エンパイアウォー⑤~神君の望みは
●埋蔵金を求めて
寛永三方ヶ原の戦いに勝利した猟兵たちは、『第六天魔軍将図』なる収穫も得た。
この『第六天魔軍将図』に記された名前は8つ。
三方ヶ原で討ち取った武田信玄以外の『第六天魔軍将』たちが、サムライエンパイアを征服せんと、一大攻勢をかけてくると判明したのだ。
徳川幕府軍はこの国難へ立ち向かうため、諸藩からの援軍も合わせて10万もの兵を招集。
幕府の総力をあげて織田信長の元に向かい、撃破すべく動き出した。
その一方で、幕府は軍勢を集結させると共に、全国の商人から兵糧などの補給物資の購入も試みていた。
しかし、兵糧を初めとした補給物資の値段が天井知らずに高騰しており、満足な量を揃える事ができない。
何故なら、個人資産が徳川幕府の全資産を凌駕する魔軍将の1人、大悪災『日野富子』が兵糧を買い占めているからだ。
このまま買い占めが続けば、予定される規模の幕府軍を動員する事は難しいだろう。
「富子の買い占めに対抗して充分な補給物資を揃えるには、神君家康公が有事の際にと遺した『徳川埋蔵金』を使うしかないわ」
掻巻・褥(家庭内女神様・f16422)は、そう言い切って説明を始めた。
「これからみんなに、この徳川家から借り受けてきた、代々伝わる『徳川埋蔵金の地図』を預けるわ。それを頼りに徳川埋蔵金を探してきて欲しいの」
とはいえ、徳川埋蔵金の地図に示された場所へ向かうだけでは、徳川埋蔵金を得ることはできない。
「どうやら、神君家康公が埋蔵金の盗掘を防ぐために残したらしい『謎』を解かなければならないの」
褥は笑顔で説明を締め括り、猟兵たちを送り出した。
「一筋縄ではいかないとは思うけど、みんな、気をつけてね♪」
●謎
猟兵たちが辿り着いたのはエンパイアから程近いお屋敷。
普段は旗本の本宅として使われているそこには、どういう仕掛けか魔術的に隔離された隠し部屋があった。
小さな畳部屋には木の机だけが整然と置いてあった。
机の上には5枚の紙。
その1枚が問題文だろう、こう書かれている。
『我の求むるものを大音声で吐けば、奥の襖が独りでに開き、隠し金の在り処が曝される。我の求むるものは何ぞ」
他の4枚の紙にはそれぞれ、なにやら絵が描きつけられている。
『10の島の絵』
『蟹の絵』
『寝乱れたご新造さんの絵』
『真っ白な犬の絵』
が描いてある。
どうやら、これらがヒントらしい。念を入れるなら部屋全体も見渡すと良い。
茫然たる猟兵たちだが、決して解けない謎ではない。
神君家康公が幾つも分割してみつかりにくい場所に残した埋蔵金。
どうか、エンパイアの趣を感じつつ、謎へ取り組んで欲しい。
家康公の望みは何なのだろうか。
必死に考える猟兵たちの、短く長い宝探しが、始まった。
雨都瑣枝
ご覧くださりありがとうございます、雨都です。
このシナリオは、『戦争シナリオ』です。
1フラグメントで完結し、『エンパイアウォー』の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●リプレイについて
今回は『正解者様と、誤答でもその過程が面白かった参加者様』だけを執筆いたします。
多分、少ない人数になるかと思います。悪しからずご了承くださいませ。
素敵なプレイング、楽しみにお待ちいたしております。
第1章 冒険
『神君家康公の謎かけ』
|
POW : 総当たりなど、力任せの方法で謎の答えを出して、埋蔵金を手に入れます。
SPD : 素早く謎の答えを導き出し、埋蔵金を手に入れます。
WIZ : 明晰な頭脳や、知性の閃きで、謎の答えを導き出して、埋蔵金を手に入れます。
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ウィルトス・ユビキタス
この名探偵の前に解けない謎はない。
埋蔵金を持ち帰るのは容易だったな。
島の数は10
蟹の足の数は10
人の四肢の数は4
犬の足の数は4
これらを文字に置き換えると、だ
10 てん
4 し
10 てん
4 し
そう、天使天使になる!
つまり神君家康公には天使のような存在が必要だったのだ!
かの神君と言えど、やはり癒やしは必要だったのだろうな。
●天使降臨
サムライエンパイアは旗本の屋敷、隠し部屋。
「この名探偵の前に解けない謎はない。埋蔵金を持ち帰るのは容易だったな」
ウィルトス・ユビキタス(武闘派デスクワーカー・f01772)は、愛用の魔法で織られたローブを翻し、逆立った黒髪を撫でつけながら格好つけてみせた。
難しいことは殴りながら考える性質で、大抵の物事をゴリ押しで解決してきた彼だから、今回の頭脳労働には相当苦労したに違いない。
「いいか。島の数は10、蟹の足の数は10、人の四肢の数は4、犬の足の数は4だ」
だが、そんな苦労はおくびにも出さず、ウィルトスは問題文を書いた家康公へ言うつもりで解説開始。
「これらを文字に置き換えると、だ」
10 てん
4 し
10 てん
4 し
「そう、天使天使になる! つまり神君家康公には天使のような存在が必要だったのだ!」
ウィルトスがビシッと言い切る。
だが、部屋の奥の襖に反応はない。
「かの神君と言えど、やはり癒やしは必要だったのだろうな」
うんうん、と腕を組み納得顔で頷くウィルトス。
ひゅ〜っと隠し部屋の中を隙間風が通り抜けたのは気のせいか。
天使が本当に必要なのは、ツッコミ不在のこの空気の中に残された彼自身へかもしれない。
大失敗[評価なし]
月・影勝
なんじゃこれ、どの絵もまったく関連性がなさそうなんじゃけど…
そもそも、「十の島」とか、わしらをおちょくっておるの?
ほら、縦に並べて「阿呆(あほ)」と読む、江戸の言葉遊びじゃろう!知っとるぞ!
……む?もしや、他もそういうものなのかのう?
月夜のカニは「身がない」
寝乱れた女房殿は「妻乱(つまらん)」
…散々ないいっぷりじゃ。
じゃが、白犬だけは「尾も白い(おもしろい)」
なるほど、白いわんこがお気に入りなんじゃな
もふもふな白犬の魅力にお偉方もめろめろだったんじゃろうて。
…というわけで望むものの名は「白犬」または「真っ白な犬」あたりじゃな!
さあどうじゃ!
●明かされた解き方
一方。
「なんじゃこれ、どの絵もまったく関連性がなさそうなんじゃけど……」
こちらも隠し部屋へ辿り着いた月・影勝(かちかち山の玉兎・f19391)は、不可解な絵の羅列に首を傾げていた。
「そもそも、『十の島』とか、わしらをおちょくっておるの?」
かと思えば、むむむ、と眉根を寄せて1枚のの絵を眺め眇める影勝。
そして、問題文を書いた家康公へ言い返すようにして、絵の解説を始めた。
「ほら、縦に並べて『阿呆(あほ)』と読む、江戸の言葉遊びじゃろう! 知っとるぞ!」
そう。『10の島の絵』を『十の』と『しま』に分けて、それぞれくっつければ『あほ』と読める。
UDCアースやヒーローズアースの江戸時代にそんな言葉遊びが流行っていた事を、影勝は知っていた。
そして、江戸時代にどことなく似たサムライエンパイアでも同じ言葉遊びが流行っているのでは、と考えて、見事読み解いたのである。
「……む? もしや、他もそういうものなのかのう?」
勢いづいた影勝が、他の絵の解読にも挑む。
「月夜のカニは『身がない』寝乱れた女房殿は『妻乱(つまらん)』……散々ないいっぷりじゃ」
『寝乱れたご新造さん』は妻乱、つまらんが正解。
「じゃが、白犬だけは『尾も白い(おもしろい)』」
ちなみに『かにの絵』は、十のしまの応用で、『に』を左右に離して『かしこ』となる。
『あほ』『かしこ』『つまらん』『おもしろい』……反対の意味を持つ言葉同士が2組。
これがヒントの全容であり、家康公が求めるのは4つのうちどれかの言葉となる。
「なるほど、白いわんこがお気に入りなんじゃな。もふもふな白犬の魅力にお偉方もめろめろだったんじゃろうて」
さて、江戸時代の知識を活かして、しっかりヒントを得た影勝だが。
「……というわけで望むものの名は『白犬』または『真っ白な犬』あたりじゃな! さあどうじゃ! 」
残念ながら、最後の最後で答えを間違えてしまった。余りに惜しいミスである。
家康公がどんな言葉を望んでいたのか、改めて『部屋全体』を見渡してみる必要があるかもしれない。
成功
🔵🔵🔴
スターリィ・ゲイジー
十の島であほとはとんちじゃのう。でもそれだけでは足りぬと
ただ何となく、前に似た問題を解いた気がするのう…全体を見渡せと
目を凝らせば何かが浮かんでくるのかもしれぬな。ううむ…これは!
か
めに
し
かにめし食べたいのう…
●ヒントの在り処を知る経験者
「十の島であほとはとんちじゃのう。でもそれだけでは足りぬと」
スターリィ・ゲイジー(ほしをみあげるスターリィ・f06804)は、影勝が教えてくれた言葉遊びの描かれた絵を見て、素直に感心していた。
「ただ何となく、前に似た問題を解いた気がするのう……全体を見渡せと」
そして、決して遠くない記憶を手繰り寄せるスターリィ。
そう、あれは銀河帝国攻略戦で帝国旗艦インペリアルへ乗り込んだ時のこと。
『この問い全体を隅々まで絶えず読み解けば』
変態クイズを出してきた中央コンピューターのモニターには確かそう表示されていた。
「目を凝らせば何かが浮かんでくるのかもしれぬな」
自分が解いた問題を参考に、スターリィは改めて隠し部屋全体を見渡した。
「ううむ……これは!」
しかし。
「かにめし食べたいのう……」
3つに絞れた選択肢に繋がるヒントは見つけられず、ただ美味しそうな文字列に食欲を刺激されただけのようだ。
大失敗[評価なし]
中村・裕美
「……分からん」
なんかもう影勝君がヒント出すまでは絵の頭文字とか抜き出して並べ替えたりとか見当違いのことをやってたし。もう、ふてくされて寝っ転がる。そして目に入る襖。
「……襖……開かないかしら?……『つまらん』じゃなくて……『しまらん』状態に……みたいな」
こう、文字を斜めに反転させれば、襖の開いていない状態の逆、『閉まらん』とかね。
(……これ、大音量で言ってみて、違ったら、色々な意味で死ぬわ。絶対に)
でも、このまま停滞してもアレだし【勇気】を出して…違ったら寝言と誤魔化そう
「しまらん!」
本当に開いたらどうしよ
(でも…乱れた奥さんが…「しまらん」…というのも)
変なこと考えて赤くなっちゃうお年頃
●熟れ熟れ
一方。
「……分からん」
中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)は、床が畳張りなのを良いことに不貞腐れて寝っ転がっていた。
それというのも、影勝が絵の謎を解くまでの間、絵の頭文字を抜き出して並べ替えたりなど見当違いの努力を続けていた自分が馬鹿らしくなったらしい。
「……襖……開かないかしら?」
ふと、机の脚越しに目に入った襖を眺めて裕美は思う。
「……『つまらん』じゃなくて……『しまらん』状態に……みたいな」
こう、文字を斜めに反転させれば、襖の開いていない状態の逆、『閉まらん』とか——つらつら考える裕美。
(「……これ、大音量で言ってみて、違ったら、色々な意味で死ぬわ。絶対に」)
そもそも、選択肢のつまらんへ独自に手を加えている時点で正解から確実に遠ざかっているのへ気づいているのかいないのか。
(「でも、このまま停滞してもアレだし……違ったら寝言と誤魔化そう」)
裕美は勇気を出して叫んだが、
「しまらん!」
当然襖の反応はなく、必死で寝たフリをする羽目になった。
(「でも……乱れた奥さんが……『しまらん』……というのも」)
妙な想像を巡らせて赤くなるのも思春期のなせる技か。
もしもこのまま寝てしまったら、数えきれないぐらいの連戦を終えた若奥さんになる夢でも見そうな裕美だった。
大失敗[評価なし]
ミニステリアリス・グレイグース
皆さんの答えに耳を傾けながら部屋の隅でウンウン頭を捻っていた私
しかし突如ナノマシン脳細胞に(根拠のない)電流走る――!
「この木の机、ただのインテリアじゃなかったり…?」
えーと、この机も答えを指すヒントだと思うんです
たぶん木の机――「木の付く絵」ですね
先程の四枚の絵を漢字込みで書くと
『阿呆』『賢』『妻乱』『尾も白い』
この中で「木」が付くのは「呆」の字だけです
なので家康公が望むものは『10の島』……だと、思うん、ですが
……うん、答えに全く自信がない
他にも「きの」を合わせて「ほ 付く絵」になる
とかも考えたけど、どの道答えは変わりませんし……
……なので、
おりゃー!わたしのあふれるかしこさをくらえー!
スターリィ・ゲイジー
小腹を満たしてきたので真面目に考えるかの
(かにかまをつまみつつ)
かにめしにまず目が行ってしまったが、実はヒントはもう一個見つけてある
書き抜くとこんな感じか
け
な
し
て
み
じ
か
く
つまり神君の望みはこうじゃな……あほ!あほ!!ばーかばーか!!たぬき!味噌マニア!!
多分これで開くはずじゃ、かしこ
富子とやらはもう表で動き出してるようじゃのう
金はここにいるみんなで手分けして早う運ぶのじゃ
時は金なりというらしいしの
●大正解
さて。
隠し部屋の隅っこに陣取っていたミニステリアリス・グレイグース(夢に囚われし灰塵の徒・f06111)は、仲間たちの様々な答えに耳を傾けつつ、自分も皆の力になりたいとウンウン頭を捻っていたが、
「はっ……」
突如、ナノマシンヤドリガミの脳細胞に——さして根拠のない——電流が走った。
「この木の机、ただのインテリアじゃなかったり……?」
澄んだ灰色の瞳を瞬いて木の机をまじまじと見つめるミニステリアリス。
「えーと、この机も答えを指すヒントだと思うんです」
そして、すっくと立ち上がり、自説の披露を始めた。
「たぶん木の机――『木の付く絵』ですね」
日頃は自分に自信がないミニステリアリスだが、自らの推理を信じて語る様は頼もしい。
「先程の四枚の絵を漢字込みで書くと、『阿呆』『賢』『妻乱』『尾も白い』になりますが、この中で『木』が付くのは「呆」の字だけです
なので家康公が望むものは『10の島』……だと、思うん、ですが」
見事、穴のない推理で選択肢の中から答えを導き出してみせた。
(「……うん、答えに全く自信がない」)
それでも、自虐的な性質がそう簡単に変わるわけもないのか、ミニステリアリスはすぐさま不安になって蹲ってしまう。
(「他にも『きの』を合わせて『ほ 付く絵』になるとかも考えたけど、どの道答えは変わりませんし……」)
だが、彼女の中の強い確信がミニステリアリスを突き動かす。
きっと答えはアレに違いない、と。
(「おりゃー! わたしのあふれるかしこさをくらえー!」)
ミニステリアリスは再び立ち上がって、すぅっと息を吸い込んだ。
同じ頃。
「ふぅ、小腹を満たしてきたので真面目に考えるかの」
スターリィ・ゲイジーは、どこぞで調達してきたかにかまをつまみながら、ようやく本腰を入れて問題へ取り組む。
「かにめしにまず目が行ってしまったが、実はヒントはもう一個見つけてある」
そう。かの変態クイズで鮮やかに問題を解いてみせたスターリィが、今回に限って本物のヒントを見落としているわけがなかった。
恐らくは、連続で自分が正解を持っていかないように気を遣っていたのだろう。
「部屋に隠されたヒントは『けなしてみじかく』。つまり神君の望みはこうじゃな……」
ニヤリと笑って襖を見据えるスターリィ。
ミニステリアリスとスターリィ、2人の声が重なった。
「「神君のあほ!」」
そう。神君家康公の望みとは、顔色ばかり伺って無闇に媚び諂う事なく、自分が間違った時には臆せず『あほ』と言ってくれる部下のこと。
「あほ! あほ!! ばーかばーか!! たぬき! 味噌マニア!!」
スターリィはそんな彼の気持ちを察してか、ひたすら思いつく限りの悪口を言いまくって楽しそうだ。
「多分これで開くはずじゃ、かしこ」
鼻を鳴らす彼女の言う通り、すーーっ、と襖が独りでに開いて、3段の山に積み重なった千両箱が現れた。
「富子とやらはもう表で動き出してるようじゃのう」
ミニステリアリスがおずおずと中身を確かめる傍ら、スターリィは他の仲間へ向き直って助力を請う。
「金はここにいるみんなで手分けして早う運ぶのじゃ。時は金なりというらしいしの」
かくて、旗本屋敷の隠し部屋にあった徳川埋蔵金は、無事に猟兵たちの手によって確保されたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵