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エンパイアウォー②~屍人よ踊れ

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー


●奥羽の混乱
「サムライエンパイアに向かってもらえるか」
 目前に猟兵たちが集ったことを確かめると、グリモア猟兵――プルート・アイスマインドは1枚の紙きれをひろげた。
 日本地図……のように見えるそれは、サムライエンパイアの地理を表したものだろう。いささか正確とは言い難い代物に思えるが、国々のだいたいの位置は把握できる。
 プルートはその中の『陸奥』『出羽』と記された辺りに指を置いた。
「奥羽地方にて、大量の動く屍が発生することがわかった。『水晶屍人』と称されるそれは織田方の『第六天魔軍将』のひとり、『安倍晴明』が屍を使って造り出したものらしい。つまりはこれも徳川軍への攻撃の一端だろうな」
 水晶屍人は戦闘力こそ高くないが、噛んだ人間を新たな水晶屍人に変えるという厄介な性質がある。領民や兵を取りこむことで勢力を強め、もはや奥羽諸藩だけでは支えきれない情勢になっている、とプルートは言う。
「水晶屍人の軍勢は江戸を目指して南下を続けている。到達を許せば徳川軍は本拠の防衛に兵力を割かざるを得なくなり、信長討伐に十分な兵力を送れなくなるだろう」
 そこで、とプルートの指が猟兵たちに向けられる。
「おまえたちに、水晶屍人の軍勢を撃破してもらいたい」
 江戸を襲わんとする敵軍の討滅――それが今回の仕事だった。
 ちなみに猟兵であれば水晶屍人になることはないらしいので、噛まれることを恐れる必要はないようだ。むろん無傷とはいかないが。
「軍勢を退けると聞けば骨の折れる仕事と思うだろう。だが何も全滅させてほしいという話ではない。水晶屍人の軍勢の中には指揮官を務めるオブリビオンがいる。おまえたちにはそいつを討ってもらいたいのだ」
 いわく、奥羽の諸藩を危機に陥れている水晶屍人たちだが、水晶屍人だけではそれほどの脅威ではないらしい。軍勢の核、指揮官を倒してしまえば諸藩の兵だけでも駆除することは可能ということだった。
「まあ当然、指揮官のオブリビオンは水晶屍人の群れに囲まれているだろうから、ある程度おまえたちの手で薙ぎ払う必要はある。しかしあくまで目標は敵軍の核、オブリビオンであるということは頭に留めておいてくれ」
 自分のこめかみを指でつついたプルートが、グリモアを輝かせる。
 いざ屍の蠢く奥羽へと――猟兵たちの転移が、始まった。

●怨み、ひた走る
 自然深き、東北――奥羽の地。
 しかし町から町を神経のように繋ぐ街道は、一面、遅々として這い進む屍人たちの姿で埋め尽くされていた。
 虚ろな眼、薄ら青い体色、両肩に生やした奇妙な水晶、木の枝のようにあらぬ方向へと曲がる四肢、どれもこれもが健全なる生者のそれではない。
 隊列を組み、街道に立ち塞がっていた武士たちは、その気味悪さに震えていた。
「そ、そ、それ以上近づくのなら、よ、容赦せんぞォーー!!」
「き、斬り捨てられたいか、貴様らーー!!」
『ヴァァァ……』
『ウゥ……アァァ……』
「く、く、来るなァーー……!」
 接近する水晶屍人を斬りつけた武士たちが、しかし数に押しこまれ、あえなく呑みこまれてゆく。そして数秒もせぬうちに屍人の軍勢に加わり、噛みつくべき生者を欲した。
 屍人の海が拡大する。
 それを陣容の最後尾から見ていた麗しい媛――『依媛』は、愉しげに喉を鳴らす。
「ああ、愉快愉快。ぬるい泰平が醜き屍に食い荒らされるさまは、実に心躍るものね」
 絢爛豪華な衣をまとい、裾を引きずり悠々と屍人の中を歩く媛。
 およそ怪物には見えぬ整った顔立ち、嫋やかな仕草、しかしその表情は禍々しい愉悦を滲ませ、なるほど彼女はこの屍人たちの長だった。
「さあ、もっともっと乱しなさい! 壊しなさい! 私を排した世界など、地獄と化して叫喚に染まればいいの!!」
 嬌笑する依媛が指を立て、屍人たちに進路を示す。
 行く先は南。
 泰平の中核たる、徳川の江戸へと向けて、屍人の群れが行進する。


星垣えん
 和風ゾンビパニックだと……?
 ということで動く屍が東北でウヨウヨしているようです。
 放っておくと裏口から江戸に土足で上がりこもうとしやがります。
 その前に、奥羽の地で指揮官のオブリビオンを撃破して下さい!

 シナリオ内でやることは単純明快。
 数千もの水晶屍人の群れに飛びこみ、指揮官たる『依媛』を討ちましょう。
 群がる水晶屍人の攻撃を防ぐ、邪魔な水晶屍人を蹴散らす、群れの中の依媛に素早くアプローチする、等々行えれば良い結果になるかと思います。

 導入はOP内で済ませているので、導入リプレイの挿入はありません。
 それでは、皆さんからのプレイングお待ちしております!

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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 ボス戦 『まつろわぬ土蜘蛛『依媛』』

POW   :    我はまつろわぬ神、天津神に仇なす荒ぶる神なり
【人としての豪族の媛から神話での土蜘蛛の神】に覚醒して【神話で記された異形のまつろわぬ女神】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    我は鎚曇(つちぐもり)、強き製鉄の一族の媛なり
【この国への憎しみの念】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    この国に恨みもつ者達よ、黄泉より還り望みを果たせ
【朝敵や謀反人など悪と歴史上に記された者達】の霊を召喚する。これは【生前に使用していた武具と鍛え上げた技術】や【生前に従え率いていた配下や軍勢】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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鈴木・志乃
何が愉快だ
何処が心踊ると言うのか

壊させてたまるか
ここは私の

行くぞ
全力で【祈り、破魔、呪詛耐性】を籠めた【歌唱の衝撃波】で敵を皆【なぎ払う】

それだけ目立つ身なりなら見つけやすかろう
念のため【第六感】で位置を予測してみるか

視認した瞬間UC発動
当然先程までの歌唱~系の技能を乗せて鼓膜も体内も精神も破壊を狙う

敵攻撃は【第六感で見切り】光の鎖で【早業武器受けからのカウンターなぎ払い】
【オーラ防御】常時発動

必要に応じて敵死体を【念動力】で巻き上げて嵐と化し
攻撃と防御に転用する


…………ふざけるな、許さない
首洗って待ってろ、信長


シエル・マリアージュ
数多の水晶屍人の中に闇雲に切り込むのは避けて、空へと羽ばたき見通しのよい上空から攻めていく。
こちらが見通しが良いということは敵からも同じ【Garb of Mirage】の光学【迷彩】で【目立たない】ように空に溶け込むようにして、太陽を背にしたり攻撃後は【残像】を残しながら常に移動するなどして敵からの攻撃にも注意する。
空から【視力】による敵の配置などを【情報収集】して【撮影】した映像と共に他の猟兵にも共有。
【戦闘知識】による戦闘分析で【2回攻撃】で数を増やした【蒼焔の殲剣】を効率的に敵へと放ち、地上から攻める他の猟兵のために道を切り開くなどして共闘しながら依媛を討伐する。


オーガスト・メルト
街道を埋め尽くす大軍勢ねぇ…
それはつまり、どこに撃ち込んでも必ず当たるって事だよな?
『うきゅ!』『うにゃ!』
デイズもナイツもそう思うか。

【POW】連携・アドリブ歓迎
ドラゴンランスのデイズと万能バイクのナイツを武装形態にして【騎乗】する。
飛行状態なら屍人共の攻撃はほぼ届かないはず。警戒はしておくがね。
そこからUC【竜槍追爆撃】を放って敵をまとめて駆逐していく。
味方を巻き込まないように気をつけつつ攻撃していれば敵将を見つけられるだろう。
敵の攻撃を【見切り】つつ、空中からのヒット&アウェイによる【空中戦】で戦う。
UCが直撃しなくても、爆炎による追加攻撃に巻き込んでダメージを与えるぞ。


ルード・シリウス
嗚呼、そこかしこに上物の匂いと気配が感じるぜ。
さて、と…それじゃあ、存分に喰らい尽くしに行かせて貰おうか…っ

◆行動
暴食剣・呪詛剣を抜き放ち、狂笑を浮かべて敵陣へと飛び込み、二刀による連撃や【黒獣爪牙】の一撃で水晶屍人達を暴食する様に殲滅しながら、守りの厚い場所等の目安となるものから『依媛』の位置を推測し、突き進んでいく。
無事に『依媛』を見つけ出したら、一直線に強襲
『依媛』には怪力込めた二刀の連撃で、防御諸共喰らい潰す勢いで斬りかかる
道中含めて攻撃を受けても、自身の攻撃による捕食能力(生命力吸収&吸血)で回復

「ミツケタ…見つけたぞ上物の獲物っ!!喰わせろ、お前の命喰わせろっ」

※アドリブ、絡み歓迎


エレクメトール・ナザーリフ
ゾンビ映画さながらですね~、数千て数多くないですか?
撃ちがいがあります!
これは色々な銃火器が試せそうです

■準備
ガトリング、グレネード、ロケットランチャー、タレットを用意
街道に棘付きバリケードを張っておく

水晶屍人には用意した武装で一掃
その後タレットを複数台設置し注意を引き付けている間に依媛の元に行きます

依媛の念攻撃は対象を切断するのなら第六感で見切りつつ《分割思考》で回避
当たらなければどうという事はない!ですね
念攻撃に石や瓦礫をぶつけても相殺出来るのではないでしょうか

銃器の為距離を取ろうとする、と見せ掛けて
依媛が迫ってきた所をカウンターで接近し零距離射撃
どちらかと言うと接近戦向きなんですよね、私


加賀・琴
奥羽ですか、それは、また本来のご先祖様とは縁の無い土地に出ましたね
それでも、依媛……ご先祖様の末裔にして御身を祀る巫女として放置は出来ません

まずは水晶屍人をどうにかしないといけませんね
そうですね、彼らもまた犠牲者です。ならば、巫女として祓い清めて鎮魂して見せます
大幣と神楽扇を手に持って【神楽舞・荒魂鎮め】を舞って死者達を祓い弔います

ご先祖様には先程とは違う、弔いの舞ではなくご先祖様の首塚を祀り鎮めている家の神社での正式な神楽舞である【神楽舞・荒魂鎮め】を奉納させていだきます
御身を祀る巫女として、御身の首塚を護る神社の跡継ぎとして、御身を祓い清めて鎮めさせていただきます
それが私の役割ですから


春乃・菊生
アドリブ・共闘等々歓迎じゃ。

[WIZ]
外法に縛られておっては死んでも死にきれまい。
貴様らへのせめてもの手向けじゃ。
屍人らへと歌舞を捧げよう。(【ダンス】【歌唱】)

秘術ノ伍。
歌舞により術を為し、舞を目にし、歌を聞いた死者らを黄泉國へと送る。
(【破魔】【範囲攻撃】【なぎ払い】)




敵将への道は拓けたぞ。



 右から左。
 屍の群体たる軍隊が、視界一面でわらわらと蠢いている。
 街道に穿刺バリケードを敷いて待ち構えるエレクメトール・ナザーリフ(エクストリガー・f04247)は、くわえたキャンディーをパキリと齧った。
「ゾンビ映画さながらですね~、数千て数多くないですか? 撃ちがいがあります!」
「撃ちがい、ですか……」
「撃ちがいです!」
 屍人の群れを前にして並び立つ加賀・琴(羅刹の戦巫女・f02819)に、エレクメトールが人差し指をくいくいと動かす。
 この女、大量の標的を前にもう撃つことしか考えていない。
 多少の不安を覚えつつも、琴は気を取り直し、屍人たちへ向き直る。
 正確には、屍人たちの中にいる彼女へ。
「奥羽とは、また本来であれば縁の無い土地に出ましたね。ですが、依媛……ご先祖様の末裔にして御身を祀る巫女として放置は出来ません」
 琴は、あの屍人に守られているオブリビオン『依媛』を祀る首塚の巫女だ。その血に連なる者として、また猟兵としても、憎悪に走る依媛を止めようという思いは強い。
 屍人の軍勢が、こちらへ来る。
「さあ、撃ちますよ!」
 エレクメトールが待望の火器を持ち出す。ガトリング、グレネード、ロケットランチャー、銃器は傍に数え切れぬほど用意しており、なおかつアホほど高火力だ。
 それを、エレクメトールは躊躇もなくぶっ放した。
「ファイアー!」
『ウァァ……』
『オォ……オォォ……』
 嵐のように吹き荒れる鉛弾と爆炎。屍人たちが瞬く間にパズルピースのように千々に切れ、炸裂に呑まれて木っ端微塵に吹き飛んでゆく。
「いいですね! 高まります!」
「では、私は……」
 スカッと会心の笑みを浮かべて引き金を引きつづけるエレクメトールの横で、琴が粛然と大幣と神楽扇を手に持つ。
 静謐な気が、琴の佇まいから漂った。
「彼らもまた犠牲者です。ならば、巫女として祓い清めて鎮魂して見せます」
 ゆっくりと、大幣を振るい、神楽扇を滑らせ、琴が戦場を舞う。
 銃火の音、屍たちのうめき声。
 その中だというのに、琴の周りだけは静かに時が過ぎるようだった。
 神楽舞・荒魂鎮め――清浄な気に当てられた屍人たちが、次々と動きを鈍らせてゆく。
「今のうちに近づきましょう!」
 街道の脇に数台のタレットを据え、エレクメトールが敵陣に突っこんだ。射撃で数を減らし、さらにタレットの攻撃で屍人の壁を蹴散らし、ひたすら前へ。
 すると、奥。
 群れの奥にいる麗しい女――依媛がこちらを見て嗤っていた。
「気安く近寄るか。痴れ者め!」
 見開いた瞳から殺気が迸り、エレクメトールへと迫る。
 だがエレクメトールは駆けながらくるりと一回転し、その殺気を後方に逸らした。思考を分割し、高速演算することで依媛の攻撃は読み切っていた。
「当たらなければどうという事はない! ですね」
 勢いをつけたエレクメトールの体が、依媛の懐に潜りこむ。
 その手に、小さな拳銃を握りこみながら。
「どちらかと言うと接近戦向きなんですよね、私」
「おのれ……!!」
 くぐもった銃声。射出された弾丸が、確かに依媛の体を貫く。
 そこへ、エレクメトールを追走していた琴がすかさず躍り出た。
「貴様は……!」
「御身を祀る巫女として、御身の首塚を護る神社の跡継ぎとして、御身を祓い清めて鎮めさせていただきます」
 現れた女に何かを感じたのか、顔をわずかひきつらせた依媛に、琴は幾ばくかの敬意をこめた声音で、告げた。
 優美に、琴が舞う。
 屍人を弔った舞とは違う。琴の、首塚を祀り鎮める一族の正式な神楽舞。
 奉納――それを終えたとき、依媛の切断する殺気は、祓い清める気によってすっかり封じこめられていた。
「くっ……小癪な真似をする!」
「それが私の役割ですから」
 憎々しげな眼差しを送る先祖へ、琴は事もなげ、そう言った。

「街道を埋め尽くす大軍勢ねぇ……」
 押し寄せる屍の群れに相対しながら、オーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)は涼しい顔で空を見た。
 それから、両肩に乗っかるまん丸生物を見やる。
「それはつまり、どこに撃ち込んでも必ず当たるって事だよな?」
『うきゅ!』
『うにゃ!』
「デイズもナイツもそう思うか!」
 奇妙な鳴き声を上げた小竜たちに笑うオーガスト。
 2匹と心を一にできたことが嬉しいのか、妙に満足そうである。
 一方、彼のはるか前――屍人たちの目前で悠然と立つルード・シリウス(暴食せし黒の凶戦士・f12362)はひりついた空気を放っている。
「嗚呼、そこかしこに上物の匂いと気配を感じるぜ」
 わずか浮き立つ心を今は落ち着かせ、二振りの剣を抜き放つルード。
 漆黒の大剣『神喰』と、歪な刀身を持つ巨剣『無愧』。
「さて、と……それじゃあ、存分に喰らい尽くしに行かせて貰おうか……っ」
 二刀を携えたルードが、屍人の群れへと真っ向から斬りこんだ。
 狂ったような禍々しい笑みを浮かべ、神喰で数体を撫で斬りに、無愧の刃で無惨に引きちぎって、一直線に食い散らしてゆく。
「やる気満々だな……俺も負けちゃいられない。行くぞ、デイズ! ナイツ!」
 蹴散らされる屍人たちを見据え、オーガストが小竜たちに命じる。肩から跳びあがったデイズがランスに変形して主人の手元へ、ナイツは宇宙バイクへと姿を変えてオーガストの騎乗を迎える。
 そのまま上空へと飛び上がり、オーガストは屍人たちを見下ろした。上からならば敵陣がよく見えるし、屍人の攻撃を受ける心配もないだろう。
「それじゃ、散らしていくか!」
 逆持ちにした竜槍を振りかぶり、地上へと投げおろすオーガスト。深々と地を穿ったランスはそのまま巨大な爆焔を生み、屍人がまとめて塵と消えてゆく。
 地上からルード、上空からオーガスト。
 二面的に猛撃をくらい、屍人の陣形は大いに乱れた。
 それを好機と見たルードは、神喰と無愧を地面に突き立てる。
 すると、ルードの周辺に雨あられと黒い斬撃が奔った。黒獣爪牙――ユーベルコードの一撃で屍人の群れは跡形もなく斬り飛ばされ、塞がれていた視界が通る。
「――そこか」
「あれだけの数を一度に……なかなかやるのね」
 見通した先、豪奢な着物をまとった依媛を発見するや、ルードの狂笑がいっそう強まる。
「ミツケタ……見つけたぞ上物の獲物っ!! 喰わせろ、お前の命喰わせろっ」
「喰う? 何を言っているのかしらね!」
 一切の躊躇なく突き進んでくるルードを、迎え撃つ依媛。
 その身が人から土蜘蛛へ、異形の女神へと変貌してゆく。
「戯言もほどほどにするといいわよ!」
「戯言かどうか、教えてやる!」
 腕を振り上げる依媛へ、二刀を握りこんで駆け抜けるルード。鉄槌のように降りる拳を紙一重ですり抜けると、怪力でもって二刀の連撃を叩きこんだ。
「ぐっ、あ……!!」
 横っ腹を切り裂かれ、体勢を崩す依媛。
 上空をナイツで旋回していたオーガストはその隙を認めるなり、滑空して依媛に突っこんでいった。
「そら! こいつもくれてやるよ!!」
 振り上げたデイズを、まっすぐに依媛めがけて投げこむオーガスト。
「そんなもので……!」
 中空を走ってくる槍を、依媛は身をよじることで回避する。だがランスの先端が地面を突き刺すと、依媛は足元から眩い爆焔に包みこまれた。
「ぐああああ……っ!!」
「戦果上々! やったな、デイズ! ナイツ!」
 赤々とした炎を背に、上空へと離れゆくオーガスト。
 炎のうちからは、苦しみ悶える依媛の声が聞こえていた。

 猟兵の幾多の攻撃を受け、しかしなお大群の体をなす屍人たち。
 シエル・マリアージュ(天に見初められし乙女・f01707)はその軍勢を見て取るや、翼をひろげて上空へと飛び立った。
「闇雲に切り込むのは避けたほうがよさそうね」
 攻めるなら見通しのいい上空から。
 シエルは光学迷彩で空に身を隠しつつ、屍人たちの頭上を悠々と飛び交う。そして隙を見て剣を射出することで屍人の群体を着々と削いでゆく。
『ヴォオオ……』
『アァァァ……』
 這いずるような唸り声をあげ、1人また1人と崩れてゆく水晶屍人。
 その醜悪にして憐れな姿を真正面に捉えながら、鈴木・志乃(生命と意志の守護者達・f12101)は拳を痛いほど握りしめた。
「壊させてたまるか。ここは私の――」
「……何かわからぬが、平静は保つようにのう」
 怒りの滲む肩に置かれたのは、春乃・菊生(忘れ都の秘術使い・f17466)の手だ。
 その手に手を重ねて、志乃は息をつき、それからおどけるように笑った。
「大丈夫。別に我を忘れてなんかいないから」
「それならよい」
 そっと菊生の手を離した志乃が、凛然と前を向く。
「行くぞ」
 現世をうろつくばかりとなった屍人たちへ、志乃の口がひらかれる。
 紡がれるのは歌声だ。遠く山まで届きそうなほどの歌唱の衝撃波――そこに祈りや破魔の力を乗せて、屍人たちに浴びせる。
 そのこめられた力の強さたるや、屍人が耐えられるものではなかった。体をさらう音圧に屍人の体はぼろぼろと崩れ、突風にでも巻かれたように薙ぎ払われる。
 志乃の歌、シエルの対地攻撃によって、屍人の群れの肉がそぎ落とされてゆく。
 そうして地に伏し、土に還るばかりとなった屍を見渡し、菊生は少しばかりの憐憫をその凛々しき顔に覗かせた。
「外法に縛られておっては死んでも死にきれまい。貴様らへのせめてもの手向けじゃ」
 シャーマンとして、巫女として、菊生は屍どもの真ん中に立つ。
「屍人らへと歌舞を捧げよう」
 和装の白い袖を振り仰ぐ。脚を滑らせる。
 流れる水のように、菊生は血生臭い戦場の中を舞っていた。
 ただおおらかな慈しみをもって。
 無念の屍人へと捧げられる菊生の歌舞――だが、それが一帯に響いたとき、事態が動いた。
「何なの……誰が、誰が舞っている! 目障りな! 耳障りな!」
 怒り狂ったように屍人をかきわけ、依媛が動き出したのだ。すでに『舞』によって手痛い思いをしただけに、依媛の形相はまさに鬼と化していた。
 空を飛んで全体の動向を探っていたシエルは、その動きにすぐさま気づく。
「菊生さん、依媛がそちらに向かいます」
「こちらへ来るか。あいわかった」
 共有された視界から状況を把握した菊生が、迎え撃つべく立ち塞がる。
 待つ。
 待つ。
 やがて、屍人たちを薙ぎ払うようにして、依媛が姿を見せた。
「舞ったのは貴様か! よくも私の前で!」
 菊生を発見するや、依媛がユーベルコードを発動する。土中からわらわらと這い出てくるのは、憎悪に満ちた死者たち。死者の軍勢である。
 ――だが、死者たちは完全に蘇る前に、さらりと風化してしまった。
「な、なぜ!?」
「悪いのう。我に死霊術は効かぬのじゃ」
 にやりと、菊生が笑う。
 秘術ノ伍――菊生の舞はただの舞ではなかった。その歌舞でもって死者を黄泉に送り返す、魂送の術式なのだ。
「くっ、ならば……!」
 舌打ちした依媛だが、それでもなお死者の軍勢を蘇らせんと力を強める。
 しかしそれも、封じられた。
「させない……!」
 志乃が燃えるような瞳で、依媛を見据え、そして歌っていた。
 志乃の歌唱――それもまた彼女のユーベルコードだった。
 歌声は依媛を捉え、捕縛し、依媛がユーベルコードを使うことそのものを封じてしまう。
「シエルさん、今!」
「ええ、わかっています!」
 空を大きく旋回し、シエルが頭上より依媛へと攻撃する。
 百を超える、蒼い焔を帯びた霊剣。
 それらが一斉に依媛に殺到し、その身を磔にするように串刺しにしてみせる。
「そ、んな……私が、ここで……!」
 恨めしく声を発し、消滅してゆく依媛。
 その消えゆくさまを見届けて、志乃は再び拳を握りしめた。
「…………ふざけるな、許さない。首洗って待ってろ、信長」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月06日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は加賀・依です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト