エンパイアウォー⑤~月明りが護りしものは
「腹が減っては戦はできぬ……という言葉はもちろん知っているな?」
セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)は半ば冗談交じりにいいながらも、真剣な眼差しを猟兵達へと向ける。
エンパイアウォーの開始に合わせ、徳川幕府は軍勢を集結させると共に、全国の商人から兵糧などの補給物資を購入しようとしたが、兵糧を初めとした補給物資の値段が天井知らずに高騰しており、満足な量をそろえる事が出来ないそうだ。
「どうやら、大悪災『日野富子』という輩によって買い占められたらしい。」
日野富子は個人資産が徳川幕府の全資産を凌駕する魔軍将の一人だ。このまま買い占めが続けられれば、予定される規模の幕府軍を動員する事ができないだろう。
「そこでだ。この状況を打破するため、お前さんたちには『徳川埋蔵金』を探してもらうことになったわけだな。」
この買い占めに対抗して充分な補給物資を揃えるには、神君家康公が有事の為にと遺した『徳川埋蔵金』を使う以外の方法はないとのことだった。
「ここに徳川家から借り受けた、『徳川埋蔵金の地図』の地図がある。これがあれば場所を特定することはさほど難儀なことではない。ただし――。」
徳川埋蔵金の地図に示された場所に向かうだけでは、徳川埋蔵金を得る事は出来ない。神君家康公が埋蔵金の盗掘を防ぐために残したという『謎』を解かなければならないのだ。
「まぁ、その謎についてもある程度の情報は得てある。実際に行ってみないと分からんこともあるかもしれんが、現場に着くまでに多少は頭の体操はしておいた方がいいだろう。」
セゲルは猟兵達にちいさなメモ書きを手渡した。
『去 女 木 力 火 田 日 凶 水 又 大 付 土』
『たとえ、失われたものを取り戻したとても、元に戻らぬものがある。』
そこに書かれていたのは複数の漢字と、謎を解くカギとなるであろう一文だった。
「月明かりの実が差し込む、閉ざされた洞窟。その場所には財宝を守ていたと思しき死体がある。どうやら、罪人に財宝を守らせていたらしい。いや、今もなお守り続けているといった方が正しいか。」
その罪人たちの骸の首には、それぞれ漢字の書かれた小さな板切れがかけられているらしい。しかも、頭部や足、手など、それぞれ異なった場所が欠損しているとのことだった。だが驚くことに、肉体は腐敗しておらず、まるでつい先ほどまで生きていたかのような状態らしい。
「本来であればありえない状況ではあるが、魔術的に隔離された空間であることを考えれば、不思議ではない。」
いずれにしても、ここに埋蔵金があることは確かだ。戦争で勝利するためにも、何とかして見つけ出すしかない。
「さて、少々おしゃべりが過ぎたな。あとはお前さんたちに任せるとしよう。」
弐呉崎
どうもお久しぶりでございます。そして、初めましての方は初めまして。
弐呉崎です。
=============================
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
=============================
さて、謎解き依頼です。OP後半のヒントをもとに、提示された漢字の中から解答を選び、理由を添えた上でプレイングをご提出でください。
シナリオの性質上、描写は最も早く正答した方は確定、それ以外の方は私のキャパシティ次第とさせていただきますので、予めご了承ください。
また、執筆は日曜日以降となる予定ですので、プレイングの失効等にはご注意ください。(スケジュールによっては最提出をお願いする場合があります。)
それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『神君家康公の謎かけ』
|
POW : 総当たりなど、力任せの方法で謎の答えを出して、埋蔵金を手に入れます。
SPD : 素早く謎の答えを導き出し、埋蔵金を手に入れます。
WIZ : 明晰な頭脳や、知性の閃きで、謎の答えを導き出して、埋蔵金を手に入れます。
|
コノハ・タツガミ
月明かりかい?肉月というからね、こういうことかね?
去→脚,女→腰,木→膝,力→肋
火→?,田→胃,日→胆,凶→胸
水→脳,又→腎,大→?付→肘,土→肚
これだと、火と大がわからないね。
大きな火でも起こせばいいのかもしれないけれど、洞窟じゃまずいかね?
ま、火をつけて不味そうならミズチに消させるとするかね
リグ・アシュリーズ
ひーん……! 世界特有の文字なんて私、簡単なのしか読めないわよ!?
知人に泣きついたら、ポンと辞典手渡されて「あとは頑張れ」だもの。
なになに、漢字……ぶしゅで成り立つ……(ぷすぷす)。
分からないなりに文字の「形」だけ見て、法則を見出そうと四苦八苦。
ふと、付箋があるのに気づき。
「遺体のにくづきはどうだ?」
にくづき……(ハッとして部首の解説ページをめくる)
肉体の欠損、そして体の一部を現す「月」。
組み合わせてできる、人体を表す漢字は。
脚 腰(木)筋(火)胃 胆 脳 腺 肢 膜 腑 肚
確証はないけど、仲間外れは木と火。
ふたつ……どちらか……ううん、信じましょう。
どちらも! 人の体にははじめっからないわ!
薄暗く、ところどころに埃の被っている洞窟。しかし、不思議と腐臭どころか血の匂いもしない。まるで、時間が止まっているかのような錯覚を覚えるその場所で、二人の猟兵が思案していた。
「こんな狭い場所でも明かりかい?」
コノハ・タツガミ(放蕩亜神・f17939)は隙間から差し込む月明かりを見上げていた。そして、その視線を徐々に下へと落としていく。やがてその視界に入ってきたのは、月光の元に並ぶ守人たち。
「……肉月というからね、こういうことかね?」
コノハ小さな紙片を取り出すと、おもむろに共通の部首を持つ漢字を書きだしていた。
「ひーん……! 世界特有の文字なんて私、簡単なのしか読めないわよ!?」
リグ・アシュリーズ(人狼の黒騎士・f10093)は見知らぬ言語に四苦八苦していた。知人に泣きつき助けを求めたものの、彼女に手渡されたのは漢字辞典。
「あとは頑張れって……もう少しヒントをくれればいいのに。なになに、漢字……ぶしゅで成り立つ……」
分からないなりに文字の形だけ見て、法則を見出そうとするも、ぷすぷすと頭から煙が上がる。そんな彼女の目に留まったのは、辞書の間に挟まった一枚の付箋。そこにはこう書かれていた。
『遺体のにくづきはどうだ?』
「にくづき……あっ」
ハッとして部首の解説ページをめくる。そこにあったのは『にくづき』を部首に持つ漢字の一覧。
「肉体の欠損、そして体の一部を現す『月』。組み合わせてできる、人体を表す漢字は――」
答えを導くカギへと至った二人は、自らの導き出した解答を口にする。
「これだと、火と大がわからないね。」
「確証はないけど、仲間外れは木と火。」
互いに顔を見合わせる二人。
「えーっと……大は膜にあるから、漢字にならないのは木と火よね?どちらも人の体には、はじめっからないわ!」
「いや、木は膝に含まれている。だから、仲間外れは火と大だね。」
しばしの沈黙。だが互いに共通している漢字が、もはや一つしかないことは明白だ。
「「……火だ!」」
火の文字が掛けられた死体の元へと駆け寄る二人。しかし、その死体は他の死体とは何も変わらず、特別な仕掛けがあるようには思えなかった。
「と、近寄ってみたものの、これを一体どうすればいいのかしら。」
「大きな火でも起こせばいいのかもしれないけれど、洞窟じゃまずいかね?」
「いやいや、こんなところで火事になったら、埋蔵金どころか、私達まで巻き込まれない!?」
入口も狭く、埃っぽい洞窟内。まして、死体が転がるような場所で火をつければ、どうなるかわからないというリグの心配ももっともだ。
「ま、大丈夫だろう。火をつけて不味そうならミズチに消させればいいからね。」
しかし、コノハはそんな言葉にも躊躇うことなく、死体に火をつける。あらゆるものを凍てつかせる小さな龍。彼らに任せれば、燃え盛る炎とて恐れるに足らないと考えたのだ。死体を火種として現れた火柱は、つい先程まで仄暗かった洞窟をみるみるうちに朱く染めていく。しかし、炎に延焼する気配はなく、その場にある一体の死体のみを的確に焼いていく。やがて火が収まると、そこに現れたのは下へと続く大穴だった。穴をのぞき込むと、そこから漏れ出していたのは微かな光。月明かりを反射しているそれは、紛れもなく埋蔵金だ。
「ついに見つけたわ、埋蔵金!さっさと回収して、こんな薄気味悪い場所からはおさらばしましょ!」
勢いよく穴へと飛び込むリグ。それに続く……というわけにはいかないらしく、コノハは何やら首を横に振っている。だが、ここまで来て引き下がるわけにはいかない。意を決したかのように、彼女も穴の中へとその身を投じた。
埋蔵金の運搬は兵士たちの手伝いもあり、滞りなく進んでいく。やがて、全ての埋蔵金を穴から運び出し、彼女たちも再び洞窟へと戻った。周囲を見渡すと、そこにあったはず死体はすべてなくなっていた。兵士たちに尋ねても、初めからそんなものはここにはなかったと返答が来るのみだ。まるで初めから何もなかったかのように、洞窟内には月明かりだけが輝いていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴