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エンパイアウォー②~徳川に仇為す復讐の炎~

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー


●地獄より
 紅い、炎の蛇が城郭を焼いている。哀れなサムライ達の運命は炎に身を焼かれて死ぬか、城を包囲する屍人に噛まれて屍人の群れの仲間入りをするか、二つに一つだ。
 城も人も呑み込み、激しく燃え盛る炎を見て、己の半身を炎に焼き焦がしている女が凄絶な表情で狂喜している。
「ギャハハ!いい気味だぜ!そうだ、炎よ燃えろ!水晶屍人よ、もっと殺せ!憎き徳川に連なるもの全てを滅ぼしてやれ!」
 ほどなく、その城に生きている人間は一人もいなくなった。
 目に映るもの全てを滅ぼしながら江戸を目指して進む屍人の軍勢は、さながら地獄からの使者のようであった。

●グリモアベース
「サムライエンパイアで本格的に戦争が始まった。第六天魔軍将の一人・武田信玄は三方ヶ原で討ち取られたが、残りの魔軍将達が、サムライエンパイアを征服せんと、一大攻勢をかけてきた。徳川軍の兵力は10万。総大将の織田信長を倒すためには、徳川軍の戦力をいかに無傷に近い状態で奴の居城である安土城まで辿り着かせられるかがカギとなるだろう」
 怨霊の姿をしたグリモア猟兵・守田緋姫子は、サムライエンパイアの現状の説明を始めた。
「お前達には魔将から借り受けた『水晶屍人』の軍勢を率いて奥羽地方から江戸に向かって南下しているオブリビオンを撃破してもらいたい」
『水晶屍人』は、『魔軍将』の一人である陰陽師『安倍晴明』が屍に術をかけて造り出した、肩から奇妙な水晶を生やした動く屍だ。
「こいつらは戦闘能力自体は高くはないが、『水晶屍人』に噛まれた人間も新たな『水晶屍人』となる。奥羽は今、さながらゾンビ映画のような地獄絵図になっている」
 このまま『水晶屍人』の軍勢が江戸に迫れば、徳川幕府軍は全軍の2割以上の軍勢を江戸の防衛の為に残さなければならない。だが幸い、水晶屍人自体には知性はない。指揮官のオブリビオンさえ討ち取ってしまえば、あとは徳川軍だけでも駆除は可能なはずだ。
「指揮官であるオブリビオンはイカレてはいるが、決して馬鹿ではない。猟兵が近づけば『水晶屍人』の群れに紛れてしまうだろう。だから、お前達には数百から数千の『水晶屍人』の軍勢の中に飛び込み、『水晶屍人』を蹴散らしつつ指揮官であるオブリビオンを探し出してもらうことになる」
 雑兵とはいえ敵の数が膨大である以上、何らかの策を使って素早く指揮官を発見するか、あるいは大量に屍人を足止めして他の猟兵を動きやすくする、など各々の判断が重要になってくる。
「危険な戦いとなるが、どうか力を貸してほしい」
 そう言って、怨霊の少女はぺこりと猟兵たちに頭を下げた。


大熊猫
 数あるシナリオから当シナリオを閲覧頂きありがとうございます。大熊猫と申します。

●特記事項
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。『水晶屍人』の軍勢を率いて徳川への復讐を果たすべく進撃しているオブリビオンの指揮官を撃破しましょう。

●合わせプレイングでのグループ参加の場合は、迷子防止の為プレイング冒頭にグループ名、ないしお連れの方の名前とIDを記載をお願いします。また、なるべく近い時間に送付頂けると助かります。
 また、文字数を節約したい場合はプレイング末尾か冒頭に次の記号をお使い下さい。
 連携歓迎→★アドリブ歓迎→☆
 以上です。皆様の熱いプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『四華衆筆頭『絶殺の摩訶曼珠』』

POW   :    二刀絶殺【鬼鋏】
【無き左腕を形作る獄炎の集中】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【大鋏を二振りの焔纏う刀】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    地獄炎術【大蛇焔】
自身からレベルm半径内の無機物を【骨をも残さぬ怨嗟と獄炎の大蛇】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
WIZ   :    天稟【陽炎映し】
対象のユーベルコードに対し【殺傷力と延焼を加えたユーベルコード】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
鈴木・志乃

連携したくない
何故ならば
選択UCが無差別攻撃だからだ!!

孤軍奮闘上等
やってやるぞ私はー!!

【足止め希望】

味方がいない四面楚歌状態で
UC発動
【祈り、破魔、呪詛耐性】を籠めた【歌唱の衝撃波】で
敵を思いッッッッ切り【なぎ払う】よ!!

はい倒れた死体は【念動力】で巻き上げて嵐にしてー
敵陣営に思い切りぶつけて行きまーす【なぎ払い】

物理攻撃されたら光の鎖で【早業武器受け】からの【カウンターなぎ払い】
【オーラ防御】常時発動

はっはっは
私の目の前で死人操るとか
ふざけてんのか(ガチギレ)
首洗って待ってろ信長、晴明



●レクイエム

 肩に水晶が埋め込まれた屍人の群れが行進する。徳川軍の兵士はおろか、山賊や通りがかった村の女子供達をも取り込み、膨れ上がった水晶屍人の軍勢はいまや千をとうに越え、二千にすら届こうとしていた。その地獄のような行軍に辿り着き、憤る猟兵が一人。
「はっはっは。私の目の前で死人操るとか、ふざけてんのか」
 聖者にしてサウンドソルジャーの猟兵、鈴木・志乃(ブラック・f12101)は怒りの余り、乾いた笑い声を上げた。
 ソノカオハマブシイホドニワラッテイタケド、ハラワタハグツグツトイカリデニエクリカエッテイタ。
 全ての生命の幸福と笑顔を。志乃はそう願って歌い続けてきたが、こんな風に死者を弄ばれては、冥福さえも祈れない。志乃は激しい怒りに身を任せ、水晶屍人の群れを薙ぎ倒しながら直進した。屍人達は彼女の攻撃を受け、容易く吹き飛ぶが、すぐに空いた空間に別の屍人がやってきて列を埋めてしまう。あっという間に志乃は屍人の軍勢に四方を囲まれてしまった。
「孤軍奮闘上等。やってやるぞ私はー!!」
 まさしく四面楚歌の状況でも、志乃は笑っていた。水晶屍人の群れは救いを求めるかのように次々と彼女へとすがりつき、その美しい首筋に牙を突き立てんと迫るが、彼女の体に触れるより先に、彼女の腕から伸びた聖なる光の鎖が屍人達を吹き飛ばし、近づくことを許さなかった。志乃は追い払った屍人達をまとめて念動力で操ると、嵐のように巻き上げ、津波のように押し寄せてくる屍人達にぶつけて隊列を搔き乱した。
 屍人達の隊列がぐちゃぐちゃに乱れ、攻撃が止んだ一瞬の隙を突き、すう、と大きく息を吸った志乃は、屍人達を一網打尽にすべく、思いッッッッ切りマイクに向かって叫んだ。
『今日もげんきにいっくぞおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああ!!!!!』
 マイクで拡声された、志乃の全霊を込めたソウルフルなシャウトは彼女の周囲に群がる水晶屍人達をまとめて薙ぎ払った。破魔と祈りの力が込められた彼女の叫びは、水晶屍人達を邪悪なる呪縛から解放し、浄化していく。穏やかな表情で成仏していく水晶屍人達の様子に、志乃はほんの一瞬だけ目を伏せた。
「首を洗って待ってろ、信長、晴明」
 罪なき人々の命を奪うだけでは飽き足らず、死後の安寧すらも奪った外道達に然るべき報いを与えるまで、彼女の戦いは終わらない。志乃は倒しても倒しても視界を埋めつくす屍人の軍勢を前にして、再び唇を吊り上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴェル・フィオーネ
★☆
■心情
この世界でも、私達の世界の『アリス』のように困っている人が居るのなら、助けなきゃね!
だって私は……『アリス』でもあり、『猟兵』だもの!

■戦闘
ガラスのラビリンスを使って、敵の軍勢を迷宮の中に閉じ込めるわ!
屍人?って連中は、知性がないんでしょ?迷宮をさ迷わせることで足止めになるんじゃないかしら!
……逆に、指揮官は出口に向かって進み、早急な脱出を図ると思うの
だって、軍勢が密集したから袋叩きにあうのは少し考えればわかるもの
だから、出口で待ち構えていればこちらが有利な状況で戦えるはず?
動きを見せなかったら、それこそガラスのラビリンスを解除して他の猟兵に袋叩きにしてもらえばいいものね!


アイ・リスパー
★☆
「水晶屍人とは厄介な相手ですね……
さらに指揮官がこの大軍の中に紛れているとは……」

敵が大軍だというなら、こちらも最大火力の技で蹴散らすまで!

電脳空間から【超伝導リニアカタパルト】のレールを実体化。
【マックスウェルの悪魔】でレールを絶対零度まで冷却し質量弾体をマスドライバーで撃ち出します!

「この一撃なら、雑魚は一掃できるはず!
指揮官はそこですねっ!」

指揮官を見つけたら攻撃を仕掛けますが……

「あっ、ちょっと待って!
わ、私、近接戦闘は苦手なんですっ!」

焔を纏う刀の攻撃を【ラプラスの悪魔】によるシミュレーションで必死に回避しつつマスドライバーの準備をしますが。

「冷却と再装填が間に合いませんーっ!」


グラナト・ラガルティハ
水晶屍人か…味方の数を減らした上に敵の数が増えるというのは厄介だな…ある意味効率的ではあるが…気分のいいものではないな。

神の力を【封印を解く】で限定解除
【高速詠唱】でUC【業火の槍】を発動【属性攻撃】炎で威力を強化。それを屍人の群れに打ち込む。
その中で違う反応をした者がいればそれを狙って神銃に【呪詛・呪殺弾】に【属性攻撃】炎を乗せて発砲。

接近戦になれば武器を蠍の剣に対応。その剣に【毒使い】で毒を仕込みつつ攻撃。
敵攻撃は【戦闘知識】で対応。

さて、お前の炎と俺の炎。どちらが勝つか…。

アドリブ連携歓迎。


ベリル・モルガナイト
★☆

おイタは。よろしく。ないわ。ね?
あまり。攻撃をしたり。素早く。動く。というのは。得意では。ないから
屍人たちを。足止め。して。他の。皆さんを。サポート。するように。動く。わ

まずは。周囲の。地面や。石ころを。宝石の。盾に。変換
私の。周囲を。飛び回る様に。動かす。わ
これなら。【存在感】も。あって。多少は。【おびき寄せ】。られない。かしら

指揮官の。撃破を。狙う。方を。援護
攻撃は。【オーラ防御】と。【盾受け】で。【かばう】。わ
耐えて。耐えて。耐えて
一体でも。多くの。敵を。引きつけて。耐え抜き。ましょう
私は。盾。なのだから


ストーム・アルカー
【WIZ】
…ふむ。確かにゾンビ映画のようだねぇ。
あながち間違ってもいないのかな。どうあれ倒すしかないようだけれど。

…あの様子だと、一般人にも殺意が向いてそうだねぇ。
噛まれた人間が屍人になる。のであれば、僕の旧友に丁度いいのが居る。
…機械兵のみを【旧友】で召喚。
特に完全な機械系…ウォーマシンの人を呼ぼう。

この機械兵たちは頑丈でねぇ。熱にはめっぽう強いのさ。
…チェーンソーの刃を右腕に、高速で連射する機関銃を左腕に内蔵していてね。
対軍団戦は彼らの得意分野だ。屍人達を殲滅してもらおう。
僕は生憎、非力だからねぇ。彼らの陰に潜んで、大鎌で奇襲する事のみを考えようかな。



●鋼の狩人

 死者達の行進は続く。二割ほどの水晶屍人が先行した猟兵によって食い止められているが、それでも水晶屍人の数はいまだ千を超える。屍人達は意志の光を映していない目で、江戸を目指してひたすら南へと進み続けていた。
「…ふむ。確かにゾンビ映画のようだねぇ。あながち間違ってもいないのかな。どうあれ倒すしかないようだけれど。」
 崖の上から軍勢を見降ろしているのはストーム・アルカー(次元の旅人・f18301)。彼が見る限り、水晶屍人の軍勢の中には女や幼い子供、老人など、明らかに非戦闘員だった者も混ざっていた。その有様を見て、アルカーは眉をひそめる。
「…あの様子だと、一般人にも殺意が向いてそうだねぇ。噛まれた人間が屍人になる。のであれば、僕の旧友に丁度いいのが居る。」
 アルカーは彼の持つ本の中に生きる、旧友(トモ)の力を借りることにした。眩い光と共に、二十体の機械兵が召喚された。機械兵達はみなウォーマシン。頑丈さは折り紙付きだ。それに、体が超金属で出来ている彼らは敵の指揮官が扱うとされる熱にも滅法強い。この場に最もふさわしいハンターだろう。
「みんな、よく来てくれたね。今日はあの水晶屍人達を殲滅してくれ。」
「了解シタ」
 アルカーのオーダーを受けた機械兵達は右腕のチェーンソーを唸らせながら、一斉に崖を滑り降りていった。アルカーも旧友たちに混じり、崖を降下する。
 ほどなく、ガトリングガンの発砲音と、チェーンソーのエンジン音が織りなす凄まじい騒音が戦場に響いた。機械兵士達の攻撃は容易く水晶屍人達を引き裂いているが、水晶屍人の牙は鋼鉄の狩人たちには傷一つ与えられていない。それはまさしく一方的な狩りであった。

●二つの炎

「水晶屍人か…味方の数を減らした上に敵の数が増えるというのは厄介だな…ある意味効率的ではあるが…気分のいいものではないな」
 屍人達の進行方向に立ち塞がったグラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)は、元は徳川軍の兵士であった者が多数を占める水晶屍人達の軍勢を見て、溜息を吐いた。戦の神であるグラナトは兵法には理解があるが、好悪はまた別だ。効率を追求した作戦というものは倫理を置き去りにしているというのが世の常である。
「やはり指揮官を討ち取ってしまうのが最善手か。業火の槍よ。貫き燃やせ」
 グラナトは普段は封じている神の力を解放すると、水晶屍人達をまとめて焼き払うべく、二百を超える数の炎の槍を屍人達に向けて打ち込む。水晶屍人達は瞬く間に炎に包まれ、延焼により被害が拡大していく。グラナトは、間断なく数百の炎の槍を次々と屍人達へと投げ放ち、炎で道を作りながら軍勢の中に分け入っていく。これだけ派手にやれば敵の指揮官が何らかの反応を見せるだろう。
 数分後、グラナトはターゲットの発見に成功した。知性がない為、炎に包まれても愚直に前進を続ける水晶屍人達だったが、この場から離れようとしている者の気配が1つ。グラナトは神銃を抜き放つと、そこを狙って呪殺と炎の力を込めて神銃を発砲した。
「ぐっ!」
 肩に神銃弾を受けた女が苦悶の声を上げ、グラナトの方を振り向いた。ただの水晶屍人なら神銃弾を受けた時点で炎上しているはずだ。何よりも、グラナトは世界の全てを呪うかのような激しい憎悪と怒りをこいつから感じ取っていた。こいつが指揮官、「絶殺の摩訶曼珠」で間違いないだろう。
「お前が指揮官か。やっと会えたな」
「やってくれるじゃねえか。この虫ケラが!」
 殺意を剥き出しにした摩訶曼珠は【鬼鋏】を解放し、炎に包まれた二振りの刀へと分かれた鋏を振り上げ、グラナトへと迫った。
 キィンキィンキィンキィン!ドンドンドンドン!
 戦場に金属の衝突音と発砲音が響いた。グラナトは蠍の剣を抜き、摩訶曼珠の二刀流による炎のように苛烈な斬撃の嵐を剣一本で防御しながら、神銃による射撃で反撃を繰り出していた。
「死ねよ、ほら、さっさと死ね!徳川を庇い立てする奴らはみんなくたばっちまえ!」
「さて、お前の炎と俺の炎。どちらが勝つか…。」
 燃え上がる野火のような激しさで戦いに没頭する摩訶曼珠に対し、グラナトは闇夜を照らすランプの炎の如き静けさで戦いに集中していた。

●援軍

 ガルルルルル!ギュインギュインギュイン!
 グラナトと摩訶曼珠が交わした剣戟が百合を超える頃、爆音を撒き散らし、二十機のウォーマシンが水晶屍人の群れを割ってなだれ込んできた。先刻アルカーが呼び出した『旧友』達である。
『水晶屍人の軍勢を殲滅しろ』というオーダーを受けたウォーマシン達だったが、彼らは一定の方向に向かって進んでいた。彼らは「召喚者であるアルカー以外の者への悪意」に反応してその発生源を追跡する性質を持つ。意志なき傀儡である水晶屍人達は悪意など一切持ち合わせていなかった。ならば、ウォーマシン達が探知していたこの戦場最大の悪とは。それは、徳川に連なる全てを恨み、この世をも滅ぼさんとする特大の悪意を持つ彼女に他ならない。
「チィ!新手か!」
 ウォーマシン達の立てる激しい騒音に、摩訶曼珠はウォーマシン達の方を振り向く。グラナトは摩訶曼珠の注意が自分から逸れた一瞬の隙を突き、蠍の剣による刺突を摩訶曼珠に叩き込んだ。
「痛ッ……!」
 苦悶の声を漏らす摩訶曼珠。さらに、ウォーマシン達の間を縫い、飛び出したアルカーの大鎌ーー『終末の時計』が背後から摩訶曼珠の首を刎ねんと迫っていた。
「クソがぁああああ!!」
 殺気を感知した摩訶曼珠は必死に身をよじり、大鎌の一撃を寸前で回避した。荒い息を吐く摩訶曼珠の首筋から一筋の血が流れる。あと数ミリ近ければ彼女の首は切断されていただろう。
「覚えてやがれ!てめえらは必ず殺してやる!」
 捨て台詞を吐いた摩訶曼珠は、己の身を巻き込むのも厭わず、地面に向かって大爆炎を放った。摩訶曼珠は爆炎のカーテンがグラナト達の視界を遮っているうちに、全力で距離を取り、再び水晶屍人の群れに紛れた。
「逃がしたか……。意外に冷静だったな」
「すまない。仕留め切れなかった。邪魔をしてしまったかい?」
 アルカーはグラナトにそう問いかけた。
「……いや、問題ない。おかげで最後に隙が突けた」
 確かにあの女には逃げられたが、奴は逃げる前に一つミスを犯した。戦果としては上々だ。あの女への止めはきっと他の猟兵が刺してくれることだろう。

●この世界にも救いの手を

「この世界でも、私達の世界の『アリス』のように困っている人が居るのなら、助けなきゃね!だって私は……『アリス』でもあり、『猟兵』だもの!」
 未だ千を超える数の水晶屍人達の軍勢を正面から見据えたのは、アリスナイトにしてウィザードのヴェル・フィオーネ(ウィザード・オブ・アリスナイト・f19378)だ。猟兵に覚醒してから日の浅い彼女だが、エンパイア・ウォーの話を聞き、サムライエンパイアの人々を救うべく駆け付けてきたのだ。
「屍人?って連中は、知性がないんでしょ?そして指揮官はオブリビオン……なら……!『ガラスのラビリンス』!」
 フィーネの高らかな声と共に、展開された硝子の迷宮が戦場にいた水晶屍人達を包み込んだ。突然ガラスの迷宮に閉じ込められた水晶屍人達は、壁に向かって直進したり、同じところをぐるぐる回ったりと、知性を持たない操り人形であることが仇となり、まさしく烏合の衆と化していた。そもそも、通路が狭すぎて完全に寿司詰め状態になって身動きがとれなくなっている者も多い。
「よし。うまくいったみたいね。さあ、摩訶曼珠。出口はここよ。出てきなさい」
 指揮官は知性のあるオブリビオン。愚かな水晶屍人と違い、必ず一か所しかないこの出口までやってくるはずだ。フィーネは仲間と必殺の準備をしてそこを待ち伏せればいい。問題はこれほどの大軍を覆いつくす規模の迷宮をフィーネの魔力で何分維持できるかーー。指揮官が迷宮から脱出できないほどの馬鹿ではないことを祈ろう。

●ゴールに待つ者

 数十分後、摩訶曼珠は迷宮の出口へと到達した。フィーネは賭けに勝ったのだ。
「ようやく出口か。待ってろ、クソ猟兵め!アタシが直々に探し出してぶっ殺してーー。ごほごほっ!」
 迷宮を脱出した摩訶曼珠はすでに満身創痍だった。自ら焼いた摩訶曼珠の全身は焼け爛れており、激痛と眩暈がする。火傷に加え、グラナトに与えられた「蠍の剣の毒」は、迷宮を彷徨っている間も摩訶曼珠の体を蝕み続けていた。口から血を吐きながら、摩訶曼珠は自身の半身を奪った徳川への憎しみを振り絞るようにして意識を保っていた。
 その瞬間、ガラスが砕ける音と共に、銀色の鎧で武装したフィーネが摩訶曼珠の元へと、ランスで突撃してきた。
 ガラスのラビリンスの維持を解除し、残された渾身の魔力を込めた必殺の一突き。水晶屍人ならば十数体は吹き飛ぶほどの見事な一撃であった。
 しかし、その一撃は摩訶曼珠の持つ巨大な鋏によって防がれていた。フィーネの槍を挟み込んで止めた摩訶曼珠は、ギリギリと力を込めてフィーネを槍ごと押し込んでいく。
「てめえがこの迷路の仕掛け人か。アタシの前に出てくるとはいい度胸じゃねえか!楽に死ねると思うなよ!」
 摩訶曼珠の啖呵に、武器を抑えられてピンチのはずのフィーネは不敵に笑う。
「出口から来るって分かってるのよ。あなたを待ち伏せしてたのが私一人だと思う?」
「なんだと?」
 その瞬間、超音速で打ち出された「戦車」が摩訶曼珠を直撃した。そのまま戦車は摩訶曼珠を遥か彼方まで吹き飛ばし、岩山へと叩きつけて挟み潰した。

●彼女達の計画

『電脳空間からリニアカタパルト展開。超伝導磁石の絶対零度への冷却確認。機動戦車オベイロンを射出します!超伝導リニアカタパルト(マスドライバー)!』
 マスドライバーで戦車を打ち出したのは電脳魔術師、アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)だ。
 摩訶曼珠を吹き飛ばした戦車はそのまま直線状にいた水晶屍人を百体ほど薙ぎ倒しながら進み、岩山に激突してようやく静止した。
 事前にフィーネからガラスのラビリンスによる指揮官の炙り出し作戦を聞いていたアイは、出口から出てきた摩訶曼珠を確実に仕留めるべく、自身が繰り出せる最強の一撃を準備していた。ちなみに戦車を打ち出したのは、アイが持っていた装備のうち、レールガンに載せられる範囲の中で最大の質量の物が機動戦車オベイロンだったからである。
 電脳魔術で絶対零度まで冷却したマスドライバーから放たれた質量兵器の威力はご覧の通りである。ちなみにスーパーコンピューター【チューリングの神託機械】で完璧に軌道を計算した上での攻撃なので、摩訶曼珠と鍔迫り合いをしていたフィーネ嬢は無傷である。
 この「囮になったフィーネごとリニアカタパルトで狙撃作戦」はいくら何でも危なすぎるのでアイは当初反対したが、「最悪掠っても私の鎧は無敵だから大丈夫」で押し切られた。ともかく、無事作戦は成功だ。再び集まってきた水晶屍人達を電脳魔術で捌きながら、フィーネとサムズアップを交わすアイだったが……。
「てめえええええ!!!よくもやりやがったなあァアアアアア!!!」
 遥か彼方に吹き飛ばし、戦車と岩山に挟まれていたはずの摩訶曼珠が鬼の形相でアイの元へと帰ってきた。憤怒と憎しみでより激しく燃え上がった摩訶曼珠の『大蛇焔』が、戦車すらも溶かして彼女を脱出させたのだ。見ればその潰れた全身はほとんどが炎へと置き換わっている。彼女はもう憎悪のみでこの世に留まり続けているのだろう。
「あっ、ちょっと待って!わ、私、近接戦闘は苦手なんですっ!」
 炎を纏う二つの刀を振り上げ、アイを切り裂かんとする摩訶曼珠の猛攻を、アイは『ラプラスの悪魔』の予知のごときシミュレーションで必死に回避するが、このままではーー。
「オラ、オラ、オラァ!チョロチョロ逃げるんじゃねえ!」
 炎を撒き散らしながら、アイを切り裂かんと迫る摩訶曼珠。頼みの綱のリニアカタパルトは残念ながら単発式だ。
「冷却と再装填が間に合いませんーっ!」
 涙目になるアイ。
「あと5秒で回避が間に合わなくなり、アイ・リスパーは四つに切り裂かれる」
 ラプラスの悪魔は容赦無く未来をアイに伝えていた。

●狂える炎の最期

 5秒後。アイはついに態勢を崩し、尻餅をついた。そこに、摩訶曼珠の二刀が振り下ろされる。
「死ねえええええ!」
 思わず目を閉じてしまったアイだが、必殺だったはずの一撃はアイの元へは届かなかった。摩訶曼珠の刀はアイと摩訶曼珠の間に飛び込んできた仮面の女騎士の眩く輝く宝石の盾によって阻まれていたのである。
「おイタは。よろしく。ないわ。ね?」
 宝石の盾を掲げるは仮面の麗しき女騎士ベリル・モルガナイト(宝石の守護騎士・f09325)。クリスタリアンの守護騎士である彼女の前で、かよわき乙女を傷つけることは叶わない。
「ありがとうございます。厚かましいですが、お願いします!1分だけ、時間を稼いでください!」
 態勢を立て直したアイは、ベリルに懇願した。あと一撃。もう1発リニアカタパルトを叩き込めば、きっと摩訶曼珠を仕留められるはずだ。
「護ります。何度でも。私は。盾。復讐の。炎になど。決して。負けは。しません」
 ベリルは凶刃から護った少女に柔らかな微笑みを向けた。
「どけェ!てめぇから殺されたいかァ!」
 二刀流で激しくベリルを攻め立てる摩訶曼珠だが、ベリルはその全てを手にした宝石の大盾で防いでいた。盾には傷一つ付いていない。
「クソが!クソがぁ!なら、これでみんなまとめて死ね!」
 激昂した摩訶曼珠は全魔力を使い、全長百メートルはあろうかという巨大な炎の蛇を生み出した。彼女の憎しみを燃料として燃え上がる炎蛇の余りの禍々しさに、アイは目を見開いた。レールガン再装填まであと10秒。あの一撃を凌がなければ反撃が叶わないーー。
「お嬢さん。私の。後ろに」
 ベリルは巨大な炎の蛇にも臆することなく、再び微笑みを浮かべた。
『ここに。立つは。幾度。砕けようとも。立ち上がる。煌めきの。守護』
 ベリルの意志に応え、辺りの鉱物が寄り集まり、巨大な宝石の盾となっていく。その眩い輝きは、如何なる邪悪をも退けるであろう荘厳さを漂わせながら、ベリルの前へと浮かび上がった。
「くたばりやがれぇえええ!『地獄炎術【大蛇焔】』!」
 摩訶曼珠の生み出した巨大な蛇が全てを焼き滅ぼさんと迫る。その灼熱の炎を前にして、ベリルは決然と右手を掲げ、その名を口にした。
「其れは誉れ堅き薄紅の城塞(モルガナイト・シタデル)!」
 薄紅色の巨大な宝石の盾は、大蛇焔の炎を真正面から受け止め、その熱をも後ろにいる彼女が守るべき者には一切通さずに完璧に遮断していた。
「な、なにィイイイイイイ!!」
 驚愕に目を見開く摩訶曼珠。今こそ決着の時だ。
「再装填完了です!超伝導リニアカタパルト(マスドライバー)!」
 再び超音速で放たれた質量兵器により、摩訶曼珠は驚愕に目を見開いた表情のまま、今度こそ骸の海へと叩き返されたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月04日


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#サムライエンパイア
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#戦争
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#エンパイアウォー


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は花盛・乙女です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト