を急速に冷凍し、相手の手と武器を接合することを試みるぞ。無理矢理剥がそうとすると皮膚が剥がれてしまうくらい。
それに対し敵が怯んだ隙に、あえて急所から外れた部位を串刺しにし、再度氷の【属性攻撃】で相手の体内に冷気を流し込む。
あえてすぐに死なない程度に、四肢が壊死、凍結する程度で苦しめる。

(氷漬けになった足を踏み潰し)散々苦しめて殺してきたのだ、楽に死ねると思うなよ?



●黙祷はまた、この後で
「ごめんね、また後で来るよ」
 看守たちの拷問室でそう呟くのは、藤塚・枢(スノウドロップ・f09096)。彼女は古城に侵入した後、拷問室の中にまだ生き残りがいないかを捜索していた。
 しかし、結果は芳しいものではなかった。ならばせめてと彼女たちに祈りをささげるのは、ヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)も同じことである。
「苦しかっただろう、哀しかっただろう……。君たちの無念は、せめて俺達が晴らして見せるから……」
「……ああ、その通り。埋葬は全てが片付いてからだ。それまではーー」
 醜悪なクズ共の悲鳴を、鎮魂歌代わりに奏でておこう。枢とヴァーリャの二人は、そう言って拷問室を後にする。目指すはこの事件の黒幕と、そしてその配下たち。
 奴らを一人逃さず退治することで、せめて少女たちの餞とするべく、二人の猟兵は大広間に進んでいった。

 大広間は既に猟兵たちが看守たちを圧倒しているといって良い流れであった。しかし、まだ残っている看守たちは、子供じみた癇癪のような怒りを猟兵にぶつけんとして暴力を振り回している。
「ああーーーーーーッ!! マジ終わってんだよテメーら! 腹立つわーーッ! 何で簡単に死んでくんねえのかなァ!」
「お前ら人間だの猟兵だのってのは俺達のオモチャなんだよ、俺らがそう決めてんだ! だったら何でそれに従わねえんだよ!? アア?!」
 口々に好き勝手なことを言う看守たちは、棍棒と鎖を振り回しながら目に付いた猟兵を撲殺するべく暴れまわっている。階段を上ったヴァーリャと枢は大広間の真ん中に現れると、彼ら看守に向かってこう言葉を紡いだ。
「お前達か…あれだけの惨いことをした輩は…! この所業、死だけでは償えないぞ!」
「やあ、薄汚い害虫以下の諸君。何本ナイフが刺さったらくたばるのか、試させて貰いに来たよ」
 またしても新たに現れた猟兵を見ると、看守は口の端を歪めて笑いながら向かってくる。既に他の猟兵に敗北を喫しているか、苦戦を強いられているのにもかかわらず、彼らの顔はこいつらになら勝てると信じて疑っていなかった。
「ッカァーーーーッ! ここに来てメインディッシュ登場ジャン!!」
「どっどっどうする!? ゼラ様に差し出す!? ……アアッやっぱ無理無理無理ィ! 苦しませて殺す! 殺させろ!」
 鉄の棍棒を振り回しながら走り寄ってくる看守に対し、その攻撃を受け止めようと一歩先へ歩みを進めるのはヴァーリャである。彼女は【トリニティ・エンハンス】を発動すると、水の魔力を身にまとって自身の状態異常力を高めた。
「来るが良い、下郎。俺の攻撃は少し肝が冷えるぞ」
「カワイコちゃんの攻撃なんていくらでも受けてやるァ! イヤッホーーーーウ!」
 看守はヴァーリャの身の周りに展開していく魔力には目もくれず、--いや、この場合気付きもせず、という表現が正しいか。とにかく、看守は彼女の動作を全く警戒せずに踏み込んでいく。
 そして右腕を思い切り振り上げて棍棒によるフルスイングを行うが、しかしそれは既にヴァーリャの読みの範疇であった。彼女は水の魔力と氷の精霊による氷属性を刀身に纏った剣、スノードームで敵の攻撃を受け止める。
「押し合いかよ、勝てると思ってんのかクソガキ! アア!?」
 鍔迫り合いになって看守が優位であったのは最初の一瞬のみ。
 ヴァーリャは氷の属性をスノードームの刀身越しに全力展開し、看守の鉄棍棒を急速に冷凍していく。その急速冷凍は、看守の指と棍棒がぴたりと接合して離れなくなるほどの速度と強烈さを伴って看守の腕を襲う。
「……アツッ!? なっ、なんだよこれェ!? 誰かッ!? 助けろよッ、オイ!」
「無理矢理剥がそうとするのは止めた方が良いな。皮膚が剥がれてしまうぞ?もしかしたら、指までも」
 指の先が熱い。そう誤認する程冷たい彼女の氷は、すでに看守の手指どころか腕まで浸食する勢いである。しかし、その攻撃を行ったヴァーリャの隙を狙って、無言のまま背後から近付いた看守が、彼女の胴にフルスイングを放った。
「……ウッシャアアアアア! 不意打ち大せいこ、、お、おう?」
 その攻撃を寸での所で止めたのは枢。目立たないよう、他の猟兵の動きや戦乱のどさくさに紛れて動き、罠やナイフの投擲で暗殺を狙っていた彼女が、ヴァーリャに襲い掛かろうとしていた看守の喉笛を背後から黒い短剣で掻き斬ったのだ。
「害虫とあらば、須く鏖殺すべきだよね」
 枢はそう言って息の根を止めた看守から離れると、誘蛾灯に誘われた蛾のようにわらわらと接近してくる看守に向かって戦闘用ぬいぐるみのフォリーくんを向かわせ、内蔵した暗器を用いて追い払っていく。
 そうして作り出した時間を有効活用するべく、彼女は連続で鋼糸による【鏖の猟場】を発動。鋼糸による範囲の広い攻撃で周囲の敵を一掃すると、更に自分の立つ場所に鋼糸の罠を張り巡らせた。
「たたたっ……たす、助けてくれよォ! なっ!? 何でもするぜ、マジマジ! だから命だけはよォ、許してくれよォ!」
 どうやら、早速枢の罠に一人の看守が捕まったようだ。ヴァーリャの方の戦闘も終わったようで、彼女は倒れ伏す一人の看守を見下ろすように立っている。
「そ……そ、そうだぜ! 俺達は悪くねえんだ、吸血鬼の奴に命令されてよお!? だから、足の氷も、もう良いだろ? な? 助けてくれよォ!」
 静かになった大広間を見渡すと、どうやら看守はその二人で最後のようだ。彼らは厚顔無恥の見本市のように、薄汚い顔で命乞いを必死に行っている。
「私は牧師じゃない、懺悔を聞いても赦しを与えることはできない。けれどね、こんな不釣合いな罰を与える神サマなんぞクソ食らえだ。自称天国で肥溜めに浸かりながら、審判の日まで聖歌の練習でもしてればいい」
「……散々苦しめて殺してきたのだ、楽に死ねると思うなよ?」
 罠に囚われた看守の命乞いを無視して、鋼糸を束ねた黒い短剣で介錯を行う枢。
 倒れた敵に対して、あえてすぐに死なない程度に、四肢が壊死、凍結する程度で苦しませようと相手の体内に冷気を流し込むヴァーリャ。
 彼女たちの活躍によって、最後の看守も大広間からその姿を消した。
 静かになったその空間で、彼女たちは僅かに少女たちを思う。
 しかし、まだ本命が残っている。猟兵たちはゼラを討伐するべく、城の最上階へ続く階段を上り始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ゼラの死髪黒衣』

POW   :    囚われの慟哭
【憑依された少女の悲痛な慟哭】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    小さな十字架(ベル・クロス)
【呪われた大鎌】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    眷族召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【眷族】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●元凶
 古城の最上階。雲が晴れれば月光が差し込み、程広く、ゼラの寝室と階段に繋がる通路のみが面する僅かに開けた間。
 ゼラは、そこで何か考え込むように佇んでいた。
「……そう。ダメだったのね」
 もともと看守たちに期待はさほどしていなかった。奴らは知能も低く、頼れるような存在ではない。それでも配下にしていたのは、その暴力性が人を襲うのに適していたが故。
「ここに来るが良いわ。猟兵。たまにはこの身体だって運動しなきゃいけないでしょうし……」
 彼女は自分が羽織る黒衣をさらりと大事そうに撫でると、巨大な鎌を軽々と右手で操って猟兵たちを待ち構える。
「それに……私の依り代候補も、どうやら来客の中にいるみたい。その子達のいずれかをわが手に収めれば、うふふ……」
 その言葉は、ゼラの身体が放った言葉か、それとも黒衣から発せられたものか。それは誰にも分からないことだった。
アトシュ・スカーレット
【WIZ】
【心情】
さぁて、元凶のお出ましか…
あの子達のためにも勝たないとな!

【戦闘】
武器を剣形態と刀形態に変形される
【怪力】を生かして、防御されてようが【鎧砕き】を試みるよ!
【残像】が見える速度の【フェイント】を織り込んで【2回攻撃】で手数を稼ぐね

【傷口を抉】ってる?そんなの、勝つのに手段なんて選ぶかい?

こちらが押されている演技をして、少し離れようかな
…何故なら、こいつはちょっと危ないからね!
「『この技、見切れるか!』時空両断(サレターレ・モーメント)!」

戦闘終了
「…とりあえず、まずは彼女達をせめて、暖かい所に移動させてあげよう…。」
手の届く範囲だけで手一杯だし、自己満足だけど…いいよね?



●女吸血鬼の実力
 最上階の広間にいの一番で飛び込んできたのは、アトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)。
 Joyeuseと村雨、剣銃自在の二振りを刀形態に変形させた彼は、手に馴染んだ握りを掌で確かめながらそこに現れた。
「さぁて、元凶のお出ましか……あの子達のためにも勝たないとな!」
「あら……、女性……じゃないわね、男の子。私と……遊びに来たのでしょう?」
 ふふふ、と薄く口の端を歪めるだけの笑みを浮かべるゼラ。生気の見られないその笑みは、この世のものとは思えないほど冷たかった。
「別に、お前とおしゃべりしに来たわけじゃないぜ?」
「あら、そう? つれないのね、猟兵というのは……」
 僅かに言葉を交わした二人は、少し離れたところから距離を窺い合う。動きを見せないゼラの鎌を注視しながら、アトシュが時計回りにゆっくりと歩きながら機を待った。
 夜のとばりが静寂を覆い隠す。月光に照らされたアトシュの足音だけが最上階に響いていく。こつ、こつ、……こつ。
 そして、アトシュの二刀とゼラの大鎌による剣戟が始まった。観客は月と少女たちの無念である。

 自分の怪力を生かして、ゼラの反応と大鎌の防御を無視して攻撃を重ねていくアトシュ。しかし、その攻撃をゼラは大鎌を巧みに操っては受け止めていく。
 二刀による残像が見える速度で行われる乱撃。時折フェイントをかけつつも二回セットで行われていくアトシュの剣舞を、ゼラは時に鎌で受け止め、柄でいなし、手が足りなければ剣の軌道上に眷属を召喚して斬撃を止めさせる。
「せっかちなのね、猟兵さん? もしかして、何かを狙っているのかしら」
 いかにアトシュが怪力を誇ると言えども、残像が残るレベルでのフェイントを混ぜながらの乱撃では、その踏み込みはやはり浅くならざるを得ない。
 それを看過したゼラは、あえて大きく動かずに受けの姿勢を取り続ける。彼の斬撃によって黒衣の端は確かに切り刻まれていくが、大きなダメージを与えるには至っていない様子。
 金属音をかき鳴らしながら行われていくセッションの中で、アトシュはさらに追撃を重ねようと破れた黒衣の箇所を狙って一段奥に踏み込んだ。
「あら、傷口をえぐるような真似なんて……。正義の味方にしてはらしくないのね」
「そんなの、勝つのに手段なんて選ぶかい?」
 アトシュの踏み込みによって放たれた村雨の突きは、ゼラの黒衣を突き刺して損傷を大きくさせる。しかし、その攻撃を読んでいた彼女は、呪われた大鎌による超高速かつ大威力の一撃を放った。
「いえ、その姿勢には好感が持てるわ……うふふ」
 それをわずかに受けてしまいながらも、バックステップで致命を避けたアトシュは、次の一撃のために距離を取る。そして、【時空両断】の構えを取った。
「それなら、この技、見切れるか! 時空両断!」
 その技は剣を向けた対象に時空の亀裂でダメージを与える大技。その攻撃は確実にゼラの体力を奪っていく。……しかし、彼女はそれを受けて尚、薄く張り付いた笑みを崩していない。
「あら、アナタの本気の一撃ってそんなものかしら? もしかしてアナタ……、私を倒す前からこの後のことを考えていたりしない? ねえ、お優しい猟兵さん?」
 全力でかかってきた方が良いんじゃないかしら? とゼラは笑みを浮かべると、アトシュとさらに打ち合いを重ねるべく鎌を大きく振りかぶった。オブリビオンとの戦いは、どうやら長引きそうである。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ミルフィ・リンドブラッド
吸血鬼ゼラ…。死にたくないと願った女の子達を殺し、憑依してきたツケを今ここで支払わせてやる、です

(POW)
本気でやるぞ、です
「フィーの血液セット」の血液を飲んで【禁忌・血流操作】を発動するです。
攻撃はドラゴンランスを使って『怪力+串刺し+生命力吸収』でゼラの黒衣を狙って攻撃するです。

憑依された女の子がもう助からねぇとしてもあまり傷つけたくねぇです…
黒衣を纏った対象に憑依するなら黒衣にも生命力が宿ってるはずです。吸収して消してやるです

相手の攻撃は「天竜砕き」で『怪力+武器受け』「紅血結界」の防御術式(『オーラ防御』)で耐えてやるです


味方が危うくなったら防御系技能と『かばう』で殺させねぇです



●手がかり
 古城。昔は貴族が済み、今は女吸血鬼が自分の根城としているそこ。
 ダークセイヴァーの空模様にしては珍しく、雲の切れ目からは三日月がわずかに顔をのぞかせている。
 月の光が柔らかく古城を照らす。まるでスポットライトのようなその光は、最上階で起こる殺陣を予期していたのだろうか。
「吸血鬼ゼラ…。死にたくないと願った女の子達を殺し、憑依してきたツケを今ここで支払わせてやる、です」
「あら……、次のお客さん? 賑わうのは、余り趣味ではないのだけれど」
 猟兵たちの剣を鎌と眷属で受けながらも、鎌の距離を保ちながら戦いを続けるゼラ。時折猟兵たちの大技の前兆や隙を見つけると、そこに容赦なく自身の超高速かつ大威力の一撃を至近から放っていく。
「貴方……良いわね。とても……その赤い瞳、その透き通るような髪、そしてその身に宿す血の匂い……。これは、吸血鬼と……? ふふ、私の依り代にしたくなるわ……」
「そんなの、お断りです。……本気でやるぞ、です」
 ミルフィは予め持ち込んでおいたフィーの血液セットを腰元から取り出すと、その血液を全て口に流し込んでいく。
 その行為からは、奥の手を使ってでも眼前の敵を倒すといった確たる意思を感じる。そして【禁忌・血流操作】を発動するミルフィ。
 戦闘中に経口摂取した血液の量と質によって自分の体に秘めた素質を高め、戦闘能力を上げた彼女は、普段はクルルんと呼んで可愛がっているドラゴンランスを深く構えた。

 ゼラは他の猟兵と切り結びながらもミルフィの接近を見るや一つ跳びに高く跳躍を行い、広間の中を素早く移動しては態勢を仕切りなおす。
 しかし、身体能力が向上されたミルフィの脚はその跳躍すらも捉えていた。ゼラの着地際に合わせ、脚部狙いでドラゴンランスの突き刺しを狙う彼女。
「あら、……それはイヤね。私に攻撃してこないでくれるかしら?」
「憑依された女の子がもう助からねぇとしても、あまり傷つけたくねぇとは思っていたですが……もしかして」
 その攻撃を受け、自身の黒衣を破かれたゼラは露骨に不機嫌になりながら鎌を大きく振るう。
 反撃故か、八つ当たり故か、それともただ単純に本気を出していなかっただけか、先ほどよりも数段速い鎌の横薙ぎがミルフィを襲った。
 それを寸での所でドラゴンランスをガントレットに変えた彼女は、空いた両手で天竜砕きを構え、肩口の紅血結界と合わせて防御する。
 甲高く、叫びのような金属音が広間に響く。それはゼラの一撃の重さを現していた。しかし、それを防いだミルフィは敵に隙ありと見て天竜砕きを再度収納すると、ドラゴンランスを手に構えなおしてもう一撃を彼女に見舞った。
 吸い込まれるように黒へと侵略する槍の穂先が、ゼラの黒衣を襲う。
「やっぱり。黒衣を纏った対象に憑依するなら、黒衣にも生命力が宿ってるはずです」
「……イヤね。イヤだわ。もうバレてしまったのね……」
 ミルフィの一撃は黒衣を破き、ゼラはそれを見て軽口を止める。
 与えたダメージはさほど大きくないが、しかしミルフィの読みはこの敵を倒すための足掛かりになり得るものだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
POW
吸血鬼……いえ、その死に損ないの成れの果てよ
彼女の身体は返してもらいます
追い立てられ狩り殺されるのは貴様だ――!

【血統覚醒】にて戦闘力を増大、吸血鬼を狩る吸血鬼と化す
【属性攻撃】【破魔】で槍に聖なる炎の魔力を纏う
【怪力】を以って【なぎ払い】、黒衣を斬り裂く
この槍、この炎、そして我が血、貴様を討ち滅ぼす破邪の力と識るがいい――!

大鎌による直接攻撃は強化された【視力】で【見切り】、槍で受け流す(【武器受け】)
他者に取り憑き、身体の動かし方も忘れたかっ!
慟哭の衝撃波は気合いと根性で耐える(【オーラ防御】【呪詛耐性】【激痛耐性】)
彼女の慟哭は助けを求める声。それでどうして歩みを止められようか!


藤塚・枢
努めて平静を保ってゼラと対峙
本当なら今すぐ巨大な鑢に這い蹲らせて、死ぬまで自分を摩り下ろせと命じたいくらいだけれど、今はまだじっと我慢
黒衣のことには気付いていないフリを通す
「看守がキミのところに女子を連れて行くがどうとか言っていたが、少女趣味のオバサンだったのか
ストライクゾーン狭すぎだろう」

フォリーくんの暗器とナイフ投擲で交戦

接近されたら薬剤で針状に固めた、あの少女の毛髪を含み針にして目へ放つ(こんなこともあろうかと的なアレ)

地形を利用し、密かに少しずつ黒衣に不可視の鋼糸を通し続ける
十分通ってから一気に黒衣を引き剥がす
時間はかかるだろうから、慌てずにこつこつと
罠とだまし討ちと暗殺は、根気が命だ



●戦いは佳境へ
「吸血鬼……いえ、その死に損ないの成れの果てよ。彼女の身体は返してもらいます」
 広間に降り立ち、ゼラへと声をかけるのはオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)。澄んだ声色の彼女の言葉は、戦乱の中にあって良く通る。
「おや、新しい方? 良いわね、あなたも……あなた達も、とてもいいわ。ああ、美しく、生気に満ちた身体……。追いかけまわしてでも手に入れたいほどにね」
 オリヴィアの後ろから現れた影は藤塚・枢(スノウドロップ・f09096)。彼女ら二人もまた、依り代を求めるゼラに取っては逸材に見えたことだろう。
「看守がキミのところに女子を連れて行くがどうとか言っていたが、少女趣味のオバサンだったのか。ストライクゾーン狭すぎだろう」
「うふふ、私をオバサンと呼んでくれるのかしら? 生きた年齢だけで言えば、お婆さんのようなものだと思うけれど」
 オリヴィアと枢。二人は階段を上がり終わって、広間を一歩一歩ゆっくり進んでゼラに近付いていく。自分の獲物の確認はとうの昔に済んでいる。あとこちらでやることは、如何にして目の前のオブリビオンを排除するか。ただただ、その一点に尽きる。
「来て。猟兵の少女たち。私の元へ。……私に、飽きるまでその血とその身体を見せて? そして、それが済んだら……この身体なんていらないわ。言われなくても返してあげる」
「もう黙れ。追い立てられ狩り殺されるのは貴様だ――!」
「それで私たちが来るとは本気で思っていないだろう? 実力で来なよ」
 ゼラの元へ、新たに二人の猟兵が参上する。広間は既にパーティ会場のように雑多な足音を立てる。盛り上がるばかりのここでは、ワイングラスの乾杯の音の代わりに金属音が響くのだった。

 オリヴィアは空気を裂く勢いで破邪の聖槍を抜き放つと、ユーベルコード【血統覚醒】をすぐさま使用する。鬼気迫る表情で力を増した彼女は、まさに吸血鬼を狩る吸血鬼といった様相だ。
 そのすぐ後ろで枢が構えるのは、からくりぬいぐるみであるフォリーくんと、鋼糸を束ねた黒い短剣。片手の五指でぬいぐるみを操り、片手に闇よりなお黒い短剣を持つ彼女は、オリヴィアとは対照的に何でもないといった様子。
 しかし、枢の内心では、赤黒く渦巻くほどの怒りが燃え滾っていた。それこそ、オリヴィアと並ぶほどの。本当なら今すぐ巨大な鑢に這い蹲らせて、死ぬまで自分を摩り下ろせと命じたいくらいーーだが、今は努めて冷静に振舞う。
 今自分がやることは、この先の大仕掛けを上手くこなすこと。怒りに我を忘れれば、緻密な作戦は不可能になってしまう事を理解しているからこそ、枢は自分の感情を押し殺す。
「そろそろいいかしら? あまり長く同じ方と踊っているばかりでは、嫉妬されてしまうものね」
 他の猟兵たちと鎌で争いながら、ゼラは二人の猟兵の準備が出来るのを待っていたと言わんばかりにそれまで争っていた猟兵に背を向け、わずかに背中に攻撃を受けながらも一心不乱に彼女たちへ向かっていく。
「まず最初はあなた……ねえ、何か企んでいるんでしょう? 踊って差し上げるわ……、どうか、断らないでね?」
「断る理由もないが、焦って足がもつれないと良いね? オバサン」
 走り寄ってくるゼラを、枢は手に持つナイフの投擲とぬいぐるみの暗器で狙っていく。しかし、その遠距離からの攻撃を、ゼラは眷属を即座に召喚することで盾にし、防いで行く。
 そのまま枢に接近すると、【囚われの慟哭】を放つべく構える。……が、口を先に開いたのは枢であった。
 彼女は口の中に含んでいた、薬剤で針状に固めた拷問室の少女の毛髪を勢い良く放つ。あらかじめ枢はゼラに接近された場合を考え、含み針にした彼女の毛髪を口に仕込んでおいたらしい。
「こんなこともあろうかと、ね」
 目を狙った含み針を、生前の癖からか反射的に回避するゼラ。それはつまり攻撃のための時間が回避のための時間にすり替わったという事であり、猟兵はこの場に一人でいるわけではない。そこに駆け込むのは、オリヴィアである。

「この槍、この炎、そして我が血、貴様を討ち滅ぼす破邪の力と識るがいい――!」
「堪らないわ……あなたの血に宿る神殺しの宿業……。憑依するのではなくて、今すぐ啜りたくなるほど魅力的よ」
 勢いよく飛び込んできたオリヴィアに応戦するべく、ゼラは大鎌を振り回しながら彼女に思い切り斬りかかっていく。オリヴィアは敵の初太刀を受けながらも、徐々に目を慣らして槍で対処を行い始める。
 二合目の鎌による薙ぎ払いを真正面から槍で受け止め、三合目の引き斬りは右腕を回転させた白銀の柄ではじき返す。そして四合目に振られる振り下ろしを、オリヴィアは槍の中ほどで受け止めながら刃で流して前進する。
 そしてそのまま聖なる炎の魔力を纏った槍を薙ぎ払うと、ゼラの黒衣を確実に斬り裂き、燃やして、即座にこの世から消滅させていく。それが叶うのは、彼女の持つ破魔の力故か。
「他者に取り憑き、身体の動かし方も忘れたかっ!」
「ふふ、御冗談。私は私の体の動かし方を良く知っているわよ? あなた達の連携の動きが良いというだけ。昂るわ……」
 ゼラは黒衣を切り取られたことを惜しむような顔をしながら、オリヴィアへ大鎌の太刀を更に浴びせていく。今度はフェイントを織り交ぜた高速の斬撃だ。
 細腕で大鎌を自由自在に動かせるのは、依り代の細腕によるものというよりも、ゼラの黒衣による影響が大きいのかもしれない。
 枢はそんなオリヴィアとゼラの立ち回りを見ながら、自分からターゲッティングが外れたのを確認すると、ゼラに気付かれないようゆっくりと鋼糸を張り巡らせていく。今は少なく、頼りない数だ。
 しかし、鮮やかな罠とだまし討ちには時間と根気が必要なことを、枢はよく理解していた。
「全ては、条件が揃った後に一気に黒衣を引きはがすため……」
 猟兵たちの戦いは、佳境に迫らんとしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

赭嶺・澪
さぁ、最後のお仕事と行きましょう。
相手が誰だろうと関係ないわ。
その不愉快な行いをぶっ潰してやるだけよ。

『囚われの慟哭』だけは範囲が広いとみていいわね。
それ以外は距離を十分取ればなんとか対応できそうね。
近づいてきた『眷属』は武器で対応しましょう。

私は後方に下がり、技能『忍び足』『目立たない』でスナイプのポジションに陣取り、技能『2回攻撃』『スナイパー』『暗殺』を利用したUC『スナイプソルジャー』で狙撃。
闘ってる味方を射撃で援護しつつ、本音はその頭だけど、とりあえず敵の身体のどこでもいい、狙い撃つ!

真の姿解放
姿は特に変化は無く、能力向上だけ。


アルジェロ・ブルート
【拷問具】に【毒使い】、
さて、ンじゃあ始めっか。
そのご自慢の黒衣、ずたずたにしてやるよ。しばらく依代は狙わねぇ。
優しさとか正義とかさァ、んなモン俺に求めんなよ。俺はただ、お前の無様に歪んだ顔が見てぇだけだ。
大事なもんは取り上げねーと、なぁ?
【2回攻撃】して連続で黒衣、裂きにいくぜ。

ただ大鎌振り回すってんなら距離保ちつつ【逃げ足】【ダッシュ】で回避といくが、ユーベルコードはなァ…
いちいち面倒くせぇし【咎力封じ】で縛らせてもらうわ。

つーかあの筋肉だるま共、いったい何本折りやがった。



●悪趣味
「さて、ンじゃあ始めっか」
「さぁ、最後のお仕事と行きましょう」
 アルジェロ・ブルート( ・f10217)と赭嶺・澪(バレットレイヴン・f03071)は自身の持つ武器の再点検を手早く行いながら、階段を上がって最上階へと歩を進めていく。
 先ほど看守に向けて使った拷問具、Sangueをアルジェロは奇麗に整備し直していく。血の汚れは放置するだけ後に禍根を残す。すぐに拭き取る方が道具のためにも良い。
 澪は看守たちを零距離から発砲した際に銃へと浴びた返り血をふき取ると、スライドの滑りと薬室内に血が入り込んでいないかを確かめ、サブマシンガンの弾を再装填していく。
「敵の大事なもんは取り上げねーと、なぁ?」
「相手が誰だろうと関係ないわ。その不愉快な行いをぶっ潰してやるだけよ」
 誰に聞かせるでもなくそう呟いた二人が広間に足を踏み入れるのと、ゼラが彼らを視界に捉えたのはほぼ同時であった。
「……あら、あなたたち……随分多くの戦いを経てきてるのね? あなた達の血液から漂う、小さい頃から何ものかと戦い続けている血の香り……そそるわ」
 ゼラは新たに現れた二人の猟兵を見やると、少し上機嫌になってニヤリと笑う。それは澪の年齢に起因するものか、見た目か。それともアルジェロの使う武器か、はたまた過去か。
「少し……正義の味方というには血腥いけれど……ふふ、好みよ」
「優しさとか正義とかさァ、んなモン俺に求めんなよ。俺はただ、お前の無様に歪んだ顔が見てぇだけだ」
 猟兵たちは思い思いの獲物でゼラへとダンスの挑戦状を投げつける。澪の獲物は銃器、アルジェロの獲物は拷問具だ。月の光を受け、慌ただしいステップを踏むのは果たして猟兵か、オブリビオンか。

「そのご自慢の黒衣、ずたずたにしてやるよ。しばらく依代は狙わねぇ」
 既に他の猟兵と剣戟を鳴らしながら踊るゼラの元へ、アルジェロの拷問具が迫る。足元、手元、他の猟兵たちの攻撃を受けているゼラは、彼の攻撃を完全に避けられずに黒衣を削られていく。
「まあ、意地悪なのね。……でも、これならどうかしら」
 このままではまずいと踏んだゼラは位置取りを変えながらも【囚われの慟哭】を発動。アルジェロごと周りにまとわりつく猟兵たちへ無差別に攻撃を開始し、それを避けるべく動いた猟兵たちを散り散りにした上で、更に各個撃破せんとアルジェロに襲い掛かった。
「……あなたは他のみんなと違って、私に近付いて来てくれないのね……、ああ、いやだわ? ねえ、もっとそばに来て? 顔が見たいわ」
 敵の攻撃パターンを把握するべく動く澪は、敵の鎌は距離を取ればそれほど怖くないという点に着目する。それは確かに最もゼラにとって使いやすい技でもあるが、確かに鎌の範囲でなければ使えない技でもある。
 ゼラはアルジェロの攻撃を鎌で捌きながら、少しずつ移動して澪を狙うために意識を飛ばす。しかし、敵の獲物の間合いにみすみす入る澪ではない。
 彼女は音を立てず、相手の意識の影に隠れるようにして位置取りを変えながら、適宜Mvf20による発砲を行い、銃弾をアルジェロと斬り合っているゼラに撃ち込んでいく。
「鎌は距離を十分取ればなんとか対応できそうだけど……どうせ、まだ何か範囲の広い攻撃があるんでしょうね」
「ふふ……ご名答、よ。……そっちが近付いて来てくれないなら仕方ないわね……」
 行きなさいと言い放って、ゼラは他の猟兵の攻撃に対応しながら周囲に大量の影を召喚する。影は撚り集まり、目玉のような形に変貌していく。大きな眼球に牙と羽根だけが付いた悪趣味なそれは、ゼラの呼び出した眷属たち。
 六十か、それ以上はあるだろうか。先ほどから咄嗟の防御に用いている眷属たちよりもサイズは小さいが、圧倒的に数が多く、そして攻撃的なフォルムをしている。
「さあ、あちらのお客様の応対をしてあげなさい? 丁重にね……うふふっ」
 近づいてきた眷属に対し、サブマシンガンによる射撃で迎撃を行う澪。一度リロードを挟み、二個目の弾倉も空にすると、すかさずサイレンサー付きハンドガンに持ち替えて更に撃つ。
 どうやらゼラは今も他の猟兵と戦いを続けている様子。なおも向かってくる眷属たちの群れで詳細は見えないが、鳴りやまない金属音がそれを証明している。
「……スナイパー、レディ」
 澪は二挺の銃で眷属の第一陣を全て打ち消すと、第二陣が至近に迫る前に腰を低く保ってスナイピングの姿勢を取る。息を止め、指先をスナイパーライフルの引き金にかける。まだ、まだ、まだ……。--今。
 彼女が放つのは【スナイプソルジャー】。二度タップされた引き金は銃弾を二回吐き出し、銃弾たちは飛び交う眷属たちのほんの少しの隙間を過たず飛んでゼラに迫る。照準に収めたのは、ゼラの頭部……ではなく、黒衣のフード部分だ。
 先ほどの攻撃の結果を見て、弱点が黒衣であることは澪も把握している。弱点を狙い、致命傷を与えるという発想であるならば、そちらに変えても問題はないだろう。
「キャッ!……ッ」
「今だな……。黒衣、裂きにいくぜ」
 澪の銃弾が飛んでくるのに咄嗟に反応したものの、依り代の右目に銃弾をもろに受け、動きを止めるゼラ。大きくひるんだ彼女の動きをさらに止めて黒衣を切り刻むため、アルジェロが【咎力封じ】を仕掛けんと拘束具を取り出したその瞬間。
「……なあんちゃって」
 眼球を銃弾で砕かれてひるんでいた様子を見せていた彼女は、しかしアルジェロが拘束具を取り出したタイミングでもう一度【囚われの慟哭】を放った。
 激痛に耐性のあるアルジェロも、これにはわずかに吹き飛ばされて受け身を取らざるを得ない。看守に砕かれた骨がきしむのが分かるが、しかし彼は即座に立ち上がる。
「教えてあげるわ、猟兵さん? 実はね、この依り代……もう殆ど死んでるのよ。だからこそ、私の魔力で操るのに丁度良い、新しい依り代を探していたの。この依り代を砕かれたって、私はちっとも痛くないわ……。うふふ、あはは!」
 種明かしをし、少ししか血の流れていない右の眼窩ーーもはや、ただの穴の開いた窪みだがーーを二人に見せつけるゼラ。
「……悪趣味」
「褒め言葉として受け取るわ」
 猟兵たちの攻撃は確かに彼女の黒衣を裂き、ダメージは着実に重なっている。しかし、致命の一撃にはまだ届かない。
 しかし、二人の猟兵の奮闘は、敵の情報をさらに引き出すことに成功した。この情報をどう活かすかは、猟兵の手にかかっている。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

荒谷・つかさ
なるほど、その黒衣がある種の本体という訳ね。
なら、表現は悪いけれど……まずはひん剥かせてもらいましょうか!

先に鷹の「疾風」を突撃させて「先制攻撃」を狙いつつ、【百騎野攻・獣神突撃】を発動
「疾風」「瑞智」「神威」の三頭を多重分身させ突撃
ゼラの黒衣狙いで「範囲攻撃」を行う
黒衣が防具扱いになるなら「鎧砕き」も効果はある、はず
私自身は神威の分身のうち一騎に「騎乗」し、「神楽扇」や「零式・改二」を投擲することで攻撃を行うが絶対に近寄らない
近づいてくるなら間合いに入る前にガン逃げし、分身たちや「零式・改二」での「吹き飛ばし」を狙って兎に角距離を取る事に専念しハメ殺す狙い

お着換えの時間よ。大人しくなさい!



「なるほど、その黒衣がある種の本体という訳ね。なら、表現は悪いけれど……まずはひん剥かせてもらいましょうか!」
 荒谷・つかさ(護剣銀風・f02032)は先ほどからの広間での戦いを経て、そのことを知る。そしてゼラと既に何合か立ち会っていた彼女は、そのことに気付くや否や戦法を即座に変えた。
「……もう、かかってきてはくれないのかしら? あなたの肌、とても奇麗だから残念だわ……。牙を立てたら、さぞや赤い血が映えるでしょうに」
 既に右目を無くしたゼラは、だからこそ近距離で猟兵たちと立ち会うべく今も鎌を振るう。
 鎌の一撃も、慟哭による攻撃も、距離を開けられれば使えない。それに猟兵たちから離れれば離れる程、何かを裏で進めている猟兵の動きを捉えにくくなるからだ。
 彼女は鎌を薙ぎ払う戦法に、慟哭の無差別攻撃と眷属召喚による多方面からの攻撃を取り入れ始めた。自分の魔力消費を考えていないかのように振舞うその姿勢からは、焦りのようなものすら感じた。
「ああ、楽しい……久しぶりね、命のやり取りは……。良いわ、もっと楽しませて。そして私に身体を、血を、命を頂戴」
 しかし、ゼラはまだ依り代の少女の顔で嗤う。嗤うのだ。まるで、この戦いに自分が勝つのは当たり前だと言わんばかりに。
 それは自分の実力への自信からか、それは長く生きた吸血鬼故の驕りからか。そんな彼女に向けて、つかさは更に追い詰めるべく自分の持ち得るすべてを駆使して攻勢を開始した。

 つかさは先に自分が飼っている鷹の「疾風」をゼラに突撃させ、狭い視界内での情報量を増やしてやる。時折危なっかしい場面もあるが、疾風は鎌の間合いギリギリを飛び回り、慟哭の前兆を見るやすぐさま離れて気を窺う。
「……邪魔ね。人でもないのにウロチョロと飛び回らないでくれるかしら」
 ゼラは四六時中飛び回っては他の猟兵と戦うゼラの気を散らし続ける。いい加減に邪魔に思ったか、ゼラが一瞬だけ慟哭を大きく放つために息を吸い込んだ。
 つかさは、その機を逃さずにユーベルコード【百騎野攻・獣神突撃】を発動する。
「秘技、百騎野攻……おまえ達、やっておしまい!」
 その技は、鷹の「疾風」、大蛇の「瑞智」、馬の「神威」の、自分が飼っている三頭を多重分身させ突撃させる技。つかさによって複製された動物たちは、ゼラを狙って各自突撃していく。
 一匹一匹は大した戦闘能力を有していなくても、数が数だ。空を飛び回り、地を這い、足を生かして突撃を行う動物たちは、味方の猟兵とも阿吽の呼吸を取りつつもゼラを取り囲む。
「お着換えの時間よ。大人しくなさい!」
「……お生憎様だけど、この服は私のお気に入りなの。そう簡単に着替えるつもりはないわ」
 更につかさはゼラの周りを神威の分身のうち一騎に騎乗しながら距離を保って走り続け、戦闘用の扇である神楽扇や、出刃包丁のような形の零式・改二を投擲することで攻撃を行っていく。
「……あああ! 邪魔よ! 消えなさい……ッ!」
 他の猟兵と動物たち、そしてつかさの中距離からの攻撃に業を煮やしたか、防衛を行ってばかりだったゼラは、もはや動物たちの攻撃を気にせずに【囚われの慟哭】の構えを取り、そして発動した。
 猟兵たちはそれの前兆を見て回避行動を取ったが、動物たちはその声を聴いて無差別に消えていってしまう。
 しかし、つかさの戦法によってゼラは確実にダメージを負った様子。他の猟兵たちが与えたダメージを鑑みても、猟兵たちは徐々にゼラを押し始めたと言って過言は無かった。
「……ッ、……。出来ればあなた達の誰かを捕まえて、依り代としたかったわ……けれど、もう良い……。全員、まとめて殺してあげる。血を啜るのは、その後でも遅くないから……ッ!」
 流れは、確かにこちらにある。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シエラ・アルバスティ
同行:ミルフィ・リンドブラッド

【ダッシュ】で駆ける
古城へと向かって
大真面目に建て物の階段を使ったりしない
『ザ・クロノス』で空気の壁を階段の様に作り最上階へと
月光を背に外から奇襲する
邪魔な壁は【穿孔滅牙】でぶち壊す

「さぁ……懺悔の時間だよ」

静かな怒りと共に【インフィニティ・アトモスフィア】を起動
大気の羽を広げ幻想的に飛散させ始め
【ダッシュ】し『リフレクトマフラー』で室内を弾ける
同時に『エーテル・ストリングス』を絡め動きを封じる

「フィーちゃん、今!!」

電流も流させて貰う

「あなたって弱ぁい! 弱すぎ! 弱い人は何もしちゃダメ! 弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い──」

全身で蔑み表現し強制的に【わからせる】


ミルフィ・リンドブラッド
【同行】シエラ・アルバスティ
…どうしたですゼラ
最初の軽口が嘘のようです。最後まで余裕の笑みを浮かべオブリビオンらしく戦ったらどうです?と『挑発』
ゼラの冷静さを奪ってやるです

それとさっき戦闘前にシエラを呼んでやったです。そろそろ来やがるはずですが…って速いです…速すぎないです?

pow
「フィーの血液セット」から新しい血液を取り出して飲んで【禁忌・血流操作】をもういっかいやってやるです(『吸血』)
・攻撃
「血の弾丸」を複数生成。ゼラに発射して回避行動を誘うです
シエラがゼラの動きを止めたら「短刀・血吸」でフィーの『怪力』を込めた一撃で黒衣を『串刺し』そこから黒衣から『生命力吸収』をしてぶっ殺してやるです


神月・瑞姫
【ミルフィ・リンドブラッド 】の救援にかけつける

雑貨屋【朧月】の仲間
フィーおねーちゃんが戦ってるって
シエラおねーちゃんに聞いて助けにきたの

あの黒マントが本体なんだね
フィーおねーちゃん

みぃも足止め手伝うの
シエラおねーちゃんのエーテル・ストリングスと連携
【忍び足】で気配を消してから不意を突いた
得意の封印術【神月封縛符】!
みぃの【破魔】の霊力一杯の手作りのお札
1枚でも触れたら止まっちゃうよ
(周囲に舞わせた大量の霊符を魔力糸が絡みついたゼラに放ち
その動きとユーベルコードを封じる

んぅぅ、フィーおねーちゃん今だよ
みぃ達が【時間稼ぎ】してる間にトドメ!

もし助かるなら
依代にされた子の体を生まれながらの光で治療


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
お前が首謀者か…。あの女の子たちをこんなになるまで虐げ、何もかも奪い、挙句の果てに身体まで…
ああ、俺の身体が欲しければ奪ってみろ。奪い取れるものならな!


最初に『血統覚醒』を発動、そして問答無用で【ダッシュ】+【先制攻撃】+氷の【属性攻撃】+【2回攻撃】を使用し、相手の懐に突っ込み連続攻撃の猛攻を試みるぞ。また、氷結の状態異常も与えるのも視野に入れ攻撃を行う。
体力を半分以上消耗できたなら、トドメに『亡き花嫁の嘆き』で本体の黒衣ごと切り裂く。
…宿主の少女も、嘆きから解放してやるために。

お前の永遠の命も、ここで終わりだ!ここで氷漬けになって朽ち果てろ!

…全てが終わったら、埋葬を手伝い黙祷を捧げるぞ。


藤塚・枢
引き続きフォリー君の暗器で交戦しながら、黒衣に鋼糸を通す
味方の邪魔にならない程度に、煙幕手榴弾とかでかく乱も行う
十分鋼糸が通ったら頃合を見て引き剥がす
薬品鞄から油を出し黒衣に投擲
焼夷弾を黒衣の方へ向け
「動くな
動いたらキミの大事な御髪で、盛大なBBQを開催することになる」

体を元の人格に戻せるか確認
可なら実行させて少しでも様子が変わったら黒衣を燃やす
慌てないなら演技ではないだろう

不可なら即座に燃やしUCで自害強要
「手品を見せる約束だったけれど、体の主に申し訳ないし自ら首を落としてくれ
ゆっくりとね」

最後に救助と弔いを
看取った少女に花を持たせる
あの時の手の温もりが、今も、きっとこれからも、忘れられない


荒谷・つかさ
底が見えたわね。
このまま、一気に押し込むわ!

慟哭の弱点、それは声であるが故に息を吸い込む必要がある事。
即ち、連射は利かないはず。
その隙、貰うわよ!

当初は「神威」に「騎乗」したまま、中距離から「風迅刀」の「属性攻撃」スキルで風の刃を射出しての牽制を続けつつガン逃げし、「こいつはもう踏み込んでこない」と印象付ける。
何度か繰り返したらおもむろに突撃、【荒谷流重剣術奥義・稲妻彗星落とし】を発動。
この時カウンターで慟哭が来る(息を吸い込むモーションが見えた)なら一旦離脱し、やり過ごしてから再度発動させる。
神威の機動力なら、やれる!

……トドメを刺してあげるわ。
ゼラ、あんたのためじゃない……その子のためよ。



●酌量の余地なし
 月の光は深さを増して古城の窓から射し込み、戦闘の余波でボロボロになった広間を照らす。
 白く目映い夜空からの光を浴びて、黒く恨みがかった衣服と色素の抜けた髪を振り乱し、猟兵たちの連続攻撃を受けながらも攻撃を続けるのはゼラ。
 既にその力の大本である黒衣は至る所が破け、焦げ、所によっては余り布で作った雑巾のようになっている箇所もある。
 依り代としている少女の身体も、全身に切り傷を受け、そして右目はすでに無い。しかし、真っ青な体の傷口から血がほとんど流れていないのが、寧ろ死を連想させるようで不気味だった。
「殺すわ……。遊びだと思っていれば、付け上がって……私は吸血鬼なのよ? 人間風情が、猟兵風情がよくも……ッ」
「……どうしたですゼラ? 最初の軽口が嘘のようです。最後まで余裕の笑みを浮かべオブリビオンらしく戦ったらどうです?」
 そう挑発を行いながら今も鎌の攻撃を受け、時に慟哭をステップで離れて躱し、剣戟を繰り広げるのはミルフィ・リンドブラッド(ちみっこい力持ち・f07740)。
 分かりやすい挑発にさえも乗ってしまうのは、長く生き続けてきた矜持によるものか、吸血鬼としての生き物の性か。
 ゼラは先ほどの連撃を受けてからなお一層追い詰められた自覚を持ったようで、巧みに鎌を操り、慟哭を放ち、眷属を呼び、猟兵たちの猛攻を退け、そして反撃せんと行動を行っている。
「……死ね、死になさい……。…………死ね……!」
 既にその頭には血が回っている様子であったが、ミルフィの挑発を受けて更に攻撃は激化し、目の前の猟兵たちを屠らんと鎌が唸りを上げては空間を奔る。
 まさに広間はダンスホールといった体。人気の相手にダンスの誘いを投げるように、猟兵たちはゼラへの攻め手を緩めない。そこに、新手が三人現れた。
「あの黒マントが本体なんだね……。フィーおねーちゃん、みぃも足止め手伝うの」
「……貴方はダメね、幼すぎる。殺すわ」
 階段を上がりきり、今辿り着いたのは神月・瑞姫(神月の狐巫女・f06739)。白銀の刀身を持つ狐月が月光を受けて煌めき、ゼラの顔を指し示す。
 彼女は雑貨屋【朧月】の仲間であるミルフィの危機を友人から聞いてきたらしい。そして瑞姫を呼んだ人物も、今まさに広間に入らんとしていた。といっても、広間に繋がる階段を登るではなく、床下を【穿孔滅牙】で破壊しながらの登場であったが。
「そろそろシエラが来やがるはずですとは思ったですが……って速いです……速すぎないです?」
「さぁ……懺悔の時間だよ」
 そう呟くのはシエラ・アルバスティ(自由に生きる疾風の白き人狼・f10505)。他の猟兵と同様に地下通路を抜け、看守たちを倒してきた彼女は、まるで道具を持っていないかのように軽々と移動し、地形を破壊して登場を行うとゼラへの不意打ちを行うべく行動を開始した。
「甘いのよ……。壁を派手に壊しながらで、気付かれないとでも思ったの……! この、私に……ッ!」
 しかし、壁を破壊しながらの登場を音で察知したゼラは、背後からの攻撃を見もせずに慟哭を発動して迎撃を行った。ゼラは体勢を立て直す猟兵たちを見やると、そこに最後の登場人物がいることに気が付く。
「お前が首謀者か……。あの女の子たちをこんなになるまで虐げ、何もかも奪い、挙句の果てに身体まで……!」
「フン……何が不満なの? 私の依り代になった子はね、泣いてたのよ? それもそうよね、吸血鬼たる私の身体として選ばれる名誉をその身に受けられるんだもの」
 ーー良かったら、貴方の身体も奪ってあげるわ……。泣いて喜びなさいッ! ヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)は鎌を振り下ろしながら叫ぶゼラのその言葉を聞くと、武器を構えて【血統覚醒】を発動した。
「ああ、俺の身体が欲しければ奪ってみろ……。奪い取れるものならな!」

●剣戟問答
 それ以上の問答は不要であった。ヴァーリャはその身にヴァンパイアの力を宿すと、足の腱が千切れてしまわんばかりの速度で広間を駆ける。ゼラの右眼が無いのを確認すると、死角に隠れるように右側から潜り込んでさえいる。
 ゼラの鎌の振りは早いが、振る前にその懐に潜り込めたなら? 予備動作を必要とする慟哭が行われる前に、刃を届けることができたなら? 答えは簡単だ、先制攻撃の完成である。
「受けてもらうぞ、ゼラ! 私の氷の一撃をッ!」
「ーーチィッ! 眷属ども、私をーーッ」
 ヴァーリャの踏み込みの速さに、ゼラは眷属を用いて迎撃を余儀なくされる。というか、他に出す技が無いのだろう。慟哭を出すには遅すぎ、鎌を振るには懐に入られ過ぎているのだ。
 彼女の周りに瘴気が寄り集まって影となり、眷属となってはヴァーリャの二振りの剣、メチェーリとスノードームの連続攻撃を防ぐべく、剣閃の軌道上に現れて攻撃を止めようとする。
 --しかし。
「オバサン、それはずるいな。今まで充分好き勝手してきただろう? 今度はこっちの番って奴なのさ」
「な……ッ!?」
 眷属になる前の影をからくりぬいぐるみのフォリーくんの口から出でたる暗器で雲散霧消させるのは、藤塚・枢(スノウドロップ・f09096)の繰る十の指。
 フォリーくんの口元に血は付かず、あとに残るのは眷属になりかけていた闇の魔力だけ。枢のアシストによってヴァーリャの剣は止められるどころか速度を増していく。
「枢! 感謝するぞ!」
「例なら不要さ。お互い様……侵入の時も、そう言ったろう?」
 かくして、ヴァーリャの剣はゼラの黒衣を派手に喰い散らかしていく。
 彼女の剣の一つ、メチェーリは吹雪のように刃を回転させると、チェーンソー剣としての本懐を果たさんと黒衣を次々に引きちぎり、そして続くスノードームの一振りが斬り損じた部分を氷を纏った鋭利な刃で奇麗に切断していく。
「アァ……ッ! ウ、ア、アアアアアアア!! 猟兵……ッ! ふざけ……ふざけるなァァァァ!」
 それはゼラにとって、猟兵との戦いで受けた初めての致命と成り得る一撃。今まで積み重ねてきたわずかなほつれや傷が、枢のアシストを受けたヴァーリャの剣で顕在化したものと言えるだろう。
「殺す! 殺す! ……殺すッ!」
 もはや冷静さなどの要素はゼラを構成するものに成り得ない。彼女は吸血鬼としての尊厳を踏みにじられた怒りと、自身の力の源である黒衣を破壊されたことへの哀しみを練りあげ、息を吸い込んでは慟哭にして連続で喉から放たんとする。
 ヴァーリャと枢は初撃を近くで受けてしまい、僅かに吹き飛ばされるが、すぐに体勢を整えてゼラの姿を目に捉え、接近を試みる。
 迎撃を兼ねた追撃を行おうと二発目の慟哭を放たんとするゼラだったが、二度続いた技の隙を見逃す猟兵たちではない。
「底が見えたわね。このまま、一気に押し込むわ!」
 そう言って愛馬である神威に騎乗した彼女は、ゼラに近付くことなく中距離から愛刀、風迅刀から風の刃を射出し続け、牽制を行う。
「慟哭の弱点、それは声であるが故に息を吸い込む必要がある事。即ち、連射は利かないはず……! その隙、貰うわよ!」
 つかさの読みは正にその通りであり、多くの猟兵から狙われる立場にあって慟哭を多用し始めたゼラは、その攻撃の際に生まれる隙を失念しているようであった。
「そんなもの……! 風の刃如き、何発受けたところで!」
 防御姿勢も取らずに再度本気の慟哭を見舞おうとするゼラ。風の刃は無慈悲にゼラの黒衣を切り刻むが、もはや彼女にとっては自身の力が失われることよりも、自身の誇りを傷つけた目の前の猟兵たちをどう殺すかの方が重要なのだろう。
 しかし、つかさの風の刃の真の狙いは、ゼラではない。数々の風の刃が敵に向かう中、一つのかまいたちが枢の投げ込んだ煙幕手榴弾を破裂させた。
「煙ッ?! でもこんなもの! まとめて晴らしてやれば良いじゃないッ!」
「この距離……神威の機動力なら、やれる!……トドメを刺してあげるわ。ゼラ、あんたのためじゃない……その子のためよ」
 広間を包んだ煙幕を晴らすべく、鎌を振り回して空気の流れを生み出したゼラが煙幕の隙間から目にしたものは、神威にまたがるつかさの姿。
 先ほどから常にけん制を繰り返していたのは、偏にこのただ一回の突撃のために。つかさは白い煙幕の中を、【荒谷流重剣術奥義・稲妻彗星落とし】を行いながらゼラへと突撃する。依り代になった少女のため、彼女は自身の限界を超えた剣速でゼラを蹂躙していく。
 零式・改二の斬り下ろしが、大悪魔斬【暁】の薙ぎが、殺神剣【轟雷】の必殺の突きが。全ての武器が、全て必殺となりてゼラを襲う。黒衣は千々に破れていき、敵の力は瞬く間に落ちていく。
「生意気……ッ! 数で群れなければ何もできない、猟兵め……ッ! でもッ! わたしはまだ……動けるのよ!」
「そうかもだけど……。みぃの【破魔】の霊力一杯の手作りのお札はどう?」
 一瞬の隙を枢が仕掛け、つかさが活かし、そして瑞姫が繋げた。乱舞をもろに受けたゼラに襲い掛かるのは、瑞姫の札の嵐。
「おまえたちッ! わたしを守りなさいッ!」
 ゼラはなんとかしてこの状況を自分の優位に変えるべく、眷属を召喚し弾丸のように操ることで、異常な速さで瑞姫の札を打ち消していく。しかし、眷属の相殺ももはやゼラには許されていない。
「そうは……させないです」
 フィーの血液セットをいつの間にか再度口にしたミルフィが、瑞姫の隣で【禁忌・血流操作】を行い、自身を再度闇に浸す。そうして彼女が放つのは、自身の血を槍のような形状にして射出する血の弾丸の雨。
 血の弾丸は魔力を媒介に生まれる眷属たちを次々と破壊し、そしてーー眷属の壁をすり抜けた霊符が、遂にゼラの黒衣に辿り着いた。
「悪しき者に月の静謐を……」
「ぎッ……ぎ、いやあああああああああああ!」
 神月家に存在する書物を読み解き、瑞姫が手ずから作成していった、破魔の力を色濃く持ったその札は、魔性のものに取って正に一撃必倒に成り得る。
 その符を依り代に発動された【神月封縛符】を受けたゼラが、体の自由を止めてしまうのも無理のない話である。
「だから言ったでしょう? 1枚でも触れたら止まっちゃうよ」
「黙れ……ッ! 黙れ!破魔の力なんて、あたしの……! うああッ!」
 そしてそこに追い打ちをかけるのはシエラ。動きを止めたゼラに近寄ると、彼女は【わからせる】を発動する。
「あなたって弱ぁい! 弱すぎ! 弱い人は何もしちゃダメ! 弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い──」
 ゼラを全身で蔑んだシエラは、一しきり行動を完了するとミルフィに向かって合図を行った。
 瑞姫も同じく隣にいるミルフィに声をかける。ゼラの命は、既に風前の灯火であった。

●Until Morning
 月下の古城で、いよいよそのバカ騒ぎも終幕の段へと入っていく。
 動けないゼラは呻きと睨みで猟兵を威嚇するように身動ぎを行うが、そんなものはもはや抵抗でも何でもない。一気呵成に走り、猟兵たちは思い思いの武器を構える。
「フィーちゃん、今!!」
「んぅぅ、フィーおねーちゃん今だよ! みぃ達が時間稼ぎしてる間にトドメ!」
 瑞姫とシエラ。二人の猟兵たちの応援をその背に受けながら、ミルフィが両の脚の速度を速めていく。手に取りだしたるは敵対している者の生命力を喰らう魔剣、短刀・血吸。
 ミルフィは逆手に自分の獲物を構えると、すう、と短く、鋭い息を一つ吐いてゼラの胴に短刀の切っ先を向けると、静かに、深く、最短距離で腕を伸ばしていく。
「わ、たしを……! ころす、な、んて……! そんなこと、あるはずが、ない……!!」
「うるさいですよ。今……ぶっ殺してやるです」
 そしてそのまま怪力を込めた一撃を放つミルフィ。ゼラの胴部の黒衣を思い切り串刺しにすると、突き刺した短刀がまるで生きているかのようにゼラの黒衣を侵略していく。
「アア……ッ! イヤ……イヤアア! 猟兵……如きがァァァ! ……ッ、眷属ッ! アイツらを殺しなさい!!」
 消滅から何とかこの身を守らんとして、既に体の動きを封じられたゼラが取った行動は、眷属の召還による悪あがき。自分の周囲に眷属の塊を浮かべると、周りの猟兵へと無差別に突進させていく。
「……宿主の少女も、嘆きから解放してやるために! お前の永遠の命も、ここで終わりだ! ここで氷漬けになって朽ち果てろ!」
 だが、もはやそれも終わりだ。ヴァーリャが最後に発動したのは、【亡き花嫁の嘆き】。トゥーフリ・スネグラチカの靴裏に精製した氷のブレードによる蹴りは、大量の冷気を伴って眷属ごとゼラの黒衣を飲み込んでいく。
 その冷気はまるで、彼女の怒りを体現しているかのごとく冷たく、そして烈しかった。
 そのまま猟兵たちの攻撃はゼラの黒衣を全て飲み込んでいくかに思えたが、しかしゼラもさるもの。獲物が胸に刺さった状態で、半ば全身を凍らせながら猟兵たちの腕を無理やり力任せに振りほどくと、僅かに距離を取って背中の大鎌に手をかけ、近くのミルフィに振り下ろさんとした。
「私は……! わたしは! 吸血鬼、ゼラなのよ!? どうして、あんたたちみたいな、ゴミで、木っ端の猟兵、なんかに……!」
 しかし、その鎌も、ゼラの腕も、ミルフィに振り下ろされる直前で動きを止める。瑞姫の札は先ほどの投擲で鎌にも張り付いており、その重さを増していた。闇の魔力を用いて体と鎌を動かしていたゼラにとって、もはや大鎌は気軽に振り回せる代物ではなくなったのだ。
 そして、ゼラの腕が止まった理由はもう一つある。枢の鋼糸だ。戦闘が始まってからずっと広間とゼラの黒衣に少しずつ括り付けていたこの糸は、いよいよ仕上げとばかりにゼラの黒衣に満遍なく行き渡り、彼女の動きを完全に止める。
「な、なによ……。こ、こんな、こんな……私が負けるはず、死ぬはず、無い、無いのに……」
 茫然自失としているゼラに向かって、枢は腰元の薬品鞄から油を取り出し、黒衣に投擲する。油が黒衣に染み渡ったのを見ると、彼女は焼夷弾をゼラの方へ向けながらこう言った。
「動くな。動いたらキミの大事な御髪で、盛大なBBQを開催することになる。……今から、黒衣のフードを下ろさせてもらうぞ」
 枢が狙っているのは、ゼラの依り代となった少女の救出である。……しかし、黒衣のフードが下ろされても、依り代となった少女の人格が戻ることはなかった。
 恐らく、もう黒衣を完全に取り除いたとしても無駄だったのだろう。少女の身体は元々限界が来ていたのだ。ゼラの支配下に長く置かれ過ぎたのだ。
「……手品を見せる約束だったけれど、体の主に申し訳ないし自ら首を落としてくれ。ゆっくりとね」
 その様子を見て僅かに消沈しながらも、表情は平静を保ちつつ、枢はゼラにそう命じる。【復讐は今此処に】。
「いや……。嫌よ、いや……。……さむい……だれか……。ああ、そうか、あの子たちは……。私の依り代になるのが嬉しくて泣いていたんじゃなくて、きっと、……」
 鋼糸を対象の筋組織や可動部に通す事により、対象の意識を保った状態で体を操り、自傷させるこのユーベルコードは、ゼラの本体である黒衣に良く効いて……そして、彼女はその力のすべてを失うのだった。
 あとに残ったのは、黒衣の残滓と、少女の死体。そして、窓から射し込むわずかに明けた空の光だけ。
 猟兵たちの活躍によって、ダークセイヴァーから一人の女吸血鬼の意思が完全に消え去った。
 
●少女たちの魂の安寧
 古城からオブリビオンがいなくなった後、猟兵たちは古城に囚われていた少女たちを解放し、手当を行い、親元へと返して、そしてできるだけのことをしようと死んでしまった少女たちの埋葬を行い、黙とうを捧げた。
 その筆頭はヴァーリャだ。せめて、あの宿主の少女の魂を、長年の軛から解放してやれたことを喜ぶべきなのか。それは誰にも、何も言えないことであった。
 瑞姫は依代にされた子だけではなく、古城と地下通路で見つかった少女たちの体を、出来る限り生まれながらの光で治療してあげたという。
 生きて助けられなかったなら、外傷だけでも。瑞姫は自身が疲労しながらも、最後まで治療を止めなかった。
 瑞姫の治療によって、拷問室の中で息を引き取った少女らの肌も、美しい生前のものに戻った。枢は自分の手の中で失われた命に花を持たせると、弔いを捧げる。
 彼女はきっと、あの時の手の温もりが、今も、きっとこれからも、忘れられないのだろう。
 ダークセイヴァーで起きている事件は、今回の事件と同じように、救いもなければ慈悲もない、暗澹たるものばかりだ。
 ……それでも。それでも、もう、ゼラの被害に遭う少女はいないのだ。それだけは、胸を張って言えることであり、確かな猟兵たちの戦果であった。
 作戦は、大成功だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月05日


挿絵イラスト