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幸福な箱庭

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●偽りの楽園
 新しい玩具、おいしいご飯、あまいおやつ。
 お腹いっぱい食べて、お友達と遊んで、疲れたらお昼寝する。
 ここには何だって揃っていた。望むものは何だってあった。

 この世界で飢えることなく満ち足りた生活ができるのは珍しいことだ。
 私達がこんな風にいい生活をできるのは"領主様"のおかげだと先生は言った。
 だからお友達が”領主様"の元へいくことになっても私達は笑顔で送り出してきた。
 向こうで幸せにやっているなんて信じられるほど何も知らないわけじゃない。
 でも今まで、幸せに暮らしてきたお礼だ。
 領主様は、私達の神様なのだ。

「ばいばい!今までありがとう!しっかりとお勤め果たしてくるよ!」
「おめでとう!いってらっしゃい!」

●幸福を壊すもの
「ははっ、どいつもこいつも反吐が出ますねぇ。」

 おっと失礼。今から説明しますね。と、へらへらと笑いながら零落・一六八(水槽の中の夢・f00429)はグリモアベースに集まってきた猟兵達に向き直る。

「今回は、ダークセイヴァーに向かって貰います。そこのオブリビオンの領主様とやらの居場所を突き止めて倒して欲しいんですよ。」

 実にシンプルな依頼です。まぁ調査は必要になりますけれど。と一六八は続ける。

「十中八九オブリビオンが絡んでるのが今から向かう大きな教会です。」

 圧政に苦しんでいた村の人々は、食料や物資を恵んでくれる教会に縋りつき、神様のように称えているという。また、身寄りのない子供を保護し何不自由なく幸せに育てているらしい。それだけ聞けばただの慈善事業なわけだが。

「超ウケるんですけど、そもそも村を苦しめていたのがその領主様ってオチなんですよね。」

 それだけではなく、教会の子供達は一定の年齢になると領主の元に連れて行かれるらしい、連れて行かれた子供はおそらく無事ではないだろう。
 しかし問題は、その子供達が領主の元へ行って無事ではすまないことを理解しているのだ。今まで恩恵を受けた分、身を捧げるのは当然だと思っている。洗脳を施されて育てられた子供を説得するのは困難だろう。
 それだけではなく、信者は教会に反対する人間から搾取した物資や食料で生活を潤している。教会を信仰する者達は自分達が正義であると信じて疑っていない。領主様に楯突く者は殺してしまってもいいとさえ思っている。

「なので、領主様を倒そうとしてるってことは言わないほうが無難ですね。
 信者のふりをして情報を集めるか、こっそり忍び込んで盗み聞きでもするか。
 次に連れて行かれる子供が分かれば、ばれない様ついていくって手もありますね。」

 どちらにしても村人は全員敵だと思ったほうがいい。

「きっと、皆さんがオブリビオンを倒したとしても、誰も賞賛しないし、どころか悪人扱いされるかもしれません。それでもボクはこれをこのまま放置していいものだとは思いません。」

 例えそれが誰かを幸福を踏みにじることだったとしても、これは誰かがやらなければならないことなのだ。

「やりたくない人は無理しなくてもいいです。それでも協力してくれるのなら、よろしくお願いします。」

 そう言って一六八は微笑んだ。


山野芋子
 こんにちは山野芋子です。
 おそらくこれが今年最後の依頼になると思います。
 リプレイ返却は年をまたぐかもしれません。
 今回はダークセイヴァ―でシリアスな依頼です。
 OPの通りハッピーな終わり方にはなりません。
 何か思うことのある方は存分に思いの丈を綴っていただければ幸いです。
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第1章 冒険 『異形の神』

POW   :    街の人に扮して教会に入り込む

SPD   :    教会に忍び込み、教会関係者や建物内を調べる

WIZ   :    行方不明事件を調査して次の事件を予測する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

サンディ・ノックス
まぁ、子供たちは仕方ないんじゃない?純粋で可愛いとさえ思うよ
でも大人は反吐が出るってのには同意

信者の村人として振る舞う
村人でないとバレたら作戦が台無しだから
目立つような…大袈裟に教会を称えるみたいな演技過剰にならないようにだけは気を付ける

この村に住んでる俺はなんて幸運なんだろう
微力ながら俺も教会の力になりたいよ
和やかに幸せさを漂わせながら「コミュ力」で信者たちと交流し「情報収集」
領主の居場所が最終目標だけど小さなことでいい
教会、領主、苦しんでいた圧政、何故楯突く者がいるのか

疑いの目が向けられた猟兵がいたら
「言いくるめ」られるならして、無理なら信者側につく
悪いけど揃って怪しまれるほうが効率が悪い



●犠牲の上で成り立つ幸福
 サンディ・ノックス(飲まれた陽だまり・f03274)は違和感のない質素な服を纏い、村人にまぎれて教会へと向かった。
 何やら今日は集会のある日のようで、ぞろぞろと村の住民達が教会の広場へと集まっている。これから一体なにが始まるというのか。
 演技とはいえそれを悟らせないような幸福そうな雰囲気を放ち、まるで村の信者の一人のような顔をしてそこにいた。

「こんにちは。今日はいい天気ですね。」

 穏やかで人の良さそうな老婆が隣にやってきてサンディに軽く会釈をする。
 夜の闇に覆われたこの世界で天気がいいもなにもないのだが、この老婆にはそう写っているらしい。否定することもせずにただ、そうだね。と微笑んだ。
 広場の中央に置かれた広場の小さな舞台のような場所で何か始まるのか、それを囲むように村人達は立っていた。
 まだ時間ではないのか、その壇上にはまだ誰も現れていない。

「この村はいいところだね。」

 台の上を見つめ、今この瞬間だけはあくまでこの村の幸福な住民になりっきっていたサンディの口からは自然とそんな言葉がこぼれた。

「そうですね。それもこれも領主様のおかげですよ。」

 ニコニコと老婆は心から幸せそうに微笑んだ。

「俺も何か教会の力になりたいな。」
「ああ、ボランティアも募集しているようですよ。よろしければ志願してみてはどうですか?」
「ボランティア?」

 詳しく尋ねようとしたところで複数の人影が壇上へとあがって行くのが見えた。老婆は、始まりますよ。と言うと会話を一度中断する。
 神父と思わしき男と、武器を持った兵士のような屈強な男達、それに連れられてきた罪人のように拘束された中年の男だった。

「やめろ!やめろ!!なんで俺が!!!俺は何もしてない!!!」

 男は喚きながら兵士に引っ張られるように台の上へとあがった。

「嫌ねぇ。あの人、領主様に逆らったんだって。」
「あの人、宿屋の亭主さんでしょ?父子家庭で子供もまだ小さいのに……。」
「まぁ子供は教会が引き取ってくれるから大丈夫さ。子供に罪はない。」

 サンディは周りから聞こえてくるひとつひとつの言葉に耳を傾け、
 ざわざわとした声が広がっていく村人に、トンっと強く槍を地面で鳴らすと兵士は声を上げた。

「静粛に!」

 その声とともに村人たちはシンっとなる。

「この男は領主様を侮辱した罪で死刑となった!これより刑を執行する!」
「違う! 俺は領主様を侮辱なんかしてない!! 子供もいるのにそんなことするわけがないだろう!! 何かの間違いだ!!」

 そう主張する男を信じる者も救う者も誰もいない。誰もが領主様に逆らった愚かな人間としてその男を見ていた。
 誰一人男の味方をするものはいない。そして科せられた刑に疑いを持つものはいない。妄信的な信者の頭には教会に対する疑念など生まれることはないのだ。
 しかし、村人のふりをしているだけのサンディには男の主張にどこか引っかかりを覚えた。

 そうしている内に執行人が剣を振り上げる。そして喚く男の首に振り下ろされた。
 ゴトリと頭がボールのように転がる。夥しいほどの血が吹き出て壇上を汚していき、その体は力なく倒れた。

「これにて刑は執行された。黙祷。」

 死者へと静かに黙祷を捧げ、それが終わると村人達は自分達の日常へと帰っていく。先ほど話しかけてきていた老婆も、すべてが終わってから言いかけていた話の続きを始めた。

「ああ、さっき言ってたボランティアですけれど、――あれの後片付けですよ。」

 なんの罪悪感のかけらもなく幸福に微笑む老婆に、幸せそうに微笑み返して教えてくれたお礼を言う。

 ――やっぱり反吐がでるね。

 貼り付けた信者の顔とは裏腹に、サンディは心の中で吐き捨てるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミアス・ティンダロス
召喚した【姿の見えないゼリー生物】を教会へ潜入させます。そこで情報を盗み聞いて、次の事件を予測します。

猟兵のお仕事は褒められることではありません、『理不尽』を壊すことです。
だからやります。自分たちがやらないのなら誰がやります?


隠月・ヨル
【SPD】
ええと、こういうのって確かマッチポンプっていうのよね。
擬似的とはいえそれで幸福が成り立ってるなら放っておいても良いと思うけど、
オブビリオンが関わってるなら残念、後々こちらの面倒になる前に絶たないといけないわね。
ほんとうに 残念 ね?

【影の追跡者の召喚】を先に喚び出しておいてから教会へ正面から伺いましょうか。
熱心な信徒を装って、お祈りを捧げさせてもらって、その間に追跡者にあちこち探してもらいましょ。
奥の偉そうなヒトのお部屋に行ければそこね。
ダメだったらオトナの集まる部屋、コドモの集まる部屋それぞれね。
次に連れて行かれる候補のコドモがわかったら覚えておいて他の猟兵にこっそり伝えるわ。



●追跡
(擬似的とはいえそれで幸福が成り立ってるなら放っておいても良いと思うけど、)

 オブリビオンがかかわっているのであれば話は別だ、と隠月・ヨル(人間の死霊術士・f10374)は広場から去っていく神父に影の追跡者を付ける。

(ほんとうに 残念 ね?)

 ただの偽りの楽園であれば、壊す必要もなかったのに。
 そしてヨルのほかにもう1人、追跡者を送り出した者がいた。

「空白く、優しく、慎ましく――追いかけなさい、不可視の吸血鬼さん。」

 ミアス・ティンダロス(夢を見る仔犬・f00675)は小さな声で詠唱を行い姿の見えないゼリー生物を召還する。
 猟兵の仕事は褒められることじゃない。誰にも褒められなくてもいい。
 『理不尽』を壊すことこそ猟兵の仕事だから、自分たちがやらなければ誰がやるんです?とミノスは自分を奮い立たせる。
 兵士であれば何か領主とも繋がりがあるかもしれないとそれを貼り付けた。
 そのまま跡を追い教会までたどりつくと、途中で別れ、神父は聖堂の奥へ、兵士は休憩室のような部屋へと入った。

 ヨルの追跡者がそっと影に隠れながら神父の様子を伺った。
 名簿のような紙の中の行のひとつに、赤い取り消し線が引かれているのを目撃する。
 目を凝らして見えたのは、職業欄の"宿屋経営"と、備考欄の"父子家庭、5歳の息子が1名"という文字だった。
 線が引かれている他の場所にも、子供の年齢や性別が書かれていた。
 覚えられるだけ頭の中に叩き込み、あわよくば他の資料も見れないものかと様子を伺う。
 神父は何かをつぶやくわけでもなく、部屋から出る様子もなく、手に入った情報はそれがすべてだった
 しかし聖堂の奥の部屋の存在と、その中に何か情報があるということだけははっきりと分かった。
 もう少し様子を見させようかとよぎるが、下手に動き回って勘付かれても厄介だと、追跡者を帰還させる。

 そして同時刻、ミアスのゼリー生物は休憩室での兵士達の会話を聞いていた。

「明日1名"送迎"があるそうだ。10歳の女の子。」
「ああ、前に処刑した農家の家の子か。大きくなったな。」
「ま、もう死ぬことになるけどな。」
「せめて"あれ"を見て逃げなきゃいいけどな。」

 まさか――
 兵士達の会話で、ミアスの中にひとつの仮説が生まれる。
 もしかして、逆らう人間など最初からどこにもいなくて、罪を着せて都合よく処刑するための口実なのではないかと。

(だとしたら、とんでもなく理不尽です……)

 一体なんのために、邪魔なのか、それとも子供がいるからなのだろうか。
 強く拳を握り、しばらく会話を聞いていたがこれ以上有用な情報はなさそうだ。
 追跡をしていた生物を帰還させる。
 そうしてヨルもミアスも、一度、他の猟兵達と情報を共有することにしたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シラ・クロア
いわゆるマッチポンプによって神格化された排他的な宗教じみているわね。
……まあ確かに……偽りの楽園であっても、それ以上の幸福があり得ない世界なのだとしたら、「これが最善」だと定義してしまうのも仕方のないことなのかも。
だから本当は「前提」を変えなくてはならないのだけれど……いつかそんな日が来るのかしら。

生贄が身寄りのない子どもだからきっと文句が出ないのね。自分の子ではないから。
小さな体を活かして教会に忍び込み、子ども達の会話に聞き耳をたててみるわ。教会の大人がいない場所でなら子ども達の口も軽くなったりしないかしら。領主のことや前の生贄、次の候補者のこと、自分のこと。素直な思いを知りたいわ。



●小さな侵入者
 小さな少女が窓を開き外を眺めて首をかしげる。

「どうしたの?」

 その友達と思わしきもう一人の少年が尋ねた。

「今、とっても大きなちょうちょが飛んでた気がしたの。」

 でも気のせいだったみたい。と、少女はカーテンを閉めると少年の元へ駆け寄る。
 少女が蝶と見間違えたのはひらりひらりと窓の外を飛んでいたシラ・クロア(夜を纏う黒羽のフェアリー・f05958)だった。
 シラは通気口からそっと中へと忍び込み、少年と少女の会話に聞き耳を立てる。

「私、明日には死んじゃうのか。」

 実感がわかないと少女は笑う。

「……ジェシカ。僕ね、君のことが好きだったんだ。」
「そうなの?……ありがとう。」
「だから……。」

 少年は何か言いたげだった。

「……ううん。お勤めがんばってね。」
「うん。そっちこそ元気でね。」
「大丈夫、僕ももうすぐ10歳だから、きっとすぐに行くよ。そうだ、これ貰って!」

 少年が少女の薬指にシロツメ草で作った指輪をはめる。

「わぁ、かわいい。」
「僕もあっちに行った時、これ、目印にしてジェシカのこと探すよ。」

 うん、ありがとう。とお互い幸せそうに笑い合うのだった。
 シアはその様子を眺めて複雑そうな顔をする。
 偽りの楽園であってもこれ以上の幸せがあり得ない世界なら、これが最善と定義してしまっても仕方のないことなのかもしれないが、いつかその前提を変わる日は訪れるのだろうか。身寄りのない子供だから文句がでないのだろうか。それにしても、こんなのはあんまりではないか。これ以上ないほど幸せな顔をした少年少女を見ていると、シアの胸の中に苦い思いがこみ上げてくる。
 
 そしておそらく明日連れて行かれる子供は、このジェシカと呼ばれた少女だということだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・スノウライト
あの子たちを見ていると、幸福、ってなんなのかしら、って
そう考えずにはいられないけれど…
…つらい、わね


【SPD】
ただでさえ目立ちそうな格好だし、古びた大人しい服を着ていくわ
それから、【迷彩】を使ってできるだけ目立たないように、まず周りを調査
裏口があったら、そこから忍び込むわね
鍵が掛かってても【鍵開け】があるわ
協会の人たちが話しているところや、地下を探索して【情報収集】するわね


万が一もし見つかってしまった場合は、迷い込んだ身寄りのない子供の振りをして、【コミュ力】を使いつつ「領主さま」について尋ねるわ
「ここの村は、ちゃんとごはんがたべられて、いいところだって聞いたの」
「ねえ、どうして?」


一駒・丈一
きな臭い雰囲気を感じる依頼だ。
請け負おう。


さて、【SPD】重視で動く。
技能の「忍び足」を活用し、こっそり建物内に侵入し調べよう。
器用貧乏タイプの俺に相応しい仕事だな。

調査の一番の目的は、次の戦いに備えての侵入経路の確保だ。
いずれオブリビオンと戦う事となった場合、他の猟兵も信者に見つからないように敵の元に向かう必要があるのでな。
聞き耳も立てて、情報収集も合わせておこなっておこうか。
確保した情報は、追って他の猟兵に展開する。

もし、余力があるのならば、
捕まえられた子供達がどの箇所に居るのか、そもそも生きている者がいるのかも含めて確認しておこう。
……今の段階で救助するのは、恐らくは難しいだろうが……。


鳥越・九郎
これはまたえらく業の深い領主様がいたもんだ。
なあに、鬼だ悪魔だ怪物だと罵られるのは慣れてるさね。助けた見返りがあろうがなかろうが、アタシゃ構わないよ。
結局のところ、ムカつくからぶっ潰すっていうだけのことだもの。
これは、ただのエゴさ。

とはいえ、アタシの風態じゃあ真っ当な人間に見えやしないし、ここは教会に忍び込もうかね。
黒尽くめの服装だし、暗がりに潜めばいくらか隠れられるんじゃないかしら。
主だった教会関係者、建物の間取りと……できるなら領主様について少しでも知られるのなら助かるねえ。

(口調は老婆をイメージ、割と口調を崩すことも多いのでセリフは適当に書いてOKです)



●闇夜に烏
「これはまたえらく業の深い領主様がいたもんだ。」

 仲間が集めた情報を聞いて誰に言うでもなくポツリとつぶやく。

(結局のところ、ムカつくからぶっ潰すっていうだけのことだもの。)

 そうこれはただのエゴ。いたってシンプルな理由だ。罵られようが見返りがあろうがなかろうが九郎には関係ないのだ。
 暗がりに潜みながら、目立たぬよう、外部からおおよその建物の間取りを把握していく。
 黒ずくめの姿で闇に溶け込んでいる様はまさに闇夜に烏というものだった。

「おっと、こんな所に裏口とはねえ。」
「あたしに任せて。」

 進入経路を探し、少し古びた大人しい服を着て迷彩を纏ったアリス・スノウライト(0/1 rabbit・f00713)が、ひょこっと九郎の影から顔を出す。

「開けられるのかい?」

 九郎の問いにアリスは頷くと、鍵を調べ始める。程なくしてガチャンと錠の外れる音がした。

「開いたわ。」

 その声に礼をいい、二人は裏口から教会の中へ侵入する。
 アリスと九郎は内部に侵入後、二手に分かれ調査を開始した。
 
(領主様について、もう少し知れるのなら助かるんだけどねえ。)

 ひょいひょいと闇を縫い、気になる会話がないか神経を尖らせながら回っていく。

「しかし領主様も子供ばかり集めて何をしてるんだか。」

 とある一室から声がして、影に隠れて足を止める。

「なんでも12歳以下じゃないと駄目らしい。」
「なんで?」
「噂だとコレクションにされちゃうとか。」
「お前余計なこというと殺されるぞ。」

 コレクションという単語が引っかかり眉を顰めた。

「まぁ、実際、送迎の警備兵と子供と神父様しか、あの"丘の上の屋敷"には行ったことないしな。」

 丘の上の屋敷。それがおそらく領主の所在地か。
 そのタイミングでカツカツと反対側の廊下から足音が聞こる。
 一番知りたい情報は手に入った。長いは無用だ。九郎は即座にまた闇に溶け込んだ。

「見ない顔ね。何してるの?」

 迷彩で気配を消していて油断したのか、突如現れた少女に声をかけられる。

「道に迷ってしまって。」
「じゃあ私が案内してあげる。どこに行きたいの?」
「正面入り口に行きたいの。」

 咄嗟のことだったがうまく話を合わせると、少女は快く案内を承諾してくれた。
 背丈の同じぐらいの少女が二人並んで歩いていく。

「ここの村は、ちゃんとごはんがたべられて、いいところだって聞いたの、ねえ、どうして?」

 アリスは歩きながら少女に尋ねる。

「うん、ここはいいところよ。ご飯もあるし、あったかいお布団もあるの。お友達だってたくさんいるわ。」
「そう、素敵なところなのね。」

 そうなの、素敵なところなの。と心底幸せそうに笑う少女に、アリスの胸がかすかに痛む。

「私、ジェシカ。明日にはもういないけれど、よろしくね。」
「どういうことなの?」
「明日死ぬの。」

 笑って少女は答えた。

「でもそれは今まで領主様が面倒をみてくれたから。そのお礼をしないといけないの。」

 でも私達はずっと領主様のおかげで裕福な生活をさせて貰ったから。と少女は言うのだ。

「正面入口ついたよ。じゃあね。ばいばい。」
「うん、ありがとう。またね。」

 小さな背中を見送りアリスは思う。
 心から幸せそうに笑う少女に幸福とはなんなのかと考えずにはいられない。

(…つらい、わね)

 偽りだったとしても、これから、その幸せを壊すのだ。
 そう思うと、微かに胸が痛んだ。

 一方その頃、一駒・丈一(金眼の・f01005)は聖堂の奥へと向かっていた。
 仲間から貰った情報を元に、忍び足で気配を隠しながら進んでいく。
 聖堂の奥の部屋に辿り着くと、幸い今は人の気配はない。
 扉を確認すると幸い鍵は開いていて忍び込むことに成功した。
 それから、机に付属の本棚に立てられている名簿を発見する。
 『処刑リスト』という名簿と『出荷予定リスト』と書かれたそれを開く。
 どうやら子供がいる親を殺し、教会で引き取って、その子供を領主の元へと送り出す。ということをこの教会はしているようだった。
 出荷予定リスト、など、物か家畜のような扱いを子供達はされている。
 その事実に小さく舌打ちをしながら、名簿に赤いラインが引かれてる子供の名前を覚える。
 "ジェシカ 10歳"それだけ頭の中に入れて、誰かが帰ってくる前にその場を去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『悪趣味な博物館』

POW   :    正面から堂々と入る、窓を割って入る

SPD   :    窓や裏口から侵入、関係者を装って潜入

WIZ   :    関係者から屋敷の情報を得る、屋敷の図面を入手

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●屋敷の様子
 屋敷には骨や剥製、そういったものが飾られていて、その様子はまるで博物館のようだった。
 しかし、それらはよく見てみると、どれも人間の子供のものだということが分かる。
 そしてふらふらと徘徊して侵入者を排除しようとしているのは幼い子供達だった。
 その顔からは生気が抜けていて、とても生きているようには見えない。
 死んだ子供の亡骸を操り、外敵から守る兵として使っているというところか。
 中を見たものは悟るだろう。

 ――おそらく、これらが、子供達の末路であると。

 入り口の門には雇われた兵士が待ち構えている。
 正面玄関から入るには許可された人間や貨物を運ぶ馬車以外は強行突破するしかないだろう。
 気配を消したり裏口を探すならば、兵士を丸め込み図面を頂くなど工夫が必要だ。
 少なくても一刻を争う自体だ。もたもたしているとまた新たな犠牲者が出てしまうかもしれない。
 猟兵達は合流すると即座に行動を始めた。目的の場所は"丘の上のお屋敷"だ。領主はそこにいる。
シラ・クロア
――バカね。あなた達の人生は十年で終わっていいものではないのよ。可愛いジェシカ。
こんな世界でも、その両足で地を踏みしめて生きなさい。手を取り合える人がいる限り。
そのための道を、いま拓くわ。歩きにくい道よ。楽園は無い。それでも。

丘の上のお屋敷、ね。
馬車で運び込まれる貨物があるようだから、密かにその箱の中に入り込んで正面玄関の中まで運んでもらうわ。様子を見て途中で抜け出て屋敷内へ。
影に同化しながら静かに飛んで移動。他の猟兵と合流したら情報共有、協力して進む。
……子どもの骨格標本に剥製? ……後でゆっくり眠らせてあげないと。
微かな音や気配、徘徊する子らの動き、第六感にも従って領主の居場所を探るわ。


サンディ・ノックス
熱心な信者でも明日は濡れ衣を着せられて殺されるかもしれないのに
知らないから盲目に信仰してるってわけか
滑稽で笑えてくるよ
この仕組みを作った奴も笑ってるかもね
そいつを殴るためにもうまく入り込まないと

行動:WIZ

送迎の兵と神父しか行ったことがないなら無理があるかもしれないけど
博物館のメンテナンスを装うよりは無難だなと
警備兵を労いにきた信者を装う
多少の無理は俺自身の「コミュ力」と「言いくるめ」で押し切ろう

寒い中お勤めお疲れさまですと温かい飲み物を差し入れ
他に働いている人にも差し入れたいからと
他に見張りがいるか
いるならどこにいるか聞く

いないなら入口1つだけの建物は珍しいと
裏口の話題になるような問いをする


鳥越・九郎
【SPD】
まずは兵士に見つからない所から【體葬黒烏】で【瞳の紅いカラス】を召喚。
侵入できそうな場所をカラスに探して貰って、そこからこっそり入ろうかしら。
見た目は普通のカラスとそう変わらないから、見つかっても大丈夫だと思いたいねえ。
侵入した後は、暗がりに隠れながら警備に見つからないように領主の居場所を目指して移動しようかね。

犠牲者は――予想はしていたけれど、これはまた、たいそう非道いもんだ。
どんなに子供達が自分の運命を覚悟しようと、その瞬間はきっと恐怖し怯えたろうに。
それをよくもまあ。こんなに弄くり回して貶めるたァ、反吐が出るよ。
外道も外道、悪辣外道の下衆領主にゃ、天罰を受けて貰わないとねえ!


隠月・ヨル
あの骨の量は…一体どれだけの期間で集められたものかしらね?
あまり「エサ」を繁殖することは重要視してなさそうだけれども

【始業の鐘】で喚び出してからそのまま2人を連れて関係者のフリをして、門番さんと≪コミュ力≫を使ってお話をしに行くわ
2人のおかげでとっても説得力があるでしょう?

こんにちは、こちらで地図をもらってくるように言い付かったのだけれどもいただけます?
あら、くださらないの…?このまま帰っても私は叱られるだけで済むけど…
アナタのお名前は?
えぇ、私はちゃんとお願いしたと報告しないと余計に叱られてしまうわ
アナタが断った結果だもの、アナタがどんなことになっても恨まないでね?

そんな感じにね

(アドリブ可



●信者の仮面
 サンディは屋敷へと向かいながら、見えてきたこの村の現状に心の中で失笑する。
 明日にも濡れ衣で殺されるかも知れないのに、知らないから盲目で信仰してるってわけか、滑稽で笑えてくる。
 
(でも一番笑っているのはこの仕組みを作った奴かもね。)

 ともかく、その元凶を殴るためには上手く入りこまなければ、と。
 二人の兵士が守っている屋敷の門が見えてきて、信者という仮面を完璧に被った。

 自分は信者である。そう思い込む。

「寒い中お勤めお疲れさまです。」
「何だお前は。」
「俺はあの村に住んでいるものです。いつも領主様の警備をしてくださってる兵士様に何か差し入れでもと思いまして。」

 ニコリと微笑み、温かい飲み物を差し出した。

「こんな場所までわざわざ?」
「怪しいやつめ。」

 普段、村の人間はわざわざこんな場所には来ないと、不審に思いながらサンディの顔を見る。

「領主様に与えられるだけで何もできないので、せめて何か少しでも役に立てないかと思ったんですが、迷惑でしたか……?」

 じっとサンディの目を覗き込み、兵士は顔を見合わせた。
 しかし、少し悩んだあとその飲み物を受け取る。

「まぁ飲み物だけなら。」
「用が済んだなら早く帰れ。」
「はい、そうさせてもらいます。ああ、でも、他にも警備の人がいるなら飲み物を渡したいのですが。」

 念のため用意しておいた飲み物を片手に見せ警備に尋ねる。

「……あっちに進んだ裏口の方にもう一人いる。渡したらさっさと帰るんだぞ。」
「はい、ありがとうございます。」

 ニコリと笑い、指された方角へと向かう。
 そしてすっかり警備兵が見えなくなると仲間と合流して伝えるのだ。
 こちらに裏口、警備が一人と。


●裏口の門番
 裏口の情報を耳に入れるとヨルはすぐさま行動を開始した。

「さぁ、仕事の時間よ。いらっしゃい。」

 その声と共に死霊の家令と執事が召還される。
 血の気がない肌の色は、闇に覆われたこの薄暗い世界ならば誰も気にすることはないだろう。

「こんにちは、こちらで地図をもらってくるように言い付かったのだけれどもいただけます?」
「何のことだ。聞いていないぞ?誰だお前達は。」

 訝しげにヨル達を見て、警備は武器をしっかりと握り返す。

「あら?伝達にミスがあったのかしら。困ったわね。ともかく地図いただけるかしら?」
「何者か分からない相手に渡せるわけがないだろう。」
「あら、くださらないの…?このまま帰っても私は叱られるだけで済むけど……。」

 ちらりと警備兵を見る。胸を張り、とても自信のあるように見せて続ける。

「アナタのお名前は?」
「は?」

 混乱する兵にヨルは考える隙を与えないように捲くし立てていく。

「えぇ、私はちゃんとお願いしたと報告しないと余計に叱られてしまうわ。」

 自分に非などないと言いたげな態度は、あんなに強気だった兵に徐々に不安の種を植えていく。

「アナタが断った結果だもの、アナタがどんなことになっても恨まないでね?」
「だが何も聞いていないぞ!」
「ええ、なら仕方ないわね。領主様に報告しましょう。」
「りょ、領主様に……!?」

 口からでまかせにだしたその言葉は、兵には絶大な効果があったようだった。
 万が一本当に領主様の言いつけで来たのであれば、もしかすると自分は反逆の罪で処刑されてしまうかもしれない。
 そんな恐怖が警備兵の脳裏によぎったのだろう。

「待て、確認してくる。ここで待っていろ。決して動くな。」

 バタバタと屋敷の中へと入っていく。無用心にも裏口には一時的に誰もいなくなったのだ。
 赤い瞳の烏が枝に止まる。ヨルはその烏に何かを感じたのか、今ならここから入れるわよ。と伝えると、烏は再び翼を広げたのだ。
 警備兵が退く様子を見ていたサンディも合流する。
 確認しにいったのならばそう時間もかからないだろう。
 兵が戻ってくる前にヨルはそっと中へと入っていくのであった。


●漆黒の翼
「屋敷への積荷はこれで全部だな。」

 次々と荷物が積み込まれていく馬車へとひらりひらりと舞い入り込む影がひとつ。
 その影の正体であるシラは中の荷物の箱に身を隠した。
 ガタンと振動が伝わり馬車が走り出す。
 前方の座席に座る少女の背中を見つめてシラは心の中で呟いた。

 ――バカね。あなた達の人生は十年で終わっていいものではないのよ。可愛いジェシカ。

 私が道を拓くわ。例えそれが歩きにくい道でも。
 こんな世界でも、手を取り合える人がいる限り、その両足で地を踏みしめて生きなさい。
 楽園は無い。それでも――

 少女を見つめる視線は揺らぐことなくまっすぐだった。
 揺れる不安定な箱の隙間から外の様子を観察する。
 丘を上がる坂道で傾いた風景。
 枯れた木に囲まれた道をゆっくりと登っていく。
 暗く灰色の道は徐々に不気味な雰囲気を増していった。
 すっかり人の気配も無くなり、しばらく進んでいくと馬車が一時停止する。
 馬車を操縦してきた男が門番と思わしき男が確認の作業を行った。
 まさかシラほど小さい者が紛れ込んでいるとは想像もしていないのだろう。
 簡単な荷物のチェックが終わると、そのまま馬車は屋敷の内部へと運ばれていく。
 その隙をみて誰にも見られていないことを確認するとシラは箱から飛び出る。

 その漆黒の羽が影を縫い飛んでいく。
 
 「あ?今何か飛んでなかったか?」

 兵士が辺りを見回す。ばれてしまったかと内心ヒヤリとするが、その前に少し離れた場所で赤い目の烏がカァカァと鳴いた。

 「……何だ。烏か。」

 気配の正体が分かってしまえばそれ以上気にしようとは思わないだろう。
 警備兵は再び門の外へと意識を戻す。

 シラが妙な烏だと思っていると、それはくいっと首を曲げこちらに来るように促しているように見えた。
 烏の指すほうへと向かうと黒い服で闇に紛れた九郎が待っていた。

 「おや、お仲間かい? おいで、こちらのほうから入れるようだよ。」

 ただし少々急いだほうが良さそうだけどねえ。と、シラを少し急かし、共に裏口から忍び込む。
 時間はあまり残されていない、仲間達と合流し領主の居場所を探さなければならないのだ。
 猟兵達は屋敷の中へと侵入していくのであった。


●助けられた命
 中に入り込んだ瞬間、その異様な光景に息を飲む。

「予想はしていたけれど、これはまた、たいそう非道いもんだ。」

 子供の剥製、骨、無残に刳り貫かれた眼球が、水槽の中にオブジェのように展示されている。
 どんなに子供達が自分の運命を覚悟しようと、その瞬間はきっと恐怖し怯えたろうに。

(こんなに弄くり回して貶めるたァ、反吐が出るよ。)

 一刻も早く悪逆非道の領主を発見しなければ。

「待って。何か聞こえるわ。」

 突然静止の声を上げシラが仲間達へと伝える。研ぎ澄まされた聴覚に誰かが話す声が聞こえた。

『ようこそ、私の屋敷へ。ああ、この展示品かい?素敵だろう?君もすぐにこうなるよ。』
『……ひっ…!いや……!』

「……!?……皆こっちよ!」

 微かに聞こえた会話の方へと仲間達を誘導する。
 しかし、その道の途中にはふらりと操られた子供の亡骸が猟兵達の進む道を妨害しようと現れる。

「邪魔だよ。」

 サンディが服の下から素早く小刀を取り出し、その首を掻っ切った。
 元々死体であったそれが血液を噴出すことはなかったが、そのまま転倒する。

「いい加減死んでちょうだい。」

 まだ動こうとするそれにサンディのつけた傷をさらにえぐるよう、ヨルの拷問用調理道具が突き立てられた。
 亡骸はもう動かない。本当の意味での屍となったのだ。

 邪魔するものがいなくなった廊下を猟兵達が走りぬける。
 九郎が音の聞の元を追跡し、広く開けた場所――玄関ホールへと辿り着く。

 まさに少女に凶器が振り下ろされるその瞬間。
 全力で羽ばたいていたシラが少女を突き飛ばした。
 そのまま子供の亡骸は少女のいなくなった地面に凶器を突き立てた。

「おや、猟兵ですか。早かったですね。」

 嗅ぎ回っていたのは知っていましたが。と、オダマキの花を生やした領主と思わしき男が猟兵達を見回す。

「しかしいいところで邪魔をされてしまいましたね。ふむ……。」

 これは少しばかり面白くありません。と、猟兵と生き延びた少女を見て目を細めた。

「いいでしょう。その子はアナタ達を始末した後じっくりかわいがってあげます。」

 空気が変わる。領主の周りには、ゆらり、ゆらりと、ひとつふたつ影が立ち上がる。
 幼い子供達の死体が、不自然な関節を軋ませながら、何も写さない眼球をぐるんぐるんと猟兵達へと向けた。

「悪辣外道の下衆領主にゃ、天罰を受けて貰わないとねえ!」

 九郎のその声を皮切に戦闘が開始したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『子ども遣い『チャイルドマン』』

POW   :    理不尽な言いつけ
【攻撃】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    財産喰らい
自身の身体部位ひとつを【対象の親もしくは同じくらい信頼している人】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    操り人形
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【一時的に幼い頃の姿】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はステラ・リトルライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

サンディ・ノックス
じっくり…?
そう、じっくり可愛がったんだ
健気な恩返しの気持ちを踏みにじって
さぞ快感だったろうね


真の姿開放
見た目は絵姿どおり
武器は大剣へ変形

死体を操る余裕を無くすためにも領主を攻撃
あまりに数の不利があるときだけ死体に対処

前に出て可能な限り【2回攻撃】
【フェイント】と【見切り】を駆使して被弾を抑える

死体に僅かな動揺を見せておく
隙を突かれたふりからの【だまし討ち】狙い
子供への行為に腹は立ってるよ?
でも同情で彼らを助けられるわけじゃない
原因を潰すのが今、唯一できる事


全て終わった後
罵倒されようが
どの口が言うのかと言われようが気に留めない

ただ帰る前に
俺が見捨てた一生懸命生きていた人には
黙祷を捧げていきたい



●お人形さん
 操られた死体は、首を切り裂かれた者、腸をこぼしている者と様々だったが、どの遺体も凄惨な最期を迎えたようだった。散々弄ばれて殺されたのだろう。それは領主の操る"お人形さん"を見ただけでも分かる。

「そう、じっくり可愛がったんだ。」

 どこか冷たさを感じる声でサンディが呟く。

(健気な恩返しの気持ちを踏みにじって、さぞ快感だったろうね……)

 外道な行為に内心怒りを感じながらも、行動には迷いはない。同情で救えるわけではないなら、やるべきことをするだけだ。
 サンディの周りに風が吹き上がった。瞳を静かに閉じ、手の中には大剣となった武器が握られ、全身は鎧に覆われる。人間であるはずのその背に竜のような翼を広げ、ゆっくりと開かれた双眸は空色から金色へと色を変えていた。
 その翼を羽ばたかせ、微かに宙に浮いた体が領主に向かって弾丸のように放たれる。止めようとする子供たちにはサンディに届く前に漆黒の水晶が突き刺さった。
 領主は動揺する様子もなく、近くにある死体のひとつを盾にした。

「ああ、かわいそうに。こんなにもかわいいのに、猟兵達に苛められて……。」

 悲しむ、というよりは、お前達はこんなに酷いことをしている。なんて残虐なんだ。というような態度で切り伏せられた死体を撫でる。
 動揺したのか目を見開き、サンディの動きが鈍くなる。その隙を領主は見逃さない。近くにいた子供を人形のように操りサンディへと嗾ける。動揺しているサンディにこの攻撃は避けられない。

「なんてね。」

 しかしそれは本当に動揺していたら、の話である。その動きを予想していたかのように領主のすぐそばまで滑り込む。そして子供が攻撃を仕掛けたその場所には誰もいない。子供の攻撃は地面に突き刺さる。そして攻撃を指示するために領主に出来た隙をサンディは見逃さなかった。
 サンディには迷いはない。例え全て終わった後に罵られようと、原因を潰すことが今、唯一できることだ。まっすぐに振るわれた大剣は敵の腹へと突き刺さる。

「ぐぅ……っ!」

 2歩3歩とよろめくと、ぽたぽたと出血するその場所を押さえてサンディを睨んだ。

「……いいんですか、私を倒してもあなた方はただの悪党なんですよ。」

 そんな言葉ではサンディは止まらない。追い討ちをかけるようにもう一度大剣を振り下ろした。
 よろめいた領主は猟兵達から距離を取る。指揮をするように手を振り上げると、倒したはずの死体が再び起き上がる。
 死んだ後もなおも踏みにじられ弄ばれる体を、不自然な動きでそれは猟兵達を見つめる。その瞳には何も写してはいなくても。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳥越・九郎
アタシゃいっつもニコニコ笑顔の九郎さんなんだがね。
これでもこの悪徳領主様にゃ、かなり怒っているんだよ。

【體葬黒烏】で呼び出したカラスで攻撃、クソ領主様の注意を引いて貰おう。
その隙に籠手型拷問器具・対装玖法の爪で攻撃だ。
攻撃でもし下衆領主に爪を刺せたら、そうだね。
【鎧砕き】や【傷口をえぐる】なんてのもいいんじゃないかね。
領主サマや、これまで散々弄んだ子供たちの痛みを知る時だよ。

戦闘が終わったら……そうさね、亡くなった子供たちの弔いをしたいところだが。
そんな暇があれば良いけども、時間がないのならせいぜい、十字を切ってやるくらいか。
来世は良き縁に恵まれるよう、願っているよ。



●道を切り開く為に
 すでに死んでいるとは言え、ボロボロと崩れそうな体を何度も、何度も、無理矢理立ち上がらせられる様子は見るに耐えない。
 その様子に九郎の周りの空気は妙に凪いでいた。
 静かに激情を孕んだ風が髪を揺らす。

「アタシゃいっつもニコニコ笑顔の九郎さんなんだがね。」

 ―――これでもかなり怒っているんだよ。

 漆黒の影が一歩、また一歩と下衆領主に向かって近づいていく。
 赤い目の烏が、ばさばさと領主へと不吉を連れ立って羽ばたいていった。
 闇夜に紛れ、蠢く子供達だったものの合間を縫い、領主の元へとたどり着く。
 当然、領主は烏による攻撃を警戒したが、烏達が啄ばむ間に、本当の不幸が迫ってきていることに、領主はまだ気づいていなかった。

「領主サマや、これまで散々弄んだ子供たちの痛みを知る時だよ。」

 ふと、その気配に気づいたときにはもう遅い。
 つい先刻受けた傷に鋭い爪を深く突き立てられる。

「ぐはっ……!」

 口から夥しいほどの血を吐いても、決してその手を離すことはない。
 例え悪党と罵られることになろうとも、かつて自分が手を差し伸べられたように、生きていいと胸を張って子供が生きられるように、この下衆野郎を決して許してはいけない。

 領主は小さく呻くと、メキメキと腕を頭部へと変化させる。それはかつて師と呼んだ人の顔によく似ていた。
 それが九郎に噛み付くと、領主の抉られたはずの傷口は出血しない程度までふさがっていた。

「ごちそうさまでした。」

 ニコリと聖人ぶった笑みで呟く。どこまで人をコケにすれば気が済むのか。領主が距離をとるよりも前に、咄嗟に再び爪を突き立てる。
 着ている服の防御力も無視して突き立てられた痛烈な一撃は、回復してすぐのわき腹に再び叩き込まれた。じわりと赤い血が滲む。しかし先ほどの抉るような傷までは行かず。ニヤニヤと馬鹿にするような視線を九郎へ向けていた。決してこの領主を許してはいけない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
全く。
俺自身、外道と呼ばれることも平気でするし善人の顔で煽るのもよくやるから腹は立たないけど呆れるね
ま、煽りって余裕があるときしかできないし
余裕が無くなって無様を晒したときに笑ってあげればいいか

真の姿の状態は継続
攻撃対象が領主なのも変わらず

騙しはもう通じないだろうから
【怪力】を使って攻撃回数を重視した解放・宵で正面から攻撃
【2回攻撃】も駆使して小細工する暇を与えないよう猛攻を仕掛ける
【フェイント】と【見切り】で回避を試みながら【カウンター 】はする
それと【生命力吸収】、いただかれる気持ちも教えてあげないとね

理不尽な言いつけは破る
今更そんなことで俺を止められると思ってるの?
おめでたい頭だよ



 煽ってくる領主に怒りはない。サンディ自身も必要があれば外道と呼ばれることもするし、善人の顔で相手を煽ることもある。ただ、こうも煽ってくる相手に内心呆れながらも、冷静に現状を把握する。
 同じ手は再び通用しないだろう。ならば小細工は抜きで正面から切り込む。
 回復のために隙のできた領主へと瞬時に距離を詰め大剣を振りかざした。

「さぁ、宴の時間だよ。」

 その細身のどこからそんな力があるのか重くすばやい斬撃を繰り出す。
 振り下ろされた剣はすぐさま別の軌道を描き振り上げられる。息つく暇もない猛攻に初撃はなんとか回避した領主の薄皮に赤い血が微かに滲む。

「くそっ……!猟兵風情がっ……!」

 領主の先ほどまで穏やかだった口調は崩れ始め、焦りが滲み始めていた。
 このままではまずいと予期していない場所から子供の死体が不自然に曲がった関節を軋ませ、予測し辛い動きで飛び掛ってきた。
 サンディは決してその攻撃を予想していたわけではなかったが、空気を裂く気配、微かな音、殺気、それらを感じ取り、瞬時に退くのではなく、踏み込み、加速する。
 その攻撃は微かに皮膚の表面を傷つけたが、その程度でサンディは止まらない。
 攻撃を避けられ転倒した子供には目もくれず、領主へと距離を詰めていく。

「それ以上私に近づくことを禁じる!」

 僅かとはいえ、攻撃が命中したことには変わりない。領主は即座に理不尽な言いつけを宣言する。
 それでも進み続ける、踏み出し、一歩、一歩と領主へと近づいて行く、切り裂かれるような鈍い痛みがサンディを襲う、口の端から血が零れるが、近づく速度はむしろ上がっていく。

「今更そんなことで俺を止められると思ってるの?」

 おめでたい頭だよ。慌てる領主に嘲笑を浮かべ尚も進んでいく。

「くそっ!」

 領主は思惑通りにならない相手に悪態を付く。なぜ傷つくと分かっていて進める。なぜ痛みに歩みを止めない。もはや領主には目の前の相手を煽るような余裕は残されていなかった。
 眼前にサンディが迫る。加速した勢いを乗せ、大剣が空を裂いた。その鉄が胴へとめり込み、領主の体はくの字に折れ曲がると、後方の壁へと吹き飛ばされた。
 そのまま地面へと崩れ落る。ゆっくりとした動きでのろのろと地面に手をつき、かはっと口から空気と共に血を吐き出しながら、それでもまだ領主はふらりと立ち上がった。

成功 🔵​🔵​🔴​

テオ・イェラキ
旅団【牛舎】の皆と参加だ

まったく下種め…弱き者を殺し、剰え死者を弄ぶなど、反吐が出る

いくぞ皆、散れ!
『スカイステッパー』で背後に回る
多対一ならば、まずは位置取りが大事だからな

背中ががら空きだ!
仲間が注意を引いた隙に合わせ、背後から斧を叩きつける
『鎧砕き』で少しでも仲間のサポートになれば良いが

敵の注意を引いたのならば、敵の攻撃に『風纏う激情の舞』で
『カウンター』を狙う
沈めぇぇええええい!ブレイクぅ!

戦いが終われば、館に火をかけよう
丁重に弔ってやりたいところだが、異変に気付いた村人たちが押し寄せてくるやもしれん
せめて、もう死体が弄ばれぬようにせねばな…
館を燃やすにはちと火力が足らんな…カイジ、頼む


カイジ・レッドソウル
【牛舎】めんばート行動ダ
標的ハ自己回復機能ガアルヨウダナ
ダガ本機モ【生命吸収】ガ使用可能、此方も其レデ返ソウ
「標的補足」
SPDノ攻撃ニモ揺ラガナイ店長(テオ・イェラキ)ト同ジ顔ヲサレテモダ
黒剣、呪剣デ【2回攻撃】ヤ【串ざし】ニテ応戦ダ
「(不思議ダ、罪悪感ヲマルデカンジナイ。デモ言エバ怒ルカラ黙ッテヨウ)」
味方ガ攻撃サレタ時ハ【かばう】奴ガ好機トバカリニ攻メ込ンデモ、イェラキ夫妻ガ隙ヲ見逃スハズガ無イダロウ

館ヲ燃ヤスノカ?了解・・・デハ【天獄の雷(コード・ユピテル)】発動サセナガラ屋敷ヲ歩キマワロウ。本機カラ出ル雷炎デ焼キルマデイヨウ【火炎耐性】ハアル。館ノ最後モ、村人ノ虚偽ノ楽園モ焼キ尽クソウ


嵩本・李仁
旅団【牛舎】の皆と参加だ。
他人の価値観否定する気はないが
罪のない何も知ら無い子供を玩具にするとは
ちょっとたちが悪すぎるな

戦闘では俺が先陣を切る
正面から銃でけん制しながら剣刃一閃で敵に一気に切り込む
有象無象は後回し、領主に近づくのに邪魔なやつだけ叩ききる

基本は領主と距離を放さず戦い続ける
相手の注意を全部受けて隙を作らないとな


今まで散々誰かを自由に殺してきたんだろ
ならそろそろ自分がやられる番が来たってことだ
自由に何かをするってことはリスクもあるんだよ


敵を倒せばあとは去るだけ
湿っぽいのは苦手でね…
願わくば後の子供たちが自由に生きられることを願うかな


オリオ・イェラキ
【牛舎】と供に

まぁ
随分オラトリオに似たオブリビオンですこと
……ふふ、ええ。皮肉ですわ

夫の声に応えメテオリオを展開
さあ皆さま、星達が彼らの視界を乱す間に攻め入って

わたくしも斬り込みますわ
主に子の亡骸に確実な眠りを
この夜に抱かれてお眠りなさい

わたくしはね、貴方
同じ花冠に翼を持つけれど
貴方を斬り裂こうと思いますの
この大剣で首を刎ねて差し上げますわ
罪状は充分ご存知でしょう?

鳥籠は壊れましたわ
理不尽だと云うのなら、次は壊されないモノを皆で作りなさい
もう、生き方を強制するものは居ないのだから
少なくともあの死を当然と受け入れるのは幸福ではないわ

亡骸の供養と共に祈る
この村に、子の真なる巣立ちを皆で祝える未来を



●その罪を裁くのは
「猟兵風情が……っ!」

 蓄積されたダメージに領主はよろめいた。
 もはや取り繕うことすらもしなくなった領主が貼り付けた笑顔を崩壊させ猟兵達を睨む。

「まったく下種め…弱き者を殺し、剰え死者を弄ぶなど、反吐が出る」

 殺気だった様子で領主は猟兵達を始末しろという命令を死体達に送ろうとした。

「いくぞ皆、散れ!」

 だが領主が攻撃へと移るよりも早くテオ・イェラキ(雄々しき蛮族・f00426)の声が響きわたる。
 その声と同時に嵩本・李仁(フリーダムモンスター・f04699)の銃弾が放たれた。
 的確に領主の腕を弾が撃ちぬく。子供の死体への指示を阻止され、怯んだ領主へと李仁が切り込んだ。
 一閃、太刀の軌道が真っ直ぐ横に風を切る。ギリギリのところで盾にした死体は胴を二つに裂かれ、地に落ちた。

 他人の価値観否定する気はないが――

 死んでも尚、楽になることもできず、解放されて自由になることもない。罪のない子供達は永遠に囚われたままだ。死して尚その死体すらも弄ぶ領主に、ちょっとたちが悪すぎるなと小さく呟く。
 有象無象を無視して道を切り開いていく李仁の背後から、別の死体が飛び掛る。しかし、それは李仁の元に辿り着く前に頭上から突き立てられた黒剣により串刺しにされた。
 そのまま刺された死体はカイジ・レッドソウル(プロトタイプ・f03376)のエネルギーへと変換され灰へと還っていった。
 これ以上は決して、領主に利用されたりなどしないように。
 複数の死体がカイジへの攻撃を試みるが、子供の大きさからすれば3m近いカイジの巨躯はそれはまさに壁のようだったのだろう。
 その壁を越えることはできず、進んでいく者を止める役割すらも上手く果たすことはできない。
 ボロボロになって使い潰された子供の死体の人形がそれでも二人を止めようと数の暴力で襲いかかる。
  
 戦いの喧騒の最中、高い天井によってカツンと足音が大きく響いた。
 オリオ・イェラキ(緋鷹の星夜・f00428)は一歩、また一歩と歩みを進めていく。
 不思議と彼女の周囲の空気は静寂を纏っていた。

「まぁ随分オラトリオに似たオブリビオンですこと。」

 品のいい笑みを浮かべ、皮肉を少々。
 オリオは花冠と翼を持っている。そして領主もまた同じ特徴を持っていた。
 けれど――貴方を斬り裂こうと思いますの。
 挙動のひとつひとつが洗練された貴婦人はしなやかに指先を翳した。

「さぁ……お往きなさい、わたくしの星達。」

 夜半のような静けさにその声はよく響く。
 ふわり、宵闇色の薔薇の花弁が舞った。星の煌きを纏ったそれは周囲の子供達へと標的を定めて流星の如く飛んでいく。

「この夜に抱かれてお眠りなさい。」

 流星群に打ち抜かれ倒れかけた傀儡は起き上がろうともがくが、そこにさらに追い討ちで突き刺さる。
 子供達だったものはようやく眠りにつく事ができたのだ。そしてこれでもう猟兵達の歩みを邪魔するものはいない。

「さあ皆さま、星達が彼らの視界を乱す間に攻め入って。」

 降り注ぐ夜色の花弁によって開かれた道を突き進み、領主へと向かっていく。
 正面から切り込んでいく3人に気を取られていた領主は、空を蹴り移動し、背後から近づいてくるテオの影に気づくことができなかった。

「背中ががら空きだ!」

 振り下ろされた斧が領主の肩へと食い込んだ。

「ぐっ……!」

 その一撃に領主がよろめく。すかさず懐に飛び込んできた李仁に反撃を試みるが手ごたえはない。

「残像だ!」

 空振りによってできた時間で、テオの斧により負傷した腕へと刀を振り上げた。
 肩から切り離された片腕が地面へと転がる。
 
「今まで散々誰かを自由に殺してきたんだろ、ならそろそろ自分がやられる番が来たってことだ。」

 自由に何かをするならばそれなりのリスクがある。
 何かをするのはされる覚悟がなければならない。

「ぐ……、いい気になるなよ猟兵共!」

 猟兵達の猛攻は止まらない。
 さらにカイジの呪剣が領主を頭上から突き刺そうとしていた。
 領主は残っている腕を変化させる。それはその場にいたテオと同じ顔でカイジへと襲い掛かったが、カイジがその攻撃によって行動を躊躇うことはない。
 躊躇なく振り下ろされた呪剣は、本来ならば持ち主を蝕むものであったが、カイジの体は機械でできているため、魂を吸い取られることはない。どころかその剣は持ち主から奪うことができない分、突き刺した相手から奪おうとするのだ。
 テオの顔に変化した腕へと呪剣が突き刺さった。
 生命力を奪えなかったその腕は力なく、そして、真似た形を保つことができずに崩れ落ちる。

(不思議ダ、罪悪感ヲマルデカンジナイ。デモ言エバ怒ルカラ黙ッテヨウ)

 そんなことを考えていたカイジだが役目はきっちりと果たしていた。
 領主の腕を剣で地面へと縫い付けたことにより、どんな攻撃だろうと領主はもう避けることができない。
 一度避けられてしまうと当てるのは困難だが、これならば確実に当てることができる。

「沈めぇぇええええい!ブレイクぅ!」

 テオが逆立ちの状態で回転し、領主の顔面へと激しい蹴りを叩き込んだ。
 そして夫の攻撃によりできた隙をオリオは見逃さない。
 星空を切り取ったような大剣を携え、優雅な動きで領主へと近づいて行く。

「この大剣で首を刎ねて差し上げますわ。」

 罪状は充分ご存知でしょう?
 今まで命を弄んできた領主の、その罪を裁く刃が振り上げられた。
 ここは断頭台。重ねてきた罪は償わなければならない。

「やめろおおおお!!」

 罪人は叫んだ。だが、彼自身、かつて命を乞う声に耳を傾けただろうか、助けてくれという声を聞き入れただろうか。答えは否。
 因果応報、まさに彼は今まで踏みにじってきたものと同じ場所に立っていた。
 彼を助けるものはいない。領主は今、壇上で裁かれるただの罪人であった。
 頭上で煌々と輝く二等星が領主の首へと振り下ろされた。
 ごとり、首が転がり落ちる。
 館の中だというのに、彼が最後に見た光景は夜の星空だった。


●箱庭の終焉
 戦いの最中、物陰に隠れ、小さくなっていた少女にオリオは近づき、手を差し伸べた。

「鳥籠は壊れましたわ」

 返り血に怯えながらもその手を取り立ち上がった少女は、戸惑った様子でぽつぽつと言葉を零す。

「領主様を殺したの?それじゃ、私達の村は……。」

 少女はぎゅっと拳を握り俯いて迷子のような声で呟く。

「理不尽だと云うのなら、次は壊されないモノを皆で作りなさい」
「でも……!」
「少なくともあの死を当然と受け入れるのは幸福ではないわ」

 もう生き方を強制するものはいないのだから。そんな想いをこめて語りかける。
 きゅっと唇を結び不安そうな面持ちの少女にここはもう危ないわ。とそっと背中を押す。
 拾ってしまった命に戸惑いながらも、背を押された方向へと、とぼとぼと歩き出した。
 その背中を見送ると、李仁が武器をしまい立ち去る準備をする。

「じゃあ俺も退散するな。」

 湿っぽい空気は苦手なんだよ。そういい残すとその場を後にした。
 願わくば後の子供たちが自由に生きられるように祈りながら。

 テオとカイジとオリオはそれぞれ館から誰もいなくなったことを確認するとそこに火を放った。
 せめてもう死体が弄ばれぬようにと。
 カイジから放たれた雷炎はその館を完全に焼き尽くすまで放出された。
 村人の虚偽の楽園も全て焼き尽くすように。

 パチパチと赤く燃える館は楽園の終焉の象徴であったが、皮肉にもダークセイヴァ―の薄暗い空を明るく照らし出していた。
 来世は良き縁に恵まれるよう願う者、一生懸命生き抜いた人に黙祷を捧げる者、子の真なる巣立ちを皆で祝える未来を祈る者。
 様々な願いと祈りを乗せて、その炎は空へと立ち上っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月15日


挿絵イラスト